...

台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編

by user

on
Category: Documents
0

views

Report

Comments

Transcript

台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
―普通高校・職業高校の地域化政策に着目して―
劉 語 霏
本稿の目的は、後期中等教育における「高校地域化」を取り上げ、その内容と実施を検討すること
により、義務教育年限延長の改革に伴う、後期中等教育再編の動向と課題を明らかにすることであ
る。本論においては、以下の 4 点を考察する。第一に義務教育制度改革が要請されるようになった
背景を分析する。第二に「十二年国教」の施策を検討する。第三に「高校地域化」について「十二年
国教」及び総合高校との関わりを考察し、その導入意図と内容を分析する。第四に「高校地域化」の
実施課題を検討し、その影響要因を分析することにより、後期中等教育の再編の課題を提起する。
その結果、義務教育制度改革に伴って導入されてきた「高校地域化」は、後期中等教育の平準化・地
域化・統合化を狙いとするものの、地域間格差、学校序列関係、普通教育かつ公立志向、総合高校の
本質の問題等、後期中等教育に関わる固有の問題の深刻さがその実現を困難にしていることが明ら
かになった。
キーワード:台湾、十二年国民基本教育政策、後期中等教育の地域化政策、学校間格差、学習地域
はじめに
台湾の後期中等教育は、現在、大きな転換を迎えようとしている。政府は後期中等教育の義務化
を通じて、教育の機会均等の確保と教育の質の平準化を図り、後期中等教育における進学競争の緩
和や職業高校の不本意入学の問題解決を政策課題としている。
教育部(文部科学省に相当)は 1983 年から義務教育年限の延長の可能性について検討してきた。
2000 年代に入り、高校進学率の上昇(95%を超えた)に伴い、与野党において義務教育の延長に関す
る意識が固まったため、2005 年に「十二年国民基本教育政策」
(以下、「十二年国教」)を決定し、
2007 年より「十二年国民基本教育実施計画」の関連施策を順次推進させ、2009 年には全面的な実施
を予定している。
その中で、地域間の教育格差の縮小、普通高校と職業高校の対立関係の緩和を図るため、「普通高
校・職業高校の地域化政策」
(以下、
「高校地域化」)の試行がとりわけ重要視されている。「高校地域
化」
とは、
全国をいくつかの「適性学習地域」
(生徒の適性に応じた教育を提供できる学習地域、以下、
― ―
103
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
学習地域)
に区分けし、各地域内の普通高校と職業高校に教育資源の共有と連携を促進し、さらに地
域住民への継続教育の提供等、地域と密着した学校作りにより、生涯学習社会を築くことを目的と
している。この政策は「十二年国教」
の実現への道を敷くための政策であり、かつ総合高校の拡大に
繋がると期待されている。ところが、
「高校地域化」の区域内就学という基本理念には隣接学校への
就学奨励が設けられているものの、その隣接概念の不明確さと、普通高校と職業高校の分布の不均
衡、
進学校や保護者の抵抗等の問題があるため、
実際の区域設定は困難である。先行研究においても、
「十二年国教」
と「高校地域化」
のそれぞれの実施状況が明らかにされているが、相互の政策の関連性
について断片的に言及されているに過ぎず、また、総合高校との繋がり等の後期中等教育の再編を
マクロな視点から分析する研究は不足している 1。
そこで本研究は、後期中等教育における「高校地域化」を取り上げ、その内容と実施を検討するこ
とにより、義務教育年限延長の改革に伴う、後期中等教育再編の動向と課題を明らかにすることを
目的とする。具体的には、
後期中等教育における普通高校と職業高校の統合関係の再編の視点から、
教育部の政策文書の整理と分析を通じて、①義務教育制度改革が要請されるようになった背景を分
析すること、②「十二年国教」の施策を検討すること、③「高校地域化」について「十二年国教」及び
総合高校との関わりを考察し、その導入意図と内容を分析すること、④「高校地域化」の実施課題を
検討し、その影響要因(総合高校の本質の問題、複線型における二元的入試制度の構造問題、「十二
年国教」自体の揺らぎ)を分析することによって、後期中等教育の再編の課題を提起することが本研
究の狙いである。
1.義務教育制度改革の形成と展開
⑴ 現行の 9 年制義務教育の現状と課題
台湾では、小学校 6 年及び中学校 3 年が義務教育とされ、これを「九年国民教育」と表現している。
「中華民国憲法」
により、
「九年国民教育」
を受けるのは国民の権利であり、義務でもある。そして「国
民教育法」は「九年国民教育」の無償制と学区制を規定している。さらに「強迫入学条例」により、強
制入学が明示されている。
「九年国民教育」
は、
1968年実施以来、
