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日本版 - 日建設計シビル

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日本版 - 日建設計シビル
E n v i r o n m e n t
日建グループ創業111周年
創 立 10 周 年 記 念 誌
i s
i n e x t r i c a b l y
l i n k e d
t o
D i s a s t e r
p r e v e n t i o n
環境と 防災はひとつ
環 境 と 防 災 は 一 つ
日 建 設 計 シ ビ ル 創 立 10 周 年 記 念 誌
目 次
はじめに
1
創立 10 周年に寄せて
Nguyen Tan Van (元 ベトナム国建設省 副大臣)
2
Tran Ngoc Chinh (元 ベトナム国建設省 副大臣)
4
Tran Trong Hanh (元 ハノイ建築大学 学長)
6
李光明(同済大学 教授)
8
各分野における取り組み
地域の自然・風土を活かした総合治水計画の提案
10
海上都市の環境と防災
12
治水・水環境分野の取り組み
14
都市活動・環境を支える交通結節点開発
16
都市地下空間開発のフロントライン
18
化石燃料から再生可能エネルギーへ
20
地盤液状化への新たな取り組み
22
浚渫土砂の有効利用による海域環境の保全
24
次世代型スマート工業団地による東北の復興
26
TOPICS
中国
国信海南 龍沐湾人工島 アイディア募集
2001 年∼2010 年における主な受賞
28
29
日建グループ 110 年の歩み
30
日建設計シビル 10 年の歩み
32
はじめに
2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖大地震はモーメントマグニチュ−ド 9.0 の巨大地震であり、津波と地震による死者・
行方不明者が推定 2.1 万人(警察庁広報資料,2011.07.18)に達するなど、日本の歴史上最大の自然災害をもたらしました。さらに福
島第一原子力発電所の事故・損傷にともなう電力供給不足と放射能汚染は、広域かつ生活・社会・経済のあらゆる面に深刻な影響を及
ぼすことが懸念されています。当面の避難者救援、復旧活動に続き、復興に向けて困難な道のりが予想されます。
日建グル−プ(nikken.jp)は、「社会環境デザインの先端を拓く専門家集団として世界で活動する」を motto として掲げています。
nikken.jp の構成員である日建設計シビルは、都市/地域の開発・整備、都市基盤、都市施設、生産施設、地盤、水環境分野の計画・設計
を担っています。2011 年は、日建設計シビルにとって、グル−プの一員として創業 111 周年かつ分社化による会社創立 10 周年の記念
すべき年にあたることから、私たち自身の歩みを振り返る必要があると考えていました。
東日本大震災に遭遇したのは、まさにこの時機であります。あらためて、震災をはじめ自然災害に対して、私たちは傍観者ではなく
実践者であり、また事前予防により深くかかわる立場にあることを再認識するとともに、本業として掲げる
環境デザイン
はどうあ
るべきかに関して、自己との対話が求められていると考えます。
具体的な実践例は本文に譲るとして、私たちの認識は「環境と防災は一つ(表裏一体)」であり、 環境デザイン
の基本的アプロ−
チは端的に以下のように要約できると思われます。
● 地域の風土・歴史・文化を活かした環境デザイン
貞観地震(869 年)
、明治三陸地震(1869 年)
、昭和三陸地震(1933 年)による大津波の歴史的事実が知られていたにもかかわらず、
今回の東日本大震災における津波の被害は甚大でした。これが、
「希薄なリスク管理」への指摘、
「数十年スパンの経済効率重視」への
疑問、いわゆる「想定外」に対する批判などにつながっています。私たちは、環境デザインに取り組むにあたり、
「社会と顧客の要求を
深く洞察し困難な課題に果敢に挑戦する」際に経済性や効率を重視せざるをえないことは事実であるが、地域の風土・歴史・文化を大
前提にすべきであると考えます。
● 自然の恵みを受け容れ、自然の脅威に備える環境デザイン
私たちは、水のめぐみ、緑のはぐくみ、風のそよぎ、土のぬくもり、光のやわらぎなど、豊かな自然の恵みを最大限受け容れ、環境
への負荷を軽減し、資源を有効に活用することにより、自然との共生をめざしています。一方で、自然はさまざまなかたちで人間活動
に脅威を及ぼしうることも現実です。環境デザインにおいては、自然の二面性に対応して、環境と防災を表裏一体的に提案・提示する
ことが求められる所以です。
● 時を超えて活きる環境デザイン
私たちは、
「時を超えて活きる」環境デザインを追求しています。すなわち、①世代を超えて受け継がれる(歴史的蓄積を継承し、心
を育み人を育て、次世代につなげ、未来に資産を残す)
、②社会や時代のニ−ズを先取りし、変化に適応できる、③平常時から異常時へ
と時を超えて活きる(都市/地域の日常的環境やコミュニティが災害時にも活かせる)環境デザインの実践にほかなりません。
● より大きな環境・より身近な環境につながるデザイン
個々の建物から街区、地区、都市、地域、国家、地球全体に至るまで、空間スケ−ルと社会経済のヒエラルキ−に応じた環境デザイ
ンが必要です。さらに、身近な環境の集積によってより大きな環境の形成や改善を図り、逆に地域や都市全体の基盤整備やシステムを
より身近な環境づくりにまで浸透させていく、という二方向のアプロ−チが有効です。
本冊子は、以上の背景、動機にもとづき、環境・防災を主眼に、日建設計シビルの作品・成果・技術のレビュ−を試みたものです。
設計事務所・コンサルタントとしての守秘義務の遵守を前提とし、各プロジェクトの担当者の環境デザインに対する
思い
と技術基
盤を表出し、日本の復興・再生と世界各地のプロジェクトに活かすことができればと願っています。
2011 年 9 月
日建設計シビル社長
-1-
野村康彦
NSC 創立 10 周年記念誌
創立 10 周年に寄せて
ベトナムにおける気候変動に対 応する都市
Nguyen T an Van
先生
生年月日 :1945 年 2 月 2 日
出 身 地:Quang Ngai
大
学 :La Habana(Cuba)(CUJAE)総合大学建築学校(建築士免許獲得年:1969 年)
経
歴 :1969~1975 年 :Ho Chi Minh 廟設計チームに属した。
1975~1995 年 :住宅・公共施設設計院(VNCC-建設省)
建築研究センター長、住宅・公共施設設計院、副院長(VNCC-建設省)
1996~2006 年 :建設省副大臣(建築・計画、住宅、コンサルタント、都市基盤の担当)
2006~現 在 :建築家協会会長
ベトナムは太平洋に面した国家であり海岸延長は 3200km 以上である。海洋は、ベトナムの経済発展に富をもたらす一方で人間に災
害を与えている。
日本やインドネシアのように地震による津波災害を受けたことがないベトナムでは、地震、台風、 サイクロン、洪水、浸水、土砂崩
れ、海岸・河川の護岸の破壊、干ばつ、森林火災等の被害をたびたび受けている。
数十年前と比べ自然の変化はますます激しくなり、災害の発生確率は高くなり、災害の発生は不定 期・不規則で予測を行うことがで
きず、加えて広域的に生起しており、従来までは安全だった場所にも災害が発生している。地球温暖 化に伴う海面上昇など気候変動現
象は、今や将来における危機的なものではなく、ベトナム 全土で起きている。ベトナムは、 1m 以上の海面上昇に より最も重大な被害
を受ける 5 カ国の中の一つである(危機係数は 69%、移転しなければならない人口は 10.8%、海面上昇に伴う浸水地区は 12.2%)。
都市は気候変動により最も被害 を受けている。都市 部の人口は全人口の 30%を占め、都市部にお ける経済発展の可能 性はベトナム
国全体の経済発展可能性の 70%を 占めている。ベトナ ムの都市のほとんどが 海岸沿いまたは河川沿 いに分布している。 気候変動現象
の進行により 2025 年にベトナムの都市 の 3/4 は直接的・間接的な影響を受けると予測されている。ベトナム政府は、気候変動対策、
持続発展可能対策を実現するための具体的な手段として、都市計画、環境デザインを選定した。以下 に選定された都市計画、環境デザ
インにおける良質で効率的な目標を示す。
a) 現在の都市計画における防 災面を伝統や経験の 視点から評価し、自 然災害に対する都 市システムの堅牢性 及び持続発展性を阻 害す
る要素を抽出し整理する。目下考えられる阻害要素は以下の通りである。
▸
▸
▸
都市開発による資源・エネルギーの無駄遣い。
都市基盤整備は、都市化の速度・人口増加に追いつくことができず自然環境の変化に対応できていない。
計画設計、環境デザインは都市の貧困な人など気候環境の変動に影響を受けやすいが、この対象に関心が向けられていない。
b) 災害発生の予測検討を重視 する。なぜなら、気 候変動はますます複 雑になり予測し難 くなっているためで ある。本来、都市計 画、
環境デザインに関係するプ ロジェクトは、長期 ・中期・短期の需要 に対する戦略的な 対策であり、人口と 人の活動に直接的・ 間接
的に影響を与えるため、予測を重視した実現可能なものであることが必要である。
▸
的確に予測することにより、環境デザイン・都市計画の質と実現性を高め、確実なものとする。
c) 都市計画、環境デザインのアプローチの方法、重視するポイントを以下のように変えてみる。
▸
MP(マスタープラン)の代わりとなる戦略的な計画を採用する。
+ 気候変動による災害を阻止するために、環境に適応し共生する方策を探り、受動的ではなく積極的に災害防止を行う。
+ 気候変動が人間に与える良い条件を見出し、自然環境メリットを最大限に活かしデメリットを最小限に抑える。
+ 気候変動に対応するた め、国家、国 際的な位置、領 土、全ての都市 における将来に 向けた基盤施設 戦略との連携 を図り、経
済活動や人間の生活の安全性・連続性・安定性が確保できるようにする。
▸
戦略的な対 策を実 施する組 織に一 般市民 を巻き込 み、局 所的内力 を調達 する方針 を立案 し、加え て Core House 及び Public
House 整備、海岸・河川護岸の保護、植林など住民にテクノロジー(防災技術)を普及する。
世界の他の国と同様、ベトナム人は頻発する自然災害を通じて、持続的に発展できるための経験を 蓄積してきた。経験の例は以下の
通りである。
NSC 創立 10 周年記念誌
-2-
Cuu Lo ng 川デルタにおける洪水と共生する住宅グループ 整備プログラム(PJ)
1995~2005 年、C uu Long 川デルタにおいて政府援助のもと、住民参加によるプロジェクトにより一年の中で 3~4 ヶ月間浸水する
地区の 100 万人の人口に対し 1000 住宅グループ、20 万軒の住宅を整備することができた。本プロジェクトは、「洪水とともに生き
る」という方針に基づき、沖積平野、水産物の恵みを活かした安全な住宅地を整備し、住民の安定的な学習、生産、生活を確保した。
Hoi An 旧市街
Hoi An 旧市街は、世界遺産でありベトナムの観光中心である。その一方で、毎年、湛水深の大きい浸水被害を被っている。「常に魅
力的な Hoi An 市」という方針のもと、Hoi An 市の住民は、浸水する間の日々を賑やかな水上観光を行う日々に切り替え、観光客を多
く誘致し、自然の厳しい条件の下で市の生命を見事に維持している。
日本への期待
日本は、自然災害を多く受けている国である。日本の住民は持続的な環境整備の経験の蓄積、災害に対する忍耐力、自然災害に対応
できる能力を鍛えてきた。
111 年の歴史を持つ日建グループは世界一流の設計グループであり、多くの分野で実績を上げており、特に環境デザインのアプロ-
チ方法の改善を先取りしている。日建設計シビルは、ベトナムで 10 年以上の経験を有し、ベトナム全土で実績を上げている。ヒュ-
マン的で景観価値が豊かな計画設計・都市設計を行う日建グループはベトナム政府や専門家の信頼を得ている。
貴社の創業 111 周年の記念をお祝いし、建築家協会は日建グループがより発展し、環境デザイン分野でさらなる実績を築き、最近の
地震・津波災害の復興に貢献し、グローバルなレベルでの気候変動に対し世界のための安全な生活環境デザインを行うことを願う。
Nguyen Tan Van
-3-
NSC 創立 10 周年記念誌
創立 10 周年に寄せて
ベトナムの沿岸都市~自然災害 防止及び海面上昇の問題
T ran Ngoc Chinh
氏
生年月日 :1949 年 3 月 12 日
出 身 地:Quynh Thuan Quynh Luu Nghe An
経
歴 :2000~2003 年 :建設省 Viap の院長
2003~2005 年 :建設省、計画建築局、局長
2005~2009 年 :建設省副大臣
2009~現 在 :ハノイ首都 MP の計画・投資整備指導委員会会長、ベトナム都市開発・計画協会・会長
ベトナム建築士協会幹部、ハノイ市計画・建築委員会幹部、都市計画雑誌編集長
受
賞 :2003 年 HCM 市 T hu T hiem 都市計画コンペ、国際建築賞受賞、
1998 年 Dung Quat 工業団地基本計画、国家建築賞受賞、3 級労働勲章、
その他担当及び指導に参加した PJ:Da Nang 市 MP、Vung T au 市 MP、Con Dao 島 MP、T hai Nguyen 市 MP 等
ベトナム政府は、2009 年 4 月 7 日付(445/QD-TTg)に基づく決定により「2050 年までのビジョン・ 2025 年までのベトナム都市シ
ステム開発マスター プラン方針見直 し」を承認し た。2025 年ま での都市空間 開発方針は総 合的な方針であ り、ベトナム の 6 つの経
済・社会エリアの地理・範囲及びその特徴に相応しい都市空間の策定及びその管理に言及した方針で ある。この方針は、地理条件、自
然条件、経済社会発展条件及びその程度、伝統文化の特色、生態環境などの要素を包含する総合的な ものである。全国の各地方はこの
方針に基づき、省整備計画や各都市マスタープラン・詳細計画、各集中工業団地計画、出入国地点に おける経済区計画、観光地計画を
始めとする整備計画を策定し、都市整備・改造プログラムを確定する。この数年の都市計画は良好な 結果を達成し、ベトナムの急激な
都市化速度に相応しい国家建設・開発の要求を満足している。
ベトナムの各都市が経済社会の発展とともに現状のレベルに発展できた理由の一つは、ローカルコ ンサルタント及び日建設計シビル
を含む外国コンサルタントの協力にあると考えられる。日建設計シビルは、ベトナムにおいて高く評 価される多くの計画を行ったコン
サルタントである。例えば、同社は、Ha Noi 市、Ho Chi Minh 市、Quang Ngai 省、Hai Phong 市、Vinh Phuc 省などで業務を実施して
いる。2011 年に日建設計シビルは、「グループ創立 111 周年」及び「分社化による創立 10 周年」を迎えた。この歴史を見ると、日建
設計シビルが日本国に貢献し、ベトナム国の都市開発分野に効果的に参加出来たか、その理由が理解できる。
日本の東北地方における 2011 年 3 月 11 日に発生した大震災はマグニチュード 9.0 の地震によるものであり、日本の歴史の中でも特
筆すべき大きな自然災害である。大震災の翌日、ベトナム都市開発委員会は日建設計シビルへレター を送り、大震災による生命被害及
