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交通情報提供とその効果 最終発表 京都大学 経済学部 経済学科 文 世一 ゼミナール 福島 彬仁 藤槻 智博 松田 祐作 平成22年1月18日(月) 本日の発表 • 第1章 VICSの仕組み • 第2章 VICS利用モデル • 第3章 最適交通量配分のためには 本日の発表 • 第1章 VICSの仕組み • 第2章 VICS利用モデル • 第3章 最適交通量配分のためには VICSとは?(1) • 道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System) • 財団法人道路交通情報通信システムセンター (VICSセンター)が情報を収集、処理、送信 • 車側で受信、カーナビゲーションなどの車載装置 に文字や図形(地図など)として表示 VICSとは?(2) • 提供される情報は渋滞情報、所要時間、事故・故 障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車 場の位置、駐車場・サービスエリア・パーキングエ リアの満車・空車情報など。 • VICS対応カーナビゲーションなど車載装置の画 面を通じて情報が表示される VICSの種類 • VICSの通信・放送メディアは数種類 – 電波ビーコン(3,005基) – 光ビーコン(31,853箇所) • 電波・光ビーコンの受信には、カーナビに別途ビー コンユニットを取り付ける必要あり – FM多重放送(基幹局53局、中継局465局) – 地上デジタルラジオ(※現在は終了) 電波ビーコン • 高速道路路側に設置された発信器から、情報を 電波で発信し、そこを通過した車が受信(前後 70m程度で受信可能) • 進行方向の高速道路とその周辺道路の情報を提 供 光ビーコン • 一般道路の路側に設置された発信器から、情報 を赤外線で発信し、その直下を通過した車が受 信 • 主に進行方向の道路情報を提供 FM多重放送 • NHK-FMラジオの電波を用いて情報を発信 • 5分間に2回発信される • 受信している都道府県の情報と、その隣接県との 県境近辺の情報を提供 交通情報の収集 • 都道府県警察、道路管理会社 ↓情報収集 • 日本道路交通情報センター ↓情報提供契約 • VICSセンター ↓情報を編集、選別 • FM放送局、各ビーコン 情報収集の方法(1) • 超音波式車両感知器 – 路側に設置。直下の車の通過台数と速度を測定 • 光学式車両感知器(光ビーコン) – 路側に設置。直下の車の通過台数を測定 – VICS情報発信器としても利用(前述) 情報収集の方法(2) • 旅行時間測定システム(Tシステム) – 道路上の2地点にCCDカメラを設置し、通過車両 のナンバープレート情報を抽出 – 同一車種の通過時間差から地点間所要時間を 測定 VICSの経済効果 • VICSセンターは次のように公表 – 渋滞損失時間改善効果:年間7,500億円 – CO2削減効果:年間214万トン – ガソリン資源消費節約効果:年間80万㌔㍑ (VICSセンター[2008]「平成19年度事業報告 書」) VICSの問題点(1) • 隣接県の情報が不十分 – FMVICSは都道府県単位のため、隣接県の情報 が十分には表示されない • 測定そのものの精度 – 路側感知器が駐車車両等に反応して渋滞と認識 するケースが報告されている(Wikipedia「道路 交通情報通信システム」) VICSの問題点(2) • 走行時点ではなく、現時点での情報 – 情報受信時点では渋滞していたが、走行時点で は解消していたケース – 逆に情報受信時点では渋滞はなかったが、走行 時点では渋滞していたケースなどがある 本日の発表 • 第1章 VICSの仕組み • 第2章 VICS利用モデル • 第3章 最適交通量配分のためには VICSによる情報提供の効果? • 走行時間の短縮? • 普及率は高いほど良い? • 更新頻度高いほど良い? シミュレーションモデル(1) • Ⅰ、Ⅱの2地点間を2つの道路A,Bが結んでいる – Aは幹線道路を想定。走行時間yは5分間の通過 台数xに対して、y=20+0.1xと定義 – Bは幹線ではない道路を想定。