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審査報告書 - Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

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審査報告書 - Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
審議結果報告書
平 成 18 年 12 月 7 日
医薬食品局審査管理課
[販
売
名] フォリスチム注 50
[一
般
名] フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
[申
請
者] 日本オルガノン株式会社
[申請年月日] 平成 17 年 6 月 23 日
[審 議 結 果]
平成 18 年 11 月 30 日に開催された医薬品第一部会において、本品目を承認して
差し支えないとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に報告することとされた。
なお、本品目は生物由来製品に該当し、再審査期間は平成 23 年 4 月 10 日までとし、
原体及び製剤ともに毒薬又は劇薬に該当しないとされた。
審議結果報告書
平 成 18 年 12 月 7 日
医薬食品局審査管理課
[販
売
名] フォリスチム注 75
[一
般
名] フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
[申
請
者] 日本オルガノン株式会社
[申請年月日] 平成 17 年 6 月 23 日
[審 議 結 果]
平成 18 年 11 月 30 日に開催された医薬品第一部会において、本一部変更承認申
請を承認して差し支えないとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に報告するこ
ととされた。なお、再審査期間は平成 23 年 4 月 10 日までとされた。
審査報告書
平成 18 年 11 月 17 日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下のとおりであ
る。
記
フォリスチム注 50、同 75
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
日本オルガノン株式会社
平成 17 年 6 月 23 日
注射液剤:1 バイアル 0.5mL 中にフォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として 50
又は 75 国際単位を含有
[ 申 請 区 分 ] 医療用医薬品(4)新効能医薬品、
(6)新用量医薬品、及び(7)剤型追加に係る医薬
品(再審査期間中のもの)
[ 特 記 事 項 ] なし
[審査担当部] 新薬審査第二部
[販 売 名]
[一 般 名]
[申 請 者]
[申請年月日]
[剤型・含量]
審査結果
平成 18 年 11 月 17 日
[販 売 名]
[一 般 名]
[申 請 者]
[申請年月日]
フォリスチム注 50、同 75
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
日本オルガノン株式会社
平成 17 年 6 月 23 日
[審査結果]
国内第Ⅲ相試験(2 試験)において、精製下垂体性性腺刺激ホルモン製剤(uFSH-HP)との比較、
並びに増量幅を 25 又は 50 国際単位とした投与方法が検討され、主要評価項目(排卵率)の成績から、
視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に関する本剤の有効性は示さ
れていると判断した。また、本剤の用法・用量を検討した国内外の臨床試験において、50 国際単位よ
りも 25 国際単位の増量幅による投与方法が有効性及び安全性の面で優れており、
国内臨床試験では比
較的少数例の検討しか行われておらず、製造販売後に十分な情報収集は必要であるが、本剤の用法・
用量における増量幅は、原則として、25 国際単位が妥当と判断した。安全性について、製造販売後に、
卵巣過剰刺激症候群、多胎妊娠、出生児等に関し、更なる情報収集は必要と考えるが、臨床試験にお
いて、特に臨床使用上大きな問題となる有害事象は発現しておらず、承認の可否に影響するような重
大な懸念は認められないと判断した。
なお、申請者より、既承認のヒト尿由来のゴナドトロピン製剤を本剤に切り替える予定であり、黄
体形成ホルモン(LH)を含有しない本剤は、既承認製剤では投与対象とされる LH 等の基礎分泌がな
い患者に対しては無効である旨を適切に情報提供するとともに、
等の開発を進める方針が
示されている。
以上、医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目は、以下の効能・効果、用法・用量の
もとで承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが妥当と判断した。
[効能・効果]複数卵胞発育のための調節卵巣刺激(フォリスチム注 75 のみ)
視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発
(下線部追加)
[用法・用量]
・複数卵胞発育のための調節卵巣刺激に使用する場合
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 150 又は 225 国際単位を 4 日
間皮下又は筋肉内投与する。
その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し
(通
常 75∼375 国際単位を 6∼12 日間)
、平均径 16∼20mm の卵胞 3 個以上を超音波断層
法により確認した後、胎盤性性腺刺激ホルモンにより排卵を誘発する。
・視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に使用する場合
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 50 国際単位を 7 日間皮下又は
筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(卵巣の反応
性が低い場合は、原則として、7 日間ごとに 25 国際単位を増量)
、平均径 18mm 以上
の卵胞を超音波断層法により確認した後、胎盤性性腺刺激ホルモンにより排卵を誘起
する。
(下線部追加)
2
審査報告(1)
平成 18 年 10 月 12 日
Ⅰ.申請品目
[販 売 名]
[一 般 名]
[申 請 者]
[申請年月日]
[剤型・含量]
[申請時効能・効果]
[申請時用法・用量]
フォリスチム注 50、同 75、同 100、同 150
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
日本オルガノン株式会社
平成 17 年 6 月 23 日
注射液剤:1 バイアル 0.5mL 中にフォリトロピンベータ(遺伝子組換え)とし
て 50、75、100 又は 150 国際単位を含有
複数卵胞発育のための調節卵巣刺激(フォリスチム注 75、同 150 のみ)
視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発
(下線部追加)
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 150 又は 225 国際単
位を 4 日間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しなが
ら用量を調整し(通常 75∼375 国際単位を 6∼12 日間)
、平均径 16∼20mm の
卵胞 3 個以上を超音波断層法により確認した後、胎盤性性腺刺激ホルモンに
より排卵を誘発する。
(フォリスチム注 75、同 150 のみ)
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 50 国際単位を 7 日間
皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調
整し(卵巣の反応性が低い場合は、7 日間ごとに 25 又は 50 国際単位を増量)
、
平均径 18mm 以上の卵胞を超音波断層法により確認した後、胎盤性性腺刺激
ホルモンにより排卵を誘起する。
(下線部追加)
Ⅱ.提出された資料の概略及び医薬品医療機器総合機構における審査の概要
本申請において、申請者が提出した資料及び医薬品医療機器総合機構(以下、機構)からの照会事項
に対する申請者の回答の概略は、下記のようなものであった。
1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
(以下、本薬)は、遺伝子組換え技術の応用により製造される
卵胞刺激ホルモン(recombinant follicle stimulating hormone、recFSH)であり、オランダ・オルガノン社に
より開発された。本薬を 75 及び 150 国際単位(IU)含有するフォリスチム注 75 及び同 150 は、平成 17
年 4 月 11 日に「複数卵胞発育のための調節卵巣刺激」の効能・効果で承認されている。本申請は、
「視
床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発」の効能・効果にかかる申請であ
り、既承認の効能・効果と用法・用量が異なることから、本薬の製剤(以下、本剤)として、本薬の含
量が異なるフォリスチム注 50、同 75、同 100 及び同 150 の 4 製剤が申請された。
本邦では、ヒト尿由来のゴナドトロピン(下垂体性性腺刺激ホルモン、human menopausal gonadotropin、
hMG)製剤が、間脳性(視床下部性)無月経、下垂体性無月経の排卵誘発を適応として使用されている。
本薬は遺伝子組換え技術を応用して製造されることから、既存の尿由来製剤と比較し、大量生産及び安
定供給が可能であること、
ヒト由来のウイルスやタンパク質等の不純物を含まないこと等の利点もあり、
申請者は、本剤の承認を得た後、自社の尿由来の既承認製剤については本剤に早期切り替えを行う意向
である。
本剤は、海外においては、
「無排卵女性における排卵誘発」
、
「生殖補助医療における調節卵巣刺激」
、
及び「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症による精子形成不全」のすべてあるいは一部を適応として、
凍結乾燥製剤と注射液剤(バイアル製剤及びカートリッジ製剤)の 3 剤型が市販されている。凍結乾燥
3
製剤は、1995 年にニュージーランドで承認され、2005 年 6 月現在、EU 諸国、米国を含む世界 91 ヵ国
で承認されており、申請製剤である注射液剤(バイアル製剤)は、EU 諸国を含む 72 ヵ国で承認されて
いる。
2.品質に関する資料
<提出された資料の概略>
今回、本薬を 50、75、100 及び 150IU 含有する 4 製剤が申請されたが、申請者は、50 及び 75IU 製剤
のみで種々の投与量への対応が可能であり、100 及び 150IU 製剤の必要性は低いと考え、審査中に追加
効能にかかるフォリスチム注 100 及び同 150 の申請を取り下げた(
「4.臨床に関する資料(2)有効性及
び安全性試験成績の概要 6)4 製剤の必要性について」の項参照)
。
フォリスチム注 50 と既承認製剤(フォリスチム注 75 及び同 150)の製剤組成上の違いは、フォリト
ロピンベータ(遺伝子組換え)の含量のみである。フォリスチム注 50 の規格及び試験方法は既承認製剤
と同一であり、フォリスチム注 50 の実生産ロット(9 ロット)はすべて規格に適合した。
安定性試験については、
既承認製剤の開発時に、
添加剤の成分及び分量が同一である 3 規格の製剤
(50、
150 及び 250IU、各 3 ロット)を用い、ブラケッティング法を適用して安定性試験を実施した(長期安
定性試験は 36 ヵ月まで実施済)
。その結果から、既承認製剤であるフォリスチム注 75 及び同 150 の貯法
を「2∼8℃、遮光」
、有効期間は「3 年間」とした。したがって、フォリスチム注 50 の規格はブラケッ
ティング法の適用範囲内(50∼250IU)であり、既承認製剤と同じ貯法及び有効期間とした。
<機構における審査の概略>
機構は、医療過誤防止の観点から、フォリスチム注 50、同 75 及び同 150 の識別方法について説明を
求めた。
申請者は、各製剤のキャップ及びラベルの色を変えることにより、取り違えによる医療事故を防止し
たいと回答した。
機構は、申請者の説明を妥当と判断した。
また、機構は、提出された資料に基づき、製剤の貯法及び有効期間の設定は妥当であると判断した。
3.非臨床に関する資料
(1)薬理試験成績の概要
新たな試験成績は提出されていない。
(2)薬物動態試験成績の概要
新たな試験成績は提出されていない。
(3)毒性試験成績の概要
新たな試験成績は提出されていない。
4.臨床に関する資料
(1)臨床薬物動態及び臨床薬理の概要
新たな試験成績は提出されていない。
(2)有効性及び安全性試験成績の概要
今回の申請にあたり、有効性及び安全性の資料として、国内臨床試験 4 試験(第Ⅱ相試験 2 試験
(RM-9361 試験及び 9602 試験)
、第Ⅲ相試験 2 試験(0004 試験及び 0003 試験)
)
、及び海外臨床試験 3
、第Ⅳ相試験 2 試験(E1650 試験及び E1725 試験)
)が評価資料
試験(第Ⅲ相試験 1 試験(37609 試験)
として提出され、第 2 度無月経患者(WHO グループⅠの不妊患者)を対象とし、安全性を検討した国
4
内第Ⅲ相試験 1 試験(9603 試験)が参考資料として提出された。
なお、機構は WHO による排卵障害の分類を以下のように理解している。WHO グループⅠの排卵障
害は、内因性エストロゲン産生が見られず、血清中 FSH 濃度が低く、視床下部−下垂体領域に占拠性病
変が無いもので、視床下部・下垂体性の第 2 度無月経及び低ゴナドトロピン性性腺機能障害がこれに含
まれる。WHO グループⅡの排卵障害は、内因性エストロゲン産生が認められ、血清中プロラクチン及
びFSH 濃度が正常な様々な月経異常であり、
第1 度無月経、
無排卵周期症、
多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS)
、
希発月経及び黄体機能不全がこれに含まれる。以下に提出された資料の概略について提示する。
<提出された資料の概略>
表 有効性試験成績の要約
治療群と用法・用量
試
験
番
号
(対象)
RM-9361
国内第Ⅱ相
(WHO グル
ープⅡ:第 1
度無月経、無
排卵周期症患
者のみ)
9602 1)
国内第Ⅱ相
(WHO グル
ープⅡ)
0003
国内第Ⅲ相
(WHO グル
ープⅡ)
0004
国内第Ⅲ相
(WHO グル
ープⅡ)
37609 1)
海外第Ⅲ相
(WHO グル
ープⅡ)
E1650
海外第Ⅳ相
(WHO グル
ープⅡ)
E1725
海外第Ⅳ相
(WHO グル
ープⅡ)
初期投与
(/日)
薬剤名
増量
投与
量
(IU)
投与
期間
増量
幅
(IU)
本薬
50
100
150
14日
14日
14日
50
50
50
増
量
間
隔
7日
7日
7日
uFSH-HP
75
14日
75
25
14日
50
最大投与
量
(IU/日)
登録例数 /
FSH 投与例数 /
hCG 投与例数
排卵
例数
単一
卵胞
周期
例数
妊娠
継続
例数 5)
hCG 投与日
における
12mm 以上
の卵胞数 3)
例数
(%)2)
例数
(%)2)
例数
(%)2)
平均値±SD
150
200
250
10 / 10 / 8
9/9/6
8/7/6
8 (80.0)
7 (77.8)
7 (100)
−
−
−
−
−
−
−
−
−
7日
225
11 / 9 / 5
7 (77.8)
−
−
−
25
7日
50
21 / 17 / 4
7 (41.2)
−
−
−
14日
50
7日
100
19 / 21 / 9
12
(57.1)
−
−
−
50
7日
25
7日
125
28 / 28 / 24
2.4±3.3
7日
50
7日
150
30 / 29 / 21
3
(10.3)
3.1±2.1
本薬
50
7日
50
7日
150
59 / 53 / 43
5 ( 9.4)
3.4±3.0
uFSH-HP
75
7日
75
7日
150
57 / 55 / 47
本薬
75
14日
37.5
7日
225
109 / 105 / 88
uFSH-HP
75
14日
37.5
7日
225
69 / 67 / 52
50
5日
50
5日
300
62 / 62 / 48
50
14日
50
7日
250
60 / 59 / 45
50
7日
25
7日
150
83 / 80 / 69
50
7日
50
7日
250
78 / 78 / 57
11
(39.3)
7
(24.1)
15
(28.3)
15
(27.3)
15
(14.3)
21
(31.3)
13
(21.0)
13
(22.0)
33
(41.3)
17
(21.8)
2 ( 7.1)
50
24
(85.7)
22
(75.9)
44
(83.0)
48
(87.3)
76
(72.4)
42
(62.7)
36
(58.1)
36
(61.0)
65
(81.3)
47
(60.3)
2 (25.0)
5 (45.5)
7 (63.6)
7
(100.0)
18
(50.0)
12
(36.4)
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
本薬
