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プログラム方式二酸化炭素固定化・有効利用技術開発 CO2を原料とした

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プログラム方式二酸化炭素固定化・有効利用技術開発 CO2を原料とした
平成16年度
二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業
プログラム方式二酸化炭素固定化・有効利用技術開発
CO2を原料とした微生物による有用物質生産技術
体系のための基盤技術の開発
成果報告書
平成17年3月
財団法人 地球環境産業技術研究機構
委 員 会 名 簿
プログラム方式二酸化炭素固定化・有効利用技術開発CO2を原料とした微生物による有用物質
生産技術体系のための基盤技術の開発研究推進委員会
委員長
中島 春紫
明治大学大学院農学研究科応用生命工学専攻
助教授
橋本 渉
京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻 助教授
本田 与一
京都大学木質科学研究所バイオマス変換分野
助教授
目
次
概要 ················································································································································1
英文サマリー·································································································································3
第1章 緒言···································································································································5
1.1
概要·······························································································································5
1.2
研究開発の目的、方法及び実施体制·········································································6
1.2.1
研究開発の目的 ·············································································································6
1.2.2
研究開発の方法 ·············································································································6
1.2.3
研究場所 ·························································································································8
1.2.4
実施期間 ·························································································································8
1.2.5
実施状況 ·························································································································9
1.2.6
実施体制 ·······················································································································10
第2章 微生物細胞内へのCO2取り込み機構の解明と強化技術の開発 ································· 11
2.1
概要····························································································································· 11
2.2
微生物が有するCO2取り込み関与酵素群 ································································12
2.3
C. glutamicum RのCO2取り込み関与酵素群の解析 ·················································18
2.4
まとめ·························································································································25
第3章 微生物細胞内における新規CO2 Integration(組み込み)機構の探索とその高効率化
················································································································································29
3.1
概要·····························································································································29
3.2
微生物のCO2 Integration反応関連酵素遺伝子、及びC. glutamicum RのCO2
Integration 反応関連酵素遺伝子の解析 ··································································30
3.3
C. glutamicum R のCO2 Integration反応酵素遺伝子の発現挙動解析 ······················37
3.4
C. glutamicum RのCO2 Integration反応関連酵素群の強化 ·······································41
3.5
まとめ ························································································································45
第4章 細胞内エネルギー生成機構の高効率化
4.1
概要·····························································································································47
4.2
細菌の糖輸送システム······························································································47
4.3
細菌の PTS 遺伝子·····································································································50
4.4
コリネ型細菌のホスホトランスフェラーゼシステム············································51
4.5
まとめ·························································································································55
第5章 結び
4.1
研究成果のまとめ······································································································58
4.2
今後の課題 ·················································································································60
平成16年度
成果外部発表 ·································································································61
概
要
本技術開発は、プログラム方式二酸化炭素固定化・有効利用技術開発事業の一テー
マ と し て 、経 済 産 業 省( METI)か ら の 資 金 を も と に 、財 団 法 人 地 球 環 境 産 業 技 術 研 究
機 構 ( RITE) が 実 施 す る も の で あ る 。
微 生 物 に よ る CO 2 利 用 プ ロ セ ス は 、 主 に 光 合 成 細 菌 や 藻 類 を 用 い て 研 究 開 発 が 行
わ れ て き た が 、 こ れ ら 従 来 プ ロ セ ス に お い て 、 CO 2 は 単 に 微 生 物 菌 体 の 増 殖 に 利 用 さ
れ る だ け で あ っ た 。 し か し 、 微 生 物 に よ る CO 2 利 用 プ ロ セ ス の 真 の 実 現 化 に は 、 プ ロ
セスが経済性を有することが必要であるため、微生物菌体ではなく、より付加価値の
高 い 物 質 に CO 2 を 変 換 し な け れ ば な ら な い 。 我 々 は こ れ ま で に 、 コ リ ネ 型 細 菌
(Corynebacterium glutamicum R)の 特 性 を 利 用 し 、バ イ オ マ ス 由 来 の 糖 類 と CO 2 か ら コ ハ
ク 酸 を 生 成 す る RITEプ ロ セ ス を 構 築 し 、 CO 2 を 原 料 と す る 有 用 化 学 物 質 生 産 技 術 の 可
能 性 を 見 出 し た 。 そ こ で 本 技 術 開 発 で は 、 RITEプ ロ セ ス を 拡 大 展 開 し 、 CO 2 を 原 料 と
した微生物による有用物質生産技術体系の開発に寄与する基盤研究を行う。
本 技 術 開 発 の 主 要 な 技 術 課 題 は 、CO 2 有 効 利 用 に 特 化 し た 改 良 微 生 物 の 構 築 で あ り 、
そ の た め に 、 微 生 物 の 細 胞 レ ベ ル に お け る CO 2 利 用 能 力 を 高 効 率 化 を 目 的 と し た 以 下
の実施項目を挙げた。
(1)
微 生 物 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 と 強 化 技 術 の 開 発
(2)
微 生 物 細 胞 内 に お け る 新 規 CO 2 Integration( 組 み 込 み ) 機 構 の 探 索 と そ の 高 効
率化
(3)
細胞内エネルギー生成機構の高効率化
本成果報告書は、上記実施項目を中心に平成16年度に実施した技術開発の成果に
ついてまとめたものである。以下に内容を要約する。
第1章は、緒言である。
第 2 章 で は 、 微 生 物 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 と 強 化 技 術 の 開 発 に つ い て
の 成 果 を ま と め た 。 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 強 化 を 目 的 と し て 、 CO 2 取 り 込 み
機 構 の 解 明 を 行 っ た 。 本 年 度 は 、 CO 2 取 り 込 み 機 構 に 関 与 す る 微 生 物 酵 素 に つ い て 既
往 の 生 化 学 的 、分 子 生 物 学 的 知 見 に 関 し て 網 羅 的 検 索 を 行 い 、さ ら に 、C. glutamicum R
に お け る こ れ ら の 酵 素 遺 伝 子 の 相 同 性 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 能 動 的 CO 2 取 り 込 み
酵素遺伝子に高い相同性のある 5 遺伝子、及び炭酸濃縮関連酵素遺伝子に高い相同性
の あ る 3 遺 伝 子 が C. glutamicum Rゲ ノ ム 中 に 認 め ら れ た 。
-1-
第 3 章 で は 、 微 生 物 細 胞 内 に お け る 新 規 CO 2 Integration (組 み 込 み )機 構 の 探 索 と そ
の 高 効 率 化 に つ い て の 成 果 を ま と め た 。こ れ ま で に 約 220 種 の CO 2 組 み 込 み 反 応 に 関
す る 酵 素 遺 伝 子( CO 2 を 基 質 と す る 酵 素 が 約 210 種 、HCO 3 - が 約 10 種 と 推 定 )の 存 在
が 認 め ら れ て い る 。 そ こ で 、 微 生 物 が 有 す る CO 2 Integration 酵 素 遺 伝 子 に つ い て 網 羅
的 に 調 査 、抽 出 解 析 し た 。一 方 で 、既 に 確 立 さ れ て い る C. glutamicum R の ト ラ ン ス ク
リ プ ト ー ム 技 術 を 用 い て 、 CO 2 Integration 酵 素 遺 伝 子 の 発 現 挙 動 を 解 析 し 、 物 質 生 産
条 件 下 に て 発 現 量 が 増 大 す る 数 種 の 遺 伝 子 を 見 出 し た 。 さ ら に 、 CO 2 Integration 酵 素
を 遺 伝 子 工 学 的 手 法 に よ っ て 高 発 現 し 、 C. glutamicum R の CO 2 固 定 速 度 の 増 加 に 成
功した。
第4章では、細胞内エネルギー生成機構の高効率化についての成果をまとめた。微
生物の糖輸送システムについて、大腸菌や枯草菌等のホスホトランスフェラーゼシス
テ ム (PTS)酵 素 遺 伝 子 を 中 心 に 、 調 査 、 解 析 を 行 っ た 。 さ ら に 、 得 ら れ た 情 報 と C.
glutamicum R 全 ゲ ノ ム 情 報 を 基 に 、C. glutamicum R の PTS 関 連 酵 素 遺 伝 子 を 解 析 し た 。
そ の 結 果 、C. glutamicum R に は 、二 種 の 可 溶 性 の 共 通 コ ン ポ ー ネ ン ト 酵 素 (Enzyme I,
HPr)、 及 び 四 種 の Enzyme II の 酵 素 遺 伝 子 の 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ ら
の 結 果 よ り 、 大 腸 菌 や 枯 草 菌 の PTS 関 連 酵 素 遺 伝 子 に 対 し て 、 コ リ ネ 型 細 菌 の PTS
関連酵素遺伝子は比較的少ないことが認められ、コリネ型細菌では少数の酵素が積極
的に糖の細胞内輸送を担っていることが推察された。
第5章では、成果と今後の課題についてまとめた。
-2-
Summary
Research Institute of Innovative Technology for the Earth (RITE) is running the project,
“Research and development of fundamental technology for production of useful compounds from
CO2”, as one of themes for “ the Programmed Methods CO2 Fixation and Effective utilization
Technology Development” which by supported by the Ministry of Economy, Trade and Industry
(METI).
The key R&D points are:
(a) Characterization and enhancement of microbial CO2 uptake system
(b) Enhancement of CO2 integration reaction
(c) Improvement of the intracellular energy conversion
This report summarizes the results obtained within the framework of this study during the
first year of the project (fiscal year 2004). The report includes the following five chapters.
Chapter 1: Introduction
Chapter 2: Characterization and enhancement of microbial CO2 uptake system
As a means to enhance the CO2 uptake system, studies on clarification of microbial CO2
uptake system were carried out. In this physical year, molecular biological and biochemical
information of the gene of microbial CO2 uptake system were investigated. And then, five gene of
CO2 active transporter and three gene of CO2 accumulation enzymes might exist in C. glutamicum
R on the basis of homology searches of these gene.
Chapter 3: Enhancement of CO2 integration reaction
Studies on enhancement of CO2 integration reactions for the purpose of increase the rate
of CO2 fixation were carried out. About 220 of gene of CO2 integration enzyme (enzymes using
CO2 as the substrate are 210, and the HCO3- are 10) were already identified. Based on these
information, the expression analysis of CO2 integration gene in C. glutamicum R was performed.
In result, some gene which high expressed under oxygen-deprivation conditions were found.
Moreover, the rate of CO2 fixation increased by of overexpression of the anaplerotic enzyme gene.
Chapter 4: Improvement of the intracellular energy conversion
Improvement of microbial sugar transport systems were investigated for efficiently
provision energy to CO2 integration reaction in bacterial cells. In this physical year, molecular
biological information of phophotransferase system (PTS) which is main sugar transportation
-3-
system in bacteria such as that of Escherichia coli and Bacillus subtilis were investigated. Based
on above information, gene of PTS enzymes in C. glutamicum R were determined. Two of
common component enzymes (Enzyme I, HPr) and four kinds of periplasmic enzymes (Enzyme II)
might exist in C. glutamicum R.
Chapter 5: Conclusions to date and future plans
-4-
第1章
緒言
1.1
背景
微 生 物 に よ る CO 2 利 用 プ ロ セ ス は 、主 に 光 合 成 細 菌 や 藻 類 を 用 い て 研 究 開 発 が 行 わ
れ て き た が 、 こ れ ら の 従 来 プ ロ セ ス で は 、 CO 2 は 単 に 微 生 物 菌 体 の 増 殖 に 利 用 さ れ る
だ け で あ っ た 。し か し 、微 生 物 に よ る CO 2 利 用 プ ロ セ ス の 実 現 に は 、プ ロ セ ス が 経 済
性を有することが必要であるため、微生物菌体ではなく、より付加価値の高い物質に
CO 2 を 変 換 し な け れ ば な ら な い 。我 々 は こ れ ま で に 、コ リ ネ 型 微 生 物 の 特 性 を 利 用 し 、
バ イ オ マ ス 由 来 の 糖 類 と CO 2 か ら コ ハ ク 酸 を 生 成 す る RITE プ ロ セ ス を 構 築 し 、 CO 2
を 原 料 と す る 有 用 化 学 物 質 生 産 技 術 の 可 能 性 を 見 出 し た 。本 提 案 で は 、RITE プ ロ セ ス
を 拡 大 展 開 し 、 CO 2 を 原 料 と し た 微 生 物 に よ る 有 用 物 質 生 産 技 術 体 系 の 確 立 に 寄 与 す
る基盤技術の開発を行う
1.2
目的と課題
本 技 術 開 発 で は 、 高 い STY( 単 位 容 積 時 間 当 た り の 生 産 性 ) を 有 す る RITE プ ロ セ
ス を 、 CO 2 を 原 料 と し た 有 用 物 質 生 産 技 術 に 展 開 す る 。 従 っ て 、 CO 2 有 効 利 用 に 特 化
し た 改 良 微 生 物 を 該 プ ロ セ ス に 導 入 す る こ と が 鍵 と な り 、細 胞 レ ベ ル に お け る CO 2 利
用能力を高効率化する必要がある。
そ こ で 本 技 術 開 発 で は 、ま ず 微 生 物 の CO 2 利 用 反 応 の 第 一 段 階 で あ る 、外 界 か ら 細
胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 を 行 う 。ま た 、細 胞 内 に お け る CO 2 の 細 胞 内 代 謝 中
間 体 へ の 組 み 込 み (Integration) 機 構 の 解 析 を 行 い 、 そ の 効 率 化 を 図 る 。 さ ら に 、 CO 2
組み込み反応にエネルギーを高効率で供給するために、微生物の糖利用効率の向上に
