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てきすとぶっく2016-2017(有償)

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てきすとぶっく2016-2017(有償)
は じ め に
日本製薬工業協会会員会社をはじめとする製薬産業は、人びとの生命や健康に関わる「く
すり(医 薬 品)」創りに携わっています。当然のことながら医 薬 品はその有 効 性とともに安
全性の確保が求められます。厳格な法規制のもとで基礎研究、非臨床試験、臨床試験(治
験)が実 施され、承 認申請・審 査・承 認というプロセスを経て初めて世に送り出され、患
者さんの治療に使うことができるのです。
私たち製 薬 産 業には「生 命 関 連 企 業としての使 命」、「科 学 技 術の発 展・波 及」、「健
康長寿社会の実現」、「経済成長への寄与」、「グローバルヘルスへの寄与」が期待されて
います。
たとえば、健 康で安 全・安 心な社 会の実 現をめざし革 新 的な新 薬の創出に向け研 究 開
発活動を推進していますが、その研究開発活動を通じて医学・薬学をはじめ先進的な科学
技術の発展・波及に貢献しています。また、研究開発活動をはじめ製薬産業を支えるには
多種多様な人財が必要であり、雇用の受け皿という面でも社会に貢献しています。
こうした製薬産業としての貢献は、全世界への優れた新薬の展開や数少ない新薬創出国
としてのリーダーシップ発揮など、日本のみならず世界の成長・発展を牽引するものとしても
大きな期待が寄せられています。
◆
日本製薬工 業 協 会は「日本および世界の人びとの健康と福祉の向上に貢献する」ため、
さまざまな活 動を展 開しています 。 本 書 「てきすとぶっく製 薬 産 業 」もその活 動の一 環とし
て、製 薬 産 業を理 解いただくため 1 9 98 年 以 来 刊 行してまいりました。この度、業 界を取
り巻く最 新 の 情 報を盛り込 み、ここに「てきすとぶっく製 薬 産 業 2 0 1 6 - 2 0 1 7 」として刊 行
することとなりました。
編 集 するにあたって、 製 薬 産 業の現 状や直 面 する課 題などについて客 観 的な事 実に即
してできるだけわかりや すい解 説をするよう努めました。また、関 連 する法 令や規 制の改
定にあわせて可 能な限り新しいデータ・情報を反映させるとともに、単にデータの羅列と解
説にとどまらず 、 製 薬 産 業の体 系 的な理 解につながるような内 容・構 成としています。同
時にコラム記 事では、現 在、業 界を取り巻く課 題についての考え方などをトピックとして紹
介しています 。
本書は、書 名に「てきすとぶっく」とあるように製薬産業理解への入門書であると同時に、
製 薬 産 業に関 する平 易な専 門 書としての性 格も持っています。常に身近な場 所に置いて日
常的に活用していただければ幸いです 。
2016年7月
日本製薬工業協会 広報委員会
CONTENTS
てきすとぶっく 製薬産業 2016 - 2017
Ⅰ 医薬品
1.医薬品とはなにか…………………………… 2
(2)薬価改定……………………………………………… 29
(1)医薬品の定義と製造販売承認制度…………………… 2
(3)新薬の薬価算定……………………………………… 31
(2)医薬品の分類…………………………………………… 2
<コラム> 市場実勢価格加重平均値調整幅方式によらない薬価改定… 31
(3)医療用医薬品の品目数………………………………… 3
(4)2016 年薬価改定等の議論を踏まえた今後の課題…………
<コラム> 一般名と商品名………………………………
3
<コラム> 先駆け審査指定制度………………………… 32
(4)医薬品の適正使用……………………………………… 4
<コラム> 新薬創出・適応外薬解消等促進加算……… 34
32
<コラム> くすりの知識………………………………… 4
(5)医薬品医療機器等法に基づく規制の仕組み………… 5
<コラム> 薬事法から医薬品医療機器等法へ…………
5
Ⅲ 製薬産業
1.製薬産業の貢献と挑戦…………………… 37
2.創薬(新薬の研究開発と承認)…………… 6
(1)コンプライアンスに関する取り組み……………… 38
(1)新薬の研究開発・承認・製造販売後調査のプロセス……
6
(2)医薬品の役割………………………………………… 39
(2)新薬の研究開発と動向………………………………… 6
(3)医薬品の進歩………………………………………… 39
(3)治験環境の変化………………………………………… 7
<コラム> アンメット・メディカル・ニーズ………
40
<コラム> iPS細胞……………………………………
<コラム> オーファン・ドラッグ……………………
41
7
(4)承認申請と国際標準化の動向………………………… 8
(4)国際貢献/グローバルヘルス……………………… 42
(5)医薬品開発と知的財産………………………………… 10
<コラム> 抗体医薬……………………………………
42
(6)新薬の特許とジェネリック医薬品…………………… 12
<コラム> 分子標的薬…………………………………
42
<コラム> 医薬品に関する規制………………………… 13
(5)患者参加型医療……………………………………… 43
<コラム> ドラッグ・ラグ~現状・要因・対策~…… 14
<コラム> コンパニオン診断薬………………………
43
<コラム> 未承認薬等開発支援センター……………… 15
2.日本の製薬産業の概況…………………… 45
3.育薬(医薬品情報の提供・収集)……… 16
(1)製薬産業の現状……………………………………… 45
(1)MR(医薬情報担当者)による情報の提供・収集…… 16
(2)医薬品の生産額……………………………………… 46
(2)市販後調査(PMS)…………………………………… 17
(3)研究開発費…………………………………………… 46
(3)医薬品副作用被害救済制度…………………………… 17
(4)製薬産業の将来展望………………………………… 47
(4)医療用医薬品情報(添付文書)の公開………………… 18
<コラム> 「日本再興戦略(成長戦略)」と製薬産業……… 48
<コラム> 医薬品リスク管理計画……………………… 18
<コラム> 医薬品の流通………………………………… 49
Ⅱ 医療制度
<コラム> 日本の製薬産業の環境対策………………
1.医療保険制度……………………………… 20
3.世界の製薬産業…………………………… 54
(1)日本の医療保険制度…………………………………… 21
(1)世界の製薬産業を取り巻く環境…………………… 54
(2)国民医療費……………………………………………… 23
(2)欧米製薬企業との差異……………………………… 54
(3)薬剤費比率……………………………………………… 24
(3)山積する課題………………………………………… 56
<コラム> 医薬品におけるジェネリック医薬品のシェア… 51
52
(4)医療保険制度改革の動き……………………………… 24
(5)医療保険外の医療……………………………………… 25
<コラム> 介護保険制度………………………………… 26
Ⅳ 資料
<コラム> 医療提供体制………………………………… 27
1.製薬協からの情報提供 ( ウェブサイト)……… 57
<コラム> 医薬分業……………………………………… 28
2.製薬協の主な刊行物………………………
3.主要な業界団体および関連機関・団体名
4.用語解説……………………………………
5.索引…………………………………………
2.薬価制度…………………………………… 29
(1)薬価基準………………………………………………
58
59
60
63
29
※本文中、*のついている語句は巻末(60 ページ~)に用語解説があります。
Ⅰ 医薬品
1. 医薬品とはなにか
(1)医薬品の定義と製造販売承認制度
*
医薬品医療機器等法で「医薬品」とは、疾病の診
医薬品とは、病気の治療や診断、予防に使われる
断・治療・予防に使用される物質、身体の構造や
もので、内服、外用、注射などそれぞれの目的に合っ
機能に影響を及ぼすことを目的に使用される物質
た形で使われます。医薬品は、私たちの健やかな毎
と定義されています
(第 2 条)
。※
日に欠かせない、生活に密着した存在です。
医薬品医療機器等法における「物質」としての定
医薬品には、医師の処方箋が必要な「医療用医薬
義に加えて、医薬品はその適正使用に関する情報
品」と、薬局・薬店・ネットで購入できる「一般用
が、医師・薬剤師などの医療従事者や、患者さん
医薬品」
、さらに対面で使用者本人への販売が必要
などに提供される必要があります。つまり、物質
な「要指導医薬品」の3種類があります。
に十分な情報が付与されてこそ、本来の「医薬品」
日本製薬工業協会(製薬協)の会員各社が研究開
と呼ぶことができるのです。
発・製造販売を担うのは、
「医療用医薬品」の中の「新
医薬品のほかに医薬品医療機器等法で規制され
薬(先発医薬品)
」と呼ばれるもので、長い時間と
るものとして、
「医薬部外品」
「化粧品」
「医療機器」
*
*
多くの研究開発投資によって生み出されます。
「再生医療等製品」があります。これらと医薬品は
新薬を開発した製薬企業には、発売後も一定の期
いずれも、品質・有効性・安全性を確保するため、
間(再審査期間)
、品質・有効性・安全性について確
個別の製品ごとに国の承認(または認証・届出)が
認することが義務づけられています。この再審査期
必要です。
間の終了および新薬の特許権存続期間の満了によ
新薬の開発は、長い時間と多くの研究開発費を
り、新薬と同じ有効成分をもつ医薬品の製造販売が
必要とします。新薬は、製薬企業が品質・有効性・
他の製薬企業でも可能になります。これを、
「ジェ
安全性を確認したのち、厚生労働大臣に製造販売
ネリック医薬品
(後発医薬品)
」
と呼びます。
承認申請を行い、審査を通過したものだけに製造
*
販売承認が与えられます。さらに、医薬品を製造・
販売・譲渡・陳列するためには、製造所・営業所・
販売所(薬局・薬店を含む)ごとの許可が必要とさ
れます。
■医薬品医療機器等法(第 2 条)における
「医薬品」の定義
*
1.日本薬局方に収められている物
2.人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用され
ることが目的とされている物であつて、機械器具等
(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプ
ログラム(電子計算機に対する指令であつて、1の結
果を得ることができるように組み合わされたものを
いう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をい
う。以下同じ。
)でないもの(医薬部外品及び再生医療
等製品を除く)
3.人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすこ
とが目的とされている物であつて、機械器具等でな
いもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除
く)
(2)医薬品の分類
医薬品は、
「医療用医薬品」と OTC 医薬品(Over
The Counter Drug)
と呼ばれる
「要指導医薬品」およ
び
「一般用医薬品」
に分けられます。
2
※:
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」( 略称:医薬品医療機器等法)
1-1 医薬品の分類
医療用医薬品
新薬(先発医薬品)
病院などで医師の診察を受けた後、薬局で受け
長い研究開発期間をかけて新しい成分の有効性・
取るくすりです。医師が患者さん一人ひとりの病
安全性が確認された後、国の承認を受けて発売
気やけがの程度、
くすりに対する感受性などを診
される医療用医薬品です。新薬を開発した製薬企
断して処方箋を作り、それをもとに薬局の薬剤師
業には発売後も一定の期間(再審査期間)、有効
が調剤します。
性・安全性について確認することが義務づけられ
ています。
医薬品
要指導医薬品
「ダイレクトOTC薬」や、
「スイッチOTC薬」のう
ち3年以内のもの、および劇薬をいい、薬剤師の
対面による情報提供が必要なくすりです。
一般用医薬品
ジェネリック医薬品(後発医薬品)
再審査期間が終了し、かつ新薬の特許権存続期
かぜ薬や胃腸薬など薬局や薬店で市販されている
間が満了すると、新薬と同じ有効成分の医薬品を
くすりです。消費者の判断で購入・使用できるた
「後発医薬品」
として他の製薬企業が製造・販売で
め、有効性とともに安全性を重視しています。
きるようになります。
「医療用医薬品」とは、医師または歯科医師が診
提供を行うことが求められています。第 1 類は薬
断のうえ、患者さん一人ひとりの病気やけがの程
剤師による書面を用いた情報提供が必要で、第 2 類・
度などを判断して処方し、薬剤師が調剤して使用
第 3 類は薬剤師または登録販売者による販売が可
されるくすりのことです。「新薬(先発医薬品)」と
能です。また、2014(平成 26)年 6 月からは「一
「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」に分けられます。
般用医薬品」のインターネット販売が認められて
これに対して「要指導医薬品」とは、OTC 医薬品
います。
として初めて市場に登場したもので、「医療用医薬
品」としての経験がなく、直接 OTC 医薬品になっ
*
(3)医療用医薬品の品目数
た「ダイレクト OTC 薬」や、「医療用医薬品」から転
医療用医薬品は、病院・診療所などの医療機関
用されたくすり(「スイッチ OTC 薬」)のうち 3 年以
で広く使用されるため、厚生労働省が医療保険制
内のくすりと、劇薬をいい、薬剤師の対面による
度のもとで使用できる医薬品を定めた「薬価基準」
情報提供・指導が必要なくすりです。
に、品名と価格が収載される必要があります。こ
一方、「一般用医薬品」とは、大衆薬や家庭薬と
れを受けて製薬企業は、治療を目的とする医療用
呼ばれるもので、患者さんが症状に合わせて薬局・
医薬品が製造販売承認を受けたのち、薬価基準収
薬店で購入し使用するくすりのことです。「一般用
載の申請を行うことになっています。
医薬品」は 2009(平成 21)年 6 月から、リスクの程
薬価基準に収載されている医薬品は、ジェネリッ
度に応じて第 1 類、第 2 類、第 3 類の 3 つのグルー
ク医薬品(後発医薬品)を含めて約 16,000 品目です。
プに分類されており、販売に際しては適切な情報
成分数としては約 2,500 成分(2016(平成 28)年 4 月
◆一般名と商品名◆
医薬品には一般名と商品名があります。
一般名は医薬品の成分そのものを指す「成分名」であり、商品名は製薬企業が商標登録した「ブランド名」ということになり
ます。商品名が異なっている場合でも、同じ有効成分の医薬品である場合、一般名は同じです。この「一般名」は、世界保健
機構(WHO)の国際医薬品一般名称専門家協議で審議のうえ決定され、世界で共通に使えるようにしています。たとえば、血
圧降下剤であるアムロジピン(ベシル酸アムロジピン)
は一般名ですが、商品名ではノルバスク、アムロジンなどがあります。
厚生労働省では、医師が処方を行う際に、商品名ではなく一般名で処方することを推進しています。なぜなら、処方箋を
受け取った薬剤師は新薬だけでなくジェネリック医薬品 ( 後発医薬品 ) を選択することも可能となり、ジェネリック医薬品の
シェアが上がる可能性が期待できるからです。そのために、2012(平成 24)年度診療報酬改定において、医師が一般名で処
方を行った場合には処方箋料の加算を認めることになり、2016(平成 28)年度診療報酬改定において、加算がより促進され
ました。 もともと、一般名のことを英語でジェネリックネーム(generic name)というように、ジェネリックとは「後発」という意
味ではありません。しかし、後発医薬品は新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使うため、成分名である一般名(ジェネリック
ネーム)に由来して、後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼ぶようになったのです。
3
*
(4)医薬品の適正使用
現在)です。成分数の約 6 倍もの品目数があるのは、
患者さんの年齢・体重や病状に合わせて適切な投
医薬品が有効かつ安全に効果を発揮するために
与ができるようにさまざまな工夫がされており、
は、患者さんの病状や体質に合わせて適切に使用
同一成分でも剤形や規格の異なる数種類の製品が
される必要があります。そのため製薬企業は、医
用意されているからです。そして薬価は、これら
薬品がもつさまざまな情報を医療の現場に提供す
異なる剤形や規格のそれぞれに定められています。
る義務があります。医療の場では、これらの情報
薬価基準に収載されているのは、基本的には治
が患者さんのために有効に生かされ、患者さん自
療に用いる医薬品のみです。予防のためのワクチ
らが治療に積極的に参加することが必要です。
ンや、生活改善薬として分類される経口避妊薬(ピ
製薬企業はもとより、処方する医師、調剤する
ル)や脱毛症治療薬などは公的医療保険が適用され
薬剤師などに加えて、患者さんを含めたすべての
ないため、薬価基準には収載されていません。
関係者の理解と協力により、それぞれの責任と役
割を果たすことが、
「医薬品の適正使用」のために
不可欠となります。
1-2 薬価基準収載品目数
内 用 薬
2016
(平成28)
9,617
注 射 薬
外 用 薬
3,871
2,411
歯科用薬剤
26
合 計
15,925
注:2016
(平成28)
年4月1日現在。
●出典:厚生労働省調べ
◆くすりの知識◆
●くすりの「主作用」と「副作用」
すべてのくすりは、本来の目的である有益な作用の「主作用」と、期待しなかった作用の「副作用」の両方の作用をもっ
ています。
副作用が起きる要因としては、①くすりの性質によるもの、②くすりの使い方によるもの、③患者さんの体質によるもの、
④患者さんのその時の病状によるもの の 4 つがあげられます。
副作用の症状には、眠気、のどの渇き、発疹、かゆみ、胃痛、吐き気、めまい、けいれん、下痢など、さまざまなものがあります。
くすりを使用した後でいつもと違う症状がみられたら、まず医師や薬剤師に相談することが必要です。
●くすりの剤形
くすりには大きく分けると、内服薬、注射薬、外用薬などの剤形があります。
①内服薬:錠剤、カプセル剤、顆粒剤は「飲みやすく」
「携帯に便利」
「保存もしやすい」ことからよく使われています。
②注射薬:速効性があります。静脈注射の場合、血液に入って 1 ~ 3 分で患部に届き、速く効果を発揮します。 ③外用薬:軟膏、湿布薬などは、くすりの成分を皮膚から吸収させます。
くすりは体内に入れて効果を発揮させるために、さまざまな工夫を凝らした形状が開発されています。さらに、求められ
るニーズに応えるため、新たに形を変えて開発されるケースもあります。腸溶剤のように、胃酸で分解されやすいくすりの
表面をコーティングして、胃で分解されないようにして腸で吸収させるように工夫した剤形や、速く効かせたいくすりや消
化管で分解されるくすりは注射薬にして、皮下や筋肉・血管内などに注入するようにします。このようにくすりの剤形には、
それぞれに目的と意味があります。
●くすりの「用法」「用量」
くすりの「用法」
「用量」は、くすりの有効時間(有効濃度が保たれている時間)からみて、効果的に血中濃度を維持し、かつ
安全に使うために守らなければならない重要なルールです。
くすりを決められた量以上に飲むと、血中濃度が必要以上に上昇し、かえって害を及ぼすことがあります。反対に、くす
りが少ない場合には血中濃度が有効な濃度まで上がらず、効果が発揮されません。
「くすりは決められた時間に決められた量
を飲む」ことが重要です。
4
(5)医薬品医療機器等法に基づく規制の仕組み
負うことが明確化された。
医薬品医療機器等法は、医薬品をはじめ、医薬
部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の品質・
●従来は製造所(輸入する営業所)を所有すること
有効性・安全性を確保することを目的とした法律
が承認取得の前提でしたが、製造販売承認制度で
です。
は製造の全面委託も可能となった。
新薬(新医薬品)についても医薬品医療機器等法
で定義されており(第 14 条の 4 第 1 項)、すでに承
●一般用医薬品をリスクの程度に応じて第 1 類、
認を得ている医薬品と比べて有効成分、分量、用法・
第 2 類、第 3 類の 3 つのグループに分類したうえ
用量、効能・効果などが明らかに異なる医薬品で、
で、それに応じて適切な情報提供を行うこととな
厚生労働大臣によって製造販売承認された医薬品
り、登録販売者の制度が設けられた。
のことをいいます。さらに新薬は、厚生労働大臣
の再審査を受けることが義務づけられています。
●一般用医薬品を要指導医薬品と一般用医薬品(第
医薬品医療機器等法は 1960(昭和 35)年に薬事法
1 類、第 2 類、第 3 類)とに分け、一般用医薬品に
として制定され、科学技術の進歩や社会情勢の変
ついてはネット販売も可とした。要指導医薬品は
化に合わせて順次見直しが行われてきました。
薬剤師による対面販売が必要。
最近の大きな改正としては次のようなものがあ
ります。
●医薬品、医療機器等の安全かつ迅速な提供の確
保を図るため、添付文書の届出義務の創設、医療
●医薬品などの承認制度が、従来の製造(輸入)行
機器の登録認証機関による認証範囲の拡大、再生
為に着目した承認・認可制度から、製造された製
医療等製品の条件および期限づき承認制度の創設
品の市場への出荷の責任に着目した「製造販売承認
等が図られた。
制度」に移行。これにより、従来の製造業は製造行
為に特化される一方、創設された製造販売業の許
●旧来の薬事法の題名を「医薬品、医療機器等の品
可では、総括製造販売責任者を中心に品質保証責
質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医
任者・安全管理責任者を設置し、製造販売承認を
薬品医療機器等法)
に改めた。
所有する製薬企業が市場に出荷した製品の責任を
◆薬事法から医薬品医療機器等法へ◆
薬事法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法)
」に名称を変更し
たうえで以下に記載した内容の改定を行い、2014(平成 26)
年 11 月 25 日に施行されました。
1 医薬品、医療機器等に係る安全対策の強化
(1) 医薬品医療機器等法の目的(第 1 条)に、「保健衛生上の危害の発生・拡大防止のため必要な規制を行うこと」
を明示
(2)
医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保等に係る関係者(国、都道府県、医薬品等関連業者等、医薬関係者、国民)
の責務を明示
(3) 医薬品の製造販売業者に、最新の知見に基づいた添付文書の作成と厚生労働大臣への届出を義務化
2 医療機器の特性を踏まえた規制の構築
(1) 医療機器の製造販売業・製造業について、医薬品等と章を区分して規定
(2) 民間の第三者機関による認証制度を、基準を定めて高度管理医療機器にも拡大
(3) 診断等に用いる単体のプログラムを医療機器として製造販売の承認・認証の対象へ
(4) 医療機器の製造業を許可制から登録制に簡素化
(5) 医療機器の製造・品質管理方法の基準適合性調査の合理化
3 再生医療等製品の特性を踏まえた規制の構築
(1) 「再生医療等製品」を新たに定義するとともに、その特性を踏まえた安全対策等の規制を設定
(2)
均質でない再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められれば、特別に早期に、条件及び期限を 付して製造販売承認を付与
5
2. 創薬(新薬の研究開発と承認)
(1)新薬の研究開発・承認・製造販売後調査の
プロセス
新薬は、通常 10 年以上の年月をかけて、基礎研究・
有効で安全なくすりを提供するために、研究開
非臨床試験・臨床試験(治験)の過程を経て有効性、
発から市販後まで数多くの規制が設けられ、万全
安全性が検討されます。その後、独立行政法人医薬
の注意が払われています
(p8 ~ 9 図 1-3 参照)。
*
*
品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and
Medical Devices Agency)で審査を受け、厚生労働
(2)新薬の研究開発と動向
大臣の承認と薬価収載を経て保険適用となり、はじ
これまで製薬企業は、有機合成や発酵、動植物
めて患者さんに処方できる医薬品が誕生します。こ
からの抽出・精製などによって得られた物質を、
の医薬品の誕生までのプロセスを、くすりを創ると
生理活性スクリーニング にかけて、新薬を探して
いう意味で「創薬」と呼びます。つまり創薬は、数々
きました。また、動物組織から抽出していたイン
の研究・試験と審査・承認に至るまでのプロセスの
スリンや成長ホルモンなどは、遺伝子組み換え技
すべてを含んでいます。
術により大量生産が可能となり、医療に貢献して
創薬により生み出された新薬は、病気の治療・予
きました。
防に役立つのはもちろん、創薬を通じて、医学・薬
最近開発された医薬品には、がん細胞の遺伝子
学をはじめ化学・工学など、さまざまな分野の先端
発現を調べて、特定の患者さんに使用されるもの
研究が促進され、科学技術の発展をもたらします。
があります。がんを増殖させる因子を抑える医薬
*
品、並びに病気になったときに免疫として働く抗
体を利用した医薬品(抗体医薬 p42 コラム参照)が
注目されています。抗体医薬として、がんのほか、
リウマチを対象とした医薬品も現れました。今後
*
は、ゲノム解析による疾患関連遺伝子の探索から、
*
未知の受容体 や新しい生理活性たんぱく質を見つ
けることによって、画期的な新薬が生まれてくる
でしょう。また、細胞内のたんぱく質の発現状況
について疾病状態と正常状態の比較によって疾患
関連たんぱく質をみつけることや、ゲノム解析か
ら得られた受容体などのたんぱく質の構造を大型
*
*
放射光施設「SPring-8」や核磁気共鳴装置などによっ
て解析することで、新しい医薬品の開発が効率的
に進められています。
さらに、ヒトゲノム情報、ゲノム解析技術の発展
により、個々の患者さんに応じて、くすりの効き
目や副作用の発現などを体系的に予測するファー
*
マコゲノミクス(薬理ゲノム学)が進展してきまし
た。あらかじめ医薬品の代謝に関係する遺伝子を診
断して、個人の遺伝型に応じてくすりを選択したり、
投与量を決定したりする、いわゆる「オーダーメー
ド医療」を可能にすることが期待されています。
がんや自己免疫疾患など、これまでに有効な治
療方法が確立されていない病気の治療を可能にす
る医薬品の開発も進んでいます。たとえば、がん
の治療法のひとつとして注目されているのが、が
んワクチンです。がん細胞の表面に見られるたん
6
ぱく質のかけら(ペプチド)を合成してワクチンとし
さらに 2012(平成 24)年に、国際的な整合性を図
て体内に入れ、免疫細胞を活性化させてがんを抑え
りつつ、医師主導治験の負荷を軽減し、アンメット・
るもので、世界各国で研究が進められています。
メディカル・ニーズにおける産学連携を促進する
ものとして、GCP ガイダンスへと改正されました。
(3)治験環境の変化
このような状況のなか、適正かつ円滑な治験を
新薬の開発プロセスでもっとも重要なものが治
サポートするため、治験に関わる業務の一部を受
験です。治験は、製薬企業が医療機関に依頼し、
託する機関の役割が重要となります。これには、
医師などから患者さんに十分な説明を実施し、患
CRO と SMO の 2 種類があります。
者さんの同意(インフォームド・コンセント)を得
CRO(Contract Research Organization)とは、治
てはじめて実施することができます。
験の依頼(実施の準備)および管理に係る業務を受
治験の際の基準となるのが GCP(医薬品の臨床試
託する開発業務機関であり、治験関連資料の作成
験の実施の基準)です。もともとは臨床試験に携わ
やモニタリングなどの業務を行っています。
る治験統括医師・治験担当医師・医療機関・製薬
一方の SMO(Site Management Organization)と
企業などが遵守すべき基本ルールを規定するもの
は、治験の実施に係る業務の一部を実施医療機関
でしたが、1997(平成 9)年施行の新 GCP では、治
から受託する治験施設支援機関であり、医療機関
験依頼者(製薬企業)の役割と責任が明確化かつ大
側の業務の支援を行っています。
幅に強化されるとともに、医療機関や医師などに
製薬協では、治験に係る制度の見直しを含め、
ついても規定が整理され、一段と高い質が要求さ
新薬開発に果たす治験の意味と意義についての一
れるようになりました。
般向け啓発、臨床薬理学や生物統計学の普及・充実
などにより、治験の円滑な実施を支援しています。
◆ iPS 細胞◆
iPS 細胞とは人工多能性幹細胞のことで、英語名の induced pluripotent stem cell の頭文字をとって iPS 細胞と呼ばれていま
す。2006( 平成 18) 年に京都大学の山中伸弥教授らの研究グループが世界で初めて作製に成功しました。ヒトの体細胞にごく少数
の遺伝子(京都大学の山中伸弥教授の場合、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc の 4 つの遺伝子)を導入し、数週間培養することによっ
て作られます。この業績により、山中教授は 2012( 平成 24) 年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
この細胞は ES 細胞(胚性幹細胞)のように、さまざまな組織や臓器の細胞に分化できる「分化多能性」と、ES 細胞にはない、ほぼ
無限に増殖できる「自己複製能」
の 2 つの能力を持っていることから多能性幹細胞と呼ばれます。
ES 細胞は受精卵の胚から作られます。この胚は不妊治療で使われずに廃棄される余剰胚などを使いますが、ES 細胞の作製には
胎内にあればヒトとなる存在である胚を壊さなければならないので、倫理的な問題が指摘されています。一方、iPS 細胞は皮膚細胞
などから作り出すことができ、また、自分の体細胞から臓器などを作れば拒絶反応を回避できるため、再生医療への応用が期待され
ています。
この iPS 細胞を使って、新しいくすりを作る試みが始まっています。iPS 細胞から作り出された臓器細胞を用いれば、ヒトでの
臨床試験の前に、ヒトにおける副作用をある程度予測することが可能になり、より安全により効率的に医薬品を開発できるように
なります。
また、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)および筋ジストロフィーといった難病の治療薬開発に iPS
細胞を役立てることができるのではないかと期待されています。
治療が難しい患者さんの体の細胞から、iPS 細胞を作り、その病気のある細胞の状態や機能がどのように変化するかを研究するこ
とで、今までわからなかった病気の原因を解明して、治療薬を開発できる可能性があります。
製薬協は 2013( 平成 25) 年 5 月に、日本発の iPS 細胞をいち早く実用化へ結びづけることによって、日本の創薬技術・基盤の
強化を図っていくことを目的に
「ヒト iPS 細胞応用安全性評価コンソーシアム」を立ち上げました。
製薬企業、受託研究機関をはじめ、国立医薬品食品衛生研究所、医薬基盤研究所、京都大学 iPS 細胞研究所など数多くの企業や機
関が参画しています。
iPS 細胞の研究は始まったばかりで、実用化には科学的・医学的・倫理的な面など多くの課題を克服する必要があります。
7
(4)承認申請と国際標準化の動向
医薬品の承認審査は、独立行政法人医薬品医療
1-3 新薬の研究開発・承認・製造販売後調査のプロセス
機器総合機構(PMDA)が行います。PMDA は医薬
化合物
ライブラリーの作成
品・医療機器・再生医療等製品(以下、「医薬品等」
)
の審査業務に加えて、市販後の安全対策業務、医
標的分子の探索
物質創製研究
2∼3年
薬品等による副作用・生物由来製品を介した感染
