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解剖・栄養生理学
解剖・栄養生理学 感覚器の解剖と生理 参考書: 山本ら第13~17章 藤田 pp279~296 Mader 第14章 この講義で身に付けること • • • • • 眼の解剖を理解する 眼の調節機能と視覚伝導路を理解する 耳の解剖を理解する 音の伝導メカニズムを理解する 平衡感覚を維持する器官とメカニズムを学 ぶ • 嗅覚と味覚のメカニズムを学ぶ • 皮膚の解剖と皮膚感覚のメカニズムを理解 する 刺激と受容器 • • 刺激=特定の形態のエネルギー 特定の種類の刺激を検出する装置=受容器 – 外受容器:5感 – 内受容器:体内変化を検出 e.g.pHや浸透圧 • 受容器を構成する細胞受容細胞(感覚細胞) • 4種類に分類できる – 化学:味覚と嗅覚、痛覚受容器も化学受容器 – 光:視覚 – 機械:聴覚 – 温度:視床下部と皮膚 一次と二次感覚細胞 • 受容細胞は第一次と第二次感覚細胞に分 けられる • 第一次感覚細胞は刺激受容と伝導を行う (嗅細胞) • 第二次感覚細胞は刺激受容のみ伝導 はシナプスを通じて知覚神経で行う(嗅細 胞以外) 感覚受容器 感覚受容器 味細胞 嗅細胞 錐体と杆体 ラセン器の有毛細胞 半規管の有毛細胞 前庭の有毛細胞 刺激 化学物質 化学物質 光 音波 運動 重力 種類 化学 化学 光 機械 機械 機械 感覚 味覚 嗅覚 視覚 聴覚 回転感知 傾き感知 感覚器 味蕾 嗅上皮 眼 耳 耳 耳 Mader, p272 感覚のメカニズム • • • • • 受容器+神経系や付属組織=感覚器 感覚受容器に刺激神経細胞が興奮 興奮が大脳皮質に到達感覚 感覚の意味を大脳皮質が理解知覚 様々な受容器で得た刺激は統合される – 順応(示すものと示さないものがある) – 新しい刺激を感知 • 変化を感知して内的環境を維持する – 受容器が働かない求心路が無くなる反射や随 意運動ができなくなる 適刺激と不適刺激 • 感覚器が刺激される時はどのような刺激であっても感 覚器特有の感覚 特殊感覚エネルギーの法則 • その感覚器に適した形で刺激を与えれば少ないエネ ルギーですむ適刺激 • そうでないエネルギーでの刺激不適刺激 • 感覚⇒主観、感覚を引きおこす最小の刺激の強さ(閾 値)は定量可 • 感覚の強さは刺激の対数に比例する (ウェーバー・フェヒナーの物理的法則) • 感覚の大きさを他の感覚と比較する手法 – スチーブンスのべき関数の法則 感覚の種類 • 種類と質の違い 1)特殊感覚:視覚・聴覚・嗅覚・味覚・平衡感覚 2)体性感覚:一般感覚ともいう - 表面感覚 - 深部感覚 3)臓器(内臓)感覚:飢餓感・はきけ・便意など • どの種類の感覚も全て膜電位を変化させている – 受容器に発生した膜電位の変化は受容器電位(起 動電位) • 受容器から中枢までの何処で刺激をしても受容器に 刺激が与えられていると考える(投射の法則) 眼の解剖 ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p123 眼内圧 • 眼球壁には内部から圧力がかかることで 眼球の形状が維持されている • 基準:10~21 mmHg • 眼球内圧を決める要素: – 硝子体:ほぼ一定 – 房水:毛様体上皮で産生され後眼房前眼 房前房隅角から排出 – 房水の排出ができなくなる眼球内圧↑網 膜の神経線維に栄養を補給していた動脈を 圧迫緑内障長期では神経細胞が壊死 視細胞と神経線維 ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p126 杆状体と錐状体 • 錐状体:明るい場所での視 野をつかさどる閾値が高 いから光に鈍感 – 黄斑部に集中して存在 – 赤・緑・青に反応する視 物質が存在色を識別 • 杆状体:暗い場所での視野 をつかさどる閾値が低い から光には敏感 – 黄斑部には無いが網膜 の周辺部に存在 – 色の識別はできない http://hamwaves.com/antennas/diel-rod/rod_cone_discs.jpg 