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学ぶ意欲を高め 確かな学力をはぐくむ 授業の創造

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学ぶ意欲を高め 確かな学力をはぐくむ 授業の創造
学ぶ力の育成
研究課題 授業改善
学ぶ意欲を高め 確かな学力をはぐくむ 授業の創造
∼ 個に応じた指導の充実した授業を通して ∼
札幌市立啓明中学校
Ⅰ
代表者 護摩堂
成
人
研究の目指しているもの
確かな学力をはぐく
むため、個に応じた
指導の充実を
1 研究のねらい
(1)学校教育目標の具現化から
1.将来に希望をもち、豊かな知性を磨く生徒
2.自分に厳しく、他を思いやる生徒
3.ねばり強く、心身をたくましくきたえる生徒
授業を通して生徒が学ぶ意欲を高め、よりよく生きるための確かな学力をはぐく
むことで、将来への希望や豊かな知性、ひいては粘り強く取り組む姿勢を育てるこ
とができると考えた。そのため、授業改善を通して学ぶ意欲を高めることで、確か
な学力をはぐくんでいくための研究を行うことを目的とした。
(2)今年度の学校運営の重点から
教科指導
① 基礎学力の定着が不十分な生徒に対する指導の在り方を工夫する。
② 学び方(少人数・ティームティーチングを生かしての、生徒一人一人と
しての、また、学級集団としての)の指導に、本校の特徴を生かした方
法を工夫する。
③ 生徒の「表現能力」「コミュニケーション能力」の向上を目指し、指導
方法を工夫する。
豊かな感性と論理的
な思考力・判断力を
はぐくむ
以上の重点から、基礎的・基本的な学力を定着させ、各教科で本来身に付けさせ
たい力(教科の本質に迫る力)を付けていくこと、「学ぶ意欲を高めること」が重
要となってくる。また、学習活動や人とのかかわりの中で、豊かな人間性と感性を
はぐくみ、健康な心身の育成を図ることも大切である。そのためには、生徒個人の
実態と教材の特徴に応じた指導の充実が図られ、「確かな学力のはぐくみ」を目指
すことが必要であると考えた。
(3)生徒の実態から
生徒の実態を調査する教師向けアンケートの結果や研修会での話合い、日常の授
業実践や校内生活を通して、教師の目から見た啓明中の生徒には、次のような傾向
が考えられた。
・明るく素直な生徒が多いが、相手の立場になって物事を考えたり、他に思いやり
の気持ちや寛容の心をもつことは、まだ足りない傾向が見られる。
・与えられた課題に対して落ち着いて取り組むことができるが、物事を論理的に思
考する力や判断する力、多様な見方・考え方や見通す力においては、まだ不足し
ている。
― 12 ―
・学習に対して目標をもつ力が弱く、自らを向上させようとする意欲は、十分とは
言えない。
以上の3点を、本校の生徒に身に付けさせたい力としてとらえた。
その上で、次のような力をはぐくむことが「確かな学力」をはぐくむことである
と考えた。
① 豊かなかかわりの中で感性を磨き、
心身ともに健康な生活を送ることのできる力
② 多様な見方・考え方、論理的思考力や判断力、物事を見通す力
③ 他に流されることなく主体的に課題を発見し、目標をもち解決に努力する力
個に応じた指導を通
じて確かな学力をは
ぐくむ
2 研究の仮説
研究のねらいを踏まえて、以下のように研究の仮説を設定した。
教科の学習活動において、個に応じた指導の充実した授業を実践することに
よって、生徒の学ぶ意欲が高まり、確かな学力をはぐくむことができるだろう。
(1)教科の学習活動において
各教科においては、指導事項の関連を検討する中で、生徒の発達段階や特性など
の実態を踏まえつつ効果的な指導に努め、教科として本来身に付けさせたい確かな
学力に迫る授業を構築することが大切である。また、TTや少人数指導等の効果的
な指導体制等を仕組み、「個に応じた指導」の充実を図ることも重要である。
(2)個に応じた指導の充実した授業
「個に応じた指導」とは、「生徒一人一人の実態に応じたきめ細やかな指導」で
ある。生徒一人一人がもっている性格、個性、特質に寄り添うことはもちろんのこ
と、生徒の学習過程(プロセス)に合った教材や指導方法の工夫で、生徒の内面に
位置付く学力が身に付くように指導することであると考える。