び財産被害に対するお見舞いを伝えた。日建設計シビルはこの大震災を通じて「過去」を振り返り「 未来」に向かう機会を見出した。
日建設計シビルが『環境と防災は一つ』という創立 10 周年記念誌を出版するアイディアを高く評価したい。
今後のベトナムの沿岸都市の整備計画について幾つかの意見を述べたいと思う。この理由は、ベト ナムの沿岸都市はいつも地震・津
波・海面上昇・台風・鉄砲水といった複雑な問題の脅威にさらされているからである。ベトナムは海 と島の多い国であり、海岸延長が
3500km で、地球温暖化及び海面上昇 に最も影響を受ける国家の中の一国である。そのため、ここでは 海面上昇と環境及びベトナムの
沿岸都市の自然災害防止に焦点を当てたい。
2025 年までのベト ナム都市開発 戦略によると 、ベトナムに は約 1000 の 沿岸都市及び 15 の沿 岸経済区が存 在する。例え ば、Ha
Long、Hai Phong、Da Nang、Quy N hon、N ha Trang、Phan Thi et、Vung Tau、R ach Gia などの多くの沿岸都市と Nghi Son、 Vung
Ang、Chu Lai、Dung Quat、Nhon Hoi、Vung Ro、 Van Phong などの大きな工業団地である。地球温暖化と海面上昇の過程及び観測
データに基づく考察に基づき、各沿岸都市及び工業団地を包括的に検討することが必要とされている。
ベトナムにおける地球温暖化の研究によればこの 50 年間( 1958~2007 年)に、年間平均温度が 5~7℃上昇し、冬季が夏季よりも
気温上昇が速くなり、北部が南部よりも気温上昇が速い。降水量、寒気、台風、降雨は、最近、増加 傾向にあり、激しい台風が以前よ
りも多くなっている。ベトナム沿岸の観測データをみると、ベトナムにおいて毎年、海面水位が 3mm 上昇し(1993~2008 年)、世
界における平均的な上昇速度とほぼ同様であるのが分かる。
NSC 創立 10 周年記念誌
-4-
そのため、海面上昇及び自然への悪影響を受ける時代において、整備計画を行う時、エリア別の環 境・地形・土壌・歴史・文化に関
する設計内容を検討すべきである。都市への地球温暖化の影響は、都市の基盤施設への影響、人口と 環境への影響、都市の住宅及び施
設への影響などが含まれる。ベトナムの海岸線が長く、地域・都市は潮位変化に大きく影響されるた め、以下の地域レベル及びエリア
別に環境及び自然災害防止の問題を研究する必要がある。
► 北部海岸地域の各都市(Quang Ninh 省から Nam Dinh 省)
► 北中部海岸地域の各都市(Thanh Hoa 省から Quang Tri 省)
► 中部海岸地域の各都市(Thua T hien Hue 省から Bi nh T huan 省)
► 南部海岸地域の各都市(Ba Ria-Vung Tau から Ca Mau 省-Kien Giang 省)
ベトナムの地球温暖化及び海面上昇のシナリオは、温室効果ガス の排出シナリオに基づき作成された。 1980~ 1999 年代に比べると、
低位予測(B1)では、2050 年が 28cm、 2100 年が 65c m であり、中位予測(B2)では、2050 年が 30cm、 2100 年が 75c m であり、
高位予測(A2、A1F1)では、2050 年が 33c m、2100 年が 100c m である。低・中・高位のシナリオに基づいた結果を見ると、21 世紀
の半ばに海面水位が 28~33cm 上昇し、 21 世紀の終わりに 65~100c m 上昇することが判る。
地球温暖化に対応するためには、沿岸都市を開発するに先立ち、上記研究に基づいた以下のような枠 組みの提案が必要とされている。
► 海面上昇により直接的な影響を受けるエリアの予測プログラム。
► 海面上昇に対応するため、海面上昇により影響を受ける可能性があるエリアに適した定住方法の研究。
► 洪水エリアにおける居住地区の再配置計画。
► 地球温暖化の対策を沿岸都市の政府管理に組み込む。
地球温暖化に対する都市開発方策を研究するのは非常に複雑であるため、短期・長期の柔軟な対策 と多くの業界の協力が必要とされ
る。対応システムには、二つのものがある。第一に、温暖化の悪影響を削減する対策を研究することで ある(今から留意すべきこと)。
第二に、温暖化による影響の予測に基づき、温暖化による被害を削減する対策である。
日建設計シビルは、ベトナム国において多くの都市計画を行っており、その中でも、沿岸都市・沿 岸経済区・海岸リゾートにおける
実績が少なくない。工業発展国である日本における経験と威信により日建設計シビルがローカルコン サルタントとともに、自然災害を
最低限まで削減する対策を有する戦略的な計画を研究することが望まれる。ベトナム都市開発計画委 員会は、常に日建設計シビルのこ
の数ケ年間の協力を高く評価し、将来においてもベトナムにおける都市開発計画を協働したいと思う。
Tran Ngoc Chinh
-5-
NSC 創立 10 周年記念誌
創立 10 周年に寄せて
ベトナムにおける日建設計シビ ルの環境・防災プロジェクト
T ran T rong Hanh
先生
生年月日 :1950 年 12 月 2 日
出 身 地:Thon T huong, Phu Luu Commune, Ung Hoa District, Ha N oi City.
一級建築士、建築博士、建築業副教授、上級専門家
経
歴:
1972 年 :キューバ、ラ・ハバナ総合大学 建築士 卒業
1973~1975 年 :ハノイ建築大学 講師
1992~1996 年 :建設省 農村・都市・住宅管理部 副部長
1996~2003 年 :建設省 計画建築部 部長
2003~2008 年 :ハノイ建築大学 学長
2009~2011 年 :Nguyen T rai 大学 学長
人類は、環境汚染や自然がもたらす凄まじい災害等の問題に直面している。最近、地震・津波・台風等が連続的にアメリカ、チリ、
中国、タイ、インドネシア等で起きており、数百万人の生命を奪っている。その中で、2011 年 3 月 11 日に発生したマグニチュード
9.0 の東北地方太平洋沖大地震では、死者及び行方不明者数が 2 万人を超えている。この日本の歴史上で最大の自然災害では、福島原
子力発電所の事故及び損失が経済社会生活と環境に激甚な余波を与えており、世界全体への警告となっている。
世界における近年の経済活動の急激な成長、人口バブルによる都市化、貧困、森林破壊、水資源・大気環境・土壌汚染等の問題は各
国で起きており、人間の生活環境を損なっている。グローバルな気候変動は、海水面の気温の上昇を引き起こした地球温暖化が原因で
ある。自然災害が不規則的に連続的に発生している事実は、世界という小さな人類共用の家の住人である各国の大きな心配となってい
る。
ベトナムは建国後 25 年後にドイモイ政策を実行し、経済・社会発展、都市化、現代的な社 会基盤システムの開発等の領域において、
これまで非常に偉大な功績を残した。しかし、ベトナム財源・環境省の 2011 年 6 月 10 日付けの報告によると、 2006~ 2010 年の段階
ではベトナムの環境が複雑に変化し、以下に掲げる 5 つの問題に直面している。
► 環境汚染は、特別に都市化された地域、工業団地、手工業の集落において拡大増長している。
► 生物多様性が急激に失われている。
► 環境保護(水資源、鉱物資源開拓、農地、保安林、景観、環境資源など)機能が低下している。
► 環境管理に不合理な事項が残置している。公衆の果たす役割が未だ適切に考慮、動員されていない。
► 最近、地球気候変化、自然災害、環境等の問題が増大する傾向がある。
政府は、環境及び自然資源の保護が大きな問題の 1 つとして特別な関心を払い、環境に関して 8 つの指標を定めている。その中で、
4 つの指標の達成に失敗している。保安林の面積率の計画指標は 42~ 43%であるが 40%しか達成されていない。都市固体廃棄物の回
収率の計画指標は 85%であるが、実際に は 75%しか達成されていない。工業団地・加工ゾーンでは、廃水の処理率は未だ 60%である。
1990 年にはベトナム全土で都市は 500 都市しかなかったが、今は 754 都市となった。環境汚染、森林・農地の破壊、土地利用・水
源利用に関する適切でない計画等により多くの問題が発生している。都市における生活の質はまだ低く、都市化における人口の増加速
度及び都市空間が膨張する速度に対して、技術的基盤と社会基盤の対応が追いついていない。このような状況は、環境保護の欠如、水
源の減少化、浸水、大気汚染、交通渋滞等の原因となっている。
気候変化は、いよいよ複雑になってきている。ベトナムでは、大雨、台風、洪水、旱魃などの異常気候現象が連続的に発生し、世界
各国の中で気候変化に最も影響される 5 つの国の1つである。台風・洪水などの災害は、生命・財産に多大な影響を及ぼすばかりか、
水源公害、土壌公害、樹林公害、作物公害等の激甚な影響や損害を与える。ベトナム最大の都市であるホーチミン市は、地球気候変化
に影響を及ぼされやすい世界で第 6 位の都市となっている。最近の 5 年間では自然災害による死者数が 500 人/年、財産損失が 14.5 兆
ドン/年とベトナム年間 GDP の 1.2%に値する被害を被っている。
ベトナム国では気候変化に関する影響を予測している。海面水位が 1m 上げれば、メコン・デルタの 37%が浸水し、ホーチミン市で
は 23%が浸水する。このことにより、全人口の 10~20%が影響を受け、近未来的には大規模な再定住が必要となるだろう。
NSC 創立 10 周年記念誌
-6-
近年、ベトナム政府は環境保護及び防災に注意を払っており、幾つかの具体的な行動や方向性を示している。
環境保護に関する国家予算は現在の 1%から 2%まで上昇する予定となっている。その他、環境保護と防災に関する計画、体制、政
策、資金公募等について、ベトナム政府は積極的に指導を行っている。しかし、環境保護と防災はこれからもベトナムに対する困難で
緊迫な課題となっている。
日建グループは、「社会環境デザインの先端を拓く専門家集団」の方針に基づき、国際的な市場で建築・都市と環境に関わる分野で活
動を行っている。日建設計シビルは日建グループのメンバーとして、都市計画・都市デザイン・都市技術基盤計画、生産工場計画、地
盤、水環境保護等を受け持ち、環境保護と防災に積極的に携わることを確約している。
ベトナムでは、日建設計シビルは約 10 年間にわたり担当した都市計画マスタープラン、都市詳細計画、各種施設計画の提案を通じ
て、ベトナムの環境保護と防災に大きく貢献している。それらは例えば、Vinh Phuc 省都市マスタープラン( 2030 年・2050 年)、H ai
Phong 市 Dinh Vu – Cat H ai 経済区マスタープラン(2025 年)、およびベトナムにおける多く都市計画マスタープラン、詳細計画提案
などである。
日建設計シビルは専門家集団として、都市及び地方における環境問題に対して実際の状況を理解かつ検討し、開発計画における環境
保護と防災に対するベストかつ適用可能な解を提案している。この結果ベトナム市場で日建設計シビルは、高い責任感を有し、高品質
な成果を提供することでその存在を確立し、ベトナム市場に深く浸透している。これからも、都市計画及び環境計画が強化されること
から、ベトナムの環境保護と防災事業に日建設計シビルの専門家集団の優秀性を発揮するべきであると考える。
日建グループの 111 年創立記念及び日建設計シビルの創立 10 周年記念を迎える中で、ベトナムの建築・都市計画及び都市管理専門
家として私は日建設計シビルと互いに協力する機会を得て、ベトナムにおいて貴社の著しい貢献及び成功を喜んでいる。今まで達成し
た成果及び貴社が選択した環境と防災に関する方針に対して、日建グループ及び日建設計シビルの皆様に心からお祝いを申し上げる。
同時に、日建グループ及び日建設計シビルがますます発展し、環境保護と防災事業により大きな成果を達成し、日本とベトナム両国の
21 世紀戦略関係の安定的な発展に大きな貢献を果たすことを希望している。
Tran Trong Hanh
-7-
NSC 創立 10 周年記念誌
創立 10 周年に寄せて
汚染制御と生態環境との調和に 基づく整備に係る研究と実践
~同済大学と日建設計シビルとの連 携 ~
経
李 光明 先生
歴 :1985 年 7 月 華東理工大学 石油精油専攻 卒業
1988 年 7 月 同大学院 有機化工専攻 修了
1990 年 7 月 同大学院有機化工専攻博士課程修了
1990 年 7 月 同済大学化学学科に入り、1995~1999 年に学科副主任に就任。
2000~2001 年に同済大学高等技術学院に就業、上海城市建設管理育成訓練センター常務副主任に
2002 年以来、同済大学環境科学・工学学院に就業、
2003~2010 年に同院副院長に就任。2010 年 10 月以来、同済大学科学技術処副処長を拝命。
2005 年 7 月から現在に至り、上海市万博科学技術促進センター副主任も担当し、主に万博科学技術
行動計画の実施と推進を担当している。
日建設計 CIVIL ENGINEERING(以下「日建シビル」)が創立され 10 年が経過しましたが、この間、日建シビルは同済大学と緊密
な交流連携関係を結びました。都市計画、地下空間開発、エコ建築設計と建設の面における交流と連携のほか、汚染抑制及び調和的な
生態環境整備についても同済大学環境科学・工学学院等の様々な分野の教授と密接な学術交流及び共同研究を行ってきました。
愛知万博の科学技術が中国上海世 博会における科学技術へ与えた啓発
2005 年 3 月、日建グループも計画・設計分野で貢献した日本愛知万博が開催されました。同年 6 月、同済大学の束昱教授と私は上
海市人民政府科学技術委員会の寿子琪主任、社会発展処の馬興処長ら一行と一緒に愛知万博を訪れ、日建シビルの専門家から万博のテ
ーマを反映した計画と設計の理念について説明を受けました。“自然の叡智”をテーマとした愛知万博は、人と自然の調和共存・共生
を中心とし、“宇宙、生命と情報”、“人生の‘技’と知恵”及び“循環型社会”の 3 つの方面から、「人と地球との調和共生、持続
的な発展」の先進理念を打ち出しており、また、それらの理念は、展示内容や技術展示を通して、また運営形式の中で充分に反映され
ました。高度な科学技術にサポートされた愛知万博のパビリオンの建設、展示及び運営は、知能、情報、交通、建築、エネルギー及び
環境等の方面において、多くの高度な新技術を応用し、日本と今日世界での科学技術成果及び未来の発展の趨勢を表しています。日建
シビルの専門家からの詳細な説明と愛知万博での体験は、上海市科学委員会の行政関係者と同済大学の教授達に深い印象を与えてくれ
ました。
2005 年 11 月に、中国科学技術部と上海市政府及び関連部門より共同で“万博科学技術行動計画”を公布、正式に上海市万博科学技
術促進センターを設立し、中国 2010 年上海万博の開催成功への支援とそれを保障するための専門科学技術行動がスタートしました。
「より良い都市、より良い生活」という上海万博テーマに対して、国内外の企業、大学及び研究機関を動員し、計画、整備、省エネと
新エネルギー利用、環境保全、情報技術応用とサービス、高度な科学技術展示と展示技術手法の応用及び安全保障などの様々な方面で
の科学技術創新活動に取り組みました。一連の新しい科学技術が上海万博で応用されたことは上海万博のテーマと呼応し、「成功で、
素晴らしい、忘れられない」上海万博の実現に大いに貢献しました。
上海万博会場における水環境修復 と整備に関する重要技術の研究
上海万博会場は黄浦江の両岸に位置し、黄浦江に連なり万博会場の景観水として会場を流れる白蓮涇 は、非常に汚染されていました。
