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通貨市場の動向 2014年第3四半期

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通貨市場の動向 2014年第3四半期
通貨
通貨市場の動向
2014年第3四半期
2014年10月6日
Sandra Ro
Bluford Putnam
エグゼクティブ・ディレクター
チーフ・エコノミスト
通貨調査・商品開発部
調査・商品開発部
011 (44) 203-379-3789
+1 212-299--2302
[email protected]
[email protected]
2014 年第 3 四半期(7~9 月期)の通貨市場で最も注目されるのは、米ドル(USD)がほとんどの
主要通貨や新興国通貨に対して上昇したことです。このドル高の要因として、1~3 月期に悪天候で
低下した米国の国内総生産(GDP)が好転し、経済見通しが改善したこと、そして労働市場が引き
続き成長していることが挙げられます。
本レポートでは、各国の経済成長や金融政策、経常・資本収支の変化に注目し、その根底にあるマク
ロ経済要因について検討します。また、いわゆるキャリートレードや購買力平価説が通貨市場に与え
る影響についても取り上げます。
私たちはさまざまな通貨の動向を追っていますが、本レポ
FOMC が予想する GDP 成長率は、2014 年が 2.1~2.3%増、
ートで取り上げるのは、主に CME グループで高い流動性を
2015 年が 2.6~3.0%増です。この数字は、6 月に発表され
維持している通貨先物が対象とする通貨です。具体的には、 た見通し(2014 年が 2.1~2.3%増、2015 年が 3.0~3.2%
米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、日本円(JPY)、英ポ
増)から下方修正されています
1
。
ンド(GBP)、スイスフラン(CHF)、カナダ=加ドル
失業率は 2014 年 9 月に、ついに 5.9%まで下がりました
(CAD)、オーストラリア=豪ドル(AUD)、メキシコペ
(前月は 6.1%)。この改善は FOMC の予想よりも若干速
ソ(MXN)になります。
いペースです。FOMC では、失業率が 2014 年末までに
また、ブラジルレアル(BRL)、ロシアルーブル(RUB)、 5.9~6.0%、2015 年末までに 5.4~5.6%になると予想し
インドルピー(INR)、中国人民元(CNY)といった、私
ていました。しかも、これは引き下げた修正値です。その
たちが特に関心を寄せている新興大国の通貨についても検
前には、それぞれ 6.0~6.1%、5.4~5.7%と予想していま
証しましょう。
した
。
経済成長と雇用
GDP変化率(四半期)
6%
2014 年 7~9 月期の米国経済は、失業率の改善が緩やかに
なり、穏やかな成長となりました。中東情勢やウクライナ
11%
4%
10%
2%
9%
0%
8%
-2%
情勢など、国際的な緊張の高まりが続くものの、米国株の
7%
-4%
実質GDP(季節調整済み)
Q1 14
Q2 13
Q3 12
Q4 11
Q1 11
Q2 10
Q3 09
いえるでしょう。
Q4 08
4%
Q1 08
5%
Q2 07
-8%
-10%
Q1 05
ィリティが維持された株式という、平穏な四半期だったと
6%
Q3 06
金利、やや強いドル、そして総じて強含みのなか低ボラテ
-6%
Q4 05
下げは比較的小幅となっています。7~9 月期は、安定した
失業率
米国の経済成長と雇用
2
失業率
出所:米経済分析局(BEA)、米労働統計局(BLS)
GDP 成長率は、4~6 月期に 4.6%増となり、天候の影響を
受けて 2.1%減に落ち込んだ 2014 年 1~3 月期から大幅に
改善しました。しかし 7~9 月期は、FOMC(米連邦公開市
場委員会)が 9 月 16、17 日の会合で GDP 成長率予想を下
1
る、2014年9月の経済見通し」
方修正したことで、若干気まずい形で終えています。現在
2
2
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
2014年9月17日発表の「FRBメンバーおよび連邦銀行総裁によ
同上
| © CME GROUP
FOMC は 9 月 16、17 日会合後の発表で、こうした状況を認 た。また、乗用車・小型商用車の新車販売台数も、2014 年
めたうえで、次のように述べています。「経済活動が穏やか 8 月には 1750 万台となり、前年同月の 1600 万台に比べ
なペースで拡大しており、全体的に労働市場の状況は多少予 て 8.9%増です。
想を超えた改善をみせている。だが、失業率にほとんど変化
がなく、また労働市場のさまざまな指数が、依然としてかな 2014 年 8 月の鉱工業生産指数は 104.1 と、前年同月比で
りの労働資源が活用されていないと示唆している」3 。
4.6%増加しています。設備稼働率は、7 月に 79.1%とい
う高い水準をつけてから、8 月は 78.8%とわずかに低下し
0.8%改善しています。注目されるのは、80%の大台に届
67%
最も低い数値です(前年 9 月報告は 63.2%)。
実質小売売上高(季節調整済み)
販売台数
May-14
合)は 62.7%にすぎませんでした。これは 1978 年以降で
Jan-13
労働参加率(訳注:生産年齢人口に占める労働力人口の割
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
Sep-13
ています。直近の報告では失業率が 5.9%だったとはいえ、
Sep-11
FOMC の観測では、依然として低い労働参加率が強調され
May-12
Jan-14
労働参加率
出所:米労働統計局(BLS)
消費者部門の動向
$195
$190
$185
$180
$175
$170
$165
$160
$155
$150
Jan-11
失業率
Jan-13
Jan-12
Jan-11
Jan-10
Jan-09
Jan-08
Jan-07
Jan-06
Jan-05
62%
Jan-04
4%
Jan-03
63%
Jan-02
5%
ます。
May-10
64%
6%
のボトルネックやインフレ圧力が発生すると考えられてい
Jan-09
7%
みなされることが多く、この水準を超えると、通常は生産
Sep-09
65%
Sep-07
8%
くかです。この 80%というのは、インフレの大きな目安と
May-08
66%
労働参加率
9%
Jan-07
10%
失業率
ました。しかしこの数字は、前年 8 月の 78.0%に比べれば、
68%
小売売上高(単位:10億ドル)
雇用統計
11%
乗用車・小型商用車販売台数
出所:米国勢調査局および米商務省
また FOMC は「家計支出が穏やかに上昇しているようにみ
える。また設備投資も進んでいる。一方、住宅セクターの
回復は遅いままだ」と指摘しています
4
