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印刷と配布という問題 FSWikiのPDF生成機能

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印刷と配布という問題 FSWikiのPDF生成機能
11回 WikiとPDF
第
換について解説します.具体的な方法としてPerlやRubyなどの
スクリプトを利用する方法などを取り上げます.
TEXT
今回は「印刷」の観点からWikiをフォーカスし,Wiki→PDF変
竹添直樹(TAKEZOE Naoki)
yomoyomo(YOMOYOMO)
TEXT=NTTデータ先端技術㈱ 竹添直樹(TAKEZOE Naoki)
印刷と配布という問題
Wikiは,簡単な書式で記述されたプレーンテキス
キュメントをWikiで記述しているケースもあります.
トからHTMLを生成することができます.書式が
Webでドキュメントを公開するだけであればこれ
Wikiごとに異なるという問題はあるものの,いずれ
でも良いのですが,実際の開発プロジェクトでは電
のWikiを利用する場合でもHTMLの複雑かつ冗長な
子データとして顧客に納品する必要がある場合も多
マークアップを意識せずに文章を記述できるので,
いことと思います.Wikiのページに記述した内容を
書式に慣れさえすれば効率的に文章の入力が可能で
納品に適したファイル形式に変換することができれ
す.インターネット上ではWikiのこういった特徴を
ばWiki上でドキュメントの執筆を行うこともできる
活かし,情報サイトなどでWikiをCMSとして使った
のではないでしょうか.
り,ドキュメントをWikiで執筆したりするケースが
増えてきています.
というわけで印刷と配布,この2つの問題をクリア
する方法があれば業務でもよりWikiを活用することが
一方で,業務でWikiを利用することを考えた場合,
できそうです.そこですぐに思い付くのは,何といっ
「印刷」と「配布」いう点が大きな問題になります.
てもPDF(Portable Document Format)でしょう.
情報の電子化やペーパーレス化ということが言われ
PDFについてはすでに皆さんもよくご存知かと思
はじめてずいぶん経ちますが,現在でもやはり紙と
いますが,Adobeによって開発された電子文書のフ
いう媒体は避けて通れないところがあります.
ォーマットで,無償で提供されているAdobeReader
もちろんWebブラウザからWikiページをそのまま
を使用することで閲覧が可能です.PDFはOSや環境
印刷することは可能ですが,Webブラウザの印刷機
が異なっても元のドキュメントを正確に再現できる
能ではきれいな出力を得ることはなかなか難しいも
ため,文書の印刷や配布に適したファイル形式とし
のです.また,オープンソースプロジェクトではド
て広く利用されています.
FSWikiのPDF生成機能
筆者の開発しているFreeStyle Wiki(以下FSWiki,
能など独自の機能を搭載していました.
http://fswiki.poi.jp/)はWikiのページをPDF
Wikiの書式はHTMLと異なりますが,一定の書式
として出力することが可能です(図1).FSWikiは
に従って記述されたテキストであることには変わり
Perlによる高機能なWikiクローンですが,当初はオン
ありません.Wikiエンジンはそれらの書式にしたが
ラインでドキュメントを執筆するためのツールとし
ってテキストを解析し,HTMLを生成しているわけ
て開発されました.そのためテキストの装飾機能は
です(図2).FSWikiでは解析部分はそのままで,
最低限に留める一方で,初期の段階からPDF生成機
HTMLを生成している部分だけを取り替えることが
104 - Software Design
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図1●●●FSWikiのPDF生成機能
PDFメニューを選択すると
PDFとして出力
図2●●●WikiエンジンによるHTMLへの変換
図3●●●FSWikiでは生成部分を取り替えられるようになっている
HTML
HTMLに変換
Wikiページ
変換
HTML
Wikiページ
Wiki
エンジン
HTML
ジェネレータ
パーサ
PDF
ジェネレータ
PDF
PDFに変換
できるようになっており,これを利用してPDFの生
成を行っています(図3)
.
大量のページを一括変換したい場合などに便利です.