本薬
本薬
本薬
50
14日
50
7日
150
8/8/3
RM-9361
本薬
100
14日
50
7
日
200
11
/ 11 / 6
国内第Ⅱ相
150
14日
50
7日
250
11 / 11 / 6
(WHO グル
ープⅠ患者の uFSH-HP
75
14日
75
7日
225
7/7/7
み)
9603
本薬
100
14日
100
7日
200
38 / 36 / 19
国内第Ⅲ相
(WHO グルー
hMG
75
14日
75
7日
150
38 / 33 / 15
プⅠ)
−は、その試験において、その評価項目を実施しなかったことを示す
5
7
(12.7)
15
(14.3)
7
(10.4)
3.3±2.4
3.6±2.9
2.6±2.6
5 (8.1)
4.8±9.54)
9
(15.3)
16
(20.0)
10
(12.8)
4.8±9.34)
2.3±1.94)
3.3±4.04)
網掛けは対照薬の結果を示す
SD:標準偏差(以下同様)
1)
:2 周期以上にわたって実施された試験については、第 1 周期の結果を示した
2)
:FSH 投与症例を対象集団とした
3)
:hCG 投与症例を対象集団とした
4)
:観察日は、hCG 投与日又は投与前 1∼3 日前とした
5)
:hCG 投与の 10∼12 週後に、超音波検査により胎児の心拍が確認された場合を妊娠継続例とした
(1)国内臨床試験
1)国内第Ⅱ相試験:初期用量探索、uFSH-HP との対照試験(評価資料:試験番号 RM-9361/CTD5.3.5.1
<19 年 月∼19 年 月>)
、uFSH-HP)を対照薬とし、間脳性(視
精製下垂体性性腺刺激ホルモン製剤(
床下部性)無月経及び下垂体性無月経患者への排卵誘発に対する本剤の有効性、安全性及び至適初期用
量の検討を目的として、
多施設共同無作為化評価者盲検実薬対照群間比較試験が国内 30 施設で行われた。
対象は、20∼40 歳の女性で、クロミフェン無効の無月経又は持続性無排卵周期症患者とされていたため、
WHO グループⅠ及び WHO グループⅡの患者が対象とされた。ただし、PCOS 及び原発性卵巣不全によ
る血中性腺刺激ホルモン高値(FSH>30mIU/mL、黄体形成ホルモン(LH)>20mIU/mL)の患者は対象
から除外された。
被験者は、初期用量として、本剤 50、100、150IU 又は uFSH-HP 75IU のいずれかの群に割り付けられ、
最初の 14 日間は割り付けられた固定用量を 1 日 1 回筋肉内投与、15 及び 22 日目の各時点で、投与前の
卵胞径測定で主席卵胞の最大径が 11mm 以下の場合、本剤各用量群は 50IU、uFSH-HP 群は 75IU を増量
することとされた。投与期間中いずれの時期においても、主席卵胞の最大径が 18mm 以上となった時点
でヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin、hCG)5000IU(プレグニール®)の筋肉内
投与に切り替えられ、排卵誘発が行われた。本試験では、卵巣過剰刺激症候群(以下、OHSS)発症の
リスク軽減を目的とした hCG 投与のキャンセル基準は設定されなかった。増量の有無にかかわらず総投
与期間は最長 28 日間とされた。
目標症例数 100 例
(各群 25 例)
に対して 75 例が症例登録され、
治験薬が一回以上投与された 72 例
(50IU
群 18 例、100IU 群 20 例、150IU 群 18 例、uFSH-HP 群 16 例)が All-subjects-treated(AST)として安全
性評価対象とされた。このうち、WHO グループⅠは 37 例、WHO グループⅡ(第 1 度無月経及び無排
卵周期症)は 35 例であった。治験薬未投与の 3 例は、いずれも WHO グループⅡの症例であり、uFSH-HP
群の 2 例が個人的な理由から、150IU 群の 1 例が除外基準(PCOS)に該当することが判明したため治験
を中止した。AST のうち 10 例(WHO グループⅠ:4 例、WHO グループⅡ:6 例)に治験実施計画書
からの重大な逸脱が認められた。その内訳は、組番ズレ 3 例、2 周期目投与 2 例、BMI(Body Mass Index)
の大幅な逸脱 2 例、大幅な投与方法逸脱 2 例、過去 1 ヵ月以内の hMG 投与 1 例であった。
WHO グループ別の有効性について、下表に示す。
表 WHO グループⅠの有効性の成績(AST)
hCG 投与例数(%)
50 IU 群
(n=8)
3 (37.5)
100 IU 群
(n=11)
7 (63.6)
150 IU 群
(n=11)
7 (63.6)
uFSH-HP 群
(n=7)
7 (100.0)
排卵例数(%)
2 (25.0)
5 (45.5)
7 (63.6)
7 (100.0)
FSH 総投与量(IU)* 平均値±SE
1866.7±245.5
1800.0±502.5
2483.3±283.0
2175.0±255.1
FSH 投与期間(日)* 平均値±SE
*:hCG 投与例
SE:標準誤差(以下同様)
25.7±1.2
16.5±3.7
17.2±1.4
22.6±1.4
6
表 WHO グループⅡ(第 1 度無月経及び無排卵周期症)の有効性の成績(AST)
hCG 投与例数(%)
50 IU 群
(n=10)
8 (80.0)
100 IU 群
(n=9)
8 (88.9)
150 IU 群
(n=7)
7 (100.0)
uFSH-HP 群
(n=9)
8 (88.9)
排卵例数(%)
8 (80.0)
7 (77.8)
7 (100.0)
7 (77.8)
FSH 総投与量(IU)* 平均値±SE
1437.5±271.0
1616.7±469.2
1150.0±228.0
1245.0±502.3
FSH 投与期間(日)* 平均値±SE
20.9±2.6
16.3±3.7
9.2±1.4
14.4±3.4
*:hCG 投与例
WHO グループⅡに属する第 1 度無月経及び無排卵周期症と WHO グループⅠに属する第 2 度無月経
との間で有効率に差が見られたことから、以後の試験は WHO グループⅠの患者と WHO グループⅡの
患者を分けて実施することとされた。なお、第 2 度無月経については、国内で 9603 試験(参考資料)が
実施されたが、十分な有効性が示されなかったことから、その後の開発は中止された。WHO グループ
Ⅰの患者では内因性のエストロゲン分泌が低下しているため LH が必要であるが、本剤は LH 活性を持
たないことが有効性における差異の理由であると考察された。
安全性について、自覚症状及び OHSS の発症例数を下表に示す。
表 自覚症状及び OHSS の発現例数(%)
投与部位痛み
投与部位腫れ
腹部の膨満感、緊満感
下腹痛
性器出血
発熱
頭痛
OHSS
50 IU 群
(n=18)
0
0
1 (5.5)
1 (5.5)
1 (5.5)
1 (5.5)
1 (5.5)
2 (11.1)
100 IU 群
(n=20)
1 (5.0)
0
2 (10.0)
0
1 (5.0)
1 (5.0)
0
2 (10.0)
150 IU 群
(n=18)
0
1 (5.5)
2 (11.1)
1 (5.5)
0
0
0
4 (22.2)
uFSH-HP 群
(n=16)
0
0
0
0
0
0
0
4 (25.0)
上記の自覚症状のうち、下腹痛 1 例(50IU 群)は患者の希望によりで投与中止に至った。OHSS の程
度は、50IU 群の 1 例が左側の卵巣径が約 10cm となり、中等度の腹部膨満でブドウ糖加酢酸リンゲル液
の点滴を受けた他はいずれも軽度であった。いずれの OHSS も 1∼4 週間で消失した。
なお、OHSS の発症率が外国で実施された 37609 試験に比して高かったことから、以後の試験では
OHSS 発症のリスクを軽減させるために、hCG 投与のキャンセル基準を設定することとされた。
臨床検査値については、臨床的に問題となる症例は無かった。
本剤の投与中及び投与終了後 14 日までに本薬に対する抗体の産生は認められなかった。
2)国内第Ⅱ相試験:初期用量 25IU と 50IU の比較試験(評価資料:試験番号 9602/CTD5.3.5.2<19
年 月∼19 年 月>)
本剤の低用量投与の有効性及び安全性の検討を目的として、多施設共同無作為化非盲検群間比較試験
が国内 12 施設で行われた。対象は、20∼40 歳の女性の WHO グループⅡの不妊患者(第 1 度無月経、
続発性無排卵周期症(頻発及び希発月経を含む)及び PCOS の排卵障害患者)とされた。
被験者は、初期用量として、本剤 25IU 群又は 50IU 群のいずれかの群に割り付けられた。第 1 クール
では、最初の 14 日間、割り付けられた固定用量を 1 日 1 回筋肉内投与、15 日目に投与前の卵胞径測定
で主席卵胞の最大径 12mm を目安に本剤の増量を決定することとされた。増量幅は、25IU 群は 25IU、
50IU群は50IUとされた。
第1クールにてhCG投与に至らなかった又は排卵が確認されなかった症例は、
1 周期あるいは 1 ヵ月以上の休薬期間を置いて第 2 クールの投与が行われた。第 2 クールでは、最初の 7
日間、本剤 50IU 1 日 1 回投与、8 及び 15 日目の各時点で、投与前の卵胞径測定で主席卵胞の最大径 12mm
を目安に本剤の増量を決定することとされた。増量する場合は、本剤 100IU 1 日 1 回投与とされた。
7
いずれのクールにおいても、主席卵胞の最大径が 18mm 以上となった時点、又は長径 15mm 以上の卵
胞が 2∼3 個認められた時点で hCG 5000IU の筋肉内投与に切り換え、排卵誘発が行われた。ただし、長
径 15mm 以上の卵胞が 4 個以上認められた場合は、治験薬の投与を中止し、hCG の投与はキャンセルす
ることとされた。増量の有無にかかわらず総投与期間は最長 21 日間とされた。
目標症例数 40 例(各群 20 例)に対して 40 例(25IU 群 21 例、50IU 群 19 例)が割り付けられ、本剤
が投与された 38 例が AST とされ、安全性の解析対象とされた。第 2 クールには 8 例が移行した。本剤
未投与の 2 例は、いずれも 25IU 群に割り付けられた症例であり、それぞれ妊娠成立及び患者都合によ
り本剤の投与に至らなかった。また、倫理的観点から治験責任医師の判断により 25IU 群の 2 例に 50IU
群の治験薬の処方が行われた。さらに、患者組番号の誤認により 50IU 群の 2 例に 25IU 群の治験薬が処
方され、25IU 群の 2 例に 50IU 群の治験薬が処方された。結果として、25IU 群の治験薬が処方されたの
は 17 例、50IU 群の治験薬が処方されたのは 21 例となった。結果の解析は、割り付けられた群ではなく、
実際に処方を受けた群によって行われた。AST 38 例中、治験実施計画書からの重大な逸脱が 14 件見ら
れた。その内訳は、BMI 基準の違反 1 件、意図的又は錯誤による投与群の変更 6 件、投与中自然排卵 1
件、投与期間延長 2 件、hCG の追加又は規定時期以降の投与 4 件である。これらの他、第 2 クールへの
移行基準を満たしながら、治験薬の不足のため第 2 クールに移行できなかった症例が 5 例、第 2 クール
において初期用量の 2 倍量(100IU)が処方された症例が 1 例あった。第 1 クールでの中止・脱落例は、
25IU 群で 17 例中 8 例(効果不十分 6 例、主席卵胞消失 1 例、同意撤回 1 例)
、50IU 群で 21 例中 4 例(自
覚症状の悪化 1 例、同意撤回 2 例、患者都合 1 例)であった。第 2 クールでの中止・脱落例は 2 例(効
果不十分 1 例、投与時期誤認 1 例)であった。
hCG 投与キャンセルの基準に達した症例は無かった。
AST の診断名の内訳は、第 1 度無月経 6 例(25IU 群 3 例、50IU 群 3 例)
、無排卵周期症 19 例(25IU
群 9 例、50IU 群 10 例)
、PCOS 13 例(25IU 群 5 例、50IU 群 8 例)であった。
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
hCG 投与例数(%)
排卵例数(%)
2)
FSH 総投与量(IU)
平均値±SE
25 IU 群
(n=17)
4 (23.5)
50 IU 群
(n=21)
12 (57.1)
第 2 クール
(n=7) 3)
6 (85.7)
7 (41.2) 1)
12 (57.1)
5 (71.4)
431.3±128.0
616.7±108.0
1141.7±236.1
11.3±1.6
14.8±2.5
FSH 投与期間(日)2) 平均値±SE
14.3±3.4
1):自然排卵 3 例を含む
2):hCG 投与例
3):初期用量倍量投与された 1 例を除く
安全性について、本治験期間中(第 2 クールを含む)に少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた
症例は、38 例中 17 例(44.7%)であった。
第 1 クールでは 25IU 群の 10 例(58.8%)に 20 件、50IU 群の 7 例(33.3%)に 8 件有害事象が認めら
れた。このうち本剤の副作用(
「明らかに関連あり」及び「関連がありうる」
)とされたものは、25IU 群
の 4 例(23.5%)に 6 件、50IU 群の 2 例(9.5%)に 2 件であった。
第 1 クールにおける 25IU 群の有害事象の内訳は、急性鼻咽頭炎 3 件(17.6%)
、頭痛 3 件(17.6%)
、
不正出血 3 件(17.6%)
、倦怠感 2 件(11.8%)
、腰部倦怠感、腰痛、便秘、嘔気、血清無機リン低下、血
清無機リン上昇、帯下、下腹痛及び尿検査異常各 1 件(5.9%)であった。このうち、副作用とされたも
のは、不正出血 3 件(17.6%)
、頭痛、嘔気及び下腹痛各 1 件(5.9%)であった。
、下腹痛、便秘、帯下、腹
第 1 クールにおける 50IU 群の有害事象の内訳は、尿検査異常 2 件(9.5%)
痛、OHSS 及び尿蛋白陽性各 1 件(4.8%)であった。このうち、副作用とされたものは、下腹痛及び
OHSS 各 1 件(4.8%)であった。
第 2 クールでは 8 例中 2 例(25.0%)に 4 件の有害事象(帯下、下腹痛、OHSS 及び顔面皮疹各 1 件)
8
が報告され、うち 1 例(12.5%)2 件(下腹痛及び OHSS 各 1 件)が副作用とされた。
OHSS は、第 1 クールの 50IU 群に 1 例、第 2 クールで 1 例見られたが、いずれも軽度であった。25IU
群では OHSS は発症しなかった。
有害事象により治験を中止した症例及び重篤な有害事象を発現した症例はなかった。
本剤の投与前及び投与終了後 14 日の検査で本薬に対する抗体の産生は認められなかった。
申請者は、以上の有効性及び安全性の成績から、50IU を初期投与量として容認できる最低用量である
としている。
3)国内第Ⅲ相試験:増量幅 25IU と 50IU の比較試験(評価資料:試験番号 0003/CTD5.3.5.2<20 年
月∼20 年 月>)
本剤の異なる増量幅における有効性及び安全性の検討を目的として、多施設共同無作為化非盲検群間
比較試験が国内 8 施設で行われた。対象は、20∼39 歳の女性の WHO グループⅡの不妊患者(第 1 度無
月経、無排卵周期症、PCOS 等)とされた。
初期投与量 50IU/日を 7 日間皮下投与し、平均径 12mm 以上の卵胞が 1 個も認められない場合は 2 週
目より 1 週間間隔で 25IU(25IU 増量群)又は 50IU(50IU 増量群)ずつ増量された。平均径 18mm 以上
の卵胞が 1 個以上確認されるまで投与を継続し、最高用量は 25IU 増量群で 125IU、50IU 増量群で 150IU
とされた。排卵は hCG 5000IU 又は 10000IU にて誘発された。ただし、平均径 15mm 以上の卵胞が 4 個
以上確認された場合は治験薬の投与を中止し、hCG 投与をキャンセルすることとされた。総投与期間は
最長 28 日間とされた。
目標症例数 50 例(各群 25 例)に対して 58 例(25IU 増量群 28 例、50IU 増量群 30 例)が割り付けら
れた。同意撤回 1 例を除く 57 例(25IU 増量群 28 例、50IU 増量群 29 例)に本剤が投与され、AST とさ
れた。
AST 57 例のうち、治験実施計画書からの重大な逸脱が 4 例見られた。重大な逸脱の内訳は、選択基準
の違反 1 例(50IU 増量群)
、治験薬ではない hCG 製剤使用 2 例(25IU 増量群)
、本剤投与開始時期の逸
脱 1 例(50IU 増量群)であった。また、AST のうち、25IU 増量群 4 例、50IU 増量群 8 例の計 12 例が
治験を中止した。中止理由の内訳は、有害事象の発現による中止 3 例(25IU 増量群 1 例、50IU 増量群 2
例)
、OHSS の危惧による中止 1 例(50IU 増量群)
、効果不十分による中止 6 例(25IU 増量群 2 例、50IU
増量群 4 例)及び自発排卵による中止 2 例(各群 1 例)であった。
AST の診断名の内訳は、下表のとおりであった。
表 診断名の内訳(AST) 例数(%)
第 1 度無月経
無排卵周期症
PCOS
希発月経
黄体機能不全
25 IU 増量群
(n=28)
1 (3.3)
6 (21.4)
7 (25.0)
19 (67.9)
1 (3.6)
50 IU 増量群
合計
(n=29)
(n=57)
5 (17.2)
6 (10.5)
9 (31.0)
15 (26.3)
11 (37.9)
18 (31.6)
10 (34.5)
29 (50.9)
0 (0.0)
1 (1.8)
複数診断名を有する症例あり
9
