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(本編)今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議報告書

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(本編)今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議報告書
今後の神戸市の人口動態に関する
有識者会議
報告書
平成27年7月
埼玉大学大学院人文社会学研究科教授
神戸学院大学現代社会学部社会防災学科教授
甲南大学経済学部准教授
中川聡史
伊藤亜都子
足立泰美
はじめに
2014年(平成26年)は「人口問題」への対応が国、地方ともに政府の最重要政策課題として関わり
が始まった年として記憶に残ることになるかもしれない。
まず2014年(平成26年)5月に、神戸市顧問でもある元総務相の増田寛也氏が代表を務める日本創
成会議・人口問題検討分科会が、今後も人口移動が収束しないという仮定に基づく独自の推計により、
全国の49.8%に相当する896の市町村において、20~39歳の女性が2040年(平成52年)までに50%以上
減少し、将来的に「消滅」するおそれがあるというレポートを発表し、大きな注目を集めた。同年6
月には「少子化と人口減少を克服することを目指した総合的な政策の推進」により、「50年後に1
億人程度の安定した人口構造を保持することを目指す」とする「経済財政運営と改革の基本方針20
14」が閣議決定された。同年7月には全国知事会が少子化対策の抜本強化を掲げる「少子化非常事
態宣言」を決定。同年11月には首相を議長とする経済財政諮問会議の有識者会議「選択する未来」
委員会が、出生率や生産効率が向上しない場合、2040年代から日本経済がマイナス成長に陥るとする
最終報告書を提出、また首相を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」の有識者会議で、合計
特殊出生率を1・8程度への引き上げを目指すことなどを打ち出す「長期ビジョン」骨子案を政府が
示した。さらに、人口の減少に歯止めをかけることなどを掲げる「まち・ひと・しごと創生法」が施
行された。
このような一連の国の動きとも連動し、自治体も人口減少克服のための戦略策定を求められている
が、人口減少や高齢化など人口構造の変化は、自治体にとって市民生活や都市経営の持続可能性を図
るための重要な要素であり、今後の新たな政策を検討するにあたって、まずは過去及び現在の人口動
態の実態や人口推計による将来の人口構造も把握するとともに、多面的な角度から人口を客観的かつ
冷静に分析していく必要がある。まさに、人口問題に対して自治体がどのような姿勢で取り組んでい
くかがこれまで以上に問われることになろう。
さて、神戸市の人口であるが、1945年(昭和20年)の終戦以降、阪神・淡路大震災までは周辺地域
の編入やニュータウン開発などにより一貫して人口増加を続けてきた。阪神・淡路大震災では一時的
かつ急激な人口流出があったものの、震災復興の過程で人口は再び増加し、2011年(平成23年)11月
には1,544,849人(推計人口)と市人口のピークを迎えた。ところが、2012年(平成24年)からは一転
して人口減少が続いている。一方で、65歳以上の高齢者の全人口に占める割合である高齢化率は2010
年(平成22年)で23.1%と1995年(平成7年)からの15年間で約10ポイント上昇しており、急激な高齢
化が進んでいる状況である。また、国立社会保障・人口問題研究所による直近の将来人口推計では、
2040年(平成52年)には2010年(平成22年)と比較し、全人口は1割以上減少し、高齢化率が38%に
なるという推計結果が示されており、このような人口減少、超高齢化社会の進展に対して、神戸市と
してどのような政策スタンスで臨むのかの対応を迫られている。
そこで、昨年6月に市からの要請を受け、専門分野が異なる私たち3人の有識者会議による研究、
検討がスタートした。これからも神戸市がより多くの人たちに選ばれ、持続可能な都市であり続ける
ためには何が必要なのかを考察するため、市の協力のもと人口関係の統計データ分析だけでなく就職
や移動に関するアンケート、フィールドワークなども実施し、神戸市の過去、現在そして未来の人口
動態を様々な角度で読み解き、報告書として取りまとめるに至った。
本報告書は3人それぞれが分担して執筆したが、4章から成り立っている。1章、2章は拙者が担
当したが、1章は過去及び現在の神戸市及び各区等の人口動態分析、2章は将来人口推計に基づき未
来の神戸市の人口動態分析を取り扱っている。3章は神戸学院大学現代社会学部社会防災学科教授の
伊藤亜都子が担当し、2つのアンケート調査結果を中心とした若年層の就労、住宅及び住環境に関す
る神戸のまちの魅力向上にむけた意識分析、4章は甲南大学経済学部准教授の足立泰美が担当し、若
年女性に焦点をあて、その人口動態と影響要因分析をそれぞれ考察している。非常に大部なものとな
ったが、この報告結果がこれからの神戸市の政策形成の一助になれば幸いである。
最後になるが、2章の将来人口推計に関しては国立社会保障・人口問題研究所の貴志匡博氏、3章
の「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査結果」の分析に関しては、神戸大学大学院経営
学研究科の島田智明准教授、同志社大学商学部の瓜生原葉子准教授に協力いただいた。また、2章の
将来人口推計の小学校区別の統計データの整理や積算は拙者の神戸大学経済学部ゼミ生(現4回生)
たちが協力して行った。記して感謝申し上げる。
平成27年7月
埼玉大学大学院人文社会学研究科教授
中川聡史
はじめに
1.全市及び区等の人口動態分析(中川聡史)
······························ 1
(分析の視点)
①時間軸と空間軸、マクロとミクロ
②自然動態と社会動態
③年齢別人口
············································· 1
························································· 1
································································· 1
(1)時系列による分析
①総人口の推移
························································· 2
····························································· 2
②自然動態(出生、死亡)
··················································· 5
③社会動態(転出、転入)
··················································· 9
④総人口に与えてきた自然動態と社会動態の影響
······························ 10
⑤地域ブロック別の人口移動の状況
·········································· 11
(移動人口の職業別構成の状況)
·········································· 14
(周辺自治体等と神戸市の人口移動状況)
·································· 15
(西宮市、明石市と神戸市各区との人口移動状況)
(神戸市各区と大阪市との人口移動状況)
(神戸都市圏)
·························· 18
·································· 20
·························································· 22
(神戸市内各区の人口移動状況)
·········································· 25
(2)年齢別及び産業別の人口動態分析
·········································· 26
①年齢3区分別の人口推移
·················································· 26
②年齢及びコーホート(世代)別の転出入状況
③産業別の人口移動
································ 28
························································ 36
(3)小学校区別の人口動態分析
················································ 38
①小学校区別の人口分析の意義
②小学校区別の人口変化
·············································· 38
···················································· 40
(年少人口)
···························································· 42
(老年人口)
···························································· 43
(生産年齢人口)
························································ 44
(コーホート変化率)
···················································· 48
③小学校区別の人口分析のまとめ
(4)分析及び結果の整理
············································ 50
······················································ 51
【自然動態】
①子育てしやすいまちの実現
················································ 51
【社会動態】
②若者の流入促進と流出阻止
③居住都市としての魅力づくり
················································ 52
·············································· 52
④日常生活圏(小学校区単位)のまちづくり
⑤さいごに
·································· 53
································································ 55
2.将来の人口推計分析(中川聡史)······································· 56
(1)将来人口推計
···························································· 56
(コーホート要因法)
························································ 56
(2)神戸市全体の将来人口推計
(3)区ごとの人口推計
················································ 59
························································ 67
(4)小学校区ごとの将来人口推計の試み
········································ 73
3.就労、住宅および住環境を中心としたまちの
魅力向上にむけた意識分析 ―若年層を中心に―(伊藤亜都子)
(1)データから見た現況
①若年層の転出入の動向
②通勤・通学地の動向
······················································ 80
···················································· 80
······················································ 83
(2)住宅および住環境に関するニーズ、意識の調査の実施・分析
①市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査・分析
②若年女性の社会移動に関する意識調査・分析
(3)まとめ
·············· 80
·················· 86
······················ 86
································ 96
~転入者の増加と定住の促進のための魅力あるまちづくりに向けて~
·········· 132
4.神戸市の若年女性の人口動態及び影響要因に関する分析(足立泰美)
··· 135
(1)序文
··································································· 135
①視点
··································································· 135
②人口減少を背景とした経済・社会問題
····································· 135
③女性のライフサイクルの変化と人口動態への影響
④神戸市各区の若年女性のライフサイクルの特徴
··························· 136
····························· 137
(2)若年女性の自然動態に関する分析
········································· 138
①コーホート別自然増減の傾向分析
········································· 138
②コーホート別の出生率
··················································· 138
③コーホート別の30代後半女性の未婚率
④コーホート別の平均初婚年齢
⑤コーホート別の就業率
····································· 139
············································· 140
··················································· 140
⑥未婚率、就業率、出生率、平均初婚年齢の関係
⑦小括
··································································· 142
(3)若年女性の社会動態に関する分析
①若年女性の社会移動の特徴
②若年女性の就業実態
③女子学生の就業ニーズ
④小括
····························· 141
········································· 143
··············································· 143
····················································· 144
··················································· 146
··································································· 146
(4)若年女性の居住・就業状況と子育て環境及び満足度に関する分析
①若年女性の従業地、世帯構成および扶養者別世帯構成
······················· 149
②若年女性の居住状況と子育て環境及び満足度に関する分析
③区別の求められる子育て環境と満足度
············· 148
··················· 151
····································· 153
④小括
(5)まとめ
··································································· 157
································································· 157
(巻末資料)
今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議(第1回)議事要旨
今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議(第2回)議事要旨
今後の神戸市の人口動態に関する有識者会議(第3回)議事要旨
平成26年 若年女性・人口移動実態調査 【調査票】
平成26年 若年女性・人口移動実態調査 【単純集計表】
1
全市及び区等の人口動態分析
(分析の視点)
①時間軸と空間軸、マクロとミクロ
本章および次章では神戸市の人口に関して、「過去」(1章)、「将来」(2章)に分けて
整理・分析をおこなう。その際、マルチスケールな視点に留意する。マルチスケールな視点と
は全国あるいは阪神圏のなかでの神戸市の位置づけを考察したり(マクロレベル)、神戸市内
部において日常生活圏域である小学校区など地域コミュニティ単位での人口の動向を検討した
り(ミクロレベル)することを指す。異なる空間スケールで分析をおこなうことによって、神
戸市をめぐる多様な人口問題を発見したいと考えたからである。
また、神戸市がいまどういう状況にあるのかをより良く理解するため、できるだけ長いスパ
ンで過去から現在に至る人口の推移を見ること、さらには将来人口推計をおこなうことにより
神戸市の人口が今後どのような方向に進んでいくのかを明らかにするような分析を心がけた。
②自然動態と社会動態
人口の変化、より専門的な言い方をすれば人口動態は、出生と死亡による「自然動態」と転
入と転出からなる「社会動態」に分けることができる。
自治体の人口動態を考える上で、「足による投票」という言葉があるが、これは住民が自ら
の選好に合致した自治体を選択し、そこに転居することを比喩的に「投票」と称している。こ
のように自治体が「足による投票」によって日々「選ばれている」ことを明確にするためには、
上記の社会動態に注目する必要がある。本章と次章では人口の変化(人口動態)を「自然動態」
と「社会動態」に分けて分析するようにした。
③年齢別人口
今後の日本の人口問題を考えるうえで重要なポイントは急速に進展する高齢化(総人口に占
める高齢者の割合の上昇)と人口数そのものの減少である。いずれも、経済や社会、文化など
様々な領域に影響を与え、それらを変化させていくことになる。神戸市の場合、人口数の劇的
な減少見込むことは当面は必要ないが、緩やかな人口減少のなかで、人口の年齢構造が大きく
変化し、高齢者の人口割合が上昇し、子どもの人口割合が低下することに注意していく必要が
ある。過去から将来に年齢別人口がいかに変化していくかをみていくことが今後の社会や政策
を考えるうえでとくに重要である。
-1-
(1)時系列による分析
①総人口の推移
神戸市の総人口は、約1,537千人(2014年10月1日時点)であり、1955年(昭和30年)の約986
千人から1.5倍以上に増加している(図1-1、表1-1)。
神戸市の人口の長期的な推移を他都市と比較した図1-2をみてみると、1920年(大正9年)
には本市の人口規模は東京市、大阪市に次いで第3位(約60.9万人)の人口規模を有していた。
各市の市域拡大のタイミングも影響するが、戦前には名古屋市、横浜市が神戸市の人口を上回
り、1980年(昭和55年)頃には札幌市も神戸市の人口を上回ったことから、現在の人口規模は
政令指定都市の中で5番目(東京都特別区部を含めると6番目)となっている。もっとも、人
口の推移を見ると、1960年代前半までは10%前後の人口増加率があり、第2次世界大戦時と阪
神・淡路大震災直後の人口減少や停滞を除くと順調に人口は増加してきた。しかし、近年、人
口増加率は徐々に鈍化する傾向にあり、2010年(平成22年)には2005年(平成17年)と比較す
ると1.2%まで低下した。その後、国勢調査結果に基づく推計人口によると、人口がピークを迎
えた2011年(平成23年)の翌年の2012年(平成24年)を転換点として人口増加率がマイナスと
なり、神戸市は人口の減少局面に入ったと考えられる。
また、2005年(平成17年)から2010年(平成22年)の年齢別の人口推移を見ると、65歳以上
の高齢者人口が30.5万人から35.4万人と5万人程度増加し、総人口に占める高齢者の割合である
高齢化率は3ポイント上昇している。一方で15歳から64歳の生産年齢人口と15歳未満の年少人口
はともに減少している。
万人
180
14%
12.9%
12%
160
10%
140
西区
8%
120
100
80
6%
垂水区
須磨区
4%
1.2%
長田区
60
北区
-1.8%
兵庫区
40
20
0
2%
0.3%
-1.0%
-2.0%
-2%
中央区
-3.6%
灘区
-4%
東灘区
1
9
5
5
0%
-6%
1
9
6
0
1
9
6
5
1
9
7
0
1
9
7
5
1
9
8
0
1
9
8
5
1
9
9
0
1
9
9
5
2
0
0
0
2
0
0
5
2
0
1
0
2
0
1
1
2
0
1
2
2
0
1
3
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
長田区
須磨区
垂水区
西区
人口増加率
2
0
1
4
※2011年以降は国勢調査結果に基づく推計人口である。2011年以降の人口増加率は1年間での増加率を
示している。
出典:国勢調査結果及び神戸市統計報告「人口の動き」
図1-1
神戸市の人口推移
-2-
表1-1 神戸市の人口推移(1992~2014年)
人口増加率
総数(人)
増加数(人)
(人口 1000 人につき)
※各年 10 月 1 日現在
1992 年
1993 年
1994 年
1995 年
1996 年
1997 年
1998 年
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
2007 年
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
1,499,195
10,380
6.9
1,509,395
9,694
6.4
1,518,982
9,470
6.2
1,423,792
△46,841
△32.9
1,434,572
△ 1,115
△0.8
1,454,632
6,357
4.4
1,475,342
5,756
3.9
1,483,655
7,751
5.2
1,493,398
8,921
6.0
1,503,480
9,562
6.4
1,510,662
6,179
1,516,155
5,327
4.1
3.5
1,520,267
4,228
2.8
1,525,393
4,945
3.2
1,529,817
3,075
2.0
1,532,428
980
0.6
1,536,433
3,310
2.2
1,541,214
3,436
2.2
1,544,200
842
0.5
1,544,496
501
0.3
1,542,128
△ 2,846
△1.8
1,539,751
△ 1,507
1,537,864
△ 3,005
△1.0
△2.0
※各年数値は国勢調査結果及び国勢調査結果を基に算出した「推計人口」であるが、1998年の数値
は「被災地人口実態調査結果」1999年、2000年はその結果を基に算出した「推計人口」である。
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
横浜
3,710
大阪
2,686
名古屋
2,276
札幌
1,942
神戸
1,537
福岡
1,518
※各年10月1日現在。ただし,2014年は1月1日現在,1889年は4月1日現在。
出典:大都市比較年表(平成23年),各市HP
図1-2
5大都市+札幌市,福岡市,東京都特別区部の人口の推移
-3-
人口減少が進む中で、世帯数は増加傾向が続いているが、世帯人員は縮小しており、世帯の
小規模化が進んでいることがわかる(図1-3)。
800
4.50
4.23
700
500
462
427
400
488
3.00 世
帯
2.21 2.50 人
2.00 員
280
:
1.50 人
)
)
300 232
4.00
3.50
537
377
331
695
200
1.00
100
0.50
2014年
2010年
2005年
2000年
1995年
1990年
1985年
1980年
1975年
1970年
1965年
1960年
1955年
世帯数
0.00
世帯人員
出典:国勢調査結果及び神戸市統計報告「人口の動き」
図1-3
世帯数と世帯人員の推移
参考として、図1-4により東京、大阪、名古屋の3大都市圏の転入超過数の経年変化をみる
と、1960年代の高度経済成長期においては、大阪圏や名古屋圏においても地方からの人口移動
を受けて大きく転入超過となっている。ところが1970年代前半のオイルショックを境に大阪圏、
名古屋圏への流入はほぼ止まり、それ以降は転入・転出は均衡している。他方、1970年代のオ
イルショック以降、1980年代後半のバブル期に進んだのは東京圏への人口一極集中であり、2000
年代に入ってからも、東京圏だけで転入超過傾向が続き、大阪圏、名古屋圏においては微減ま
たは横ばい傾向となっている状況である。
400
(千人)
350
300
250
200
150
96.5(東京圏)
100
50
-0.1(名古屋圏)
-6.6(大阪圏)
0
-50
1955 60
65
(
539
(
世
帯
数
:
千
世
帯
643
606
600
684
70
75
80
85
大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)
90
95 2000 05
08
09
10
東京圏(千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県)
11
12
13
(年)
名古屋圏(三重県、愛知県、岐阜県)
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-4
3大都市圏(東京、名古屋、大阪)の転入超過数の推移
-4-
②自然動態(出生、死亡)
図1-5は、1955年(昭和30年)から2014年(平成26年)までの神戸市の出生数と死亡数の
推移を示している。縦棒のうちプラス側に示した出生数からマイナス側に示した死亡数を減じ
た数が自然増減数であり、これを折線で表した。
「自然増減」をみると、1958年(昭和33年)以降、出生数はほぼ毎年増加し、死亡数は横ば
いの状態が続いていたため、自然増減数は出生数に合わせて増加した。出生数は第二次ベビー
ブームの最中である1973年(昭和48年)にピーク(出生24,771人、死亡7,500人)を迎え、約17,000
人の自然増だったが、高齢化の進展とともに死亡数が徐々に増加傾向を示すようになった。阪
神・淡路大震災以降、出生数は横ばいが続き、2005年(平成17年)にピーク時の半分である12,540
人まで減少し、その後も小幅に増減を繰り返していたが、2009年(平成21年)以降は減少傾向
にあるものの1万2千人台で安定している。死亡数は1996年(平成8年)の10,251人から2014年(平
成26年)には15,081人と約1.5倍に増加しており、自然増減数も8年連続の減少である。
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-5
神戸市の自然動態/出生数、死亡数、増減数
図1-6に示すとおり15歳から49歳までの一人の女性が一生に産む子供の数を示す合計特殊
出生率は2010年(平成22年)では1.29となっており、市内9区でみると、最も低い中央区が1.09、
最も高い垂水区では1.42と区ごとの差が大きいのが特徴的である。また、図1-7のとおり神
戸市は政令市20市中14位と合計特殊出生率は全国と比較して低い傾向にあり、8区で全国平均
を下回っている状況にある。
また、2010年(平成22年)の生涯未婚率(50歳時の未婚率)を見ると、女性は12.8%と全国
平均の10.6%を上回っているが、男性では18.3%と全国平均の20.1%を下回っている。区別に
見ると、女性で最も生涯未婚率が低いのは西区で7.0%、最も高いのは中央区の23.8%となって
いる。男性で最も生涯未婚率が低いのは同じく西区で12.2%、最も高いのは兵庫区の32.2%と
なっている。
-5-
出典:兵庫県統計
図1-6
人口関連データ(HP)等
神戸市の自然動態/市、区別合計特殊出生率の推移
1.80
全国平均 1.39
1.60
1.40
1.20
1.08 1.09
1.17 1.20
1.35
1.30 1.31 1.31
1.25 1.26 1.28 1.29
1.36 1.38
1.47 1.48
1.42 1.43 1.45
1.57
1.63
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
出典:国勢調査
図1-7
神戸市の自然動態/大都市の合計特殊出生率(2010年)
30.0%
全国平均 20.1
25.2%
25.0%
20.0%
16.1%
17.0% 17.2%
17.7% 18.2%18.2%18.3%18.3%
20.0%
18.8% 19.4%
20.2%20.3%20.3%20.7%20.8%
20.9%
21.6%
22.5%
15.0%
10.0%
5.0%
大阪市
川崎市
浜松市
横浜市
静岡市
京都市
相模原市
札幌市
北九州市
名古屋市
新潟市
千葉市
神戸市
熊本市
福岡市
さいたま市
堺市
岡山市
仙台市
広島市
0.0%
出典:国勢調査
図1-8
政令指定都市別の男性生涯未婚率(2010年)
-6-
熊本市
浜松市
北九州市
広島市
岡山市
堺市
静岡市
さいたま市
名古屋市
千葉市
新潟市
横浜市
川崎市
神戸市
相模原市
大阪市
福岡市
仙台市
京都市
札幌市
東京都特別区部
0.00
20.0%
17.7%
18.0%
15.7% 15.7%
16.0%
14.7%
全国平均 10.6
14.0%
12.0%
10.0%
10.2% 10.5% 10.6% 10.6%
8.6%
10.8% 11.0%
11.5% 11.6% 11.6% 11.7%
12.3%
12.8%
13.4%
9.1% 9.3%
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
福岡市
出典:国勢調査
図1-9
政令指定都市別の女性生涯未婚率(2010年)
(%)
35.0
32.2
29.7
30.0
26.4
25.0
21.5
18.0
20.0
神戸市平均 18.3→
15.0
14.8
18.5
15.6
12.2
10.0
5.0
0.0
西区 東灘区 北区 須磨区 垂水区 灘区 中央区 長田区 兵庫区
出典:国勢調査
図1-10 区別の男性生涯未婚率(2010年)
(%)
23.8
25.0
20.4
20.0
18.5
15.0
19.0
13.3
11.8
神戸市平均 12.8→
11.9
9.2
10.0
7.0
5.0
0.0
西区
北区 垂水区 須磨区 東灘区 灘区 長田区 兵庫区 中央区
出典:国勢調査
図1-11 区別の女性生涯未婚率(2010年)
-7-
大阪市
札幌市
京都市
北九州市
神戸市
川崎市
名古屋市
仙台市
静岡市
堺市
横浜市
熊本市
千葉市
新潟市
広島市
岡山市
さいたま市
相模原市
浜松市
0.0%
ここで各区における全世帯数に対する家族類型別の割合をみてみると、中央区や兵庫区など
未婚率の高い区では単独世帯の割合が、西区や北区など未婚率の低い区では「夫婦と子」のフ
ァミリー層の割合がそれぞれ高くなっていることがわかる(図1-12)。また、世帯主年齢別
の全世帯数に対する家族類型別の世帯数の割合をみてみると、「夫婦と子」の世帯割合が30代
前半から増えており、30代、40代が自然増を支える中心的な年齢階層であると考えられる(図
1-13)。
0%
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
長田区
10%
20%
30%
40%
50%
60%
38.3
20.5
0.6
90%
3.2
45.5
2.9
60.5
0.4
23.7
1.3
23.7
3.2
3.4
3.9
41.2
1.4
33.4
19.3
3.6
51.5
1.0
0.6
44.6
27.1
16.3
0.7
須磨区
23.0
40.6
0.9 1.5
31.0
垂水区
23.3
40.5
1.6
0.8
31.0
西区
100%
2.6
36.9
0.6
0.7
21.1
14.4
80%
1.1
1.1
31.7
17.8
70%
2.8
24.9
3.3
46.2
21.2
3.0
3.1
1.3
夫婦のみ
夫婦と子ども
夫婦と親
夫婦と親と子
単独
その他
出典:国勢調査
図1-12
区別の家族類型別一般世帯数比率(2010年)
出典:国勢調査
図1-13
世帯主年齢別の家族類型別一般世帯数比率(2010年)
-8-
③社会動態(転出、転入)
図1-14は、1955年(昭和30年)から2014年(平成26年)までの神戸市の転入数、転出数の
推移を示している。縦棒のうちプラス側に示した転入数からマイナス側に示した転出数を減じ
た数が社会増減数であり、これを折線で示した。
「社会増減」をみると、社会増減数は21,522人(転入:117,996人
転出:96,474人)と転入
超過のピークを迎えた1957年(昭和32年)を中心に1956年(昭和31年)から6年連続で1万人以
上(平均が約15,000人)の増加になるなど大幅な転入超過で推移していた。その後、転出数の
増加により社会増減数は伸び悩み、社会増減数がマイナスの状態が1972年(昭和47年)から1980
年(昭和55年)の9年間続いた。そして、西区や臨海部等でのニュータウン開発により市内の住
宅供給が活発になった1981年(昭和56年)以降は転入数、転出数とも横ばいで推移しつつ、年
間4,000人から10,000人のプラスの社会増減が続いていた。1995年(平成7年)の阪神・淡路大
震災では4万人を超える転出超過となったが、1997年(平成9年)には再び転入超過となり、7,748
人の転入超過であった2001年(平成13年)をピークにして増加幅は縮小傾向にあり、2012年(平
成24年)、2014年(平成26年)には転出超過となっている。
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-14
神戸市の社会動態/転入数、転出数、増減数
-9-
④総人口に与えてきた自然動態と社会動態の影響
図1-15は、神戸市において、人口の「社会動態」と「自然動態」がどのように総人口に影
響を与えてきたかを示したものである。左右は社会増減数(右がプラス)、上下は自然増減数
(上がプラス)を示している、左上から右下への45度線よりも上は社会増減数と自然増減数の
和として人口が増加したことを示し、45度線よりも下、すなわち網かけの部分は人口が減少し
たことを意味している。1955年(昭和30年)以降、自然増減と社会増減を繰り返しながらも、
阪神・淡路大震災時を除いて、神戸市ではこれまで人口減少期を迎えたことはなかった。もっ
とも表1-2から人口増の要因は、転入者数の増加による社会増よりも概して出生数による自
然増の寄与が大きかったことが分かる。活発な住宅地開発が進む郊外に子育て世代が流入した
こと、高齢者数が少なく結果として死亡数も少なかったことなどの影響によるものと考えられ
る。
2007年(平成19年)以降の自然減、最近では社会減の圧力も重なり、2012年(平成24年)以
降は人口減少期に入っている。今後、出生数の停滞と死亡数の着実な増加による自然減、転入
数と転出数は均衡しつつ、継続的な人口減少のスパイラルに入っていく可能性もある。
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-15
神戸市の自然動態と社会動態の推移
表1-2
神戸市の自然動態と社会動態の推移
自然増+社会増
1955-1959
1960 年代
1970 年代
1980 年代
1990 年代
2000 年代
2010-2014
116,725
177,968
104,130
104,816
24,140
49,963
-6,857
自然増
人数
割合
49,735
42.6%
141,514
79.5%
144,090
67,905
64.8%
23,832
98.7%
7,387
14.8%
-9,564
社会増
人数
割合
66,990
57.4%
36,454
20.5%
-39,960
36,911
35.2%
308
1.3%
42,576
85.2%
2,707
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
-10-
⑤地域ブロック別の人口移動の状況
社会動態について地域別にみてみる。図1-16により、全国を「関東(1都6県)」、関東以
外の「東日本」、神戸市以外の「兵庫県」、「大阪府」、兵庫県と大阪府以外の「西日本」の5
つの地域ブロックに区分して、1959年(昭和34年)以降の各地域ブロックに対する神戸市の転
出入超過数をみてみると、高度経済成長期をはさむ1970年代後半までは西日本から神戸市への
転入人口による社会増加が非常に大きいことが分かる。神戸経済を代表する造船や鉄鋼などの
重厚長大産業の発展が西日本地域から神戸市への人口を吸引する大きな誘因となっていたもの
と考えられる。1980年代に入ると、大阪府や兵庫県内他市町からの転入超過がみられるが、こ
れは西区や臨海部等での住宅地開発の影響と考えられる。なお1959年(昭和34年)以降今日に
至るまで、関東に対しては常に転出超過となっている。
次に、表1-3では、近畿圏を除く全国を10の地域ブロックに分け、1999年(平成11年)か
ら2014年(平成26年)までの16年間の社会動態を示している。これを見ると神戸市の人口動態
にとくに大きな影響を与えているのは、中国地方の約1万人、四国地方の約7千人の転入超過、
東京都の約1万9千人、神奈川県の約8千人の転出超過であることが読み取れる。10ブロック
のうち6ブロックで転入超過となっている一方、東京都、神奈川県、南関東に対しては一貫し
て転出超過であり、とりわけ東京都への転出超過数は毎年約1千人程度と際立っている。これ
に対して西日本地域からは転入超過の傾向が継続しているが、とりわけ中国地方からの転入超
過が大きい。
直近の人口移動について、進学や就職、転勤、結婚、住宅取得などを迎える世代として流動
性が高い15歳から35歳の若年層を抽出して、年齢階層別の傾向をみた。図1-17、18によると、
東京都への転出超過は直近の動向でも1千人前後が続いており、特に20代の転出超過が著しい。
転出超過数は東京都より小さいが、神奈川県、南関東も同様の傾向を示しており、東京都を中
心とした関東圏への若者の流出傾向が強いことがわかる。これに対して、中国、四国、九州・
沖縄からの転入超過は15歳~19歳及び20歳~24歳が多くを占めており、神戸市がこれらの地方
の若者の大学進学や就職の受け皿になっているものと思われる。
-11-
30000
()
転 20000
入
超
過 10000
数
人
東日本
()
転
出 -10000
超
過
数 -20000
人
1959
1961
1963
1965
1967
1969
1971
1973
1975
1977
1979
1981
1983
1985
1987
1989
1991
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
0
関東
-30000
大阪府
兵庫県
-40000
西日本
-50000
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-16 地域別にみた転入・転入超過数の推移
表1-3 地域ブロック別(近畿圏を除く)にみた転入・転出超過数の推移
北海道・
東北
1999~2003年
2004~2008年
2009~2013年
2014年
16年間合計
301
995
1,004
▲ 48
2,252
北関東・
甲信
東京都
▲ 182 ▲ 5,448
127 ▲ 6,730
313 ▲ 5,447
8 ▲ 1597
266 ▲ 19,222
神奈川県
▲ 2,948
▲ 2,792
▲ 1,713
▲ 480
▲ 7,933
南関東
(埼玉・千葉)
▲ 1,337
▲ 1,501
▲ 1,030
▲ 381
▲ 4,249
東海
▲ 111
▲ 1,102
20
33
▲ 1,160
北陸
744
869
707
106
2,426
東日本合計
▲ 8,981
▲ 10,134
▲ 6,146
▲ 2359
▲ 27,620
中国
3,369
3,137
3,185
585
10,276
四国
1,869
2,563
2,452
540
7,424
九州・
沖縄
1,010
1,871
1,983
352
5,216
西日本合計
6,248
7,571
7,620
1477
22,916
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
-12-
600
400
200
(
)
転
入
超
過
数
人
0
-200
-400
(
)
転
出
超
過
数
人
-600
-800
-1000
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-17 地域ブロック別(近畿圏を除く)にみた
若年層における年齢5歳階級別転入・転出超過数(2012年)
600
400
200
()
転
入
超
過
数
人
0
()
転
出
超
過
数
人
-200
-400
-600
-800
-1000
-1200
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-18 地域ブロック別(近畿圏を除く)にみた
若年層における年齢5歳階級別転入・転出超過数(2013年)
-13-
(移動人口の職業別構成の状況)
国勢調査では移動者の社会経済的属性をみることができる。図1-19は2005年(平成17年)
から2010年(平成22年)の5年間の神戸市と各地域ブロック間の人口移動を職業別(2010年(平
成22年)時点の職業)に整理したものである。この図において、とくに関東への転出超過人
口の職業に注目すると、事務従事者(1,573人)、専門的・技術的職業従事者(1,162人)、
販売従事者(1,034人)の順で流出が多いことがわかる。研究者などの高度人材の流出は神戸
経済にとって懸念すべき課題である。
()
転
入
超
過
数
人
2000
1000
0
専門的・技術的職業従事者
-1162
-1000
人
-2000
( )
転
出
超
過
数
事務従事者
-1573
-3000
販売従事者
-1034
-4000
-5000
管理的職業従事者
専門的・技術的職業従事者
事務従事者
販売従事者
サービス職業従事者
保安職業従事者
農林漁業従事者
生産工程従事者
輸送・機械運転従事者
建設・採掘従事者
運搬・清掃・包装等従事者
分類不能の職業
出典:国勢調査
図1-19 職業別地域別就業者の転出入の状況
(参考:職業分類の説明)
管理的職業従事
者
専門的・技術的
職業従事者
事務従事者
販売従事者
サービス職業従
事者
保安職業従事者
農林漁業従事者
生産工程従事者
輸送・機械運転
従事者
建設・採掘従事
者
運搬・清掃・包
装等従事者
分類不能の職業
事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制な ど,経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・
管理の仕事に従事するもの
高度の専門的水準において,科学的知識を応用した技術的な仕事に従事するもの及び医療・教育・法律・宗教・芸術・その他の専門的性質の仕
出典:国勢調査
事に従事するもの
一般に課長(課長相当職を含む)以上の職務にあるものの監督を受けて,庶務・文書・人事・調査・企画・会計などの仕事並びに生産関連・営
業販売・外勤・運輸・通信に関する事務及び事務用機器の操作の仕事に従事するもの
有体的商品の仕入・販売,不動産・有価証券などの売買の仕事,有体的商品・不動産・有価証券などの売買の仲立・取次・代理などの販売類似
の仕事,商品の売買・製造・サービスなどに関する取引上の勧誘・交渉・受注・契約締結,保険の代理・募集などの営業の仕事に従事するもの
個人の家庭における家事サービス,介護・身の回り用務・調理・接客・娯楽など個人に対するサービス及び他に分類されないサービスの仕事に
従事するもの
国家の防衛,社会・個人・財産の保護,法と秩序の維持などの仕事に従事するものが分類される。自衛官・警察官・海上保安官・消防員として
任用されているもの
農作物の栽培・収穫,養蚕,家畜・家きん・その他の動物の飼育,林木の育成・伐採・搬出,水産動植物(両生類を含む)の捕獲・採取・養殖
をする仕事及びその他の農林漁業類似の仕事並びにこれらに関連する仕事に従事するもの
生産設備の制御・監視の仕事,機械・器具・手道具などを用いて原料・材料を加工する仕事,各種の機械器具を組立・調整・修理・検査する仕
事,製版・印刷・製本の作業,生産工程で行われる仕事に関連する仕事及び生産に類似する技能的な仕事に従事するもの
機関車・電車・自動車・船舶・航空機などの運転・操縦の仕事及びその他の関連する仕事並びに定置機関・機械及び建設機械を操作する仕事に
従事するもの
建設の仕事,電気工事に係る作業を行う仕事,ダム・トンネルの掘削などの仕事,鉱物の探査・試掘・採掘・採取・選鉱の仕事に従事するもの
主に身体を使って行う定型的な作業のうち,運搬・配達・梱包・清掃・包装等の仕事に従事するもの
いずれの項目にも含まれない職業
平成22年国勢調査に用いる職業分類(総務省統計局)より作成
-14-
(周辺自治体等と神戸市の人口移動状況)
対近畿圏の人口移動の状況を図1-20からみてみると、阪神間の自治体に対しては2002年
(平成14年)、大阪市に対しては2003年(平成15年)以降、転出超過の状況が継続している。
また、明石市、加古川市、高砂市などの東播臨海部(※)との人口移動に関しては、郊外地
での住宅取得志向と関連して、震災以前から転出超過傾向にあったが、神戸市内での住宅供
給の増加により、1999年(平成11年)以降は転入超過に転じ、その傾向が続いている。ただ
し、2000年(平成12年)頃には1,400人台で推移していた転入超過は2014年(平成26年)には
113人となり、転入超過幅は縮小傾向にある。
大阪市を除く大阪府に対しては転入超過が続いてきたが、転入超過幅は徐々に縮小し、最
近は転出入が均衡しつつある。阪神間6市や東播臨海部を除くその他の兵庫県内の自治体に対
しても、大幅な転入超過の状況が続いてはいるが、最近はその超過数は徐々に小さくなって
いる。
図1-21は周辺の自治体等との人口移動状況を個別に示している。阪神間の自治体である
尼崎市、西宮市、伊丹市、宝塚市に対しては2000年(平成12年)には転入超過であったが2014
年(平成26年)では転出超過に転じている。東播臨海部においては2000年(平成12年)では
明石市から500人を超える転入超過があったが、2014年(平成26年)には転出超過に転じてい
る。また、加古川市、三木市においては2000年(平成12年)には300人を超える転入超過であ
ったが、2014年(平成26年)には転入超過幅が大きく縮小している。
※東播臨海部:明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町の3市2町で人口規模は716千人(2010年国勢調査)
-15-
-1,000
-500
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
大阪市
(人)
0
-1,500
-16その他近畿
2,000
2,000
1,500
1,500
1,000
1,000
500
500
-500
0
-1,000
図1-20 近畿圏地域別にみた転入・転出超過数の推移
(阪神間6市・東播臨海部:1994~2014年、その他:1999~2014年)
2012年
2011年
2010年
2009年
2014年
2,500
2014年
-1,500
2013年
-1,500
2013年
2,500
2012年
-1,000
2011年
-500
2010年
0
2009年
500
2008年
1,000
2008年
1,500
2007年
2,000
2006年
2,500
2007年
(人)
2005年
-4,000
2006年
-3,000
-3,000
2005年
-2,000
2004年
(人)
2004年
-1,000
2003年
0
2003年
0
2002年
1,000
2001年
1,000
2002年
2,000
2,000
2001年
3,000
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
3,000
2000年
その他県内
1999年
阪神間6市(尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市)
2000年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
4,000
1999年
(人)
2005年
2003年
2002年
2001年
2000年
(人)
2004年
2003年
2002年
2001年
-500
1999年
-1,000
2000年
-1,000
1999年
