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f rom NTTドコモ 豊かな生活に役立つ社会基盤となる LTEサービス「Xi」 (クロッシィ) 2010年12月に東名阪でサービスを開始した「Xi」 (クロッシィ)は,高速,大容量,低遅延を実現するLTE(Long Term Evolution)規格に準拠した移動通信サービスです.LTE規格に準拠した通信サービスは,欧州をはじめ米国でも順次開始され, 多くの通信事業者が今後対応を予定しています.それに先駆けて,NTTドコモはデータ通信サービスから開始し,従来の3Gエ リアとの連続性を維持しつつ,4Gへのスムーズな橋渡しとなるLTEを商用化しました. 「Xi」 (クロッシィ)とは 技術的特長 携帯端末やネットワークの高機能化,料金体系としての 定額制の普及拡大により,サービスおよびコンテンツの LTEには,高速,大容量,低遅延という言葉に代表され る,3つの技術的な特長があります(図3). リッチ化が進んでいます.特に,スマートフォンの急激な まず第1の特長としては,上下ピークレートの大幅な向上 普及にも伴い,新たなサービスやアプリケーションの発展 が挙げられます. 「Xi」 (クロッシィ)のサービス開始当初は, が期待されると同時に,動画などのデータトラフィックの UEカテゴリ3 増加傾向が今後も続くと見込まれており(図1),その対策 して,帯域幅10 MHz運用の一部の屋内局では約75 Mbit/s, が移動通信事業者にとって共通の課題になっています. それ以外のエリアでは帯域幅5 MHzで約37.5 Mbit/sを実 *1 の移動端末を投入し,下りピークレートと NTTドコモは2004年11月,Super3Gの概念を提唱し 現します(図4).また,上りピークレートとして,帯域幅 ました(図2).概念の骨子としては,ユーザ体感の向上や 10 MHz運用の一部の屋内局では約25 Mbit/s,それ以外 サービスの新たな可能性につながる通信速度の高速化や低 遅延化,伸び続けるトラフィックを収容可能とする大容量 *1 UEカテゴリ3:規格上規定された移動端末の能力分類. 化といった3G技術の長期的な競争力維持,さらには将来の 4Gネットワークへの円滑な移行を可能にすることなどが挙 げられます.さらに,Super3Gの概念に基づき,2009年 システム性能 4G 3月に3GPP(3rd Generation Partnership Project) スムーズな 4G導入 Release 8として確定したLTE(Long Term Evolution) 標準規格の策定に寄与し,規格確定後は世界と歩調を合わ 4G用周波数帯 せつつ,先頭集団での商用化を進めてきました. ここでは,2010年12月に東名阪で開始したLTEサービ 3G用周波数帯 LTE(Super3G) ス「Xi」(クロッシィ)のシステムとサービスの概要につい て,3Gシステムとの対比を交えつつ解説します. 3Gの長期的 発展 HSUPA その他 画像 動画 HSDPA W-CDMA Release 99 2005年 2006年 2007年 2008年 図1 データトラフィックの伸び 48 NTT技術ジャーナル 2011.7 2009年 2000年 2010年 図2 LTE 導入イメージ のエリアでは帯域幅5 MHzで約12.5 Mbit/sを実現します. 両方を,大幅に短縮しています.これにより,通信を伴う 第2の特長として,無線方式の高度化により,HSPA アプリケーションのレスポンスやスループット *2 *3 の向上が (High Speed Packet Access) 比で約3倍の周波数利 見込まれ,移動端末とネットワークの連携を容易にするな 用効率を達成し,大容量化を実現しました.装置価格の低 ど,新たなソリューションの基盤としての活用も期待され 減との相乗効果により増加の一途をたどるデータトラフィッ ます. ク収容のための設備投資抑制効果をねらいます. 展開シナリオ さらに第3の特長として,無線方式や制御シーケンス,ネッ トワーク構成の見直しにより,移動端末のアイドル状態か LTEの展開シナリオを模式的に図5に示します.