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旧ソ連主要国のエネルギー需給・政策動向と 温室効果ガス排出権取引
旧ソ連主要国のエネルギー需給・政策動向と 温室効果ガス排出権取引,共同実施の可能性 −第 11 回海外エネルギー関連機関との定期交流− いし だ ひろゆき 政策・予測研究グループ 主任研究員 石田 博之 (現 計量分析部計量分析グループ) はじめに カニズムにおける役割と課題について調査 を行った。訪問先は,モスクワのエネル 1999 年 5 月 8 日から 23 日までの約 2 週間 ギー研究所,世界銀行モスクワ事務所,キ にわたって,1 1 回目のヨーロッパエネル エフの経済省付属研究所と環境保護原子力 ギー関連機関(6 カ国,9 機関)との定期交 安全省,ウィーンの石油輸出国機構 流を行った。 (OPEC)事務局と国際応用システム分析研 今回の定期交流の目的は,旧ソ連主要国 究所(IIASA),パリの国際エネルギー機関 の温室効果ガス削減における排出権取引, (IEA),ジュネーブの UNCTAD,ロンドン 共同実施の可能性を調査することであっ の王立国際問題研究所である。 た。旧ソ連諸国は 1991 年のソ連邦崩壊以 今回の調査は,団長を藤目常務理事が勤 降,経済の混乱が続き,エネルギー消費が め,団員は石田以下政策・予測研究グルー 減少,1996 年の CO 2 排出量も 1990 年比で プの森田主任研究員(現・計量分析部需要 40% 程度減少となっている。また,設備の 予測研究グループ),中野研究員(現・計量 老朽化などにより省エネルギーの余地も大 分 析 部 計 量 分 析 グ ル ー プ ), 本 多 研 究 員 きい。日本や米国をはじめとする先進各国 (現・総合研究部環境グループ)の合計 5 名 にとって温室効果ガス(GHG)の削減に向 のメンバーで構成されている。本報告は, け排出権取引や共同実施といった京都メカ これらの団員が分担執筆したものを石田が ニズムの活用が不可欠な状況の中で,ロシ まとめたものである(石田)。 ア,ウクライナなど旧ソ連諸国は重要なポ ジションを占めると考えられる。 1.OPEC(石油輸出国機構)事務局 そこで今回は,ロシア,ウクライナに加 え,京都メカニズムの設定や世界のエネル 毎年行っている海外エネルギー関連機関 ギー需給に深く関わっている国際機関など との定期交流の中で,ウィーンにある から訪問先を選定し,旧ソ連諸国の京都メ OPEC 事務局は IEA とならび主要な訪問先 である。今回は 10 回目の訪問で,出迎えて は 2010 年で 19.4 ドル / バレル(1998 年実 下さった調査局長の Dr. Shokri Ghanem と 質価格),2020 年で 22.5 ドル / バレルを想 は既に面識もあり,非常に和やかな雰囲気 定している。 のもと,会議をスタートすることができ その結果,世界の石油需要は,1997 年か た。 ら 2000 年までが年率 1.2%,2000 年から われわれは今回,旧ソ連諸国のエネル 2010 年までが同 1.4%,そして 2010 年から ギー需給と環境政策をメインテーマにソ 2020 年までが同 1.2% の増加となり,2020 連・欧州各国のエネルギー関連機関を訪問 年には 9,900 万 b/d となる(表 1,表 2)。昨 したわけであるが,OPEC においては,相 年の見通し(同 1 億 b/d)に比べ世界の石油 手のニーズに対応するため切り口を変え 需要はわずかに減少しているが,これはア て,団長である藤目が「アジア地域におけ ジア諸国を含む発展途上諸国や旧ソ連諸国 るエネルギー需給見通し」について,また の需要見通しが経済・金融危機などにより 石田が「日本の長期エネルギー需給見通し 2000 年時点で下方修正されたためである。 と課題」についてプレゼンテーションを にもかかわらず地域別には中国,インドを 行った。 含むアジア地域の伸びが相対的に高く,ア OPEC からは約 10 数名の参加者が集ま ジア太平洋地域(日本を除く)の世界の石 り,熱心に当方のプレゼンテーションに聞 油需要に占める割合は,1997 年の16%から き入ってくれた。特にアジア地域における 2020 年には 21% に拡大するとしている。 エネルギー需給見通しについては,彼らも 供給については,旧ソ連諸国などで生産 関心が高く,活発な質疑応答が行われた。 が増加するものの北米や西欧などでは2000 質問には,環境制約と石炭消費の増加可能 年以降減産となり非 OPEC 全体の生産量が 性,インドネシアの石油輸入国への転換時 2010年以降ピークアウトするとの見通しで 期,非商業用エネルギー(バイオマスなど) ある。O P E C の市場占有率は 1 9 9 7 年の の取り扱い,パイプライン導入による同地 39.5% から 2020 年には 51.7% に増大する。 域のエネルギー消費構造への影響といった なお,米国エネルギー省の非 OPEC の生産 内容が寄せられた。 見通しについては楽観的すぎるという評価 また,OPEC 事務局からは最新の世界エ をしていた。 ネルギー需給見通し(1999 年 5 月)が Mr. 地球温暖化問題に関しては,京都議定書 G. Brennand によって報告された。それに シナリオを別途作成し,エネルギー需給や よると,まず世界経済の成長率について 原油価格への影響を分析している。京都議 は,近年のアジアや日本の経済状況を考慮 定書シナリオでは,① 1999 年から OECD 地 して昨年の見通しより下方修正され,1997 域に炭素税を導入するケース,②炭素税に 年から 2000 年が年率 2.6%,2010 年までが 加え OECD 諸国間で京都メカニズム(排出 同 3.4%,2020 年までが同 3.1% で順調に推 権取引,共同実施)を導入するケース,③ 移するとみている。次に原油価格について 炭素税に加えANNEXⅠ国 *1 で京都メカニズ ム(同上)を導入するケース,④炭素税に る(低価格ケース)。この場合,OPEC 諸国 加え全世界で京都メカニズム(同上+ の石油輸出からの減収幅(1998 年価格)は CDM)を導入するケースを設定し,温室効 低価格ケースでは 2010 年で約 600 億ドル / 果ガス削減目標達成のための必要炭素税額 年と原油価格が下落しない場合の約 200 億 を試算している。①のケースでは,北米で ドル / 年に比べ 3 倍程度拡大するとの見通 CO 2 1 トン当たり約 70 ドル(1998 年実質価 しとなっている(石田)。 格),西欧で同約 130 ドル,太平洋地域で同 2.IEA(国際エネルギー機関) 約 90 ドルの課税が必要となる。しかし,京 都メカニズムを広範に適応することで税額 は徐々に低下し,②のケースでは各地域一 律約 86 ドル,③のケースでは同約 39 IEA では,Division of Energy and Envi表 1 世界経済と石油需要見通し(基準ケース) ドル,そして④のケースでは同約 15 (年平均 %) ドルの課税で,2010 年の排出削減目 標が達成されるとしている。 2000 2010 ∼2010 ∼2020 2.1 2.3 2.2 実質GDP OECD計 また,石油需要については,①の 非OPEC途上国 ケースでは2010年で参照ケースに比 旧ソ連 中国 べ約 700 万 b/d 減少するのに対して, その他ヨーロッパ 京都メカニズムを導入する④のケー スでは約300万b/dの減少にとどまる 2.7 3.9 3.8 -0.4 2.6 2.5 7.5 6.7 4.6 3.5 2.9 2.4 OPEC計 -1.4 3.8 3.8 世界計 2.6 3.4 3.1 石油需要 ことになる。