(人)
東播臨海部
-2,000
851
2,500
大阪府(大阪市除く)
2,000
1,500
1,000
500
0
-1,500
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-21 周辺自治体等との転入・転出超過状況図(2000、2014年)
-17-
(西宮市、明石市と神戸市各区との人口移動状況)
神戸市は周辺自治体から通勤や通学等で約20万もの人々が流入する都市圏の中心都市であ
る。その中でも神戸市への通勤・通学者が多い自治体として、市西側に位置する明石市と市
東側に位置する西宮市に関して、各区との人口移動をみていく。
図1-22では各区と明石市との転入・転出超過状況を示しているが、明石市に近い市西部
に位置する区との超過幅が大きいことがわかる。例えば西区では2000年(平成12年)には500
人を超える転入超過があったが、2010年(平成22年)にはその数は100人程度に減少し、2014
年(平成26年)には200人以上の転出超過に転じている。図1-23により2013年(平成25年)
の西区における明石市との転入・転出超過数を性別・年齢5歳階級別にみると、男女ともに、
就職や結婚、初めての住宅購入(住宅の一次取得)が行われることが多い20代、30代前半で
転出超過となっている。
各区と西宮市との転入・転出超過状況を図1-24でみると、市東部の区のみではなく、市西
部の区との間でも転入・転出超過を観察できる。東灘区では2000年(平成12年)には400人を
超える転入超過があったが、2014年(平成26年)には100人を超える転出超過に転じている。
図1-25により2013年(平成25年)の東灘区における西宮市との転入・転出超過数を性別・
年齢5歳階級別にみると、女性では大学卒業・就職のタイミングである20歳代前半から結婚に
よる移動が想定される20歳代後半にかけて転出傾向が見受けられる。その後、住宅の一次取
得時期として考えられる30歳代前半において一度転入超過に転じるが、その後再び40歳代前
半までは転出超過となる。男性では高校卒業後の進学・就職時期において転出傾向となるが、
大学卒業時の就職のタイミングにおいては転入超過となっている。その後の結婚から住宅の
一次取得時期として考えられる20歳代後半~30歳代にかけて転出超過の傾向となり、40歳代
で一度転入超過となるものの、50~60歳代では転出超過となっている。また、灘区でも2000
年(平成12年)には100人の転入超過があったが2014年(平成26年)には14人まで縮小してい
る。また、西区、垂水区及び北区においても、近年は西宮市への転出超過の傾向が強くなって
きていることがうかがえる。
(人)
600
506
転 入 超 過
500
西区への転入超過が
転出超過に転じている
400
300
200
100
0
転 出 超 過
-100
-141
-200
-230
-300
東灘区
灘区
中央区 兵庫区
明石市2000
北区
明石市2010
長田区 須磨区 垂水区
西区
明石市2014
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-22 明石市との転入・転出超過数(区別)
-18-
-118
-104
歳
84
歳
79
歳
74
歳
69
歳
64
歳
59
出典:住民基本台帳移動報告
図1-25 東灘区における西宮市との転出入状況(性別・年齢5歳階級別)2013年
歳以上
90
~ 89
歳
85
~
80
~
75
~
70
~
65
~
60
~
55
歳
54
歳
49
歳
44
歳
39
-60
歳以上
90
転入-転出
転入-転出
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
転出
転出
西区
垂水区
須磨区
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~
50
~
45
~
40
~
35
歳
34
歳
29
-19-
~
30
~
25
-100
歳
24
歳
19
-80
~
20
~
15
-80
~ 14
歳
10
5~9歳
-60
0~4歳
歳以上
90
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
~ 14
歳
10
5~9歳
0~4歳
-40
-40
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
転出
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
0
-100
転 出 超 過
60
40
転入-転出
20
転入-転出
20
転入
40
転入
転出
80
60
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
300
200
転 入 超 過
(人)
(人)
西宮市2014
西宮市2010
西宮市2000
性
女
性
男
108
100
長田区
北区
兵庫区
中央区
灘区
東灘区
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
東灘区への転入超過が
転出超過に転じている。
400
-108
-120
-200
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
500
(人)
~ 14
歳
10
5~9歳
-150
-150
転入
-100
転入
-100
-20
-20
0~4歳
-50
0
0
-50
~ 14
歳
10
5~9歳
0
0~4歳
0
歳以上
90
50
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
50
性
女
(人)100
性
男
100
(人)
出典:住民基本台帳移動報告
図1-23 西区における明石市との転出入状況(性別・年齢5歳階級別)2013年
413
100
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-24 西宮市との転入・転出超過数(区別)
(神戸市各区と大阪市との人口移動状況)
図1-26は、各区と京阪神大都市圏の中心市である大阪市との転入・転出超過状況の推移
を示している。東灘区は2000年(平成12年)には大阪市に対して400人を超える転入超過であ
ったが、2010年(平成22年)には超過幅が大幅に減少し、2014年(平成26年)には転出超過
に転じている。同様の傾向が灘区、中央区などでも起こっており、大阪市への流出傾向が強
まっていることがわかる。また、垂水区、西区及び北区等においては2000年(平成12年)の
段階ですでに転出傾向を示していたが、近年その傾向がより強まっている。
対神戸市のみならず、大阪市では2000年(平成12年)以降転入超過が続いている。その要
因の一つとして、これまで中心地である大阪市から郊外へ住宅を求めて流出傾向を示してい
た大都市圏内の人口移動が、大阪市内の住宅供給の増加に伴い、郊外から中心地である大阪
市への移動に転換するという人口の都心回帰の現象が影響しているものと考えられる。
このような大阪市に対する人口移動の状況の実態を分析するため、大阪市への通勤・通学
者が最も多い東灘区、神戸市の都心部である中央区、ニュータウンを含む須磨区における2013
年(平成25年)の大阪市とのそれぞれの転入・転出超過数に関して性別・年齢5歳階級別にみ
てみる。
図1-27をみると、東灘区においては、男性の20歳代後半~30歳代、女性では20歳代後半
の結婚や住宅の一次取得による移動が想定される年齢層が転入超過となっている。0~4歳の
転入数も多いため、若年のファミリー層の転入が考えられる。
図1―28をみると、中央区においては、男性の30~40歳代が転入超過となっており、女性
の20歳代後半が転出超過となっている。年少人口の移動がほとんどないことから、結婚に伴
う移動または単身世帯の移動が多いことが考えられる。
図1-29をみると、須磨区においては、0~4歳の年少人口の転入超過があることから、若
年のファミリー層の転入も考えられるが、結婚・出産が多いと想定される20歳代後半~30歳
代における転出数も多く全体では転出超過となっている。
(人) 500
421
転 入 超 過
400
東灘区、灘区、中央区等への
転入超過が転出超過に転じている。
北区、須磨区、垂水区、西区
からの転出傾向が強まる
300
200
130
106
100
転 出 超 過
0
-100
-106
東灘区
灘区
中央区
大阪市2000
-109
-137
-200
兵庫区
北区
大阪市2010
長田区
須磨区
垂水区
-176
西区
大阪市2014
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-26 大阪市との転入・転出超過数(区別)
-20-
60
転出
転出
歳
64
歳
59
歳
74
歳
69
歳
84
歳
79
歳以上
90
~ 89
歳
85
~
80
~
75
~
70
~
65
~
60
~
55
歳
54
歳
49
転出
転出
歳以上
90
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~
50
~
45
歳
44
歳
39
歳
64
歳
59
歳
74
歳
69
歳
84
歳
79
歳以上
90
~ 89
歳
85
~
80
~
75
~
70
~
65
~
60
~
55
歳
54
歳
49
歳
44
歳
39
~
50
~
45
~
40
~
35
歳
34
歳
29
-40
~
30
~
25
-40
歳
24
歳
19
-30
~
20
~
15
-30
~ 14
歳
10
5~9歳
-20
0~4歳
歳
84
歳
79
歳
24
歳
19
歳
34
歳
29
歳
44
歳
39
歳
54
歳
49
歳
64
歳
59
歳
74
歳
69
歳以上
90
~ 89
歳
85
~
80
~
75
~
70
~
65
~
60
~
55
~
50
~
45
~
40
~
35
~
30
~
25
~
20
~
15
~ 14
歳
10
5~9歳
0~4歳
-20
~
40
~
35
10
転入-転出
10
-21-
転入
転入-転出
20
転入
20
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
-100
歳
34
歳
29
-80
~
30
~
25
-80
歳
24
歳
19
-60
~
20
~
15
-60
~ 14
歳
10
5~9歳
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
~ 14
歳
10
5~9歳
-40
0~4歳
-20
歳以上
90
0
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
0
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
転入-転出
転入
転入
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
-80
~ 14
歳
10
5~9歳
-80
0~4歳
-60
転入-転出
20
40
40
60
歳以上
90
-60
性
女
性
男
~ 89
歳
85
~ 84
歳
80
~ 79
歳
75
20
0~4歳
30
(人)
30
(人)
~ 74
歳
70
~ 69
歳
65
~ 64
歳
60
~ 59
歳
55
~ 54
歳
50
~ 49
歳
45
~ 44
歳
40
~ 39
歳
35
~ 34
歳
30
~ 29
歳
25
~ 24
歳
20
~ 19
歳
15
~ 14
歳
10
5~9歳
0~4歳
60
80
0
性
女
性
男
-10
-10
(人)
(人)
0
0
-40
-40
転入-転出
40
20
転入
転入
60
転入-転出
40
転出
80
転出
-40
-20
100
80
性
女
性
男
-20
-20
20
0
(人)
(人)
出典:住民基本台帳移動報告
図1-27 東灘区における大阪市との転出入状況(性別・年齢5歳階級別)2013年
出典:住民基本台帳移動報告
図1-28 中央区における大阪市との転出入状況(性別・年齢5歳階級別)2013年
出典:住民基本台帳移動報告
図1-29 須磨区における大阪市との転出入状況(性別・年齢5歳階級別)2013年
(神戸都市圏)
神戸市は京阪神大都市圏の一部とみるこ
ともできるが、先にも触れたとおり周辺市町
その他市区町
村
(43,981人、
21%)
村に対して神戸市を中心とした独自の都市
圏を形成しているともいえる。神戸市の人口
明石市
(40,758人、
20%)
動態変化の背景を理解するためには、市域内
での人口動態だけでなく、日常的に人の行き
来のある周辺地域にまで視野を広げてみて
西宮市
(27,797人、
13%)
大阪府
(31,710人、
15%)
いく必要があるだろう。
都市圏や大都市圏の設定に関して、
総務省
芦屋市
(10,309人、
5%)
の定義では中心市への15歳以上の通勤・通学
者数の割合が当該市町村の常住人口の1.5%
播磨町
(2,766人、1%)
以上であり、かつ、中心市と連接している市
稲美町
(2,645人、1%)
町村を周辺市町村とし、中心市への通勤・通
学圏、すなわち都市圏・大都市圏としている。
2010年(平成22年)国勢調査結果を用いて神
三木市
(8,966人、4%)
高砂市
小野市 (3,933人、2%)
(2,088人、1%)
三田市
(7,641人、4%)
戸市に上記基準をあてはめると、県下の23
市7町が神戸市の通勤・通学圏となる。しか
し、それら30市町には通勤・通学流動におい
加古川市
(16,925人、
8%)
淡路市
(1,282人、1%)
宝塚市
(6,773人、3%)
出典:国勢調査
図1-30 市町村別にみた市外から神戸市
への通勤・通学者数(2010 年)
て神戸市よりも大阪市との関係がはるかに
[%] 35
強い尼崎市、伊丹市や、西端に位置し、独立
30
性が強く、神戸都市圏に含めることがやや困
25
難な姫路市なども含まれる。それらを除くた
20
め、設定基準を1.5%から4%に変更すると、
15
4%圏内には、西宮市から高砂市、三田市か
10
ら淡路市が含まれる(図1-31)。東側に位置
5
する西宮、芦屋、宝塚、三田の各市は大阪市
0
明石市
西宮市
芦屋市
加古川市
宝塚市
三木市
高砂市
小野市
三田市
淡路市
稲美町
との結びつきの方が強いが、神戸市への通
勤・通学人口も十分に多いと判断できるので、
播磨町
2000
2005
2010
出典:国勢調査
図1-31 周辺都市における神戸市への
通勤通学率の推移
圏域に含め、神戸市及び神戸市周辺の10市2
町を神戸都市圏とする。この神戸都市圏の人口推移を「神戸内圏(神戸市東灘区、灘区、中
央区、兵庫区、長田区)」、「神戸外圏(神戸市須磨区、垂水区、北区、西区)」、東側の
周辺市である「芦屋市、西宮市、宝塚市」、「芦屋市、西宮市、宝塚市」以外の周辺市町で
ある「周辺自治体」に分けて整理したものが図1-32である。
-22-
出展:筆者作成
図1-32 神戸都市圏の設定範囲
図1-33をみてみると、神戸都市圏全体の総人口は戦災の影響による1945年(昭和20年)、
阪神・淡路大震災の影響が大きい1995年(平成7年)以外は一貫して増加しているのがわかる。
そして、神戸内圏、神戸外圏、周辺地域それぞれの人口推移をみると、戦前は神戸内圏が神
戸都市圏人口の過半数を占めていたが、戦後は構成比の低下だけでなく、1960年代をピーク
に絶対数も減少・停滞傾向にある。主に六甲山地の北と西に広がる神戸外圏は、1970年代以
降に人口が大きく増加しているが、1985年(昭和60年)以降は人口の伸びが小幅になってい
る。神戸市を取り巻く周辺地域は、神戸内圏と同じ頃から都市化が進展した西宮市南部や芦
屋市、1990年代から住宅地開発の著しい三田市、加古川市や三木市など多様な地域を含むが、
1980年(昭和55年)以降、神戸都市圏人口の過半数はその周辺地域に居住するようになって
いる。
次に図1-34により神戸都市圏における15歳未満人口の1980年(昭和60年)以降の推移を
みてみると、総人口の増加傾向に反し、15歳未満の人口は過去30年間、少子化の影響により
減少傾向が続いている。特徴的な点は、震災があった1995年(平成7年)以降、神戸内圏及び
西宮市、芦屋市、宝塚市といった阪神圏域で15歳未満人口が微増していることであり、神戸
や大阪の都心への交通利便性、職住近接を重視する傾向が若者だけでなく、子育て世代にも
あらわれている。
-23-
出典:国勢調査
図1-33
神戸都市圏の人口推移
出典:国勢調査
図1-34
神戸都市圏の15歳未満の人口推移
-24-
(神戸市内各区の人口移動状況)
最後に神戸市の区間人口移動についてみていく。図1-35に示すとおり、仮に市内を市街
地(東灘区、灘区、中央区、兵庫区、長田区、須磨本区)と郊外(北須磨、垂水区、北区、
西区)に2分し、両地域間の人口移動を見ると、阪神・淡路大震災前までは、西区や北区の
ニュータウンへの入居が本格化し、バブルで都心部の地価が高騰した時期とも重なり、人口
は市街地から郊外へ転出する傾向にあった。震災復興の過程及び2000年(平成12年)以降の
都心回帰の流れの中で、市街地で新たな住宅供給が増加したことにより、震災の影響で郊外
へ避難していた住民が市街地へ戻ってきたこと、郊外で生まれ育った若年層が通勤・通学の
利便性から郊外から市街地へ移動したことなどにより、郊外から市街地への転入が超過し、
その超過幅も拡大傾向にある。
(人)
28,000
24,000
20,000
市街地→郊外
16,000
12,000
郊外→市街地
8,000
4,000
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-35
神戸市の市街地と郊外の人口移動の推移
○2000年市内で
の区間移動
○2014年市内で
の区間移動
出典:神戸市統計報告「人口の動き」
図1-36
市内での転入・超過状況図(2000、2014年)
-25-
(2)年齢別及び産業別の人口動態分析
①年齢3区分別の人口推移
図1-37は1970年(昭和45年)から2010年(平成22年)の神戸市の年齢3区分別人口の推移
を示している。15歳から64歳までの生産年齢人口は1970年(昭和45年)から1990年(平成2年)
までは増加傾向にあり、1990年(平成2年)の約1,040千人でいったんピークを迎えた。その後、
1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災による減少を経て、2000年(平成12年)に再び1,033千
人まで増加するが、その後は減少に転じ,現在に至る。15歳未満の年少人口は1975年(昭和50
年)の約319千人をピークに減少に転じており、2010年(平成22年)までの35年間で約4割減少
した。65歳以上の老年人口については一貫して増加が続き、1990年代後半には年少人口と逆転
した。
2000年(平成12年)から2010年(平成22年)の10年間をくわしくみると、総人口では約50千
人の増(3.4%の増加率)であるが、この人口増は65歳以上の老年人口の増(約101千人、約40%
増)のみによるもので、生産年齢人口(約52千人減)及び年少人口(約11千人減)はともに減
少している。総人口に占める老年人口の割合である高齢化率は2010年(平成22年)で23.1%で
あり、この15年間で約10ポイント上昇した。神戸市においても高齢化の急速な進行が読み取れ
る(表1-4)。
一方で、60歳以上における就業者数が増加しており、生産年齢人口に対する就業者比率は高
まっている。特に、高年齢者雇用確保措置が義務化された2006年(平成18年)以降、60歳代前
半における就労者が増加していることも影響しているのではないかと推察される。
また、世帯の高齢化も進む中で、図1-40に示すとおり高齢者の一人暮らしや夫婦のみの世帯
も増加傾向にあり、今後も高齢化が進む中で、高齢者の生活の見守りや支援が大きな課題とな
っていくことが懸念される。
(千人)
1,200
1,040
1,000
978
938
919
1,006
1,033
1,016
981
931
800
15歳未満
15~64歳
600
65歳以上
うち75歳以上
400
354
319
286
308
305
290
257
200
103
83
0
223
207
169
142
123
252
200
193
42
54
71
31
68
23
1970年
1975年
1980年
1985年
1990年
1995年
132
97
2000年
2005年
195
166
2010年
出典:国勢調査
図1-37 神戸市の年齢3区分別人口の推移
-26-
表1-4 神戸市の年齢3区分別人口比率・増加率の推移
15 歳未満
人口比率
増加率
15~64 歳
政令市
平均増加率
人口比率
増加率
1970 年
22.2%
1975 年
1980 年
1985 年
1990 年
1995 年
2000 年
2005 年
2010 年
23.4%
11.3%
68.9%
2.0%
22.6%
-3.4%
68.4%
-0.7%
65 歳以上
政令市
平均増加率
人口比率
71.3%
増加率
政令市
平均増加率
6.5%
7.6%
23.8%
9%
19.5%
5.0%
4.7%
10.1%
15.6%
17.8%
20.5%
-5.9%
-7.8%
69.4%
17.5%
-11.3%
-14.6%
70.9%
6.4%
4.3%
11.5%
18.8%
19.2%
15.7%
-13.0%
-12.3%
70.8%
-3.3%
0.3%
13.5%
13.8%
22.7%
13.9%
-7.5%
-6.2%
69.2%
2.6%
-0.3%
16.9%
31.0%
24.7%
13.1%
-3.4%
-1.6%
66.8%
-1.7%
-0.5%
20.1%
20.9%
20.4%
12.7%
-2.3%
0.5%
64.1%
-3.4%
-0.3%
23.1%
16.0%
10.7%
出典:国勢調査
(千人)
69.0%
1,200
67.8%
1,000
68.0%
生産年齢人口
67.0%
800
66.2%
65.7%
600
65.0%
64.6%
65.0%
66.0%
就業者数
(常住地による)
65.2%
65.0%
64.5%
64.0%
400
生産年齢人口に対す
る就業者数比率(%)
64.0%
200
63.0%
62.0%
0
1970年 1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年
出典:国勢調査
図1-38 神戸市の常住就業者数と生産年齢人口の推移
(人)
100,000
90,000
80,000
70,000
45~49歳
60,000
50~54歳
50,000
55~59歳
40,000
60~64歳
30,000
65歳以上
20,000
10,000
0
1995年
2000年
2005年
2010年
出典:国勢調査
図1-39 神戸市の年齢別常住就業者数の推移(45歳以上)
-27-
40.0%
35.6%
33.3%
35.0%
29.9%
30.0%
25.0%
26.4%
22.5%
24.0%
高齢夫婦世帯比率
10.6%
20.0%
9.9%
高齢単身世帯比率
8.7%
15.0%
7.1%
10.0%
5.7%
11.0%
4.7%
5.0%
4.8%
12.3%
65歳以上世帯員のいる
一般世帯比率
9.0%
5.9%
6.6%
1990
1995
0.0%
1985
2000
2005
2010
出典:国勢調査
図1-40 神戸市の高齢者のいる世帯比率の推移
②年齢及びコーホート(世代)別の転出入状況
図1-41は2005年(平成17年)と2010年(平成22年)の神戸市の人口ピラミッドを重ねあわ
せたものである。5年間で、神戸市の人口は1,525,393人から1,544,200人へ18,807人(1.2%)
増加した。年齢3区分ごとにみると、15歳未満である年少人口は199,608人から194,963人へ4,645
人(2.3%)減少、15歳~65歳未満である生産年齢人口は1,015,642人から980,959人へ34,683
人(3.4%)減少した一方で、65歳以上の人口は305,301人から354,218人へ48,917人(16.0%)
増加した。2005年(平成17年)に60歳代前半のボリューム感のある世代が2010年(平成22年)
に高齢者人口に区分されるようになったことがこの期間に高齢者人口が増加した理由である。
この世代は1940年代前半生まれであるが、人口学では同じ期間に生まれた人口集団をコーホー
トと呼び、それぞれのコーホートが時間の経過のなかで社会にどのような影響を及ぼすかに注
目する。2010年(平成22年)に60歳代前半を迎えた年代に膨らみの大きなコーホートが図1-
41から確認できる。このコーホートが1940年代後半生まれであり、その人口規模は10万人を超
える。このコーホートにはいわゆる「団塊の世代」と呼ばれる1947年(昭和22年)から1949年
(昭和24年)までに生まれた人たちが含まれるが、2015年(平成27年)には全員が65歳を超え、
老年人口の仲間入りをする。さらに2025年(平成37年)には75歳以上の後期高齢者に区分され
ることとなる。
コーホートの変化をみることは、2時点の同じ年齢層、例えば20~24歳同士を比較するのでは
なく、2005年(平成17年)に20~24歳であった人たちが5年後の2010年(平成22年)に25~29
歳になっている状態と比較することであり、その差は2005年(平成17年)に20~24歳であった
人の5年間の転出入による増減と死亡による減少の合計を示すこととなる。したがって、各コー
ホートが一定の期間、例えば5年間にどの程度増減するかを割合で示したコーホート変化率を活
用して、地域の転出入傾向をくわしく分析することができる。また、2章でみていくが、同時
出生集団であるコーホートの分析によって、将来人口の推計など人口予測も行うことができる。
-28-
100歳以上
2005年 人口総数:1,525,393人
平均年齢:43.4歳
年齢不詳:4,842人
95
90
85
2010年 人口総数:1,544,200人
平均年齢:45.0歳
年齢不詳:14,060人
80
75
65
2020
団塊世代
70
■2005年高齢者人口 305,301人(20.1%)
↓
■2010年高齢者人口 354,218人(23.1%)
2025
60
55
2015
50
40
35
30
団塊ジュニア世代
45
■2005年生産年齢人口 1,015,642人(66.8%)
↓
■2010年生産年齢人口 980,959人(64.1%)
25
20
15
10
5
0
■2005年年少人口 199,608人(13.1%)
↓
■2010年年少人口 194,963人(12.7%)
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
出典:国勢調査
図1-41 神戸市の年齢別人口推移(2005、2010年 人口ピラミッド)
2005年(平成17年)と2010年(平成22年)の神戸市の年齢5歳階級別人口の推移を示した表1
-5と図1-42でコーホートごとの人口増減数を見てみると、2005年(平成17年)に0~4歳だ
ったコーホートは2010年(平成22年)には5~9歳となるが、この期間に64,205人から64,719人
へ514人増加したので、変化率は1.008倍となる。また、2005年(平成17年)に20~24歳だった
コーホートは、2010年(平成22年)には25~29歳となるが、この期間に96,046人から87,098人
へ8,948人減少したので、変化率は0.9068倍となる。コーホート変化率に関して、数値が1.0を
上回る場合は転入超過、1.0を下回る場合は転出超過と考えることができるが、60歳を上回るコ
ーホートの変化率が1.0を下回るのは、多くは死亡によるものと考えられている(例えば、2005
年(平成17年)に75~79歳だったコーホートが2010年(平成22年)までに11,407人減少してい
るが、この世代の転居は一般的には多くないため、減少の多くは死亡によるものと考えられる)。
2005年(平成17年)から2010年(平成22年)の神戸市のコーホート変化率の特徴は図1-42
の15~19歳、20~24歳、25~29歳(いずれも期末年齢)から見いだすことができる。すなわち、
15~19歳という高校卒業時期にコーホート人口が増加し、大学や短大、専門学校卒業者の就職
時期に当たる20~24歳、25~29歳では逆に人口が大きく減少することである。高校や大学の入
学・卒業の年齢と年齢5歳階級の年齢区分が完全に一致はしないので、ややわかりにくいが、大
学が多く集積する神戸市の人口動態の特徴とも言える。すなわち男女の15~19歳で転入超過を
示すのは神戸市在住で高校を卒業し、就職や大学等の進学のために神戸市以外の地域に転出し
た人数よりも神戸市以外の地域で高校を卒業し、就職や大学等の進学のために神戸市に転入し
た人数が男女とも多いことを意味している。そして、男性よりも女性の転入超過数が多いのは
男性が高校卒業後に神戸市以外の他地域に行く可能性がより高いこと、就職や大学等の進学に
よる神戸市への来住は女性でより多いことのいずれか、あるいは両方が要因ではないかと考え
られる。15~19歳、20~24歳に関しては高校卒業後の就職や大学等の進学のための神戸市への
-29-
転入、神戸市からの転出に加えて、大学等の卒業後の神戸市への転入、神戸市からの転出も反
映しているので解釈が難しいが、先にも挙げたように高校卒業後の転出に加え大学等の卒業後
にも転出する傾向が強いのが男性、逆に神戸市へ来住する傾向が強いのが女性であるため、女
性は明らかな転入超過、男性は転出入が均衡する結果となったのではないだろうか。25~29歳
は主に大学等の高等教育機関卒業後の移動を反映している(就職後の転勤や結婚に伴う移動も
含まれる)が、男女とも大きな転出超過となっている。とくに男性において10歳代後半の大学
入学世代の転入超過を上回る転出超過が大学等の卒業後に生じていることに注意する必要があ
る。
図1-43は2013年(平成25年)の1年間の転入数と転出数の差を男女年齢別に整理したもので
あり、住民基本台帳人口移動報告に基づいている。上に述べた神戸市の人口移動の特徴はこの
図からも読み取ることができる。ただし、本稿でこれまでに用いた国勢調査は比較的実態を反
映しているのに対し、住民票の異動の届け出(転入届)に基づく住民基本台帳人口移動報告は、
その多くが神戸市に住民登録をしていないであろう一人暮らしの市外出身学生を十分に捕捉で
きていない点を考慮する必要がある。すなわち住民基本台帳人口移動報告データでは進学にと
もなう人口移動については十分な情報が得られないが、ほぼ確実に住民票の異動を伴うと考え
られる就職や結婚に関する人口移動は図1-43から読み取れるはずである。これをみると、男
女とも高校卒業後に就職する世代である15~19歳で転入超過となっている。次に、20~24歳で
は男女で差異があり、男性に関しては転出超過、すなわち神戸市に在住して高校を卒業し、関
西あるいは関東などの他県等の大学(短大や専門学校も含む)に進学した男性が大学卒業のタ
イミングで神戸市から他県等へ住民票を異動する数が、他県等の高校を卒業し、大学進学を経
て神戸市や関西で就職して神戸市に住民票を移す数を上回っている。一方、女性は転入超過と
なっている(神戸市以外で高校を卒業し、大学等卒業後の就職時に神戸市に来る数が、逆方向
を上回っている)。そして、25~29歳では男女とも転出超過となっている。総括すると、男性
の場合は20代を通じて就職等による転出超過が続くが、女性の場合は、神戸市内等での就職に
よって20代前半での転出は抑制されるものの、結婚などのライフイベントや転職により20代後
半において神戸市外に転出しているのではないかと考えられる。さらに、子育てや初めての住
宅購入のタイミングである30~34歳では転出・転入がほぼ均衡し、35歳以降40代後半までは転
入超過となっている。
また、図1-44は1980年(昭和55年)以降のコーホート変化率の推移を示している。阪神・
淡路大震災とその復興の影響が大きい1990-1995年、1995-2000年を除くと、コーホート変化
率の傾向は1980年(昭和55年)まで遡ってもほぼ共通している。20~24歳⇒25~29歳のコーホ
ート変化率を1980年代と2000年代で比べると近年の転出傾向が激しさを読み取ることができる。
また0~4歳⇒5~9歳をみると、郊外化が進展し、若い子育て世代の転出傾向が強かった1980年
代前半に匹敵するほど2005-2010年は若い子育て世代のコーホート変化率が低い値となってい
る。
なお、図1-45により神戸市と人口規模が同程度の他の政令指定都市と比較すると、20~24
歳、25~29歳で、神戸市と同じく大学数や学生数が多い京都市、福岡市でも同様に転出超過と
なっている。もっとも15~19歳という高校卒業時の転入超過の度合いは福岡市や京都市のほう
が神戸市よりもはるかに大きい。一方、大阪市と川崎市においては、就職のタイミングで人口
が大きく増加している。
-30-
表1-5 神戸市の5歳階級別人口(2005、2010年)
出典:国勢調査
人
6,000
神⼾市(総数)
増加数 人
5,125
4,000
神⼾市(男)
3,435
神⼾市(⼥)
(
2,134
2,000
)
0
減少数 人
-2,000
-3,937
(
-4,000
-5,011
-6,000
就職世代の転出超過
-8,000
-8,948
-10,000
5〜9歳
10〜14
歳
15〜19
歳
20〜24
歳
25〜29
歳
30〜34
歳
35〜39
歳
40〜44
歳
45〜49
歳
50〜54
歳
55〜59
60〜64
歳
歳
65〜69
歳
70〜74
歳
表記は期末年齢
標記は期末年齢
※国勢調査
※コーホートとは、同年(または同期間)に出生した集団のことをいう。
出典:国勢調査
図1-42 神戸市 コーホート人口増減数(2005、2010年)
-31-
)
(人)
800
600
転入超過数 人
400
200
(
)
~
40
~
45
~
50
~
55
~
60
~
65
~
70
~
75
~
80
~
85
歳
39
歳
44
歳
49
歳
54
歳
59
歳
64
歳
69
歳
74
歳
79
歳
84
歳
89
歳以上
90
~
35
歳
34
歳
24
~
30
~
20
歳
19
歳
29
~
15
歳
14
~
25
~
10
5~9歳
転出超過数 人
-200
0~4歳
0
(
)
-400
-600
転入超過数(神戸市全体)
男
女
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-43 神戸市 年齢5歳階級別転入・転出超過数(2013年)
1.15
1.10
2005-2010
2000-2005
1995-2000
1990-1995
1985-1990
1980-1985
1.05
1.00
0.95
0.90
0.85
5~9歳
10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳
表記は期末年齢
出典:国勢調査
図1-44 1980年以降の神戸市のコーホート変化率の推移
-32-
(人)
40,000
転入超過数 人( )
30,000
23,679
20,000
16,489
10,000
川崎市
京都市
大阪市
0
神戸市
福岡市
転出超過数 人( )
-8,948
-10,000
-11,991
-20,000
-30,000
-31,785
-40,000
5~9歳
10~14
歳
15~19
歳
20~24
歳
25~29
歳
30~34
歳
35~39
歳
40~44
歳
45~49
歳
50~54
歳
55~59
歳
60~64
歳
表記は期末年齢
出典:国勢調査
図1-45 コーホート人口増減数の他都市との比較(2005、2010年)
次に図1-46により2005年(平成17年)から2010年(平成22年)にかけての各区の世代別の
コーホート変化率をみると、10歳代(2005年(平成17年)に10~19歳が2010年(平成22年)に
15~24歳)では、東灘区、灘区、中央区の3区は高い傾向にある。例えば灘区では、2005-2010
年の15~19歳⇒20~24歳のコーホート変化率は1.45であり、増加数でも2,748人と非常に高い。
これら3区には多くの大学が集積しており、大学進学時の転入超過が要因と考えられる。このう
ち東灘区、灘区では大学卒業時点の就職による転出が多いことにより、20歳代(2005年(平成
17年)に20~29歳が2010年(平成22年)に25~34歳)の変化率は低く1.0を下回る傾向にある。
他方、中央区では、就職や職住近接志向による転入が転出を補い、変化率は1.0を上回っている。
一方、西区や須磨区でも20歳代における変化率が低くなっており、就職や結婚による親世帯
からの独立による転出が要因ではないかと考えられる。また、子育て世代である30歳代(2005
年(平成17年)に30~39歳が2010年(平成22年)に35~44歳)では、西区が1.07と比較的高い
変化率を示しているほか、多くの区において変化率が1.0を上回っており、結婚や出産に伴う住
宅取得による転入超過が要因と考えられる。さらに、40歳代(2005年(平成17年)に40~49歳
が2010年(平成22年)に45~54歳)の変化率を見ると、ほとんどの区で変化率が1.0前後となっ
ている中で、灘区、中央区、兵庫区において市平均と比較して転入超過が若干大きい傾向が見
られる。このように、ある年齢層が5年後に人口を維持しているのか、増加・減少しているのか
という視点でみると、兵庫区などでは、総人口は減少傾向にあるが、10歳代や20歳代のコーホ
ートで人口が増加している。また、中央区は全てのコーホートで変化率が1.0を上回っているが、
須磨区は全てのコーホートで変化率が1.0を下回っているなど区によって特徴がみられること
に注意する必要がある。
-33-
0.80
0.90
1.00
神戸市
1.10
1.20
神戸市
1.01
東灘区
1.02
灘区
兵庫区
北区
兵庫区
1.00
長田区
0.98
須磨区
0.98
垂水区
長田区
0.98
垂水区
0.98
西区
中央区
1.05
1.08
0.94
0.97
長田区
1.05
須磨区
1.02
0.88
北区
0.92
0.95
須磨区
0.90
垂水区
10 歳代
1.20
0.93
兵庫区
1.19
北区
0.99
西区
1.55
1.10
0.95
灘区
1.39
中央区
1.01
1.00
東灘区
1.12
灘区
1.08
0.90
神戸市
1.06
東灘区
1.04
中央区
0.80
0.80 0.90 1.00 1.10 1.20 1.30 1.40 1.50 1.60
0.97
西区
20 歳代
0.91
2005→2010 年
総人口変化
0.80
神戸市
東灘区
0.90
1.00
1.10
兵庫区
須磨区
垂水区
西区
神戸市
東灘区
1.01
0.90
1.00
1.10
0.99
1.04
中央区
1.01
1.06
兵庫区
0.99
北区
1.03
長田区
1.00
須磨区
0.99
垂水区
1.01
1.07
30 歳代
西区
1.20
1.01
灘区
1.04
北区
長田区
0.80
1.02
灘区
中央区
1.20
1.04
0.99
1.02
0.99
1.00
0.99
40 歳代
出典:国勢調査
図1-46 コーホート人口変化率区別比較(2005、2010年)
-34-
2013年(平成25年)の年齢5歳階級別転出入人口を示した図1-47をみると、25歳から39歳ま
での転入数及び転出数で全体の4割を超え、これらの世代とともに移動すると考えられる0歳か
ら9歳までの子どもの転入数及び転出数をあわせると5割を超える。とりわけ25~29歳のコーホ
ートでは転入、転出数ともに1万人を超えピークとなっている。生産活動の中核をなすととも
に、就職や転勤、出産、住宅取得といったライフイベントの発生頻度が高いであろう25歳から
39歳までのコーホートの動態が総人口の動態に大きな影響を与えていることが分かる。そこで、
大学卒業後の就職のタイミングとなる25~29歳人口に着目し、産業という視点でいくつかのデ
ータをみていく。
15,000
17.6%
14.0%
転入者数
10,000
10.1%
5,000
6.9%
2.9%
7.1%
-10,000
9.9%
14.5%
18.8%
-15,000
転入
転出
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-47 年齢5歳階級別転出入人口(2013年)
-35-
90歳以上
85~89歳
80~84歳
75~79歳
70~74歳
65~69歳
60~64歳
55~59歳
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
20~24歳
15~19歳
2.8%
10~14歳
5~9歳
転出者数
-5,000
0~4歳
0
③産業別の人口移動
まず、2005年(平成17年)から2010年(平成22年)にかけての神戸市の産業別5歳階級別の転
入出者数を示した図1-48と図1-49をみてみると、さきほどの図1-42でみてきたように、
大学生の入学や卒業に伴いコーホートが大きく増減する傾向と重なっており、大学入学時を含
む15歳から24歳では約4,300人もの転入超過となっている(20~24歳のコーホートで「宿泊業、
飲食サービス業」の就業者が占める割合が多いのは学生のアルバイト従事などが要因と思われ
る)。25~29歳のコーホートでは、転出超過数が2,300人を超え、ほぼ全ての産業の就業者も転
出超過となるが、とりわけ「卸売業、小売業」、「情報通信業」、「金融業、保険業」の転出
超過はいずれも400人を超えている。
5,000
T 分類不能の産業
S 公務(他に分類されるものを除く)
4,000
R サービス業(他に分類されないもの)
Q 複合サービス事業
P 医療,福祉
794
3,000
P 医療,福祉
転入超過数(人)
O 教育,学習支援業
N 生活関連サービス業,娯楽業
2,000
M 宿泊業,飲食サービス業
M 宿泊業,飲食サービス業
1431
L 学術研究,専門・技術サービス業
K 不動産業,物品賃貸業
1,000
M 宿泊業,飲食サービス業
530
J 金融業,保険業
I 卸売業,小売業
396
I 卸売業,小売業
0
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
H 運輸業,郵便業
40~44歳
転出超過数(人)
G 情報通信業
G 情報通信業
-428
-1,000
F 電気・ガス・熱供給・水道業
I 卸売業,小売業
-574
J 金融業,保険業
-411
E 製造業
D 建設業
-2,000
C 鉱業,採石業,砂利採取業
B 漁業
A 農業,林業
-3,000
出典:国勢調査
図1-48 産業別年齢別就業者の転出入の状況(2005、2010年)
3,000
3,000
2607
2,000
1,000
871
706
530
-16
0
-341
15~19歳
603
488
295
-40
16
51
25~29歳
-722
-1,000
30~34歳
-643
35~39歳
-472
40~44歳
-244
0
396
-23
-176
378
15~19歳
転入-転出
2102
1365
202
転入
2359
2035
1,000
転出
20~24歳
2385
2,000
1431
20~24歳
158
209
35~39歳
40~44歳
転入
転出
-574
25~29歳
30~34歳
転入-転出
-1,156
-1,000
-1,639
-1,176
-1,944
-2,000
-2,000
-3,000
-3,000
-2,382
-2,959
宿泊業、飲食サービス業
卸売業、小売業
3,000
3,000
2,000
2,000
1,000
1,000
1
0
0
15~19歳
-1,000
-1
180
-202
20~24歳
-382
416
368
-75
360
-13
393
0
転出
-411
25~29歳
30~34歳
-443
3
転入
35~39歳
-373
-827
40~44歳
-393
0
0
-1,000
719
679
503
-129
-48
30~34歳
35~39歳
299
-7
-428
15~19歳
-3
転入-転出
289
-161
20~24歳
25~29歳
-450
-808
-551
40~44歳
-306
転入
転出
転入-転出
-1,147
-2,000
-2,000
-3,000
金融業・保険業
-3,000
情報通信業
出典:国勢調査
図1-49 主な産業分類別の年齢別転出入の状況(2005、2010年)
-36-
産業別就業者別及び地域別の人口移動を示す図1-50と重ねると、関東地方に対しては、
「金
融業、保険業」や「情報通信業」「卸売業、小売業」の転出超過に占める割合が多い。また、
中部地方に対しては製造業において転出超過が大きい。転入・転出において最も流動性の高い
人口層が20代の若年世代であることを考慮すると、これらの産業が関東地方、中部地方で就業
する若者の主要な産業となっており、それぞれの地方における基盤産業であると推察できる。
一方で、神戸市は関西地方、兵庫県内他市町に対しては、「製造業」「卸売業、小売業」「医
療、福祉」部門で転入、転出とも人口の移動が多いが、若干転入超過の状況である。
また、中国地方、四国地方に対しては「医療、福祉」「宿泊業、飲食サービス業」において
大きく転入超過となっており、これらの産業が現在の神戸において中国地方や四国地方出身の
若者の雇用の受け皿となっている産業と考えられる。
3000
転入超過数(人)
2000
S 公務(他に分類されるものを除く)
P 医療,福祉
368
1000
I 卸売業,小売業
480
R サービス業(他に分類されないもの)
M 宿泊業,飲食サービス業
433
Q 複合サービス事業
E 製造業
434
0
転出超過数(
人)
E 製造業
-529
P 医療,福祉
O 教育,学習支援業
N 生活関連サービス業,娯楽業
M 宿泊業,飲食サービス業
-1000
L 学術研究,専門・技術サービス業
G 情報通信業
-955
K 不動産業,物品賃貸業
J 金融業,保険業
-2000
-3000
I 卸売業,小売業
I 卸売業,小売業
-797
H 運輸業,郵便業
G 情報通信業
J 金融業,保険業
-397
F 電気・ガス・熱供給・水道業
E 製造業
D 建設業
C 鉱業,採石業,砂利採取業
-4000
B 漁業
A 農業,林業
-5000
出典:国勢調査
図1-50 地域別産業分類別の年齢別転出入の状況(2005、2010年)
-37-
(3)小学校区別の人口動態分析
①小学校区別の人口分析の意義
本章の冒頭で述べたように、本報告書の1章と2章の人口分析部分では、空間軸から神戸市
をみる場合、周辺地域との関係のなかで神戸市の位置づけを考察するマクロスケールと、市民
の日常生活により近い空間スケールである小学校区などのミクロスケールという複数の空間ス
ケールを用いて、神戸市の直面する人口問題をより重層的に考察していく。このため、本章(1)
と(2)では主にマクロスケールから神戸市の人口を分析したが、本稿と2章(4)ではでき
るだけ小さな空間単位から神戸市の人口の分析を試みたい。
人口分析を行う際の代表的な人口統計は総務省が5年ごとに実施している国勢調査であり、そ
の結果は全国、都道府県、市区町村などごとに公表されている。また、国立社会保障・人口問
題研究所が作成している「日本の地域別将来人口推計」も同じような地域単位で公表されてい
るが、神戸市では9区ごとの将来人口推計も公表されている。他方、都市的な地域におけるも
っとも小さな空間単位は町丁目である。町丁目とは市街地において、文字通り○○町○丁目を
示し、国勢調査では小地域と呼ばれ、最新の2010年(平成22年)の国勢調査では神戸市は約2,800
の町丁目(小地域)に区分されている。
今回の分析では2章の将来人口推計も含め神戸市の人口をミクロスケールから検討すること
を目指しているが、その目的に照らすと約2,800の小地域では各地区の人口規模が大変小さくな
り、将来人口の推計精度が低くなる恐れがある。また、神戸市では、1990年(平成2年)に「ふ
れあいのまちづくり条例」を制定し、ほぼ小学校区に相当する空間スケールで、地域の自治会、
老人クラブ、民生委員児童委員協議会、PTAなどの各種団体が中心になって「ふれあいのまちづ
くり協議会」を結成しており、小学校区が住民の関係性が強い地域単位と評価できること。し
たがって、分析結果を地域政策に活用しやすいのでないかと考え、本稿と2章(4)では国勢
調査が実施された2010年(平成22年)10月時点で市内に166ある小学校区を単位に人口分析を行
うこととする。なお、実際の分析にあたっては、1つの小地域が複数の小学校区に含まれる場
合、神戸市教育委員会が公表している各小学校の通学域を参考に、それぞれの小地域は一つの
小学校区に属するとみなすことにした。したがって教育委員会の設定する通学区域とは若干の
ずれが生じている小学校区もあることに注意していただきたい。
図1-51は小学校区一覧である。神戸市はやや南部を東北東から西南西に六甲山地が走って
おり、海側が急峻、内陸側はそれよりも緩やかな傾動地塊(※)である。海側はJR東海道・山陽本
線、阪急電鉄神戸線、阪神電鉄本線が東西に走っており、それらの鉄道路線やその海側は戦前
から都市化が進んでいる。一方、六甲山地の内陸側は神戸電鉄有馬線、三田線、粟生線、およ
び神戸市営地下鉄西神・山手線の沿線に主に1960年代以降に開発された住宅地が広がる。それ
らの鉄道路線から離れた地区では牧歌的な農村風景がいまも卓越している。小学校区の特徴と
して、六甲山地以北で面積が比較的大きな小学校区は農村的な地区が多く、住宅地として開発
された地区は比較的面積の小さい小学校区となっている。
神戸市の人口は2010年(平成22年)国勢調査時点で約1,544千人、小学校区数は166なので、