受容体が持つ視物質 • 杆状体はロドプシン • 錐状体はアイオドプシン – レチナール(ビタミンAのアルデヒド)とタンパク 質が結合したもの – 光を吸収すると視物質を分解して反応を起こ す • ビタミンAの欠乏視物質の産生に影響 ロドプシン欠乏では夜盲症 小児における夜盲症の推定有病率 WHO, 2009 視神経の連結 • 視細胞双極細胞 神経細胞視神経 • 視神経は左右のもの が視神経交叉で一つ になる 視神経交叉 両目の視野 視神経 – 視索の形成間脳 外側膝状体大脳皮 質視覚野 脳に映った 映像 http://3.bp.blogspot.com/_j_6h364W09Y/R9Jntt7wfFI/AAAAAAAAALQ/TUFSA_DgzsE/s320/vision+field.gif 眼の調節機能 • 映像は屈折により実際より小さく・上下左右が逆 に投影される • 近い距離にあるものを見る際、水晶体の曲率を 変化させて焦点を合わせる – 遠くのものを見る際:毛様体筋は弛緩&毛様 体小帯(毛様体筋と水晶体を繋げている部位) は収縮水晶体は扁平(調節機能は働いて いない) – 近くのものを見る際:毛様体筋が収縮&毛様 体小帯は弛緩水晶体は丸くなる – 水晶体の弾性の低下調節機能消失老眼 物を見る仕組み • 毛様体の平滑筋が水晶体の厚さを変える 事で対象にピントを合わせることができる ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p125 • • • • 水晶体の曲率を変 化させて焦点を合 わせる 近視と遠視 眼球が楕円形で縦 と横で屈折力が違 う場合は正乱視 角膜の表面が不規 則で屈折も不規則 になると不正乱視 眼の調節機能 近視 網膜 角膜 水晶体 遠視 http://www.hipusa.com/webmd/images/health_and_medical_reference/eye_health/understanding-vision_problems-basics-myopia-and-hyperopia.jpg 明暗調節と瞳孔反射 • 瞳孔の大きさを変化させて眼に入る光の 量を反射的に調節する=対光反射 – 常に量目の瞳孔が縮小する • 近くのものを見る際に両眼を内転させる際 にも瞳孔が縮小する輻輳反射(ふくそう はんしゃ) • 対光反射と輻輳反射を併せて瞳孔反射 • 色々な条件下で瞳孔は変化する 眼筋と眼球運動 上直筋 上斜筋 • • 内側直筋 • 外側直筋 • 下直筋 下斜筋 ~神経支配~ 外側直筋は外転神経 上斜筋は滑車神経 残り4つは動眼神経 • • 6つの筋肉 共役運動=両目が同じ 運動 輻輳運動=遠くから近く に焦点が1点に交わる 運動 サッケード運動=視線 を移す際の運動 追跡運動=動いている 物体を見るときの動き 固視運動=固定して見 る際に細かく動く運動 http://www.marineyes.com/images/Anatomy/Muscles%20G13.jpg 視覚の疾患 • • • • • 屈折異常(近視・遠視・乱視) 角結膜炎:ウィルス性・細菌性・アレルギー性に 紫外線や自己免疫性など原因は幅広い 白内障:水晶体が濁ることによる視力低下 緑内障:眼球内圧の上昇による視神経への栄 養供給の低下失明 糖尿病・高血圧・動脈硬化による眼底変化血 管の破裂・血流の停止による視神経の死滅 失明 ドライアイと実用視力 • • 通常視力はランドルト環で検査 目が乾燥していると涙が角膜の 表面を均等に覆わなくなる⇒日 常生活で視力が低下 ‐日本では約2200万人がドライア イとされる • 結膜の杯細胞と角膜上皮から ムチンが分泌される(ムチン 層)⇒水をはじく角膜に涙が均 等に覆う手助けをする http://kokusaigakkai.