さらに企業業績も好調です。2014 年 4~6 月期には 1 兆
。実際のところ、
8400 億ドルと過去最高の水準に達し、前回の最高水準であ
経済指標の多くは、高い水準にあった金融危機前をしのぐ
る 2013 年 4~6 月期の 1 兆 8000 億ドルを超えました。
回復をみせています。これは消費支出だけでなく、鉱工業
この好調な企業業績は、もちろん株価に追い風となり、米
生産の数字もそうです。
国株は 9 月末までに、史上最高値近辺へと上昇しています。
実質小売売上高は、2014 年 8 月に 1872 億ドルと、前年
同月の 1826 億 6000 万ドルに比べて 2.51%増となりまし
3
2014年9月17日付けFRBプレスリリース
4
同上。
2
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
鉱工業部門の動向
105
う。
80%
100
78%
76%
95
74%
90
72%
$56,000
$55,000
$54,000
70%
85
$53,000
68%
$52,000
$51,000
May-14
Jan-13
Sep-13
May-12
Jan-11
鉱工業生産指数
Sep-11
May-10
Jan-09
Sep-09
Sep-07
May-08
66%
Jan-07
80
実質家計所得の中央値
$57,000
設備稼働率
鉱工業生産指数
達しておらず、総じて誤った方向に進んでいることでしょ
82%
$50,000
設備稼働率
$49,000
出所:セントルイス連邦準備銀行経済統計データベース(FRED)
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
$48,000
株価の上昇は、当然ながら、非常に大きな「資産効果」を
出所:セントルイス連邦準備銀行経済統計データベース(FRED)
もたらしました。それは家計純資産が 2014 年 4~6 月期ま
でに史上最高水準の 81 兆 5000 億ドルに達し、またミシガ
実質家計所得の中央値(インフレ調整後)は、2013 年に
ン大学消費者信頼感指数が 81.2 と好調なことからも明らか
5 万 1939 ドルとなりました。これは 2012 年の 5 万 1017
です。
ドルから若干反転しているものの、依然としてピークであ
る 1999 年の 5 万 6080 ドルを大幅に下回っています。株
米企業の収益性
変化率(年率)
100%
$1,800
80%
$1,600
60%
40%
$1,400
20%
$1,200
0%
$1,000
-20%
$800
-40%
Q1 14
Q1 13
Q1 12
Q1 11
Q1 10
Q1 09
Q1 08
Q1 07
Q1 06
Q1 05
$600
Q1 04
-60%
変化率(年率)
式に投資していた富裕層は大きな利益を実現させ、これが
$2,000
税引き前利益(単位:10億ドル)
120%
企業利益(単位:10億ドル)
出所:米商務省
家計純資産に反映されました。しかし実は、家計のおよそ
10%にすぎない層が全株式の 80%を保有しているのです。
その恩恵が中低所得者層に流れているようにはみえません。
米国では階層間の所得格差が広がっています。
インフレーション
FRB(米連邦準備理事会)は雇用情勢だけでなく、インフ
レ目標についても繰り返し言及しており、「FOMC が緩和
政策の解除を決定するときは、最大雇用と 2%のインフレ
率という長期目標に合った、バランスのとれたアプローチ
しかし、この富の配分には偏りがあり、市場には依然とし
をとるだろう」と示唆しています
5
。
て、ある種の不満がくすぶっているようにみえます。米国
の家計が保有する住宅用不動産の価値は、2014 年 4~6 月
インフレ率は現在、目標の 2%をわずかに下回ったところ
期で 22 兆 9000 億ドルでした。これは金融危機前の最高水
です。2014 年 8 月の消費者物価指数(CPI-U)と食品・エ
準である 2006 年 10~12 月期の 24 兆 9000 億ドルを依然
ネルギーを除いたコア CPI は、どちらも前年比 1.7%の上
として下回っています。そしておそらく、より注目すべき
なのは、家計の実質所得が依然として金融危機前の水準に
5
3
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
同上。
| © CME GROUP
昇でした。また、2014 年 8 月の PCE(個人消費支出)は
買い入れのペースを月 100 億ドルから月 50 億ドルに落と
前年比 1.6%の上昇で、食品・エネルギーを除いたコア
し、また長期米国債のさらなる買い入れのペースを月 150
PCE も 1.6%の上昇でした。
億ドルから月 100 億ドルに落とす」
FF 金利の誘導目標
Target
Fed Funds
5-Yr Treasury
5 年物米国債
30-Yr Treasury
個人消費支出
コア個人消費支出
出所:米経済分析局(BEA)
このようにすべての数字が、FRB の目標である 2%をわず
かに下回っています。FRB が予想する 2014 年の PCE イン
フレ率は 1.5~1.7%、コア PCE インフレ率は 1.5~1.6%
です。また 2015 年は、どちらも 1.6~1.9%と予想してお
り、同じく穏やかなものとなっています。しかし、設備稼
働率が目安の 80%に向かっていることから、FRB は予想よ
りも早くインフレを懸念材料とするかもしれません。
金融政策
FRB は引き続き、量的緩和(QE)政策を段階的に縮小して
います。量的緩和政策は、中長期金利を適度な水準に保つ
ため、米国債、米政府機関債、政府系住宅ローン担保証券
(MBS)を合わせて毎月 850 億ドル買い入れるというもの
でした。しかし 2013 年 10~12 月期に、FRB は量的緩和
を縮小し始め、買い入れ額を毎月 100 億ドルずつ減らすこ
とになったのです。
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
Jul-14
Jul-13
Jan-14
さらに次のように述べています。「FOMC は、今後数カ月
の間に発表される経済・金融情勢に関する情報を注意深く
見守っていく。物価が安定しつつ労働市場の見通しがしっ
かりと改善するまでは、米国債と政府系住宅ローン担保証
券の買い入れを継続し、必要に応じて他の政策手段を行使
する。今後発表される情報が、雇用情勢の持続的改善とイ
ンフレ率の長期目標への回復という FOMC の予測をおおむ
ね裏付けるものであれば、現在の資産買い入れプログラム
を次の会合(注:2014 年 10 月 28 日、29 日に開催予定)
で終了させるだろう」7 。
量的緩和の終了は、おそらくフェデラルファンド(FF)金
利の誘導目標を引き上げる足掛かりになるでしょう。それ
までは FF 金利の誘導目標を現在の0~0.25%で維持する
ことになります。FRB はその期間について、こう記してい
ます。「雇用の最大化と2%のインフレ率という目標に向
けての進捗状況とその後の予想の両方を評価して判断する。