国民の教育水準を向上させ、経済成長の原動力ともなったが、
80 年代に入り、中学校の就学率と高校進学率の上昇に伴い、その年限延長の検討が始まった。さら
に 90 年代以降、地域間の教育格差の拡大、学校序列化による進学競争の激化、少子化の衝撃等に直
面し、加えてほぼ半数 2 を占めている私立高校と公立高校の間の保護者負担格差の問題が表面化し
たため、義務教育制度の見直しが要請されるようになった。
⑵ 義務教育制度改革の展開
義務教育制度改革には上構(後期中等教育段階)と下構(幼稚教育段階)の両方向への展開 3 が見ら
れるが、本研究は上構への改革に限定して論ずる。
2009 年の「十二年国教」の全面的な実施までの義務教育制度改革は、方針によって三期 4 に分ける
― ―
104
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
ことができる。第一期は醸成期(1983 〜 1998 年)である。この時期の特徴は職業教育を中心とした
義務教育制度改革であるが、後期中等教育全体の義務教育制度改革の必要性についても検討されて
いた。
この時期においては、70 年代のアメリカで登場したキャリア教育の概念の影響 5 を受け、1983 年
の「職業教育を中心とした国民教育の延長計画」による「延教クラス」の開設を始め、進学しない中
卒者(3 割ほど)を対象に社会人になるための準備教育としての職業教育(1 〜 3 年)が提供された。
そして 1993 年より「実用技能クラス」
(1989 年に「延教クラス」から改称された)に接続するために
開設された中学校の「技芸教育クラス」の拡大実施に伴い、進学しない中卒者に対する最短 1 年の職
業教育の義務化が進んできた。一方、1980 年代後半からは、産業構造の変化及び 1987 年の戒厳令の
解除による民意の台頭を背景に、普通高校と職業高校の生徒数の割合(3:7)が問題視され、一度限
りの入学試験による普通高校と職業高校の進路の分け方に批判の世論が高まったため、教育部はア
メリカの総合高校制度の導入を検討し始めた。さらに、1997 年より職業高校の入学試験の廃止も試
行された。
第二期は模索・展開期(1999 〜 2004 年)である。この時期の特徴は普通高校と職業高校の統合を
目指し、義務教育年限延長の可能性について模索していることである。
この時期においては、教育の市場化と進学需要の拡大に後押しされた後期中等教育全体の義務教
育制度改革が展開された。2000 年に政権交替が行われたが、義務教育の延長による中学校の深刻な
進学競争の緩和を呼びかけている「全国保護者団体連盟」
(以下、全保盟)の支持を裏づけとし、与党
の民主進歩党(以下、民進党)
は前与党の中国国民党(以下、国民党)の義務教育制度改革を継承した。
しかし、時期が早すぎる、内容に具体性がない、定義不明を指摘していた「全国教師会」
(以下、全教
会)
の反対の声が高まり、そして学区制の実施や財政支出に様々な課題が予想されたため、改革は企
画段階に留まっていた。義務教育制度改革の最も大きな課題は、後期中等教育における普通教育と
職業教育の区切り方と入試制度である。そのため、教育部は普通高校と職業高校の対立構造に注目
し、その対立を緩衝するために総合高校を増設しつつ、入学試験による普通高校と職業高校の進路
の分け方を見直した。1999 年からの「高校地域化」の企画と試行を始め、2001 年の大学の「連合募集
試験」
(原語:聯合招生考試)の廃止、2003 年からの「高校地域化」と結びつく総合高校の拡大実施が
実施された。
第三期は整備期(2005 〜 2009 年)である。2008 年 5 月の政権交替までのこの時期の特徴は、義務教
育制度改革を通じ、普通高校と職業高校の一層の統合化を図ったことである。
この時期においては、2004 年の民進党の二度目の大統領選挙の勝利を背景に、選挙前の陳水扁前
総統の「十二年国民教育」
についての実施宣言を踏まえ、その実施準備は積極的に進められた。2007
年に政治の不安定や大統領選挙前の選挙運動は義務教育制度改革に拍車をかけ、再度「全保盟」の強
い要請を受けた蘇貞昌前行政院院長(内閣総理大臣に相当)が遂に 2 月に「国民基本教育」としての
方針を明確にし、迅速な実行を指示した。そのため、教育部は多くの先進国の義務教育年限が 9 年
以上であるという世界の義務教育の現状を把握しながら、現行の義務教育の課題に一層取り組む必
― ―
105
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
要性、および国民の教育水準の向上による国力増強を図るため、1999 年に制定された「教育基本法」
の第 11 条 6 を根拠に義務教育年限延長の改革に本格的に着手した 7。そして 12 年義務教育年限延長
の改革の方向性を肯定し、授業料の補助と学校設備の改善を最優先課題とし、職業高校の教育経費
の確保や進学ルートの拡大等を主張している全教会の建言を受け入れ、地域間の教育格差と公私立
高校の授業料格差の是正に着目し、
「高校地域化」及び総合高校の拡大実施とともに、従来の「普通