小学校区あたりの平均人口は約9,300人であるが、人口が最大であるのは中央区の中央小学校で
約26,000人、他に中央区のこうべ小学校、東灘区の魚崎小学校、住吉小学校、西区の伊川谷小
学校の校区で人口が2万人を超えている。一方、人口2千人に満たない小学校区も7つ(北区有馬
-38-
小学校、淡河小学校、好徳小学校、大沢小学校、藍那小学校、西区高和小学校、灘区六甲山小
学校)ある。なかでも人口規模がとくに小さい校区人口が約500人の藍那小学校、約200人の六
甲山小学校は小規模特認校制度を導入し、一定の条件を満たす他校区の児童の受け入れをおこ
なっている。
※傾動地塊:地塊の一方が断層に沿ってずり上がって急な断層崖を生じ、他方は緩やかな長い斜面となる地塊。
出典:筆者作成
図1-51 神戸市の小学校区(2010年10月現在)
20,000~
15,000~19,999
10,000~14,999
7,500~9,999
5,000~7,499
2,500~4,999
~2,499
出典:国勢調査
図1-52 神戸市の小学校区ごとの人口(2010年)
-39-
②小学校区別の人口変化
小学校区ごとの近年の人口変化を整理したものが図1-53と図1-54である。2005年(平成
17年)から2010年(平成22年)の神戸市の人口増加率は1.2%と正の値を示すが、図1-53に示
されるように166小学校区のうち、人口が増加した小学校区は70校区であり、過半数の96校区で
人口が減少した。図1-54から市内のどの地域で人口が増加、あるいは減少したのかが確認で
きる。
図1-54をみると、人口が増加しているのは海岸に近い鉄道沿線沿い、六甲山地の内陸側で
は神戸電鉄、神戸市営地下鉄の沿線である。人口増加率が10%を超えている小学校区は既成市
街地では東灘区、灘区、中央区、兵庫区、長田区の主に交通利便性が高く、2005年(平成17年)
から2010年(平成22年)にかけて集合住宅の供給が多かった校区である。一方、郊外地域では
神戸電鉄有馬線・三田線沿線、イオンモール神戸北や神戸三田プレミアム・アウトレットに近
い長尾小学校区、西区の西神ニュータウンの一部地区、舞多聞地区周辺など主に戸建て住宅の
供給が多かった校区である。
一方、人口が減少したのは兵庫区から垂水区に至る須磨ニュータウンを含む六甲山南麓を中
心とした広い地域、農村的な特徴を示す主に北区と西区の区画の大きな校区、西区の西神ニュ
ータウンの一部地区、北区の鈴蘭台周辺地区、兵庫区から長田区の沿岸などである。都心周辺
部と農村地域で人口が減少し、郊外地域で人口が増加するというかつての郊外化の図式とはや
や異なる状況となっていることに注意したい。
中央区を中心に市内のJR東海道・山陽本線沿線は古くからの市街地であるが、その利便性か
ら集合住宅の供給が多く、人口は増加している。他方、主に1960~70年代に住宅開発された北
区の鈴蘭台周辺地区や須磨ニュータウンなど比較的初期に開発された郊外地域で人口減少が目
立つ。
60
49
50
43
37
40
校
区 30
数
20
15
12
10
6
4
0
-10%未満
-10%~-5%
-5%~0%
0%~5%
5%~10%
10%~15%
15%以上
図1-53 神戸市の小学校区ごとの人口増加率(2005、2010年)出典:国勢調査
-40-
10%~
0%~10%
-10%~0%
~-10%
図1-54 小学校区ごとにみた人口変化(2005、2010年)
出典:国勢調査
2005年から2010年
人口が10%以上増加した小学校区
人口が減少した小学校区
18校区
96小学校区
■既成市街地
・兵庫区(湊山、夢野の丘など)から須磨区(竜
・福池(東灘区)、高羽・西灘(灘区)、宮本・
が台・菅の台・高倉台など)垂水区(多聞台・
中央・こうべ(中央区)、兵庫大開(兵庫区)、
神陵台など)に至る須磨ニュータウンを含む
蓮池(長田区)などの主に交通至便でこの期
六甲山南麓を中心とした広い地域
間に集合住宅の供給が多かった校区
・農村的な特徴を示す主に北区(淡河・大沢な
※中央区を中心に市内のJR東海道・山陽本線沿
ど)と西区(高和・押部谷など)の区画の大
線は集合住宅の供給が多い
きな校区
・西区の西神ニュータウンの一部地区(狩場台
■郊外地域
樫野台など)
・神戸電鉄有馬線・三田線沿線(藤原台)、イ
・北区の鈴蘭台周辺地区〈君影・南五葉など〉
オンモール神戸北、神戸三田プレミアム・ア
・兵庫区(浜山など)から長田区(真野など)
ウトレット近隣(長尾)、西区の西神ニュー
の沿岸など
タウンの一部地区(井吹東・東町)、垂水区
※主に1960~70年代に住宅開発された北区の鈴
舞多聞地区周辺など主に戸建て住宅の供給が
蘭台周辺地区や須磨ニュータウンなど比較的
多かった校区
初期に開発された郊外地域で人口減少が目立
つ。
-41-
(年少人口)
次に小学校区ごとの年齢構造に関して年齢3区分別の人口割合についてみていく。図1-55
は15歳未満人口である年少人口割合を示している。年少人口割合が高い地域は、結婚後間も
ない世帯が新規に供給された住宅に入居して人口が増加している地域と思いがちであるが、
図1-54と図1-55は必ずしも一致していないことに注意が必要である。中央区の小学校区
のように人口は増加していても年少人口割合が低い(増加人口は単身者や小さな子どものい
ない世帯が多いのかもしれない)地域もあるし、北区の鈴蘭台周辺のように人口減少してい
るにも関わらず年少人口割合は比較的高い地域もある。東灘区東部や垂水区の舞多聞周辺で
も年少人口割合が高いことにも注目したい。
2010年時点
年少人口比率が20%を
人口は減少しているが、校区の年少人口比率が
上回る地域
神戸市平均(12.7%)を上回る地域
長尾・西山(北区)
渦が森・六甲アイランド(東灘区)、六甲山・美野丘(灘区)、
井吹東・井吹西(西区)
唐櫃・甲緑・小部東・泉台・北五葉(北区)、宮川(長田区)、
北須磨・高倉台・東須磨・東落合・西落合・花谷・南落合(須磨
区)、塩屋・乙木・西脇・多聞南・小束山・下畑台(垂水区)、
岩岡・麹台・小寺・出合・井吹西(西区)
14%~
12%~14%
10%~12%
~10%
図1-55 小学校区ごとにみた年少人口割合(2010年)
-42-
出典:国勢調査
(老年人口)
図1-56は65歳以上の老年人口割合(高齢化率)を示している。
区画の大きな農村地域は、例外はあるものの概して老年人口割合が高い。図1-54で人口
減少を指摘した兵庫区から長田区、須磨区の六甲山南麓地域、兵庫区から長田区の沿岸地域
でも老年人口割合が高い。
一方、近年住宅が多く供給された東灘区東部(六甲アイランドも含む)、神戸電鉄有馬線
や三田線沿線、西神ニュータウンの一部地区では老年人口割合が低い。
2010年時点
老年人口割合が高い地域
老年人口割合が低い地域
・区画の大きな農村地域(淡河・大沢・押部
・近年住宅が多く供給された東灘区東部(東
谷など)
灘・福池・六甲アイランドなど)神戸電鉄
・人口減少している兵庫区(湊山、夢野の丘
有馬線や三田線沿線(藤原台・有野・西山
など)から須磨区(竜が台・菅の台・高倉
など)、西神ニュータウンの一部地区(井
台など)垂水区(多聞台・神陵台など)に
吹東・狩場台・美賀多台など)
至る須磨ニュータウンを含む六甲山南麓及
び、兵庫区(浜山など)から長田区(真野
など)の沿岸など
30%~
25%~30%
20%~25%
~20%
図1-56 小学校区ごとにみた老年人口割合(2010年)
-43-
出典:国勢調査
(生産年齢人口)
続いて、15歳から64歳未満の生産年齢人口についてみていくが、ここでは特に20歳代、30
歳代の男女が神戸市内のどの地区に多いのか、少ないのかという点に注目してみる。図1-
57(A,B)は2010年(平成22年)時点の小学校区ごとの20歳代の男女別人口の総人口に占める
割合を地図化したものである。20歳代の割合が相対的に高い地区は①就職や進学で神戸市に
単身で来住した神戸市以外の地域を出身地とする若者が多く住む地区、②神戸市で育ち、家
族と同居する若者が多く居住する地区が考えられる。図1-57で東灘区から長田区に至るJR
沿線で割合が高くなっているのは主に①の若者が多く住むためと考えられる。東灘区には甲
南大学、灘区には神戸大学がある。さらに、兵庫県立大学、神戸学院大学がある西区の小学
校区でもこの年齢層の割合が高い地区がある。また神戸電鉄有馬線沿線や西神ニュータウン
にも20歳代の居住割合の高い地区がある。神戸電鉄有馬線・三田線や西神ニュータウンの一
部地区では主に②の若者の影響で20歳代居住割合が高く、兵庫県立大学や神戸学院大学近く
では①と②の両方の影響で割合が高くなっているものと考えられる。なお、男女の分布の差
をみると②の若者が多く住む郊外に位置する小学校区では男性よりも女性で割合が高くなる
傾向がみられるが、これは神戸市郊外地域で育った男性が進学や就職に際して女性よりも市
外に転出する割合が高いことが要因だと思われる。
2010年時点
①就職や進学で神戸市に単身で
来住した神戸市以外を出身地
とする若者が多く住む地区
①と②の両方の影響で若
者が多く住む地区
②家族と同居する神戸市で育っ
た若者の多く居住する地区
・東灘区(本山南など)、灘区
(六甲・西灘など)、中央区
(春日野・中央など)、兵庫
区(兵庫大開など)にわたる
JR沿線
※東灘区には甲南大学、灘区に
は神戸大学がある
・西区の兵庫県立大学、
神戸学院大学近く(東
町・小寺・長坂など)
・神戸電鉄有馬線・三田線沿線
(藤原台・有野など)や西神
ニュータウンの一部地区(狩
場台・樫野台・美賀多台など)
※市郊外地域で育った男性が進
学や就職に際して女性よりも
市外に転出する割合が高いこ
とにより、女性の割合が高く
なる傾向
6%~
5%~6%
4%~5%
~4%
A
6%~
5%~6%
4%~5%
~4%
20~29歳男性人口/総人口
B
20~29歳女性人口/総人口
図1-57 小学校区ごとにみた男女別20~29歳人口割合(2010年)
-44-
出典:国勢調査
次に図1-58で30歳代の人口分布を検討する。30歳代の過半数は既婚者と考えられるが、
未婚者も多く、両者の分布が異なることにも注意を払いたい。男女とも割合が高い地区は神
戸電鉄三田線沿線の北区の藤原台、最北でイオンモール神戸北がある北区の長尾など近年の
住宅供給が活発な地区であり、結婚後間もないなど比較的若い夫婦世帯が居住する地区では
ないかと考えられる。一方、六甲山南麓をみると、男性はJR線の南を走る国道2号線以南の東
灘区から中央区にかけて居住割合が高い地区がみられるのに対し、女性は阪急沿線までを含
む東灘区から中央区で居住割合が高い。女性のみで居住割合が高い地区は未婚の女性が多く
住む地区であると考えられる。
2010年時点
①30歳代の割合の高い地区
②30歳代男性の割合が高い地区 ③30歳代女性の割合が高い地区
・神戸電鉄有馬線沿線(藤原 ・JR線の南を走る国道2号線以
南の東灘区(東灘・本庄・
台)、イオンモール神戸北、
福池など)、灘区(西郷・
神戸三田プレミアム・アウ
西灘など)から中央区にか
トレット近隣(長尾)、西
けた地区
区の西神ニュータウンの一
部地区(井吹東など)、舞
多聞地区周辺など主に戸建
て住宅の供給が多かった校
区
※比較的若い夫婦が居住する
地区
8%~
7%~8%
6%~7%
~6%
・阪急沿線までを含む東灘区
(本山第一・本山第三な
ど)、灘区(高羽・六甲な
ど)から中央区にかけた地
区
※未婚の女性が多く住む地区
8%~
7%~8%
6%~7%
~6%
30~39歳男性人口/総人口
B
30~39歳女性人口/総人口
図1-58 小学校区ごとにみた男女別30~39歳人口割合(2010年)
出典:国勢調査
図1-57と図1-58でみてきたことは図1-59で確認できる。この図は2010年(平成22年)
時点の小学校区ごとの20歳代(A)、30歳代(B)の性比を図示している。性比とは女性100
に対する男性の値で示されるものであり、出生時点での性比は105~106(男性が女性よりも
多い状態)である。図の階級区分をみるともっとも高い階級が105以上となっている。したが
って、もっとも高い階級区分のみが転出入により女性に比べて男性が多い状態になっている
小学校区であり、他の3つの区分は人口移動の結果、相対的に女性が多くなっている。神戸
市全体で2010年(平成22年)の20~29歳、30~39歳の性比はそれぞれ93、92と女性が男性よ
-45-
り1割ほど多く、相対的に女性が多いことは他の都市と比較した神戸市の特徴の一つである
(図1-60)。性比が20歳代で低い理由は就職や進学の際の神戸市からの転出が女性よりも男
性で多いこと、同じタイミングで神戸市への転入が女性で相対的に多いことによる。また20
歳代、30歳代で神戸市に居住し、大阪市等へ通勤する未婚男女のうち、女性のほうが神戸市
に居住する傾向が強いとも考えられる。
図1-59をみると、20歳代の性比が105以上であるのは神戸大学等に近い単身男性が相対的
に多く住む地区と後継者として男性が実家に留まる傾向がある農村的な地区である。他の大
半の地区では人口移動の結果、男性に対する女性の割合が高くなっているが、これは主に進
学等の際に男性が神戸市外に転出することが多いためであろう。30歳代では過半数は既婚で
あるため、性比の低い地区は未婚女子が多く、性比の高い地区は未婚の男性が多いとみるこ
ともできる。85未満という極端に低い性比を示しているのは西区の西神ニュータウンや北区
の鈴蘭台周辺であり、これらの地区では家族と同居する未婚女性が多いと考えられる。一方、
東灘区の国道2号線以北や中央区で性比が85未満の地区は単身の未婚女性が多いと考えられ
る。30歳代で性比が105を超えている地区は20歳代と同様に農村的な地区、それに和田岬周辺
の工業地区である。前者は実家の後継者として農村地区に留まる未婚男性、後者は工業地区
で働く主に単身の未婚男性が多いと考えられる。
105%~
95%~105%
85%~95%
~85%
A
105%~
95%~105%
85%~95%
~85%
20~29歳男性人口/20~29歳女性人口
B 30~39歳男性人口/30~39歳女性人口
図1-59 小学校区ごとにみた年齢別性比(2010年)
-46-
出典:国勢調査
2010年時点
男性比率の高い地域(性比105以上)
女性比率が高い地域(85未満)
20歳代
・神戸大学等に近い単身男子が相対的 ・西神ニュータウンの一部地区(井吹
東・井吹西・狩場台)、鈴蘭台周辺
に多く住む地区(東灘・本山南・魚
(小部・小部東など)、須磨ニュー
崎・住吉・御影・高羽・西郷・六甲
タウンの一部地区(北須磨・高倉台)
など)
など
・農村的な地区(大沢・好徳・淡河・
※家族と同居する未婚女性が多いと
高和など)
考えられる。
※実家の後継者となる男性が留まり、
女性は転出する傾向があると考え ・東灘区の国道2号線以北(本山第一、
本山第三など)や中央区(こうべ、
られる。
雲中など)
※単身の未婚女性が多いと考えられ
る。
30歳代
・農村的な地区(大沢・好徳・淡河・ ・西神ニュータウンの一部地区(井吹
西・樫野台)、須磨ニュータウンの
神出・櫨谷など)
一部地区(西落合・花谷)など
※上記とおなじ。
・和田岬周辺等の工業地区(和田岬・ ※家族と同居する未婚女性が多いと
考えられる。
浜山・明親など)
※工業地区で働く主に単身の未婚男 ・東灘区の国道2号線以北(本山第一、
本山第三など)や中央区(こうべ、
性が多いと考えられる。
雲中など)
※単身の未婚女性が多いと考えられ
る。
120
115
札幌市
仙台市
男性比率高い
さいたま市
110
千葉市
東京都区部
川崎市
女性比率高い
性比(
男性/女性)
%
横浜市
105
相模原市
103
新潟市
静岡市
100
浜松市
名古屋市
京都市
95
大阪市
94
93
91
堺市
神戸市
岡山市
90
広島市
90
北九州市
福岡市
85
熊本市
80
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
図1-60 大都市における男女性比の比較(2010年)
-47-
35~39歳
出典:国勢調査
(コーホート変化率)
生産年齢人口について検討してきたが、最後にコーホート変化率をみることにする。ここ
では2000年(平成12年)の10~14歳人口が2010年(平成22年)に20~24歳に至る10年間の変
化、20~24歳人口が10年間で30~34歳になる変化を男女別にみていく。10~14歳が20~24歳
に達する期間の変化はおもに高校卒業時の転出入による。神戸市全体で男性は1.06、女性は
1.19であり、女性のほうが大きな転入超過の値を示している。図1-61をみると、東灘区か
ら須磨区のJR沿線でコーホート変化率が1.3を超える小学校区が多いことがわかる。これらの
地区には進学や就職での転入が転出を大きく上回っていることが確認できる。一方、コーホ
ート変化率が0.7未満の転出超過の著しい小学校区は男女で違いがあり、男性のほうが転出超
過の著しい小学校区の数が多い。郊外に位置するこれらの地区では高校卒業時にとくに男性
が多く転出すると考えられる。
2000年~2010年
10歳代前半~20歳代前半のコーホート変化率
10歳代前半~20歳代前半のコーホート変化率
が1.3を超える転入超過の小学校区
が0.7未満の転出超過の著しい小学校区
・東灘区から須磨区のJR沿線
・郊外部
※進学や就職での転入が転出を大きく上回っ
※高校卒業時にとくに男性が多く転出する。
ている。
1.4~
1.1~1.3
0.8~1.0
0.0~0.7
1.4~
1.1~1.3
0.8~1.0
0.0~0.7
A 男子
B 女子
出典:国勢調査
図1-61 小学校区ごとにみたコーホート変化率(10~14歳(2000年)⇒20~24歳(2010年))
次に図1-62で示される20~24歳から30~34歳の変化は就職の際の転出入差、あるいは結
婚による新たな世帯形成に関連する転出入差等によるものである。神戸市全体で男性が0.90、
女性は0.92と男女とも転出超過の傾向がみられる。コーホート変化率が1.0を超えている地区
をみると、北区の神戸電鉄有馬線・三田線や長尾小学校区のように結婚により新たに形成さ
れた世帯が居住する傾向が強いのは男女共通である。一方、JR線に沿った地区をみると男性
は中央区以西、女性は中央区以東で1.0を超える地区が広がる。これは就職の際に男性は工業
地域である市西部に居住を選択し、女性は大阪市等の東方への通勤の利便性もあり、市東部
に居住を選択する傾向の表れではないかと考えられる。
-48-
2000年~2010年
20代前半~30歳前半のコーホート変化率が1.0を超えている転入超過の小学校区
男女共通
・北区の神戸電鉄有馬線・三田線や長尾小学校区のように結婚により新たに形成
された世帯が居住する傾向が強い地区
男
性
・中央区以西
※工業地域である市西部に居住
女
性
・中央区以東
※大阪市等の東方への通勤の交通利便性により居住
1.01~
0.86~1.00
0.71~0.85
0.00~0.70
1.01~
0.86~1.00
0.71~0.85
0.00~0.70
A 男性
B 女性
出典:国勢調査
図1-62 小学校区ごとにみたコーホート変化率(20~24歳(2000年)⇒30~34歳(2010年))
-49-
③小学校区別の人口分析のまとめ
小学校区ごとの人口動向や人口構造をみてきたが、以下のような大きなカテゴリーとして整
理することもできる。
代表的な地域
開発から一定期
間が経過したニ
ュータウン地域
(オールドニュ
ータウン)
現在も住宅供給
が進むニュータ
ウン地域
人口動向・人口構造の特性と背景
・人口の減少、高齢化が進む。
須磨ニュータウン
・高校卒業時に特に男性が多く転出する。
周辺
・家族と同居する20~30歳代の未婚女性が多い。
明舞団地周辺
・人口の減少、高齢化が進む。
・高校卒業時に特に男性が多く転出する。
西神ニュータウン ・住宅供給が多く、結婚後間もない住宅の一次取得者層
などの転入が進み人口が増加している。
の一部地区
・その結果として、年少人口率が高く、老年人口率が低い。
神戸電鉄三田線・ ・進学や就職により若年男性の転出が多く女性の比率が
有馬線沿線及び周辺
高い。
・マンション供給などにより、人口が増加傾向にある。
阪急沿線周辺(東灘
・大阪市等へ通勤する単身の未婚女性が多く居住すると
区~中央区)
思われる。
市街地東部地域
国 道 2 号 沿 道 周 辺 ・マンション供給などにより、人口が増加傾向にある。
及び以南(東灘区 ・就職や進学で神戸市に単身で来住した20~30歳代の若
者が多く居住すると思われる。
~中央区)
主要大学周辺
・神戸大学や甲南大学などの学生が多く居住する。
都心地域
三宮・元町周辺
・マンション供給などにより、人口が増加傾向にある。
・単身世帯が多く居住する。
市街地西部地域
地下鉄海岸線沿線
・工業地区で働く主に単身の未婚男性が多く居住する。
周辺
農村地域
・人口減少、高齢化が進む。
北区・西区の農村
・実家の後継者となる男性が定住し、女性の転出傾向が
地域
強く、結果として男性比率が高い。
-50-
(4)分析及び結果の整理
【自然動態】
①子育てしやすいまちの実現
1章では神戸市の過去と現在の人口動態をみてきたが、2010年代になり、神戸市の人口が自
然減、社会減ともにマイナス傾向に転じており、人口減少トレンドに突入していることが明ら
かとなった。
人口動態は出生、死亡、転入、転出の4つの要素によって決まるが、近年の神戸市の人口動
態の状況は以下のように整理できる。出生については全国の動向と同様、2005年(平成17年)
に比べると2010年(平成22年)の合計特殊出生率は上昇したが、再生産年齢にあたる15~49歳
女子人口がこの期間に微減したことにより、出生数はほぼ横ばいである。過去20年間でみると、
出生率の緩やかな低下を再生産年齢女子人口の微増が補うかたちで出生数1万2千人台と安定的
に推移してきた。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計仮定値では合計特殊
出生率は今後緩やかに低下するとしており(中位推計)、これまでの状況を勘案すると神戸市
の合計特殊出生率も同様の動きとなる可能性が高い。また、2010年(平成22年)の再生産年齢
女性人口は約35万人であるが、2章で述べる将来人口推計によると2020年(平成32年)には約
31万人、2030年(平成42年)に約27万人、2040年(平成52年)に約24万人に減少するとされて
いる。
出生と死亡の差である自然動態は神戸市では2007年(平成19年)から8年連続でマイナスに転
じているが、再生産年齢人口の増加あるいは出生率の上昇が生じない限り、今後、出生数が減
少することは避けられない。さらに、約20年前の死亡数は約1万人であったが、近年は1万5千人
を超えており、今後、高齢化がさらに進むことを踏まえると死亡数の増加は確実である。これ
からも出生数の減少が想定されるとともに死亡数の増加が確実であることを考慮すると、自然
動態のマイナス幅は増大していくものと思われる。このような状況の中で、神戸市においても、
自然動態による人口増加、すなわち出生力を高めるためには何をなすべきなのだろうか。出生
率低下の主な要因は、①親となる年齢層の人口そのものの減少傾向、②結婚する人々の割合の
縮小傾向(いわゆる未婚化)、③結婚した人々の持つ子どもの数の減少傾向の3つであると言
われており、この3要因を念頭に出生力向上の施策検討に取り組んでいく必要がある。もっと
も、団塊ジュニア世代の出産がピークを迎え、全国的に①の要因が高まる中で、自治体にとっ
て、まずは親となる子育て層(既婚のカップル)の転入により子育て人口層の増加を生み出す
ことが重要であると言える。そして、子育て層から引っ越し先として選ばれるためには、子育
て層の生活支援だけでなく神戸市が「子育てしやすい住環境」を備えていることは必要条件で
あり、公共交通も含め、子育て層にとって優しく、暮らしやすい都市空間の整備が求められる。
さらに、多くの自治体が「子育てしやすいまち」に向けて切磋する中で、他都市との優位性に
つながるような視点が必要であるが、かつ子育て層が強く望んでいる分野(例えば公教育の質
の向上など)を分析し、そこに集中的に取り組んでいくことも必要ではないか。
-51-
【社会動態】
②若者の流入促進と流出阻止
転入と転出はどうだろうか。神戸市と神戸市外の人の動きをみると、1990年代は転入、転出
とも約10万人であり、阪神・淡路大震災のときを除くと転入が転出を5千人~1万人程度上回っ
ており、社会動態はプラスの値を示していた。2000年代に入ると転入数、転出数とも縮小し、7
~8万人となっている。転入と転出の差も同様に縮小し、10年前は約5千人のプラスであったが、
近年は転出が転入をわずかであるが上回る事態となっている。転入数、転出数がいずれも減少
しているのは転出入を活発におこなう20~30歳人口が減少していることによると考えられる。
転出入の差がマイナス方向に変化している要因は高校卒業時、大学卒業時、および30歳代で住
宅を求めて移動する人々の移動傾向の変化にあると考えられる。年齢別の移動傾向とその変化
は(2)でみてきたが、20歳前後の神戸市の転入超過が近年は低下し、大学卒業時にあたる20
~24歳から25~29歳の転出超過が拡大している。また1990年代後半には比較的大きな転入超過
がみられた30歳代の移動についても近年は転入超過が縮小している。高校卒業年齢での転入超
過の減少傾向については、高校卒業年齢で神戸市への大学入学や就職による神戸市への転入が
横ばいであるのに対し、神戸市から他県等へ進学のために転出する人口が増加している可能性
がある。20歳代では神戸市の大学を卒業した者のかなりの部分が他県等で就職するために転出
する傾向が続いており、同年齢で就職等のために神戸市に転入する人口を大きく上回っている。
(1)でも述べたが、神戸市の人口動態の特徴の一つとして、中国地方、四国地方などの西
日本の若者が大学進学や就職のための受け皿となっていることがあげられる(図1-16、17、
18)。例えば、神戸市を含む阪神圏は日本屈指の大学集積地として、毎年多くの若者の流入に
恵まれており、若年層の流出に悩む他地域と比較し、大きなアドバンテージを有している。し
かし、大学卒業後の就職のタイミングで東京圏や大阪府への転出超過がみられ、その傾向は年々
拡大している。全国各地と神戸市との人の流れは、経済情勢に大きく影響を受け、神戸市独自
の直接的な施策効果には限界もあるが、若年層の雇用創出も含め、国内外から神戸に集う学生
たちが大学卒業後も神戸で活躍できる方策に取り組んでいく必要があろう。併せて、全国的な
地方創生の動きの中で、新しい価値観やライフスタイルを求めて非都会での暮らしを求める若
年層が広がっていくことも考えられ、そういった層に向け、自然に近く暮らしやすい神戸の都
市イメージの卓越性が認知されるようなプロモーションを国内外に向け強力に展開していくよ
うな方策も必要ではないか。
③居住都市としての魅力づくり
1990年代後半は震災復興の過程で神戸市内の新規住宅供給が多く、神戸市外に居住していた
大阪都市圏への通勤者が神戸市に転入したとみられるが、近年は大阪市内や西宮市等での新規
住宅供給が多く、職住近接志向の高まりを背景に、神戸市内に居住する大阪都市圏への通勤者
が、より職場に近い大阪市や西宮市に転出する傾向が強くなっている。高校卒業時、大学卒業
時、30歳代の人口移動の近年の傾向は今後も続くと思われ、転入が転出を再び大きく越えるこ
とは考えにくいと思われる。もっとも、神戸市は大阪や京都とともに京阪神大都市圏の中心市
であると同時に、大阪市に多くの通勤・通学者を送り出す居住都市としての機能も果たしてい
る。(1)でも触れたとおり、総務省の大都市圏域の定義では、中心市への通勤・通学者が、
当該市町村の常住人口の1.5%を超える場合に、当該市町村は中心市の大都市圏に含まれるとさ
-52-
れるが、神戸市から大阪市への通勤・通学者は2010年(平成22年)時点で約55,000人と常住人
口の3.5%である。特に大阪市に近い東灘区では、その値は8%(16,840人)であり、神戸市の
中心業務地区(CBD)を抱える中央区よりも大阪市への通勤・通学者が多くなっている。また、
図1-63に示すとおり神戸の国内における転入・転出のうち、大阪府、京都府、奈良県、兵庫
県の4県が占める割合は2013年(平成25年)で転入元が56%、転出先では57%となっているなど
京阪神大都市圏が相互に人が行き交う、結びつきが強い圏域となっており、神戸市にとって、
京阪神の圏域における人口動態の影響は大きいといえる。
今後、通勤・通学先として大きな吸引力を持つ大阪都市圏域において、居住地としての神戸
市の魅力の差別化を図ることで、神戸市を居住地として選択する層を増やすことも可能なので
はないか。例えば、昨今の居住選好における利便性志向の高まりの中で、交通利便性の高いエ
リアを中心として、居住地としての競争優位性を高めるための住環境づくり(例えば地域医療
や教育の充実等はもちろん、それらの様々な居住機能をコンパクトに集積した居住エリアの創
出)に取り組んでいくべきではないか。そして、そのような居住地としての神戸の優位性を、
対象層を定め、効果的に情報発信していく方策も併せて検討していく必要があろう。
2013年転入
2012年転入
2013年転出
2012年転出
明石市
7.2%
西宮市
5.7%
明石市
7.5%
西宮市
5.4%
明石市
7.9%
西宮市
6.5%
県内その他
24.2%
京都府 奈良県
3.6% 1.5%
東京都
6.6%
県内その他
23.5%
大阪府
15.0%
県内その他
21.4%
京都府 奈良県
3.4%
1.2%
大阪府
東京都
9.8%
15.6%
県内その他
22.8%
明石市
7.3%
大阪府
14.9%
京都府 奈良県
3.7% 1.6%
東京都
6.4%
大阪府
15.8%
京都府 奈良県
3.3% 1.2%
東京都
8.9%
その他42道府県
36.4%
その他42道府県
36.9%
その他42道府県
34.2%
その他42道府県
33.9%
西宮市
6.8%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:住民基本台帳人口移動報告
図1-63 京阪神大都市圏等に対する神戸市の転出入人口の状況
④日常生活圏(小学校区単位)のまちづくり
(3)では、各地域に暮らす人々が日常の生活機能を共有し生活の基盤としている圏域とし
て小学校区単位での人口動態を観察・分析したが、土地利用状況や最寄駅までの距離など公共
交通利用の利便性、様々な施設の立地状況など当該小学校区の立地特性を背景として、人口動
態も多様であることがわかった。
神戸市の人口は2005年(平成17年)から2010年(平成22年)に1.2%増加したが、2010年(平
成22年)時点の市内166の小学校区のうち、同期間に人口が増加した小学校区は70校区に留まり、
残り96の小学校区ですでに人口が減少している。かつては北区、西区、垂水区では人口が増加
-53-
し、中央区等都心地区で人口が減少したが、2000年(平成12年)以降の動きを男女年齢別にみ
ると、郊外で人口がなお増加しているのは北区や西区のごく一部の小学校区であり、1970年代
頃に比較的早い時期に開発が行われた北区の鈴蘭台周辺、須磨ニュータウン等では郊外第2世代
の転出が顕著であり、人口は減少傾向にあることがわかる。一方、中央区および東灘区から須
磨区のJR線沿いには新規の集合住宅の供給がみられ、人口が増加している小学校区が少なくな
い。男女別の分析からは、高校や大学卒業時の市外への転出については男女差があり、男性の
流出傾向がより強いことがわかる。その結果、神戸市内の多くの小学校区では20歳代、30歳代
の男女の比率、すなわち性比が男性よりも女性が多い状態になっている。20~39歳で男性が多
くいる地区は北区や西区の農村的な性格を持つ小学校区、20歳代のみであれば神戸大学周辺、
30歳代のみであれば兵庫区和田岬周辺の工業地帯などが該当する。
神戸市はニュータウン、インナーシテ
ィ、都心部、農村地域など多様な地域特
性を持つ「まち」を結集した、魅力ある
大都市としてこれまで多くの人を惹き
つけてきた。
一方、今後、若年層を中心に職住近接
志向の高まり、コミュニティビジネスや
在宅勤務などの「新しい働き方」の拡大、
環境配慮やコミュニティを重視した暮
らしを求める価値観が拡大する中で、そ
のような新しい動きやライフスタイル
を実現することができる生活の場とし
ての「まち」の魅力を向上させることが
重要であり、そのことが神戸の多様な
図1-64 コミュニティビジネス・ソーシャル
ビジネスへの就労意向
(引用:日本政策金融公庫総合研究所
「まち」の質の相対的な優位性を高めて
H26)
いくことにもなるのではないか。
人が実際に集い、暮らすのは「神戸市」
でも「区」でもなく、特定の「まち」で
あり、その「まち」に必要とされる機能
も世代や家族形態等によって様々であ
る以上、今後も選ばれる「まち」であり
続けるためには、圏内の人口動態分析を
踏まえ、地域特性だけでなく地域の人的
ネットワーク、公共交通機関や公共施設
の配置状況、住宅ストックなども含めた
図1-65 コミュニティビジネス・ソーシャル
ビジネスで働いてみたい理由
(引用:日本政策金融公庫総合研究所
「まち」の強み、弱みを分析したうえで、
H26)
様々な「まち」が持つ資源の機能を最大限に発揮し得る(小学校区などより限定された)地域
ごとのまちづくり戦略も必要となってこよう。
-54-
⑤さいごに
1章の分析では、神戸市の人口動態が自然動態は死亡数の増加により自然減に転じ、社会動
態は転入数、転出数のいずれもが減少しながら社会増減がマイナスに転じていることが確認で
きた。自然減、社会減をいくつかの要素に分けて検討したが、いずれの要素についても2000年
(平成12年)以降に生じた人口動態の変化が将来も続くことを示唆する結果が得られた。将来
の人口減少を緩和するには、出生率の上昇、高校卒業時の転入超過の拡大、大学卒業時の転出
超過の縮小,30歳代での子育て世帯の誘致などに関して、前例に囚われず、より柔軟かつ踏み
込んだ施策が求めているのではないだろうか。
-55-
2
将来の人口推計分析
(1)将来人口推計
本章では神戸市の将来人口の推計を試みる。所与のデータを活用して、過去や未来における
統計データが存在しない時点の人口規模や構造を算出することを「人口推計」と言い、このう
ち、未来の人口等の推計を「将来人口推計」と言う。市町村ごとの将来人口推計は国立社会保
障・人口問題研究所(以下、社人研)が 2003 年(平成 15 年)からほぼ 5 年ごとにおこなって
おり、最新の推計は 2013 年 3 月(平成 25 年 3 月)の推計「日本の地域別将来推計人口」
(以下、
社人研地域推計)である。この 2013 年(平成 25 年)の社人研地域推計では、福島県と 1,799
市区町村の計 1,800 自治体について将来人口を推計しており、12 政令市に含まれる神戸市につ
いてはまず区別に推計をおこない、それを合算して市全体の推計結果を得ている。また、各都
道府県の推計結果は同じ都道府県内の市区町村の将来推計人口の合計に一致し、全ての都道府
県の合計は社人研が 2012 年 1 月(平成 24 年 1 月)に公表した「日本の将来推計人口」の中位
推計(以下、社人研全国推計)に一致するように男女年齢別に調整されている。
(コーホート要因法)
社人研地域推計の推計方法はコーホート要因法という手法である。これは同じ期間または同
じ年に生まれた人々の集団であるコーホートの時間変化を軸に人口変動要因(出生、死亡、移
動)を考慮した推計方法である。例えば、ある地域の 15 歳~19 歳のコーホートは、5 年後には
20~24 歳のコーホートに達する(そのコーホートは、15~19 年前に出生したもの)。そのコー
ホートを年次的に追跡し、人口変動要因ごとの変化率(生残率、純移動率)を用いて将来の人
口を算出するもので、2015 年(平成 27 年)以降の 5 年ごとに 2040 年(平成 52 年)までの男
女 5 歳階級ごとの 0~4 歳から 85~89 歳,90 歳以上人口を推計している。なお,0~4 歳人口に
ついては子ども女性比という 15~49 歳女性に対する 0~4 歳人口の比率(以下、CWR)という出
生率に代わる指標と 0~4 歳人口の性比を仮定して推計している。将来の CWR は推計単位である
市区町村ごとに設定しているが、設定の方法は 2010 年(平成 22 年)の全国の CWR に対する各
自治体の CWR の格差を算出し、その比率が 2015 年(平成 27 年)以降一定であると仮定してい
る。なお、将来の全国の CWR は社人研全国推計から得られる。
将来の生残率は 55~59 歳→60~64 歳となる年齢階級以下では都道府県ごとに仮定値を適用
し、同じ都道府県内の市区町村には一律に設定している。一方、60~64 歳→65~69 歳以上の年
齢階級には各市区町村で異なる仮定値を設定している。55~59 歳→60~64 歳となる年齢階級以
下の将来の生残率については、社人研が独自に作成した 2010 年(平成 22 年)の生命表と厚生
労働省より公表されている 2005 年(平成 17 年)都道府県別生命表より 2005-2010 年の男女年
齢別生残率を算出し、これを基に各都道府県の全国との相対的格差を算出し、その格差が 2035
-2040 年には 2 分の 1 となるように直線的に減少させる仮定としている。なお、将来の全国の
生残率は社人研全国推計から得られる。
60~64 歳→65~69 歳以上の年齢階級の生残率は厚生労働省から公表されている 2000 年(平
-56-
成 12 年)、2005 年(平成 17 年)の市区町村別生命表を用いて男女年齢別生残率を算出し、こ
れを基に 2000 年(平成 12 年)、2005 年(平成 17 年)の当該の都道府県別生命表より求められ
る男女年齢別生残率との相対的格差を全期間一定とする仮定を置いている。なお、将来の全国
の生残率と都道府県の 60~64 歳→65~69 歳以上の年齢階級の生残率は、社人研全国推計から
55~59 歳→60~64 歳となる年齢階級以下の場合と同じ方法で得られる。このように、高年齢層
の生残率が区市町村によって違いが大きいことに配慮している。
将来の純移動率は 2005-2010 年の純移動率に基づいて設定されている。なかでも、多くの市
区町村に適用される仮定は基本仮定と呼ばれ、2005-2010 年で求められる純移動率を 2015-
2020 年にかけて 2 分の 1 にまで定率で縮小させその後一定としている。純移動率を縮小させる
根拠は「第 1 に「住民基本台帳人口移動報告」による 2000 年(平成 12 年)以降の転入超過数
の地域差が 2007 年(平成 19 年)をピークとして 2012 年(平成 24 年)まで縮小傾向にあるこ
と、第 2 に 2011 年(平成 23 年)に実施された「第 7 回人口移動調査」によって、過去 5 年間
における移動傾向の鈍化が観察されると同時に、今後短期的には移動傾向がさらに弱まる可能
性が示されていることによる。」とされている。つまり、2005-2010 年に計算される純移動率
を 1 とすれば、2010-2015 年の純移動率は約 0.707、2015-2010 年の純移動率は 0.5 となる。
ただし、A.東日本大震災による影響で人口移動傾向が大きく変化して 2012 年(平成 24 年)も
継続している自治体、B.小規模自治体、C.直近の人口移動傾向が過去の趨勢と大きく異なる自
治体、D.2010 年(平成 22 年)以降の人口移動傾向が直近の移動傾向と大きく変化している自
治体については、それぞれ異なった仮定を設定している。これは直近の人口移動の趨勢が将来
も長期的に継続しないと判断していることによる。例えば、神戸市では東灘区、灘区に関して
は上記 C の仮定が設定されている。この仮定は 2005-2010 年の転入超過率が 1995-2005 年の
趨勢を大きく下回る自治体に適用されている。東灘区、灘区は阪神・淡路大震災後の転入超過
は著しく大きかったが、直近の転入超過も安定してきていることによって、このような仮定値
が設定されたと考えられる。この仮定の純移動率の設定は住民基本台帳人口に基づく人口を用
いて、2007-2012 年の男女年齢別純移動率を算出し、これを 2015-2020 年にかけて 0.574 倍
まで縮小させその後一定とする仮定としている。
-57-
1,600,000
(人)
↓実績値 2000年,2005年,2010年
1,544,200
1,493,398
1,400,000
1,525,393
1,500,000
1,300,000
2000年推計
1,200,000
2005年推計
2010年推計
1,100,000
実績
1,000,000
年
2040
年
2035
年
2030
年
2025
年
2020
年
2015
年
2010
年
2005
年
2000
出典:国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(平成 20 年 12 月推計)」、
「日本の市区町村
別将来推計人口(平成 15 年 12 月推計)
」、
「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」により筆者作成
図2-1
神戸市の過去の社人研地域推計と実績値の比較
-58-
(2)神戸市全体の将来人口推計
市町村を単位とした社人研地域推計は 2000 年(平成 12 年)の国勢調査を基にした 2000 年(平
成 12 年)推計、2005 年(平成 17 年)の国勢調査を基にした 2005 年(平成 17 年)推計、2010
年(平成 22 年)国勢調査を基にした 2010 年(平成 22 年)推計の 3 回がこれまでに実施されて
いる。これらの推計の特徴は、将来において神戸市の人口がピークを迎え、減少に転じるとい
う推計がなされていることである。2000 年(平成 12 年)推計と 2005 年(平成 12 年)推計と
実績の人口を比較すると、2000 年(平成 12 年)推計による 2005 年(平成 17 年)の人口は実
績より 16,262 人少なく、誤差は-1.07%、同じく 2010 年(平成 22 年)の人口は実績よりも
32,537 人少なく、誤差は-2.11%である。2005 年(平成 17 年)推計による 2010 年(平成 22
年)の人口は実績よりも 8,785 人少なく、誤差は-0.57%である。このように、過去の社人研
地域推計と実際の神戸市の人口の推移を比較すると、過少に推計されているという点が指摘で
きる。また、その誤差は 2005 年(平成 17 年)推計では 2000 年(平成 12 年)推計に比べ小さ
くなっている(図2-1)。
本稿では社人研地域推計を基に、それとは異なる仮定値を設定した推計を試みる。推計方法
は社人研地域推計と同様にコーホート要因法で、2015 年以降の 5 年ごとに 2040 年(平成 52 年)
までの男女 5 歳階級ごとの 0~4 歳~85~89 歳、90 歳以上人口を推計する。異なる仮定値設定
として、将来の 0~4 歳人口(出生)に関する仮定と純移動率の仮定を変えたケースでの推計を
試みる。具体的には合計特殊出生率(以下、TFR)が 2030 年(平成 42 年)に 1.50 と 1.80 になる
ケース、純移動率の仮定を変えたケースについて推計する。なお、出生に関係する 0~4 歳人口
については、CWR を用いる社人研地域推計の方法によるため、出生数は推計されない。そのた
め、広く各種行政施策や地域計画で用いられる TFR を推計に反映させるには CWR と TFR の関係
を見たうえで換算が必要となる。社人研地域推計では TFR が一般に広く認知され活用されてい
る状況を考慮して、社人研全国推計の TFR と社人研全国推計の CWR の関係比を計算し、CWR か
ら TFR に換算した都道府県ごとの TFR を公表している。本稿ではこの CWR と TFR の関係比に注
目し、神戸市の CWR から TFR へ換算する方法を用いる。CWR と TFR の関係は一定ではないので、
ある程度の幅を持って捉える必要がある。この方法により算出される神戸市の表2-1のとお
りである。2010 年(平成 22 年)以降 2025 年(平成 37 年)までは低くなり、2030 年(平成 42
年)以降ではわずかに上昇するものの 2010 年(平成 22 年)より低い状態が続くと仮定されて
いる。
表2-1 全国の TFR と CWR の関係から算出される神戸市の将来の TFR
TFR(神戸市)
1.387
0.195
7.107
1.280
20102015年
1.383
0.192
7.195
1.289
20152020年
1.355
0.179
7.552
1.261
20202025年
1.331
0.179
7.438
1.237
20252030年
1.335
0.184
7.259
1.238
20302035年
1.340
0.189
7.101
1.241
20352040年
1.344
0.190
7.078
1.242
CWR(神戸市)
0.181
0.179
0.167
0.166
0.171
0.175
0.175
2010年
地域
TFR(全国)
CWR(全国)
比(TFR/CWR)
出典:2010 年の値は実績値。TFR は厚生労働省統計情報部『人口動態保健所・市区町村別統計
平成 20 年~平成 24 年 人口動態統計特殊報告』により筆者作成
-59-
そこで TFR が今後も低く推移すると仮定している社人研推計とは異なり、TFR が上昇するケ
ースを想定し、TFR が 2030 年(平成 42 年)に 1.50 と 1.80 まで上昇する2つのケースでの将
来人口推計を試みる。TFR を 1.50 や 1.80 と社人研地域推計よりも高い出生率を仮定する根拠
として、2000 年代後半以降の全国的な TFR の上昇が挙げられる。全国と兵庫県の TFR の推移を
見たものが図2-2である。これによると、兵庫県は 2004 年(平成 16 年)に戦後最低の 1.24
を記録しており、全国は 2005 年(平成 17 年)に 1.26 の最低を記録し、その後上昇に転じてい
る。このことから、今後もこの上昇傾向が継続するとして、全国の TFR を 2005-2013 年の上昇
傾向を 2030 年(平成 42 年)までに直線的に延長すると、全国の TFR は 2030 年(平成 42 年)
には 1.79 と算出される。そこで神戸市の TFR が 2030 年(平成 42 年)には全国値に近い 1.80
となり、その後一定と仮定した推計を行う。また、TFR が 2030 年(平成 42 年)に 1.50 になり
その後一定とするケースはそれほど TFR が上昇しないケースを想定している。将来の 2030 年(平
成 42 年)までの TFR の推移の決め方は、社人研地域推計から算出される 2030 年(平成 42 年)
の神戸市の TFR を 1.80 ないし 1.50 に設定する倍率を求め、その倍率を各推計年次に均等に設
定する。こうして算出した TFR について、先に述べた CWR と TFR の関係比を求め CWR を算出し
将来人口の推計を行う。こうして①2030 年(平成 42 年)に TFR が 1.80、②2030 年(平成 42
年)に 1.50 となる各ケースの将来の CWR と TFR の仮定値は表2-2のように定める。
1.43
1.41
1.40
1.39
1.40
年
2010
年
2011
年
2012
1.42
1.39
1.33
1.41
1.37
1.28
1.30
1.34
1.34
1.32
1.25
1.24
1.26
1.29
1.29
1.25
1.32
1.29
1.29
1.33
1.36
1.20
1.37
1.38
1.40
全国
兵庫県
1.00
年
2013
年
2009
年
2008
年
2007
年
2006
年
2005
年
2004
年
2003
年
2002
年
2001
年
2000
出典:厚生労働省「人口動態統計」
、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」により筆者作成
図2-2 2000 年以降の全国と兵庫県の TFR の推移
ケース
①2030年に
TFR1.80
②2030年に
TFR1.50
社人研地域推計
指標
CWR
TFR
CWR
TFR
CWR
TFR
表2-2
神戸市の将来の CWR と TFR
2015年
0.196
1.410
0.186
1.335
0.179
1.289
2020年
0.204
1.540
0.184
1.390
0.167
1.261
2025年
0.225
1.670
0.194
1.445
0.166
1.237
2030年
0.248
1.800
0.207
1.500
0.171
1.238
2035年
0.253
1.800
0.211
1.500
0.175
1.241
2040年
0.254
1.800
0.212
1.500
0.175
1.242
出典:表2-1の比(TFR/CWR)により筆者が算出
-60-
一方、純移動率の仮定を変えた推計も試みる。まず、推計の基準となる各種純移動率を比較
してみる。神戸市の純移動率を比較したものが図2-3である。まず、男女ともに国勢調査に
より算出される純移動率と住民基本台帳に基づく人口により算出される純移動率には違いがみ
られる。年齢別にみるとその違いは 10~14 歳→15~19 歳から 20~24 歳→25~29 歳で顕著であ
る。これは住民票の異動を伴わない移動が生じていることが考えられ、国勢調査においては住
民票を移動させない移動を把握していることによると考えられる。具体的には、1章でも述べ
たとおり大学への進学による神戸市への移動などが想定されるだろう。なお、社人研地域推計
の 2005-2010 年の純移動率は、公表されている 2010-2015 年の純移動率を 0.5 の平方根(約
0.707)で割り戻した値で、社人研地域推計 2005-2010 年としている。
0.12
国調調査 2005→2010年
0.10
住基人口 2005→2010年
0.08
住基人口 2007→2012年
住基人口 2008→2013年
0.06