特に上海万博期間である夏季高温の中では、水質が悪化しやすいリスクを有していました。これに対し、同済大学楊健教授と日建シビ
ル、華東師範大学、上海海洋大学及び上海市政工程設計研究院等の機関は、「万博会場景観水生態修復技術の研究とモデル事業」とし
て研究を行いました。日建シビルが提案した自然に近い状況を再現する手法は、動植物の生息環境を充分に考慮し、人が自然に親しむ
要求を満足させ、人工構造物と自然とが調和することにより、人と自然との共生を図るという理念と実績に基づいています。この考え
方は、河川と景観水の修復及び水質維持に関する生態浮島、浮床植栽、水生生物、生態護岸及び人工湿地等の水域生態系配慮工事の技
術に応用され、白蓮涇公園の河道整備の他、これらの技術は更に万博会場の後灘公園と万博公園などに広く応用されました。
水域生態機能の修復等の科学技術成果の応用と整備により、白蓮涇万博会場区間の上流河川及びその支流約 1.9km の河川が整備(浚
3
2
2
2
渫土量約 6.9 万 m 、浮島の緑化面積 5600m 、植栽面積 5000m 、湿地緑化面積 2600m )され、会場内の白蓮涇水質を浄化し、水生
生物の回復と生育に適切な生態環境を提供しました。河川沿いの緑化整備により白蓮涇公園は美しい景観が招く人と水が調和された万
博テーマパークとなりました。
化学工業園区での再生水利用シス テムの最適化による節水技術検討
中国のここ数十年間の急激な成長により人々の生活が大きく改善された一方で工業発展に伴う大量の水資源消費と同時に大量の廃水
が発生し、水処理と水環境保全において大きな圧力を抱えています。中国の化学工業は、各種工業の中でも用水量が上位に位置し、
年間用水量は中国の主要企業の用水量の約 20%を占めています。化学工業園区の発展において化学工業プロセスでの用水需要と廃
水の排出は、常に工業園区の持続発展におけるボトルネックの一つとなっています。これにより日建シビルは同済大学環境科学・工学
NSC 創立 10 周年記念誌
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経 歴(続き)
化学工業と工芸、コロイドと界面化学、触媒と水汚染抑制等の分野で科学研究と教学の仕事に携わっており、現在主に過程汚染防止と制御に関する研究
に従事。国家“十五”863 計画、科学技術省サポート計画、国家自然科学基金と地方政府重大科学技術難関攻略など数多くの計画に参加している。2003
~2005 年、上海中長期科学技術発展計画の「生態上海チーム」のチームリーダとなり計画の取りまとめを担当した。2007~2012 年、英国のイーストア
ングリア大学(University of East Anglia)環境科学専攻の名誉教授を授与された。前後 120 余りの科学研究論文を発表、申請・授権特許が 6 項目、教材
等の著作が 8 冊、中国政府から多数の科学技術の表彰を受賞している。
学院と連携し、中国科学技術部(MOST)-日本科学技術振興機構(JST)の出資援助により、共同で“環境と情報通信技術”の重点
領域である“化学工業園区における高効率節水情報管理の重要技術の研究”の課題に係る研究を行っています。同済大学と日建シビル
の合同研究開発チームは、中国と日本にある中国石油化工股有限公司高橋石化支社、上海石油化工股有限公司、南京化学工業園区
及び新日本石油株式会社、富士石油株式会社の化学工業団地に対して、用排水の現状と関連水ネットワークに関する調査と検討を行い
ました。日本の化学工業団地における用排水管理及び節水技術を検討し、中日両方の化学工業園区での用排水の現状調査と比較検討を
行うことにより、日本の工業界の技術による用水低減と排水の改善方法を適用、吸収し、水循環利用の理念を最大限実現し、中国化学
工業園区の節水に関する重要技術を積極的に検討しました。
代表的な工業団地の用排水状況の調査、中国化学工業園区内の企業用排水の関連データの分析、化学工業園区水資源管理データベー
スの整備等により、研究開発チームは用水操作の状況や多くの汚染要素の影響と大規模用水配水ネットワークの要求を基に、再生ユニ
ットとパラメーターの変化状況に合わせ水資源利用ネットワークを分析する数学モデルを構築し、対応する水再利用のネットワーク最
適化の技術と理論を提示しました。上海高橋石化公司と南京酸化チタン有限公司を研究対象とし、各操作ユニットの用水水質の状況と
特徴により、単汚染因子と多汚染因子とが影響する水再利用ネットワークモデル構築の研究を行い、再生ユニットとパラメーターの変
化状況に応じた水資源利用ネットワークの数学モデルの構築と最適化技術を研究開発し、水資源利用ネットワークの配合設計方法と組
分け最適化方法を提示しました。この配合設計方法を上海高橋石化公司の用水ネットワーク最適化に応 用し、ケーススタディを通して、
節水率が 20%以上達成できることを明らかとしました。また、数学計画法を南京酸化チタン有限公司の用水ネットワーク最適化に応
用し、廃水直接利用ネットワークと廃水再利用ネットワークの最適化を実施した結果、その節水率が 40%に達しました。
象山県大目湾低炭素生態新城の整 備計画及び新エネルギー利用の研究
気候変化への対応が既に世界的に注目されている今日、急激に都市化した中国では積極的に低炭素都 市の計画と整備を行っています。
日建シビルの低炭素生態都市の整備理念と実績は浙江省寧波象山県大目湾新城の整備に応用されています。日建シビルは、同済大学環
境科学・工学学院チームと共同で「象山県大目湾低炭素生態新城の整備計画と新エネルギー利用」の研究を行いました。当該地区が上
海、寧波等の大都市と密な関係を有する優れた立地条件や海洋資源が豊富であり生態環境が良好なことによる観光・レジャー、居住し
やすい環境条件及び深い歴史文化を有する特徴を活かし、インフラ施設、生態環境、エネルギー、建築、交通に係る諸計画と整備等の
面から低炭素生態発展理念と新しい応用技術を提案し、また、先進的な省エネ環境保全技術と新エネルギー技術の応用事例を紹介しま
した。「象山県大目湾低炭素生態新城整備ガイドライン」と関連の研究報告書を研究成果として、象山大目湾新城低炭素整備において
排出源からコントロールすべき産業構造とエネルギー構造の最適化、湿地、緑地と水環境の整備及び環境リスクの回避等の面で明確な
意見と提案を提出しました。2011 年 6 月に中国住宅・城郷建設部が主催した専門家審査会では、上記の課題研究と成果は高く評価さ
れました。
展望
日建シビルは最近十ケ年間の発展の中で、同済大学との交流と連携を通して、互いに深い友情を結びました。双方は汚染制御と生態
環境と調和した整備に関する研究と実践において連携した中で日建シビルの先進理念と技術が応用され、日建シビルの発展につながる
ことにもなり、同時に大学の学科発展と科学技術サービスにも強力な支援と援助を与えてくれました。現在、世界の企業と大学は共に
生態環境保全と持続的発展に関心を寄せ、様々な災害問題にも積極的に取り組んでいます。環境リスクと環境災害には未だ数多くの科
学と技術課題が残っており連携により共同で研究する必要があります。中日におけるは環境分野での連携の進路は非常に幅広く、各種
スケールの環境問題と物質の転化利用が生命存続に与える環境影響と様々な事件や災害の発生後に起きる副次的な環境災害問題が今後
の共同研究の重点となっています。そのため、更なる交流と連携を期待しております。
李光明
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NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
地域の自然・風土を活かした総合治水計画の提案
~ベトナム国ビンフック省都市計画 マスタープラン~
総合的治水対策の提案
ビンフック(Vinh Phuc)省は、ベトナム国北部のホン川デ
ルタ地域に属し、首都
ハノイから北西に約
China
Vietnam
40k m の 位 置 に あ り
ます。近年、トヨタや
ホンダなど多くの大企
下流への唯一の放流河川である Ca Lo 川は河川延長も長く、
十分な堤防整備がなされていま せん。さらに、一貫し た河川管
理が行われておらず、全面的な 河川改修は管理機関ど うしの調
整などに多くの時間と労力を要します。そのため、Ca Lo 川の
改修のみの治水対策では、早期解決が困難です。
Vinh Phuc Prov ince
業が進出し、著しく経
済発展を遂げている省
Ha Noi
Laos
の一つです。この省の
都市部を対象に、2030
年を目標とする人口
Fig.1 Location Map
100 万人、面積 318km2
の都市区域の都市計画マスタープランを策定しました。
Fig.3 T he current status of the Ca Lo River
このマスタープランでは、都市化に伴う水害リスクの軽減策
を講じることを重要な課題と捉え、詳細な現況分析・評価と、
それに基づく地域の自然・風土に配慮した以下の総合的な治水
対策を提案しました。
そこで、河川の流下能力に頼 るだけでなく、流域全 体で洪水
被害の軽減を図るとともに、省 内で管理・運営できる 総合的な
治水システムの導入を図りました。
都市の拡大エリアの選定
現状の都市の広がりをふまえ、4 つの評価の視点を設定して、
GIS システムによる分析を行い、総合的な 評価を行いました。
R iver Road Improveme nt
(e mbankment and dredging)
Comprehensiv e flood c ontrol sys tem
① 都市開発の優位性評価による都市の拡大エリアの選定
② 地域の環境を活かした、総合的治水対策の提案
③ 政府と民間の分担による効率的・効果的な治水整備の提案
M aintenance of
f lood cont rol f acilit ies
D eve lopment of ret arding ba sins
and de tention ponds
Prope rty Ma intenance dis charge
(spi llway, draina ge pumpin g sta tion)
M ul tipurpos e reta rding bas in
Improve d w at er re tention
and re tarding bas ins
Me asures in t he ba sin
N ature conserva tion areas
Se cure land for fl ood
評価結果に基づき、都市拡大の 方向性を示すとともに 、都市の
拡大エリア選定の基礎としました。
総合評価では、特に主要道路 沿い(特に国道沿い) や中心地
Es tablis hment of dis ast er
prev ention det ention pond
Land us e regulation
Fig.4 Classification of comprehensive flood control system
に近いなどの開発ポテンシャル が高い地域については 、治水安
全性の確保の容易性を考慮し、
4 つの視点で優位性を判断しまし
た。
■対策 1:河道の整備(河道拡幅、河床掘削 、堤防整備など)に
よる流下能力の確保
<評価の 4 つの視点>
・ 十分な流下能力を確保するために、
河道の拡幅、
堤防の整備、
視点 1:地形・地質条件に基づく地盤整備の容易性
河床浚渫などを行う。
視点 2:大雨・洪水に対する都市の脆弱性
・ 拡幅する河道は、可能な限り現況断面の形状や周辺の現況地
視点 3:既存市街地・集落の土地利用転換の可能性
盤高を活かした形状とする。河川沿いの土地利用状況を踏ま
視点 4:主要道路沿いの効果的な開発の可能性
えて、河川断面は単断面もしくは複断面を適宜設定する。
Very High
・ 既存市街地や集落が河川沿いに密集している区間は、原則と
して現状断面を維持する。
High
Popular
Low
Very Low
■対策 2:遊水池・調整池の整備+保水・遊水地機能の向上
・ 河川からの洪水を一時的に貯留する人工湖を 2 箇所、
遊水地
を1箇所整備する。
・ 人工湖は、現況の流域特性、既往の洪水被害状況を踏まえ、
河川に近接して、周辺よりも地盤高が低いエリアを計画地と
する。
・ 単なる治水機能の確保を目的とした湖ではなく、多様な機能
を付加して、魅力的な環境を形成する。
+湖A(人工湖)
:現況の土地利用状況を考慮して 、常時は農
地として利用する。
+湖 B(人工湖)
:沿岸部に観光・レジャー 施設を誘致して、
訪れる 人々が 楽し く過ご せる 親水空 間を
形成する。
+湖C(遊水地)
:常時は市民活動の場である公園として利用
する。
Fig.2 Assessment of the advantages of urban development
NSC 創立 10 周年記念誌
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■対策 3:放水施設等の整備
政府と民間の 分担による効率的かつ効果的な 治水整備の
提案
・ Ca Lo 川下流域への負担を軽減するために、2 箇所の人工湖
からホン川への導水路を整備する。
・ Ca Lo Cut 川の河道浚渫を行い、ホン川への導水路としての
都市化の整備状況に応じて、 効率的かつ効果的に治 水整備を
機能を確保する。
進めていくために、政府と民間 で分担して実施してい くことが
・ ホン川堤防直近の 2 箇所に大規模な排水ポンプを整備し、
ホ
有効です。この計画では民間が実施する治水対策を定めました。
ン川への強制排水を行う。
■河道改修の分担
■対策 4:洪水発生頻度を考慮した治水対策
河川改修には多大な費用と時 間を要します。民間の 投資機会
これまで、毎年のよう に洪水を許容し てきた農村地帯 におい
の確保と治水安全性の確保の両 立を実現させるために 、河川沿
て都市化を進める場合、大規模 な洪水から都市を完全 に守るよ
いの開発者に対して河道改修の 整備を分担させること を提案し
うな治水対策を一度に講じることは容易ではありません。
ました。
現地の状況、予算の確保、都市化のスピードに合わせながら、
複断面の河道整備の場合には、低水路部(10 年確率降雨対応)
効果的な治水対策を選択し、段階的に実行していくことが必要
を政府が、高水路部(100 年確率降雨対応)を 開発者が整備す
です。
今回の検討では、
貯水湖の整備が効果的であることから、
るものとしました。
初期段階では湖を整備し、段階的に河川改修、ポンプ整備を進
め、長期的には本格的な河川改修を目指す方針としました。
■調整池の整備義務の付与
都市化に伴う流出量増加の抑 制を早期に行うために 、民間開
発者は開発エリア内に調整池(10 年確率降雨対応)を整備する
ことを定めました。
このマスタープランでは、ベ トナムが抱えている洪 水被害軽
減を実現する方法の一つとして 、都市計画と連携した 治水計画
を目指しました。政府と民間、地域の人々が一体となった安全・
安心のまちづくりの実現に貢献できれば幸いです。
日建設計シビルは、都市の健 全な発展と秩序ある整 備を実現
に向けて、魅力ある計画ととも に、技術的なバックア ップに支
えられた、安全・安心かつ世代 を超えて愛される都市 づくりを
目指します。
Fig.5 Flood damage reduction through measures at each
LakeC
V=9×106m 3
A=250ha
LakeB
V=33×106m 3
A=1,000ha
河川改修区間
Riv er improv ement sector