①のケースでは OPEC が毎年約 200 億ドルの減収を余儀な OECD計 0.9 0.8 0.5 非OPEC途上国 1.7 2.3 2.0 旧ソ連 くされることとなるが,④のケース では OPEC の損失が同約 100 億ドル に軽減されるとしている。ここでは 石油需要の減少分は OPEC が吸収す 1997 ∼2000 -0.9 1.5 1.2 中国 4.1 3.9 3.0 その他ヨーロッパ 4.1 1.3 1.1 OPEC計 1.5 1.9 1.6 世界計 1.2 1.4 1.2 (出所) OPEC(1999) "Oil & Energy Outlook to 2020". 表 2 石油供給見通し ると仮定しているため,原油価格の 1997 2000 2010 2020 73.4 76.2 87.9 99.0 OECD計 22.0 22.6 20.2 16.9 下落にとどまる。 非OPEC途上国 10.3 11.3 12.6 14.5 旧ソ連 7.1 7.3 9.8 10.5 一方,石油需要の減少分を全て非 中国 3.3 3.3 3.5 3.6 OPEC に吸収させ,OPEC の生産水準 その他ヨーロッパ 0.2 0.2 0.2 0.2 44.4 46.4 48.3 47.8 を参照ケースと同程度に維持した場 OPEC計(NGL含む) 29.0 29.8 39.6 51.2 OPECシェア(%) 39.5 39.1 45.1 51.7 下落は緩やかなものとなり,2010 年 で 0.6 ドル / バレル(1998 年価格)の 石油供給(100万b/d) 非OPEC計 合は,原油価格の下落は 2010 年で 8 ドル / バレル(1998 年価格)に拡大す (出所) OPEC(1999) "Oil & Energy Outlook to 2020". *1 国連気候変動枠組条約の附属書Ⅰ国(ANNEX Ⅰ国) ronment の長である Mr. Jonathan Pershing, 1990年の各国実績の比で按分してもらえれ Office of Non-Member Countries の Ms. ばおおよその見当はつけられるだろうとの Isabel MurrayとMr. Randolf Granzerの3人 ことであった)。 の方々にお会いした。 これに対し,排出削減努力なしに得られ まず,Mr. Pershing から,京都メカニズ る膨大な排出枠(いわゆるホット・エアー) ム,特に排出権取引制度とロシア・ウクラ の是非についての見解を求めたところ,基 イナとの関係について,主に制度論的な観 本的にはホット・エアーは容認する。その 点から話を伺った。同氏は,少なくとも現 理由は,そもそも排出権取引制度はこれら 状では,この問題についての IEA としての の排出枠が生じることを見込んで設計され 公式なスタンスというものはなく,よって ているという非常に政治的な性格を帯びた ここでのコメントは,主に自身のこれまで ものであるからだということであった。 の研究・分析に基づいた上でのものである この結果,②の前段に対しての回答も示 という前置きを述べた上で,われわれの質 されたため,以後は,具体的な論点につい 問に回答してくれた。 て,質疑応答を行った。 同氏に対するわれわれの質問項目は,大 まず,実際に売買できる以上の排出枠を きく分けて,①排出権取引における売り手 取り引きしてしまう「売りすぎ」への懸念 はほぼロシア・ウクライナに限られるとい に対しては,これを遵守させるには,買い う認識でよいか,②ロシア・ウクライナに 手責任制度を採用すること,あるいはロシ 関しては,信頼性の問題や不確実性などを アなど売り手国との取引に関するモニタリ 懸念する声も聞かれるが,京都メカニズム ングや認証などに際し,その売り手側にも (特に排出権取引制度)を有効に機能させ 金銭的な負担を求めるような条件整備を行 るためにはこの 2ヶ国の参加が必要か,ま うことで対応できると考える。どちらが優 ¨ た京都メカニズムへの両国の取り込みを上 れているということでなく,やはり最終的 手に行うためにはどのような施策が求めら には政策的な判断に委ねられる部分であろ れるか,の 2 つであった。 うとのことであった。 ①に関しては,I E A が発行している また,取引への参加に関する要件である World Energy Outlook(1998 年版)を引用 「適格性要件(eligibility)」に対しては,こ し,第一コミットメント期(2008 ∼ 2012 の用語には,①取引開始にあたっての適格 年)におけるロシア,ウクライナの CO 2 排 性,②取引は開始されたが,途中のある時 出量は 1990 年水準よりもかなり低い予測 点から適格性をみたさないような状態と となっており,大量の排出権を売ることが なったときに,以後の取引を禁止しうるか できる有力国となる見込みであるという見 (適格性の剥奪),③責任(liability),つま 解が示された(ただし,同書には,ロシア, り,過去の取引をある時点でチェックし ウクライナという一国ごとの数字は示され て,それが公正なものとは認められない場 ていない〔移行期経済諸国の中に包含〕。 合(上記の売りすぎの事例など)には,当 該取引によって得た利益を返済させるこ カニズムとの関係では,外国からの直接投 と,という3つの意味が考えられる。そし 資の受け入れに積極的な姿勢を示し,共同 て,これらはすべて解決されなければなら 実施(JI)に対しても乗り気である)など ない問題である。現時点では,これらの解 についての,また Mr. Randolf Granzer から 決方法について個人的な見解は有していな はウクライナの最近のエネルギー情勢など いが,現在機能している市場システム(株 についてのプレゼンテーションが行われた 式市場や商品取引市場)の手法を活用する (排出権取引制度との関連では若干,外れ ことが有効ではないかと考えているとのこ るので省略する)。ただ,残念ながら,IEA とであった。 独自の,両国に関する経済見通し,エネル こ の ほ か , 取 引 価 格 の 透 明 性 ギー需給見通しや CO 2 排出見通し(その前 (transparency),情報の公開性,モニタリン 提や予測手法も含む)については,IEA で グの手法などについての見解も伺った。 は,World Energy Outlook の数字が唯一の Mr. Pershingは,現在,論点として挙がっ オフィシャルなものであり,個々の国の数 ているこれらの問題の大部分は解決が必要 字については明らかにしないとのことから なものであると考える。しかし,すべてを 入手ができなかった(本多)。 排出権取引市場の立ち上げ当初から枠組み の中に取り込む必要もないのではないか, 3.UNCTAD (国連貿易開発会議) ある程度,マーケットメカニズムというも のに委ねてみるのも有効ではないか,とい 今回で 10 回目になる定期交流であるが, う見解であった。 UNCTAD は初めて訪問した国際機関であ なお,温室効果ガス排出量の大きさや京 る。UNCTAD は発展途上国の貿易に関す 都メカニズムにおける潜在的な市場規模で る南北問題の討議の場として 1964 年に設 共通する中国との関連では,(京都メカニ 立された。ジュネーブに本部を構え,188カ ズムへの)ロシアの参加が実現しなけれ ¨ 国・地域が現在加盟している。