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甲子園短期大学 食品加工実習50年の歴史

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甲子園短期大学 食品加工実習50年の歴史
甲子園短期大学紀要 33:61-65.2015.
甲子園短期大学 食品加工実習50年の歴史
水野(杉原)祐子* 増 田 美由紀**
The 50-year History of Food Processing Practice in Koshien Junior College
Yuko MIZUNO-SUGIHARA* & Miyuki MASUDA**
腐剤や添加材を使わない食品を自らの手で作ることが
1.はじめに
大切である。
人々は、大昔から、食べ物に色々な加工を施してき
この科目では、食品の加工に関わる知識と技術を習
た。限りある食料資源を有効に活用するために、日々
得させるため、食品を調理・加工する過程を実際に体
の暮らしの中で、多種多様な食品加工や保存技術が伝
験させる実習項目を用意している。家庭における食品
統文化から生まれた。科学技術の進歩に伴い、今もな
の貯蔵、加工の意義と方法を、主に季節の材料を使っ
お進歩している。加工によって、食品の保存性を高め、
て実習する。家庭で気軽に作ることができるように考
食品を安全な状態で食べやすく、そして消化しやすく
慮し、日本の伝統的な加工食品や日常的に身近な加工
栄養価の高いものにし、人々の嗜好に合うようにして
食品を作ることを通して、加工食品に対する知識と技
きた。
術の習得を目的としている。
加工にあたっては、それぞれの食品の栄養学的、微
なお、文中の担当者に関しては、敬称を略して、表
生物学的、生化学的、生理学的な知識が必要となり、
記している。また、文献を示すために年号を西暦で表す
食品に手を加えて保存性を高め、なおかつおいしくす
必要のあるデータについては、西暦を表記している。
る原理や基本技術を学ぶことにより、加工食品を理解
2.科目名と歴代の担当者について
できるようになる。
食品加工実習は、本学の生活環境学科の専門科目で
昭和39年開学から現在までの科目名の変遷、歴代の
あり、昭和39年開学の翌年から(当時、家政科)、Ⅱ回
担当者、開講時期などを表1にまとめた。
生の授業として開講さ
表1 科目名と歴代担当者
れている。
近年、加工食品の種
類、生産及び各家庭に
おける購入量は年々増
加し、特に若い世代の
利用度は高く、加工食
品の食生活に果たす役
割は、益々大きくなっ
担当者
昭和40年度
岩田
不明
昭和41年度〜56年度
福原 貞介
教授
昭和57年度
藤田 修三
非常勤講師
壺阪美智子
教授
柴谷 郁子
非常勤講師
増田美由紀
特任准教授
昭和58年度〜平成元年度
平成2年度〜11年度
平成12年度〜18年度
平成19年度〜21年度
を営み、健康を維持す
平成22年度〜25年度
対して正しい知識を身
学年
Ⅱ回生からの授業なので開講せず
ている。賢明な食生活
るために、加工食品に
最終職名
昭和39年度
平成26年度
につけるとともに、防
期間 単位
科目名
前期
通年
2
食品製造加工
貯蔵
Ⅱ回生 後期
前期
Ⅰ回生
後期
1
2
食品加工実習
食品加工
水野
(杉原)
祐子 特任助教
甲子園短期大学学生便覧・甲子園短期大学講義概要・甲子園短期大学学籍簿から水野(杉原)
作成
* 本学特任助教
本学特任准教授
報告(資料・報告):2014年12月4日受付
**
― 61 ―
昭和39年開学の翌年から、Ⅱ回生前期の授業として
壺阪以降のすべての担当者が行っている実習プログ
「食品製造加工貯蔵」という科目名で開講されており、
ラムは、らっきょうの甘酢漬け、味噌、手打ちうどん、
岩田が担当していた。岩田に関しては、フルネームや
オレンジマーマレードの4つである。豆腐は、壺阪以外
役職に関しての資料が残っていなかった。
の担当者である、柴谷・増田・水野(杉原)が行って
引き続いて、
「食品製造加工貯蔵」という科目で、福
おり、こんにゃくは、平成26年度以外すべての年度で
