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資料5 (9)(PDF形式:860KB)

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資料5 (9)(PDF形式:860KB)
D
次世代航空機用構造部材創製・加工技術開発
(1)次世代航空機エンジン用構造部材創製・
加工技術開発
目
1.
2.
3.
4.
5.
次
頁
事業の目的・政策的位置付け……………………………………………1
研究開発目標………………………………………………………………4
成果、目標の達成度……………………………………………………10
事業化、波及効果………………………………………………………27
研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等………………27
1. 事業の目的・政策的位置付け
1−1. 事業目的
航空機産業は、先行する欧米諸国のほか、後発のアジア諸国等発展途上国を
含めた国際的な産業競争の激化が進む中、その発展を通じて我が国産業構造の
高度化に大きく貢献することが期待されている。また、航空機関連技術は、高
度な先進技術を要することから、その技術波及効果によって、輸送機器を始め、
情報・通信、材料等の分野に高付加価値を生み出す上で重要な役割を果たして
いる。
特に、材料・構造関連分野においては、航空機等の輸送機器の構造部分に先
進材料を早期に導入することで軽量化等によるエネルギー使用合理化が期待さ
れている。本事業は次世代航空機エンジン用構造部材創製・加工技術開発を行
うことで航空機分野の省エネルギーに資することを目指している。
エンジンの燃費向上は、基本的には熱機関としてのサイクル効率を高めるア
プローチと、航空機の推進システム全体での推進効率を高めるアプローチの両
輪で進歩が図られてきている。前者においては、エンジンの高圧力化やタービ
ンの高温化を追求して、様々な技術開発が行われている。一方、後者において
は、亜音速の民間航空機用エンジンの場合、そのバイパス比を大きくするため
の技術開発が行われており、その主なものは大径のファンシステムへのチャレ
ンジである。
大径のファンシステムにおける大きな技術的課題は、その軽量化にある。本
研究開発は、燃料消費を低減し地球温暖化ガスの排出量の削減に資するため、
最新の複合材料技術を適用してファンケースおよびファンブレードの軽量化を
図ることを目的とする。(図1−1参照)
プラットフォーム
(ファンケース内側に装着)
ファンケース
フェアリング
ファンブレード
ノーズコーン
:現V2500で既に複合材料を適用している部位
:複合材料適用を目指す部位
図1−1
複合材料適用を目指す部位
3-D(1)-1
1−2.
政策的位置付け
経済産業省の「航空機分野の技術戦略マップ」を図1−2から図1−4に示
す。
本構造部材創製・加工技術開発は、重点的に支援すべきエンジン要素技術とし
て定められている。(注記参照)
注:航空機分野の導入シナリオ(抜粋)
(1)我が国航空機産業が目指すべき方向性
② 国際共同開発における地位の維持・拡大
・ エンジンの国際共同開発においては、我が国は9%∼30%のシェアで共同開発
に参加するなど一定の役割を担うようになってきているが、新方式のエンジン
の動向も視野に入れつつ、必要な要素技術での優位性を獲得し、質の面でもよ
り高度な役割を担うこと。
(2)研究開発支援の重点等
① 重点的に支援すべき技術について
(a) 中核的要素技術
・ 「エンジン要素技術」:同様の要請から、新方式を含めた軽量・高性能なエ
ンジンを実現するために重要性が増している、耐熱セラミック複合材や複合材
ファンに関する技術等。
図1−2
航空機分野の導入シナリオ
3-D(1)-2
図1−3
図1−4
技術マップ
技術ロードマップ
3-D(1)-3
2. 研究開発目標
2−1. 研究開発目標
現在、軽量化に有効な複合材料は、大型機用エンジンのファンケース、フ
ァンブレードなどの一部に適用が進んでいるものの、中小型機用エンジンに
は、適用される部材が小さくなるものの衝撃力には変化がないため、更なる
耐衝撃性が求められるとともに、小さく複雑な形状に対応する自由度のある
成形加工技術の開発が必要となる。
本研究開発では、中小型機用エンジンへの適用を念頭に、ファンケースお
よびファンブレードについて、既存のチタン合金と遜色のない耐衝撃性、高
靭性を有する複合材料(繊維、樹脂、成形方法の組み合わせ等)の技術開発
を行うとともに、実物大のファンケースおよびファンブレードの試作評価を
通して成形加工技術の開発を行う。
2−2.