それには、「指導と評価の一体化」をすすめ、単元の初めに行う事前調査などで
現在もっている生徒の学力を見極め、全体的な傾向とその分析状況を意識するとと
もに、一斉授業における実態を把握した指導計画を作ることが重要である。また、
単元や学期終了時に、生徒の書いた学習教材、ノート等、生徒の力が表現されてい
るものを評価し、それをフィードバックするとともに、生徒による学習の「ふりか
えり」を行うことで、学習による力の高まりを自覚することができると考える。さ
らに、教師が単元の観点等の目標に照らした生徒個々の到達度の「ふりかえり」を
通して、個に応じた指導に役立てていくことが大切である。
こうした個による「ふりかえり」によって、学ぶ意欲の高まりを自覚することが
できると考える。1時間の授業や単元、学年末、さらに中学校3年間の自分の学び
を振り返り、内容はもちろんのこと、学ぶ意欲の高まりや確かな学力のはぐくみを
自覚していくと考える。
Ⅱ
研究の内容
豊かな表現とふれあ
いを通して確かな学
力を
1 平成17年度の概要
(1)ねらい
豊かな表現とふれあいを通して、互いに高め合う生徒を育む教育の実践
∼表現活動と相互評価を軸とした総合的な学習と教科指導のあり方∼
授業を通して様々なふれあいや、基礎・基本に裏打ちされた表現活動を位置付け
ることで、ふれあいの深まりと表現力の向上、基礎・基本の定着、ひいては望まし
い人間関係の形成にもつながると考えた。
― 13 ―
話し合い、発表、自
己評価を重視した理
科の授業
反省カードの成果と
来年度の課題
「ふりかえり」を通
して個に応じた指導
を充実させる
また、表現活動を互いに認め合う相互評価を取り入れることで、表現力がさらに
向上し、生徒自らの資質を高め、将来につながる「生きる力」「確かな学力」をは
ぐくむことになるものと考えた。
(2)教科の学習での実践
研究テーマをもとに、理科の授業実践を行った。
単元:
「化学変化と原子・分子」
研究テーマから学習の視点として次のとおり設定した。
・発表する、書く、自己評価する
・話し合う、教え合う、助け合う、他者のよいところを学ぶ
グループで話し合い、教え合い、助け合うことで自分の考えを表現し、授業で互
いに高め合うことで、基礎・基本の定着や確かな学力を身に付ける手段とできると
考えた。
さらに、日付と「授業でわかったこと」「わからなかったこと」「先生への伝言」
を記入する自己評価プリントを毎回授業の始めに配付し、終わりに回収することで、
生徒に授業を振り返らせた。
(3)成果と課題
毎時間の反省カードの提出で、生徒個人の考えが出せるようになったことは、研
究のねらいにおける「豊かな表現」という部分で成果であった。また、生徒にとっ
ては、反省カードを通して授業の内容をもう一度確認できたことで、基礎・基本の
定着にも役立った。教師にとっても、それぞれの生徒の理解の度合いを把握する資
料とすることができたことから、今後、「ふりかえり」の研究を行っていく必要が
あると確認された。さらに、発表の際にホワイトボードを使うことにより、ただ考
えてまとめるよりも、自分たちの考えの違いが明確になり、よりよい発表になった。
しかし、相互評価、考察、思考の各場面が不足していたことや、学習課題の設定
が不十分であったことから、生徒一人一人の考えを十分に引き出すことができなかっ
たことなどが課題となった。
次年度へ向けては、個々の生徒が授業を通して学ぶ意欲を高め、より積極的に学
習を進め、思考していくような教科での指導が必要であり、生徒が思考をする上で
土台となる、基礎・基本のさらなる定着も重要であると考えた。その上で、個々の
生徒の実態に応じた指導を充実させていくことにより、思考力・判断力を高め、ひ
いてはお互いに学びを深めていくことができると考えた。
2 平成18年度の概要
(1)ねらい
学ぶ意欲を高め 確かな学力をはふぐくむ 授業の創造
∼個に応じた指導の充実した授業を通して∼
前年度の研究を通しての成果と課題から、平成18年度から研究テーマを変更し、
教科の授業を中心とした研究を重点に置いた。
基礎・基本の確実な定着を図り確かな学力をはぐくむためには、生徒が意欲的に
学び、問題を解決していく力を身に付けていくことが大切と考えた。生徒が本来もっ
ている「学びたい」という意欲を、教科の中から刺激することが大切であり、その