つ い て の 検 討 を 行 う 。 こ れ ら の 検 討 で 得 ら れ た 改 良 微 生 物 を RITE プ ロ セ ス に 導 入 す
る こ と に よ っ て 、 CO 2 を 原 料 と し た 微 生 物 に よ る 有 用 物 質 生 産 技 術 体 系 の た め の 基 盤
となる技術を確立する。
1.3
実施項目
1.3.1 研 究 項 目
本 基 盤 技 術 開 発 で は 、CO 2 有 効 利 用 に 特 化 し た 改 良 微 生 物( コ リ ネ 型 微 生 物 )の 作 製
を目的として以下の研究項目を設定した。
(1) 微 生 物 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 と 強 化 技 術 の 開 発
微 生 物 細 胞 内 へ の 取 り 込 ま れ る 際 の CO 2 の 形 態 や 、取 り 込 み 系 の 調 節 機 構 に つ い て
は 未 解 明 で あ る 。 そ こ で 、 微 生 物 の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 強 化 を 目 的 と し て 、 CO 2 取 り
込 み 機 構 の 解 明 を 行 う 。ゲ ノ ム 情 報 を 基 に CO 2 取 り 込 み に 関 与 す る 酵 素 系 を 明 ら か に
し、遺伝子操作によって取り込み能の強化を図る。
-5-
(2) 微 生 物 細 胞 内 に お け る 新 規 CO 2 Integration( 組 み 込 み )機 構 の 探 索 と そ の 高 効 率 化
ゲ ノ ム 情 報 よ り 、 約 220 種 の CO 2 Integration 反 応 に 関 す る 遺 伝 子 ( CO 2 を 基 質 と す
る 酵 素 が 約 210 種 、HCO 3 - が 約 10 種 と 推 定 )の 存 在 が 認 め ら れ て い る 。そ こ で 、種 々
の 微 生 物 が 有 す る CO 2 Integration 反 応 に 関 連 す る 遺 伝 子 配 列 を 抽 出 し 、新 規 CO 2 組 み
込み反応系を探索する。一方で、既に確立されているコリネ型細菌のトランスクリプ
ト ー ム 技 術 を 用 い て 、CO 2 Integration に 関 す る 酵 素 の RNA 及 び タ ン パ ク レ ベ ル で の 発
現 挙 動 を 把 握 し 、 人 為 的 改 良 に よ っ て CO 2 Integration の 高 効 率 化 を 図 る 。
(3) 細 胞 内 エ ネ ル ギ ー 生 成 機 構 の 高 効 率 化
自 由 エ ネ ル ギ ー レ ベ ル が 低 い CO 2 は 、菌 体 内 に お け る そ の 組 み 込 み 反 応 に お い て エ
ネルギーの供給を必要とするため、効率的な菌体内エネルギー生成技術の確立が望ま
れ る 。 そ こ で 、 CO 2 Integration 反 応 に 効 率 的 に エ ネ ル ギ ー を 供 給 す る た め に 、 微 生 物
の糖類取り込み機構を遺伝子、及びタンパクレベルで解明し、同機構を改良すること
によって、細胞内エネルギー生成機構の高効率化を図る。
1.3.2 平 成 1 6 年 度 実 施 内 容
1 ) 微 生 物 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 と 強 化 技 術 の 開 発
本 年 度 は 、 CO 2 取 り 込 み 機 構 に 関 与 す る 微 生 物 酵 素 群 に つ い て 既 往 の 生 化 学 的 、 分
子生物学的知見に関して網羅的検索を行った。さらに。本技術開発に用いるコリネ型
細 菌 、 C. glutamicum R の CO 2 取 り 込 み 関 連 酵 素 遺 伝 子 の 解 析 を 行 っ た 。
2)微 生 物 細 胞 内 に お け る 新 規 CO 2 Integration( 組 み 込 み )機 構 の 探 索 と そ の 高 効 率 化
ゲ ノ ム 情 報 よ り 、約 220 種 の CO 2 組 み 込 み 反 応 に 関 す る 遺 伝 子( CO 2 を 基 質 と す る
酵 素 が 約 210 種 、HCO 3 - が 約 10 種 と 推 定 )の 存 在 が 認 め ら れ て い る 。そ こ で 、微 生 物
が 有 す る CO 2 組 み 込 み 反 応 に 関 連 す る 遺 伝 子 配 列 を 網 羅 的 に 抽 出 、解 析 し た 。一 方 で 、
既 に 確 立 さ れ て い る C. glutamicum R の ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム 技 術 を 用 い て 、 CO 2 組
み 込 み に 関 す る 酵 素 の RNA レ ベ ル で の 発 現 挙 動 を 解 析 し た 。 さ ら に 、 CO 2 組 み 込 み
反応関連酵素の遺伝子工学的手法による改変を試みた。
3)細胞内エネルギー生成機構の高効率化
本 年 度 は 、 微 生 物 の 主 要 な 糖 類 取 り 込 み シ ス テ ム で あ る PTS (ホ ス ホ ト ラ ン ス フ ェ
ラ ー ゼ シ ス テ ム )に つ い て 既 往 の タ ン パ ク レ ベ ル 、遺 伝 子 レ ベ ル で の 解 析 結 果 に 関 し て
検 索 を 行 い 、コ リ ネ 型 細 菌 が 有 す る PTS の 解 明 を 行 っ た 。グ ラ ム 陽 性 、及 び グ ラ ム 陰
性 細 菌 の PTS 糖 類 取 り 込 み シ ス テ ム 関 連 酵 素 を 網 羅 的 に 検 索 し 、得 ら れ た 結 果 と 、コ
リ ネ 型 細 菌 の 全 ゲ ノ ム 配 列 情 報 を 基 に 、C. glutamicum R ゲ ノ ム に お け る PTS 関 連 遺 伝
子の解析を行った。
6
1.4
実施場所
(1) 財 団 法 人
地球環境産業技術研究機構
地球環境産業技術研究所
微生物研究グループ
〒 619-0292
1.5
京 都 府 相 楽 郡 木 津 町 木 津 川 台 9-2
実施期間
自
平成16年4月
至
平成17年3月31日
1.6
1日
実施状況
平 成 1 6 年 度 の 研 究 実 施 状 況 を 表 1-1 に 示 す 。
7
表 1-1
実
平成16年度研究実施状況
施
項
目
4
5
6
平 成 16 年
7
8
9
10
11
12
平 成 17 年
1
2
3
1. 微 生 物 細 胞 内 へ の
CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解
明と強化技術の開発
(1) CO 2 取 り 込 み 機 構 に
関与する微生物酵素群
の調査、遺伝子配列の
抽出
(2) コ リ ネ 型 細 菌 の
CO 2 取 り 込 み 機 構 酵 素
群の同定
2. 微 生 物 細 胞 内 に お け
る 新 規 CO 2 Integration
機構の探索とその高効
率化
(1)種 々 の 微 生 物 の CO 2
Integration反 応 に 関 連
する遺伝子配列の抽出
(2) コ リ ネ 型 微 生 物 の
CO 2 Integrationに 関 す
る酵素群の解析
3.細 胞 内 エ ネ ル ギ ー 生
成機構の高効率化
(1)コ リ ネ 型 微 生 物 が 有
す る 、PTS 糖 類 取 り 込 み
システムの解析
研究推進委員会
○
8
1.7
実施体制
1.7.1 研 究 実 施 体 制
理
事
事 務 局
総 務 グループ
経理チーム
前田
研 究 企 画 グループ
地球環境産業技
岡村
研 究 管 理 チーム
繁寛
術研究所
茅
浩
プ ロ グ ラ ム 研 究 チーム
微生物研究
陽一
高木正人
グループ
湯川 英明
研究推進委員会
1.7.2 研 究 者 氏 名 及 び 人 員 ( 役 職 、 研 究 項 目 別 担 当 )
氏
名
所
属 ・ 役
地球環境産業技術研究所
微生物研究グループ
職(職名)
担当項目
グループリーダー
主席研究員
湯川
英明
乾
将行
同
上
主任研究員
a)b)c)
射場
毅
同
上
主任研究員
a)b)
横山
益造
同
上
主任研究員
a)c)
木原
誠
同
上
主任研究員
b)c)
岡井
直子
同
上
研究員
b)c)
沖野
祥平
同
上
研究員
a)b)c)
川口
秀夫
同
上
研究員
a)b)
村上
賜希子
同
上
研究員
a)b)
田上
由美子
同
上
研究員
a)b)
柴田
寛子
同
上
研究員
b)c)
9
a)b)c)
辰巳
奈美
同
上
研究員
b)c)
上田
麻景
同
上
研究員
b)c)
西村
拓
同
上
研究員
b)c)
担当項目
a)微 生 物 細 胞 内 へ の CO 2 取 り 込 み 機 構 の 解 明 と 強 化 技 術 の 開 発
b)微 生 物 細 胞 内 に お け る 新 規 CO 2 Integration機 構 の 探 索 と そ の 高 効 率 化
c)細 胞 内 エ ネ ル ギ ー 生 成 機 構 の 高 効 率 化
1.7.3 他 か ら の 指 導 ・ 協 力 者 名 及 び 指 導 ・ 協 力 事 項
(1) 研 究 推 進 委 員 会
委員長
中島
春紫
東京大学大学院農学研究科応用生命工学専攻
助教授
委員
橋本
渉
京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻
助教授
本田
与一
京都大学木質科学研究所バイオマス変換分野
助教授
(2) 研 究 推 進 委 員 会 以 外 か ら の 指 導 ・ 協 力
渡辺
隆司
Roy H. Doi
京都大学生存圏研究所
教授
米国カリフォルニア大学デービス校 教授
10
第2章
2.1
微生物細胞内への CO2 取り込み機構の解明と強化技術の開発
概要
微生物細胞による CO2 固定反応の律速段階の一つとして、細胞内への CO2 取り込み段階が
挙げられる。そこで、細胞レベルでの CO2 固定反応の増大を狙い、C. glutamicum R の細胞内
への CO2 取り込み機構の解明に関する検討を行った。微生物の CO2 取り込みに関与する酵素
遺伝子として、ATP 依存の HCO3-取り込み機構である cmp ABCD、ナトリウムと HCO3 -のシ
ンポーターである sbtA、及び分子状 CO2 取り込みに関与する ndhD3、ndhD4 がある。また、
細胞内にて CO2 と HCO3-の平衡反応を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)は、幾つ
かの微生物の生育必須遺伝子であることが報告されている。そこで、これら CO2 取り込み機
構に関与する酵素遺伝子と C. glutamicum R の全遺伝子の相同性解析を行った。その結果、CO2
取り込みに関与する酵素遺伝子である cmp ABC、ndhD3、及び ndhD4 と高い相同性を示す遺
伝子が C. glutamicum R に存在することが認められた。また、CO2 と HCO3 -の平衡反応を触媒
する CA に高い相同性のある 3 遺伝子も C. glutamicum R に存在することが認められた。今後、
これら遺伝子改変株を構築して生産性に及ぼす影響を検討することによって、CO2 取り込み
機構が解明されるとともに、CO2 取り込み速度向上に向けた改良のターゲットを見出すこと
が期待される。
-11-
2.2
微生物が有する CO2 取り込み関与酵素群
2.2.1
はじめに
CO2 は両性イオンの性質を有することから、水中においては水和反応によって式 2-2-1 の
ような平衡状態となる。式 2-2-1 の(a)、及び(b)における pKa は、それぞれ 6.35、10.32 であ
るため、酸性条件下においてはほとんどが分子状 CO2 となり、pH7 においては HCO3-が約 15%、
分子状 CO2 が約 85%、pH8 においては HCO3 -が約 98%、分子状 CO2 が約 2%とほとんどが
HCO3 -の形態で存在する。一方で、微生物は CO2 を基質とする様々な CO2 Integration(組み込
み)酵素を有しているが、それらは特異的に分子状 CO2 と HCO3-を基質とすることが知られ
ている。従って、それら酵素に効率的に分子状 CO2 と HCO3 -を供給するためのシステムが存
在すると考えられる。
H++HCO3-
CO2+H2O
(a)
2H++CO32- (式 2-2-1)
(b)
微生物の CO2 の取り込みに関する研究は、CO2 濃縮機構を有する微生物である光合成細菌
や藻類を中心として行われてきた。特に、ラン藻 Synechocytis 及び Synechococcus において
は、HCO3 -及び分子状 CO2 取り込み機構についての詳細な検討が行われている。そこで、ラ
ン藻類を中心として CO2 取り込み酵素遺伝子について調査解析を行い、以下にまとめた。ま
た、分子状 CO2 と HCO3-の平衡を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)も CO2 取り
込みに関与することが知られている。細胞質に局在する本酵素は、分子状 CO2 と HCO3-の平
衡を触媒することで、細胞内 CO2 濃度の維持、及び CO2 固定酵素への分子状 CO2、HCO3-の
効率的供給に関与していると考えられている。そこで、種々の微生物における本酵素遺伝子
の存在、またその役割について調査解析を行った。
2.2.2
微生物の CO2 及び HCO3-取り込み関与酵素遺伝子
光合成微生物であるラン藻は、低 CO2 環境下においても光合成を行うことが可能である。
この現象は、ラン藻の細胞内外に CO2 濃度勾配が有ることを示しており、ラン藻が細胞内に
CO2 濃縮機構を有していることを示唆している。CO2 濃縮機構は、CO2 取り込み機構、カル
ボキシソーム構造体、炭酸脱水酵素等の要素で構成されると考えられており (25) 、それぞれ
について解析が進められている。特に、本項に関与する CO2 取り込み機構については、Ogawa
T ら、 Kaplan A ら、 Omata T らのグループ等が 1980 年代から精力的に研究を行ってきた。
現在では以下に示すように、HCO3 - の取り込みには、ATP 結合カセットトランスポーター
(ABC トランスポーター)のオペロンの一遺伝子である cmpA、ナトリウム依存型の sbtA が
関与すること、また、NDH-1(NADH デヒドロゲナーゼ, EC 1.6.5.3)のコンポーネントの遺
伝子である、ndhD3、ndhD4 が分子状 CO2 の取り込みに関与することが報告されている。
-12-
(1) ATP 結合カセット(ABC)トランスポーター依存の取り込み
ABC トランスポーターは、ATP の加水分解によって得られるエネルギーを駆動力として細
胞から細胞内へ糖類、アミノ酸等の多様な物質を輸送する。ラン藻類は、ABC トランスポー
ター依存型の HCO3-の取り込み系を有するが、この取り込み系に関しては、1980 年代より研
究が行われてきた。Omata T らは、ラン藻 Synechococcus sp. PCC 6301 (Anacystis nidulans) を
用いた研究の中で、低濃度の CO2 条件下において、42-kD の膜タンパクの発現量が増加する
ことが見いだした(17)。本タンパクは、cmpA 遺伝子の産物であることが認められたが、本遺
伝子の破壊株は野生株と比較して、生育速度などの点で大きな違いは認められなかった(16)。
しかしその後、ラン藻類である Synechocystis PCC6803 の全ゲノム解析が終了し(7)、Omata T
らは Synechococcus sp. PCC7942 を用いて検討を進め、該遺伝子が、cmpB, cmpC, cmpD とオ
ペロンを形成していることを認めた(図 2-2-1)。本オペロンは、低 CO2 濃度にて誘導されると
ともに、コンポーネント組成から、ABC トランスポーターであることが推察された(18)。ま
た、本取り込み系は、HCO3-に対して親和性が高いことが認められた。
HCO31
2
Cytoplasm
ATP
3
4
ADP
HCO3図 2-2-1
cmp システム(ABC トランスポーター)による HCO3-の取り込み
(2) ナトリウムシンポーターによる取り込み
上述の通り、Synechocystis PCC6803 の、低 CO2 濃度誘導の ABC トランスポーター(cmpABCD)
は有していることが明らかとなっているが、cmp 遺伝子を破壊しても、pH 9.0 にて生育が可
能であったことから、他の HCO3 -取り込み系が存在することが示唆された(18)。探索の結果、
sbtA 遺伝子がコードする低 CO2 濃度誘導型のトランスポーターの存在が見出された(21)(図
2-2-2)。また、該遺伝子タンパクによる HCO3 -の取り込みは、ナトリウムイオンを必要とする
ことから、ナトリウムイオン依存のシンポーターであることが示唆された(21)。
-13-
HCO3-
Na+
Cytoplasm
HCO3図 2-2-2
Na+
cmp システム(ABC トランスポーター)による HCO3-の取り込み
(3) NADH デヒドロゲナーゼによる分子状 CO2 の取り込み
Ogawa T らは、シアノバクテリアのゲノムライブラリーより、無機炭素輸送能を欠如した
Synechocystis PCC6803 の変異株を分離した(12)。解析の結果、NADH デヒドロゲナーゼ複合
体(NDH-1)のサブユニット II (EC 1.6.99.3) をコードする ndhB 遺伝子に変異が有ることを
認めた。さらに、ndhB 遺伝子破壊株である M55 株を作製し、本株は高 CO2 濃度条件下でな
ければ増殖できないこと、また分子状 CO2 、及び HCO3 -の輸送能が低下していることを認め
た(12)。1996 年に Synechocystis PCC6803 の全ゲノム解析が終了し、NDH-1 に関与するコンポ
ーネントのいくつかがアノテーションされた(7)。その後、Ohkawa H らは、ndhB が NDH-1
のアセンブリに必要な因子であることを認め、NDH-1 を構成する個々のコンポーネントの破
壊を行った。その結果コンポーネントの遺伝子である ndhD3、及び ndhF3 の破壊によって分
子状 CO2 取り込みが低下する結果が得られ、これらのタンパクが分子状 CO2 の取り込みに関
与することを見出した(14)。続いて、これらの破壊株の分子状 CO2 及び HCO3-の取り込み能
について検討を行い、NDH-1 は分子状 CO2 の取り込みに関与していることが推定された (14)。
また、ndhD を構成するコンポーネントの破壊による検討にて、ndhD3 と ndhD4 のダブル破
壊株は分子状 CO2 の取り込み活性を全く有さないことを見出した(13)。さらに ndhD の発現
に関する解析を行い、ndhD3 は低 CO2 濃度にて誘導されることが、また ndhD4 は構成的に発
現することが明らかにされた(22)。しかしながら、これら遺伝子機能による分子状 CO2 の取
り込みメカニズムについては解明されておらず、今後の課題として残されている。
2.3.3
微生物のカーボニックアンヒドラーゼ
(1) カーボニックアンヒドラーゼの反応
カーボニックアンヒドラーゼ(以下 CA)は、活性部位に亜鉛を含んだ酵素であり、CO2 の水
和反応を可逆的に触媒する(図 2-2-3)。両性を示す炭酸イオンは、pH7 においては HCO3-が
約 15%、CO2 が約 85%であり、pH8 においては HCO3-が約 98%、CO2 が約 2%である(25)。
一方で、細胞内の炭酸固定酵素は、分子状 CO2 に特異的なものと、HCO3 -に特異的なものが
それぞれ存在する。分子状 CO2 と HCO3 -の平衡速度は非常に低いと報告されており、炭酸固
-14-
定酵素による分子状 CO2 及び HCO3 -固定反応への供給は、上述の平衡反応が律速になると考
えられている(10)。CA の役割の一つは、分子状 CO2 と HCO3 -の反応を触媒することによって、
菌体内 pH が高い、もしくは低い条件下において、炭酸固定酵素の反応に必要な分子状 CO2
及び HCO3-を供給することではないかと考えられている(10)。
(2)カーボニックアンヒドラーぜの種類
CA は、脊椎動物、無脊椎動物、植物から、真正細菌、古細菌まで自然界に広く存在する。
本酵素は、その構造によってα、β、γの 3 つのクラスに分類されている(24)。αクラスの
CA は哺乳類において同定されており、11 種のアイソザイムが存在し、最もよく研究されて
いるクラスである。原核生物のαクラスの CA (α-CA)に関する報告は、他のクラスに比べて
非常に少ないが、Helicobacter pylori (9)、Rhodopseudomonas palustris (20)、Neisseria gonorrhoeae
(5)等が、α-CA を有することが報告されている。βクラスの CA (β-CA)は、α-CA と比較し
て研究報告が少なく、初めて結晶構造が報告されたのは 2000 年であった(11)。当初、β-CA
は植物にのみ存在すると考えられていたが、実際は、バクテリアや古細菌などに広く存在し
ていることが明らかになってきた(23)。β-CA はα-CA、γクラスの CA(γ-CA)とは四次構造
が異なり、α-CA、γ-CA がモノマー及びトリマーであるの対して、β-CA はダイマーもし
くはテトラマー、ヘキサマーなどの四次構造を構成し、基本構造がダイマーであることが認
められている(24)。γ-CA は、ホモのトリマーで構成され、CA の中でも最も古くに発生した
と 考 え ら れ て い る (23)。 こ の CA は Cam と 呼 ば れ て お り 、 メ タ ン 生 成 古 細 菌 で あ る 、
Methanosarcina thermophila から分離された。現在では、古細菌だけではなく、様々な原核生
物や植物にも存在することが認められている (19,23)。
CO2
HCO3-
CO2
CO2
CA
HCO3-
CO2組み込み反応
CA:カーボニックアンヒドラーゼ
図 2-2-3 カーボニックアンヒドラーゼの反応
-15-
(3)微生物のカーボニックアンヒドラーゼに関する研究
微生物のカーボニックアンヒドラーゼに関する研究報告は、光合成細菌や藻類などをはじ
めとして、従属栄養細菌や古細菌などについて幾つか報告がある。
化学合成栄養細菌である Ralstonia eutropha は、カルビン・ベンソンサイクルで水素とギ酸
を用いて CO2 を同化する微生物であるが、変異株である高濃度の CO2 要求性株が分離された
(1)。その後、本株のβ-CA をコードする遺伝子 can に変異があることが認められ、破壊株を
用いた試験にて本遺伝子が低濃度の CO2 下における生育に必須であること示された(8)。紅色
非硫黄光合成細菌である Rhodopseudomonas palustris は従属栄養の好気条件下及び光独立栄
養の嫌気条件下において CO2 を炭素源として水素もしくは有機物を電子供給体として利用し
て生育する(20)。本株はα-CA 有しており、本酵素遺伝子 acaP の破壊株は、CA 阻害剤を用
いた場合と同様の生育特性を示した(20)。また、本研究にて、α-CA は好気培養時には発現
しないが、嫌気条件下において発現することが認められた(20)。緑藻 Coccomyxa では、β-CA
の存在が認められており、テトラマーで約 100kD の分子量であり、葉緑体外のフラクショ
ン中に検出されたことが報告されている(4)。
E. coli では、β-CA の存在が認められており、構造解析についての報告がある(20)。また、
β-CA をコードする can (YadF), CynT、及びγ-CA と相同性の高い遺伝子である CaiE, PaaY,
YrdA についての検討が行われており、can の発現が大気中 CO2 濃度下においては必要である
ことが認められた(10)。また本研究の中では、低濃度の CO2 条件下においては、菌体からの
分子状 CO2 の拡散速度が分子状 CO2 と HCO3 -の平衡反応の速度よりも速いことが、計算上示
されることが述べられており、それ故に CA の反応触媒による、分子状 CO2 もしくは HCO3を 炭 酸 固 定 反 応 に 供 給 が 必 要 で あ る と 言 及 さ れ て い る (10) 。 本 技 術 開 発 で 使 用 す る C.