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
25 IU 増量群
(n=28)
24 (85.7)
24 (85.7) 1)
11 (39.3)
2 (7.1)
879.5±581.0
13.7±6.3
50 IU 増量群
(n=29)
21 (72.4)
22 (75.9) 1)
7 (24.1)
3 (10.3)
932.8±563.4
13.5±5.4
合計
(n=57)
45 (78.9)
46 (80.7) 1)
18 (31.6)
5 (8.8)
906.6±567.6
13.6±5.8
3.1±2.1
2.7±2.8
hCG 投与例数(%)
排卵例数(%)
単一卵胞周期例数(%)
妊娠継続例数 2) (%)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
2.4±3.3
hCG 投与日における 12mm 以上の卵胞数 3) 平均値±SD
1):各群 1 例ずつの自然排卵を含む
2):hCG 投与の 10∼12 週後に超音波検査により胎児の心拍が確認された症例
3):hCG 投与例
流産は 50IU 増量群に 1 例見られた。子宮外妊娠及び多胎妊娠は無かった。
安全性について、少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた症例は、25IU 増量群で 28 例中 9 例
(32.1%)
、50IU 増量群で 29 例中 10 例(34.5%)の計 19 例(33.3%)であった。有害事象の内訳は、
25IU 増量群では、注射部反応、頭痛及び腹痛各 2 件(7.1%)
、OHSS、白帯下、卵巣疾患、腟出血、注
射部疼痛、浮腫、嘔吐及び上気道感染各 1 件(3.6%)であり、50IU 増量群では、腹部腫脹 3 件(10.3%)
、
OHSS、注射部反応及び発熱各 2 件(6.9%)
、子宮出血、流産、頭痛、腹痛、嘔吐、消化不良、肝機能異
常、咳、咽頭炎及び紫斑(病)各 1 件(3.4%)であった。
有害事象のうち本剤の副作用(治験薬との関連性が「明らかにあり」
、
「多分あり」
、
「可能性あり」
)と
されたものは、9 例(25IU 増量群 3 例(10.7%)
、50IU 増量群 6 例(20.7%)
)であった。副作用の内訳
は、25IU 増量群では、OHSS、卵巣疾患、注射部反応及び注射部疼痛各 1 件(3.6%)であり、50IU 増量
群では、OHSS 2 件(6.9%)
、腹部腫脹 2 件(6.9%)
、注射部反応 1 件(3.4%)及び肝機能異常 1 件(3.4%)
であった。
OHSS は、上記 3 例(25IU 増量群 1 例、50IU 増量群 2 例)が報告され、いずれも副作用とされた。こ
のうち 2 例(各群 1 例)は重篤とされたが、治験は継続され、3 例いずれも hCG 投与を受け排卵が見ら
れた。他に重篤な有害事象は見られなかった。
有害事象により 3 例(25IU 増量群 1 例(3.6%)
、50IU 増量群 2 例(6.9%)
)が中止に至り、その内訳
は、25IU 増量群の 1 例が腟出血、50IU 増量群の 2 例は、微熱及び肝機能異常(GPT 及び GOT 値の上昇)
であり、肝機能異常については、本剤との因果関係は「可能性あり」とされた。
本剤投与前及び投与終了後 2 週間の検査で、本薬に対する抗体の産生は認められなかった。50IU 増量
群の 1 例で本剤投与前から抗 CHO 抗体が検出されたが、当該症例では有害事象は認められなかった。
4)国内第Ⅲ相試験:uFSH-HP との対照試験(評価資料:試験番号 0004/CTD5.3.5.1<20 年 月∼20
年 月>)
uFSH-HP を対照とし、本剤の有効性及び安全性を評価することを目的として、多施設共同無作為化非
盲検実薬対照比較試験が国内 16 施設で行われた。対象は、20∼39 歳の女性の WHO グループⅡの不妊
患者(第 1 度無月経、無排卵周期症、PCOS 等)とされた。
初期投与量として、本剤群は 50IU/日、uFSH-HP 群は 75IU/日を 7 日間皮下投与し、平均径 12mm 以上
の卵胞が 1 個も認められない場合は 2 週目より 1 週間間隔で、本剤群は 50IU ずつ、uFSH-HP 群は 75IU
ずつ増量された。平均径 18mm 以上の卵胞が 1 個以上確認されるまで投与を継続し、いずれの群も最大
投与量は 150IU とされた。排卵は hCG 5000IU 又は 10000IU にて誘発された。ただし、平均径 15mm 以
上の卵胞が 4 個以上確認された場合は、OHSS の危険性ありとして治験薬の投与を中止し、hCG 投与を
キャンセルすることとされた。総投与期間は最長 28 日間とされた。
目標症例数 100 例(各群 50 例)に対して 116 例(本剤群 59 例、uFSH-HP 群 57 例)が割り付けられ
10
た。このうち 108 例(本剤群 53 例、uFSH-HP 群 55 例)が治験薬の投与を受け、AST とされた。治験薬
が投与されなかった 8 例の内訳は、投与前に妊娠に至った(本剤群 2 例、uFSH-HP 群 1 例)
、WHO グル
ープⅡの不妊患者ではない(本剤群 1 例)
、甲状腺機能障害(本剤群 1 例)
、高血圧(本剤群 1 例)
、個人
的な理由(本剤群 1 例)及び指定以外の治験薬の投与(uFSH-HP 群 1 例)であった。
AST 108 例のうち、治験実施計画書からの重大な逸脱が本剤群に 2 例 3 件あった。1 例は、11 日目、
12 日目の投与時に 100IU 投与すべきところを 50IU 投与され、かつ hCG 投与のキャンセル基準に該当し
ていたにもかかわらず hCG が投与された。他の 1 例は、治験薬投与の開始時期の逸脱であった。
AST のうち、本剤群 10 例、uFSH-HP 群 8 例が hCG 投与前に治験を中止した。その内訳は、OHSS の
危険性(本剤群 8 例、uFSH-HP 群 4 例)
、卵巣の反応性不十分(本剤群 1 例、uFSH-HP 群 1 例)
、自然排
、個人的理由(uFSH-HP 群 1 例)であった。
卵(本剤群 1 例、uFSH-HP 群 2 例)
AST の診断名の内訳は、下表のとおりであった。
表 診断名の内訳(AST)
例数(%)
第 1 度無月経
無排卵周期症
WHO グループⅡ
PCOS
希発月経
黄体機能不全
その他(高プロラクチン血症)
uFSH-HP 群
合計
(n=55)
(n=57)
22 (40.0)
40 (37.0)
10 (18.2)
16 (14.8)
24 (43.6)
43 (39.8)
13 (23.6)
34 (31.5)
1 (1.8)
1 (0.9)
1 (1.8)
3 (2.8)
複数診断名を有する症例あり
本剤群
(n=53)
18 (34.0)
6 (11.3)
19 (35.8)
21 (39.6)
0 (0.0)
2 (3.8)
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
本剤群
(n=53)
43 (81.1)
44 (83.0) 1)
15 (28.3)
5 (9.4)
751.9±351.4
11.3±3.3
uFSH-HP 群
(n=55)
47 (85.5)
48 (87.3) 2)
15 (27.3)
7 (12.7)
1104.5±648.2
11.4±4.3
差の推定値(95%信頼区間)、p 値
−
hCG 投与例数(%)
-4.3(-17.7∼9.2)
、0.534 5)
排卵例数(%)
3)
1.0(-15.9∼17.9)
、0.905 5)
単一卵胞周期例数(%)
-3.3(-15.1∼8.5)
、0.585 5)
妊娠継続例数(%)
-352.7(-552.6∼-152.7)
、< 0.001 6)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
-0.116(-1.589∼1.358)
、0.877 6)
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
3.4±3.0
3.3±2.4
0.140(-0.997∼1.277)
、0.807 6)
hCG 投与日における12mm 以上の卵胞数 4) 平均値±SD
−は、その評価を実施しなかったことを示す
1):自然排卵 1 例を含む
2):自然排卵 2 例を含む
3):単一卵胞周期:平均径 16mm 以上の卵胞が正確に 1 個あり、その他に平均径 12mm 以上の卵胞がない症例
4):hCG 投与例
5):Cochran-Mantel-Haenszel 法
6):Cochran 法
妊娠継続例以外の妊娠は、流産 6 例(本剤群 1 例、uFSH-HP 群 5 例)であった。子宮外妊娠が 3 例(本
剤群 1 例、uFSH-HP 群 2 例)見られた。多胎妊娠については、双胎妊娠が 2 例(本剤群 1 例、uFSH-HP
群 1 例)見られた。
安全性について、
少なくとも1件以上の有害事象が認められた症例は、
本剤群で53例中22例
(41.5%)
、
uFSH-HP 群で 55 例中 26 例(47.3%)であった。主な有害事象は、腹痛(本剤群 7 件(13.2%)
、uFSH-HP
群 4 件(7.3%)
、以下同様)
、OHSS(4 件(7.5%)
、2 件(3.6%)
)
、頭痛(4 件(7.5%)
、3 件(5.5%)
)
、
)
、上気道感染(3 件(5.7%)
、4 件(7.3%)
)
、切迫流産(3 件(5.7%)
、
下痢(4 件(7.5%)
、0 件(0%)
2 件(3.6%)
)
、便秘(3 件(5.7%)
、0 件(0%)
)
、めまい(2 件(3.8%)
、0 件(0%)
)
、卵巣疾患(1 件
(1.9%)
、2 件(3.6%)
)
、子宮外妊娠(1 件(1.9%)
、2 件(3.6%)
)
、嘔吐(自律神経系障害)
(1 件(1.9%)
、
11
3 件(5.5%)
)
、稽留流産(1 件(1.9%)
、3 件(5.5%)
)
、流産(0 件(0%)
、4 件(7.3%)
)
、及び嘔吐(消
化管障害)
(0 件(0%)
、2 件(3.6%)
)であった。
有害事象のうち副作用(治験薬との関連性が「明らかにあり」
、
「多分あり」
、
「可能性あり」
)とされた
ものは、本剤群 9 例(17.0%)
、uFSH-HP 群 10 例(18.2%)であった。本剤群に見られた副作用の内訳
は、OHSS 4 件(7.5%)の他、腹痛、頭痛、便秘、注射部反応、卵巣疾患、そう痒(症)及び発疹各 1
件(1.9%)であった。一方、uFSH-HP 群に見られた副作用の内訳は、OHSS 2 件(3.6%)
、卵巣疾患 2
件(3.6%)
、腹痛、流産、頭痛、子宮外妊娠、腹部腫脹及び月経異常各 1 件(1.8%)であった。
OHSS は、本剤群に 4 例(7.5%)
、uFSH-HP 群に 2 例(3.6%)報告され、いずれも副作用とされた。
本剤群 4 例のうち 2 例が軽度、2 例が中等度であり、uFSH-HP 群 2 例のうち 1 例が軽度、1 例が高度で
あった。重篤と判断されたものは無かった。
重篤な有害事象は、本剤群に 3 例(5.7%)3 件、uFSH-HP 群に 6 例(10.9%)7 件見られた。その内
訳は、本剤群では、卵巣疾患、切迫流産及び子宮外妊娠各 1 件、uFSH-HP 群では、子宮外妊娠、流産及
び切迫流産各 2 件、腹痛 1 件であった。死亡例は無かった。有害事象により治験の中止に至った例は無
かった。臨床検査値については、臨床的に問題となる異常は無かった。
治験薬投与終了後 2 週間までの検査で、本薬に対する抗体の産生は認められなかった。本剤群の 1 例
に本剤投与前から抗 CHO 抗体が検出されたが、当該症例で有害事象は認められなかった。
5)国内第Ⅲ相試験:WHO グループⅠ(第 2 度無月経)対象の試験(参考資料:試験番号 9603/CTD5.3.5.1
<19 年 月∼19 年 月>)
WHO グループⅠの 20∼40 歳の不妊患者における本剤の有効性及び安全性について、尿由来下垂体性
性腺刺激ホルモン製剤(ヒュメゴン®、hMG)を対照として評価することを目的として、多施設共同無
作為化二重盲検(ダブルダミー法)実薬対照比較試験が国内 48 施設で行われた。対象は、プロゲステロ
ンテストでは消退出血が見られず、エストロゲン・プロゲステロンテストにて消退出血が見られる第 2
度無月経の患者とされたが、原発性卵巣不全による血中性腺刺激ホルモン高値(FSH>30mIU/mL、LH
>20mIU/mL)の患者は対象から除外された。
初期投与量として、本剤群は 100IU/日、hMG 群は 75IU/日を 14 日間筋肉内投与し、15 日目に主席卵
胞の長径 12mm を目安に増量の判断が行われた。増量幅は、本剤群は 100IU、hMG 群は 75IU とされた。
主席卵胞長径が 18mm 以上で hCG 5000IU を投与するが、長径 15mm 以上の卵胞が 4 個以上確認された
場合は、OHSS の危険性ありとして治験薬の投与を中止し、hCG 投与をキャンセルすることとされた。
総投与期間は最長 21 日間とされた。
目標症例数 210 例(各群 105 例)に対して 76 例(本剤群 38 例、hMG 群 38 例)が割り付けられた時
点で、盲検下で実施された中間集計により排卵率が予想を下回ることが判明し、また、症例組み入れの
進行が遅く目標症例数到達にかなりの時間を要すると考えられたことから、
本治験は早期中止となった。
割り付けられた 76 例のうち 69 例(本剤群 36 例、hMG 群 33 例)が治験薬の投与を受け、AST とさ
れた。
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
hCG 投与例数(%)
排卵例数(%)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
本剤群
(n=36)
19 (52.8)
18 (50.0)
1888.9±804.6
16.3±5.3
hMG 群
(n=33)
15 (45.5)
12 (36.4)
1502.3±606.6
16.8±5.4
安全性について、hCG キャンセル率は、本剤群 4 例(11.1%)
、hMG 群 1 例(3.0%)であった。
少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた症例は、本剤群で 30 例中 17 例(47.2%)
、hMG 群で 33
12
例中 13 例(39.4%)であった。本剤群の有害事象の内訳は、かぜ症候群 3 件(8.3%)
、OHSS 3 件(8.3%)
、
注射部腫張、注射部疼痛、月経異常、女性乳房痛、頭痛、背(部)痛、腹痛、腹部腫張、血清 AST(GOT)
上昇、血清 ALT(GPT)上昇、高カリウム血症、下痢、白血球減少(症)及び白血球増多(症)各 1 件
(2.8%)であった。hMG 群の有害事象の内訳は、注射部疼痛 4 件(12.1%)
、注射部反応、月経異常及
び血清 ALT(GPT)上昇各 2 件(6.1%)
、OHSS、卵巣疾患、血清 AST(GOT)上昇、頭痛、背(部)
痛、腹痛、発熱、ビリルビン血症、LDH 上昇、高尿酸血症及び低カリウム血症各 1 件(3.0%)であっ
た。
有害事象のうち本剤の副作用(治験薬との関連性が「明らかに関連あり」
、
「関連がありうる」
)とされ
たものは、本剤群 8 例(22.2%)に 9 件、hMG 群 7 例(21.2%)に 11 件見られた。本剤群に見られた副
作用の内訳は、OHSS 3 件(8.3%)
、月経異常、注射部疼痛、腹部腫張、血清 AST(GOT)上昇、血清
ALT(GPT)上昇及び白血球減少(症)各 1 件(2.8%)であった。一方、hMG 群に見られた副作用の内
訳は、注射部疼痛 2 件(6.1%)
、血清 ALT(GPT)上昇 2 件(6.1%)
、OHSS、月経異常、卵巣疾患、注
射部反応、血清 AST(GOT)上昇、頭痛及び腹痛各 1 件(3%)であった。有害事象により治験の中止
に至った例は無かった。
OHSS は、本剤群に 3 例(8.3%)
、hMG 群に 1 例(3.0%)報告され、いずれも副作用とされた。本剤
群の 1 例(下記の重篤な有害事象例)以外はいずれもグレードⅠであった。
重篤な有害事象は、入院を要する OHSS(グレードⅡ)が本剤群に 1 例見られたが、入院 5 日後に回
復した。本治験において死亡例は無かった。
(2)海外臨床試験
1)海外第Ⅲ相試験:uFSH-HP との対照試験(評価資料:試験番号 37609/CTD5.3.5.1<1992 年 6 月∼1994
年 3 月>)
uFSH-HP(Metrodin©)を対照として、本剤の有効性及び安全性を評価することを目的とし、多施設共
同無作為化評価者盲検実薬対照比較試験がノルウェー等の欧州 12 施設で行われた。対象は、18∼40 歳
の女性でクエン酸クロミフェン無効の WHO グループⅡに該当する不妊患者とされた。
投与量及び投与方法は両群同様であり、第 1 周期では、初期投与量として 75IU/日を 14 日間筋肉内投
与し、卵胞発育が不十分な場合 7 日毎に 37.5IU ずつ増量された。第 2 及び第 3 周期では、初期投与量
75IU の投与期間は 7 日間として、卵胞発育が不十分な場合 7 日毎に 37.5IU ずつ増量された。いずれの
周期においても最高用量は 225IU、最長投与期間は 42 日までとされた。径 18mm 以上の卵胞が確認され
るか、径 15mm 以上の卵胞が 2∼3 個認められた場合、hCG 10000IU 投与にて排卵を誘発した。ただし、
平均径 15mm 以上の卵胞が 3 個より多く認められた場合は、OHSS の危険性ありとして治験薬の投与を
中止し、hCG 投与をキャンセルすることとされた。
目標症例数 200 例(本剤群 120 例、uFSH-HP 群 80 例)に対して 178 例(本剤群 109 例、uFSH-HP 群