全体の目標設定
複合材料をファンケース、ファンブレードに適用し、既存のチタン合金製
に比べそれぞれ20%の軽量化することを目標する。
<現状と課題>
ファンシステムに複合材料を適用して軽量化を図る場合、その質量の大き
さからファンブレードとファンケースが最も効果的であり、現在大型エンジ
ンでは米国のGE社がその実用化を目指して開発中である。中小型機用エン
ジンでは、図1−1に示したようにV2500エンジンにおいて既に複合材
料を一部へ適用してはいるものの、ファンブレードおよびファンケースは、
以下に示すような技術的課題があり未だチタン合金製となっている。
1)機能面からの制約
ファンブレードは空力性能の面からその翼厚などむやみに大きくできな
い。(空力特性を損なわないことが必要)
2)エンジン耐空性からの特殊な要求
・ファンブレードの異物衝突に対する健全性
エンジンが鳥などを吸い込んだ場合でも、ファンブレードのダメージに
よって致命的な事象を起こさないこと。
(ファンブレード自体の高い耐衝
撃性が必要)
3-D(1)-4
・ファンケースのコンテインメント性
ファンブレードが飛散した場合でも、その破片等がエンジンの外に飛び
出て機体へ損傷を与えてはならない。
(ファンケース自体の高い耐衝撃性
が必要)
<課題克服へのアプローチ>
複合材料の特性はその繊維、樹脂ならびに成形方法に大きく依存するが、
それぞれにおいて技術革新が進み、上述の課題克服に向けて、現在、表2−
1に示すようないくつかの候補がある。
表2−1
要素
候補
高強度炭素繊維
繊維
高強度有機繊維
繊維、樹脂、成形方法の候補
特徴
備考
航空分野で幅広く利用されている
ため、低コストで入手性も良く、 表2−2参照
炭素繊維のなかでは破断伸びが
2%以上と耐衝撃性に優れてい
る。
アラミド繊維や PBO(ポリベンズア
ゾール系ポリマー)繊維で、破断伸
びが 3.5%程度と炭素繊維より耐
衝撃性に優れている。但し圧縮強
度が低いことや紫外線や水などで
の劣化が課題。
樹脂
熱硬化樹脂
現在もっとも使用されているもの
で、強度と靭性のバランス及び成 図2−1参照
形性に優れている。
熱可塑樹脂
熱硬化樹脂に比べ、耐衝撃性で倍
以上の優位性を有すが、成形性が
課題。
成形方法
直交3軸織物等の三次元織物で耐
プリフォームに 衝撃性の向上が図れ、コスト面で
図2−2、図2−3
よるRTM法
も有利だが、品質安定性が課題。
参照
プリプレグによ 空隙の発生が少なく品質安定性に
優れ、航空分野では一般的な成形
るプレス法
又は、ワインデ 方法。
ィング法
3-D(1)-5
表2−2
高強度炭素繊維
高強度有機繊維(アラミド繊維)
高強度有機繊維(PBO繊維)
各種繊維の特性
引張強度
引張弾性率
伸度
密度
MPa
GPa
%
g/cm3
5000
240
2.1
1.8
2950
72
3.5
1.44
5800
180
3.5
1.54
出典:各繊維メーカのパンフレット等のカタログ値
熱硬化樹脂
熱可塑樹脂
0
50
100
150
200
Es(K)/kg
図2−1
熱硬化樹脂と熱可塑樹脂の耐衝撃性(比エネルギー吸収)比較
(出典:(株)IHI)
3-D(1)-6
250
プリフォームによるRTM法
(1)プリフォームの積層
(3)脱型
(2)樹脂注入・硬化
プリプレグによるプレス法
又はワインディング法
(1)プリプレグ
(2)プリプレグの積層
(2)ワインディング
(巻き付け)
図2−2
(3)金型によるプレス
(4)成形品の取り出し
(3)硬化
複合材の成形方法 (出典: 東レホームページ)
3-D(1)-7
(4)脱芯
図2−3
直交3軸織物の模式図
(出典:Shikibo 社のカタログより)
本研究開発では、表2−1に示す繊維、樹脂、成形方法の候補の中から、
試験片による評価を行い最適な組み合わせを選択するとともに、試験評価用
部品を試作し、試験にて健全性の評価を行う。
①材料試験による各候補の基礎的特性値を把握する。
②材料基礎的特性値および平板高速衝撃試験結果より最適な組み合わせを
絞り込む。
③絞り込んだ組み合わせの詳細特性の把握を把握するとともに、実スケール
リグ部品の設計、試作を行う。
④試作した実スケールリグ部品による試験及び評価を行う。
以上、ファンケースおよびファンブレードの研究開発フローを、各々、図2
−4、図2−5に示す。
なお、複合材料を適用した場合、従来のチタン合金製と比べてある程度の強
度・剛性面での低下は避けられず、部品としては厚肉化や補強等が必要になる。
特に、ファンブレードでは、その厚肉化や補強が空力性能の低下やフラッタ