今回の調査 ば,中国の参加も望み得ない。そして,こ 対象である国際的な排出権取引システム の両国の参加なしに,気候変動問題を解決 は,第一コミットメント期(2008 ∼ 2012 することはできないだろう。第一コミット 年)においては ANNEX Ⅰ国に参加が限ら メント期およびそれ以降も含めた長期的な れているが,UNCTAD では発展途上国が スパンで考えれば,ロシアのみならず中国 参加した形でのシステムの構築を目指し, の参加も得られるような手段・方法を考え 途上国への普及啓蒙活動を行っている。今 ることは非常に重要である,とのことで 回はここに「温室効果ガス排出権取引」部 あった。 局長の Dr. Frank Joshua を訪問し,IEA の 次に,Ms. Isabel Murray からはロシアに Mr. Pershing 同様,主に制度論的な観点か ついての最近のエネルギー需給の動向や経 ら話を伺った。Dr. Joshua は最近設立され 済危機前後での政策の変化(特に,京都メ た IETA(International Emission Trading Association)においても主たる役割を担っ に対しては時間の浪費であると批判的で ている。大変多忙な方であり,ウィーンの あった。氏を中心とする UNCTAD の分析 国際会議から戻った翌日であるにもかかわ によれば,取引制度をスタートさせるため らず,われわれの面会を快く引き受けて下 には,一定量の排出枠を国際的に割り当て さった。当日はスイスの祝日であったため ることが重要である。なぜなら,割当を行 国連内部への立ち入りは禁じられており, うことで,いくつかの国は余剰をもち,い われわれが宿泊したホテルの1室でのイン くつかの国には不足が生じることになり, タビューとなった。 取引を促すことになるからである。つま 最初に,排出権取引における売り手とし り両国の参加は,国際的に余剰を生じさ てロシア・ウクライナをどう見るか,他に せ,当初から需給が不均衡化し,早期の開 有望な国があるかどうかについて質問し 始が促されるということであった。 た。これに対して氏は,期間を区切って考 また,数値目標の達成に関しては,第一 えなければならないとして,第一コミット コミットメント期に関しては,柔軟性措置 メント期についてはホットエアーの影響も を活用することによって,比較的低コスト 大きく両国が取引相手として欠かせないと で可能だと考えている。1990年比マイナス 答えてくれた。また,第一コミットメント 15 ∼ 20% くらいも可能ということであっ 期において両国以外に有望な国としては, た。特に,途上国への CDM を活用するこ 森林吸収の可能性の大きい豪州と削減目標 とは,先進国にとっては低コストで対策を 達成が比較的容易な英国と東欧諸国を挙げ 講じることができるという意味で," l o w た。しかしながら,第二コミットメント期 hanging fruit(おいしいとこ取り)" である 以降についてはわからないとの回答であっ と説明してくれた。 た。 第二コミットメント期に関しては,多く 次に,排出権取引制度あるいは柔軟性措 の国の参加を促す上で,NGOあるいは国際 置を有効に機能させるためにロシア,ウク 機関が排出削減を比較的低コストで実行可 ライナの参加は必要かどうかについて質問 能だと認識することも重要であるとのこと した。この質問に対しても,氏は両国の参 であった。ただし,第二コミットメント期 加は,特に第一コミットメント期でのシス に各国政府や民間企業などの取引主体がと テムの柔軟性を高め,そして削減コストを る行動によって,コストは上昇に転ずる可 低下させる点で重要であるとして,両国の 能性もあるということであった。そこで, 必要性を強く訴えた。両国のホット・エ 第二コミットメント期においてコストが上 アーに関しては,そもそも柔軟性措置の枠 昇するのは需要が供給を上回るからかどう 組みが,米国や日本といった排出量の多い か,尋ねてみた。すると,第一コミットメ 国(debt country)を参加させ,目標を達成 ント期での京都メカニズムによる削減効果 するようにデザインされているとして, が,たとえば 15% から 20% という高い水準 ホット・エアーを対象外とする EU の議論 で現れるのなら,それを受けて,第二コ ミットメント期でも,政府(及び民間企業) もられている排出権取引市場に発展途上国 は京都メカニズムを削減手段として選択す を早く参加させたいと考えているからであ るため,排出削減コストが上昇するであろ る。そのため UNCTAD では各国へ京都メ う。しかし,第一コミットメント期での京 カニズムについて説明を行っている。しか 都メカニズムによる削減効果が,1 ∼ 5% 程 し,アルゼンチンやチリ,韓国などが前向 度に留まるのであれば,政府及び民間企業 きなのに対して,UNCTAD がもっとも参 が京都メカニズムを手段として選択しない 加を望んでいる中国,インドは京都メカニ ため,コスト(あるいは排出権価格)は,低 ズムに対して否定的だそうである。日本へ く抑えられるとのことであった。 の期待も大きく,これら両大国を制度に引 ロシア・ウクライナ両国に関しては,し き入れるため,日本には重要な役割を果た ばしば信用できないとの議論がなされる して欲しいとのことであった(石田)。 が,この点に関して氏は,そのことは正し いと前置きをしながら,以下の点から排出 権取引の可能性について前向きな見解を示 4.IIASA (国際応用システム分析研究所) した。一つは両国とも京都議定書の規定に 従わなければ罰則が科されることと,もう IIASA は,環境・経済・エネルギー・技 一つは両国ともこの制度により長期にわ 術などに関わる地球規模の課題についてシ たって大きな利益を得られることから,規 ステム分析を行っている非政府国際研究機 定違反などによりみすみす制度を崩壊させ 関である(1972 年設立)。 てしまうことはないであろうという点であ OPEC が定期訪問先になっていることか る。現在は両国に関するリスク面が強調さ ら,ウィーンには毎回来ている。IIASA も れすぎているが,後者については過小評価 ウィーンに位置しているのだが,こちらは しないほうが良いとのことであった。 その年のテーマに応じて訪問する回としな 最後に,柔軟性措置実施に向けた い回がある。今回のテーマは IIASA の研究 UNCTAD の姿勢および役割などについて とも密接なものであることから,昨年に続 質問した。UNCTAD は排出権取引の重要 いての訪問となった。 性をこれまで一貫して主張してきた。一 IIASA は,ウィーンの市街から車で 30 分 方,環境税の導入や排出削減のための自主 ほど行った郊外にある。元はマリアテレジ 的努力には消極的な立場であった。このよ アの冬の宮殿であったラクセンブルクの広 うな姿勢を示すのは,UNCTAD が発展途 い館に入っている。折しも,われわれが訪 上国(特に,中国,インド)も参加した形 問したのは,現地での連休の谷間だったこ での国際的な排出権取引システムの構築を ともあり,建物内はおそらく普段にも増し 主眼としているためである。それは,彼ら て森閑としていたが,このような時期にも が C D M の市場規模は小さいと見ており, 関わらず,われわれを迎えてくれたのは, 500 億ドルから数千億ドルに達すると見積 Environmentally Compatible Energy Strate- gies の Dr. Leo Schrattenholzer と Dr. Ger Klaassen である。