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「参加型授業」を目指して

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「参加型授業」を目指して
「参加型授業」を目指して
キーワード:参加型授業、英語嫌い、協同学習
堀 内 ちとせ
1. はじめに
英語に対して学習意欲の見られない医療系の学生たちの積極的な「授業参加」を図るために、
2008 年度から授業内の活動に「グループ活動」を採り入れる試みを始めた。最初は、手探り状態で
の出発であったが、2009 年、秋、日本協同教育学会認定の「協同学習ワークショップ」を受講でき
る機会に恵まれた。「協同学習」とは、小グループで互いに助け合いながら学習を進めていくグルー
プ学習の一つである。そのワークショップで学んだ「学習目標の設定」、「互恵的相互関係の構築」、
「振り返り」等の考え方を、早速、授業の中に採り入れてみることにした。
医療系大学の必修の英語の授業における、2009 年度後期の1年2クラス(臨床検査系 49 名・臨
床工学系 45 名)の取り組みについて、学生たちへのアンケートをもとに検討する。
2. 方法
2.1 「学習目標」について
今まで行って来た自分の授業では、授業における「学習目標」のようなものを立てたことがなかっ
た。この度、「協同学習ワークショップ」を受けて、学生の授業への意識を高めるためには「目標設
定」というのもが大切であることが分かった。そこで、自分の授業でも「目標」というものを掲げてみる
ことにした。
対象学生が医療系であるため、将来は病院で働くことになる学生がほとんどである。英語の授業
ではあるが、将来の「チーム医療」の練習ということで学生たちの気を引き、「自分のグループへの
貢献・メンバーの活動振りを意識しながら良い話し合いができる」ことを、第一の「目標」とした。ここ
で、「良い話し合い」というのは、「良いコミュニケーションが取れる」、つまり、「良い人間関係が築け
ている」ということと、「メンバー全員が活動に参加している」という二点ができている状態のことを言
うことにする。
英語という教科としての視点からは、大学受験を終えている彼らにとって、医療系の英単語以外
は、新情報的要素は皆無に等しい。ただ、教科書としては、健康科学系の内容のものを使用して
いるため、そのユニットに出てくる健康科学的な知識の理解(e.g. “Herbal Medicine” についての
ユニットであるなら「ハーブ」についての内容理解)と、「今までの英語学習の復習」が一つでもでき
22
ることを第二の「目標」とした。
これら二つの「目標」をしっかり学生に理解してもらうために、毎回、授業で使うプリントの一番上
に、上記の「二つの目標」を太字で明記した。また、授業の始めに学生に呼びかけ、学生に「目標」
を意識するよう促した。
2.2 「活動グループ」・「役割分担」について
活動グループは、簡単な和訳小テストの結果により、一つの班に様々な学力の学生が混在する
ような4・5人グループとした。経験がない、あるいは経験の少ない学生たちが、話し合いを進めて
行けるように、「タイム・キーパー(T.K.)」・「書記」・「質問」・「答え」という四つの役割を分担させ、毎
回、順に違った役割を担当させた。
「質問」係りというのは、課題の答えについてメンバーに問いかける係り、それに対して、「答え」
係りというのは、最初に自分の答えをメンバーに発表し「発話のきっかけ」を作る係りである。「質
問」・「答え」という係りは、いわゆる「司会」の役割をさらに細分化させたものとも言うことができる。
「タイム・キーパー」・「書記」・「質問」係り担当者にも「答え」係りと同様にグループのメンバーとして
それぞれ自分の答えを発表させる(5人グループでは「答え」係りを2人が担当)。それぞれの役割
を順に回して行けるように表1のような「役割分担表」を作り、授業の前に自分のその日の役割を確
認させてから授業に入った。
表1 役割分担表
班
月日
1班
…
…
…
…
10 月 14 日
10 月 21 日
10 月 22 日
*①→T.K.
①→答え
①→質問
②→書記
②→T.K.
②→答え
③→質問
③→書記
③→T.K.