69 例)が割り付けられた。このうち 172 例(本剤群 105 例、uFSH-HP 群 67 例)が第 1 周期の治験薬の
投与を受け、AST とされた。治験薬が投与されなかった 6 例の内訳は、投与前に妊娠に至った(本剤群
、同意の撤回(本剤群 2 例)
1 例)
、治験の早期終了のため投与を受けず(本剤群 1 例、uFSH-HP 群 2 例)
であった。
第 2 周期では 111 例(本剤群 69 例、uFSH-HP 群 42 例)
、第 3 周期では 78 例(本剤群 49 例、uFSH-HP
群 29 例)が治験薬の投与を受けた。
第 1 周期の AST 172 例のうち、治験実施計画書からの重大な逸脱が 15 例(本剤群 8 例、uFSH-HP 群
7 例)に見られた。その内訳は、血清中 FSH 又はプロラクチン高値等の選択除外基準違反が 6 例(本剤
群 2 例、
uFSH-HP 群 4 例)
、
1 群あたりの投与症例が 3 例に満たない施設の症例 9 例
(本剤群 6 例、
uFSH-HP
群 3 例)であった。
第 1 周期の AST のうち、本剤群 17 例、uFSH-HP 群 15 例が hCG 投与前に治験を中止した。その内訳
は、OHSS の危険性(本剤群 12 例、uFSH-HP 群 7 例)
、効果不十分による中止(本剤群 2 例、uFSH-HP
同意撤回による中止
(本剤群 1 例、
uFSH-HP 群 1 例)
、
自然排卵による中止
(本剤群 2 例、
uFSH-HP
群 3 例)
、
13
群 2 例)
、有害事象の発現による中止(uFSH-HP 群 2 例)であった。
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST、第 1 周期)
本剤群
(n=105)
88 (83.8)
76 (72.4)
15 (14.3)
15 (14.3)
1047.3±770.4
12.6±6.8
3.6±2.9
hCG 投与例数(%)
排卵例数(%)
単一卵胞周期例数(%)
妊娠継続例数(%)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
hCG 投与日における 12mm 以上の卵胞数 平均値±SD
−は、その評価を実施しなかったことを示す
1):1 例データ欠損のため 66 例の平均値及び SD
2):Cochran-Mantel-Haenszel 法
3):Cochran 法
uFSH-HP 群
(n=67)
52 (77.6)
42 (62.7)
21 (31.3)
7 (10.4)
1746.3±1440.2
18.1±10.2
2.6±2.6 1)
差の推定値(95%信頼区間)、p 値
−
9.7(-4.7∼24.1)
、0.1869 2)
−
−
-699.0 (-1032.6∼-365.3)、0.0001 3)
-5.500 (-8.057∼-2.944)、0.0001 3)
0.946 (0.078∼1.814)、0.0328 3)
第 1 周期の妊娠継続例のうち多胎妊娠は、品胎が本剤群に 1 例、双胎が uFSH-HP 群に 1 例見られた。
妊娠継続例以外の妊娠は、流産が 9 例(本剤群 5 例、uFSH-HP 群 4 例)
、子宮外妊娠が 1 例(uFSH-HP
群)であった。
表 有効性の成績(AST、第 2 び第 3 周期)
hCG 投与例数(%)
妊娠継続例数(%)
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
hCG 投与日における12mm 以上の卵胞数 平均値±SD
第 2 周期
本剤群
uFSH-HP 群
(n=69)
(n=42)
55 (79.7)
35 (83.3)
3 (4.3)
5 (11.9)
12.3±5.1
18.4±10.3
3.6±3.5
3.0±3.1
第 3 周期
本剤群
uFSH-HP 群
(n=49)
(n=29)
35 (71.4)
23 (79.3)
4 (8.2)
1 (3.4)
11.6±4.1
16.1±9.7
3.8±3.2
2.1±1.8
安全性について、全周期を対象として、少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた症例は、本剤群
31 例(29.5%)
、uFSH-HP 群 23 例(34.3%)であった。主な有害事象は、OHSS(本剤群 8 件(7.6%)
、
uFSH-HP 群 3 件(4.5%)
、以下同様)
、流産(5 件(4.8%)
、5 件(7.5%)
)
、腹痛(4 件(3.8%)
、2 件(3.0%)
)
、
下腹部痛(3 件(2.9%)
、1 件(1.5%)
)
、卵巣嚢胞(3 件(2.9%)
、2 件(3.0%)
)
、腹部不快感(3 件(2.9%)
、
1 件(1.5%)
)
、子宮外妊娠(1 件(1.0%)
、2 件(3.0%)
)
、及び発熱(0 件(0%)
、2 件(3.0%)
)であ
った。
有害事象のうち副作用(治験薬との関連性が「明らかにあり」
、
「多分あり」
、
「可能性あり」
)とされた
ものは、本剤群 19 例(18.1%)
、uFSH-HP 群 12 例(17.9%)に見られた。副作用の内訳は、OHSS(本
剤群 8 件(7.6%)
、uFSH-HP 群 3 件(4.5%)
、以下同様)
、下腹部痛(3 件(2.9%)
、1 件(1.5%)
)
、流
)
、卵巣嚢胞(2 件(1.9%)
、2 件(3.0%)
)
、
産(2 件(1.9%)
、1 件(1.5%)
)
、腹痛(2 件(1.9%)
、2 件(3.0%)
腹部不快感(2 件(1.9%)
、1 件(1.5%)
)
、子宮外妊娠(1 件(1.0%)
、1 件(1.5%)
)
、嘔気(1 件(1.0%)
、
0 件(0%)
)
、発疹(1 件(1.0%)
、0 件(0%)
)
、軟便(1 件(1.0%)
、0 件(0%)
)
、呼吸困難(1 件(1.0%)
、
)
、発熱(0 件(0%)
、1 件(1.5%)
)
、腟出血(0 件(0%)
、1 件(1.5%)
)
、及び月経異常(0
0 件(0%)
件(0%)
、1 件(1.5%)
)であった。
OHSS は、本剤群に 8 例(7.6%)10 件、uFSH-HP 群に 3 例(4.5%)3 件報告され、いずれも副作用
とされた。第 3 周期の本剤群の 1 例が重篤と判断された。
重篤な有害事象は、本剤群 7 例(6.7%)に 7 件、uFSH-HP 群 5 例(7.5%)に 6 件見られた。その内
訳は、上記の OHSS の他、本剤群では、流産 2 件、胞状奇胎、子宮外妊娠、下腹部痛及び腹痛各 1 件で
あり、uFSH-HP 群では、子宮外妊娠 2 件、流産 2 件、発熱 1 件、腟出血 1 件であった。胞状奇胎の 1 例
を除き、全例の回復が確認された。死亡例は無かった。
14
本剤群の 2 例(胞状奇胎、OHSS)
、uFSH-HP 群の 1 例(発熱)が有害事象のために治験を中止した。
本薬に対する抗体の産生は認められなかった。
2)海外第Ⅳ相試験:急速増量と遅速増量の比較試験(評価資料:試験番号 E1650/CTD5.3.5.2<19 年
月∼19 年 月>)
WHO グループⅡの不妊患者(無排卵性不妊患者)において、本剤の急速増量法と遅速増量法におけ
る有効性及び効率を評価することを目的として、多施設共同無作為化非盲検群間比較試験が欧州及びカ
ナダの 13 施設で行われた。対象は、18∼39 歳の女性のクロミフェン無効の WHO グループⅡの不妊患
者とされた。
投与方法について、急速増量群では、本剤 50IU/日を 5 日間皮下投与し、直径 12mm 以上の卵胞が認
められない場合は、5 日毎に 50IU ずつ増量し、遅速増量群では、本剤 50IU/日を 2 週間皮下投与し、直
径 12mm 以上の卵胞が認められない場合は、
7 日毎に 50IU ずつ増量することとされた。
最長投与期間は、
急速増量群では 30 日間、遅速増量群では 42 日間とされた。直径 18mm 以上の卵胞が確認された場合、
hCG 5000IU 筋肉内投与にて排卵を誘発した。ただし、直径 15mm 以上の卵胞が 3 個以上認められた場
合は、OHSS の危険性ありとして治験薬の投与を中止し、hCG 投与をキャンセルすることとされた。
目標症例数 200 例(各群 100 例)に対して 122 例(急速増量群 62 例、遅速増量群 60 例)が割り付け
られた。このうち「その他の理由」により治験薬の投与が投与されなかった 1 例を除く 121 例(急速増量
群 62 例、遅速増量群 59 例)が治験薬の投与を受け、AST とされた。
AST 121 例のうち、投与スケジュールからの逸脱が 42 例(急速増量群 26 例、遅速増量群 16 例)
、選
択・除外基準からの逸脱が 15 例(急速増量群 8 例、遅速増量群 7 例)
、hCG 投与基準からの逸脱(18mm
以上の径の卵胞が認められなかったにもかかわらず hCG が投与された)が 15 例(急速増量群 9 例、遅
速増量群 6 例)見られた。投与スケジュールからの逸脱の主な内容は、規定以下の低用量が 19 例(急速
増量群 15 例、遅速増量群 4 例)
、規定以上の高用量が 23 例(急速増量群 11 例、遅速増量群 12 例)であ
った。いずれの逸脱例も解析から除外されていない。
AST 121 例のうち 43 例(急速増量群 25 例、遅速増量群 18 例)が治験を中止した。中止理由の内訳は、
OHSS の危険性 21 例(急速増量群 11 例、遅速増量群 10 例)
、体外受精(IVF)治療への変更 10 例(急
速増量群 6 例、遅速増量群 4 例)
、有害事象 3 例(急速増量群 3 例)
、早期 LH サージ 2 例(遅速増量群
、その他の理由 6 例(急速増量群 4 例、遅速増量群 2 例)で
2 例)
、効果不十分 1 例(急速増量群 1 例)
あった。
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
急速増量群
(n=62)
48 (77.4)
36 (58.1)
13 (21.0)
5 (8.1)
1230±786
13.5±4.5
遅速増量群
(n=59)
45 (76.3)
36 (61.0)
13 (22.0)
9 (15.3)
1210±613
18.1±6.4
差の推定値
(95%信頼区間)
−
-4 (-21∼14)
-1 (-15∼14)
-7 (-19∼4)
-71 (-222∼81)
-5.1 (-6.4∼-3.9)
hCG 投与例数(%)
排卵例数(%)
単一卵胞周期例数(%)1)
妊娠継続例数(%)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
4.8±9.5
4.8±9.3
−
hCG 投与日における12mm 以上の卵胞数 平均値±SD 2)
−は、その評価を実施しなかったことを示す
1):単一卵胞周期:平均径 18mm 以上の卵胞が正確に 1 個あり、その他に平均径 12mm 以上の卵胞が無い症例
2):hCG 投与例、ただし遅速増量群の 1 例はデータ紛失のため欠測
妊娠継続例以外の妊娠は、流産が 2 例(急速増量群 1 例、遅速増量群 1 例)
、子宮外妊娠が 1 例(急速
増量群)であった。妊娠継続例中 4 例(いずれも遅速増量群)が双胎妊娠であった。
安全性について、少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた症例は、急速増量群 14 例(22.6%)
、
遅速増量群 14 例(23.7%)であった。急速増量群で見られた有害事象は、腹痛(女性生殖(器)障害)
15
4 件(6.5%)
、頭痛 3 件(4.8%)
、OHSS 3 件(4.8%)
、女性乳房痛、月経困難、子宮外妊娠、腟出血、
胎児死亡、子宮頸部ポリープ、卵巣嚢胞、咳及び処置各 1 件(1.6%)であった。遅速増量群に見られた
有害事象は、頭痛 8 件(13.6%)
、神経過敏(症)2 件(3.4%)
、OHSS、月経困難、胎児死亡、月経中間
期出血、不眠(症)
、嘔気、疲労、ニューロパシー、インフルエンザ様症候群及び処置各 1 件(1.7%)
であった。
有害事象のうち本剤の副作用(治験薬との関連性が「明らかにあり」
、
「多分あり」
、
「可能性あり」
)と
されたものは、急速増量群 8 例(12.9%)
、遅速増量群 5 例(8.5%)であった。急速増量群に見られた副
作用の内訳は、腹痛(女性生殖(器)障害)3 件(4.8%)
、OHSS 3 件(4.8%)
、頭痛、女性乳房痛及び
卵巣嚢胞各 1 件(1.6%)であった。一方、遅速増量群に見られた副作用の内訳は、頭痛 4 件(6.8%)
、
神経過敏(症)2 件(3.4%)
、OHSS、不眠(症)及び疲労各 1 件(1.7%)であった。
、遅速増量群に 1 例(1.7%、中等度)見
OHSS は、急速増量群に 3 例(4.8%、軽度 2 例、高度 1 例)
られ、いずれも副作用とされた。
重篤な有害事象は、急速増量群に 2 例見られた。1 例は子宮外妊娠であり、他の 1 例は流産であった。
本治験では死亡例は無かった。
急速増量群の 3 例で有害事象(OHSS 2 例、卵巣嚢胞 1 例)発現のために治験を中止した。
3)海外第Ⅳ相試験:増量幅 25IU と 50IU の比較試験(評価資料:試験番号 E1725/CTD5.3.5.2<2000 年
6 月∼2002 年 1 月>)
WHO グループⅡの不妊患者(無排卵性不妊患者)において本剤の初期投与量 50IU の 7 日間投与後の
増量幅の違いにおける有効性及び安全性を評価することを目的として、多施設共同無作為化非盲検群間
比較試験がカナダ及び欧州の 18 施設で行われた。対象は、18∼39 歳の女性のクロミフェン無効の WHO
グループⅡの不妊患者とされた。
初期投与量として 1 日 1 回 50IU を 1 週間皮下投与した後、直径 12mm 以上の卵胞が認められない場
合は、1 週間毎に、振り分けられた群によって 25IU 又は 50IU ずつ増量した。直径 18mm 以上の卵胞が
確認された場合、hCG 5000IU 投与にて排卵を誘発した。ただし、径 15mm 以上の卵胞が 4 個以上認め
られた場合は、OHSS の危険性ありとして治験薬の投与を中止し、hCG 投与をキャンセルすることとさ
れた。最長投与期間は 35 日間とされた。
目標症例数 200 例(各群 100 例)に対して 161 例(25IU 増量群 83 例、50IU 増量群 78 例)が無作為
化された。このうち 158 例(25IU 増量群 80 例、50IU 増量群 78 例)が治験薬の投与を受け、AST とさ
れた。治験薬が投与されなかった 25IU 増量群 3 例の理由はそれぞれ卵巣嚢胞が認められたため、生活
上の問題のため、及び妊娠が認められたためであった。
AST 158 例のうち、選択・除外基準からの逸脱が 22 例(25IU 増量群 12 例、50IU 増量群 10 例)
、hCG
投与基準からの逸脱が 18 例(25IU 増量群 9 例、50IU 増量群 9 例)見られたが、いずれの逸脱例も解析
から除外されなかった。
AST 158 例のうち 40 例(25IU 増量群 12 例、50IU 増量群 28 例)が治験を中止した。中止理由の内訳
は、OHSS の危険性 21 例(25IU 増量群 5 例、50IU 増量群 16 例)
、IVF 治療への変更 7 例(25IU 増量群
、有害事象 3 例(25IU 増量群 2 例、50IU 増量群 1 例)
、自然排卵 2 例(25IU 増
2 例、50IU 増量群 5 例)
量群 1 例、50IU 増量群 1 例)
、効果不十分 2 例(25IU 増量群 1 例、50IU 増量群 1 例)
、その他の理由 5
例(25IU 増量群 1 例、50IU 増量群 4 例)であった。
16
有効性の成績について下表に示す。
表 有効性の成績(AST)
25IU 増量群
(n=80)
69 (86.3)
65 (81.3)
33 (41.3)
16 (20.0)
886.6±491.3
14.0±5.4
2.3±1.9
50IU 増量群
(n=78)
57 (73.1)
47 (60.3)
17 (21.8)
10 (12.8)
984.3±572.4
13.4±4.9
3.3±4.0
差の推定値(95%信頼区間)、p 値
−
hCG 投与例数(%)
18.6(4.6∼32.7)
、0.0094 3)
排卵例数(%)
1)
19.3(4.7∼34.0)
、0.0096 3)
単一卵胞周期例数(%)
6.1 (-5.8∼17.9)、0.3141 3)
妊娠継続例数(%)
-160.7(-287.2∼-34.3)
、0.0127 4)
FSH 総投与量(IU) 平均値±SD
-0.3(-1.6∼1.0)
、0.6206 4)
FSH 投与期間(日) 平均値±SD
−
hCG投与日における12mm以上の卵胞数 平均値±SD 2)
−は、その評価を実施しなかったことを示す
1):単一卵胞周期:平均径 16mm 以上の卵胞が正確に 1 個あり、その他に平均径 12mm 以上の卵胞が無い症例
2):hCG 投与例
3):Cochran-Mantel-Haenszel 法
4):Cochran 法
妊娠継続例以外の妊娠は、流産が 5 例(25IU 増量群 2 例、50IU 増量群 3 例)であった。子宮外妊娠
は無かった。多胎妊娠は 25IU 増量群に双胎 1 例、品胎 1 例見られ、50IU 増量群には見られなかった。
安全性について、少なくとも 1 件以上の有害事象が認められた症例は、25IU 増量群 25 例(31.3%)
、
50IU 増量群 27 例(34.6%)であった。主な有害事象は、腹痛(女性生殖(器)障害)
(25IU 増量群 10
件(12.5%)
、50IU 増量群 7 件(9.0%)
、以下同様)
、頭痛(9 件(11.3%)
、7 件(9.0%)