ー領域の拡大などの問題を引き起こす可能性があるため、空力特性、フラッタ
ー特性の検討を行い、性能面でも最適化が図れることも確認する。
3-D(1)-8
本研究開発の範囲
ケース試作
リグ実証試験
リグ部品試験
フィラメントワインディング成形
ハーフリング衝撃試験
コンテイメント試験
設計・構造
平板高速衝撃試験
衝撃解析/構造設計
材料試験
基本特性
定常応力解析
鋼柱撃抜き試験
引張/圧縮/せん断/低速衝撃試験 等
FBO(ファンブレードアウト)衝撃解析
図2−4
ファンケースの研究開発フロー
本研究開発の範囲
リグ実証試験
ブレード試作
鳥撃込試験
設計・空力
リグ部品試験
性能/フラッタ
ダブテール引張試験
回転衝撃試験
熱可塑FRPプレス成形
フラッタCFD解析
空力リグ試験
固有値解析
設計・構造
平板高速衝撃試験
衝撃解析/構造設計
材料試験
基本特性
ゼラチン撃込試験
定常応力解析
鳥撃込衝撃解析
引張/圧縮/せん断/低速衝撃試験 等
図2−5
ファンブレードの研究開発フロー
3-D(1)-9
2−3.
個別要素技術の目標設定
ファンケースおよびファンブレードの複合材料適用化技術について、各々設
定した個別目標を表2−3に示す。
表2−3
要素技術
個別目標
目標・指標
妥当性・設定理由・根拠等
ファンケースへの複合材料適
用化技術
既存のチタン合金製フ
ァンケースに比べ重量
20%減
現在ある炭素系複合材料の特性および
エンジンとして要求されるファンブレード
コンテインメント等の耐衝撃性強度から
判断し、重量減20%と設定した。
ファンブレードへの複合材料適
用化技術
既存のチタン合金製フ
ァンブレードに比べ重
量20%減
現在ある炭素系複合材料の特性および
エンジンとして要求されるファン空力特
性を損なうことなく、鳥吸い込み等の耐
衝撃性強度も発現できることから判断し
、重量減20%と設定した。
3. 成果、目標の達成度
3−1. 成果
3−1−1. 全体成果
ファンケースについては、同重量チタン比で約1.5倍の吸収エネルギー
を有する繊維・樹脂・成形方法の組み合わせを見出すことができ、これにより、
ファンケースを試作した場合、最大15%重量を削減できることがわかった。
また、実物大のケースを試作し、撃ち込み試験により耐衝撃特性を実証する
ことができた。
ファンブレードについては、材料衝撃試験の結果から、現状では10%の
重量減となることがわかった。また、実物大のブレードを試作し衝撃試験を
行った結果、歪応答が解析とほぼ一致することを確認できた。
3-D(1)-10
3−1−2.
個別要素技術成果
(1)ファンケースの複合材料適用化技術
①材料選定/材料評価、構造設計
1)材料基本特性の取得
複合材料を構成する繊維、樹脂及びその成形方法について、ファンケー
ス用の候補となる組み合わせを検討した結果、表3−1に示す4ケースの
組み合わせについて、各々、試験片供試体を製作し、繊維方向引張/圧縮
強度、繊維直角方向引張強度、面内せん断強度等の基礎的特性値を取得し
た。
図3−1に実施した基礎的特性取得試験の状況を、また、表3−2に組
み合わせケース3およびケース4の取得したデータを、図3−2に両者の
特性を比較したものを示す。
図3−2より、静的な物性ではケース3のワインディング(FW)とケ
ース4の3次元織物RTM(RTM1,2)で決定的な差はなく、続いて
行う高速衝撃特性把握の結果から最終的な選定を行うことになった。
注:ケース1およびケース2についても、試験片にて基礎的特性のデータを取得し
ているが、後述の高速衝撃特性試験でケース3が仕様を充分満足する結果が得
られたため、それ以降の試験は実施していない。
表3−1
ファンケース用複合材料の組み合わせ
ケース
繊維
樹脂
成形方法
1
炭素繊維
熱硬化樹脂
(エポキシ)
プリプレグ
+ オートクレーブ
2
有機繊維
熱硬化樹脂
(フェノール)
プリプレグ
+ オートクレーブ
3
炭素繊維
熱硬化樹脂
(エポキシ)
プリプレグ
+ ワインディング
炭素繊維
熱硬化樹脂
(エポキシ)
プリフォーム
(三次元織物)
+ RTM
4
3-D(1)-11
引張系統試験:
0T、90T、面内せん断、疲労
衝撃後圧縮試験(CAI)
圧縮系統試験:
0C、層間せん断、OHC
落錘試験
圧縮試験
試験セットアップ
試験セットアップ
破壊後試験片(代表例)
0C
層間
せん断
0T
層間はく離試験(DCB)
OHC
90T
破壊後試験片(代表例)
面内
せん断
試験
セットアップ
3点曲げ試験
疲労
破壊後試験片(代表例)
試験セットアップ
図3−1
表3−2
破壊後試験片
(代表例)
破壊後試験片(代表例)