glutamicum R の同種である、C. glutamicum 13032 は、2 種の CA と高い相同性の遺伝子配列
を有していることが認められており、その内のβ-CA に相同性の高い遺伝子が、低 CO2 条件
下において生育に必須であることが報告されている(11)。Helicobacter pylori では、α-CA の
同株の酸性条件下への順化における役割について調べられている(9)。酸性条件下においては、
尿素が UreI チャンネルによって取り込まれ、シトプラズムでウレアーぜによってアンモニア
と CO2 に分解される。発生した CO2 はペリプラズムに拡散し、CA によって水和され、発生
したプロトンによってアンモニアイオンを生成し、ペリプラズムのpH を∼6.1 に維持すると
考えられている(9)。Mycobacterium tuberculosis は、三種のβ-CA に相同性の高い遺伝子を有
しており、その内の二種について結晶構造解析が行われている(3)。また、酸生成菌である、
Acetobacterium
woodii,
Acetohalobium
arabaticum,
Sporomusa
silvacetica,
Clostridium
formicoaceticum も CA 活性を有していることが報告されている(2)。アセチル-CoA 経路にて
CO2 を固定するこれらの微生物では、菌体内の CO2 濃度を維持することが CA の役割と述べ
られている(2)。この様に多種の微生物において、CA 活性が認められており、いくつかの微
生物では CA 活性が生育に必須であることが報告されている。
-16-
2.2.4
まとめ
微生物の能動的な CO2 取り込みに関与する酵素遺伝子に関しては、ラン藻を用いた研究が
行われてきており、これまでに ABC トランスポーターと同様のコンポーネント組成であり、
ATP 依存の HCO3 -取り込み機構である cmp ABCD、ナトリウムと HCO3 -のシンポーターであ
る sbtA、及びメカニズムは解明されていないが、遺伝子欠損株にて分子状 CO2 取り込み活性
を示さない ndhD3、ndhD4 が報告されている。一方で、従属栄養微生物においての、これら
酵素遺伝子に関しての報告は認められなかった。しかしながら、CO2 と HCO3 -を基質とした
反応は同化、異化代謝経路にて多く存在することから、従属微生物においてもこれら遺伝子
が存在、または、機能していることは十分可能性がある。
細胞内にて CO2 と HCO3-の平衡反応を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)は、様々
な生物に広く存在することが報告されており、独立、及び従属栄養微生物においても本酵素
が存在することが認められている。また、幾つかの微生物においては、本遺伝子が生育に必
須であることが報告されていることから、本酵素が種々の同化、異化代謝経路における CO2
固定反応に影響を及ぼすことは明らかである。
本技術開発にて利用する C. glutamicum R は、菌体外に存在する CO2 を消費して、グルコー
スからコハク酸を生成する。従って、C. glutamicum R が上述の能動的 CO2 取り込みに関与す
る酵素遺伝子、及び CA を有しているならば、これら遺伝子の改変によって CO2 固定速度を
増加できる可能性があると考えられる。
-17-
2.3 C. glutamicum R の CO2 取り込み関与酵素群の解析
2.3.1
はじめに
コリネ型細菌は、アミノ酸や核酸などの工業的生産に用いられてきた実用的微生物である
が、コリネ型細菌である C. glutamicum R が酸素を抑制した条件下にて、有機酸を高効率で生
成することが見出された(15)。さらに、本菌株の遺伝子組み換え株は、C4 カルボン酸を生成
する際に非常に高い速度で CO2 を固定することが認められた(6)。容積当たりの CO2 固定速度
は、従来の光合成微生物を用いた場合の約 20 倍である上に、光を必要としないために、光供
給のための広大な面積を必要としない。本技術開発では、プロセス全体の CO2 固定速度の向
上を最終目的として、細胞レベルでの CO2 固定反応の効率化を行っている。
現時点での、コリネ型細菌の CO2 固定反応の律速段階は明らかではないが、その一つとし
て、CO2 の細胞内への移動段階が挙げられる。前項で示したように、微生物は種々の CO2 取
り込みに関与した酵素を有していることから、コリネ型細菌の CO2 固定反応においても、こ
れらの酵素を利用している可能性がある。そこで、前項に示した CO2 取り込み機構に関与す
る酵素遺伝子と C. glutamicum R の全遺伝子の相同性解析を行った。
2.3.2
解析方法
(1) 供試菌株
コリネ型細菌 C. glutamicum R 株を供試菌株として用いた。
(2) 遺伝子相同性解析方法
CO2 取り込み機構に関与した酵素遺伝子は、Genome net (http://www.genome.jp/) にて検索を
行い、アミノ酸配列を得た。得られた配列と、既に決定した C. glutamicum R 株の全ゲノム情
報とで相同性検索を行い、関連遺伝子を推定した。
2.3.3
コリネ型細菌の CO2 取り込み関連酵素
(1 ) cmp 遺伝子群
C. glutamicum R 全ゲノム情報を基に、CO2 取り込み関連酵素の相同性検索を行った。CO2
取り込み関連酵素としては、2.2.2 に示したラン藻類が有する酵素を抽出した。HCO3 -取り込
み ABC トランスポーターに関しては、該遺伝子群を有する、Synechocystis sp. PCC6803,
Synechococcus PCC6301, Thermosynechococcus elongatus BP-1, Gloeobacter violaceus PCC7421,
Anabaena sp. PCC 7120 の cmp オペロン遺伝子との相同性解析を行った(表. 2-3-1 )。基質
(HCO3-)の結合コンポーネントである、cmpA には、CglR1354 が全ての菌株にて E value が
e-18 以上であり、特に Thermosynechococcus elongatus BP-1 では、e-27 と高い相同性を示した(表.
2-3-1 )。他の候補遺伝子は、e-1 以上で、高い相同性は認められなかった(表には示さず)。
-18-
表. 2-3-1 C. glutamicum R における HCO3-取り込み ABC トランスポーター(cmpA)の相同性検
索
Gene
CglR No.
syn:slr0040 cmpA ABC-type bicarbonate transport system substrate-binding protein CglR1354
(Synechocystis sp. PCC 6803)
Function
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
e value
3e-23
syc:syc2474 cmpA ABC-type bicarbonate transport system, substrate-binding protei CglR1354
(Synechococcus PCC6301)
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
4e-18
tel:tlr2000 cmpA bicarbonate transport system substrate-binding protein
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR1354
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
8e-28
gvi:glr2086 cmpA probable bicarbonate transport system substrate-binding protein CglR1354
(Gloeobacter violaceus PCC7421)
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
3e-26
ana:alr2877 cmpA bicarbonate transport system substrate-binding protein
(Anabaena sp. PCC 7120)
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
3e-27
CglR1354
表. 2-3-2 C. glutamicum R における HCO3-取り込み ABC トランスポーター(cmpB)の相同性検
索
Gene
syn:slr0041 cmpB; ABC-type bicarbonate transport system permease protein
(Synechocystis sp. PCC 6803)
CglR No.
CglR1353
CglR1299
CglR0513
Function
putative nitrate transport permease protein
putative aliphatic sulfonates transmembrane ABC transporter protein
ABC transporter permease protein
e value
1e-46
3e-23
5e-15
syc:syc2475 cmpB; ABC-type bicarbonate transport system, permease protein
(Synechococcus PCC6301)
CglR1353
CglR1299
CglR0513
putative nitrate transport permease protein
putative aliphatic sulfonates transmembrane ABC transporter protein
ABC transporter permease protein
1e-45
2e-25
4e-17
tel:tlr2001 cmpB bicarbonate transport system permease protein
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR1353
CglR1299
CglR0513
putative nitrate transport permease protein
putative aliphatic sulfonates transmembrane ABC transporter protein
ABC transporter permease protein
2e-47
3e-22
1e-16
gvi:glr2087 cmpB probable bicarbonate transport system permease protein
(Gloeobacter violaceus PCC7421)
CglR1353
CglR1299
CglR0513
putative nitrate transport permease protein
putative aliphatic sulfonates transmembrane ABC transporter protein
ABC transporter permease protein
1e-52
1e-26
4e-19
ana:alr2878 cmpB bicarbonate transport system permease protein
(Anabaena sp. PCC 7120)
CglR1353
CglR1299
CglR0513
putative nitrate transport permease protein
putative aliphatic sulfonates transmembrane ABC transporter protein
ABC transporter permease protein
9e-46
1e-24
2e-13
cmpB は、HCO3 -取り込みの膜タンパクであるが、C.glutamicum R においては、nitrate transport
permease 遺伝子(CglR1353)が高い相同性を示した(表. 2-3-2)。cmpA と異なり、sulfonates の
ABC 取り込みコンポーネント、及び他の ABC トランスポーターの膜タンパクと高い相同性
も示した(表. 2-3-2)。cytoplasm 側の ATP 結合コンポーネントである、cmpC, 及び cmpD に関
しては、相同性の高い遺伝子が多く存在した(表. 2-3-3,4 )。ほとんどが、ABC トランスポー
ターの ATP 結合タンパクであることが示された。基質結合コンポーネント、及び膜コンポー
ネントとは異なり、ATP 結合タンパクは、種々の ABC トランスポーター間にて相同性が有
ることが認められた。一方で、cmpA、及び cmpB はそれぞれ CglR1354, 1353 と隣りあわせに
配座しており、さらに CglR1352 は、cmpC, D の相同性検索には見られなかったが、ATP 結合
コンポーネントであることが機能推定されており、本遺伝子群は ABC トランスポーターに
典型的な構成であることが認められた。以上の結果より、C. glutamicum R においても、本遺
伝子群が HCO3-取り込みに関与する ABC トランスポーターである可能性が示唆された。
-19-
表. 2-3-3 C. glutamicum R における HCO3-取り込み ABC トランスポーター(cmpC)の相同性検
索結果
Gene
syn:slr0043 cmpC; ABC-type bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Synechocystis sp. PCC 6803)
CglR No.
CglR0515
CglR1300
CglR0916
CglR0255
CglR0847
CglR2369
CglR2883
CglR0752
CglR0496
CglR1354
CglR1449
CglR1350
CglR1780
CglR2204
Function
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
ABC transporter ATP-hydrolyzing subunit
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein MsmK-like protein
ABC-type transporter ATPase component
ABC transport system ATP-binding protein
ABC-type transporter permease component
ABC transporter ATP-binding protein
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
putative ATP-binding component of a transport system
peptide ABC transporter ATP-binding protein
e value
4e-39
2e-37
3e-36
3e-35
1e-34
3e-34
4e-34
8e-33
8e-33
2e-32
7e-32
2e-31
4e-30
8e-30
syc:syc2476 cmpC; ABC-type bicarbonate transport system, ATP-binding protein
(Synechococcus PCC6301)
CglR0916
CglR0515
CglR1300
CglR0255
CglR0847
CglR2369
CglR1354
CglR2883
CglR0752
CglR1780
CglR1449
CglR0496
CglR1350
CglR1404
ABC transporter ATP-hydrolyzing subunit
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein MsmK-like protein
ABC-type transporter ATPase component
nitrate/nitrite transport system ATP-binding protein
ABC transport system ATP-binding protein
ABC-type transporter permease component
putative ATP-binding component of a transport system
putative ABC transporter ATP-binding protein
ABC transporter ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
putative ABC-type transporter ATPase component
4e-40
3e-38
5e-38
8e-38
3e-36
7e-35
1e-34
2e-34
7e-34
1e-32
3e-32
6e-31
1e-30
4e-30
tel:tlr2002 cmpC bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR1300
CglR0515
CglR0255
CglR0916
CglR2883
CglR0847
CglR0752
CglR2369
CglR0496
CglR0295
CglR1350
CglR1449
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
ABC transporter ATP-hydrolyzing subunit
ABC transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein MsmK-like protein
ABC-type transporter permease component
ABC-type transporter ATPase component
ABC transporter ATP-binding protein
putative multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein
5e-40
9e-37
1e-35
3e-34
4e-33
5e-33
1e-32
9e-32
9e-32
7e-31
2e-30
6e-30
gvi:glr2089 cmpC probable bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Gloeobacter violaceus PCC7421)
CglR1300
CglR0515
CglR0916
CglR0752
CglR0255
CglR1350
CglR2369
CglR0295
CglR2883
CglR0847
CglR0496
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
ABC transporter ATP-hydrolyzing subunit
ABC-type transporter permease component
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
ABC-type transporter ATPase component
putative multiple sugar transport system ATP-binding protein
ABC transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein MsmK-like protein
ABC transporter ATP-binding protein
6e-39
8e-36
4e-35
1e-34
1e-34
1e-34
1e-33
1e-32
5e-32
2e-31
4e-30
(2) sbt 遺伝子
ナトリウムイオン依存型の HCO 3-取り込みシンポーターに関しては、該遺伝子群を有する、
Synechocystis
sp.
PCC6803,
Synechococcus
PCC6301,
Prochlorococcus
marinus
MED4,
Prochlorococcus marinus MIT 9313 の sbt 遺伝子のアミノ酸配列の相同性解析を行った。しか
しながら、いずれのアミノ酸配列も C. glutamicum R の遺伝子に高い相同性が認められなかっ
た(表. 2-3-5)。
-20-
表. 2-3-4 C. glutamicum R における HCO3-取り込み ABC トランスポーター(cmpD)の相同性検
索結果
Gene
syn:slr0044 cmpD; ABC-type bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Synechocystis sp. PCC 6803)
CglR No.
CglR0515
CglR1300
CglR0916
CglR0255
CglR2369
CglR1350
CglR0752
CglR0496
CglR0847
CglR2883
CglR1449
CglR0295
Function
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
putative maltose ABC transporter ATP-hydrolyzing protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
ABC-type transporter, ATPase component
putative nitrate transport ATP-binding protein
ABC-type transporter, permease component
ABC transporter ATP-binding protein
putative ABC transporter, ATP-binding protein
ABC transport system ATP-binding protein
putative ABC transporter ATP-binding protein
putative multiple sugar transport system
e value
7e-40
8e-39
4e-38
1e-37
2e-37
2e-33
5e-33
8e-33
2e-32
2e-31
8e-31
7e-30
syc:syc2477 cmpD; ABC-type bicarbonate transport system, ATP-binding protein
(Synechococcu s PCC6301)
CglR0515
CglR1300
CglR0916
CglR0255
CglR1350
CglR2369
CglR0496
CglR0295
CglR0752
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
putative maltose ABC transporter ATP-hydrolyzing protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
ABC-type transporter, ATPase component
ABC transporter ATP-binding protein
putative multiple sugar transport system
ABC-type transporter, permease component
2e-41
3e-36
1e-35
2e-35
7e-34
1e-32
1e-31
2e-31
3e-31
tel:tlr2003 cmpD; bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR0515
CglR0916
CglR0255
CglR1350
CglR0496
CglR1300
CglR0752
CglR1780
CglR2369
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
putative maltose ABC transporter ATP-hydrolyzing protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
ABC-type transporter, permease component
putative ATP-binding component of a transport system
ABC-type transporter, ATPase component
6e-44
2e-37
3e-36
4e-35
3e-34
1e-33
3e-33
4e-31
2e-30
gvi:glr2090 cmpD; probable bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Gloeobacter violaceus PCC7421)
CglR0515
CglR1300
CglR1350
CglR0255
CglR0916
CglR0496
CglR2369
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
putative maltose ABC transporter ATP-hydrolyzing protein
ABC transporter ATP-binding protein
ABC-type transporter, ATPase component
1e-39
2e-37
7e-37
8e-35
1e-34
3e-34
1e-32
ana:alr2880 cmpD; bicarbonate transport system ATP-binding protein
(Anabaena sp. PCC 7120)
CglR0515
CglR1300
CglR0255
CglR0752
CglR2369
CglR0916
CglR1350
hypothetical ABC transporter ATP-binding protein
aliphatic sulfonate ABC transporter ATP-binding protein
multiple sugar transport system ATP-binding protein
ABC-type transporter, permease component
ABC-type transporter, ATPase component
putative maltose ABC transporter ATP-hydrolyzing protein
putative nitrate transport ATP-binding protein
1e-39
3e-37
8e-37
6e-36
1e-34
2e-34
5e-33
表. 2-3-5 C. glutamicum R におけるナトリウムイオン依存型の HCO 3-取り込みシンポーター
(sbt)の相同性検索結果
Gene
syn:slr1512 sbtA; sodium-dependent bicarbonate transporter
Synechocystis sp. PCC 6803
CglR No.
CglR2586
CglR2220
CglR0758
Function
hypotheticalprotein
putativeintegralmembraneprotein
hypotheticalprotein
e value
0.010
0.017
0.049
syc:syc2461 sbtA; sodium-dependent bicarbonate transporter
Synechococcus PCC6301
CglR2220
CglR0758
CglR2915
putativeintegralmembraneprotein
hypotheticalprotein
conservedhypotheticalprotein
0.010
0.010
0.14
pmm:PMM0213 sbtA; putative sodium-dependent bicarbonate transporter
Prochlorococcus marinus MED4
CglR2610
CglR1190
CglR2708
PTS-Bgl-EII
TC.AAT gamma-aminobutyratepermease
hypotheticalprotein
0.019
0.073
0.16
pmt:PMT1213 sbtA; putative sodium-dependent bicarbonate transporter
Prochlorococcus marinus MIT 9313
CglR2729
CglR2326
CglR0245
PTS-Bgl-EII
MFS.MHS putativetransmembranetransportprotein
putativeintegralmembraneprotein
0.005
0.043
0.097
-21-
(3) ndhD3,D4 遺伝子
分子状 CO2 の取り込み機能を有する NADH デヒドロゲナーゼについては、Synechocystis sp.