)
、OHSS(3 件
(3.8%)
、2 件(2.6%)
)
、嘔気(2 件(2.5%)
、2 件(2.6%)
)
、腹痛(消化管障害)
(2 件(2.5%)
、2 件
)
、妊娠時出血(2 件(2.5%)
、2 件(2.6%)
)
、不規則出血(2 件(2.5%)
、0 件(0%)
)
、流産(2
(2.6%)
件(2.5%)
、0 件(0%)
)
、腹部腫脹(1 件(1.3%)
、2 件(2.6%)
)
、嘔吐(0 件(0%)
、2 件(2.6%)
)
、
及び腟炎(0 件(0%)
、2 件(2.6%)
)であった。
有害事象のうち本剤の副作用(治験薬との関連性が「明らかにあり」
、
「多分あり」
、
「可能性あり」
)と
されたものは、25IU 増量群 8 例(10.0%)
、50IU 増量群 12 例(15.4%)であった。副作用の内訳は、腹
、以下同様)
、OHSS(3
痛(女性生殖(器)障害)
(25IU 増量群 5 件(6.3%)
、50IU 増量群 3 件(3.8%)
件(3.8%)
、2 件(2.6%)
)
、頭痛(2 件(2.5%)
、3 件(3.8%)
)
、不規則出血(2 件(2.5%)
、0 件(0%)
)
、
嘔気(1 件(1.3%)
、1 件(1.3%)
)
、腹部腫脹(1 件(1.3%)
、2 件(2.6%)
)
、注射部反応(1 件(1.3%)
、
0 件(0%)
)
、女性乳房痛(1 件(1.3%)
、0 件(0%)
)
、卵巣痛(1 件(1.3%)
、0 件(0%)
)
、腹痛(消
、1 件(1.3%)
)
、腹水(0 件(0%)
、1 件(1.3%)
)
、薬効過多(0 件(0%)
、1
化管障害)
(0 件(0%)
件(1.3%)
)
、及び卵巣嚢胞(0 件(0%)
、1 件(1.3%)
)であった。
OHSS は、25IU 増量群に 3 例(3.8%、軽度 2 例、高度 1 例)
、50IU 増量群に 2 例(2.6%、軽度、中等
度各 1 例)見られ、いずれも副作用とされた。このうち、各群 1 例が重篤な有害事象とされた。25IU 増
量群で重篤とされた 1 例(高度)の完全回復は 40 日後であったが、この症例は治験を完了し、妊娠継続
が確認された。50IU 増量群で重篤とされた 1 例(中等度)も回復が確認された。
上記の OHSS 発症例以外には重篤な有害事象は見られなかった。本治験では死亡例は無かった。
有害事象による治験薬投与の中止は、25IU 増量群 2 例(不正出血 2 例)
、50IU 増量群 1 例(発熱)に
見られた。いずれも回復が確認された。不正出血の 2 例は副作用とされた。
<機構における審査の概略>
機構は、以下のような内容を中心に審査を行った。
1)本剤の臨床的位置付けについて
申請者は、本剤の排卵誘発については、第 1 度無月経、無排卵周期症、PCOS、希発月経もしくは黄
体機能不全の患者(WHO グループⅡの疾患)が対象患者であるとして、WHO グループⅠ(視床下部・
下垂体性の第 2 度無月経及び低ゴナドトロピン性性腺機能障害)の疾患は本剤の対象としていない旨説
17
明した。また、本剤が承認された場合には尿由来の既承認製剤であるヒュメゴン®から本剤に全面的に
切り替えるとの考えを示したが、hMG 製剤であるヒュメゴン®は、第 1 度無月経と第 2 度無月経を対象
としていることから、機構は、本剤の臨床的位置付けについて、ヒュメゴン®から本剤への切り替えも
含め、第 2 度無月経を含む患者を対象とする類薬と本剤との使い分けも踏まえた上で説明するよう申請
者に求めた。
申請者は以下のように回答した。WHO グループⅠの患者(典型的には低ゴナドトロピン性性腺機能
障害の患者)では、視床下部性ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌が不足しているか、下垂
体からの FSH 及び LH の産生が不十分あるいは欠乏している状態にあり、その治療法として、GnRH パ
ルス投与法とゴナドトロピンの投与が行われている。下垂体機能が損なわれていない患者では、GnRH
パルス投与により FSH 及び LH の分泌が回復し、
排卵及び妊娠に至ることが可能である。
しかしながら、
GnRH パルス投与法は、携帯用ポンプを用いて静脈内又は皮下に薬剤を継続的かつ間欠的に投与する必
要があり、実施が困難な場合がある。一方、ゴナドトロピンによる排卵誘発は、GnRH パルス投与法の
代替法であると同時に、原発性下垂体機能不全患者では最も重要な方法である。低ゴナドトロピン性無
排卵患者の大多数では、最適な卵胞発育及びステロイド産生をもたらすのに必要な内因性 LH が分泌さ
れていないため、LH 成分を含有しない FSH 製剤のみの投与では、十分な卵胞発育には至らない。これ
らの患者では、尿由来 FSH 製剤あるいは遺伝子組換え FSH 製剤(recFSH 製剤)の単独使用では、hMG
製剤あるいは遺伝子組換え LH 製剤(recLH 製剤)との併用と比べて、かなり低いエストラジオール(E2)
濃度にしか到達できず、また、FSH のみで刺激された卵胞は、hCG 投与後に続いて破裂するには至らず、
LH 製剤等との併用が必要となる。FSH 製剤と LH 製剤の併用投与における用量探索試験では、recFSH
製剤 150IU に対して、recLH 製剤の至適用量は 75IU であったとされている(J Clin Endocrinol Metab 83:
1507-1514,1998、Hum Reprod 12:2525-2532,2001)
。一方、LH の代わりに hCG(50IU/日)を使った例も報
告されているが(Fertil Steril 72:1118-1120,1999)
、OHSS 及び多胎妊娠のリスクを軽減させるための用量
の探索試験が必要であるとされている(Hum Reprod 20:2688-2697,2005)
。以上のことから、海外におい
ては、現在、WHO グループⅠの無排卵の患者の治療法として、①GnRH パルス投与法、②ヒュメゴン®
以外の hMG 製剤の投与、③FSH 製剤(尿由来 FSH 製剤又は recFSH 製剤)と recLH 製剤の併用投与が
行われていると考えられる。
国内において現在ヒュメゴン®を投与されている患者のうち、本剤の対象とならない患者の割合につ
いて、倉智らの報告(産科と婦人科 47:1146-1152,1980)によると、ヒュメゴン®が投与された種々の月
経異常の患者(1367 例)の内訳は、第 2 度無月経 48.7%(666 例)
、第 1 度無月経 32.2%(440 例)
、無
排卵周期症 8.6%(117 例)
、希発月経 10.5%(144 例)であるが、これはかなり古い報告で、最近行った
産婦人科専門医からの聞き取り調査では、排卵障害患者の 10∼20%が第 2 度無月経ではないかとの情報
があり、第 2 度無月経の実際の割合は、倉智らの報告よりかなり少ないものと考えられる。
また、第 2 度無月経のうち、LH 及び FSH の基礎分泌がほとんど見られない、低ゴナドトロピン性性
腺機能障害(hypogonadotropic hypogonadism;hypo-hypo)の患者は、本剤単独による治療の対象外と考
えられるが、hypo-hypo 以外の第 2 度無月経の患者に対しては効果が認められる可能性があると考えて
いる。hypo-hypo の患者の定義について、海外においては、血清中 E2 濃度が 40.0pg/mL 未満、プロゲス
テロンテストで消退出血がなく、子宮内膜の厚みが 5mm 未満(Hum Reprod 10:1549-1553,1995)
、又は
FSH<5.0IU/L 及び LH<1.2IU/L(J Clin Endocrinol Metab 83:1507-1514,1998)という基準が採用されてい
る。一方、本邦では、現在、hypo-hypo の定義について、日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会で「FSH、
LH 及び E2 の濃度がいずれも検出限界以下」とのより厳しい定義が検討されており、本邦ではこの定義
が臨床医に受け入れられているとの情報を専門医より得ている。これらの情報を基に、視床下部・下垂
体性の第 2 度無月経(WHO グループⅠ)の患者を対象とした 9603 試験における成績を hypo-hypo の患
者とそれ以外の患者について検討した。hypo-hypo の定義として、スクリーニング時又は FSH 投与 1 日
、並びに FSH 及び LH の分泌がほとんどない場合(FSH
目における E2 濃度が検出限界以下(≦10.0pg/mL)
<1.0IU/L、LH<0.1IU/L)を採用した(分類 A)
。なお、海外の試験で採用された基準(FSH<5IU/L、
LH<1.2IU/L)に基づく hypo-hypo の診断も行った(分類 B)が、第 2 度無月経における hypo-hypo の患
18
者の割合は分類 A によると約 20%であったのに対して、分類 B による hypo-hypo の患者の割合は、本剤
群で 61.1%(22 例)
、hMG 群で 69.7%(23 例)であった。分類 A による hypo-hypo の患者の割合と、有
効性の成績は下表のとおりであった。
表 9603 試験:hypo-hypo の患者における FSH 製剤の有効性
薬剤群
患者分類(分類 A*)
症例数(%)
排卵例数(%)
8 (22.2)
2 (25.0)
hypo-hypo の患者
16 (57.1)
hypo-hypo 以外の患者 28 (77.8)
hMG
6 (18.2)
1 (16.7)
hypo-hypo の患者
27
(81.8)
11
(40.7)
hypo-hypo 以外の患者
*:分類 A:FSH<1.0 IU/L、LH<0.1 IU/L、E2≤10.0 pg/mL
本剤
総投与量
(IU、平均値±SD)
2275.0 ± 706.6
1778.6 ± 808.0
1637.5 ± 460.9
1472.2 ± 637.8
投与日数
(日、平均値±SD)
18.5 ± 3.9
15.6 ± 5.5
18.3 ± 2.8
16.4 ± 5.8
分類 A による hypo-hypo の患者では、排卵率が低い傾向等がある。hypo-hypo 以外の患者の本剤群の
排卵率は 57.1%で、第 2 度無月経のうち hypo-hypo を除いた患者では、ある程度有効であることが示さ
れており、ヒュメゴン®が投与されている患者のうち本剤の対象とならない患者は、第 2 度無月経のう
ち hypo-hypo の患者と考えられる。
(機構注:機構による分類 B による集計では、本剤群の排卵率は、
hypo-hypo 患者で 40.9%、非 hypo-hypo 患者で 64.3%であった。
)排卵障害患者における第 2 度無月経の
患者の割合を 10∼20%、第 2 度無月経の患者における hypo-hypo の患者の割合を 20∼65%とすると、本
剤の対象とならない患者の割合は 2∼13%と推測される。ただし、9603 試験の用法・用量は、初期投与
量 100IU/日、増量幅は 100IU/日と、WHO グループⅡの患者を対象とした試験の用法・用量と異なって
おり、
第 2 度無月経の患者での至適投与量は見出せておらず、
第 2 度無月経の患者数が少ないことから、
今後、臨床試験により第 2 度無月経の患者での至適投与量を検討することは困難と予想される。以上か
ら、本剤の添付文書(案)では、対象外患者として、
「プロゲステロン投与では反応せず、エストロゲン・
プロゲステロン投与により初めて消退出血の認められる第 2 度無月経の患者では、本剤を単独で用いた
場合には低反応が予想されるため、本療法の対象から除外することを考慮すること。
」と記載した。
®
ヒュメゴン が投与されている患者のうち、本剤の対象とならない患者は、排卵障害患者のうちの一
部であると考えられ、ヒュメゴン®以外の hMG 製剤が他社から販売されているため、ヒュメゴン®から
本剤に完全に切り替えた場合、臨床現場ではほとんど混乱は起きないと考える。将来的には、ヒュメゴ
ン®の対象患者ではあるが本剤の対象とならない患者に対しては、本剤と recLH 製剤、rechCG 製剤ある
いは低分子 LH 作動薬との併用による治療が可能になるものと考えており、
申請者としては
製剤
や
の開発を速やかに行いたいと考えている。
以上の申請者の回答に対して機構は以下のように考える。尿由来の hMG 製剤から遺伝子組換え技術
の応用により製造される本剤に切り替え、供給の安定等を図る利点は理解でき、本申請における臨床試
験での用法・用量の検討は WHO グループⅡに対するものであり、本剤の対象を WHO グループⅡの患
者とするという申請者の判断は妥当なものと考える。また、ヒュメゴン®の供給が終了しても、現時点
では、他社の hMG 製剤が流通しており、臨床現場に大きな混乱が起こることは無いとする申請者の回
答は妥当と考える。他方、機構は、将来的には hMG 製剤から recFSH 製剤への全面的切り替えも予想さ
れ、これを視野に入れた開発は検討されるべきと考える。
2)対象疾患について
ⅰ)WHO グループⅡの疾患別の本剤の有効性について
機構は、WHO グループⅡに含まれる種々の疾患に対する本剤の有効性の違いについて申請者に説明
を求めた。
申請者は以下のように回答した。WHO グループⅡに含まれる疾患と本剤の有効性(排卵率)との関
係を下表に示す。
WHO グループⅡにおける疾患の分布は多岐にわたっており、それぞれの疾患における本剤の排卵率
19
は[無排卵周期症+PCOS+希発月経(1 例のみ)
]を除き、最低でも 57.1%の排卵率[第 1 度無月経+
PCOS]が認められた。この成績からは、疾患の違いが本剤の有効性に影響を与えているという成績は
得られていないと考える。
表 疾患と本剤の有効性(排卵率)との関係
RM-9361 試験 1)
排卵例数/各試験における疾患別症例数(%)
9602 試験
0004 試験
50 IU群
(n=10)
100 IU 群
(n=9)
150 IU群
(n=7)
25 IU群
(n=17)
50 IU群
(n=21)
本剤群
(n=53)
5/6
(83.3)
3/4
(75.0)
5/6
(83.3)
2/3
(66.7)
2/2
(100.0)
5/5
(100.0)
PCOS
−
−
−
1/3
(33.3)
3/9
(33.3)
3/5
(60.0)
1/3
(33.3)
6/10
(60.0)
5/8
(62.5)
希発月経
−
−
−
−
−
9/12
(75.0)
5/5
(100.0)
6/8
(75.0)
14/15
(93.3)
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
第 1 度無月経
無排卵周期症
黄体機能不全
+希発月経
第 1 度無月経
+PCOS
無排卵周期症
+PCOS
無排卵周期症
−
−
−
−
+希発月経
PCOS
−
−
−
−
+希発月経
無排卵周期症
+PCOS
−
−
−
−
+希発月経
希発月経
−
−
−
−
+その他 2)
1):WHO グループⅡの患者におけるデータ
2):その他:高プロラクチン血症(WHO グループⅡではない)
−
3/6
(50.0)
1/1
(100.0)
0003 試験
25 IU
50 IU
増量群
増量群
(n=28)
(n=29)
1/1
4/4
(100.0)
(100.0)
2/2
5/7
(100.0)
(71.4)
2/4
6/7
(50.0)
(85.7)
15/15
4/6
(100.0)
(66.7)
1/1
−
(100.0)
1/1
−
(100.0)
1/2
−
(50.0)
2/2
1/1
(100.0)
(100.0)
0/1
1/2
(0.0)
(50.0)
合計
28/37
(75.7)
31/45
(68.9)
22/32
(68.8)
33/36
(91.7)
1/1
(100.0)
4/7
(57.1)
2/3
(66.7)
3/3
(100.0)
5/7
(71.4)
−
−
−
4/4
(100.0)
−
−
−
0/1
(0.0)
0/1
(0.0)
−
2/2
(100.0)
−
−
2/2
(100.0)
ⅱ)臨床試験での疾患の分布と国内の実際の疾患の分布の異同について
機構は、臨床試験における疾患分布と国内の実際の疾患分布との間の異同について申請者に説明を求
めた。
申請者は以下のように回答した。国内における疾患の実際の分布について、公表論文、総説あるいは
成書について調査を行ったが、疾患の分布の記述は見出せなかった。しかしながら、本剤の臨床試験で
は、クロミフェン療法が奏功しない患者が選択されており、実地医療の現場においても、WHO グルー
プⅡの患者のうち本剤が適応される患者はクロミフェン療法が奏功しない患者に限定されるため、臨床
試験における疾患の分布と、国内における実際の分布には大きな差がないものと考えられる。また、海
外においては、実際の疾患の分布状況については、Laven らの報告(Obstet Gynecol Surv 57:755-767,2002)
によると、大多数の無排卵患者(約 80%)が血清 FSH 値及び E2 値が正常範囲にある WHO グループⅡ
の患者であり、また、様々な病態が種々重なり合っているため、WHO グループⅡの患者をより具体的
な疾患に分類することは困難であるとしている。
ⅲ)原発性卵巣不全の取り扱いについて
原発性卵巣不全に対して、本剤の英国及び米国の添付文書では禁忌である旨の記載があるが、今回申
請の添付文書(案)では禁忌又は対象外との記載は無かったため、機構は、本申請における原発性卵巣
不全の取り扱いについて申請者に説明を求めた。
申請者は以下のように回答した。本剤の既承認製剤(効能・効果は「複数卵胞発育のための調節卵巣
刺激」
)の添付文書では、重要な基本的注意の項に、対象外患者として「妊娠不能な性器奇形、妊娠に不
20
適切な子宮筋腫、原発性卵巣不全又は非性腺内分泌障害(甲状腺、副腎又は下垂体疾患等)が認められ