高校法」と「職業高校法」を統合し、
「十二年国教」の根拠法の一つとなる「高等学校法」を立案した。
ところが、馬英九前国民党主席(現大統領)をはじめとした与党が「十二年国教」の内容・定義の曖昧
さとその拙速な実施に対し、強い批判を表明し、幼稚教育へ下構の改革を主張している。さらに 5
月の内閣総理大臣の突然の辞任、2008 年 5 月の政権交替により、「高等学校法」
(草案)の審議を含む
「十二年国教」
の進行は停滞している。
⑶ 「十二年国民基本教育政策」
の概要
台湾では、
「国民教育」は既に戦前から法律用語として使われており 8、「九年国民教育実施条例」
(1968 年)と「国民教育法」
(1979 年)の公布によって一般に定着した。しかし、政府と教育部の公文
書や発言の中でしばしば「国民教育」
が「義務教育」と混用されるため、一般的には「国民教育」が「義
務教育」に相当し、教育部が推進している「十二年国教」は 12 年義務教育年限の延長を指すものとし
て考えられている 9。ところが、これまでに出された教育部の政策文書を検討すると、2004 年までは
「十二年国民教育」という用語が使用されていたが、2005 年に突然「基本」が加えられ、「十二年国民
基本教育」という名称に変わった。さらに政策の内容も一変し、当初「入試制度の廃止、学費免除、
非強制入学(自由入学)
」となっていたものを否定し、「非・入試制度の廃止、非・学費免除、非強制
入学」という「オプション政策」となった。次頁の表 1 は、2007 年 3 月に教育部が打ち出した「推動
十二年国民基本教育教育小説帖―国民的権利、国家的義務(The Proposal of 12 years Compulsory
Education)
」
の内容から整理したものである。
この名称変更の原因のひとつは、
「国民教育」という用語の定義について、2003 年の「全国教育発
展会議」を始めとする議論の中で、全教会、潘慧玲や楊思偉等の学者の指摘が殺到したことである。
すなわち、
「十二年国民教育」を義務教育に定義しようとするならば、義務教育の根幹である「機会
均等・水準確保・無償制」について、国がどのくらい責任を持って担保できるかに疑問が生じる。そ
こで、教育部は、義務教育としての実施は当分の間は不可能であることを認識し、2005 年に「十二
年国民教育」
の「国民教育」
を「国民基本教育」
に変更した 10。
ところが、その改名について、国民の理解は得られていない。なぜなら、改名後でも、政府は依然
として「十二年国教」という略称を頻繁に使用し、その英訳に「義務教育(compulsory education)」
をあてていることで、誤解と混乱を招きやすいためである。加えて、「国民基本教育」という用語は
1999 年の「教育基本法」に由来しているが、
「国民教育」との違い等、具体的な定義の説明が欠如し
ている。呼称の変更や政策内容の転換等、教育部の一連の改革内容を見ると、「国民教育」は義務教
育に相当するが、
「国民基本教育」は義務教育でも強制入学でもなく、単なる国民の後期中等教育を
― ―
106
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
受ける権利の保障、後期中等教育の普及と低学費を目指している、国民の教育水準を向上するため
の「国民素質教育」
であると考えられる。
表 1 「十二年国民基本教育政策」
の内容の整理
項目
細 目
根拠
小中 9 年:国民教育法 /高校 3 年:教育基本法
目的
・国民の教育水準の向上による国力増長
・教育の機会均等の確保による社会の公平正義の実現
・進学競争の緩和による生徒の適性発展
・地域格差の是正による教育格差の縮小
推進段階とその主な実施方針
・高 校 入 学 の 普 及:中卒の進学率を 100%まで上げる。
・教 育 の 質 の 向 上:質の高い高等学校を増設し、後期中等教育の質を向上させる。
・地域内就学の促進:
「高校地域化」を実現し、地域内の就学を促進する。
目標
・授業料格差の縮小:公私立高校間の授業料格差を縮小し、特に社会的・経済的な弱者である保護者の負担
の軽減を図る。
・地 域 格 差 の 是 正:教育資源の少ない地域にある高等学校を支援する。
①「高校地域化中間計画」の公布と実施(2003/08 ~ 2009/07)
②成績優秀な中卒者に地域内の高校への就学奨励(2003/08 ~)
前置準備段階(2003 年~ 2006 年) ③「高等学校法」の制定(2004/09 ~ 2007/12)
④経 済的に裕福ではない家庭の私立高校生への授業料援助計画など
(2006/08 ~ 2007/07 試行;2007/08 より実施)。
起動段階(2007 年~ 2009 年 7 月)
①私立高校生の授業料援助と公私立高校間の授業料格差の縮小
②「高校地域化」の拡大実施
③普通高校と職業高校の入学制度の見直しと改善
④十二年一貫教育課程の設置など。
全面実施段階(2009 年 8 月~)
①「十二年国教」の全面的な実施。
以下の表 211 に示すように、
「十二年国民基本教育政策」を従来の「九年国民教育」と比較してみる
