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1.韓国の人口推移の実態と少子化の原因(PDF形式:314KB)

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1.韓国の人口推移の実態と少子化の原因(PDF形式:314KB)
第2部
調査結果
第1章
各国の少子化対策の現状
第1節
韓国
1.韓国の人口推移の実態と少子化の原因
(1)出生率の動向
図表 2-1-1 は、韓国における出生児数及び合計特殊出生率の動向を示している。現在、
統計庁の出生統計の集計結果からみると、2008 年の出生児数は 46.6 万人である。この数値
は過去最低値だった 2005 年の出生児の数の 43.5 万人よりは増加しているが、前年(2007
年)の 49.3 万人よりは減少している。
合計特殊出生率(TFR)
は 1983 年に合計出産率が人口置換水準(2.1)以下に下落して以降、
継続的に出生率の下落が続き、2.0 を下回っている。特に、2000 年代に入ってから急激に
落ち込み、1.29 を記録した 2001 年に超低出産社会に突入したと政府は認識している。2005
年はさらに 1.08 という最低値を記録した。こういった出生率の動向の中、政府は少子化に
対する危機認識の高まりを受け、04 年より本格的な対応に取り組むことになった。こうし
た政府の本格的な対応や「双春年」1、
(06 年)「黄金豚の年」2(07 年)等の理由から、2007 年
には出生率が 1.25 とやや回復も見られたが、2008 年には 1.19 と、再び減少傾向をみせて
いる。
1
双春年(06 年)とは、旧暦で 1 年に 2 回「入春」がある年を意味する。この年に結婚すると幸せになると
いう伝承があり、結婚率上昇に与したものと考えられる。
2
黄金豚の年(07 年)とは、60 甲子の中、亥が入る乙亥・丁亥・己亥・辛亥・癸亥の年で一番運気が良い
と言われている丁亥年に陰陽五行が加えられて、最も金運が良い年を意味する。この年に生まれた子供は、
一生お金に困らないとのことで、出産の意思決定に肯定的な要因となったと考えられる。
-4-
図表 2-1-1
出生児数及び合計特殊出生率の推移
120
5
出生児数(万人)
4.53
合計特殊出生率
4.5
110
100
・83年 人口置換水準(2.1)
・84年 低出産社会突入(1.76)
・89年 人口資質向上政策への転換(1.58)
・96年 人口資質向上期へ突入(政府見解)
・01年 超低出産社会突入(1.29)
・04年 「低出産・高齢化」への本格的な対応が始まる(政府見解)
・05年 低出産・高齢社会基本法を制定、低出産・高齢社会委員会を設立
3.43
90
2.82
80
4
3.5
3
2.5
2.06
1.63
1.57
1.74
70
1.56 1.57
2
1.52
1.29
1.18
60
1.08
1.25 1.19
1.5
1
50
0.5
08
20
06
07
20
20
04
05
20
20
02
03
20
20
00
01
20
20
98
99
19
96
97
19
19
94
95
19
19
19
92
93
19
19
90
91
19
19
88
89
19
19
86
87
19
19
84
85
19
19
82
83
19
19
80
81
19
78
79
19
19
76
77
19
19
19
74
75
19
19
19
19
19
19
72
73
0
70
71
40
出所:韓国政府発行「第 1 次低出産・高齢社会基本計画(補完版)」、韓国統計庁より作成
こうした出生率の水準は、OECD 加盟国平均の水準(1.6)よりも低い値であり、また先行
して少子化を経験した主要国家(アメリカ、イギリス、フランス、イタリア)平均(1.57)
に比べても類例がない現状である。図表 1-2 は、主要国家及び今回の調査研究の比較対象
国である日本、韓国、シンガポールの合計特殊出生率の推移を示したものであるが、1970
年代から 1990 年代にかけて急落した出生率が、それ以降についても低下し続けており、2000
年代以降、韓国は世界でも出生率が最も低いグループに属する国となった。
-5-
図表 2-1-2 主要国家の合計特殊出生率の推移
5
韓国
フランス
日本
イタリア
シンガポール
イギリス
アメリカ
4.5
4
3.5
3
2.5
アメリカ
フランス
イギリス
2
1.5
イタリア
日本
シンガポール
韓国
1
