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岩農の新しい畜産教育 - 岩見沢農業高等学校
祝 畜産教育施設完成記念公開 岩農の新しい畜産教育 北海道岩見沢農業高等学校 畜産教育施設 ① 畜産実験棟(平成24年12月) ② 牛舎(平成25年12月) ③ 豚舎(平成24年12月) 7 2 8 9 5 3 4 1 ④ 鶏舎(平成11年1月) 6 畜産実習施設の配置(岩農の全景) ⑤ 資源循環バイオ実習室 (平成14年3月) 昭和13年頃の畜舎全景 ⑥ 畜魂碑(昭和48年) ⑧ 乾草収納庫(平成24年) ⑦ 飼料作物調整作業場(平成25年) ⑨ 乾草収納庫(平成3年) 畜舎改築におけるコンセプト (平成22年度~平成25年度工事・完成) (1) 畜産科学科は、乳牛(肉牛)、豚、鶏、資源循環バイオの4分野の学習をとおして、畜産業における基礎的・ 基本的な知識と技術を習得させることを目標とすることから、この4分野がバランスよく実験・実習ができる施 設の充実を図る。 (2) 今後40年間の北海道の畜産と岩農畜産科学科教育のあるべき姿を考えるとともに、環境に配慮した都市型 畜産や実験実習の効率化、畜産物生産としての衛生管理、アニマルウェルフェア等に適応した施設とする。 (3) 岩農における農業教育全体を考えたバランスの良い畜舎配置と設計にする。 畜産科学科の変遷(空農・岩農) 獣医科 畜産科 獣医畜産科 明治40年(1907) 大正 4年(1915) 昭和17年(1942) 畜産科 畜産科学科 平成26年4月26日 -1- 昭和21年(1946) 平成13年(2001) 畜 産 科 学 科 Since 1907 新畜産教育施設群の完成を祝って 北海道岩見沢農業高等学校長 西 田 丈 夫 「今日も魚か・・・、たまには肉にしてよ。」 「かしわ屋さんで卵3つ買ってきて・・」 「瓶に入った牛乳飲みたいね。」 「○○さんから、牛の糞もらったら、畑にまいといてネ」 昭和31年生まれの私でさえ、小学校の時は、こんな会話が、 家庭や学校での日常会話でした。大卒初任給3万円の時代、肉を食べることが贅沢、卵は一個10円、給食の牛乳は 脱脂乳、農家で無くても空き地に生活のための家庭菜園を持ち、時には人糞を撒いていました。そんな時代に、旧畜 舎群は建てられたのです。 あの時代から、わずか40年で、我が国の食料事情は激変しました。畜産の果たす役割も当然のように大きく変化し ています。世界の農業、日本の農業そして北海道の農業が激動の時代を迎える中、これからの「岩農の畜産教育」を 支える新教育施設が完成しました。単なる技術教育だけで無く、このフィールドから、農業新時代を担う人材を育てな くてはなりません。 50年後の、新施設誕生まで、ここで育まれる教育としての『畜産』の姿に期待を寄せていただきたいと思います。 1 教育内容および施設概要 畜産科学科の教育内容 (土、飼料作物、家畜、そして人間と、いのちが循環する畜産) 畜産は、人々の健康と生命に直結し、豊かな生活を提供する社会的役割を担っています。本校での畜産教育は、 家畜の飼育と畜産経営について学ぶことにより、生産技術の仕組みや畜産物生産が果たす社会的な意義と役割、人 や地域環境と調和した持続的で安全で安心できる畜産生産について学習をしています。 本校のこれらの施設では、畜産経営者および関連産業技術者としての態度と能力を育成するために、優れた家 畜群と整備された施設で、乳牛・肉牛・豚・鶏など家畜の飼育管理技術や動物の生理生態についての知識、技術、 農業経営を学ぶことができます。 