と、両者の政策上の違いが明らかになった。
表 2 9 年制義務教育制度と「十二年国民基本教育政策」
の構造比較
構 造
「九年国民教育」
(小中の 9 年)
「十二年国民基本教育政策」
(高校の 3 年)
就学義務
①受けるのは国民の権利であり、義務でもある。
②強制入学(「強迫入学条例」)。
③保護者の子女を就学させる義務。
①受けるのは国民の権利ではあり、義務ではない。
②非・強制入学。
③保護者に子女を就学させる義務がない。
学校類型
①小学校の 6 年と中学校の 3 年。
②公 立はほとんどである。(2006 年度の私立学校
の割合:1.51%)
③学校類型はほぼ単一であり、教育内容に相違が
ほとんどない。
①高校の 3 年。
②私立高校は 4 割以上占めている。2006 年度の公
立高校と私立高校の比率 57:43。
③学校類型は多様(普通高校、職業高校、総合高校
等)であり、教育内容に相違がある。
教育費の
負担
①無償(公立学校)。
①無償ではないが、低学費の実施を目指している。
②各直轄市・県(市)政府が教育経費を負担するが、 ②私立高校生に授業料補助が行われている。
中央政府は必要な援助を行う。
入学制度
①戸籍による通学区域が定められている。
②選抜試験がない。
― ―
107
① 15 の基本学区による「区域内就学」。
②選抜試験があるが、申請入学制度の拡大が推進
されている。
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
2.「普通高校・職業高校地域化政策」と義務教育制度改革の関係
⑴「普通高校・職業高校地域化政策」
の導入経緯と位置づけ
前述のように、後期中等教育における普通教育と職業教育の区切り方(横の統合関係)と入試制度
(縦の接続関係)の再編は義務教育制度の改革における重要課題となっている。加えて、義務教育の
実現には機会均等の確保のための「学区通学制」も必要となる。そのため、1999 年当時、教育部は
2001 年に予定した大学の「連合募集試験」の廃止に合わせるために、普通高校と職業高校の対立関
係の緩和、地域の教育格差の縮小を図る「高校地域化」を企画し、2001 年にこれを実施した。
「高校地域化」の中心施策は学校を地域化するための地域分けであった。初期において、教育部は
「地域連携案」を打ち出し、生活圏の特徴を把握しながら、3 校以上の近隣の高校に「連携地域」を結
成させ、相互の連携と教育資源の共有を取り組むように促進した。これにより、22 の「地域」が結成
され、翌年には 66 に増加した。2003 年の「教育改革行動修正案」では、「高校地域化」は遂に試行案
から教育改革の政策になり、そして「総合高校の拡大政策」と結び付けられ、総合高校の増設と拡充
がその重点施策となっている。さらにその「中間計画」の公布により、「高校地域化」の目標が具体
化されると同時に、
「連携地域」
も見直され、66 の「地域」が 45 の「適性学習地域」に再編された。「適
性学習地域」とは単なる地域ではなく、生徒の多様なニーズに応じるために普通教育、職業教育、英
才教育、特殊教育の 4 課程が提供できる地域である。この 45 の学習地域はまさに「十二年国教」の実
施のための学区の雛形となった。
「十二年国教」の実施については、無償制による財政負担等をめぐって様々な議論が行われている
が、教育の機会均等原則の下で、学校選択の制限と通学区域の設定の成否がとりわけ重要視されて
いる。そのため、
「高校地域化」
の最終目的は「高校学区化」であり、学習地域と区域内就学の試行は
「十二年国教」
を実現させる最も重要な試金石である。だからこそ、その成否も「十二年国教」の実施
と評価に大きく影響する。一方、普通高校と職業高校の分立関係の緩和という導入目的で類似して
いる「高校地域化」と「総合高校の拡大政策」は相互にリンクすることによって、互いを補完しつつ
発展することが期待されている。
⑵ 「普通高校・職業高校地域化政策」
の概要
次頁の表 3 に示すように、生涯学習社会の到来に備え、「高校地域化」は、全国の各学習地域内の
普通高校と職業高校に教育資源の共有・連携を促進し、さらに地域住民への継続教育の提供等、地
域と密着した学校づくりを狙いとしている。
― ―
108
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
表 3 「高校地域化」の内容の整理 (資料 教育部の 2007 年の公開資料より作成)
項 目
細 目
目 的
教育の機会均等の確保、学校間・地域間の教育資源の平準化
・教育の機会均等の確保:区域内就学を希望している中学生の多様なニーズに応じ、各学習地域は普通
教育、職業教育、英才教育、特殊教育の 4 課程を提供し、そしてそれぞれの高校が適切な入学枠を設定
する。
目 標
・教育資源の平準化:地域内の生徒に適性に応じて発展させる良好な学習環境づくりのために、各学校
それぞれの教育の質の向上だけではなく、普通高校と職業高校間の教育資源の共有と連携による後期
中等教育全体の質を向上させる。さらに各学習地域における教育資源の格差を解消する。