④→答え
④→質問
④→書記
…
…
…
…
…
*1班の①の学生がタイム・キーパーを担当することを示している。
2.3 使用教科書について
専門が医療系であるため、健康科学系の教科書である、Kumiko T. Sato 他 (2006) BBC
Documentary Natural Remedies DVD Video Activity Book. (東京:桐原書店)を用いた。
23
2.4 授業の流れについて
2.4.1 オープニング(約 30 分)
まず、英語の歌の聞き取りをして、学生の気分を盛り上げた(約 10 分)。学生たちが少しやる気
になったところで、前回の授業の補足説明を極力短めに行った。ここで説明する事項は、前回の授
業の「振り返りシート(図1参照)」で、学生たちが疑問点として挙げたものである。その後、ウォーミ
ング・アップとして、穴埋め式の英語の「聞き取り」を行った。これは、英語を聞いて英語を書き取ら
せる形のもので、さらに取り組みやくするために、最初のアルファベットをヒントとして与えた。2回程
リピートしたあと、すぐ答えを提示し各自で答え合わせをさせた。
図1 振り返りシート
( )月( )日( )班
チーム名(
)学番(
)名前(
①発言(質問・意見 etc.)?→1・2・3 点 ②責任分担?→(
を担当)→1・2・3 点
)
③相槌(なるほど etc.)?→1・2・3 点
④班員の頑張り(観察)→_________さんが______________________
⑤今日の授業で得た内容→______________________________
⑥不安点・疑問点
etc.→_______________________________
2.4.2 課題(約 30 分~40 分)
ウォーミングアップの穴埋め練習後、その日の課題(図2)に取り組ませた。課題は、教科書付属
の DVD(約5分間)の英語を聞いて、その内容を日本語で書かせる形式の穴埋め問題が約 20 問、
その他、和訳問題が1・2問と、指示語問題が1問という構成になっている。
進め方としては、問題に関係すると思われるところで DVD を止め、2・3回リピートをかけ、ヒントも
出しながら進めていった。それが 20 問程も続くわけで、1 人だけで行わせていると、どうしても睡魔
に襲われてしまう。そこで、協同ワークショップで体験した、ショルダー・ペア(肩が並ぶ隣り同士の
ペア)の考え方を取り入れ、2・3人の小グループで相談・確認し合いながら課題に取り組むよう呼
びかけた。和訳問題や指示語の問題に関しては、DVD による内容把握の穴埋め問題が終わった
後、個人あるいは2・3人の小グループで相談させながら行わせた。
24
図2 課題(例)
★自分の班への貢献(①~③)・班員の活動振り(④)を意識しながら良い話し合いができるよう努力しよう!
★動物療法についての知識・Unit 9 に出て来た英語の構造・単語 etc.ついて少しでも理解を深めよう(⑤)!
Unit 9
①世界中で、動物と人間との密接な(close)(1
)を持つことにより、私たちと自然界との重要な(vital)結びつきを
与えてくれる(P.68 Clip 1)。
②動物は私たちに特別な種類の(2
)(P.68 Clip 1)。
③だから(So much so, that)(3→指示内容?
)が治療に使われる(P.68 Clip 1)。
…
2.4.3
グループ活動(約 15 分間)
2・3人の小グループでその日の課題に一通り目通しさせた後、グループ活動に入る。ここでは、
2・3人の小グループで確認し合った答えをもとに、今度はグループとしての答えを、4・5人のグ
ループで話し合わせた。グループとしての答えは、「書記」係りに「グループの紙」の方にまとめさせ
た。
活動としては、まず「質問」係りが「答え」係りに課題の答えを問いかけ、それをきっかけに、他の
メンバーも自分の答えを発表し合い、グループとしての答えを話し合わせた。ここまでの話し合いを
主に 10 分程で行わせた。
その後、答え合わせ(約5分)に入る。正解の用紙を配るのもグループに 1 枚だけとし、グループ
全員で答え合わせも進めていけるような状況作りをした。グループ活動の間「T.K.」係りは時間を意
識して活動を進める。
2.4.4 振り返り(約5分)
毎回の授業の最後には、先述の「振り返りシート(図1)」を使って、その日の取り組みを振り返ら