また,このスクリプトはローカルに存在するテキ
なお,FSWikiではコマンドラインからWiki形式の
ストファイルだけでなく,稼動しているFSWikiから
テキストファイルをPDFやHTMLに変換するための
ネットワーク経由でPDFやHTMLを生成することも
FSWikiToolsというスクリプトも公開されています.
可能です.
PDFJ
FSWikiではPDFを生成するためにPDFJというラ
イブラリを使用しています.PDFJは,中島靖氏によ
ィレクトリ配下にあるモジュール群です.これらを
@INCに含まれているパスに置いておけばOKです.
って開発されている日本語PDFを生成するための
なお,PDFJで欧文のハイフネーションを行う場合
Perlモジュールです.非常に扱いやすいAPIを備えて
はTex::Hyphenモジュールが必要になります.
おり,Perlスクリプトから簡単にPDFを作成するこ
CPANからインストールするか,PDFJ同様アーカイ
とができるのが特徴です.
ブをダウンロードして展開しておきます.
PDFJのインストール●●●
●●●
PDFを生成してみよう●●●
●●●
PDFJはPure Perlなモジュールなので,とくに難
では,さっそくPDFJを使用して簡単なPDFを生成
しいインストール作業は必要ありません.http://
してみましょう.ソースコードはリスト1,生成され
hp1.jonex.ne.jp/˜nakajima.yasushi/から最新
たPDFは図4のようになります.なお,このスクリプ
版のアーカイブを取得し,適当なディレクトリに展
トはPDFJの最新の安定版であるPDFJ-0.88で動作
開します.PDFJを自分のPerlスクリプトから使用す
確認を行っています.
る際に最低限必要になるのはPDFJ.pmと,PDFJデ
PDFJではPDFJ::Docオブジェクトを基点に段落や
Jun.
2006 - 105
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リスト1●●●PDFJを使用してPDFを生成するPerlスクリプト
図4●●●PDFJを利用して出力したPDF
use strict;
use PDFJ qw(EUC);
# 用紙のサイズ(A4)と余白
my $width = 595;
my $height = 842;
my $margin = 72;
# 表示領域のサイズ(用紙サイズから両端の余白を引いたもの)
my $display_width = $width - $margin * 2;
my $display_height = $height - $margin * 2;
図5●●●画像を埋め込んだPDF
# 文書オブジェクトを作成
my $doc = PDFJ::Doc->new(1.2, $width, $height);
# 使用するフォント
my $font = $doc->new_font('Ryumin-Light', 'EUC-H', 'Times-Roman');
# フォントサイズ=20の段落を作成
my $para1 = Paragraph(
Text("PDFJでPDF生成", TStyle(font => $font, fontsize => 20)),
PStyle(size => $display_width, align => 'w', linefeed => 20)
);
# フォントサイズ=10の段落を作成
my $para2 = Paragraph(
Text("PDFJを使うと簡単にPDFを生成することができます。",
TStyle(font => $font, fontsize => 10)),
PStyle(size => $display_width, align => 'w', linefeed => 20)
);
# 2つの段落を含むブロックを作成
my $block = Block('V', $para1, $para2, BStyle(align => 'c'));
# 文書に新しいページを作成しブロックを表示
my $page = $doc->new_page;
$block->show($page, $margin, $height - $margin);
# ファイルに保存
$doc->print('sample_1.pdf');
表1●●●PDFJで表示可能なオブジェクト
名前
テキスト
クラス名
PDFJ::Text
段落
画像
PDFJ::Paragraph
PDFJ::Image
図形
PDFJ::Shape
ブロック
PDFJ::Block
リスト2●●●JPEG画像の表示
# フォントサイズ=20の段落を作成
my $para1 = Paragraph(
Text("JPEG画像を表示", TStyle(font => $font, fontsize => 20)),
PStyle(size => $width - $margin * 2, align => 'w', linefeed => 20)
);
# 埋め込む画像ファイル名
my $image_file = 'fswiki.jpg';
# Imageオブジェクトを作成
my $img = $doc->new_image(
'fswiki.jpg', # 画像ファイル名
178, 60,
# 画像のサイズ
178, 60,
# 表示するサイズ
0);
# マージン
# 2つの段落を含むブロックを作成
my $block = Block('V', $para1, $img, BStyle(align => 'c'));
# 文書に新しいページを作成しブロックを表示
my $page = $doc->new_page;
$block->show($page, $margin, $height - $margin);
説明
文字列を表示するためのオブジェクト.Textオブジェクト自体には行の折り返し機能は
なく,Paragraphオブジェクトに格納することで折り返しを行うことができる
テキストに対して行の長さ,行送り,配置等を指定して1つの段落として表示するもの
画像を表示するためのオブジェクト.JPEG形式のみサポートしており,表示サイズ
を指定することができる
直線,矩形,多角形,円,楕円,ベジェ曲線を組み合わせて図形を作成する.図形内に文字
を表示することもできる
表示可能なオブジェクトを並べて表示するためのコンテナ.1方向に並べる配列ブロック,縦横に
並べる行列ブロック,木構造のツリーブロックがあり,ブロックを入れ子にすることもできる
テキスト,イメージといったオブジェクトを追加して
みましょう.ソースコードはリスト2,生成された
いくことでPDFを構築していきます.PDFJで表示可
PDFは図5のようになります.PDFJではJPEG形式
能なオブジェクトには表1のようなものがあります.