原が昭和41年度から56年度まで、藤田が昭和57年度、
行っている。壺阪と柴谷はイチゴジャムの実習を行っ
壺阪が昭和58年度から平成元年度まで担当していた。
ていたが、増田以降はりんごジャムの実習に変更して
福原と藤田が担当していた時はⅡ回生通年科目だった
いる。開講時期が前期から後期に変更になり、旬が春
が、壺阪が担当していた時は、Ⅱ回生後期のみの科目
の果物であるイチゴを使うと材料費が高くなるため、
であった。
秋に旬を迎えるりんごに変更したのだと考えられる。
平成2年度から、科目名が「食品加工実習」に変更に
同様に、壺阪と柴谷が行っていた、ピーチネクター、
なり、壺阪が平成2年度から11年度まで、柴田が平成12
グレープフルーツのシロップ漬瓶詰も、開講時期の変
年度から18年度まで、増田が平成19年度から21年度ま
更で桃やグレープフルーツの旬から外れたためにとり
で担当していた。壺阪はⅡ回生前期、柴谷はⅡ回生後
やめたのだと考えられる。学生にあまり人気がなかっ
期、増田はⅡ回生後期に開講していた。
たり、完成品の味があまりおいしくなかった実習プロ
平成22年度から、科目名が「食品加工」に変更にな
グラムも、徐々にとりやめていく傾向にある。
り、増田が平成22年度から25年度まで単独で担当し、
ジャムの実習に使用する材料の変更に伴い、大学祭
平成26年度は、水野(杉原)と増田が担当している。開
での販売品目にも変更が見られた。平成9年から平成
講時期はⅠ回生後期である。
12年は、大学祭でイチゴジャムとらっきょうの甘酢漬
けを販売していたが、平成18年から平成26年は、らっ
3.実習プログラムについて
きょうの甘酢漬けのみ販売している。平成9年以前と、
各担当者が行っていた主な実習プログラムを表2に
平成13年から平成17年については、資料が残っていな
まとめた。平成7年度以前の実習プログラムについて
かったため、不明である。昨年は1瓶200円で73瓶、今
は、資料が残っていなかったため、表には掲載してい
年は材料費等の高騰により1瓶250円に設定して55瓶、
ない。
らっきょうの甘酢漬けを販売した。
表2 実習プログラム
平成7年度〜11年度
平成12年度〜18年度
担当者
(敬称略)
壺阪美智子
柴谷 郁子
開講時期
Ⅱ回生前期
Ⅱ回生前期
平成19年度〜21年度
平成22年度〜25年度
平成26年度
増田美由紀
増田美由紀
増田美由紀・
水野(杉原)祐子
Ⅱ回生後期
Ⅰ回生後期
Ⅰ回生後期
らっきょうの甘酢漬け らっきょうの甘酢漬け らっきょうの甘酢漬け らっきょうの甘酢漬け
共通
味噌
プログラム 手打ちうどん
独自の
らっきょうの甘酢漬け
味噌
味噌
味噌
味噌
手打ちうどん
手打ちうどん
手打ちうどん
手打ちうどん
オレンジマーマレード オレンジマーマレード オレンジマーマレード オレンジマーマレード
オレンジマーマレード
豆腐
(木綿・絹ごし)
イチゴジャム
豆腐
(木綿・絹ごし)
豆腐
(木綿・絹ごし) 豆腐
かまぼこ
イチゴジャム
りんごジャム
りんごジャム
りんごジャム
グレープフルーツの
シロップ漬瓶詰
かまぼこ
かまぼこ
かまぼこ
きゅうりピクルス
こんにゃく
こんにゃく
こんにゃく
さつまいものペースト・
芋羊羹
グレープフルーツの
シロップ漬瓶詰
アイスクリーム
アップルケーキ
きゅうりピクルス
ジュース
トマトソース・ピザ
柚餅子
くずまんじゅう
ポン酢
ミックスジュース
ウスターソース
プログラム ピーチネクター
フルーツゼリー
ウスターソース
ピーチネクター
アップルケーキ
トマトソース・ピザ
くずまんじゅう
みたらし団子
ミルクセーキ
フレッシュチーズ
さつまいものペースト・
芋羊羹
アイスクリーム
草もち
甲子園短期大学講義概要から水野(杉原)作成
― 62 ―
1999年度版大学案内のパンフレットから抜粋した
製造年月日を記載したラベルを瓶に貼り、フィルムに
写真記事を図1、今年の大学祭で実際に販売したらっ
入れて販売した。毎年売り切れていることから、らっ
きょうの甘酢漬けの写真を図2に示した。図1より、大
きょうの甘酢漬けも好評であることがうかがえる。
学祭で販売されていたイチゴジャムは好評であったこ