る場合は本治療の対象から除外すること。
」と記載し、原発性卵巣不全を対象外としている。排卵誘発に
対する本申請においても同様に取り扱う予定であったが、申請時の添付文書(案)では当該記載が漏れ
ていた。当該記載については訂正(復活)し、本申請においても原発性卵巣不全を対象外として取り扱
う。
欧米における本剤の添付文書では、原発性卵巣不全患者を類薬(hMG 製剤)にならって禁忌とした経
緯がある。類薬が原発性卵巣不全患者を禁忌としたのは数十年前のことであり、その理由については不
明である。一方、欧米で既承認の類薬である
(遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン、ホリトロ
ピン アルファ、
社)の英国の添付文書の禁忌の項は、以下のように 2 パートに分けて記載さ
れている(機構注:日本においては、低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導
の適応のみ承認されている製剤)
。最初のパートは「
must not be used in : ---」として
の投与により症状の増悪が予想されるケースが記載されており、二つめのパートは、
「
should
not be used when an effective response can not be obtained, such as: ---」として、効果が得られないと予想され
るため使用しない方がよいと考えられるケースが記載されており、原発性卵巣不全はこの二つめのパー
トに記載されている。しかしながら、
の米国の添付文書、本剤及び hMG 製剤の海外における
添付文書ではこのような 2 パートによる区別はせず、禁忌の項にまとめて記載されている。一方、日本
の添付文書では、hMG 製剤であるヒュメゴン®においても、原発性卵巣不全を対象外として扱い、禁忌
とは記載していない。
原発性卵巣不全はゴナドトロピンが高値であるものの、卵巣のゴナドトロピンに対する反応性が欠如
していること、また、FSH レセプターは卵胞内の細胞に存在することから、原発性卵巣不全患者に本剤
を投与しても有効性は期待できないものの、疾患の増悪はなく、他の臓器に対しても影響はないと考え
られる。また、日本における hMG 製剤のこれまでの使用でも問題は生じていない。以上から、原発性
卵巣不全患者に本剤が投与された場合、有効性は期待できないものの、安全性に問題がないと考えられ
ることから、原発性卵巣不全を禁忌とする必要はなく、国内類薬の添付文書と同様に対象外患者とする
ことで十分であると考えている。
以上のⅰ)∼ⅲ)の申請者の回答に対して機構は以下のように考える。提出された試験成績において
は、WHO グループⅡの疾患別に臨床的に問題となる有効性の違いは見られないと判断する。また、本
剤は、その薬理作用及び標的臓器の特徴から、原発性卵巣不全患者に対しては無効であり、かつ、有害
な作用を生じる可能性は低いとする申請者の説明は理解でき、海外の類薬の添付文書にもこの趣旨に沿
って記載されていると考えられるものがあり、本剤について、原発性卵巣不全を対象外とし、禁忌とは
しないとする申請者の対応は妥当と判断する。効能・効果等については、専門協議での議論を踏まえて
最終的に判断したい。
3)試験デザイン及び試験成績の解釈について
ⅰ)国内第Ⅲ相試験における症例数設定根拠について
国内で実施された第Ⅲ相試験(0003 試験及び 0004 試験)では、短期間での症例の蓄積が困難である
として、検証(検討)目的に応じた統計的に十分な症例数が設定されていないことから、機構は、各試
験でどの程度の精度で本剤の有効性を検討すれば十分であると考えていたのか申請者に説明を求めた。
申請者は以下のように回答した。0003 試験及び 0004 試験ともに、主要評価項目である排卵率が過去
の試験成績から 60∼80%と予測された。
そこで点推定値が母集団での排卵率から 10%以上外れないよう
に、精度(標準誤差)5%で推定するために必要な症例数は 1 群 90 例と考えた。しかしながら、当時の
日本の臨床現場での実施可能性を考えた場合、症例の蓄積が困難であると判断し、外国試験データの積
極的利用を考え、精度についても試験毎に再検討を行った。
0003 試験については、同時期に外国で同様のプロトコルの E1725 試験(1 群 90 例、精度 5%)が計画
されていたことから、短期間での実施可能性を考慮して 1 群 25 例(精度 9%)の試験を実施した。FSH
21
投与による血中濃度の推移及び FSH に対する卵胞の反応性に関して、日本人女性と外国人女性の間で大
きな差はなく、0003 試験と E1725 試験の試験目的、診断及び主要な組み入れ基準、用法・用量、評価基
準等プロトコルの内容がほぼ同じであることから、
0003試験はE1725試験と併合可能であると判断した。
両試験を併合した場合、0003 試験単独では 1 群 25 例であったとしても、E1725 試験の成績を利用すれ
ば、初期投与量 50IU/日で 7 日間投与後の増量幅 25IU/日と 50IU/日の比較は可能となり、十分に有効性
を考察できると判断した。
0004 試験については、
5%の精度を確保するとともに uFSH-HP に対する非劣性の検証も行うとすると、
片側 5%での検証においても 1 群 260 例が必要であることから、実施可能性の問題から非劣性の検証は
断念した。既に外国では 37609 試験(本剤群 105 例、uFSH-HP 群 67 例)の成績を基に FDA の承認を得
ており、国内での臨床試験の状況及び患者数から考えて、それ以上の規模の試験を実施することは困難
であると考えられた。そこで、差の 95%信頼区間が−18∼18%まで許容できる試験として 1 群 50 例(精
度 6.5%)の試験を計画した。これは、排卵率が 60∼80%であると仮定すると、排卵率は約 6∼7%の精
度で推定することができ、薬剤群間差については±9%の精度になることを意味している。37609 試験で
は、排卵率について本剤群で 72.4%、uFSH-HP 群で 62.7%と点推定値で優れており、差の 95%信頼区間
は−4.7∼24.1%という成績が得られていた。この成績からも、差の 95%信頼区間が−18∼18%まで許容
できる試験は、本剤の有効性を検討するのに妥当な規模の試験であると判断した。また、0004 試験を
37609 試験と併合した議論も可能であると考えた。
申請者としては、以上の点を勘案し、これら本邦及び外国の臨床試験成績を用いて有効性を検討する
ことが可能であると判断した。
ⅱ)国内第Ⅲ相試験で参加症例数の推定の根拠について
機構は、国内臨床試験の計画において参加可能な症例数が少ないと考えた理由について、排卵障害の
患者数を示した上で説明するよう申請者に求めた。
申請者は以下のように説明した。平成 10 年度厚生科学特別研究「生殖補助医療技術に対する医師及び
国民の意識に関する研究」研究報告書において、不妊治療受診患者数の推定値が示されており、その中
で「現在排卵誘発剤の治療を受けている患者数」は 165500 人と推定されている。一方、日本オルガノン
が販売するヒュメゴン®の売上げを基に推定した「ゴナドトロピン製剤による排卵誘発療法の対象とな
る周期数」は約 120000 周期であった。排卵誘発治療において、1 人の患者が平均 3 周期の治療を受ける
と仮定すると、
ゴナドトロピン製剤による排卵誘発治療の対象患者は約 40000 人であろうと推定される。
また、ヒュメゴン®の納入施設は約 2100 施設であり、すべてのゴナドトロピン製剤の納入施設はさらに
多くなる。これらの施設ではゴナドトロピンによる排卵誘発療法が行われていると考えられる。
臨床試験の実施に際しては、症例は、設定された選択・除外基準により絞られること、また GCP を遵
守したモニタリングを確保するためには依頼する医療機関数が限られることから、約 40000 人と推定す
る患者数は臨床試験を実施する上で十分な数とは言えないと考えた。また、本剤の生殖補助医療の臨床
試験においては、それが保険外診療であることから、治験に参加することで患者にとっての経済的イン
センティブがあったが、排卵誘発ではそのような経済的インセンティブもなく、患者のリクルートに長
期間を要すると考えられた。
以上のことから、国内で第Ⅲ相試験を計画するにあたり、用法・用量の比較又は非劣性を検証するた
めの十分な症例を確保することは困難と判断し、少数例の症例による臨床試験を計画した。
ⅲ)海外臨床試験成績の位置付けについて
機構は、本剤の有効性及び安全性の評価における海外試験成績の位置付けについて、申請者に説明を
求めた。
申請者は以下のように回答した。国内の臨床試験成績だけでは、申請予定の用法・用量の設定根拠を
有効性及び安全性の観点から説明することが難しいと考えられたことから、臨床試験の信頼性を確認し
た上で、海外臨床試験である 37609 試験、E1650 試験及び E1725 試験の 3 試験を、以下の根拠の基に評
22
価資料とした。本剤の薬物動態試験並びに調節卵巣刺激に関する臨床試験において国内外試験の成績を
比較すると、体重で補正した上で、投与部位から血中への FSH の移行に関して、また、FSH に対する卵
胞の反応性に関して、日本人女性と外国人女性の間で基本的に差はないと考えられた。また、排卵誘発
に関して、日本と海外では医療習慣に大きな違いはなく、選択・除外基準、用量調整の基準、評価方法
等海外臨床試験と同様のプロトコルで実施可能であることから、海外で実施された臨床試験成績も本剤
の有効性及び安全性の評価に利用できるものと判断した。
排卵誘発に関する国内での開発における、これら 3 試験の位置付けは以下のとおりである。37609 試
験は、uFSH-HP 製剤との比較で本剤の有用性を示し、欧米での承認の根拠となった試験である。また、
排卵誘発において初期投与量を 75IU/日から 50IU/日に変更する契機となった試験成績でもあり、本剤の
開発経緯を説明する上で必要な成績と判断した。E1650 試験は、外国において初期投与量 50IU/日で最初
に実施された試験であり、また初期投与量 50IU/日とした場合にはその投与期間を 2 週間から 1 週間程
度に短くする必要があることを示唆した試験でもある。E1725 試験は、国内 0003 試験と同様のプロトコ
ルで実施した試験であり、0003 試験を計画する上で参考とした試験である。また、0003 試験は少数例の
患者で実施したことから、その成績を確認するものとして評価資料として提出した。
機構は、フォリスチム注 75 及び同 150 の承認審査時に、本剤同一用量投与時の血清中 FSH 濃度は、
外国人女性と比較して日本人女性で高く、
これは体重差に起因することが示唆され、
添付文書において、
その旨の情報提供がなされていることから、薬物動態の民族差を踏まえて、本剤の用法・用量について
説明するよう申請者に求めた。
申請者は以下のように回答した。本申請の対象患者における体重の平均値は、日本人女性で外国人女
性の 8 割程度であり、初期投与量が外国人女性で 50IU/日とすると、日本人女性では約 40IU/日であると
計算される。より少量の初期投与量に関しては、初期投与量 25IU/日と 50IU/日を比較した 9602 試験の
成績から、25IU/日では、卵胞発育に対して十分な効果が得られなかったことが確認された。一方、ほぼ
同様のプロトコルで実施した国内外の 0003 試験及び E1725 試験において、同じ初期投与量 50IU/日で同
程度の有効性及び安全性が確認された。卵胞を発育させる FSH 濃度には閾値が存在し、この閾値が個人
毎で変動するため、十分な効果を得るには、本剤の初期投与量としてある程度の量が必要となることを
考慮すると、卵胞を発育させるために、外国人女性で用いた初期投与量 50IU/日を同様に日本人女性に
使用することは、有効性及び安全性の観点から問題はないと考える。
ⅳ)国内第Ⅲ相試験(0004 試験)の成績の解釈について
国内第Ⅲ相試験(0004 試験)では、本剤の有効性(排卵率)は対照薬に対して点推定値で下回ってい
た。機構は、本試験では非劣性検証を行うだけの症例数は設定されておらず、本試験から検証的な試験
成績は得られていないと考えることから、申請者に、本試験成績の解釈について見解を求めた。
申請者は以下のように回答した。uFSH-HP 製剤を対照薬として国内で実施した 0004 試験では、主要
評価項目である排卵率が本剤群 83.0%に対し uFSH-HP 製剤群 87.3%であった。その差の 95%信頼区間
は−17.7∼9.2%であったが、両群の排卵率ともに、臨床的に十分効果が期待できると考えられる 80%以
上であるため、両群の有効性は臨床的に同等と考える。また、副次評価項目においては、投与日数にお
いて差はなかったものの、総投与量において本剤群が uFSH-HP 製剤群に比較して有意に少なかった。
以上から、0004 試験における排卵率の点推定値の差は臨床的に意味のある差ではなく、従来の尿由来
製剤が抱える欠点(感染性物質混入のリスク、安定供給、品質のばらつき等)を克服することを目的と
した本剤の有用性は損なわれるものではないと考える。
以上のⅰ)∼ⅳ)の申請者の回答に対して機構は以下のように考える。国内外の試験(0003 試験と
E1725 試験、0004 試験と 37609 試験)の併合を前提として国内臨床試験の症例数を設定したとする申請
者の説明は妥当なものではなく、特に、37609 試験での本剤の初期投与量は 75IU であり、初期投与量
50IU の 0004 試験と併合して議論するべきではなく、個々の海外臨床試験成績は、国内臨床試験成績を
支持する参考的な位置付けであると判断する。本剤の有効性について、卵胞を発育させる FSH 濃度には
23
それぞれ患者固有の閾値が存在し、その閾値を超える十分な投与量が必要であるとの説明は理解でき、
また、本剤投与の目的であり客観的な指標である排卵率に関して、二つの国内第Ⅲ相試験においてそれ
ぞれ 85.7%(24/28 例:25IU 増量群)及び 83.0%(44/53 例:50IU 増量群)の成績が得られていること
から、本剤の有効性は示されているものと考える。一方で、国内臨床試験における症例数の確保の困難
性は理解できるが、厳密には、国内臨床試験は用法・用量の検討及び対照薬との比較に対して十分な症
例数により実施されたとは言えないことから、特に、増量幅も含めた用法・用量については市販後に更
なる検討が必要であると判断する(
「4)用法・用量における増量幅等について」の項参照)
。なお、本剤
の用法は皮下又は筋肉内投与であるが、両用法で実施された国内臨床試験成績が提出されており、卵巣
の反応性に応じた用量調整が行われること、及び既承認時の検討内容も踏まえ、皮下又は筋肉内投与の
両用法を可能とした用法の設定は妥当であると考える。また、安全性に関しても、OHSS 等については
十分な注意が必要であるが、承認の可否に影響するような重大な懸念は認められないと考える(
「5)
OHSS について」の項参照)
。
4)用法・用量における増量幅等について
申請者は、本剤の増量幅について「卵巣の反応性が低い場合は、7 日間ごとに 25 又は 50 国際単位を増
量」とし、その根拠として、25IU 増量群と 50IU 増量群を比較した 2 試験(0003 試験及び E1725 試験)
の有効性及び安全性の成績から「50IU/日のみならず 25IU/日も有効であることが示された」としている。
機構は、当該試験における有効性・安全性の成績はむしろ 25IU 増量群で優れた傾向が見られることか
ら、本剤の至適な増量幅、及び増量幅を選択する際の臨床的指標に関し、以下のⅰ)∼ⅴ)について、
申請者に考察を求めた。
ⅰ)各増量群の背景因子の差について
機構は、0003 試験及び E1725 試験で、25IU 増量群と 50IU 増量群間の成績に影響を及ぼす背景因子の
差は無いか申請者に確認を求めた。
申請者は以下のように回答した。両試験における 25IU 増量群と 50IU 増量群には、初期投与量の 50IU/
日を hCG 投与前日まで投与し続けた群(以下、維持群)と、8 日目以降に増量した群(以下、増量群)
とが存在する。このうち、維持群は、振り分けられた投与群(25IU 増量群、50IU 増量群)にかかわら
ず、両群とも 50IU/日を hCG 投与前日まで投与するため、投与スケジュールが全く同じであり、25IU 増
量群、50IU 増量群のそれぞれの維持群間では本来成績に差が出ないものと考えられる。0003 試験及び
E1725 試験について、維持群と増量群とに分けた場合の有効性及び安全性の成績を下表に示す。両試験
とも、維持群及び増量群共に、25IU 増量群の方が 50IU 増量群よりも排卵率が高く、副作用発現率が低
い成績が得られている。0003 試験及び E1725 試験における、25IU 増量群と 50IU 増量群の背景因子のう
ち、年齢、身長、体重、BMI、不妊期間等に差が無いことは検討済みであり(CTD2.7.6)
、今回、25 及
び 50IU 増量群における維持群及び増量群についても、同様に、年齢、身長、体重、BMI、不妊期間等の
背景因子を調査したが、これらの群間で背景因子に大きな差は認められなかった。
表 投与量の維持及び増量と有効性及び安全性
症例数(%)
排卵例数(%)
有害事象発現例数(%) 副作用発現例数(%)
0003 試験
25 IU 増量群
50 IU 増量群
維持群
増量群
維持群
増量群
11
17
12
17
(39.3)
(60.7)
(41.4)
(58.6)
維持群
増量群
維持群
増量群
24
56
23
55
(30.0)
(70.0)
(29.5)
(70.5)
9
15
9
13
(81.8)
(88.2)
(75.0)
(76.5)
1
8
4
6
( 9.1)
(47.1)
(33.3)
(35.3)
0
3
2
4
( 0.0)