せた。ここでも、協同ワークショップで学んだ内容を取り入れ、ただ、漠然と活動を振り返らせるので
はなく、「発言」・「役割分担」・「相槌」の3項目については、3段階(1点~3点)で自己評価点を出
させ、「メンバーの観察」・「授業で得た内容」の2項目については、記入してあれば3点とした。自己
評価を得点という形で具体化することによって、次回、さらに良い活動ができるよう意識させようとし
た。
25
3. 結果と考察
最後の授業時に、対象学生全員にアンケート調査を行った。調査は選択式で、可能な場合には
コメント等も記述させた。
具体的なアンケート項目は以下の通りである。
①「グループ活動」の評価は? (◎・○・△・?・×・××の5段階の選択)
②①の理由は? (眠くならないから・1人より理解できるから・楽しいから・充実できるから・役に立つ
から・やる気になるから・時間のたつのが速いから・1人でやりたいから・面倒だから、の中から
複数選択可)
③「役割分担」についての評価は? (◎・○・△・?・×・××の5段階の選択)
④③の理由は? (色々な役割が経験できる・公平だから・班で決めたい、の中から複数選択可)
⑤「目標」を意識して活動できたか? (◎・○・△・?・×・××の5段階の選択)
⑥「振り返りシート」の評価? (◎・○・△・?・×・××の5段階の選択)
3.1
「グループ活動の評価」について
3.1.1
「グループ活動の評価」の結果(後期)
図3 グルー プ 活動の評価(後期)
100%
28
80%
60%
65
4
14
図3は、「グループ活動の評価」についての、
3
10
40
53
42
34
後期のアンケート結果を1つのグラフにまとめ
×
△
○
◎
40%
20%
0%
25
たものである。各クラスで少々の差は見られる
が、「◎」・「○」と回答している学生を合わせた
総数は、90%近くにも上っている(34%+53%=
検査1年 工学1年 1年総合
88%)。
3.1.2 「グループ活動の評価」の前期と後期の比較について
表2 「グループ活動の評価」のt検定
前期(n=102)
グループ活動の評価
後期(n=94)
平均
標準偏差
平均
標準偏差
3.94
0.75
4.15
0.77
t(194)
-2.26
*
注:*p<.05
前期と後期の「グループ活動の評価」について、「◎」は5点、「○」は4点、△は3点、「?」は2点、
26
「×」は1点「××」は0点として計算し、得点化してみた。表2は、「グループ活動の評価」について、
前期と後期の間における平均値の差を、有意水準5%で両側検定のt検定により検討した結果をま
とめたものである。その結果、「グループ活動の評価」について、これらの平均値の差は有意であっ
た。
図4は、「グループ活動の評価」についての前期と
図4 グルー プ 活動の評価( 前期・後期)
後期のアンケート結果を 1 つのグラフにまとめたも
のである。
100%
80%
3
11
60%
40%
20%
63
0%
20
前期
3
10
53
34
「◎」・「○」と答えている学生を合わせた割合は
×
△
○
◎
後期
前期・後期とも、ほぼ同じである(前期:20%+63%=
83%/後期:34%+53%=87%)。ただ、後期の方が
「◎」と答えている学生の割合が多少増えている
(20%→34%)。その結果、前期と後期の平均値の差
が有意なものとなったと言えそうである。
3.2 「グループ活動の評価」に対する理由について
3.2.1 「グループ活動の評価」に対する理由(後期)
図5 グルー プ 活動の評価に対す る理由
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
図5は、学生たちが「グループ活動」を
眠くならない
理解できる
楽しい
充実できる
役に立つ
やる気になる
時間が速い
1人でやりたい
面倒
評価した、その理由について尋ねた結果
である。
「 1人より理解できる(61% )」・「 楽しい
(50%)」・「やる気になる(32%)」・「時間が速
い(27%)」というのが、主な理由のようであ
る。その他、「眠くならない(18%)」・「充実
できる(17%)」・「役に立つ(12%)」と、続く。
その一方で、「1人でやりたい(3%)」・
「面倒(2%)」という理由を挙げている学生も存在している。
27
3.2.2 「理解」・「楽しさ」・「やる気」についての前期と後期の比較
