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米国の農産物・食品の輸入通関 (PDF:243KB)

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米国の農産物・食品の輸入通関 (PDF:243KB)
第5章
米国の農産物・食品の輸入通関
◎ 本章のポイント
本章では、米国に到着してからの通関手続をとりあげている。これらは、米国側の輸
入者が行うため、輸出者は関係がないと考える人も多いが、このような情報を輸出者が
知っておくことは、マーケティングの観点からも役に立つ。
本章は、以下の 2 つの項目で構成している。
Ⅰ.輸入に必要な税金の種類と計算方法
Ⅱ.輸入通関の概要
Ⅰ.輸入に必要な税金の種類と計算方法
輸入コストの算出に必要な関税をはじめ、必要な税金について述べている。
Ⅱ.輸入通関の概要
米国の輸入通関の手順や必要書類そして所要時間を解説している。
84
Ⅰ.輸入に必要な税金の種類と計算方法
1.関税の仕組み
①品目分類
関税を決定するためには、まず、貨物がどの関税率に属する品目であるか分類する。そ
の分類は、世界共通(日本も同様)の税関コード分類である Harmonized System(HS 分
類)に基づいている。関税は貨物価格に課せられる従価税(価格に対する%)と、重量等
の数量に課せられる従量税の2種類がある。ほとんどの場合、従価税が適用されるが、両
方適用される場合には、高いほうが採用される。
②課税基準
従価税の場合、売主から買主に発行された商品仕入書(インボイス)の価格が基礎とな
る。実際の取引価格に課税されるが、野菜や果実のなかには、最低価格が決められている
ものがあり、それ以下の価格で輸入されるものは最低価格まで課税基準が引き上げられる
制度をとっている。
米国の関税率はホームぺージを利用して簡単に検索が可能である。関税インフォメーシ
ョンセンター(http://www.usitc.gov/tata/hts/bychapter/index.htm)で、関税率表のデー
タベースにアクセスできる。一部の品目を P.86【表5-1】で表した。
85
【表5-1】米国の関税率の例(2006 年度関税率表から試算)
農作物
農作物
水産物
加工食品
税率
りんご
なし
いちご
きのこ
ごぼう
なす
ぶどう
みかん
生鮮・冷蔵たら(フィレ)
冷凍フィレ(フィレ)
かまぼこ
生、冷蔵、冷凍かに
いせえび
えび
いか
たこ
貝柱
ほたて(生鮮、冷蔵)
チョコレート菓子
リンゴジュース
ミックスジュース
氷菓(脂肪分 3%以下)
魚のソース
野菜スープ
せんべい
ビスケット(脂肪分 25%以
下)
オレンジマーマレード
柑橘系ジャム
うどん
カレー調整食品
0
0.3 セント/kgs
1.1 セント/kgs
20
10
1.9 セント/kgs
1.8 ドル/m3
1.9 セント/kgs
0
6
7.50
0
0
0
0
0
0
0
5
0
2 セント/リッター
20
0
3.2
4.5
0
3.2
4.5
6.4
3.2
出所:米国の関税インフォメーションセンター
(http://www.usitc.gov/tata/hts/bychapter/index.htm)
86
(%)
2.その他の税
①付加価値税
関税は米国のどこで輸入しても同じであるが、付加価値税は米国の州により異なる。食
品のような基本的生活物資には軽減税率が提供されるケースもある。
②内国消費税
タバコ、アルコール飲料といったものに内国消費税を課する。次の輸入貨物に対する内
国消費税は、税関が内国歳入庁(IRS)に代わって輸入時に徴収する。
・ビール
・ワイン(日本酒を含む)
・発酵酒
・エチルアルコール
・アルコール飲料
・香気性物質を含有する飲料(アルコール量が 0.5%以上で、一定のアルコール重量を含
むもの)
・タバコ製品
関税・付加価値税の計算
インボイスの価格 CIF
×
関税率
=
関税
商品価格(単価×個数)
+
米国までの運賃
+
保険料
(CIF 価格+関税+内国消費税)×付加価値税率(州により異なる%)
= 付加価値税額
87
Ⅱ.輸入通関の概要
米国の輸入通関は申告から許可まで税関コンピュータシステムにより進められる。
しかし、農水産物や食品の輸入の場合は、税関の許可のみで輸入が許可されるのでなく
食品医薬品局や植物検査局の許可がそろって初めて、輸入が許可される。申告は税関シス
テムを通せば食品医薬品局や植物検疫局にも送信されるので、別途、改めて食品医薬品局
や植物検査局向けのデータ申告を行う必要はない。
また、食品医薬品局の審査と税関申告が並行処理されるようになったので、事前に食品
医薬品局の許可を受けている貨物については、審査時間も短縮する傾向にある。また、輸
出国の植物検疫証明書のチェック等の定型化された業務は、税関に権限委譲されるケース
も多くなっており、通関所要時間の短縮を図ろうとする努力がなされている。
しかし、輸入通関について輸出者の負担を増やす要因もある。農水産物や食品の場合、
バイオテロ法に基づき貨物の到着前に、貨物情報を食品医薬品局に届けなければならない
のと同様に、船会社や航空会社のような輸送業者は米国へ船舶・航空機の出発の 24 時間前
に“どのような貨物を積むのか”という情報を米国税関に送付する必要がある(「24 時間ル
ール」と呼ばれている)。
そのため、船会社や航空会社は米国向けの貨物の引受けの時間を他の仕向け地向けより
早めに設定して、
「24 時間ルール」に対応している。たとえば、船便の場合、コンテナ貨物
の貨物締切は、船の出港の 1 日前にしているケースが一般的であるが、アメリカ向けの場
合は、「24 時間ルール」に対応するため 2 日前にするといった対応をしている。
米国では、このデータを貨物到着前にチェックし、危険度の高い貨物を洗い出すと同時
に、可能な限り輸出国からの出発前に、危険度の高い貨物は検査することを目指している。
日本では東京、横浜、名古屋、神戸が、この制度の適用港湾になっている(2006 年 3 月 15
日現在)。
<必要書類>
・申告書
・インボイス
・パッキングリスト
・B/L
・輸入ライセンス
・水産物の場合は衛生証明書
・野菜・果実の場合は植物検疫証明書
88
税関の状況
航空貨物の書類受渡
し場
検疫証明書の受付や
早期引取りを要望す
る書類受付
89
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