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
注) 各年度の数値は、該当年度ではなく、該当年度の以前 5 年間の資料を意味する。
出所:韓国統計庁資料より作成
-6-
また、妊娠可能な女性の人口が減少し続けていることも少子化傾向に影響を与えている。
主に妊娠と出産を行う年齢層である 20 歳から 34 歳の間の女性人口の変化をみると(図表
2-1-3)、1990 年代以降から妊娠可能な女性の人口の全体が下がっている傾向がわかる。こ
のように妊娠可能な女性の人口の持続的な減少が継続されると、たとえ出生率が一時的に
上昇したとしても、長期的には出生数は減少することとなる。また、出生数の減少は将来
の妊娠可能な女性人口の減少にもつながるため、現状のままでは今後も継続的な出生力の
低迷が予想される。
図表 2-1-3
妊娠可能な女性人口の変化
(万人 )
700
20 - 24歳
600
25 - 29歳
30 - 34歳
合計
500
400
300
200
100
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
(単位:人)
20 - 24歳
25 - 29歳
30 - 34歳
合計
1970
1,224,483
1,107,474
1,084,426
3,416,383
1975
1,511,359
1,235,707
1,092,752
3,839,818
1980
1,985,909
1,541,207
1,225,708
4,752,824
1985
2,059,370
2,043,223
1,525,628
5,628,221
1990
2,102,019
2,172,588
2,064,889
6,339,496
1995
2,066,438
2,059,496
2,083,888
6,209,822
2000
1,819,980
2,039,657
2,025,026
5,884,663
2005
1,746,221
1,813,515
2,036,369
5,596,105
出所:韓国統計庁資料より作成
-7-
(2)人口政策の変化
韓国政府が行った人口政策をその施行時期で区分した場合、1961 年から 1995 年の「出産
抑制政策期」
、1996 年から 2003 年の「人口資質向上期」
、2004 年からの低出産・高齢社会
対策が本格的に始まった3期に分けて考えることが出来る。現在は第3期目に当たり、韓
国政府が本格的な少子化への取組を始めて間もない状況であると言える。
以下に、各時期の特徴を取りまとめる。
《第1期 1961∼1995 出産抑制政策期》
1960 年代の韓国は、年平均 3%程度の高い人口増加率を見せたが、1 人当り GDP は 100 ド
ル未満と低水準であり、貧困の悪循環が繰り返されているという状態であった。これを解
決するために政府は、1962 年から「経済開発 5 ヵ年計画」の実施とともに、人口増加抑制政
策を行うこととなり、その一環として「家族計画事業」を推進することを決定、1980 年代中
盤まで国民運動として展開した。
国民に対する家族計画広報・教育を中心として事業を行ったため、「少なく生んで元気に
育てよう(60 年代)」
「
、息子と娘を区別せずに二人だけで産み、
ちゃんと育てよう(70 年代)」
、
「元気に育てた一人娘は十人の息子よりましである(70 年代後半∼80 年代)」とのような啓
蒙的なスローガンが打ち出された。1978 年から 1981 年の間は出生率が鈍化される傾向が現
れ、政府は「子どもを少なく育てること」をさらに定着させるため、既存の人口増加抑制政
策を強化した。
《第2期 1996∼2003 人口資質向上期》
83 年に合計特殊出生率が人口置換水準を下回って以降、90 年代に入っても依然として人
口置換水準未満の現状が続き、韓国政府はそれまでの人口増加抑制政策から人口の資質お
よび福祉増進政策へ人口政策を転換した。この時期が 1996 年から 2003 年までの人口政策
の第2期の「人口資質向上期」に当たる。
この時期政府は、社会経済発展のための低出産水準の維持、死亡率の改善、出生性比の
均衡、人工中絶の防止、男女平等および女性の権利伸長、AIDSおよび性病予防、家族
保健および福祉増進などに重点を置いて事業を推進した。しかしこの時期に実施された政
策は財政支援の不足、韓国政府の少子化問題の深刻さに対しての認識不足のため、積極的
かつ実質的な出産奨励政策や少子化問題を解決する政策を打ち立てるまでには至らなかっ