Drainage channel 2
放水路2
LakeA
V=14×106m 3
A=400ha
Drainage channel 3
放水路3
2
Overview
of facilities
施設概要
流域
River Basi n
Drainage channel 1
放水路1
施設内容
Facility
Phan 川流域 Drain
放水路1
age ch ann el 1
Phan Riv er
Drain
age p ump 1
排水ポンプ1
1
age ch ann el 2
Ca Lo 川流域 Drain
放水路2
Ca Lo Riv er
Hong Riv er
ホン川
Drain
放水路3
age ch ann el 3
排水ポンプ2
Drain
age p ump 2
規模・能力
Scale/Ca pacity
3
150m
/s3/s
150 m
3
3
3
3
3
3
150 m /s
150m
/s
350 m
350m
/s /s
100 m
100m
/s /s
3
450m
450 m
/s3/s
Fig.6 Flood Control System Plan
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NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
海上都市の環境と防災
景観と機能性の調和
寧波市は、上海から杭州湾に架 かる杭州湾海上大橋 を利用し
て南へ車で約 3 時間の距離にある人口約 550 万人の大都市です。
埋立前の島の記憶
計画地の現況はすべて海面では なく、羊背山、青門 山、大平
寧波市象山県は寧波市からさらに南へ 60kmにあり、Fig.1 に
岡といった山に囲まれています 。造成にあたっては、 これらの
示す東海明珠島は象山県における面積約 800ha の人工島におけ
山地を切った土砂を埋立材料に 用い、土砂運搬距離を 最小にし
るリゾート開発です。計画地は 、上海、杭州、寧波と いった大
ました。ただし、山はすべて削 るのではなく、高台を 残して、
都市からのアクセス性に優れ、 良好な自然環境と豊か な海洋資
住宅地として利用することで、 元の地形の記憶がとど まるよう
源に溢れるリゾート地として近年特に注目を浴びています。
に計画しました。その他、環境 と防災に関して以下の 点を考慮
概念計画を作成するに際して、 計画地の地形、気象 、海象、
しました。
地質などの自然条件を十分に分 析し、埋め立て造成、 港湾、土
伝統建築の再現
地利用、交通、環境などの各計 画に反映しました。特 に計画地
象山石浦の木造・木外壁という 建築の特徴を再現す る街並み
が海上埋立地であるため、計画 的に自由度が高く高級 な住宅地
を実現できる一方で、地震だけ でなく津波や高潮に対 する市街
を、商業・住宅複合地区に再現しました。
内陸側へ都市施設集中
地の安全性を確保する必要があ ります。この計画では 、地震時
島の入り口付近を、来訪者のた めの宿泊や商業、娯 楽施設を
の液状化対策に加え、防波堤や 地盤高を高潮に対して 十分な安
配置した「ゲートゾーン」とし 、資産価値の高い都市 施設を自
全性を見込んでいます。今回の 東日本大震災のような 千年規模
然災害を受けにくい内陸側に集中的に配置しました。
の津波に対しては、外洋に面して 防波堤と護岸を二重に 設置し、
その破壊力を低減すると同時に 、市街地や主要都市機 能を陸側
に配置しています。
海水を活用した修景計画
周囲を海に囲まれた埋立地の特 性を活かし、海水を 計画地内
に取り込むことで、優れた景観 を計画しました。各宅 地には、
縦横に水路や緑地を引き込み、魅 力的な住空間を計画し ました。
Fig.1 Bird’s-eye view
Gate Zone with
urban facilities
Seawater canals
legend
golf course
marin a zone
upper-class resid ential area
(sea side)
gateway zone
residentialarea
with water and green
upper-class resid ential area
(hill sid e)
axis of a bustle
災害安全性を考慮した造成計画
Fig.2
NSC 創立 10 周年記念誌
axis of an envir onment
axis of a view
Zoning
Fig.3 Image of traditional townscape
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丘陵地における造成計画では、 通常、土地利用と土 量バラン
環境を指向した海水運河計画
スから地盤高が設定されますが 、本計画は海上の埋立 地である
ことから、変動する潮位に対し て安全性を確保する必 要があり
ます。
計画地内で優れた景観を創出し 、同時に親水性を高 める水路
を縦横に配置していますが、計 画地内では淡水が不足 すると予
また、海水を引き込んで水路を 設け、水路に面した 係留施設
を有した住宅地を計画している ため、地盤高と水位の 関係も考
慮する必要があります。
想されたため、海水を引き込んで 水路に流す計画として います。
引き込む海水は、高級住宅地や リゾートゾーンの価 値を維持
するために一定以上の水質を確 保し、親水性を維持す る必要が
そこで、計画地のある大目洋の 潮位変動データなら びに、中
あります。海水の場合、水質を 確保するためには、定 期的に水
国の海洋技術の専門家を交えた 討議を踏まえ、以下の ように地
交換を行う必要がありますが、ここで も動力に頼らない、 1 日
盤の高さを設定しました。
2 潮汐変動を利用する海水循環システムが採用されています。
このシステム では、堤 内地水域 の水が 7日で入 れ替わる よう、
東側マリーナ前 面の防波堤 は外洋に面 しているた め、100年
東側(3箇所 )及び西側( 2箇所)に水門を設 置し、水門を コンピ
に1回の 確率で生起 する高潮 にも耐えら れるよう に、潮位と
ュータ制御して、計画地東側か ら外海の水を入れ、水 路を経由
波高のデータから、天端高を+9.2mとする。
して水域の西側から排出します。
計画地外周のその他の堤防は、過去最 高潮位に対して安全を
確保できる ように、 最高高 潮位に余 裕高( 1m)を見 込んで、
天端高を+6.0mとする。
これらの堤防によって、計画地 の地盤は異常時の潮 位の変動
から守られることになります。そ こで、堤内地の計画地 盤高は、
平常時の水位変動に対する安全 と親水性を確保するも のとし、
平 均 最 高 潮 位 が +3.29m で あ る こ と か ら 、 余 裕 を 見 込 ん で
Water flow
+4.0m としました。
Water gate
計画地内の水路は、外海の潮位 変動を利用して水循 環を図る
ものとし、水位を+0.5m~ 1.5m の間で制御します。
legend
network ofwater channels
network of green belts
Water gate
view point
parks and belts of greenery
Embankme nt to control 1/100 h igh tid e +9.2m
golf course
Fig.6 Water circulation inside of tide
Heig ht of outer dike bas e on
maximum tide i n the past +6.0m
Ground he ight +4.0m
更により良質な水質を維持する ために、以下の方法 が追加さ
れました。
Inside sea
Outside sea
・水流発生装置を設置し、水平方向の流動を高める。
・曝気装置を設置し、鉛直方向の流動を高める。
・中央池の中心部に噴水を設置 し、酸素の供給を図る とともに
Extent of change of cana l water lev el:
ランドマークを創出する。
+1.5m~+0.5m
Fig.4 Height of tide and ground
まとめ
東海明珠島計画は、優れた都市 デザイン力とそれを 実現する
造成、海洋、環境、地盤といっ た総合的な技術力がイ ンテグレ
ートされたプロジェクトです。 デザイン的に優れた都 市はその
価値が持続するそれだけで環境 配慮型の開発ではあり ますが、
加えて災害安全性の確保により その価値が継続するこ とを保証
しています。
日建設計シビルは、これからも 環境と防災に配慮し た都市・
地域開発の実現を通じ、社会に貢献し続けます。
Fig.5
An upper-class residential area of canal side
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NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
治水・水環境分野の取組み
近年の集中豪雨の発生頻度
Fig.1 は、過去 30 年間において、時間 50mm 以上および時間
100mm 以上の雨の発生回数をまとめたものです。
最近 10 年における時間 50mm 以上の雨の発生頻度を 30 年前
と比べるとその頻度は 1.4 倍、時間 100mm 以上の場合で 2.1 倍
Flood analysis model
に増加しています。このように、短時間に多量の雨が降る可能
性が高まっていることがわかります。
1. Frequency of occurrence of rainfall more than 50
1986∼1995
Frequency
1976∼1985
1976
1996∼2005
Ave.288 times
1986∼1995
Ave.234 times
1976∼1985
Ave.209 times
81
1996∼2005
86
91
96
01
River model
05
2. Frequency of occurrence of rainfall more than 100
Sewage system
1996∼2005
Ave.4.7 times
1986∼1995
Ave.2.2 times
Frequency
1976∼1985
Ave.2.2 times
1976
81
86
91
96
01
05
Fig.1 Increase of occurrence of torrential rain in recent years in Japan
Examples of flood by torrential rain
Source: official website Sanjou city, Niigata
Fig.3 Image of hydraulic analysis in urban areasand examples of floods
市街地における浸水防御・水質改善
一体化プロジェクト
下水道施設は雨水を速やかに排除し浸水を防御するとともに、
汚水の収集・処理により生活環境や河川、海域などの環境を保
全する重要な役割を果たします。
大阪市の中央西部の抜本的浸水対策として計画された土佐堀
∼津守下水道幹線とその流末の津守下水ポンプ場の基本計画∼
実施設計では、雨水を流末の津守下水ポンプ場に移送するだけ
でなく、10mm/日程度の雨を本管で貯留し晴天時に水処理施設
Fig.2 Situation of torrential rain in Okazaki in 2008
(Source: website of Japan Meteorological Agency)
に送るなど、治水機能にあわせ水質改善にも寄与できる計画と
しました。
集中豪雨から都市を守る
都市における水災害は、河川や水路からの氾濫・浸水だけで
なく、雨水排水施設の能力を超える降雨による浸水もあります。
下水道の排水能力は概ね 5 年∼10 年確率(50∼60mm/h 程度)
の降雨に基づき計画・整備されており計画を上回る豪雨発生時
には、浸水被害が発生します。
例えば 2000 年 9 月に名古屋市周辺で発生した東海豪雨(総雨
■Tsumori Sewage Pump Station in Osaka
・Estimated max storm-water flow :89m3/s
・Estimated max sewage flow :23m3/s
・Completion :2005
■Tosabori-Tsumori Drainage Tunnel
・Internal diameter
: φ3,000mm ~ φ6,000mm
・Length: 6.5km
・Completion: 1996
量 567mm、最大時間雨量 93mm)や 2008 年に岡崎市を襲った
最大時間雨量 146mm という豪雨では、市内の排水が計画排水量
を上回り、都市水害が発生しました。
当社では市街地の浸水対策施設である管渠やポンプ場の設計
に加え、地下空間における浸水評価、避難計画立案、河川によ
る氾濫解析、生産施設での雨水排水対策など、都市域における
豪雨対策について、水理解析ツールを用いた評価ならびに対策
の計画・立案を積極的に行っています。
NSC 創立 10 周年記念誌
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Storm-water storage volume
: 90,000m3
Fig.4 Outlines of Tosabori-Tsumori Drainage Tunnel and examples of floods
and Tsumori Sewage Pump Station in Osaka
生産施設における雨水排水計画
閉鎖性水域の水環境改善事業
わが国の生産施設は集中豪雨の発生頻度が高まる以前に建設
閉鎖性水域であるダム湖の水質問題は、大きく①冷水②濁水
されたものが多く、施設老朽化対策とともに全体計画の見直し
長期化③富栄養化があげられ、ダム下流での水利用やダム湖内
が必要です。
の親水利用などに問題をおこします。これらの問題に対し、流
雨水排水路や管路をモデル化し、実際の集中豪雨と同じ降雨
強度を想定したシミュレーションを行い、浸水の発生箇所と浸
域内の汚濁負荷解析、数値モデルを用いた水理・水質解析など
を行い、総合的な水環境改善対策の提案を行っています。
水深を定量的に評価し、貯留施設やポンプ施設の増強、管渠径
アオコが大量
の拡大、バイパス路の設置など、効果的で経済的な対策を立案
に発生していた
します。あわせて、雨水排水対策の検討においては油の流出防
M ダムで、右図
止等、環境保全への寄与も視野に入れた対策を提案しています。
に示す曝気施設
の設置を計画し
◆Cross section
Electric winch
Float
Euphotic
Float
Air bubbles
Flow of
water
Flow of
water
ました。現在で
Vertical
i l ti
は、施設の運転
によって、下図
Taking
phytoplankton
to aphotic zone
Air
h
Aphotic zone
Control water
bloom
に示すようにア
<Countermeasure>
Enlarge sizes of pipes
Inundation
from manholes
オコの発生はほ
Outline of aeration facilities planned in M Dam.