特に,Dr. Klaassen は排 入った。 【売り手/買い手責任論や遵守規定について】 出権取引に関する著述も多い。 これらの問題はきわめて法的・政治的な まずは,排出権取引の売り手はロシア・ 問題であり,科学的・経済的アプローチを ウクライナに限られるとみているか,他に 専門とする者としては,研究の範疇を超え 有力な国はあるかについて質問した。これ ており,的確な答えをすることができない に対しては,ロシア・ウクライナについて というコメントであった。 は,京都メカニズムの導入の経緯からいっ 【適格性要件について】 ても,これらの国を抜きには,その成功は あまりにも厳しい要件を課すと,ロシア あり得ないから当然,有力な売り手となる やウクライナのような国は,システムへの と考えているとのことであった。この2ヶ 参加ができなくなってしまう可能性がある 国以外については,東欧諸国が有力視され だろうという指摘がなされた。 る。また,現時点では,排出権取引には制 【モニタリングについて】 度上,組み込まれていないが,中国とイン モニタリングは,国内割当をするのかし ドの潜在量が非常に大きいとみている。し ないのか,またそのやり方によっても問題 かし,中国をはじめ途上国には京都メカニ が変わってくる。国内割当の方法も大きく ズム(現状では,特に,クリーン開発メカ 上流割当と下流割当の2つに分けられる ニズム〔CDM])への不信や懸念があるこ が,特に下流割当(一般に,電力は下流に とから(先進国によって削減コストの安い 含まれる)とした場合には,モニタリング プロジェクトを漁られてしまう),今後,途 は非常に困難となる。いずれにしても,適 上国の参加に関する問題を解決していくこ 格性要件と同様,厳しすぎる要件を課す とも重要であると考えているとのことで と,ロシアなどの参加を不可能にしてしま あった。 う可能性があるとのことだった。 次に,排出権取引制度を有効に機能させ るために,ロシア・ウクライナの参加は必 この他,IIASA でも,具体的なデータの 要かという点を訊いた。これに対しては, 入手可否について,ロシア・ウクライナの 若干,質問の趣旨からはずれるが,米国に 経済見通し,エネルギー需給見通しや CO 2 おけるSO 2 排出権取引制度が構築までに20 排出量見通しを独自に作成しているかを訊 年以上を要していることを挙げ,CO 2 排出 いた。しかし,分析は旧ソビエト連邦とい 権取引制度の国際的な枠組み作りにもかな う一本で行っているとのことだった。ま りの時間を要するであろうという見解を示 た,分析の前提となる諸データは,IEA や した(要するに,懸念される事項はあるが, BP Statistical Review of World Energy など 試行錯誤で進めて行くしかないということ 公式の統計資料から拾っており,IIASA 独 を言いたかったようである)。 自のデータは使用していないということ 以後は,個別論点についての質疑応答に で,こちらの面での収穫は少なかった。 この後は,共同実施(JI)やクリーン開 じめ西欧にある研究機関に対する当方の質 発メカニズム(CDM)といった排出権取引 問内容が制度論的な面にやや傾きすぎたこ 以外の京都メカニズムにつき,意見交換を との影響が大きい。会見を通じ,あらため 行った。 て地球環境問題の領域の広さと深さを認識 Dr. Schrattenholzer と Dr. Klaassen は,プ されられた次第である(本多)。 ロジェクト・ベースの JI や CDM のほうが 開始が容易であり,またこれらから始める 5.ウクライナ経済省付属科学研究所 方がよいと考えているという見解を示し た。排出権取引の対象国と JI の対象国はほ 1991 年 12 月,ウクライナの独立表明が ぼ重なるが,より大規模な排出権取引制度 引き金となってソ連邦が解体に追い込まれ の枠組み作りを進める一方で,JI を通じて た。ウクライナは経済改革の推進を柱とし 取引方法などの経験を積むことが肝要だと て独自の道を歩み始めたが,独立直後から いうのがその理由だそうである。 深刻な経済危機に陥り,西欧各国をはじめ これに対し,当方はロシアは経済危機に IMF,世界銀行など諸機関の積極的な支援 より資金面での不確実性が高く,JI を進め により近年になってやっと回復の兆しが見 るのは難しいのではないかという問いを投 え始めたところである。ウクライナ経済省 げかけた。これに対しては,説得力のある (Ministry of Economy)付属科学研究所は, 反論は得られず,最終的には政治的な要素 政府の直属機関としてエネルギー,経済に が大きいので明確な回答をすることは難し 関する予測を行っており,予測の結果は政 いとされた。 府のさまざまな施策に反映されている。ウ 次に,ロシアやウクライナについて,い クライナの現在・将来におけるエネルギー くつかの不確実性が懸念されている中で, 需給,経済動向,環境問題などを把握する たとえばこの2ヶ国の参加がないような場 目的から同研究所担当者との面談を求めて 合に,日本や米国などが京都議定書の数値 いたところ,在ウクライナ日本国大使館の 目標を達成するにはどうしたらよいと思う 仲介により訪問が実現した。研究所では かについて尋ねた。 Naumenko 所長,Mel'nyk エネルギー資源・ この点については,Dr. Schrattenholzer 省エネルギー課長以下非常に親切に受け入 は CDM という手段をとることになるとい れて頂き,両研究所の紹介から始まり非常 う意見であったが,Dr. Klaassenはロシア・ に和やかな雰囲気で会談が進行した。 ウクライナの参加がなくては自分たちの試 科学研究所は旧ソビエト連邦時代の1962 算からして成り立たず,このような仮定は 年に国立研究所として設立された。1991年 ありえないと強調していた。 のウクライナ独立後は経済省の所属とな 本ミーティングにおいては,D r . り,経済省が立案する施策に対して主に計 Schrattenholzer,Dr. Klaassenが答えづらそ 量的な側面からのサポートを行っている。 うな箇所も散見された。これは,IEA をは 326 名の研究者のうち 7 割が自然科学系の 学位を有しており,政府の指示による経済 で,石炭産業に関して次のような補足説明 予測の策定を行なう他,エネルギー問題, があった。石炭の採掘コストが非常に高い 経済問題,生産複合体(コンプレックス)の ため,ソビエト連邦時代の1990年には石炭 生産や廃棄物の再利用などさまざまな問題 産業に対し 70 億ルーブルの補助金が支払 にも取り組んでいるという。また下部組織 われた。開放経済の下ではこのように多額 として研究所成果物や経済に関する法令な の補助金を出すことは難しく,現在のウク どを印刷・出版する部門を有している。 ライナの経済状況からして不可能に近い。 冒頭 Mel'nyk 氏より独立直前の 1990 年 1992年に大統領と協議し,補助金の廃止を (同時に京都議定書に定める地球温暖化ガ 決定した。直後からウクライナの石炭は競 ス排出削減の基準年でもある)と対比する 争力を失い,ポーランドの石炭が大量に輸 形で1998年の状況の説明を受けた。1990年 入されるようになった。炭鉱の 90% は現在 のウクライナの粗鋼生産量は4,400万トン, 赤字企業となっており,世界銀行による石 発電電力量は 2,400 億 kWh であった。