た。その結果、2003 年には出生率が 1.19 まで急激に落ち込み、少子化社会に突入した。
《第3期 2004 年以降》
出生率の低下が予想より深刻であることに気づいた政府は、2005 年に「低出産・高齢社会
基本法」の制定、大統領直属機関である「低出産・高齢社会委員会」の設置、2006 年に長期
的な人口政策である「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」いわゆる「セロマジプラン 2010」の
-8-
発表等の本格的な少子化対策に取り組むこととなった。この部分が、韓国の人口政策の第
3期にあたる3。
3
セロマジプランでは、
韓国の人口政策の時期を「1961 年から 1995 年までの第 1 期:出産抑制政策期」、「1996
年から 2003 年までの第 2 期:人口資質向上期」、「2004 年からの第 3 期」の 3 つの時期に分けているが、第
1 期と第 2 期と異なり、2004 年以降の第 3 時期にはまだ名称が付けられてない。
-9-
(3)少子化の原因
韓国政府が積極的に少子化対策に取り組むようになった現在、政府による包括的な少子
化対策の基本計画として、「第 1 次低出産・高齢社会基本計画補完版(2008.11)」が打ち出され
ている。この基本計画においては、韓国では「多様な社会経済的な環境」と「価値観の変
化による結婚年齢の上昇」
、
「出産忌避の現状」等が続いており、それらが少子化の原因と
して指摘されている。こうした結婚年齢の上昇、出産忌避の現状は、「所得及び雇用の不安
定」
、
「仕事と家庭の両立の困難」
、
「子ども養育の負担増加」等の複雑な要因が招いた結果
とされている。20 代・30 代の出生児数の推移は以下の通りであるが、2005 年を境に 30 代
が 20 代の出生数を逆転しており、以降もその差は開いている状況である。
図表 2-1-4
20 代・30 代の出産年齢別出生児の推移
(千人)
700
30代
20代
600
183
189
500
220
209
400
203
214
224
300
200
441
413
264
259
218
235
208
204
219
197
2005
2006
2007
2008
403
334
278
266
100
239
0
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
出典:韓国政府発行「第 1 次低出産・高齢社会基本計画(補完版)」
「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」において少子化の原因として挙げられている特徴に
ついて述べる。具体的には、1)若年層の雇用不安、2)仕事と家庭の両立のための社会
インフラの不足、3)養育・教育費の負担増大、4)価値観の変化の 4 つに分類されてお
り、以下にその内容について記載する。
- 10 -
1)若年層の雇用不安
第 1 に、
結婚及び出産の主な対象になる若年層の雇用不安が主な原因として挙げられる。
表 1-5 は、25 歳から 34 歳の韓国の若年層における失業率を示しているが、25∼29 歳の男
性の失業率は、
1995 年 3.6%だったものが 2000 年代初頭には 7%を超えるまでに跳ね上がり、
2000 年代中盤には 8%台になるなど高水準で推移している。
また、
25∼29 歳の女性の場合も、
1995 年 1.8%だったものが 2000 年代からは 4%台周辺を推移している。
2008 年の失業率は、
男性 25∼29 歳では 7.5%、女性 25∼29 歳では 4.3%である。
図表 2-1-5
若年層の失業率の推移
(単位:%)
男性 25 - 29歳
女性 25 - 29歳
10
男性 30 - 34歳
女性 30 - 34歳
8.3
8
6
7.3
7.1
7.5
4.8
4.4
3.6
4
2.1
1.9
1.8
1.8
2
0
4.1
4.3
4.1
3.6
4.0
3.2
3.0
2.9
0.8
1980 1985 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
出所:韓国統計庁資料より作成
一方、若年層の非正規雇用4の割合も継続的に高い水準を占めている。「低出産・高齢社会
基本計画」によると、20 代男性の非正規雇用の比率は 1995 年 32.1%から 2002 年 43.7%まで
上昇しその後 40%台を維持している。また、20 代女性の非正規雇用も 1995 年 35.2%から