社人研地域推計 2005→2010年
0.04
0.02
65-69歳→70-74歳
70-74歳→75-79歳
65-69歳→70-74歳
70-74歳→75-79歳
60-64歳→65-69歳
55-59歳→60-64歳
50-54歳→55-59歳
45-49歳→50-54歳
40-44歳→45-49歳
35-39歳→40-44歳
30-34歳→35-39歳
25-29歳→30-34歳
20-24歳→25-29歳
15-19歳→20-24歳
10-4歳→15-19歳
-0.04
5-9歳→10-14歳
-0.02
0-4歳→5-9歳
0.00
-0.06
-0.08
-0.10
男性
0.12
国調調査 2005→2010年
0.10
住基人口 2005→2010年
住基人口 2007→2012年
0.08
住基人口 2008→2013年
0.06
社人研地域推計 2005→2010年
0.04
0.02
60-64歳→65-69歳
55-59歳→60-64歳
50-54歳→55-59歳
45-49歳→50-54歳
40-44歳→45-49歳
35-39歳→40-44歳
30-34歳→35-39歳
25-29歳→30-34歳
20-24歳→25-29歳
15-19歳→20-24歳
10-4歳→15-19歳
-0.04
5-9歳→10-14歳
-0.02
0-4歳→5-9歳
0.00
-0.06
-0.08
-0.10
女性
出典:「国勢調査、住民基本台帳人口、社人研地域推計」より筆者作成
図2-3
国勢調査、住民基本台帳人口、社人研地域推計から算出される純移動率
-61-
すでに述べたように社人研地域推計では、原則として 2005-2010 年に計算される純移動率を
1 とすれば、2010-2015 年の純移動率は約 0.707、2015-2020 年の純移動率は 0.5 となり、そ
の後一定とする仮定を置いている。そこで、この純移動率が縮小せず、2005-2010 年の純移動
率が継続するケースを想定する。具体的には社人研地域推計 2005-2010 年において計算される
純移動率をそのまま将来に一定として適用するケースである。このケースを③純移動率一定ケ
ースとする。
次に、純移動率が社人研地域推計よりも高位に推移するケースを想定する。このケースでは、
純移動率として 100 人あたり 1 人転入が増えるとするケースを仮定する。これは単純に社人研
地域推計において公表された各年時の神戸市の純移動率について、男女年齢別純移動率に 0.01
を加えた値を用いる。神戸市への人口流入が今後強まる場合を想定した仮定である。これを④
純移動率高位ケースとする。
最後に、最新の 2008-2013 年の 10~14 歳→15~19 歳~20~24 歳→25~29 歳といった若年
層の移動傾向を反映し、社人研地域推計同様に純移動率が縮減するケース⑤を想定する。図2
-3における 2005-2010 年の国勢調査による純移動率、2005-2010 年の住民基本台帳による
純移動率を比較しその差分を、2008-2013 年の純移動率に加え、2010-2015 年の純移動率とし
て 0.5 の平方根(約 0.707)を乗じたものである。こうして算出した純移動率が図2-4のケ
ース⑤である。10~14 歳→15~19 歳~20~24 歳→25~29 歳以外の年齢階級の純移動率には社
人研地域推計の仮定値をそのまま用いている。
0.12
0.10
社人研 2010→2015年
0.08
ケース⑤ 2010→2015年
0.06
0.04
0.02
-0.06
-0.08
-0.10
男性
-62-
85歳以上→90歳以上
80-84歳→85-89歳
75-79歳→80-84歳
70-74歳→75-79歳
65-69歳→70-74歳
60-64歳→65-69歳
55-59歳→60-64歳
50-54歳→55-59歳
45-49歳→50-54歳
40-44歳→45-49歳
35-39歳→40-44歳
30-34歳→35-39歳
25-29歳→30-34歳
20-24歳→25-29歳
15-19歳→20-24歳
10-14歳→15-19歳
-0.04
5-9歳→10-14歳
-0.02
0-4歳→5-9歳
0.00
0.12
0.10
社人研 2010→2015年
0.08
ケース⑤ 2010→2015年
0.06
0.04
0.02
85歳以上→90歳以上
80-84歳→85-89歳
75-79歳→80-84歳
70-74歳→75-79歳
65-69歳→70-74歳
60-64歳→65-69歳
55-59歳→60-64歳
50-54歳→55-59歳
45-49歳→50-54歳
40-44歳→45-49歳
35-39歳→40-44歳
30-34歳→35-39歳
25-29歳→30-34歳
20-24歳→25-29歳
15-19歳→20-24歳
10-14歳→15-19歳
-0.04
5-9歳→10-14歳
-0.02
0-4歳→5-9歳
0.00
-0.06
-0.08
-0.10
女性
出典:「国勢調査、住民基本台帳人口、社人研地域推計」より筆者作成
図2-4
将来の純移動率
以上の①~⑤のケースについて整理したものが表2-3である。また、上記の5ケースの推
計をするにあたり、将来の生残率と 0~4 歳性比は簡便な推計とするために社人研地域推計にお
いて公表されている神戸市の将来の生残率と 0~4 歳性比をそのまま利用することとする。以上、
社人研地域推計と異なる仮定を設定する5ケースについて整理すると表2-3のようにまとめ
られる。
以下に各推計ケースの結果を比較し観察する。各推計ケースの総人口の推移をまとめたもの
が表2-4、図2-5である。まず、総人口の推移をみてみると、2040 年(平成 52 年)には
各ケースで大きな違いがみられるものの、ほとんどのケースで社人研地域推計より大きな値と
なっている。社人研地域推計を基準に 2040 年(平成 52 年)の総人口をみると、社人研地域推
計では 135.7 万人であるのに対して、①出生高位ケースでは約 10.0 万人、②出生中位で約 4.6
万人、③純移動率一定ケースでは約 9.0 万人、④純移動率高位ケースでは約 8.6 万人、⑤若年
層のみ最新純移動率適用ケースでは約 1.7 万人少なくなっている。このように出生率の上昇と
純移動率の上昇があれば、総人口の減少は社人研推計よりも小さくなり、人口減少は緩やかな
ものとなることが認められる。
0~14 歳人口の推移をみると、2010 年(平成 22 年)の約 19.6 万人から 2040 年(平成 52 年)
には社人研地域推計で約 12.8 万人まで減少する。社人研地域推計を各ケースと比較すると、①
出生高位ケースでは約 0.5 万人、②出生中位ケースでは約 2.9 万人、③純移動率一定ケースで
は約 0.5 万人、④純移動率高位ケースでは約 0.8 万人多くなり、⑤若年層のみ最新純移動率適
用ケースでは約 0.2 万人少なくなる。
-63-
表2-3
ケース
①出生高位
②出生中位
本研究で用いた推計ケースなどの仮定値設定
0-4歳人口(出生)
2030年にTFR1.8まで
上昇に基づくCWR
2030年以降一定
2030年にTFR1.5まで
上昇に基づくCWR
2030年以降一定
0-4歳性比
生残率
純移動率
総人口:
社人研地域推計
との差(人)
社人研値
社人研値
社人研値
100,021
社人研値
社人研値
社人研値
45,504
③純移動率一定
社人研値
社人研値
社人研値
④純移動率高位
社人研値
社人研値
社人研値
⑤若年層のみ
最新純移動率
社人研値
社人研値
社人研値
社人研
地域推計
社人研値
社人研値
社人研値
2005-2010年の
社人研純移動率を
2010-2015年以降
一定で適用
社人研値+0.01
100人あたり
1人転入が増える
若年層のみ住基人口20082013年に対して、国勢調査
との差分を加えたもの。若
年層以外は社人研値を採
用し、全年齢、社人研地域
推計同様に移動率を20152020年にかけ定率で縮減
90,223
85,625
-17,450
社人研値
0
出典:社人研地域推計値は「日本の地域別将来推計人口―平成 22(2010)~52(2040)年―平成 25 年 3 月推計」
による神戸市の各仮定値
① 出生高位ケース:TFR が 2030 年(平成 42 年)までに 1.80 にまで直線的に回復するケース
② 出生中位ケース:TFR が 2030 年(平成 42 年)までに 1.50 にまで直線的に回復するケース
③ 純移動率一定ケース:社人研地域推計の 2005-2010 年純移動率を将来一定で適用するケース
④ 純移動率高位ケース:社人研地域推計よりも純移動率が 100 人あたり 1 人増加するケース
⑤ 若年層のみ最新純移動率適用ケース: 10~14 歳→15~19 歳から 20~24 歳→25~29 歳とい
った若年層の移動傾向を反映し、社人研地域推計同様に純移動率が縮減するケース
15~64 歳人口の推移を見てみると、2010 年(平成 22 年)の約 99.0 万人から 2040 年(平成
52 年)には社人研地域推計で 71.9 万人まで減少する。社人研地域推計を各ケースと比較する
と、①出生高位ケースでは約 3.5 万人、②出生中位ケースでは約 1.6 万人、③純移動率一定ケ
ースでは約 2.1 万人、④純移動率高位ケースでは 4.4 万人多くなり、⑤若年層のみ最新純移動
率適用ケースでは約 1.5 万人少なくなる。
一方で、65 歳以上人口の推移を見てみると、2010 年(平成 22 年)の約 35.8 万人から 2040
年(平成 52 年)には社人研地域推計で約 51.0 万人まで増加する。社人研地域推計を各ケース
と比較すると、①出生高位ケース、②出生中位ケース、⑤若年層のみ最新純移動率適用ケース
では高年齢層の推計に影響を及ぼさないため、社人研地域推計との差はほとんど生じない。③
純移動率一定ケース、④純移動率高位ケースでは神戸市への高齢者の移動も多くなると仮定し
ていることにより、社人研地域推計に比べそれぞれ約 6.4 万人、約 3.4 万人多くなる。今回の
推計各ケースでは生残率に社人研地域推計の仮定値を用いているので、各ケースで差が生じな
いことによるが、65 歳以上人口を直接左右するのは純移動率の設定によるところが大きい。ま
た、75 歳以上人口の推移も、2010 年(平成 22 年)の約 16.8 万人から 2040 年(平成 52 年)に
は社人研地域推計で約 30.0 万人まで増加する。65 歳以上人口の推移と同様に①出生高位ケー
-64-
ス、②出生中位ケース、⑤若年層のみ最新純移動率適用ケースでは出生中位・出生高位ケース
は高年齢層の推計に影響を及ぼさないため、社人研地域推計との差はほとんど生じないが、③
純移動率一定ケース、④純移動率高位ケースでは神戸市への高齢者の移動も多くなると仮定し
ていることにより、社人研地域推計に比べそれぞれ約 5.5 万人、約 2.1 万人多くなる。
(人)
1,600,000
1,500,000
①
③
④
1,400,000
②
社人研
地域推計
⑤
1,300,000
①出生高位
②出生中位
1,200,000
③純移動率一定
④純移動率高位
1,100,000
⑤若年層のみ
最新純移動率
社人研地域推計
1,000,000
2010年
2015年
2020年
2025年
2030年
2035年
2040年
出典:社人研地域推計は「日本の地域別将来推計人口―平成 22(2010)~52(2040)年―平成 25 年 3 月推計」による。
図2-5
神戸市の各ケースによる将来推計人口の推移
-65-
表2-4
2010年
①出生高位
②出生中位
③純移動率一定
④純移動率高位 1,544,200
⑤若年層のみ
最新純移動率
社人研地域推計
神戸市の各ケースによる将来推計人口の推移
2015年
1,557,118
1,553,669
1,561,901
1,567,582
2020年
1,550,533
1,540,906
1,561,796
1,565,328
2025年
1,534,869
1,516,673
1,546,939
1,548,258
2030年
1,514,666
1,485,050
1,522,664
1,520,982
2035年
1,488,085
1,446,404
1,489,263
1,485,301
(人)
2040年
1,456,577
1,402,060
1,446,779
1,442,181
1,549,603
1,528,671
1,493,476
1,448,997
1,397,027
1,339,106
1,551,558
1,533,473
1,501,306
1,459,932
1,411,298
1,356,556
出典:社人研地域推計は「日本の地域別将来推計人口―平成 22(2010)~52(2040)年―平成 25 年 3 月推計」による。
本稿では神戸市の将来人口の推計を社人研の推計に基づきながら、いくつかの独自の仮定値
を置いて検討した。結果は図2-4、表2-4に整理されている。本推計の代表的な値はケー
ス②であり、2040年(平成52年)の神戸市の人口が140万人になると推計している。社人研推計
よりも将来の出生率の仮定をわずかに高くしたため、2040年(平成52年)に136万人とする社人
研推計よりも約4万人多い結果となっている。第1章でも述べたが、今後再生産年齢の女子人口
が大きく減少するとされているので、ケース①のように出生率が2030年(平成42年)に1.8まで
上昇すると仮定しても、2040年(平成52年)の人口はケース②よりも6万人しか増えない。他方、
日本創成会議が仮定したように将来の純移動率が現状と変わらない(社人研推計では現状より
も縮小と仮定)と仮定すると、2005年-2010年の人口移動において転入が転出を上回っていた
神戸市ではこの仮定が有利に働き、2040年(平成52年)の人口はケース②よりも5万人多くなる。
実際には2010年(平成22年)以降に神戸市の移動傾向は転出超過に陥っており、2005-2010年
の純移動率が一定という仮定はすでに成り立たなくなっているものの、将来人口に及ぼす人口
移動の影響が大きいことがここから確認できる。
-66-
(3)区ごとの人口推計
(2)では神戸市全体の検討により、出生率あるいは純移動率が上昇すると、神戸市の将来
推計人口がどの程度増加するかが確認できた。本稿では各区における人口将来推計、
(4)では
1章(3)と同じく区よりも小さな空間スケールとして小学校区ごとの将来人口の推計につい
てみていく考察していく。
その前に図2-6により改めて神戸市及び各区の長期的な人口推移と将来人口を簡単に振り
返っておきたい。図から 1920 年(大正 9 年)から 1995 年(平成 7 年)までは市街地西部と市
街地東部はほぼ同じような人口推移を辿ってきたことがわかる。東西の市街地では 1960 年代後
半以降は人口が停滞しており、代わりに郊外地域が神戸市の人口増加を担ってきた。1995 年(平
成 7 年)の阪神・淡路大震災以降、市街地の東西で明暗が分かれ、現在に至るまで東部は人口
増加、西部では人口が減少している。また、郊外地域も震災以降は人口が停滞している。
区別の社人研地域推計を示した図2-7をみると、2010 年(平成 22 年)から 2040 年(平成
52 年)までに東灘区、灘区、中央区、西区では当面人口増加が予測されるものの、その後減少
傾向に移行し、2040 年(平成 52 年)の段階では中央区以外の区では 2010 年(平成 22 年)と
比較して減少することとなる。
特に、長田区、須磨区での減少が大きく、2 割以上の減少が予測される。
1600000
1400000
神戸市
1200000
1000000
人
口 800000
人
600000
( )
市街地中東部(東
灘区、灘区、中央
区)
400000
市街地西部(兵庫
区、長田区、須磨
区)
200000
郊外地域(垂水
区、北区、西区)
2040
2030
2020
2010
2000
1990
1980
1970
1960
1950
1940
1930
1920
0
年
出典:国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」により筆者作成
図2-6 神戸市の人口推移(1920 年~2040 年)
-67-
110.0
中央区
101.1
100.0
灘区
95.2
西区
92.8
東灘区
92.0
神戸市
87.8
90.0
兵庫区
86.9
北区
85.8
垂水区
82.0
80.0
須磨区
77.3
長田区
76.7
70.0
2010年
2015年
2020年
2025年
2030年
2035年
2040年
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-7 各区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
250,000
(2010年=100)
100.0
88.1
80.6
200,000
75.3
142.4
70.9
67.3
62.8
150,000
87.8
72.6
65.2
100,000
50,000
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-8 神戸市推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
-68-
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
35,000
164.2
(2010年=100)
100.0
87.1
81.0
30,000
78.7
75.6
25,000
72.3
67.7
20,000
92.0
76.0
65.4
15,000
10,000
5,000
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-9 東灘区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
25,000
(2010年=100)
100.0
90.0
82.0
73.3
71.5
69.4
2040年
77.9
2035年
20,000
138.0
2030年
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
15,000
95.2
83.6
77.9
10,000
5,000
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
20~39歳女性人口(左)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-10 灘区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
25,000
100.0
(2010年=100)
92.7
82.5
20,000
66.0
64.0
63.1
2035年
2040年
72.9
2030年
147.5
15,000
101.1
91.1
86.1
10,000
5,000
65歳以上
20~39歳女性人口(左)
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-11 中央区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
-69-
(2010年=100)
(人)
(2010年=100)
100.0
16,000
89.3
81.8
14,000
114.1
67.6
65.5
2035年
73.6
12,000
2030年
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
62.3
10,000
86.9
73.7
76.6
8,000
6,000
4,000
2,000
65歳以上
20~39歳女性人口(左)
2040年
15~64歳
2025年
0~14歳
2020年
総数
2015年
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-12 兵庫区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
30,000
(2010年=100)
100.0
86.8
80.6
25,000
77.1
145.4
74.3
70.3
20,000
64.4
15,000
85.8
69.2
61.6
10,000
5,000
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-13 北区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
14,000
(2010年=100)
100.0
85.9
78.9
12,000
72.2
10,000
104.5
8,000
76.7
66.0
60.2
6,000
65.9
62.1
56.6
4,000
2,000
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-14 長田区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
-70-
(2010年=100)
(人)
(2010年=100)
100.0
25,000
86.1
76.6
20,000
127.7
69.4
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
2025年
65歳以上
2015年
2010年
0
15~64歳
52.5
5,000
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
0~14歳
58.3
10,000
77.3
61.4
54.0
総数
64.0
15,000
2020年
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-15 須磨区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
30,000
(2010年=100)
100.0
85.0
77.3
25,000
128.2
72.6
69.3
20,000
66.1
60.7
15,000
82.0
68.1
60.0
10,000
5,000
2040年
20~39歳女性人口(左)
2035年
65歳以上
2030年
15~64歳
2025年
0~14歳
2020年
総数
2015年
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-16 垂水区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
(2010年=100)
(人)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
193.2
35,000
(2010年=100)
100.0
90.3
83.4
30,000
78.4
74.1
25,000
69.5
64.0
20,000
92.8
71.7
63.8
15,000
10,000
5,000
2040年
2035年
20~39歳女性人口(左)
2030年
65歳以上
2025年
15~64歳
2020年
0~14歳
2015年
総数
2010年
0
2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指数(2010年=100)(右)
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
図2-17 西区推計人口の推移(2010 年を 100 とした場合)
-71-
表
2-5
各区推計人口の推移
2010 年
2015 年
2020 年
2025 年
2030 年
2035 年
2040 年
神戸市
1,544,200
1,551,558
1,533,473
1,501,306
1,459,932
1,411,298
1,356,556
東灘区
210,408
212,256
211,223
208,345
204,404
199,517
193,593
灘区
133,451
135,425
135,214
133,991
132,182
129,894
127,063
中央区
126,393
131,448
132,789
132,878
132,017
130,324
127,782
兵庫区
108,304
108,780
106,947
104,260
101,164
97,765
94,163
北区
226,836
227,388
224,274
218,855
211,770
203,567
194,620
長田区
101,624
99,608
96,114
91,873
87,332
82,689
77,994
須磨区
167,475
164,676
159,897
153,541
146,080
137,893
129,385
垂水区
220,411
218,386
213,416
206,518
198,535
189,832
180,691
西区
249,298
253,591
253,599
251,045
246,448
239,817
231,265
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」
-72-
(4)小学校区ごとの将来人口推計の試み
それでは市内に 166 ある小学校区を単位とした将来人口推計を見ていく。1章(3)でも触
れたが、2000 年(平成 12 年)の国勢調査以降、都市域では町丁目単位に相当する小地域統計
が整備され、国勢調査結果の多くが町丁目ごとに集計されるようになった。神戸市には 2010 年
(平成 22 年)の国勢調査時点で約 2,800 の小地域があり、本研究ではそれらを 166 の小学校区
に再編した。1つの小地域が複数の小学校区に含まれる場合もあるが、神戸市教育委員会が公
表している各小学校の通学域を参考に、それぞれの小地域は一つの小学校区に属するとみなす
ことにした。
出典:筆者作成
図2-18 神戸市の小学校区(2010 年) 再掲
-73-
10%~
0%~10%
-10%~0%
~-10%
出典:国勢調査小地域統計(2005 年、2010 年)により筆者作成
図2-19 小学校区ごとにみた人口変化(2005~2010 年) 再掲
小学校区別将来人口推計の方法はコーホート要因法である。出生率については、各小学校区
の 30~39 歳女性人口に対する 0~4 歳人口の比率を 2005 年(平成 17 年)と 2010 年(平成 22
年)の 2 時点で計算し、その平均値を将来の子ども女性比(CWR)と仮定する。生残率について
は、9つの区別の将来の生残率が社人研地域推計から得られるので、小学校区が属する区の将
来の生残率を各小学校区に適用することとする。2005 年(平成 17 年)から 2010 年(平成 22
年)の男女の年齢別コーホート変化率から生残率を引いた値を基本の純移動率とし、社人研地
域推計同様、将来の純移動率は縮小すると仮定し、2010-2015 年の純移動率はそれを√0.5 を
乗じた値、2015 年-2020 年の期間以降は基本の純移動率を 1/2 を乗じた値を用いた。なお、4
つの小学校区(福池小、長尾小、東町小、井吹東小)では 2005 年(平成 17 年)から 2010 年(平
成 22 年)の純移動率が高い値のため、その傾向が続くとすると、たとえ純移動率が縮小する仮
定を置いても、将来的に不自然なほど人口が増加する。不自然かどうかはそれぞれの小学校区
の都市計画上の市街化地域の面積を元に 2040 年(平成 52 年)の 1 ㎢あたりの可住地人口密度
を求め、2010 年(平成 22 年)の各小学校区の人口密度と比較することで判断した。2010 年(平
成 22 年)の各小学校区の人口密度を参考に、集合住宅の比率が高い福池小学校区では最大 3 万
人、主に戸建て住宅からなる残りの 3 小学校区では最大 12,000 人と設定し、最大値を超えた時
点以降は人口移動がないと仮定した封鎖人口で将来人口を計算した。
図2-20 は上記の方法でおこなった将来人口推計の結果を用いて、2010 年(平成 22 年)の
人口を 100 としたときの 2040 年(平成 52 年)の人口を示している。166 の小学校区のうち、
2010 年(平成 22 年)よりも 2040 年(平成 52 年)の人口が多い小学校区は 34 であり、残りの
-74-
132 の小学校区で人口が減少すると見込まれる。人口が 4 割以上減少する小学校区も 34 である
が、半減する小学校区は 5 つのみとなっている。分布をみると、2005 年-2010 年の小学校区ご
との人口変化を示した図2-19 と類似している。人口の増加が見込まれるのは中央区の都心部
と神戸電鉄有馬線や三田線沿線、神戸市営地下鉄西神・山手線沿線の一部などの小学校区であ
る。逆に減少幅が大きいと見込まれる小学校区は内陸部の農村地域と長田区から須磨区にかけ
ての六甲山麓と須磨ニュータウン地区などである。将来の人口変化も現在の場合と同じく出生
と死亡の差である自然増加と転入と転出の差である社会増加に分けることができる。そこで、
2010 年(平成 22 年)から 2040 年(平成 52 年)の人口変化のうち、図2-20 は自然増減のみ、
図2-21 は社会増減のみの推計を示している。図2-20 をみると、ほとんどの小学校区で死亡
数が出生数を上回る自然減が生じ、人口の増加が見込まれる小学校区の多くも自然減であり、
社会増によって人口が増加すると予想される。ちなみに自然増が見込まれる小学校区は 6 であ
り、2010 年(平成 22 年)と比較し 2014 年(平成 26 年)の自然増が 10%以上の増と見込まれ
る小学校区はわずか2である。他方、図2-21 では多くの小学校区が社会増と見込まれること
がわかる。図2-21 の分布は図2-19 に似ており、小学校区ごとにみた神戸市の将来人口は自
然増減よりも社会増減すなわち人口移動によって決定する側面が強いことが読み取れる。
120~
100~120
80~100
60~80
~60
出典:国勢調査小地域統計(2005 年、2010 年)により筆者作成
図2-20 小学校区ごとにみた将来推計人口(2010 年を 100 としたときの 2040 年の値)
-75-
0%~
-15%~0%
-30%~-15%
~-30%
出典:国勢調査小地域統計(2005 年、2010 年)により筆者作成
図2-21 小学校区ごとにみた将来推計人口(2010 年から 2040 年の自然増減)
50%~
25%~50%
0%~25%
~0%
出典:国勢調査小地域統計(2005 年、2010 年)により筆者作成
図2-22 小学校区ごとにみた将来推計人口(2010 年から 2040 年の社会増減)
小学校区のような小さな空間スケールでは、十分な正確さを持った将来人口の推計は容易で
はない。しかも、推計のベースとなる仮定値は、実績値とはいえ、神戸市の人口動態が増加傾
向にあった 2005 年-2010 年の移動率等を設定しており、推計結果はそのトレンドに強い影響
を受けていることに注意が必要である。本研究は男女の各年齢階級の 166 小学校区の合計が社
人研地域推計の神戸市の値に合致するように調整することにより、神戸市内のどこの小学校区
で人口が増加し、どこで減少するのかをみたが、人口が減少すると見込まれる小学校区として
は、内陸部の農村地域及び 1960 年代後半から 1970 年代という比較的古い持期に開発された須
磨ニュータウンなどの住宅地域がそれに該当すると見込まれる。なお表2-6は小学校区ごと
の将来人口推計の結果をまとめたものである。
-76-
表2-6
ID
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
小学校名
社人研推計神戸市
本推計 神戸市
東灘小学校
本庄小学校
本山南小学校
福池小学校*1
魚崎小学校
本山第一小学校
本山第二小学校
本山第三小学校
住吉小学校
御影小学校
渦が森小学校
御影北小学校
向洋小学校
六甲アイランド小
成徳小学校
高羽小学校
鶴甲小学校
六甲山小学校
西郷小学校
六甲小学校
灘小学校
西灘小学校
稗田小学校
美野丘小学校
摩耶小学校
福住小学校
上筒井小学校
宮本小学校
春日野小学校
雲中小学校
中央小学校
なぎさ小学校
こうべ小学校
湊川多聞小学校
港島小学校
湊小学校
山の手小学校
平野(兵庫区)小
湊山小学校
荒田小学校
水木小学校
和田岬小学校
明親小学校
浜山小学校
兵庫大開小学校
会下山小学校
夢野の丘小学校
有馬小学校
有野小学校
有野台小学校
有野東小学校
唐櫃小学校
大池小学校
花山小学校
谷上小学校
箕谷小学校
広陵小学校
桜の宮小学校
甲緑小学校
山田小学校
小部東小学校
小部小学校
泉台小学校
鈴蘭台小学校
北五葉小学校
南五葉小学校
君影小学校
星和台小学校
ひよどり台小学校
藍那小学校
道場小学校
八多小学校
大沢小学校
長尾小学校*2
好徳小学校
淡河小学校
筑紫が丘小学校
西山小学校
鹿の子台小学校
藤原台小学校
桂木小学校
区
-
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
東灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
灘区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
中央区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
兵庫区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
北区
人口
2010年
(人)
1,544,200
17,904
15,887
8,965
11,125
26,328
14,810
17,052
12,996
20,651
12,740
17,118
17,121
9,085
8,626
16,774
17,963
9,662
212
10,231
11,052
8,518
10,668
11,224
8,884
8,167
11,860
7,336
6,685
8,619
10,662
26,358
12,610
20,365
6,446
15,321
15,526
18,617
7,076
4,567
3,949
6,905
6,548
12,588
4,957
19,296
11,473
18,691
1,903
10,795
5,834
5,363
9,221
6,343
7,971
4,881
8,261
10,771
8,137
6,915
3,421
9,478
14,940
7,095
8,694
7,918
6,442
3,989
8,430
8,610
514
4,666
3,146
1,131
6,777
1,420
1,635
4,775
10,776
10,388
8,419
7,777
神戸市内 166 小学校区の将来推計人口
推計人口
2040年
(人)
将来人口増加率 将来自然増加率 将来社会増加率
2010~2040年
2010~2040年
2010~2040年
(%)
(%)
(%)
1,356,556
1,375,001
16,444
13,610
8,727
11,290
22,535
11,629
14,396
12,520
19,820
13,322
13,328
14,643
12,193
6,807
16,329
22,556
7,312
113
11,574
11,481
7,515
14,377
12,313
7,216
6,410
11,746
5,292
9,139
7,409
9,063
35,408
11,599
26,811
4,590
16,063
14,137
20,414
5,324
2,550
2,579
7,139
5,132
13,740
2,937
23,280
12,051
10,967
1,423
10,411
3,600
3,152
5,999
3,559
7,548
7,457
4,877
9,264
4,354
5,249
2,712
7,001
13,504
4,471
5,599
4,813
4,007
2,092
4,770
5,813
542
3,497
4,869
559
9,448
817
916
2,759
13,056
11,633
13,468
10,419
-12.2
-11.0
-8.2
-14.3
-2.7
1.5
-14.4
-21.5
-15.6
-3.7
-4.0
4.6
-22.1
-14.5
34.2
-21.1
-2.7
25.6
-24.3
-46.6
13.1
3.9
-11.8
34.8
9.7
-18.8
-21.5
-1.0
-27.9
36.7
-14.0
-15.0
34.3
-8.0
31.7
-28.8
4.8
-8.9
9.7
-24.8
-44.2
-34.7
3.4
-21.6
9.1
-40.7
20.6
5.0
-41.3
-25.2
-3.6
-38.3
-41.2
-34.9
-43.9
-5.3
52.8
-41.0
-14.0
-46.5
-24.1
-20.7
-26.1
-9.6
-37.0
-35.6
-39.2
-37.8
-47.6
-43.4
-32.5
5.4
-25.1
54.8
-50.6
39.4
-42.4
-44.0
-42.2
21.2
12.0
60.0
34.0
-77-
-15.7
-16.0
-10.0
-15.7
-12.6
-8.1
-15.1
-16.5
-10.2
-12.7
-22.3
-16.2
-23.0
-15.6
13.6
-11.6
-12.3
-13.2
-23.7
-30.6
-20.4
-20.1
-20.4
-14.4
-16.7
-22.7
-24.8
-21.8
-27.6
-24.1
-24.8
-28.7
-27.0
-18.6
-24.1
-32.9
-20.1
-26.9
-25.4
-32.3
-41.2
-34.4
-23.2
-30.9
-19.5
-37.8
-20.9
-19.5
-36.2
-42.7
-7.4
-29.5
-26.2
-21.6
-32.9
-13.2
-12.5
-22.7
-18.2
-32.5
-15.9
-32.1
-12.9
-18.6
-24.3
-25.5
-24.1
-23.2
-29.8
-38.1
-29.3
-43.1
-23.4
-16.4
-34.6
14.7
-29.5
-38.3
-32.5
5.2
4.0
1.5
-0.8
3.5
5.0
1.8
1.4
9.9
9.5
0.7
-4.9
-5.4
9.0
18.3
20.7
0.9
1.2
20.6
-9.5
9.7
38.8
-0.7
-16.0
33.5
24.0
8.7
49.2
26.4
3.9
3.3
20.9
-0.3
60.8
10.8
13.7
61.3
10.5
55.7
4.2
24.9
18.0
35.1
7.6
-2.9
-0.2
26.6
9.3
28.7
-3.0
41.5
24.6
-5.1
17.5
3.8
-8.8
-15.0
-13.4
-11.0
7.9
65.3
-18.3
4.2
-14.0
-8.2
11.4
-13.2
9.0
-12.7
-10.2
-15.1
-14.6
-17.8
-5.3
-3.2
48.4
-1.7
71.2
-15.9
24.7
-12.9
-5.7
-9.7
16.0
8.0
58.5
34.8
人口増加率
2005~2010年
(%)
1.2
2.0
0.6
4.8
10.8
0.9
-2.3
0.5
3.6
4.9
5.8
-0.2
0.5
7.5
-4.1
2.3
10.2
-2.2
-6.2
9.1
2.5
-0.7
11.6
7.6
-0.1
-1.6
4.7
-2.4
14.0
2.1
2.1
15.0
2.6
14.1
-2.8
6.1
2.2
9.1
-1.7
-8.5
-5.2
6.4
0.4
6.7
-7.0
10.5
5.7
-6.2
0.4
2.9
-4.6
-6.5
-5.9
-7.0
4.3
14.9
-8.2
3.0
-8.3
-2.7
1.0
-4.3
3.3
-4.7
-4.9
-6.6
-6.9
-9.5
-5.9
-2.3
3.8
-2.4
15.9
-12.6
81.3
-8.5
-8.5
-7.0
6.7
3.3
18.0
10.1
2010年を100とし
たときの2040年
の20~39歳女性
人口
63
64
65
57
82
62
66
39
60
59
65
65
59
58
85
45
59
110
55
119
86
75
52
79
77
54
49
79
54
97
46
48
71
99
74
53
69
64
68
54
33
52
71
59
84
50
80
78
41
40
64
40
42
49
37
79
130
38
68
29
46
63
50
59
42
43
41
36
31
38
60
16
57
129
35
140
49
40
27
83
69
127
107
ID
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
112
113
114
115
116
117
118
119
120
121
122
123
124
125
126
127
128
129
130
131
132
133
134
135
136
137
138
139
140
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
153
154
155
156
157
158
159
160
161
162
163
164
165
166
小学校名
室内小学校
名倉小学校
雲雀丘小学校
丸山小学校
宮川小学校
池田小学校
蓮池小学校
長田小学校
五位の池小学校
御蔵小学校
真野小学校
長田南小学校
真陽小学校
駒ケ林小学校
若宮小学校
西須磨小学校
北須磨小学校
高倉台小学校
多井畑小学校
板宿小学校
東須磨小学校
妙法寺小学校
横尾小学校
白川小学校
東落合小学校
西落合小学校
竜が台小学校
菅の台小学校
若草小学校
松尾小学校
神の谷小学校
花谷小学校
南落合小学校
だいち小学校
塩屋小学校
乙木小学校
東垂水小学校
名谷小学校
福田小学校
高丸小学校
千代が丘小学校
垂水小学校
霞ケ丘小学校
東舞子小学校
舞子小学校
西舞子小学校
西脇小学校
多聞南小学校
多聞東小学校
小束山小学校
本多聞小学校
多聞台小学校
神陵台小学校
塩屋北小学校
下畑台小学校
つつじが丘小学校
千鳥が丘小学校
長坂小学校
太山寺小学校
伊川谷小学校
櫨谷小学校
木津小学校
桜が丘小学校
押部谷小学校
北山小学校
高和小学校
玉津第一小学校
高津橋小学校
枝吉小学校
平野(西区)小学校
神出小学校
岩岡小学校
有瀬小学校
糀台小学校
春日台小学校
小寺小学校
狩場台小学校
出合小学校
竹の台小学校
東町小学校*3
樫野台小学校
美賀多台小学校
井吹東小学校*3
月が丘小学校
井吹西小学校
区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
長田区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
須磨区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
垂水区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
西区
人口
2010年
(人)
6,204
7,465
5,446
7,175
5,733
7,659
9,647
6,379
6,611
4,047
3,751
6,432
5,896
9,660
6,068
18,417
7,226
9,893
7,649
10,288
8,965
8,332
8,789
12,711
5,575
4,683
7,040
4,748
8,473
4,829
6,674
9,097
8,132
17,743
10,264
9,885
10,139
12,065
9,865
9,494
7,867
9,339
15,274
16,051
15,044
10,059
6,956
5,622
7,481
10,817
7,144
4,719
6,874
8,396
8,526
4,427
11,383
6,813
2,452
24,806
2,555
7,112
6,453
5,318
5,828
876
11,540
15,491
6,836
3,517
8,013
14,635
18,519
8,839
8,573
7,497
5,725
11,014
8,233
11,160
7,636
10,028
16,557
3,881
12,111
推計人口
2040年
(人)
将来人口増加率 将来自然増加率 将来社会増加率
2010~2040年
2010~2040年
2010~2040年
(%)
(%)
(%)
4,601
4,171
2,876
3,878
4,757
5,288
11,733
4,183
3,938
4,218
2,251
7,195
4,919
6,795
5,765
17,896
5,972
6,763
4,253
7,004
7,498
5,246
6,437
8,003
4,812
2,705
3,620
2,297
6,628
2,869
4,163
6,943
6,845
22,678
8,135
6,646
7,535
19,158
6,552
7,743
5,339
10,593
13,622
14,309
12,923
5,792
4,700
4,349
5,309
8,000
8,392
2,138
3,507
7,888
6,697
2,703
11,054
5,903
3,430
26,240
1,831
4,197
4,255
2,522
5,015
506
16,153
16,832
4,744
2,180
4,832
11,553
17,438
7,538
8,282
6,378
3,596
8,956
5,327
11,014
5,523
7,449
17,742
3,216
10,574
-25.8
-44.1
-47.2
-45.9
-17.0
-31.0
21.6
-34.4
-40.4
4.2
-40.0
11.9
-16.6
-29.7
-5.0
-2.8
-17.4
-31.6
-44.4
-31.9
-16.4
-37.0
-26.8
-37.0
-13.7
-42.2
-48.6
-51.6
-21.8
-40.6
-37.6
-23.7
-15.8
27.8
-20.7
-32.8
-25.7
58.8
-33.6
-18.4
-32.1
13.4
-10.8
-10.9
-14.1
-42.4
-32.4
-22.6
-29.0
-26.0
17.5
-54.7
-49.0
-6.0
-21.5
-38.9
-2.9
-13.4
39.9
5.8
-28.3
-41.0
-34.1
-52.6
-14.0
-42.3
40.0
8.7
-30.6
-38.0
-39.7
-21.1
-5.8
-14.7
-3.4
-14.9
-37.2
-18.7
-35.3
-1.3
-27.7
-25.7
7.2
-17.1
-12.7
-30.6
-34.2
-36.6
-37.8
-22.3
-27.2
-13.0
-26.0
-28.2
-17.9
-37.1
-29.1
-29.3
-33.4
-20.2
-18.6
-17.1
-22.3
-37.7
-32.1
-16.7
-23.4
-26.9
-19.3
-11.0
-18.6
-29.3
-34.4
-18.3
-23.1
-29.3
-10.9
-8.3
-16.9
-17.5
-18.8
-23.0
-6.8
-22.2
-23.5
-25.2
-22.1
-21.1
-15.6
-15.9
-33.8
-11.3
-22.7
-18.1
-11.9
-16.0
-32.4
-30.9
-20.4
-6.9
-29.6
-22.0
-15.0
-4.6
-0.5
-37.3
-26.8
-27.6
-31.5
-28.1
-28.2
1.8
-10.9
-19.3
-35.7
-40.9
-13.3
-4.2
-14.4
-11.0
-11.6
-23.9
-14.2
-20.9
-1.3
-10.1
-9.4
7.2
-12.4
-3.5
4.7
-10.0
-10.6
-8.1
5.3
-3.8
34.7
-8.4
-12.2
22.2
-2.9
41.0
12.7
3.8
15.2
15.8
-0.3
-9.3
-6.7
0.2
0.3
-13.7
0.2
-17.8
-2.7
-23.7
-19.3
-17.2
-3.5
-17.5
-8.3
-12.8
-7.6
44.7
-3.3
-13.9
-2.7
65.6
-11.4
5.1
-7.0
35.5
10.3
4.8
1.8
-8.6
-21.2
0.0
-10.9
-14.1
33.5
-22.3
-18.0
14.3
-14.6
-9.3
19.1
1.6
44.4
6.2
9.0
-14.2
-6.5
-21.0
14.1
-14.1
38.2
19.5
-11.3
-2.3
1.2
-7.8
-1.7
-0.3
7.6
-3.3
-13.3
-4.4
-14.4
0.0
-17.6
-16.3
0.0
-4.7
-9.2
人口増加率
2005~2010年
(%)
-1.3
-7.3
-9.2
-8.4
-0.5
-3.8
10.3
-5.5
-7.9
4.6
-6.0
4.5
1.7
-2.2
2.0
2.4
-0.4
-3.7
-6.7
-3.8
-0.9
-6.8
-0.7
-7.6
-0.6
-8.9
-9.3
-9.6
-1.3
-8.2
-7.2
-3.8
-1.3
11.7
-1.9
-4.9
-3.4
15.1
-5.7
-1.2
-4.8
8.1
2.4
2.2
0.2
-6.5
-7.2
-1.2
-5.1
-3.2
8.3
-14.5
-10.9
4.4
-3.5
-5.6
3.9
-4.4
9.7
5.1
-0.6
-6.3