期 間
2001 年~ 2009 年 7 月
地 域 数 ・北部:19 地域、206 校/中部:11 地域、119 校/ 南部:15 地域、149 校。
実施内容
①適切な学習地域の設定と調整。
②学習地域内の教育ネットワークの構築。
③横の高校間、縦の中高・高大(職業系を含む)
の連携の促進、生徒の適性に応じた学習課程の開設と改善。
④特色ある学習地域作りの促進など。
3.「普通高校・職業高校地域化政策」の実施と後期中等教育の再編
⑴ 「普通高校・職業高校地域化政策」
の実施状況
まず、後期中等教育における縦の接続関係(中学校から高校へ)の再編の視点から、「高校地域化」
の実施状況を分析する。台湾の入試制度は日本の学校別募集・試験とは異なり、学校の連合募集と
連合試験であった。2001 年の大学の「連合募集試験」の廃止までは、一回の試験によって全受験者
の順位を決め、得られた順位に従ってそのまま志望先に振り分ける。そのため、学校と地域は全く
関係がなかった。しかし、
「高校地域化」は学習地域の設定と区域内就学の推進を通じ、「学校を地
域化、地域を学校化」12 をしようとしている。
教育部の世論調査の結果によると、
「高校地域化」の実施現場における政策に対する満足度は、
2004 年度の 72.4%から年々増加している。2007 年度の世論調査 13 においては、高校(78.57%)は中学
校(81.06%)よりやや低いが、両者とも 8 割前後の生徒、保護者、教師はこの政策を評価している。
特に、両者とも保護者の結果が生徒と教師の結果を上回り、8 割を超えた。その原因の一つは、区域
内就学の促進による保護者の経済的な負担と子どもの遠距離通学問題が解消されたと考えられる。
「高校地域化」
が 2001 年実施されて以来、区域内就学率は 2002 年の 51.82%から 2005 年の 57.8%へと、
徐々にではあるが上昇している 14。
次に、普通教育と職業教育の区切り方(横の統合関係)の再編の視点から、実施状況を分析する。
普通高校と職業高校の生徒数の割合を調整するために導入した総合高校は、「高校地域化」の理念に
相応しい学校類型であるため、総合高校の増設、とりわけ経営困難の職業高校を総合高校へと改編
することが推進されている。その結果、2003 年以降、総合高校の学校数も生徒数も徐々に増加して
いる。
また、普通高校と職業高校の生徒数の割合について検討する。「高校地域化」は教育の機会均等の
確保という目標(表 3 参照)に基づき、各学習地域において、普通教育、職業教育、英才教育、特殊教
育の 4 課程が提供されている。教育部の 2007 年度の自己評価報告 15 の結果によると、2006 年の高 1
― ―
109
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
新入生の所属する課程別の割合は、普通教育(55.70%)、職業教育(41.12%)、英才教育(1.86%)、特
殊教育(1.33%)となっている。職業教育は依然として 4 割ほどを占めているが、「台北 5 区」におい
ては、職業高校がないため、総合高校にある職業学科という形で職業教育を行っているので、普通
教育と職業教育は 82.31 対 16.05 となっている。
さらに、教育資源の平準化という目標において、2006 年度の全国の学校間連携による授業の科目
数は 2005 年度の 559 個から 800 個に増え、連携学校数の 1.65 倍に達した。そして、受講生も年々増
加している。その中で、
生徒の学校外受講の科目数(369 個)は初めて教師の学校外開講の科目数(404
個)を下回った 16。その原因の一つは、生徒の学校外受講による安全や交通費負担などへの配慮であ
ろう。
⑵ 「普通高校・職業高校地域化政策」
の実施課題
以上の見てきたように、
教育部の各年度の自己評価報告と世論調査の結果によると、
「高校地域化」
の成果は概ね肯定的に評価されたが、この政策の三つの大きな柱:
「学習地域の設定」、「区域内就学
の制限」
、
「学校間連携の促進」
において、改善の必要性について指摘を受けた課題も残されている。
第一に、地域間格差が激しくて学校分布が不均衡であるため、学習地域の設定が困難である。そ
の中で、特に、台北市内に質の高い学校が集中しているため、「基隆区」や「台北 1 区」のような近隣
の台北県にある学習地域からの区域外就学者が少なくない 17。そして貧富の差が激しくなる一方で、
子どもをより良い学校に通わせるために台北市や新竹市等の都市部の土地を購入したりする保護者
の動きが予想されるため、学習地域間の序列化の形成とともに、教育の差から更なる貧富の差が拡
大し、社会階級の再生産が懸念される。
さらに、学習地域内の学校間(とりわけ公私立学校間)の序列化の恐れもある。台湾では、公立学
校優位なので、公立学校志望者が遥かに多い。しかし、各学習地域には私立学校がほぼ半分占めて
いるが、公私立学校間における教育の質の格差、授業料の格差、生徒の学力の差が大きいため、学校
