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Regioselective Enzymatic Acylation of Methyl Shikimate.
Experimental
Influence of Acyl Chain Length and Solvent Polarity on Enzyme Specificity
著者: Nuria Armesto, Miguel Ferrero, Susana Fernandez, and Vicente Gotor*
雑誌名: J.Org.Chem. 2002, 67, 4978-4981
紹介者:
高木拓也
2009.6.23(火)
Abstract
Candida Antarctica lipase A (CAL-A)は、methyl shikimate (2)
の C-4 位の第二級ヒドロキシル基を選択的にアシル化する。
このアシル化について、アシル化剤と溶媒極性の両方の影
響を研究した。CAL-A の選択性は短鎖のアシルドナーによ
りほぼ決定する。しかし、アシルドナーが長鎖の場合、
C.antatctica lipase B (CAL-B)を用いた方がより良い選択性が
Resuls and discussion
得られた。
異なる酵素による vinyl acetate でのアセチル化
Introduction
シキミ酸(shikimic acid (1))はシキミ酸経路と呼ばれる植物、菌類、微生物に特有の重要
な生合成の反応中間体であり、哺乳類に影響のない除草剤、抗真菌剤、抗菌剤として重
要である。結果、シキミ酸エステル誘導体の合成が多数行われた。
シキミ酸経路関連物質であるキナ酸(quinic acid (2))とシキミ酸は構造内に似たような
活性のヒドロキシ基をもつ。それらの明確な区別は難しく、保護/脱保護の過程を用いる従来
の化学合成と比較して、酵素による合成は有効であり、エステル合成などに広く用いられてき
た。シキミ酸とキナ酸の飽和あるいは不飽和エステルは植物の代謝物であり、そのいくつかは
①固定化された酵素(CAL-A、CAL-B、PSL-C)は高い変換率を与えた。
広い生理活性をもっていることが知られている。chromobacterium viscosum (CVL)由来のリパー
②CAL-A は 1h たらずで C-4 のヒドロキシ基を位置選択的にアシル化し、モノアシル化物 8a
ゼにより、methyl quinate(4)と benzyl quinate (5)の C-4 のヒドロキシ基が選択的にエステル化さ
が生成した。
れることが報告されている。しかし、methyl shikimate (2)のアシル化の位置選択性は報告され
③PSL-C でも C-4 のアシル化がみられたが、その選択性は低かった。
ていない。
④CAL-B や CVL の場合、選択性は低いが C-3 のアシル化が確認された。
⑤protease subtilisin では C-5 に対するある程度の選択性が見られた。
⇒ 本研究では、酵素による位置選択的な methyl shikimate のアシル化と位置選択の比率にお
⑥CRL の場合、低変換率内でモノアシル化 7a、8a、9a の等量の混合物が得られた。
ける酵素、溶媒、温度、アシル鎖長などの要因の影響を調査する。
⇒ methyl shikimate のアシル化には CAL-A を使用した。
-1-
溶媒選択
a. Isopropyl acetate : 30℃で 4.5h 後、45%変換した。C-4 への良好な選択性を示し、化合物 8a
・基質の極性を考慮して、溶媒には logP < 2 (極性溶媒)のものを使用した。
を形成した。
⇒ モノアシル化種の場合、そのような溶媒は
b. oxime esters : 30℃、shikimate (2)と oxime ester (10b)の比を 1:10 で行った場合、23h 後にすべ
基質の溶解やより極性の高い生成物の形成に有利に働く。
て変換し、C-4 位へのそこそこの選択性があった。
・CAL-A は固定化されているので、極性溶媒中での触媒活性の低下はあまりない。
※2:10b = 1:5 の場合、C-4 位への選択性は増加し、誘導体 8a の収率は 75%になった。
・低温での反応は vinyl acetate 内の選択性を高めている。
c. 2,2,2-trifluoroethyl acetate (10c) : ほぼ完全に C-4 モノアシル化物が形成した。
d. acetic anhydride (10d) : ほぼ完全に C-4 モノアシル化物が形成した。
※生成する酢酸(酵素を阻害する)を除去するために、反応混合物中に K2CO3 を添加した。どの