この評価は、雇用情勢の数字、インフレ圧力およびインフ
「資産買い入れのペースをさらに慎重に減速させる決定を
4
年物米国債
2-Yr2Treasury
10-Yr
10 Treasury
年物米国債
30 年物米国債
大方の予想どおり、FRB は次のように発表しています。
した。FOMC は 10 月から住宅ローン担保証券のさらなる
Jul-12
Jan-14
Jan-13
Jan-12
Jan-11
Jan-10
Jan-09
Jan-08
Jan-07
Jan-06
Jan-05
Jan-04
-2%
Jan-13
0%
Jan-12
-1%
Jul-11
1%
Jul-10
0%
Jan-11
2%
Jul-09
1%
Jan-10
3%
Jul-08
2%
Jul-07
4%
Jan-08
3%
Jan-07
5%
変化率(年率)
4%
。
米国の基準金利
6%
Jan-09
個人消費支出(PCE)
5%
6
6
同上。
7
同上。
| © CME GROUP
レ予測の指標、金融情勢を示すデータなど、幅広い情報を
経常収支と資本収支
考慮することになる。また長期インフレ予測がしっかりと
米国の経常赤字は 2014 年 4~6 月期に 985 億 600 万ドル
抑えられたままであれば、FOMC は資産買い入れ政策が終
となり、2014 年 1~3 月期の 1021 億 1100 万ドルから改
了した後も、相当な期間、FF 金利の誘導目標を現在の範囲
にしておくのが適当であろうと引き続き考えている」
8
善しました。これは、金融危機後のピークである 2012 年
。
1~3 月期の 1239 億 6200 万ドルに比べ、20.5%の減少で
す。また金融危機前の 2005 年から 2006 年にかけての
連邦政府財政収支
2000 億ドル超の赤字水準からみても、はるかに改善してい
(年率換算、単位:10億ドル)
$4,000
ます。
$3,000
$2,000
米国の経常収支(単位:10億ドル)
$1,000
$0
$0
-$1,000
-$40
-$2,000
-$3,000
-$80
連邦政府歳入合計
連邦政府歳出合計
-$120
Q4 13
Q1 13
Q2 12
Q3 11
Q4 10
Q1 10
Q2 09
Q3 08
Q4 07
Q1 07
Q2 06
Q3 05
Q4 04
Q1 04
-$4,000
-$160
純貸出・借入
-$200
出所:米経済分析局(BEA)
Q4 13
Q1 13
Q2 12
出所:米経済分析局(BEA)
Q3 11
Q4 10
Q1 10
Q2 09
Q3 08
Q4 07
Q1 07
Q2 06
Q3 05
財政政策
Q4 04
Q1 04
-$240
米国の財政政策について FRB は引き続き「まだ経済成長の
対米資金のフロー(流出入)は、米財務省の対米証券投資
重しとなっているが、その影響度は弱まっている」と表現
しています
9
(TIC)データベースから探ることができます。データは米
。連邦政府の総歳出(季節調整済み、年率換
国債、米政府機関債、米社債、米国株、外国債、外国株に
算)は、2014 年 4~6 月期で 3 兆 9340 億ドルと、2014
分類されます。
年 1~3 月期の 3 兆 8590 億ドルから 1.9%増加しました。
一方、総歳入は、2014 年 4~6 月期は 3 兆 3080 億ドルと、
海外からの対米資金フローは、過去 10 年にわたる米国債へ
2014 年 1~3 月期の 3 兆 2640 万ドルから 1.3%増加して
います。その結果 4~6 月期の赤字分は 6263 億ドルとなり、
1~3 月期の 5947 億ドルから若干増加しました。
の多額の資金流入で特徴づけられるのが一般的です。この現
象は、海外投資家がおよそ 7040 億ドルの米国債を買い越し
た 2010 年に最高潮に達しました。しかし、2011 年、2012
年および 2013 年の買い越し額は、それぞれ 4330 億ドル、
4170 億ドル、4300 億ドルと縮小しています。
海外投資家は 2013 年には米国株に関心を移しており、純
額で 5220 億ドルの資金が株式市場に流入しました。米国
株は 2014 年 7~9 月期を通じて強気を維持しています。
8
同上。
9
同上。
5
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
米国・外国証券の正味資金フロー
債券ファンドには、FRB の QE 縮小と FF 金利引き上げの可
(単位:10億ドル)
能性から金利上昇と債券価格の下落を予想する者が多かっ
$1,200
たにもかかわらず、2014 年の 7 月までの期間に、さらに
$800
6040 億ドルの資金が流入しました。
$400
$0
$30
-$400
$20
$10
米国株
外国債
出所:米財務省・対米証券投資(TIC)データベース
2013
2012
2011
2010
2009
2008
米社債
外国株
Thru Jul-14
米政府機関債
2007
2006
2005
2004
-$800
米国債
株式ファンドの資金フロー(単位:10億ドル)
$40
$0
-$10
-$20
-$30
き上げ、米国債に 1080 億ドルを流し込みました。米国株
米国株
外国株
出所:米投資信託協会(ICI)
Jul-14
May-14
Jan-14
Mar-14
Nov-13
Jul-13
Sep-13
May-13
Jan-13
Mar-13
Nov-12
Jul-12
Sep-12
May-12
Jan-12
にもかかわらず、海外投資家は株式から 8 億ドルほどを引
Mar-12
-$40
ところが 2014 年初から現在まで、株式で利益が実現した
が市場最高値を更新したことを考えると、国際的な緊張と
株価修正の可能性に対する懸念から、こうした傾向を加速
世界景気の動向
させた可能性があります。
新興国市場(EM)の経済は、サブプライム危機を受けても
投資信託のフロー
急成長を遂げてきました。しかし最近では、その成長が鈍
米国の株式ファンドや債券ファンドのフローは、投資信託
化しており、アナリストの多くは、比較的緩やかに上向い
業界の動向を追っている米投資信託協会(ICI)発表のデー
てきた先進国(DM)の景気に注目しています。
タから検証できます
10
。
株式および債券ファンドの資金フロー
2014 年 7 月までに、508 億ドルあまりが株式ファンドに
$80
投資されました。しかしデータによると、米国株と米ドル
$60
が好調なパフォーマンスであるにもかかわらず、米国株の
ファンドから純額で 139 億ドルが引き上げられており、ま
た外国株への投資が純額で 647 億ドル増加しています。
(単位:10億ドル)
$40
$20
$0
-$20
-$40
-$60
ンドに反応して買おうとします。また、個人投資家は「集団心
理」に流されやすく、相場の急落に反応して投資を手仕舞おう
とします。
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
Jul-14
Mar-14
Jan-14
Sep-13
Nov-13