生徒は、日々家畜の命にふれながら、家畜の飼養、畜産物の生産、飼料作物の栽培、環境と調和した糞尿処理 の研究等を行います。さらに、人工授精、受精卵移植、エコフィード、バイオガス等の高度な技術や、精肉処理、食品 製造、流通のフードシステムについて学習しています。 本校で学んだ生徒は、北海道をリードする畜産経営者をはじめ、獣医師、畜産関連産業、流通業、専門性を生か した公務員、看護師、保育士、福祉職員の他、アスリートや高校教員など社会で活躍をしています。 また、平成25年度から文部科学省の指定を受けたスーパーサイエンスハイスクール(SSH)では、SS課題研究に おいて、「新畜舎を活用した国際競争力を持つ家畜飼育管理技術の研究 ~自給飼料の生産、飼料給与試験、繁 殖管理技術の育成~」をテーマに大学等と連携しながら研究を行っています。 畜産実験棟 牛 舎 施設の概要 規模 畜産実験室、クリーンルーム、精肉処理室、 乳処理室、宿泊実習生更衣室、車庫 施設の概要 規模 牛床16・育成房9・子牛室3・飼料調整室・ 資材室3・ローラープレス室・パドック 仕様 受精卵移植用プログラムフリーザー等、 動物バ イオに関わる実験器具 精肉スライサー、アイスクリームフリーザー等、6次産 業化に対応 教育内容 1 畜産に関わる高度な実験実習の実施 2 畜産生産物(豚肉の精肉処理、チーズ、アイスクリ ーム等)の原料生産から食品製造、流通までの 6次産業についての学習 仕様 タイストール方式、キャリロボ2機・自動離脱付 搾乳ユニット4機(オリオン社製)、糞尿固液分 離機(ローラープレス式) 教育内容 1 トウモロコシサイレージ通年給与による、乳量乳質の 研究(飼養学) 2 受精卵移植牛による高能力牛飼育(繁殖学) 3 費用対効果を考えた飼料給与(経営学) 4 黒毛和種(ET)導入による経営の多様化 -2- 畜 産 科 学 科 Since 1907 豚 舎 鶏 舎 施設の概要 規模 繁殖室(豚房5、分娩房4)・肥育室(豚房12) サービス室(飼料・資料・資材)、パドック 仕様 セミウインドレス式、空調管理(ビックダッチマン社製) 半スノコ式の床、糞尿はスラリーでの処理 施設の概要 規模 成鶏室(ケージ320羽分、平飼い45羽分) 育雛室、飼料室、洗卵室、準備室 仕様 バーンスクレッパー、洗卵機、テープシーラー、 卵質測定器、ふ卵機 教育内容 1 中ヨークシャー種による付加価値をつけた豚 肉の生産に関する研究(飼養学、経営学) 2 糞中および唾液中プロジェステロン濃度の測定の 研究(繁殖学) 3 エコフィードの給与による肉質の相違(栄養学) 4 精肉処理による販売(経営学) 教育内容 1 地域未利用資源や、エコフィードを活用した飼料 の生産に関する研究(飼養学) 2 エコフィード飼料の給与による、生産物(鶏卵)の 評価(栄養学) 3 アニマルウエルフェア等家畜福祉に対応した畜産技 術の研究(家畜管理学) 資源循環バイオ室 飼料作物圃場 施設の概要 規模 原料槽、嫌気発酵槽、バッファー槽 好気発酵槽、消化液貯留槽 仕様 ①牛の尿と豚のスラリーの混合糞尿を原料 槽に自動供給 ②嫌気発酵槽で1次発 酵(メタン発酵) ③1次発酵処理液を好気 発酵槽で2次発酵(好気発酵) ④次発酵 処理液(消化液)を消化液貯留槽へ貯留 施設の概要 規模 総面積14.2ha(並木農場2.3ha、東山農場 9.6ha、日の出農場2.3ha)【採草地12.2ha・ 飼料用トウモロコシ2.0ha】 仕様 