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低被ばく化技術と逐次近似再構成法VeoTM が 低線量肺がんCT検診に

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低被ばく化技術と逐次近似再構成法VeoTM が 低線量肺がんCT検診に
低被ばく化技術と逐次近似再構成法 Veo が
低線量肺がんCT 検診にもたらすもの
TM
JA長野厚生連 小諸厚生総合病院 放射線科
丸山雄一郎
はじめに
た(図 2 左)
。また、最低線量においては Veo TM 画像の方が、FBP
ム幅 40mm である。この撮影条件で胸部 CT 撮影を行った場合の被
画像よりも有意に検出能が高かった(p < 0.001)(図 2 右)。症例
ばく線量は、CTDI vol = 0.07 ± 0.0mGy、DLP = 2.6 ± 0.2mGycm、
を図 3 に示す。
実効線量= 0.04 ± 0.004mSv で、胸部単純 X 線写真正面一方向の
CT 撮影における低線量化を阻む最大の理由はノイズ増加によ
被ばく線量 0.05mSv と同程度の低い線量で撮影が可能である。今
る画質劣化であったが、逐次近似法 Veo TM の出現により、低線量
日低線量 CT といわれているのが CTDI vol = 1.3 ~ 3mGy、DLP =
CT は新しい時代に入ったと言える。肺がん CT 検診における不利
おける Noise Index を 50(以下 NI50)
、40(以下 NI40)に設定し
47 ~ 120mGycm、実効線量= 1 ~ 4mSv であるから、まさに“超”
益の 1 つに数えられていた胸部単純 X 線写真よりも被ばく線量が
た撮影を行い、結節の検出率を検討した。ルーチン低線量 CT の撮
低線量 CT 撮影である。
多い、という理由は今後解消されていくであろう。今回の検討で、
本邦では、1987 年から、胸部単純 X 線写真と喀痰細胞診を用
影条件は、撮影管電流 10mA 固定、撮影管電圧 120kV、管球回転
いた肺がん検診が実施されているが、2009 年の肺がん死亡率(10
時間 0.4 秒 / 回転、ヘリカルピッチ 0.531:1、ビーム幅 20mm である。
万人対)は男性 79.9 人、
女性 28.8 人で、
部位別ではそれぞれ第 1 位、
それぞれの被ばく線量は図 1 に示す。
CTDIvol=0.07mGy という“超”
低線量撮影において、VeoTM 再構成を
“超”低線量胸部CT画像における
逐次近似法VeoTMの効果
用いることで、現在当院でルーチンに撮影されている低線量 CT 画
像と比較して検出能はやや劣るものの、明らかな有意差なく 3mm
第 2 位と依然高率である。肺がんの早期発見・早期治療を目指し
この撮影条件による画像評価を行うために、前述の CT 検診受診
以上の結節を検出可能であることが示された。拾い上げを目的と
て、1990 年代から肺がん検診に CT を活用する取り組みがなされ
者に同意を得てルーチン及び最低線量の撮影を行った。Veo
する肺がん CT 検診においては、十分将来性のある技術と思われる。
ており、2010 年の米国肺がん CT 検診無作為化割り付け試験(NLST)
において、CT 検診群は胸部単純 X 線写真による検診群に比べ、肺
がん死亡率が 20%、全死亡率が 7% 減少していたことが報告され、
ルーチン
NI50
NI40
最低線量
CTDIvol(mGy)
0.65 ± 0.07
1.18 ± 0.4
1.67 ± 0.55
0.07 ± 0.0
DLP(mGycm)
20.4 ± 2.3
36.9 ± 12.7
52.1 ± 17.1
2.6 ± 0.2
実効線量(mSv)
0.28 ± 0.03
0.52 ± 0.18
0.73 ± 0.24
0.04 ± 0.004
図1
肺がん CT 検診は肺がん死亡率低減に有効であることが示された。
TM
再構
成を行った画像と FBP(Filtered Back Projection)画像のそれぞれで、
Veo TM 再構成は画像処理に約 1 時間程度かかるなどの課題もある
結節あり 48 画像、結節なし 52 画像をランダムに表示して、放射
が、今後更なる技術進歩を大いに期待したい。
線科医による読影実験を行った。
ROC 解析で、ルーチンと比べて最低線量の FBP 画像は有意に検
参考文献
1)実効線量の係数は ICRP Pub102 の Chest:0.014 を参照
これを受けて、今後本邦でもますます肺がん CT 検診に対する期待
連続する CT 検診受診者 100 名を対象とした。何れの条件も観
出能が低下していた(p < 0.001)が、最低線量の Veo TM 画像は、