基礎的特性取得試験
試験により取得したデータ(ケース3、および4)
ケース3
試験種類
2000.0
150.0
780.0
125.0
14.0
8.0
36.0
4.0
1288.4
83.1
22.5
724.3
46.7
2705.7
160.8
1465.8
124.4
27.8
7.0
54.8
3.8
1358.0
88.2
22.9
749.5
48.7
28.7
376.4
74.8
0.15
RTA/W
RTA
173.2
382.4
306.8
3点曲げ
強度
(MPa)
RTA
220.3
385.3
262.1
引張疲労(R=0.1)
10E5最大応力
(MPa)
70℃/W
970
870
910
(
ッ
90°方向引張
45°方向引張
)
有孔圧縮
共
通
RTM2
(kJ/m )
(MPa)
0°方向圧縮
層間せん断
相
対
比
較
値
RTM1
強度
0°方向引張
3
ス
次
テ
元
織
チ
物
FW
F/C想定特性
衝撃後圧縮
繊維直角方向
引張
面内せん断
(±45TS)
基
本
特
性
呼称
3次元織物+RTM
層間エネルギー開放率
繊維方向圧縮
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(MPa)
(GPa)
試験条件
ケース4
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
強度
弾性率
GⅠC
繊維方向引張
積
層
構
造
単位
分類
ワイン
ディング
2
3-D(1)-12
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
110℃/W
RTA
相対比較
NA
1369.0
90.9
730.3
63.4
236.3
19.3
748.3
50.4
36.9
467.6
84.2
0.69 -
1527.0
97.6
589.6
60.2
171.3
19.0
683.8
52.9
23.6
412.9
75.7
積層+ステッチ構造
0°方向引張強度
1.4
1.2
1.0
45°方向引張弾性率
0.8
0°方向引張弾性率
0.6
0.4
FW
ケース3
RTM1
ケース4
RTM2
45°方向引張強度
図3−2
90°方向引張弾性率
ケース3、4の特性比較
2)高速衝撃特性把握
ファンケース用組み合わせ候補ケース3およびケース4について、円柱
形の金属飛翔体を撃ち込み衝撃特性を把握した。図3−3に試験状況およ
びその結果を示す。図中、D1∼D3がケース3で、B1、B2がケース
4である。図より、D2試験片(高強度炭素繊維+変形エポキシ+ワイン
ディング)が同重量チタン比で約1.5倍の吸収エネルギーを有すること
がわかった。同図にD2と他の試験片の破壊後の形態を示すが、D2材は
繊維のせん断撃ち抜き破壊でなく引張破壊が主体的で、より広範な領域を
破壊することにより飛翔体のエネルギーを吸収しているためと考えられる。
続いて、このD2材について平板の飛翔体を撃ち込み衝撃特性を調べた。
結果を図3−4に示すが、平板においても円柱形と同様の優れた衝撃特性
を示すことがわかった。
以上より、ファンケースに適用する材料は以下のとおりとした。
・繊維 : 炭素繊維
・樹脂 : 熱硬化樹脂(エポキシ)D2
・成形方法 : プリプレグ+ワインディング
3-D(1)-13
選定材料D2:高強度CF/変性エポキシ
同重量Ti比 1.5倍
高速弾丸衝撃試験
吸収エネルギー
クランプ
試験片
150*150
Eout
Ein
鋼柱弾丸
13g, 220m/s
同重量チタン吸収エネルギー
吸収エネルギー =
衝撃エネルギー – 残留エネルギー
(Ein)
B2
B1
せん断モード材料:低吸収エネルギー
せん断打抜
大
はく離+引張
(熱可塑樹脂)
3D/RTM
(Eout)
D3
ワインディング
引張モード材料:高吸収エネルギー
せん断打抜
小
図3−3
D2
D1
C2
C1
はく離+引張
小
大
円柱高速撃ち込み試験
ファンブレードを模擬した平板弾丸衝撃試験
D2材は、チタンの1.5倍程度の吸収エネルギー
を示した。
600
300
Vi=Vr
Ti 1.5mm plate
Ti 1.7mm palte
D2 5.0mm plate
Ei=Ea
Ti 1.5mm plate
Ti 1.7mm plate
D2 5.0mm plate
500
Absorbed energy [J]
Residual velocity [m/sec]
250
200
150
100
50
400
300
200
100
0
0
0
50
100
150
200