1998 炭産業構造改革プログラムが 2 年前から実 年の粗鋼生産量は 1/2 以下に落ち込み,発 施に移されているが進行は遅れ気味であ 電電力量は 1,730 億 kWh に留まっている。 る。 この一方で鉄鋼,セメント,化学などエネ 次いで,2010 年におけるエネルギー・経 ルギー多消費型産業は設備の老朽化が著し 済の予測について数字が示された。この予 く,生産単位当りのエネルギー消費,排出 測はエネルギー計画として議会で審議され ガス量は 1990 年よりもむしろ増加してい ており,既に 2 回の読会が終了したとのこ る。たとえば1トンの鋳鉄を生産するのに とである。 (政府の法案,予算案などは 3 回 1990 年は 550kg の石炭を使用した。1998 年 の読会を経て最高会議本会議における議員 にはこの値は 700kg となっている。ただ全 の過半数により決議される。)この計画の 体の排出ガス量は生産量の低下のために減 主たる目的は 2010 年の GDP を 1990 年レベ 少している。 ルに回復させることにあるという。因みに ウクライナはドンバス地方を中心に石炭 1997 年の GDP は 1990 年の 49% であったと を生産しており,周辺地域に石炭を燃料と のこと。1990年のエネルギー消費量は石炭 する重化学工業が発展した。ただ,石炭の 換算 3 億 5,000 万トンであったが,2010 年 採掘条件は年々悪化しており,生産コスト におけるエネルギー消費量は 2 億 9,100 万 の上昇が著しい。Mel'nyk 氏によると 1990 トンと予測している。GDPの伸び率はエネ 年の石炭生産量は 1 億 6,400 万トンであっ ルギー消費の伸び率よりも高くなり,エネ たが,1997 年の生産量は 7,500 万トンと 1/ ルギー原単位としては改善される。電源構 2 以下に低下している。 成は火力が 50%,原子力 40%,水力その他 Naumenko 所長は Kuravchuk 初代大統領 が 10% 程度と見込まれており,構成比とし (1991 年 12 月∼ 1994 年 7 月)の顧問を務 め,石炭産業の改革を諮問したとのこと ては現在と変わらない。 Naumenko 所長より,ウクライナのエネ ルギー政策の課題は天然ガスを中心とする した(森田)。 エネルギーの輸入を削減し,国産エネル ギーの増産によりエネルギーの独立性と安 6.ウクライナ環境保護原子力安全省 定性を確保することにあるとの補足説明が あった。Mel'nyk 氏によると 2010 年におけ ウクライナは1992年6月に気候変動に関 る石炭の生産量は 1 億トン,天然ガス 248 する国際連合枠組条約(UNFCCC;United 億 m 3 ,石油 500 万トン以上を予測してお Nations Framework Convention on Climate り,燃料需要量の 60% が自給出来るとのこ Change)に調印し,1997 年 8 月に加盟を果 とであった。GDP については 1999 年第 1 四 たしている。環境保護原子力安全省 半期の伸び率はマイナス 4.6% であったが (Ministry of Environmental Protection and 2000年以降はプラスに転じ,2005年以降は Nuclear Safety)は 1994 年 12 月に大統領令 年率 6% 程度の伸びを見込んでいるとの話 により創設された比較的新しい省で,ウク があった。 ライナの環境保護,環境規制を所管してい ウクライナの経済には政府に報告されな る。またウクライナは 1957 年 7 月に国際原 い非公式な部分,いわゆるグレーエコノ 子力機関(IAEA)に加盟しており,同省は ミーが存在するとされる。この点について 従来の原子力・放射線安全国家委員会の任 N a u m e n k o 所長は,グレーエコノミーが 務を引き継いで原子力発電の安全規制も管 GDP の 48% から 60% と推定されるとその 轄している。 存在を認めた上で,エネルギー消費構造の 今回の訪問の目的はウクライナの排出権 分析などにはグレーエコノミーを補正した 取引,JI(共同実施)に対する同省の見解 G D P の値を用いていること,上記の を聴取することであり,前述のウクライナ GDP6% の伸びはグレーエコノミーの部分 経済省付属科学研究所と同じく在ウクライ を含めた上での値であることを明らかにし ナ日本国大使館に仲介をお願いした。会談 た。更に昨年国民経済計算の方式を国際標 にはShevchuk大臣自らが出席され,同席し 準方式(SNA 方式)に改めるなど,グレー た 6 名の側近の助言を求めることなく終始 エコノミーを排し経済的安定性を高めるた 1人で対応された。大使館からは黒川ウク めのさまざまな施策が実施されつつあり, ライナ特命全権大使(現・衆議院調査局外 いずれグレーエコノミーはウクライナから 務調査室長),井上書記官,Yaroslav 館員が 駆逐されるであろうとの期待を込めた見解 同席され,Yaroslav 館員には通訳の労をお が述べられた。 取り頂いた。 最後に所長より,今回の会談を第1歩と 冒頭,大臣よりウクライナの環境問題に して両研究所部門間で研究を分担すると 関する基本姿勢について以下の話があっ いった協力関係が構築できれば喜ばしい, た。ウクライナは京都議定書に調印してお 今後とも協力してさまざまな研究に取り組 り,議定書のもたらす影響も十分に承知し んでゆきたいとの言葉を頂き,研究所を辞 ている。議定書のフレームワーク,制度的 側面などについてスタディチームを組織 からの質問に対しては,原子力も積極的に し,UNFCCCの実行に向けて検討させてい 推進しており,2 基の原子力発電所がほぼ る。ただこの義務を達成するためには人材 完成しつつある。独自の核燃料サイクル実 面,財政面で困難がともなう。環境問題は 現に向けての努力も行っており,原子力エ 非常に重要であり 2 国間で協力して取り組 ネルギーをウクライナの有望なエネルギー んでゆきたい,との話があった。この後,当 源と考えているとのことであった。 方からの事前の質問項目に沿って大臣より 次いで大臣より,仮に日本の企業から排 説明があった。 出権取引,JI のような打診を受けた場合, ウクライナの温室効果ガスの排出量は この企業は政府の承認を受けていると理解 1990 年に炭素換算で 2 億 3,288 万トンであ して良いのか。換言すれば,この問題は日 り,京都議定書によれば2010年に同量の排 本政府の優先事項なのか,それとも大企業 出を認められている。推定によると,ここ や組織もこの問題を取り扱う権限を有して 数年における排出量はこの量の75%程度と いるのかとの質問があった。大臣によると なっている。2010 年における排出量は,省 たとえばカナダとは気候変動に関し政府間 エネルギー技術の導入などを考慮に入れる の覚書に調印している。同様の覚書が米国 と 1990 年の 84% 程度で,16% の減少とな との間でも準備され,調印に合意している る。 が日本政府の意向はどうなのかとの質問で ウクライナは排出権取引に対しては積極 あった。 的に対応したいと考えている。各国が削減 これに対し黒川大使より,現在のところ 目標を達成するにあたり多大の努力を必要 日本政府から指示は受けていないが,段階 としていることは理解しているし,排出枠 としては基本的なフレームワークについて の取引について各国と協力する用意があ 多国間で策定された後,恐らく 2 国間の合 る。日本も例外ではない。まず取引可能量, 意が行なわれ,その上で特定の会社がそれ 手続きならびにメカニズムを見出す必要が ぞれの事業を行なっていくことになるので あるが,日本側がこの点での協力に興味が はないか。