Jul-13
Mar-13
Jan-13
Sep-12
Nov-12
債券ファンド
出所:米投資信託協会(ICI)
す。個人投資家は、相場の「後追い」となりやすく、強気トレ
6
Jul-12
Mar-12
株式ファンド
May-14
こうした指標は、値動きと非常に高い相関を示すことが多いで
May-13
10
May-12
Jan-12
-$80
ユーロ圏と米国の GDP 成長率は、 2013 年にそれぞれ
新興国(EM)
ブラジル
-2.12%
-2.41%
-3.62%
-3.67%
-3.75%
メキシコ
-1.07%
-1.27%
-2.06%
-1.81%
-1.47%
3.11%増に改善すると予想されています。また日本の経済
ロシア
5.56%
3.63%
1.72%
1.36%
-1.28%
成長率は、1.53%増(2013 年)から 1.24%増(2015 年)
インド
-3.40%
-5.00%
-2.60%
-1.90%
-2.80%
中国
1.90%
2.60%
2.10%
2.10%
2.10%
0.37%減と 1.88%増でしたが、2015 年には 1.49%増と
に徐々に減速し、英国の成長率は、1.74%増(2013 年)
出所:ゴールドマン サックス『Global FX Analyst』(2014 年 7 月 15 日)
から 3.03%増(2015 年)へ拡大するとの見通しです。
(予)=予想値
多くの新興国で成長率が減速したものの、成長そのものは
今後数年で米国の貿易赤字は高い水準に戻り、欧州の貿易
全般的に先進国を上回っています。その差が狭まるとはい
黒字は拡大するとの見通しです。中国の貿易黒字は、対
え、大方は新興国が先進国を上回る状況が続きそうです。
GDP 比では変わらずと予想されます。しかし、中国の GDP
予想成長率は 7%近辺であるため、結果として貿易黒字額
は相当な額で増加しそうです。
実質 GDP 成長率と予測
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年(予) 2015 年(予)
通貨価値の動向
先進国(DM)
豪州
2.59%
3.61%
2.36%
2.71%
2.58%
カナダ
2.53%
1.71%
2.01%
2.48%
2.45%
ここまで論じてきた要因は、世界中の通貨レート(対米ド
ユーロ圏
1.63%
-0.60%
-0.37%
1.05%
1.49%
ル)に大きく影響します。こうした影響を確認するため、
日本
-0.45%
1.45%
1.53%
1.50%
1.24%
英国
1.12%
0.28%
1.74%
3.38%
3.03%
CME グループでは、通貨指数の一環として「CME 米ドル指
米国
1.85%
2.78%
1.88%
1.66%
3.11%
数」を開発しました
ブラジル
2.73%
1.03%
2.49%
1.14%
2.59%
メキシコ
4.04%
3.98%
1.07%
3.08%
3.62%
ロシア
4.29%
3.44%
1.30%
0.96%
4.36%
インド
7.70%
4.80%
4.70%
5.10%
6.60%
中国
9.3%
7.70%
7.70%
7.30%
7.60%
11
。
新興国(EM)
CME米ドル指数
1,250
Long
Short
14.3% EUR 100% USD
14.3% JPY
14.3% GBP
14.3% CHF
14.3% CAD
14.3% AUD
14.3% CNY
1,200
出所:ゴールドマン サックス『Global FX Analyst』(2014 年 7 月 15 日)
1,150
(予)=予想値
1,100
1,050
新興国(特に中国)の経済を支えてきた貿易黒字が、金融
Jul-14
Jul-13
Jan-14
Jul-12
Jan-13
Jul-11
Jan-12
Jul-10
Jan-11
Jul-09
Jan-10
実質経常収支と予測
Jan-09
900
Jul-08
比べて米国や欧州の貿易赤字は概ね減少しました。
Jul-07
950
Jan-07
新興国通貨には逆風となっています。一方、金融危機前に
Jan-08
1,000
危機前に比べて全体的に減少してきており、それが多くの
(対 GDP 比率)
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年 (予)
2015 年 (予)
先進国(DM)
7
豪州
-2.76%
-4.19%
-3.23%
-2.10%
-3.22%
カナダ
-2.75%
-3.42%
-3.23%
-2.40%
-1.76%
ユーロ圏
0.11%
1.46%
2.39%
2.90%
3.10%
11
CME米ドル指数は、ユーロ(EUR)、日本円(JPY)、英ポンド
(GBP)、スイスフラン(CHF)、加ドル(CAD)、豪ドル
(AUD)そして中国人民元(CNY)の対ドルポジションを2010
日本
2.15%
0.99%
0.68%
0.11%
0.96%
英国
-1.46%
-3.83%
-4.51%
-4.17%
-3.57%
年12月31日時点で等加重にしたバスケットです。2010年12月
米国
-2.96%
-2.84%
-2.39%
-2.58%
-2.92%
31日の指数値を1000.00としています(基準日は任意)。
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
2014 年 9 月末、CME 米ドル指数は 1088.10 となり、同
しかし、そうした金利の関係が長期にわたって続くことを
年 6 月末の 1025.85 から 4.61%上昇しています。同期間
前提にするのは、キャリートレードが古典的な為替レート
の対米ドルレートのスポットリターンは、ユーロが
理論を間接的に無視しているといえます。つまりキャリー
-7.75%、英ポンドが-5.22%、日本円が-7.59%です。
トレードでは、売られた低金利通貨は高くならず、買われ
スコットランドの独立をめぐる住民投票が否決されるまで、 た高金利通貨は安くならないと想定しているのです。
英ポンドには長く苦しい相場となりました。
実際のところ、歴史的にこうした関係は長く続くことが知
新興国通貨では、ブラジルレアルが-9.51%、ロシアルー
られています。例えば、サブプライム危機が勃発する前、
ブルが-14.19%、インドルピーが-2.54%となっていま
低利の日本円を売って、高利の他通貨で運用するキャリー
す。一方、中国人民元は+1.05%の上昇でした
12
。特に大
トレードに、莫大な資金が投入されました。
幅下落したのがロシアルーブルです。もちろん、これはク
リミアやウクライナの危機を受けて経済制裁が続いている
末尾資料2に、各通貨のトータルリターン(2014 年 7~9
ことと関係があります。
月期、対米ドルレート)が掲載されています。7~9 月の先
進国通貨のトータルリターンをみると、ユーロが-7.72%、
トータルリターン
英ポンドが-5.09%、日本円が-7.59%でした。こうした
先進国の金利は、ほぼゼロ水準で維持されているため、ト