の画像のみサポートされています.ここではローカ
この他にもテキストや段落の書式を指定するため
のオブジェクトや,入力フォームを表示するための
オブジェクトが用意されています.
ルに存在するファイルを指定していますが,URLで
アクセス可能な画像を指定することも可能です.
ローカルファイルを指定した場合はPDF内に画像
データが埋め込まれますが,URLを指定した場合は
画像の埋め込み●●●
●●●
少し高度な例として,PDFにイメージを表示して
画像データの埋め込みは行われず,閲覧時にURLに
アクセスします.そのためサーバ上の画像ファイル
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が削除されてしまった場合や,ネットワークに接続
ています.自動的に改ページを行う例をリスト3に
していないマシンでPDFを閲覧した場合など,画像
示します.
が表示されない場合もあります.
このようにPDFJを使うと,Perlスクリプトから比
較的容易にPDFを生成することができます.PDFJに
改ページの処理●●●
●●●
PDFJでは改ページを行うためにはスクリプト中で
my $page = $doc->new_page;
として新しいページを追加しなければなりません.し
関するより詳細な情報は,PDFJのマニュアル
(http://hp1.jonex.ne.jp/˜nakajima.yasushi/
PDFJ.jp.html)を参照してください.
XPDFJ
かし帳票などのように予めサイズが決まったものなら
PDFJにはXML形式で記述された原稿からPDFを
ばいざ知らず,Wikiページやドキュメントなどのよう
生成することのできるXPDFJというモジュールも付
に何行あるかわからない文章をPDF化する場合に,
属しています.HTMLタグに近いタグを定義したマ
プログラムでフォントサイズと用紙のサイズを計算し
クロが用意されていますので,PDFJのAPIを覚えな
ながら改ページを行うのは至難の業です.
くてもPDFを生成することができます.興味のある
PDFJでは,ブロックや段落がページ内に収まら
方はぜひお試しください.なお,XPDFJの利用にあ
ない場合に自動的に改ページを行う機能が用意され
たってはXML::Parserモジュールが必要になります.
Perl以外の言語でのPDF生成
FSWikiはPerlで記述されていることもあり,
ロードページ(http://www.pdflib.com/jp/
PDFを生成するためのライブラリとしてPDFJを使
products/pdflib/download/)からRuby用のアー
用していますが,もちろん他の言語向けにもPDF
カイブを取得します.
を生成するためのライブラリが存在します.ここで
は代表的なPDF生成ライブラリとしてPDFlibと
¡PDFlib-6.0.3-Windows-Ruby.zip(Windowsの場合)
¡PDFlib-6.0.3-Linux-Ruby.tar.gz(Linuxの場合)
iTextを紹介します.
ダウンロードしたアーカイブを展開し,bind/ruby
●●●
RubyでPDF●●●
ディレクトリにあるPDFlib.soをRubyスクリプトか
RubyではPDFlib(http://www.pdflib.com/jp/)
ら参照できるできる場所にコピーしておきます(ス
というライブラリを使用することができます.