-3.2
-12.6
2.7
-8.2
12.5
5.9
-3.9
-5.5
-5.0
-1.9
1.0
-0.2
2.1
-1.1
-8.3
-0.8
-8.0
24.1
-7.8
-6.4
46.6
-3.2
-1.3
2010年を100とし
たときの2040年
の20~39歳女性
人口
45
42
40
39
61
52
78
42
55
82
46
111
56
57
70
61
48
44
39
41
70
40
47
37
52
42
29
32
55
40
29
51
66
97
52
49
79
122
41
57
51
101
71
66
63
41
37
70
39
47
95
28
28
84
54
34
110
61
57
74
43
39
47
29
74
37
96
88
43
48
36
55
58
44
69
41
35
56
31
78
38
41
84
51
64
出典:筆者作成
-78-
社人研地域推計も含め将来人口推計は、現在の年齢構造と将来の出生率と人口移動を示す移動
率をどのように仮定するかによって決まる。また、多くの推計で、使用する出生率や移動率の仮
定値は直近の実績値に基づき設定されることが多く、直近のトレンドに強い影響を受けやすい性
質を持つことに注意が必要である。このような性質に鑑みれば、仮定に基づくシミュレーション
結果である将来人口推計の数値だけを一人歩きさせて議論することは将来人口推計の適切な活用
法でないとご理解いただけると思う。そして、将来人口推計のプロセスに関しては、どのような
仮定を置くかという点では推計する側の意思は介在するものの、推計作業自体は客観的に示すこ
とのできる数値に基づく機械的な算定である。したがって、単に特定の未来を示した将来人口推
計の数値結果だけではなく、仮定値の設定を変えることによって示される多様な未来の選択肢に
基づき、今後の地域の政策論議に活用して頂きたいと思う。
-79-
3
就労、住宅および住環境を中心としたまちの
魅力向上にむけた意識分析 ―若年層を中心に―
本章では、移動の大きい若年層、特に 20~30 歳代の女性に着目しながら、社会移動の動態につ
いて分析を行う。まず、
(1)では国勢調査などの統計データから転出入や通勤・通学地の動向に
ついて把握する。そして(2)では、2つのアンケート調査「大学生の神戸市内企業への就職意
識に関するアンケート調査」および「平成 26 年
若年女性・人口移動実態調査」の結果を分析し、
神戸市内の大学生の勤務地や就職先選定に関する意識やニーズ、および移動した若年女性の結婚、
子育て、就労、住宅、生活環境、地域別の特性などに関する実態と意識を明らかにする。
(3)で
は、まとめとして、若年層が魅力を感じるまちの要素、あるいは居住地として選択するための要
素などについて提示する。
なお、アンケート調査の調査票、単純集計の結果については巻末に掲載している。
(1)データから見た現況
①若年層の転出入の動向
次の図3-1は、神戸市において、出生時から同じ場所に居住している人の割合について、
区別、年齢5歳階級別に見たものである。「0~4 歳」では 60.2%が同じところに居住している
のに対し、
「5~9 歳」では 29.8%、
「15~19 歳」では 13.0%、
「25~29 歳」では 5.7%と推移し、
5歳階級ごとにおよそ半減しており、20 歳代後半までに 9 割以上が少なくとも 1 度は転居して
いることが分かる。40 歳代以降は、移動は落ち着き始める。
区別に見ると、西区では、「0~9 歳」を除くすべての世代で出生時から住み続けている割合
が市全体を上回り、逆に東灘区はすべての世代で市全体より低い。また中央区、東灘区、灘区
では 10 歳から 20 歳代での転居が多く、長田区では、30 歳代から 50 歳代で割合が高い。西区、
北区では 60 歳代以降で割合が高い傾向がみられる。
-80-
100.0%
神戸市
0~4
60.2%
神戸市
5~9
29.8%
神戸市
10~14
19.7%
10.0%
神戸市
15~19
13.0%
神戸市
20~24
8.7%
神戸市
25~29
5.7%
神戸市
東灘区
灘区
兵庫区
長田区
須磨区
垂水区
1.0%
北区
中央区
10.0%
8.0%
8.6%
7.4%
7.5% 7.3%
7.2%
6.9% 6.7%
西区
9.0%
6.8%
5.4%
6.0%
4.0%
2.0%
※それぞれの数値は出生時からの居住人口
西区
垂水区
須磨区
長田区
北区
兵庫区
中央区
灘区
東灘区
神戸市
0.0%
の各区人口に占める割合
0.1%
※縦軸は対数目盛
出典:国勢調査
図3-1
年齢5歳階級別居住期間が「出生時から」の割合(2010 年)
-81-
次に、図3-2は、神戸市において、5歳階級ごとに、どの年齢層がどの地域から転入し、
どの地域へ転出しているのかについて集計している。これによれば、15~34 歳の若い世代で転
入・転出が多く見られ、1章でも述べられているが、特に 20 代での移動が多いことが分かる(図
3-2の 15~34 歳では、合計して転入が 2,009 人、転出が 2,815 人となっており、806 人の転
出超過である)。
地域別の特徴を見ると、高校卒業時から 20 歳代前半で、中国、四国、九州地方からの転入が
多く見られる。そして、20 歳前半から後半にかけて、東京都、大阪市、阪神間への転出超過と
なっている。
全体的に見て、大学進学のタイミングで西日本から神戸市に転入し、大学卒業後の就職等の
タイミングで東京都、大阪市へ転出しているという傾向が分かる。
(人) 1200
九州・沖縄
800
九州・沖縄
四国
四国
転入超過数(
人)
中国
400
その他近畿
中国
その他兵庫県
その他近畿
阪神間6市
転出超過数(
人)
大阪市
0
0~4歳
5~9歳 10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80~84歳 85~89歳 90歳以上
東京都
大阪府(大阪市除く)
東海・北陸
南関東(東京・神奈川除く)
-400
神奈川県
神奈川県
南関東
東京都
東海・北陸
その他東日本
-800
大阪市
阪神間
-1200
出典:住民基本台帳人口移動報告
図3-2 神戸市における地域別・5階級別 転入・転出者数(2012 年)
また、図3-3で女性のみの転入・転出について見ると、15~34 歳の若年層で同様に移動が
大きいものの、転入と転出の人数については転入が 1,372 人、転出が 1,366 人となっておりほ
ぼ拮抗している。20 歳代の前半は大きな転入超過を示しており、特に四国、中国、九州、近畿
地方からの転入が多い。そして、20 代歳後半~30 代歳前半は、転出超過となっており、阪神間、
大阪市、東京都への転出が目立っている。
全体的に見て、女性は男性と比較して転出が少ないと言える。図3-2では、全体的な転出
のピークは 20 歳代前半であったが、女性のみの場合の転出のピークは 20 歳代後半である。女
性の場合、大学入学時に西日本から転入し、神戸市或いは近隣市での就職により 20 歳代前半の
転出は抑制されるものの、就職後の結婚や子育て時期に阪神間自治体や大阪市、東京都への転
出傾向があると言える。
-82-
(人)
800
九州・沖縄
600
四国
転入超過数(人)
九州・沖縄
400
四国
中国
中国
その他近畿
200
その他兵庫県
その他近畿
阪神間6市
大阪市
0
転出超過数(人)
0~4歳
5~9歳 10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80~84歳 85~89歳 90歳以上
東京都
大阪府(大阪市除く)
東海・北陸
-200
南関東(東京・神奈川除く)
神奈川県
大阪市
東京都
-400
その他東日本
阪神間
-600
-800
出典:住民基本台帳人口移動報告
図3-3
神戸市における地域別・5階級別
転入・転出者数/女性(2012 年)
②通勤・通学地の動向
図3-4から神戸市の昼間人口および昼夜間人口比率について見ると、昼夜間人口比率は、
1990 年(平成 2 年)から 2010 年(平成 22 年)の 20 年間において、阪神・淡路大震災があっ
た 1995 年(平成 7 年)でやや高くなっているが、101~105%でほぼ横ばいといえる。
出典:国勢調査
図3-4
神戸市の昼間人口、昼夜間人口比率等の推移
-83-
図3-5は、近隣自治体である西宮市、明石市、大阪市と神戸市の昼夜間人口である。西宮
市、明石市は、昼夜間人口比率が西宮市で 88~89%、明石市で 89~90%で推移しており、ベッ
ドタウンとしての都市の傾向が見られる。大阪市では、2000 年(平成 12 年)の 141%から比べ
ると少しずつ減少が見られ、2010 年(平成 22 年)には 133%となっていることから、夜間人口
について都心回帰の傾向が見られる。しかし依然として大阪市は約 90 万の人口が超過流入する
全国 1 位の昼夜間人口比率の高い都市であり、特に大阪市中央区が 591.9%、大阪市北区が
346.7%となっている。
出典:国勢調査
図3-5
西宮市、明石市、大阪市、神戸市の昼夜間人口
神戸市における各区の昼夜間人口を表3-1でみると、昼夜間人口比率が 100%を超えてい
る区は、中央区(219.1)、兵庫区(121.3)、長田区(102.3)であり、垂水区(77.8)と北区(81.7)
は低い傾向にある。中央区の昼夜間人口比率は、関西で3位、全国でも 10 位の高さである。
-84-
表3-1 昼間人口、夜間人口および昼夜間人口比率(2010 年)
夜間人口
(常住地による人口)
(人)
昼間人口(従業地・通学地による人口)
(人)
区
全
総 数
うち
うち
総 数
a),b)
市内
他区に常住
市外に常住
(流入人口)
a),c)
流
入
昼夜間
人口
比率
(%)
超過数
(人)
市
1,583,765
246,098
211,008
1,544,200
39,565
102.6
東灘区
202,756
22,064
31,824
210,408
△ 4,996
96.4
灘
区
130,753
18,850
17,755
133,451
1,974
98.0
中央区
276,972
95,293
77,426
126,393
66,389
219.1
兵庫区
131,328
32,779
15,652
108,304
9,002
121.3
北
区
185,388
7,227
13,118
226,836 △ 15,691
81.7
長田区
103,920
19,878
7,486
101,624
1,854
102.3
須磨区
145,155
18,775
8,885
167,475
△ 4,734
86.7
垂水区
171,422
9,322
6,743
220,411 △ 15,181
77.8
西
236,071
21,910
32,119
249,298
94.7
区
a)労働力状態「不詳」を含む。
c)従業地・通学地「不詳」を含む。
全 市
6.0
東灘区
5.9
39.6
灘 区
7.8
36.6
b)従業地・通学地「不詳」で,当地に常住している者を含む。
d)従業・通学先市区町村「不詳」を含む。
出典:国勢調査
34.3
33.1
5.4
北 区
9.7
長田区
9.3
須磨区
8.4
垂水区
10.0
西 区
7.2
21.8
24.8
10.9
32.4
58.4
図3-6
18.1
19.9
40%
60%
自宅外の自区に常住
他県に常住
区別
18.5
41.6
45.9
0%
20%
自宅で従業
県内他市町に常住
8.4
19.4
58.9
44.0
6.0
28.4
46.7
34.2
7.5
17.6
46.8
25.5
4.8
22.1
32.0
中央区 2.1 14.4
兵庫区
948
3.1
2.0
12.6
2.2
11.1
2.3
12.4
27.1
1.1
1.8
80%
100%
市内他区に常住
出典:国勢調査
市内就業者の常住地別割合(2010 年)
図3-6は、神戸市内の就業者がどこに居住しているかについて、すなわちどこから神戸市
に働きに来ているのかについて表している。これによると、同一区で居住し、仕事をしている
人(「自宅で従業」と「自宅外の自区に常住」)は、北区(68.6%)、垂水区(68.4%)、須磨区
(54.3%)、西区(51.2%)などに多い。中央区、兵庫区には他区から通勤してきている人の割合が
多く、就業地としての性格を持っていることが分かる。市外からの通勤(「県内他市町村に常住」
と「他県に常住」)は中央区(36.8%)、東灘区(29.6%)、西区(28.9%)に多く、都心と他自治体と
近接する区に就業者が流入している。
-85-
(2)住宅および住環境に関するニーズ、意識の調査の実施・分析
(1)で見たように、神戸市では大学入学時までの 10 代後半までは転入超過であるのに対し、
大学を卒業して就職する年代では転出超過に転じている。そこで、若年層の住環境、就労、移
動などに関する意識を把握するために神戸市と共同で実施した2種類の意識調査結果をみてい
く。
①市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査・分析
1)調査概要
神戸市内の大学や短期大学等に在籍する学生を対象に、就職や就職時の居住地などに関す
る意識を把握するために「大学生の神戸市内企業への就職意識に関するアンケート調査」を
大学等の協力を得て実施した。
なお、この調査については、島田智明氏(神戸大学大学院経営学研究科准教授)と瓜生原
葉子氏(同志社大学商学部准教授)が分析を行っており、その一部を引用しつつ調査結果を
見ていく。
ア)調査目的
市内大学在学の学生の就職実態、意識を把握・分析し、市内企業への就職など、学生の
卒業後も市内定着を促進、支援する施策を検討することを目的に実施した。
イ)調査対象
市内に本部所在の大学、短期大学等 25 大学に通う学生 男女 1,666 名
ウ)実施時期、方法
2014 年(平成 26 年)12 月から 2015 年(平成 27 年)1 月にかけて協力いただいた大学
等で学生に対して配布し実施、調査票を回収
-86-
2)アンケート調査から見る「就職」:希望・予定勤務地
まず、大学での専攻学科別に就職の希望・予定勤務地について見ると、神戸市を希望・予
定希望地とする学生は、
「教育」、
「その他文系」
、
「医薬・保健系」、
「人文科学系」に比較的多
いことが分かる(図3-7)。
0%
10%
20%
人文科学系
(文学・外国語等)
24.9
社会科学系
(法・経済・国際関係等)
24.3
40%
11.7
70%
80%
90%
0.5
8.0 2.3 4.2 7.0
1.4
0.3
0.6
10.3 2.3 4.6 3.7
12.3
0.3 0.6
32.3
6.3 3.3 2.4 9.7
1.5
0.6 0.6
35.4
6.2 2.7 3.8
0.6 1.2
0.8
11.3 1.7 0.8 5.0
12.5
3.8
2.4
1.2
38.2
4.7
4.7 2.4
1.2
2.4
37.1
医薬・保健系
(医学・薬学・看護等)
60%
32.0
37.2
教育
50%
41.8
30.8
その他文系
自然科学系
(理学・農学・工学等)
30%
29.4
22.2
家政・栄養系
25.5
11.1
31.0
無回答
8.0 1.9
8.3 1.4
8.8
3.9
5.9
5.9
14.6
0.8
11.8
1.8
神戸市
関西地方
(神戸市を除く)
関東地方
北海道・東北地方
中部地方
中国・四国地方
九州地方
海外
0.0 11.1
22.9
その他理系
100%
2.0 2.0
1.3 3.9 6.5
22.2
1.3
9.5
4.8 2.4
14.3
2.4
どこになってもか
まわない
1.3
2.4
まだわからない
無回答
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図3-7
専攻学科別、希望・予定勤務地
次に、大学の種別に見ると、全体的に、神戸市を含む関西を希望する割合が高い。その中
でも神戸市を希望・予定勤務地とする学生は、短大(37.8%)、女子大(32.4%)に比較的多
い。それに対し、総合大学は、神戸市を希望する割合が最も低い(20.3%)。総合大学、単科
大学は、「どこになってもかまわない」および「関東」「海外」の割合が相対的に高い(図3
-8)。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
神戸市
総合大学
20.3
関西地方
(神戸市を除く)
関東地方
10.0
34.8
北海道・東北地方
単科大学
24.2
9.3
32.0
中部地方
中国・四国地方
九州地方
女子大
短大
32.4
6.0
43.9
37.8
29.1
4.7
どこになっても
かまわない
海外
まだわからない
無回答
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図3-8
大学種別、希望・勤務予定地
また、男女別に希望の就職先の業種を見ると、女性は「医療・福祉」、
「教育・学習支援業」、
「複合サービス事業」などの業種の希望が比較的多くなっている。
-87-
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図3-9
男女別希望の就職先業種
3)アンケート調査から見る「就職」:就職先選びのポイント
「就職先選びのポイントとしてどの程度重視しますか」として 18 項目についてそれぞれ 5
段階(「全く重視しない」
「あまり重視しない」
「どちらともいえない」
「やや重視する」
「大変
重視する」)で尋ねている。統計分析を行う目的で、各項目を順に 1、2、3、4、5 と点数化し
た。
島田氏らは、これらの 18 項目について因子分析をおこなった結果、表3-2のとおり(1)
企業の魅力、(2)企業の評判、(3)勤務条件、(4)人的信頼度の4つの因子を抽出した。
その中でも(1)企業の魅力と(3)勤務条件の平均得点が 3.5 点を超えており、より重視
される傾向にある。
表3-2
就職先選びのポイント:因子分析結果
出典:島田氏、瓜生原氏作成
-88-
次の図は、18 項目に関して就職選びのポイントで重視する(「大変重視する」と「やや重
視する」の合計)と回答した人の割合を表している。全体としての傾向は、「組織の雰囲気、
社風の良さ」
(企業の魅力)、
「安定性がある」
(勤務条件)、
「福利厚生や休暇等の条件が良い」
(勤務条件)
、
「自分がやりたい仕事内容」
(企業の魅力)、
「企業(組織の)理念や社長の人柄」
(企業の魅力)、
「成長性がある」
(企業の魅力)などの項目が重視されているといえる。その
なかで、
「希望・予定勤務地が神戸市」である学生と全体を比較すると、希望・予定勤務地が
神戸市の学生の傾向としては、
「実家から通えること」
(勤務条件)、
「託児所の完備など結婚・
出産後も勤務しやすいこと」(勤務条件)、「転勤がないこと」(勤務条件)、「家族や指導教授
の勧め」(人的信頼度)などを比較的重視していることが分かる。
(%)
100.0
(「大変重視する」と「やや重視する」の合計)
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
家族や指導教授の勧め
知り合い、先輩がいること
海外転勤があること
転勤がないこと
託児所の完備など結婚・
出産後も勤務しやすいこと
大学での専門分野がいかせること
自分がやりたい仕事内容であること
福利厚生や休暇等の条件が良いこと
賃金が高いこと
社会的問題に取り組んでいること
企業(
組織の)
理念や、社長の人柄
組織の雰囲気、社風の良さ
企業規模(
組織の)
が大きいこと
知名度のある企業(
組織)
であること
安定性があること
成長性があること
実家ではないが、住みたい地域に住めること
実家から通えること
0.0
希望・予定勤務地が神戸
全体
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図3-10 就職先選びのポイントで重視すると回答した人の割合
島田氏らは、
「希望・予定勤務地が神戸市」である人とそうではない人の二つのグループに
分け、項目ごとに平均値の差の検定(t 検定)を行った。その結果、神戸市への勤務を希望・
予定している人は、
「実家から通えること」、
「転勤がないこと」、
「知り合い・先輩がいること」、
「家族や指導教授の勧め」を有意に重視する傾向が分かった。そして、
「賃金が高いこと」は
t 値がマイナスであるため、重視していないことも明らかになった(表3-3)。
-89-
表3-3
就職先選びのポイントに関する神戸市内の就職を希望する学生の傾向
:両側t検定分析結果
就職選びポイント
学生の種別 (n)
平均値±標準偏差
実家から通える
(勤務条件)
希望する(487)
3.18±1.46
希望しない(1150)
2.85±1.42
賃金が高い
(勤務条件)
希望する(486)
3.67±0.92
希望しない(1153)
3.79±094
転勤がない
(勤務条件)
希望する(485)
3.53±1.16
希望しない(1148)
3.27±1.17
知り合い,先輩がい 希望する(484)
る(人的信頼度)
希望しない(1147)
2.46±1.11
家族や指導教授の
勧め(人的信頼度)
2.33±1.12
希望する(485)
2.82±1.15
希望しない(1148)
2.62±1.12
有意確率
t値
0.000***
4.308
0.017*
-2.397
0.000***
4.222
0.036*
2.104
0.001**
3.265
Q12の18項目について,神戸市内の就職を希望する学生,希望しない学生の2群に分け,SPSS
(ver. 21)による両側t検定を実施,有意な項目のみ記載
*
p<0.05, **p<0.01,
***
p<0.001
出典:島田氏、瓜生原氏作成
また、同様に、神戸市内の就職希望に影響を及ぼす就職選びのポイントを見出すため、神
戸市内の就職希望の有無を被説明変数とし、就職先選びポイントを説明変数とした多変量解
析を行った。被説明変数が「有無」という二つの質的データであるため、二項ロジット分析
法を用いた。表3-4に示した結果からも、神戸市内の企業への就職を希望している学生の
傾向として、
「実家から通えること」
、
「転勤がないこと」を重視していることが明らかになっ
ている。そして、
「賃金が高いこと」は、オッズ比が1より小さいため有意に重視していない
ことがあらわれている。このように仕事の内容だけでなく、地域や家族を重視し、高い賃金
は重視しないという傾向は、ライフ・ワーク・バランスを考慮した働き方を重視する志向と
も捉えることができる。
-90-
表3-4
就職先選びのポイントに関する神戸市内の就職を希望する学生の傾向
:二項ロジット分析結果
有意確率
オッズ比
大学の専門分野がいかせる
0.442
1.041
1.041
組織の雰囲気,社風の良さ
0.477
1.074
0.754
0.977
企業理念,社長の人柄
0.226
0.907
安定性がある
0.873
0.986
社会的問題に取組んでいる
0.441
1.053
知名度がある企業
0.967
0.996
転勤がない
0.009**
1.160
企業規模が大きい
0.497
0.944
海外転勤がある
0.167
0.940
賃金が高い
0.028*
0.845
知り合い,先輩がいる
0.406
1.053
福利厚生条件が良い
0.210
1.126
家族や指導教授の勧め
0.236
1.074
やりたい仕事内容
0.235
0.910
結婚・出産後も勤務しやすい
0.493
0.964
就職選びポイント
有意確率
オッズ比
実家から通える
0.028
*
1.099
住みたい地域に住める
0.443
成長性がある
就職選びポイント
神戸市内の就職希望の有無を被説明変数,就職選びポイントを説明変数として, SPSS (ver. 21)による二項
ロジット分析を実施
*
p<0.05, **p<0.01
出典:島田氏、瓜生原氏作成
次に、就職先選びのポイントに関する女子学生の傾向について、島田氏らが実施した平均
値の差の検定(表3-5)、および二項ロジット分析(表3-6)の結果から見る。
平均値の差の検定(両側t検定)からは、「実家から通える」、「住みたい地域に住める」、
「安定性がある」、「福利厚生条件が良い」、「やりたい仕事内容」、「大学の専門分野がいかせ
る」、
「組織の雰囲気、社風の良さ」、
「企業理念や社長の人柄」、
「社会問題に取り組んでいる」、
「転勤がない」、「家族・指導教授の勧め」、「結婚・出産後も勤務しやすいこと」などを有意
に重視する傾向が明らかになっている。
-91-
表3-5
就職先選びのポイントに関する女子学生の傾向:両側t検定分析結果
就職選びポイント
有意確率
t値
9.900
大学の専門分野がいかせる
0.000***
4.286
0.000***
3.644
組織の雰囲気,社風の良さ
0.000***
7.110
成長性がある
0.959
-0.051
企業理念,社長の人柄
0.000***
6.681
安定性がある
0.000***
4.523
社会的問題に取組んでいる
0.000***
3.642
知名度がある企業
0.000***
-3.557
転勤がない
0.000***
6.100
企業規模が大きい
0.000***
-7.170
海外転勤がある
0.174
-1.360
賃金が高い
0.002**
-3.124
知り合い,先輩がいる
0.944
0.070
福利厚生条件が良い
0.007**
2.701
家族や指導教授の勧め
0.000***
5.284
やりたい仕事内容
0.000***
3.932
結婚・出産後も勤務しやすい
0.000***
14.803
就職選びポイント
有意確率
t値
実家から通える
0.000***
住みたい地域に住める
Q12の18項目について,男性,女性の2群に分け,SPSS (ver. 21)による両側t検定を実施
*
p<0.05, **p<0.01,
***
p<0.001
出典:島田氏、瓜生原氏作成
そして、二項ロジット分析の結果からは、
「実家から通える」、
「組織の雰囲気、社風の良さ」、
「企業理念や社長の人柄」、「家族や指導教授の勧め」、「結婚・出産後も勤務しやすいこと」
を重視していることが示された。そして、「成長性」、「企業規模」、「賃金の高さ」
「先輩の有
無」を重視していないことが示されている。
表3-6
就職先選びのポイントに関する女子学生の傾向:二項ロジット分析結果
就職選びポイント
有意確率
***
オッズ比
就職選びポイント
有意確率
オッズ比
1.285
大学の専門分野がいかせる
0.267
1.064
0.132
1.089
組織の雰囲気,社風の良さ
0.032*
1.258
成長性がある
0.000***
0.735
企業理念,社長の人柄
0.009**
1.256
安定性がある
0.054
1.189
社会的問題に取組んでいる
0.493
0.951
知名度がある企業
0.091
1.175
転勤がない
0.941
0.995
企業規模が大きい
0.000***
0.657
海外転勤がある
0.596
0.974
賃金が高い
0.000***
0.699
知り合い,先輩がいる
0.000***
0.789
福利厚生条件が良い
0.172
.868
家族や指導教授の勧め
0.023*
1.170
やりたい仕事内容
0.140
1.137
結婚・出産後も勤務しやすい
0.000***
1.883
実家から通える
住みたい地域に住める
0.000
性別を被説明変数,就職選びポイントを説明変数として, SPSS (ver. 21)による二項ロジット分析を実施
*
p<0.05, **p<0.01,
***
p<0.001
出典:島田氏、瓜生原氏作成
-92-
以上から、女子学生の傾向として、実家あるいは希望する地域に居住しながら、結婚・出
産後も勤務しやすい企業を志向していることが分かる。そして、企業の規模や賃金ではなく、
会社の雰囲気や社長の人柄などを重視し、働きやすい職場を希望していることがうかがえる。
これらの要素は、女性が出産後も就労を継続できるための条件でもある。
4)アンケート調査から見る「就職」:重視する就職情報
「神戸市内の企業に関する就職情報としてどの程度重視しますか」として、8項目につい
てそれぞれ5段階(「全く重視しない」「あまり重視しない」
「どちらともいえない」
「やや重
視する」「大変重視する」
)で尋ねている。
「重視する」という意見が多かった項目は、
「実際に働いている企業人から仕事の話を聞く
交流会の開催」(64.6%)、「大学内で説明会開催」(64.0%)などであった。
(「大変重視する」+「やや重視する」の合計)
(%)
70.0
64.6
64.0
60.0
54.7
54.1
50.0
41.3
40.3
40.0
29.8
29.6
30.0
20.0
10.0
0.0
3
イ
ン
タ
ー
5
実
際
に
話
働
を
い
聞
て
く
い
交
る
流
企
会
業
の
人
開
か
催
ら
仕
事
の
6
市
内
企
業
就
サ
職
イ
情
ト
報
の
の
開
一
設
元
化
し
た
特
設
7
当
該
企
業
の
ホ
ム
ペ
ー
ン
シ
ッ
プ
の
実
施
4
市
内
企
業
へ
の
就
職
の
仲
介
機
関
の
充
実
ー
2
バ
ス
等
を
使
用
ア し
た
現
地
企
業
見
学
ツ
ー
1
大
学
内
で
説
明
会
開
催
ジ
の
充
実
の
採
用
情
報
発
信
8
F
a
c
e
b
o
o
k
等
S
N
S
で
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図3-11 神戸市内の企業に関する就職情報として重視する割合
そして、これらの項目に関して市内企業の就職を希望する学生について見てみると、
「大学
内での説明会開催」、「就職の仲介機関の充実」などを重視する傾向が明らかにされている。
-93-
表3-7
神戸市内の企業に関する就職情報として重視する項目
:神戸市内の就職をする学生の傾向
*
p<0.05, **p<0.01,
***
p<0.001
出典:島田氏、瓜生原氏作成
また、女子学生の傾向としては、
「Facebook 等 SNS での採用情報発信」を重視し、
「現地企
業見学ツアー」、「インターンシップの実施」は重視していない傾向が見られた。
表3-8
神戸市内の企業に関する就職情報として重視する項目:女子学生の傾向
企業の就職情報
有意確率
t値
大学内での説明会開催
0.811
0.240
現地企業見学ツアー
0.007**
インターンシップの実施
有意確率
オッズ比
大学内での説明会開催
0.581
1.036
-2.687
現地企業見学ツアー
0.012*
0.858
0.006**
-2.777
インターンシップの実施
0.000***
0.782
就職仲介機関の充実
0.691
-0.398
就職仲介機関の充実
0.924
0.993
企業人との交流会開催
0.249
1.152
企業人との交流会開催
0.082
1.131
情報一元化サイトの開催
0.200
1.282
情報一元化サイトの開催
0.903
0.990
ホームページの充実
0.015*
2.438
ホームページの充実
0.068
1.143
SNSによる採用情報発信
0.008**
2.662
SNSによる採用情報発信
0.012*
1.161
Q14-2の8項目について女性,男性の2群に分け,SPSS
(ver. 21)による両側t検定を実施,
企業の就職情報
性別を被説明変数,企業の就職情報を説明変数とし
て, SPSS (ver. 21)による二項ロジット分析を実施
*
p<0.05, **p<0.01,
***
p<0.001
出典:島田氏、瓜生原氏作成
-94-
これらの分析結果を踏まえると、神戸市内の企業は、まず地元の強みを生かして市内の大
学との連携を強めることが重要である。例えば大学キャンパス内などで説明会や交流会など
を実施し、企業と学生とがお互いを知る機会を持つことなどが考えられる。
そういった場で、会社の雰囲気、社風、理念や社長の人柄、魅力などをダイレクトに学生
に伝えていくことで、市内の企業が市内大学等に通う学生にとって重要な就職希望先の選択
肢となると考えられる。また、大学と企業の共同による社会貢献活動や製品の共同企画、共
同研究などの機会を通じて学生との接触を増やすことも有効ではないだろうか。同時に、企
業側のホームページの充実や、学生に向けた SNS による採用情報発信など、学生に対する情
報発信媒体の工夫も必要であろう。
今後も加速していく人口減少社会の中で、優秀な人材を確保するための方策として、学生
に対する一方通行の情報発信だけでなく、学生の就職に関するニーズを把握した上で、より
直接的で双方向のコミュニケーションによる情報伝達に取り組むことが企業には求められて
いる。
-95-
②若年女性の社会移動に関する意識調査・分析
1)調査概要
若年女性の社会移動について把握するために、20 歳~39 歳の女性で、かつ 2014 年(平成
26 年)の3月から4月の間に、市内へ転入した人(=転入者)、市から転出した人(=転出
者)、市内で区間移動をした人(市内移動者)を抽出し、伊藤亜都子研究室(神戸学院大学現
代社会学部)と神戸市の共同で以下のとおり「平成 26 年 若年女性・人口移動実態調査」を
実施した。
ア)調査目的
人口の再生産力の中心を担う若年女性の社会移動の理由、暮らしやすさ等の評価ととも
に居住に対するニーズを把握し、よりよい子育て、職業、居住環境づくりを検討するため
に実施した。
イ)調査対象
2014 年(平成 26 年)3 月から 4 月に神戸市に転入届、もしくは転出届を提出した者。か
つ、2014 年(平成 26 年)4 月 1 日時点で 20 歳から 39 歳の女性を住民基本台帳から無作為
抽出した。
ウ)実施時期、方法
該当する市内への「転入者」である 3,949 件のうち 3,000 件、市外への「転出者」であ
る 3,892 件のうち 3,000 件、
「市内区間移動者」として 1,463 件全件を抽出した。このうち、
有効送付数は「転入者」が 2,982 件、「転出者」が 2,925 件、「市内移動者」が 1,440 件の
合計 7,347 件であった。7,347 件のうち有効回答は 1,774 件(24.1%)
、内訳は「転入者」
が 719 件、「転出者」が 708 件、「区間移動者」が 347 件であった。
実施時期は 2014 年(平成 26 年)12 月 24 日から 2015 年(平成 27 年)1 月 19 日にかけ
て、郵送方式にて実施した。
-96-
2)アンケート調査から見る「結婚」「子育て」「就労」×「移動」:家族形態との関連
若年女性の移動が、結婚、子育て、就労とどのようにかかわっているのかについて見る。
下の「図3-12
転居による就業形態の変化」では、転居前の就業形態が転居後にどのよう
に変化したのかについてクロス集計をおこなった。すると、転居前に「正規職員」だった人
のうち、転居後も「正規職員」であったのは 65.9%であり、約 15%が「パート・アルバイト」、
「派遣・嘱託・契約社員」に、17.8%が「無職」に転じている。また、転居前に「無職」だ
った人が転居後に就労した割合と比較し、転居前に働いていた人(「正規職員」、
「パート・ア
ルバイト」、「派遣・嘱託・契約社員)が転居後に「無職」に転じている割合が高い点は特徴
的である。転居前に「学生」であった人については、76.7%が「正規職員」になっており、
大学等を卒業後、就職したことをきっかけに、転居したことがうかがえる。
移動後も「正規職員」
は65.9%
65.9%
正規職員
パート・アルバイト
派遣・嘱託・契約社員
9.2%
13.6%
8.4%
0.3%
6.3%
1.2%
1.0%
6.6% 2.6%
1.0%
43.9%
6.8%
0.1%
14.5%
1.2%
35.7%
0.6%
49.4%
17.8%
29.0%
0.6%
0.9%
2.7%
3.6%
76.7%
学生
0.3%
就職
無職
正規職員
0.6%
5.4%
3.5%
3.2%
パート・アルバイト
87.2%
派遣・嘱託・契約社員
自営業・内職
会社などの役員
学生
無職
無回答
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-12 転居による就業形態の変化
「ふだんの様子」として、
「主に仕事」、
「通学」、
「主に家事」、
「仕事を探している」、
「その
他」の中から選択してもらい、それらについて、配偶者の有無(「未婚」か「配偶者有り」)
別、子どもの有無別について見た(「ふだんの様子」における「その他」、および「配偶者の
有無」における「死別」
「離別」については少数であったため図では省略している)。
図3-13 を見ると、
「主に仕事」をしている人について、
「未婚」では 83.2%であるのに対
し、「配偶者有り」では 35.7%と減少し、さらに「子ども有り」では 19.7%となっている。
それに対応するように、
「主に家事」をしている人は、
「未婚」では 3.1%であるが、
「配偶者
有り」では 58.6%、「子ども有り」では 75.0%と増加している。
この結果から、若年女性の就業は、配偶者や子どもの有無と大きくかかわっていること、
転居後に無職化してしまう傾向が強いことを踏まえると、移動が伴うと、配偶者や子どもを
優先して仕事から離れる傾向が非常に強いことが分かる。
-97-
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-13
「ふだんの様子」と配偶者、子どもとの関連
3)アンケート調査から見る「結婚」「子育て」「就労」×「移動」:移動の傾向と理由
本稿では、移動の理由と、移動の地域について傾向を分析した。
下の「図3-14
前住所からの移動先」を見ると、回答者である若年女性がどこからどこ
へ移動しているのかについて読みとることができる。主には、
「東灘区・灘区」のエリアから
は、大阪府、東京都への移動が比較的多い。また、大阪府からは、
「東灘区・灘区」の市東部
のエリアと「垂水区・北区・西区・須磨(北須磨)区」のニュータウンエリアへの転入が比
較的多い。
400
<移動先>
350
その他
300
東京都
250
大阪府
その他の兵庫県下
200
尼崎、西宮、芦屋、伊丹、川西、宝塚
150
明石、高砂、加古川、加古郡
垂水、北、西、須磨(北須磨)
100
兵庫、長田、須磨(本区)
50
中央
東灘、灘
0
<前住所>
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-14
前住所からの移動先
-98-
次に、
「移動した理由」について「転入者」、
「転出者」、
「市内移動者」別に見たところ、全
体的な傾向としては、
「自分の仕事の都合」または「自分以外の仕事の都合」
(あわせて 49.7%)
による移動、次に「結婚のため」(22.8%)の移動が多く、
「転入者」と「転出者」では、あ
まり大きな違いが見られなかった。「市内移動者」は、「よりよい住宅を求めて」(25.4%)、
「結婚のため」(25.9%)、「親族の近くに住む」や「親族と同居」(あわせて 7.2%)、「より
よい周辺環境を求めて」
(8.6%)の移動の割合が、「転入者」「転出者」のそれに比べて高い
ことが特徴的である。
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
転入者
転出者
市内移動者
全体
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-15 移動の理由(転入者、転出者、市内移動者別)
続いて、図3-16 で「移動の理由」」に関して、「配偶者の有無」および「子どもの有無」
との関連を見てみると、
「配偶者有り」または「子ども有り」の場合は、
「自分の仕事の都合」
で移動する割合が非常に低く、
「自分以外の仕事の都合」で移動する割合が高い。配偶者や子
どもがいる場合は、自分以外(つまり配偶者)の仕事の都合によって移動している実態がわ
かる。
また、「子ども有り」の場合は、「よりよい住宅」、「よりよい周辺環境」、「親族の近くに住
む」などの理由で移動する割合が相対的に高い。
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
未婚
配偶者有り
子ども有り
子どもなし
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-16 移動の理由(配偶者の有無、子どもの有無別)
-99-
神戸市への転入者が、どのような理由で、どの地域から、市内のどの地域へ転入してきたの
かについて把握するために、前住所別、および現住所(移動先)別に見た(図3-17、18)
。
まず、どの地域からどのような理由で神戸市内に転入したのかについて「図3-17
転入
者:前住所別移動の理由」を見ると、兵庫県内および大阪府から「結婚のため」に転入してい
ることがわかる。そして東京からの転入は、
「自分の仕事の都合」よりも配偶者など「自分以
外の仕事の都合」(46.7%)が多い。
「明石市、高砂市、加古川市、加古郡」方面からは、「よ
りよい住宅を求めて」の転入が見られる。
次に、どのような理由で神戸市内のどの地域に転入してきたのかについて「図3-18 転入
者:移動先別移動の理由」を見ると、中央区への「自分の仕事の都合」(55.4%)のための転
入が多く、
「結婚のため」
(11.6%)は少ない。
「兵庫区、長田区、須磨(本区)区」の地域、
あるいは「垂水区、北区、西区、須磨(北須磨)区」には、
「結婚のため」の転入がやや多い。
また、
「垂水区、北区、西区、須磨(北須磨)区」に転入した人の理由として、
「親族の近くに
住む」「親族との同居」が相対的に多く、ニュータウンに移住した世代である親との同居、近
居の傾向が推測できる。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1.8%
明石、高砂、加古川、加古郡
尼崎、西宮、芦屋、伊丹、川西、宝塚
10.0%
11.3%
20.0%
その他の兵庫県下
東京都
2.0%
19.2%
20.2%
0.9%
30.1%
自分以外の仕事の都合
結婚のため
入学、進学、卒業
6.1%
4.4% 4.4%
15.6%
46.7%
43.8%
自分の仕事の都合
よりよい周辺環境
親族との同居のため
その他
2.0%
4.0%
6.1%
1.0%
33.3%
6.1%
28.9%
その他
1.2%
2.4% 4.8%
1.2%
28.9%
2.4% 8.4%
5.3%
8.8%
2.5%
10.0%
10.0% 2.5%
6.3%
20.0%
7.5%
18.1%
32.5%
大阪府
7.0%
33.3%
26.3%
17.5%
1.8%
0.9%
2.4% 4.9%
0.3%
14.9%
よりよい住宅を求めて
親族の近くに住むため
通勤・通学のよりよい交通の便のため
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-17 転入者:前住所別移動の理由
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1.4%
東灘、灘
28.7%
27.8%
3.7%
1.9% 5.1%
19.9%
3.2% 5.1%
3.2%
中央
55.4%
0.8%
1.7%
2.5%
21.5%
11.6%
2.5%
1.7%
2.5%
3.2%
兵庫、長田、須磨(本区)
36.0%
18.4%
3.2%3.2%
26.4%
.8%
4.8%
1.6%
2.4%
3.2%
垂水、北、西、須磨(北須磨)
23.1%
26.3%
5.2% 2.8%
23.5%
6.0%
2.0%
6.0%
2.0%
自分の仕事の都合
自分以外の仕事の都合
よりよい住宅を求めて
よりよい周辺環境を求めて
結婚のため
親族の近くに住むため
親族との同居のため
入学、進学、卒業
通勤・通学のよりよい交通の便のため
その他
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-18 転入者:移動先別移動の理由
-100-
神戸市から市外へ転出した人は、市内のどの地域から、どこへどのような理由で転出した
のかについて把握するために、転出者の移動の理由について、前住所別および現住所(移動
先)別に見た(図3-19、20)。
まず、どのような理由で神戸市内のどの地域から転出していったのかについて「図3-19
転出者:前住所別移動理由」を見たところ、全体的には、前住所による移動理由の大きな違
いは見られなかった。
「結婚」を理由に「兵庫区、長田区、須磨(本区)区」から転出する割
合がやや高く(29.5%)、「東灘区、灘区」、「中央区」からは「仕事の理由で転出する割合が
やや高い。
次に、どのような理由で神戸市からどこへ転出したのかについて「図3-20
転出者:移
動先別移動の理由」を見ると、
「尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、川西市、宝塚市」および
「明石市、高砂市、加古川市、加古郡」の地域には、
「結婚のため」の転出が多い。そして「東
京都」へは、
「自分の仕事の都合」(49.0%)による転出が多い。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
東灘、灘
中央
4.9%
27.0%
33.8%
3.4% 3.9%
1.5%
4.9%
17.6%
1.0%
3.1%
30.6%
30.6%
100%
1.5%
1.5%
2.0%
1.0% 2.0% 4.1%
24.5%
1.0%
2.5%
0.8%
兵庫、長田、須磨(本区)
19.7%
32.8%
2.5% 4.1%
4.1%
29.5%
3.3%
0.8%
1.4%
1.4%
垂水、北、西、須磨(北須磨)
22.2%
34.1%
5.0%
1.8% 2.5%
24.0%
2.9%
4.7%
自分の仕事の都合
よりよい周辺環境
親族との同居のため同居のため
その他
自分以外の仕事の都合
結婚のため
入学、進学、卒業
よりよい住宅を求めて
親族の近くに住むため近くに住むため
通勤・通学のよりよい交通の便のため
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-19 転出者:前住所別移動理由
0%
明石、高砂、加古川、加古郡
尼崎、西宮、芦屋、伊丹、川西、宝塚
その他の兵庫県下
大阪府
10%
20%
25.0%
8.3%
2.1%
22.7%
8.2%
28.1%
40%
10.4%
60%
70%
1.8% 1.8%
90%
1.0%
2.1% 2.1%
24.6%
3.6% 1.8%
7.0%
30.0%
30.2%
16.2%
自分の仕事の都合
自分以外の仕事の都合
よりよい住宅を求めて
よりよい周辺環境を求めて
結婚のため
親族の近くに住むため
親族との同居のため
入学、進学、卒業
7.2%
12.5%
8.3%
6.2%
5.3% 1.8%
4.5%
0.0%
0.4%
0.7%
36.3%
100%
2.1% 4.2% 2.1% 2.1%
39.2%
49.0%
33.8%
80%
35.4%
9.3%
17.3%
30.9%
50%
2.1%
21.1%
東京都
その他
30%
8.8%
9.1%
2.7%
1.0% 5.2% 2.1%
3.2% 2.2% 3.6% 3.6%
通勤・通学のよりよい交通の便のため その他
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-20 転出者:移動先別移動理由
-101-
続いて、神戸市内で区間移動した人は、どのような理由でどの区からどの区へ移動したの
かについて把握するために、市内移動者について前住所別および現住所(移動先)別に移動
理由を見た(図3-21、22)。
「図3-21 市内移動者:前住所別移動の理由」を見ると、
「東灘区、灘区」から「よりよ
い住宅を求めて」
(34.2%)移動する人がやや多い。また、中央区からは「よりよい周辺環境」
(16.3%)を求めて、あるいは「親族との同居のため」(9.3%)に移動する割合が相対的に
高い。
「図3-22 市内移動者:移動先別移動理由」を見ると、
「垂水区、北区、西区、須磨(北
須磨)区」
(30.8%)、
「東灘区、灘区」
(27.9%)には、
「よりよい住宅を求めて」の移動の割
合が高く、「よりよい周辺環境」を求めての移動も相対的に高い。中央区には、「自分の仕事
の都合」
(30.8%)で移動する割合が高い。
「垂水区、北区、西区、須磨(北須磨)区」には、
親族との「同居」
「近居(近くに住むため)」のための移動があわせて 10.5%と相対的に高く
なっている。
0%
10%
東灘、灘
12.7%
20%
30%
1.3%
40%
50%
34.2%
60%
5.1%
70%
80%
27.8%
90%
100%
2.5%3.8% 3.8%
6.3%
2.5%
中央
14.0%
2.3%
25.6%
16.3%
16.3%
2.3%
9.0%
22.4%
9.3%
2.3%
11.6%
3.0%
兵庫、長田、須磨(本区)
17.9%
6.0%
22.4%
1.5% 1.5%
13.4%
3.0%
0.6%
垂水、北、西、須磨(北須磨)
13.5%
5.8%
22.6%
自分の仕事の都合
よりよい周辺環境
親族との同居のため
その他
7.1%
29.7%
自分以外の仕事の都合
結婚のため
入学、進学、卒業
4.5% 2.6% 5.8%
7.7%
よりよい住宅を求めて
親族の近くに住むため
通勤・通学のよりよい交通の便のため
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-21 市内移動者:前住所別移動理由
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1.2%
東灘、灘
11.6%
中央
兵庫、長田、須磨(本区)
17.1%
7.0%
27.9%
30.8%
3.8%
1.3%
12.8%
11.5%
22.4%
22.1%
7.7%
3.9%
23.1%
27.6%
3.5% 2.3% 4.7%
1.9%3.8%
5.8%
3.9% 3.9% 3.9%
7.0%
11.5%
15.8%
2.3%