同様に、 y=40+0.2xと定義 – 所要時間は、5分間の通過台数により決定 シミュレーションモデル(2) • VICSは、直前の情報更新サイクルにおける、所 要時間の少ないルートを最短時間ルートとして指 示するシステムとして再現する • VICS非搭載車両は常にAを選択 • VICS搭載車両はVICSの指示に従う シミュレーションモデル(3) • 2ルートの所要時間が等しいときはVICS搭載車 両の半数をA、もう半数をBに割り振る。 • 情報更新サイクルは5分、10分、20分の3パター ンを設定 • 情報更新頻度と、VICS普及率が、総所要時間・ 台に及ぼす影響を調べる シミュレーションモデル(4) • 例えば… – 更新サイクル5分 – 最初の5分で400台が通過、全てAルートを選択 – 最初の5分の所要時間はAが60分、Bが40分 – よって次の5分間に走行したVICS搭載車両はす べてBルートを選択する 非搭載車両はこれに関わらずAを選択 シミュレーションモデル(5) • 今回のシミュレーションでは、 初めの5分間から順に、 100、150、200、250、300、350、350、300、250 、200、150、100台、1時間で計2700台の車が通 行したと仮定する 普及水準と所要時間・台 情報更新頻度・VICS普及率 と 総所要時間・台 170000 総 160000 所 要 時 150000 間 ・ 台 140000 分 ・ 台 130000 ( • 普及率の上昇と共に 所要時間・台は一定水 準まで減少 • その後緩やかに上昇 180000 ) VICS無しの場合の 総所要時間・台 120000 110000 0% 20% 40% 60% 80% VICS普及率 5分 に1回更 新 10分 に1回更 新 20分 に1回更 新 100% 最適普及水準 情報更新頻度・VICS普及率 と 総所要時間・台 170000 総 160000 所 要 時 150000 間 ・ 台 140000 分 ・ 台 130000 ( ) • 最適普及水準は 11.1%(5分に1回更新の場合) 12.8%(10分に1回更新の場合) 16.0%(20分に1回更新の場合) • 46.3%(5分に1回更新の場合) 以上普及すると、0% の状態より時間が増加 180000 VICS無しの場合の 総所要時間・台 120000 110000 0% 20% 40% 60% 80% VICS普及率 5分 に1回更 新 10分 に1回更 新 20分 に1回更 新 100% 更新頻度と所要時間・台 情報更新頻度・VICS普及率 と 総所要時間・台 170000 総 160000 所 要 時 150000 間 ・ 台 140000 分 ・ 台 130000 ( ) • 更新頻度により、普及 水準と所要時間・台の 関係に違いが見られる • しかし必ずしも更新頻 度が高ければ時間が 少なくなるわけではな い 180000 VICS無しの場合の 総所要時間・台 120000 110000 0% 20% 40% 60% 80% VICS普及率 5分 に1回更 新 10分 に1回更 新 20分 に1回更 新 100% まとめ(1) • 普及水準の上昇に伴って、総所要時間・台ははじ め減少するが、その後緩やかに上昇に転じる • 普及率がある水準を超えると、VICSが存在しな い方が所要時間・台が少なくなる場合もある • 更新頻度と所要時間・台に明白な正・負の相関は 見られない まとめ(2) • 以上のことから、現状のVICSによる情報提供だ けで最適交通量配分を実現するのは困難であ り、他に何らかの施策が必要である 問題点(1) • 幹線道路(ここではA)渋滞時に、VICS搭載車両 がすべて非幹線道路(B)に流れてしまうため、結 果的に所要時間が増大してしまったと考えられ る。 