「Xi」 らネットワークに無線接続したアクティブ状態までの接続 遅延,およびユーザデータが移動端末から接続先サーバな (クロッシィ)開始当初の移動端末は,LTEとW-CDMA どを往復する伝送遅延であるRTT(Round Trip Time)の (Wideband Code Division Multiple Access)の能力を 備えたデュアル移動端末であり,LTEエリア内においては 前述したLTE技術の特長を提供し,導入初期に残るLTEエ リア外ではW-CDMA(HSPA)にシームレスに切り替える HSPA比 高速 約10倍 下りピークレート:約75 Mbit/s 上りピークレート:約25 Mbit/s ことで,充実した3Gネットワークのカバレッジを同時に実 ※いずれも帯域幅10 MHz運用の場合 現しています. LTEはパケット交換(PS: Packet Switched)に特化 大容量 したシステムのため,回線交換(CS: Circuit Switched) 周波数利用効率の向上による容量増大 約3倍 には対応していません.3Gにて回線交換で提供していた 低遅延 音声などのサービスは,当面は3Gへの切替えにより提供し 約1/4 接続遅延,RTTの短縮 ※RTTの最大短縮効果 *2 *3 図3 LTE 技術の特長 HSPA:W-CDMAのパケットデータ通信を高速化した規格. スループット:単位時間当りに,誤りなく伝送される実効的なデータ量. (Mbit/s) 300 Mbit/s 300 250 ピークレート(Mbit/s) UEカテゴリ 5MHz 200 150 LTE UE カテゴリ5 10 MHz 15 MHz 20 MHz 1 10 10 10 10 2 37.5 50 50 50 3 37.5 75 100 100 4 37.5 75 112.5 150 5 75 225 300 150 100 20 MHz×4 MIMO LTE UE カテゴリ4 150 Mbit/s LTE導入初期のカテゴリ LTE UE 20 MHz×2 カテゴリ3 MIMO 100 Mbit/s NTTドコモおよび世界の多くの市場で開発中 50 2Mbit/s 384 kbit/s Release 99 14 Mbit/s Cat. 10 21 Mbit/s 29 Mbit/s 64QAM MIMO HSPA HSPA+ (Release 6) 64QAM and MIMO 75 Mbit/s 42 Mbit/s 10 MHz×2 MIMO DC-HSPA (10 MHz) 5MHz×2 MIMO (Release 7) 37.5 Mbit/s LTE 「Xi」 (クロッシィ)開始時 図4 下りピークレートの変遷 NTT技術ジャーナル 2011.7 49 f rom NTTドコモ 3G/LTE移動端末 3G移動端末 LTE/4G 移動端末 LTE/4G 移動端末 4G PS サービス LTE 3G (Release 99) 2G 移動端末 3G (HSPA) アクセス不可 PDC 2001年∼ パケットネットワークによる CS&PSサービス CS&PS サービス 2010年∼ 2015年∼ 2020年∼ 図5 展開シナリオ例 ます. これらの諸条件により,当面は3G(HSPA)システムに インターネット LTEシステムをオーバレイさせてサービスを提供し,中長 期的に3GシステムをLTE,さらには4Gシステムに巻き HLR/HSS 取っていくシナリオが考えられます. IMS GGSN システム概要 CS-GW システム構成を図6に示します.現行の3Gネットワーク IP網 EPC SGSN IP-RNC eNodeB をベースに,コアネットワークに交換局(EPC: Evolved BTS Packet Core),無線アクセスネットワークに無線基地局 LTEエリア (eNodeB: evolved Node B)を新設します.3Gの無線 3G エリア 制御局(RNC: Radio Network Controller)の機能は, HLR: Home Location Register HSS: Home Subscriber Server I M S: IP Multimedia Subsystem EPCとeNodeBに配分してノードとしては削除し,よりフ ラットでシンプルなネットワーク構成としています.一方, 移動端末 制御信号 データ信号 図6 システム構成 中継転送プロトコルとしてはIP(Internet Protocol)を採 用し,パケットトラフィックと親和性を高めつつ,汎用機 器による低コストでのネットワーク構築を可能にしていま す.また,既存設備を有効活用するため,eNodeBは3Gに 提供サービスと端末概要 おける無線基地局(BTS: Base Transceiver Station) と併設可能にし,サイトやアンテナ,無線部を共用する構 現在「Xi」(クロッシィ)は,データ専用端末によりサー 成としています.コアネットワーク内の接続ルートとして ビスを提供しています.