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口絵 2-1 放射能濃度測定試料の採取状況(その 1)
①鬼生田 111029-05 ②鬼生田 111029-05SP13,14 ④鬼生田 111029-05SP16 ⑤稚児舞台 111029-04 ⑥稚児舞台 111029-04SP10,11 ⑧上 ⑨上 ⑦稚児舞台 111029-04SP12 莱橋 111029-03 ③鬼生田 111029-05SP15 莱橋 111029-03SP08,09 ⑩小倉寺 111029-01SP01 ⑪小倉寺 111029-01SP02 ⑫小倉寺 111029-01SP03 ⑬鎌田大橋 111029-02 ⑭鎌田大橋 111029-02SP04 ⑮鎌田大橋 111029-02SP05 ⑯鎌田大橋 111029-02 口絵 2-1 ⑰鎌田大橋 111029-02SP06,07 ⑱梁川橋 111129-01 放射能濃度測定試料の採取状況(その 1) ⑲梁川橋 111129-01SP01 ⑳梁川橋 111129-01SP02 丸森橋 111129-02 旧地表 丸森橋 111129-02SP03-05 槻木橋 111129-03 槻木橋 111129-03SP10 丸森橋 111129-02SP06 槻木橋 111129-03SP08 駅側警務員室の南のコア試料 SP16 丸森橋 111129-02SP07 槻木橋 111129-03SP09 サッカー・ラグビー場のコア試料 SP23 SP20 SP17 SP18 SP19 学寮脇雨 馬場南の法面上 の下 車庫前のトレンチ断面 SP40 暗渠 上半部 下半部 車庫前のアスファルト断面 口絵 2-2 SP41 テニスコートレンチ断面 1 SP42 パイプ テニスコートトレンチ断面 2 放射能濃度測定試料の採取状況(その 2) 福島大学プロジェクト研究[自然と人間]研究報告 No. 9: 23-27 (2012) 福島大学の土壌試料等の放射能濃度 長橋良隆・高瀬つぎ子(福島大学・共生システム理工学類) 1.はじめに 属中学校と隣接する附属幼稚園では,グラウンド等の放射 2011 年4 月と5 月に, 福島大学の金谷川キャンパスと附 線量率が高いことが問題となっていた.そのため,2011 属中学校の土壌試料等を採取し,その放射能濃度を測定し 年 5 月22 日 31 日の日程でグランドや植栽部などの表土 た.ここでは,その結果を報告すると共に,簡単な解釈を 加え,測定試料の採取に関わる注意点等について報告する. 2.採取試料について 1)金谷川キャンパス 金谷川キャンパスにおける放射能濃度の測定試料は, 「駅側警務員室の南」 , 「サッカー・ラグビー場の東角」 , 「馬 場南の法面上」 , 「学寮脇雨樋の下」 「車庫前トレンチ」で 採取した. 「駅側警務員室の南」と「サッカー・ラグビー場の東角」 図 1 掘削機と試料採取状況 では,打撃式の掘削機(ジオプローブ54DT)を用いてコア 除去工事が行われた.今回測定した試料は,表土除去工事 試料を採取した(口絵 2-2 の㉙・㉚) .この掘削機はキャ が行われる以前に採取した試料と工事中に掘削されたト タピラによる自走式で,比較的自由に掘削場所を選択でき レンチの断面から採取した試料がある. る(図 1) . 「馬場南の法面上」は,法面を上がった林の中 である.ここではスコップを用いて深さ 40cm 程度の穴を 3.測定方法と結果 掘り,その断面から試料を採取した(口絵 2-2 の㉛) . 「学 福島大学構内で採取したコア試料および付属中学校の 生寮脇雨樋の下」では放射線量率が極端に高かったので, 土壌試料(深さ方向試料)は,深さごとに切り分けた後(1 雨樋から流れ落ちた砂混じりの粘土を採取した. 「車庫前 2cm間隔,重量50g程度) ,ビニール袋を用いて放射性 トレンチ」は,金谷川キャンパスの空間放射線量を低減す 核種の濃度が均一になるように混和した.混和後の試料を る目的で,側溝や排水升にたまっている砂や粘土,落ち葉 プラスチック容器(U-8 容器)に均一に詰め,γ線スペク 等を除去して埋積するために掘られたものである.その時 トル測定用試料とした.γ線スペクトルは,福島県立医科 に剥がしたアスファルト(口絵 2-2 の㉞)とトレンチ断面 大学所有のゲルマニウム検出器(キャンベラ製,相対効率 のアスファルト直下の砕石(口絵2-2 の㉝)を採取した. 20%)を用いて測定した(積算時間:1500 秒) .なお,放 2)附属中学校 射性核種の定量結果は,放射性核種の半減期を考慮し,試 福島大学附属中学校は福島市浜田町にある.ここでは, 料採取日の値に換算し直した. 「グラウンド」と「テニスコート」で試料を採取した.