「キャリートレード」は、ここ 10 年にわたり、通貨市場で
ータルリターンは、先ほどのスポットリターンとさほど変
最も人気の高い長期戦略のひとつです。キャリートレード
わりません。
では、名目金利が低い国の通貨を借りて、名目金利が高い
国の通貨に投資します。つまり「低金利」通貨を売り、そ
して「高金利」通貨を買うのです。
キャリーリターン(2014年7~9月期)
USD-ARS
USD-CLP
USD
キャリー
トレード

低金利通貨の売りと
USD-TWD
高金利通貨の買い
USD-KRW
USD-CAD
AUD-USD
通貨のトータル
リターン
=
10%
5%
ータルリターンがあるわけです。
-15%
EUR-USD
USD-RUB
0%
USD-CHF
は2つの要素(為替レートの値ザヤと金利差)からなるト
-5%
機会の格差に収益性があります。したがって、この戦略に
GBP-USD
-10%
そうすれば、2国間の金利差、そしてその背景にある投資
値ザヤ + 金利
ところが、新興国通貨では、金利収入がトータルリターン
にかなり影響しています。例えば、7~9 月期のブラジルレ
アルのトータルリターンは-7.06%、ロシアルーブルは
12
通貨の「スポットリターン」は為替レート自体の動きを表し、
レートの動きに未収利息を足した「トータルリターン」と区別
- 12.11 % 、 イ ン ド ル ピ ー は - 0.39 % 、 中 国 人 民 元 は
+1.51%でした。
されます。
8
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
CME 通貨キャリー指数は、比較的高金利で、歴史的に好ま
が同等になったとき、為替レートは均衡状態にある」とい
しいトータルリターンを出している通貨のバスケットに連
う仮説に基づいています。
動しています
13
。同指数の 9 月末の終値は 809.65 で、6
月末の 839.83 から 2.26%下落しました。したがって、金
融危機後はキャリートレードが戦略として全くうまく機能
より具体的にいうと、購買力平価説はアダム・スミスの
「一物一価の法則」、つまり「同一製品の価格は、為替レ
ートによって調整されることで、それぞれの国内市場で等
していないと分かります。
しくなる」という概念に基づいています。なお、この法則
が通用するには、巨大な貿易障壁や人為的な取引制限が排
CME通貨キャリー指数
1,050
除されていなければなりません。
1,000
950
購買力平価説では、一物一価の法則を「同じモノや製品で
900
あれば、その価格はどの国でも等しくなる」とするだけで
なく、「例えば消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数
850
Long
Short
16.7% BRL 50% USD
16.7% AUD 50% EUR
16.7% ZAR
16.7% NZD
16.7% TRY
16.7% MXN
800
750
(PPI)といったインフレ指標で計測する、ある経済圏の全
体的な価格」にまで応用しています。つまり「インフレ率
と為替レートは負の相関を示す」というわけです。
Jul-14
Jul-13
Jan-14
Jul-12
Jan-13
Jan-12
Jul-11
Jul-10
Jan-11
Jul-09
Jan-10
Jul-08
Jan-09
Jul-07
Jan-08
Jan-07
700
価格の均衡を維持するため、通貨の価値は低下すると考え
購買力平価
られます。同様に、インフレ率が低下すれば、通貨価値は
購買力平価(PPP)説の起源は、16 世紀スペインのサラマ
ンカ学派にまでさかのぼります。ただし、それをさらに発
展させたのは 20 世紀前半スウェーデンの経済学者、グスタ
フ・カッセル氏です
インフレ指標からインフレ率の上昇が計測されていれば、
14
上昇すると考えます。
インフレ率が
上昇すれば

通貨の価値は
低下するはず
。購買力平価説は「各国の購買力
インフレ率が
低下すれば

通貨の価値は
上昇するはず
この購買力平価説と密接な関係にあるのが、国際フィッシ
13
CME 通貨キャリー指数は、米ドルとユーロの売りに対して豪ド
ャー効果(IFE)です。2国間の名目金利の差が、為替レー
ル(AUD)、ブラジルレアル(BRL)、メキシコペソ(MXN)、 トの将来の方向性を左右するという理論です。この理論に
ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド = NZ ド ル ( NZD ) 、 南 ア フ リ カ ラ ン ド
(ZAR)、トルコリラ(TRY)を 2010 年 12 月 31 日時点で等
加重で買うように設計されたバスケットです。 2010 年 12 月
31 日の指数値を 1000.00 としています(基準日は任意)。
よると、名目金利の低い通貨の価値は、将来的には上昇す
ると予想され、逆に名目金利の高い通貨の価値は、将来的
に低下すると予想されます。
CME 通貨キャリー指数を構成する「買い通貨」は、金融危機後
14
の 2010 年までの間、高金利であった国を選びました。また指
そして国際フィッシャー効果は、どの国の実質金利(=無
数の「売り通貨」をこのように決めたのは、低金利だったから
リスク金利-インフレ率)も総じて同じであることを前提
です。
としています。つまり「名目金利とインフレ率には正の相
Gustav Cassel 著 『 Abnormal Deviations in International
関がある」わけです。
Exchanges』(1918年12月)を参照。
9
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
インフレ率が
上昇すれば

金利が
上昇し

通貨の価値は
この分析によると、最も過大評価されている通貨は
低下するはず
+28.97%のノルウェークローネです。続いて、スイスフ
インフレ率が
低下すれば

金利が
低下し

通貨の価値は
上昇するはず
国際フィッシャー効果は金利と為替レートに負の相関があ
るとしており、同様に、購買力平価説でもインフレと為替
レートには負の相関があるとしています。したがって、国
際フィッシャー効果と購買力平価説は総じて一致している
といえるのです。
古典的な購買力平価説を実践に応用し、理論的にその通貨
が、標準に対して、どれだけ過大評価もしくは過小評価さ
れているか、その割合を計るには、インフレという物差し
を用意しなければなりません。これについては、3つの代
表的な手法があります。
 OECD(経済協力開発機構)――代表的な消費財のバス
ケットの値動きをさまざまな国で比較するのに便利なデ
ータを出している。
 ブルームバーグ――1982 年1月~2000 年6月以降の各
国の CPI や PPI から計測される超長期的なインフレ評価
に基づいた分析ツールを提供している。
 ビッグマック――エコノミスト誌が発表する「ビッグマ
ック指数」。マクドナルドのビッグマックという具体的
なモノの価格を用いて、ほとんど世界中どこでも手に入
る製品の価格を比較する。