間の連携が容易ではない。また、北部の「桃園 3 区」のように全 9 校の高校の中で、公立が 2 校しかな
い学習地域もあるのに対して、中部の「投 1 区」は全 3 校が全て公立、そして、「投 2 区」は全 9 校の中
で私立は 2 校しかない。そこで、私立高校の多い「桃園 3 区」での区域外就学者が増えている。また、
同じ桃園地域にある「桃園 1 区」
、
「桃園 2 区」
、
「桃園 3 区」の分け方は、いまだに保護者や学校に肯
定的に受け止められていない 18。すなわち、学校分布の不均等により、教育の機会均等の確保が難
しくなり、実際の学習地域の設定が極めて困難である。
第二に、地域社会の意識が薄く、進学競争が激しい中、台湾全体での学校間の序列関係が固定化
しているため、区域内就学の制限と学校間連携の促進が困難である。2001 年まで半世紀ほども実施
されていた、全国規模の高校入試及び大学入試(すなわち、
「連合募集試験」)により形成されてきた、
公私立学校間そして普通高校・職業高校間の序列関係は長年人々の意識に定着している。そのため、
従来の「連合募集試験」
を廃止して多様な入試制度を導入しても、こうした意識を変えることは容易
ではない。最も明白な例は都心部の台北市から区分けされた「台北市南区」での実施である。「台北
― ―
110
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
市南区」
には普通高校のトップ 5 校と職業高校のトップ校が入っているため、周辺地域からの進学希
望者が多く、学校選択の自由に制限をかけるのは困難である。さらに「台北市南区」には 21 校があ
るが、前述のような評判の極めて高い高校が入っている一方で、進学実績に大きな差のある高校も
入っている。学校間においての教育の質の格差や生徒の学力の差が非常に大きいため、連携も容易
ではない。
前述したように、実施現場での政策に対する満足度については、高校及び中学校の教育現場で 8
割前後が肯定的な評価をしているが、学習地域別の結果を見ると、最下 5 位の中では北部の地域が 4
つ(高校:3 つ)も占めており、最下位はやはりトップ高校が集中している「台北市南区」である 19。
すなわち、
「高校地域化」に含まれる学校間の連携や地域との協働の重要性について、受験競争の加
熱化による進学重視の都心部の学校はどのように受け止めているのか、そして、そこに通っている
生徒とその保護者はどれだけ理解しているのか、疑問が残る。
第三に学校間の日程調整等は手間がかかるため、連携授業履修が難航している。前述したように、
全国の学校間連携授業の科目数も受講生も年々増加しているように見えるが、実際に生徒の受講比
率も教師の開講比率も減っている。そして、学校連携授業を開いていない地域もある 20。また、生
徒の学校外受講による安全や交通費負担等への配慮のため、教師の学校外開講の科目数のほうは生
徒の学校外受講の科目数より増えたが、日程の調整や学校間の往復等により、教師の負担が大きく
なる懸念がある。さらに、連携の授業の科目や中身にはばらつきがあり、一貫性が欠如していると
いう指摘もあった 21。すなわち、授業の科目数の数字の増加は単に量的に膨張しただけで、実際に
質の向上に繋がっていない。
4.考察と結論
台湾における義務教育制度改革が要請された背景には、後期中等教育における学校序列化による
進学競争、
職業高校の不本意入学、
地域間の教育格差、公私立高校間の授業料の格差が存在している。
こうした課題の解決のため、
「十二年国教」が打ち出された。しかし、これは義務教育ではなく、国
民の後期中等教育を受ける権利の保障、後期中等教育の普及と低学費、国民の教育水準の向上を目
指す「国民素質教育」である。
「十二年国教」の中核政策である「高校地域化」は、義務教育の学区制
を実現させる重要な試金石であり、かつ総合高校の活性剤でもある。
こうした中で、義務教育制度改革の展開に伴った後期中等教育の再編には、大衆化、多様化、総合
化、地域化の動向が見られる。これらの改革動向を具体化した「高校地域化」は、地域内の学校間の
壁をなくし、相互の教育資源の共有と連携を通じ、生徒に多様で適性的な学習内容・活動を提供し、
後期中等教育全体の質を向上させるのが狙いである。さらに区域内就学と地域に開かれた学校づく
りを目指すこの政策の導入を契機に、生徒と学校に地域との連帯感と地域意識を形成することによ
り、今後、地域の人々による学校運営への参画や、文化や社会活動等の地域資源の共有など、地域の
人々と学校との積極的な協働が行われる生涯学習社会に向けた一層の発展が期待されている。
しかしながら、
「高校地域化」は以下に示すような政府、生徒・保護者、学校の対立が認められる
― ―
111
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
ため、
その政策意図が教育現場に受け入れられず、政策の理念と現実にギャップが見られる。第一に、
地域間格差が激しく学校分布に不均衡があるため、政府の政策企画側にとって学習地域の設定が困
難である。第二に、地域社会の意識が薄く進学競争意識が定着しており、学校間の序列関係も固定