などによる健康被害の救済業務の 3 点を主な業務
としています。
理化学的研究
スクリーニング
PMDA では審査関連業務として、医薬品等の治
験段階での相談および承認申請資料の信頼性調査
を行っており、治験前の段階から承認、市販後ま
での一貫した相談・審査体制が敷かれています。
PMDA の審査結果を受けて、厚生労働省医薬・生
*
3∼5年
活衛生局審査管理課が、薬事・食品衛生審議会 に
承認の可否等について諮問し、厚生労働大臣が承
認を行います。
ます。日本で承認された医薬品であっても、海外
れている医薬品も、日本ですぐに販売できません。
国ごとの制度で要求される資料を提出し、その国
での承認を得る必要があるからです。
*
ICH(医薬品規制調和国際会議)は、日米 EU の規
制当局(日本では厚生労働省 /PMDA)による新薬承
3∼7年
ではすぐに販売できませんし,逆に海外で承認さ
創 薬︵ 研 究 開 発 、審 査・承 認 ︶
承認申請や承認に係る制度は国によって異なり
認審査基準の国際的な統一を図るため、1990(平成
非臨床試験
薬 理 学的試 験
薬 物 動 態 試 験
毒 性 試 験
GLP
治 験 届
臨床試験
(治験)
(1)
第1相試験
(2)
第2相試験
(3)
第3相試験
GCP
承認申請
2)年に発足し、医薬品の承認に際して必要な品質・
有効性・安全性に関わるデータ収集などのガイド
約1年
ラインの作成、および承認申請提出書類の書式な
どの標準化を進めてきました。しかし、医薬品の
グローバルでの開発や患者さんへの提供をさらに
促進するために、日米 EU の 3 極以外の地域の規
制当局やグローバルの業界代表も加えるなど、組
医薬品医療機器総合機構
(PMDA)
①申請データと原資料との照合
②チーム審査
③専門協議
*
薬事・食品衛生審議会
<部会・薬事分科会>
厚生労働省:審査管理課
承認の最終判断
織を改変して活動することとなりました。2015(平
成 27)年 12 月に第 1 回医薬品規制調和国際会議が
承 認
開催され、新たな ICH がスタートしています。
販 売
GVP
GPSP
再 審 査
再 評 価
安全性定期報告
育薬︵再審査、再評価︶
8
製造販売後安全管理
製造販売後調査・試験
*
*
●薬理学的試験 : 効力を裏づける試験として、期待している効能・効果の裏づけを調べたり、治療用量以上に投与して主な
生理機能に望ましくない作用があるかを調べる。
●薬物動態試験 : 体内でどのように吸収され、分布、代謝され、排泄されるかなどを調べる。
●毒性試験 : 細胞や動物を用いて試験を行い、短期・中期・長期に分けて安全性を調べ、また発がん性や胎児への影響がな
いかなど定められた目的についての安全性を調べる。
こうしたことを徹底的に調べ、ヒトに対する安全性を予測したうえで臨床試験に移る。
●治験 : 新薬の承認申請に必要なデータを作成するためにヒトを対象に行う試験。被験者に試験の目的や内容を十分に説
明し、文書による同意を得ることが求められている(インフォームド・コンセント)
。
GMP
●第 1 相 ( フェーズⅠ) : 同意を得た少数の健康人志願者を対象に、安全性を調査する。
●第 2 相 ( フェーズⅡ) : 同意を得た少数の患者さんを対象に、有効で安全な投薬量や投薬方法などを確認する。
●第 3 相 ( フェーズⅢ) : 同意を得た多数の患者さんで、二重盲検試験などにより、既存薬などと比較して新薬の有効性・
安全性を確認する。
●製剤開発 : 新薬の実生産に向けて、
製品の規格や試験方法などを設定するとともに、
GMP に適合した治療薬を供給する。
新薬のモトとなる物質の物理的・化学的性状および、より合理的な製造方法などを調べる。
最適化のための化合物修飾
●最適化のための化合物修飾 : コンビナトリアルケミストリーなどの化学変換などでリード化合物の周辺化合物を数多く作る。
*
●スクリーニング : ライブラリーの中からハイスループット・スクリーニングなどの手法で新薬のもととなるリード化合物を みつけだす。さらに、リード化合物に化合物修飾を加えた化合物の中から、生化学・薬理・代謝・ 安 全性研究などを通じて薬効・安全性の両面から最適な化合物を選びだす。この段階を通過するのはご くわずかなものとなる。
物質創製研究・理化学的研究
●化合物ライブラリーの作成 : 化合物を合成・培養・抽出などにより広範に収集し、数十万から数百万の化合物群からな
るライブラリーを作成。
*
●標的分子の探索 : ゲノム、プロテオーム解析などを通じて、病態に関わると考えられる標的分子をみつけだす。
●承認申請 : 医療上の有効性と安全性が確認された新薬について、製薬企業は厚生労働省に製造販売承認の申請を行う。
これを受けて厚生労働省は PMDA の審査にかけ、その結果を厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛
生審議会に諮る。審査を通過したものには、厚生労働大臣から製造販売承認が与えられる。
●審査 : 承認申請資料の審査は、医学・薬学・生物統計学などの分野別の専門官によるチーム審査で行われ、さらに臨床
家などの立場からの専門委員の意見を踏まえて審査報告書が作成される。
薬価基準収載申請
薬価基準収載
●薬価基準収載申請 : 製薬企業は製造販売承認が与えられた新薬について、薬価基準収載の申請を行う。
●医薬品リスク管理計画(RMP)
:個々の医薬品について安全性上の検討課題を特定し、使用成績調査、市販直後調査など
による調査・情報収集や、医療機関者への追加の情報提供などの医薬品のリスクを低減
するための取り組みを、医薬品ごとに文書化(計画)したもの。
●医薬品安全性監視計画:医薬品の承認時や製造販売後に、重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスクおよび重要な不
足情報を安全性検討事項として集約し、それを踏まえて計画する医薬品安全性監視活動のこと。
●市販後調査(PMS): 市販後は、より多くの幅広い患者さんに投薬されるため、開発段階で発見できなかった副作用など
の適正使用情報の収集・検討や対応が義務づけられている。
●製造販売後安全管理(GVP): 副作用自発報告などの安全性情報を収集し、検討のうえ、安全対策をとるための基準が定
められている。
●製造販売後調査・試験(GPSP): 製造販売後に実施する使用成績調査・特定使用成績調査・製造販売後臨床試験のた
めに基準が定められている。
*
●再審査 : 新薬は通常承認後 8 年(4 年または 6 年のものもある)
、オーファン・ドラッグや長期の調査が必要なものは 10
年以内に、その間に収集された情報により有効性・安全性の再審査を受けるよう義務づけられている。
●再評価 : 今日の医学・薬学などの学問水準に照らして、品質、有効性および安全性を確認するもので、すべての医薬品が
対象となる。
●安全性定期報告 : 日本での承認後、厚生労働大臣の指定した日から起算して 6 カ月ごとに 2 年間、以後は 1 年ごとに原則
として再審査期間の終了まで、国内外の安全性に関する情報の報告を義務づけられている。
9
(5)医薬品開発と知的財産
た医薬品の知的財産権を適切に保護できなければ、
新薬の開発には、9 年から 16 年もの長い年月が
継続した新薬の研究・開発が困難になります。そ
かかるうえ、新薬発売の成功確率は 24,553 分の1
こで製薬企業は、開発した新薬を独占排他的に製
ときわめて低く、しかも膨大な研究開発費が必要
造販売するため、知的財産権、主に特許権を取得
です。ちなみに、日本の製薬企業大手 10 社の年間
し保護します。
平均研究開発費は 2014(平成 26)年に 1,337 億円に
特許権は発明を保護する権利で、特許出願日か
ものぼっています(p55 図 3-17 参照)。
ら 20 年間保護されます。医薬品の場合は、医薬品
*
また、医薬品は、原則として 1 件の「物質特許」
医療機器等法に基づく製造販売承認が必要で、そ
で保護されているため、他産業と比べ特許の価値
の承認取得に長期間を要するため、特許期間が侵
が高いという特徴があります。そのため、開発し
食されるので、特例として最長 5 年間の存続期間
1-4 開発段階別化合数と承認取得数
(1)低分子化合物
化合物数
合
成
化
合
物
712,040
前 臨 床 試 験 開 始
190
国内臨床試験開始
承 認 取 得( 自 社 )
前の段階から移行した確率
累積成功率
ー
ー
1:3,748
1: 3,748
74
1:2.57
1: 9,622
29
1:2.55
1:24,553
注1:5 カ年間累計
(2010 ~ 2014 年度)
2:製薬協研究開発委員会メンバーのうち内資系企業
3:合成化学物は、コンビナトリアルケミストリーなどのケミカルライブラリーを除外。
4:自社品
(導入品は除外)
に限り、剤型追加、効能追加は除外。
●出典:日本製薬工業協会調べ
(2)バイオ医薬品
項目
抗体医薬
それ以外
注1
前臨床試験開始数
5
1
国内臨床試験開始数
1
0
承 認 取 得 数( 自 社 )
0
1
集計会社数
注1:
「それ以外」とは核酸医薬、ペプチド医薬などを指す。
2:製薬協研究開発委員会メンバーのうち内資系企業。
3:2012 年度分より調査開始。
●出典:日本製薬工業協会調べ
10
2014
21 社
の延長が認められる場合もあります。特許権は、
商標権も、特許権と同様に独占排他的な権利で、
先に出願した者に権利が付与されるため、いかに
権利期間は商標登録日から 10 年間です。ただし、
早く特許出願をするかが、将来の事業化のための
この商標を継続的に使用していれば、更新手続き
重要なカギになっています。
をすることで 10 年ごとの延長が認められます。
医薬品に関係する特許には、物質そのものに対
特許権などの知的財産を有効に活用して産業を
する特許で新規化合物、つまり医薬品そのものが
活性化するためには、質の高い知的財産を生み出
独占的に保護される「物質特許」のほか、特定の
し、それを迅速に権利として保護し、さらにそれ
物質の新しい効能・効果や安全性などの用途に関
らを活用することが求められます。知的財産戦略
わる「用途特許」、医薬品の安定化など製剤上の新
本部で決定された「知的財産推進計画 2015」には、
しい工夫に与えられる「製剤特許」、まったく同一
日本企業が、アジアをはじめとする新興国におい
の医薬品であっても製造法が異なれば特許として
て知的財産権を的確に取得・活用できるように、
認められる「製法特許」などがあります。 アジアをはじめとする新興国の知財システムの構
特許権と並んで、医薬品にとって重要な権利が
築を積極的に支援することが引き続き盛り込まれ
商標権です。医薬品の販売名を商標登録しておく
ました。わが国の世界最先端の知財システムが各
ことで、同じ販売名や類似販売名を他に使われな
国で準拠されるスタンダードとなるよう浸透を図
いようにすることができます。ある医薬品の販売
るために、これらの国々に審査官を派遣すること
名と類似する販売名を、異なる会社の医薬品や異
などを通じて、わが国の知的財産制度の更なる浸
なる種類の医薬品に用いないようにすることで、
透を図るとともに、経済連携協定などを活用して、
医療安全の面からも誤認や誤用を防ぐことも可能
知的財産権を有効に活用できる環境を整備するこ
です。
とが決定されました。
*
1-5 医薬品と知的財産
医薬品
商標権
特許権
物質特許
製法特許
用途特許
製剤特許
新物質創製
製法研究
製剤開発
用途研究
製剤開発
基礎研究
非臨床試験
臨床試験
販売名
製 造
承認申請
発 売
11
(6)新薬の特許とジェネリック医薬品
満了すると、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分の
新薬(先発医薬品)は、長い研究開発期間をかけ
医薬品を、ジェネリック医薬品(後発医薬品)とし
て新しい成分の有効性・安全性が確認された後、
て他の製薬企業が製造・販売することが可能にな
国の承認を受けて発売される医療用医薬品です。
ります。後発医薬品を製造・販売する際には、厚
新薬を開発した製薬企業には販売後も一定の期間
生労働省による製造販売承認を取得することが必
(再審査期間)、有効性・安全性について確認する
要です。このとき、先発医薬品と有効成分が同じ
ことが義務づけられています。
であることを科学的に証明した資料などが求めら
新薬の再審査期間が終了し、特許権存続期間が
れます。
1-6 新薬の特許とジェネリック医薬品
特許権満了
▼
特許権存続期間 20年+α(最大5年)
新薬
(先発医薬品)
ジェネリック医薬品
(後発医薬品)
基礎研究 2~3年
臨床試験 3~7年
非臨床試験 3~5年
承認申請と審査 約1年
新薬販売期間
再審査期間 8~10年
ジェネリック医薬品
(後発医薬品)
※特許権満了かつ再審査期間が
終了すると販売できる。
12
1-7 医薬品医療機器等法に基づく規制の仕組み
製造販売業の許可
品質管理・安全管理
に関する規制、人的
要件
製造業の許可
薬局・販売業の許可
構造設備規則、
人的要件
構造設備規則、
人的要件
再審査
再評価
製造販売承認
GPSP
製造管理・品質管
理に関する規制
医薬品
開発段階
非臨床試験
治験の届出
GLP
製造販売段階
GCP
臨床試験
薬事監視
GQP
GVP
品質管理
安全管理
製造販売後調査
流通段階
使用段階
GMP
製造管理・品質管理
立入検査・収去試験、行政指導、行政処分(命令)
●出典:一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修:医薬品製造販売指針 2015,p10,じほう,2015
◆医薬品に関する規制◆
くすりは、開発から製造、流通、使用まで、数多くの規制をクリアしたうえで、患者さんのもとへ届けられます。
GLP Good Laboratory Practice:医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準
実施基準には、安全性に関する非臨床試験データの品質を管理して保証するために必要な試験施設の職員、組織、業務が規定
されている。
GCP Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準
ヒトを対象とした臨床試験について、医薬品医療機器等法上の規制だけでなく、科学的に適正でかつ倫理的な試験を実施し、デー
タの信頼性を高めるために定められた基準。
GMP Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準
医薬品の製造にあたって、承認を受けた規格どおりに安定した高い品質の製品を作るため、原料の受け入れから製品の出荷ま
での製造工程全般にわたる管理と、工場の建物・機械設備の配置などについて人為的なミスをなくすために定められた基準。
GQP Good Quality Practice:医薬品などの品質管理の基準
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の品質管理の方法に関する基準。2005(平成 17)年 4 月施行。GVP とともに、改正
薬事法において新たに導入された製造販売業の許可要件のひとつ。
GVP Good Vigilance Practice:医薬品などの製造販売後の安全管理基準
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の適正使用情報の収集・検討・市販後安全確保措置の実施に関する基準。2005(平
成 17)年 4 月施行の改正薬事法において新たに導入された製造販売業の許可要件のひとつ。GPMSP(Good Post-Marketing
Surveillance Practice)
の廃止に伴い新設。
GPSP Good Post-marketing Study Practice:医薬品の製造販売後調査及び試験の実施の基準
医薬品の再審査、再評価に係る調査及び試験の実施に関する基準。体外診断用医薬品とパッチテスト用医薬品以外の医療用医
薬品に適用。2005
(平成 17)
年 4 月、GPMSP の廃止に伴い新設。
JGSP Japanese Good Supplying Practice:医薬品の供給における品質管理と安全管理に関する実践規範
保管や出荷、配送にあたって、各段階で温度・湿度・光の影響などにより品質が損なわれないよう、品質の安定性を守るため
に日本医薬品卸業連合会で設けられた業界内の自主規範。
13
◆ドラッグ・ラグ ~現状・要因・対策~◆
[現状]
「ドラッグ・ラグ」とは、他国では承認されている医薬品が、自国では承認されていないため患者さんに提供されない状態のこと
です。世界のある国で初めて発売された医薬品が、自国で発売されるまでの平均期間をみると、2010(平成 22)年時点ではアメ
リカ合衆国は約 0.9 年であるのに対して、
日本は約 4.7 年と先進 8 カ国の中でも新薬の発売時期が並外れて遅く、
当時はドラッグ・
ラグが大きな問題となっていました。
[要因]
日本のドラッグ・ラグの要因で一番大きなものは、治験の効率の悪さであると考えられます。治験を効率良く実施するためには、
対象となる患者さんが集まりやすく、治験費用が廉価で、質の高いデータが集積される必要があります。
日本は、医療水準が高く丁寧な国民性ということから、質の高いデータが集積されるという利点があります。反面、施設当たり
の患者さんの集積率が低く、また、患者さんの治験参画意識が低いこと、多施設に少数例ずつ依頼しなければならないことから、
治験費用が高くなり、治験効率は決して良くありません。また、新薬の承認審査の基準やその実施体制が欧米に比べて整備されて
いないことから、承認審査に欧米よりも余分に時間を費やしていた時期がありました。
さらに、薬価制度上、新薬の価値を適切に反映した薬価になっていない、特許期間中でも循環的に薬価が下落する、市場価格に
よらずに追加的に薬価を引き下げる仕組みがあるなど、日本市場での新薬開発の優先度が下がる要因が指摘されています。結果と
して、企業にとって好ましい体制が整っている海外での治験や承認取得を先行させていたことから、日本でのドラッグ・ラグ期間
が長くなってしまっていたという事情がありました。
[対策]
厚生労働省の「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」は、2007(平成 19)年 7 月、ドラッグ・ラグの解消に
向けて、国際共同治験の推進や、PMDA における審査期間の短縮などを提言しました。これらの取り組みによりドラッグ・ラ
グの問題は改善し始めています。また、薬価制度上の問題点のひとつである特許期間中の薬価の循環的下落の対策については、
2010(平成 22)年 4 月より「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」が試行導入され、制度化には至っていませんが、現在も継
続試行されています。
*
導入による審査官などの増員により、この
さらに承認審査期間の短縮についても、いわゆるユーザーフィー(審査手数料など)
数年で状況は急速に改善され、欧米の審査当局に比肩する審査の迅速化が図られてきています。
14
◆未承認薬等開発支援センター◆
海外で承認され使用されている医薬品でありながら、日本では承認されていない未承認薬の問題を解決するために、製薬協は
2009(平成 21)年 5 月、「一般社団法人未承認薬等開発支援センター」を設立しました。未承認薬等の開発・提供に取り組む
企業に対して、その研究開発、承認取得などに対する専門的・薬事的・技術的な支援や資金的援助を行い、当該企業の負担やリ
スクの分散・軽減を図るとともに、国内の患者さんに有効で安全な医薬品を速やかに提供することを目的としています。
具体的には、厚生労働省が設置する有識者会議において患者団体や学会からの要望をもとに、治験・開発実施の必要性を検討
し、その結果、対応が必要と判断された未承認薬等の開発を同センターが支援します。開発プロセスにおいては、非臨床試験・
治験費用や承認申請費用など承認取得までに要する費用に対する一部資金援助のほか、開発戦略などのノウハウ提供、承認申請
時や薬価取得時に必要な助言などを行っています。
また、センター設立と同時期に厚生労働省が設置した総額 1,300 億円余に及ぶ「平成 21 年度未承認薬・新型インフルエン
ザワクチン等対策基金」の管理団体としての活動も行っています。この基金は、①未承認薬開発支援、②未承認薬等審査迅速化、
③新型インフルエンザワクチン開発・生産体制強化の 3 事業からなるもので、とくに未承認薬等の開発支援については、図に
示すとおり、センターの目的とする開発支援事業と表裏一体となって進められるものとなっています。
センター設立以降、未承認薬・適応外薬問題はその解消に向けて大きく進展し、社会一般の認識も高まってきました。製薬協
では、研究開発型企業としての社会的使命・社会貢献の観点から、未承認薬等に関わる問題の早期解決に向けた取り組みをさら
に強化・推進しています。
1-8 未承認薬等開発支援センターによる対応スキームの概要
学会・患者団体等からの要望
有識 者 会 議 等
:センターの役割
対応が必要とされたもの
開発企業が存在
(未承認薬・適応)
開発企業が存在せず
(未承認薬)
ライセンス元
契約
独立行政法人
開発の正式要請
必要性の検討
開発等に関する
諸事項の協議と設定
拠出
資金・その他支援
製薬協
会員会社 他
パートナーシップ
国内企業A
一般社団法人
未承認薬等開発支援センター
開発等に関する
諸事項の協議と設定
調査・斡旋
(公募がない場合)
開発・申請等に係る支援
公募・RFPの提示
厚生労働省・医薬品医療機器総合機構
国内企業B
・ライセンス契約
・資金提供
・治験、承認申請、薬価等に係る支援
政策的支援【治験推進、承認審査の迅速化など】
●出所:中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料
15
3. 育薬(医薬品情報の提供・収集)
(1)MR(医薬情報担当者)による情報の提供・
新薬が発売された後、製薬企業は、医療機関や
医薬品は「情報を伴った化学物質である」とい
患者さんの協力のもと、継続して新薬に関する情
われます。効能・効果、用法・用量、作用機序、
報の収集を行い、患者さんにとってより使いやす
副作用などの情報に基づき、適正に使用されては
く有用性の高い医薬品へと育て上げていきます。
じめて医薬品としての目的が達成されるからです。
この活動を「育薬」と呼んでいます。
個々の医薬品には、適正に使用するための情報が
育薬では、創薬の段階で発見できなかった副作
添付されていますが、それだけでは不十分な場合
用の把握や、数多くの患者さんの実際の使用状況
もあります。
の情報も収集します。これらの活動を通じて新薬
そこで、医薬品に関する情報の担い手となるの
のより確かな有効性と安全性を明らかにしたうえ
が、MR(Medical Representatives =医薬情報担当
で、より適正に使うための対応方法が検討され、
者)です。製薬企業を代表して、医薬品の適正な使
その結果は医療機関へ伝達されます。この活動は、
用と普及を目的に、医師・薬剤師など医療関係者
くすりが上市されている限り継続して行われます。
と面談し、医薬品の品質・有効性・安全性などに
また、製薬企業は患者さんや医療機関からの声
関する情報を提供したり収集したりすることを主
をもとに、効能・効果の拡大、より服用しやすい
な業務としています。
剤形の改良、より使いやすい包装形態の開発、間
医療の多様化や医学・薬学の急速な進歩に伴い、
違った飲み方やほかのくすりとの取り違いを防ぐ
医療関係者から求められる医薬品の情報は年々高
表示内容への改善などを継続的に行っています。
度化・専門化しています。これに対応して 1997(平
このように育薬は、創薬と並んで重要な活動です。
成9)年から、公正な第三者機関である公益財団法
収集
人 MR 認定センターにより、MR 認定試験が実施
されています。認定試験は現在、年 1 回・12 月に
実施され、2015(平成 27)年の第 22 回試験までに延
べ 152,782 人が受験し、合格者数は 122,536 人で、
合格率は 80.2%となっています。※
*
MR 認定制度は、認定証取得後も定期的・計画的
な継続教育を修了することで認定が更新されます。
また、認定制度は、MR にとって自己研鑽の場とな
り、MR の社会的評価を高めることにもつながりま
す。その結果、医療関係者からの評価と信頼がよ
り高まり、誇りをもって業務に専念できる環境が
整っています。
今後、医薬品情報がますます高度化・専門化し
ていくなか、MR は医療関係者に対して的確な情
報を迅速に提供することが求められます。同時に、
治験の段階では得られなかった未知の副作用など
を医療の最前線から収集し、さらにその分析・検
討・評価の結果を医療関係者などに的確にフィー
ドバックすることも欠かせません。医薬品情報、
なかでも育薬における情報の担い手として、MR の
重要性はさらに高まるでしょう。
16
※:MR 認定センターホームページ(http://www.mre.or.jp/)
(2)市販後調査(PMS)
告する制度です。これらの情報は、厚生労働大
新薬は、数多くの研究や試験を経て、安全性、
臣が医学・薬学などの専門家で構成する薬事・
有効性および品質が確保されたのち市販されます。
食品衛生審議会の意見を聞いて判断・評価した
しかし市販後は、より多くの患者さんに使用さ
うえで、その医薬品が適正に使用されるように、
れるので、臨床試験段階で発見できなかった副作
添付文書の「使用上の注意」の改訂などの形で
用や有効性が見つかる場合があり、それら安全性
医療機関に情報提供されます。
や有効性のデータを収集・分析・検討し情報提供
することが義務づけられています。これを「市販後
PMS の中でも、とくに発売直後に実施するもの
調査」
(PMS:Post-Marketing Surveillance)と呼ん
として「市販直後調査」があります。現在、GVP
でいます。
に規定されている市販直後調査では、新薬を対象
PMS は、医薬品の適正な使用法(適正使用)を確
に、発売後 6 カ月間、医療機関に対し確実な情報
立し、適正使用に関する情報を伝達・提供するこ
提供、注意喚起を行い、適正使用に関する理解を
とを目的に、①再審査制度 と安全性定期報告、②
促します。
再評価制度、③副作用・感染症報告制度から構成
さらに、重篤な副作用および感染症の情報を迅
されます。2005(平成 17)年 4 月の改正薬事法の施
速に収集し、必要な安全対策を実施することによ
行時、それまでの GPMSP が廃止され、安全性情
り、副作用などの被害を最小限に抑えます。
報の収集から伝達までを規定した GVP(医薬品など
また、生物由来製品(人や動物に由来するものを
の製造販売後の安全管理基準)と、GPSP(医薬品の
原料とする医薬品)
の安全対策については、副作用・
製造販売後調査及び試験の実施の基準)として新設
感染症についての報告が義務づけられています。
*
*
されました。
(3)医薬品副作用被害救済制度
●再審査制度・安全性定期報告
医薬品は、疾病の治療手段として欠くことので
新薬については、再審査制度により製造承認後
きないものですが、予期しない副作用を完全に防
の一定期間(再審査期間・通常 8 年間)、市販後
ぐことはできません。医薬品副作用被害救済制度
の調査・試験が義務づけられています。また、
は、医薬品を適正な目的のために正しく使用した
再審査期間中は安全性定期報告により、半年ま
にもかかわらず、不幸にして深刻な健康被害が生
たは 1 年ごとに調査の結果を集計・解析したも
じた患者さんに対して迅速な被害救済を図ること
ののほか、国内外の安全性情報を含めて行政当
を目的としています。生物由来製品により生じた
局に報告します。それらの調査結果をもとに有
感染被害についても、
「生物由来製品感染等被害救
効性・安全性などが再確認されます。
済制度」により救済給付が行われます。
救済給付は、独立行政法人医薬品医療機器総合
●再評価制度
機構(PMDA)が行っているもので、製薬企業など
原則として再審査期間を終了した医薬品につい
からの拠出金で運営され、被害者に医療費・障害
て、最新の医学・薬学の学問的水準から安全性・
年金などが給付されます。この制度は、民事的責
有効性・品質を見直す制度です。再評価を受け
任=損害賠償責任とは無関係に、その現実的救済
るべき医薬品は厚生労働大臣の指定により行わ
を行うものです。
れ、医療用医薬品では現在、定期的再評価と臨
また、PL 法(製造物責任法)により、製造業者の
時の再評価および品質の再評価が実施されて
過失の有無を問わず、製造物の「欠陥」により被害
います。
が生じた場合には、被害者(法人を含む)が保護さ
れます。PL 法は、医薬品の副作用により生じた健
●副作用・感染症報告制度
康被害の救済を民事責任に基づいて行うことを目
市販後の副作用や感染症の発生を早い段階で把
的としており、この点が医薬品副作用被害救済制
握し、その拡大を防止するため、医薬品の副作
度と異なります。
用を継続的に収集するなどして、行政当局へ報
17
(4)医療用医薬品情報(添付文書)の公開
に入手できる体制を整え、必要な知識を得たうえ
厚生労働省は、PMDA を通じて「医薬品医療機器
で受診できるようにすることが重要です。そこで、
情報提供ホームページ」を開設しています(http://
2002(平成 14)年 12 月、首相の諮問機関である総合
www.info.pmda.go.jp/)。医療用医薬品情報(添付文
規制改革会議は、患者さんなどが入手できる情報
書)は、本来医療関係者への情報提供を目的として
と医薬品などの広告規制に関して、製薬企業が自
作成されたものですが、ウェブサイトから誰でも
社のウェブサイトで医療用医薬品情報(添付文書)
医療用医薬品に関する情報を直接入手することが
を一般に公開することは広告にあたらないこと、
できるようになりました。
また、公開する内容は医薬品医療機器情報提供ホー
医療用医薬品情報を患者さんなどに提供するこ
ムページで公開されている添付文書の内容と同一
とは、製品の広告に該当すると判断されることか
であることという答申を行い、ただちに閣議決定
ら、これまで製薬企業は、医療用医薬品情報の一
されました。
般公開を自粛してきました。
現在は、添付文書に関するわかりやすい説明書
しかし、患者参加型医療を実現するためには、
むしろ患者さん自身が医薬品に関する情報を十分
(患者向け医薬品ガイド)を、製薬企業と行政当局
との共同作業で作成し、順次公開しています。
◆医薬品リスク管理計画
(RMP:Risk Management Plan)
◆
医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)とは、医薬品の安全性の確保をより強化するための新たな施策で
す。2013(平成 25)年 4 月以降承認申請を行う新医薬品とバイオ後続品(バイオシミラー)については、
「製造販売後調査等基
本計画書」にかえて、医薬品のリスクを想定した「医薬品安全性監視計画」
に医薬品のリスクを低減するための方法
「リスク最小化
計画」を加えた資料「RMP」を提出することになりました。RMP の作成により、医薬品の開発段階、承認審査時から製造販売後
のすべての期間において、一貫してリスクの評価と見直しが行われるようになりました。
医薬品は、有効性とともに一定のリスク(副作用)を伴うものであり、リスクをゼロにすることはできませんが、リスクを可能
な限り低減するための方策を講じ、適切に管理していくことが重要です。これまでも、承認審査の過程を経てリスクを低減する
ために必要な注意事項が添付文書に「使用上の注意」として記載されるとともに、副作用報告制度、市販直後調査制度,安全性定
期報告制度、再審査・再評価制度などにより、必要な安全対策がとられてきました。RMP は、これまで行われてきているこれ
らの取り組みを医薬品ごとに文書化し、関係者で共有できるようにすることで、市販後安全対策の一層の充実強化を図ろうとす
るものです。
RMP は、基本的に 3 つの要素から構成されます。「安全性検討事項」
「医薬品安全性監視計画」
「リスク最小化計画」の 3 つで、
得られた知見に基づいて「安全性検討事項」を特定し、
それぞれの安全性検討事項について「医薬品安全性監視計画」および「リ
スク最小化計画」を策定し、必要に応じて有効性に関する調査・試験の計画を作成することが求められます。これらの計画の全
体を取りまとめて文書化したものが RMP です。
RMP 全体のイメージ
安全性検討事項
・重要な特定されたリスク
・重要な潜在的リスク
・重要な不足情報
安全性監視計画
通常
追加の措置?