この3つの手法はすべて、ブルームバーグの端末から参照
できます。末尾資料3に、3つの手法によるデータを掲載
しました。 また、さまざまな国の通貨を3つの手法で(で
きるかぎり)評価し、その平均を出しています。そして最
ランの+23.48%、NZ ドルの+14.86%、アイスランドク
ローナの+12.57%、豪ドルの+12.43%となります。
逆に過小評価されている通貨が、トルコリラの-66.69%
です。そしてポーランドズロチの-62.53%、南アフリカ
ランドの-61.73%、ハンガリーフォリントの-58.75%、
ロシアルーブルの-55.73%と続きます。
この 7~9 月に購買力平価の値は全通貨で概ね下落しました。
ただし、この値は対米ドルで計測されています。ご存じの
ように、この期間の米ドルは、かなりの強さをみせました。
この分析に基づいて通貨を売り買いするには、リスクをい
くらか分散するため、いくつかの通貨でバスケットを作る
とよいでしょう。なお、通貨は長期にわたって過大評価も
しくは過小評価される可能性があることも認識しておかな
ければなりません。事実、先ほど述べたキャリートレード
は、低金利通貨を売り、高金利通貨を買う戦略です。古典
的な購買力平価説とは、正反対のアプローチとなります。
商品生産国
高成績が続いている通貨の国は総じて、歳入の大半が商品
(コモディティ)の生産と深く結びついています。
エネルギー、穀物、家畜、貴金属、工業用金属の値上がり
にみられるように、商品価格は過去 10 年間に何度か急騰し
ました。この価格上昇は、新興国経済からの需要によって、
何度も勢いづいています。しかし、新興国経済が減速し、
また新たな供給源が現れたことで、こうした傾向はここ数
年の間に修正されてきました。
も過大評価されている通貨から最も過小評価されている通
貨まで、順に並べました。
10
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
CME 資源国通貨指数は、商品など原材料の輸出に大きく依
存する国の通貨バスケットに連動します
15
。同指数は、9
月末に 819.92 を付け、6 月末の 883.60 から 7.21%下げ
ました。その大きな原因が石油価格の下落です。新興国の
需要が安定しているのに対し、新たな供給源が現れたこと
が原因でした。
CME資源国通貨指数
1,100
1,050
1,000
950
900
850
Long
Short
16.7% AUD 100% USD
16.7% BRL
16.7% CAD
16.7% NOK
16.7% NZD
16.7% ZAR
800
750
700
Jul-14
Jul-13
Jan-14
Jan-13
Jul-12
Jul-11
Jan-12
Jul-10
Jan-11
Jul-09
Jan-10
Jul-08
Jan-09
Jul-07
Jan-08
Jan-07
650
結論
CME の広範な通貨先物・オプション市場には、多種類の通
貨ペア(一方が米ドルの組み合わせ)と多様なクロスペア
(米ドル以外の組み合わせ)が上場されています。
どれも相場観を反映しやすい、流動性の高い金融商品です。
また、相場が混乱しているときは、保有している通貨や国
際投資のリスク管理に利用できます。詳細については、弊
社ウェブサイト www.cmegroup.com/trading/fx をご覧
ください。
15
CME 資源国通貨指数は、米ドル(USD)の売りに対して豪ドル
(AUD)、ブラジルレアル(BRL)、加ドル(CAN)、ノルウ
ェークローネ(NOK)、NZ ドル(NZD)そして南アフリカラン
ド(ZAR)の買いとなるように設計されたバスケットです。
2010 年 12 月 31 日の指数値を 1000.00 としています(基準日
は任意)。
11
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
資料 1
オーストラリア
各国の経済状況
ブラジル
カナダ
カナダ経済は、米国で持続する雇用拡大の恩恵を
経済成長
インフレ
財政政策
ブラジル経済に勢いがない。だが、10 月の大統領選
受けている。 キーストーンパイプラインに前向きな
豪州経済は成長している。だが、国際商品価格が
の結果に関わらず、今後は政策の不透明感が弱まる
判断が下されれば、加ドルにプラスとなる。
広範囲で下落しているため、減速の可能性がある。
だろう。2015 年には実質 GDP の伸びが徐々に改善
ただし、政治的な不透明感は強まるだろう。
し始めると予想する。
いずれにせよ、パイプラインに関する判断は
2014 年 11 月の米中間選挙後になりそうだ。
カナダの短期金利は米国の短期金利を上回っている
金融政策
金融政策は現状維持が続いている。商品価格の下落
短期金利が 10%近辺にあり、レアルをしっかりと
ものの、極めて低い。インフレ圧力がいくらか強ま
が続けば、景気減速を理由に中央銀行は金利引き
支えている。予想どおり、10 月の選挙後に不透明感
っているようだ。特に米国で雇用の伸びがしっかり
下げを検討すると予想される。
が弱まれば、2015 年に利下げの可能性がある。
と続けば、カナダ銀行は利上げを検討する可能性が
ある。
特記事項
12
豪ドルは商品通貨と考えられている。エネルギー、
選挙後、短期金利が 10%であれば、米ドル高でも、
金属、農産物の価格が下落傾向にあるため、豪ドル
メキシコペソや日本円に対してブラジルレアルは
安のリスクが高まっている。
上昇する可能性がある。
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
カナダの利上げが現実のものとなれば、加ドルの
さらなる下支え要因となるだろう。だが、キー
ストーンパイプラインに米国が否定的な判断を
下した場合、加ドルにマイナスとなりそうだ。
資料 1
中国
各国の経済状況(続き)
欧州連合(EU)
欧州経済に息切れ感がある。銀行システムは依然と
経済成長
インフレ
財政政策
2015 年の実質 GDP 成長率は 6~7%前後に減速する
して資本不足の状況だ。そのため、さらなる成長を
だろう。経済のハードランディングはおそらく回避
支える貸し出しのペースを上げられずにいる。欧州
されそうだ。だが、大きな問題に直面している状況
中央銀行(ECB)が資産査定(ストレステスト)を
は続く。
終え、銀行が必要な資本を整えることができれば、
2015 年にいくらか回復する可能性がある。
中国は通常、銀行部門を使って融資を増やし、経済
成長の持続を支えている。ところが、銀行システム
金融政策
に債務や構造的問題が重くのしかかっており、経済
活動を管理するこうしたツールがうまく機能して
いない兆候がみられる。
特記事項
13
ECB が ABS(資産担保証券)の買い入れ計画を公表
した。この計画は、積極的な財政政策と組み合わさ
れれば、効果があるだろう。しかし当面、多くの
国では緊縮的な財政政策が続きそうだ。
人民元レートの変動幅が拡大された。香港でデモが
ECB の ABS 買い入れ計画と米国の 2015 年利上げ
起きているものの、それで人民元の自由化、そして