とんど見られな
くなりました。
Overflow from
drainages
P
<Countermeasure>
Installation of temporal
storage facilities
<Countermeasure>
Enhance ability of
by-pass drainages
<Countermeasure>
Installation
of
pumps for drain
<Before executing measures:
a large amount of microcystises
are generated>
Fig.5 Example of evaluating rainwater drainage measures in factory site
<After executing measures:
controlled generation of
microcystises>
(Source: website of Kinki Regional Development Bureau.)
Fig.7 Example of Countermeasures effect against microcystises in M Dam
分流水路による水環境改善
大目湾新城生態水環境専項計画
分流水路は、暗渠と開渠を組み合わせて計画し、開渠部では
中華人民共和国浙江省象山県地先の大目湾を埋め立てて造成
自然の浄化作用を利用し、豊かな生態系の形成が期待できる形
される新市街地(約 14.39km )を対象として、洪水防御、水環
態としました。
境保全、生態系への配慮及び低炭素都市形成等に関して検討を
分流水路に取り込む排水は約 86 万人分の下水処理水であり、
2
行いました。
下流河川の水質改善によって、下流の取水水質が改善すると想
新都市の計画に対し、①後背地流域からの洪水に対する安全
定される水道給水人口は約 800 万人です。また、この分流水路
性確保、②新都市内における水域(淡水域・海水域)の水環境
は、万一、流域で有害物質の流出事故が発生した場合に、その
保全策の立案、③生態系構築の検討、④低炭素都市形成の検討
水を緊急的に取り込み防災水路の役割も果たします。
等大きく 4 つの課題に関する検討を行いました。
事業による本川水質改善効果は平面 2 次元モデルによる水質
解析で検証しています。
Damuwan
Example of constructing revetment
with aquatic plant treatment
・Total length;39km
・Design maximum discharge;11 ㎥/s
・Channel type;Box culvert (2.5m□×2 etc)
Open channel (width=20∼60m)
Fig. 6 Example of imaging installation of separate channel
Fig.8 Planning storm-water reservoir for flood control and proposing
construction of rich-in-nature type of revetments
-15-
NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
都市活動・環境を支える交通結節点開発
交通結節点の役割と日建設計シビルの実績
川崎駅東口駅前広場再編
交通結節点とは、鉄道駅や駅前広場、駅ビル等が一体となっ
∼人と環境の広場づくり∼
川崎駅東口駅前広場は、昭和 61 年(1986 年)に地下街アゼ
た交通ターミナル、交通乗換え空間を指します。
リアとともに先進的な歩車分離の考え方を取り入れた形で整備
交通結節点が便利であれば公共交通の利用者が増加し、結果
が行われました。しかし竣工後およそ 20 年が経過し、少子高齢
として自動車交通、大気汚染を抑えることが期待できます。ま
化や環境問題、西口側の変貌と東西連携強化の必要性など、整
た、結節点の中心にある広場空間が緑豊かであれば人々の交流、
備時点からの社会的・経済的状況の変化によりその再整備が求
都市環境、景観、都市防災の向上に貢献します。
められていました。
このような中、川崎市は平成 16 年(2004 年)より「川崎市駅
日建設計シビルは日建グループ各社と協力し、都市計画や交
周辺総合整備計画策定協議会」を設置し、各方面の関係者と共
通計画、景観計画をはじめ、駅周辺建築、駅前広場、地下街、
に約 7 年間に渡り再整備計画について議論を行ってきました。
地下駐車場などを、一体的に計画かつ設計する点に特長があり
それらを経て「人と自然とテクノロジーが融合する広場」とい
ます。これまで経験した仙台、東京、新宿、川崎、新横浜、静
うデザインコンセプトが掲げられ、
「高次のバリアフリー」、
「環
岡、岐阜、大阪、姫路、鹿児島等の大規模な交通結節点整備の
境配慮」
、
「先端技術都市・川崎の効果的 PR」をテーマに政令指
うち代表的なものを以下にご紹介します。
定都市の玄関口に相応しいアーバンデザインを実現する方針を
決定しました。
この方針に沿って CO2 の削減とヒートアイランド現象の緩和
を目的に、防汚を目指した光触媒、透過線のある太陽光発電パ
ネル、高輝度 LED 照明、保水・透水性舗装、壁面緑化、自然採
光、高反射屋根材等の川崎市に関連した多種多様な先端環境技
術を導入しました。地下街換気塔については、その換気機能を
果たすと同時に、駅前における新たなシンボルとしても機能す
るようデザインを行いました。換気塔側面には LED 電球が埋め
込まれており、気温、風向、風力の変化によって照明色や照射
方向を変えます。これらの最先端の環境技術を採用したシンボ
ルモニュメントを設けることで市民への環境情報発信にも積極
的に取り組みました。
東口広場再編工事は着工から約 2 年半をかけ平成 23 年 3 月竣
功し、広場の表情を大きく変貌させました。
Shin-Yokohama North Gate Station Square (Kanagawa Pref., Japan)
Kanagawa
Kawasaki East Gate Station Square (Kanagawa Pref., Japan)
The key design elements: The glass canopy and the white symbol tower
Shizuoka North Gate Station Square (Shizuoka Pref., Japan)
Kawasaki East Gate Station Square (Kanagawa Pref., Japan)
Openings providing light-filled atmosphere under the bus terminal shelter
Gifu Station North Gate Pedestrian Deck (Gifu Pref., Japan)
NSC 創立 10 周年記念誌
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Kawasaki East Gate Station Square (Kanagawa Pref., Japan) Front view of the glass canopy and the central top-light
南アジアに広がる交通結節点整備
東南アジアの諸都市では、これまで鉄道整備に伴う交通結節
点整備への認識が低く、鉄道利用や乗り換えの利便性は必ずし
も高いものとはいえないものでした。結果として公共交通の利
用が進まず、自動車交通の増加を促進させ環境への悪影響が深
刻化するといった都市問題を抱えていました。
このような交通・環境問題を克服するため、中国、ベトナム、
インドネシアなどの東南アジア諸外国でも地下鉄や鉄道整備計
画では、鉄道利用を推進しながら鉄道事業の収益性を向上させ
る日本型交通結節点整備、駅拠点開発(=TOD 公共交通指向型
開発)に注目が集まっています。
日建設計シビルでは、日建グループの都市・建築・土木技術
Planning & design of a transportation terminal (Suzhou, China)
に係わる総合力と日本国内における豊富な実績を生かし、分社
以降中国諸都市で地下鉄整備と連携した立体的・複合的な交通
拠点整備計画に数多く取り組み実績を上げています。
また、最近ではホーチミン、ジャカルタで地下鉄整備に伴う
地下街や交通結節点の整備可能性を検討する「官民連携による
PPP 事業可能性調査」を JICA より受託し、民間資金を導入し
た交通結節点整備計画の実現に取り組んでいます。
Planning & design of a multi-layered urban terminal (Jakarta, Indonesia)
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NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
都市地下空間開発のフロントライン
都市地下空間開発の系譜と地下 街
都市型災害に対する地下施設の 防災対策
我が国の都市地下空間開発は, 明治後期、上下水道 の収容空
近年、都市における局所的な集中豪雨が頻発しており地下施
間に始まり、昭和初期に地下鉄 (浅草~上野間)が建 設された
設に甚大な被害が発生しています。また阪神淡路、東日本大地
後、都市化の進展に合わせ、都 市インフラや地下鉄、 道路等の
震を経験して地下構造物の耐震性や安全な避難、災害後の早期
収容空間としてその範囲を拡大してきました。
の事業再開(事業継続計画)にも関心が高まっています。
特に近年、各都市のターミナル 駅周辺ではライフラ インはも
日建設計シビルは、国土交通省より「地下街耐震に関するガ
とより地下鉄、地下街、地下通 路、デパート地下階、 地下駐車
イドライン」の作成を受託して耐震性向上のための基本方針を
場、高速道路等が集まり高度に地下利用されています。
とりまとめました。また平成 17 年の水防法改正により地下街
地下街 はこ のよう なタ ーミ ナル地 区に おい て不特 定多 数の
等の所有者 または管 理者に 対して避 難確保計 画策定の 努力義
人々が日常的に利用する身近な 地下商業施設であり、 その整備
務が課されたことを受け、大都市圏の駅周辺の複雑な地下空間
は都市計画、建築・土木技術、 消防、商業計画等の統 合を必要
ネットワークにおける浸水検討調査に取り組んでいます。
とします。
日建設計シビルは、静岡ゴール デン街のガス爆破事 故により
地下街の設置・防災基準がより 厳しく運用されるよう になった
1980 年代以降、川崎、神戸、大阪、京都、広島、博多と我が国
Z
における殆どの新設地下街の計画と設計に従事してきました。
Flooding incident at Azabu Juban subway st.
(Oct.2004)
Flooding incident at Hakata subway st.