250
300
0
100
200
Impact velocity [m/sec]
400
Impact energy vs Absorbed energy
Impact velocity vs Residual velocity
図3−4
300
Impact energy [J]
平板高速撃ち込み試験
3-D(1)-14
500
600
3)ファンケースの構造設計
上記の取得した材料基本特性および高速衝撃特性結果を基に、ファンブレ
ードコンテイメント可能なファンケースの構造設計を行った。想定したファ
ンケースの仕様およびコンテイメントブレードのサイズを図3−5に、設計
結果を図3−6に示す。結果として、ケースの重量はチタン金属製に比べ、
約15%減となることがわかった。
複合材ファンケース
<想定複合材ファンケース仕様>
直径 : 63” (1660mm)
材料 : 高強度カーボンファイバー
/ 熱硬化性樹脂の組合
積層構成: フランジ以外 [0/45/-45]n
(最外層、最内層は0度)φ1660
フランジ [45/-45]n
※0度 = 周方向
R806.5
<コンテイメントファンブレードサイズ>
Tip 半径
: 31.75” (806.5mm)
重量/1枚
: 4.2 kg (想定)
翼枚数
: 22 (想定)
最大回転数 : 5571 rpm (想定)
図3−5
複合材ファンケースの仕様
想定エンジン
弾丸衝撃試験:解析合せ込み
前フランジ
FBO解析
後フランジ
250
mat54_mesh1
coarse
解析
mat54_mesh1 fine
experiment試験
200
吸収エネルギー
O b s o rb e d E n e rg y J
ケース板厚
20%減
-1.5
D1
D2
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
軸方向位置
フランジ部
応力評価
150
100
50
0
0
50
100
150
200
250
300
350
Incident Energy J
衝撃エネルギー
図3−6
ファンケースの設計結果
3-D(1)-15
想定エンジン: V2500同等
重量軽減15%(対Ti ケース)
コンテイメント可能なことを確認
②ファンケースの試作
構造設計の結果を基に、実物大の複合材ファンケースの試作を行い、寸法
検査・非破壊検査とも良好な結果が得られ、その製造性を確認した。図3−
7に、製造工程および完成品を示す。
プリプレグ製造
ワインディング
ロービング
プリプレグ
ロービング
プリプレグ
大型フィラメント
ワインディング装置
織物
プリプレグ
マンドレル
直径:1700 mm、コンテイメント板厚:16 mm
一体フランジ
図3−7
織物
プリプレグ
オートクレーブ
超音波検査、加工
複合材ファンケースの試作
③試作ファンケースの評価試験
1)ハーフリング撃込試験
試作したファンケースの評価を行うため、フルリングを半分にしたハーフ
リングを用いて、平板飛翔体の撃ち込み試験を行った。図3−8に撃ち込み
試験の状況を、図3−9に試験結果を示すが、ほぼ設計通りの貫通限界エネ
ルギーが得られることが確認できた。
3-D(1)-16
高速度ビデオ画像
ハーフリング:
試作フルリングを半分
に切断
飛翔体
平板飛翔体:
Ti-6-4、1kg
撃込速度:
∼140m/s
ハーフリング内面
図3−8
吸収エネルギー
吸収エネルギー [J]
20000
ハーフリング撃ち込み試験の状況
Analysis D2 100%強度
D 2_試験
18000
Analysys D1 100% 強度
16000
D 2_試験(1.9Kg)
Experiment
D2
14000
Experiment D1
12000
Experiment D2 1864g
貫通後の吸収
エネルギーに差異
D 2_ 解析
D 1_試験
10000
D2貫通限
界アップ
8000
6000
4000
2000
0
0
5000
10000
15000
20000
衝撃エネルギー
衝突エネルギー [J]
図3−9
ハーフリング撃ち込み試験結果
2)フランジ部引張試験
ファンブレードオフ(FBO)時のファンケースフランジ部の強度を調べ
るため、ファンケースと同じ製造方法で試作したフランジ部の引張試験を行
った。その結果、FBO荷重時の破壊は小規模で、許容範囲内であることを
確認するとともに、十分なフランジ締結機能を有することがわかった。
図3−10に試験状況を、図3−11に試験結果を示す。
3-D(1)-17
100kN試験機
載 荷 荷 重 [k N ]
L字フランジ
試験片
ボルト破断