(17.6)
(16.7)
(23.5)
7
18
6
21
(29.2)
(32.1)
(26.1)
(38.2)
1
7
2
10
( 4.2)
(12.5)
( 8.7)
(18.2)
E1725 試験
25 IU 増量群
50 IU 増量群
19
46
16
31
(79.2)
(82.1)
(69.6)
(56.4)
24
以上から、背景因子の相違が有効性及び安全性の成績に影響を与えているという結論は得られなかっ
た。25IU/日を増量する群が 50IU/日を増量する群よりも優れた成績が得られていることから、臨床試験
の成績からは、本剤の初期量(50IU/日)投与後、卵巣の反応性が低い場合には、まず 25IU/日の増量を
考慮することが用法・用量として適当であると考える。ただし、卵巣の反応性には個人差が認められる
ことから、患者によっては 50IU/日の増量も必要であると考える。
機構は、25IU 増量群と 50IU 増量群を比較すると、両試験ともに 25IU 増量群の成績が比較的優れてお
り、基本的には 25IU/日の増量を推奨すべきであると考える。患者の反応性によって 50IU/日の増量を行
うべきかについては、以下、ⅱ)以降で更に検討する。
ⅱ)PCOS における本剤の増量幅について
機構は、増量幅を選択する際の基準について申請者の見解を求めたところ、申請者は、PCOS には少
量漸増法が良いという報告があり、PCOS においては 25IU/日の増量法が好ましく、その他の患者につい
ては 50IU/日の増量が望ましいと回答した。
機構は、その根拠について、申請者に確認を求め、併せて、本剤の臨床試験における PCOS 症例の有
効性及び安全性に対する増量幅の影響を示すよう申請者に求めた。
申請者は以下のように回答した。吉村らの報告(吉村泰典.厚生科学研究費補助金(子供家庭総合研
究事業)
(分担)総合研究報告書 生殖補助医療の適応及びそのあり方に関する研究.厚生労働科学研究
成果データベース 599-605,2001)では、クロミフェン無効の排卵障害に対して、視床下部性の患者では、
まず通常の FSH 療法(FSH 製剤 150IU/日連日投与)を行い、OHSS を発症した場合等は低用量漸増療法
(FSH 製剤 75IU/日 14 日間、以後 7 日間毎に 37.5IU ずつ増量)を行うこととし、PCOS では通常の FSH
療法は危険なため、まず低用量漸増療法を行い、OHSS を発症した場合等は FSH-GnRH パルス療法を用
いるとするガイドラインを提示している。
増量幅を直接比較した 0003 試験において、PCOS と診断された症例における排卵率は、25IU 増量群
で 7 例中 3 例(42.9%)
、50IU 増量群で 11 例中 8 例(72.3%)であり、有害事象の発現率は、25IU 増量
群で 3 例(42.9%)
、50IU 増量群で 5 例(45.5%)であった。また、PCOS 症例の本剤の投与開始日から
hCG投与日又はFSH投与期間中の最終E2 測定日までのE2 値の経時的な変動を図示して比較したところ、
視覚的に明らかな差は認められず、臨床試験成績からは、PCOS 症例で 25IU 増量の方が 50IU 増量より
も好ましいという示唆は得られなかった。
機構は、提示された吉村らのガイドラインは、PCOS 患者では、特に多発排卵による多胎妊娠、ある
いはOHSSの発症のリスクが高いことからFSH製剤は慎重に増量すべきであると述べたものと理解され、
臨床的に重要な留意点を示したものではあるものの、PCOS 患者における本剤の増量幅として 50IU/日よ
り 25IU/日が好ましいことを直接示しているものではないと考える。また、提出された少数の PCOS 症
例を対象とした臨床試験成績からは、PCOS 症例における増量幅を選択する根拠は見出せないと考える。
ⅲ)PCOS 以外の WHO グループⅡの疾患における本剤の増量幅について
機構は、PCOS 以外の WHO グループⅡの疾患における増量幅の選択の根拠についても申請者に確認
を求めた。
申請者は以下のように回答した。国内臨床試験の RM-9361 試験、9602 試験、0004 試験及び 0003 試験
で初期投与量として 50IU/日を投与された症例について、PCOS 及び PCOS 以外の疾患、並びに各疾患別
に患者を分類し、増量幅と有効性(排卵例数)及び安全性(有害事象及び副作用発現例数)との関係を
検討した成績を下表に示す。増量幅に関して、PCOS、PCOS 以外、あるいは PCOS 以外の各疾患によっ
て、適切な用法・用量を見出すことはできなかった。
25
表 初期投与量 50IU/日での PCOS 及び PCOS 以外の疾患における排卵例数と増量幅
増量幅
増量なし
25 IU 増量
50 IU 増量
PCOS(45 例)
(他の疾患を併発している患者も含む)
例数(%)
14/22 (63.6)
3/5 (60.0)
13/18 (72.2)
PCOS 以外の疾患(96 例)
(複数の疾患を併発している患者も含む)
例数(%)
34/37 (91.9)
12/12 (100.0)
34/47 (72.3)
表 初期投与量 50IU/日での PCOS 及び PCOS 以外の疾患における有害事象及び副作用発現例数と増量幅
増量幅
増量なし
25 IU 増量
50 IU 増量
PCOS(45 例)
(他の疾患を併発している患者も含む)
有害事象
副作用
例数(%)
例数(%)
6/22 (27.3)
1/22 (4.5)
2/5 (40.0)
2/5 (40.0)
10/18 (55.6)
4/18 (22.2)
PCOS 以外の疾患(96 例)
(複数の疾患を併発している患者も含む)
有害事象
副作用
例数(%)
例数(%)
6/37 (16.2)
2/37 (5.4)
6/12 (50.0)
1/12 (8.3)
19/47 (40.4)
11/47 (23.4)
表 初期投与量 50IU/日での疾患別排卵例数と増量幅(PCOS 以外の疾患)
増量幅
第 1 度無月経
(26 例)
例数(%)
無排卵周期症
(28 例)
例数(%)
希発月経
(36 例)
例数(%)
PCOS 以外の複
数の疾患を持つ
患者(6 例)
例数(%)
増量なし
25 IU 増量
50 IU 増量
5/6 (83.3)
1/1 (100.0)
14/19 (73.7)
11/12 (91.7)
1/1 (100.0)
9/15 (60.0)
18/19 (94.7)
7/7 (100.0)
8/10 (80.0)
0/0 (0)
3/3 (100.0)
3/3 (100.0)
表 初期投与量 50IU/日での有害事象及び副作用発現例数と増量幅(PCOS 以外の疾患)
増量幅
増量なし
25 IU 増量
50 IU 増量
第 1 度無月経
(26 例)
有害事象
例数(%)
1/6 (16.7)
1/1 (100.0)
6/19 (31.6)
副作用
例数(%)
0/6 (0)
0/1 (0)
4/19 (21.1)
無排卵周期症
(28 例)
希発月経
(36 例)
有害事象
副作用
有害事象
副作用
例数(%) 例数(%) 例数(%) 例数(%)
3/12 (25.0)
1/12 (8.3)
2/19 (10.5)
1/19 (5.3)
0/1 (0)
0/1 (0)
2/7 (28.6)
1/7 (14.3)
6/15 (40.0)
3/15 (20.0)
4/10 (40.0)
2/10 (20.0)
PCOS 以外の複数の
疾患を持つ患者
(6 例)
有害事象
副作用
例数(%) 例数(%)
0/0 (0)
0/0 (0)
3/3 (100.0)
0/3 (0)
3/3 (100.0)
2/3 (66.7)
ⅳ)増量幅 50IU/日を選択することが適当な患者集団について
機構は、以上の申請者の考察からは、疾患によって本剤の増量幅を選択することは困難と考えられる
ことから、特に 50IU/日の増量幅を選択することが適当である患者集団を特定する因子は無いか、臨床
試験のデータを再度検討して考察するよう申請者に求めた。
申請者は以下のように回答した。
国内第Ⅲ相試験
(0003試験及び0004試験)
及び海外第Ⅳ相試験
(E1725
試験)の 25IU 増量群及び 50IU 増量群を併合し、排卵率、単一卵胞周期率及び副作用発現率について、
患者背景(年齢、身長、体重、BMI、月経周期、不妊期間及びクロミフェン治療周期)による部分集団
解析を行った結果を下表に示す。
これらの部分集団解析においても、増量幅 50IU/日を選択することが適当と考えられる患者集団を見
出すことはできなかった。国内外の臨床試験成績から、25IU 増量群の方が 50IU 増量群と比べて、有効
性及び安全性の面で優れているという成績が得られており、また 50IU 増量を選択することが適当と考
えられる患者集団を臨床試験成績から見出すことは困難であると考えられるため、用法・用量(案)の
増量幅の記載を「卵巣の反応性が低い場合は、7 日間ごとに 25 又は 50 国際単位を増量」から、「卵巣の反
応性が低い場合は、原則として、7 日間ごとに 25 国際単位を増量」(変更部下線)に変更する。
26
表 増量幅及び背景因子別に見た排卵率、単一卵胞周期率及び副作用発現率
25 IU 増量群(108 例)
排卵
単一卵胞周期
副作用
n/N (%)
n/N (%)
n/N (%)
年齢(歳)
20∼24
6/11 (54.5)
4/11 (36.4)
2/11 (18.2)
25∼29
32/41 (78.0)
18/41 (43.9)
6/41 (14.6)
30∼34
38/42 (90.5)
18/42 (42.9)
3/42 (7.1)
35∼39
13/14 (92.9)
4/14 (28.6)
0/14 (0.0)
≧40
0/0
0/0
0/0
身長(cm)
≦149.9
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
150.0∼159.9
28/32 (87.5)
15/32 (46.9)
3/32 (9.4)
160.0∼169.9
37/49 (75.5)
19/49 (38.8)
3/49 (6.1)
170.0∼179.9
23/25 (92.0)
10/25 (40.0)
5/25 (20.0)
≧180.0
1/1 (100.0)
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
体重(kg)
≦49.9
11/11 (100.0)
2/11 (18.2)
2/11 (18.2)
50.0∼59.9
33/38 (86.8)
14/38 (36.8)
3/38 (7.9)
60.0∼69.9
18/23 (78.3)
11/23 (47.8)
2/23 (8.7)
70.0∼79.9
18/22 (81.8)
10/22 (45.5)
2/22 (9.1)
80.0∼89.9
7/11 (63.6)
6/11 (54.5)
2/11 (18.2)
≧90.0
2/3 (66.7)
1/3 (33.3)
0/3 (0.0)
BMI(kg/m2)
≦20.0
21/23 (91.3)
6/23 (26.1)
3/23 (13.0)
20.1∼25.0
43/49 (87.8)
21/49 (42.9)
4/49 (8.2)
25.1∼30.0
18/27 (66.7)
11/27 (40.7)
4/27 (14.8)
≧30.1
7/9 (77.8)
6/9 (66.7)
0/9 (0.0)
月経周期(日) 無月経
(年 3 周期以下) 20/27 (74.1)
13/27 (48.1)
4/27 (14.8)
≧41
42/51 (82.4)
17/51 (33.3)
3/51 (5.9)
周期性(順)≦40
14/16 (87.5)
8/16 (50.0)
2/16 (12.5)
周期性(不順)≦40
13/14 (92.9)
6/14 (42.9)
2/14 (14.3)
不妊期間(年)
≦3
52/64 (81.3)
24/64 (37.5)
5/64 (7.8)
3.01∼7.00
32/37 (86.5)
17/37 (45.9)
5/37 (13.5)
7.01∼10.00
5/7 (71.4)
3/7 (42.9)
1/7 (14.3)
クロミフェン
3
11/14 (78.6)
5/14 (35.7)
1/14 (7.1)
治療周期
4∼6
34/41 (82.9)
17/41 (41.5)
2/41 (4.9)
7∼9
10/12 (83.3)
6/12 (50.0)
3/12 (25.0)
≧10
13/15 (86.7)
7/15 (46.7)
3/15 (20.0)
不明
21/26 (80.8)
9/26 (34.6)
2/26 (7.7)
合計
89/108 (82.4)
44/108 (40.7)
11/108 (10.2)
n:排卵例数、単一卵胞周期例数又は副作用発現例数
N:背景因子別例数
50 IU 増量群(160 例)
排卵
単一卵胞周期
副作用
n/N (%)
n/N (%)
n/N (%)
10/13 (76.9)
4/13 (30.8)
1/13 (7.7)
36/56 (64.3)
9/56 (16.1)
11/56 (19.6)
44/62 (71.0)
16/62 (25.8)
10/62 (16.1)
23/28 (82.1)
10/28 (35.7)
5/28 (17.9)
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
7/9 (77.8)
0/9 (0.0)
3/9 (33.3)
41/57 (71.9)
15/57 (26.3)
10/57 (17.5)
50/74 (67.6)
17/74 (23.0)
10/74 (13.5)
15/19 (78.9)
7/19 (36.8)
3/19 (15.8)
0/1 (0.0)
0/1 (0.0)
1/1 (100.0)
29/35 (82.9)
6/35 (17.1)
5/35 (14.3)
31/47 (66.0)
11/47 (23.4)
9/47 (19.1)
20/31 (64.5)
11/31 (35.5)
4/31 (12.9)
19/31 (61.3)
7/31 (22.6)
8/31 (25.8)
11/12 (91.7)
2/12 (16.7)
1/12 (8.3)
3/4 (75.0)
2/4 (50.0)
0/4 (0.0)
29/37 (78.4)
8/37 (21.6)
6/37 (16.2)
42/63 (66.7)
16/63 (25.4)
13/63 (20.6)
38/53 (71.7)
14/53 (26.4)
8/53 (15.1)
4/7 (57.1)
1/7 (14.3)
0/7 (0.0)
35/52 (67.3)
8/52 (15.4)
12/52 (23.1)
47/65 (72.3)
20/65 (30.8)
10/65 (15.4)
12/16 (75.0)
3/16 (18.8)
3/16 (18.8)
19/27 (70.4)
8/27 (29.6)
2/27 (7.4)
52/75 (69.3)
18/75 (24.0)
13/75 (17.3)
54/76 (71.1)
19/76 (25.0)
14/76 (18.4)
7/9 (77.8)
2/9 (22.2)
0/9 (0.0)
14/19 (73.7)
4/19 (21.1)
1/19 (5.3)
30/46 (65.2)
11/46 (23.9)
9/46 (19.6)
11/14 (78.6)
2/14 (14.3)
2/14 (14.3)
25/32 (78.1)
9/32 (28.1)
7/32 (21.9)
33/49 (67.3)
13/49 (26.5)
8/49 (16.3)
113/160 (70.6)
39/160 (24.4)
27/160 (16.9)
以上のⅰ)∼ⅳ)の申請者の回答について機構は以下のように考える。臨床試験成績からは、疾患名、
治療歴等を含む患者の背景因子について、増量幅選択に際して、特に 50IU/日の増量幅を選択するのに
参考となる因子は見出されておらず、提出された臨床試験成績から、原則として 25IU/日が本剤の増量
幅として推奨されることは妥当であると考える。一方で、本剤の増量幅は、個々の患者における当該治
療周期の初期量投与期間における卵巣の反応性、又は本剤による前回治療時の最終投与量等も勘案して
選択される場合もあると考えられ、申請者も、排卵障害の治療では、基本的にはその治療周期における
個々の患者の卵巣の反応性に基づいてゴナドトロピンの投与量が調整されていると説明している(
「ⅴ)
製造販売後の検討について」の項参照)が、提出された解析結果は検討症例数も限られている上、これ
らの点についての検討は行われていない。一方、50IU/日の増量群においても一定の有効性及び安全性は
示されていることから、機構は、本剤を適切に使用する上で、50IU/日の増量に関する情報についても何
らかの形で情報提供することが有用と考える。本剤の増量幅及び 50IU/日の増量に関する情報提供につ
いては、専門協議における検討を踏まえ、最終的に判断したい。
ⅴ)製造販売後の検討について
本剤の用法・用量(初期投与量 50IU/日、増量幅 25IU/日)については、特に国内臨床試験では比較的
少数例でしか検討されていないことから、機構は、製造販売後の用法・用量の妥当性に関する情報収集
について、製造販売後臨床試験等の必要性も含め、申請者に見解を求めた。
申請者は以下のように回答した。排卵障害の治療では、患者のこれまでの治療歴又は背景因子等は考
27
慮されるものの、基本的にはその治療周期における個々の患者の卵巣の反応性に基づいてゴナドトロピ
ンの投与量が調整されている。上記の検討において患者の背景因子に基づいて増量幅を決めることは困
難であることが示唆されており、背景因子と増量幅との関係を明らかにするための製造販売後臨床試験
を実施することは極めて困難であると考える。製造販売後における情報収集については、特定使用成績