アシル化剤を用いた場合でも、位置選択性の変化は見られなかった。
異なるビニルエステルによるアシル化
○ほとんどの溶媒で高い変換率と位置選択性が確認された。
○tert-butylmethyl ether(TBME)と toluene で良い結果が得られた。
○TBME 内で反応させた場合、反応生成物の 97%が C-4 アシル化物 8a であった。
⇒ 今後の CAL-A を触媒としたアシル化において溶媒には TBME を使用した。
異なる酢酸エステルによるアセチル化
Table 4 は各々のビニルエステルに対しての最適条件を示す。
b. vinyl butyrate (6b) : 高い選択性でアシル化され、
90%が C-4 位モノアシル化物 8b であった。
c. vinyl butyrate (6c) : C-4 位へまずまずの選択性を示した。
d. vinyl decanoate (C10) : 選択性を示さなかった。
e. vinyl laurate (C12) : 選択性を示さなかった。
f. vinyl stearate (C18) : 選択性を示さなかった。
⇒ 選択性 : vinyl acetate ~ propionate > butyrate > decanoate ~ laurate ~ stearate
-2-
g. vinyl chloroacetate (6g) : C-4 位アシル化物である chloroacetate 8g が選択的に得られた。
※カラムクロマト中に C-4 から C-3 や C-5 位に移動
アセトン中での CAL-B、CAL-A、PSL-C を用いた中・長鎖ビニルエステルによるアシル化
⇒ C-4 chloroacetate の場合の移動は、塩素原子の影響
h. vinyl acrylate (6h) : C-4 位への位置選択性(93%)を示した。
i. vinyl crotonate (6i) : C-4 位への位置選択性(96%)を示した。
⇒ 選択性 : vinyl butyrate > vinyl crotonate
CAL-A は不飽和アシル鎖に対して、より特異的に働く。
j. vinyl benzoate (6j) : 30℃、比率 1:5、1:10 で反応を行った場合 100%変換せず、40℃で行った
場合すべて変換し、C-4 位に対して高い選択性を示した。
CAL-B を用いた vinyl stearate (C18)によるアシル化
選択性 : vinyl stearate (C18) > vinyl laurate (C12) > vinyl decanoate (C10)
Summary
methyl shikimate の選択的アシル化において、酵素、溶媒、温度、アシル鎖の長さなどの要因
の影響について研究を行った。酵素に CAL-A、溶媒に tert-butylmethyl ether、アシル化剤にビ
ニルエステルを用い、methyl shikimate をアシル化した場合、最も嵩高い C-4 ヒドロキシ基が
高い選択性で反応する。CAL-A は長鎖より短鎖エステルに対して特異性をもつ。選択性は以
下の順である。vinyl acetate ~ propionate > butyrate > decanoate ~ laurate ~ stearate。
vinyl acryate、vinyl crotonate、vinyl benzoate においても優れた結果が得られた。長鎖のビニル
エステルに対し、溶媒を tert-butylmethyl ether から acetone に変えることにより、位置選択性は
①acetone、1,4-dioxane、tert-butyl alcohol、acetonitrile が C-4 位ヒドロキシ基に対する優れたア
向上した。この場合、CAL-B は vinyl stearate と(2)のアシル化において C-4 位に選択性をもつ。
シル化を示した。
有機溶媒中での生触媒合成によって、shikimic acid の新たな飽和、不飽和、芳香族のモノエス
変換率 : acetone > 1,4-dioxane ~ t-BuOH > MeCN
テルが合成された。これらは健康的に有用な誘導体になりうる。
②methyllene chloride、chloroform : そこそこの選択性を示した。
③toluen、TBME : 選択性は示さなかった。
モノアシル化物のみ生成
極性 : 長鎖エステル > 短・中鎖エステル
⇒極性溶媒中で長鎖エステル沈殿 ↓
ポリアシル化・転位反応回避
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