(評価)
安全性監視?
リスク最小化?
(評価)
追加の安全性監視活動
18
追加
追加のリスク最小化活動
・市販直後調査
(自発報告の収集強化)
・使用成績調査
・特定使用成績調査
・製造販売後臨床試験
など
・添付文書の作成・改訂
・患者向け医薬品ガイド
・市販直後調査
(確実な情報提供)
・医療関係者への追加の
情報提供
・患者さんへの情報提供
・使用条件の設定
など
︵実施状況の報告︶
ベネフィット・リスクバランスの評価
・自発報告
(副作用・感染症)
・研究報告
・外国措置報告
不要
必要
リスク最小化計画
1-9 医薬品副作用被害救済制度の概要
薬事・食品衛生審議会
①
給付請求
副作用による
健康被害者
⑥
結果通知
給付
医薬品医療機器
総合機構
(PMDA)
一般拠出金、付加拠出金
③
諮問
②
判定の申出
④
答申
厚生労働大臣
⑤
判定結果の通知
判
補助金(事務費)
医薬品等の製造販売業者
国(厚生労働省)
★救済給付の決定に不
服があるときは、厚
生労働大臣に対し、 審査申立てをするこ
とができます。
救済給付業務に必要な費用は、救済給付の支給に要する費用などの事
業費および救済給付業務の運営に必要な事務費の一切を含むもので、
法律により医薬品等の製造販売業者から、各年度、機構に納付される
拠出金が充てられるほか、事務費の二分の一相当額は、国庫から補助
されています。
●出典:(独)医薬品医療機器総合機構 ホームページ「医薬品副作用被害救済制度」
1-10 副作用等報告制度の概要
世界保健機関(WHO)
日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)
国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)
基
準
日 本 医 師 会
日 本 歯 科 医 師 会
日 本 薬 剤 師 会
ハ
ー
モ
ナ
イ
ズ
情報伝達
医薬品・医療機器等安全性情報
WHO
国際医薬品
モニタリングセンター
(1972年4月加盟)
情報
報
情
モニター 情報交換
タ
ー
報 情 ネ
道 報 ッ
発 提 ト
表 供 に
よ
資
る
料
等
)
(
イ
ン
報
情
等
用
医薬品医療機器 情報提供ホームページ(インターネット) (医薬品・医療機器等安全性情報報告) 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディアナビ)
作
副
・
副作用等の報告
に係る情報の整理
及び調査の結果を
通知
独立行政法人
医薬品医療機器総合機構
PMDA
病 院・診 療 所
薬 局
情報提供・収集
薬事・食品衛生審議会
(医薬品等安全対策部会
医療機器安全対策部会)
検討
報
告
報
換
交
評価
厚 生 労 働 省
情
等
参加147カ国
(独立の関税地域を含む)
(2014年6月現在)
交換
措
置
の
伝
達
都 道 府 県
副
作
用
等
相
談
情
報
等
報
行政措置
・指導
告
製造販売業者等
(製薬企業)
●出典:厚生労働省「厚生労働白書」
(平成27年版)
、
一部改編
19
Ⅱ 医療制度
1. 医療保険制度
2-1 平均余命の国別比較(2013)
(単位:歳)
日本の医療保険制度は、
「国民皆保険」
「現物給付」
国 名
「フリーアクセス」といった特徴をもち、誰もが安心
日
して医療サービスを受けることができ、世界最長の
ス
平均余命の達成にも大きな役割を果たしてきました。
ペ
ス
イ
イ
平均
男
女
本
83.4
80.2
86.6
ン
83.2
80.2
86.1
ス
82.9
80.7
85.0
イ
タ
リ
ア
82.8
80.3
85.2
フ
ラ
ン
ス
82.3
79.0
85.6
オ ー スト ラ リ ア
82.2
80.1
84.3
が懸念されています。
ア イ ス ラ ンド
82.1
80.5
83.7
イ ス ラ エ ル
82.1
80.3
83.9
2015(平成 27)年の人口構成に占める高齢者の比
ス ウ ェ ー デ ン
82.0
80.2
83.8
ルクセンブルク
81.9
79.8
83.9
ノ ル ウ ェ ー
81.8
79.8
83.8
韓
国
81.8
78.5
85.1
ダ
81.5
79.3
83.6
ダ
81.4
79.5
83.2
ニュー ジ ー ランド
81.4
79.5
83.2
ギ
一方、医療保険財政は高齢化の急速な進展に伴う
老人医療費の増大や、国民所得の伸びを上回る国民
*
医療費の増加などにより、きわめて厳しくなること
率(総人口に占める 65 歳以上人口の割合)は 26.7%
で、2025(平成 37)年には 30.3%とさらに高齢化が
進むことが見込まれ※、医療保険制度を取り巻く環
境は今後も大きく変化することが予想されます。
こうしたなか、医療保険制度の安定的運営を図
るための国民健康保険法等の一部改正や、高齢者
医療制度改革が検討・推進されるなど、今後とも
医療保険制度を堅持していくことを基本に、人口
構造の変化に対応できる持続可能なシステムを構
築するための取り組みが進められています。
カ
オ
ナ
ラ
ン
ャ
81.4
78.7
84.0
オ ー スト リ ア
リ
シ
81.2
78.6
83.8
イ
ス
81.1
79.2
82.9
ギ
リ
ア イ ル ラ ンド
81.1
79.0
83.1
フ ィ ン ラ ンド
81.1
78.0
84.1
ド
ツ
80.9
78.6
83.2
ポ ル ト ガ ル
80.8
77.6
84.0
ベ
ー
80.7
78.1
83.2
デ ン マ ー ク
80.4
78.3
82.4
ス ロ ベ ニ ア
80.4
77.2
83.6
ア メリカ 合 衆 国
78.8
76.4
81.2
チ
リ
78.8
76.3
81.4
イ
ル
チ
ギ
コ
78.3
75.2
81.3
エ ス ト ニ ア
ェ
77.3
72.8
81.7
ポ ー ラ ン ド
77.1
73.0
81.2
ト
コ
76.6
73.7
79.4
ス ロ バ キ ア
ル
76.5
72.9
80.1
ハ ン ガ リ ー
75.7
72.2
79.1
メ
74.6
71.7
77.4
キ
シ
コ
注:カナダは2011年の数値。
●出典:OECD Health Statistics 2015
20
※:総務省
「高齢者の人口」
(平成 27 年 9 月 15 日現在推計)
(1)日本の医療保険制度
によって審査支払機関(国民健康保険団体連合会な
①医療保険制度の概要
ど)に請求します。審査支払機関は、正しい請求
日本では、国民から徴収された保険料などによっ
が行われているかレセプトをチェックしたうえで、
て運営される医療保険制度が採用されています。
診療報酬を保険医療機関に支払います。このとき
1961(昭和 36)年、すべての国民を対象とする現在
医薬品の代金は、薬価基準価格で償還されます。
の制度である「国民皆保険制度」の実現により、国
こうした「出来高払い制度」のもとでの「現物給
民の誰もが、いつでもどこでも医療サービスを容
付」
(診療・検査・投薬などの医療サービスとして
易に受けられるようになりました。このように、
の給付)は、日本の医療保険制度の大きな特徴のひ
いつでもどこの医療機関でも医療サービスが受け
とつです。
られることを「フリーアクセス」と呼びます。
②「出来高払い制度」と「定額払い制度」
被保険者(患者)が医療サービスを受けた場合、
日本の医療保険制度の特徴のひとつである「出
被保険者は診療費用の一部を保険医療機関(病院、
来高払い制度」では、実際に行った診療行為別に
診療所、保険薬局など)の窓口で支払い、残りは保
診療報酬点数表によって診療費用が計算されます。
険者(健康保険組合など)から保険医療機関に支払
これに対して、いくつかの診療行為をまとめて一
われる仕組みになっています。
定額の医療費を定めたものを「定額払い制度」と
保険医療機関は、初診料・投薬料・手術料など
いい、療養病床など一部に導入されています。定
診療行為別に定められた診療報酬点数表に基づい
額払い制度は、過剰な検査・投薬・注射の抑制や、
て診療費用を計算し、診療報酬明細書(レセプト)
医療機関における請求事務の簡素化などが期待で
*
2-2 医療保険制度の基本的な仕組み
保険者
被保険者(患者)
社会保険庁 健康保険組合
各種共済組合
市町村、国民健康保険組合
審査分請求
保険料
診療サービス
(療養の給付 )
請求金額の支払
審査支払機関
一般被用者 日雇労働者 船員 公務員
私立学校教職員 農業者 自営業者
被用者保険の退職者 被扶養者 など
病院 診療所 保険薬局
診療報酬の請求
*
中央社会保険医療協議会
(中医協)
医薬品など
モノの流れ
治療指針
・使用基準
診療報酬点数表
薬価基準
制度上の手続き
保険医療機関
診療報酬の支払
社会保険診療報酬支払基金
国民健康保険団体連合会
(医師の処方箋による)
調剤
一部負担金
の支払
医薬品
購入代金
の支払
医薬品
など
卸売業
答 申
厚生労働省
診療報酬点数表・
薬価基準制度諮問
保険料など
お金の流れ
薬価基準
収載申請
製薬企業
診療などの
サービス
21
2-3 主要国の医療保険制度
制度の類型
適 用 対 象
医 療 給 付
日 本
現物給付
患者負担
・義務教育就学後から 70 歳未満 3 割
後期高齢者医療制度/ 75 歳以上の
・義務教育就学前 2 割
者および 65 歳以上 75 歳未満の者 ・70 歳以上 75 歳未満 2 割(現役並み所得者 3 割)
で一定の障害の状態にある者
・後期高齢者 1 割(現役並み所得者 3 割)
全国健康保険協会
健康保険組合
各種共済組合
市(区)町村
後期高齢者医療広域連合
現物給付
患者負担(例)
薬剤・補助具
被用者(年収 5 万 4,900 ユーロ以 価格の 10%(5 ~ 10 ユーロ)
入院
下)、年金受給者、失業手当受給者、
1日 10 ユーロ(年 28 日限度)
農業経営者およびその家族従事者、
歯科補てつ 芸術家、著述家など
診断に応じ費用の一定割合
患者負担限度:グロス収入の 2%
(ただし、重度の慢性病患者は同 1%)
支給期間 制限なし
疾病金庫
医療保険/被保険者及び家族
国民皆保険に
よる社会保険
方式
ドイツ
社会保険方式
フランス
社会保険方式
スウェーデン
医療サービス
(広域自治体ラ
ンスティング
による主に税
を財源とする
現物給付)
社会保険方式
(現金給付)
管理運営機構
一般制度/民間商工業の被用者、
年金受給者
特別制度/鉱夫、 船員、 国鉄、公務
員等特殊職域の被用者
自営業者社会制度/自営業者等
農業制度/農業労働者、 農業経営者
その他の制度
償還制(以下は「一般制度」の償還率)
外来診療 70%(特定の疾病は 100%)および
1 回につき 1 ユーロを負担(上限 50 回まで )
薬剤費 薬効等に応じて、15 ~ 100% 非代替薬 等 100%、一般薬 65%、気休め薬 15%
入院診療 基本的に 80%を現物給付(ALD 該当 疾患の場合 100%現物給付)
入院定額負担金 18 ユーロ / 日(精神疾患の場合 13.50 ユーロ / 日)
支給期間 制限なし 医療サービス
自己負担額(具体的な額は地域により異なる)
医療サービス/全居住者
外来(プライマリケア):100 ~ 200 クローナ /1 回
外来(専門医):300 クローナ程度 /1 回
現金給付/傷病手当基礎所得(SGI) ※外来の自己負担額については法律により総額 1,100 クローナ
が 物 価 基 礎 額 の 24 % 以 上( 月 額 /1 年の上限額を設定
10,700 クローナ)の自営を含む就 入院:50 ~ 100 クローナ / 日(法律により 100 クローナ / 日の上限額を設定)
業者
薬剤:法律により総額 2,200 クローナ / 年の上限額を設定
支給期間 原則として制限なし
イギリス
保健サービス
医療給付/全居住者
(医療給付)
社会保険方式
現金給付/被用者、 自営業者
(現金給付)
現物給付(費用の全額)
患者負担(大幅な免除制度がある)
・一般歯科 3 段階定額負担
検査等 18.80 ポンド
補てつ等 51.30 ポンド
義歯等 222.50 ポンド
・薬剤 処方 1 件 8.20 ポンド
・検眼、 めがね代 本人負担
支給期間 制限なし
社会問題・保健省
医療保険金庫
医療サービス:ランスティ
ングの責任により実施。国
レベルでは保健福祉庁が医
療サービスに関するガイド
ラインの作成や補助金の分
配を , 保健・福祉サービス
監督庁が医療機関への監督
を実施
現金給付:社会保険庁
雇用年金省、雇用年
金省の雇用・給付セ
ンター事務所、保健
省
内国歳入庁(保険料
の徴収)
アメリカ合衆国
現物給付
(2015 年)
・入院保険 (HI)/1 疾病に 90 日間の入院医療費(入院当初に 自己負担 1,260 ドル。入院の 60 日までは完全支給。 その
後の 30 日については 1 日 315 ドルの共同負担)
・100日までのナーシング ・ ホーム ・ ケア(入所 20 日まで
社会保険方式 メディケア
保健 ・ 対人サービス
(老齢者障害 65 歳以上の年金受給者、障害年 完全支給。 21 日目から 1 日 157.5 ドルの共同負担)
省
(DHHS)
・全生涯中 60 日の入院給付(1 日 630 ドルの共同負担)
者医療保険の 金受給者、 慢性腎臓病患者、 保険
・在宅医療サービス
州保健当局等
料を任意に払う 65 歳以上の者
み)
ホスピス ・ ケア等
・補足的医療保険(SMI)/外来、 在宅医療等について費用 の 80%を給付。 年額 147 ドルまでの自己負担あり
・メディケア助成プラン
・処方薬剤給付
●出典:厚生労働省
「厚生労働白書」( 平成 27 年版 )、厚生労働統計協会「保険と年金の動向」
(2015 / 2016)
22
きる半面、粗診粗療、患者さんの選別、よりよい
2013(平成 25)年度の国民医療費は 40.1 兆円と
医療の実現を阻む医療の硬直化といったデメリッ
なっています(前年度比約 0.8 兆円増)
。国民1人当
トも指摘されています。
たりの医療費は年間 31 万 4,700 円で、前年度より
さらに、急性期の入院医療の包括化に向けて、
7,200 円増えています。また、国民所得に占める国
アメリカ合衆国で実施されている「診断群別定額払
民医療費の割合は 11.06%で、前年度より 0.08 ポイ
い方式(DRG/PPS)」を参考にした「医療機関ごとの
ント下降しています。
診断群分類別の 1 日当たり定額払い方式(DPC)」が
国民医療費に占める 65 歳以上の医療費の割合※ 1
順次導入されています。2003(平成 15)年から特定
は 57.7%(23.1 兆円)に達し、過去最高を更新しまし
機能病院など 82 施設で DPC 方式による診療報酬
た。国民 1 人当たりの 1 年間の医療費は、65 歳未
の算定制度が導入され、年々拡大してきています。
満の 17 万 7,700 円に対し、65 歳以上はその約 4 倍
2016(平成 28)年の DPC 対象病院(2016(平成 28)年
の 72 万 4,500 円となっています。
4 月見込み)は 1,667 病院・49 万 5,227 病床となり、
国 内 総 生 産(GDP) に 占 め る 総 医 療 費 比 率 を
全一般病床数(2014(平成 26)年:89 万 4,216 床)の
OECD 諸国と比べると、2013(平成 25)年では日本
約 55%を占めるまでになっています。
は 10.2%で、ドイツの 11.0%、フランスの 10.9%、
*
*
アメリカ合衆国の 16.4%より低くなっています(p24
(2)国民医療費
図 2-5 参照)
。
毎年厚生労働省が発表する「国民医療費」は、
一 方、 人 口 に 占 め る 65 歳 以 上 の 高 齢 者 率 ※ 2
各年度内に医療機関などで行われた病気やけがの
を 2015 年 で 比 較 す る と、 日 本 が 26.3 %、 ド イ ツ
治療に対して支払われた費用の推計で、日本の医
21.5%、フランス 18.6%、イギリス 18.0%、アメリ
療費の動向をほぼ正確に知ることができます。
カ合衆国 14.5%となっており、日本は高い高齢者率
2-4 国民医療費、国民1人当たり医療費および対国民所得比率の年次推移
国民医療費
年 次
1980 昭和55
60
1985
1990 平成 2
7
1995
12
2000
13
2001
14
2002
15
2003
16
2004
17
2005
18
2006
19
2007
20
2008
21
2009
22
2010
23
2011
24
2012
25
2013
総額
増減率
(億円)
(%)
119,805
160,159
206,074
269,577
301,418
310,998
309,507
315,375
321,111
331,289
331,276
341,360
348,084
360,067
374,202
385,850
392,117
400,610
9.4
6.1
4.5
4.5
-1.8
3.2
-0.5
1.9
1.8
3.2
-0.0
3.0
2.0
3.4
3.9
3.1
1.6
2.2
人口1人当たり 国民医療費の
国 民 所 得に
国民医療費
国民所得
対 する 比 率
(千円)
102.3
132.3
166.7
214.7
237.5
244.3
242.9
247.1
251.5
259.3
259.3
267.2
272.6
282.4
292.2
301.9
307.5
314.7
(%)
5.88
6.15
5.94
7.27
8.03
8.48
8.51
8.57
8.68
8.86
8.76
8.95
9.80
10.46
10.61
11.04
11.14
11.06
(億円)
注1
注2
増減率
総人口
(%)
(千人)
2,038,787 11.9
2,605,599
7.2
3,468,929
8.1
3,707,727
1.1
3,751,863
1.7
3,667,838 -2.2
3,638,901 -0.8
3,681,009
1.2
3,701,166
0.5
3,741,251
1.1
3,781,903
1.1
3,812,392
0.8
3,550,380 -6.9
3,443,848 -3.0
3,527,028
2.4
3,495,971 -0.9
3,519,578
0.7
3,620,550
2.9
117,060 *
121,049 *
123,611 *
125,570 *
126,926 *
127,291
127,435
127,619
127,687
127,768 *
127,770
127,771
127,692
127,510
128,057 *
127,799
127,515
127,298
注1:国内総生産及び国民所得は、内閣府発表の「国民経済計算」による。
2:総人口は、総務省統計局「国勢調査」(*印)および「人口推計」(各年10月1日現在)による。
3:平成12年4月から介護保険制度が施行されたことに伴い、従来国民医療費の対象となっていた費用のうち、介護保険の費用に移行したものがあるが、
これらは平成12年度以降、国民医療費に含まれていない。
●出典:厚生労働省「国民医療費」
※ 1:厚生労働省「国民医療費」
※ 2:「国連推計による主要国の 65 歳以上人口割合:1950 ~ 2100 年」
23
2-5 GDP に占める総医療費比率の国別比較
(単位:%)
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
(平成 16) (平成 17) (平成 18) (平成 19) (平成 20) (平成 21) (平成 22) (平成 23) (平成 24) (平成 25)
アメリカ合衆国
14.6
14.6
14.7
14.9
15.3
16.4
16.4
16.4
16.4
16.4
ド
10.1
10.3
10.1
10.0
10.2
11.1
11.0
10.7
10.8
11.0
イ ギ リ ス
7.3
7.4
7.6
7.6
7.9
8.8
8.6
8.5
8.5
8.5
フ ラ ン ス
10.1
10.2
10.1
10.0
10.2
10.9
10.8
10.7
10.8
10.9
7.9
8.1
8.1
8.2
8.5
9.4
9.5
10.0
10.1
10.2
日
イ
ツ
本
●出典:OECD Health Statistics 2015
にもかかわらず GDP に占める総医療費比率は低く
ランスとほぼ同等の薬剤費がかかっています。こ
抑えられています。
れらのデータから、日本の薬剤費はアメリカ合衆
国に比較すれば低いものの、それに次ぐ金額になっ
(3)薬剤費比率
ています。
厚生労働省は、診療行為の内容や薬剤の使用状
況などの実態を明らかにするため、「社会医療診療
(4)医療保険制度改革の動き
行為別調査」を実施しています。これによると、国
人口の急速な高齢化、医療の高度化などで医療
民医療費に占める薬剤費の割合は、1993(平成 5)年
費が増大するとともに、医療保険制度を支える若
頃までは 30%近くを占めていましたが、2000(平成
い世代の比率が低下するため、保険財政が近い将
12)年以降は 20%程度で推移し、2014(平成 26)年
来に破綻することが懸念されています。
は 21.5%となっています。
一方、経済成長の鈍化による税収入の減少は国
薬剤費の国別比較(2012 年)では、日本の患者さ
の財政逼迫をもたらし、現在国が負担している医
ん1人当たりの薬剤費は 756.1 ドルとなっており、
療費の一部(約 25%)支出の継続が困難になりつつ
アメリカ合衆国では日本の約 1.34 倍、ドイツ、フ
あります。
2-6 一般診療点数に占める投薬・注射の薬剤費割合の推移
(単位:% , 各年 6 月審査分)
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(平成 19)(平成 20)(平成 21)(平成 22)(平成 23)(平成 24)(平成 25)(平成 26)
投薬・注射の薬剤費割合
19.2
18.4
21.2
20.7
21.5
21.5
21.7
21.5
●出典:厚生労働省 社会医療診療行為別調査
2-7 1 人当たりの医療費と薬剤費の国別比較(2012)
1 人当たりの医療費
1 人当たりの薬剤費
薬剤費比率
アメリカ合衆国
ドイツ
8,454.4
4,693.2
(2.35)
フランス
日本
3,175.4
4,045.1
3,591.8
(1.31)
(0.88)
(1.13)
(1.00)
1,013.5
665.2
366.9
631.3
756.1
(1.34)
(0.88)
(0.49)
(0.83)
(1.00)
12.0%
14.2%
12.3%
15.6%
21.1%
注1:イギリスの 1 人当たり薬剤費と薬剤比率は、2008 年の値である。
2:端数処理の関係で、一部計算の合わないものがある。
●出典:OECD Health Statistics 2015 24
(単位:US ドル、( )内は日本を 1 とした場合の各国の値)
イギリス
注1
こうした背景から 2002(平成 14)年 7 月には、健
ただし、例外として混合診療が認められる場合
康保険法等の一部改正により、70 歳以上高齢者の
があります。2006(平成 18)年から実施された「保険
一部負担の完全定率化、老人医療対象年齢の引き
外併用診療費制度」で、
「評価療養」と「選定療養」の
上げ、被用者保険本人・家族の 3 割負担、総報酬
2 つからなります。
制の導入と政管健保保険料率の引き上げなどが行
「評価療養」とは、将来の保険適用を前提として、
われました。
保険適用が適切であるかどうかの評価をする療養
2006(平成 18)年 6 月には、医療構造改革関連法
のことで、評価が確立すれば保険適用の対象とな
案が成立し、健康保険法等の一部改正により、国
ります。先進医療や医薬品の治験に関わる診療が
民皆保険を維持し、将来にわたって持続可能なも
含まれます。
のとしていくための改革・措置が導入されました。
「選定療養」とは、将来の保険適用を前提とせず、
医療構造改革の基本的な考えには、患者さんの
患者さんの選択に任せるものです。快適性・利便
視点に立ち、予防の重視と安全 ・ 安心の医療が掲
性に関わるものや紹介なしに大病院で診療を受け
げられています。さらに、75 歳以上の高齢者を対
ること、所定の日数を超える入院などが含まれま
象に後期高齢者医療制度が 2008(平成 20)年 4 月か
す。これらの選定療養を受けた場合は、療養全体
ら実施されました。
にかかる費用のうち、本来保険が適用される基礎
後期高齢者医療制度は、年齢による区分を行う
的部分に対して保険外併用療養費が支給されます。
ことが批判されたため、一度は廃案に決まりまし
なお、2008
(平成 20)
年 4 月に
「高度医療評価制度」
たが、2013(平成 25)年 8 月、社会保障制度改革国
が開始され、
その後 2012
(平成 24)
年 10 月からは「先
民会議により、現行制度を基本としながら必要な
進医療制度」として先進医療、高度医療が一本化と
改善を行うことが適当、とされました。今後は、
なりました。これは、国内で認められていない医
実施状況などを踏まえ、後期高齢者支援金に対す
薬品・医療機器を用いた治療について保険診療と
る全面総報酬割の導入をはじめ、必要な改善を行
併用
(混合診療)
を可能にする制度です。
いながら存続されていくこととなります。
従来は、治療の一部に国内で未承認の抗がん剤
を利用すると、本来保険が適用される診療も含め
(5)医療保険外の医療
て全額が患者さん自己負担となっていました。そ
医療保険による診療で行える検査や治療、使う
のため患者さんの経済的負担が大きくなり、薬事
ことのできる医薬品や材料などには制限がありま
法上の承認前でも保険診療との併用を認めてほし
す。医療保険で認められていない検査や治療を、
いとの要望が高まっていました。これに対して、
患者さんが自分の希望で受ける場合は「自由診療」
新制度では自由診療と保険診療が併用できるため、
と呼ばれ、全額が患者さんの負担になります。自
全額自己負担となるのは、未承認薬の薬剤費や投
由診療となるケースには、経口避妊薬(ピル)
、脱
与にかかる費用など保険外の費用のみとなります。
毛症治療薬および ED(勃起不全)治療薬など、保険
制度が適用されるのは、厚生労働省の「先進医療
が適用されない医薬品を用いての治療があります。
会議」で安全性や有効性などが認められた医薬品・
これらの医薬品は、他の医療用医薬品と同じく厚
医療機器に限られ、実施できる医療機関も「特定機
生労働省の審査・承認を経て販売されますが、保
能病院」など高度な医療を提供する一部の病院に限
険の適用外のため、原則として診療費、薬剤費は
られます。この制度により、国内で未承認の良質
全額自己負担となります。
なくすりをより早く経済的に利用することが可能
一方、ひとつの病気の診療において、保険が適
になるものと期待されます。また、2016(平成 28)
用される診療行為と適用されない診療行為を組み
年度からは新たな制度として「患者申出療養」制度
合わせた診療を「混合診療」と呼び、原則では認め
が開始されました。
られていないため、どちらかを選択しなければな
りません。そのため、自由診療を受けた場合は、そ
の病気の診療に関するすべての費用(保険が適用さ
れる診療を含む)は患者さんの自己負担となります。
25
2-8「評価療養」と「選定療養」の具体的な対象
評 価 療 養
選 定 療 養
・先進医療
・特別の療養環境
(差額ベッド)
・医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
・歯科の金合金等
・医薬品医療機器等法承認後で保険収載前の医薬品、医
療機器、再生 医療等製品の使用
・金属床総義歯
・薬価基準収載医薬品の適応外使用
・時間外診療
(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がな
されたもの)
・大病院の初診
・保険適用医療機器、再生医療等製品の適用外使用
・大病院の再診
(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がな
されたもの)
・180 日以上の入院
・予約診療
・小児う触の指導管理
・制限回数を超える医療行為
●出典:厚生労働省 ( ホームページより )
◆介護保険制度◆
高齢化の進展に伴い介護が必要な高齢者が増加する一方、核家族化により介護者を支える家族の状況が変化してきており、そ
れらを背景に介護保険制度が 2000(平成 12)年 4 月に創設・実施されました。主な目的は、家族の介護負担を軽減することに