2 国の政府間でフレームワーク あるならば共同で作業するにやぶさかでな が合意された段階では,日本の企業はこれ い。 に従うか,もしくはこの方向に沿って定め 他の国とのJIの可能性についても積極的 られたルールを守らねばならないだろう, に対応したい。ウクライナは京都議定書の との見解が示された。大臣によると既にい 実施に関する全ての方式を支持している。 くつかの日本企業が協力を提案していると ただウクライナはこのプロセスのスタート のことであった。 台に立ったばかりで経験もない。日本側が 最後に大臣より,単に京都議定書遵守の もしもウクライナとのJIにも興味があるな ためだけでなく,あらゆる環境上の問題解 らば協力する用意がある。 決のためにも日本の協力をお願いしたいと ウクライナの原子力政策についての当方 の話があり,会談を終了した(森田)。 地域的なさまざまな問題を抱えており,こ 7.世界銀行モスクワ事務所 うした状況を念頭においた上で,取り組む べき諸課題の優先順位を決定しなければな 世界銀行は,国際復興開発銀行(IBRD) らない。現状でのエネルギー,環境におけ とその姉妹機関である国際開発協会 る重要課題は,北極海での原油流出,天然 (IDA)の二つにより構成されているもの ガス関連施設からのメタン漏出問題,石炭 の通称であり,国際金融公社など多数国間 火力発電にともなう大気汚染問題と考えて 投資保証機関を含め世界銀行グループとい おり,もちろん,地球温暖化問題もこれら われることもある。戦後経済の復興と,発 全般に関連した問題であると認識してい 展途上国への開発融資を中心に,現在では る。こうした点に関して,関連するグロー 途上国の経済構造調整努力を支援するため バルな問題を集約し,そして政策提言を実 の融資も拡充している。また,カーボン 施しているとのことであった。 ファンド *2 構想を推進するなど,地球環境 次いで,Mr. V.Tsirkunov から,環境マ 問題に対しても,資金面からのサポートを ネージメントに関するプロジェクトについ 中心に積極的に取り組む姿勢を見せてい ての説明があった。環境に関するプロジェ る。その本部は,ワシントンにあるが,今 クトは,1995 年に始動し,2001 年まで継続 回は,現地で直接業務にあたっているモス される予定で,総予算は,1 億 1,000 万 US ク ワ 事 務 所 に , M s . R K a j a s t e ,M r . ドルとのことである。具体的なプロジェク V.Tsirkunov , Mr. S Milenin の 3 氏を訪ね, トとしては,水質と水資源のマネージメン 世界銀行のロシアにおけるエネルギー・環 ト,有害廃棄物のマネージメント,汚染対 境問題への取り組み状況などについて説明 策などがあり,これらは,ソ連邦によって を受け,質疑を交わした。 70年以上にわたり支配されてきた天然資源 はじめに,Ms.R Kajaste から,世界銀行 の問題を,ソ連の崩壊により,社会制度,政 のロシアにおける活動全般について,以下 治体制が調整される流れにのっとり,市場 のような説明があった。世界銀行は,ロシ 経済のメカニズムに組み込むことを目的と ア政府とともに活動をしており,燃料エネ したものである。また,プロジェクト全般 ルギー省が最重要パートナーとなってい の準備と実施に関するセンターの設置や, る。また,エネルギー,環境問題に関して 制度や政策の強化にも取り組んでいるとの は,国家環境保護委員会との共同研究も実 ことであった。世界銀行は,これまで,イ 施している。これら,ロシア政府関係機関 ンドネシア,チリ,ポーランドなどでも同 などとは,月1回程度ワーキンググループ 様のプロジェクトに取り組んできており, での会議も実施している。 その経験を活かしつつ,今後も積極的に活 ロシアは,広大な国土を保有しており, 動を推進していくつもりであるとの力強い *2 国あるいは企業からの出資をもとに, 途上国や移行期経済国などにおける温室効果ガス削減プロジェクトに投 資し,これによって得られる温室効果ガス削減分に相当する「排出クレジット」を出資者に還元する仕組み。 言葉も聞くことができた。 ギーコストの軽減を期待していることはも 最後に,Mr. S Mileninから,エネルギー・ ちろん,温室効果ガス排出削減に貢献す 環境関連の活動について,以下のような説 る,エネルギー効率の高い技術の導入に関 明があった。われわれの活動は,①電力プ 心を持っていることにもよるものである。 ログラム(技術支援プログラム,現存する 地方自治体は,長期的な視点に立って,排 ストラクチャーの改革など),②石炭プロ 出権取引の売り手となる可能性を見た上 グラム(石炭部門の構造調整プログラム), で,興味を示しているのである。 ③石油プログラム(石油流出の緩和プログ 地域暖房システムの導入についても検討 ラム) ,④エネルギー効率改善プログラム を進めている。具体的には,総予算3億米 に大きく分類される。特に,温室効果ガス ドルのプロジェクトを計画しており,第一 削減に影響があると思われる④について フェーズとして,9都市を選定し,実施し は,具体的には, (a)天然ガス生産段階で ていく予定である。ただし,開始時期につ の メ タ ン の 漏 出 ,( b ) メ タ ン の 輸 送 いては,2000 年予定から 2001 年へと延期 (transmission),地下貯蔵におけるメタン されている。 の漏出, (c)輸送網でのメタン排出モニタ その後の質疑応答において,ロシアでの リング, (d)天然ガス,及び他の燃料使用 これまでの活動の総括と,今後のロシア, (utilization sector)による CO 2 排出と削減 ウクライナなどでの共同実施実現の可能性 のモニタリングなどのプロジェクトを実施 などについて話を伺った。ロシアでのこれ している。このうち, (a)∼(c)について までのプロジェクトについては,いくつか は,ガスプロムとの共同プロジェクトであ 成果の上がっているものもあるが,残念な るが,同社の(組織的な)管理体制の問題 がら全体的には,それほど機能していると からよい結果が得られておらず,1999 年 6 はいえないのが現状であるとのことであっ 月末をもって,終了する予定とのことで た。しかし,今後については,世界的に地 あった。 球環境問題への取り組みが進められていく 一方, (d)の Utilization 部門は,高いパ なかで,たとえば共同実施の枠組みが具体 フォーマンスを見せている。このプロジェ 的になってくれば,世界銀行は,その枠組 クトの目的は,いくつかの分析研究を進め みの中で何らかの機能を果たすことが可能 るなかで,CO 2 排出削減に最も効果的な技 であると考えている。われわれは,世界的 術を提案することにあり,また,CO 2 排出 にエネルギー効率改善プログラムを実施 削減に貢献するエネルギー効率改善プロ しており,共同実施の枠組みがあれば,ロ ジェクトを提案することにもある。これま シア,ウクライナを含めた国際社会はより でも,いくつかの地方自治体が,環境に配 容易に,世界銀行の援助を受けて,プロ 慮した技術の導入に対して,積極的態度を ジェクトを実行することができるにちがい 示している。これは,地方自治体がエネル ないとの見解を聞くことができた(中野)。 響も織り込んだ最新のものであるとのこと 8.ERIRAS(ロシア科学アカデミー ・エネルギー研究所) であった。