附 福島県外の土壌試料に関しては,U-8 容器に詰められた 23 福島大学の土壌試料等の放射能濃度/長橋良隆・高瀬つぎ子 土壌試料(重量:100g程度)のγ線スペクトルを福島大 下半部は上半部より 1 桁程度低い.アスファルト直下の砕 学所有のゲルマニウム検出器(キャンベラ製 相対効率 石試料は,7 月11 日に採取したものである.試料の採取に 40%)を用いて測定した(積算時間:3600 7200 秒) . あたっては,トレンチの断面において,5cm 程度横方向に 1)金谷川キャンパス ほりこんでから試料を採取したが,直上のアスファルトよ まず, 「馬場南の法面上」では,最上部でのみ放射性核 りも高い放射能濃度を示した.これがアスファルトの一般 種が検出された(付表 1 の SP16) .その下位の土壌では, 的な事象であるかははっきりしない.7 月 9 日に日雨量 131 17mm(1 時間雨量16mm)の激しい降雨があったので,この 試料の採取は 4 月末であるので,すくなくとも1 ヶ月半経 ことが影響した可能性もある. 過した時点で,放射性物質は表層部にとどまっていること 2)附属中学校 I は検出されず,134Cs と 137Cs は測定限界値以下である. を示す. 表土はぎ取り工事以前のグラウンド表層部の試料は, 131 I,134Cs と 137Cs のいずれもが検出され,その濃度は金谷 「駅側警務員室の南」と「サッカー・ラグビー場の東角」 の試料は,掘削機によって採取したコア試料である.一般 川キャンパスの試料とほぼ変わらない.深度 10 12cm の に,掘削機で採取したコア試料は,外周部に上位からの物 試料(付表2 の SP26 と29)では,検出限界値以下である 質が押しつけられて付着している.今回の測定試料は,こ ので,やはりこの時点では,表層部分に放射性物質が留ま の外周部を剥いでいないので,上位の試料が下位へと移動 っているといえる. している可能性がある.その上で測定結果をみると,深度 剥ぎ取り工事は,表層部の 5cm 程度を剥ぎ取っている. 8 10cm の試料(付表 1 の SP09 と 15)の放射能濃度は検 剥ぎ取った後のテニスコートトレンチ断面では,最上部の 出限界値以下となるので,これらの地点でも放射性物質は 試料 (付表2 のSP32) で 134Cs と 137Cs が検出されたものの, 表層部に留まっているといえる.しかし, 「駅側警務員室 その下位では検出限界値以下となっている.さらに下位の の南」の試料はローム質粘土からなり,有効空隙率が小さ 試料では放射性核種は検出されなかったので,先に述べた いにもかかわらず, 「サッカー・ラグビー場の東角」の試 グラウンドと同様に放射性物質は表層部に留まっている 料と同程度の深度まで放射能が検出された. 「サッカー・ ことを示している.また,グラウンド地下の排水溝となる ラグビー場の東角」の試料は砂からなるので,雨水がかな 暗渠の試料(付表2 の SP42 と43)においても放射性核種 り浸透するが,意外にも,地表下での放射性物質の移動は は検出されなかった.やはり,この時点では,放射性物質 この時点では明確に認められない.このことは後で述べる は雨水の浸透と共に移動していないといえる.さらに,表 附属中学校の事例も同様である. 土を剥ぎ取った後にグラウンドに新しい砂(白石市の山 「学寮脇雨樋の下」の試料は,同時期に採取した他の試 砂)を敷き詰めたが,その砂からは放射性核種は検出され 料と比較して 1 桁高い放射能濃度を示した.このことは雨 なかった(付表2 のSP44) . 水の流れで放射性物質が移動していることを示している. 「車庫前トレンチ」のアスファルト試料は,岩石カッタ 4.おわりに ーを用いて上半部と下半部に切断した.上半部は砕石が多 この報告では,林床内の土壌,グラウンドの砂,ローム く空隙も目立つが,下半部は砕石の大きさも小さくその割 質粘土,アスファルトについて,深さ方向の放射能濃度に 合も少ない(口絵 2-2 の㉞) .放射能濃度は上半部で高く, ついて記載した.林床内の土壌,グラウンドの砂,ローム 24 福島大学プロジェクト研究[自然と人間]研究報告 No. 9: 23-27 (2012) 質粘土の放射性物質は表層部に留まっており,試料採取時 点では雨水の浸透による移動は認められない.ただし,ア スファルト地下では,採取試料数が少ないこともあり,放 射性物質の移動について明確にすることはできなかった. なお,掘削機での試料採取にあたり,福島大学共生シス テム理工学類の柴崎直明教授,大学院生の大内拓哉君,佐 藤真一君,半谷尚之君,4 年生の馬場大輔君にお世話にな った.ここに記して謝意を表する. 25 福島大学の土壌試料等の放射能濃度/長橋良隆・高瀬つぎ子 26 福島大学プロジェクト研究[自然と人間]研究報告 No. 9: 23-27 (2012) 27