観測があいまって、ユーロが下落している。この
他の国々との資本フローの拡大が減速することは
傾向は銀行の資産査定が終了するまで変わらない
ないだろう。
だろう。
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
インド
インドでは 5 月の選挙で新政権が発足し、改革への
期待に沸いている。2015 年の GDP 成長率は 5~6%
の範囲と予想される。インド経済の重しとなってい
る規制が緩和されるには、いくらか時間がかかるだ
ろう。
国際商品価格の軟化は、ルピーの安定とともに、
インフレ率の低下に寄与しそうだ。2015 年には
さらなる利下げの余地がある。
インドルピーが上昇している。5 月の選挙で実の
ある経済改革が実行される可能性が出てきたから
だ。商品価格の下落も追い風となっている。
資料 1
各国の経済状況(続き)
日本
メキシコ
4 月 1 日の消費税引き上げを前にした駆け込み需要
経済成長
によって、1~3 月期の実質 GDP は並外れた伸びと
インフレ
なった。しかし、その伸びは 4~6 月期のマイナスで
財政政策
完全に相殺された。そして 2015 年後半には、
メキシコは、米国の景気回復による恩恵を受けて
いる。また、米テキサス州のパイプラインを
通じて、比較的安価な天然ガスの輸入を拡大させて
いる。
さらなる消費増税が控えている。
日銀は依然として積極的にバランスシートを拡大
金融政策
している。残念ながら、こうした試みは国債を銀行
や年金から日銀に移しているだけで、経済成長には
効果がない。
メキシコ中央銀行が短期金利を引き下げた。その
理由のひとつは、ペソの急激な上昇が貿易黒字に悪
影響を及ぼさないようにするためだ。
ロシア
ロシアは、クリミア併合とウクライナ情勢の泥沼化
で資金的負担と経済制裁を受けている。それが景気
後退の原因となるかもしれない。冬が近づくと、
ロシアは欧州へのガス供給を縮小し、制裁圧力に
対抗するリスクがある。
ウクライナ情勢が混乱する間、ロシアは短期金利を
引き上げ、ルーブルを守らなければならない。海外
資産を接収する可能性など、ロシアの政治リスクは
非常に高い。
かねてよりロシアにとって大きな問題となっている
日本円は 2013 年半ばから非常に安定しており、
1 米ドル 100~103 円で取引されていた。しかし
特記事項
最近は 108~110 円に動き始めた。日銀としては、
おそらく当面はこの円安を抑え、将来のインフレに
メキシコではインフレが適度に抑制されている。
しかし、短期金利がインフレ率以下の場合は、
米ドルが上昇すると、メキシコペソはいくらか
どう影響するかみてみたいところであろう。
下落するのが普通だ。
のが、石油と天然ガスの国際価格である。ロシアは
中国と天然ガスを輸出する契約を結んだ。イラク
情勢の混迷で石油価格が上昇し、ロシアはその恩恵
を受けている。しかし、国際商品価格の下落は、
ロシア経済およびルーブルにとって大きなマイナス
要因である。
14
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
資料 1
各国の経済状況(続き)
スイス
英国
米国
米国経済は比較的順調である。 雇用の伸びは強く、
経済成長
スイス経済は、息切れ気味の欧州連合(EU)諸国に
英国の成長見通しは着実に改善している。 ロンドン
失業率はついに 6%を下回った。 連邦政府の財政
インフレ
縛られたままだ。そのため、成長の見通しは不透明
の住宅市場は、外国人の購入によって活況を呈して
は、2016 年会計年度には均衡しそうだ。 また、
財政政策
である。
いる。 財政赤字も対 GDP 比で減少した。
コアインフレ率が抑制されており、賃金への圧力も
さほど強くない。
イエレン議長率いる FRB は、バーナンキ FRB に
金融政策
EU の債務危機は、銀行資本の充実という長期的な
スコットランドが英国に留まると可決した今、
問題に変わっている。そのためスイスの金融政策に
イングランド銀行(BOE、中央銀行)が利上げを
柔軟性はほとんどなく、引き続きスイスフラン高・
検討するのは当然である。 利上げのタイミングは
ユーロ安を防ごうとするだろう。
2015 年 5 月の総選挙前だろう。
よる量的緩和の終了に向けて順調に進んでいる。
FRB が近々下すことになる次の決定は、FRB が保有
する米国債や MBS の利息と償還元本を再投資に
回すのを止めることだ。そして 2015 年に FRB は、
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標をゼロ
近辺としている政策を解除するだろう。
2008 年の金融危機以降、世界中で金融機関に対する
特記事項
市場参加者の関心は、果たして FF 金利の誘導目標が
規制が強化されている。 つまるところ、こうした
英ポンドの先行きは金利予測に大きく左右され、
引き上げられるのか、またそれはいつなのかに
規制強化は、スイスの伝統的ビジネスモデルである
対ユーロで上昇し、対米ドルで下落する可能性が
向いている。しかも日欧では、経済に息切れ感があ
秘密主義、そして世界の金融システムの中でスイス
ある。
り、中央銀行がかなり緩和的な政策に注力している
が果たす役割に、さらなる課題を突き付けている。
15
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
ため、さらなる米ドル高へとつながっている。
資料 2
通貨の動向
(2014 年第 3 四半期)
スポット建値
通貨
銘柄コード
(14 年 6 月
建値方式
30 日)
16
2014 年第 3 四半期
3 カ月金利
(14 年 9 月
トータル
30 日)
リターン
1
スポット
リターン
2
2014 年初来
金利
リターン
トータル
3
リターン
1
スポット
リターン
2
金利
リターン 3
アルゼンチンペソ
USD-ARS
8.1310
1 USD / (1 ARS) =
27.20%
7.10%
-3.50%
10.98%
5.00%
-22.64%
35.73%
オーストラリアドル
AUD-USD
0.9433
1 AUD / (1 USD) =
2.86%
-6.61%
-7.27%
0.71%
0.14%
-1.91%
2.09%
ブラジルレアル
USD-BRL
2.2132
1 USD / (1 BRL) =
-7.06%
-9.51%
2.71%
4.46%
-3.47%
8.21%
英ポンド
GBP-USD
1.7109
1 GBP / (1 USD) =
0.56%
-5.09%
-5.22%
0.14%
-1.69%
-2.08%
0.39%
カナダドル
USD-CAD
1.0671
1 USD / (1 CAD) =
1.13%
-4.37%
-4.71%
0.36%
-4.24%
-5.13%
0.95%
チリペソ
USD-CLP
552.45
1 USD / (1 CLP) =
3.84%
-7.58%
0.92%
-9.55%
-12.18%
2.99%
中国人民元
USD-CNY
6.2046