クリプトと同じ場所に置いておけばOKです).リス
PDFlibはC,C++,Java,Perl,PHP,Pythonな
ト4はPDFlibを使用したRubyスクリプトの例です.
ど非常に多くの言語に対応したPDF生成ライブラリ
生成されたPDFは図6のようになります.
で,最近になってRubyもサポートされるようになり
ここではPDFlibをRubyから使用する例を挙げまし
ました.非商用での利用であれば,生成されたPDF
たが,他の言語から利用する場合でも概ね同じよう
にロゴが入るものの無料で利用することができます.
な感覚で扱うことができます.
商用利用の場合はライセンスの購入(1CPUあたり7
万3,500円)が必要になります.
RubyからPDFlibを使用するには,PDFlibのダウン
なお,Rubyに関してはPDF::Writer
(http://ruby-pdf.rubyforge.org/pdf-writer/)
というオープンソースのPDF生成ライブラリも存在
します.そのままでは日本語を扱うことができませ
リスト3●●●改ページの例
my $block = Block('V', @paras, BStyle(align => 'c'));
for my $part ($block->break($display_height)){
my $page = $doc->new_page;
$part->show($page, $margin, $height - $margin);
}
んが,中村のりつぐ氏によるパッチ(http://
blade.nagaokaut.ac.jp/cgi-bin/
scat.rb/ruby/ruby-list/41372)を適用すること
で日本語の表示が可能になります.
Jun.
2006 - 107
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リスト4●●●PDFlibを使用してPDFを生成するRubyスクリプト
リスト5●●●iTextを使用してPDFを生成するJavaプログラム
require 'PDFlib'
import java.io.FileOutputStream;
begin
# A4サイズ
width = 595
height = 842
margin = 72
import com.lowagie.text.Document;
import com.lowagie.text.Font;
import com.lowagie.text.PageSize;
import com.lowagie.text.Paragraph;
import com.lowagie.text.pdf.BaseFont;
import com.lowagie.text.pdf.PdfWriter;
p = PDFlib.new
# ドキュメントの開始
if (p.begin_document("sample.pdf", "") == -1)
raise "Error: " + p.get_errmsg
end
p.begin_page_ext(width, height, "")
font = p.load_font("HeiseiMin-W3", "EUC-H", "")
# フォントサイズ=20
p.setfont(font, 20)
p.set_text_pos(margin, height - margin)
p.show("PDFlibでPDFを生成")
# フォントサイズ=10
p.setfont(font, 10)
p.continue_text("PDFlibはC, C++, Java, PHP, Perl, Ruby等、様々な言語に対応しています。")
p.continue_text "このPDFはRubyスクリプトから出力されたものです。"
p.end_page_ext("")
p.end_document("")
public class ITextExample {
public static void main(String[] args) throws Exception {
// A4サイズの文書オブジェクトを作成
Document doc = new Document(PageSize.A4);
PdfWriter.getInstance(doc, new FileOutputStream("sample.pdf"));
// 出力開始
doc.open();
// 日本語フォントの設定
BaseFont bf = BaseFont.createFont("HeiseiMin-W3", "UniJIS-UCS2-HW-H",false);
// 大きなフォントで段落を追加
Paragraph para1 = new Paragraph("iTextでPDF生成",new Font(bf, 20));
doc.add(para1);
// 小さなフォントで段落を追加
Paragraph para2 = new Paragraph(
"iTextはオープンソースのJava用PDF生成ライブラリです。\n"+
"シンプルなAPIで扱いやすいのが特徴です。",
new Font(bf, 10));
doc.add(para2);
// 出力終了
doc.close();
}
}
rescue Exception => e
print e.backtrace.join("\n") + "\n" + e.to_s
end
図6●●●PDFlibを利用して出力したPDF
図7●●●iTextを利用して出力したPDF
Documentオブジェクトに対してさまざまなオブジ
●●●
JavaでPDF●●●
iTextは,Javaで利用可能なオープンソース
ェクトを追加していきます.iTextの場合は
Documentオブジェクトに段落を追加していくと,
(MPLおよびLGPL)のPDF生成ライブラリで
ページに収まりきらなくなった時点で自動的に改ペ
す..NET Framework版(http://www.ujihara.