PCC6803, Synechococcus WH8102, Synechococcus PCC6301, Thermosynechococcus elongatus
BP-1 の ndhD3,D4 のアミノ酸配列を基に相同性解析を行った(表. 2-3-6, 7)。その結果、
ndhD3,D4 に相同性の高い配列がいくつか見出されたが、それらの機能は全て、NADH デヒ
ドロゲナーゼ、もしくはオキシドレダクターゼとアノテーションされていることから、CO2
の取り込みに特異的に関与する NADH デヒドロゲナーゼとしての推定は難しいと考えられ
た。しかしながら、いずれのアミノ酸配列も相同性は高く、特に CglR2634 は、対照とした
ラン藻類の ndhD3 全てに高い相同性を有していることから、遺伝子破壊による詳細な解析が
必要であると考えられた。
表. 2-3-6 C. glutamicum R における分子状 CO2 の取り込み NADH デヒドロゲナーゼのコンポ
ーネント ndhD3 の相同性検索結果
Gene
syn:sll1733 ndhD3; NADH dehydrogenase I subunit 4,
involved in inducible high-affinity CO2 uptake
Synechocystis sp. PCC 6803
CglR No.
CglR2634
CglR2632
CglR0347
CglR0345
Function
putative oxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
E1.6.5.3 putative NADH ubiquinone oxidoreductase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
e value
9e-34
1e-32
1e-32
3e-28
syw:SYNW1482 ndhD3; putative NADH dehydrogenase I chain 4 (or M)
Synechococcus sp. WH 8102
CglR2634
CglR0347
CglR0345
CglR2632
putative oxidoreductase
E1.6.5.3 putative NADH ubiquinone oxidoreductase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
9e-35
2e-32
7e-29
1e-24
syc:syc2001 ndhD3; NADH dehydrogenase subunit 4
(involved in low CO2-inducible high affinity CO2 uptake)
Synechococcus PCC6301
CglR0347
CglR2634
CglR2632
CglR0345
E1.6.5.3 putative NADH ubiquinone oxidoreductase
putative oxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
5e-34
2e-32
3e-28
9e-21
tel:tlr0905 ndhD3; NADH dehydrogenase subunit 4
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR2634
CglR0347
CglR0345
CglR2632
putative oxidoreductase
E1.6.5.3 putative NADH ubiquinone oxidoreductase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
4e-37
3e-32
4e-27
5e-27
表. 2-3-7 C. glutamicum R における分子状 CO2 の取り込み NADH デヒドロゲナーゼのコンポ
ーネント ndhD4 の相同性検索結果
Gene
syn:sll0027 ndhD4; NADH dehydrogenase I subunit 4,
involved in constitutive low-affinity CO2 uptake
Synechocystis sp. PCC 6803
CglR No.
CglR2632
CglR0347
CglR2634
CglR0345
Function
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
E1.6.5.3 putative NADH ubiquinone oxidoreductase
putativeoxidoreductase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
e value
4e-31
2e-30
4e-30
3e-28
syc:syc0915 ndhD4; NADPH dehydrogenase subunit 4,
involved in constitutive low-affinity CO2 uptake
Synechococcus PCC6301
CglR2634
CglR0347
CglR2632
CglR0345
putativeoxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
9e-36
8e-32
1e-31
3e-25
tel:tlr2125 ndhD4; NADH dehydrogenase subunit 4
(Thermosynechococcus elongatus BP-1)
CglR0347
CglR2634
CglR2632
CglR0345
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
putativeoxidoreductase
E1.6.5.3 NADH dehydrogenase
putative NADH plastquinone oxidoreductase
5e-35
3e-33
6e-30
2e-28
-22-
(4) カーボニックアンヒドラーぜ(CA)
CA に関してはこれまでに報告されている、E. coli, C. glutamicum 13032, Mycobacterium
tuberoculosis, Bacillus subtillis , Pseudomonas aeruginosa, Synechocystis sp. PCC6803 の遺伝子情
報を基に、C. glutamicum R ゲノム情報との相同性解析を行った(表. 2-3-8)。E. coli では、5 種
の遺伝子が CA をコードすることが報告されているが(10)、C. glutamicum R との相同性検索
では、β-CA 遺伝子である yad F, cyn T, caiE が CglR2573 と、またγ-CA 遺伝子である、paa Y,
yrdA が CglR0196 と相同性が高いことが認められた。また、C. glutamicum R と同種である、
C. glutamicum 13032 にて報告されている二種の CA 遺伝子は、CglR2573、及び CglR0196 と
ほぼ同様の配列であることが認められた。また、Mycobacterium tuberculosis では二種の CA
配列が報告されているが、その一方が、CglR0984 と高い相同性を示すことが認められた。
Bacillus subtillis では三 種の CA 遺 伝子が報告 されており 、yvdA が C. glutamicum R の
CglR2573 と高い相同性を示したが、他の二種は相同性の高い配列が存在しなかった。これら
の結果より、CglR 2573、CglR0196、及び CglR0984 が CA 遺伝子と高い相同性を有している
ことが明らかになった。
表. 2-3-8 C. glutamicum R におけるカーボニックアンヒドラーぜ(CA)の相同性検索結果
Gene
Escherichia coli
eco:b0126 yadF; putative carbonic anhdrase [EC:4.2.1.1]
eco:b0339 cynT; carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
eco:b0035 caiE; possible synthesis of cofactor for carnitine racemase and dehydratase
eco:b1400 paaY; ydbZ; phenylacetic acid degradation protein; putative transferase
eco:b3279 yrdA; putative acyl transferase, ferripyochelin-binding
CglR No.
Function
e value
CglR2573
CglR2573
CglR2573
CglR0196
CglR0196
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
ferripyochelin-binding protein
ferripyochelin-binding protein
ferripyochelin-binding protein
6e-09
6e-14
9e-22
3e-22
1e-28
Corynebacterium glutamicum 13032
cgl:NCgl0119 Cgl0120; carbonic anhydrase/acetyltransferase [EC:4.2.1.1]
cgl:NCgl2579 Cgl2670; carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
CglR0196
CglR2573
ferripyochelin-binding_protein
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
e-101
e-114
Mycobacterium tuberculosis H37Rv
mtu:Rv3273 carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
mtu:Rv3588 carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
CglR0984
CglR2573
TC.SULP sulfate permease
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
3e-52
5e-55
Bacillus subtilis 168
bsu:BG12708 ybcF; plant-type carbonic anhydrase
bsu:BG13863 ytiB; plant-type carbonic anhydrase
bsu:BG12410 yvdA; plant-type carbonic anhydrase
CglR0820
CglR2573
CglR2573
E6.3.4.14 6.3.4.14 acetyl/propionyl-CoA carboxylase
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
1.6
0.004
2e-07
Pseudomonas aeruginosa PA01
pae:PA0102 probable carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
pae:PA4676 probable carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
CglR2573
CglR2573
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
9e-14
8e-09
Synechocystis sp. PCC 6803
syn:slr1347 icfA; beta-type carbonic anhydrase localized in the carboxysome [EC:4.2.1.1]
syn:slr0051ecaB, icfA; periplasmic beta-type carbonic anhydrase [EC:4.2.1.1]
CglR2573
CglR2573
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
E4.2.1.1A 4.2.1.1 carbonic anhydrase
4e-12
5e-29
2.3.4
まとめ
種々の微生物の CO2 取り込み関連酵素遺伝子に対する C. glutamicum R 遺伝子の相同性解
析 を 行 っ た 。 ラ ン 藻 類 が 有 す る 、 HCO3- 取 り 込 み ABC ト ラ ン ス ポ ー タ ー 遺 伝 子 で あ る
cmpABCD に関しての解析では、HCO3 -結合タンパク遺伝子 cmpA に対して CglR1354 が高い
相同性を示した。また、HCO3-取り込み膜タンパクの遺伝子 cmpB に対しては、CglR1353 が
高い相同性を示した。また、ATP 結合コンポーネントである、cmpC, 及び cmpD に対しては
相同性の高い遺伝子が多く存在したが、CglR1352 が cmpA、cmpB、と続いて配座しているこ
-23-
と が 明 ら か に な っ た 。 本 遺 伝 子 群 は ABC ト ラ ン ス ポ ー タ ー に 典 型 的 な 構 成 で あ り 、 C.
glutamicum R においても、本遺伝子群が HCO 3-取り込みに関与している可能性が示唆された。
一方で、ナトリウムと HCO3 -のシンポーターである sbtA については相同性が高い配列は認め
られなかった。NADH デヒドロゲナーゼのコンポーネントである ndhD3、ndhD4 は、メカニ
ズムは解明されていないが、CO2 の取り込みに関与することが報告されている。CglR2634 が、
ラン藻類の ndhD3 に対して高い相同性を示したことから、遺伝子破壊による詳細な解析が必
要であると考えられた。
細胞内にて CO2 と HCO3-の平衡反応を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)は、様々
な生物に広く存在することが報告されている。C. glutamicum R においては、CglR2573、
CglR0196、及び CglR0984 が CA 遺伝子と高い相同性を有していることが明らかになった。
以上の様に、相同性解析によって CO2 取り込みに関するいくつかの候補酵素遺伝子を見出だ
した。
-24-
2.4
まとめ
本技術開発にて利用する C. glutamicum R は、菌体外に存在する CO2 を消費して、グルコー
スからコハク酸を生成する。従って、C. glutamicum R が CO2 取り込みに関与する酵素遺伝子、
及び CA を有しているならば、これら遺伝子の改変によって CO2 固定速度を増加できる可能
性がある。そこで本章では、微生物が有する細胞内への CO2 取り込み機構についての調査、
酵素遺伝子の抽出解析を行い、得られた結果を基に、C. glutamicum R における該酵素遺伝子
の相同性解析を行った結果について示した。
微生物の能動的な CO2 取り込みに関与する酵素遺伝子に関しては、ABC トランスポーター
と同様のコンポーネント組成であり、ATP 依存の HCO3-取り込み機構である cmp ABCD、ナ
トリウムと HCO3 -のシンポーターである sbtA、メカニズムは解明されていないが、遺伝子欠
損株にて分子状 CO2 取り込み活性を示さない ndhD3、ndhD4 が報告されている。そこで、こ
れら酵素遺伝子と C. glutamicum R 遺伝子の相同性解析を行ったところ、いくつかの遺伝子が
高い相同性を有していることが認められた。ラン藻類が有する、HCO3 -取り込み ABC トラン
スポーター遺伝子である cmpABCD に関しての解析では、HCO3-結合タンパク遺伝子 cmpA に
対して CglR1354 が高い相同性を示した。また、HCO3 -取り込み膜タンパクの遺伝子 cmpB に
対しては、CglR1353 が高い相同性を示した。また、ATP 結合コンポーネントである、cmpC, 及
び cmpD に対しては相同性の高い遺伝子が多く存在したが、CglR1352 が cmpA、cmpB、と続
いて配座していることが明らかになった。本遺伝子群は ABC トランスポーターに典型的な
構成であり、C. glutamicum R においても、本遺伝子群が HCO3 -取り込みに関与している可能
性が示唆された。NADH デヒドロゲナーゼのコンポーネントである ndhD3、ndhD4 に対して
は、CglR2634 が高い相同性を示した。
細胞内にて CO2 と HCO3-の平衡反応を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)は、様々
な生物に広く存在することが報告されており、独立、及び従属栄養微生物においても本酵素
が存在することが認められている。また、幾つかの微生物においては、本遺伝子が生育に必
須であることが報告されている。そこで、種々微生物の CA 遺伝子と C. glutamicum R の全遺
伝子との相同性解析を行ったところ、CglR 2573、CglR0196、及び CglR0984 が CA 遺伝子と
高い相同性を有していることが明らかになった。
今後は、これらの酵素遺伝子の破壊株を構築し、C. glutamicum R の CO2 取り込み機構の解
析を進める。
-25-
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第3章
3.1
微生物細胞内における CO2 Integration (組み込み) 機構の探索とその高効率化
概要
外界から細胞に取り込まれた、または細胞内にて脱炭酸反応によって生成した分子状 CO2、
及び HCO3-は、種々の CO2 Integration (組み込み) 酵素によって代謝中間体に組み込まれ、様々
な物質へと変換される。本技術開発においては、物質生産条件下にて CO2 を高効率で固定する
C. glutamicum R の細胞レベルでの CO2 固定速度の増大を目的としており、この CO2 Integration
酵素の反応速度の向上は目的達成に直結した課題であると言える。そこで、CO2 が反応に関係
した約 220 種の微生物酵素遺伝子(分子状 CO2 を基質とする酵素遺伝子が約 210 種、HCO3-が
約 10 種)から、CO2 を組み込む反応を触媒する酵素遺伝子を抽出した。得られた結果を基に、
C. glutamicum R が有する CO2 Integration 反応酵素遺伝子を抽出した。そして、DNA マイクロ
アレイによってこれら酵素遺伝子の発現挙動解析を行ったところ、物質生産条件下にて発現量
が増大する CO2 Integration 反応酵素遺伝子が認められた。さらに、CO2 Integration 反応酵素遺
伝子の遺伝子工学的手法による改良を試み、CO2 固定速度の増加に成功した。
-29-
3.2
微生物の CO2 Integration 反応関連酵素遺伝子、及び C. glutamicum R の CO2 Integration
反応関連酵素遺伝子の解析
3.2.1
微生物が有する CO2 Integration 反応関連酵素群遺伝子
CO2 は独立栄養生物だけでなく、従属栄養生物においても様々な酵素の基質として利用され
る。CO2 の代謝反応に関係した遺伝子は、これまでに約 220 種類報告されており(表 3-2-1)、そ
のうち CO2 を基質とする酵素が約 210 種、HCO3-を基質とする酵素が約 10 種推定されている。
これらの酵素などで構成される微生物の CO2 固定経路として、還元的ペントースリン酸回路、
還元的 TCA 経路、3-ヒドロキシプロピオン酸サイクル、Acetyl-CoA 経路やアナプレロティック
経路などが知られている。
紅色光合成細菌や硫黄酸化細菌は、還元的ペントースリン酸回路(図 3-2-1)を有する(10)。本
経路は植物や藻類に普遍的に存在する経路であり、キーエンザイムであるホスホリブロースキ
ナーゼ(EC 2.7.1.19)とリブロース 1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ(EC 4.1.1.39)によって還
元型の反応が進行する(6)。本経路にて利用される CO2 の固定に関わる酵素はリブロース 1,5-ビ
スリン酸カルボキシラーゼであり、リブロースビスリン酸に CO2 を組み込んで、3-ホスホグリ
セリン酸を生成する反応を触媒する。本経路の逆の経路である、酸化的ペントースリン酸経路
は、多くの従属栄養生物に存在しているが、上述の二種の酵素が存在しない。
光 合 成 細 菌 で あ る 紅 色 非 硫 黄 細 菌 (Rhodobacter sphaeroides) や 紅 色 硫 黄 細 菌 (Chlomatium