ためには個に応じた指導を充実させることを通して実現できると考えた。
(2)教科での実践
研究テーマをもとに、保健体育科の実践を行った。
単元:
「器械運動(とび箱運動)
」より台上前転
個に応じた指導を充実させるため、保健体育科では以下の点に留意して授業作りを行った。
― 14 ―
習熟度別グループと
「ふりかえり」用紙で
個に応じた指導
学ぶ意欲・個に応じ
た指導のさらなる明
確化を
① つまずきの丁寧な把握と援助
② 相互評価の有効的活用
③ 個々の能力に適した学習課題設定への支援と意識化に向けた指導援助
最初に本時の課題を生徒に
示し、生徒に本時の目標を考
えさせた。このことにより、
生徒が授業に対する目標をも
つことができ、意欲につながっ
ていくものと考えた。
さらに、授業の途中で学習
カードを配付することで、個々
の生徒が自分の実技を客観的に振り返ることができ、 A 7段で飛べる
自分の実技に対する目標をさらに確実なものとする B 6段が飛べる
5段が飛べる
ことができた。このことにより、生徒の学習意欲を
C 4段が飛べる
高めることができた。
D 3段が飛べる
また、個々の生徒が自分の実技の到達度を自分で評 E 補助付きで何とか飛べる
価し、5つのレベルにグループを分けて実技を行った。
どうやったらより高い実技を身に付けることができるか生徒同士が話し合い、お
互いの技を観察し合って工夫を行うことができた。特に、Eグループではお互いに
補助をし合いながら技術の向上に努めるとともに、より高い技能をもったグループ
を参考に、自分たちの技能をより高める参考にすることもできた。
このような習熟度別でグループ分けをすることにより、生徒同士が協力しながら
技術の向上を図ることができ、生徒の学習意欲向上に役立った。また、教師が個々
の生徒の到達度をより容易に見とることができ、より個に応じたきめの細かい指導
を充実させることができた。
(3)成果と課題
平成18年度の研究では、個々の生徒に応じたきめの細かい指導をすることで、生
徒の学ぶ意欲を高め、確かな学力をはぐくむ授業を創造することができたと考える。
特に、保健体育科の研究授業を通しての成果としては、第一に、個々の生徒が明
確に授業の目標を把握することで、生徒の学ぶ意欲を高めることができたことが挙
げられる。第二は、グループ学習等を通して個々の生徒に対してきめの細かい指導
をするきっかけを作ることができたことであり、第三は、授業を振り返ることによ
り、改めて目標と照らして自分の到達度を確認することができ、次の学習の課題を
明確に把握することができたこと、個々の生徒が自分の変容をとらえることができ
るから学習への意欲を高めることができたことである。
また、グループ分けを行うことで、生徒同士が相互評価をし、協力し合って授業
に取り組むことで学ぶ意欲を高めることができたこと、グループ分けをすることに
より教師もよりきめ細かく生徒の到達度を見とることができるようになり、個々の
生徒に対してより細かく基礎・基本の充実を図ることができたことも成果である。
来年度へ向けて、確かな学力をはぐくむためにより個に応じた指導の追求が求め
られた。学ぶ意欲を高めることについても、「学ぶ意欲」とはどのようなことなの
か、具体的にどのような方策をとっていくことが必要なのかが課題としてあげられ
た。また、個々の生徒が授業を振り返る場合でも、「ふりかえり」を行う目的をよ
り明確にしていくことや、「ふりかえり」を行う時期やタイミング、方法について
より検討をしていくこと、さらに、「個に応じた指導」そのものも、教材を通して
追求していくべきか、指導形態を通して追求していくべきかなどについて、明確に
していくことも課題としてあげられた。
― 15 ―
3つの分野でグルー
プ別に研修
少人数グループを活
用したTTの授業
3 平成19年度の概要
(1)ねらい
昨年度の研究を受け、平成19年度も研究主題・副主題は変更せずに学ぶ意欲を高
め確かな学力をはぐくむために、教科を中心とした研究を進めることとなった。
昨年の研究授業等の成果をふまえ、研究成果を整理する形で、以下の3つの分野
の視点が必要と考えた。
① 個に応じた指導の工夫
② 学ぶ意欲を高めるための工夫
③ ふりかえりの工夫
「個に応じた指導の工夫」グループでは学ぶ意欲を高め、確かな学力をはぐくむ
ため、生徒一人一人の興味・関心や到達度をふまえた指導を行い、個に応じた指導