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2008/07/22/photo_2.jpg 聴覚 • • • • 空気の圧力変動を刺激とする 耳:外耳・中耳・内耳 外耳と中耳は音を伝える伝音部 内耳で音は受容されて大脳皮質聴覚野 に伝わる • 可聴振動数:ヒトでは20~20,000Hz • 聴力閾値:30歳ごろから低下 聴器 • 外耳:音源定位に役立つ耳介(軟骨)と外耳道 (共鳴振動数:声の振動数と同じ2,000~5,000 Hz) – 鼓膜:外耳道の奥にある楕円形の膜 – 耳垢と外耳道の構造によって守られている • 中耳:空気で満たされ振動を増強・減弱させる – 耳管:鼓室から咽頭に通じている管で鼓室圧を調節 する – 耳小骨:ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨で鼓膜に伝わっ た圧力を拡大させる(耳小骨連鎖) – 中耳筋:鼓膜の運動を制動する 聴器 ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p129 音が伝わる 仕組み ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p130-131 1)アブミ骨から 前庭階に音が 伝わる 2)前庭階を上 行して蝸牛頂 に達した後、鼓 室階を通って 下行する 蝸牛の断面図 前庭階と 鼓室階は 外リンパ ライスナー膜 前庭階 血管条 蝸牛管 蓋膜 内リンパ K+が豊富 蝸牛神経 らせん靱帯 基底膜 鼓室階 ラセン器 http://galileo.phys.virginia.edu/classes/304/cochlea2.gif 音の伝導 • • • • 空気伝導と骨伝導(声は両方) 蝸牛窓は鼓膜と一緒に逆方向に振動する 前庭窓から奥に進む振動=進行波 有毛細胞の毛が振動をうけてしなる音 の波形と同じ形の電位変動の発生(マイク ロフォン電位)蝸牛神経末端に向けて伝 達物質を放出 • 蝸牛神経蝸牛神経核延髄中脳 間脳大脳皮質側頭葉の聴覚野 平衡感覚 前半規管 球形嚢 後半規管 外側半規管 前庭 神経節 肥大部 肥大部 卵形嚢 球形嚢 蝸牛 http://www.ifdmavt.ethz.ch/education/student_projects/obrist/vestibular_organ 傾きの感知 平衡砂膜 平衡砂(耳石) CaCO3 有毛細胞+支持細胞 運動毛 最も大きな不動毛 • 不動毛 卵形嚢と球形嚢 – 体が傾くと平衡砂が変位、平衡砂膜が傾く – 運動毛に傾くと興奮が増加 回転の感知 小帽(クプラ) 有毛細胞 リンパ液の流れ 支持細胞 前庭神経 • 半規管 – 回転運動慣性で内リンパが逆方向に流れる – クプラの中に入り込んでいる有毛細胞が興奮 味覚 有郭乳頭 • 味覚の種類 – 酸味・塩味・甘 味・苦味・うま味 • 味蕾味覚受容器 – 味細胞・支持細 胞・基底細胞 • 検知閾と認知閾 http://www.biochem.arizona.edu/classes/bioc471/pages/Lecture14/tongtoon.jpg 葉状乳頭 茸状乳頭 味細胞の種類 Chaudhari N, Roper S. JCB 2010;190:285-296 味細胞の種類とその働き Chaudhari N, Roper S. JCB 2010;190:285-296 味覚受容体の場所は舌だけではない • • • 胃や小腸、気管など にも存在することが 判明 精子にはうま味受 容体、精巣には苦 味受容体があること が報告されている 実際の働きについ てはまだ不明な点 が多い Finger and Kinnamon, F1000 Biol Rep, 2011 うまみの発見者 • • • • • 池田菊苗(1864-1936) 東京大学理学部化学科初 代教授 昆布のだしを濃縮 (グルタミン酸) 「味の素」の発明者 調味料は食物の持つ三機 能(栄養素・味覚・生理)の 味覚を高める効果がある うまみ成分を 含む食材 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/images/0216.gif 鼻の解剖 副鼻腔は耳や目と繋がっている ぜんぶわかる人体解剖図、2011、p135 