(Jun.1999)
(Provided by Ministry of Land, Infrastructure, T ransport and Tourism)
Shin-Tenjin Underground Shopping Mall (Fukuoka Pref., Japan)
(Baseline & Detail Design <archit ecture> :Nikken Sekkei + Nikken Sekkei Civil Engineering)
T he history of underground mall constructions in Japan
NSC 創立 10 周年記念誌
Underground pedestrian network around Tokyo Railway Station
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地下街リニューアル
国内の主要な地下街は開業後 30~ 40 年前 後を経てバリアフ
リー化、耐震補強、設備更新、 隣接ビルの再開発とそ の接続等
のためにリニューアルの必要性が高まりつつあります。
地下街リニューアルは空間制約 が大きい中で店舗営 業への支
障を最小限とする必要があり、 更に既存改修等におい ては関係
者協議を始め多項目について検 討が必要とされる技術 的ハード
ルの高い業務ですが、日建設計 シビルでは札幌や八重 洲、川崎
等の各地下街リニューアルに取り組んでいます。
今後も地下街を含む地下ネット ワークの再整備ニー ズは高い
ものと考えられますが、一方で 地下施設は作り直しが 極めて困
難な施設でもあります。そのた め長期的にその役割を 発揮でき
るよう維持・更新しつつこれら の地下施設を利活用し ていくこ
とが、社会資源の有効活用、ひ いては都市環境の面か らも重要
Master Plan for Qianjing Century CBD (Xiaoshan District, Hangzhou, China)
な都市課題といえます。
Renewal of the Sapporo Underground Mall (Hokkaido Pref., Japan)
都市地下空間開発の国外への展 開
International competition for underground space planning & design
Cultural Center District, (Tianjing, China)
G-Project (Incheon City, South Korea)
Underground planning & design project areas in China & Korea
国内における地下開発 の豊富な経験と 技術を基礎に、 近年で
は中国やベトナムなどの主要都 市の地下開発計画に携 わってい
ます。
中国における地下開発は、地下 鉄を整備する都市の 増大に伴
って、沿岸部から内陸部に拡大 しています。また対象 施設も地
下街、地下鉄だけでなく、延床面積が数 100 万㎡を超える巨大
建築群の地上-地下の一体的な開発までおよび、多種多様な施設
が巨大化し、複合化しています 。一方、最近中国では 大規模な
地震、洪水、火災を経験し、上 述した巨大な複合施設 の防災・
環境技術に注目が集まっていま す。この状況下、地下 から都市
までを包括的にデザインする日 建グループの総合力は 高い評価
を受けています。最近では中国 のみならず、ベトナム 、インド
ネシア、韓国においても地下空 間設計に対する高い評 価を得て
います。
Metro station area design Industrial Park (Suzhou, China)
-19-
NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
化石燃料から再生可能エネルギーへ
∼エネルギーインフラと日建設計シビル∼
これまで生産施設設計部門は、石油化学・電力・鉄鋼プラン
トなど産業基盤の計画、設計、監理を主な業務としてきました。
最近では、生産設備におけるエネルギー利用の効率化をキーワ
ードに、省エネルギー化、環境負荷低減が必要になっています。
ここでは、エネルギー分野を中心に近年の取り組みを紹介しま
す。
2007 Noto earthquake (Acc. Max. 403gal)
エネルギーとの係わり
石油備蓄基地の計画と設計
LNG 基地の設計
1970 年代における二度にわたるオイルショックを契機に、
東京電力富津火力発電所の地下 LNG 貯槽の設計(1982 年)
石油備蓄基地の建設が始まりました。日建設計シビルは、苫小
をはじめ、国内のみならずマレーシア、オーストラリアなど海
牧東部、福井、志布志の備蓄基地の建設に携わってきました。
外の LNG プラントにも携わってきました。LNG ガスは、東日
下図は、志布志石油備蓄基地の全景です。ここでは、国定公園
本地震後のエネルギー事情の見直しにおける中心資源とされ、
内における備蓄基地という観点から、景観設計に留意し、その
その基地は、国内外で継続して必要となると予想されます。
成果に対して、1994 年土木学会技術賞を受賞しています。
LNG Inground Tanks (Sarawak MALAYSIA)
SHIBUSHI OIL STRAGE BASE (Kagoshima JPN)
LP ガス備蓄基地の耐震設計
火力発電所の計画と設計
クリーンなエネルギーのひとつである石油液化ガス(LPG)
東京電力の石炭・重油火力発電所、日立製作所と共同し国際
の備蓄基地に関しては、七尾、福島、神栖の 3 地上基地が完成
応札に臨んだ中国における石炭火力など、国内外を問わず多数
し、5 年を経過しました。これら基地の 5 万 t 大型ガス貯槽で
の火力発電所のプロジェクトに参加してきました。特に、コン
は、阪神大震災(1975 年)の経験を生かした耐震対策を講じてい
バインサイクル、超臨界、超々臨界発電など、高い変換効率を
ます。完成後、七尾基地は、レベル 2 相当の地震である能登半
めざす火力発電所の計画に係わることにより、基礎・建屋設計
島地震(2007 年 3 月 25 日)を経験し、その安全性が実証され
を通じて地球環境の改善に貢献してきました。
ました。
海外における火力発電所の実施設計・応札協力は全世界 14 ヶ
国にわたっており、全世界の電力事情の改善に寄与しています。
KAMISU LPG STRAGE BASE (Ibaragi JPN)
NSC 創立 10 周年記念誌
Independent Power Producer (SUMITOMO METALS KASHIMA)
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Notes:
●:Thermal Power Generation ●:Chemical Plant
●:Iron and Steel Plant ●:Cement Plant and Others
NSC Oversea Achievement
再生可能エネルギーの拡充に向けて
再生可能エネルギーは東日本大震災以降、その重要性が再認
識されつつあります。生産施設設計部門では、昭和 61 年から
地熱発電、太陽熱・光発電、バイオマス発電及び風力発電など
各種発電施設の土木・建築施設の実施設計を行っています。こ
れら発電プラントは初期投資額がプロジェクトの成否を決める
ため、土木・建築工事費を抑制することが重要となります。発
電施設の要求機能を十分理解した上で、経済合理性の高い整備
計画を提案します。
Wind Power Generation (Yura-Wakayama JPN)
Piles & Foundation for Wind Power Generation
From Mitsui Engineering & Shipbuilding HP
Photovoltaic power plant (Chita JPN)
Solar Thermal Power Pilot-plant (Abu Dhabi UAE)
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NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
地盤液状化への新たな取り組み
埋め立て材料
東日本大震災における地盤の液状化は、関東一円の埋立地に
阪神・淡路大震災以前から、砂質地盤は液状化しやすく、粘
広範囲に発生しました。この現象により、ライフラインの分断
土質地盤は液状化しにくいことが判明していました。阪神・淡
や構造物の傾斜だけでなく、護岸構造物の水平移動や基礎形式
路大震災では、ポートアイランドと六甲アイランドの埋め立て
の違いによる段差など、様々な不具合が生じました。今回紹介
土の違いにより、被害状況が異なることも分かりました[Fig.1
するのは、液状化に対する知見を利用して、経済的かつ地震時
∼-Fig.3]。
具体的には、ポートアイランドの埋め立てにはマサ土(風化
に安定した性能を発揮する新しい基礎技術です。
花崗岩)、六甲アイランドには泥岩や凝灰岩(神戸層群)が使
阪神・淡路大震災からの知見
われており、結果、ポートアイランド[Fig.2]では広範囲に液
状化し、10-40cm沈下しました。これに対して、六甲アイラン
ここでは、比較的情報が得られている地盤の液状化現象につ
ド[Fig.3]では目立った液状化は発生せず、中央部では平均
いて解説します。
10cmの沈下でしたが、その外周部はマサ土が使われており液
わが国で地盤の液状化対策の必要性が認識されたのは、1964
状化しました[Fig.4]。
年新潟地震でした。さらに 31 年後の 1995 年阪神・淡路大震災
地盤改良
を経て、現在では、地盤の液状化に関して次の知見を得ていま
す。
Fig.2 では、ポートアイランドで地盤改良された中央部は、
① 液状化する可能性のある埋め立て材料が事前に判別できる
ほとんど液状化していないことも示しています。沈下促進を目
ようになった。
的としたサンドドレーン工法でも、施工中の振動・締固めによ
② 液状化に対する地盤改良の有効性が実証された。
これらの知見は、今回の大震災においても活かされています。
り液状化の低減に効果がありました。すなわち、液状化する地
盤に適切な地盤改良を施せば、これを効果的に回避できること
が実証されました。
Fig.1
Subsidence at the base of a pier supporting the Port Island Liner (“Port Liner”)
rail tressel. Immediately after the Kobe earthquake,
groundwater mixed with sand gushed up through the ground surface and
flowed along the road like a river; the ground simultaneously sank 40
centimeters. (Photo taken January 1995)
Fig.3 Distribution of liquefaction sites on Rokko Island and ground
improvement areas.
Fig.4 Embankment shift on Rokko Island.
The embankment lost support due to liquefaction of the replacement sand beneath it.
That loss of support, together with the increase in earth pressure resulting from
liquefaction of the earth behind the embankment, caused a major displacement. The
Fig.2
Map of liquefaction and ground improvement areas in the Phase I construction
(1966 –1981) area of Port Island.
NSC 創立 10 周年記念誌
movement of embankment,in turn, led to further displacement of the ground behind it,
paralyzing important functions at the port over a long period.
-22-
Before an erthquake
Sand particles tightly pressed
together
東日本大震災における地盤の液状化
現在、千葉県浦安、東京都木場をはじめ、地盤改良を施して
Sand
Particles
いない埋立地において、広範囲に液状化が発生したことが確認
されています。この液状化により、都市機能に被害が生じまし
Water
た[Fig.5]。
ライフラインに関しては、上下水が液状化により機能しなく
Fig.5 Liquefaction-induced damage
なり、市民の日常生活に影響が生じました。
Muddy water from liquefaction spouted out
when the ground sank.
This koban police box ended up on a tilt
そもそも地盤の液状化は、地震動により砂粒のかみ合いが切
れ、砂粒が水中に浮いた状態になることにより生じます
After an erthquake
Sand particles are loosened
and due to pore water pressure
increases.
[Fig.6]。この結果、砂が支えていた荷重が地下水に圧力(間
隙水圧)として加わるため、地盤の割れ目から泥水が地上に噴
出するのです。この現象を噴砂現象といい、噴砂に伴い地盤が
Fig.6: The liquefaction mechanism
沈下します。
パイルド・ラフト基礎とは、地下深くにある地盤支持層ま
地盤改良による液状化対策
で杭を届けない、通常より短い杭基礎形式です[Fig.8]。ここ
では、建築物の重量を杭のみで地盤支持層に伝える従来の方式
液状化対策としての地盤改良は、その工法原理から締固め工
に代わって、杭と地盤改良された周辺地盤が一体となって建築
法、過剰間隙水圧抑制工法、固化工法に分類されます。締固め
物を支持する基礎構造としました。
工法の代表であるサンドコンパクションパイルは地盤中に振動
これまで蓄積した地盤改良技術と、免震構造、パイルド・ラ
と圧入により砂杭を造成し、密度の増大により液状化に対する
フト基礎という新発想の組み合わせにより大地震時でもその機
抵抗力を増加させる工法です[Fig.7]。過剰間隙水圧抑制工法
能を保持することが、今回、図らずも立証されたと言えるかも
に含まれるグラベルドレーンは、透水性の高い礫材の柱を地盤
しれません。東日本大震災では、津波による被害が甚大でした。
中に造成し、地震時に発生する水圧の上昇を抑え、液状化の発
日建設計シビルでは、これまで関わったプロジェクトに対して
生を抑制する工法です。また固化工法は、セメントなどの安定
津波の影響を調査し、今後の設計に反映させる予定です。また
剤を用いて地盤を固化させることにより、液状化に対する抵抗
内陸部でも地盤や構造物に大きな被害が出ているため、地盤、
力を増大させる技術です。
鉄道、港湾などの被害調査を進めています。日建設計シビルは、
このように地盤改良により液状化しない地盤を構築すること
社会基盤の計画と設計に携わるコンサルタントとして、今後の
で、杭構造、免震構造やパイルド・ラフト基礎などの構造設計
復旧、復興に全力で取り組んでいきます。
がさらに有効なものとなります。
東日本大震災により大きな被害を受けた宮城県石巻市で、石
巻赤十字病院は、最前線の拠点病院として必要機能を保持して
います。この病院の基礎では、日建設計と日建設計シビルが連
携し、免震構造と地盤改良とパイルド・ラフト基礎を組み合わ
せて、安全性と経済性が両立する設計を目指しました。
Fig.7 An example of ground improvement by strengthening of the ground with sand piles.
Sand piles driven into the ground release pore water pressure, thus preventing liquefaction.
震災後の写真
Fig.8 Ishinomaki Red Cross Hospital has continued normal functioning even after the earthquake.
Pile foundations and piled-raft foundation. In the case of piled raft foundations, the piles disperse the weight of a building over the surrounding ground. For
the hospital’s foundations, the surrounding ground itself was improved.