垂水、北、西、須磨(北須磨)
7.5%
4.5%
自分の仕事の都合
よりよい周辺環境を求めて
親族との同居のため
その他
30.8%
9.0%
28.6%
自分以外の仕事の都合
結婚のため
入学、進学、卒業
4.5%
6.0% 1.5%
5.3%
よりよい住宅を求めて
親族の近くに住むため
通勤・通学のよりよい交通の便のため
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-22 市内移動者:移動先別移動理由
-102-
4)アンケート調査から見る「結婚」「子育て」「就労」×「移動」:居住地選択の傾向
移動にともなって住宅を探す際、
「あらかじめ地域を限定して探されましたか。
」という問
いに対しては、80%以上が地域を限定して住宅を探しており、地域を限定して探した理由に
ついてたずねた結果が以下の「図3-23 地域を限定して探した理由」である。
全体的には、「利便性」と「生まれ故郷や親戚、知り合い」を重視していることが分かる。
「転入者」と「転出者」にはあまり大きな違いは見られないが、「市内移動者」については、
「住宅の質」
(7.9%)と「子育てがしやすそう」
(9.6%)を比較的重視している。
住宅の質を向上するため
子育てがしやすそうであったため
自然環境などの面で快適であるため
地域の様子・雰囲気が気に入っているため
その他
全件
3.6%
市内 移動者
7.9%
通勤・通学や買い物などの利便性を良くするため
ショッピングモール、文化施設などが充実しているため
地域の安全性(防災・防犯など)
生まれ故郷、または親戚や知り合いなどがいるため
無回答
45.1%
31.8%
5.5%
9.6%
転出者 1.7%
50.0%
転入者 3.2%
47.2%
1.2%
2.5% 5.6%
1.0%
1.3%
1.7%
1.3%
8.8%
16.9%
10.3%
0.9%
3.7% 1.7% 3.3%
0.9%
5.2%
13.6%
10.8%
1.5%
3.6% 5.4%
13.0%
9.9%
9.8%
14.6%
9.3%
17.1%
7.3%
11.0%
1.0%
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-23 地域を限定して探した理由
また、どの地域に居住している人が、どのような理由を重視して探したのかについて見る
と(図3-24 地域を限定して探した理由/現住所別)、
「通勤・通学や買い物などの利便性を
よくするため」を中央区、兵庫区、大阪市、東京都で重視していることがわかる。また、西
宮市、灘区、垂水区に居住している人は、
「子育てがしやすそう」であることを重視している。
そして、長田区、北区、西区では、
「生まれ故郷、親戚や知り合いがいるため」を理由として
いる人が相対的に高い。
-103-
0%
東灘
10%
20%
30%
灘 2.0%
北
垂水
明石市
西宮市
12.3%
30.2%
3.8%
西 2.4%
9.4%
28.2%
1.9% 2.8% 1.9%
3.5%
6.3%
3.8%
東京都 1.1%
住宅の質を向上するため
7.7%
23.1%
3.8%
7.9%
13.2%
5.6%
通勤・通学や買い物などの利便性を良くするため
2.2%
4.5%
5.3%
12.4%
7.9%
12.5%
15.8%
20.2%
子育てがしやすそう であったため
ショ ッピングモール、 文化施設などが充実しているため 自然環境などの面で快適であるため
地域の安全性(防災・防犯など)
地域の様子・雰囲気が気に入っているため
その他
生まれ故郷、 または親戚や知り合いなどがいるため
7.9%
5.3%
6.3%
2.6% 2.6% 2.6%
53.9%
10.6%
10.6%
37.5%
6.3%
63.2%
14.2%
11.3%
2.6% 2.6%
13.2%
18.8%
12.5%
大阪市
14.6%
25.9%
7.7%
42.1%
5.3%
16.0%
5.7%
8.8%
5.3%
16.7%
6.3%
4.7%
46.2%
7.7%
芦屋市
1.2% 3.5%
14.0%
14.0%
4.2% 2.1%
4.2%
10.4%
35.4%
9.5%
15.8%
10.5%
1.8%1.8% 3.5% 1.8%
40.4%
8.8%
6.3%
7.1%
18.9%
34.2%
5.9%
12.1%
7.1%
11.4%
24.3%
4.1% 1.4% 1.4%
2.9%
4.3%
7.8%
4.3%
100%
13.9%
12.7%
14.7%
2.9% 2.9%
36.8%
90%
6.0%
0.7%
3.5%
1.4%
2.1%
36.5%
4.1%
80%
10.2%
1.0% 3.9%
58.6%
2.6%
須磨(本区)
70%
11.4%
5.4%
12.7%
5.7%
須磨(北須磨)
60%
1.2%
0.6%
60.3%
7.8%
兵庫
50%
8.4%
44.1%
中央
長田
40%
38.0%
4.8%
無回答
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-24 地域を限定して探した理由/現住所別
5)アンケート調査から見る「生活環境」への評価:転入者、転出者、市内移動者の評価
本アンケート調査では、住宅(3項目)、利便性(4項目)、子育て環境(7項目)、施設利
用(4項目)
、周辺環境(4項目)、地域社会(7項目)に対する評価、および「全体として
の満足度」の合計 30 項目について、「転居前」、「転居後」それぞれ5段階(「非常に満足」、
「まあまあ満足」、「ふつう」、「やや不満」、「非常に不満」
)で回答していただいた。
その結果から、各区に対する評価、あるいは近隣自治体との比較などの分析を行う。
表3-9は、転居前および転居後における満足度についての全体(転入者も転出者も市内
移動者も含む)の評価についてまとめたものである。満足度(「非常に満足」と「まあまあ満
足」の合計)を転居前と転居後について比較し、それぞれの割合の差をあらわしている。
すると、
「住宅の広さ、部屋数、間取り」
(7.1%↑)、
「住宅の全体的な満足度」
(5.2%↑)、
「通勤、通学の便」(5.9%↑)、「交通の便」(3.1%↑)の4項目については、満足度が上が
っているが、他の項目ではすべて満足度が下がっている。特に「まちの人の雰囲気」(9.8%
↓)、
「近所づきあい」
(9.1%↓)で大きな低下が見られ、続いて「全体としての満足度」
(8.4%
↓)、「騒音、振動などの環境汚染」
(7.5%↓)、「住環境全般への満足度」(7.4%↓)、「地域
の安全性」(7.4%↓)、「保育施設」(7.0%↓)、「街の景観や街並み」(7.0%↓)などでも満
足度がかなり下がっている。これは、回答者が移動後1年未満であるためにまだ新しい地域
での生活に十分になじんでおらず、近所づきあいやまちの雰囲気を含めた周辺環境について
満足できていないことが考えられる。したがって、時間が経過すればある程度この傾向は減
少すると思われるとともに、転入時に自治体や地域が、転入者に対して積極的に情報を伝え
たり、新しい環境になじめるような支援をすることで、転入者の満足度やまちに対する評価
を上げることが可能であろう。
-104-
表3-9
転居前および転居後における満足度【全体】
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
2.住宅費の負担
3.住宅の全体的な満足度
4.通勤、通学の便
5.日常生活での買い物の便
6.交通の便
7.利便性全体への評価
8.保育施設(就学前)
9.学童保育所
10.小児科などの医療施設
11.子どもの遊び場、公園
12.教育環境
13.自治体の子育て支援サービス
14.子育て環境への全体的な満足度
15.スポーツ施設
16.教養、文化施設
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
19.騒音、振動などの環境汚染
20.自然環境
21.地域の安全性(防災・防犯など)
22.住環境全般への満足度
23.近所づきあい
24.まちの人の雰囲気
25.地域活動(自治会、子供会など)
26.地域の人間関係の親密性
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
29.地域のイメージの良好性
30.全体としての満足度
転居前
1,010人
56.9%
695人
39.2%
966人
54.5%
911人
51.4%
1,041人
58.7%
939人
52.9%
986人
55.6%
455人
25.6%
295人
16.6%
513人
28.9%
582人
32.8%
511人
28.8%
299人
16.9%
386人
21.8%
429人
24.2%
470人
26.5%
718人
40.5%
605人
34.1%
820人
46.2%
893人
50.3%
771人
43.5%
856人
48.3%
566人
31.9%
783人
44.1%
404人
22.8%
446人
25.1%
829人
46.7%
658人
37.1%
783人
44.1%
1,028人
57.9%
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
転居後
1,136人
64.0%
680人
38.3%
1,059人
59.7%
1,016人
57.3%
995人
56.1%
994人
56.0%
983人
55.4%
330人
18.6%
247人
13.9%
449人
25.3%
514人
29.0%
402人
22.7%
267人
15.1%
364人
20.5%
368人
20.7%
350人
19.7%
649人
36.6%
508人
28.6%
686人
38.7%
771人
43.5%
640人
36.1%
722人
40.7%
405人
22.8%
608人
34.3%
311人
17.5%
339人
19.1%
705人
39.7%
595人
33.5%
704人
39.7%
878人
49.5%
差
7.1%↑
0.9%↓
5.2%↑
5.9%↑
2.6%↓
3.1%↑
0.2%↓
7.0%↓
2.7%↓
3.6%↓
3.8%↓
6.1%↓
1.8%↓
1.3%↓
3.5%↓
6.8%↓
3.9%↓
5.5%↓
7.5%↓
6.8%↓
7.4%↓
7.6%↓
9.1%↓
9.8%↓
5.3%↓
6.0%↓
7.0%↓
3.6%↓
4.4%↓
8.4%↓
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
-105-
(神戸市への転入者)
下の「図3-25
神戸市への転入者による生活環境に対する満足度(転居前/転居後)」
は、神戸市に転入した人が、30 項目についてそれぞれ転居前と転居後(神戸市)について
評価したものである。そして「表3-10 転居前および転居における満足度【転入者】」で
は、神戸市に転入した人について、項目ごとの満足度の変化をあらわしている。
この図3-25 と表3-10 から、神戸市への転入後に評価があがった主なものとして、
「交
通の便」
(15.1%↑)、
「通勤、通学の便」
(7.4%↑)、
「利便性全体への評価」
(6.5%↑)な
ど、
「利便性」に関連する項目、および「まちの活気やにぎわい」
(7.6%↑)や「街の景観
や街並み」
(4.3%↑)などにぎわいがあり景観のよいまちが評価されていることが分かる。
一方で、評価が下がった主な項目としては、
「自然環境」
(17.1%↓)、「騒音、振動など
の環境汚染」
(16.6%↓)
、
「地域への安全性(防災・防犯など)」
(16.3%↓)、
「住環境全般
への満足度」
(14.2%↓)などの住環境に関する項目、そして、
「住宅費の負担」
(11.2%↓)
などがある。
「近所づきあい」
(14.2%↓)、
「地域の人間関係の親密性」
(12.4%↓)などの
人間関係についても、評価が下がっているが、これは時間が経過すればある程度改善する
ことも考えられる。
利便性やまちのにぎわいが評価され、住宅環境や住宅費、人間関係などに対する評価が
低い傾向は、都市としての神戸市の特徴と言えよう。
転入者 転居前
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
31.5%
2.住宅費(ローン、家賃など)の負担
3.住宅の全体的な満足度
4.通勤、通学の便
29.5%
30.1%
6.交通の便
25.9%
23.5%
22.4%
27.7%
24.0%
7.利便性全体への評価
38.9%
36.5%
22.9%
21.3%
31.1%
10.3%
13.6%
11.子どもの遊び場、公園
12.教育環境(学校、進学、習い事)
16.5%
25.6%
11.1%
13.自治体の子育て支援サービス
8.7%
14.子育て環境への全体的な満足度
7.9%
24.7%
19.6%
21.0%
16.教養、文化施設 7.8%
21.5%
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
18.4%
19.騒音、振動などの環境汚染
21.2%
29.6%
29.3%
28.4%
30.2%
22.住環境全般への満足度
19.4%
34.4%
13.9%
15.1%
25.地域活動(自治会、子供会など)
26.地域の人間関係の親密性
9.3%
10.5%
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
26.1%
29.地域のイメージの良好性
14.0%
30.全体としての満足度
13.6%
0%
27.7%
4.1%
11.2% 3.0%
66.9%
21.7%
9.9% 1.1%
63.3%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
8.7%
13.8%
16.1% 4.2%
6.6%
14.7% 4.7%
10.6%
11.3% 2.8%
14.0%
34.0%
7.5%
9.9% 2.3%
9.0%
8.8% 1.7%
28.0%
54.9%
10.8% 1.6%
3.6% 16.4%
10.6% 2.6%
16.7% 3.3%
10.4% 2.1%
29.9%
9.8% 1.1%
80%
100%
30.2%
11.2%
11.2% 2.3%
8.4% 1.9%
70.8%
15.1% 2.4%
62.5%
33.4%
9.3% 0.8%
7.2% 1.3%
47.6%
43.9%
20%
8.8% 0.7%
44.1%
49.5%
32.7%
9.0%
0%
13.4% 3.4%
50.8%
30.8%
7.7% 1.1%
38.3%
40%
3.4%
12.6% 1.8%
59.7%
13.0%
9.5%
非常に不満
6.6%
17.9%
46.4%
27.6%
やや不満
15.4% 3.0%
41.5%
45.0%
4.7% 18.9%
3.8% 15.0%
25.1%
31.4%
26.3%
7.9% 1.6%
14.5% 3.2%
50.6%
26.3%
8.2%
17.5% 5.3%
35.8%
25.1%
12.1%
3.8%
9.3% 1.9%
27.6%
61.6%
60%
8.3% 1.1%
58.8%
18.0% 2.8%
43.9%
40%
7.9% 1.2%
15.7% 2.6%
43.6%
57.1%
28.1%
45.5%
20%
27.6%
24.2%
3.0% 15.8%
9.1% 2.0%
13.3% 1.7%
52.3%
2.8% 19.4%
47.3%
29.5%
71.5%
18.0% 3.8%
44.5%
23.4%
3.9% 13.4%
10.5%
12.0% 2.3%
12.0% 3.4%
20.5% 2.5%
42.7%
22.2%
60.9%
7.6%
13.7% 4.4%
26.7%
54.5%
48.9%
19.6%
38.4%
24.7%
14.5% 4.5%
19.7%
4.3% 18.3%
31.6%
31.6%
14.7%
9.4%
26.6%
33.1%
4.3% 19.4%
8.0%
15.0% 4.7%
19.3%
23.9%
4.6%
23.1%
45.8%
32.4%
20.6%
11.8% 2.5%
30.0%
31.3%
29.1%
3.1%
21.9%
41.2%
8.3% 1.1%
20.0%
30.0%
20.4%
23.近所づきあい
9.0% 2.8%
48.9%
21.地域の安全性(防災・防犯など)
24.まちの人の雰囲気
14.5% 3.6%
57.6%
24.4%
20.自然環境
39.8%
52.4%
47.0%
19.7%
12.7%
9.4% 3.1%
11.4% 2.1%
17.1% 3.5%
20.1%
39.3%
25.8%
9.8%
49.3%
39.0%
21.6%
28.5%
6.6%
10.1% 3.1%
62.4%
25.4%
15.スポーツ施設 7.3%
14.4%
16.0% 4.9%
63.9%
23.6%
11.7% 3.0%
21.1%
49.7%
9.学童保育所 7.3% 16.3%
10.小児科などの医療施設
14.0%
16.8% 4.2%
26.7%
26.7%
9.4% 3.8%
18.1%
21.2%
22.2%
20.2%
13.9% 3.5%
22.9%
19.1%
22.9%
5.日常生活での買い物の便
8.保育施設(就学前)
28.1%
28.9%
転入者 転居後
60%
80%
100%
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-25 神戸市への転入者による生活環境に対する満足度(転居前/転居後)
-106-
表3-10 転居前および転居における満足度【転入者】
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
2.住宅費の負担
3.住宅の全体的な満足度
4.通勤、通学の便
5.日常生活での買い物の便
6.交通の便
7.利便性全体への評価
8.保育施設(就学前)
9.学童保育所
10.小児科などの医療施設
11.子どもの遊び場、公園
12.教育環境
13.自治体の子育て支援サービス
14.子育て環境への全体的な満足度
15.スポーツ施設
16.教養、文化施設
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
19.騒音、振動などの環境汚染
20.自然環境
21.地域の安全性(防災・防犯など)
22.住環境全般への満足度
23.近所づきあい
24.まちの人の雰囲気
25.地域活動(自治会、子供会など)
26.地域の人間関係の親密性
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
29.地域のイメージの良好性
30.全体としての満足度
神戸市外
424人
59.0%
332人
46.2%
420人
58.4%
372人
51.7%
409人
56.9%
332人
46.2%
371人
51.6%
212人
29.5%
129人
17.9%
216人
30.0%
245人
34.1%
206人
28.7%
160人
22.3%
190人
26.4%
195人
27.1%
203人
28.2%
267人
37.1%
235人
32.7%
381人
53.0%
408人
56.7%
357人
49.7%
380人
52.9%
280人
38.9%
328人
45.6%
198人
27.5%
228人
31.7%
297人
41.3%
230人
32.0%
305人
42.4%
417人
58.0%
→
転居後(神戸市内)
422人
58.7%
252人
35.0%
394人
54.8%
425人
59.1%
405人
56.3%
441人
61.3%
418人
58.1%
131人
18.2%
93人
12.9%
187人
26.0%
218人
30.3%
179人
24.9%
106人
14.7%
146人
20.3%
153人
21.3%
152人
21.1%
291人
40.5%
220人
30.6%
262人
36.4%
285人
39.6%
240人
33.4%
278人
38.7%
166人
23.1%
253人
35.2%
128人
17.8%
139人
19.3%
328人
45.6%
285人
39.6%
310人
43.1%
377人
52.4%
差
0.3%↓
11.2%↓
3.6%↓
7.4%↑
0.6%↓
15.1%↑
6.5%↑
11.3%↓
5.0%↓
4.0%↓
3.8%↓
3.8%↓
7.6%↓
6.1%↓
5.8%↓
7.1%↓
3.4%↑
2.1%↓
16.6%↓
17.1%↓
16.3%↓
14.2%↓
15.8%↓
10.3%↓
9.7%↓
12.4%↓
4.3%↑
7.6%↑
0.7%↑
5.6%↓
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
-107-
(神戸市からの転出者)
下の「図3-26 神戸市からの転出者による生活環境に対する満足度(転居前/転居後)」
は、神戸市から市外に転出した人が、30 項目について転居前(神戸市)と転居後について
評価したものである。そして、「表3-11
転居前および転居における満足度【転出者】」
では、転居前(神戸市)と転出した後の地域について、項目ごとの満足度の変化を見たも
のである。
この図3-26 と表3-11 から、転出後に評価があがったものとしては、
「住宅費の負担」
(9.6%↑)、
「住宅の広さ、部屋数、間取り」
(8.1%↑)、
「住宅の全体手的な満足度」
(5.4%
↑)など住宅関連の項目であり、転入者との結果とあわせても、
「住宅費の負担」が神戸市
では大きいと評価されていることが分かる。そのほかでは、「通勤、通学の便」(3.6%↑)
と「自治体の子育て支援サービス」(2.6%↑)について転出後にわずかに評価が上昇して
いるが、多くの項目で神戸市外に転居した後の評価が下がっている。特に、
「街の景観や街
並み」(22.7%↓)、「全体としての満足度」(21.7%↓)は神戸市から転出した後の評価が
大きく低下しており、神戸市に居住していた多くの人が街並みや景観を評価し、全体的に
満足して生活していたことがわかる。「まちの活気やにぎわい」(17.8%↓)や「地域のイ
メージの良好性」
(16.2%↓)などが「街の景観や街並み」と合わせて転居後に評価が下が
っており、神戸市のまちの雰囲気を評価していたと言える。「まちの人の雰囲気」(14.0%
↓)も転居前(神戸市)の方が評価が高い。そのほかでは、
「交通の便」
(11.1%↓)と「利
便性全体への評価」
(11.3%↓)という「利便性」についても転居前の神戸市の方が評価が
高く、
「転入者」と同様の傾向が見られた。
「教育環境」
(13.3%↓)および「ショッピング
モール・娯楽施設の充実」(13.7%↓)、「施設全般の利用しやすさ」(11.0%↓)といった
施設の充実についても、転出前の神戸市の方が、満足度が高かったという結果が見られた。
転出者 転居前
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
2.住宅費(ローン、家賃など)の負担
20.2%
3.住宅の全体的な満足度
19.0%
4.通勤、通学の便
6.交通の便
8.保育施設(就学前)
9.学童保育所
10.小児科などの医療施設
54.6%
21.2%
12.4%
66.2%
9.3% 15.1%
26.4%
13.4%
11.子どもの遊び場、公園
16.9%
12.教育環境(学校、進学、習い事)
16.5%
27.2%
15.スポーツ施設 5.9%
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
56.0%
13.9%
8.2%
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
30.全体としての満足度
0%
20%
まあまあ満足
18.8% 5.5%
ふつう
9.2% 1.9%
9.7% 2.3%
7.9% 1.7%
7.8% 0.9%
11.2% 1.8%
7.8% 1.9%
39.6%
40%
60%
7.3%1.3%
30.6%
23.3%
12.1%
30.8%
8.4%
34.1%
7.4%
5.2%
8.0%
29.2%
4.6% 0.6%
7.5%
80%
100%
0%
10.2% 2.6%
52.8%
10.7% 2.6%
72.2%
7.2% 1.7%
64.6%
14.9% 3.3%
50.5%
27.4%
10.9%
44.6%
36.4%
40%
2.5%
2.8%
17.2%
53.4%
23.1%
20%
12.6%
47.0%
25.3%
2.3%
10.4% 2.2%
65.0%
26.4%
4.2% 16.1%
7.1%1.6%
13.2%
44.9%
3.8% 15.1%
7.7%
14.7% 3.9%
43.8%
5.5% 16.6%
非常に不満
19.3% 4.2%
34.0%
30.2%
17.2%
9.8%
5.4%
19.6%
35.7%
25.8%
15.0%
やや不満
9.9%
24.2%
44.3%
23.1%
7.6%
5.2%
14.3% 4.2%
44.3%
48.8%
16.9%
非常に満足
53.2%
35.5%
32.1%
19.6%
7.7% 1.9%
5.2% 17.3%
68.8%
33.0%
13.1%
29.地域のイメージの良好性
7.2% 1.9%
64.3%
22.3%
13.3% 4.1%
63.8%
34.8%
21.0%
11.1% 3.4%
68.1%
20.1% 4.3%
42.6%
26.地域の人間関係の親密性 5.6% 17.6%
3.8%
16.2% 3.3%
46.8%
60.2%
52.2%
57.4%
25.地域活動(自治会、子供会など) 5.6% 16.9%
9.6% 2.2%
10.3% 3.2%
53.9%
4.8% 18.7%
40.2%
34.1%
7.8% 1.5%
14.5% 3.4%
39.0%
22.4%
5.7% 17.1%
20.7%
34.9%
13.7%
7.9% 2.5%
10.6% 2.4%
33.1%
31.2%
29.5%
4.9%
17.1% 4.5%
30.6%
26.8%
10.5% 3.3%
61.7%
20.4%
5.5% 2.0%
10.1%
13.4% 4.8%
69.2%
25.4%
8.3%
19.9%
30.0%
23.3%
9.3%
15.1% 5.0%
17.4% 5.8%
15.2% 3.3%
44.9%
29.9%
17.8%
22.住環境全般への満足度
29.3%
29.0%
16.7%
13.0%
51.4%
23.9%
12.2%
20.自然環境
23.近所づきあい
63.8%
19.6%
21.地域の安全性(防災・防犯など)
24.まちの人の雰囲気
70.3%
20.1%
19.騒音、振動などの環境汚染
11.0% 2.7%
50.3%
19.9%
16.教養、文化施設 7.3%
5.3% 13.7%
42.2%
25.7%
13.自治体の子育て支援サービス 6.1% 13.2%
14.子育て環境への全体的な満足度 7.0%
5.2% 19.3%
7.7% 1.7%
8.2% 1.1%
19.5%
28.1%
36.6%
15.3%
9.2% 2.6%
50.9%
20.1%
32.1%
22.5%
11.0% 3.6%
22.7%
22.1%
31.1%
26.8%
24.6%
15.8% 5.7%
17.1%
25.8%
36.1%
26.7%
8.0%
2.6%
7.5% 2.0%
28.1%
44.7%
17.7%
15.1% 3.7%
18.5%
26.8%
35.5%
7.利便性全体への評価
17.8%
21.0%
27.2%
35.9%
12.5% 3.6%
26.9%
38.0%
16.0%
36.6%
24.1%
20.7%
11.2% 3.2%
18.1%
42.4%
25.1%
17.4% 2.4%
44.3%
15.8%
26.0%
5.日常生活での買い物の便
転出者 転居後
16.8% 3.4%
20.9%
33.5%
25.4%
60%
3.2%
9.4% 2.2%
80%
100%
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-26 神戸市からの転出者による生活環境に対する満足度(転居前/転居後)
-108-
表3-11 転居前および転居における満足度【転出者】
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
2.住宅費の負担
3.住宅の全体的な満足度
4.通勤、通学の便
5.日常生活での買い物の便
6.交通の便
7.利便性全体への評価
8.保育施設(就学前)
9.学童保育所
10.小児科などの医療施設
11.子どもの遊び場、公園
12.教育環境
13.自治体の子育て支援サービス
14.子育て環境への全体的な満足度
15.スポーツ施設
16.教養、文化施設
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
19.騒音、振動などの環境汚染
20.自然環境
21.地域の安全性(防災・防犯など)
22.住環境全般への満足度
23.近所づきあい
24.まちの人の雰囲気
25.地域活動(自治会、子供会など)
26.地域の人間関係の親密性
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
29.地域のイメージの良好性
30.全体としての満足度
神戸市内
413人
58.3%
242人
34.2%
396人
55.9%
370人
52.3%
440人
62.1%
430人
60.7%
440人
62.1%
179人
25.3%
126人
17.8%
217人
30.6%
245人
34.6%
228人
32.2%
101人
14.3%
142人
20.1%
169人
23.9%
206人
29.1%
337人
47.6%
283人
40.0%
304人
42.9%
342人
48.3%
297人
41.9%
340人
48.0%
212人
29.9%
332人
46.9%
149人
21.0%
158人
22.3%
388人
54.8%
321人
45.3%
359人
50.7%
459人
64.8%
→
転居後(神戸市外)
470人
66.4%
310人
43.8%
434人
61.3%
396人
55.9%
394人
55.6%
351人
49.6%
360人
50.8%
128人
18.1%
97人
13.7%
175人
24.7%
186人
26.3%
134人
18.9%
120人
16.9%
138人
19.5%
152人
21.5%
146人
20.6%
240人
33.9%
205人
29.0%
283人
40.0%
328人
46.3%
281人
39.7%
294人
41.5%
152人
21.5%
233人
32.9%
123人
17.4%
136人
19.2%
227人
32.1%
195人
27.5%
244人
34.5%
305人
43.1%
差
8.1%↑
9.6%↑
5.4%↑
3.6%↑
6.5%↓
11.1%↓
11.3%↓
7.2%↓
4.1%↓
5.9%↓
8.3%↓
13.3%↓
2.6%↑
0.6%↓
2.4%↓
8.5%↓
13.7%↓
11.0%↓
2.9%↓
2.0%↓
2.2%↓
6.5%↓
8.4%↓
14.0%↓
3.6%↓
3.1%↓
22.7%↓
17.8%↓
16.2%↓
21.7%↓
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
-109-
(市内移動者)
下の「図3-27 神戸市内における移動者による生活環境に対する満足度(転居前/転居
後)」は、市内で区間移動した人が 30 項目について転居前と転居後について評価したもの
である。「表3-12
転居前および転居における満足度【転出者】」では、市内において移
動した人が、転居前と転居後でそれぞれの項目でどれくらいの変化があったのかについて
見たものである。
この表3-12 と図3-27 から、市内での区間移動では、総じて転居後に評価が上昇傾向
にあることが分かり、
「全体としての満足度」
(12.7%↑)も満足度が上がっている。特に、
「住宅の全体的な満足度」
(23.4%↑)、
「住宅の広さ、部屋数、間取り」
(20.4%↑)、など
(「住宅費の負担」以外は)住宅について転居後の評価が高く、そのほかには、「地域のイ
メージの良好性」
(8.9%↑)、
「利便性全体への評価」
(8.7%↑)、
「通勤、通学の便」
(7.5%
↑)、
「子育て環境への全体的な満足度」
(7.5%↑)などにおいて満足度が高くなっている。
前述したように「市内移動者」については「地域を限定して探した理由」についても、
「利
便性」とともに「住宅の質」や「子育てがしやすそう」な環境を重視していたことと同様
の傾向が見られる。
市内移動者 転居前
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
17.4%
2.住宅費(ローン、家賃など)の負担
3.住宅の全体的な満足度
33.6%
20.9%
13.1%
4.通勤、通学の便
36.0%
31.6%
29.2%
5.日常生活での買い物の便
28.2%
6.交通の便
27.8%
7.利便性全体への評価
25.1%
16.3%
28.2%
21.5%
25.1%
9.9%
9.5%
12.教育環境(学校、進学、習い事)
8.9%
20.5%
18.6%
5.9%
25.5%
32.0%
21.7%
15.5% 5.3%
18.2%
16.7% 5.9%
17.6% 1.1%
6.9%
9.9% 1.5%
64.3%
13.6% 2.9%
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
11.2%
8.0%
19.騒音、振動などの環境汚染
23.3%
20.自然環境
18.2%
9.9%
22.住環境全般への満足度
10.1%
24.5%
40.8%
10.4%
26.3%
29.地域のイメージの良好性
13.1%
9.6%
12.0%
30.全体としての満足度 7.7%
0%
13.1% 3.6%
9.1% 2.2%
70.8%
26.地域の人間関係の親密性 3.1% 15.4%
27.街の景観や街並み
12.6% 4.8%
46.6%
25.地域活動(自治会、子供会など) 3.4% 14.4%
28.まちの活気やにぎわい
13.4% 5.4%
60.5%
13.3% 5.6%
62.7%
29.9%
49.1%
23.7%
47.4%
37.5%
20%
13.4% 3.6%
40.0%
22.6%
9.5% 1.5%
43.8%
40%
60%
80%
100%
19.4%
30.7%
35.0%
7.4%
12.1%
4.3% 14.2%
8.0% 1.9%
71.6%
14.6% 4.0%
61.9%
12.5%
32.0%
43.6%
26.8%
54.2%
35.3%
10.6%
44.2%
47.2%
20%
40%
2.4%
10.9% 1.8%
51.3%
3.7% 15.9%
非常に不満
6.8%
8.6% 2.7%
44.2%
59.8%
28.6%
やや不満
14.9% 4.5%
45.2%
21.3%
ふつう
13.4% 3.0%
36.6%
28.3%
まあまあ満足
5.3%
7.8%
18.5%
32.7%
非常に満足
7.2%
17.8% 3.7%
53.1%
27.7%
9.5%
21.7%
34.9%
19.0%
16.4%
0%
18.1%
55.0%
58.9%
7.1%
9.2%
7.1% 3.2%
11.8% 2.1%
58.3%
14.3%
11.7% 5.1%
10.1% 1.4%
75.0%
21.7%
2.7%
13.3%
57.5%
25.0%
13.9%
7.4%
14.6% 4.2%
46.4%
3.4% 12.9%
14.5% 4.2%
14.0% 2.5%
51.0%
3.4% 16.3%
4.4%
15.8% 3.2%
63.1%
25.4%
6.4%
14.1% 2.9%
22.6%
26.6%
3.6% 11.1%
2.8%
14.5% 5.0%
56.1%
23.3%
5.6%
7.7%
7.2%
19.3%
10.9%
16.1% 5.7%
18.2%
39.7%
30.4%
9.4%
23.1%
35.5%
25.1%
4.7%
17.5% 4.6%
29.1%
23.近所づきあい 6.6% 15.6%
24.まちの人の雰囲気
24.2%
51.1%
23.1%
7.2%
20.4%
31.8%
18.8%
16.9%
21.地域の安全性(防災・防犯など)
21.7%
55.7%
39.4%
5.7% 14.7%
74.6%
29.0%
20.9%
12.5% 3.3%
13.自治体の子育て支援サービス 2.9% 11.0%
16.教養、文化施設 4.4% 14.8%
30.2%
5.6%
11.8% 3.9%
50.6%
6.8% 3.5%
21.8%
22.8%
14.子育て環境への全体的な満足度 3.6% 15.7%
15.スポーツ施設 5.0% 15.4%
46.2%
33.4%
15.4% 3.9%
56.8%
20.1% 2.9%
24.3%
15.8% 4.6%
47.2%
8.8% 1.5%
18.2%
42.2%
21.8%
20.1% 3.2%
53.2%
22.9%
44.9%
21.5%
6.8%
8.5%
17.5%
69.5%
18.3%
13.3%
17.9% 3.9%
57.7%
9.学童保育所 3.7% 11.0%
11.子どもの遊び場、公園
22.2%
30.1%
4.3%
22.9%
17.3%
24.0%
8.保育施設(就学前) 5.7% 17.2%
10.小児科などの医療施設
19.9%
26.7%
18.0% 5.9%
22.5%
33.4%
21.1%
市内移動者 転居後
34.5%
60%
80%
8.6%
3.3%
8.0%
3.6%
8.0%
3.3%
5.6% 2.1%
100%
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-27 神戸市内における移動者による生活環境に対する満足度(転居前/転居後)
-110-
表3-12 転居前および転居における満足度【市内移動者】
1.住宅の広さ、部屋数、間取り
2.住宅費の負担
3.住宅の全体的な満足度
4.通勤、通学の便
5.日常生活での買い物の便
6.交通の便
7.利便性全体への評価
8.保育施設(就学前)
9.学童保育所
10.小児科などの医療施設
11.子どもの遊び場、公園
12.教育環境
13.自治体の子育て支援サービス
14.子育て環境への全体的な満足度
15.スポーツ施設
16.教養、文化施設
17.ショッピングモール・娯楽施設の充実
18.施設全般の利用しやすさ
19.騒音、振動などの環境汚染
20.自然環境
21.地域の安全性(防災・防犯など)
22.住環境全般への満足度
23.近所づきあい
24.まちの人の雰囲気
25.地域活動(自治会、子供会など)
26.地域の人間関係の親密性
27.街の景観や街並み
28.まちの活気やにぎわい
29.地域のイメージの良好性
30.全体としての満足度
神戸市内
173人
49.9%
121人
34.9%
150人
43.2%
169人
48.7%
192人
55.3%
177人
51.0%
175人
50.4%
64人
18.4%
40人
11.5%
80人
23.1%
92人
26.5%
77人
22.2%
38人
11.0%
54人
15.6%
65人
18.7%
61人
17.6%
114人
32.9%
87人
25.1%
135人
38.9%
143人
41.2%
117人
33.7%
136人
39.2%
74人
21.3%
123人
35.4%
57人
16.4%
60人
17.3%
144人
41.5%
107人
30.8%
119人
34.3%
152人
43.8%
→
転居後(神戸市内)
244人
70.3%
118人
34.0%
231人
66.6%
195人
56.2%
196人
56.5%
202人
58.2%
205人
59.1%
71人
20.5%
57人
16.4%
87人
25.1%
110人
31.7%
89人
25.6%
41人
11.8%
80人
23.1%
63人
18.2%
52人
15.0%
118人
34.0%
83人
23.9%
141人
40.6%
158人
45.5%
119人
34.3%
150人
43.2%
87人
25.1%
122人
35.2%
60人
17.3%
64人
18.4%
150人
43.2%
115人
33.1%
150人
43.2%
196人
56.5%
差
20.4%↑
0.9%↓
23.4%↑
7.5%↑
1.2%↑
7.2%↑
8.7%↑
2.1%↑
4.9%↑
2.0%↑
5.2%↑
3.4%↑
0.8%↑
7.5%↑
0.5%↓
2.6%↓
1.1%↑
1.2%↓
1.7%↑
4.3%↑
0.6%↑
4.0%↑
3.8%↑
0.2%↓
0.9%↑
1.1%↑
1.7%↑
2.3%↑
8.9%↑
12.7%↑
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
-111-
6)アンケート調査から見る「住宅や生活環境」への評価:居住地(前住地/現住地)別の評価
本節では、
「住宅や生活環境」への評価について主な項目を取り出して居住地別に見ること
で、それぞれの地域においてどの項目では満足度が高く、どの項目については満足度が低い
のかについて分析を行う。とりあげる地域は、市内の各区(須磨区については、本区エリア
と北須磨エリアを区分している)、および他自治体として明石市、西宮市、芦屋市、大阪市、
東京都を比較した。
「前住地」では、転居前の評価とのクロス集計、
「現住地」では転居後の評価とのクロス集
計を行っている。すなわち、
「前住地」では、転居前に居住していた地域についての評価、
「現
住地」については、転居後に現在居住している地域に対する現在の評価について集計してい
る。
【住宅費(ローン、家賃など)の負担】
住宅費については、神戸市内で見ると、東灘区、灘区、中央区、兵庫区などで、満足度
が低く、不満(「やや不満」または「非常に不満」)が高くなっている。現住地で見ると、
西区が最も満足度が高く、「非常に満足」または「まあまあ満足」の合計が 47.9%、つづ
いて明石市(42.0%)、大阪市(41.5%)、須磨(北須磨)区(41.1%)となっている。長
田区は、前住地が長田区であった場合は満足度が 34.1%であるのに対し、現住地(長田区
への転入者)の場合は 17.8%と非常に低い満足度となっている。以前から居住した人に比
べて、転入者は新しくて比較的住宅費の高い住宅に転入していることが考えられる。西宮
市にも同様の傾向が見られる。
不満度(「やや不満」または「非常に不満」の合計)が最も高い地域は東京都(35.5%)
で、不満度が低い地域は、須磨(北須磨)区(12.5%)、垂水区(12.9%)、北区(16.1%)
などであった。
(以下、満足度=「非常に満足」+「まあまあ満足」、不満度=「やや不満」+「非常に不
満」を指す。
)
-112-
前住地 住宅費(ローン、家賃など)の負担
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1.2%
24.1%
39.5%
16.7%
18.5%
5.5%
22.7%
39.1%
21.8%
10.9%
3.7%
25.7%
36.8%
16.2%
17.6%
8.4%
25.3%
32.5%
10.8%
22.9%
8.5% 0.9%
48.7%
12.8%
29.1%
12.2%
22.0%
31.7%
7.3%
26.8%
17.9%
46.4%
16.1%
19.6%
13.2%
57.9%
18.4%
10.5%
15.1% 0.8%
42.1%
19.0%
23.0%
14.0% 2.5%
45.5%
15.7%
22.3%
12.1% 3.0%
36.4%
27.3%
21.2%
2.9%
17.1%
22.9%
20.0%
37.1%
11.1%
44.4%
44.4%
8.6%
20.0%
34.3%
22.9%
14.3%
8.9%
17.8%
28.9%
11.1%
33.3%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 住宅費(ローン、家賃など)の負担
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
13.3%
19.9%
8.5%
19.7%
10.6%
21.2%
11.9%
26.2%
19.4%
18.3%
6.7% 11.1%
13.4%
23.9%
16.1%
25.0%
16.7%
22.7%
19.8%
28.1%
19.4%
22.6%
14.3%
19.0%
11.8% 5.9%
19.5%
22.0%
10.8%
19.4%
非常に満足
まあまあ満足
50%
60%
70%
37.6%
43.6%
37.6%
32.1%
46.2%
53.3%
38.8%
46.4%
47.7%
28.1%
38.7%
47.6%
52.9%
29.3%
34.4%
ふつう
やや不満
80%
90%
100%
24.3%
5.0%
27.4%
0.9%
28.8%
1.8%
26.2%
3.6%
11.8% 4.3%
20.0%
8.9%
17.9%
6.0%
10.7% 1.8%
12.1% 0.8%
21.9%
2.1%
16.1%
3.2%
19.0%
11.8%
17.6%
2.4%
26.8%
7.5%
28.0%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-28 住宅費(ローン、家賃など)の負担(前住地/現住地)
-113-
【住宅の全体的な満足度】
住宅の全体的な満足度については、最も満足度が高い地域は、現住地では明石市の 71.9%
であり、転入者の満足度は高い。次いで、西区が 67.0%である。前住地では、明石市はさ
ほど高くなく、芦屋市、北区、西区に居住していた人の満足度が高かったと言える。
前住地 住宅の全体的な満足度
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
11.4% 4.8%
5.4%
22.3%
1.4%
18.1%
26.1%
4.7%
16.3%
25.6%
13.7% 2.4%
25.0%
32.3%
9.8%
19.5%
19.5%
31.7%
16.1% 1.8%
35.7%
32.1%
12.5%
45.0%
42.5%
10.8% 6.9%
33.1%
33.1%
16.2%
8.5%0.8%
28.7%
38.0%
24.0%
5.9%
20.6%
32.4%
23.5%
17.6%
5.7%
17.1%
42.9%
17.1%
11.1%
22.2%
33.3%
33.3%
5.7%
28.6%
20.0%
28.6%
17.1%
6.7%2.2%
40.0%
28.9%
22.2%
32.5%
34.9%
38.4%
39.1%
36.0%
16.3%
10.7%
15.2%
17.4%
26.6%
19.5%
14.3%
非常に満足
まあまあ満足
23.2%
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 住宅の全体的な満足度
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
19.1%
15.4%
11.8%
11.6%
22.3%
17.8%
14.9%
30.4%
16.9%
14.4%
15.6%
14.3%
17.6%
17.1%
10.9%
非常に満足
30%
40%
50%
41.0%
43.6%
50.9%
41.9%
30.9%
26.7%
41.8%
33.9%
46.9%
52.6%
56.3%
52.4%
35.3%
41.5%
35.9%
まあまあ満足
ふつう
60%
70%
80%
90%
100%
8.2% 3.8%
27.9%
7.7% 3.4%
29.9%
8.9% 2.4%
26.0%
17.4%
29.1%
12.8% 6.4%
27.7%
13.3% 4.4%
37.8%
7.5% 3.0%
32.8%
8.9% 1.8%
25.0%
12.3% 1.5%
22.3%
9.3% 2.1%
21.6%
3.1% 3.1%
21.9%
4.8%
28.6%
11.8%
35.3%
7.3%
34.1%
1.1%
19.6%
32.6%
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-29 住宅の全体的な満足度(前住地/現住地)
-114-
【利便性全体への評価】
利便性全体への評価については、現住地で見ると大阪市の満足度が最も高く 85.3%、次
いで中央区(79.3%)、西宮市(73.8%)、兵庫区(72.9%)、東灘区(72.3%)となってい
る。満足度の低い地域は、北区(34.0%)、西区(32.9%)、垂水区(33.3%)などのニュ
ータウンを含む地域である。前住地においても全体的には同様の傾向が見られる。
前住地 利便性全体への評価
0%
10%
20%
30%
東灘
33.1%
灘
39.8%
中央
41.3%
兵庫
47.1%
北 3.2%
20.6%
長田
45.2%
須磨(本区エリア)
22.8%
須磨(北須磨) 2.4%
39.0%
垂水
33.1%
11.3%
西
28.2%
8.4%
明石市
27.3%
9.1%
西宮市
28.6%
芦屋市
22.2%
大阪市
40.0%
東京都
37.8%
非常に満足
40%
50%
60%
70%
40.4%
38.1%
44.9%
28.2%
31.7%
26.2%
38.6%
34.1%
35.3%
31.3%
45.5%
37.1%
44.4%
34.3%
33.3%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
80%
90%
100%
11.4% 1.2%
13.9%
4.4%
17.7%
