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アフリカの風雲児 ~英米新興独立系石油企業~ 本日のポイント
アフリカの風雲児 ~英米新興独立系石油企業~ 2008年2月20日 調査部 竹原 美佳 1 本日のポイント 2007年、Tullow Oilなど英米新興独立系 石油企業が、アフリカのガーナ、カメルーン、 ウガンダなど“意外な場所”で油ガス田を 発見。 -主にアフリカで事業展開している英米新興独 立系石油企業とは? 彼らの特異な事業展開は一見の価値あり。 -彼らの事業展開の特徴とは? 2 主にアフリカで事業展開している 英米“新興”独立系石油企業 100 90 80 1994年(英国) 70 50 参考 1986年(英国) 40 30 2004年(英国) ) 千 b / d 60 ( 生 産 量 20 2004年(米国) 10 0 0 2003年(米国) 100 200 300 埋蔵量2 P (MMbo e ) 400 500 600 中堅独立系石油企業 1934年(英国) Bowlevenの埋蔵量は2Pではなく、P50ベース、Kosmosは埋蔵量を2P、P50ベースのいずれも計上していないため、欄外。 Premier Oil(1934年設立、いわば旧来の英国独立系石油企業の代表格)は企業規模の参考として示した。 3 4 Tullow Oil 1986年英国で設立 ロンドン市場上場 欧州、アフリカ、東南アジアで活動 アフリカ:14ヵ国(コンゴ共和国、コ ートジボワール、赤道ギニア、ガボ ン、ナミビア他) 2006年の埋蔵量(2P)は5億600 万boe、生産量は約6万4720バレ ル/日 (生産量の6割、埋蔵量の8 割はアフリカに集中) 資産買収によりアフリカに傾注 (後述) 5 ガーナ深海における油田発見 z 2007年、ガーナ深海でTullow Oil、 Kosmos Energy、米Anadarkoが6月に Mahogany、8月にHyedua構造を相次いで発見。 z Mahogany、Hyedua構造はJubelee(歓喜)油田として一体開発する。 z 埋蔵量は、現時点の評価では5億バレル程度だが、企業は最大13億バレ ルに達すると見込んでおり、サブサハラ地域における過去10年来最大級 の発見と称されている。 〔油田が発見されたガーナ深海鉱区〕 〔油田発見後急騰したTullowの株価〕 Premier FTSE 250 6 http://www.tullowoil.com/tlw/ir/shareinfo/sharechart / Kosmos Energy 2003年米テキサスで設立、 非上場 アフリカ4カ国(ガーナ、ベニ ン、モロッコ、カメルーン)で 活動 生産中資産なし 2007年、ガーナ深海で Mahogany構造を発見 CEOならびに操業責任者 はカナダ中堅独立系石油 企業Triton Energy*出身 http://www.kosmosenergy.com *Triton Energyは2001年、米Amerada Hessに32億ドルで買収。 7 Bowleven 2004年米国で設立 2004年12月、ロンドンAIM上場 アフリカ2カ国(カメルーン、ガボン)で 活動、生産中資産なし 2006年の埋蔵量(P50):167百万boe 2007年にBowlevenはカメルーン沖合 MLHP-7鉱区でコンデンセートガス田 を発見。 埋蔵量:0.8Tcf 生産プラトー:コンデンセート 3 万 5,000 バレル/日、 天然 ガス 270MMcf/d 天然ガスは、赤道ギニアLNG液化プロ ジェクト(2期)に供給される見通し 8 カメルーン沖合におけるガス田発見 赤道ギニアLNG プラントサイト:ビオコ島 事業者:Marathon(60%)、 赤道ギニア国営 Sonagaz(25%)、三井物産 (8.5%)、丸紅(6.5%) 1期:340万トン/年は2007 年5月商業稼動開始 2期:440万トン/年は2010 年以降稼動開始予定 2007 年 1 月、カメルーン政 府は赤道ギニア政府と天然 ガス売買についてHOAを締 結。 9 Addax Petroleum 1994年英国で設立、カナダ・ロンドンで上場 アフリカ、中東で活動 アフリカ:3ヵ国(ナイジェリア、カメルーン、ガ ボン)2006年の埋蔵量(2P)は1億4,910万 boe、平均生産量は9万b/d 技術責任者はShell Nigeriaの元Chairman (2000年退職) 10 Afren 2004年英国で設立 2005年3月、ロンドンAIM市場で上場 アフリカ5カ国で活動 (ナイジェリア、ナイジェリア-サント メプリンシペJDZ*、コンゴ民主共 和国、ガボン、アンゴラ) 生産中資産なし。 2006年埋蔵量(2P):32.4百万boe 執行役員にShellの元チーフエンジ ニア、元OPEC議長のルクマン氏 を擁する。 *Joint Development Zone 11 英米新興独立系石油企業に見られる特徴 (1)英AIMやプライベート・エクイティ・ファンド からの資金調達 (2)大手、中堅石油企業出身者による起業、 あるいは執行役員への起用 (3)産油国政府との人脈 (4)資産・企業買収による成長 12 (1)英AIMやプライベート・エクイ ティ・ファンドからの資金調達 z AIM(Alternative Investment Market)市場 ロンドン証券取引所が1995年に創設した新興企 業向けの株式市場。上場基準は新興企業に 即した柔軟性の高いものになっており、資源 関連企業が多数上場。Oil & Gas企業では、 2008年2月現在93社が上場 -Afren、 Bowleven、その他Roc Oil、White Nileなど z 米プライベート・エクイティ・ファンド -Kosmos Energyは株式を公開しておらず、米 プライベート・エクイティ・ファンドのWarburg PincusならびにBlackstone系列のBlackstone Capital Partnersから資金を調達 13 14 (2)大手、中堅石油企業出身者によ る起業あるいは執行役員への起用 Tullow:Exploration Director(45歳)はShell出身者(ナイ ジェリア陸上沖合探鉱におけるGM経験者) Addax:技術責任者はShell Nigeriaの元Chairmanを務め た人物(2000年退職) Kosmos Energy:設立者でChairman兼CEOは中堅独立 系Triton Energyの元Chairman兼CEO 。操業責任者も Triton Energyの元Senior vice president(探鉱)、赤道ギ ニアにおける油ガス田探鉱開発のエキスパート。 Bowleven:操業責任者はBGならびにShellの出身者 Afren:執行役員にShellの元チーフエンジニア アフリカで長年石油開発に従事した、プロフェッショナル が脇をかため、戦略的な探鉱を実施 15 (3)産油国政府との人脈 z Afrenはアフリカにおける石油業界の重鎮Dr.ルクマン (OPEC元議長で、ナイジェリアのヤラドゥア大統領特別 顧問)を執行役員に擁し、同国における活動拡大を試み ている。 Dr. Rilwanu Lukman http://www.afren.com 16 (4)資産・企業買収による成長 Tullow Oil Energy Africa、Hardman Resources買収によりサブサハラに おける事業を拡大 Energy Africa:2004年5月、 3億2000万ユーロ(約5.7億ドル) 1996年に設立した南アフリカの独立系石油企業 アフリカ9ヵ国ならびに英領北海の資産を保有。 Hardman Resources: 2006年9月、 14.7億豪ドル(約11億ドル) アフリカ、中南米など9ヵ国で活動、開発資産は全てアフリカ(モーリ タニア、ウガンダ)。 買収後、自社戦略に合致しない資産は適宜ファームアウト コンゴM’Boundi油田資産売却:2008年1月、 4億3,500万ドル コンゴ共和国M’Boundi油田(オペレーターEni)の権益11%を韓国 KNOCに売却 17 参考:アフリカにおける資産買収 (1)Devon Energyの西アフリカ資産売却 z 2007年1月、Devon Energyはアフリカにおける保有資産の売却を公表。 z 同社は西アフリカ7ヵ国(ガボン、アンゴラ、赤道ギニア、コート ジボワール、ナイジェリア、アンゴラ、ガーナ)で資産を保有、 J.Sヘラルドの2007年1月時点の試算(最近のアフリカにおける資産買 収事例にもとづく)によると、埋蔵量は9,000万boe、資産売却価格は約 20億ドル相当の見込み z Devon Energyは売却の理由として、探鉱対象をメキシコ湾ならびに他 の深海に集中させるためとしている。 ガボン資産:2007年7月、オランダのOranje-Nassau Energie が取得 アンゴラ、ガーナ資産:2007年11月、Afren取得(合意) ナイジェリア:石油関連組織の再編のため、売却作業は中断 赤道ギニア: 2007年4月、赤道ギニア政府が購入に名乗り、 2008年上半 期に資産買収契約締結予定 コートジボワール:交渉中 (2)Woodsideのモーリタニア資産売却 z 2007年9月、 マレーシアPetronasは、豪Woodsideが売却したモーリタニ ア資産(生産中のチンゲッティ油田を含む)を4億1,800万ドルで取得 18 まとめ 高油価の下、英米新興独立系石油企業が ガーナ深海など、メジャーや中堅石油企業 が手を付けなかった地域で油ガス田を発 見している。 新興かつ企業規模が小さいながらも、ロン ドンAIM市場や プライベート・エクイティ・ ファンドによる資金調達を行い、大手や中 堅独立系石油企業出身者が起業あるいは 脇を固め、豊富な知見にもとづく戦略的な 探鉱を行う柔軟な事業展開は注目に値す る。 19