調査において、例えば、疾患名別の有効性(排卵率及び単一卵胞周期率)及び安全性(OHSS 等の副作
用)の情報を収集する等して、用法・用量に関する適切な情報を医療現場に提供していきたいと考える。
機構は、製造販売後の情報収集の具体的な内容については、専門協議での議論を踏まえ、さらに検討
したい。
5)OHSS について
機構は、uFSH-HP を対照とした 0004 試験の安全性の評価において、OHSS の発症の危険性があるた
め hCG 投与前に FSH 投与を中止した本剤群 8 例及び uFSH-HP 群 4 例は考慮されておらず、これらの詳
細についても示した上で、OHSS 発症の傾向について説明するよう申請者に求めた。
申請者は以下のように回答した。排卵誘発を行うにあたり、OHSS の発症を予防するため卵胞数等の
項目を考慮することが一般的に行われている。本試験のプロトコルにおいても「平均径 15mm 以上の卵
胞が 4 個以上確認された場合は治験薬の投与を中止し、hCG 投与は実施しない」と規定していた。
0004 試験において、OHSS を発症した症例、OHSS 発症の危惧があるため FSH 投与を中止した症例、
OHSS の発症の徴候が見られなかった症例に分け、年齢、hCG 投与日(非投与の場合は FSH 最終投与日)
における E2 値及び hCG 投与の判断を行った日の 15mm 以上の卵胞数を比較した。本剤群と uFSH-HP 群
において、OHSS の徴候が見られなかった症例では両群ともに年齢が若干高い傾向が認められた。また、
OHSS 発症の危惧症例では、両群ともに 15mm 以上の卵胞が平均 4 個以上発育し、E2 値も徴候が見られ
なかった症例と比べ 2∼3 倍高かった。さらに、OHSS 発症の危惧症例における FSH 投与中止理由は、
血清中 E2 濃度が高値であるため OHSS の発症の危険性を考慮した 1 例を除き、平均 15mm 以上の卵胞
が 4 個以上確認されたためであった。以上を踏まえ、OHSS の発症を回避するためには、本剤を慎重に
投与するとともに、血清 E2 値の頻繁な測定、経膣超音波断層法による卵胞数及びそのサイズの計測を行
うことが重要である。
機構は、添付文書において OHSS に関する注意喚起はなされていると判断し、以上の申請者の説明を
了承した。
6)4 製剤の必要性について
機構は、申請されている 4 規格の製剤(50、75、100 及び 150IU)の必要性について、臨床試験では
150IU 製剤は使用されていないこと等も踏まえ、申請者に説明を求めた。
申請者は以下のように回答した。本剤の国内第Ⅲ相試験(0003 試験及び 0004 試験)では、初期投与
量を 50IU/日とし、卵胞発育が不十分な場合の増量幅を 25 又は 50IU としていたため、結果として 50、
75、100、125 又は 150IU が被験者に投与された。本剤の投与時には痛みを伴うが、本剤の物性を考慮す
ると、その痛みの程度は製剤の違いには依存せず、投与液量に依存すると考えられる。本剤の 4 製剤(フ
ォリスチム注 50、同 75、同 100 及び同 150)はいずれも 0.5mL に溶解されており、これら 4 製剤があれ
ば、種々の投与量に対してより少ない本数(注入量)での対応が可能となり、患者の苦痛が軽減される
ものと考えられたこと等から、本申請では、4 規格の製剤を申請するのが適当であると判断した。しか
し、指摘されたように国内第Ⅲ相試験(0003 試験及び 0004 試験)では、50、75 及び 100IU の 3 製剤の
みを使用しており、これらの臨床試験において 150IU/日が投与された患者は約 3%(110 例中 3 例)で
あったことから、排卵誘発におけるフォリスチム注 150 の必要性は低いと考えられる。また、0003 試験
における 25IU 増量群では、100IU/日以上が投与された患者は 28 例中 5 例(17.9%)であり、大部分の
患者で最大投与量が 50 又は 75IU/日であったという成績から、市販後においても、100IU/日以上を必要
とする患者数はそれほど多くないことが予想され、増量幅 25IU/日とした場合、フォリスチム注 100 の
必要性は低いと考えられる。フォリスチム注 50 及び同 75 の 2 製剤のみの場合、100、125 又は 150IU/
28
日の投与が必要な患者においては、これら 2 製剤の 2 本の組み合わせで対応することが可能である。投
与時の疼痛に関しては、これまでの臨床試験成績及び市販後の使用経験から、本剤 2 本までは患者に許
容されるものと考えている。実際、調節卵巣刺激の臨床試験(9904 試験)では、153 例中 131 例(85.6%)
がフォリスチム注 75 又は同 150 2 本の投与を受け、また臨床現場では、225 又は 300IU/日を投与する場
合は 2 本の製剤が投与されている。以上、排卵誘発においては、フォリスチム注 50 及び同 75 の 2 製剤
で種々の投与量への対応が可能であること、本剤 2 本の投与は患者に受け入れられていること、また、
製剤の種類が少ない方が医療現場での管理がより容易になると考えられることから、今回の効能追加に
かかるフォリスチム注 100 及び同 150 の申請を取り下げる。
機構は、以上の申請者の説明及び対応を了承した。
Ⅲ.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
1.適合性書面調査結果に対する機構の判断
薬事法の規定に基づき承認申請書に添付すべき資料に対して書面による調査が実施され、その結果、
治験実施計画書からの逸脱(増量規定の逸脱、除外基準の逸脱、臨床検査値の欠測等)
、症例登録前の治
験薬投与等が認められたが、結果の評価に影響を及ぼさないことから、機構としては、承認審査資料に
基づき審査を行うことについて支障はないものと判断した。
2.GCP 実地調査結果に対する機構の判断
薬事法の規定に基づき承認申請書に添付すべき資料(5.3.5.1(RM-9361 試験及び 0004 試験)
、5.3.5.2
(9602 試験及び 0003 試験)
)に対して GCP 実地調査が実施され、その結果、モニタリング及び監査の
不備(以上、治験依頼者)
、個別症例における治験実施計画書からの逸脱(選択基準の逸脱、検査項目の
未実施等)
(以上、実施医療施設)等が認められたが、被験者の安全性は確保されており、GCP 不適合
に該当する違反事例までにはあたらず、承認申請資料に基づき審査を行うことについて支障はないもの
と機構は判断した。
Ⅳ.総合評価
機構は、提出された資料について以上のような審査を行った結果、本剤の有効性は示されており、対
象患者について、WHO グループⅡの疾患(第 1 度無月経、無排卵周期症、PCOS、希発月経、黄体機能
不全)患者とすること、及び原発性卵巣不全を禁忌とはせず、対象外患者とすることは妥当と判断する
が、本剤の用法・用量について、特に増量幅の設定等に関して専門協議での議論が必要と考える。安全
性に関して、症例数は限られるが、特に臨床使用上大きな問題となる有害事象は発現していないと判断
するが、初期投与量 50IU/日、増量幅 25IU/日の用法・用量については、特に国内臨床試験では比較的少
数例の検討しか行われておらず、製造販売後に十分な情報収集が必要と判断している。これらについて
は専門協議での議論を踏まえ、最終的に判断したい。
29
審査報告(2)
平成 18 年 11 月 17 日
1.申請品目
[販 売 名]
[一 般 名]
[申 請 者]
[申請年月日]
フォリスチム注 50、同 75
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)
日本オルガノン株式会社
平成 17 年 6 月 23 日
2.審査内容
機構は審査報告(1)をもとに専門委員へ意見を求めた。専門協議での議論及びその後の検討を踏まえ
た審査結果を報告する。
(1)本剤の臨床的位置付けについて
機構は、国内第Ⅲ相試験は WHO グループⅡの排卵障害(第 1 度無月経、無排卵周期症、多嚢胞性卵
巣症候群、希発月経及び黄体機能不全)を対象としており、本剤の投与対象を WHO グループⅡの患者
とすることは妥当であり、また、遺伝子組換え技術の応用により製造される本剤に切り替えるため、ヒ
ュメゴン®(尿由来の hMG 製剤)の供給が終了しても、現時点では、他社の hMG 製剤が流通しており、
臨床現場に大きな混乱が起こることは無いとする申請者の回答は妥当と考える。なお、尿由来の hMG
製剤は第 2 度無月経も投与対象に含むことから、今後、recLH 製剤、LH 作動薬等の開発は検討されるべ
きと考える。
以上の機構の判断は、専門協議において支持された。
(2)効能・効果等について
効能・効果を「視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発」とすること、
及び原発性卵巣不全患者は、本剤による有効性は期待できないものの、疾患の増悪及び他の臓器への影
響はないことから、本剤の対象外患者であるが禁忌とする必要はないとの機構の判断は、専門協議にお
いて支持された。
専門協議において、hMG 製剤の代替として、LH 分泌のない第 2 度無月経等の患者に本剤が投与され
る可能性が指摘され、機構は、LH 分泌のない患者に対しては本剤が無効であることについて注意喚起
を行うよう、申請者に対応を求めた。
申請者は、以下のように回答した。本剤は LH を含有しないため、FSH、LH 及び E2 の基礎分泌が認
められない低ゴナドトロピン性性腺機能障害の患者では、本剤単独では効果が認められないと予想され
る。したがって、添付文書(案)の重要な基本的注意において、本剤は LH を含有しない製剤であり、
LH の基礎分泌の認められない患者に対しては無効であるため、これらの患者は本治療の対象から除外
する旨を追記する。
また、専門協議において、黄体機能不全を本剤の対象患者として示すことは不適切ではないかとの意
見が出され、機構は、黄体機能不全を本剤の対象患者として示すことの妥当性について再検討の上、添
付文書(案)の記載を整備するよう求めた。
申請者は、機構の指摘を踏まえ、添付文書(案)の重要な基本的注意において、視床下部-下垂体機能
障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に使用する場合の対象患者から黄体機能不全を削除す
ると回答した。
機構は、以上の申請者の対応について了承した。
(3)用法・用量(増量幅)について
30
専門協議において、本剤の用法・用量(案)における増量幅について、原則として、25IU の増量が妥
当との意見、反復治療等において、患者の反応性の個体差に対応して、一定の有効性及び安全性が示さ
れている 50IU での増量幅の投与は認められるべきとの意見、50IU を超える増量幅については使用経験
がないことを情報提供すべきとの意見等が出された。機構は、50IU を超える増量幅の試験成績は存在し
ないこと、並びに増量幅 25 及び 50IU の試験成績について、添付文書(案)で適切に情報提供するよう
求めた。
申請者は、以下のように回答した。増量幅が 50IU を超えた試験成績が存在しないことについて、用
法・用量に関連する使用上の注意に「卵巣の反応性が低い場合の増量について、原則として、25 国際単
位の増量とすること。なお、50 国際単位を超える増量での試験は実施されておらず、増量幅に注意し慎
重に投与すること(
「臨床成績」の項参照)
。
」と追記し、25 及び 50IU の増量幅の臨床試験成績に関し、
有効性の成績(排卵率及び妊娠継続率)及び副作用発現率を記載する。
機構は、申請者の対応について了承した。
(4)多胎妊娠について
専門協議において、多胎妊娠に関して、より新しい調査報告に基づいた情報を添付文書に記載すべき
であるとの意見が出され、機構は、多胎妊娠に関し、可能な限り新しい報告を記載するよう求めた。
申請者は、以下のように回答した。添付文書(案)における多胎妊娠に関する記載について、変更前
の情報(産科と婦人科 50:274,1983)に代えて、日本産科婦人科学会・生殖内分泌委員会報告「本邦にお
けるゴナドトロピン療法により成立した多胎妊娠に関する全国調査結果報告書」
(日産婦誌 47:1298-1302,
1995)に基づき、全国 60 施設における性腺刺激ホルモン製剤を用いた排卵誘発法の調査で、双胎以上の
多胎妊娠は、
妊娠総数 716 例中 123 例
(17.2%)
で、
そのうち、
双胎が 102 例
(14.2%)
、
三胎が 18 例
(2.5%)
、
四胎が 3 例(0.4%)
、五胎以上が 0 例(0.0%)との報告がある旨記載を修正する。
機構は、申請者の対応について了承した。
(5)製造販売後の検討について
専門協議での議論を踏まえ、機構は、本剤の用法・用量の設定根拠となる国内臨床試験の症例数が少
なく、妊娠、出生児等に関しても更なる検討を要することから、製造販売後の調査では、原因疾患別の
有効性、OHSS、多胎妊娠等の情報収集を行うとともに、特に出生児の調査に関しては、調査であるこ
とを認識した小児科医が関与した上で適切に情報収集するよう、調査の実施方法、及び達成すべき調査
目的と実施可能性を踏まえた症例数設定について検討した上で、製造販売後の調査の計画(案)を提出
するよう求めた。
申請者より、以下の回答を含めた計画(案)が提出された。
① 出生児に関する調査の実施方法については、事前に母親から協力を得ることを確認し、調査担当
医師は母親から母子健康手帳のコピーを入手するとともに、健診等で出生児の異常を指摘された
場合には、受診した小児科等の医師から異常所見に関するアンケート又は必要に応じて診断書等
を入手し、調査票に記載する。
② 調査期間は、効率的に情報を収集するため、出生児が必ず受診する乳幼児健診(1 歳 6 ヵ月健診
等)の後に行うよう 1 年 6 ヵ月とする。
③ 調査予定症例数は、使用成績調査では
例とし、国内臨床試験の妊娠継続率(9.1%)から約
例の妊娠継続例が得られると考え、そのうち特定使用成績調査(妊娠・分娩に関する調査)に協
力する旨の同意が得られる患者として妊娠例 例程度、妊娠継続例で出産に至り、特定使用成績
調査(出生児に関する調査)に協力する旨の同意が得られる患者として 例程度と設定した。
機構は、申請者が提示した製造販売後の調査の計画(案)は概ね妥当であると考える。
(6)審査報告(1)の訂正
審査報告(1)を以下のとおり訂正する。なお、これらの変更により審査結果の変更は生じない(下線
31
部は訂正箇所)
。
6 頁 14 行目 評価者盲検 → 非盲検
6 頁 37 行目 表中 100IU 群の hCG 投与例数(%) 7 (63.6) → 6 (54.5)
表中 150IU 群の hCG 投与例数(%) 7 (63.6) → 6 (54.5)
7 頁 1 行目 表中 100IU 群の hCG 投与例数(%) 8 (88.9) → 6 (66.7)
表中 150IU 群の hCG 投与例数(%) 7 (100.0) → 6 (85.7)
表中 uFSH-HP 群の hCG 投与例数(%) 8 (88.9) → 5 (55.6)
8 頁 25 行目 表中 50IU 群の hCG 投与例数(%) 12 (57.1) → 9 (42.9)
9 頁 31 行目 表中 25IU 増量群の第 1 度無月経 1 (3.3) → 1 (3.6)
10 頁 24 行目 微熱 → 発熱
15 頁 17 行目 治験薬の投与が投与されなかった → 治験薬が投与されなかった
16 頁 13 行目 流産 → 胎児死亡
3.総合評価
以上の審査を踏まえ、機構は、以下の効能・効果及び用法・用量で、フォリスチム注 50 の承認及びフ
ォリスチム注 75 の承認事項一部変更を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されること
が妥当であると判断した。
なお、本剤の再審査期間は、フォリスチム注 75 の承認時に指定された期間(6 年間)の残余期間(平
成 23 年 4 月 10 日まで)とすることが適当であると判断する。また、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも
該当せず、生物由来製品に該当すると判断する。
[効能・効果]複数卵胞発育のための調節卵巣刺激(フォリスチム注 75 のみ)
視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発
(下線部追加)
[用法・用量]
・複数卵胞発育のための調節卵巣刺激に使用する場合
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 150 又は 225 国際単位を 4 日
間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し
(通常 75∼375 国際単位を 6∼12 日間)
、平均径 16∼20mm の卵胞 3 個以上を超音波
断層法により確認した後、胎盤性性腺刺激ホルモンにより排卵を誘発する。
・視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発に使用する場合
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常 1 日 50 国際単位を 7 日間皮下又は
筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(卵巣の反応
性が低い場合は、原則として、7 日間ごとに 25 国際単位を増量)
、平均径 18mm 以上
の卵胞を超音波断層法により確認した後、胎盤性性腺刺激ホルモンにより排卵を誘起
する。
(下線部追加)
32
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