vinosum)などは、好気性生物が有する TCA サイクルを逆回転で利用して CO2 を固定する、還元
的 TCA サイクル(図 3-2-2)を有している(11)。該サイクルでは、通常の好気性細菌では不可逆方
向である、2-オキソグルタル酸からスクシニル-CoA の反応を 2-オキソグルタル酸シンターゼ
(EC 1.2.7.3)が、ピルビン酸からアセチル-CoA の反応をピルビン酸シンターゼ (EC 1.2.7.1)が、
またクエン酸からアセチル-CoA とオキサロ酢酸の反応クエン酸リアーゼ(EC 4.1.3.6)が触媒し
て CO2 を 3 分子固定する。生成したピルビン酸から糖が合成される。
緑色非硫黄細菌等では、3-ヒドロキシプロピオン酸サイクル(図 3-2-3)の存在が報告されてい
る(1)。本サイクルは、アセチル-CoA からマロニル-CoA を生成する反応と、プロピオニル-CoA
からメチルマロニル-CoA を生成する反応にて、HCO3-が固定される。それぞれを触媒する酵素
は、アセチル-CoA カルボキシラーゼ(EC 6.4.1.2)とプロピオニル-CoA カルボキシラーゼであり、
両者ともビオチンを補欠分子族として共有結合した形態のビオチン酵素である。
メタン産生菌や Clostridium thermoaceticum などの酢酸生成菌(acetogenic bacteria)は、水素
と CO2 から酢酸を生成することが知られている(11)。この生成経路は Acetyl-CoA 経路と呼ばれ
ており、1 分子の CO2 がギ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.43)、ともう 1 分子の CO2 が一酸化炭
素デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.99.2)によって固定されて、1 分子の Acetyl-CoA を生成する (7)。
-30-
表 3-2-1 微生物の CO2 関連酵素
EC 1.1.1.38, EC 1.1.1.39, EC 1.1.1.40, EC 1.1.1.41, EC 1.1.1.42, EC 1.1.1.44, EC 1.1.1.83,
EC 1.1.1.84, EC 1.1.1.87, EC 1.1.1.92, EC 1.1.1.155, EC 1.1.1.170, EC 1.1.1.262, EC 1.1.1.270, EC
1.1.3.19, EC 1.2.1.2, EC 1.2.1.18, EC 1.2.1.25, EC 1.2.1.27, EC 1.2.1.43, EC 1.2.1.51,
EC 1.2.1.52, EC 1.2.1.58, EC 1.2.2.1, EC 1.2.2.2, EC 1.2.2.3, EC 1.2.2.4, EC 1.2.3.3,
EC 1.2.3.4, EC 1.2.3.6, EC 1.2.3.10, EC 1.2.3.13, EC 1.2.4.1, EC 1.2.4.2, EC 1.2.4.4,
EC 1.2.7.1, EC 1.2.7.2, EC 1.2.7.3, EC 1.2.99.2, EC 1.2.99.5, EC 1.3.1.12, EC 1.3.1.13,
EC 1.3.1.25, EC 1.3.1.43,EC 1.3.1.52, EC 1.3.1.53, EC 1.3.1.55, EC 1.3.1.59, EC 1.3.1.61,
EC 1.3.1.67, EC 1.3.1.68,
EC 1.3.3.3, EC 1.3.99.7, EC 1.4.4.2, EC 1.4.99.5, EC 1.5.1.6,
EC 1.7.3.3, EC 1.8.1.4, EC 1.8.1.5, EC 1.11.1.3, EC 1.13.11.23, EC 1.13.11.27, EC 1.13.11.46, EC
1.13.12.1, EC 1.13.12.2, EC 1.13.12.3, EC 1.13.12.4, EC 1.13.12.5, EC 1.13.12.6, EC 1.13.12.8, EC
1.13.12.9, EC 1.13.99.3, EC 1.14.11.1, EC 1.14.11.2, EC 1.14.11.3, EC 1.14.11.4,
EC 1.14.11.6, EC 1.14.11.7, EC 1.14.11.8, EC 1.14.11.9, EC 1.14.11.10, EC 1.14.11.11,
EC 1.14.11.12, EC 1.14.11.13, EC 1.14.11.14, EC 1.14.11.15, EC 1.14.11.16, EC 1.14.11.17,
EC 1.14.11.18, EC 1.14.11.19, EC 1.14.11.20, EC 1.14.11.21, EC 1.14.12.1, EC 1.14.12.10,
EC 1.14.13.1, EC 1.14.13.27, EC 1.14.13.64, EC 1.14.13.72, EC 1.14.18.1, EC 2.1.1.132,
EC 2.1.2.10, EC 2.2.1.5, EC 2.2.1.6, EC 2.2.1.7, EC 2.3.1.12, EC 2.3.1.37, EC 2.3.1.41,
EC 2.3.1.47, EC 2.3.1.50, EC 2.3.1.74, EC 2.3.1.85, EC 2.3.1.86, EC 2.3.1.94, EC 2.3.1.95,
EC 2.3.1.111, EC 2.3.1.119, EC 2.3.1.146, EC 2.3.1.151, EC 2.3.1.156, EC 2.3.2.2, EC 2.4.2.19, EC
2.7.2.2, EC 2.7.8.23, EC 3.1.1.78, EC 3.5.1.5, EC 3.5.1.6, EC 3.5.1.7, EC 3.5.1.20,
EC 3.5.1.29, EC 3.5.1.53, EC 3.5.1.54, EC 3.5.1.58, EC 3.5.1.59, EC 3.5.1.64, EC 3.5.1.66,
EC 3.5.1.75, EC 3.5.1.77, EC 3.5.1.84, EC 3.5.1.87, EC 3.5.3.9, EC 3.5.3.19, EC 3.5.3.21,
EC 4.1.1.1, EC 4.1.1.2, EC 4.1.1.3, EC 4.1.1.4, EC 4.1.1.5, EC 4.1.1.6, EC 4.1.1.7, EC 4.1.1.8, EC
4.1.1.9, EC 4.1.1.11, EC 4.1.1.12, EC 4.1.1.14, EC 4.1.1.15, EC 4.1.1.16, EC 4.1.1.17,
EC 4.1.1.18, EC 4.1.1.19, EC 4.1.1.20, EC 4.1.1.21, EC 4.1.1.22, EC 4.1.1.23, EC 4.1.1.24,
EC 4.1.1.25, EC 4.1.1.28, EC 4.1.1.29, EC 4.1.1.30, EC 4.1.1.31, EC 4.1.1.32, EC 4.1.1.33,
EC 4.1.1.34, EC 4.1.1.35, EC 4.1.1.36, EC 4.1.1.37, EC 4.1.1.38, EC 4.1.1.39, EC 4.1.1.40,
EC 4.1.1.41, EC 4.1.1.42, EC 4.1.1.43, EC 4.1.1.44, EC 4.1.1.45, EC 4.1.1.46, EC 4.1.1.47,
EC 4.1.1.48, EC 4.1.1.49, EC 4.1.1.50, EC 4.1.1.51, EC 4.1.1.52, EC 4.1.1.53, EC 4.1.1.54,
EC 4.1.1.55, EC 4.1.1.56, EC 4.1.1.57, EC 4.1.1.58, EC 4.1.1.59, EC 4.1.1.60, EC 4.1.1.61,
EC 4.1.1.62, EC 4.1.1.63, EC 4.1.1.64, EC 4.1.1.65, EC 4.1.1.66, EC 4.1.1.67, EC 4.1.1.68,
EC 4.1.1.69, EC 4.1.1.70, EC 4.1.1.71, EC 4.1.1.72, EC 4.1.1.73, EC 4.1.1.74, EC 4.1.1.75,
EC 4.1.1.76, EC 4.1.1.77, EC 4.1.1.78, EC 4.1.1.79, EC 4.2.1.1, EC 4.2.1.41, EC 4.2.1.51,
EC 4.2.1.91, EC 4.2.1.104, EC 4.3.1.13, EC 5.5.1.1, EC 6.3.3.3, EC 6.3.4.16, EC 6.4.1.1,
EC 6.4.1.2, EC 6.4.1.4, EC 6.4.1.6
-31-
1
リブロース5-リン酸
リブロース1,5-ビスリン酸
CO2
9
2
10
リボース5-リン酸
キシルロース5-リン酸
3-ホスホグリセリン酸
3
セドヘプツロース7-リン酸
1,3-ビスホスホグリセリン酸
7
4
8
セドヘプツロース
1,7-ビスリン酸
グリセルアルデヒド3-リン酸
ジヒドロキシアセトンリン酸
5
5
フルクトース1,6-ビスリン酸
6
エリトロース4-リン酸
7
フルクトース6-リン酸
糖類
図 3-2-1
還元的ペントースリン酸経路
1 Phosphoribulokinase (EC 2.7.1.19), 2 Ribulosebisphosphate carboxylase (EC 4.1.1.39),
3 Phosphoglyceratekinase (EC 2.7.2.3), 4 Glyceraldehyde-3-P dehydrogenase (EC 1.2.1.13),
5 Fructose bisphosphate aldrase (EC 4.1.2.13), 6 Fructose bisphosphatase (EC 3.1.3.11),
7 Transketorase (EC 2.2.1.1), 8 Sedoheptulose-bisphosphatase (EC 3.1.3.37),
9 Ribose 5-P isomerase (EC 5.3.1.6), 10 Ribulose phosphate 3-epimerase (EC 5.1.3.1)
好気性、及び通性嫌気性微生物は、トリカルボン酸サイクル(TCA サイクル)と呼吸系によ
って有機物を完全酸化して効率的にエネルギーを得る。好気条件下において、解糖系産物であ
るピルビン酸はピルベートデヒドロゲナーゼ複合体 (EC 1.2.4.1, EC 2.3.1.12, EC 1.8.1.4) によ
って脱炭酸されてアセチル-CoA に変換される。続いてアセチル-CoA と TCA サイクル中間体で
あるオキザロ酢酸が、シトレートシンターゼ (EC 4.1.3.7) の反応によって縮合し、クエン酸が
生成する。その後、4 つの酸化反応にて 3 分子の NADH、1 分子の FADH2 を生成してオキサロ
酢酸に至る。アセチル-CoA が供給され続ければ上述のように TCA 経路は回転するが、TCA サ
イクルの中間体はアミノ酸などの合成にも利用される。従って、その分の中間体を補充しなけ
れば本サイクルが成立しない。この TCA 中間体を補充する経路はアナプレロティック経路と呼
ばれ、分子状 CO2、もしくは HCO3-を解糖系の炭素数3の代謝中間体に組み込み、オキサロ酢
酸やリンゴ酸等の C4 化合物を生成する経路である(図 3-2-1)。該経路を構成する酵素として、
-32-
Pyruvic acid
9
CO2
Acetyl-CoA
Oxaloacetic acid
8
Citric acid
7
Isocitric acid
1
Malic acid
2
6
Fumaric acid
CO2
Oxoglutaric acid
3
5
Succinic acid
図 3-2-2
4
Succinyl-CoA
CO2
還元的 TCA サイクル
1 Malate dehydrogenase (EC1.1.1.37), 2 Fumarase
(EC4.2.1.2), 3 Fumarate reductase (EC 1.3.99.1),
4 Succinate-CoA synthetase (EC 6.2.1.5), 5 2-oxoglutarate syntase (EC 1.2.7.3), 6 Isocitrate
dehydrogenase (EC 1.1.1.42), 7 Aconitase (EC 4.2.1.3), 8 Citrate lyase (EC 4.1.3.8), 9 Pyruvate
synthase (EC 1.2.7.1)
Succinyl-CoA
12
Methylmalonyl-CoA
CO2
11
1
Succinic acid
Propionyl-CoA
2
10
Acryloyl-CoA
Malic acid
9
3
Malyl-CoA
CO2
3-hydroxypropionyl-CoA
4
8
Acetyl-CoA
3-hydroxypropionate
7
5
Malonyl-CoA
図 3-2-3
6
Malonate semialdehyde
3-ヒドロキシプロピオン酸サイクル
1 and 3 Succinate-CoA transferase (EC 2.8.3.-), 2 Succinate dehydrogeanse (EC 1.3.99.1), 4 Malyl-CoA
lyase (EC 4.1.3.24), 5 Acetyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.2), 6 Malonate semialdehyde dehydrogenase
(EC 1.2.1.18), 7 3-hydroxypropionate dehydrogenase (EC 1.1.1.-), 8 3-hydroxypropionate-CoA ligase
(EC 6.2.1-), 9 Acryloyl-CoA hydoratase (EC 4.2.1-), 10 Acryloyl-CoA reductase (EC 1.3.1.-), 11
Propionyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.3), Metylmalonyl CoA epimerase (5.1.99.1)
-33-
Sugars
Phosphoenolpyruvate
HCO31
CO2
Pyruvate
2
ATP
3
Pi
CO2
HCO3ATP
Oxalacetate
4
NADPH
(NADH)
Malate
Dicarboxylic acid
図 3-2-4
アナプレロティック経路
1 Phosphoenolpyruvate carboxylase (EC 4.1.1.31), 2 Phosphoenolpyruvate carboxykinase (EC 4.1.1.49),
3 Pyruvate carboxylase (EC 6.4.1.1), 4
Malic enzyme (EC1.1.1.40)
ピルベートカルボキシラーゼ (PC)
(EC 6.4.1.1)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
(PEPC) (EC 4.1.1.31)、マリックエンザイム (ME) (1.1.1.40)、ホスホエノールピルビン酸カルボ
キシキナーゼ(PEPCk) (EC 4.1.1.49,4.1.1.38)等が知られており、種々の微生物が有している。コ
ハク酸を高割合で生成するコリネ型細菌の遺伝子組み換え株は、コハク酸を生成する際に CO2
を固定するが、本株はこのアナプレロティック酵素である、PC 及び PEPC を利用して、C3 化
合物 HCO3-を組み込むことが認められている(2)。これらの様に、いくつかの微生物炭酸固定酵
素、及び微生物炭酸固定経路が知られており、既に遺伝子レベル、タンパクレベルでの情報も
多く蓄積されていることから、本技術開発においてこれらの遺伝子情報を活用することによっ
て、細胞レベルでの CO2 固定速度の向上が期待できる。
3.2.2
C. glutamicum R の CO2 Integration 反応関連酵素遺伝子の解析
前項では、微生物が有する CO2 が関係する約 220 種の酵素を示したが、この中には、CO2
Integration 方向の反応を触媒しない酵素も含まれる。そこでまず、これらの酵素から CO2
Integration 方向の反応を触媒する酵素を抽出した。さらに、抽出した酵素遺伝子配列と RITE 微
生物研究グループにて既に解読された C. glutamicum R の全ゲノム情報を基に、C. glutamicum R
が有する CO2 Integration 反応関連酵素遺伝子を決定した。
-34-
(1) 解析方法
CO2 Integration 方向の反応を触媒する酵素遺伝子(表 3-2-2)の塩基配列については、Genome net
(http://www.genome.jp/) より得た。本情報と、C. glutamicum R の全ゲノムの相同性解析を行い、
C. glutamicum R の CO2 Integration 反応関連酵素遺伝子を抽出した。
(2) 結果
約 220 種の CO2 関連酵素から、炭酸固定反応を触媒する酵素を検索した結果、約 40 種の酵
素を炭酸固定反応酵素として抽出された(表 3-2-2)。本酵素の遺伝子配列と、コリネ型細菌の全
ゲノム情報を基に相同性解析を行ったところ、コリネ型細菌に 13 種の CO2 固定反応酵素遺伝
子を認めた(表 3-2-3)。
表 3-2-2 微生物の CO2 Integration 反応関連酵素
EC 1.1.1.38 malate dehydrogenase
EC 2.3.1.37 5-aminolevulinate synthase
EC 1.1.1.39 malate dehydrogenase
EC 2.3.1.41 3-oxoacyl-[acyl-carrier-protein] synthase
EC 1.1.1.40 malate dehydrogenase (NADP)
EC 2.3.1.47 8-amino-7-oxononanoate synthase
EC 1.1.1.41 isocitrate dehydrogenase (NAD)
EC 2.4.2.19 nicotinate-nucleotide diphosphorylase
EC 1.1.1.42 isocitrate dehydrogenase (NADP)
EC 2.7.2.2 carbamate kinase
EC 1.1.1.87 3-carboxy-2-hydroxyadipate dehydrogenase
EC 4.1.1.21 phosphoribosylaminoimidazole carboxylase
EC 1.1.1.44 phosphogluconate dehydrogenase
EC 4.1.1.31 phosphoenolpyruvate carboxylase
EC 1.1.1.83 D-malate dehydrogenase
EC 4.1.1.32 phosphoenolpyruvate carboxykinase (GTP)
EC 1.1.1.84 dimethylmalate dehydrogenase
EC 4.1.1.32 phosphoenolpyruvate carboxykinase
EC 1.1.1.92 oxaloglycolate reductase
EC 1.1.1.155 homoisocitrate dehydrogenase
EC 1.2.1.2 formate dehydrogenase
EC 1.2.1.43 formate dehydrogenase (NADP)
EC 1.2.2.1 formate dehydrogenase
EC 1.2.4.1 pyruvate dehydrogenase E1
EC 1.2.7.1 pyruvate synthase
EC 4.1.1.39 ribulose-bisphosphate carboxylase
EC 4.2.1.1 carbonate dehydratase
EC 6.3.3.3 dethiobiotin synthase
EC 6.3.4.6 urea carboxylase
EC 6.3.4.16 carbamoyl-phosphate synthase
EC 6.3.5.5 carbamoyl-phosphate synthase
EC 6.4.1.1 pyruvate carboxylase
EC 1.2.7.2 2-oxobutyrate synthase
EC 6.4.1.2 acetyl-CoA carboxylase
EC 1.2.7.3 2-oxoglutarate synthase
EC 6.4.1.3 propionyl-CoA carboxylase
EC 1.2.99.2 carbon-monoxide dehydrogenase
EC 2.1.2.10 aminomethyltransferase
EC 6.4.1.4 methylcrotonoyl-CoA carboxylase
EC 6.4.1.6 acetone carboxylase
-35-
表 3-2-3 コリネ型細菌の CO2 Integration 反応酵素遺伝子
CglR No.