なお,予測は,Probable シナリ オと Optimistic シナリオの 2 つのシナリオ から成っており,以下( )内の数値は後 ロシア科学アカデミー・エネルギー研究 者のシナリオによる予測値である。その見 所(以下 ERIRAS:The Energy Research 通しによると,ロシア経済については,ソ Institute of the Russian Academy of 連崩壊以降低迷を続けていることは周知の Sciences)は,ロシアをはじめとして,CIS, 事実であるが,昨年のロシア経済危機の影 欧州などを対象として,エネルギー,経済 響もあり,回復に向けては,なおかなりの の動向分析など幅広い研究活動を行ってい 時間が必要であるとのことであった。具体 る機関で,その本部は,モスクワ市内中心 的には,2010 年時点の GDP を,1990 年比, 部から車で 30 分程度の閑静な場所にある。 64%(75%)程度と予測している。また,エ われわれ日本エネルギー経済研究所と ネルギー需給については,国内エネルギー は,旧ソ連解体後,東シベリアと極東にお 消費が,2 0 1 0 年時点で,1 9 9 0 年比 7 0 % ける総合的なエネルギー計画に関する共同 (75%),国内エネルギー生産量が,2010 年 調査を実施して以来緊密な関係にあり,特 時点で,同 75%(83%)となっており,い に当時そのプロジェクト推進にあたって, ずれのシナリオにおいても,経済同様,需 双方のリーダー的存在であったERIRAS所 要量,生産量とも1990年レベルまで回復し 長の Pro. MAKAROV と当研究所常務理事 ない見通しとなっている。エネルギー輸出 の藤目とは,継続的に情報交換を行うな については,CIS 向け輸出の減少などによ ど,個人的信頼関係を築いてきている。こ り,1995 年時点で,1990 年比で 70% を下 うしたことから,今回の訪問についても快 回っているものの,今後は天然ガスの輸出 諾していただいたことはもちろん,終始な 増などにより増加基調となり,2010 年に ごやかな雰囲気の中でミーティングは進め は,1990年比80%程度まで回復してくると られた。また,ロシア燃料エネルギー省 のことであった。 Department of Strategic Development の長 地球環境問題,とりわけ「京都メカニズ である Dr. MASTEPANOV といった政府の ム」に関連して注目されている温室効果ガ 要職にある方々などの同席も取り計ってい ス(GHG)排出量については,2010 年時点 ただくなど,多大な協力をしていただい で,1990 年比 64%(68%)との見通し結果 た。 であった。 「京都議定書」で定められたロシ まず,先方からロシアのエネルギー需給 アの GHG 排出量削減目標は,2008 ∼ 2012 状況と今後の見通しについての概要説明を 年で1990年と同レベルであることから,差 受けた。見通しについては,ロシア燃料エ し引き 30% を超える排出量が余剰分とな ネルギー省からの依頼でERIRASが策定し る。ロシアの基準年の二酸化炭素排出量 たもので,昨年 8 月のロシア経済危機の影 は,UNFCCCへの第2回国別通報によれば, 6 億 4,700 万 t-C(炭素換算トン)であり,そ どの代替エネルギーにはなりえないとの見 こから算出される余剰数量は概算 2 億 t-C 通しであるとの話もあった。また,国外に 程度となる。これは,日本の 1990 年の排出 対しては,今後とも天然ガスを中心に,エ 量約 3 億 t-C の 60% 以上に相当する。 ネルギー輸出が増加していくものと見込ん その後の質疑応答のなかでは,この排出 でいる。最近,ロシアエネルギー省などの 量見通しについて,他の予測値と比較する 政府関係者も,エネルギー輸出を推進して と,非常に低い水準ではないか(従来発表 いくことの必要性を頻繁に唱えている。そ されてきた他機関の予測値は,2010年時点 の際,従来からの主要な輸出先である欧州 で,対 1990 年比 100% 程度のものが多かっ に加え,中国,日本が戦略的に重要な地域 たが)との質問に対し,ERIRAS でも,半 になると考えているとのことであった。 年前には,対 1990 年比 90% 程度と予測し 先方からは,京都議定書の目標達成に向 ていたが,経済危機,政治情勢などの最新 けた今後の日本の具体的な対応,特にロシ の状況を織り込んだ結果,見通しを下方修 アを含めた海外への投資への取り組みなど 正することになった。基本的なことではあ について,矢継ぎ早に質問が出るなど,日 るが,見通しについては,作成した時期が 本の動向に対する関心の高さと期待の大き 重要なポイントであるとの回答を得た。 さを伺い知ることができた。 また,天然ガスパイプラインからのガス 最後に,今後とも変わらぬ相互協力を誓 漏洩量はどの程度か,との質問については いつつ,ERIRAS をあとにした(中野)。 よく聞かれるが,正確なデータは持ち合わ せていないとした上で,独自の試算による 9.王立国際問題研究所 と輸送量の 2% 程度ではないかとの回答を 得た(ガスプロム発表のデータはあるが, 今回の定期交流における最後の訪問先は 正確なものとは思えないとのことであっ ロンドンの中心街,セント・ジェームス・ た)。 スクエアに位置する王立国際問題研究所 今後の長期的なロシアのエネルギー需給 (The Royal Institute of International Affairs), に関しては,国内については,2005 年頃ま 通称チャタムハウスであった。チャタムハ では,天然ガスの比率が高まっていくので ウスは,国際舞台における主要な課題,す はないか。その後については,エネルギー なわち政治,経済,安全保障に関する議論 バランスを考慮し,天然ガス以外のエネル や研究を促進するため,1920年に設立され ギーへのシフトも必要となり,具体的には た独立研究機関である。 石炭へのシフトが進むのではないかと見込 チャタムハウスではEnergy and Environ- んでいるとのことであった。環境に配慮し mental Programme の長である Mr. John V. た新技術を開発する必要があることはいう M i t c h e l l と同プログラムに所属する M r . までもないが,太陽光など新エネルギーの Jonathan P. Stern,Mr. Christiaan Vrolijk, 需要予測をしてみても,当面,天然ガスな Mr.Norman Selleyの4人の方々にお会いし た。会議に先立ちレセプションホールで紅 か 20 年内において経済改革が導入され未 茶をいただきながら,今回の調査における 払い分の需要に対してガス供給が止められ これまでのヒアリングの成果について意見 るという強制的な措置がとられた場合,ガ 交換を行った。1999 年 9 月にはチャタムハ スの需要量(供給量)は大きく低下するこ ウス主催の京都メカニズムに関するワーク とになろう。1998 年を例にすれば需要は ショップがモスクワで開かれるとあって, 40% 程低下する計算になる。 彼らにとっても関心の高い問題であること 同氏はまた,省エネルギーの可能性につ を改めて認識した。 いて指摘する。旧西側企業や世界銀行の研 まず,Mitchell 氏より歓迎のあいさつが 究によれば,現在のエネルギー需要の約 なされた後,Stern 氏から「ロシアのエネル 2 5 % 相当分の消費節約あるいは効率向上 ギー需要見通しの前提における疑問」と題 が,低コスト,あるいはほとんど費用をか してプレゼンテーションがなされた。