形態を追求するものと考えた。TTや習熟度別学習、グループ学習や個人での作業
等で個々の生徒の実態に即した授業を展開できるような形態の研究を目指した。
また、「学ぶ意欲を高める工夫」グループでは、個々の生徒の違いを超え、生徒
の興味・関心を引き出し、学ぶ意欲を高める工夫をいかに行うか、授業の方法・内
容についての研究を目指した。
「ふりかえりの工夫」グループでは「ふりかえり」用紙を工夫することで、生徒
や教師が授業での到達度を把握し授業改善を行い、生徒が目標を明確にすることで
次の学習への意欲をもてるような研究を目指した。
(2)個に応じた指導の工夫
個に応じた指導を充実させるために、授業形態についての研究を行った。授業形
態としては以下のものが考えられる。
① 一斉指導
② 個別指導
③ グループ別指導
④ ティーム・ティーチング
数学科によるティーム・ティーチングとグループ別指導を取り入れた授業を行っ
た。グループ別指導を取り入れることにより、生徒同士が高め合うだけでなく、少
人数グループの指導をティーム・ティーチングで行うことで、個に応じた指導を充
実できると考えた。
研究授業は以下の単元を題材に扱った。
単元:「比例、反比例の利用」
グループによる課題解決学習をティーム・ティーチングの指導形態で扱った。課
題を3つ設け、1グループ4名で課題を選択させた。課題の解決後、それぞれのグルー
プに話合いの成果を発表させた。
学習状況の異なった生徒同士が課題を追求していく過程で、話合いを行い、様々
な見方や考え方に触れることを通して、一人では到達し得ない多面的な見方や考え
方などをはぐくんでいくことができると考えた。さらに、グループを少人数にする
ことで、一人一人の生徒が発言をしやすくなり、様々な発想や考えをより効果的に
話し合うことができるものと考えた。これは、教師が個々の生徒の考えや見方をよ
りよく見とることにつながり、より個に応じた指導を充実させることができる。
課題の把握は1つの教室で一斉指導として行い、それぞれのグループで課題を選
択後、2つの教室に分かれてグループ学習を行った。2人の指導者がそれぞれの教室
に別れ、グループをまわり指導を行った。
グループは課題をよりよい方法で解決するための話合いを進めた。課題別に2つ
の教室にグループは分かれ、指導者もそれぞれの教室に別れた。指導者は一つ一つ
のグループの話合いに参加しながら、解決の方法を既習の知識や技能を活用したり、
数学的な表現、比例の特徴を利用して表現するよう指導を行った。
それぞれのグループでは課題に対して様々な疑問や考えがでて、より考え方や見
― 16 ―
相互評価による学ぶ
意欲を高める工夫
「ふりかえり」用紙
を活用して、学ぶ意
欲の向上と個の把握
方を深めることができた。グループでの学習では学ぶ意欲を高めるとともに、基礎・
基本の定着が図られ、確かな学力をはぐくむことが確認された。
また、少人数グループに対するティーム・ティーチングを行うことで、より個々
の生徒に即したきめ細かい指導を行うことができた。少人数グループのため、生徒
はより自分の意見や考えを発表しやすくなり、指導者が個々の生徒の考えや変容を
より見とりやすくすることができた。主−副の関係でティーム・ティーチングを行
うのではなく、課題解決のためのグループを対等に指導することによって、指導す
るグループを減らし、一つのグループに対しより多くの時間をかけることにより、
より個に応じた指導ができたものと考える。
(3)学ぶ意欲を引き出す工夫
学ぶ意欲を引き出す工夫のために、授業方法・教材等についての研究を行った。
学ぶ意欲とは、自ら進んで学習に取り組もうとする気持ちや態度ととらえた。単に
新たな知識や概念を取り入れ「理解」するのではなく、目的意識をもって吸収した
情報を自分なりに考え、作り上げることができたとき、生徒は「学ぶことができた」
と実感することができる。このような実感を基にして、学習内容それ自体のおもし
ろさを感じることこそが学ぶ意欲につながるものである。それは「やってみたい」
「気になる」
「おもしろそうだ」「不思議だ」
「うまくやれそうだ」という生徒の思い
に裏付けられたものであると考えた。
「学ぶ意欲を引き出す工夫」として以下の3点を考えた。
① 興味・関心を引き出す工夫
② 疑問や課題を引き出す工夫