加えて、高齢者の福祉と医療をひとつの介護保険制度に統合することで、総合的なサービスを利用しやすい仕組みを構築するた
めとされています。
介護保険制度によって認定された要介護者または要支援者の数は、2001(平成 13)年度に 287.7 万人でしたが、その後年々
増え続け、2012
(平成 24)
年度には 545.7 万人と、約 1.9 倍に達しています
(内閣府
「高齢社会白書」
(平成 27 年版)
)
。こうし
たなか、現行の介護保険制度においては、介護サービス提供事業数の不足や人材の不足などが課題となっており、今後の制度拡
充が期待されています。
2-9 介護保険制度の概要
市 町 村
保 険 者
被保険者
被保険者と
保険料、その
支払方法、受
給者
第 1 号被保険者
(65 歳以上の者)
保険料
保険料の支払い
・所得段階別定額保険料
(低所得者の負担軽減)
・年金が年額 18 万円以上の方 市町村が徴収
は特別徴収 ( 年金からのお支
払い ) それ以外の方は普通徴
収
・要介護者(寝たきり・認知症
等で介護が必要な状態)
・要支援者(日常生活に支援が
必要な状態)
・健保:標準報酬および標準賞
要介護・要支援状態が、末期が
第 2 号被保険者
与×介護保険料率(事 医療保険者が医療保険
ん・関節リウマチ等の加齢に起
(40 歳以上 65 歳未満 業主負担あり)
料とともに徴収し、納
因する疾病(特定疾病)による場
の医療保険加入者)
・国保:所得割、均等割等に按 付金として一括納付
合に限定
分(国庫負担あり)
保険の給付
①要介護・要支援認定:申請に基づき、市町村に設置される介護認定審査会で審査判定され、市町村が認定
②給付の内容:予防給付(介護予防サービスなど)
:介護給付(居宅サービス、居宅支援介護、施設サービスなど)
利用者負担
介護サービス費用の 1 割+居住 ( 滞在 ) 費・食費を原則自己負担
●資料:厚生労働省
「厚生労働白書」
(平成 27 年版)
26
受給者
◆医療提供体制◆
医療サービスを提供する医療機関には、病床数 20 床以上の「病院」や、19 床以下の「診療所」などがあります。近年、病院は微
減傾向に、一般診療所と歯科診療所は微増傾向にあります。これら医療施設の総数は、2015(平成 27)年 9 月末現在(概数)で
17 万 8,212 施設、病床数は 167 万 3,669 床となっています。これを 2007(平成 19)年 10 月 1 日時点と比べると、施設
数は増加する一方、病床数は減少しています。
医療サービス従事者の人口千人当たりの数を海外諸国と比べると、2012
(平成 24)
年の日本の医師数は 2.3 人と他の先進国に
比べて少なく、4.2 人のノルウェーの半分程度となっています。看護師数は 10.5 人でイギリス、フランス、カナダ、イタリアよ
りは多くなっています。看護師数、薬剤師数については諸外国と比べても不足はしていませんが、全体としては日本の医療提供体
制における人的資源は十分でないといえます。
2006
(平成 18)
年 6 月に可決・成立した
「医療構造改革関連法案」
は、健康保険法等の一部を改正する法律と、良質な医療を提
供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の 2 つからなります。このうち後者は、患者さんの視点に立った
医療提供体制の構築を目指すもので、①患者さんへの医療に関する情報提供の推進、②医療制度計画の見直しなどを通じた医療機
能の分化・連携の推進、③地域や診療科による医師不足問題への対応、④医療安全の確保、⑤医療従事者の資質の向上などの対策
が推進されることになりました。2008(平成 20)年には、あるべき医療の姿を示した「安心と希望の医療確保ビジョン」が策定さ
れ、同年策定の「経済財政改革の基本方針」
「5 つの安心プラン」なども踏まえて、医師確保や緊急医療、周産期医療への対策が推進
されてきました。
こうした流れを受けて現在は、医師不足地域に対する国レベルの緊急臨時的医師派遣システムの構築、病院勤務医の過重労働を
解消するための勤務環境整備、医療リスクに対する支援体制整備などの対策が進められています。
2-10 医療施設数・病床数
年
2009
(平成 21)
2010
(平成 22)
2011
(平成 23)
2012
(平成 24)
2013
(平成 25)
2014
(平成 26)
2015
(平成 27)
施設数
(病床数)
病院
176,471
(1,743,415)
176,878
(1,730,339)
176,308
(1,712,539)
177,191
(1,703,950)
177,769
(1,695,210)
177,546
(1,680,712)
178,212
(1,673,669)
8,739
(1,601,476)
8,670
(1,593,354)
8,605
(1,583,073)
8,565
(1,578,254)
8,540
(1,573,772)
8,493
(1,568,261)
8,480
(1,565,968)
一般
歯科
精神科病院
結核診療所
一般病院
診療所
診療所
1,083
1
7,655
1,082
1
7,587
1,076
1
7,528
1,071
1
7,493
1,066
-
7,474
1,067
-
7,426
1,064
-
7,416
99,635
(141,817)
99,824
(136,861)
99,547
(129,366)
100,152
(125,599)
100,528
(121,342)
100,461
(112,364)
100,995
(107,626)
68,097
(122)
68,384
(124)
68,156
(100)
68,474
(97)
68,701
(96)
68,592
(87)
68,737
(75)
注:各年 10 月1日現在。2015 年は概数。
●出典:厚生労働省「医療施設調査」
2-11 医師数・看護師数・薬剤師数の国別比較
(2012)
(人口千人当たり)
医師
看護師
薬剤師
日 本
2.3
10.5
1.61
カ ナ ダ
2.5
9.4
0.95
フ ラ ン ス
3.3
9.1
1.13
ド イ ツ
4.0
12.6
0.63
イ タ リ ア
3.9
6.4
0.97
ノ ル ウェー
4.2
16.5
0.83
イ ギ リ ス
2.8
8.2
0.78
アメリカ合衆国
2.5
11.2
0.90
●出典:OECD Health Statictics 2015
27
◆医薬分業◆
「医薬分業」
とは、
医師から院外処方箋の交付をうけ、
薬局で医薬品を調剤してもらうことです。医師は診療に、
薬剤師は調剤にと、
それぞれの専門分野の業務に専念することで、医療サービスの質的向上を図ることを目的としています。
医薬分業により患者さん一人ひとりが「かかりつけ薬局」をもつことが期待されています。これにより、次のメリットが考え
られます。
①「かかりつけ薬局」が患者さんの医薬品服用に関する記録(薬歴)をとることで、複数の医療機関から同じ医薬品を重複して
受け取ることや、異なる医薬品を服用して起きる薬物間の相互作用の発生を予測して回避できる。
②医師と薬剤師がお互いに医薬品の処方をチェックし合うことで、薬歴なども照合され、より安全な薬物治療が期待できる。
③患者さんは医薬品について薬剤師から十分な説明を受けることができる。
④医師が手持ちの医薬品に限られることなく、患者さんにもっとも適した医薬品を処方できる。
⑤病院薬剤師の外来調剤業務を軽減することで、本来病院薬剤師が行うべき入院患者さんに対する病棟活動が充実する。
医薬分業は欧米の先進国では定着しています。日本でも、保険薬局の処方箋受取枚数を基準にした医薬分業率は、2006(平成
18)
年度 55.8%、
2008
(平成 20)
年度 59.1%、
2010
(平成 22)
年度は 63.1%、
2012
(平成 24)
年度は 66.1%と増加を続け、
2014
(平成 26)
年度は 68.7%となっています。
厚生労働省では医薬分業をさらに推進するために、使用頻度の低い医薬品の備蓄とその医薬品を必要とする薬局への譲渡、医
薬品情報の収集・提供、休日・夜間時の調剤などの業務を行う医薬分業推進支援センターの整備を図るなどして、地域の薬局す
べてが病院・診療所からの処方箋に対応できる体制づくりを行っています。
2-12 医薬分業の体制
病 院
連絡・患者情報
処方せん
連絡・患者情報
受 診
受 診
かかりつけ医院
A
受 診
かかりつけ医院
B
患 者
処方せん
処方せん
処方せん
連絡・患者情報
調剤、服薬指導、
大衆薬、受診の勧め
連絡・患者情報
かかりつけ薬局
情報・指導・研修・備蓄等の支援
地区支援センター(備蓄等)
●出典:厚生労働省「厚生労働白書」( 平成 22 年版 )
2-13 医薬分業率
薬局数
注1
2014(平成 26) 57,784
保険薬局数
注2
56,679
請求薬局数
54,988
注1: 薬局数は平成 26 年度末現在。 2: 保険薬局数と請求薬局数は平成 26 年度 10 月現在。 3: 保険調剤に係る数値は、基金統計月報および国保連合会審査支払業務統計による。
●出典:厚生労働省「衛生行政報告例」、日本薬剤師会
28
保険調剤
注3
件 数
処方箋枚数(枚)
医薬分業率
調剤点数(千点) 全国平均(%)
607,328,926
775,584,886
681,205,423
68.7
2. 薬価制度
(1)薬価基準
医療用医薬品は、ほとんどが医療保険制度のも
「薬価基準」とは、保険診療に用いることができる医
とで用いられるので、製造販売承認を取得するだ
薬品の「品目」と「価格」を定めたものをいい、厚生労
けでなく、薬価基準に収載されることが必要です。
働大臣によって定められる公的価格です。
薬価基準への収載方式は次の 2 つがあり、原則的
日本の薬価は、自由価格制度を採用するアメリカ合衆
には銘柄別収載方式で収載され、一部が統一名収
国、ドイツなどに比べて安価になる傾向にありますが、
載方式で収載されています。
日本においても新薬の価値が適正に反映されて薬価が定
①銘柄別収載方式
められる必要があります。なぜなら、新薬が適正に評価
医薬品の個々の銘柄ごとに薬価を設定する方
されることではじめて医薬品の研究開発とイノベーショ
式。新薬として製造販売承認を得た医療用医
ンが促進され、その成果として新薬が創出され、国民の
薬品や初めて薬価収載される後発医薬品など
利益を最大化できることにつながるからです。
に用いられている。 医療保険制度に組み込まれて運営されている薬価基準
②統一名収載方式
制度は、「医療費の効率化」のもとに厚生労働省による
成分・剤形・規格ごとに名称(一般名)を付し
改革が進められてきました。
て薬価収載する方式。先発品の薬価の 30% を
2008(平成 20)年度の薬価制度改革では、「革新的医薬
下回る後発医薬品や日本薬局方に収載されて
品・医療機器創出のための 5 か年戦略」を踏まえて、革
いる医薬品の多くは、この方式で薬価が収載
新的新薬の適切な評価に重点が置かれた一方、後発医薬
される。
品が新たに収載された先発品は、追加的に薬価が引き下
げられています。
2010(平成 22)年度では、現行の薬価算定方式を基本と
しつつ、市場拡大再算定、不採算品再算定、最低薬価の
見直しなどが行われました。また、大きな変更として、
一定の要件を満たした特許期間中または再審査期間中の
新薬において、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以
下、新薬創出等加算)」が試行的に導入されました。
2012(平成 24)年度では、 2010(平成 22)年度と同様に、
①未承認薬 ・ 適応外薬の問題の解消や、 ②革新的新薬の
開発のためのインセンティブを確保するとともに、 後発
医薬品の薬価の大幅なばらつきの是正等により、 後発医
薬品への置き換えが着実に進むような薬価制度としてい
くとの考えに基づいた改定が行われました。
2014(平成 26)年度では、2012(平成 24)年度と同様に、
特許期間中の革新的新薬の適切な評価に重点を置き、特
許の切れた新薬については、後発医薬品への置き換えが
着実に進むような薬価制度としていくとの考えに基づい
た改定が行われました。
2016(平成 28)年度では、経済財政運営と改革の基本方
針(いわゆる骨太の方針、2015(平成 27)年 6 月 30 日閣議
決定)に後発医薬品の数量シェア目標値を 80% 以上にす
ること、あわせて基礎的な医薬品の安定供給、成長戦略
に資する創薬に係るイノベーションの推進、真に有効な
新薬の適正な評価などが明記され、それに基づいた改革
が行われました。
29
Ⅱ-2-(2) 図表25 薬価算定方式
薬価算定方式(平成18年度)
改定薬価=
(消費税を含む市場実勢価格の加重平均値)+(調
整幅)
注:平成18年4月の調整幅は改定前の薬価の2%に
乗じた額
改定薬価=
2-14 薬価算定方式
数量
調 整 幅 2(% )
注)
(消費税を含む市場実勢価格の加重平均値)+(調整幅
平成18年4月の例:
改定前薬価が1錠100円の医薬品が消費税を含む市
注:調整幅は改定前の薬価の 2%に乗じた額
場実勢価格の加重平均が90円で取引されていた場合
、改定薬価は次のように計算されました。
●改定薬価の事例:
90円+(100×0.02)=92円・・・・・・・改
定薬価
改定前の薬価、1錠 100 円の医薬品が、消費税を含む市
場実勢価格の加重平均値では 90 円で取り引きされてい
た場合、改定薬価は次のように計算されました。
90 円+
(100 円× 0.02)
= 92 円・・・・改定薬価
0
価格
改定前薬価
改定薬価
加重平均値
90円 92円 100円
2-15 最近の薬価基準改定率の変遷
薬価改定率
注2
医療費
ベース
1992 年改定前
1 錠 100 円の
医薬品の価格
1992(平成 4)年 4 月
- 8.1%
91.9 円
- 2.4%
R 幅 15%
5.0%
1994(平成 6)年 4 月
- 6.6%
85.8 円
- 2.0%
R 幅 13%
3.3%
1996(平成 8)年 4 月
- 6.8%
R 幅 11%
3.4%
薬価改定実施年月
1997(平成 9)年 4 月
薬価
- 3.0%
80.0 円
注1
77.6 円
薬価算定における価格幅
ベース
- 2.5%
注1
- 0.87%
注1
R 幅 10% 長期収載品 R 幅 8%
1.25%
1998(平成 10)年 4 月
- 9.7%
70.1 円
- 2.7%
R 幅 5% 長期収載品 R 幅 2%
1.5%
2000(平成 12)年 4 月
- 7.0%
65.2 円
- 1.6%
調整幅 2%
1.9%
2002(平成 14)年 4 月
- 6.3%
61.1 円
- 1.3%
調整幅 2% 先発品の追加引下率 平均 5%
2004(平成 16)年 4 月
- 4.2%
58.5 円
- 0.9%
調整幅 2% 後発品が新たに収載された
先発品の追加引下率 おおむね 6%
2006(平成 18)年 4 月
- 6.7%
54.6 円
- 1.6%
調整幅 2% 後発品が新たに収載された
先発品の追加引下率 おおむね 8%、さらに
過去特例引き下げ品目 2%の追加引き下げ
- 1.4%
2008(平成 20)年 4 月
- 5.2%
51.8 円
- 1.1%
調整幅 2% 後発品が新たに収載された
先発品の追加引下率 おおむね 6%
0.38%
2010(平成 22)年 4 月
- 5.75%
48.8 円
- 1.23%
調整幅 2% 後発品が新たに収載された
先発品の追加引下率 おおむね 6%
1.55%
2012(平成 24)年 4 月
- 6.00%
45.9 円
- 1.26%
調整幅 2% 後発品が新たに収載された
先発品の追加引下率 おおむね 6%
1.38%
2014(平成 26)年 4 月
- 2.65%
2.99%
(消費税
対応分)
44.7 円
2016(平成 28)年 4 月
- 5.57%
42.2 円
注3
注4
- 0.63%
0.73%
(消費税
対応分)
- 1.22%
市場拡大
再算定
-0.19%
特別再算定
-0.28%
●出典:厚生労働省
- 1.3%
0%
調整幅 2% 後発品が収載されて 5 年経過
した後の先発品の引下率 3 段階に ② 2.0%、④ 1.75%、⑥ 1.5%
0.1%
1.36%
(消費税
対応分)
調整幅 2% 後発品が収載されて 5 年経過
した後の先発品の引下率 3 段階に ③ 2.0%、⑤ 1.75%、⑦ 1.5%
0.49%
注1:消費税率引き上げに伴う改定を含む。 2:医科、歯科および調剤の平均引上率。 3:後発品のある先発品に対する 0.9%の引き下げ分は含まず。 4:後発品のある先発品に対する 0.86%の引き下げ分、および後発品に対する 0.33%の引き下げ分は含まず。
30
診療報酬
引上率
(2)薬価改定
した場合、小規模の医療機関や医療上必要性の高
薬価基準は、医療用医薬品の公定価格として実
い小包装医薬品などの取り引きに不都合が生じ、
際の購入価格が反映されていることが前提になっ
安定的な購入が難しくなることが懸念されます。
ています。しかし、実際の取り引きでは、医療機
それを回避するため、図のように加重平均値+消
関によって購入量などにより取引条件が異なるた
費税に一定の割合(調整幅)を加えて改定薬価が算
め、市場取引価格はひとつではなく、ある程度の
定されます。
ばらつきが生じます。薬価と実際の市場取引価格
2000(平成 12)年以降、流通安定のために必要な
との差が、いわゆる「薬価差」と呼ばれるものです。
最低限の手当てとして 2%を加えるという考え方で
厚生労働省は「医療機関の医薬品の平均購入額を
現在に至っています。
補償する」という考え方に基づき、薬価基準収載医
薬品の市場価格を薬価に反映させるため、市場取
(3)新薬の薬価算定
引価格の調査(薬価調査)を行い、おおむね 2 年に 1
新たに承認された新薬が薬価基準に収載される
回の頻度で薬価の見直し(薬価改定)を行っています。
ときの薬価は、原則として「類似薬効比較方式」
また、2016(平成 28)年の薬価制度改革において
と呼ばれる方式で算定されます。
は、2010(平成 22)年の改定で試行的に導入された
この方式では、すでに薬価基準に収載されてい
「新薬創出等加算」が試行継続されて 4 回目の改定
る医薬品の中から、効能・効果、薬理作用、組成・
になりました。
化学構造式、投与形態、剤形区分、剤形・用法か
薬価改定は、「市場実勢価格加重平均値調整幅方
らみて新薬ともっとも類似したものを比較薬とし
式」という仕組みで行われます。銘柄別の取引価格
て選び、1 日あたりの薬価比較によって算定され、
の加重平均値に消費税を加え、さらに現行薬価の
さらに、臨床データに基づき、画期性・有用性(有
一定割合(調整幅)を加えた算定額を新薬価(改定後
効性と安全性)
・市場性などにより補正加算が行わ
薬価)とするものです。ただし、その額が現行薬価
れます。類似薬がすでに 3 種類以上あると、新規
を超える場合は、現行薬価(改定前薬価)を上限と
性に乏しい新薬とみなされ、その薬価は一定のルー
しているため据え置かれます。
ルに基づき低く算定されます。また、適切な類似
加重平均値はすべての取引価格と取引数量を反
薬のない新薬の薬価は、
「原価計算方式」で算定さ
映した価格のため、加重平均値+消費税を薬価と
れます。
◆市場実勢価格加重平均値調整幅方式によらない薬価改定◆
おおむね 2 年に 1 回行われる薬価改定では、通常改定のほかにさまざまなルールが適用され、主に薬価の引き下げが行われます。
初めて後発医薬品が薬価収載された先発品が 5 年間を経ても後発医薬品への置き換えが進まない先発品の特例引下げ (Z2) の
引下げ幅は、政府目標の変更に伴い、後発医薬品への置き換え率が 30% 未満では 2.0%、30% 以上 50% 未満では 1.75%、
50% 以上 70% 未満では 1.5% となっています。
他に、市場価格によらない薬価改定ルールとして「再算定」があります。再算定には市場拡大再算定、効能変化再算定、用法用
量変化再算定、などがあります。さらに、不採算になっている医薬品の薬価を引き上げる不採算品再算定、剤形ごとに最低限の供
給コストを確保するための最低薬価や最低薬価になる前の薬価を下支えする基礎的医薬品があります。
〔参考例〕市場拡大再算定
市場拡大再算定とは、新薬を開発した製薬企業が発売前に推定したピーク時の年間販売額に対して、実際の年間販売額が大幅に
上回った場合
(2倍以上、150 億円を超えるもの)
に、薬価を再算定するルールです。加えて 2016
(平成 28)
年度の薬価改定では、
単に販売額(1000 億円超)と拡大倍率だけで薬価を再算定する特例再算定が導入されました。これらは医薬品の市場実勢価格と無
関係に薬価を引き下げるルールともいえ、新薬開発におけるイノベーションを促進するという国の考え方にも逆行します。そのた
め製薬産業は、これまでもルールの廃止を強く求めています。
31
2014(平成 26)年までの 5 年間の新薬の薬価算定
ノベーションを評価する仕組みとして高く評価さ
ルールに基づく運用実績は、薬価収載された 265
れています。試行導入されたことにより製薬協会
成分のうち、画期性加算 0、有用性加算(Ⅰ)3 成分、
員会社は国内の研究開発やドラッグ・ラグの解消
有用性加算(Ⅱ)29 成分となっています。原価計算
に意欲的に取り組んでおり、さらに本ルールが制
方式は、81 成分に適用されました。
度化されれば、革新的新薬の創出を一層促進させ
なお、外国ですでに販売されている医薬品につ
ると期待されています。
いては、外国平均価格調整というルールにより更
2016(平成 28)年度薬価制度改革においては、イ
に調整が行われます。このルールは、算定された
ノベーションの評価として、先駆け審査指定され
価格が外国価格(アメリカ合衆国・イギリス・ドイ
た品目は先駆け審査指定制度加算の適用を受ける
ツ・フランス)の平均の 1.25 倍を超える場合または
ルールや医療上の必要性の高い未承認薬・適応外
0.75 倍未満の場合、算定された価格と外国平均価格
薬検討会議より開発要請や公募された品目につい
を用いて引き下げる、または引き上げるというも
ては外国価格が極端に低い場合は外国平均価格調
のです。2014(平成 26)年度に収載された 65 成分の
整の対象から除外するルールが導入され、新薬創
うち、外国価格が 1 カ国以上存在するのは 32 成分、
出に対して期待が寄せられています。
2 カ国以上存在するものは 24 成分であり、そのう
ち 5 成分が、外国に比べて算定価格が低いため引
(4)2016 年薬価改定等の議論を踏まえた今後の
き上げ調整され、一方、6 成分が、外国に比べて算
課題
定価格が高いため引き下げ調整されました。
2016 年の改定の議論は 2015(平成 27)年 12 月に
日本の新薬の価格が外国価格に比べて低くなる
骨子として取りまとめられましたが、今回の制度
傾向にあったのは、過去において特許期間中の新
改革も厳しい財政事情等を反映して業界に対し厳
薬であっても度重なる薬価改定により、類似薬効
しい内容でまとめられました。新薬創出・適応外
比較方式で算定する際の比較薬の価格が低下した
薬解消等促進加算制度の試行継続や基礎的医薬品
ためと考えられます。さらに、日本の薬価算定が
の薬価維持など評価できる面も見られたものの、
公定価格であるのに対して、アメリカ合衆国・イ
イノベーション否定につながるとの懸念表明にも
ギリス・ドイツでは、原則として新薬を開発した
関わらず「特例再算定」なる制度の導入が行われま
製薬企業が自由に価格を決められる自由価格制度
した。また、さらに新薬のアクセス阻害につなが
となっていることも一因となっています。これら
る恐れのある費用対効果評価制度の試行的導入も
の結果、日本では製薬企業の新薬開発意欲を損な
決定されました。
うことになり、患者さんの新薬へのアクセス問題
いずれにしても、医療に貢献する新薬創出が健
(ドラッグ・ラグ)につながっていることが懸念さ
康長寿社会の実現にとって極めて重要なものであ
れていました。
るとの理解とともに、イノベーションの価値が適
2010(平成 22)年度より試行的に導入された「新薬
切に評価される薬価制度の存在がこれを支える産
創出等加算」は一定条件を満たせば特許期間中は薬
業政策として重要であることを、引き続き関係者
価が引き下がらないルールとなっているため、イ
に十分理解してもらう必要があります。
◆先駆け審査指定制度◆
先駆け審査指定制度とは、世界に先駆けて革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品を日本で早期に実用化することを目的とし
て、
その開発を促進する制度です。厚生労働省内のプロジェクトチームが 2014
(平成 26)
年 6 月に取りまとめた
「先駆けパッケー
ジ戦略」の重点施策の一つとして位置づけられており、
「日本再興戦略」においても、世界に先駆けた革新的医薬品等の実用化の推
進を図る施策として掲げられていたものです。
この制度は、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、開発の早期段階から対象品目に指定し、
薬事承認に関する相談・審査で優先的な取り扱いをすることで、通常 12 カ月を目標に行われている審査を、半分の 6 カ月に短
縮することが可能になるものです。指定制度では、1.優先相談
(2 カ月→ 1 カ月)
、2.事前評価の充実
(実質的な審査の前倒し)
、
3.優先審査(12 カ月→ 6 カ月)
、4.審査パートナー制度(PMDA 版コンシェルジュ)
、5.製造販売後の安全対策充実(再審査
期間の延長)
によって、開発の促進を支援します。
2015
(平成 27)
年 10 月、先駆け審査指定制度の初めての対象品目として、6 品目の医薬品が指定されました。
32
2-16 新医薬品の薬価算定方式
④外国平均価格調整
1.25倍を上回る場合は引き下げ調整
0.75倍を下回る場合は引き上げ調整
類似薬のないもの
②類似薬効比較方式(Ⅱ)
(新規性に乏しい新薬)
④外国平均価格調整
1.25倍を上回る場合は引き下げ調整
③原価計算方式
製造(輸入)原価
販売費、一般管理費
営業利益
(平均的営業利益率+100~-50%)
流通経費
消費税等
④外国平均価格調整
1.25倍を上回る場合は引き下げ調整
0.75倍を下回る場合は引き上げ調整
⑤規格間調整
類似薬のあるもの
新薬
①補正加算
画期性加算
70~120%
有用性加算(Ⅰ)35~60%
有用性加算(Ⅱ) 5~30%
市場性加算(Ⅰ)10~20%
市場性加算(Ⅱ) 5%
小 児 加 算 5~20%
先駆け審査指定制度加算 10~20%
①類似薬効比較方式(Ⅰ)
2-17 新薬の補正加算の種類と要件
補正加算の種類
補正加算率
①画期性加算
補正加算の主な要件
70 ~ 120%
新規の作用機序、有用性、治療方法の改善の 3 要件いずれも
②有用性加算(Ⅰ)
35 ~ 60%
新規の作用機序、有用性、治療方法の改善のいずれか 2 要件
③有用性加算(Ⅱ)
5 ~ 30%
④市場性加算(Ⅰ)
10 ~ 20%
⑤市場性加算(Ⅱ)
5%
⑥小児加算
新規の作用機序、有用性、治療方法の改善、製剤工夫のいずれか
オーファン・ドラッグ
市場規模が小さい医薬品
5 ~ 20%
⑦先駆け審査指定制度加算
主な効能・効果、用法・用量に小児に係るものが含まれる
10 ~ 20%
先駆け審査指定品目
●出典 : 平成 28 年 2 月 10 日付厚生労働省保険局長通知
2-18 新薬の薬価算定のルールに基づく運用実績
算定類型区分
原価計算方式
画期性加算
2010
2011
2012
2013
2014
(平成 22) (平成 23) (平成 24) (平成 25) (平成 26)
成分
品目
成分
品目
成分
品目
成分
品目
成分
品目
累計
成分
品目
19
29
10
11
18
23
13
15
21
28
81
106
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
有用性加算(Ⅰ)
0
0
2
3
0
0
0
0
1
1
3
4
有用性加算(Ⅱ)
10
15
8
11
1
1
5
6
5
10
29
43
その他
23
55
27
57
27
43
37
74
38
58
152
287
総 計
52
99
47
82
46
67
55
95
65
97
265
440
●出典:日本製薬団体連合会 保険薬価研究委員会調べ
33
◆新薬創出・適応外薬解消等促進加算◆
2010(平成 22)年 4 月、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以下、新薬創出等加算)が試行的に導入され、2016(平成