-23-
NSC 創立 10 周年記念誌
各分野における取り組み
浚渫土砂の有効利用による海域環境の保全
通行船舶の安全確保のために、航路の維持浚渫は欠かせない
重要な事業です。しかしながら、発生した浚渫土砂の処分は全
国的に大きな課題となっています。海域の環境保全の立場から、
効率的な処分方法を確立し、既存処分場の延命化を図ると同時
に、出来上がった処分場跡地の有効利用を図ることが重要な課
題となっています。
北九州空港計画における浚渫土砂の有効利用
Fig.1 に示すように関門海峡は一日約 700 隻の船が通航し、
その内大型船舶が年間 2 千数百回も通過する海上交通の要です。
この航路の保全や増深を目的とする浚渫土砂の処分のために、
苅田沖処分場と新門司沖処分場が建設され、それが現在の新北
九州空港(Fig. 2)となっています。Fig. 3 に示す空港島は全長
4,125m、全幅 900m、面積 373ha、滑走路は 2,500m です。
3
空港島の一画では今もなお年間百万 m 級に及ぶ大量の浚渫
土砂を受け入れています。これにより、関門航路ならびに周防
灘の航路整備を通して処分場の延命化を図りつつ、海上輸送能
力の拡充と安全確保に大きな役割を果たし続けています。
Fig. 1 Sea route planed dredging and New Kitakyushu Airport constructed
これらにより、浚渫土砂の有効利用と海洋環境の保全を同時
に可能としています。
Fig. 2 New-Kitakyushu Airport opened at March, 2006
(http://www.pa.qsr.mlit.go.jp/kitakyusyu/)
(The pond in this reclamation area is the III area of Shinmoji-Oki Disposal Pond that has been working)
Shimoji-Oki Disposal Pond
II area
Kanda Disposal Pond
I area
Runway
Taxi-way
Apron
III area
Terminal
Fig. 3 Plan view of New-Kitakyushu Airport (http://www.pa.qsr.mlit.go.jp/gityou/)
NSC 創立 10 周年記念誌
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北九州空港計画における新技術
浚渫脱水処理土を活用した環境負荷低減型海洋築堤工法
北九州空港計画では浚渫事業が進捗する一方で、既存の福岡
処分場の受入容量が早晩満杯になることから、受入容量増加
空港では施設容量が逼迫し、短期間で空港を供用するため、港
策(Fig. 6)を、以下のステップで検討することになりました。
湾整備事業と空港整備事業を連携する必要がありました。この
ステップ 1 埋立処分済みの浚渫土砂を機械脱水処理装置にて減
ため、大量の浚渫土砂を短期間に受入れ跡地利用を可能にする
容化を図る(ここまでは従来技術)。
ための技術を開発し、九州支部技術賞を受賞しました。
ステップ 2 脱水処理土を用いて護岸嵩上げの腹付け・築堤材と
また現在も使用している新門司沖土砂処分場第 3 工区の延命
して活用し容量増大を図る。
化のための技術開発に対して地盤工学会から環境技術賞を受賞
このように国内初の実用化に向け、地盤工学的アプローチに
しました。
よる海洋環境負荷低減型の築堤工法の技術開発を行いました。
これら日建設計シビルの技術力に対し高い評価をいただきま
した。
(1)超軟弱粘土の処分場を北九州空港用地へと変える地盤解析
Removing
手法(2010 年度地盤工学会九州支部技術賞)
Dewatering
Method
Dewatered
Clay Lumps
Capacity of Disposal Pond at present
国交省九州地整北九州港湾・空港整備事務所
同下関港湾空港技術調査事務所
Volume Reduction
(財)沿岸技術研究センター
Existing Revetment
(株)日建設計シビル
Dredged clay
Existing Revetment
Step 1 Volume Reduction by Dewatering Method
(2)浚渫脱水処理土を活用した新しい環境負荷低減型海洋築堤
工法の開発(2009 年度地盤工学会地盤環境賞)
Use for Construction
国交省九州地整関門航路事務所
(財)沿岸技術研究センター
Capacity of Disposal
Pond after Step 2
(株)日建設計シビル
超軟弱粘土の処分場を北九州空港用地へと変える地盤解
析手法
Existing Revetment
Existing Revetment
Step 2 Volume Increase due to embankment
Fig. 6 Concept of volume increase of disposal pond (http://www.jiban.or.jp/)
複雑な工事工程(Fig.4)やこれまで把握するのが困難であった
埋立数量の推定のため、解析コード開発∼パラメータの設定
次に Fig. 7∼9 に示す脱水処理土による海洋築堤工法を実用
(多層沈降実験、Fig.5)∼事前解析∼モニタリング∼事後解析∼
化させました。
情報化施工の継続∼予測精度の向上を目的とした新技術を開発
しました。
以下は、上述した新技術の具体的な内容です。
①実務で使用できる浚渫土砂埋立解析手法を開発。
②浚渫埋立完了前に、埋立完了時の地盤性状と圧密定数を設
定する方法を提案、地盤改良設計を実施。
Fig.7 Discharged dredged clay
③開港後の沈下計測結果から将来の沈下を予測、地盤改良設
Fig.8 Dewatered clay lumps
計の妥当性を評価。
Consolidation period
Completion of reclamation
with dredged clay
Elevation
Opening
Revetment height
Preload
Water level
Range of
Prediction
Modified
Prediction
Dredged clay
Planned ground
level
Completion of Filling
Sand
mat
&
VD
Fill material
Facilities Residual
Construct Settlement
Settlement
Seabed
Ground
Filling stage
improvement
Reclamation Analysis by Modeling Settlement prediction by
CONAN
for VD
Barron’s Equation
Time
Reclamation stage
Fig. 4 Outline of airport construction from reclamation with dredged clay
Fig. 9 Construction of revetment using dewatered clay Lumps
(http://www.jiban.or.jp/)
日建設計シビルは豊富な埋め立て計画の経験と、地盤に関す
る高度な技術を有しています。これらの経験と技術を、海洋環
境の保全と有効利用に役立てることができれば幸いです。
Fig. 5 Just after pouring clay slurry in Multi-sedimentation test
-25-
NSC 創立 10 周年記念誌
次世代型スマート工業団地による東北の復興
復興計画における産業再生
東日本大震災は我々に環境と防災という 2 つの重い課題を同
現在、様々な機関により復興案が示されている。それらは今
時に問いかけた。ここでは東北地方の復興策として次世代型の
回の震災のように極めて大きな災害に対しては、計画による防
スマート工業団地を提案する。この次世代型のスマート工業団
災が必要であると説いている。さらに幾つかの復興案では、環
地は、中国の河北省唐山市において計画されているものである
境と防災の視点から、情報や再生可能エネルギーを活用したス
が、資源・エネルギーから廃棄物までを含む生産工程を見直し、
マートで低炭素な地域や都市の姿を示している。
しかしながら、種々の復興案で製造業を中心とした復興にま
異なる産業、異なる企業間で資源の融通、廃棄物の共同処理を
で言及しているものは少ない。都市防災と同様に、産業分野に
行なうことを目的にしている。
おいても資源とエネルギーを極限まで低減する計画が必要であ
今回の大震災で東北地方は世界の各地に向けて製品を輸出す
ると感じる。
る生産拠点であると同時に、原子力発電所の被災により、エネ
ルギー計画を見直す必要性に迫られている。地球環境と防災を
スマートなエコ工業園
意識した次世代型のスマート工業団地が、東北地方復興のため
の回答の一つとなれば幸いである。
工業園区とは要するに大きな工業団地である。そこにスマー
東日本大震災の問いかけたもの
トおよびエコがつくと、工場ごとに原料と廃棄物情報を集約し、
企業の壁を超えてそれらを融通し、工業園区全体で経済効率と
自然の災害の特徴として、小さな災害は頻繁に発生し大きな
環境効率を達成するという意味となる。原料の共同仕入れ、お
災害は稀に発生する。このためどのレベルまで何によって備え
よび廃棄物の共同処理に加え、A 企業の廃棄物を B 企業の原料
るかが常に課題となってきた。
にする思想である。
これまでの防災は、小さく頻繁な災害に対しては構造物など
スマート工業園の計画コンセプト
のハードにより防御し、大きく稀なハードの限界を超える災害
に対しては、避難や回避などソフトな手段による対応を選択し
Fig.1 は、中国河北省における中日唐山市曹妃甸エコ工業園
(面
てきた。一旦は災害から逃げて命を守り、壊れた構造物は災害
2
積 60Km )の位置図および全景であり、この計画では世界で初
が去ってから復旧するという考え方である。
めてデマンドレスポンス型のネットワークの導入を試みている。
しかしながら、東日本大震災では準備した防波堤などのハー
ドはもとより、避難するソフト対策も十分機能せず、多くの人
工業団地の発展段階を振り返ると、次頁図-2 の最上段の第一
命が失われた。この反省から、従来型対策の対応の見直しが必
世代では、企業ごとに原料を仕入れ廃棄物を処理する単純なも
要となった。新しい対策とは、極めて稀な大災害に対しては、
のであった。現在は第二世代にあり、複数の企業が、物流、廃
災害が発生してから避難するのではなく、災害が起きる場所か
棄物処理、水処理を共同化しつつある。この分野では日本では
らあらかじめ撤退を済ませておく、計画的な発想に基づく。
北九州市の先進的な取り組みが有名である。第三世代である中
日唐山市曹妃甸エコ工業園においては、第二世代に情報ネット
Beijing Airport
ワークが加わり、情報化によるデマンドレスポンス型のネット
Taihuangdao
Port
ワークの導入を、都市を含む地域規模にまで広げる予定である。
Tangshan City
Tangshan Port
Tianjin Airport
Tianjin Port
http://www.e-tangshan.cn/invest/industry.html
Fig.1
Location and panoramic view of China~Japan Eco-Industrial Park Tangshan Caofeidian ( Tangshan Port)
NSC 創立 10 周年記念誌
-26-
る。これにビルの設備制御系の通信システムを組み合わせて、
第一世代工業園
(工業園初期段階)
A社
B社
多くの企業の異なるシステムをネットワークして管理するビジ
C社
ネスが生まれれば、これは世界で初めての日本らしい試みであ
ると感じる。
第二世代工業園
(工業園発展段階)
次世代工業園の防災機能
第三世代工業園
(工業園成熟段階)
ここでは、次世代工業園の防災面を説明する。サプライチェ
ーン、なかでもジャストインタイム方式は地震などの災害に影
中央緑地管理センター
響されやすいといわれてきた。この理由は、プロセスにフロー
とよばれる遊びが少なく、上流のプロセスがストップすると下
工業園都市情報
流は瞬時に停止するためである。今回の中日唐山市曹妃甸エコ
工業園ではこの弱点を克服するために、各工場はネットワーク
Fig.2 Stage of development of industrial parks
が機能しなくなった場合のためのバックアップ機能を備えてい
中央緑地の情報管理センター
管理センター
る。非常時には、エネルギーコストの負担を軽減、同時に環境
負荷を抑えるという目的はひとまず保留し、各企業が単独でも
管理センター
都市
エネルギーセンター
産業
エネルギーセンター
都市交通管制センター
廃棄物循環センター
水処理センター
水処理センター
操業を続行する。次に、次第に各工場が回復してきた時点でネ
ットワークを再開する。
おわりに
環境問題は人間が自然の回復能力を過大に見積もることによ
都市と産業の提携
緑地センター
都市インフラ系統
Fig.3 Concept plan of
り生じ、災害は人間が自然の力を過小に見積もることにより生
物流センター
じる。東北地方にスマートでエコな次世代工業団地を実現する
アイデアを示したが、今回の提案は、災害を契機に環境問題へ
産業施設系統
の解決を図る戦略でもある。この点でも、環境と防災は一体的
Smart Industrial Park
に捉えるべきである。
Fig.3 は、上記計画の基本コンセプトである。2 つの軸は都市
この一体化コンセプトを実現する鍵は、初期投資は他の工業
と工業園を示し、都市側ではエネルギー、資源、水、緑がネッ
園に比べて増えるが、全体的な効率化によりランニングコスト
トワークされ、工業園側ではエネルギー、資源、水、物流がネ
を軽減しライフサイクルコスト(LCC)を抑える点にある。言
ットワークされ、それらを管理センターを中心とした情報系の
い換えれば、事業者がネットワーク化のための投初期投資を負
ネットワークにより統合する。Fig.4 はスマート工業園のコンセ
担し、ネットワークによるランニングコストを各企業から回収
プトを空間的な産業配置に適用した一例である。
するビジネスモデルの構築が成否を握る。今後は特にこの点を
深く分析したいと考えている。
東北復興への適用
施主:中国唐山曹妃甸生態工業園管理委員会
福島第一原子力発電所の状況は、我々に経済的豊かさと環境
契約者:日本側 JV(双日株式会社、株式会社日建設計シビル)
持続性のトレードオフを迫っているのであろうか。経済的豊か
さとは単にお金があるという状況ではなく、便利で快適、かつ
自由な生活が保障されるという安心感への要求がその根底にあ
る。国際競争力を含めその経済的豊かさのかなりの部分を今後
も製造業が担うであろうと考えると、むしろ我々はそれを乗り
越える術を身につけるべきであると考える。