表3 「理解」・「楽しさ」・「やる気」のt検定
前期(n=102)
後期(n=94)
t(194)
平均
標準偏差
平均
標準偏差
理解
0.41
0.49
0.61
0.49
-2.76
楽しさ
0.56
0.5
0.5
0.5
0.82
やる気
0.2
0.4
0.32
0.47
-1.98
*
*
注:*p<.05
前期と後期で「グループ活動」の評価の理由として挙げられている上位3つは、「理解」・「楽し
さ」・「やる気」であった(3.2.1 参照)。その3つの項目に関して、学生が理由として挙げている場合
は1点として得点化し、前期と後期の、これらの平均値の差を有意水準5%の両側検定により検討し
てみた。表3は、この結果をまとめたものである。表から分かるように、「理解」・「やる気」について、
これらの平均値の差は有意であった。一方、「楽しさ」については、前期と後期の平均値の差は有
意ではなかった。
図6は、「グループ活動の評価」に対する
図6 「理解」「やる気」「楽しさ」
理由として学生が挙げている上位3つについ
80%
ての、前期と後期の結果をまとめたものであ
60%
る。図6から分かるとおり、「理解」・「やる気」
前期(1年総合)
後期(1年総合)
40%
20%
0%
に関しては、理由として挙げている学生が後
期の方が多く、「楽しさ」に関しては、わずか
ではあるが減っている。
理
楽
気
前期は、1人で黙読させてから即、グルー
プ活動に入らせたのに対して、後期は、グ
ループ活動の前に、2・3人の小グループで最初に相談・確認させた。4・5人で話し合わせる前に
少人数で相談・確認できたのが理解につながったと言えるのかもしれない。
前期はグループ・リーダーを1人立てただけでの活動だったため、ともすると「ただ乗り」気味の学
生が出てしまった。それに対して、後期は形だけでも人数分の役割を順に回していく形を取ったた
め、公平性・平等性が高まり、「やる気」にもつながったように思われる。
「楽しさ」についての差は、t検定により有意でこそなかった。ただ、後期は、役割を順に回してい
くという形を取ったが、少し学生たちを束縛し過ぎてしまった感があるのかもしれない。できたら、も
う少し学生たちがリラックスして活動に取り組める形に持っていけると良いかもしれない。
28
3.3 「役割分担」について
3.3.1 「役割のローテーション」について
図7 「 役割」 のローテ ーシ ョンについて
100%
80%
0
18
16
9
11
0
14
14
46
62
54
20
18
19
60%
40%
20%
0%
今回は、協同学習の考え方を取り入れ、
「役割」をローテーションさせた。図7は、そ
××
×
△
○
◎
の「役割分担」について、学生たちに評価
させた結果である。その結果、「◎」・「○」と
答えている学生を合わせると、70%強ほど
であった。
「役割」が平等に回ってくることにより、比
検査1年 工学1年 1年総合
較的多くの学生の支持を得たようである。
3.3.2 「役割分担」の評価に対する理由について
図8 「役割分担」について (理由)
「役割分担」を学生に評価させた、その理由
50%
を見てみると、図8のようになる。図8からも分
40%
かるように、全体的には「色々な経験が体験で
30%
色々できる
公平である
班で決めたい
20%
10%
きる」・「公平である」という理由が、40%近くの
学生から挙げられている。
クラス別に見てみると、工学系1年は検査系
0%
検1
工1
総合
1年に比べて、「公平さ」を理由に挙げている
学生が少々少なめである。コメントを見てみる
と、「決められた役割をこなさない人がいる」とあり、単に「役割」を決めただけでは役がきちんと回っ
て行かないことが十分ありうることを物語っている。
わずかではあるが(7%)「(役割を)班で決めたい」という学生も見られた。役割を平等に回していく
ということにさえ責任を持たせれば、学生に全てを任せてしまうのも1つの手かもしれない。
3.4 「目標」について
図9 「目標」を意識で きたか
図9は、「目標」を意識して授業に取り組め
100%
80%
0
14
18
60%
40%
20%
46
2
45
4
16
1
30
10
31
33
28
22
0
0
0
0%
検査1年 工学1年 1年総合
たかどうかを学生たちに尋ねた結果を示した
?