Function
CglR0628v1
putative formate dehydrogenase (EC 1.2.1.2)
CglR0784v1
putative isocitrate dehydrogenase (EC 1.1.1.42)
CglR0809v1
Pyruvate carboxylase (EC 6.4.1.1)
CglR0831v1
Phosphoribosylaminoimidazole carboxylase ATPase subunit (EC 4.1.1.21)
CglR0945v1
putative carboxyltransferase subunit of acetyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.2)
CglR1513v1
6-phosphogluconate dehydrogenase (EC 1.1.1.44)
CglR1633v1
putative phosphoenolpyruvate carboxylase (EC 4.1.1.31)
CglR1658v1
putative carbamoyl-phosphate synthase large chain (EC 6.3.5.5)
CglR2509v1
Dethiobiotin synthetase (EC 6.3.3.3)
CglR2751v1
Phosphoenolpyruvate carboxykinase (GTP) (EC 4.1.1.32)
CglR2759v1
Propionyl-CoA carboxylase beta chain (EC 6.4.1.3)
CglR2895v1
Malic enzyme (EC 1.1.1.40)
-36-
3.3 C. glutamicum R の CO2 Integration 反応酵素遺伝子の発現挙動解析
3.3.1
はじめに
好気性、グラム陽性細菌であるコリネ型細菌は、アミノ酸生産菌として長い間工業的に利用
されてきた。RITE 微生物研究グループにおいて、コリネ型細菌 C. glutamicum R が、酸素抑制
条件下にて有機酸を効率よく生成し、さらに、本菌の遺伝子組み換え株が CO2 を固定して有機
酸を生成することが見出された(2)。本技術開発では、この C. glutamicum R の特性を利用したプ
ロセスを拡大展開した CO2 を原料とした物質生産技術の確立を目的として、CO2 固定に特化し
た C. glutamicum R の構築を目的としている。そのためには、菌体内にて CO2 を中間代謝物に組
み込む CO2 Integration 反応酵素の改変利用が重要な課題となり、その改変には、物質生産時に
おける各 CO2 Integration 反応酵素の挙動を把握することが必要である。そこで、既に RITE 微
生物研究グループにて開発している、C. glutamicum R 全遺伝子対応 DNA チップを利用したト
ランスクリプトーム解析によって、物質生産時の CO2 Integration 反応酵素の発現挙動を調べた。
3.3.2
材料と方法
(1) 供試菌株
供試菌株として C. glutamicum R を用いた。
(2) 培養及び物質生産反応方法
培地は、栄養培地(A-U 培地)(per liter); (NH2)2CO, 2g, (NH4)2SO4, 7 g, KH2PO4, 0.5 g, K2HPO4,
0.5 g, MgSO4.7H2O, 0.5 g, 0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O + 0.042% (w/v) MnSO4.2H2O, 1 ml, 0.02%
(w/v) biotin solution, 1ml, 0.01% (w/v) thiamin solution, 2 ml, yeast extract, 2 g, vitamin assay
casamino acid, 7 g)を用いた。
好気培養は、全容 1L ジャーファーメンター BMJ-01PI(エイブル株式会社)を用いて行った。
500 ml の A-U 培地に、初発菌体濃度が O.D.610=0.05 になるように植菌した。消泡剤としてディ
スフォーム (日本油脂株式会社)を 0.1 %加え、培養温度 33 ℃、回転数 1000 rpm、通気量 1 vvm
で、pH は 5 N アンモニアの添加によって 7.6 に制御して培養を行った。炭素源としてグルコー
スを初発濃度 4%として加えた。ジャーファーメンターで 13 時間培養した細胞を回収し、菌体
を最少培地(BT-U 培地)(per liter);(NH2)2CO, 2 g, (NH4)2SO4, 7 g, KH2PO4, 0.5 g, K2HPO4, 0.5 g,
MgSO4.7H2O, 0.5g, 0.06% (w/v) Fe2 SO4.7H2O+0.042% (w/v) MnSO4.2H2O, 1 ml, 0.02% (w/v) biotin
solution, 1 ml, 0.01% (w/v) thiamin solution, 2 ml)に懸濁後、NaHCO3 とグルコースを加え、物質
生産反応を行った。
(3) RNA 抽出
RNA の抽出は、RNAprotect Bacteria Reagent(Qiagen Inc., CA, USA)により菌体内 RNA の安定
化処理を行った後、QIAGEN RNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いて行った。好気培養中の細胞と物
-37-
質生産反応時の細胞を用いた。RNA 抽出時の遠心操作は全て室温で行った。採取する培養液量
の 2 容量の RNAprotect Bacteria Reagent を入れたチューブに、1 容量の菌体液を入れ、直ちにボ
ルテックスで 5 秒間混合し、室温で 5 分間インキュベートした後、5000 rpm で 10 分間遠心し、
菌体を回収した。菌体をβ-mercaptoethanol を含む RLT Buffer で最終濃度が 15-20 dry cell weight
(DCW) / l になるように懸濁した。2ml FastPrep Tube(Qbiogene, Inc. CA, USA)に 0.1mm zirconia
/ silica beads(BioSpec Products, Inc.)0.5 mg と細胞懸濁液 1 ml を入れ FastPrep・FP120 (Qbiogene)
で speed 6.0、45 秒破砕後、氷中で 1 分間冷却する操作を 3 回繰り返すことにより、菌体の機械
的破砕を行った。15,000rpm で 2 分間遠心後、上清を別の容器に移し、上清の 0.56 倍の 99% EtOH
を添加しゆっくり混合した。RNeasy mini column にサンプルをアプライし、10,000 rpm で 15 秒
間遠心後、排出液を除き、350µl の Buffer RW1 をカラムにアプライし室温で 5 分間静置後、洗
浄のため 10,000 rpm で 15 秒間遠心し、排出液を除去した。RNase-Free DNase Set を用いてカラ
ム上で混入ゲノム DNA の分解を行った。10 µl の DNase I ストック溶液を Buffer RDD 70 µl に
添加した DNaseI 溶液をカラムにアプライし、室温で 15 分間インキュベートし、DNA 分解を行
った。350 µl の Buffer RW1 をカラムにアプライし室温で 5 分間放置後、10,000 rpm で 15 秒間
遠心し、排出液を捨てた。カラムに 500 µl の Buffer RPE を添加し、10,000 rpm で 15 秒間遠心
し、排出液を除去した。再度、カラムに 500µl の Buffer RPE を添加し、10,000 rpm で 2 分間遠
心し、排出液を除去した。Buffer RPE を完全に除去するため、15,000 rpm で 1 分間遠心した。
溶出のため、カラムを新しい 1.5 ml チューブに移し、60 µl の RNase free water を添加後、15,000
rpm で 1 分間遠心した。より高濃度の RNA を得るため、溶出液をもう一度カラムに添加し、
15,000 rpm で 1 分間遠心した。
RNA の濃度は、分光光度計で O.D.260 の吸光度を測定することにより算出した (O.D.260 x 40 µg
/ml)。また、それぞれのサンプルは 95℃、5 分の熱変性後、アガロースゲル電気泳動を行い、
DNA の混入と、RNA の分解の有無を調べた。全てのサンプルは O.D.260/O.D.280 の値が 1.8-2.1
の範囲内であることを確認した。
(4) DNA チップ解析
マイクロアレイのラベル化プローブは、C. glutamicum R 株の全 RNA を鋳型にランダムプラ
イマーにより cDNA を合成した後、蛍光標識(Cy3 もしくは Cy5)した。cDNA 合成および標識反
応には Amersham Biosciences CyScribe cDNA Post Labelling Kit (Amersham Biosciences Corp.
USA)を使用し、プロトコールに従った。8 µl の全 RNA(30µg)に 3 µl の random nonamer primers
を加え、70℃で 5 分間加熱後、室温に 10 分間放置し、プライマーを RNA にアニーリングさせ
た。この RNA に、反応試薬(5x CyScript buffer, 4 µl, 0.1 M DTT, 2 µl, CyScribe Post-Labelling
nucleotide mix, 1 µl, CyScribe Post-Labelling Amino Allyl-dUTP, 1 µl, 100 U/µl CyCcript reverse
transcriptase, 1 µl)を加え 42℃で 3 時間インキュベートした。反応液を氷上で冷却後、RNA を
アルカリ分解するために、2.5 M NaOH を 2 µl 添加し、37℃で 15 分間インキュベートした。次
に 2 M HEPES Buffer を 10 µl 添加することにより中和した。CyScribe GFX Purification Kit
-38-
(Amersham Biosciences)を用いて AA 修飾 cDNA プローブの精製を行った。精製操作の際の遠心
は全て室温で行った。反応液を 500 µl の Capture Buffer と混合後、GFX カラムにアプライし、
13,800 x g で 30 秒間遠心した。排出液を除去し、600 µl の 80 % EtOH をカラムに加え、13,800 x
g で 30 秒間遠心する操作を 3 回繰り返した。カラムを 13,800 x g で 10 秒間遠心後、カラムを
新しい 1.5ml チューブに移し、0.1M NaHCO3 (pH9.0)を 60 µl 添加し室温で 5 分間静置した。
13,800 x g で 1 分間遠心後、高濃度の溶液を回収するため、溶出液をもう一度カラムに添加し、
13,800 x g で 1 分間遠心した。精製後の反応液を Cy3 または Cy5 reactive dye の入っているチュ
ーブに加え、完全に溶解後、遮光して室温で 3 時間インキュベートした。
4 M Hydroxylamine HCl を 15 µl 添加し、攪拌して混合後、遮光して室温で 15 分間インキュベ
ートした。CyScribe GFX Purification Kit (Amersham ) を用いて CyDye 標識 cDNA の精製を行っ
た。反応液を 500 µl の Capture Buffer と混合後、GFX カラムにアプライし、13,800 x g で 30 秒
間遠心した。排出液を除去し、600 µl の Wash Buffer をカラムに加え、13,800 x g で 30 秒間遠心
する操作を 3 回繰り返した。カラムを 13,800xg で 10 秒間遠心後、カラムを新しい 1.5 ml チュ
ーブに移し、60 µl の Elution Buffer を添加し室温で 5 分間静置した。13,800 x g で 1 分間遠心後、
高濃度の溶液を回収するため、溶出液をもう一度カラムに添加し、13,800xg で 1 分間遠心し、
精製済みの CyDye 標識 cDNA プローブを回収した。Cy3 及び Cy5 標識 cDNA を1本のチュー
ブに入れ、100 µl の 2x Hybridizatiion buffer (12x SSC, 0.4 % SDS, 10 x Denhardt’s solution, 0.2
mg/ml denatured salmon sperm DNA)を添加し、95℃で 2 分間加熱後、室温で冷却した。マイクロ
アレイのハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥は Lucidea SlidePro (Amersham Biosciences
Corp. USA) を用いて行った。ハイブリダイゼーションは、60℃で 14 時間行った。洗浄は、Wash
1 (2x SSC, 0.2% SDS)で 6 分、Wash 2 (0.2xSSC, 0.2% SDS)で 6 分、Wash 3 (0.2xSSC)で 2 回、イ
ソプロパノールで一回行った。
(5) マイクロアレイデータ解析
マイクロアレイの蛍光シグナルは FUJIFILM Fluorescent Image Analyzer FLA-8000 (Fuji, Tokyo,
Japan)により検出、画像化を行った。検出条件は、Cy5 を 635 nm、Cy3 を 532 nm で行った。検
出した画像データは Axon Instruments GenePix Pro 5.0 (Axon Instruments, Inc., CA, USA) を用い
て数値化および正規化を行った。チャンネル毎に色調(Cy5; 緑, Cy3; 赤)を調節し、画像を合成
した後、スポットをグリッドで囲み数値化を行った。正規化は、global normalization を採用し
た。比較する細胞間で全遺伝子の発現強度の総和は同じであると仮定し、Cy5 と Cy3 の全シグ
ナルの蛍光強度比の中央値(Median)が等しくなるように、アレイ全体の蛍光強度比を修正(正
規化)した。また、再現性、定量性に欠けると思われるスポット(スポットのサイズが半分以
下のもの、汚れや傷が入っているもの、バックグラウンドが高くなっている領域のもの)は、
解析段階において値を除外した。GenePix Pro により算出された値から、Ratio of Meands (Cy3 /
Cy5)を発現比率として用いた。
-39-
3.3.3
結果と考察
C. glutamicum R の CO2 Integration 反応遺伝子のトランスクリプトーム解析結果を 表 3-3-1 に示
した。培養時の発現強度に対する物質生産時(NaHCO3 添加条件)の発現の増減を示した。CglR
1633 の phosphoenolpyruvate carboxylase (EC 4.1.1.31)、CglR 2895 の malic enzyme (EC 1.1.1.40)、
及び CglR0945 の carboxyltransferase subunit of acetyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.2)が、物質生産時
にて発現量が増加していることが認められた。一方で、CglR 0784 の isocitrate dehydrogenase (EC
1.1.1.40)、CglR 2509 の dethiobiotin synthetase (EC 6.3.3.3)、及び CglR2751 の phosphoenolpyruvate
carboxykinase の発現量は、減少していることが認められた。物質生産時にて、アナプレロティ
ック酵素である、phosphoenolpyruvate carboxylase (EC 4.1.1.31)、及び malic enzyme (EC 1.1.1.40)
などの発現量が増加していたことから、これらの酵素の高発現が CO2 固定反応の増大に有効で
ある可能性が示唆された。
表 3-3-1 C. glutamicum R の CO2 Integration 反応酵素遺伝子
Ratio
(production phase
/growth phase)
CglR No. Function
CglR0628 putative formate dehydrogenase (EC 1.2.1.2)
→
CglR0784 putative isocitrate dehydrogenase (EC 1.1.1.42)
↓
CglR0809 pyruvate carboxylase (EC 6.4.1.1)
→
CglR0827 propionyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.3)
→
CglR0834 phosphoribosylaminoimidazole carboxylase (EC 4.1.1.21)
↓
CglR0945 putative carboxyltransferase subunit of acetyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.2)
↑
CglR1513 6-phosphogluconate dehydrogenase (EC 1.1.1.44)
→
CglR1633 putative phosphoenolpyruvate carboxylase (EC 4.1.1.31)
↑
CglR1658 putative carbamoyl-phosphate synthase (EC 6.3.5.5)
→
CglR2509 dethiobiotin synthetase (EC 6.3.3.3)
↓
CglR2751 phosphoenolpyruvate carboxykinase (GTP) (EC 4.1.1.32)
↓
CglR2759 propionyl-CoA carboxylase (EC 6.4.1.3)
→
CglR2895 malic enzyme (EC 1.1.1.40)
↑
-40-
3.4
C. glutamicum R の CO2 Integration 反応関連酵素群の強化
3.4.1
はじめに
前項にて、C. glutamicum R の物質生産時における CO2 Integration 反応関連酵素群の発現挙動
を解析したところ、培養増殖時と比較してアナプレロティック酵素遺伝子の発現量が増加する
ことが認められた。従ってこれらの増加したアナプレロティック酵素遺伝子、もしくは他のア
ナプレロティック酵素遺伝子を遺伝子工学的に高発現することによって、CO2 固定速度(物質
生産速度)の増加が期待される。そこで、前項にて物質生産時に発現増大が認められた、malic
enzyme, phosphoenolpyruvate carboxylase, 及び発現増大が認められなかった pyruvate carboxylase
の高発現ベクターを構築、C. glutamicum R に導入し、物質生産反応を行った。
3.4.2
材料と方法
(1) 供試菌株とプラスミド
供試菌株とプラスミドは表 3-4-1 に示した。
(2) 培養及び物質生産反応方法
3.3.2 (2)の培養及び物質生産反応方法に従った。
(3) 酵素高発現プラスミドの構築
C. glutamicum R 株からゲノム DNA を抽出し、各酵素遺伝子を PCR で増幅した。PCR は
LA Taq PCR キット(TaKaRa) を用いた。以下の遺伝子について、高発現プラスミドを構築した。
表 3-4-1
供試菌株とプラスミド
Strain or plasmid Relevant characteristics
C. glutamicum R
R strain
R strain
⊿LDH
ldhA ::Kmr
E. coli
JM109
recA1 endA1 gyrA96 thi hsdR17 supE44 relA1 Δ(lac-proAB )/F’[traD36 proAB + lacI q lacZ ∆M15]
Plasmids
pCRB1
pCRB300
pCRB306
pCRE1
Cmr; α-lac multicloning site. E. coli-Corynebacterium sp. shuttle vector derived from pHSG398 and pB
Cmr; pHSG398 with a 2.8-kb Kpn I-Sma I fragment containing the C. glutamicum R ppc gene
Cmr; pHSG398 with a 3.4-kb Sac I and Xba I fragment containing the C. glutamicum R pyc gene
Cmr; pHSG398 with a 1.3-kb Sma Ⅰ-Sma I fragment containing the C. glutamicum R me gene
-41-
a. Phosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC)
PEPC 遺伝子をプロモーター領域も含めて増幅した。増幅した PCR 断片を SalⅠで切断し、
コリネ型細菌内で複製可能なプラスミドベクターである pCRB1 の SalⅠサイトにクローニン
グし、pCRB300 を得た。
b. Malic enzyme (ME)
ME 遺伝子の ORF を上流 24bp を含めて PCR により増幅した。およそ 1.3 kb の断片を Sma
Ⅰで消化し、過剰発現用プラスミドの EcoRⅤサイトに挿入し、プラスミド pCRE1 を取得した。
c. Pyruvate carboxylase (PC)
PC 遺伝子をプロモーター領域を含めて PCR で増幅した。Primer 3, 4 を用い、これらには Sal
Ⅰサイトおよび SphⅠサイトを付加した。SalⅠサイトおよび SphⅠサイトで切断した PCR 断
片を pCRB1 の SphⅠサイトにクローニングし、pCRB306 を得た。
(4) 形質転換
構築したプラスミドを用いて C. glutamicum R ⊿LDH 株を形質転換し、各酵素高発現株を得
た。形質転換方法としては電気パルス法を用いた。
C. glutamicum R ⊿LDH 株を形質転換させた際は、プラスミドベクターが持つクロラムフェ
ニコール耐性でセレクションを行った。
(5) 酵素活性の測定
a. 粗酵素溶液の調整
A 寒天培地にそれぞれの組み換え株をストリークし、33 ℃、16 時間静置培養した。得られ
た菌体を氷冷した Sonication buffer (100 mM Tris-HCl (pH 7.5), 20 mM KCl, 5 mM MnSO4, 20 mM
MgCl2, 1 mM EDTA, 2 mM DTT) に懸濁し、遠心(5,000×g、4 ℃、10 min )した。さらに、得ら
れたペレットを 2 ml の氷冷した Sonication buffer に懸濁し、超音波破砕機 (Astrason model
XL2020)によって細胞を破砕した。得られた破砕液を遠心 (10,000×g、4 ℃、30 min) し 、上
清を酵素活性測定に用いた。
b. PEPC 活性の測定
PEPC によってホスホエノールピルビン酸 (PEP) から生じるオキサロ酢酸を、NADH 依存
の MDH によってリンゴ酸に変換させ、その際に減少する NADH を 340 nm の吸光度の減少
により測定した(3)。
PEPC 反応バッファー (80 mM MOPS Buffer (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 40 mM KHCO3, 2 mM
MnCl2, 10 mM Dithiothreitol (DTT), 10 U Malate dehydrogenase, 0.2 mM Acetyl-CoA, 0.128 mM
NADH) に酵素濃度が 0.02 mg/ml となるように粗酵素液を添加して、33℃にした。反応は基質
-42-
であるホスホエノールピルビン酸 (10mM) を添加して開始した。
c. ME 活性の測定
ME によるリンゴ酸からピルビン酸への変換における NADPH の生成量を、340 nm の吸光
度の減少で測定した(8)。
反応バッファー (100 mM, pH 7.8), 5 mM MgCl2, 0.6 mM NADP+)に酵素濃度が 0.02 mg/ml と
なるように粗酵素液を添加して、33℃にした。基質である sodium L-malate (40 mM)
を添加し
て反応を開始した。
d. PC 活性の測定
PC がビオチン酵素であることを利用し、アルカリホスファターゼ標識されたストレプトア
ビジンを用いて検出した(4,5,9)。
粗酵素溶液を SDS-PAGE に供した。ゲル上で分離されたタンパクを PVDF メンブレンに転
写し、ストレプトアビジンで標識後、アルカリホスファターゼの基質添加による発色で PC を
検出した。
(6) 反応液中 CO2 濃度の測定
反応液中の CO2 濃度の測定には全炭素計(TOC-3000、島津製作所)を用いた。反応開始時と
反応終了時の反応液を遠心 (10,000×g、4℃、10 min)し、上清を測定に供した。測定時の無機
炭素の計測値を、CO2 モル濃度に変換した。
3.4.3
結果と考察
(1) 各種酵素の高発現
PEPC 高発現株においては、PEPC 活性が親株と比較して 5.2 倍 に増加していることが認め
られた。ME 高発現株においては、ME 活性は親株と比較して 3.1 倍に上昇した。また、PC 高
発現株においてはストレプトアビジンによる標識の結果、125kD の PC のバンドが増加してい
ることが認められた。バンドの強度を BIO-IMAGING ANALYSER BAS 2000 (FUJIX) を用いて
解析したところ、タンパク量は親株の約 5 倍であった。それぞれの遺伝子高発現株において、
酵素活性の増加が認められた。
(2) 各種酵素高発現株の物質生産時における CO2 固定速度
PEPC、ME、及び PC 遺伝子の高発現組み換え株を用いて、物質生産反応を行い、反応開始
時と反応終了時の液中の CO2 濃度を測定し、時間当たりの CO2 消費速度を求めた (図 3-4-1)。
親株の CO2 消費速度を 100%として、それぞれの CO2 消費速度を示した。PEPC、及び ME 高発
現株においては、CO2 消費速度の増加は認められなかったが、PC 高発現株において CO2 消費速
度がおよそ 1.5 倍に増加した。この結果より、C. glutamicum R ⊿LDH 株においては、アナプレ
-43-
ロティック反応が物質生産反応における、CO2 固定反応速度の律速段階であることが考えられ
た。今後、さらなる PC 発現量の増加、アナプレロティック反応酵素の複合的な発現増大や、
アナプレロティック反応の前後の反応系の改良などによって、より CO2 固定速度の増大が期待
できる。
160
相対CO2消費速度 (%)
140
120
100
80
60
40
20
0
親株
PC高発現
PEPC高発現
ME高発現
図 3-4-1 各種酵素高発現株の CO2 消費速度
-44-
3.5
まとめ
本技術開発においては、物質生産条件下にて CO2 を高効率で固定する C. glutamicum R の細胞
レベルでの CO2 固定速度の増大を目的としており、CO2 Integration 反応速度の向上は本目的達
成に直結する。そこで C. glutamicum R 株の CO2 Integration 機構の高効率化を目的とした検討を
行った。
まず、微生物が有する CO2 が反応に関係した約 220 種の微生物酵素遺伝子から CO2 Integration
反応酵素遺伝子を抽出し、得られた結果を基に、C. glutamicum R が有する CO2 Integration 反応
酵素遺伝子を 13 種見出だした。
続いて、物質生産条件下における C. glutamicum R の 13 種の CO2 Integration 反応酵素遺伝子
の発現挙動を C. glutamicum R 全遺伝子対応型の DNA チップによって解析した。その結果、ア
ナプレロティック酵素を初めとするいくつかの CO2 Integration 反応酵素遺伝子の発現量が、物
質生産条件下にて増加していることが認められた。
また、CO2 Integration 反応関連酵素の遺伝子工学的手法により高発現を試みたところ、酵素
活性の増大に成功した。さらに、これら遺伝子高発現株を用いて物質生産反応を行い、CO2 固
定速度の増加に成功した。
今後は、C. glutamicum R が有する CO2 Integration 反応関連酵素遺伝子について、種々の CO2
濃度存在下における発現挙動を RNA レベルにて解析し、CO2 によって制御されている遺伝子を
明らかにすることで C. glutamicum R の CO2 利用メカニズムを解明する。また、さらなる PC 発
現量の増加、アナプレロティック反応酵素の複合的な発現増大や、アナプレロティック反応の
前後の反応系の改良などによって、より CO2 固定速度の増大を狙う。
-45-
参考文献
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上木勝司, and 永井史郎 (1993) 嫌気微生物学. 養賢堂, 東京.