IEA けずに見込めるということである。従っ 並びにERIRASの今後のエネルギー需給見 て,大胆な計算ではあるが 40% の不払い部 通しをみると,程度の差はあれGDP成長に 分を排除し,さらにその 25% の節約を考慮 ともなって緩やかながらエネルギー需要が すると 1998 年の需要 2,940 億 m 3 は 45% の 増加していくと予測している。しかし同氏 1,320 億 m 3 に低下する可能性もありうる。 はこの点が誤りであると指摘する。なぜ, さらに,経済成長にともなう産業構造の そうなのかについて,ロシアの一次エネル 高度化とプラントのリプレースによる削減 ギー需要の約50%を占めるガス部門を例に も見逃せないという。しかし実際には1992 説明してくれた。 年以降重工業から軽工業・サービス産業へ ポイントは2つであり,不払いの問題と の移行やプラントのリプレースは経済混乱 省エネルギーの可能性である。1998年にガ のために進んでいない。よって上述した点 スプロムが供給したガスは約2,940億m 3 で の実現の可否に左右されることではある あった。そのうち現金が支払われたのは が,ロシアやウクライナにおける温室効果 600 億 m 3 以下,バーター取引などによるも ガスの排出量見通しに際して「エネルギー のが 1,200 億 m 3 程度であった(電力会社で 需要における劇的かつ継続的な低下を考慮 さえ現金の代わりとしてガスプロムに発電 する必要がある」とのことであった。 所を手渡したばかりである)。そして,残り 次に,排出権取引や共同実施を行う上で の約 1,200億 m 3 については未払いの状態に 温室効果ガスの排出量などエネルギーに関 ある。つまり日本の年間ガス使用量の約2 する正確な統計データが必要であるが,わ 倍に相当するガスについて何の対価も受け れわれはいかにしてそれらのデータを入 ずに供給していることになる。ガスプロム 手,推計したら良いかお尋ねした。長年ロ にとってこうした未払いの問題は 1998 年 シアの統計に携わっている同氏は,ロシア 単年のことではなく,それ以前から起こっ のエネルギー統計に関しては多くの問題点 ていたことである。よって,もし今後 10 年 を指摘しながらも,旧ソ連時代や他の移行 諸国に比べ良くなっていること,旧西側の ルト 3 国(ラトビア,エストニア,リトア 利用可能なソースとして政府統計,企業統 ニア)を挙げた。これらの国では,シンク 計,消費者統計があり,かつこれら 3 者の (森林吸収など)の拡大や石炭火力からガ 誤差は概ね10%以下であることなどを教え ス火力への転換などにより排出量の大幅な て下さった。ただし統計数値の一貫性を求 削減が見込めるというのがその理由であ めるならば中身を確認できる企業統計を使 る。 用すべきであるとのことであった。 ロシア・ウクライナとの京都メカニズム パイプラインからのガス漏れについて の可能性については,ロシア産業が現状で は,流量の約 1 ∼ 10% と人によって見方に は正確なモニタリング,認証システム,適 開きがあるが,同氏はガスプロムの統計か 切な登録,そしてCOP が設定する遵守規定 ら高圧パイプラインに限定すれば同 1% 程 を履行できないことから排出権取引の開始 度と答えた。これは他の調査とも概ね一致 が第 2 コミットメント期にずれ込む可能性 しているらしく,現在最もコンセンサスの を示唆した。 得られた水準だそうである。しかし,実際 よって,もし英国および日本が早期の取 の問題は多くのガス漏れが起こっている低 引を希望する場合には,プロジェクト単位 圧の配給網の方であり,資金不足から顧客 のモニタリングが可能である共同実施,た メータもなく,漏れの量が全く把握できな とえばパイプラインからのガス漏れ改善の い状態にあるとのことであった。 ための投資などが有望であるとのことで 続いて Vrolijk 氏から,京都メカニズム, あった。 特に排出権取引制度とロシア・ウクライナ また,米国に関しては,日欧に比べ国内 との関係について,主に制度論的な観点か 措置による削減の可能性が高いこと,国内 ら話を伺った。 取引制度を構築した上でのみ京都議定書に 同氏はロシア・ウクライナを排出権取引 批准するであろうこと,そして低コストで に取り込む必要性を述べた。両国が参加し 高い排出削減が可能であれば積極的に排出 ない場合,需要を満たす排出枠は創出され 権取引に取り組むであろうことなどを指摘 ず,京都議定書の数値目標が非現実的であ した。 るとして各国が議定書の批准を拒むことに ホットエアーについて同氏は,取引対象 なり, 「京都メカニズム」自体が崩壊すると から除外するべきとの考えであった。これ の危惧を示した。排出権取引の規模に関し は,今回の定期交流では始めての意見であ ては,チャタムハウスにおけるモデル分析 り,大変興味深かった。その理由として,第 の結果より,ロシアが 1 億 6,600 万 t-C と最 2 コミットメント期以降に途上国を参加さ 大の売り手となり,またウクライナがそれ せる際に,途上国が自国に課せられた数値 の約 3 分の 1 を売却できると予測している 目標とロシアのホットエアーが不公平であ ということであった。両国以外に有望な国 るとシステムに異議を唱える可能性を指摘 としては,同氏は,東欧諸国,カナダ,バ した。また,補完性 *3 に関しては,われわ れの訪問 2 日前に EU によって提案された 4 ることを実感した。しかし, 「京都メカニズ つの案を紹介してくれた。これらは「京都 ム」の実施に向けては解決せねばならない メカニズム」による温室効果ガス削減を国 課題が数多く残されている。地球温暖化問 内措置による削減の補完的なものと位置づ 題の解決に向けた関係各国並びに国際諸機 け, 「京都メカニズム」の利用を国内措置に 関の今後の動向が注目される(石田)。 よる削減量以下に制限したものであった。 おわりに 同氏はこうした提案が通る実現性は低いと しながらも,より厳しい規則が定められる これまで 11 回の定期交流を行ってきた べきであるとの考えを示した。 が,今回多くの国際機関を訪問し,信頼の 2 時間半にわたる討論であったが,チャ できる情報を得ることができた。これは日 タムハウス側からもいくつもの質問が出る 本エネルギー経済研究所がそれなりに国際 など,われわれにとって大変有意義なミー 的に評価されており,また人の結びつきの ティングであった。 面でこれまでに築きあげたネットワークが 有効に働いているからである。そういった 今回,多くの専門家の方々にロシア・ウ 意味では来年以降も定期交流を継続するこ クライナの排出権取引,共同実施の可能性 とが望ましく,期待されている。メンバー についてお聞きし,両国の参加が京都メカ 構成が変わっても,定期交流の成果は引き ニズムを機能させる上で欠かせないことを 続いて財産として引き継がれていくであろ 改めて認識した。そして,両国もこれらの う(藤目)。 メカニズムの実施に大変前向きな姿勢であ *3 補完性の問題とは,柔軟性措置の利用は国内の排出削減努力に対して「補足的」でなければならないという ものである。この補足性の解釈をめぐっては,柔軟性措置を利用した取引総量への数量的制限をすべきとの 見解と,補足性とは国内対策を充分に行うことを指しているだけで,それ以上の意味はないのであって,必 ずしも数量的な取引量の制限である必要はないという見解が対立している。 お問い合わせ [email protected]