45
40
35
30
層間剥離
25
20
15
FBO荷重
10
5
0
0
治具
図3−10
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
試験機ストローク[mm]
フランジ部引張試験
3-D(1)-18
図3−11
試験結果
(2)ファンブレードの複合材料適用化技術
①材料選定/材料評価、構造・空力設計
1)材料基本特性の取得
複合材料を構成する繊維、樹脂及びその成形方法について、ファンブレ
ード用の候補となる組み合わせを検討した結果、表3−3に示す2ケース
の組み合わせについて、ファンケースと同様、各々試験片供試体を製作し、
繊維方向引張/圧縮強度、繊維直角方向引張強度、面内せん断強度等の基
礎的特性値を取得した。
表3−4に組み合わせケース1およびケース2の取得したデータを、図
3−12に両者の特性を比較したものを示す。
図3−12より、物性からみてケース2の方がケース1より優れた特性
を持つと判断され、また製造性を考慮してもケース2が勝っていると考え
られるが、最終的には、続いて行う高速衝撃特性把握の結果から選定を行
うことにした。
表3−3
ケース
ファンブレード用複合材料の組み合わせ
繊維
樹脂
成形方法
1
炭素繊維
熱硬化樹脂
(エポキシ)
プリフォーム
(三次元織物)
+ RTM
2
炭素繊維
熱可塑樹脂
プリプレグ
+ プレス
3-D(1)-19
表3−4
試験により取得したデータ
ケース1
ケース2
分類
呼称
試験種類
単位
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
弾性率
強度
強度
弾性率
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(GPa)
(MPa)
(MPa)
(GPa)
層間エネルギー開放率
GⅠC
(kJ/m2)
RTA/W
衝撃後圧縮
強度
(MPa)
RTA
3点曲げ
強度
(MPa)
引張疲労(R=0.1)
10E5最大応力
(MPa)
繊維方向引張
積
層
構
造
繊維方向圧縮
繊維直角方向
引張
面内せん断
(±45TS)
0°方向引張
3
ス
次
テ
元
織
チ
物
(
0°方向圧縮
ッ
基
本
特
性
90°方向引張
)
45°方向引張
0°方向引張
3
直
次
交
元
3
織
軸
物
(
0°方向圧縮
90°方向引張
)
45°方向引張
層間せん断
有孔圧縮
相
対
比
較
値
共
通
試験条件
2400.0
150.0
1280.0
145.0
48.0
8.0
88.0
4.5
1300.0
83.9
22.9
731.3
47.2
1782.5
115.0
677.2
43.7
15.8
45.8
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
RTA
110℃/W
RTA
3次元織物+RTM
TP2
RTM1
RTM2
RTM3
2733.5
156.1
1115.6
126.2
48.6
8.6
169.2
4.3
1445.6
86.6
23.7
817.5
49.0
2000.7
119.8
763.4
45.7
15.3
47.0
431.2
85.0
2820.6
160.2
1179.1
133.5
50.8
7.9
186.5
4.3
1409.4
88.6
23.7
786.9
49.5
1947.8
122.5
733.3
46.1
15.3
55.9
418.5
83.4
NA
1369.0
90.9
730.3
63.4
236.3
19.3
748.3
50.4
36.9
467.6
84.2
1527.0
97.6
589.6
60.2
171.3
19.0
683.8
52.9
23.6
412.9
75.7
0.45
1.15
0.69
367.4
382.4
306.8
353.6
RTA
501.5
646.1
385.3
262.1
348.0
70℃/W
1390
1160
870
910
1020
-
0°方向引張強度
1.4
1.2
0°方向引張弾性率
0.8
TP1
0.6
TP2
0.4
層間せん断強さ
1
0°方向引張弾性率
0.8
0.6
TP1
0.4
RTM1
TP2
RTM3
RTM2
90°方向引張弾性率
45°方向引張弾性率
90°方向引張強度
90°方向引張弾性率
45°方向引張強度
図3−12
-
直交3軸織物構造
1.2
45°方向引張弾性率
1431.0
105.3
622.1
77.3
724.4
53.3
160.0
16.4
36.2
427.1