-46-
第4章
4 .1
細胞内エネルギー生成機構の高効率化
概要
コリネ型細菌は、古くからグルタミン酸、リジン等の各種アミノ酸や核酸の生産に
用 い ら れ て き た 、 産 業 上 有 用 な 細 菌 で あ る 。 当 研 究 室 で は 更 に Corynebacterium
glutamicum R 株 が 物 理 的 に 強 靭 で あ る 特 性 に 着 目 し 、 無 通 気 条 件 下 の 高 密 度 菌 体 反 応
を 用 い た コ ハ ク 酸 等 の 新 規 バ イ オ 生 産 プ ロ セ ス の 開 発 を 行 っ て き た ( 1,2 )。 様 々 な
物質生産条件においては通常はグルコースを培養及び反応の炭素源として用いるが、
コリネ型細菌は他に複数の糖を利用することが可能である。我々はこれまでに
Corynebacterium glutamicum R 株 に お い て バ イ オ マ ス 由 来 の 糖 類 と CO 2 か ら コ ハ ク 酸 等
を 生 成 す る こ と を 明 ら か に し て お り ( 3)、 今 後 は 様 々 な 条 件 に 応 じ て 生 産 プ ロ セ ス を
改 変・拡 大 す る こ と を 想 定 し て い る 。自 然 界 の 豊 富 な 資 源 で あ る 植 物 バ イ オ マ ス に は 、
培養基質ともなり得る多種類のペントース、ヘキソースが含まれている。また、農産
廃棄物、食品工業生産廃棄物なども糖の供給のポテンシャルを持つ。
本 研 究 で は CO 2 を 原 料 と し た コ リ ネ 型 細 菌 の 有 用 物 質 生 産 技 術 開 発 の 一 環 と し て 、
エネルギー源である糖類の利用能の拡大を目標とし、糖輸送酵素に関して基礎的能力
の調査・探索および強化を行う。本年度は、基盤とする細菌の糖輸送システムに関し
て調査を行い、次に、当研究室の有機酸生産菌であり以前にゲノム全配列を決定した
C. glutamicum R 株 に お い て 、主 要 な 糖 の 輸 送 シ ス テ ム で あ る ホ ス ホ エ ノ ー ル ピ ル ビ ン
酸 :糖 ホ ス ホ ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ シ ス テ ム( PTS )の 各 酵 素 遺 伝 子 を 染 色 体 配 列 よ
り探索し同定した。
-47-
4.2
4.2.1
細菌の糖輸送システム
はじめに
細菌と真核生物の糖・アミノ酸・低分子化合物を含む各種物質の輸送酵素および生
体 を 構 成 す る 膜 蛋 白 質 は 一 次 構 造 お よ び 機 能 情 報 に よ り 分 類 さ れ 、Saier ら に よ る 膜 蛋
白 質 分 類 デ ー タ ベ ー ス ( TCDB : Transmembrane classification database,
http://tcdb.ucsd.edu/)に 登 録 さ れ て い る 。現 在 で は 原 核 生 物 お よ び 真 核 生 物 由 来 の 輸 送
酵 素 蛋 白 質 が 360 以 上 の フ ァ ミ リ ー に 分 類 さ れ て い る 。
輸 送 酵 素 蛋 白 質 の う ち 、細 菌 の 糖 輸 送 シ ス テ ム は 機 能 的 に 、一 次 的 能 動 輸 送( Primary
Active transport)、二 次 的 能 動 輸 送 (Secondary Active transport ) お よ び グ ル ー プ 輸 送 シ
ス テ ム (Group translocation )の 三 つ に 大 別 さ れ る 。 以 下 に こ れ ら の 特 徴 を 記 述 す る 。
4.2.2 一 次 的 能 動 輸 送
一 次 的 能 動 輸 送( Primary Active transport )は エ ネ ル ギ ー 共 役 型 輸 送 シ ス テ ム で あ
り ATP 等 の 化 学 物 質 分 解 に よ り 生 じ る エ ネ ル ギ ー を 駆 動 力 と す る 。ATP 依 存 型 輸 送 酵
素 複 合 体( ABC ト ラ ン ス ポ ー タ ー )は ATP 加 水 分 解 酵 素 蛋 白 質 と 膜 貫 通 蛋 白 質 お よ
び基質認識蛋白質で構成される。二次的能動輸送体と比較すると基質親和性は高く、
細 胞 内 基 質 蓄 積 能 も 高 い (4 ) 。
4.2.3 二 次 的 能 動 輸 送
二 次 的 能 動 輸 送 ( Secondary Active transport )は 細 胞 膜 内 外 に 既 に 存 在 す る 他 の 低 分
子種の勾配を利用して輸送を行うシステムである。輸送の触媒反応はプロトンやナト
リウムイオンなどの低分子イオンの出入と直接共役し、他の化学物質等によるエネル
ギ ー は 必 要 と し な い ( 5 )。 一 次 的 能 動 輸 送 体 と 比 較 す る と 基 質 親 和 性 は 低 い 。
4.2.4 グ ル ー プ 転 送 (ホ ス ホ ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ シ ス テ ム )
グ ル ー プ 転 送 ( Group translocation ) は 複 数 の 酵 素 を コ ン ポ ー ネ ン ト と し 、生 体 内 の
代謝反応と共役して基質を細胞内へ輸送するシステムである。糖輸送で細菌のホスホ
エ ノ ー ル ピ ル ビ ン 酸 : 糖 ホ ス ホ ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ シ ス テ ム ( PTS ) が 主 で あ る 。
更 に PTS は 単 に 糖 へ の リ ン 酸 基 転 移 の み で は な く 、転 写 制 御 因 子 へ の リ ン 酸 基 転 移 等 、
蛋 白 質 間 の シ グ ナ ル 伝 達 の 機 能 を 有 す る ( 6)。
輸 送 酵 素 蛋 白 質 の 中 で PTS は 解 糖 系 の 一 部 と 反 応 を 共 役 し て お り 、化 学 エ ネ ル ギ ー
も他分子の濃度勾配も必要としないことから細菌にとって有利な輸送システムである
と言える。
-48-
Sugar A
EnzymeⅡ
ⅡA ⅡB
ⅡC
Sugar B
P
PEP
EI
HPr
Sugar C
pyruvate
HPr
EI
P
Sugar D
P
ⅡA ⅡB
ⅡC
Sugar-P
Cytoplasm
図 4-2-1
細菌のホスホトランスフェラーゼシステム
PTS は 、 Enzyme I( PEP Protein kinase ) と HPr ( His carrier protein )を 共 通 コ ン ポ
ー ネ ン ト と し 、 解 糖 系 由 来 の ホ ス ホ エ ノ ー ル ピ ル ビ ン 酸 ( PEP ) か ら 一 分 子 の 無 機
リン酸を伝達することによって糖をリン酸化体として細胞内へ輸送するシステムであ
る 。 こ の Enzyme I と HPr は 糖 に 対 す る 基 質 特 異 性 を 持 た な い 細 胞 質 内 の 酵 素 で あ る
一 方 で 、 膜 に 結 合 し て 存 在 す る EnzymeⅡ 複 合 体 は 外 界 の 糖 を 特 異 的 に 認 識 し 、 HPr
より受容したリン酸基を転移して糖リン酸化体を細胞内へと輸送することができる。
そ の た め 多 く の 細 菌 は 複 数 種 の EnzymeⅡ を 細 胞 膜 に 有 し て い る (6)。
-49-
4.3
細 菌 の PTS 遺 伝 子
細 菌 の 多 く は 複 数 種 の PTS EnzymeⅡ を 有 す る が 、そ の 種 類 お よ び 数 は 種 に よ り 異 な
る も の で あ る 。代 表 的 な グ ラ ム 陰 性 細 菌 と グ ラ ム 陽 性 細 菌 の PTS 糖 輸 送 酵 素 の 数 を 表
X-1 に 示 し た 。調 査 対 象 は 以 前 に ゲ ノ ム 解 読 が 終 了 し た グ ラ ム 陰 性 お よ び グ ラ ム 陽 性
の 代 表 的 な 細 菌 で 文 献 に PTS の 記 載 が 有 る も の と し た 。
表 4-3-1
グ ラ ム 陰 性 細 菌 お よ び グ ラ ム 陽 性 細 菌 の 有 す る PTS 酵 素 数
Total No. of
No. of
PTS enzymes
EnzymeⅡs General
components
( No. of PTS genes )
Escherichia coli
33
22
11
Bacillus subtilis
25
23
2
Lactobacillus plantarum
27 <
25
2<
Streptomyces coelicolor
8<
6
2<
Corynebacterium diphtheriae
6
4
2
Mycobacterium pneumoniae
6 (7)
4
2
Haemophilus influenzae
5 (6)
3
2
References ) Escherichia coli ( 7), Bacillus subtilis 168 (8),
Lactobacillus plantarum WCFS1 ( 9), Streptomyces coelicolor A1(3) (10),
Corynebacterium diphtheriae NCTC13129 (16), Mycobacterium
pneumoniae (11) and Haemophilus influenzae (11).
大 腸 菌 に 関 し て は 古 く か ら PTS の 研 究 が 行 わ れ て お り 、PTS 遺 伝 子 群 の 解 析 、各 種
EnzymeⅡ の 生 化 学 的 な 解 析 、ま た Enzyme I や HPr の 立 体 構 造 解 析 の 研 究 等 が な さ れ
て き た 。 一 方 、 枯 草 菌 、 Streptomyces 、 Lactobacillus の PTS を 含 む 糖 輸 送 シ ス テ ム に
ついては全体像を捉える情報としては現在ゲノム解析結果が先行していると思われる。
各 微 生 物 で 報 告 さ れ て い る ゲ ノ ム 解 析 結 果 に よ る と 大 腸 菌 の PTS 遺 伝 子 数 は 33 と 多
数 で あ っ た (7 )。 糖 特 異 性 を 有 す る EnzymeⅡ に 関 し て は 、 大 腸 菌 が 22、 枯 草 菌 (8)は
23、 Lactobacillus( 9) で は 25 と 多 数 で あ っ た 。 S. coelicolor (10 )で は 6 と や や 少 な
い 数 の EnzymeⅡ 遺 伝 子 が 認 め ら れ て い る 。ま た Mycoplasma pneumoniae で は ゲ ノ ム 解
析 よ り 7 、 Haemophilus influenzae は 6 と 少 数 の PTS 遺 伝 子 総 数 が 報 告 さ れ て い る
( 11 ) 。そ れ ら の 微 生 物 で は 糖 の 輸 送 は 主 に ABC ト ラ ン ス ポ ー タ ー に よ り 行 わ れ る と
推 測 さ れ る 。尚 、表 に 示 し た PTS 酵 素 数 は 遺 伝 子 配 列 の み か ら 予 測 さ れ た も の を 含 む 。
以 上 の 調 査 か ら PTS EnzymeⅡ の 数 は 微 生 物 種 に よ り 大 分 異 な る も の で あ る 。こ の な か
で 類 縁 の Corynebacterium diphtheriae に お い て は 染 色 体 上 に 推 定 さ れ る PTS 遺 伝 子 数
は共通コンポーネントを含めて 6 種であった。
-50-
4.4
4.4.1
コリネ型細菌のホスホトランスフェラーゼシステム
はじめに
コリネ型細菌についてはその産業上の有用性に比して糖輸送経路に関する情報は
比 較 的 少 な い 。 以 前 に C. glutamicum は フ ル ク ト ー ス 、 ス ク ロ ー ス を 炭 素 源 と し て 生
育することができ、アミノ酸生産( リジン生産 )のための培養においても用いられ
る こ と が 述 べ ら れ て い る( 12)。フ ル ク ト ー ス 、ス ク ロ ー ス は 植 物 バ イ オ マ ス に も 含 有
される天然糖であり、培養基質として用い得ると考えられる。糖輸送系の解析につい
て は , Brevibacterium flavum で グ ル コ ー ス 、フ ル ク ト ー ス 、ス ク ロ ー ス の 各 輸 送 酵 素 の
薬 剤 変 異 株 が 取 得 さ れ て い る ( 13,14,15 ) が 、 単 一 遺 伝 子 破 壊 等 の 詳 細 な 解 析 は な
さ れ て い な か っ た 。ま た 類 縁 で あ る Corynebacterium diphteriae に お い て は ゲ ノ ム 解 読
結果(
報 告 時 点 に お い て は ド ラ フ ト シ ー ケ ン ス )を も と に PTS 遺 伝 子 の 解 析 が 報 告
さ れ た( 16)。そ の C.diphteriae の 染 色 体 上 に は 3 つ の PTS 遺 伝 子 群 を 含 む 領 域 が 存 在
することが報告されている。
当 研 究 室 の C. glutamicum R 株 は 主 要 な 糖 を PTS に よ り 細 胞 内 へ 輸 送 す る ( 17)。
我 々 は 以 前 に C. glutamicum R 株 に お い て 、ホ ス ホ エ ノ ー ル ピ ル ビ ン 酸:糖
ホスホト
ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ シ ス テ ム ( PTS ) の Enzyme I 遺 伝 子 を 同 定 し た ( 18)。 EnzymeI
遺 伝 子 破 壊 株 ( ptsI - )の 解 析 の 結 果 、 本 菌 で は グ ル コ ー ス 、 フ ル ク ト ー ス 、 ス ク ロ ー
ス 、マ ル ト ー ス 、マ ン ノ ー ス 、ト レ ハ ロ ー ス 、α -メ チ ル グ ル コ シ ド 、サ リ シ ン 、ア ル
ブ チ ン を 含 む 計 10 種 の 糖 は PTS に よ り 細 胞 内 へ 輸 送 さ れ る こ と が 明 ら か で あ る( 19)。
そ こ で 今 回 、C. glutamicum R 株 に つ い て 糖 の 利 用 能 の 可 能 性 を 更 に 明 ら か に す る べ く 、
糖 特 異 性 を 有 す る EnzymeⅡ 遺 伝 子 の 探 索 を 行 っ た 。
4.4.2 材 料 と 方 法
(1) 供 試 菌 株
解 析 対 象 と す る コ リ ネ 型 細 菌 は 当 研 究 室 の 保 有 す る C. glutamicum R 株 を 一 貫 し て
用いた。
(2) 糖 輸 送 酵 素 遺 伝 子 の 解 析
C. glutamicum R 株 の 全 ゲ ノ ム 配 列 は 当 研 究 室 で 以 前 に 決 定 し た 。ORF 予 測 は Gllimer
ver.2,( http://www.tigr.org/software/glimmer/) お よ び GeneMark HMM
(http://opal.biology.gatech.edu/GeneMark/ ) の 二 つ の 遺 伝 子 予 測 ツ ー ル を 用 い て 行 っ た
も の で あ る ( 20)。
C. glutamicum R 株 の 全 ゲ ノ ム よ り 糖 輸 送 系 酵 素 遺 伝 子 の 抽 出 お よ び 解 析 は 、は じ め
に DDBJ-GeneBank-EMBL nucleotide database を 基 に NCBI-BLAST
Program
( http://www.ncbi.nlm.gov/blast/ )を 用 い て 行 っ た 。
推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 の 膜 貫 通 領 域 の 予 測 は SOSUI / G ver.1.1 Program
( http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/cgi-bib/sosui.cgi?/sosui) 、 糖 リ ン 酸 化 部 位 の 予 測 に
は MOTIF
(http://motif.genome.ad.jp/)を 使 用 し た 。
-51-
4.4.3 コ リ ネ 型 細 菌 の PTS 遺 伝 子 ( EnzymeⅡ ) の 探 索
EnzymeⅡ は 細 胞 膜 上 で 各 糖 を 特 異 的 に 認 識 し 、リ ン 酸 化 体 と し て 糖 を 細 胞 内 へ 輸 送
す る 。本 菌 に お い て 何 種 の EnzymeⅡ が 糖 輸 送 を 担 う の か 、そ し て 個 々 の 酵 素 の 機 能 を
明 ら か に す る こ と が 必 要 で あ り 、そ の た め 本 菌 ゲ ノ ム 情 報 よ り PTS EnzymeⅡ 遺 伝 子 の
探 索 を 実 施 し た 。 当 研 究 室 で は 以 前 に C. glutamicum R 株 の 全 ゲ ノ ム 配 列 を 決 定 し た 。
本 菌 の 3.3Mbp の ゲ ノ ム に は 2990 の ORF が 存 在 す る( 20)。Glimmer お よ び GeneMark
のプログラムを用いて各遺伝子のアノテーションを行った上で、目的とする糖輸送酵
素 の 抽 出 に は よ り 詳 細 な 解 析 が 必 要 で あ っ た た め 、次 に 以 下 の PTS EnzymeⅡ の 特 徴 よ
り探索を行った。
EnzymeⅡ は 膜 に 結 合 す る と と も に 内 部 の 細 胞 質 側 で HPr よ り リ ン 酸 基 の 受 容 お よ
び 自 己 リ ン 酸 化 を 行 う 。 こ の た め 通 常 EnzymeⅡ は リ ン 酸 基 を 受 容 す る 側 か ら Ⅱ A, Ⅱ
B, Ⅱ C と 呼 ば れ る 三 つ の 機 能 ド メ イ ン( Ⅱ ABC ま た は Ⅱ CBA )で 構 成 さ れ て い る ( 図
−1
)。Ⅱ A、Ⅱ B ド メ イ ン は リ ン 酸 基 の 受 容 部 位 が 存 在 す る 可 溶 性 の 領 域 で あ り 、一
方ⅡC ドメインは膜貫通部分となる疎水性領域を多く含むことが特徴的である。そこ
で 、SOSUI、MOTIF の プ ロ グ ラ ム を 併 用 し て 推 定 糖 輸 送 酵 素 の 抽 出 を 行 っ た 。そ の 結
–2 に 示 し た 四 つ の EnzymeⅡ 遺 伝 子 を 抽 出 す る こ と が で き た 。
果 、本 菌 ゲ ノ ム よ り 図
ⅡB
1
PtsF
ⅡA
C
1
ⅡB
109
9× Transmembrane domain
ⅡC
464
N
ⅡA
ⅡB
10TM
ⅡC
55 122
661a.a.