販売名称:マルチスライス CT スキャナ LightSpeed
が高まると予想されるが、普及にあたっては、更なる低被ばく化
察画像は 2.5mm スライス厚とし、肺野条件を WW = 1200、WL =
Az 値は低いものの、ルーチンと比べて有意な低下は見られなかっ
医療機器承認番号:21100BZY00104000 号
を図ることが望まれる。
− 600 で表示した。対象集団に 3mm 以上の結節影を 1 個以上有す
当院では、2000 年より 4 列 MDCT の LightSpeed QX/i を用いて
る者が 40 名いた。ルーチン、NI50、NI40 の 3 条件において、そ
約 12,000 件の低線量 CT 検診を実施してきた。撮影条件は撮影管
れぞれ結節あり 48 画像、結節なし 52 画像をランダムに表示し、
電流 10mA、管球回転時間 0.8 秒 / 回転、ヘリカルピッチ 1.5:1 で、
放射線科医による結節影の読影実験を行った。
被ばく線量は CTDIw = 1.02mGy、DLP = 30.9mGycm、実効線量 1)
その結果、ROC 曲線の Az 値は NI40、NI50、ルーチンの順に高かっ
= 0.43mSv であった。この条件で撮影された低線量 CT 画像で、通
た。これは被ばく線量の多い順に一致しており、AEC により肺尖
常線量で撮影された胸部 CT 画像とほぼ同程度に結節検出が可能で
部や肺底部の画質向上が理由と考えられた。しかし、いずれも統
ある。一般診療における胸部 CT 検査の被ばく線量は 8mSv 前後と
計学的な有意差はなく、被ばく線量の増加に伴い検出能が有意に
いわれており、MDCT を用いた低線量 CT 検診における被ばく線量
向上しているとはいえなかった。受診者の体格によっては、肺尖
は平均 1.5mSv と、低く抑えられてはいるものの、胸部単純 X 線写
部や肺底部においても CT 装置の最低管電流である 10mA とほとん
真正面一方向の被ばく線量 0.05mSv よりは多く、CT 検診の不利益
ど変わらない管電流値しか出力されていない場合もあり、AEC の
の 1 つとして取り上げられている。低線量 CT 肺がん検診の佐川班
効果は通常線量で撮影する場合とは異なり限定的と思われる。結
(2011 年)では、低線量 CT 撮影の目安として、CTDIvol 4mGy 以下
を推奨している。
低線量CT撮影における
自動露出機構
(AEC)
の効果
2
80kV、管球回転時間 0.4 秒 / 回転、ヘリカルピッチ 1.375:1、ビー
節の拾い上げという CT 検診の目的からすれば、低線量 CT におい
ては、AEC は必須のアイテムではないと考える。
類型 Discovery CT750 HD のオプション構成品画像再構成サーバーです。
図2
(左)
ルーチン FBP(赤線)
と最低線量 VeoTM(緑点線)
/
(右)
最低線量 VeoTM
(緑点線)
と最低線量 FBP
(赤線)
a
b
c
d
“超”低線量CT 撮影
2011 年 12 月に Discovery CT750 HD が導入され、逐次近似再構
CT の被ばく線量低減に向けて、
自動露出機構(AEC)が装備され、
成法 Veo TM も利用できるようになった。CT 検診においては、要精
広く臨床に使用されている。低線量 CT 検診においても、AEC を利
検率を低く抑え、かつ、陽性反応的中度を向上させるため、判定
用した撮影が普及してきているが、その使用基準については未だ
に適切な画像を最低限の線量で撮影することが求められるため、
一定の見解はない。2011 年 12 月に当院に Discovery CT750 HD が
ノイズの多い低線量 CT 画像において、ノイズ低減効果が高いとさ
導入され、AEC が利用できるようになった。そこで、現在当院で
れる VeoTM の効果を検討した。
実施している低線量 CT 検診における撮影条件(以下ルーチン)と、
Discovery CT750 HD のスペックにおいて、最低の被ばく線量と
図3
撮影管電流値を 10 ~ 50mA で自動露出させ、2.5mm スライス厚に
なる撮影条件(以下最低線量)は、撮影管電流 10mA、撮影管電圧
(a)
ルーチン FBP/
(b)
最低線量 FBP/
(c)
ルーチン VeoTM/
(d)
最低線量 VeoTM
VeoTM 再構成を行うことで、既存血管影の描出が良好になっている。最低線量のCT 画像では、
VeoTM 再構成前にはわからなかった右上葉の結節影が明瞭に描出されている。
GE today May 2012
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