2002 年 46%まで上昇し、2007 年には 30%台後半になっている。
図表 2-1-6 は、2003 年から 2008 年までの、若年層における年齢別の非正規雇用率の推移
を示したものであり、韓国統計庁の資料より作成したものである。全体的には若干減少の
傾向をみせているものの、全ての層で 25%を上回っている。最も高い値を示しているのは
20∼24 歳の非正規雇用率であり、2008 年には 41%まで上昇している。こうした若年層の不
4
韓国での「非正規雇用労働者」という概念は、初期研究からヨーロッパでの臨時的労働者(temporary
worker)またはアメリカの限時的労働者(contingent worker)及び非定型労働者(non-standard worker)、そ
の他の特殊雇用形態の労働者、日雇、時間制労働者等全ての概念が混用されているため、一言で定義する
ことは困難である。しかしながら、ここでは統計庁が発表した「経済活動人口調査」を基に主な分析を行う
ため、統計庁の定義に従い「非正規労働者」を理解している。統計庁の定義では、「非正規労働者」とは、限
時的労働者(契約社員)、時間制労働者(パート)、非定型労働者(派遣、在宅、日雇等)の 3 つを意味する。
- 11 -
安定な雇用状況は、若年層の結婚と出産の延期につながり、少子化問題を更に深化させる
大きな要因となっていると考えられる5。
図表 2-1-6 若年層の非正規雇用率の推移6
(単位:%)
50%
20-24歳
25-29歳
30-34歳
35-39歳
45%
40
41
40%
38
36
35%
31
30%
28
27
25%
26
28
25
26
25
20%
15%
2003
2004
2005
2006
2007
2008
出所:韓国統計庁資料より作成
5
若年層の非正規雇用率に関しての言及は「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」の本文から、
「図表 1-6 若年
層の非正規雇用率の推移」は、韓国統計庁の「経済活動人口追加調査」から、それぞれ別のソースに基づき
作成されたものである。大部に違いはないものの、
「20 代女性の非正規雇用率が 2007 年に 37%を上回った」
とする「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」と、統計庁公表の資料を基にした「図表 1-6」の数値には開き
がある。「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」のソースが不明であるため、ソース上での非正規雇用率の定
義に問題がある可能性があるが、本報告書ではその差異を指摘するに留めたい。
6
韓国における非正規雇用率については、全年齢層の合計では下がっている傾向を見せているにもかかわ
らず、依然として全体雇用の 30%以上という高い割合を占めている。
- 12 -
2)仕事と家庭の両立のための社会インフラの不足
次に、女性の経済活動への参加や自己実現の欲求の増加等を支援する家族・社会構造及
び認識の変化が充分でない点も、出産率低下の原因である。結婚・出産が集中的に行われ
る 25 歳∼29 歳の女性による経済活動への参加が急増しているにもかかわらず、女性就業に
対する家庭、社会、企業の認識や雇用環境の整備は十分ではなく、多くの女性たちは仕事
と結婚、または仕事と出産という二者択一の状況に置かれている。韓国統計庁の資料から
作成した、図表 2-1-7 をみると、妊娠と出産の主年齢層である 25 歳∼29 歳の女性の雇用率
の上昇が見られ、経済活動への参加率が上昇している傾向が分かる。
図表 2-1-7
性別・年齢別雇用率の推移
(単位:%)
男性 30-34歳
女性 25-29歳
115
男性 25-29歳
女性 30-34歳
100
91.2
85
90.5
89
88.8
78.2
75.5
70
61.2
55
40
88.5
72.6
71.3
64.3
65.4
51.6
52.0
70.7
66.3
53.7
48.9
47.3
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
51.7
2008
出所:韓国統計庁資料より作成
- 13 -
3)養育・教育費の増加
学歴を中心とする韓国社会の風潮は、その学歴社会の中で生き残るために、大学入試中
心の教育になっている。韓国の大学進学率を示している図表 1-8 を見ると、韓国における
大学進学率が、1990 年から 2008 年の間、33.2%から 83.8%と、記録的に急上昇している