化しているので、生徒や保護者等の教育消費者側にとっては、学校選択の自由の制限に抵抗がある。
第三に、学校間の日程調整等は手間がかかって教師の負担が大きく、連携授業履修調整が難航して
いるので、学校教育現場の実施側にとっては、生徒や教師への参加・協力要請が困難である。
その一方で、総合高校増設の方針を取り入れているので、「普通高校・職業高校地域化政策」は「普
通高校・職業高校統合化政策」とも言える。しかし、体制上は総合高校であっても、実際には普通高
校と職業高校との併設学校という従来の総合高校が抱える問題が未解決であるため、また職業高校
を総合化しようとする「高校地域化」
の実態には、導入当初の政策方針との乖離が生じている。
義務教育制度改革に伴って導入されてきた「高校地域化」は、後期中等教育を平準化・地域化・統
合化を狙いとするものの、地域間格差、学校序列関係、普通教育かつ公立志向、総合高校の本質の問
題等、
後期中等教育の固有問題の深刻さがその実現を困難にしている。その最も大きな影響要因は、
後期中等教育段階以降の普通教育系統と職業教育系統の複線型における二元的入試選抜制度であ
る。中学校においては、
普通教育系統の大学への進学に有利な公立普通高校への生徒の希望が多く、
学習地域による学校選択自由の制限は望ましくない。そして、高校においても、それぞれの普通教
育系統と職業教育系統の高等教育段階への入試準備を行うために、普通高校と職業高校との連携も、
地域との連携も表面上のものになりがちである。後期中等教育における横の統合関係の再編ととも
に、高等教育と前期中等教育との縦の接続関係の改革を行わない限り、その再編の効果は得られな
い。要するに、後期中等教育の再編の鍵となる普通教育系統と職業教育系統との二元的入試選抜制
度が変わらないままでは、普通高校と職業高校との連携関係の再構築における「高校地域化」の理想
には限界がある。
加えて、2003 年から推進してきた「十二年国教」には次々と困難が生じ、多くの課題を抱えており、
その評価は賛否両論である。特に「十二年国教」の定義の曖昧さにより、「十二年国教」は義務教育
延長の改革というよりも、単なる「高校教育の改善政策」、「低学費政策」、または「私立高校支援策」
であるというような指摘が生じた 22。そもそも後期中等教育段階は初等教育段階・前期中等教育と
は性格上の違いが大きく、学校選択の自由が認められていた後期中等教育を義務教育として規制す
ることが困難なのは当然とみられる。
「十二年国教」自体の揺らぎは基礎政策となる「高校地域化」
の実施ひいては後期中等教育の再編にも影響を及ぼすことになる。
【註】
1 「高校地域化」に関する先行研究の中で最も代表的なのは、
「高中職社区化教育政策実施成効與問題分析」
(馮丹白・
陳信正、『教育政策論壇』第 10 巻第 2 期、2007 年 5 月、123–164 頁)という論文である。「高校地域化」の実施と課題の
みならず、12 年義務教育年限の延長や総合高校との関わりも論じた。しかし、普通高校と職業高校との統合関係や
前期中等教育との接続関係等、後期中等教育の再編の視点が欠如している。
― ―
112
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
2 教育部統計処「主要統計表」によると、2000 年時点、私立高校は 46.9%、私立高校生は 48.5%を占めている。
3 1984 年の「学制改革法案」より現在に至るまで、義務教育の下構方向への延長についても提起されてきたが、依然
として論議と検討の段階に留まっている。
4 こ こ で の 区 分 は、「 推 進 沿 革 」
( 教 育 部、十 二 年 国 民 基 本 教 育 ホ ー ム ペ ー ジ:http://epaper.edu.tw/12edu/
about05_evo.php、平成 20 年 9 月 30 日最終確認)、「十二年国民基本教育政策企画歴程研析」
(陳益興・王先念、『教育
研究月刊』第 158 期、2007 年、8–9 頁)、「推進十二年国民教育政策之研究」
(楊思偉、『教育研究集刊』第 52 輯第 2 期、
2006 年、4–7 頁)、「十二年国民教育政策発展的回顧與展望」
(呉清山・高家斌、『教育資料與研究』第 63 期、2005 年、
59–60 頁)等の資料から筆者がその時期的な特徴を考察し、示したものである。
5 饒達欽「美国事業教育之探源及其対我国延長以職業教育為主的国民教育之啓示」
『師大学報』第28期、1983年、19頁。
6 「国民基本教育は社会発展の必要により、その年限を延長すること。」
7 教育部、「推動十二年国民基本教育教育小説帖―国民的権利、国家的義務」
『台湾図書館管理季刊』第 3 巻第 3 期、
2007 年 7 月、114 頁。
8 張鈿富・林素鈺「十二年国民教育的定義與詮釈」
『研修資訊』第 23 巻第 1 期、2006 年 2 月、5 頁。
9 例えば、「十二年国教
国教向下延伸 K 教育計画専案報告」
(教育部ホームページ「専案報告」
:http://www.edu.