11.6% 2.2%
4.7% 1.2%
18.8%
12.7%
31.7%
2.4% 4.8%
21.4%
8.8% 1.8%
28.1%
4.9%
19.5%
2.3%
18.0%
6.1%
26.0%
18.2%
8.6%
25.7%
11.1%
11.1%
11.1%
2.9% 2.9%
20.0%
8.9%
20.0%
非常に不満
現住地 利便性全体への評価
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
東灘
45.1%
27.2%
灘
42.7%
25.6%
中央
45.6%
33.7%
兵庫
52.9%
20.0%
北
31.9%
22.3%
11.7%
長田
33.3%
33.3%
須磨(本区エリア)
49.2%
13.8%
須磨(北須磨)
36.4%
21.8%
垂水 5.3%
44.7%
28.0%
西
35.1%
24.7%
8.2%
明石市
37.5%
9.4%
西宮市
54.8%
19.0%
芦屋市
35.3%
17.6%
大阪市
46.3%
東京都
48.9%
19.6%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
70%
80%
90%
100%
7.6% 2.7%
8.5% 1.7%
16.6% 4.1%
7.1%
20.0%
6.4%
27.7%
6.7% 2.2%
24.4%
13.8% 1.5%
21.5%
12.7% 1.8%
27.3%
4.5%
17.4%
4.1%
27.8%
6.3% 6.3%
40.6%
9.5%
16.7%
5.9%
11.8%
29.4%
7.3% 4.9% 2.4%
39.0%
4.3%
27.2%
17.4%
21.4%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-30 利便性全体への評価(前住地/現住地)
-115-
【子育て環境への全体的な満足度】
子育て環境については、顕著に満足度の高い地域は見られず、全体的に「ふつう」の回
答が多い。回答者に子育てをしていない人も多く含まれていることから、明確に答えにく
かった人もいると思われる。
そのなかで、比較的満足度が高かった地域は、現住地では須磨(北須磨)区の 41.3%、
西宮市の 40.6%などで、転入者の評価が高いことがわかる。前住地では、東京都(42.9%)、
西区(40.9%)、東灘区(31.7%)に居住していた人の満足度が比較的高かった。中央区、
長田区、大阪市などは、現住地としての評価も、前住地としての評価も、共通してあまり
高くなかった。
前住地 子育て環境への全体的な満足度
0%
10%
20%
30%
40%
東灘 4.9%
26.8%
灘 7.1%
15.5%
中央 3.9% 8.7%
兵庫 6.7%
15.0%
北 4.6%
18.5%
長田 6.9% 6.9%
須磨(本区エリア) 2.3% 9.1%
須磨(北須磨) 2.9%
17.6%
垂水 1.9%
22.2%
西
14.5%
26.4%
明石市
23.3%
西宮市
11.5%
15.4%
芦屋市
28.6%
大阪市
11.5%
東京都
14.3%
28.6%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
65.0%
66.7%
68.0%
63.3%
65.7%
55.2%
20.7%
75.0%
67.6%
65.7%
50.0%
73.3%
73.1%
57.1%
90%
3.3%
8.3% 2.4%
15.5%
3.9%
13.3% 1.7%
8.3% 2.8%
10.3%
9.1% 4.5%
11.8%
10.2%
8.2% 0.9%
3.3%
14.3%
15.4%
2.9%
73.1%
54.3%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
100%
非常に不満
現住地 子育て環境への全体的な満足度
0%
10%
20%
30%
40%
東灘 2.9%
29.2%
灘 6.1%
23.5%
中央 3.2% 10.4%
兵庫 1.4% 15.9%
北 2.5%
25.9%
長田
13.2%
須磨(本区エリア) 5.1%
28.8%
須磨(北須磨) 2.2%
39.1%
垂水 3.5%
19.5%
西 7.1%
28.6%
明石市 5.0%
20.0%
西宮市 3.1%
37.5%
芦屋市
23.1%
大阪市 3.4% 6.9%
東京都 4.2%
21.1%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
54.7%
64.3%
50.0%
61.1%
51.2%
75.0%
56.3%
76.9%
75.9%
やや不満
13.6% 1.7%
8.7%
15.0% 0.9%
13.1%
3.1%
6.9% 6.9%
5.6%
69.0%
ふつう
100%
9.5% 3.6%
6.1%
9.6% 1.6%
8.7%
14.8%
3.7%
75.2%
73.9%
53.1%
86.8%
50.8%
まあまあ満足
90%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-31 子育て環境への全体的な満足度(前住地/現住地)
-116-
【スポーツ、教養・文化、娯楽、商業等の施設全般の利用のしやすさ】
施設全般の利用のしやすさについて、現住地では西宮市の満足度が 53.6%、中央区が
52.4%、それに続いて大阪市(47.5%)、須磨(北須磨)区(41.5%)と評価が高かった。
前住区では、中央区ではやはり 53.4%とほぼ同程度の高い満足度を示していたが、そのほ
かでは東京都(59.1%)、灘区(54.2%)に居住していた人が高い満足度を示していた。住
み慣れれば施設を使いこなして利用しやすくなるが、転入して一年未満の人では十分に利
用しやすいと評価されていないことも考えられる。
北区は、現住地の人からも、転居前に居住していた人(前住地)からも評価が低い結果
となった。
前住地 施設全般の利用しやすさ
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
東灘 7.5%
34.0%
49.1%
6.9% 2.5%
灘
16.8%
37.4%
40.2%
5.6%
中央
21.1%
32.3%
42.1%
3.8% 0.8%
兵庫
21.5%
27.8%
38.0%
12.7%
北 5.9%
15.1%
51.3%
17.6%
10.1%
長田 5.0%
37.5%
50.0%
5.0% 2.5%
須磨(本区エリア) 5.8%
17.3%
48.1%
19.2%
9.6%
須磨(北須磨) 5.0%
27.5%
55.0%
12.5%
垂水 6.2%
23.1%
51.5%
16.9%
2.3%
西
8.4%
13.7%
48.1%
26.7%
3.1%
明石市
21.2%
54.5%
21.2%
3.0%
西宮市
29.4%
20.6%
38.2%
5.9% 5.9%
芦屋市
22.2%
66.7%
11.1%
大阪市
15.2%
24.2%
42.4%
15.2% 3.0%
東京都
31.8%
27.3%
38.6%
2.3%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 施設全般の利用しやすさ
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
東灘 5.6%
12.4% 3.4%
56.5%
22.0%
灘 7.1%
12.5% 1.8%
49.1%
29.5%
中央
7.3%
40.2%
32.9%
19.5%
兵庫 4.8%
10.8% 2.4%
56.6%
25.3%
北 2.1% 12.8%
8.5%
30.9%
45.7%
長田 4.8%
7.1% 2.4%
69.0%
16.7%
須磨(本区エリア) 1.5% 16.7%
4.5%
18.2%
59.1%
須磨(北須磨)
11.3% 3.8%
43.4%
30.2%
11.3%
垂水0.8%
1.6%
21.1%
57.0%
19.5%
西 1.1%
7.4%
25.5%
47.9%
18.1%
明石市
7.4%
25.9%
44.4%
22.2%
西宮市
9.8% 2.4%
34.1%
34.1%
19.5%
芦屋市
6.3%
68.8%
12.5%
12.5%
大阪市
12.5% 2.5%
37.5%
30.0%
17.5%
東京都
3.4%
15.7%
38.2%
32.6%
10.1%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-32 施設全般の利用のしやすさ(前住地/現住地)
-117-
【地域の安全性(防災・防犯など)
】
地域の安全性は、子どもを育てていく居住環境としてもっとも重視されている項目(図
3-42)である。現住地では、芦屋市(75.0%)、西宮市(54.8%)、灘区(50.4%)など
で満足度が比較的高かった。前住地を見ると、芦屋市(66.6%)、東灘区(58.5%)、北区
(55.6%)、西宮市(51.4%)などで満足度が比較的高かった。
現住地で、満足度が低く不満度が高い地域は、長田区(満足度 6.8%)が目立っている
が、前住地では、長田区(満足度 14.8%)よりも兵庫区(満足度 11.7%)や大阪市(満足
度 10.0%)の方が評価は低くなっている。
前住地 地域の安全性(防災・防犯など)
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
17.5%
41.0%
31.9%
5.4% 4.2%
14.3%
28.6%
40.2%
14.3%
2.7%
5.1%
19.9%
44.1%
25.0%
5.9%
3.5% 8.2%
37.6%
32.9%
17.6%
16.9%
38.7%
34.7%
7.3% 2.4%
7.1%
16.7%
33.3%
19.0%
23.8%
5.4%
28.6%
42.9%
19.6%
3.6%
4.9%
24.4%
46.3%
24.4%
6.7%
29.9%
47.8%
14.9% 0.7%
23.3%
24.8%
36.4%
12.4% 3.1%
12.1%
12.1%
51.5%
21.2%
3.0%
25.7%
25.7%
40.0%
2.9% 5.7%
33.3%
33.3%
22.2%
11.1%
2.9%
17.1%
25.7%
42.9%
11.4%
17.8%
28.9%
40.0%
11.1% 2.2%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 地域の安全性(防災・防犯など)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
東灘
41.5%
33.3%
9.3%
灘
34.2%
37.6%
12.8%
中央 3.5% 14.7%
50.6%
兵庫 1.2%
47.7%
18.6%
北
45.7%
30.9%
10.6%
長田 6.8%
31.8%
50.0%
須磨(本区エリア) 4.5%
50.0%
27.3%
須磨(北須磨)
46.4%
25.0%
12.5%
垂水
46.9%
31.5%
7.7%
西
43.8%
30.2%
8.3%
明石市
43.8%
34.4%
9.4%
西宮市
31.0%
38.1%
16.7%
芦屋市
37.5%
37.5%
大阪市
51.2%
24.4%
東京都 6.6%
52.7%
23.1%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
90%
100%
11.5% 4.4%
12.0% 3.4%
2.9%
28.2%
3.5%
29.1%
8.5% 4.3%
11.4%
15.2% 3.0%
12.5% 3.6%
12.3% 1.5%
13.5% 4.2%
12.5%
14.3%
25.0%
7.3%
17.1%
1.1%
16.5%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-33 地域の安全性(防災・防犯など)(前住地/現住地)
-118-
【住環境全般への満足度】
住環境全般への満足度は、現住地では芦屋市(75.0%)、西宮市(64.3%)、北区(53.2%)、
灘区(50.0%)、須磨(北須磨)区(48.2%)などの地域で比較的高い評価であった。前住
地では、芦屋市(75.0%)、西宮市(54.8%)、灘区(50.4%)などで比較的高い満足度が
あった。
満足度の低い地域は、現住地では長田区(9.1%)が最も低い評価であるが、前住地では
長田区(26.2%)よりも、兵庫区(19.8%)や大阪市(20.0%)の方が評価が低い結果と
なっている。
前住地 住環境全般への満足度
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
60%
70%
80%
90%
100%
3.0% 2.4%
12.5% 1.8%
2.9%
19.9%
41.9%
7.1%
18.8%
50.6%
7.3%
28.2%
45.2%
16.7%
16.7%
40.5%
7.1% 5.4%
48.2%
4.9%
53.7%
9.0% 1.5%
50.0%
9.3% 2.3%
31.8%
34.9%
3.0%
15.2%
51.5%
5.7% 8.6%
31.4%
28.6%
11.1%
22.2%
22.2%
5.7%
31.4%
42.9%
6.7% 2.2%
35.6%
31.1%
34.9%
40.4%
19.3%
32.1%
12.5%
27.2%
8.1%
18.8%
4.7%
19.4%
21.4%
4.8%
33.9%
5.4%
39.0%
2.4%
30.6%
9.0%
21.7%
21.2%
9.1%
25.7%
44.4%
20.0%
24.4%
非常に満足
50%
41.1%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 住環境全般への満足度
0%
10%
20%
30%
40%
東灘
13.7%
33.9%
灘
12.1%
37.9%
中央 4.7%
26.5%
兵庫 2.3%
25.6%
北
11.7%
41.5%
長田
9.1%
須磨(本区エリア)
7.7%
36.9%
須磨(北須磨)
14.3%
33.9%
垂水
11.5%
30.5%
西
8.3%
31.3%
明石市 6.3%
37.5%
西宮市
21.4%
芦屋市
25.0%
大阪市 7.3%
19.5%
東京都 4.4%
27.5%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
90%
100%
38.3%
42.2%
11.5% 2.7%
6.9% 0.9%
48.8%
16.5%
3.5%
53.5%
16.3% 2.3%
36.2%
8.5% 2.1%
65.9%
22.7%
2.3%
49.2%
4.6% 1.5%
41.1%
8.9% 1.8%
49.6%
7.6% 0.8%
47.9%
10.4% 2.1%
46.9%
6.3% 3.1%
42.9%
28.6%
7.1%
50.0%
25.0%
51.2%
22.0%
54.9%
11.0% 2.2%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-34 住環境全般への満足度(前住地/現住地)
-119-
【近所づきあい】
近所づきあいについて、現住地で満足度が高い地域は、北区(38.9%)、須磨(北須磨)
区(36.4%)などであり、前住地では東京都(45.5%)、北区(40.8%)、東灘区(32.3%)、
西宮市(32.3%)などであった。北区は現住地と前住地ともに満足度が高いことが分かる。
全体的に、前住地よりも現住地で近所づきあいの満足度の評価は低くなっており、転入
してつきあいが浅いことが推測される。特に大阪市(7.3%)
、中央区(8.9%)、長田区(9.3%)、
兵庫区(11.6%)などで低い結果となっている。
前住地 近所づきあい
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
60%
70%
59.8%
26.2%
6.1%
10.8%
9.9%
17.6%
2.2%
12.2%
7.3%
29.6%
11.2%
19.5%
4.9%
16.4%
9.1%
22.0%
4.9%
17.4%
11.4%
22.9%
8.4%
21.2%
6.1%
23.5%
8.8%
22.2%
24.2%
3.0%
27.3%
18.2%
非常に満足
50%
65.8%
62.5%
58.5%
52.8%
48.8%
56.4%
56.1%
56.1%
58.8%
54.5%
55.9%
66.7%
51.5%
43.2%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
80%
90%
100%
7.3% 0.6%
8.1% 5.4%
14.7% 2.9%
4.9%
17.1%
4.8% 1.6%
12.2%
14.6%
12.7% 5.5%
17.1%
1.5%
13.6%
6.1% 3.8%
3.0%
15.2%
8.8% 2.9%
11.1%
21.2%
6.8% 4.5%
非常に不満
現住地 近所づきあい
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
1.1%
28.7%
7.8%
17.2%
0.6% 8.3%
2.3% 9.3%
10.5%
28.4%
9.3%
9.1%
19.7%
7.3%
29.1%
6.9%
22.1%
4.2%
21.9%
6.3%
15.6%
9.5%
9.5%
6.7%
26.7%
2.4% 4.9%
2.2%
17.6%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
54.1%
62.1%
76.7%
47.4%
81.4%
54.5%
52.7%
56.5%
53.1%
65.6%
81.0%
60.0%
75.6%
61.5%
ふつう
やや不満
100%
14.9%
1.1%
9.5% 3.4%
17.9%
6.0%
10.5% 1.2%
11.6% 2.1%
9.3%
10.6% 6.1%
9.1% 1.8%
10.7% 3.8%
17.7%
3.1%
6.3% 6.3%
67.3%
まあまあ満足
90%
12.2%
15.4%
6.7%
4.9%
3.3%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-35 近所づきあい(前住地/現住地)
-120-
【まちの人の雰囲気】
まちの人の雰囲気について、現住地では芦屋市(73.3%)、東灘区(47.5%)、北区(45.2%)
などの地域で満足度が比較的高く、前住地においても同様の傾向が見られた。
前住地 まちの人の雰囲気
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
東灘
17.6%
44.2%
36.4%
1.8%
灘
17.0%
31.3%
43.8%
6.3% 1.8%
中央 4.4%
28.1%
53.3%
11.1% 3.0%
兵庫 6.0%
19.3%
44.6%
22.9%
7.2%
北
19.2%
35.2%
40.8%
4.0% 0.8%
長田 7.3%
19.5%
36.6%
22.0%
14.6%
須磨(本区エリア)
12.5%
19.6%
51.8%
16.1%
須磨(北須磨) 2.4%
24.4%
63.4%
9.8%
垂水
15.0%
29.3%
46.6%
9.0%
西
12.2%
35.9%
36.6%
11.5% 3.8%
明石市 6.1%
21.2%
51.5%
18.2%
3.0%
西宮市
11.4%
37.1%
45.7%
2.9% 2.9%
芦屋市
22.2%
44.4%
22.2%
11.1%
大阪市
27.3%
48.5%
21.2%
3.0%
東京都
29.5%
18.2%
45.5%
6.8%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 まちの人の雰囲気
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
7.7%
39.8%
12.8%
29.1%
5.3%
17.0%
22.1%
10.5%
34.7%
2.3% 14.0%
9.1%
31.8%
14.5%
29.1%
8.4%
26.7%
8.3%
27.1%
3.1%
34.4%
11.9%
28.6%
20.0%
2.4%
24.4%
4.4%
26.4%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
42.5%
47.0%
57.9%
61.6%
48.4%
60.5%
48.5%
45.5%
55.7%
45.8%
46.9%
57.1%
53.3%
56.1%
50.5%
まあまあ満足
ふつう
やや不満
90%
100%
7.7% 2.2%
9.4% 1.7%
16.4%
3.5%
12.8% 3.5%
5.3% 1.1%
20.9%
2.3%
10.6%
10.9%
6.9% 2.3%
16.7%
2.1%
9.4% 6.3%
2.4%
26.7%
14.6% 2.4%
14.3% 4.4%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-36 まちの人の雰囲気(前住地/現住地)
-121-
【地域の人間関係の親密性】
地域の人間関係の親密性は、全体的に前住地よりも現住地について満足度が下がってい
る地域が多い。現住地において満足度が比較的高かった地域は、北区(34.0%)、芦屋市
(33.4%)、須磨(北須磨)区(31.5%)などである。東京都は、前住地においては満足度
が高かった(34.1%)が、現住地では低い評価(15.9%)となっている。
前住地 地域の人間関係の親密性
0%
10%
20%
30%
40%
東灘 3.8%
19.5%
灘 7.4%
13.0%
中央 1.5% 9.0%
兵庫 3.9% 10.5%
北
28.9%
8.3%
長田 2.4%
17.1%
須磨(本区エリア) 1.8% 12.5%
須磨(北須磨) 2.4% 14.6%
垂水 6.1%
15.3%
西 6.2%
20.8%
明石市 3.0% 12.1%
西宮市
11.8%
8.8%
芦屋市
11.1%
大阪市 3.0%
18.2%
東京都
22.7%
11.4%
非常に満足
50%
60%
70%
80%
67.2%
61.8%
52.9%
58.5%
67.9%
61.0%
67.9%
60.8%
69.7%
64.7%
77.8%
42.4%
47.7%
ふつう
やや不満
100%
8.2% 1.3%
11.1% 2.8%
4.5%
17.9%
6.6%
17.1%
9.1% 0.8%
9.8%
12.2%
14.3% 3.6%
22.0%
9.9% 0.8%
7.7% 4.6%
9.1% 6.1%
11.8% 2.9%
11.1%
36.4%
2.3%
15.9%
67.3%
65.7%
まあまあ満足
90%
非常に不満
現住地 地域の人間関係の親密性
0%
10%
20%
東灘 1.7%
19.7%
灘 6.2%
16.8%
中央 0.6% 6.2%
兵庫
11.8%
北
25.5%
8.5%
長田
9.3%
須磨(本区エリア) 4.6%
21.5%
須磨(北須磨)
11.1%
20.4%
垂水 4.7% 13.2%
西 3.1%
20.8%
明石市
19.4%
西宮市 5.0% 12.5%
芦屋市 6.7%
26.7%
大阪市 2.4% 9.8%
東京都 2.3% 13.6%
非常に満足
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
15.2%
1.7%
9.7% 2.7%
22.2%
4.9%
16.5%
1.2%
13.8% 3.2%
9.3% 2.3%
7.7% 4.6%
11.1%
14.0% 3.9%
18.8%
3.1%
9.7% 3.2%
5.0%
61.8%
64.6%
66.0%
70.6%
48.9%
79.1%
61.5%
57.4%
64.3%
54.2%
67.7%
77.5%
66.7%
68.3%
62.5%
まあまあ満足
ふつう
17.1%
18.2%
やや不満
2.4%
3.4%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-37 地域の人間関係の親密性(前住地/現住地)
-122-
【街の景観や街並み】
街の景観や街並みについては、現住地において芦屋市(86.3%)、須磨(本区)区(57.6%)、
東灘区(57.2%)、西宮市(57.1%)などで満足度が高く、前住地においては芦屋市(77.7%)、
東灘区(69.7%)、灘区(59.8%)、北区(59.4%)などの地域で満足度が高かった。
大阪市、長田区、兵庫区などは現住地においても、前住地においても評価が比較的低い
傾向が見られた。
前住地 街の景観や街並み
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
東灘
24.2%
4.8% 1.2%
31.5%
38.2%
灘
24.1%
35.7%
28.6%
8.0% 3.6%
中央
41.2%
7.4% 0.7%
14.7%
36.0%
兵庫
4.8%
13.1%
19.0%
47.6%
15.5%
北
35.0%
4.1% 1.6%
18.7%
40.7%
長田 2.4%
29.3%
7.3%
24.4%
36.6%
須磨(本区エリア)
19.6%
50.0%
14.3% 1.8%
14.3%
須磨(北須磨) 4.9%
4.9%
43.9%
46.3%
垂水
29.3%
45.9%
8.3% 0.8%
15.8%
西
13.0% 2.3%
32.8%
32.8%
19.1%
明石市 6.1%
12.1% 3.0%
18.2%
60.6%
西宮市
11.4%
20.0%
48.6%
20.0%
芦屋市
44.4%
33.3%
22.2%
大阪市 2.9%
5.9%
41.2%
26.5%
23.5%
東京都
9.1% 4.5%
25.0%
36.4%
25.0%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 街の景観や街並み
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
東灘
16.5%
40.7%
灘
13.7%
38.5%
中央
13.6%
32.0%
兵庫 4.7%
25.9%
44.7%
北
8.5%
28.7%
長田 2.3%
20.9%
58.1%
須磨(本区エリア)
15.2%
42.4%
須磨(北須磨)
9.1%
38.2%
垂水
15.3%
29.0%
西
17.7%
25.0%
明石市
28.1%
43.8%
西宮市
21.4%
35.7%
芦屋市
43.8%
大阪市
19.5%
53.7%
東京都 5.5%
18.7%
46.2%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
70%
80%
90%
100%
37.4%
37.6%
42.0%
4.4% 1.1%
8.5% 1.7%
8.9% 3.6%
23.5%
1.2%
54.3%
6.4% 2.1%
18.6%
37.9%
4.5%
43.6%
9.1%
48.1%
6.9% 0.8%
49.0%
6.3% 2.1%
25.0%
3.1%
35.7%
7.1%
37.5%
18.8%
22.0%
4.9%
28.6%
1.1%
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-38 街の景観や街並み(前住地/現住地)
-123-
【まちの活気やにぎわい】
まちの活気やにぎわいについては、現住地では芦屋市(53.4%)、中央区(52.1%)、灘
区(51.3%)、西宮市(50.0%)などの地域で評価が高く、北区、西区、明石市などの地域
で比較的評価が低かった。前住地を見ると、灘区(59.4%)、東京都(59.1%)、東灘区(56.4%)、
中央区(50.3%)などの地域で評価が高かった。
神戸市内で見ると中央区、灘区、東灘区という東部の地域に活気やにぎわいがあるとと
らえられていることがうかがえる。
前住地 まちの活気やにぎわい
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
6.7% 1.2%
35.8%
40.0%
16.4%
3.6% 0.9%
36.0%
35.1%
24.3%
5.9% 1.5%
42.2%
33.3%
17.0%
13.3% 3.6%
43.4%
27.7%
12.0%
4.9%
16.3%
51.2%
24.4%
3.3%
9.8% 7.3%
43.9%
34.1%
4.9%
12.3% 5.3%
54.4%
17.5%
10.5%
9.8%
68.3%
19.5%
2.4%
10.5% 0.8%
54.1%
24.8%
9.8%
13.0% 4.6%
48.1%
26.7%
7.6%
6.1%
81.8%
12.1%
8.6%
45.7%
34.3%
11.4%
11.1%
44.4%
33.3%
11.1%
2.9%
20.6%
38.2%
35.3%
2.9%
40.9%
20.5%
38.6%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 まちの活気やにぎわい
0%
10%
20%
30%
40%
東灘
10.5%
37.0%
灘
13.7%
37.6%
中央
14.8%
37.3%
兵庫 2.4%
34.1%
北 4.3%
18.1%
長田 4.7%
27.9%
須磨(本区エリア)
10.4%
23.9%
須磨(北須磨)
12.7%
21.8%
垂水 6.9%
19.8%
西 1.0%
20.8%
明石市
21.9%
西宮市
11.9%
38.1%
芦屋市 6.7%
46.7%
大阪市
12.2%
26.8%
東京都 3.3%
25.3%
非常に満足
まあまあ満足
50%
60%
70%
80%
44.2%
45.3%
41.4%
49.4%
51.1%
53.5%
64.2%
54.5%
60.3%
64.6%
56.3%
47.6%
40.0%
51.2%
60.4%
ふつう
やや不満
90%
100%
6.1% 2.2%
2.6% 0.9%
5.3% 1.2%
14.1%
20.2%
6.4%
14.0%
1.5%
10.9%
11.5% 1.5%
10.4% 3.1%
15.6%
6.3%
2.4%
6.7%
7.3% 2.4%
9.9% 1.1%
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-39 まちの活気やにぎわい(前住地/現住地)
-124-
【地域のイメージの良好性】
地域のイメージの良好性については、現住地では芦屋市(75.0%)、東灘区(61.0%)、
西宮市(59.6%)、灘区(54.7%)、須磨(本区)区(50.7%)などの地域で評価が高く、
長田区(19.1%)、兵庫区(23.5%)などの地域で評価が低い結果となった。
前住地では、東灘区(69.6%)、灘区(61.6%)、西宮市(57.1%)、芦屋市(55.5%)と
なっており、現住地と類似の評価の傾向が見られた。
前住地 地域のイメージの良好性
0%
東灘
灘
中央
兵庫
北
長田
須磨(本区エリア)
須磨(北須磨)
垂水
西
明石市
西宮市
芦屋市
大阪市
東京都
10%
20%
30%
40%
50%
60%
28.7%
40.9%
25.9%
35.7%
17.0%
26.7%
8.3%
11.9%
47.6%
17.9%
33.3%
2.4%
22.0%
29.3%
14.3%
17.9%
4.9%
26.8%
13.6%
28.8%
14.5%
29.8%
3.0%
18.2%
60.6%
20.0%
37.1%
33.3%
22.2%
2.9%
23.5%
41.2%
38.6%
15.9%
非常に満足
まあまあ満足
ふつう
70%
80%
28.7%
32.1%
44.4%
20.2%
39.0%
26.8%
57.1%
61.0%
53.0%
42.7%
40.0%
44.4%
26.5%
40.9%
やや不満
90%
100%
1.8%
3.6% 2.7%
11.1% 0.7%
11.9%
8.9% 0.8%
19.5%
8.9% 1.8%
7.3%
4.5%
9.9% 3.1%
18.2%
2.9%
5.9%
2.3% 2.3%
非常に不満
現住地 地域のイメージの良好性
0%
10%
20%
30%
40%
東灘
15.9%
45.1%
灘
14.5%
40.2%
中央
12.4%
32.4%
兵庫
23.5%
北 7.4%
28.7%
長田 2.4%
16.7%
須磨(本区エリア)
11.9%
38.8%
須磨(北須磨)
12.7%
32.7%
垂水
10.8%
29.2%
西 6.3%
28.1%
明石市 3.1%
31.3%
西宮市
16.7%
42.9%
芦屋市
37.5%
大阪市 7.3%
24.4%
東京都
9.9%
20.9%
非常に満足
まあまあ満足
50%
60%
70%
80%
90%
100%
32.4%
41.9%
4.4% 2.2%
2.6% 0.9%
46.5%
6.5% 2.4%
60.0%
11.8% 4.7%
52.1%
9.6% 2.1%
57.1%
16.7%
7.1%
43.3%
6.0%
41.8%
12.7%
53.1%
6.9%
54.2%
9.4% 2.1%
43.8%
15.6%
6.3%
35.7%
2.4% 2.4%
37.5%
25.0%
58.5%
9.8%
53.8%
13.2% 2.2%
ふつう
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-40 地域のイメージの良好性(前住地/現住地)
-125-
【全体としての満足度】
全体としての満足度が高い地域は、現住地では西宮市(69.1%)、灘区(67.2%)、芦屋
市(64.7%)
、東灘区(64.1%)、中央区(60.8%)、須磨(本区)区(60.7%)などであっ
た。前住地で見ると、芦屋市(77.8%)、東灘区(75.5%)、灘区(71.4%)、西宮市(62.9%)
などの地域で満足度が高く、現住地と同様の傾向といえる。
長田区は、現住地においては満足度が最も低く 28.9%であるが、前住地(=以前に住ん
でいた人)での満足度は 52.4%と特に低いわけではなく、前住地で比べると明石市(31.2%)、
大阪市(41.2%)、須磨(本区)区(47.4%)、垂水区(50.8%)などの地域よりも満足度
は高い。
東京都についても、前住地の満足度は 68.8%と高い評価が見られるのに対し、現住地で
は 38.5%と低い評価となっている。
以上、現住地(転居して現在居住している地域)に対する評価、そして前住地(転居す
る前に居住していた地域)に対する評価をそれぞれ併記しながら、生活環境に関する主な
項目について、満足度の評価を見てきた。前住地と現住地において、同様の傾向が見られ
る項目、あるいは同様の傾向が見られる地域がある一方で、評価がかなり異なってくる項
目や地域も認められた。たとえば、長田区では現住地において、複数の項目で低い満足度
を示しているが、前住地ではそれほど低い満足度ではない項目が見られた。こうした結果
の原因として考えられることは、1つには住み慣れればその地域に詳しくなり良さも分か
り、居住者にとって住み心地がよくなってくる可能性があること、言い換えれば地域のこ
とを転入者によく知られていないために、
(周辺の環境や人間関係から疎外されている、ま
たは実態とは一致していないマイナスのイメージを払しょくできないでいるなど)満足度
を得られにくくなっている場合が挙げられる。または、2つ目としては、同一区内の中で
も転出超過傾向にある地域と転入超過傾向にある地域があり、転出者の評価と転入者の評
価が分かれていることも考えられる。それぞれの地域の特徴を踏まえて、今後詳細に見て
いく必要があると思われる。
前住地 全体としての満足度
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
東灘
3.0%
21.6%
56.3%
19.2%
灘
4.5%
24.1%
50.0%
21.4%
中央
4.4%
39.7%
44.9%
11.0%
兵庫
12.9% 4.7%
32.9%
32.9%
16.5%
北
6.5%
35.8%
43.9%
13.8%
長田
9.5% 4.8%
33.3%
42.9%
9.5%
須磨(本区エリア)
3.5% 3.5%
45.6%
35.1%
12.3%
須磨(北須磨) 4.9%
4.9%
36.6%
53.7%
垂水
6.7%
42.5%
41.8%
9.0%
西
7.7% 0.8%
36.2%
42.3%
13.1%
明石市 3.1%
12.5% 3.1%
53.1%
28.1%
西宮市
11.4%
25.7%
48.6%
14.3%
芦屋市
11.1%
11.1%
55.6%
22.2%
大阪市 2.9%
17.6%
41.2%
38.2%
東京都
4.4%
26.7%
44.4%
24.4%
非常に満足
まあまあ満足
-126-
ふつう
やや不満
非常に不満
現住地 全体としての満足度
0%
10%
東灘
12.5%
灘
15.5%
中央
12.3%
兵庫 2.4%
北 5.3%
長田 6.7%
須磨(本区エリア)
10.4%
須磨(北須磨)
10.7%
垂水 6.1%
西 7.3%
明石市
9.4%
西宮市
14.3%
芦屋市
11.8%
大阪市 7.3%
東京都 7.7%
20%
30%
40%
50%
60%
51.6%
51.7%
48.5%
40.2%
36.5%
37.5%
54.8%
52.9%
36.6%
30.8%
ふつう
90%
100%
5.4% 1.6%
3.4% 1.7%
5.8% 1.8%
48.2%
7.1%
37.9%
12.6% 3.2%
57.8%
13.3%
35.8%
1.5% 1.5%
35.7%
5.4% 1.8%
44.7%
8.3% 0.8%
44.8%
10.4% 1.0%
37.5%
15.6%
28.6%
2.4%
29.4%
5.9%
53.7%
2.4%
50.5%
9.9% 1.1%
50.7%
46.4%
まあまあ満足
80%
28.8%
27.6%
31.6%
42.4%
41.1%
22.2%
非常に満足
70%
やや不満
非常に不満
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-41 全体としての満足度(前住地/現住地)
7)アンケート調査から見る現住地における「住宅や生活環境」に対する評価
上記で見てきた生活環境に対する評価について、現住地の地域別に、評価に対する平均値
を比較して一覧する。すなわち、転居して約8ヶ月ほど生活をしている現住地に対しての評
価について、表3-13 のとおり「非常に満足」を5点、「まあまあ満足」を4点、
「ふつう」
を3点、「やや不満」を2点、「非常に不満」を1点として集計して、回答者全体の平均値と
地域別の平均値の差を比較した(両側t検定)
。
この表からは、住宅関連の項目については、東京都で最も評価が低く、神戸市内では住宅
費の負担を感じている区が多いと見られる。ただ「住宅の全体的な満足度」については、東
京都で不満が強い以外は有意な差は認められなかった。
利便性関連の項目については、東灘区、灘区、中央区、兵庫区、長田区、西宮市、大阪市、
東京都で全体的に満足度が高く、北区、垂水区、西区などのニュータウンのエリアで評価が
低いことが分かる。
子育て関連の項目については、東灘区、須磨(北須磨)区、西宮市などで評価が高く、中
央区、垂水区などで評価が低い傾向にある。
「自治体の子育て支援サービス」については、東
京都の評価が高かった。
施設関連の項目については、中央区、西宮市、大阪市、東京都において評価が高く、北区、
須磨(本区)区、西区、明石市などで評価が低い。
住環境全般については、環境汚染(に対する満足度)や自然環境などに対して北区、垂水
区で評価が高く、須磨(北須磨)区でも自然環境に対する評価が高かった。子育て環境にと
っても重要な指標である地域の安全性については、灘区、西宮市、芦屋市などで評価が高か
った。中央区、兵庫区、長田区、大阪市などでは住環境に関する項目全体で評価が低い結果
となった。
-127-
街並みやコミュニティなど地域社会に関する項目については、東灘区や灘区では、人の雰
囲気、街並み、にぎわい、イメージの良好性などで評価が高く、まちの雰囲気がよいととら
えられている。中央区は、にぎわいや活気は評価されているが、人とのつきあいなど地域コ
ミュニティに関連する項目では評価が低かった。兵庫区は、人の雰囲気、街並み、イメージ
の良好性などの項目で評価が低く、まちの雰囲気があまり評価されていない結果となった。
北区は、にぎわいについては低い評価であるが、地域コミュニティに関する項目は評価が高
かった。長田区は、人の雰囲気や景観、イメージの良好性などの項目で評価が低かった。須
磨(本区)区は、街並み、にぎわい、イメージの良好性などの項目が評価されていた。須磨
(北須磨)区では、人間関係などのコミュニティに関連する項目でやや評価が高い。垂水区
は、景観や街並みに対する評価が高い。西区は、にぎわいについて評価が低い。明石市は、
街並みやにぎわいについての評価が低かった。西宮市と芦屋市は、全体的に地域社会に対す
る評価が高かった。大阪市と東京は街並みに対して評価が低い。
全体としての満足度については、東灘区、灘区、中央区、須磨(本区)区、西宮市などで
高かった。
全体的に見ると、市東部の東灘区と灘区は似た傾向にあり、住宅費の負担が大きいこと、
利便性が高いこと、子育て環境もある程度の評価がされていること、まちの雰囲気、街並み、
地域のイメージがよいことなどが共通する特徴として挙げられる。中央区と兵庫区、長田区
は利便性が高い、住環境への評価が低い、地域コミュニティに関する評価が低いなどの点で
類似している。それに加えて中央区は、施設が充実している、まちの活気やにぎわいがある
など都心としての機能が評価されている。須磨(本区)区は、住宅への不満、施設への不満
などがあるが、交通の便はよく、街並みやにぎわい、地域のイメージに対する評価は高い。
須磨(北須磨)区は、子どもの遊び場や公園、教育環境に対する評価が高く、自然環境もよ
く、コミュニティに対する評価も高い。北区、垂水区、西区に共通する特徴は、利便性への
評価が低い、施設への満足度が低い、自然環境には恵まれているという点が挙げられる。北
区はそれに加えてコミュニティが良好であること、垂水区は子どもの医療施設、学童保育所
などに対する不満があること、西区は住宅の広さなどのつくりに対する評価が高いこと、な
どがある。隣接する西区と明石市にも共通する特徴が見られ、住宅の広さなどに対する満足
度、施設への不満、まちの活気やにぎわいへの低い評価などが見られる。明石市よりも西区
の方が、利便性に対する不満が強い。
西宮市は、総合的に評価が高い。芦屋市では、住環境、地域社会に関する項目で評価が高
い。大阪市は、利便性と施設に対する評価が高いこと、住環境に対する評価が低いことなど
が特徴として挙げられる。東京都は住宅、自然環境、街並みなどに対して評価が低いが、交
通の便などの利便性、施設の充実、自治体の子育て支援サービスについて評価が高かった。
-128-
*
3.38
*
3.50
-129-
3.43
まちの人の雰囲気
3.61
3.65
3.76
**
**
**
3.48
3.68
3.68
** p <.01, * p <.05, † p <.10
全体としての満足度
まちの活気や
にぎわい
地域のイメージの
良好性
街の景観や街並み
3.54
3.14
3.04
3.67
3.23
3.18
**
3.16
3.14
近所づきあい
地域活動(自治会、
子供会など)
地域の人間関係の
親密性
3.53
3.42
3.44
3.49
3.34
3.44
3.25
3.12
3.32
地域の安全性
(防災・防犯など)
住環境全般への
満足度
自然環境
3.28
3.14
3.05
2.98
スポーツ施設
教養、文化施設
3.24
3.03
2.89
3.18
3.30
3.18
ショッピングモー
ル・娯楽施設の充実
施設全般の利用
しやすさ
騒音、振動などの
環境汚染
3.18
*
3.33
2.99
小児科などの
医療施設
子どもの遊び場、
公園
教育環境(学校、進
学、習い事)
自治体の子育て支援
サービス
子育て環境への
全体的な満足度
*
3.06
3.45
3.14
3.12
保育施設(就学前)
3.33
3.14
3.86
利便性全体への評価
†
3.82
**
3.35
3.89
**
4.00
交通の便
学童保育所
3.79
†
3.72
3.77
日常生活での
買い物の便
*
3.60
3.08
3.80
3.63
3.12
3.71
118
184
3.64
灘
東灘
通勤、通学の便
住宅の広さ、部屋
数、間取り
住宅費(ローン、家
賃など)の負担
住宅の全体的な
満足度
n
現住所
**
**
**
**
†
3.64
3.46
3.59
3.43
2.75
2.87
3.04
2.80
3.12
†
2.88
*
2.85
2.65
3.65
3.94
3.37
3.20
3.04
3.05
3.10
3.02
3.13
3.03
3.02
4.09
4.23
3.82
4.09
3.61
3.10
*
†
†
*
**
**
*
*
3.57
173
中央
2.89
**
*
**
2.93
**
3.40
3.02
3.25
3.09
3.05
**
3.02
3.01
**
**
3.09
**
2.85
2.85
**
**
3.19
3.29
3.07
3.15
3.10
3.06
3.16
3.10
3.00
3.07
3.14
3.86
4.03
3.92
3.91
3.48
3.17
**
**
**
*
†
**
**
**
**
**
*
3.44
87
兵庫
**
**
†
**
**
**
**
**
†
*
**
**
**
*
*
3.33
3.30
2.94
3.35
3.22
3.34
3.48
3.34
3.52
3.35
3.90
3.69
2.69
2.69
2.71
2.72
3.09
2.95
3.11
3.37
3.17
3.08
3.04
3.05
2.79
3.21
3.05
3.50
3.37
3.70
96
北
†
**
†
**
*
*
†
**
**
**
**
**
**
†
**
**
**
**
3.22
2.90
3.23
3.07
2.95
2.93
2.93
3.00
2.82
2.52
2.95
2.77
3.14
3.26
3.05
3.12
3.13
3.05
3.16
3.35
3.26
3.14
3.08
3.89
3.89
3.93
3.58
3.40
2.87
3.51
47
長田
*
**
*
**
**
**
**
**
**
*
*
*
*
3.67
3.57
3.43
3.68
3.14
3.19
3.39
3.15
3.45
3.15
3.53
3.08
2.92
2.88
2.81
2.95
3.22
3.09
3.37
3.22
3.16
3.14
3.05
3.60
3.80
3.31
3.65
3.58
3.21
3.52
67
須磨(本
区エリ
ア)
*
*
*
**
*
*
*
*
†
*
3.59
3.45
3.36
3.47
3.31
3.27
3.47
3.31
3.50
3.30
3.71
3.41
3.34
3.46
3.00
3.12
3.35
3.04
3.51
3.67
3.29
3.20
3.26
3.64
3.65
3.65
3.71
3.82
3.43
3.86
57
須磨(北
須磨)
*
†
†
**
†
†
*
*
3.42
3.44
3.19
3.51
3.01
3.02
3.32
3.18
3.44
3.32
3.55
3.46
2.97
3.10
2.73
2.83
3.10
3.00
3.17
3.17
3.02
2.95
3.00
3.12
3.16
3.08
3.11
3.65
3.42
3.68
134
垂水
*
**
**
*
**
*
**
*
**
**
**
**
3.39
3.27
3.06
3.50
3.02
3.10
3.23
3.06
3.33
3.25
3.54
3.26
2.80
2.74
2.80
2.89
3.30
3.11
3.29
3.36
3.29
3.11
3.11
3.05
2.79
3.40
3.22
3.68
3.42
3.91
97
西
*
†
**
**
*
**
**
**
*
3.41
3.09
2.94
2.97
3.03
3.19
3.19
3.09
3.38
3.41
3.50
3.38
2.81
2.82
2.69
2.73
3.30
3.25
3.25
3.00
3.09
3.05
3.05
3.38
3.28
3.50
3.34
3.78
3.39
4.22
32
明石
*
*
†
†
*
†
*
†
**
3.81
3.69
3.60
3.71
3.18
3.28
3.50
3.29
3.79
3.57
3.62
3.45
3.59
3.71
3.46
3.31
3.41
3.31
3.55
3.45
3.18
3.21
3.45
3.83
4.00
3.85
3.67
3.76
3.29
3.67
42
西宮
**
*
**
*
†
†
*
**
*
**
**
**
**
*
†
*
3.08
**
3.71
4.13
3.53
4.25
3.40
3.60
3.93
3.33
4.00
4.13
3.94
3.47
3.31
3.13
3.27
3.13
3.23
3.08
3.31
3.62
3.40
2.92
3.47
3.88
3.06
*
**
†
3.71
3.59
2.88
4.00
17
芦屋
**
**
*
**
**
**
**
*
†
†
3.49
3.29
3.39
2.88
2.93
3.00
3.10
2.88
3.12
2.93
2.76
2.68
3.48