ことがわかる。83.8%という大学進学率は日本の 53.8%(2007 年)と比較しても驚くべき高
さであるが、韓国ではさらに、
「優秀大学への進学」の競争も激化しており、こちらは数字
には表れるものではないが韓国が抱える深刻な教育問題の一つとなっている。
図表 2-1-8
大学への進学率の推移
(単位:%)
90
80
79.7
83.8
81.3 82.1 82.1 82.8
74.2
70
68.0
70.5
66.6
60.1 64.1
60
54.9
51.4
50
45.3
40
38.4
34.3
30
33.2 33.2
20
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
出所:韓国統計庁資料より作成
このような韓国の教育熱は、教育費に占める私教育費の負担が大きくなる主な理由とな
り、出産を断念させる理由にもなっていることから、少子化傾向を助長させている。「第 1
次低出産・高齢社会基本計画(補完版)」にも、こうした保育費や高い私教育費の負担は、所
得水準とは関係なく、出産を断念させる主要な原因であると記述されている。
- 14 -
図表 2-1-9 高等教育費負担の各国比較
(単位:%)
100%
23.6
6.1
12.9
11.8
8.4
12.5
14.7
29.2
80%
33.7
60%
24.3
その他私的
34.7
66.9
83.6
83.6
88.2
40%
公的
85.3
家計
52.1
53.4
20%
36.1
0%
韓国
日本
アメリカ
24.6
10.3
0
フランス
スウェーデン
イギリス
18
イタリア
0
ドイツ
出典:OECD Indicator 2008 Chapter B「How much public and private investment is there in education?」より作成
コラム①
少子化と教育費について
日本と韓国は、高等教育費を家計が負担する割合が諸外国に比べ高く、共に教
育費全体の半分以上を家計の負担で賄っている。
韓国の場合、高学歴化の進行に伴うこの重い教育費の家計負担が少子化問題を
深刻化している理由として、裕福な家庭のみならず貧困の家庭にまでその風潮に
巻き込まれていることを指摘する研究者もいる。人々は困難な経済状態にあって
も、子どもの教育費を捻出し、その教育水準を上げようというのである。そして
その背景には、勉強して名声を得る事が、自分と家族の社会的地位の向上につな
がる風潮があるためだ、と分析されている。
家計的に無理をして教育費を負担しているという状況は、日本においても共通
する部分があり、教育費の負担は少子化の原因のひとつと考えられる。
- 15 -
4)価値観の変化
結婚観・子女観といった価値観の変化も結婚年齢の上昇、出産忌避の現状の原因と考え
られる。図表 2-1-10 のように韓国の平均初婚年齢は徐々に上昇し、1990 年には男性 27.79
歳、女性が 24.78 歳であったのが、2008 年には男性 31.38 歳、女性 28.32 歳まで上昇して
おり、この 18 年の間に、初婚年齢が男性はおおよそ 3.59 年、女性は 3.52 年遅くなったこ
とが分かる。
特に 20 歳以上の未婚女性のわずか 49.2%だけが「結婚をポジティブに考えている」と答
えたという調査結果(韓国保健社会研究院、
「2005 年度全国結婚及び出産調査」
、2006)があ
り、こうした結婚に対する態度も結婚年齢の上昇、出産忌避の現状等とつながっていると
考えられる。
「第 1 次低出産・高齢社会基本計画」本文には「
『2005 年度全国結婚及び出産
調査』
(韓国保健社会研究院、2006)によると、
25 歳∼29 歳の女性の結婚延期の理由の 13.7%、
出産中断の理由の 9.5%が「自己実現の欲求」であった」との記述があり、韓国政府は女性
の価値観の変化に注目している。また、老後の経済的支援や家の継承の必要性等、伝統的
な家族観の変化も出産率の下落に影響を及ぼしている。
図表 2-1-10 平均初婚年齢の推移
(単位:歳)
34
男性
女性
33
32
31
31.38
30
29
29.28
28.32
28
27
27.79
26.49
26
25
24.78
24
23
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出所:韓国統計庁資料より作成
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