28)年 4 月の薬価改定までに 4 回実施されています。このコラムでは、新薬創出等加算の制度概要、期待される効果、今後
の課題などについて触れてみます。
[新薬創出等加算の制度概要]
●加算対象となる新薬の範囲
①後発医薬品が上市されていない新薬(ただし、薬価収載後 15 年まで)
②市場実勢価格と薬価との乖離率が、全既収載医薬品の加重平均乖離率を超えないもの
この 2 つの要件を満たしたものが加算対象となります。ただし、配合剤のうち、薬価収載後 15 年を超えた成分または後発
医薬品が上市されている成分を含むもの、および市場拡大再算定品目は加算対象とはされません。
●加算額の計算式
(通常の薬価改定後の薬価)×(すべての既収載品の加重平均乖離率- 2%)
とし、改定前薬価が上限となっています。
ただし、2010(平成 22)年 4 月の試行時における加算率は、財政上の理由から 0.8 掛けの処理がされました。結果として、
すべての既収載品の加重平均乖離率が 8.4%であったことから、加算率は 5.1%となりました。
0.8 掛けは現行ルールにも継続され、2012(平成 24)年の加算率は 5.14%、2014(平成 28)年の加算率は 4.94%、
2016(平成 28)年の加算率は 5.41%となっています。
●加算を受ける条件
2010(平成 22)年 4 月の試行的導入以後、4 回の薬価改定において、上記の2つの要件を満たした新薬はすべて加算の対
象となりました(市場拡大再算定対象品は除く)。一方、新薬創出等加算の適用除外となる以下のような条件が付されています
が、これまで適用除外とされたものはありません。
(条件)
国は、開発要請をした適応外薬等につき、当該企業の開発・上市状況を確認し、以下の場合には当該企業のすべての新薬
に対して加算を適用しない。
①公知申請が行える場合…国からの開発要請から半年以内に薬事承認申請を行わなかった場合
②治験が必要な場合…国からの開発要請から 1 年以内に治験に着手しなかった場合
ここでいう「国からの開発要請品目」とは、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議が、学会、患者団体などか
ら募集した開発要望につき、医療上の必要性を評価し、医療上必要であるとされ、開発要請先となる企業がある品目です。こ
れとは別に現時点で開発要請先がなく、企業が自ら開発意思を表明し開発を進める「公募品目」があります。
2009(平成 21)年 6 月から 8 月にかけての第Ⅰ募集で要望のあった 374 件(第Ⅰ回要望品目)については、2016(平
成 28)年 1 月末時点で 165 件を企業に開発要請し、20 件については公募したことをはじめ、第Ⅱ回要望品目については、
290 件要望があり、そのうち 86 件を企業に開発要請し、17 件を公募しております。また、第Ⅲ回要望品目については、
168 件を企業に開発要請し、3 件について公募しております。これまでに各企業は真摯に対応してきており、中医協からも
製薬業界の取り組みは評価されています。
2-19 新薬創出・適応外薬解消等促進加算
加算要件を満たした成分数・品目数
内用薬
注射薬
外用薬
合計
成分数
190
162
64
416
品目数
376
323
124
823
加算率 0 ~ 5.41%
当該加算により薬価が維持された品目の割合 656 品目/ 823 品目= 79.7%
後発品のない先発品全体に占める当該加算対象品の割合 約 37%
●出典:2016
(平成 28)年 3 月 4 日 厚生労働省保険局「薬価基準改定の概要」より
〔次頁に続く〕
34
●後発医薬品上市後の薬価算定
初めて後発医薬品が上市された新薬、あるいは薬価収載から 15 年を経過した新薬の薬価は、通常改定に加え、それまでに
受けた新薬創出等加算の累積額分が引き下がります。ただし、後発医薬品上市より前の薬価改定時に新薬創出等加算の資格を
得ることができなかった場合には、通常の改定を受けることとなります。
[期待される効果]
新薬創出等加算の試行的導入により、特許期間中の医薬品の薬価の引き下げ額を累積することで、より早く次の開発原資を
得ることができ、研究開発に集中できる環境が整います。特許期間中に前倒しして得た研究開発原資を新たな研究開発のため
に再投資することにより、新薬や未承認薬などの開発が促進され、患者さんや医療関係者のニーズにいち早く応えられるよう
になります。
また、グローバル企業の中には、治験や承認審査に時間がかかる、医薬品の価値が適切に評価された薬価になっていないな
どの理由から、過去には日本国内での開発着手に二の足を踏んでいた企業が少なくありませんでした。近年、
それらの企業にとっ
て、特許期間中の医薬品の薬価の引き下げ額が累積されるという仕組みはきわめて魅力的であり、国際共同試験や世界同時開
発などによって日本での開発着手を早めることにつながっており、ひいてはドラッグ・ラグの短縮化が期待できます。
●今後の課題
新薬創出等加算は、2016(平成 28)年 4 月においても加算率の 0.8 掛けを残しつつ試行継続となりました。一方で、特許
期間終了後は後発医薬品へ置き換えを進めることを前提としているので、一定期間を経ても後発医薬品への適切な置き換えが
図られていない場合の「特例的な引き下げ」
(Z2)についても引き続き実施されています。
2018(平成 30)年 4 月の薬価改定時には、完全な形で制度化して導入されることが期待されています。そのためにも我々
は多くのステークホルダーに対し、新薬創出等加算の導入による研究開発の成果を丁寧に説明し、その成果が患者さんへの大
きなメリットにつながるということの理解を得ていかなければなりません。
まず、国から要請された未承認薬・適応外薬においては、会員各社とも粛々と対応することにより確実に承認を取得し、ドラッ
グ・ラグの解消、ひいては世界標準の治療薬の提供が実現されてきている点を説明していくことが重要です。さらに試行的導
入から一定程度の年月を経ていることから、今後は新薬創出等加算の本来の目的である革新的新薬の創出の成果を示していく
努力が必要です。また、個々の医薬品の価値は市場実勢価格で示されることから、引き続き、単品単価取引を促進するよう流
通面における課題解決も必要です。
このように医薬品を取り巻く環境については、患者さん、国民、医療関係者、保険者などにも丁寧に説明し、医薬品産業の
根幹についての理解を得ていく必要があります。
2-20 改革案移行後のイメージ
販売額
後発医薬品上市
現行制度
薬価制度改革後
収益の前倒し
↓
研究開発への再投資
後発医薬品への代替
時間
●出典:2009 年 12 月 9 日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会資料を参照
〔次頁に続く〕
35
2-21 後発品への置換えが進まない先発品の特例引き下げ
最初の後発品収載から 5 年を経過しても後発品への置換え率 70%未満となる先発品(希少疾病用医薬品等を除く)
について、市場実勢価格に基づく算定値から置換え率により 3 段階に引き下げています。
① 置換え率が 30% 未満のもの 2.00%
② 置換え率が 30% 以上 50% 未満のもの 1.75%
③ 置換え率が 50% 以上 70% 未満の既収載品 1.50%
後発品へ置換えが進まなかった先発品の成分数・品目数
成分数
品目数
引下げ率
内用薬
注射薬
外用薬
合計
2.00%
85
35
43
163
1.75%
130
13
25
168
1.50%
61
32
15
108
合計
276
80
83
439
2.00%
150
119
131
400
1.75%
288
42
61
391
1.50%
165
77
24
266
合計
603
238
216
1,057
●出典:2016(平成 28)年 3 月 4 日 厚生労働省保険局「薬価基準改定の概要」より
2-22 薬価基準収載品目の分類別の品目数及び市場シェア
平成 27 年 9 月薬価調査
(品目数は、2016
(平成 28)
年 4 月時点、数量シェアおよび金額シェアは 2015
(平成 27)
年 9 月調査時の数量、薬価による)
品目数
数量シェア
金額シェア
後発品なし
2,246
18.0%
55.9%
後発品あり(A)
1,583
26.1%
24.9%
後発医薬品(B)
8,555
33.5%
12.4%
その他の品目(局方品、生薬等)
3,541
22.4%
6.8%
先発医薬品
後発品の数量シェア※(新指標)= (B) /〔 (A) + (B) 〕= 56.2%
※
「後発品のさらなる使用促進のためのロードマップ」
(2013 年 4 月厚生労働省)より
注:
「その他品目」とは、局方品、漢方エキス剤、生薬、生物製剤(ワクチン、血液製剤等)及び承認が昭和 42 年以前のものをいう。
●出典:2016
(平成 28)年 3 月 4 日 厚生労働省保険局「薬価基準改定の概要」より
36
Ⅲ 製薬産業
1. 製薬産業の貢献と挑戦
化するために確保した収益により、安定した担税力
医薬品は人のいのちに直接関わるものであり、そ
が期待されています。また、精力的な研究開発活動
の有効性や安全性の確保が不可欠です。こうした医
の過程における産・学・官連携の推進や先端分野へ
薬品の特性から、医薬品医療機器等法をはじめとし
の挑戦などにより、
「科学技術の発展・波及」への
た各種の厳格な法的規制により、さまざまな基準が
貢献も期待されています。
定められており、製薬産業は、他の産業とは異なる
こうした製薬産業としての貢献は、全世界への優れ
性格と使命・役割をもつ産業といえます。
た新薬の展開や数少ない新薬創出国としてのリーダー
私たちの目標は、優れた医薬品の継続的な研究開
シップ発揮など「グローバルヘルスへの寄与」といっ
発と安定的な供給を通して『世界の人々の健康と福
た形で、日本のみならず世界の成長・発展を牽引する
祉の向上に貢献する』ことです。そのために私たち
ものとしても大きな期待が寄せられています。
は、目覚ましい発展を遂げる生命科学に対する真摯
この製薬産業の重要な役割を踏まえて、製薬協で
であくなき探求や、高い倫理性に基づいた企業行動
は、優れた新薬の創製と製薬産業の発展をさまざま
など「生命関連産業としての使命」を果たすととも
な活動を通じてサポートするとともに、医薬品と製
に、多岐にわたる課題の解決に取り組んでいます。
薬産業へのより正しい理解を得るための活動を展開
そして、製薬産業は、患者さんのニーズを踏まえ
しています。
や投資の拡大といった面からの「経済成長への寄与」
た革新的な医薬品の創出による「健康長寿社会の実
現」はもとより、新薬の研究開発活動を維持・活性
3-1 製薬産業の貢献と挑戦
健康長寿社会の実現
○新薬の貢献
○アンメット・メディカル・ニーズへの取り組み
○難病の克服に向けて
○ドラッグ・ラグの解消
科学技術の発展・波及
○産・学・官の協力体制
○先端分野への挑戦
○高度かつ多様な人財の育成・活用
生命関連産業
としての使命
『世界の人々の健康と
福祉の向上への貢献』
グローバルヘルス
への寄与
○全世界への新薬展開
○アジア各国との連携
○新薬創出における日本の役割
○3大感染症と NTDS※
経済成長への寄与
○安定した高水準の担税力
○高付加価値産業としての製薬産業
○研究開発への投資
※ NTDs:Neglected Tropical Diseases
(顧みられない熱帯病)
37
(1)コンプライアンスに関する取り組み
ンプライアンス・プログラム・ガイドライン」を指
製薬協会員会社は、革新的で有用性が高く、よ
針として示し、2011(平成 23)年 3 月には、より時
り安全な医薬品の開発を通じて、わが国のみなら
代の変化に合わせた改定を行いました。
ず世界の人びとの健康と福祉の向上に貢献するこ
このように、製薬協としては、会員会社がより
とを使命としています。このため、会員会社は適
高い倫理性、透明性を確保し、製薬産業全体の信
切な産学連携のもと、研究者、医療関係者、患者
頼を高めることに努めてきたところですが、2012
団体などと相互の信頼関係を構築し、倫理的で患
(平成 24)年 3 月の「IFPMA コード・オブ・プラク
者さんの立場に立った最適な医療が行われるよう
ティス」の発表を機に、これまでの「医療用医薬品
に努めることが求められています。
プロモーションコード」をさらに発展させ、会員会
製薬協は、医療用医薬品のプロモーション活動
社のすべての役員・従業員と、研究者、医療関係者、
にあたって、不適切な処方誘引を招かないよう、
患者団体などとの交流を対象とした「製薬協コー
1976(昭和 51)年「医療用医薬品のプロモーションに
ド・オブ・プラクティス」を 2013(平成 25)年 1 月
関する倫理コード」を策定しました。その後、1993
に策定し、同年 4 月から実施しています。
(平成 5)年 3 月に、国際製薬団体連合会(以下、
さらに、利益相反問題も含め、製薬企業から医
「IFPMA」という)の「IFPMA 医薬品マーケティン
療関係者、医療機関などへの金銭支払いなどにつ
グコード」にも準拠した、より発展した「医療用医
いて情報公開を行い適切な説明責任を果たすため、
薬品プロモーションコード」を策定し、以降法改正
2011(平成 23)年 1 月「企業活動と医療機関等の関
等への対応など数次の改定を行ってきました。
係の透明性ガイドライン」を策定しました。会員会
また、プロモーション活動に限らず企業活動全
社はこのガイドラインに基づく自社の指針により、
般にわたって高い倫理性を確保するため、1997(平
医療関係者、医療機関などの同意のもと、2013(平
成 9)年 11 月「製薬協企業行動憲章」を会員会社の自
成 25)年度から情報公開を始めています。同じく患
Ⅲ-1-(1) 図表32 新薬開発による医療費削減効果
者団体との関係についても 2012
(平成 24)
年 3 月「企
主規範として策定し、2001(平成
13)年 4 月には会
員会社の法令遵守の徹底をより図るため「製薬協コ
業活動と患者団体の関係の透明性ガイドライン」を
3-2 新薬開発による医療費削減効果
免 疫 抑制剤使用による医療費(入院費)削減効果(アメリカ合 衆 国 )
新 規 消 化 性 潰 瘍 薬 を 用 い た 除 菌 療 法 に よ る 医 療 費 削 減 効果
免疫抑制剤使用の有無と医療費
(単位:$1985年価格)
40,000
■ 薬剤費
■ その他入院費
35,000
消化性潰瘍における医療費の比較
(単位:1,000円)
450
■ 従来療法
■ 除菌療法
400
350
30,000
300
25,000
250
20,000
200
15,000
150
10,000
100
5,000
0
50
未使用群
使用群
シクロスポリン使用の有無
●出典:医薬産業政策研究所リサーチペーパー・シリーズ No.20 より
原典は Showstack J.et al.:The New England Journal of Medicine
321:1086-1092.1989
38
0
胃潰瘍
十二指腸潰瘍
医療費:潰瘍治療後5年間の直接医療費
従来療法:ファモチジン
除菌療法:ランソプラゾール十アモキシシリン十クラリス
ロマイシン
●出典:医薬産業政策研究所リサーチペーパー・シリーズ No.20 より
原典は Ikeda S. et al.:Aliment Pharmacol Ther 15:1777-85.2001
策定し、2014(平成 26)年度から情報を公開してい
をはじめとする細菌感染症などの治療薬が開発さ
ます。
れたり、手術が必要とされた胃潰瘍などの疾病を
一方、高血圧症治療薬の臨床研究事案に端を発
投薬だけで治癒できるようにするなど、簡便な治
した、臨床研究への不適切な関与問題に対して、
療法が確立されました。さらに、高血圧症や糖尿
2014(平成 26)年 4 月 22 日には、自社医薬品に関す
病などの慢性疾患をコントロールする医薬品など
る臨床研究に対する支援は、契約により実施する
も開発されました。また、がんやリウマチに従来
こと等の「臨床研究への支援の在り方に関する基本
の治療法と比較して格段の有効性を示す抗体医薬
的考え方」を示し、会員会社へ通知、徹底しました。
が出現しました。抗体医薬は副作用も少ないとさ
またこれらに関連して 2015(平成 27)年度には、
れ、今後はリウマチ以外の自己免疫疾患(異物を排
特にプロモーション印刷物および広告等の資材に
除する免疫が正常な細胞に作用してしまう病気)へ
ついて、会員各社の審査体制をさらに強化するこ
の応用も期待されています。こうした医薬品の進
とや、資材作成における自主基準である作成要領
歩に、医療技術の進展や環境衛生、食生活の改善
の大幅改訂に取り組みました。今後は製薬協とし
などが加わって、日本の平均余命は飛躍的に伸長
ても資材の審査体制強化にも努めていく予定です。
しました。
しかし、医療が進歩した今日でも、がん、アル
(2)医薬品の役割
ツハイマー病など、治療の効果が十分満足できな
人の生命や健康に直接関わる医薬品は、他の商
い疾病も数多く存在します。さらに、人口の高齢
品とは異なる重要な役割を持っています。医薬品
化が進むと同時に、複雑化する社会や生活環境に
を含めた医療技術の進歩は、医療の質の向上とと
よるストレスを起因とする疾病も増加する傾向に
もに、医療費の抑制にも貢献しており、技術の進
あります。このような疾病に対する画期的な治療
歩は医療経済や人々の生活に多くの恩恵をもたら
薬が開発され、診療の場に一日も早く提供される
します。
ことが望まれています。
その中心となるのが、製薬産業による優れた新
同様に開発が期待されているものにオーファン・
薬の開発です。優れた医薬品が登場することで、
ドラッグ(希少疾病用医薬品)があります。代替医
治療成績の向上はもちろんのこと、入院日数・治
薬品や治療法がないなど、医療上の必要性が高い
療日数の短縮、QOL の向上、さらには病気の予防
にもかかわらず、患者数が少ないことからその治
や再発の抑制などに大きな効果が期待できます。
療に関する研究が十分に進んでいない疾患の治療
図 3-2 は、新薬の開発が医療費の大幅な削減効果
薬のことです。製薬産業では社会的使命から、オー
をもたらした代表的な例です。ほかにも、アルツ
ファン・ドラッグの研究開発を振興する公的援助
ハイマー病の新薬が介護費用を軽減した事例など
制度のもと、希少疾病に苦しむ患者さんのための
が報告されています。いずれも医療の質の向上の
医薬品開発に取り組んでいます。
みならず、医療経済面での貢献をもたらした事例
また、近年のヒト遺伝子塩基配列の解読で得ら
といえます。
れた遺伝子情報をもとに、ヒト遺伝暗号の意味や
新薬は、数多くの疾患において、患者さんの負
その役割に関する研究が世界的に進められていま
担を軽減させるとともに、医療費抑制の一翼を担
す。このことにより、これまで原因不明だった病
います。また、いまだに治療法の確立されていな
気の発生や進行のメカニズムが解明される可能性
い多くの疾患に対する新薬の開発は、医療を大き
が高く、社会的にも大きな期待を集めています。
く向上させる可能性を秘めています。
新たに解明された遺伝子の働きや病気の発生メ
*
カニズムからヒントを得て、これを応用する治療
(3)医薬品の進歩
薬の研究を「ゲノム創薬」と呼びます。ゲノム創
医薬品は 20 世紀後半から著しい進歩を遂げ、多
薬は明確な効果を示す治療薬のなかった病気や、
くの病気から患者さんを救うために医療の場で役
対症療法に頼らざるを得なかった病気などに有効
立ってきました。
で、画期的な治療薬を創出することを目標に研究
たとえば、治療法もなく死亡率の高かった結核
が行われています。
39
また、個人の遺伝子情報に基づいた治療も検討
されています。これは「オーダーメード医療」の
ひとつで、患者さんの遺伝子の情報をもとに患者
さんに合った治療薬や、その投与量などを決める
ものです。
◆アンメット・メディカル・ニーズ◆
アンメット・メディカル・ニーズとは、いまだ満たされていない医療ニーズ、つまり、いまだ有効な治療方法がない医療ニー
ズのことです。医療技術が発達し、革新的な新薬が創出される現代においても、十分に満たされていない医療ニーズは数多く存
在します。
次の図は、各種疾患の治療の満足度と医薬品の貢献度について医師にアンケート調査を行い、満たされていない医療ニーズを
明らかにしたものです。全体として、医薬品の貢献度が高い疾患では、治療の満足度も高い傾向にあり、アンメット・メディカル・
ニーズと医薬品の貢献度は密接な関係にあることがわかります。
2005
(平成 17)
年度と 2014
(平成 26)
年度を比較すると、2014
(平成 26)
年度は全体が右上に移動しており、治療の満足
度・薬剤の貢献度とも向上していることがわかります。かつては左下に位置していた、HIV・エイズや慢性 C 型肝炎などの疾患
もかなり改善されています。
アンメット・メディカル・ニーズに応えるためには、革新的な新薬の創出による治療の満足度の向上と、すべての医薬品の安
定供給を通じた国民の健康増進への貢献が欠かせません。そのため製薬産業が担う役割はきわめて重要であるといえます。
3-3 治療満足度と薬剤の貢献度の相関図
2005 年度
100%
90%
高尿酸血症・痛風 ◆
◆
80%
治療に対する薬剤の貢献度
アレルギー性鼻炎
てんかん◆
70%
◆
60%
慢性C型肝炎
◆
◆
50%
心不全
◆不安神経症
◆機能性胃腸症
◆ 白血病
◆慢性B型肝炎
◆ 関節リウマチ
パーキンソン病
MRSA
脳梗塞 IBS/過敏性腸症候群 子宮内膜症
◆
◆
◆ ◆ SLE ◆骨粗鬆症
◆◆
IBD/炎症性腸疾患
◆
アトピー性皮膚炎
◆ 乾癬
◆
COPD/慢性閉塞性肺疾患 ◆
HIV・エイズ◆
30%
多発性硬化症
◆
糖尿病性神経障害 ◆
血管性認知症◆
◆
0%
0%
◆
糖尿病性腎症
前立腺癌
◆
◆
脳出血(含くも膜下出血)
◆ 変形性関節症
◆
腹圧性尿失禁
◆ 肺癌
◆
睡眠時無呼吸症候群
◆
◆ 乳癌
過活動膀胱症候群
胃癌 ◆
大腸癌
◆ 肝癌
10%
20%
30%
40%
50%
治療の満足度
〔次頁に続く〕
◆
糖尿病性網膜症
アルツハイマー病
40
◆
緑内障
統合失調症
40%
10%
◆
◆ 喘息
◆
◆ 心筋梗塞
◆ 不整脈
◆ 前立腺肥大症
うつ病
20%
◆糖尿病
◆
◆高血圧症
脂質異常症
60%
70%
80%
90%
100%
2014 年度
100%
IBD/炎症性腸疾患
脂質異常症
慢性C型肝炎 ◆
関節リウマチ
90%
◆
アトピー性皮膚炎
治療に対する薬剤の貢献度
80%
統合失調症
◆
60%
◆ 糖尿病性腎症
◆
糖尿病性神経障害
50%
血管性認知症
◆ ◆
MRSA
◆
◆
◆ 高尿酸血症・痛風
◆慢性B型肝炎 ◆ ◆
◆
◆ ◆不整脈 喘息
心不全 ◆
◆糖尿病
前立腺癌◆ 前立腺肥大症
HIV・エイズ
◆
◆◆骨粗鬆症
◆
乳癌
過活動膀胱症候群 ◆ てんかん
◆ ◆ 脳梗塞
◆
胃癌 ◆
IBS/過敏性腸症候群
COPD/
◆
◆
◆
パーキンソン病 慢性閉塞性肺疾患 子宮内膜症◆◆
大腸癌
機能性胃腸症
脳出血(含くも膜下出血)◆ ◆ 肝癌
不安神経症
SLE ◆◆ ◆
うつ病◆ ◆ 乾癬
肺癌 ◆
70%
白血病 ◆
◆ 緑内障
アレルギー性鼻炎
◆
腹圧性尿失禁
◆糖尿病性網膜症
◆ 多発性硬化症
高血圧症 ◆
心筋梗塞
◆変形性関節症
◆ 睡眠時無呼吸症候群
アルツハイマー病
40%
30%
20%
10%
0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
治療の満足度
注:疾患は 2005 年度と 2014 年度のデータより一部抽出。
●出典:公益財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団、平成 26 年度 (2014 年度 ) 国内基盤技術調査報告書
「60 疾患の医療ニーズ調査と新たな医
療ニーズ」
より一部改変。
◆オーファン・ドラッグ◆
オーファン・ドラッグは、希少疾病用医薬品とも呼ばれ、難病といわれるような患者数が少なく治療法も確立されていない病
気に使うくすりのことです。
患者数が少ない病気であっても、くすりの重要性に変わりはありません。一方、研究開発の現実面からみると、くすりとして
の有効性がある程度判明していても、患者数が少ないオーファン・ドラッグは需要が少ないため、莫大な費用をかけにくく、本
格的な開発が進まない傾向が世界的にありました。このような課題を解決するために、1970 ~ 1980 年代にかけて、先進
諸国を中心にオーファン・ドラッグの研究開発に対する公的援助制度を作る動きがみられるようになり、アメリカ合衆国では
1983 年にオーファン・ドラッグ法が制定されました。
日本では、1979
(昭和 54)
年に難病に対する新薬研究開発事業がスタートし、1985
(昭和 60)
年には承認審査の簡素化、さ
らに 1993
(平成 5)
年の薬事法の改正によってオーファン・ドラッグに対する本格的な公的研究開発援助制度が始まりました。
オーファン・ドラッグに指定されると、研究開発のための助成金が交付されるほか、他のくすりに優先して承認審査が行われ
るなど、各種の措置が受けられます。こうした制度上の支援策により、従来よりもオーファン・ドラッグの研究開発が行いやす
くなり、患者さんの数が日本全国でわずか数人程度の難病のくすりも開発されるようになりました。現在、指定されている品目
数はおおよそ 320、製造販売承認を受けた品目数はおおよそ 240 あります。
オーファン・ドラッグの指定基準
①対象患者数が 5 万人未満(アメリカ合衆国の場合、
20 万人未満)
⑤既存の医薬品と比較して、著しく高い有効性、また
は安全性が期待される
②難病などの重篤な疾病が対象
⑥開発の可能性が高いこと
③医療上の必要性が高い
⑦開発コストが販売から回収される見込みがない(ア
メリカ合衆国の場合)
④代替する適切な医薬品や治療方法がない
41
(4)国際貢献 / グローバルヘルス
先進国を問わず国境を越えて健康格差を是正しよ
病に国境はないといわれます。エボラ出血熱、
うとする考え方」をグローバルヘルスと呼び、世
デング熱、MERS(中東呼吸器症候群)など、日本
界各国の政府、業界、学会、NGO/NPO が協力し、
でも問題になった感染症や、先進諸国でも問題と
解決しようとしています。
なっている薬剤耐性菌問題は、一地域だけの問題
ではありません。また、地球上には医薬品を含む
●感染性疾患
医療へのアクセスが十分でない地域も存在してお
WHO によると、HIV/ エイズ、結核、マラリア、
り、これら地域での保健医療の改善を目指すグロー
並びに NTDs(Neglected Tropical Diseases)は世界
バルヘルスへの取り組みは、世界各国ならびに国
で 10 億人を超える患者さんがいると推測されてお
際機関などで重要課題となっています。
り、その多くが発展途上国あるいは貧困層に集中
「地球規模で存在する保健医療問題についてその
しています。特に、これら感染症は貧困層で蔓延
実態を明らかにして解決方法を探り、開発途上国、
していく一方、多くの国や地域で貧困の原因とも
◆抗体医薬◆
私たちの体内に病原菌などの異物(抗原)が侵入すると、その異物と特異的に結合する「抗体」が作られ、異物を無毒化したり、
体外に排除して病気を防ぎます。これは「抗原抗体反応」と呼ばれ、人にもともと備わっている働きです。抗体医薬はこの仕組み
を利用した医薬品のことで、抗体を人工的に作り出して体内に注入し、治療を行います。抗体は特定のたんぱく質の作用をブロッ
クしたり、取り除く作用があります。この抗体作製技術は 1975(昭和 50)年に開発されました。当初はマウスの抗体で、医薬
品としては不都合でしたが、マウスとヒトの混合型やヒト型の抗体が開発されたことにより商品化されました。
抗体医薬は、遺伝子組換え技術や培養細胞などの技術を利用して作られます。疾患に関する特定の標的にだけ作用するため、
従来の治療法よりも有効性が高く、副作用も少ないとされています。
がんに対する作用は、がん細胞の表面にある特異的なたんぱく質に対して抗体医薬が攻撃するもので、非ホジキンリンパ腫、
乳がん、大腸がん、頭頸部がんの特定たんぱく質に対するものなどが多くのがん抗原に対して有効です。また、大腸がんの血管
新生を抑えて腫瘍の増殖や転移を抑えるものもあります。
リウマチは関節の痛み・腫れ・変形などを引き起こす自己免疫疾患(異物を排除する免疫が正常な細胞に作用してしまう病気)
のひとつです。抗体医薬としてのリウマチ薬については、製薬企業各社が抗体医薬の研究開発・提供への取り組みを推進して、