3.78
3.15
3.20
2.93
3.03
3.00
2.91
3.20
2.93
3.00
4.22
4.32
4.18
3.83
3.68
3.29
3.66
41
大阪市
**
*
†
*
**
**
*
**
†
†
**
**
**
3.34
3.23
3.20
2.99
2.93
3.02
3.12
3.00
3.21
3.18
2.97
3.05
3.30
3.28
3.23
3.14
3.24
3.36
3.27
3.21
3.34
3.15
3.06
3.84
4.02
3.61
3.78
3.36
2.98
3.19
96
東京都
**
†
**
†
**
†
**
**
**
**
**
**
3.48
3.36
3.26
3.35
3.04
3.11
3.27
3.11
3.35
3.23
3.38
3.20
3.12
3.15
2.98
2.99
3.17
3.10
3.21
3.25
3.22
3.09
3.10
3.55
3.53
3.56
3.61
3.64
3.31
3.69
1774
全体
平均
表3-13 現住地における生活環境に対する評価の平均値
*全体の平均値よりもその地域の平均値が有意に高い場合は、ピンク色で示し、低い場合は水色で示して
いる。
*色が濃いほど平均値の差が大きい
*有意確率(p値)が小さいほど平均値の差は大きいと考えられる。
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
8)アンケート調査から見る若年女性にとってのまちの魅力
若年女性にとって、子どもを育てていく居住環境として、あるいは住み続けるまちの魅力
として、重要と考えられている要素はどのようなものだろうか。引き続き、「平成 26 年
若
年女性・人口移動実態調査」の結果をもとに検討する。
「あなたが、子どもを育てていく居住環境として、
『まち』に求めるものについて、重視す
るものに3つまで○をつけてください」とたずねた質問の結果は、図3-42 の通りであった。
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-42
子育てをする居住環境として「まち」に求めるもの
図3-42 によれば、子育て環境として、
「安全性」
(68.1%)が最も重視されていることが
分かる。続いて、
「教育環境」
(60.3%)、
「病院などの医療機関」
(49.0%)、
「保育所などの託
児施設」(43.1%)などが挙げられている。
次に、
「今後、住み続ける『まち』の魅力として重視する要素は何ですか。あてはまるもの
に3つまで○をつけてください」という問いとともに、同じ選択肢で「神戸市にあてはまる
と思う魅力」と「神戸市にあてはまらないと思う魅力」を選んでもらった(図3-43)。それ
によれば、重視されている主なものとして「安全性」、「交通の利便性」、「子育て環境」、「買
い物の利便性」などが挙げられている。そして「神戸市に当てはまる魅力」としては、
「交通
の利便性」、
「買い物の利便性」などの項目は高い評価を得られているといえよう。また、
「景
観や街並み」
、
「ショッピングモール、娯楽施設の充実」、
「活気やにぎわい」などの項目では、
「住み続けるまち」の要素として顕著に重要視されているものではないが、神戸市の魅力と
してとらえられていることが分かる。しかし、
「安全性」および「子育て環境」については、
「住み続けるまち」の要素として重要視されているにもかかわらず、神戸市に当てはまるも
のと考えられていない。また、
「公園・緑地の充実」や「職場と居住地が近いこと」などにつ
いても「神戸市にあてはまる」よりも「あてはまらない」が上回っていた。
-130-
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図3-43
住み続ける「まち」の魅力として重視する要素
-131-
(3)まとめ
~転入者の増加と定住の促進のための魅力あるまちづくりに向けて~
調査分析の結果を踏まえて、今後、神戸市内が居住地として選ばれやすくなり、神戸市への
転入傾向を促進するためには、どのような点がポイントとなってくるのか。また神戸市に居住
している若年層が「働きやすく」「子育てしやすく」「住み続けたい」と思える魅力的な環境づ
くりをすすめるためには、どのような点がポイントとなってくるのかについて整理を試みた(図
3-44)。
出典:筆者作成
図3-44
神戸市への転入と定住の促進に向けて:アンケート結果から分かること
<就職と雇用について>
大きな流れとして、神戸市内の大学に通う学生は雇用先が多い大阪や東京への流出が目立っ
ている。その動きに歯止めをかけるには市内の魅力ある雇用先が十分に用意されることが最も
重要であるが、それ以外にもきめ細かい対応が求められている部分が明らかになった。
ひとつめに、市内の卒業生を神戸市内企業への就職へつなげるために、市内企業と大学生が
交流できる機会を作り、市内企業の雰囲気や魅力をダイレクトに学生に伝えていくこと、同時
に企業側は市内企業を就職先に希望する学生や女性の働き方やニーズを把握して、ワーク・ラ
イフ・バランスを重視した組織の雰囲気づくりや出産後も働きやすい先進的な職場を作り出す
工夫や努力が求められているといえる。そのためにも、各企業が出産・育児と仕事との両立が
しやすいワークスタイルを提示し、その実現を促すための行政による支援策を充実することが
必要である。また、女性が出産・育児と仕事との両立を実現するためには家族の理解・支援が
不可欠であり、子育てを含めた家事への男性の参画を高めることはもちろん、子どもの頃から
結婚観や子育て観など家族形成の意義を学べるような取り組みも必要であろう。いずれにせよ、
神戸市で育ち、学ぶ若い世代が神戸市で 10 年後、20 年後のキャリアプラン、結婚・出産・子
育てといったライフワークを含むライフデザインを描けるように産官学が一体となって取り組
んでいくことが重要である。
-132-
ふたつめに、東京都や大阪市などから来住する子育て世代層の転入を推進することも重要で
ある。若年女性の社会移動に関する意識調査では東京都や大阪市との移動の大きな理由は「仕
事の都合」によるものが大きく、しかも女性の場合、配偶者の仕事の都合や子どもの事情を優
先して移動する傾向が明らかになっている(図3-15)。また、移動前後で、若年女性の就業状
況は大きく変化(図3-12)しており、移動にともなって女性は就業継続を断念せざる得ない
ケースが多いのではないかと推察される(このことは、仕事志向の女性の結婚や出産を抑制す
ることにもなる)。したがって、再就職のための支援とともに、例えばスキルを持つ女性が自宅
や居住圏域で就業ができるような雇用の創出など、子育てと両立できる働き方を神戸市が提供
できれば、結婚・出産後も働き続けたい女性にとって、転入したい、住み続けたい魅力的なま
ちとしての優位性を高めることができる。
<バックアップのための住宅政策>
神戸市で働くことをバックアップするためにも、住みやすい住宅と住環境が求められる。神
戸市の東部のエリアは、比較的転入者が多い地域であるが、住宅費の負担が不満として挙げら
れていた。若い世代にとっては、経済的な負担は居住、結婚、出産を妨げる大きな要因となり
得るので、若い世代を対象に住宅費の負担を軽減するなどの支援策はニーズが高いと思われる。
また、一方で神戸市西部や郊外における住宅費の負担が比較的低い住宅の紹介や空き家の有
効活用などの政策も考えられる。
<(旧)ニュータウンの再評価、見直し>
先述した住宅政策と関連して、現在は、大部分の地域が人口の減少傾向にあるニュータウン
エリアを再評価、見直しする契機でもある。例えば、今回の調査では親世代との近居や同居の
ために、ニュータウンエリアに移動している若年層がある程度いることが分かった。ニュータ
ウン開発の時代に居住した親の世代との近居、同居というニーズがあると考えれば、このタイ
ミングで親世代との近居・同居を応援できるメニューが有効だと思われる。親世代との近居・
同居は、親が子育てに対するサポーターになることができる点でも重要である。また、全体的
には利便性などが重視されている傾向にあるが、一定程度は良好な自然環境や住環境を求めて
の移動が見られており、例えば北区や須磨(北須磨)区のように自然環境や住環境、人間関係
が良好な地域への住み替え支援や PR も検討の余地があるだろう。ただ、やはり交通の利便性に
ついては評価が低く、交通環境の見直しや改善が求められている。
1960 年代後半から 1970 年代にかけて入居がはじまったニュータウンのエリアにおいて高齢
化率が高い地域が多い須磨区は、昨年の日本創成会議のレポートで消滅可能性都市との指摘を
受けた。しかし、今回の意識調査では須磨(北須磨)区の生活環境の評価は決して低いもので
はなく、子どもの遊び場、教育環境など子育て環境に関する満足度は高く、自然環境にも恵ま
れ、地域の人間関係も良好な住みやすい地域として高く評価されているのが印象的であった。
例えば子育て期のファミリー世帯の暮らしやすさを高めるための施策をこのエリア限定で実施
してみるなど神戸のニュータウンエリアが持つ「生活の場」としての高い魅力度にさらに磨き
をかけるまちづくりを行っていくことがニュータウンエリアの再評価、持続可能性につながる
のではないかと思われる。
-133-
<転入者への住み心地を積極的に向上させる>
今回の意識調査において、すでに見てきたように「市内移動者」は、移動先での生活環境の
評価が概ね上昇していた。ある程度地域の事情などを知った上で、よりよい環境を求めての移
動が多いことがその要因であると推測できる。神戸市への「転入者」については、転入により
前住地より評価が相対的に下がっている項目が多く、また、神戸から転出した人による神戸市
内の区別の評価よりも低い項目もいくつかあった。それらの傾向については、概ね時間が経過
すれば、住み慣れるとともに自然に評価があがると考えられる。しかし、現時点ではある程度
の環境が地域に備わっていても、知らないことによって転入者にとっては環境が整っていない
と感じられているとも言える。神戸市に転入するタイミングで、より積極的に地域の情報を転
入者に知らせ、地域とのつながりづくり、知り合いづくりをサポートできる体制があれば、転
入者にとってもより住み心地のよい街になると思われる。
また、転入前に、居住地を選ぶ段階で、その判断材料として「利便性」や「地域の雰囲気」
が重視されており、海や山に近いという立地特性だけでなく交通利便性の高さや買い物がしや
すいといった地域の住みやすさ、地域の雰囲気の良さといった魅力を積極的に発信していくこ
とが、転入を検討している人にとっても重要であるし、神戸市内の地域が居住地として選ばれ
る可能性を高めることができるのではないかと思われる。
<地域の安全性の向上>
先に述べたような住み心地を向上させるための地域の情報の提供は、多くの人がまちを選ぶ際
に重要視している「地域の安全性」とも深くかかわっている。内閣府が 2013 年(平成 25 年)に
実施した「家族と地域における子育てに関する意識調査」においても子育てをする人にとって地
域の支えの重要性が高く認識されており、加えて地域で子育てを支えるために重要な項目として
「子どもの防犯のための声かけや登下校の見守りをする人がいること」が最も多くあげられてい
る 。防災や防犯などの点で安全性を向上させるためには、ひとつは街並みやインフラなどのハー
ド面を整備することが重要であるが、同時に、ソフト面として、コミュニティを形成して地域で
助け合える関係や顔の見える関係を日常的に構築し、地域防災力、地域防犯力を向上させること
が欠かせない。兵庫区、長田区などでは地域の安全性や住環境、街並み、およびコミュニティ関
連の項目で評価が低かったことから、ハードとソフトの両面で改善が求められているといえる。
中央区においても、近所づきあいなどコミュニティ関連の項目と地域の安全性に関する評価が低
く、都心でありながらもコミュニティを重視できるまちづくりのあり方が必要ではないだろうか。
そして、
「安全性」については、実態とは必ずしも一致しないイメージで「安全である」とか「危
険だと思う」など感じられる傾向もあることから、地域の特徴や安全な場所、危険な場所などに
ついてできるだけ正確な情報を知り、行動に結びつけることが重要である。
就学、就職、結婚、出産といったライフイベントや家族形成に応じて、若年女性が住まいや
居住地に対して求めるものは変化していくが、今後、ワーク・ライフ・バランスのより一層の
推進などによってライフスタイルに関する価値観はますます多様化していくと考えられる。そ
の結果、生活の場としての質の高さが居住地の優位性を左右する大きな要因となろう。それぞ
れの地域の特徴を踏まえ、個々人あるいはそれぞれの家族のニーズに合った暮らしやすさ、働
きやすさ、育てやすさなどを追求したまちづくり、魅力づくりが重要であると思われる。
-134-
4
神戸市の若年女性の人口動態
及び影響要因に関する分析
(1)序文
①視点
神戸市においても今後ますます本格化する人口減少にともない、新たな労働力としての女性
の就労の促進とともに、将来の人口構造を見据えた少子化対策が求められている。本章では、
図4-1に示すように、20 代、30 代の若年女性に焦点を当てて、神戸市の地域特性及び人口動
態の現状を踏まえ、人口動態に影響を与えると考えられる女性の就労や出産、保育、子ども・
子育て支援のあり方について分析する。
若年女性の現状
人口
動態
地域
特性
神戸市のエリアマネジメント
女性の就労、出産、保育、子ども・子育て支援
出典:筆者作成
図4-1
神戸市における女性の就労、出産、保育、子ども・子育て支援のあり方(視点)
②人口減少を背景とした経済・社会問題
景気回復の兆しはあるものの、景気の要となる労働需給の逼迫によって、先の将来像が描け
ぬ経済状況に直面し、人口減少という構造問題にどう向き合うかが重大な課題となっている。
人口減少により労働者が少なくなれば、経済成長力に影を落とすだけでなく、豊かさを維持す
るのも難しくなる。
内閣府がまとめた「2060 年に向けた長期の労働力人口の予測(2014 年(平成 26 年))」によ
ると、出生率が大幅に回復し、女性と高齢者の労働参加が進んだとしても、労働力人口が減る
としている。また、中長期的に人口減少問題を論じている政府の経済財政諮問会議「選択する
未来」委員会の報告書(2014 年(平成 26 年))によると出生率が 2.07 に回復し、女性および
高齢者の労働参加を仮定した楽観的なシナリオでも、2060 年(平成 72 年)には労働力人口は
1,000 万人以上減少すると推計している。
-135-
③女性のライフサイクルの変化と人口動態への影響
急激に進行する人口減少は地域の持続可能性の低下を招くことになり、新たな労働力として
の女性の雇用の促進とともに、将来の人口構造を見据えた対策が急務である。人口構造の変化
には出生と死亡に伴う自然増減と転入および転出に伴う社会増減があるが、女性の人口動態に
関しては、図4-2に示すように、女性の就労動向や女性を取り巻く制度、社会動向、家族の
あり方や地域社会の変化等に強く影響を受けている。
女性の高学歴化や男女雇用機会均等法の施行と雇用環境の変化等によって、女性の社会進出
が進み、各年齢層で女性就業率は上昇している。しかし女性の就業は所得の向上に寄与する一
方で、婚姻率の低下と単身者の急増を生み、未婚化、晩婚化及び晩産化による深刻な少子化問
題を招いている可能性が高い。
また、仕事と育児の両立が厳しい実態が出生率の低下をもたらしていることも考えられる。
さらに、内閣府「家族と地域における子育てに関する意識調査(2013 年(平成 25 年))」によ
れば、理想とする子ども数に現実の子ども数が満たない要因として、育児の心理的及び肉体的
な負担とともに、大都市圏を中心とした厳しい住宅事情と高まる教育関係費などの経済的負担
があげられている。以上を踏まえ、人口減少問題は、女性の就労、婚姻、出産、保育及び子育
てのライフサイクルを考慮して総合的に考える必要がある。
就労動向
制 度
社会動向
家族・地域動向
女性の高学歴化
男女雇用機会均等法
都心部の厳しい住宅事情
雇用環境の変化
育児休業法
保育費及び教育費の上昇
核家族化
単身者の増加
仲人システム弱体化
女性就労、婚姻、出産、子育ての選択多様化
未婚化
晩婚化
晩産化
少子化による人口減少問題
出典:筆者作成
図4-2
女性のライフサイクルの変化と人口動態への影響
-136-
④神戸市各区の若年女性のライフサイクルの特徴
表4-1は、神戸市の各区の若年女性のライフサイクルに着目し、就労、婚姻、出産に関す
るデータ及びそれぞれの変動係数を示したものである。若年女性のうち 20 歳~24 歳の女性の
就業率は 2010 年(平成 22 年)の時点で区によって 60%未満から 70%以上と幅があり、兵庫区
と長田区は高い就業率を示すものの、灘区および東灘区の就業率が低いことがわかる。婚姻に
ついては、東灘区や灘区の平均初婚年齢が高く晩婚化が進んでいる一方、未婚率は中央区、兵
庫区、長田区が高い値である。合計特殊出生率は中央区、須磨区が低い値で、垂水区が高い値
を示している。就業率、平均結婚年齢や未婚率、合計特殊出生率などの値をもとにそれぞれ変
動係数を算出したところ、データによっては各区でバラツキが大きいことがわかる。以上を踏
まえ、女性の就労、婚姻、出産、子ども・子育て支援政策を総合的に考えていくに当たっては、
地域特性という視点が重要である。
表4-1
神戸市各区の若年女性のライフサイクルの特徴
区名
女性労働
就業率(%)
20~24 歳
(2010 年)
平均初婚年齢
(歳)
(2010 年)
未婚率(%)
30~39 歳
(2010 年)
合計特殊
出生率
(2012 年)
東灘区
60.35
29.17
24.00
1.32
灘区
59.62
29.24
28.02
1.33
中央区
64.21
28.74
39.31
1.09
兵庫区
73.37
27.96
33.44
1.36
北区
67.58
28.44
23.15
1.33
長田区
71.42
28.08
31.13
1.3
須磨区
65.99
28.27
27.88
1.28
垂水区
69.27
28.13
24.18
1.42
西区
62.66
28.05
19.97
1.30
変動係数
0.073
0.017
0.214
0.069
出典:神戸市データより筆者作成
-137-
(2)若年女性の自然動態に関する分析
神戸市の若年女性の自然増減と社会増減について女性のライフサイクルを加味し、区単位で
の傾向をみていくが、まず神戸市における若年女性の自然動態に着目して、国勢調査データを
用いて、晩婚化および未婚化が出生率に与える影響を世代別に分析する。
①コーホート別自然増減の傾向分析
若年女性の結婚に関する意識や環境の変化によって生じている未婚化、晩婚化および出生率
の低下に着目し、この要因に一定の関係があるかをみていく。具体的には、図4-3に示すよ
うに、国勢調査で実施された年齢 5 歳階級別の区別のデータを用いて、若年女性のコーホート
データを作成する。Model1〔1961 年(昭和 36 年)から 1965 年(昭和 40 年)生まれの女性〕、
Model2〔1966 年(昭和 41 年)から 1970 年(昭和 45 年)生まれの女性〕、Model3〔1971 年(昭
和 46 年)から 1975 年(昭和 50 年)生まれの女性〕のコーホートデータを作成し、区単位で年
齢階級別の若年女性(20~39 歳)の出生率、30 代後半女性の未婚率、平均初婚年齢、若年女性
の就業率を Model1~3のコーホート別に算出する。
(Model1)
(Model2)
(Model3)
出典:筆者作成
図4-3
3コーホート別の年次別年齢層
②コーホート別の出生率
図4-4は、分析対象としている各コーホートの 20~39 歳の女性数と出生数で算出されるコ
ーホートごとの出生率を区別に示したものである。国勢調査データにおける0歳児数と当該年
度の 20~39 歳の若年女性人口をもとに、各時点における出生数を年齢階級別女性人口で除し、
各コーホートの若年女性の出生率とする。これをみると 1960 年代出生に比べ 1970 年代出生の
若年女性のほうが出生率は低くなっているが、区ごとにその傾向は異なり、中央区や垂水区は
低下幅が相対的に大きいが、東灘区は相対的に小さい。
-138-
出典:筆者作成
図4-4
区別コーホート別若年女性の出生率の推移
③コーホート別の 30 代後半女性の未婚率
図4-5は、国勢調査データを利用して 2000 年(平成 12 年)、2005 年(平成 17 年)、2010
年(平成 22 年)の各時点における 35~39 歳階級の女性の未婚者数を当該年齢階級の女性人口
で除し、それによって求められた未婚率をそれぞれのコーホートの未婚率を区別に示したもの
である。これをみると未婚率は全ての区で増加傾向にあり、1960 年代出生の女性に比べ、特に
1970 年代出生の女性のほうが未婚率は高い(結婚しない割合の増加)。なかでも中央区の未婚
率が高く、1970 年代出生の女性の未婚化が進んでおり、女性の生涯未婚率が低い西区において
も、未婚化が急速に進んでいることがわかる。
出典:筆者作成
図4-5
区別コーホート別 30 代後半の未婚率の推移
-139-
④コーホート別の平均初婚年齢
図4-6は、各コーホートの女性が初めて結婚した年齢を区別に示したものである。平均初
婚年齢は東灘区以外で上昇傾向にある。1960 年代出生の女性に比べ、1970 年代出生の女性の晩
婚化が進んでおり、北区、須磨区や西区などでは相対的に上昇幅が大きい一方、灘区や兵庫区
では上昇幅は小さい。
出典:筆者作成
図4-6
区別コーホート別平均初婚年齢の推移
⑤コーホート別の就業率
図4-7は、各コーホートの 20~24 歳、25~29 歳、30~34 歳、35~39 歳時点における就業
率の平均値を就業率として、区別に示したものである。若年女性の就業率は総じて増加傾向に
ある。1960 年代出生の女性に比べ 1970 年代出生の女性の就業率は上昇しており、なかでも相
対的に低い北区、須磨区、垂水区、西区の女性就業率が上昇している。
出典:筆者作成
図4-7
区別コーホート別若年女性の就業率の推移
-140-
⑥未婚率、就業率、出生率、平均初婚年齢の関係
図4-8は、各コーホート別に 30 代後半の女性の未婚率、若年女性の就業率、若年女性の出
生率、平均初婚年齢の関係を示したものである。出生率、未婚率ならびに平均初婚年齢は、1960
年代出生に比べ、1970 年代出生の女性のコーホートが、相対的に出生率が低くなり、未婚率と
平均初婚年齢が高くなる傾向がみられる。
表4-2は、未婚化、晩婚化、出生率および就業率の関係を計量分析した結果である。推定
結果から、経年的な変化があるものの、未婚化と晩婚化は出生率の低下をもたらしているが、
就業率と出生率には統計的に有意性は認められない結果が得られた。
(%)
0.70
Model 1 未婚率(左軸)
Model 1 就業率(左軸)
Model 1 出生率(左軸)
Model 1 平均初婚年齢(右軸)
Model 2 未婚率(左軸)
Model 2 就業率(左軸)
Model 2 出生率(左軸)
Model 2 平均初婚年齢(右軸)
Model 3 未婚率(左軸)
Model 3 就業率(左軸)
Model 3 出生率(左軸)
27.5
Model 3 平均初婚年齢(右軸)
(歳)
27
0.60
26.5
0.50
26
0.40
25.5
0.30
25
24.5
0.20
24
0.10
23.5
0.00
23
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
長田区
須磨区
垂水区
西区
出典:筆者作成
図4-8
未婚率、就業率、出生率および平均初婚年齢の関係
-141-
表4-2
出生率と各種データとの計量分析結果
出生率
Model2
出生率
Model3
出生率
Model4
OLS
OLS
OLS
Fixed Efffect
-0.0862
-0.0962
-0.118***
-0.0364**
(0.0545)
(0.0727)
(0.0218)
(0.0160)
-0.00904**
-0.00644*
-0.00772**
-0.00211*
-0.00317
(0.00266)
(0.00219)
(0.00105)
-0.0219
-0.0287
0.00657
-0.0215
(0.0771)
(0.128)
(0.0673)
(0.0158)
30代後半未婚率
平均初婚率
出生率
Model1
就業率
2000年度ダミー
3.32e-05
(0.000957)
2005年度ダミー
Constant
0.321***
(0.0669)
0.267**
(0.0669)
0.293***
(0.0561)
0.00163
(0.00166)
0.135***
(0.0244)
HausmanTest
chi2(5) =173.17***
Ftest
F(8, 13) =23.81***
Observations
Adj R-squared
Number of id
Standard errors in parentheses
*** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1
9
9
9
27
0.8756
0.7393
0.8978
0.9446
9
出典:筆者作成
⑦小括
婚外子の出生が少ない日本では、婚姻を含めた結婚行動の動向が出生率に大きな影響を及ぼ
していると言われているが、神戸市においても進行する未婚化,晩婚化により出生率が低下し、
少子化につながっていることがわかった。自治体によっては、未婚女性と未婚男性の出会いの
機会を作るなどの婚活支援策を実施しているところもあるが、様々な出会いの場もある神戸市
のような大都市自治体では、女性の就業率の上昇傾向も踏まえると、企業のワーク・ライフ・
バランスの推進や低廉で良好な家賃の住宅供給など結婚できる環境の整備が若者の結婚意欲を
高めるのではないかと考えられる。
-142-
(3)若年女性の社会動態に関する分析
次に、若年女性の社会動態に関する傾向をみていく。神戸市内の人口は、阪神・淡路大震災
までは増加の一途をたどり、震災直前には 152 万人にまで増え続けていたが、震災時に戦後初
めて人口が減少し 142 万人にまで落ち込んだ。だが、震災復興の進展に伴い、再び増加に転じ、
2004 年(平成 16 年)には震災直前の人口を超え、その後も増え続けていたが、2012 年(平成
24 年)に人口の減少が始まった。
1章でも述べられたが、神戸市の人口動態の特徴の一つに、若年女性の社会移動がある。市
内の 20 歳から 39 歳の若年女性の社会流出入の動向をみると、10 代後半から 20 代前半の若年
女性人口は増加するものの、20 代半ば以降に減少する傾向がみられる。要因として、10 代後半
からの大学等への進学、20 代での就職等での流出の可能性が考えられる。
実際に市内には大学、短期大学が多数存在し、2014 年(平成 26 年)時点で総合大学と短期
大学が 25 大学あり、そのうち 1/3 が女子大学で占めている(学生数は約 7 万人)。
神戸市は、ものづくり企業、ファッション産業、小売商業が集積しているとされてきた。1970
年代まで発展してきた製造業にかわって、1970 年代半ばより商業が雇用を吸収してきた。2000
年代に入りサービス業が成長し、現在は卸売・小売業、サービス業、飲食・宿泊業が伸びてき
ている。女性の就業先としても卸売・小売業の就業率は高く、次いで医療・福祉の分野で従事
している割合が高い。だが、多様な産業が発達しているにもかかわらず、年齢階級別就業率で
比較した場合に、神戸市の若年女性の就業率は全国的にみても低く推移している。つまり、市
内に集積した大学、短期大学で専門教育を受けた若者たちが、社会に出る時点で市外に流出し、
神戸市で育成された人材を市内産業が十分に生かしきれていない可能性もある。
そもそも神戸市の産業構造は、どこまで女子学生のニーズに応えられているのだろうか。女
子学生の社会流出が生じているのは市を就業先として考えていないからであろうか。それとも
希望の就業先が市内に存在しないからであろうか。
そこで、女子学生の就業の選択行動を探るために、まず統計データを分析し、神戸市の若年
女性の就業実態を考察し、次に3章の「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」結
果をもとに女子学生の就業意識と若年女性の就業状況の相関と乖離を明らかにしていく。
①若年女性の社会移動の特徴
神戸市全体の若年女性の社会移動は、図4-9に示すように大学への入学時期に流入、就職
時に流出し、子育て期にやや流入傾向にある。区単位で検証したところ、東灘区、灘区、中央
区は、就学期、就職期、子育て期の全てで流入傾向にあるものの、垂水区、北区、西区は逆に
就学期、就職期、子育て期はやや流出傾向にある。このとき就職期の女性の純移動率に区間で
差が生じている。
-143-
年齢階級別女性純移動率(2010~2015年)
神戸市
60%
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
長田区
須磨区
垂水区
西区
50%
流入
40%
30%
20%
10%
流出
0%
-10%
-20%
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)」をもとに筆者作成
図4-9
区別の若年女性の社会動態
②若年女性の就業実態
(若年女性の就業率の比較)
図4-10 からみると、女性の就業率は 35~39 歳を谷として M 字カーブを描くが、全国平
均および他の政令指定都市に比べ、神戸市の女性就業率は低く推移している。図4-11 は区
別の女性の就業率を示しているが、相対的に中央区および長田区は高い割合であるが、北区
および垂水区の就業率は低く、区間で差が生じている。なお、年齢階級別に区間での差を比
較すると、年齢が上がるほど拡大傾向にあることが示された。
(%)
0.90
全国平均
神戸市
名古屋市
京都市
大阪市
0.80
0.70
0.60
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
出典:国勢調査
図4-10 年齢階級別の女性就業率の比較(2010 年)
-144-
神戸市
北区
90%
若年女性の労働参加率(2010年)
東灘区
長田区
灘区
須磨区
中央区
垂水区
兵庫区
西区
85%
90%
80%
80%
75%
70%
70%
60%
65%
50%
60%
40%
55%
区間格差がやや生じている
【変動係数】
20~24歳 0.073
25~29歳 0.010
30~34歳 0.029
35~39歳 0.030
20~24歳
30%
25~29歳
30~34歳
35~39歳
20%
神戸市
北区
10%
東灘区
長田区
灘区
須磨区
中央区
垂水区
兵庫区
西区
0%
出典:国勢調査
図4-11
区別年齢階級別の女性就業率の比較(2010 年)
(若年女性の勤め先業種)
次に女子学生の就業ニーズと若年女性の就業実態との乖離をみていく。女子学生が卒業後
に就職すると想定し、20 歳から 29 歳の年齢階級別の傾向を探る。図4-12 からみると、神
戸市内の若年女性の勤め先の業種は第3次産業が最も多い。なかでも、小売・卸売業と医療・
福祉業の就業率が高い値を示しており、ついで飲食店・宿泊業、教育・学習支援業、サービ
ス業が続く。各区の業種ごとの就業率をみると区間で差が生じている。
(%)
30
25
20
15
20歳から29歳女性の産業別就業率
10
5
区間格差
(%)
長田区
須磨区
垂水区
公務員
北区
サービス業
兵庫区
教育・
学習支援業
中央区
飲食店・
宿泊業
灘区
医療・
福祉業
東灘区
金融 ・
保険業
15
電気・
ガス・
水道・
通信業
不動産業
小売・
卸売業
運輸・
郵便業
製造業
20
建設業
林・
水 産・
鉱業
0
25
西区
10
5
公務員
サービス業
教育・
学習支援業
飲食店・
宿泊業
医療・
福祉業
金融 ・
保険業
電気・
ガス・
水道・
通信業
不動産業
小売・
卸売業
運輸・
郵便業
製造業
建設業
林・
水産・
鉱業
0
出典:国勢調査
図4-12
区別の若年女性の勤務先業種の比較(2010 年)
-145-
③女子学生の就業ニーズ
3章の「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」結果を活用して、市内大学に通
う女子学生の就業ニーズをみていく。図4-13 に示す調査結果から、アンケート対象の女子学
生の専攻は、教育学部とその他文系が最も多く、医療・保健ならびに家政・栄養の専攻の女子
学生は併せて2割を占めている。就職先の希望の業種には、教育・学習支援業および医療・福
祉業が高く、次いで複合サービス、小売・卸売業、公務員が続いている。
女子学生の専攻学科
(%)
35
30
25
20
15
10
(%)
女子学生の希望の就職先業種
5
25
その他理系
家政・
栄養 系
医薬・
保健系
医学・
薬学・
看護等
自然科学系
理学・
農学・工学等
教育
その他文系
社会科学系
法・経済・国際関係等
人文科学系
15
文学・外国語等
0
20
10
5
0
出典:「市内大学の学生の就業や居住地に関する意識調査」をもとに筆者作成
図4-13 女子学生の専攻学科と希望の就業先業種
④小括
以上の分析から、以下のことがわかる。第1に、神戸市の女性就業率は全体的には低いが、
中央区や長田区のように高い区もあり、また年齢が高まるにつれ区間格差が拡大している。こ
のような中で女性就業率を上昇させようとすれば、就業率の低い区にターゲットの焦点を当て
るとともに、年齢を重ねても就業が継続できるような環境づくりが必要である。
第2に、神戸市の女性の就業実態と女子大学生の就業希望にはミスマッチがあると考えられ
る(図4-14 参照)。たとえば「教育・学習支援業」
「医療・福祉」等は就業希望割合が大きい
が、実際の就業割合は就業希望割合より低い。一方「飲食店・宿泊業」等は、その逆の傾向を
示している。就業希望業種と関連性の強い大学の専攻学科や神戸市内の産業構造がいずれもに
わかに変化することは難しく、ミスマッチ解消のためには、大学生と希望業種以外の神戸市内
の企業とのマッチングを強化していく方策に取り組んでいくことが現実的であろう。
-146-
女子学生の就業希望
就業実態<就業希望
教育専攻でかつ教育分
野への就業希望割合
が高い
(例)
就業実態>就業希望
飲食店・宿泊業の就業
希望割合が低い
ミスマッチ
(例)
若年女性の就業実態
(例)
就業希望者が多い割に
は、教育関連分野の就
業割合が低い
(例)
飲食店・宿泊業の就業
割合が希望割合より相
対的に高い
出典:筆者作成
図4-14 神戸市内の女子大学生の就業希望と若年女性の就業実態の関係
-147-
(4)若年女性の居住・就業状況と子育て環境及び満足度に関する分析
政府においては、2014 年(平成 26 年)9月に、まち・ひと・しごと創生本部が設置され、
人口減少社会を克服し、地方創生実現のため、若年世代の就労・結婚・子育ての希望の実現や
東京への一極集中の歯止めなどの基本方針が打ち出された。とりわけ人口の再生産力のカギを
握る若年女性の動向、定着が重要であると言われている。
阪神・淡路大震災以降増加の一途を辿ってきた人口が 2012 年(平成 24 年)から 3 年連続で
減少に転じている神戸市でも、その要因に一つとして若年女性の社会移動が考えられる。実際
に市の若年女性の人口推移をみると、大学の入学期である 10 代後半に市内に流入し、就職期を
経た 20 代後半に流出、子育て期に流入している。この推移から、若年女性の社会移動は就学、
就職、結婚、子育てといったライフイベントが誘因となっており、それぞれのライフステージ
に応じて住みよい場所を選択している可能性が高い。
若年女性の社会移動のメカニズムはどうなっているのか。若年女性の希望の就労、結婚、子
育てを実現するのに、社会移動なしには難しいのだろうか。また、若年女性がどのような判断
基準で居住先を選択しているのか。若年女性の社会移動の理由や居住選択の要因を探るには、
公的データだけでは答えが得られない。
そこで、まず神戸市の若年女性の家族構成、従業地および子育て支援サービスの実態をみて
いく。そのうえで、3章でもみてきた「若年女性の社会移動に関する意識調査」結果(以下「意
識調査」)をもとに、転居理由を明らかにするとともに、神戸市の住環境、地域環境、子育て環
境に対する若年女性の評価を分析する。
-148-
①若年女性の従業地、世帯構成および扶養者別世帯構成
図4-15 から若年女性の勤務地と居住地との関係をみると、神戸市内に常住する 20 歳から
29 歳の女性就業者の多くが、神戸市内で従業しており、勤務地と居住地が同一傾向にあること
がわかる。だが東灘区、西区ならびに北区に居住している若年女性は、就業先は兵庫県内他市
町および他県に従事している割合が比較的大きい。また、中央区の若年女性就業者の場合は、
住まいは兵庫県内他市町および他県に居住している割合が大きい。
(人)
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
長田区
常住地+自宅で従業
常住地+自宅外の自市区町村で従業・通学
常住地+県内他市区町村で従業・通学
常住地+他県で従業・通学
従業地による就業者数+県内他市区町村に常住
従業地による就業者数+他県に常住
須磨区
垂水区
西区
出典:国勢調査
図4-15 神戸市区別若年女性の常住地及び従業地(2010 年)
-149-
また、若年女性の就業を支える世帯構成の実態を分析するため、若年女性を含む世帯を国勢
調査データをもとに独自に推計した図4-16 をみると、垂水区、須磨区、東灘区に居住する世
帯には、子どものいる核家族世帯が多く、西区と北区は子どものいる核家族世帯に加え、3世
代世帯も相対的に多いことがわかる。一方、中央区は単独世帯が多い。
(%)
60
50
40
30
20
10
0
神戸市
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
核家族世帯(うち夫婦のみの世帯)
単独世帯
長田区
須磨区
垂水区
西区
核家族世帯(うち夫婦と子供から成る世帯)
3世代世帯
出典:「国勢調査」をもとに筆者が独自推計、作成
図4-16 若年女性の世帯構成(2010 年)
図4-17 には扶養者も含めた世帯別でみると、東灘区、灘区は6歳未満の子のいる核家族世
帯が多い。西区、北区は6歳未満の子のいる核家族世帯と3世代世帯も多い。兵庫区、長田区、
中央区は 65 歳以上の単独世帯が多い。須磨区と垂水区は 65 歳以上の核家族世帯および単独世
帯が多いなかで、6歳未満の核家族世帯の割合も多い。
(%)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
東灘区
灘区
中央区
兵庫区
北区
6歳未満のいる世帯 核家族世帯(うち夫婦と子供から成る世帯)
65歳以上のいる世帯 核家族世帯(うち夫婦のみの世帯)
長田区
須磨区
垂水区
西区
6歳未満のいる世帯 3世代世帯
65歳以上のいる世帯 単独世帯
出典:「国勢調査」をもとに筆者が独自推計、作成
図4-17 扶養者別世帯構成(2010 年)
-150-
②若年女性の居住状況と子育て環境及び満足度に関する分析
意識調査に基づき、若年女性が求める「まち」の魅力、特に少子化対策を検討するうえで重
要な子育て環境について考察していく。
図4-18 をみると、若年女性が今後住み続けたい「まち」の魅力として「安全性の高さ」、
「交
通の利便性」
、
「子育て環境」等が上位に位置している。一方で、
「安全性の高さ」や「子育て環
境」は「神戸市にあてはまらない魅力」と答えた回答者が多かった。また、子どもを育ててい
く居住環境として「まち」に求めるものについて尋ねたところ、「安全性」「学校の教育環境」
、
「病院などの医療機関」
「保育所などの託児施設」等があげられている。
表4-3のとおり神戸市では現在、様々な子育て支援サービスを提供しているが、若年女性
が求める「子どもを育てていく居住環境」の条件は地域の安全性など非常に幅広いことがわか
る。
今後住み続ける「まち」の魅力
安全性(防災・防犯)の高さ
交通の利便性
子育て環境
買い物の利便性
病院などの医療施設の充実
職場と居住地が近いこと
景観や街並み
公園・緑地の充実
教育環境
ショッピングモール、娯楽施設の充実
活気やにぎわい
その他
神戸市にあてはまる魅力
918
882
850
830
410
290
270
258
215
163
108
20
神戸市にあてはまらない魅力
190
928
213
766
310
115
799
220
125
452
318
3
645(件)
203
409
135
175
295
86
448
226
228
159
16
子どもを育てていく居住環境として「まち」に求めるもの
安全性が高い(防災・防犯など)
学校の教育環境がよい
病院などの医療機関がある
保育所などの託児施設がある
自然環境が豊かである
同年代の子どもがいる
公園がある
子供会などの地域活動が活発である
文化教室・施設がある
スポーツ施設がある
その他
1,192
1,056
858
755
467
345
304
74
63
26
22
子育てに求め
る要因
(件)
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-18 今後住み続ける「まち」の魅力と子育てに求める居住環境
-151-
表4-3
神戸市の子育て支援サービス
届出
あずける
妊娠・出産に関する届出
定期的に利用する教育・保育サービス
妊娠の届出・母子健康手帳の交付
保育所への入所
出生届
幼稚園への入園
国民健康保険の加入
認定こども園への入園
マタニティマーク
赤ちゃんホーム・家庭託児所
健康
神戸市小規模保育事業
お母さんの健康
保育料徴収金基準額について
妊婦健康診査
市立幼稚園保育料減免
兵庫県外における妊婦健康診査の費用助成
私立幼稚園就園奨励助成金
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の医療費助成
延長保育・特例保育
妊婦歯科健康診査
幼稚園での預かり保育
市民健診
(神戸市健康診査、特定健康診査、がん検診等)
お子さんの健康
休日保育
放課後児童クラブ(学童保育)
一時的に利用できる保育サービス
先天性代謝異常等検査
一時保育
4 か月児健康診査
病児・病後児保育
9 か月児健康診査
ファミリー・サポート・センター
1 歳 6 か月児健康診査
子育てリフレッシュステイ
3 歳児健康診査
出張託児サービス(ぴよぴよ隊)
幼児歯科健康診査
学ぶ・出かける
お子さんの予防接種
妊娠出産・子育てに役立つ教室・講座
定期予防接種
プレパパママ食育講座
任意予防接種
すくすく赤ちゃんセミナー
産前・産後の訪問指導
離乳食の作り方講座
妊産婦訪問
親子で楽しめるイベント・催し
未熟児の訪問
図書館の子ども向けイベント
新生児訪問
大学と連携した地域の子育て支援ひろば
産後ホームヘルプサービス
保育所・幼稚園の園庭開放
おかね
みんなの幼稚園(園庭開放など)
妊娠・出産したお母さんへのお金などのサポート
親子で使える施設・スペース
助産施設
神戸市地域子育て支援センター・応援プラザ
(地域子育て支援拠点)
児童館
出産育児一時金
子育て中の方へのお金などのサポート
児童手当
こべっこランド
乳幼児等医療費(こども医療費)の助成
公民館
親・子世帯の近居・同居住み替え助成
図書館
ひとり親の方へのお金などのサポート
相談する
児童扶養手当
妊娠出産・子育てに関する相談先
母子家庭等医療費助成
病院・救急
母子父子寡婦福祉貸付金
妊娠出産・子育てに関する病院と救急連絡先
自立支援教育訓練給付金
こども急病電話相談
高等職業訓練促進給付金
神戸こども初期急病センター
市バス・市営地下鉄等の無料乗車証
出展:神戸市 HP「ママフレ」を基に筆者作成
JR定期乗車券の割引制度
神戸市のひとり親家庭の方への優待制度
未熟児・障害・難病のお子さんへのお金などのサポート
未熟児の医療費助成
特別児童扶養手当
障害児福祉手当
重度障害者医療費の助成
児童発達支援センター
自立支援医療費の給付(育成医療)
小児慢性特定疾病医療費の助成
指定難病医療費(旧・特定疾患医療費)の助成
-152-
③区別の求められる子育て環境と満足度
意識調査に基づき区別に子育て環境の満足度についてみていく。図4-19 は神戸市各区の子
育ての全体の満足度を示している。また、図4-20~図4-25 では、区別に保育施設、学童保
育所、教育環境、医療施設、子どもの遊び場・公園、自治体の子育て支援サービスの満足度を
示したものである。子育て環境全体の満足度(非常に満足+満足)は、高い順に須磨区、西区、
東灘区、灘区が高く、中央区と長田区が低い。個別にみていくと、保育施設については、須磨
区が最も満足している割合が高く、次いで東灘区、灘区、西区で、中央区と長田区が低い。学
童保育所については、須磨区、灘区、西区が満足している割合が高く、中央区と長田区が低い。
教育環境は、東灘区と須磨区が満足している割合が高く、中央区と長田区が低い。医療施設は、
東灘区、灘区、長田区、西区が満足している割合が高く、兵庫区と垂水区が低い。子どもの遊
び場は、東灘区と須磨区が満足している割合が高く、中央区と兵庫区が低い。自治体の子育て
支援サービスは、灘区が満足している割合が高く、長田区が低い。
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-19
区別の子育て環境全体の満足度
-153-
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-20
区別の保育施設の満足度
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-21
区別の学童保育所の満足度
-154-
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-22
神戸市各区別の教育環境の満足度
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-23
神戸市各区別の小児科などの医療施設の満足度
-155-
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-24
神戸市各区別の子どもの遊び場の満足度
出典:「若年女性の社会移動に関する意識調査(神戸市)」をもとに筆者作成
図4-25
神戸市各区別の自治体の子育て支援サービスの満足度
-156-
④小括
意識調査の結果では、若年女性が求めるまちの魅力として「安全性の高さ」「交通の利便性」
「子育て環境」等があげられ、その中で「安全性の高さ」
「子育て環境」は「神戸市にあてはま
らない魅力」とする回答が多く、今後、これらは改善にむけて重点的に検討すべき項目であろ
う。また「子育て環境」に求めるものに関してあらためて聞いたところ、「安全性の高さ」「学
校の環境」「病院などの医療機関」「保育所」等の充実をあげた回答者が多かった。さらに区別
の「保育施設」
「学童保育所」
「教育環境」
「医療施設」
「子どもの遊び場・公園」
「自治体子育て
支援サービス」についての満足度に関する回答では、各区において大きな違いがみられた。若
年女性の定着促進のためには、このような区ごとの違いを踏まえ、若年女性の居住・就業状況
等も考慮しながら、彼女たちの満足度向上への取り組みがより一層求められる。
(5)まとめ
神戸市の若年女性に関する区別の地域特性及び人口動態に影響を与えると考えられる女性の
就労・出産・保育など子育て支援のあり方について分析を行ってきたが(図4-26)、自然動態、
社会動態の観点から改めて整理してみる。
まず、自然動態については、進行する未婚化、晩婚化が出生率の低下につながっており(図
4-4、図4-5)、神戸市のような大都市圏では、ワーク・ライフ・バランスや居住環境の向
上など「若者が希望する結婚環境の実現」が出生率向上のために重要であると考えられる。
一方、社会動態については、まず神戸市内の大学等に通う女子大学生の就業希望業種と神戸
市内の就業実態にはミスマッチが生じており、女子大学生の市外流出につながっている可能性
があるため、女子大学生と市内企業等とのマッチングを積極的に行うことで市内での就業率を
高めることが若年女性の定着のためには重要であると考えられる。また若年女性がまちに求め
る魅力として「安全性」
「交通利便性」
「買い物利便性」等、子育て環境として「安全性」
「教育
環境」
「医療環境」等が上位であることから、若年女性に居住地として選ばれるためには、若年
女性が居住地に求める住環境を着実に整備していくとともに、区ごとでの立地特性や環境の違
いを踏まえたうえで、若年女性の魅力を惹きつける地域独自のきめ細かな取り組みも重要であ
ると考えられる。
-157-
人口動態
人口
動態
自然社会
対策
社会動態
若者が希望する
結婚環境の実現
地域の実情に応じた子育て環境等の向上
国勢調査等データ
国勢調査等データ
出生率の低下
子育て環境の現状
国勢調査等データ
データ
分析
アンケートデータ
子育て環境への満足度
就業率、従業先、世帯構成な
どの各区の現状
進行する未婚化
女子大学生と企業等とのマッチング
子育て支援サービス、保育所
や医療機関等の各区の現状
国勢調査等データ
若年女性の就業実態
業種:女子大学生の就業
希望業種と神戸市内
の就業実態ではミス
マッチングがある
区によって、子育て環境への
満足度が異なる
例:保育施設、教育環境、子
供の遊び場等
アンケートデータ
進行する晩婚化
まちに求める魅力
アンケートデータ
女子大学生の専攻と就業希望
全体では、安全性、交通 利
便性、子育て環境、買い物
利便性等が上位である子育
てする環境としては安全性、
教育環境、医療環境等が上
位である
専攻:教育学部および医
療・福祉関連の在籍
者が多い
希望:教育・学習支援、医
療・福祉関連への就
業希望が多い
出典:筆者作成
図4-26 若年女性に関する人口動態等分析の全体像
-158-
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