嗅覚 僧坊細胞 糸球体 • • • 嗅球 骨 7種の原臭 嗅覚受容器は嗅上皮 (鼻腔の上部にある) 嗅細胞・支持細胞・基 底細胞・ボウマン腺(嗅 腺) – 嗅腺は粘液を分泌嗅 物質が粘液に溶け込む – 嗅細胞は第一次感覚 細胞 鼻粘膜上皮 嗅細胞 • • 刺激受容部=嗅毛 嗅物質は拡散で嗅上 皮に届く http://www.nature.com/embor/journal/v8/n7/images/7401029-f1.jpg 皮膚と体性感覚 • 体表と深部で の感覚 • 皮膚の機能 – 防御 – 体温調節 – 排泄 – ビタミンDの 合成 毛 真皮乳頭 感覚神経 角質層 色素上皮 表皮 真皮 皮下組織 神経 血管とリンパ管 汗腺 http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/34/Skin.jpg 皮膚の解剖 • 表皮 – 重層扁平上皮部位によって厚さが違う – 5層:角質層・淡明層・果粒層・有棘層・基底層 – 有棘層&基底層は胚芽層とも言う • 胚芽層で発生する細胞 – ケラチン細胞:ケラチンを合成しながら表皮へ – メラニン細胞:色素 – ランゲルハンス細胞:免疫応答 • 真皮 皮膚の解剖 – 膠原線維と弾性線維による結合組織 – 汗腺・脂腺・血管・平滑筋・神経・毛髪・爪など • • エクリン汗腺(小汗腺)とアポクリン汗腺(大汗腺) エクリン汗腺: – 水分の多い汗(体温調節) • アポクリン汗腺: – 脂肪やタンパク質の分泌(体臭) – 特定の部位に存在する • • 血管:栄養補給と体温調節 脂腺:皮膚を滑らかにする ビタミンD活性化のメカニズム • 皮膚でビタミンDが産生 – • コレカルシフェロールは 肝臓や腎臓で活性化 – – • 皮膚中で生成される7-デヒド ロコレステロールに紫外線が 当たるとコレカルシフェロール となる 肝臓:25-ヒドロキシコレカル シフェロール(カルシジオール) 腎臓:1,25-ジヒドロキシビタミ ンD3(カルシトリオール) カルシウムとリンの吸収 と再吸収を促進 http://www.scientificpsychic.com/health/vitamins.html ビタミンDの欠乏による身体的影響 くる病:成長期における骨の形成異常→ビタミンD不 足によるカルシウムやリンの吸収低下によって脊椎 や四肢骨の歪曲や変形が起こる 骨軟化症:成人における疾患。骨折や筋力低下、低カ ルシウム血症、圧痛など http://services.epnet.com/GetImage.aspx/getImage.aspx?ImageIID=7264 ビタミンA:しわ予防の効果 • しわはコラーゲンやエラスチンがメタロプロ テアーゼに分解されることで起こる – メタロプロテアーゼは紫外線によって遺伝子 の転写が促進・活性化される – 前もってビタミンA(レチノイン酸)を摂取してお くと、メタロプロテアーゼの転写因子(AP-1)と レチノイン酸が結合、遺伝子がAP-1に結合し なくなる メタロプロテアーゼの活性が抑制される コラーゲンやエラスチンの分解が起きない しわができない 体性感覚 皮膚感覚 深部感覚 位置感覚 動き感覚 力感覚 機械的感覚 侵害感覚 温度感覚 触覚 圧覚 振動覚 痛覚 温覚 冷覚 体性痛覚 表在痛 (かゆみなど含む) 山本ら 教科書 pp183~189 内臓痛 関連痛含む 深部痛 筋肉痛など 感覚器の補助:今後の動き • • メガネや補聴器 電極を装着することで視 力を回復 – • Brain-Machine Interface (BMI) – – – http://www.fujishinkyu-seikotsuin.com/img/806.jpg 大阪大学院医学系研究科チー ム(産経新聞2010年12月5日) 産業総合研究所による「ニュー ロコミュニケ-ター」 人工視覚・聴覚など 体が動かなくとも脳波を使うこ とでコミュニケーションが可能に http://ecx.images-amazon.com/images/I/21Afnk-9pQL.jpg