C
10TM
Phosphorylation motif
PtsG
688a.a.
N
Phosphorylation domain
PtsS
ⅡC
320
462
ⅡA
N
681a.a.
C
11TM
1
ⅡB
125
ⅡC
455
BglF N
ⅡA
10TM
618a.a.
C
10TM
図 4-4-1
C. glutamicum R 株 の PTS
EnzymeⅡ の 推 定 一 次 構 造
本 菌 ゲ ノ ム 配 列 よ り 抽 出 し た PtsG, PtsF, PtsS, BglF の 4 つ の 推 定 EnzymeⅡ は そ れ ぞ
れ 推 定 661 残 基 、688 残 基 、681 残 基 お よ び 618 残 基 よ り 成 り 、典 型 的 な 三 つ の 機 能 ド
メ イ ン (Ⅱ BCA ま た は Ⅱ BAC ) で 構 成 さ れ る 蛋 白 質 で あ っ た 。各 遺 伝 子 の 命 名 は 遺 伝
子 破 壊 株 の 機 能 解 析 の 結 果 を 基 に 行 っ た 。各 EnzymeⅡ 遺 伝 子 に つ い て の 配 列 解 析 結 果
-52-
を以下に述べる。
(1)
Enzyme Ⅱ Glc
( グ ル コ ー ス -PTS )
PtsG の 推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 は 681 残 基 で あ り 、 推 定 分 子 量 は 72422 で あ っ た 。 推 定
一次構造は N 末端側の領域および C 末端側の領域が細胞質ドメイン ( リン酸化ドメ
イ ン )、中 央 の 領 域 は ア ミ ノ 酸 残 基 109 位 か ら 464 位 に か け て 疎 水 性 領 域 に 富 み 11 回
膜 貫 通 す る と 予 測 さ れ た ト ラ ン ス メ ン ブ ラ ン ド メ イ ン と 推 定 さ れ る 、 EnzymeⅡ BCA
ドメイン構造であった。N 末端側にはリン酸化モチーフ配列を見出した。
PtsG は 他 の コ リ ネ 型 細 菌 で 報 告 さ れ た EnzymeⅡ Glc 遺 伝 子 と 比 較 す る と 、 C.
ammoniagenes
株 の PtsG ( AF045481 )と 推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 44%の 相 同 性 を 示 し た 。
グルコースは最も主要な培養基質であるに加えて、植物バイオマスの主成分であるセ
ル ロ ー ス の 加 水 分 解 産 物 で も あ る 。決 定 し た ptsG 遺 伝 子 は 発 現 強 化 ま た は 目 的 に 応 じ
て 部 位 置 換 の 対 象 の 一 つ と な る と 考 え ら れ る 。 ま た 大 腸 菌 等 の 他 の 細 菌 で は Enzyme
Ⅱ Gl c は 輸 送 機 能 の ほ か 、蛋 白 質 間 相 互 作 用 に よ り 非 PTS 糖 輸 送 酵 素 活 性 の 調 節 を 行 う
こ と ( イ ン デ ュ ー サ ー エ ク ス ク ル ー ジ ョ ン )や 糖 代 謝 系 遺 伝 子 の 制 御 ( カ タ ボ ラ イ
ト レ プ レ ッ シ ョ ン )に 関 与 す る こ と に つ い て も 興 味 深 い 知 見 が 報 告 さ れ て い る 。
(2)
EnzymeⅡ Fru ( フ ル ク ト ー ス -PTS )
PtsF の 推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 は 688 残 基 で あ り 、 推 定 分 子 量 は 70486 で あ っ た 。 推 定 一
次 構 造 は N 末 端 側 が 細 胞 質 ド メ イ ン ( リ ン 酸 化 ド メ イ ン )、C 末 端 側 が ア ミ ノ 酸 残 基
320 位 か ら 661 位 に か け て 9 回 膜 貫 通 す る と 予 測 さ れ た ト ラ ン ス メ ン ブ ラ ン ド メ イ ン
の 、EnzymeⅡ BAC ド メ イ ン 構 造 で あ っ た 。遺 伝 子 破 壊 株 の 生 化 学 的 解 析 お よ び 相 同 性
比 較 よ り こ の 遺 伝 子 を EnzymeⅡ Fru 遺 伝 子 ( ptsF )と 判 定 し た 。 決 定 し た EⅡ Fru 遺 伝 子
の 上 流 に は 1-ホ ス ホ フ ル ク ト キ ナ ー ゼ 遺 伝 子 が 存 在 し て お り 、こ の こ と は フ ル ク ト ー
スの代謝に効率的であろう。
フルクトースは果物等に多く含まれる天然糖である。身近な農産加工の廃棄物にも
フ ル ク ト ー ス を 含 む も の は 有 り 、 一 例 で は 廃 コ ー ン シ ロ ッ プ に は 8% も の フ ル ク ト ー
スが含まれる。
(3)
EnzymeⅡ Suc ( ス ク ロ ー ス PTS )
PtsS の 推 定 ア ミ ノ 酸 配 列 は 681 残 基 で あ り 、 推 定 分 子 量 は 69169 で あ っ た 。 推 定 一
次 構 造 は N 末 端 側 お よ び C 末 端 側 の 領 域 が 細 胞 質 ド メ イ ン ( リ ン 酸 化 ド メ イ ン )で
あり、N 末端側の領域にはリン酸化モチーフが認められた。中央の領域のアミノ酸残
基 55 位 か ら 462 位 に か け て は 疎 水 性 に 富 み 11 回 膜 を 貫 通 す る と 予 測 さ れ る ト ラ ン ス
メ ン ブ ラ ン 構 造 で あ り 、こ の 酵 素 は PtsG と 同 様 の EnzymeⅡ BCA ド メ イ ン 構 造 で あ っ
た。スクローストランスポーターとの部分的類似性および遺伝子破壊株の生化学的性
質 か ら 、 同 遺 伝 子 を EnzymeⅡ Suc 遺 伝 子 ( ptsS )と 判 定 し た 。 EnzymeⅡ Suc 遺 伝 子 ptsS
は 、 EnzymeⅡ F r c 遺 伝 子 ptsF と は 染 色 体 上 の 離 れ た 位 置 に 存 在 し て い た 。 ス ク ロ ー ス
分 解 産 物 は フ ル ク ト ー ス と グ ル コ ー ス で あ る が 、こ れ ら の 糖 は そ れ ぞ れ 別 々 の Enzyme
-53-
Ⅱにより認識され細胞内へ輸送される。
自然界においてはスクロースは全ての光合成植物の細胞質で液胞に蓄積されてい
る 貯 蔵 糖 で あ る 。農 作 物 で 多 い も の で は サ ト ウ ダ イ コ ン は 7 % 、サ ト ウ キ ビ 汁 は 20%
までのスクロースを含有する。
(4)
EnzymeⅡ Bgl
( β ‐ グ ル コ シ ド ‐ PTS )
天 然 に 存 在 す る 量 は 少 な い が β -グ ル コ シ ド 基 質 で あ る サ リ シ ン 、ア ル ブ チ ン は 、本
菌 で BglFAG オ ペ ロ ン に コ ー ド さ れ る 酵 素 に よ り 菌 体 内 へ と 輸 送 さ れ る ( 21 )。bglF に
コ ー ド さ れ る EnzymeⅡ Bgl は 推 定 ア ミ ノ 酸 618 残 基 の 蛋 白 質 で あ り 、 中 央 の 125 位 よ
り 455 位 で 10 回 膜 貫 通 す る 型 の Enzyme Ⅱ BCA ド メ イ ン 構 造 で あ る と 推 定 し た 。 bglF
の 遺 伝 子 破 壊 株 は β -グ ル コ シ ド 基 質 の 資 化 が 不 可 能 と な っ た が 、グ ル コ ー ス を は じ め
とした単糖類の資化には影響を及ぼさなかった。
古紙および植物バイオマス由来の複合糖の糖化においてはその加水分解産物とし
て単糖類のみならずグルコシド結合を持つ二糖およびオリゴ糖が少なからず生じる為、
この酵素は有用である。
-54-
4.5
まとめ
有 機 酸 等 の 有 用 化 学 物 質 の 生 産 菌 で あ る 本 菌 C. glutamicum R に お い て 主 要 な 糖 の
輸 送 は PTS に 依 存 す る 。本 菌 の ゲ ノ ム 情 報 を 基 に PTS 遺 伝 子 の 探 索 を 行 っ た 結 果 、二
種 の 可 溶 性 の 共 通 コ ン ポ ー ネ ン ト 酵 素 ( Enzyme I, HPr )お よ び 四 種 の EnzymeⅡ が 明 ら
か と な っ た 。 大 腸 菌 や 枯 草 菌 で 既 に 解 析 さ れ た PTS 遺 伝 子 に 対 す る と 本 菌 の PTS 遺
伝子は比較的少なく、コリネ型細菌は少数の酵素が積極的に糖の細胞内輸送を担う菌
で あ る と 考 え ら れ る 。ゲ ノ ム 上 で 同 定 し た こ れ ら の PTS EnzymeⅡ は 遺 伝 子 破 壊 株 の 生
化学的解析により機能を決定している。今後は、糖輸送機能の改変・強化を目的とし
て、これらの同定した遺伝子に関し、既に当研究室で開発したコリネ型細菌の遺伝子
工学技術を用いて、発現系の構築や部位特異的変異等を試みる。
-55-
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-57-
第5章
結び
5.1 研究成果のまとめ
5.1.1 微生物細胞内への CO2 取り込み機構の解明と強化技術の開発
微生物が有する細胞内への CO2 取り込み機構について調査、関連酵素遺伝子の抽出解析
を行い、得られた結果を基に、C. glutamicum R における該酵素遺伝子の相同性解析を行っ
た。
微生物の能動的な CO2 取り込みに関与するいくつかの酵素遺伝子と、C. glutamicum R 全
遺伝子との相同性解析を行ったところ、ラン藻類の HCO3-取り込み ABC トランスポーター
遺伝子である cmpABC、NADH デヒドロゲナーゼのコンポーネントである ndhD3、ndhD4
に対して高い相同性を示す遺伝子が見出された。また、細胞内にて CO2 と HCO3 -の平衡反
応を触媒するカーボニックアンヒドラーゼ(CA)遺伝子に対しては、C. glutamicum R の 3
つの ORF が高い相同性を有していることを認めた。
5.1.2 微生物細胞内における新規 CO2 Integration(組み込み)機構の探索とその高効率化
C. glutamicum R 株の CO2 Integration 機構の高効率化を目的として、C. glutamicum R 株の
CO2 Integration 酵素遺伝子の発現挙動解析、及び CO2 Integration 酵素の高発現を試みた。
まず、微生物が有する CO2 が反応に関係した約 220 種の微生物酵素遺伝子から CO2
Integration 反応酵素遺伝子を抽出し、得られた結果を基に、C. glutamicum R が有する CO2
Integration 反応酵素遺伝子を 13 種見出だした。次に、物質生産条件下におけるこれら酵素
遺伝子のトランスクリプトーム解析を行ったところ、アナプレロティック酵素を初めとす
るいくつかの CO2 Integration 反応酵素遺伝子の発現量が増加していることが認められた。
また、CO2 Integration 反応関連酵素の遺伝子工学的手法により高発現を試みたところ、酵
素活性の増大に成功した。さらに、これら遺伝子高発現株を用いて物質生産反応を行った
ところ、CO2 固定速度の増加が認められた。
5.1.3 細胞内エネルギー生成機構の高効率化
微生物の CO2 利用のためのエネルギーの効率的な供給を目的として、細胞内エネルギー
生成機構の高効率化に関する検討を行った。
微生物の糖輸送システムについて、大腸菌や枯草菌等のホスホトランスフェラーゼシス
テム (PTS)酵素遺伝子を中心に、調査、解析を行った。さらに、得られた情報と C. glutamicum
R 全ゲノム情報を基に、C. glutamicum R の PTS 関連酵素遺伝子を解析した。その結果、C.
glutamicum R には、二種の可溶性の共通コンポーネント酵素 (Enzyme I, HPr)、及び四種の
Enzyme II の酵素遺伝子の存在することが明らかとなった。大腸菌や枯草菌の PTS 関連酵
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素遺伝子に対して、コリネ型細菌の PTS 関連酵素遺伝子が比較的少ないことが認められ、
コリネ型細菌では少数の酵素によって糖の細胞内輸送を担っていることが推察された。
-59-
5.2 今後の課題
平成16年度の研究成果をもとに、今後に実施すべき課題を以下にまとめる。
5.2.1 微生物細胞内への CO2 取り込み機構の解明と強化技術の開発
H16年度の結果を基に、コリネ型微生物の CO2 取り込み遺伝子の発現解析、及び
強化を最終目的として、CO2 取り込み機構関連遺伝子の破壊株を構築して機構解明を
進め、コリネ型微生物の CO2 取り込みに関与する酵素(タンパク)を解明する。
5.2.2 微生物細胞内における新規 CO2 Integration(組み込み)機構の探索とその高効率化
さらなる CO2 固定速度を増大を目的として、 CO2 Integration 酵素発現量の増加、アナ
プレロティック反応酵素の複合的な発現増大や、アナプレロティック反応の前後の反応系
の改良等による、 CO2 Integration 反応の強化を行う。また、H16年度に引き続きトラ
ンスクリプトーム解析を行い、CO2 Integration 反応酵素遺伝子や他の代謝酵素遺伝子
の種々の CO2 濃度下における発現挙動を解明する。
5.2.3 細胞内エネルギー生成機構の高効率化
H16年度の得られた成果を基に、 糖輸送機能の改変、強化を目的として、これらの
同定した遺伝子に関し、既に当研究室で開発したコリネ型細菌の遺伝子工学技術を用いて、
発現系の構築や部位特異的変異等を試みる。
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平成16年度
成果外部発表一覧
口頭発表
日 本 農 芸 化 学 会 ( 札 幌 ) 2005 年 3 月
コ リ ネ 型 細 菌 の 糖 輸 送 系 ( PTS )遺 伝 子 破 壊 株 の 解 析
岡井直子、鈴木伸昭、池田洋子、野中
寛、乾
将行、湯川英明
日 本 農 芸 化 学 会 ( 札 幌 ) 2005 年 3 月
コリネ型細菌を用いた有機酸生産バイオプロセスの構築に関する基礎的検討
沖野祥平、乾 将行、湯川英明
日 本 農 芸 化 学 会 ( 札 幌 ) 2005 年 3 月
酸素抑制条下におけるコリネ型細菌の糖代謝経路の解析
川口秀夫、村上賜希子、沖野祥平、乾
将行、湯川英明
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本報告書の内容を公表する際は、あらかじめ
財団法人 地球産業環境技術研究機構(RITE)
研究企画グループの許可を受けて下さい。
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