tw/content.aspx?site_content_sn=1322、平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)や「相関法令」
(教育部、十二年国民基本教
育ホームページ:http://epaper.edu.tw/12edu/about02_law.php、平成20年9月30日最終確認)等の公開文書の中で「国
民教育」と「義務教育」との混用が見られる。
10 教育部、「為何不実施強迫入学式的十二年国民義務教育?」、十二年国民基本教育ホームページ「常見問答」
:
http://epaper.edu.tw/12edu/qa.php?style=01(平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)
11 教育部中等教育司「実施十二年優質国民教育」、2007 年 2 月、4 頁より作成。
12 呉清山・高家斌「台湾中等教育改革分析」
『教育資料集刊』第 34 巻、2007 年 6 月、8 頁。
13 教育部「96 年度高中職社区化民意調査報告」、1–2 頁、高中職社区化ホームページ「成効評估」
:
「95 学年度高中職社
区化民意調査
成効評估之結論與建議」http://140.122.120.203/comm/index-1.htm(平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)
14 教育部「高中職社区化宣導手冊(2007 年版)」、6 頁。
15 教育部、前掲調査報告(13)、4 頁(平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)
16 教育部、前掲調査報告(13)、7 頁(平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)
17 馮丹白・陳信正「高中職社区化教育政策実施成効與問題分析」
『教育政策論壇』第 10 巻第 2 期、2007 年 5 月、149 頁。
18 同上。
19 教育部、前掲調査報告(13)、18–19 頁(平成 20 年 9 月 30 日最終確認。)
20 馮丹白・陳信正、前掲書(17)、154 頁。
21 呉敏華「均衡品質・共享資源・十二年国教:我国高中職社区化推動方案初探」
『中等教育』第 55 巻第 3 期、2004 年 6 月、
150 頁。
22 林海清「推動十二年国民基本教育的省思與展望」
『台湾教育』第 645 期、2006 年 6 月、18 頁。
― ―
113
台湾の義務教育制度改革に伴う後期中等教育の再編
The Restructuring of the Upper Secondary Education Brought
About By Compulsory Education System Reforms in Taiwan:
Focusing on “the Senior-Vocational High School Localization Plan” Policy
Yu-Fei LIU
(Graduate Student, Tohoku University)
The purpose of this paper is to examine the implementation of and issues revolving “the
Senior -Vocational High School Localization (the original term: Communitization) Plan (SVLP)”
Policy, as well as to analyze the restructuring of the upper secondary education brought about by
compulsory education system reforms in Taiwan. The focus of the paper includes the reasons
for compulsory education system reforms since 1983, the details of the SVLP and “the TwelveYear Compulsory Education Policy (TYCEP),” and the relationship between the two policies. The
ultimate goal of this paper is to clarify the resulting effects and impacts of the SVLP, and to
analyze the trend of upper secondary education restructuring in Taiwan.
The Ministry of Education (MOE) in Taiwan has considered extending the length of
compulsory education since 1983. After 2000, in view of rising advancement rates to high school,
the MOE initiated the TYCEP in 2007, and planned for implementation in 2009. The SVLP is a
part of the TYCEP, and emphasizes on reducing regional educational disparities and promoting
the cooperation between senior high schools(普通高校)and vocational high schools(職業高校). The SVLP divided Taiwan into 45 regions; each termed a “Learning Area”, and grouped high
schools into each region based on the characteristics of each school, its geography ,accessibility
and connection in each region, etc. In every “Learning Area”, the cooperative relationship among
schools and nearby communities can provide students with better learning environments and in
addition contribute to the development of the region.
However, although these good practices of the SVLP are effective in improving students’
motivation for studying as well as increasing enrollment rates in the area, there are still some
difficulties faced by schools. First, by virtue of unequal distribution of schools among the rural
and urban areas, some students and parents question the fairness of school allocation to each
region, with some moving to towns to find better schools. Second, the school ranking between
elite and non-elite schools, public and private schools, even senior high schools and vocational high
schools resulted in the “Learning Area” becoming more controversial, and the cooperation
between senior high schools and vocational high schools becoming ineffective. Third, in some
“Learning Areas”, especially in the rural parts, the formulation of cross-school curricula is
― ―
114
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 57 集・第 1 号(2008 年)
complicated and time consuming even for schools located within the same region.
Key word : Taiwan, TYCEP, SVLP, school ranking, Learning Area
― ―
115
Fly UP