とがうかがえる。らっきょうの甘酢漬けは、図2に示
したように瓶に入れた後、原材料名・内容量・産地・
《食品加工実習》
短大の園芸場で育てたイチゴでのジャムづくりのほか味噌やか
まぼこも実習で作ります。色・味・香り三拍子そろったイチゴ
ジャムは大学祭でもすぐに売り切れてしまうほどの人気です。
実習を通して食品のもつ性質を良く理解することができます。
図1 1999年度版大学案内より
図2 平成26年度大学祭で販売した らっきょうの甘酢漬け
図3 平成26年度授業で配布したプリント教材の一例
― 63 ―
食品加工の授業では、毎回、学生にプリントを配布
ながら、その起源や本物の味を知らず、企業により大
している。一例として、実際に配布した、らっきょう
量生産されたものを漫然と食すことが多くなっている。
の甘酢漬けについての本年度プリント教材を、図3に
本学生活環境学科生活環境専攻では、歴代の担当者
示した。らっきょうについての知識や甘酢漬けの製造
が実習を多く取り入れ、基礎的な生活知識と技術を身
法を掲載するだけではなく、学生自身が考えて記入で
につけるよう、カリキュラムを工夫してきた。引き続
きるように空欄を設けている。また、毎回、授業の後
き、社会で役立つ食に関する知識と調理技術の向上を
に、レポートを提出させている。本年度、実際に使用
めざす実習を選び、内容の充実をはかり、学生の教育
しているレポート用紙を図4に示した。表紙には、組・
にあたっていきたい。
番号・氏名・共同実習者・実習日・天気・温度・題目・
今回、食品加工実習50年の歴史をまとめていく過程
提出日を記入させ、レポートには、題目・材料・方法・
で、
「園の輪」
「甲子園短大通信」
「大学案内」
「甲子園短
結果・感想を記入させるようになっている。らっきょ
期大学学生便覧」
「甲子園短期大学講義概要」
「写真と
うの甘酢漬け以外に、本年度作成した実習プログラム
記録で綴る生活実習ハウスの40年」
「甲子園学院50年
を図5に示した。いずれも学生に好評であった。
史」
「甲子園学院60年史」
「甲子園学院70年史」などの
記事を読み、本学50年の歴史の重みと、本学における
4.終わりに
食品加工実習の意義と重要性を再認識することができ
食の外部化が進み、食品加工操作の多くが家庭の外
た。伝統を重んじつつ、さらなる発展をめざして、今
に置かれるようになった。自身の土地の伝統食であり
後の授業に活かしていきたい。
図4 平成26年度授業で使用したレポート用紙
りんごジャム
芋羊羹
アップルケーキ
図5 平成26年度授業で作成した実習プログラム
― 64 ―
引用参考文献
・食品加工技術発達史(食品加工の歴史)WEB
http://trg.affrc.go.jp/v-museum/history_text/
history02_t/h02t_index.html
・園の輪(第1号〜第160号)
・甲子園短大通信(第1号〜第77号)
・大学案内(1965年度版〜2015年度版)
・甲子園短期大学学生便覧(昭和40年度〜平成26年度)
・甲子園短期大学講義概要(昭和62年度〜平成26年度)
・甲子園短期大学 平成16年発行「開学40周年記念写
真と記録で綴る生活実習ハウスの40年」
・甲子園短期大学家政学科 平成17年発行「家政学科
ブックレット 1.楽しいクッキングレシピ(1)
軽食・デザート」
・甲子園短期大学 平成26年発行「園芸教育研究50年
の歩み」
・壺阪美智子・福田友美.1997.“食品加工実習”に関
するアンケート調査結果.甲子園短期大学紀要.
16:103-108
・岡本美恵・古川真一.2008.食品加工学実習の教材
開発-きび団子製造-.比治山大学短期大学部紀
要.4365-68
・横山洋子・水野早苗.2013.平成24年度食品加工講
習会の報告(第一報)参加者への講習会について
の調査.瀬木学園紀要.7:32-34
・横山洋子・水野早苗.2013.平成24年度食品加工講
習会の報告(第二報)食文化に関する意識調査.
瀬木学園紀要.7:35-37
― 65 ―
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