ージされます.APIもシンプルで使いやすい印象を受
jp/iTextdotNET/ja/)も存在します.
けます.
http://sourceforge.net/project/show
これらのライブラリを利用することで,FSWiki以
files.php?group_id=15255から次の2つのファイ
外のWikiにもPDF生成機能を組み込むことができる
ルをダウンロードし,クラスパスに含めておきます.
かもしれません.もし既存のWikiへの組み込みが難
¡itext-1.4.jar
¡iTextAsian.jar(日本語を扱う場合に必要)
しい場合でも,多くのWikiではページの内容をテキ
ストファイルで管理していますから,外部ツールと
して変換処理を行うスクリプトを記述すればWikiペ
リスト5はiTextを使用して簡単なPDFを生成する
例です.生成されたPDFは図7のようになります.
処理の基本的な流れはPDFJの場合と同じで,
ージをPDFに変換することが可能でしょう.Wikiの
書式はシンプルなので,解析そのものは難しいこと
ではありません.
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PDFを生成するもう1つのアプローチ
さて,FSWikiでは自前でPDF生成機能を提供し
アプリケーションの印刷ダイアログでプリンタと
ていますが,WikiのページをPDF化するための方
してPrimoPDFを指定すると印刷内容がPDFとし
法としては別のアプローチもあります.それはプリ
て保存されます(図9)
.保存先の指定時にPDFの
ンタドライバとして動作するタイプのPDF生成コ
プロパティや閲覧に必要なパスワードなどを指定す
ンバータを利用する方法です.Windows環境で無
ることも可能です.
償で利用可能なソフトウェアとしては次のようなも
のがあります.
¡CutePDF Writer
(http://www.acrosoftware.com/products/cutepdf/Writer.asp)
¡PrimoPDF(http://www.primopdf.com/)
¡クセロPDF(http://xelo.jp/xelopdf/)
FSWikiのPDF生成機能にはプラグインが出力し
た内容のうち,一部をPDF化できないといった制
約がありますが,プリンタドライバ方式であれば
Webブラウザで表示している内容をそのままPDF
化することが可能になります.しかし,きちんとし
た出力を得るには,CSSなどを工夫して印刷に適
した表示になるよう工夫しておく必要があります.
本稿ではPrimoPDFを試してみることにします.
インストールは,Webサイトからダウンロードした
インストーラを実行するだけですが,今回試した
PrimoPDF 2.0では,そのままでは日本語が文字化
けしてしまうので,初期設定を行う必要があります.
①スタートメニューから「プリンタとFAX」を選択
②「PrimoPDF」というプリンタが追加されている
ので右クリックして「プロパティ」を選択
③プロパティダイアログが表示されるので「全般」
タブの「印刷設定」をクリック
④印刷設定ダイアログが表示されるので「レイア
ウト」タブの「詳細設定」をクリック
⑤詳細オプションダイアログが表示されるので一番
下の「PostScript Options」の中の「TrueType Font
Download Option」を「Outline」に変更(図8)
図8●●●PrimoPDFの詳細オプション
●●●
CSSの利用●●●
CSSではメディアタイプによってスタイルを切
り替えることができます.
たとえばFSWikiでは,リスト6のようなCSSに
よって印刷時はサイドバーやメニューを非表示にす
るといった制御が可能になります.このCSSによ
って図10のようなページが印刷時には図11のよう
になります.これはPDFに出力する場合だけでな
く,Webブラウザの印刷機能で直接紙に印刷した
場合にも有効です.
ただし,プリンタドライバ方式のPDF生成ソフ
トウェアはあくまで印刷イメージをそのままPDF
に落とすだけなので,ページ中に含まれているリン
クなどは欠落してしまいますし,見出しに対するし
おりも作成されません.また,PDF上でテキスト
図9●●●印刷ダイアログでPrimoPDFを選択
Jun.