××
×
△
○
◎
ものある。「目標」については、プリント等を使っ
てしっかり学生たちに伝えたつもりだったのだ
が、「◎(毎回意識できた)」と答えている学生
29
は、残念ながら皆無であった。また、工学系1年では、「××(目標があったことさえ知らない)」と答
えている学生が半数近くにも及んでいる。目標を学生の内面から意識させる工夫が必要であると言
えるかもしれない。
3.5 「振り返りシート」について
図10 振り返りシ ー ト について
100%
2
80%
31
2
24
33
39
36
20
22
21
60%
40%
20%
0%
図10は、今回導入した「振り返りシート」に対
する学生たちの評価の結果である。「◎」・「○」
2
28
と評価している学生を合わせると、過半数を超
?
△
○
◎
えている(21%+36%=57%)。自己評価を得点化
することにより、目に見える形で表わせたのが
良かったと言えるのではないか。
検査1年 工学1年 1年総合
3.6 「グループでの活動の様子」について
表4 「発言度」・「参加度」のt検定
前期(n=14)
後期(n=20)
t(32)
平均
標準偏差
平均
標準偏差
発言度
1.79
0.77
2.25
0.70
-1.77
参加度
0.71
0.19
0.90
0.14
-3.22
*
注:*p<.05
前・後期とも学生のグループでの活動の様子を、毎週、1班、ビデオで記録していた。そこで、再
度、そのビデオを見直し学生のグループ活動への参加の様子を検討してみた。1 回のグループ活
動の中で何%の学生が発言をしていたか(発言した人数/班員数)、何%の学生が活動に参加し
ていたか(参加人数/班員数)を得点化し、前期と後期の、これらの平均値の差を有意水準5%の
両側検定により検討してみた。表4は、この結果をまとめたものである。表から分かるように、「参加
度」について、これらの平均値の差は有意であった。
4. おわりに
2008年度より授業内に採り入れ始めた、「グループ活動」をバージョン・アップさせるべく、今回は
「協同学習ワークショップ」で学んだ内容を盛り込んでみた。その結果、「グループ活動の評価」・
30
「理解」・「やる気」、およびグループ活動への「参加度」についての4項目において、前期よりも良い
結果が得られ、前期と後期のこれらの平均値の差は有意であった(3.1.2、3.2.2および3.6参
照)。
学生たちの自己評価ではあるが、「理解」・「やる気」の面で向上が見られ、また、学生たちのグ
ループ活動への「参加度」も向上させられたのは大変喜ばしいことである。ただ、その一方で、「目
標」や「役割」を学生たちがしっかり認識できていなかったという大きな問題点がある。また、前年度
と比べれば随分減ったとは言え、まだまだ他力本願の学生が存在している(学生たちのコメントによ
り)という現実もある。
学生たちに「目標」がしっかり届いていないのは、なぜか。まず一つ考えられるのは、「目標」の与
え方に問題があったのかもしれない。学生たちに「目標」を公表させる前に、予測させるなどして、
学生の意識が「目標」の方向に向かうような工夫が必要であったのかもしれない。また、英語能力を
長期的に向上できるような「目標」を掲げるなど、「目標」の内容そのものを、もう少し見直す必要も
あるのかもしれない。
「役割分担」がうまく機能しなかったことに関しても、こちらから何でも与えるばかりではなく、学生
たちが自ら考え実行していけるような「仕掛け」が必要だったのかもしれない。
「協同ワークショップ<Basic>の資料1」によれば、学生の「ただ乗り」等のふさわしくない現象が生
じてしまう原因の一つに、「課題終了時の成果点検の不備」が考えられるとある。今回は、とにかく
学生自体を「活動させたい」という思いで、物理的にとりあえず活動させたといったところが大きかっ
た。
次回は「成果点検」につながるような活動も採り入れ、「英語嫌い」の、更なる「英語の授業への
参加」を促せるような授業を目指していきたい。
(本稿は 2010 年9月に開催された「日本協同教育学会第7回大会」での口頭発表を加筆・修正したものである。ご意
見をいただいた立教大学の伏野久美子先生を始め諸先生方に、この場をお借りして深く感謝を申し上げたい。)
参考文献
協同学習法ワークショップ<Basic> 2009 年改訂版 日本協同教育学会
協同学習法ワークショップ<Advance> ver.2.0 日本協同教育学会
31
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