採草地(チモシー、オーチャードグラス、シロクローバ) 飼料用トウモロコシ(ニューデント105日) 消化液を活用した循環型自給飼料生産 教育内容 1 飼料作物栽培の研究(草地学) 2 消化液を用いた飼料作物の栽培実践 3 細断型ベールラッパーによる新しい飼料作物調 整技術の活用と給与方法の研究(飼養学) 教育内容 1 バイオガスプラントの効率的運用に関する研 究(草地学・土壌肥料学) 2 消化液の有効活用に関する研究 実習の移り変わり 昭和7年頃 馬の飼育が中心で乳牛は小規模であった 搾乳、除糞などはすべて手作業 昭和47年~平成25年 酪農の急速な近代化に伴い、機械化へ バケット方式からパイプラインシステムへの転換 バンクリーナーによる除糞作業の効率化 -3- 平成25年~ キャリロボ、自動給餌機による 省力化とコンピューター管理 畜 産 科 学 科 Since 1907 2 作業機械等 ブロードキャスタ、バキュームカー モアコンディショナー、テッダ、レーキ等 マッセイファーガソン MF5460 日立 ZW120H 細断型ベールラッパーを使用した、トウモロコシサイレージ の生産 3 家畜排せつ物処理等のフロー図 牛舎の尿、豚舎のスラリー は地下配管で資源循環バイ オ室に移送します。嫌気発 酵、好気発酵処理し、消化液 とバイオガスの生産を行いま す。 農業の持つ物質循環機能 を生かし持続的な畜産物生 産を行うために、家畜排せつ 物の管理の適正化および利 用を促進しています。 4 施設のデーター 部門 共通 牛 豚 鶏 資源循環 飼料作物 施設名 実習準備室 実験室 畜産実験棟 乳利用実験室 精肉処理室 車庫・資材 面積・体積 67.80㎡ 76.80㎡ 34.40㎡ 47.60㎡ 78.00㎡ 建築年 平成24年 平成24年 平成24年 平成24年 平成24年 職員打合わせ、更衣室、トイレ 動物バイオ実験、クリーンルーム、41名可 乳質評価、乳利用実験、15名可 肉質評価、精肉処理実習、15名可 形態・規模など 牛舎 621.28㎡ 平成24年 タイストール、キャリロボ、自動給餌機、固液分離機 搾乳牛10~16頭、育成牛5~8頭、和牛1~2頭 パドック 堆肥舎 尿溜 乾草収納庫 乾草収納庫 150.00㎡ 175.00㎡ 133.56㎥ 157.50㎡ 206.55㎡ 平成24年 平成24年 平成25年 平成24年 平成3年 ラウンダー、草架、泥濘化防止剤敷設 豚舎 245.00㎡ 平成24年 セミウインドレス、半スノコ式 繁殖豚3頭、種雄豚1頭、育成豚1頭、肥育豚60頭/年 尿溜 63.48㎥ 平成25年 2槽構造、異物除去装置、スラリー 鶏舎 308.01㎡ 平成11年 ケージ、平飼い、自動給水装置、バーンスクレッパ、洗卵機 採卵鶏200羽、育雛50羽 資源循環バイオ室 地下調整槽 地下貯留庫 採草地、畑地 169.89㎡ 26.73㎥ 139.97㎥ 14.20ha 平成14年 平成25年 平成25年 昭和55年 飼料作物調整作業場 500.00㎡ 平成25年 車両3台、資材・物品保管庫 コンクリート造 3槽構造、尿 乾草ロール保管 乾草ロール保管 嫌気発酵槽、好気発酵槽、メタンガスボイラー 牛舎尿と豚舎スラリーの一次受入れ 処理済み消化液の貯留 採草地12.4ha、飼料用トウモロコシ1.8ha コンクリート造、ロールサイレージの保管 グラスサイレージおよびトウモロコシサイレージの調整 -4- 畜魂碑(昭和48年建立) 畜産教育で実験、解剖、出荷 された多くの家畜の魂が眠る 畜 産 科 学 科 Since 1907