2006 - 109
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図10●●●Webブラウザで閲覧している場合
検索やテキスト選択ができない場合もあります.ド
キュメントをPDF化するという手段としてはやや
力不足と言えるかもしれません.
リスト6●●●印刷時のCSSの例
@media print {
div.sidebar {
display: none;
}
div.main {
margin-left: 0px;
}
div.adminmenu {
display: none;
}
図11●●●印刷プレビュー(CSSによって不要な部分が非
表示になっている)
div.footer {
display: none;
}
h1 {
display: none;
}
div.header {
display: none;
}
div.comment {
display: none;
}
}
PDF以外のフォーマットへの変換
もちろんコードさえ書けばWikiのページをPDF
図12●●●Wordの作成結果
以外のフォーマットへ変換することも可能です.た
とえば,ActivePerlであればWindowsのOLEを利
用することができますから,Microsoft Wordのフ
ァイルに変換するということも考えられるでしょう
(顧客にWikiで執筆したドキュメントを納品する場
合はPDFよりもWord形式のほうが望ましいことも
あるかもしれません)
.
参考までにActivePerlでWordファイルを生成す
る例を稿末のリスト7に,生成されたWordファイ
ルを図12に示しておきます.
おわりに
WikiページをPDFやWordといった形式のドキュ
メントに変換することでWikiの活用の幅がより広が
ることは間違いありません.まずはFSWikiのPDF
生成機能に触れてみてください.s
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リスト7●●●Win32::OLEを使用してWordファイルを生成するPerlスクリプト
use strict;
use Win32::OLE qw(in with);
use Win32::OLE::Const 'Microsoft Word';
my $word = Win32::OLE->new('Word.Application', 'Quit');
my $doc = $word->Documents->Add;
my $sel = $word->Selection;
# フォントを大きくしてセンタリング
$sel->Font->{Size} = 20;
$sel->ParagraphFormat->{Alignment} = 1;
$sel->TypeText('Hello Word!');
# 改行を2つ挿入
$sel->TypeParagraph;
$sel->TypeParagraph;
# センタリングとフォントの大きさを元に戻してイタリックにする
$sel->ParagraphFormat->{Alignment} = 0;
$sel->Font->{Size} = 10;
$sel->Font->{Italic} = 1;
$sel->TypeText('Win32::OLEモジュールを使用してWordファイルを生成するサンプルです。');
# 保存して終了
$doc->SaveAs('C:\test.doc');
$word->Quit();
yomoyomoのWikiばなし
TEXT
yomoyomo
第11回 Wiki的オープンソース情報共有サイトSWiK
2005年夏にSourceLabsが始めた,オープンソ
てもその状況に何ら変わりはありません.日本発の
ースプロジェクトの情 報 共 有 サイトS W i K
Wikiエンジンの海外への輸出(http://wikibana.
(http://swik.net/)が,とくに2006年に入りト
socoda.net/wiki.cgi?Wiki%be%ae%cf%c3
ラフィックを伸ばしています.この種のコミュニティ
%2fVol%2e6)を考えた場合,これは由々しき事
サイトはすでにいくつもありますが,SWiKはWeb
態と言えます.海外における普及を目指すWikiエン
サイトの外観が今風なだけでなく,タグ付けに対応し
ジンの開発者,コミュニティメンバには,最低限の英
ておりFreshmeatといった既存サービスと比べ検索
語ページを揃えるとともに,SWiKにページを作られ
性に優れています.
ることをお勧めします.
そして何より, 誰でも情報を追加, 編集できる
SWiKは“The Open Source Wiki”を自称
Wiki的機能が,他の同種のサイトと差別化していま
していますが,筆者はこのWebサイトをWikiと呼ぶ
す.しかもSWiKでは入力項目が固定化されており,
ことに少しためらいを感じます.その一番の理由は,
参加の敷居が低いのも利点と言えます.
先に利点として挙げた入力項目の固定化にあるので
しかし残念なことに,日本人が主要な開発者であ
るオープンソースソフトウェアに関して言うと,SWiK
すが,その功罪については本連載の最終回となる次
回で触れたいと思います.
に登録されている数は少なく,Wikiエンジンに限っ
Jun.
2006 - 111
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