112.0
346.9
相対比較
0°方向引張強度
1.4
層間せん断強さ
TP1
F/B想定特性
積層+ステッチ構造
1
熱可塑性樹脂
ファンブレード候補材料の物性試験結果
3-D(1)-20
2)高速衝撃特性把握
ファンブレード用ケース1およびケース2について、片持ち平板試験片に
ゼラチンを高速で撃ち込み衝撃特性を把握した。図3−13に試験状況と歪
計測の結果を示すが、試験と解析の結果はよく一致しており、最大歪4%ま
では損傷が発生しないことがわかった。また、ゼラチンの撃ち込み速度と損
傷面積の関係を図3−14に示すが、当初の熱可塑樹脂FRP(図中C2)
に対し、C2の層間に樹脂層を挿入(インターリーフ)することにより、損
傷を受ける面積が小さくなり衝撃特性が改善されることが明らかとなり、こ
のインターリーフを挿入したものをファンブレードに適用する複合材とし
て選定した。
図3−13
ゼラチン撃ち込み試験
3-D(1)-21
C2
C2:
CF1/熱可塑樹脂1
C2
C8
C8:
C2+インターリーフ1
C12
C12: C2+インターリーフ2
損
傷
F1: CF2/熱可塑樹脂2
F1
面
C8
E2: CF3/タフエポキシ
E2
積
E8
100
150
200
250
300
撃ち込み速度[m/s]
F1
図3−14
C12
衝撃特性の改善
3)2次元ダブテール引張試験
複合材ファンブレードのダブテール部の積層構造を検討するため、図3−1
5に示すとおり、2次元試験片による引張試験を行った。
試験セットアップ
試験片
応力解析モデル・歪み計測vs解析比較
PT1:
くし型
PT2:
入れ子型
PT3:
アンコ型
200
180
160
Load [kN]
140
120
100
80
H34WFLL
60
H34WFRR
H34WBLL
40
H34WBRR
20
解析
0
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
Strain [με]
220
破壊モード:
層間はく離 ⇒
圧力面上端せん断破壊
PT1 破壊荷重 約19 tonf
200
180
ロードセル荷重 [kN]
160
PT2 破壊荷重 14∼16 tonf
140
120
PT1-1,2,3
PT2-1,2,3
100
PT3-1,2,3
80
60
40
最大遠心荷重(長さ15mm相当)
3.17 tonf
20
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
・破壊荷重は想定遠心荷重の4倍以上
・破壊モードは圧力面せん断
・発生歪みは解析とほぼ一致
アクチュエータ変位 [mm]
図3−15
2次元ダブテール引張試験
3-D(1)-22
4)ファンブレードの構造・空力設計
上記の取得した材料基本特性および高速衝撃特性結果を基に、図3-16
に示すとおり、FOD等のブレード構造強度解析を行うとともに、CFD解
析等によるブレード空力設計、フラッター検討を実施し、複合材ファンブレ
ードの形状を決定した。その結果、現状では、現行のチタン合金製ブレード
に比べ、約10%の重量軽減となることがわかった。
図3−16
複合材ファンブレードの設計
②ファンブレードの試作
ファンブレード設計の結果を基に、実物大の複合材ファンブレードの試作
を行った。 試作後の寸法検査、非破壊検査とも良好な結果が得られ、その
製造性を確認した。 図3−17に、製造工程および完成品を示す。
積層
加熱加圧硬化
平面上に積層(TOTAL534層
うちAirfoil部210層)
平板形状に成形
金属補強板接着状態
T/Eガード
機械加工
チップ、エッジ、
ダブテイルを加工
プレス成形
ドレープ
加熱後、金型で賦型
(サーモフォーミング)
翼長:750mm、
ダブテール厚:50mm
図3−17
複合材ファンブレードの試作
3-D(1)-23
L/Eシース
③試作ファンブレードの評価試験
試作したファンブレードについて、回転時にゼラチンを衝突させる回転衝
撃試験を実施した。その結果、解析で予想した高応力発生場所でブレードが
破断することを確認した。回転衝撃試験の状況および結果を図3−18に示
す。
また、図3−19に示すように、静止したブレードへのゼラチン撃ち込み
試験を行い、衝撃時の歪応答が解析とほぼ一致することを確認した。
ゼラチン
ファンブレード
高応力部
図3−18
回転衝撃試験
3-D(1)-24
ゼラチン
ファン
ブレード
解析はコード
方向の変形を
0ms
4.0ms
1.0ms
5.0ms
2.0ms
6.0ms
過大に評価
3.0ms
解析
図3−19
3−1−3.