1 USD / (1 CNY) =
1.51%
1.04%
0.47%
0.01%
-1.39%
1.42%
コロンビアペソ
USD-COP
1,877.50
1 USD / (1 COP) =
5.88%
-7.28%
10.70%
-2.16%
-4.71%
2.68%
ユーロ
EUR-USD
1.3692
1 EUR / (1 USD) =
0.03%
-7.72%
-7.75%
0.03%
-7.95%
-8.09%
0.15%
アイスランドクローナ
USD-ISK
112.86
1 USD / (1 ISK) =
5.85%
-5.25%
-6.64%
1.50%
-0.43%
-4.72%
4.50%
インドルピー
USD-INR
60.0435
1 USD / (1 INR) =
8.63%
-0.39%
-2.54%
2.21%
6.97%
0.07%
6.90%
日本円
USD-JPY
101.33
1 USD / (100 JPY) =
-0.09%
-7.59%
-7.59%
0.00%
-3.92%
-3.96%
0.04%
メキシコペソ
USD-MXN
12.9682
1 USD / (1 MXN) =
3.29%
-2.78%
-3.43%
0.68%
-0.81%
-2.92%
2.18%
ニュージーランドドル
NZD-USD
0.8758
1 NZD / (1 USD) =
3.89%
-9.98%
-10.85%
0.97%
-2.47%
-4.94%
2.61%
ロシアルーブル
USD-RUB
33.9783
1 USD / (1 RUB) =
9.66%
-12.11%
-14.19%
2.42%
-11.44%
-17.00%
6.69%
南アフリカランド
USD-ZAR
10.6387
1 USD / (1 ZAR) =
6.40%
-4.18%
-5.74%
1.66%
-3.06%
-7.02%
4.26%
韓国ウォン
USD-KRW
1,011.95
1 USD / (1 KRW) =
-3.66%
-4.11%
0.47%
1.06%
-0.51%
1.58%
スイスフラン
USD-CHF
0.8868
1 USD / (1 CHF) =
-0.05%
-7.15%
-7.15%
0.00%
-6.52%
-6.51%
-0.01%
台湾ドル
USD-TWD
29.870
1 USD / (1 TWN) =
0.88%
-1.55%
-1.76%
0.21%
-1.41%
-2.03%
0.64%
トルコリラ
USD-TRY
2.1185
1 USD / (1 TRY) =
10.00%
-4.78%
-70.10%
2.40%
1.69%
-5.71%
7.85%
米ドル
USD
1.0000
USD
0.28%
0.07%
0.07%
0.19%
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
4.20%
0.19%
注記
(1) 値ザヤと金利によるリターン
(2) 米ドルを「基準通貨」としたときの 通貨レートの変動によるリターン
(3) 3カ月物の実勢金利もしくは NDF(差金決済の先渡し取引)に含まれる金利からのリターン
出所:ブルームバーグ
17
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
資料 3
購買力平価(PPP)分析
(2014 年 9 月 30 日現在)
過大/過小評価(%)
18
ブルーム
ブルーム
ビッグ
バーグ(CPI)
バーグ(PPI)
マック
通貨
ISO コード
平均
OECD
ノルウェークローネ
NOK
25.04%
28.97%
3.79%
スイスフラン
CHF
23.48%
31.28%
17.88%
2.07%
42.67%
ニュージーランドドル
NZD
14.86%
11.98%
26.06%
33.37%
-11.98%
アイスランドクローナ
ISK
12.57%
12.57%
オーストラリアドル
AUD
12.43%
24.28%
22.79%
18.17%
-15.53%
デンマーククローネ
DKK
11.86%
23.81%
11.34%
9.66%
2.64%
カナダドル
CAD
5.53%
9.49%
6.08%
4.29%
2.25%
英ポンド
GBP
2.65%
11.27%
14.70%
-4.94%
-10.43%
ユーロ
EUR
2.41%
-1.93%
10.01%
4.44%
-2.89%
スウェーデンクローナ
SEK
1.74%
17.27%
-18.44%
-13.36%
21.47%
ブラジルレアル
BRL
-3.72%
-3.72%
コロンビアペソ
COP
-14.06%
-14.06%
シンガポールドル
SGD
-22.10%
-22.10%
日本円
JPY
-23.63%
-6.00%
韓国ウォン
KRW
-23.72%
-23.34%
チリペソ
CLP
-31.78%
-31.78%
チェココルナ
CZK
-32.44%
-32.44%
中国人民元
CNY
-41.95%
-41.95%
タイバーツ
THB
-42.11%
-42.11%
フィリピンペソ
PHP
-47.26%
-47.26%
アルゼンチンペソ
ARS
-50.06%
-50.06%
インドネシアルピア
IDR
-51.27%
-51.27%
香港ドル
HKD
-51.98%
-51.98%
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
-23.47%
42.36%
-22.10%
-42.95%
-24.09%
マレーシアリンギ
MYR
-53.32%
-53.32%
メキシコペソ
MXN
-54.31%
ロシアルーブル
RUB
-55.73%
ハンガリーフォリント
HUF
-58.75%
南アフリカランド
ZAR
-61.73%
ポーランドズロチ
PLN
-62.53%
-81.43%
-43.63%
トルコリラ
TRY
-66.69%
-107.44%
-25.94%
-67.94%
-55.73%
-91.58%
注記
出所:ブルームバーグ
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
| © CME GROUP
-25.91%
-61.73%
データはすべての国で入手できるわけではない。
19
-40.67%
先物取引やスワップ取引は、あらゆる投資家に適しているわけではありません。損失のリスクがあります。先物やスワップはレバレッジ投資であり、取引に求められる資金は総代金のごく一部にすぎませ
ん。そのため、先物やスワップの建玉に差し入れた当初証拠金を超える損失を被る可能性があります。したがって、生活に支障をきたすことのない、損失を許容できる資金で運用すべきです。また、一度
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20
| 通貨市場の動向 2014 年第 3 四半期 | 2014 年 10 月 6 日
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