従来のリウマチ薬では不十分だった病気の進行を食い止める働きが飛躍的に向上してきました。
これまで世界の製薬業界では、感染症治療薬、胃潰瘍治療薬などのほか、高血圧症や高脂血症など生活習慣病の医薬品が開発
され、多大な成果をあげてきました。これらの医薬品に加えて、今後は抗体医薬を中心としたバイオ医薬により、いまだ治療方
法が確立されていない病気に対する効果が期待されています。
◆分子標的薬◆
分子標的薬は、病気の細胞(がん細胞など)の増殖や転移に関わるたんぱく質などの分子をターゲットとして、効率よく攻撃す
るくすりとして注目されています。
従来はがん細胞を死滅させる作用によって治療の効果を得てきましたが、がんに関する研究が進み、がん細胞が増殖や転移を
するのは異常な遺伝子からできた物質に起因することがわかってきました。これらの物質の働きを抑制することができれば、が
ん細胞の増殖や転移が抑えられるはずです。こうした考え方から誕生したのが分子標的薬です。
分子生物学によって解明された遺伝子情報を活用して開発されたもので、抗がん剤の多くが、がん細胞だけでなく正常な細胞
も損傷させ副作用を発現させることもあるのに対し、分子標的薬はゲノム・分子レベルでがん細胞の特徴を認識し、がん細胞の
増殖や転移を行う特定の分子だけを狙い撃ちにするので、正常な細胞へのダメージが少なくなっています。副作用がまったくな
いわけではありませんが、従来の抗がん剤に比べて副作用は著しく低いとされ、患者さんの負担がより少なくなると期待されて
います。
現在では、イマチニブ(慢性骨髄性白血病)のほか、トラスツズマブ(乳がん)
、ゲフィチニブ(肺がん)など、70 種類以上のが
んに対する分子標的薬が使用されています。
こうしたくすりの利用が進めば、従来は入院が必要とされるケースでも、通院治療や在宅治療ができるようになるため、患者
さんが高い QOL を保ちながら治療を続けることができるようになります。
42
なっています。この貧困と感染症の負の連鎖を断
●新薬開発
ち切ることは、感染流行国の経済成長とともに世
日本の製薬企業における新薬創製数は世界 3 位
界情勢の安定化に必要です。これらの課題解決の
で、グローバルヘルス改善に対する新薬創製に期
ためには、感染流行国における保健医療システム
待がかかります。しかし、画期的な新薬の創製は
や医療保険制度などの医療基盤の強化、必要な医
非常に難しく、その成功確率も非常に低くなって
薬品・ワクチンを確実に患者さんに届けるための
おり、開発途上国の貧困層で蔓延している疾患の
流通システムの整備、さらにはこれらの疾患を対
新薬開発は進んでいるとはいえません。この課題
象とする新薬・ワクチンの創出を加速させる環境
に取り組むためには、時間とコストの問題のみな
整備など、さまざまな対策が求められます。これ
らず、新薬創出を加速させる環境整備や新薬開発
らを推進するにあたり、製薬産業を含めた官民パー
のためのパートナーシップへの参画などの活動が
トナーシップをはじめ、世界の保健医療の改善に
必要であると思われます。
携わるあらゆるステークホルダーの協働を通じた
柔軟な対応が求められています。
(5)患者参加型医療
日本においても、発展途上国が抱えているこの
2003(平成 15)年に福岡で開催された第 26 回日本
ような問題を官民の連携により主導的に解決して
医学会総会で「21 世紀にめざす理想の医療は、心を
いこうと動き出しています。
持った人間を見失うことのない、生命の尊重と個
人の尊厳に基づく患者中心の医療である」と謳った
● NCDs(非感染性疾患)
「福岡宣言」が採択されました。その背景にあるの
感 染 性 疾 患 の み な ら ず、 非 感 染 性 疾 患(Non-
は、これまでの「おまかせ」医療から患者さん本位
Communicable Diseases/NCDs)もグローバルヘス
の「選択できる」医療の実現に向けて、医療提供者、
の対象疾患です。2013(平成 25)年 5 月に国連およ
国民がともに努力しなければならない、という考
び世界保健機関(WHO)が「NCDs の予防と管理に関
え方です。
するグローバル戦略の 2013 年~ 2020 年行動計画」
製薬協では「患者参加型医療の実現」を事業計
を発表しました。2013 年~ 2020 年行動計画は、4
画に掲げ、
「福岡宣言」の実現に寄与していくよう
つの NCDs(循環器疾患・がん・糖尿病・慢性呼吸
努めています。
器疾患)および 4 つの行動リスク要因(煙草・不健
そのためには、医師をはじめとする医療提供者
康な食生活・運動不足・過度の飲酒)を取り上げて
には、患者さんが自ら治療方法の選択や判断をす
います。
るための情報をわかりやすく伝えることが求めら
発展途上国においては、公的医療保険制度や医
れます。その情報とは、
①診断の結果、
明らかになっ
療インフラの未整備、医薬品の製造・品質管理に
た病名、②治療の方法とその成功確率、リスクの
関わる人材不足、偽造医薬品 の横行、貧困など、
程度、予後に及ぼす影響、③他の治療方法を選択
さまざまな要因により医薬品へのアクセスが阻害
する可能性とその内容、などがあげられます。
されています。
患者さんが医師と対等な関係のなかで、十分な
*
◆コンパニオン診断薬◆
コンパニオン診断薬とは、くすりの使用に際して、くすりの有効性や副作用の個人差を予測し、最適な投薬を補助することを
目的として用いられる体外診断薬です。くすりとセットで使われることから、こう呼ばれています。
くすりのベネフィットがもっとも期待される患者さんを特定するもの、くすりの重篤な有害事象のリスクが大きい患者さんを
特定するもの、あるいは治療の最適化のために反応性をモニターするもの、などがあり、主にがん領域を中心に開発が進められ
ています。
国内では、すでにいくつかのコンパニオン診断薬が承認済みです。乳がん治療薬のトラスツズマブは HER2 タンパクが過剰発
現している患者さんに有効であり、結腸・直腸がん治療薬のセツキシマブは KRAS 遺伝子に変異がある患者さんには効果が低い
とされているため、がん細胞に HER2 タンパクが過剰発現しているかをチェックする診断薬や、KRAS 遺伝子に変異があるか
を調べる診断薬が実用化されています。
43
説 明 を 聞 き、 納 得して治療を受けるというイン
フォームド・コンセントの概念は、このような考
え方に基づいています。
患者参加型医療の実現に向けて、製薬産業では
医薬品に対する患者さんの関心の高まりとともに、
医薬品の有効性や安全性に関してより詳しい情報
を求める声に応える必要性が増しています。これ
までは、医療用医薬品は医療提供者により患者さ
んに提供されることが原則であり、一般国民に対
する医療用医薬品の広告については、旧薬事法お
よび医薬品等適正広告基準で制限されていたこと
もあって、製薬企業が直接患者さんに提供するこ
とはほとんどありませんでした。
しかし、現在ではインターネットを通じて容易
に医薬品情報を入手できるようになっています。
それだけに製薬企業自らが、わかりやすく信頼で
きる医薬品の適正使用についての情報を医療従事
者に提供することが従来にも増して強く求められ
ています。なお、旧薬事法に代わる医薬品医療機
器等法においても、同様に広告の規制はされてい
ます。
製薬協は、患者参加型医療の実現に向けて製薬
企業による医薬品の適正使用情報提供のあり方に
ついて、患者団体などの意見を踏まえ検討してい
きたいと考えています。引き続き、患者団体など
を対象に、患者団体活動に役立つ情報提供のため
のセミナーを実施するなど、患者団体とのより良
い協働のあり方を求め、コミュニケーション活動
を積極的に展開しています。また、製薬協のウェ
ブサイトには、医療用医薬品に関するさまざまな
情報をはじめ、医薬品の研究・開発に関する情報
を掲載し、患者さんはもちろん、広く一般に対して、
医療用医薬品に関する理解をより深めていただく
ための情報提供に努めています。
44
2. 日本の製薬産業の概況
製薬産業は、わが国で今後も成長が期待できる
数少ない産業のひとつであり、納税の面でも多大
な貢献をしています。
しかしながら、日本の製薬産業を取り巻く経営
環境は一段と厳しくなってきています。
国内における医薬品市場の伸びは世界の伸びと
比較すると鈍化傾向にあります。その状況下でジェ
ネリック医薬品のシェアは国による使用拡大策な
どもあり、急速に拡大しています。
また、グローバル化、業界再編、新薬開発コス
トの増大などダイナミックにかつ目まぐるしく変
化しています。
世界の医薬品市場に目を向けると、従来、医薬
品市場を牽引していたアメリカ合衆国の成長率が
鈍化しています。一方、中国、インドなど新興国
での成長には著しいものが見られています。
そのなかにあって、日本の製薬産業は、厳しい
環境変化に対応するのはもちろん、世界に誇るこ
とのできる技術力・新薬創出力をさらに強化し、
(1)製薬産業の現状
日本の製薬企業で、研究開発志向型製薬企業で
ある製薬協会員会社は 2016(平成 28)年4月現在 73
社です。
現在日本では、医療保険制度を維持するために、
製薬産業は現状の政策・制度のもと厳しい規制を
受けています。製薬産業を取り巻く環境変化とし
ては、①バイオ・ゲノムなど科学技術の進歩によ
る新薬開発の世界的競争激化と研究開発費の高騰、
②国際的な規制の整合性確保のための薬事制度の
整備、③市販後対策の高度化、④医療費抑制のた
めの継続的な薬価引き下げなど、多様なことがあ
げられます。
そのため製薬企業は、研究開発への一層の注力
による革新的な新薬の創製や高品質の医薬品の安
定供給、信頼性の高い学術情報の収集・提供に努
力しています。さらに、国際市場においても海外
企業と対等に戦える研究開発力と経営基盤の確立
を目指した積極的な海外事業の展開を進めており、
国際的に通用する医薬品も次々と生み出されて
います。
より一層の研究開発の進展と新薬開発の促進を目
指しています。
3-4 世界売上ランク 100 位に占める日本オリジンの製品(2014)
順 位
製 品
10 クレストール
12 エビリファイ
31 ベルケイド 注 1
34 ジレニア
38 オルメテック / ベニカー
60 リュープリン / ルプロン
61 タルセバ 注 2
63 プログラフ
68 アクテムラ
72 ブロプレス / アタカンド
●出典:ユート・ブレーン事業部発行「Phama Future」2015 年 5 月号を
もとに医薬産業政策研究所にて作成
注1:Millennium Pharmaceuticals, Inc
(ミレニアム社、現武田薬品工業 子会社)
. が創製し、ミレニアム社と J&J グループとの共同開発品。
国内では、武田薬品工業とヤンセンファーマの共同販促。
注2:OSI Pharmaceuticals, LLC
(現アステラス製薬)
が創製し、 Genentech 社
(現 Roche 子会社)
との共同開発品。
国内では、中外製薬が販売。
45
(2)医薬品の生産額
た。日本市場も成長しているものの、かつての北
現在、日本の製薬産業の生産額は、上位3位の
米市場に次ぐ第 2 位の位置から、2014(平成 26)年
一角を占めています。2014(平成 26)年の医薬品生
は中国市場に追い越されて第 3 位の市場規模となっ
産額は 6 兆 5,898 億円で、うち医療用医薬品は 5 兆
ています。また、
2014
(平成 26)
年のシェアは 2000(平
8,689 億円にのぼり、全体の 89.1%と大きなウェイ
成 12)年の約半分です。たび重なる薬価引き下げな
トを占めています。
どで、グローバル市場から見ても日本の医薬品市
それだけに、薬価引き下げは日本の医薬品全体
場の成長は抑制されてきていることがわかります。
の生産額に大きな影響を与えます。とくに近年は、
(3)研究開発費
少子高齢化や経済の低成長への移行などを背景に、
持続的・安定的な医療保険制度への改革が進めら
製薬産業の特徴のひとつとして、他産業に比べ
れており、医療費抑制策、とりわけ薬価改定によ
て研究開発費の占める割合が大きい点があげられ
る継続的な薬価引き下げが原則として 2 年ごとに
ます。
実施されてきました。この影響を受けて、近年の
売上高に占める研究開発費の割合をみると、図
医薬品の生産額は低調な伸長率で推移しています。
3-7 にあるように医薬品産業は 12.21%と、全産業
一方、世界の医薬品市場を見てみると、図 3-6 に
の平均 3.28%の約 4 倍に達し、他の産業に比べて
あるように、2000(平成 12)年から 2014(平成 26)年
際立って高くなっています。さらに製薬企業の大
までの 14 年間でおよそ 3 倍もの規模に成長しまし
手 10 社の研究開発費比率は 18.9%にもおよび、製
3-5 医薬品生産額の推移
生産額合計
医療用医薬品
一般用医薬品
金額
(百万円)
伸び率 構成比
(%) (%)
金額
(百万円)
伸び率 構成比
(%) (%)
金額
(百万円)
伸び率 構成比
(%) (%)
金額
(百万円)
伸び率 構成比
(%) (%)
2000(平成 12)
5,927,321
- 1.9 100
5,127,818
- 1.4 86.5
745,377
-4.9 12.6
54,126
- 8.0
0.9
2001(平成 13)
6,195,362
4.5 100
5,425,860
5.8 87.6
715,461
-4.0 11.5
54,042
- 0.2
0.9
2002(平成 14)
6,144,801
- 0.8 100
5,391,257
- 0.6 87.7
701,839
-1.9 11.4
51,706
- 4.3
0.8
2003(平成 15)
6,173,374
0.5 100
5,458,948
1.3 88.4
666,865
-5.0 10.8
47,561
- 8.0
0.8
2004(平成 16)
6,121,169
- 0.8 100
5,440,184
- 0.3 88.9
636,758
-4.5 10.4
44,226
- 7.0
0.7
2005(平成 17)
6,390,722
4.4 100
5,741,280
5.5 89.8
611,492
-4.0
9.6
37,951
- 14.2
0.6
2006(平成 18)
6,438,082
0.7 100
5,803,581
1.1 90.1
599,259
-2.0
9.3
35,243
- 7.1
0.5
2007(平成 19)
6,452,166
0.2 100
5,828,086
0.4 90.3
592,963
-1.1
9.2
31,117
- 11.7
0.5
2008(平成 20)
6,620,091
2.6 100
5,992,765
2.8 90.5
598,438
0.9
9.0
28,889
- 7.2
0.4
2009(平成 21)
6,819,589
3.0 100
6,174,202
3.0 90.5
616,601
3.0
9.0
28,786
- 0.4
0.4
2010(平成 22)
6,779,099
- 0.6 100
6,148,876
- 0.4 90.7
602,193
-2.3
8.9
28,030
- 2.6
0.4
2011(平成 23)
6,987,367
3.1 100
6,344,512
3.2 90.8
617,231
2.5
8.8
25,624
-8.6
0.4
2012(平成 24)
6,976,712
-0.2 100
6,263,010
-1.3 89.8
689,018
11.6
9.9
24,684
-3.7
0.4
2013(平成 25)
6,894,014
-1.2 100
6,193,983
-1.1 89.8
677,407
-1.7
9.8
22,624
-8.3
0.3
2014(平成 26)
6,589,762
-4.4 100
5,868,927
-5.2 89.1
700,376
3.4 10.6
20,459
-9.6
0.3
注:平成 17 年から生産および輸入の定義が変更されたが、同一条件での比較のため平成 16 年以前についても平成 17 年の定義で表記。
●出典:厚生労働省 「薬事工業生産動態統計調査」
46
配置用家庭薬
年
(4)製薬産業の将来展望
薬産業は、あらゆる産業のなかでトップクラスの
研究開発投資を行っていることがわかります。
さまざまな環境変化にさらされながらも、製薬
個々の企業に目を移すと、優れた新薬の開発に
産業は日本の経済成長を牽引し、科学技術の発展
成功した企業は業績を上げ、反対に研究開発(R&D)
に貢献する産業として期待されています。ここで
が進んでいない企業の業績は低迷する傾向にある
はこの 3 ~ 4 年の間に公表されたビジョン等に関
ようです。このように製薬産業は研究開発の成功
係するものを紹介します。
が鍵となっており、優れた医薬品が継続して創出
2013(平成 25)年 6 月、厚生労働省は「医薬品産業
されるためには、研究開発への投資が今後ますま
ビジョン 2013」
を公表しました。
「医薬品産業ビジョ
す重要になるでしょう。
ン 2013」では、資源の乏しい日本において、国家の
成長のためには知識集約型高付加価値産業の育成
が必要で、その筆頭に位置づけられるのが製薬産
3-6 世界の医薬品市場規模
2000年
3,577億ドル
▼
2014年
10,572億ドル
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
(億ドル)
世界の医薬品市場シェアの推移
2000年
2014年
北米
44.0%
▼
38.1%
中国
1.4%
▼
10.3%
日本
16.2%
▼
8.3%
ドイツ
4.7%
▼
4.6%
フランス
4.7%
▼
3.6%
イタリア
3.1%
▼
2.7%
イギリス
3.1%
▼
2.7%
その他
22.9%
▼
29.6%
※数値は、
上記グラフの各年における市場価格の総計を100%とした場合のシェア
●出典:©2016 IMS Health. IMS World Review Analyst 2005,2015 をもとに医薬産業政策研究所にて作成 ( 転写・複製禁止 )
3-7 産業別研究開発費の対売上高比率
(2014)
医薬品
医薬品
12..21
12
12.21
機械器
械器具
具
業務用機械器具
8
.77
.7
7
8.77
機械器
械器具
具
情報通信機械器具
6
.26
6.26
機械器具
電気機械器具
6.01
6.01
電子部品・デバイス・電
電子回路
子回路
子回
路
5.34
5.34
機械器
械器具
具
輸送用機械器具
5.08
5.08
造業平
業平均
均
製造業平均
4.11
4.11
ゴム製品
ゴム製品
3.94
3.94
機械器
械器具
具
生産用機械器具
3
.53
3.53
3.28
産業平均
全産業平均
(特殊法人・独立法人、
独立法人、
業を除く) 0
金融・保険業を除く)
3
6
社の平
の平均
均
製薬企業大手10社の平均
9
12
15
18
21
(%)
18.90
18.90
●出典:総務省「科学技術研究調査報告」、日本製薬工業協会調べ
47
業であるという点が強調されています。具体的に
形で日本医療研究開発機構(AMED)が設立されま
は、
「資源が乏しいわが国にとっては、知恵と知識、
した。新薬創出競争力を一層強化するためには、
ものづくりを活かした産業を活性化していかなけ
ライフサイエンス予算の拡充と戦略的・重点的配
れば経済国家として成り立たなくなる。医薬品産
分を行うとともに、科学技術政策についての司令
業は、付加価値の高い製品を製造する産業であり、
塔機能を強化することが必要と考えられていまし
まさにこれに応えられる産業である」としています。
た。我々産業界側からも要望していた、この医療
このようななか、2015(平成 27)年 4 月には先行
分野の研究開発の司令塔機能(いわゆる日本版 NIH
していた創薬支援ネットワーク機能を取り込んだ
といわれていたもの)
の設置が実現したものです。
◆「日本再興戦略(成長戦略)
」と製薬産業◆
2013(平成 25)年 6 月 24 日「日本再興戦略(成長戦略)
」が閣議決定され、さらにこの中で重点分野と位置づけられた健康医療
分野については、閣議決定に準じる形で「健康・医療戦略」
(関係大臣申し合わせ)としてまとめられました。
「日本再興戦略」につい
て、安倍政権は日本経済の再生に向け、①大胆な金融政策、②機動的な財政出動、③民間投資を喚起する成長戦略 という 3 つ
の政策を「三本の矢」として同時展開し、常に進化する成長戦略を展開していくとしています。この再興戦略の下、健康・医療分野
の成長戦略の具体的な中身は
「健康・医療戦略」
に盛り込まれています。
この戦略は、安倍政権が 2013(平成 25)年 2 月 22 日に内閣官房長官の下に健康・医療戦略室を設けて検討が開始され、連
携する各会議(経済財政諮問会議や規制改革会議など)とも調整しながら取りまとめたものです。その後 2013(平成 25)年 8 月
に内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部が設置され、これに政策的助言を行う「健康・医療戦略参与」や専門的・技
術的助言を行う「医療分野の研究開発に関する専門調査会」が協働して「医療分野の研究開発に関する総合戦略」が 2014(平成 26)
年 1 月に策定されました。
これら一連の戦略の中で、医薬品業界は成長産業として期待されています。すでに着手されている施策もありますが、これから
本格的に実施される施策も多いことから、業界としても各種施策の進展を注視していく必要があります。
なお、
「健康・医療戦略」の基本的理念としては、以下の3つのものがあげられています。
●健康長寿社会の実現:社会保障と財政の持続可能性を確保するなかで、健康長寿社会を実現し、活力ある社会を構築する。
●経済成長への寄与 :医療関連産業を活性化し、わが国経済の成長に寄与する。
●世界への貢献 :課題解決先進国として、超高齢化社会を乗り越えるモデルを世界に広げる。
また、
「健康・医療戦略」の取りまとめにあたっては、日本経済再生本部の産業競争力会議における日本再興戦略策定作業とも
連携し、主要事項については、
「日本再興戦略(成長戦略)
」と「健康・医療戦略」の双方に掲げられています。 *
特に、●医療分野の研究開発の司令塔機能(日本版 NIH)の創設、●医療の国際展開、●健康寿命延伸サービスの創出、●健康・
医療分野における ICT の利活用の推進、の 4 項目については産業競争力会議に官房長官から報告された主要事項です。このうち、
司令塔機能の創設については、上記「医療分野の研究開発に関する総合戦略」に基づく一元的な研究管理・環境整備を行う独立行政
法人日本医療研究開発推進機構法案が 2014(平成 26)年に可決・成立し、2015(平成 27)年 4 月 1 日に「国立研究開発法人日
本医療研究開発機構
(AMED)
」
が発足しました。
「健康・医療戦略」の各論は多岐にわたりますが、このうち医薬品産業に直接関係すると思われるものとして、①日本の官民の力
の再編成による新技術の創出(研究開発、実用化)目標への挑戦、②オールジャパンの医薬品・医療機器開発支援体制の整備、③臨
床研究・治験実施体制の充実、④民間企業の国際競争力、研究開発力の抜本的向上、⑤人的資源の活用、人材育成、⑥規制・ルー
ルの見直し、⑦イノベーションの適切な評価、⑧ ICT・デジタル技術、⑨医療技術・サービスの国際展開 といった項目があげら
れます。
「健康・医療戦略」
の上位に位置する
「日本再興戦略
(成長戦略)
」
では、医薬品、医療機器、再生医療の医療関連産業の市場規模を、
2020(平成 32)年に 16 兆円(現状 12 兆円)に拡大するとも記載され、主たる事項として、日本版 NIH、最先端医療迅速評価制
度、OTC インターネット販売、NDB
(ナショナルデータベース)
の積極的推進、PMDA の体制の質量両面の強化、などがあげられ、
2016(平成 28)年時点では日本版 NIH といわれていた AMED の発足や OTC インターネット販売など実現している施策も見ら
れます。なお、
「日本再興戦略(成長戦略)
」
(
「健康・医療戦略」
)策定に呼応する形で、2013(平成 25)年 6 月 26 日に厚生労働省
から新たな医薬品産業ビジョンも公表されています。また、2016(平成 28)年 1 月には製薬協も「産業ビジョン2025」を発表
しました。
製薬企業としては、AMED に移管された創薬支援ネットワークからのシーズをいち早く医薬品開発に結びづけることや、iPS
細胞を活用した難病研究など、国民にとって真に医療の進歩につながる具体的成果が望まれており、業界全体で尽力していくこと
が期待されています。
48
その後間もなく 2015(平成 27)年 6 月に決定され
発の費用は高騰する一方、日本企業の規模は小さ
た「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる骨太
いこと、
(3)多くの大手製薬企業が長期収載品に
の方針には、「臨床上の必要性が高く将来にわたり
収益を依存しており、転換が急務であること、
(4)
継続的に製造販売されることが求められる基礎的
基礎的医薬品は、度重なる薬価改定で一部につい
な医薬品の安定供給、成長戦略に資する創薬に係
て採算が悪化、安定供給策が必要であること、
(5)
るイノベーションの推進、真に有効な新薬の適正
後発医薬品市場は、経営規模が小さい企業が多数
な評価等を通じた医薬品産業の国際競争力強化に
存在し体質強化が課題であること、との医薬品業
向けた必要な措置を検討する」ことが盛り込まれ、
界全体を見渡した認識が示されました。総合戦略
これを受けて 2015(平成 27)年 9 月に厚生労働省に
の具体的中身としては Ⅰ、イノベーションの推
より「医薬品産業強化総合戦略~グローバル展開を
進として、①臨床研究・治験活性化等、②産学官
見据えた創薬~」が策定される目まぐるしい経過を
の連携強化(大学発優れたシーズの実用化)、③イ
たどりました。
ノベーションの評価、があげられ、Ⅱ、質の高い
この総合戦略は「後発医薬品 80% 時代において、
効率的な医療の実現として、①基礎的医薬品等の
“国民への良質な医薬品の安定供給”
“医療費の効率
安定供給の確保、②後発医薬品の使用の加速化、
化”
“産業の競争力強化”を三位一体で実現するため
③流通の安定化・近代化があげられ、Ⅲ、グロー
の医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中
バルな視点での政策の再構築として、①国際支援、
実施的な戦略である」と位置づけられています。ま
②国際薬事規制調和戦略、③医薬品産業の将来像
た、この戦略策定に当たっての基本的考え方とし
(論点)が記述され、多面的なとりまとめが行われ
て、(1)わが国は数少ないグローバルな医薬品開
ました。
発の拠点の一角を占めていること、(2)医薬品開
◆医薬品の流通◆
●厳しく管理された物流体制
医薬品の物流とは、製薬企業で生産された医薬品が卸売業者を経由して、医療機関や保険薬局に届けられるまでの経路のこと
を指します。医薬品は生命の維持・救済に強く関わるため、製造から流通まで厳しい管理のもとにおかれます。
まず製造にあたっては、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)が定められており、それに基づき製造され規定さ
れた品質の医薬品が出荷されます。医薬品の品質維持に関しては、流通段階においても細心の注意が必要です。医薬品の中には
温度・湿度・光の影響を受けやすいものも少なくありません。そのため、医薬品の保管・出庫・配送にあたっては、JGSP(医薬
品供給における品質管理と安全管理に関する実践規範)が定められ、品質が損なわれないように貯蔵法の指定や保冷庫による輸送
など細かい点に至るまで注意が払われます。
こうして品質・有効性・安全性が確保された医薬品が、全国 177,000 以上の医療機関や 56,000 店以上の保険薬局などへ
卸売業者を通じて届けられます。
●卸売業営業担当者の業務
卸売業の営業担当者は MS(Marketing Specialist)と呼ばれ、医療機関や保険薬局などを訪れて情報活動と販売活動を行いま
す。医療機関や保険薬局は、各製薬企業の MR から医薬品情報を得たうえで、各卸売業の MS と価格交渉を行い、必要な医薬品
を購入します。
また、新たな協力関係として、2005(平成 17)年 4 月から全面施行された改正薬事法に基づいて、
「製造販売業者が製造販売
後安全管理に係る業務を委託することができる範囲」などが新たに規定されたことで、製造販売後の安全性に関わる情報提供機能
などを MS が補完する協力体制が加わりました。
3-8 医療用医薬品流通の基本的な仕組み