③ 「努力を要する」と判断される生徒に配慮した授業の工夫
音楽科では混声三部合唱「旅立ちの日に」を題材として、パート練習を通してよ
り質の高い合唱を目指す実践を行った。パート練習を行った後、各パートで練習成
果の発表を行った。他のパートの生徒は発表を聞き、コメント用紙に発表に対する
アドバイスを記入し、どのようなアドバイスをするかを話し合わせた。
自分たちの歌を相互評価することで、合唱をよりよくするための課題の発見と、
次の練習への目標ができ、意欲を高めることができた。また、生徒同士の相互評価
の際に、教師が歌のよい点、改善点と練習方法をアドバイスすることで生徒の課題
はさらに明確になり、意欲的に学習に取り組むことができた。
授業実践を通して、導入の部分で個々の生徒に「なぜだろう」「やってみたい」
という学習への興味・関心をもたせることや、相互評価や教師による適切な評価を
通して、生徒に学習への意欲をもたせることが非常に重要であることが確認された。
また、導入部分で意欲を引き出すだけではなく、教材そのものの楽しさにふれるこ
とにより、生徒の「学びたい」という意欲を継続させていくことの重要性も確認さ
れた。
(4)振り返りの工夫
振り返りの工夫を行うために、
「ふりかえり」用紙を使用しての生徒による自己評
価の研究を行った。
「ふりかえり」用紙による自己評価で以下の3つの点を期待した。
① 生徒の達成度や変容を見とる
個々の生徒が目標に対してどの程度到達し、基礎・基本が定着したかを把握す
る。また、生徒が授業を通してどのように変容したかを把握する。そして、到達
度が不十分な個々の生徒に対しての手だてをとるための資料とする。
② 生徒の自己評価
授業で到達したこと、まだ不完全なことを自己評価を通して生徒が把握し、次
の授業への目標を明確に認識することで、生徒の学習意欲を高めるものとして使
用する。
― 17 ―
「ふりかえり」用紙
を通して「C」評価
生徒の指導が課題
Ⅲ
③ 教師の指導の改善
「ふりかえり」用紙をもとに個々の生徒の到達度や授業を通しての変容を見と
り、次の授業の改善を図るための資料とする。
「ふりかえり」用紙には以下の共通要素をもつものとした。
・本時の目標・内容があらかじめ書かれているか、記述するようになっている
・ABCから選択する自己評価欄がある
・本時を通してわかったことを記述する欄がある
・本時でわからなかったことを記述する欄がある
・教師のチェック欄がある
「ふりかえり」用紙を毎回書
かせることは、個々の生徒の到
達度を把握するには有効な手段
だった。授業で教師が把握しき
れなかった生徒の到達度や変容、
考え方などを把握することがで
【「ふりかえり」用紙】
きた。また、クラス全体の傾向
もつかむことができ、教師の指導についての反省にもつながり、授業を改善してい
くための手段として有効なものと確認できた。
生徒も「ふりかえり」用紙に記入し、授業の内容を振り返ることにより、学習内
容を自分なりに整理でき、学習内容をより定着させることもできた。また、目標を
明確にすることで、到達度を生徒自身が把握することで次の目標をもつことができ、
学習意欲を高める結果ともなった。
授業への意欲についての自己評価に関しては、目標に対する到達度を自己評価す
るものにした方がより有用な「ふりかえり」用紙にすることができると考えられる。
そうすることで、自己評価で「C」をつけた生徒への指導をすることができ、より
個に応じた指導や学習意欲を高める事につながるものと期待できる。
毎時間の授業・全てのクラスで「ふりかえり」用紙を記入させ、それを教師が全
てチェックすることの時間的な難しさも浮き彫りとなった。生徒の記述に対し、可
能な限り教師がチェックをし、コメントを記入していくことが生徒の学習意欲を高
め、基礎・基本の確実な定着へとつながる上で非常に重要なことであることが確認
されたが、全ての生徒に対して行うことは限られた時間の中で非常な困難を伴う。
単元ごとに行う「ふりかえり」も重要であるが、年間計画の中に「ふりかえり」
を位置付け、単元ごとの「ふりかえり」と、毎時間の「ふりかえり」を使い分ける
必要があると考える。
研究の成果と課題
指導形態の工夫によ
る確かな学力のはぐ
くみ
1 研究の成果
(1)基礎・基本の確実な定着を図り、確かな学力をはぐくむための指導形態