7.0ms
解析
実験
ゼラチン撃ち込み試験
特許出願状況等
表3−5
特許
実験
論文、投稿、発表、特許リスト
題目・メディア等
時期
PCT/JP2009/66879 繊維強化複合材用ファブリック、その
製造方法、繊維強化複合材製構造体及びその製造方法
H21.9
PCT/JP2009/67147 繊維強化プラスチック用のマトリック
ス樹脂組成物及び繊維強化プラスチック構造体
H21.10
3-D(1)-25
3−2.
目標の達成度
現時点での目標の達成度を、表3−6に示す。
表3−6
目標の達成度
要素技術
目標・指標
成果
達成度
ファンケースへの複合
材料適用化技術
既存のチタン合金製フ
ァンケースに比べ重量
20%減
・同重量チタン比で約1.5倍の吸収エネ
ルギーを有する繊維・樹脂・成形法の
組み合わせを見出すことができた。
・上記の結果より、ファンケースは最大
15%の重量減となることがわかった。
・実物大ファンケースを試作し、撃ち込
み試験により耐衝撃特性を実証するこ
とができた。
一部達成
ファンブレードへの複
合材料適用化技術
既存のチタン合金製フ
ァンブレードに比べ重
量20%減
・材料衝撃試験結果から、現状ではフ
ァンブレードの重量は10%減となるこ
とがわかった。
・実物大ファンブレードを試作し、衝撃
試験をおこなった結果、歪応答が解析
とほぼ一致することを確認した。
一部達成
なお、ファンケースについては、ハーフリング衝撃試験の結果から、目標の
20%減の目処を得ている。 また、ファンブレードについては、これまでの
試験データを衝撃歪応答の解析手法に反映し、目標の20%減の方策を得てい
る。
3-D(1)-26
4.
成果の活用について
本研究開発によって得られる技術は、今後の新しい高バイパス比のエンジ
ンに応用ができる技術であり、比較的近い将来では次期中小型機(150席
クラス機)用エンジンでの実用化が想定されている。具体的には、当協会が
国際共同開発のメンバーとして参画し開発したV2500エンジンの後継
エンジンへの活用が考えられる。このクラスの後継エンジンの需要は今後2
0年間では30,000台以上(参考資料:財団法人日本航空機開発協会「平
成20年度小型民間輸送機に関する調査研究」)の大きな市場が見込まれて
いるが、深刻化する地球温暖化防止などの面から益々燃料消費を抑えた高性
能なものが求められており、本研究開発成果による日本の技術が大いに貢献
できるものと考える。 更には、我が国の航空エンジン産業の国際共同開発
での確固たる地位の構築につながる。
5.
研究開発マネジメント・体制等
5−1.
研究開発計画
本研究開発の計画スケジュールを表5−1に示す。
表5−1
研究開発スケジュール
H19 年度
1)ファンケースへの複合材料適用
化技術
・材料選定/材料評価
H20 年度
H21 年度
基本特性、衝撃特性把握
・ファンケースの構造設計
当初の計画
・ファンケースの試作、評価
2)ファンブレードへの複合材料適
用化技術
・材料選定/材料評価
基本特性、衝撃特性把握
・ファンブレードの空力、構造設計
・ファンブレードの試作、評価
3-D(1)-27
5−2.
研究開発実施者の実施体制・運営
本研究開発は、公募による選定審査手続きを経て、財団法人日本航空機エン
ジン協会が経済産業省からの委託を受けて実施している。また、再委託先とし
て独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参加している。なお、細
部の試験および解析等については、株式会社IHIおよび川崎重工業株式会社
に外注している。実施体制を図5−1 に示す。
また、外部有識者からなる評価委員会を設置し、年2回の頻度で、研究計画、
研究成果等について客観的な評価を受けている。委員会のメンバーを表5−2
に示す。
財団法人
日本航空機エンジン協会
再委託
株式会社
IHI
表5-2
実施体制
評価委員会メンバー
氏名
委
5−3.
員
渡辺
柳
独立行政法人
宇宙航空研究開発機構
川崎重工業
株式会社
図5−1
委員長
評価委員会
紀徳
良二
所属
役職
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻
教授
独立行政法人宇宙航空研究開発機構 航空プロ
グラムグループ 環境適応エンジンチーム チ
ーム長
変化への対応
複合材ファンケースについては良好な結果が得られ、平成20年度で基本技
術確立段階を終了し、当初の目標をほぼ達成した。よって、平成21年度はフ
ァンブレードの研究開発に注力している。
3-D(1)-28
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