医療機関
製薬企業
卸売業者
患者さん
保険薬局
49
3-9 製薬協 産業ビジョン2025
世界に届ける創薬イノベーション
先進創薬で
次世代医療を牽引する
∼ P4+1 医療への貢献∼
健康先進国の実現を支援する
∼心おきなく健康で 長生きできる社会に∼
世界 80 億人に
革新的な医薬品を届ける
高付加価値産業として
日本経済をリードする
志高き信頼される産業となる
ビジョン 1:先進創薬で次世代医療を牽引する~ P4+1 医療への貢献~
●先進技術の積極的な利活用と、既存技術の高度化を合わせて、創薬を進化させ、患者さん理解のもと、患者さんごとに最適な薬を、
先制医療を含めた適切なタイミングで提供するという、次世代医療 (P4+1 医療 ) の実現に貢献する
ビジョン 2:世界 80 億人に革新的な医薬品を届ける
●治療薬を切望する世界の の期待に応えるため、自らが創出した革新的な医薬品を、文字どおり世界中の人々に届けるこ とを
目指す
ビジョン 3:高付加価値産業として日本経済をリードする
●経営の効率化、特に合理化された研究開発によって革新的な医薬品を生み出し、世界の多くの方々の健康増進に寄与する
●その結果として、日本の経済成長に貢献し、次代の日本を担う高付加価値産業となる
ビジョン 4:健康先進国の実現を支援する~心おきなく健康で長生きできる社会に~
●患者参加型医療の推進に寄与し、より質の高い人生を送ることができるようになるとともに、社会保障制度の持続可能性を高め
ることにも貢献する
ビジョン 5:志高き信頼される産業となる
●高い志をもって自らの使命を果たし、全てのステークホルダーから評価・信頼されている産業、その規範や取り組みが海外にお
いても尊重されている産業となる
●創薬イノベーションの重要性に対する人々の理解を深め、創薬に希望を寄せる人、創薬を目指す人、創薬に参加したいと考える
人を増加させていく
補 論 グローバルヘルスに対する使命と貢献
研究開発・・・・・・・・・・・・・・・・新薬創出を活性化させるパートナーシップ
医薬品アクセス・・・・・・・・・・・・・世界に届けるための仕組みづくり
人材育成・・・・・・・・・・・・・・・・スキル・ノウハウの伝達
企業規模・再編に対する考え方
製薬産業への脅威・・・・・・・・・・・・製品特性の変化と開発費の高騰
研究開発型製薬企業の課題・・・・・・・・事業の規模や形態について自らが最適解を求め、決断
50
また、2016(平成 28)年 1 月には「製薬協 産業ビ
ジョン2025」をまとめました。これは 2025(平
成 37)年に向け、研究開発型製薬企業の団体として、
製薬企業の将来像を描き、それに向けた戦略の方
向性をまとめたものです。新薬開発の難度の高ま
り、研究開発費用の高騰、国際競争の激化に加え、
社会保障費の歳出抑制強化により、事業リスクが
増大しています。このようななか、「製薬協 産業ビ
ジョン2025」は、研究開発志向型の製薬企業が
その使命を果たすために、今後、どのような視点
で取り組む必要があるかなどについて取りまとめ
るとともに、すべてのステークホルダーの方々に
創薬イノベーションの価値と重要性について、理解
と協力を得ることを目的として策定したものです。
◆医薬品におけるジェネリック医薬品のシェア◆
医薬品全体におけるジェネリック医薬品(後発医薬品)の国内シェアは、近年、急激に増加しています。欧米諸国では以前より
後発医薬品が積極的に使用され、
日本に比べて高いシェアを獲得しています。各国の後発医薬品のシェアを数量ベース
(2014 年)
でみると、日本の 56.2%※ 1 に対して、アメリカ合衆国が 92%※ 2、ドイツが 83%※ 2、イギリスが 73%※ 2、スペインが
65%※ 2 となっています。
その中で政府は、後発医薬品のシェア(数量ベース)を 2017(平成 29)年央までに 70%以上とするとともに、2018(平成
30)年度から 2020(平成 32)年度末までのなるべく早い時期に 80%以上とする、新たな目標を掲げており、今後、後発医薬
品の使用がますます拡大すると見込まれています。
※ 1 2015 年 9 月薬価調査の集計値
※ 2 2013 年 10 月~ 2014 年 9 月年平均値
3-10 世界のジェネリック医薬品シェア
(数量ベース、2013.10 ~ 2014.9 の年平均値)
92%
アメリカ
83%
ドイツ
73%
イギリス
スペイン
65%
フランス
64%
57%
イタリア
49%
日本
56.2%
日本 ※
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
(%)
100
注 1:IMS Health, MIDAS, Market Segmentation, MAT Sep 2013, RX only(PRESCRIPTION BOUND)および IMS Health, MIDAS, Market Segmentation, MAT Sep 2014, RX only(PRESCRIPTION BOUND)をもとに後発医薬品の各国の数量(SU)ベースでの後発
医薬品のシェアを算出。IMS MIDAS data では、直販分の数量を把握できないため、後発医薬品の直販が他国と比較して多い日本については、
IMS データにおける日本のジェネリック 医薬品市場のカバー率(2013.4 ~ 2014.3 で 70.9%、日本ジェネリック製薬協会調べ)をもとに
推計を行っている。日本※は、2015 年 9 月薬価調査の集計値。
注 2:後発医薬品のシェア=後発医薬品/(後発医薬品+長期収載品)× 100(%)。
●出所:厚生労働省平成 26 年度ロードマップ検証検討事業報告書概要。
●出典 1:©2015IMS Health, MIDAS, Market Segmentation, MAT Sep 2013, RX only(PRESCRIPTION BOUND)
●出典 2:©2015IMS Health, MIDAS, Market Segmentation, MAT Sep 2014, RX only(PRESCRIPTION BOUND) 無断転載禁止
51
◆日本の製薬産業の環境対策◆
製薬協は、持続可能な社会の実現に向けて、積極的に地球環境保全対策に取り組んでいます。
(1)医薬品の研究開発・生産時の環境負荷の低減
世界的な高齢化社会の進展に伴い、医薬品の生産量は年々増えています。事業活動が環境に与える影響を最小限にするために環
境負荷の低減に取り組んでいます。
事業活動に伴い発生する温室効果ガスについては、1997(平成 9)年度から地球温暖化対策に関する自主行動計画を策定し、
CO2 排出量削減活動を継続しています。医薬品市場の拡大によるエネルギー需要の増加に対し、これまで生産活動の効率化、高効
率機器の導入、より CO2 排出量の少ないエネルギーへの転換などの取り組みを積極的に進め、CO2 排出量を順調に削減してきま
した
(p53 図 3-11)
。
事業活動に伴い発生する廃棄物については、1997(平成 9)年度から省資源・廃棄物対策に関する自主行動計画を策定し、廃棄
物の最終処分量削減活動を継続しています。これまで廃棄物のリサイクル化などを積極的に進め、廃棄物の埋め立て量を大幅に削
減してきました
(p53 図 3-12)
。
また、医薬品の研究開発・生産時に使用するさまざまな化学物質については、1997(平成 9)年度から化学物質管理に関する自
主行動計画を策定し、排気ガス浄化装置の設置やより安全な化学物質の採用などの対策により、化学物質の環境への排出量を順調
に削減してきました
(p53 図 3-13)
。計画達成後も化学物質の環境への排出量削減活動を継続しています。
(2)医薬品の容器・包装の環境対策
環境対策への努力として、医薬品の容器や包装の簡素化や再生紙の利用、分別のしやすい構造や表示の採用など、あらゆる面に
力を注いでいます。
製薬協の環境自主行動計画
1.地球温暖化対策
2013(平成 25)年度から日薬連傘下の団体として低炭素社会実行計画に参画し、
「2020(平成 32)年度の製薬企業の
年度排出量を基準に 23% 削減する。
」
とする数値目標を掲げて活動しています。
CO2 排出量を、2005(平成 17)
2.省資源・廃棄物対策
2011(平成 23)年度から第 4 期自主行動計画として「2015(平成 27)年度の産業廃棄物最終処分量を、2000(平成
12)
年度を基準に 65%程度削減する。」とする数値目標を設定し活動してきました。
2016(平成 28)
年度からは日薬連傘下の団体として「循環型社会形成自主行動計画」に参画し、廃棄物最終処分量のほか廃
棄物発生量などに対して新たな数値目標を設定して活動していくこととしています。
3.化学物質管理
1997(平成 9)年度以降、 ジクロロメタン、 1,2- ジクロロエタン、 クロロホルムなどの有害大気汚染物質に対して、 大
気排出量に関する数値目標を設定し、大気排出量削減活動に取り組んできました。 第 3 期自主行動計画の最終年度である
2007(平成 19)年度の排出量の達成状況から当初の目的を十分に達成したと判断し、 その後の新たな数値目標は設定せず、
これまでの取り組みを継続しています。
〔次頁に続く〕
52
3-11 CO2 排出量の削減
CO2 排出量の推移
(89 社)
CO2排出量(万t)
300
▲101 万トン
(係数変動分を含む)
241
250
233
284
241
▲55 万トン
(23%削減)
▲58 万トン
209
192
200
192
189
195
190
186
183
◀医薬品の有効性・安全性・品質確保
のため、空調設備などに厳しい基準が
定められており、条件を満たすために
必要なエネルギー量は増加傾向にあり
ま す が、 会 員 各 社 は 燃 料 転 換、 高 能
率機器の導入推進の施策などにより、
CO2 の排出削減に努めています。
150
100
50
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
実績
2011
2012
BAU※
2013
2014
2014
BAU
目標
2020
目標
(年度)
3-12 最終処分量の削減
最終処分量の年度推移
廃棄物最終処分量(千トン)
25
100.0
対2000年度比(%)
100
対2000年度比(%)
廃棄物最終処分量(千トン)
20
80
15
60
19.9
40
10
23.6%
0
2000
21.7%
21.5%
19.4%
15.8%
4.7
3.9
3.1
4.3
4.3
2.7
2.7
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
5
13.5%
◀会員各社の廃棄物発生抑制や再資源化
への取り組みにより、最終処分量は順調
に削減され、 2006 年度には目標値であ
る基準年度比 65%程度を達成し、 その
後継続して減少傾向にあります。 2014
年度の最終処分量は 2.7 千トン(2000
年度比 86.6%)
となりました。
20
13.4%
0
(年度)
3-13 PRTR 物質の環境への排出量の削減
PRTR 物質の環境への排出量の推移
排出量(トン)
2,000
50
1,600
◀会員各社は PRTR 物質の環境への排
出量の削減に努めています。 環境への
排出量は着実に減少しており、 2014 年
度の排出量は 2002 年度に比べ、 88%
削減されました。また、2007 年度か
らは揮発性有機化合物(VOC:Volatile
Organic Compounds)についても調査を
実施しています。
大気(トン) 公共用水域(トン)
50
43
1,200
800
1,693
1,361
32
1,240
851
400
0
2002
2003
2004
2005
30
21
18
15
734
701
696
668
2006
2007
2008
2009
15
8
441
474
400
2010
2011
2012
6
8
334
2013
PRTR 物質:
「特定化学物質の環境への排
出量の把握等及び管理の改善の促進に関す
(改正化管法)により規定される化
2014(年度) る法律」
学物質
8
209
●出典:製薬協「環境報告書 2015」
※ BAU(Business as Usual):対策を行わなかった場合の予測値
53
3. 世界の製薬産業
(1)世界の製薬産業を取り巻く環境
日本は、世界で 3 番目の新薬創出国であり、近年、
大手製薬企業を中心にグローバル化を加速し、海外
売上高比率が 50% を超える会社も見られるなど、海
外市場へ着実に浸透を図っているものの、 売上高、
研究開発費は欧米大手企業に比べると依然として見
劣りし、 国際競争力は十分とはいえない状況にあり
ます。
また、 BRICs、東南アジアを中心とした新興国市
場の拡大に合わせ、世界の製薬企業と同様、日本の
各社も積極的なビジネス展開を活発化しています
が、薬事規制の壁やカントリーリスクなどの課題に
直面しています。 こうした状況の中で、 日本の製薬
産業は、 企業個々の取り組みのみならず、 国をあげ
ての施策 ・ 活動を強く求めています。
3-14 医薬品創出企業の国籍別医薬品数
国 名
新薬の開発品目数(品)
アメリカ合衆国
50
ス イ ス
12
日 本
8
イ ギ リ ス
8
ド イ ツ
6
デ ン マーク
4
ベ ル ギ ー
3
フ ラ ン ス
3
ス ウェーデ ン
3
そ の 他
3
●出所: Ⓒ 2016 IMS Health, World Review, LifeCycle, Citeline,Thomson Innovation, Evaluate Pharma, Orange Book をもとに作成(複写・転載禁止)
●出典:医薬産業政策研究所 政策研ニュース № 47
(2016 年 3 月)
54
近年、欧米の製薬産業では、新薬開発期間の長
期化への対応と、年々肥大化する開発経費の捻出
やより効率的な企業経営を目的として、一旦収まっ
たかにも見えた企業の大型合併・買収の計画や、
事業の選択と集中を目的とする巨大製薬企業間で
の事業再編などが続々と公表されています。
合併・買収では、ノバルティスと GSK 間でのワ
クチン事業とがん事業の事業交換、ベーリンガー・
インゲルハイムとサノフィ間でのコンシューマー
事業と動物薬事業の事業交換、バイエルによるメ
ルクのコンシューマー事業の買収が行われるなど、
以前とはやや異なる傾向がみられています。
日本においても、武田薬品による呼吸器領域事
業のアストラゼネカへの売却、アステラス製薬の
レオファーマへの皮膚科事業売却、また、第一三
共はランバクシーを売却し新薬事業に特化するな
ど、経営資源の選択と集中が進行しており、国内
外を問わず、製薬産業を取り巻くビジネス環境の
厳しさが増していることが窺われます。
こうした状況を打開するためにも、従来の医薬
品や医療では解決できなかったアンメット・メディ
カル・ニーズに対する革新的な新薬の開発、市場
導入が必要となります。近年では、C型肝炎の治
癒を可能とする新規経口剤や、根治切除不能な腫
瘍(がん)患者さんに対して統計学的に優位に生存
期間を延長する新規がん免疫療法薬、また、患者
数が少なく治療方法がなかったさまざまな難治性
疾患に対するいわゆるオーファンドラッグが複数
開発されました。これらの例に代表されるように、
製薬産業のイノベーション力に基づいた社会的な
使命が大いに果たされ、真に医療の質の向上に貢
献をしていますが、その一方で、こうした新薬の
使用促進が保険医療財政を逼迫させ得るとの懸念
を招き、日本を含む先進諸国において社会問題化
しており、今後医薬品を含む医療の費用対効果の
厳格な評価と薬価の行き過ぎた抑制の進行につな
がりかねない状況にあります。
(2)欧米製薬企業との差異
世界的にみると、日本の医薬品生産額は上位 3
位の一角を占めていますが、医薬品の輸出入状況
をみると、2015
(平成 27)
年の輸出額は 4,623 億円で
あるのに対して、輸入額は 2 兆 9,241 億円と大幅な
輸入超過の状態にあります。
しかし、諸外国との特許・ノウハウなどの技術
競争力を示す技術貿易収支でみると、2014(平成
26)年には黒字額が 3,420 億円に達し、技術面では
輸出が輸入を大きく上回っています。これは、技
術競争力は高いものの、海外製造拠点における生
産の拡大や日本国内への研究・開発・製造機能の
進出の魅力が乏しい結果ともいえます。
3-15 医薬品輸出入金額の年次推移
輸出
金額(A)
対前年
(千円)
伸び率(%)
年
輸入
金額(B)
(千円)
対前年
伸び率(%)
金 額
(千円)
入超
B / A(倍)
2011(平成 23)
358,987,405
△ 5.2
1,725,018,841
13.3
1,366,031,436
4.8
2012(平成 24)
320,393,108
△ 10.8
1,940,705,081
12.5
1,620,311,973
6.1
2013(平成 25)
359,630,923
12.2
2,138,231,709
10.2
1,778,600,786
5.9
2014(平成 26)
353,006,220
△ 1.8
2,213,970,611
3.5
1,860,964,391
6.3
2015(平成 27)
462,317,846
31.0
2,924,115,850
32.1
2,461,798,004
6.3
●出典:財務省「貿易統計」
3-16 製薬産業における技術輸出入収支
449
2009
2,612
519
2010
3,128
335
2011
2,890
590
2012
支払金額
受取金額
3,057
804
2013
4,413
1,056
2014
0
500
1,000
4,476
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500(億円)
●出典:総務省 「科学技術研究調査報告」
3-17 日米製薬企業の研究開発費比率と利益の対売上高比率の推移
日本
アメリカ合衆国
研究開発費
(平均)
純利益率
(対売上高)
研究開発費比率
(対売上高)
研究開発費
(平均)
純利益率
(対売上高)
研究開発費比率
(対売上高)
(%)
22
1,125
20
1,250
1,190
20.9
19.1 18.9
18.2
18
16.9
16
13.8 14.2 14.2
15.3
12
10
588
17.9 18.3 18.4
4
18.9
800
10.6 10.0
10.5
600
9.1
7.3
7.8
400
5.9
200
4,375
18.2
3,692
3,482
21.8
4,500
22.3
4,069
22
18
4,486
19.6
20.2
14
17.7
16.9
3,115 16.6 17.0
16.2 16.2
15.8 15.1
15.2
15.9 15.4
2,619
13.8 14.2
15.2 14.9
15.0 15.1
13.3
14.7
12
11.4
16
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
0
●出所:SPEEDA
(株式会社ユーザーベース)
、各社有価証券報告書
●出典:日本製薬工業協会 DATA BOOK 2016 を
もとに医薬産業政策研究所にて作成
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
8
1,500
6
1,000
4
500
2
注1:対象会社
~ 2004 武田薬品工業、三共、山之内製薬、第一製薬、大正製薬、
エーザイ、 塩野義製薬、藤沢薬品工業、中外製薬、田辺製薬
2005 武田薬品工業、アステラス製薬、エーザイ、三共、第一製薬、中外製薬、
三菱ウェルファーマ、大日本住友製薬、塩野義製薬、大正製薬
2006 武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、大日本住友製薬、
三菱ウェルファーマ、塩野義製薬、田辺製薬、大正製薬、小野薬品工業
2007 ~ 武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、大塚ホールディングス、
田辺三菱製薬、大日本住友製薬、塩野義製薬、大正製薬、小野薬品工業
2:2003 年の中外製薬は 4 月~ 12 月の変則 9 カ月決算である。
3:2007 年の大塚ホールディングスは大塚製薬の連結決算の数値を採用した。
6,000
5,000
26.2
10
2
0
5,798 5,717 5,847
4,894
26
24
13.8
5,898
5,500
28
1,000
6,500
6,045
(%)
20
8
6
(億円)
1,400
1,200
858
13.3
14.6 14.8
13.3 747
11.2 612 621
14
1,390
1,337
1,333
1,274 1,262
(百万ドル)
0
2002 2003 2004 2005 20062007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
0
注1:対象会社:Abbott, Amgen, Bristol-Myers Squibb, Eli Lilly, Johnson & Johnson,
Merck, Pfizer, Schering-Plough, Wyeth
2:2002 年は 9 社
(Amgen を除き、Pharmacia を含む)
3:2003 ~ 2005 年は 8 社
(Amgen を除く)
4:2009 年から 7 社
(Merck が Schering Plough を合併、Phizer が Wyeth を買収)
5:2013 年には Abbott は AbbVie と Abbott に分社。2013 年の計数は両者の計数を
合算して 1 社とした。
6:2014 年は AbbVie, Amgen, Bristol-Myers Squibb, Eli Lilly, Johnson & Johnson,
Merck, Pfizer。
●出所:各社アニュアルレポート
●出典:日本製薬工業協会 DATA BOOK 2016 を
もとに医薬産業政策研究所にて作成
55
また、日本企業のグローバル化が進んだとはい
え、日本と欧米の製薬企業を比較した場合、売上高、
研究開発費ともに依然として大きな開きがありま
す。とくに世界的な合併・買収で巨大製薬企業が
続々と誕生した結果、その開きはより顕著になっ
ています。
世界トップ企業のノバルティスの 2014(平成 26)
年医薬品売上高の約 580 億ドルに対して、日本の
トップである武田薬品工業は約 178 億ドルで、順
位は世界第 16 位です。つまり、日本の製薬企業は、
欧米の大企業に比べると売上規模が小さく、研究
開発費の金額も小さくならざるを得ない傾向にあ
ります。
こうしたなかにあって近年、日本の製薬企業に
よる海外、とくに欧米における研究所・工場の建
設や有力新薬の開発・上市が増えています。東証
一部上場製薬企業 27 社の 2015(平成 27)年 3 月期
(連
結ベース)の海外売上高比率は 42.3%に拡大してい
ます。しかし、海外企業の日本進出に比べて、日
本からの海外進出はまだ十分ではなく、今後一層
積極的な展開が期待されています。
(3)山積する課題
2010(平成 22)年前後から、世界で発売されてい
る多くの大型製品が特許切れを迎えており、世界
の製薬産業では、巨大企業を中心に新薬開発競争
が激化しています。
また、日本の医薬品市場の活性化のためにも、
海外企業、ベンチャーの日本への進出を促進させ
るための諸施策は日本の成長を推進するうえで急
務となっています。さらに、新興国における医薬
品アクセス問題と知的財産権の問題は依然として
大きな課題です。一企業として、あるいは産業と
しての努力だけでは克服できない課題も多く、国
家戦略として、国際レベルでの官民連携協力体制
を充実していくことが必要です。
3-18 世界の製薬企業の規模と業績
(2014)
順位
社 名
金額単位
総売上高
医薬品
売上高
医薬品
医薬品
比率
売上高
(% )
( 百万米$)
90.0
52,180
利益 *
売上高
税引前
売上高
純利益
利益率
利益率 (% )
11,921
20.6 10,280
(% )
17.7
総資産
従業員数
(人)
1 Novartis
百万米ドル
57,996
52,180
125,387
118,700
2 Pfizer
百万米ドル
49,605
45,708
92.1
45,708
12,240
24.7
9,135
18.4
169,274
78,300
3 Roche
百万スイスフラン
47,462
36,696
77.3
40,052
9,332
19.7
12,533
26.4
75,641
91,747
4 Merck(USA)
百万米ドル
42,237
36,042
85.3
36,042
17,283
40.9
11,920
28.2
98,335
70,000
5 Johnson&Johnson
6 Sanofi
百万米ドル
74,331
32,313
43.5
32,313
20,563
27.7
16,323
22.0
131,119
126,500
百万ユーロ
33,770
31,694
93.9
31,694
5,731
17.0
4,390
13.0
97,392
113,496
7 GlaxoSmithKline
百万ポンド
23,006
18,670
81.2
30,758
2,968
12.9
2,756
12.0
40,651
97,921
8 AstraZeneca
9 GileadSciences
百万米ドル
26,095
26,095
100.0
26,095
1,246
4.8
1,235
4.7
58,595
57,500
百万米ドル
24,890
24,474
98.3
24,474
14,856
59.7
12,059
48.4
34,664
―
10 AbbVie
百万米ドル
19,960
19,960
100.0
19,960
2,369
11.9
1,774
8.9
27,547
25,000
11 Amgen
12 Teva
百万米ドル
20,063
19,327
96.3
19,327
5,585
27.8
5,158
25.7
69,009
20,000
百万米ドル
20,272
18,374
90.6
18,374
3,638
17.9
3,055
15.1
46,420
43,009
13 EliLilly
百万米ドル
19,616
17,269
88.0
17,269
3,638
18.5
2,391
12.2
37,178
39,135
14 Baxter
百万米ドル
16,671
16,671
100.0
16,671
2,439
14.6
2,497
15.0
25,917
61,000
15 Bayer
百万ユーロ
42,239
12,052
28.5
15,990
4,525
10.7
3,426
8.1
70,234
118,888
16 武田薬品工業
億円
△ 8.2 △ 1,458
17,778
16,881
95.0
15,934
△ 1,454
△ 8.2
42,962
31,328
17 Bristol-MyersSquibb 百万米ドル
15,879
15,879
100.0
15,879
2,381
15.0
2,029
12.8
33,749
25,000
18 NovoNordisk
百万 D クローネ
88,806
87,078
98.1
15,516
34,096
38.4
26,481
29.8
77,062
40,638
19 BoehringerIngelheim 百万ユーロ
13,317
10,602
79.6
14,067
1,706
12.8
1,047
7.9
20,051
47,492
20 アステラス製薬
億円
12,473
12,473
100.0
11,773
1,897
15.2
1,359
10.9
17,936
17,113
21 Merck(Germany)
百万ユーロ
11,501
6,549
56.9
8,690
1,557
13.5
1,165
10.1
26,010
39,639
22 第一三共
億円
9,194
9,194
100.0
8,678
799
8.7
3,221
35.0
19,823
16,428
23 大塚ホールディングス
億円
12,243
8,835
72.2
8,339
2,172
17.7
1,431
11.7
21,782
29,482
24 Abbott
百万米ドル
20,247
7,839
38.7
7,839
2,518
12.4
2,284
11.3
41,275
―
25 Mylan
百万米ドル
7,720
7,720
100.0