基礎・基本を定着させ、論理的な思考力や判断力を身に付け、身のまわりの諸事
象についてより深く多面的に判断し、課題をより適切に解決する、そのために自ら
進んで学びを進めていくことは、よりよく生きていくための力であると考える。
基礎・基本の定着や論理的な思考・判断力、自ら進んで学んでいく力は、個に応
じたきめの細かい指導を実施することではぐくまれていくものであると確認できた。
少人数指導やティーム・ティーチングを通して個々の生徒の興味・関心や到達度
により即した指導を展開することができた。
また、グループ学習と課題解決学習を通して、様々な意見や考え方・見方を生徒
― 18 ―
指導方法の工夫によ
る学習意欲の向上
相互・自己評価を通
して指導と評価の一
体化
生徒が学び合いを進
める場の設定を
【参 考 文
献】
同士が交流することで、個々の生徒の考えを多面的にすることができ、より深く論
理的な思考を促すことができた。教師もグループ学習を通じて、そのようなより深
く論理的な思考を援助する指導も展開することができた。
(2)学ぶ意欲を高める工夫を通して確かな学力をはぐくむ指導方法
授業を通して自ら進んで学んでいく力をはぐくむために「なぜだろう」「気にな
る」「不思議だ」といった、既習の知識の基礎・基本を土台とした上での疑問が大
切であることが確認できた。既習の知識をもとにした課題を設定することで、生徒
の「なぜだろう」といった疑問を引き出すことができ、それを学ぶ意欲へとつなげ
ていくことができた。
グループ学習では生徒同士が協力し合い、考えを深めていく作業を通して多面的
な見方をすることができ、生徒の学ぶ意欲を高めることにもつながった。また、生
徒同士が評価し合い、教師がアドバイスをすることを通じて次の課題が明確になり、
さらに学んでいこうという意欲を高めることもできた。
(3)相互評価や「ふりかえり」を通しての指導と評価の一体化
授業改善を行うために、個々の生徒の到達度やつまずきを把握することは重要な
ことである。そのための方策として、「ふりかえり」用紙の活用は有効であった。
教師は「ふりかえり」用紙から個々の生徒の到達度を把握・評価することができ、
次の授業への改善策を考える資料とすることができた。生徒も「ふりかえり」用紙
を記入することにより、授業の目標を明確にとらえ自己評価することができ、課題
意識の高まりや意欲付けへつなげることができた。また、相互評価を通して、生徒
が互いに学び合い深め合うことができた。
ここで大切なことは、単に生徒が感じたことを評価し合うのではなく、そこに教
師による評価を加えていくといった指導上の工夫である。そうすることで、生徒が
より高いものを目指していく意欲につながり、生徒同士でより高め合っていくこと
ができると考える。
2 今後の課題
授業改善へ向けてより具体的な手だてを追求する方向で3カ年の研究を進めてきた。
そのため、3年次では「個に応じた指導」「学ぶ意欲」「ふりかえり」の3点をグループ
化して研究を進めた。しかし、この3点はそれぞれ別個にあるのではなく、授業に対
して相互に関連し合っているものである。研究の中でも3つの視点がかかわっており、
今後3つの視点を統合し、全体を見通した研究を進めていく必要がある。
また、生徒同士が学び合うことで、多様な思考や判断を身に付けることができ、思
考力や判断力を高めることができることが確認されたが、今後、生徒同士が学び合う
場の設定をしていくための方策を研究していく必要がある。
さらに、生徒同士の学び合い・高め合いを進めていく上で、課題の質が重要とされ
ることが確認できたが、生徒同士が学び合いを進めていくことができる課題、生徒の
「なぜだろう」
「不思議だ」という疑問を引き出し学びの意欲を高めるための課題、よ
り深く多面的に追求していくための課題など、課題そのものの価値を問う研究も必要
である。
・「校内研究運営実務百科」校内研究運営実務研究会編 第一法規
・「学力を育てる“教師力”の向上」工藤文三編 教育開発研究所
・「
「個に応じた指導」を実践から学ぶ」工藤文三編 教育開発研究所
・「学ぶ意欲を育てる学校づくり」奈須正裕編 教育開発研究所
・「学力を伸ばす指導法」野原明 教育開発研究所
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