中日唐山市曹妃甸エコ工業園における計画作業は 2011 年 4 月
に開始し、今回の震災の復興期に重なった。曹妃甸エコ工業園
と日本のケースを比較すると、日本では電力一つとっても電気
事業法上の縛りがあり、複数需要家の電力コントロールをまと
めて行うというビジネスモデルが成立しない。このビジネスモ
デルを東北で特区を利用して実現し、企業を越えた資源やエネ
ルギーを融通するスマート工業団地を東北地方に実現すべきで
ある。
すでに各需要家のエネルギー使用量やその特性を把握するた
めのシステムが開発され、この分野の制御機器も販売されてい
Fig.4 Mutual use of heat networks
-27-
NSC 創立 10 周年記念誌
TOPICS
中国 国信海南
龍沐湾人工島
アイデア募集
シビル創立 10 周年の一環として “ 国信(海南)龍沐湾投資控股有限公司 ” が計画する人工島の業務提案に先立ち、コンセプトデザインのアイ
デア募集を行いました。
NSC 創立 10 周年記念誌
-28-
TOPICS
2001 年∼2010 年における主な受賞
発 行
物 件 名
受 賞 内 容
2011 年度
首都高速道路株式会社
大橋 JCT 外構実施設計
優秀調査・設計賞 2011/06/27
地盤工学会九州支部
超軟弱粘土の処分場を北九州空港用地へと変える地盤解析手法
技術賞 2011/04/26
華東環球商貿物流城概念計画及び厦門市集美新都市概念計画
Future project 部門 ショートリストにノミネート 2010/11/3∼5
2010 年度
World Architecture Festival
日本地域学会
都市のクオリティ・ストック 土地利用・緑地・交通の統合戦略
鹿島出版会 共同執筆者 杉山郁夫
著作賞 2010/10/10
GS デザイン会議
設立 5 年に際して
中国 江蘇省 太倉市
華東環球商貿物流城概念計画及び一期城市設計国際コンペ
感謝状 2010/06/24
一等賞 2010/05/30
社団法人 地盤工学会
浚渫脱水処理土を活用した新しい環境負荷低減型海洋築堤工法の開発
地盤環境賞 2010/05/27
岐阜駅北口駅前広場におけるペデストリアンデッキ及び大屋根設計
感謝状 2009/09/26
大強度陽子加速器施設設計
感謝状 2009/07/06
ホアンキエム湖周辺の都市設計コンペ
優秀賞 2009/04/17
2009 年度
岐阜市岐阜駅北口駅前広場整備事業
日本原子力研究開発機構
高エネルギー加速器研究機構
ハノイ市
2008 年度
近畿地整 猪名川河川事務所
平成 19 年度猪名川水利用関係調査検討業務
表彰状 2008/07/18
東京地下鉄株式会社
副都心線池袋・渋谷間の建設工事
感謝状 2008/06/13
京都市
高速鉄道東西線天神川駅出入り口及び変電所
感謝状 2008/01/11
IPC
ヒエップ・フォック港湾地区マスタープランコンペ
最優秀賞受賞
福岡県
西鉄天神大牟田線花畑駅付近連続立体交差事業
第 19 回(07 年度)全国街路事業コンクール特別賞
住友金属工業(株)
住友金属鹿島火力発電所建設工事
感謝状 2007/06/15
近畿地整 姫路河川国道事務所
平成 18 年度林田川水環境改善検討業務
表彰状 2007/07/23
社団法人 日本港湾協会
坂田 晃 顧問
第 79 回通常総会表彰 2007/05/29
ハイフォン市
カム川南岸地区都市設計コンペ
最優秀賞受賞
ハイフォン市
ラックチャイ川周辺地区都市詳細計画コンペ
最優秀賞受賞
近畿地整 琵琶湖河川事務所
平成 17 年度琵琶湖水質循環予測モデル検討業務
平成 17 年度優良工事等の表彰 2006/07/21
関東地整 関東技術事務所
平成 17 年度水防工法修得ツール検討業務
平成 17 年度優良工事等の表彰 2006/07/21
2007 年度
2006 年度
2005 年度
Landscape Lighting Awards 2005
松下電工(株)
静岡駅前地下道照明設備工事
東京都土木技術研究所(現都土木技術センター)
液状化地盤を対象とした既設橋梁の地震応答解析委託
感謝状 2005/08/09
(行)LPG 備蓄機構
七尾国家石油ガス備蓄基地
感謝状 2005/07/29
豊浦町
夢が丘スポーツセンター建設事業
感謝状 2005/01/21
関東地方整備局
東京国際空港沖合展開事業の調査設計
感謝状 2004/12/15
前橋市
ぐんまリハビリパーク
第 6 回まえばし都市景観賞 2004 2004/11/19
東北地整
高瀬川水系管理計画検討業務
平成 15 年度 優良工事等の表彰 2004/07/16
大宮市
さいたま新都心東西連絡橋「大宮ほこすぎ橋」
2003 年土木学会デザイン賞優秀賞 2004/05/28
多摩都市モノレール
多摩都市モノレール立川北駅
2003 年土木学会デザイン賞優秀賞
鹿児島市
鹿児島中央駅前広場整備
鹿児島市
鹿児島中央駅前広場整備
感謝状 2004/03/06
静岡国道事務所
静岡駅前地下駐車場事業
平成 15 年度の道路部門全建賞(社)全日本建設技術協会
富山商工会議所
富山市価値創造プロジェト
北日本新聞地域社会賞
郡山市
郡山駅西口駅前広場
第 23 回緑の都市賞 内閣総理大臣賞
帝都高速度交通営団
営団半蔵門線建設工事
感謝状 2003/03/18
兵庫県
海外研修員受入機関
感謝状 2003/03/19
群馬県
ぐんまリハビリパーク「猿橋」
群馬県優良工事知事賞
大宮市
さいたま新都心東西連絡橋「大宮ほこすぎ橋」
彩のくにさいたま景観賞 2002/02/25
千代田区
新三崎橋架替工事及びあいあい橋整備工事
感謝状 2002/02/05
東北地整 高瀬川総合開発工事事務所
小川原湖管理計画検討業務委託
平成 12 年度 優良工事等の表彰 2001/07/24
近畿地整
淀川流水保全水路部分運用計画等検討業務
平成 12 年度 優良工事等の表彰 2001/07/19
郡山市
郡山駅西口駅前広場
(財)照明学会平成 13 年照明普及賞(優秀施設賞)
(行)土木研究所
有明沿岸道路の盛土地震安定性に関する実験解析業務
表彰状 2001/07/17
大宮市
さいたま新都心東西連絡橋「大宮ほこすぎ橋」
2001 年全建賞
郡山市
郡山駅西口駅前広場モニュメント建設
感謝状 2001/03/30
越谷市
越谷市西大袋地区中心核設計プロポーザル
コンペ入賞 2001/03/27
郡山市
郡山駅西口第一種市街地再開発事業
感謝状 2001/03/22
建築外構照明部門 地区優秀賞 2005/12
2004 年度
第 16 回(04 年度)全国街路事業コンクール
(全国街路事業促進協議会) 国土交通大臣賞
2003 年度
2002 年度
2001 年度
-29-
NSC 創立 10 周年記念誌
日建グループ 110 年の歩み
西暦年
1900
1910
1920
1930
1940
1950
1904 日露戦争
1923 関東大震 災
1929 世界的経 済大恐 慌
1941 太平洋戦 争勃発
1946 日本国憲 法発布
1951 サンフラ ンシス コ条約 締結
社 会の動 き
1903 ガーデン シティ (in England)着工
1908 T型フォ ード発 売
1900 住 友本店 臨時建 築部設 立
住友の営 繕とし て発足 、部員 数 26 名
1933 長谷 部・竹 腰建築 事務所 設立
長谷部・ 竹腰両 氏が住 友合資 会社の 援助を もとに 独立、
所員数 27 名
1950 日建設計 工務株 式会社 設立
日本建設 産業株 式会社 から建 築
土木部門 が独立 、社員 数 92 名
日 建グル ープ
の 歩み
1 956
主 な作品
日建設計 シビル
NSC 創立 10 周年記念誌
-30-
株式 会 社日 建設 計工 務
北海 道事 務所 設立
1960
1970
1980
1990
2000
2010
1964 東京オリンピック
1970 大阪万博
1972 沖縄返還/日中国交正常化
1979 東京サミット開催
1989 ベルリンの壁崩壊
1991 ソ連解体 11 共和国誕生
1995 阪神淡路大震災
2001 アメリカ同時多発テロ事件
2004 スマトラ島沖地震
2008 北京オリンピック
2010 上海万博
1962 沈黙の春
1972 ローマクラブ 成長の限界
1992 リオ宣言
1997 COP3 京都議定書
1970
株式会社日建設計に改称
2000 日建設計創業 100 周年(創立 50 周年)
創立 20 周年(創業 70 周年)を機に社名を改称、
創立 50 周年(創業 100 周年)を迎える、社員数 1,903 名
社員数 1,100 名
2010 日建設計創業 110 周年
日建グループロゴ、新 VISION、
motto2010 を制定、社員数 2,565 名
1970 株式会社北海道日建設計に改称
株式会社日建ハウジングシステム設立
1994 株式会社日建スペースデザイン設立
2001 株式会社日建設計シビル設立
日建設計マネジメント・ソリューョンズ株式会社設立
2005 日建コンストラクション・マネジメント
株式会社設立
2006 株式会社日建設計総合研究所設立
-31-
NSC 創立 10 周年記念誌
日建グループ 110 年の歩み
NSC 創立 10 周年記念誌
-32-
日建設計シビル 10 年の歩み
2001
2002
2003
2004
2005
景気に明るさが見えない経済状
況、公共投資や民間設備投資意欲
の減退。
公共投資の削減、民間設備投資の
停滞。
公共投資削減の流れ、厳しさが継
続。
日本経済は本格的な回復を示し、
堅調な国内消費・海外需要を背景
として民間設備投資も拡大。政府
部門の公共投資は依然として減
少傾向。
永らく不振の続いた日本経済が
ようやく本格的な景気回復基調。
小泉改革の定着に伴い、公共投資
の減少継続。
前半 SARS(新型肺炎)流行
5 月 三陸南地震(M7.0)
低温・冷害(中部以北)
7 月 宮城県北部地震(M6.4)
8 月 欧州 熱波
9 月 十勝沖地震(M8.0)
10 月 近年最大級の太陽フレアによ
る世界規模での電波障害
1 月 鳥インフルエンザ流行
7 月 新潟・福島豪雨
福井豪雨
酷暑害(全国)
10 月 新潟県中越地震(M6.8)
12 月 スマトラ沖地震(M9.3)
雪害(北陸、東北、長野)
5 月 ハリケーン「カトリーナ」(米国)
10 月 パキスタン北部地震(M7.6)
台風・前線等により災害が発生
した件数-3 件
台風・前線等により災害が発生
した件数-10 件
台風・前線等により災害が発生
した件数-5 件
5月
1月
西暦年
世界
・日本の動き
(概況)
災害等の発生
及び
1 月 インド西部地震(M7.9)
寒波(近畿以北)
3 月 芸予地震(M6.4)
6 月 ペルー沖地震(M8.4)
11 月 箟崙地震(M8.0)
1 月 ニラコンゴ噴火 (コンゴ)
環境・資源
に関する動き
台風・前線等により災害が発生
した件数-5 件
日建グループ・
シビルの動き
3月
日建設計シビル設立。
7月
日建設計の土木部門を吸
収分割し、役職員の移籍
とともに実質的に営業を
開始。
台風・前線等により災害が発生
した件数-2 件
主な作品
日建設計シビル
NSC 創立 10 周年記念誌
-32-
「顧客に信頼・評価され
る存在感のある組織」と
して充実、成長すること
を目標として、
「新 3 カ年
計画答申」がとりまとめ
られ、発表される。
シビル改革元年として経
営改革に着手。
2006
2007
2008
2009
2010
戦後最長を誇るいざなぎ景気を
越える景気拡大を達成。総人口
が初めて減少に転じる。公共投
資縮小。
世界経済は新興国では引き続き
好調を維持。米国サブプライム
問題に端を発した混乱は予想以
上に拡大。日本経済にも影響を
与え始めた。
世界経済は米国のサブプライム
問題に端を発した世界的な金融
危機・混乱。国内の公共事業関
連市場は依然として縮小傾向。
世界経済は 2008 年秋以来の金
融危機、景気後退の深刻化。建
設業界は従来型市場のさらなる
縮小。
世界経済は 2008 年秋以来の金
融・経済危機、先進国マーケッ
トの低迷と新興国の経済拡大・
成長・地位押し上げ。国内の政
治的混迷は続き、
“新たな成長戦
略”の実体化・実行も停滞。
3月
7月
5月
4月
1月
2月
4月
1 月 2006 年豪雪
7 月 7 月豪雨(九州、山陰、
近畿、北陸など)
7 月 インドネシア-パンガンダラン地
震(M7.7)
10 月 強風害(主に三陸沖)
台風・前線等により災害が発
生した件数-4 件
能登半島地震(M6.9)
新潟中越沖地震(M6.8)
酷暑害(全国)
8 月 ペルー地震(M8.0)
9 月 イ ン ト ゙ ネ シ ア北 西 部 地 震
(M8.5?)
11 月 サイクロン(バングラデシュ)
6月
7月
8月
四川大地震(M7.9)
サイクロン「ナルギス」(ミャンマー)
チャイテン火山 噴火(チリ)
岩手・宮城内陸地震
(M7.2)
オクモク火山 噴 火( 米 国)
8 月 末 豪 雨 (東 海 、 関
東、東北等)
7月
ラクイラ地震(伊)(M6.3)
新型インフルエンザ流行(パン
デミック宣言)
中国・北九州北部豪雨
7月
10 月
12 月
2011
ハイチ地震(M7.0)
チリ地震(M8.8)
ア イ スラ ン ド火 山 噴 火
中国青海省地震(M7.1)
酷暑害(全国)
カ ム チャ ッカ 半島火山噴火
(露)
寒波
台風・前線等により災害が発
生した件数-4 件
台風・前線等により災害が発
生した件数-3 件
台風・前線等により災害が発
生した件数-3 件
台風・前線等により災害が発
生した件数-2 件
7月
9月
1月
1月
上 海 に駐 在員 事務 所
設立。
1月
6月
日 建 シビ ルデ ザイ ン
を合併。
4月
7月
日建グループ「中期ビ
ジョン」及び「3 カ年
実行計画」を策定。
日 建 ソイ ルリ サー チ
を合併。
ハ ノ イ に駐在 員事 務
所設立。
ホ ー チミ ン に駐在 員
事務所設立。
-33-
ISO14001 環境マネジメ
ントシステムの認証取得
(ISO9001は 1998年に
認証取得済)
日 建 グル ープ の創 業
110 周年 にあたり、日
建 グ ルー プ全 社が 今
後 3 年間 に実 施す べ
き 具体 的施 策「 新
VISION」 をと りま と
め。
1月
2月
3月
6月
8月
豪 大洪水
新燃岳 噴火
NZ 地震(M6.3)
東北地方太平 洋沖地
震(M9.0)
プ シ ゙ ェウ エ 火 山 噴 火 ( チリ)
ジャカルタ に駐在員
事務所設立。
NSC 創立 10 周年記念誌
ॢঝ‫ش‬উ
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ࢫᎰՃዮૠųӸ
ଐ࡫ᚨᚘ
ଐ࡫ᚨᚘዮӳᄂᆮ৑
ఇࡸ˟ᅈ ଐ࡫ᚨᚘǷȓȫ
ఇࡸ˟ᅈ ҅ෙᢊଐ࡫ᚨᚘ
ఇࡸ˟ᅈ ଐ࡫ȏǦǸȳǰǷǹȆȠ
ఇࡸ˟ᅈ ଐ࡫ǹȚȸǹȇǶǤȳ
ଐ࡫ᚨᚘȞȍǸȡȳȈǽȪȥȸǷȧȳǺ ఇࡸ˟ᅈ
ଐ࡫ᚨᚘdzȳǹȈȩǯǷȧȳȷȞȍǸȡȳȈ ఇࡸ˟ᅈ
ఇࡸ˟ᅈ
ఇࡸ˟ᅈ
URL http://w w w.nikken-civil.co.jp/
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