7,720
975
12.6
929
12.0
15,887
25,000
26 エーザイ
億円
5,485
5,485
100.0
5,177
259
4.7
433
7.9
10,538
10,183
●出典:SPEEDA(株式会社ユーザーベース)、アニュアルレポート、
有価証券報告書
56
税引前
注1: 2013 年に Abbott は AbbVie と Abbott に分社。両社の計数を併記した。
2:Amgen、Baxter、BoehringerIngelheim の従業員数は 2013 年の数値。
3:* 大塚ホールディングスのみ経常利益。 Ⅳ 資料
1.製薬協からの情報提供(ウェブサイト)
日本製薬工業協会(製薬協)では、医薬品と製薬
くすりについて
産業に関する理解を深めていただけるよう積極的
会 員 会 社 の 「 く す り の 相 談 窓 口 」、
「 く す り な情報提供を行っています。
Q&A」など、
くすりに関する情報を掲載しています。
ウェブサイトでは、 くすりに関する情報を一般の
患者さんとともに
方にもわかりやすく提供しています。 主なコーナー
患者さんが必要とする情報にスムーズにアクセス
には次のようなものがあります。
できるように 「疾患情報リンク」 や 「くすりの情報
リンク」 など患者さんのための情報環境の整備 ・ 充
実に努めています。
小 ・ 中学生のためのくすり情報
「くすり研究所」など、小中学生に向けてくすり
に関して役立つ情報を掲載しています。
イベント・メディア向け情報
「ニュースリリース」や各種イベント、会見など
の情報を提供しています。
製薬協ウェブサイト トップページ
小中学生のためのくすり情報 「くすり研究所」
医薬産業政策研究所
製薬産業のシンクタンクとして機能する医薬産業政
策研究所から、
「リサーチペーパーシリーズ」
「政策
研レポート」
「政策研ニュース」が刊行されており、
政策研ウェブサイトを通じても公表しています。
(URL http://www.jpma.or.jp/opir/index.html)
医薬産業政策研究所 ウェブサイト トップページ
57
2.製薬協の主な刊行物
『製薬協ガイド』
『てきすとぶっく製薬産業』
『くすりの情報 Q&A55』
『環境報告書』
(年刊)
『製薬協ニューズレター』
製薬協ニューズレター
(ダイジェスト版)
製薬協ニューズレターは、2014 年 5 月(161 号)から web 版に移行いたしました。冊子の読みやすさはそのままに、検
索性や保存性の高さといったデジタルメディアの特性が加わった web 版は、必要な情報にすばやくアクセスできる利便性
が高い情報源です。また、メールマガジンも配信しています。登録は製薬協ウェブサイトから。
製薬協ガイド
58
くすりの情報 Q&A55
環境報告書
3.主要な業界団体および関連機関・団体名
日本製薬団体連合会
(日薬連)
(公社)東京医薬品工業協会
日 本 製 薬 工 業 協 会
日 本 ジ ェ ネ リック 製 薬 協 会
大
日 本 O T C 医 薬 品 協 会
愛知県医薬品工業協会
外
用
製
剤
協
議
会
剤
協
議
会
( 一 社 )日 本 血 液 製 剤 協 会
( 一 社 )全 国 配 置 薬 協 会
16
団体︶
製
体︵
液
15
団体︶
輸
体︵
(一社)日本ワクチン産業協会
団
会
別
協
域
薬
地
庭
団
家
別
本
態
日
業
日本漢方生薬製剤協会
医
薬
品
協
会
( 一 社 )富 山 県 薬 業 連 合 会
日本医薬品直販メーカー協議会
( 一 社 )日 本 眼 科 用 剤 協 会
阪
兵
庫
県
製
薬
協
会
徳
島
県
製
薬
協
会
佐
賀
県
製
薬
協
会
神 奈 川 県 製 薬 協 会
奈 良 県 製 薬 協 同 組 合
( 一 社 )滋 賀 県 薬 業 協 会
長
野
県
製
薬
協
会
岐
阜
県
製
薬
協
会
埼
玉
県
製
薬
協
会
(一社)日本臨床検査薬協会
( 一 社 )千 葉 県 製 薬 協 会
医 薬 品 製 剤 協 議 会
石 川 県 医 薬 品 工 業 会
(一社)再生医療イノベーションフォーラム
新 潟 県 薬 事 工 業 会
( )
内は略称を示します。
■業界団体
日本製薬団体連合会(日薬連)
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-4-18 昭和薬貿ビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ TEL.03-3270-0581
MR認定センター
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-3-4 日本橋本町ビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ TEL.03-3279-2500
医療用医薬品製造販売業公正取引協議会
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-7-2 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
くすりの適正使用協議会
〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-4-2 日本橋Nビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ TEL.03-3663-8891
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
〒105-0001 東京都港区虎ノ門3-7-8 ランディック第2虎ノ門ビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-5408-1061
欧州製薬団体連合会(EFPIA)
日本事務局
〒100-8265 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
(バイエル薬品株式会社内)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-6301-3066
厚生労働省
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-5253-1111
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-3506-9541
日本医薬情報センター(JAPIC)
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-5466-1811
未承認薬等開発支援センター
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-3-11 日本橋ライフサイエンスビルディング‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-5204-2311
TEL.03-3669-5357
■関連機関
■関連団体
日本医師会
(日医)
〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-3946-2121
日本薬剤師会
(日薬)
〒160-8389 東京都新宿区四谷3-3-1 四谷安田ビル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-3353-1170
日本医薬品卸業連合会(医薬卸連)
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-7-20 八重洲口会館‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
TEL.03-3275-1573
59
4.用語解説
本文中で*印のついている用語の解説です([ ]内はその掲載ページ)
。
アルファベット
医薬品医療機器等法
I CH( International Council for Harmonisation of Technical
Requirements for Pharmaceuticals for Human Use
:医薬品規制調和国際会議)
革新的な医薬品・医療機器や再生医療の実用化および医薬品等の安
全対策の強化を図るため、
「薬事法等の一部を改正する法律」が 2014
(平成 26)年 11 月に施行され、
「薬事法」から「医薬品、医療機器等の
医薬品規制に関する世界共通のガイドラインづくりを目指して活動
品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
(略称:医薬品医療
する国際会議。新薬の許認可の基準は国によって異なるため、共通
機器等法)
に改正されています。
[2・5・10・13・37・44]
のガイドラインを定めることによって、国際間の調和を進めデータ
の相互受け入れを行うことを目的に、1990 年 4 月に発足。2015 年 10
医薬品の適正使用
月に新たにスイス法人として登録。これまでに 50 以上のガイドライ
医薬品の適正使用とは、まず的確な診断に基づき患者さんの症状に
ンが合意され、各国で実施に移されています。構成メンバーは、日
最適な薬剤と適切な用法 ・ 用量が決定され、これに基づき調剤され
米 EU 三極及びスイス、カナダの医薬品規制当局と日米 EU の産業
ること、次いで患者さんに薬剤についての説明が十分理解され、正
側 3 団体の8つの団体、またオブザーバーとして WHO、IFPMA(国
確に使用された後、その効果や副作用が評価され、 処方に反映され
際製薬団体連合会)の他、多くの規制当局、団体が登録しつつあり、
るという一連のサイクルです。
よりグローバルな活動が行われています。
[4・44]
[8・19]
大型放射光施設(SPring-8)
MR 認定制度
文部科学省(旧科学技術庁)関連施設として兵庫県西播磨地区に建設
MR のさらなる資質の向上と、医療の一翼を担う医薬品情報の専門
され、1997(平成 9)年 10 月から供用が開始された第3世代大型放射
家として、医療関係者からの評価と信頼を維持・向上させるために、
光施設のこと。この施設は、世界で3ヵ所しかない最新かつ最高水
公正な第三者機関である公益財団法人 MR 認定センターが 1997(平
準の性能を備えており、さまざまな物質の分子構造研究に威力を発
成 9)年から認定試験を実施し、合格者には MR 認定証が交付されま
揮しています。
[6]
す。諸外国では、イギリス、ドイツ、フランスなどで MR 認定制度
が導入されています。
[16]
オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品)
適用患者数が少ない医薬品。日本では対象患者数 5 万人未満、
ただし、
NIH(National Institutes of Health)
その用途が指定難病の場合は、
難病法第 5 条第十項に規定する人数
(人
アメリカ国立衛生研究所の略。国立がん研究所など、専門分野別
口のおおむね千分の一程度)のものと定められています。薬事法の改
の研究所やセンターなど 27 の施設からなる統合研究組織。日本で
正により、試験研究に対する補助金の交付、試験研究費の税額控除、
は、成長戦略の一環として健康・医療分野の研究開発体制を集約し、
優先審査、再審査期間の延長(10 年以内)などの法的措置がとられて
医療研究の司令塔となる国立研究開発法人日本医療研究開発機構
います。
(AMED)
が 2015
(平成 27)
年 4 月に創設されました。
[9・33・39・41・54]
[48]
か行
PMDA
偽造医薬品
独立行政法人医薬品医療機器総合機構を参照。
[8・9・14・18]
製品名や製造・販売元などを本物と偽って表示・販売する違法な海
賊版医薬品で、本物と有効成分が異なっていたり、成分が不足して
QOL
いたり、場合によっては表示されている成分をまったく含んでいな
「Quality of Life」の略。通常「生活の質・生命の質」と訳されます。
い粗悪品もあります。
[43]
優れた新薬の開発によって患者さんの日常生活での苦痛を減らし、
生活・生命の質を保つことが期待できます。医療の場では、副作用
核磁気共鳴装置
の少ない薬剤の投与方法やがんの痛みの緩和など、さまざまな QOL
いくつかの原子核は強い磁場中に置かれると,特定のエネルギーの
の向上のための取り組みが行われています。
電磁波を吸収するような性質をもつようになります。核磁気共鳴装
[39・42]
置とはこの性質を利用した装置で、これによりたんぱく質などの構
造を明らかにできるようになりました。医療では、MRI として画像
あ行
診断に広く使われています。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
60
[6]
特殊法人等合理化計画を受けて、国立医薬品食品衛生研究所医薬品
ゲノム解析
医療機器審査センター、
医薬品副作用被害救済 ・ 研究振興調査機構
(医
ゲノムとは、生物体を構成する細胞の DNA に含まれる遺伝情報の
薬品機構)および財団法人医療機器センターの調査部門の業務を統合
全体を指す言葉です。ゲノムの解析とは、ゲノムをつくっている素
し、2004
(平成 16)
年 4 月 1 日に設立された独立行政法人です。
材である DNA の配列を解析し、それぞれの DNA の部分(領域)がど
業務は、①医薬品・医療機器の審査業務、②市販後の安全対策業務、
のような働きをしているのかを決め、そのためにどのような遺伝子
③医薬品による副作用や、生物由来製品を介した感染等による健康
が集まって、どのように並んでいるのかを解析します。DNA は 3 ~
被害の救済業務、④研究開発振興業務の大きく 4 つに分類されます。
5 パーセントしか遺伝子として働いていないのですが、ゲノム解析で
なお、研究開発振興業務については、2005(平成 17)年 4 月に独立行
はそのような遺伝子として働いていない DNA の部分の配列も決定
政法人医薬基盤研究所に移行されました。
し、最終的に DNA の端から端まですべての配列を決定します。[6]
[6・15・17・19]
製薬企業は、基礎研究の成果をもとに研究を進め、動物実験を経て
診断群別定額払い方式:DRG / PPS(Diagnosis Related
Group / Prospective Payment System)
ヒトを対象とした臨床試験を行って薬の開発を行います。この研究
DRG とは、アメリカ合衆国で実施された国際疾病分類で、1 万以上
開発の成功率はきわめて低く、逆にリスクが非常に大きいというの
ある疾患の診断名を 470 に分類した診断群のことをいい、PPS は、
が現状です。新薬開発の場合、実際に新薬となって医療の場に供給
定額支払い方式のことで、1 人あたりの医療費を診断群ごとに定め
できるのは、各種の技術によって作り出された新規物質 24,553 個の
たもの。医療費高騰に悩むアメリカ合衆国政府が医療費適正化や医
中から、わずか 1 個といわれるほど確率の低いものです。すでに膨
療標準化の目的で老人入院患者を対象とする医療保険制度(メディケ
大な研究開発費と 10 年近くの長い年月を費やしながら、開発途中で
ア)
で採用しました。
研究開発(R & D:Research and Development)
[23]
研究を断念しなければならないケースも珍しくありません。 [2・6・8・15・29・37・46]
新薬(先発医薬品/新医薬品)
国民医療費
医薬品医療機器等法第 14 条の 4 第 1 項の規定に基づき、すでに承認
日本国民が 1 年間に病気やけがの治療で、病医院 ・ 薬局(調剤)な
を得ている医薬品と比べ、有効成分、分量、用法・用量、効能・効
どに支払う費用の総額。定率で患者さんが自己負担する費用は含ま
果などが明らかに異なる医薬品であって、厚生労働大臣によって製
れますが、歯科自由診療や予約診療、いわゆる差額ベッド代などの
造販売承認されたものをいいます。さらに、厚生労働大臣の再審査
費用は含まれません。また、正常分娩や健康診断の費用、大衆薬な
を受けることが義務づけられています。
どの購入費も含まれません。
[2・3・5・6・8・10・12・14・16・31・32・34・39・40・41・43]
[20・23・24]
コンビナトリアルケミストリー
生理活性スクリーニング
多くの数の新規化合物をロボットアームによって、自動的に高速で
スクリーニングとは篩(ふるい)分けですが、医薬開発研究では多く
合成する技術。この技術により、一度に多数の化合物群を作成し、
の化合物の中から生理活性物質(生物に何らかの作用を示す物質)を
ハイスループット・スクリーニングにより有効物質を探索します。
何らかの基準で選別して探し出すことをいいます。最近ではHTS
また、すでに得られている有効物質の最適化にも用いられます。[9]
(ハイスループットスクリーニング)という、きわめて多くの化合物
試料を短時間にスクリーニングする方法が発達しています。
[6]
さ行
た行
再審査制度/再審査期間・再評価制度
新医薬品として承認されてから、その有効性、副作用などの安全性
ダイレクト OTC
確認のために再審査を申請する制度で、承認後原則 8 年(効能追加
新規薬効成分の発見後、国内で医療用医薬品としての承認を経ずに、
では 4 年、新投与経路では 6 年、オーファン・ドラッグでは 10 年)
、
直接 OTC 医薬品(一般用医薬品)として承認された医薬品のことで
その使用成績について調査を行った後、再度、有効性、安全性を確
す。すなわち、国内で医療用医薬品としての使用実績がない成分を
認します。この、通常 8 年間の期間を再審査期間といいます。また、
含む医薬品のことであり、市販後、原則 4 年から 8 年にわたって安
再審査終了後に、現在の医学・薬学の進歩に合わせて、現在の学問
全性評価が行われ、合格した場合に通常の OTC 医薬品に移行します。
的水準から医薬品の品質・有効性および安全性を見直そうとする制
[3]
度が再評価制度です。これらの制度は、
1979
(昭和 54)
年に制度化され、
厚生大臣(現・厚生労働大臣)の定める基準に適合した資料の提出を
治験・治験薬
義務づけられるなど強化されています。
医薬品は、動物実験や臨床試験を行い、有効性や安全性を確認した
[2・12・17・29]
うえで厚生労働大臣に製造販売承認の申請を行いますが、この承認
受容体
申請に必要な臨床試験を治験と称し、医薬品医療機器等法に定めら
細胞表面や内部に存在し、細胞外の特定の物質(ホルモン・神経伝達
れています。この治験に供される被験薬及び対照薬を治験薬といい、
物質・ウイルスなど)と特異的に結合することにより、細胞および生
1997(平成 9)年から、治験薬 GMP を遵守した製造が義務づけられて
体の機能に影響を与える物質の総称。レセプターともいいます。
います。
[6・7・8・9・13・14・15・34]
[6]
知的財産推進計画
診断群分類別 1 日当たり定額払い方式:DPC(Diagnosis
Procedure Combination)
知的財産推進計画は、知的財産の創造、保護および活用に関する施
アメリカ合衆国で実施されている DRG/PPS を参考にして、新たに
画です。製薬産業における知的財産の保護・有効活用への施策が推
開発された日本独自の診断群分類のことで、 患者さんごとに傷病名、
進されています。
策を推進するために設置された知的財産戦略本部がまとめる年間計
[11]
年齢、意識障害レベル、手術 ・ 処置の有無、副傷病名の有無などの
治療行為を組み合わせたもの。この DPC を包括払い制と組み合わせ
中央社会保険医療協議会(中医協)
たものを 「DPC 包括評価」 といいます。DPC そのものは本来、診断
厚生労働大臣の諮問機関で、診療報酬、薬価基準の算定方法、療養
群の分類方法を指しますが、現在では、これらの支払い方式を含め
費などを審議します。健康保険組合、国民健康保険組合などの保険
て DPC と呼ばれています。
者ならびに被保険者、事業主の代表(支払側委員)7 人、医師、薬剤師
[23]
などの代表(診療側委員)7 人、公益代表(公益委員)6 人で構成されて
います。中医協を設置することとした社会保険医療協議会法の第 3
条の条文を用い、支払側を 1 号、診療側を 2 号、公益を 3 号と呼ぶ
こともあります。
[21]
61
な行
や行
日本薬局方
薬事・食品衛生審議会
医薬品医療機器等法第 41 条により、医薬品の性状および品質の適正
厚生労働大臣の諮問機関。医薬品に関しては、医薬品部会、薬事分
を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて
科会で、新薬の承認審査、医薬品の再審査 ・ 再評価、安全性の審査
定めた医薬品の規格基準書。
などを実施します。
[2・29]
[8・9・19]
ユーザーフィー
は行
医薬品や医療機器の審査体制の強化を図るため、審査官の増員など
ハイスループット・スクリーニング(HTS:High-Throughput
Screening)
の費用を申請者である企業に負担させる仕組み。アメリカ合衆国で
新薬を開発するためのスクリーニング技術のひとつ。新薬の候補と
が採用して、新薬の承認審査を迅速化させました。日本では、独立
なる多数の化合物の生物活性(受容体への結合や酵素活性阻害など)
行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が採用している「審査等手
を高速で自動的に調べられるシステムが開発され、 検体の評価(スク
数料」
がこれに該当します。
1992 年「ユーザーフィー法」が成立し、アメリカ食品医薬品局(FDA)
[14]
リーニング)にかかる時間が大幅に短縮されるようになっています。
1 週間に数万もの、高速かつ大量なスクリーニングが可能です。近年
では、遺伝子やたんぱく質の機能解明などにも利用されています。
[9]
ら行
リード化合物
ファーマコゲノミクス(薬理ゲノム学)
新薬の候補となる化合物。薬理活性のプロファイルが明らかであり、
特定の疾患群に対して有効かつ安全な医薬品を探索・開発するため
これを化学的に修飾することで活性の向上、毒性の減弱が期待でき
に、患者さんのゲノム情報(遺伝的特徴)の解析を行いアプローチす
る新規化合物を指します。
[9]
る手法で、具体的には患者さん個々の遺伝的特徴の差異を把握する
ことにより、その遺伝子の特徴に最適な薬剤の開発を目指します。
厚生労働省では「臨床薬理試験及びその他の臨床試験において、医薬
品の作用に関連するゲノム検査を利用して被験者を層別する等の手
段を用い、被験薬の有効性、安全性等を探索的、検証的に解析・評
価すること」
をファーマコゲノミクスと定義しています。
[6]
物質特許
一定の使用目的をもった新規化学物質に対して与えられる特許権。
1976(昭和 51)年 1 月 1 日より実施されました。ほとんどの先進国で
は物質特許を採用しています。
[10・11]
プロテオーム解析(proteome)
protein
(たんぱく質)
と集合体を意味する ome を組み合わせた造語で、
細胞中に含まれるたんぱく質すべての集合体をプロテオームと呼ん
でいます。病態と正常の細胞中のプロテオームを比較することで、
疾患に関係しているたんぱく質を見いだすことができますが、その
解析方法として、二次元電気泳動法や質量分析装置などが用いられ
ています。
[9]
保険薬局
健康保険法に基づく療養の給付の一環として、保険調剤業務を取り
扱う薬局をいいます。所在地の地方社会保険事務局から、保険薬局
としての指定を受ける必要があります。
[21・28・49]
日本製薬工業協会
(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association(JPMA)
日本製薬工業協会(製薬協)は、病院などの医療機関で使用される医療用医薬品を対象とした新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす、
研究開発志向型の製薬会社 73 社(2016 年 4 月)が加盟する任意団体です。製薬産業に共通する諸問題の解決、医薬品に対する社会的
理解を深めるための活動、医薬品の国際化をめぐる環境整備など、多面的な事業を展開し、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。
62
5.索引
CRO
GCP
GLP
GMP
GPSP
GQP
GVP
ICH
iPS 細胞
JGSP
MR
MS
NIH
PMDA
QOL
RMP
SMO
[あ]
アンメット・メディカル・ニーズ
育薬
一般名
一般用医薬品
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
医薬品医療機器等法(旧薬事法)
医薬品の適正使用
医薬分業
医療保険制度
医療用医薬品
インフォームド・コンセント
オーダーメード医療
オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品)
[か]
介護保険制度
偽造医薬品
かかりつけ薬局
核磁気共鳴装置
革新的医薬品・医療機器創出のための 5 か年戦略
環境対策
ゲノム解析
ゲノム創薬
原価計算方式
研究開発
後期高齢者医療制度
抗体医薬
高度医療評価制度
国民医療費
混合診療
コンパニオン診断薬
コンビナトリアルケミストリー
[さ]
再審査期間
再審査制度
7
7・8・13
8・13
9・13・49
8・9・13・17
13
8・9・13・17
8・19
7・48
13・49
16・49
49
48
6・8・9・14・17・18・19・32・48
39・42
9・18
7
7・37・40・54
8・16
3・29
2・3・5・46
6・8・9・14・17・18・19・32・48
2・5・10・13・17・25・26・37・41・44・49
4・44
28
3・20・21・22・24・29・43・45・46
2・3・12・13・17・18・25・29・38・44・46・49
7・9・44
6・40
9・33・36・39・41・54
26
43
28
6
29
52
6
39
31・32・33
2・6・10・15・29・32・37・39・41・45・46・48・54
22・25
6・10・39・42
25
20・23・24
25
43
9
2・3・9・12・17・29・32
17
63
再評価制度
17・18
先駆け審査指定制度
32・33
先駆けパッケージ戦略
32
ジェネリック医薬品(後発医薬品)
2・3・12・29・31・34・35・36・45・49
市場拡大再算定
29・31・34
市場実勢価格
29・30・31・34・35・36
市販後調査(PMS)
9・17
自由診療
25
受容体
6
商品名
3
診断群分類別の 1 日当たり定額払い方式(DPC)
23
診断群別定額払い方式(DRG/PPS)
23
新薬
2・3・5・6・8・10・12・14・16・31・32・34・39・40・41・43
新薬創出・適応外薬解消等促進加算
14・29・32・34
スイッチ OTC 薬
3
生理活性スクリーニング
6
先進医療
25・26
選定療養
25・26
創薬
6・7・8・16・29・39・48・49
[た]
ダイレクト OTC
3
治験
6・7・8・9・13・14・15・16・34・35・48・49
知的財産
10・11・56
知的財産推進計画
11
中央社会保険医療協議会(中医協)
21
登録販売者
3・5
ドラッグ・ラグ
14・32・35
[な]
日本再興戦略
32・48
日本薬局方
2・29
[は]
ハイスループット・スクリーニング
9
評価療養
25・26
副作用
ファーマコゲノミクス(薬理ゲノム学)
物質特許
プロテオーム解析
分子標的薬
保険薬局
[ま]
未承認薬
未承認薬等開発支援センター
モニタリング
モニター
[や]
薬剤費比率
薬事・食品衛生審議会
薬価
薬価基準
薬価基準改定
有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会
要指導医薬品
[ら]
リード化合物
類似薬効比較方式
64
4・6・7・8・9・16・17・18・19・39・42・43
6
10・11
9
42
21・28・49
15・25・29・32・34・35
15
7・19
19・43
24
8・9・17・19
3・14・15・29・30・31・32・33・34・35・36・46
3・4・9・21・29・30・31・36
30
14
2・3・5
9
31・32・33
Fly UP