道路構造の格差が少ない場合 • 幹線道路(A)と非幹線道路(B)の格差が少ない 場合を想定し、Bの所要時間関数をy=0.12x+20 に変更 • その結果、最適普及水準は45.4%に上昇した(更 新頻度5回の場合) 問題点(2) • 時間差のある情報による誘導 – 最短時間ルートの選択は、直前の所要時間から の推定であり、実際の所要時間とは乖離 – VICS指示とは異なるルートを選択した方が所要 時間が短く、2ルートが交互に渋滞するケースも 発生 ➢ • 例:2ルートが交互に混雑 東名高速で発生が観察(大口・佐藤・鹿田[2005]) 本日の発表 • 第1章 VICSの仕組み • 第2章 VICS利用モデル • 第3章 最適交通量配分のためには 最適交通量配分のために • 混雑税、道路有料化 • VICS利用に対する補助・課税 • ITS発展による新しい可能性 混雑料金 • 混雑料金の導入 – 時間帯別料金制度 • 日本の高速道路ではETC搭載車の み、時間帯別割引制度を導入 • 海外では時間帯によって料金設定が異 なるケースもある 導入事例① • アメリカのカリフォルニア州の道路SR91 – 混雑の度合に応じて、時間帯ごとに1~4.75 ドルの料金が設定 – ETCで精算 • 同I-15 – 混雑の状況をモニターし、6分間隔でリアル タイムに料金が変化 導入事例② • 仏コフィルート高速道路会社 – 混雑度合に応じて4つの時間帯を設け、混雑が 激しい時間帯の料金を高く、空いている時間帯 の料金を安く – その結果、混雑が激しい時間帯の交通量が約 12%減少、それ以外の時間帯の交通量が約6 ~10%増加した。 日本 • 日本の都市高速道路は均一料金制度を採用 – 全出口・入口毎に料金所をおく必要が無いとい うメリット • ETCの活用による距離別・時間帯別の料金制度 を実現できる可能性がある VICS利用に対する補助・課税 • 三好・谷下[2008]では、VICS利用に対して課税を 行うことで最適普及水準に抑える分析がなされて いる。 ITS発展による新たな可能性 • 技術革新によるITSの発展によって道路交通情報提供のタ イムラグは改善する可能性がある – Exp.携帯電話、PHSとインターネットを利用し、より きめ細かい情報を取得できるホンダ、パイオニアの 「スマートループ」 • またより正確な需要予測を可能にする新たな技術とETCの 普及によって、混雑税や道路有料化などの政策がより効率 的に機能するようになると言える 終わり • 当初、VICSの普及水準が上がれば厚生が高ま ることを前提に、VICS普及のための政策につい て話を進める予定だったが、 普及水準の上昇が必ずしも厚生を高めないこと が明らかになるという結果になった。 • VICSだけで最適交通量配分を実現するのは困 難である 関係機関 • 国土交通省道路局ITSホームページ – http://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/ • (財)道路交通情報通信システム(VICS)センター – http://www.vics.or.jp/ • (社)新交通管理システム協会(UTMS) – http://www.vics.or.jp/ 参考文献(1) • 第1章 – Wikipedia、「道路交通情報通信システム」、 http://ja.wikipedia.org/wiki/道路交通情報通信システ – UTMS、「交通管制システムの構成」、 http://www.utms.or.jp/japanese/cont/syusyuu/i ndex.html 参考文献(2) – IT Pro、2007年1月26日、 「渋滞,事故情報を収 集,配信『神奈川県警の交通管制センター』」、 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/200701 – 徳島県警、「交通管制センター」、 http://www.police.pref.tokushima.jp/06syoukai /kanseicenter.html – VICSセンター、「平成19年度事業報告書」、 http://www.vics.or.jp/center/pdf/2007_07.pdf 参考文献(3) • 第2章 – 大口敬・佐藤貴之・鹿田成則[2005] 「渋滞時の代替経路選択行動に与える交通情報 提供効果」 http://www.comp.tmu.ac.jp/ceeipogc/ppr/05ipr ev22-oss_w.pdf – 三好 博昭・谷下 雅義[2008] 「自動車の技術革新と経済厚生―企業戦略と公 共政策の効果分析」、白桃書房、p75~113