データ通信サービスとしては, は,3G移動端末からの接続は,従来どおり3Gにおけるパ FOMAと同様のmoperaによるインターネットなどとの接 ケット通信の加入者階梯の交換局であるSGSN(Serving 続や,MVNO(Mobile Virtual Network Operator)に GPRS Support Node) か ら , 関 門 階 梯 の GGSN よる通信事業者が提供するデータ通信利用が可能です. (Gateway GPRS Support Node)を経由してサーバ群 「Xi」(クロッシィ)導入初期の端末は,USB接続の への接続ポイントに接続し,一方,3G・LTEデュアル移動 L-02CおよびExpress CardタイプのF-06Cをライン 端末は,LTEの交換局であるEPCに含まれる加入者階梯の アップしています.いずれの端末も,前述のとおりLTEと ゲートウェイ装置であるS-GW(Serving Gateway)から W-CDMAの両方式に対応しており,LTEエリア外では,自 関門階梯のP-GW(PDN *4 -GW)を介して接続します.な お,3G・LTEデュアル移動端末が3Gエリアで通信する場 合は,SGSNからP-GW経由で接続します. 50 NTT技術ジャーナル 2011.7 *4 PDN(Packet Data Network) :P-GWを介して接続する外部のパケット ネットワーク. オーバであり,遷移ノードのケース別に,eNodeB内セク タ間,EPC内eNodeB間,EPC間ハンドオーバがあります. xGSN EPC eNodeB EPC X2 S1 S1 eNodeB eNodeB EPC内eNodeB間ハンドオーバは,eNodeB間の論理イ IP-RNC ンタフェースであるX2により信号処理を行うX2ハンド オーバと,eNodeBとEPCとの間の論理インタフェースで 3G/LTE(HSPA) デュアル端末 LTEセル LTEセル Intra-RAT X2ハンドオーバ LTEセル Intra-RAT S1ハンドオーバ lu あるS1により信号処理を行うS1ハンドオーバがあり,X2 リンク維持のコストとS1ハンドオーバによるコストのト Inter-RATハンドオーバ NodeB NodeB NodeB NodeB NodeB 3G(HSPA) セル 3G(HSPA) セル 3G(HSPA) セル 3G(HSPA) セル 3G(HSPA) セル レードオフにより,運用設定を判断します. また,ハンドオーバ前後の中心周波数が同一か否かで, 図7 ハンドオーバ機能概要 周波数内,周波数間ハンドオーバに分類されます. (2) Inter-RATハンドオーバ Inter-RATハンドオーバはRAT間ハンドオーバであり, LTEから3Gへの移行および3GからLTEへの移行に分類さ 動的に3Gシステムに切り替わります.ローミング時は2G (GPRS: General Packet Radio Service)にも対応して おり,幅広く利用できます. れます. ■音声サービス提供機能 前述のとおり,LTEはPSに特化したシステムであり, 3GではCSで提供していた音声サービスは,当面3Gへの切 主な機能 替えにより提供します.これをCSフォールバックと呼び ます. ■ハンドオーバ LTEでのハンドオーバには,大別してネットワークが切 なお,LTE導入初期はCSフォールバックにより提供する 音声サービスも,将来的にはLTE上のPSドメインでの提供 替え先セルを移動端末に指示するバックワードハンドオー を視野に入れています. バと,移動端末が自律的に切替え先セルを捕捉するフォ ■Allways-ON ワードハンドオーバがあります. バックワードハンドオーバはPS Handoverと呼ばれ,無 LTEではPPP(Point-to-Point Protocol)*6を用いず, IP接続のみによる常時接続を行う“Always-ON”コンセプ *7 時(電源 線切替え時の瞬断によるパケットロスを抑制するため,切 トが採用されています.LTEエリアでアタッチ 替え元のeNodeBから切替え先のeNodeBに送達確認未完 ON時など)には,ユーザが設定したPDNに自動接続し, 了のデータを転送するデータフォワーディング,および IPアドレスが割り当てられます.手動接続もユーザ設定に フォワードデータと新しいデータの順序誤りを補正するた より可能です. めのリオーダリングに対応しています. また,フォワードハンドオーバは,ネットワークからの 今後の展開 切断信号を契機としたRelease with Redirectionと,移 *5 動端末が自律的にNAS(Non Access Stratum) の復 Super3Gを提唱して以来,およそ5年にわたる研究開発 旧を行うNAS Recoveryにさらに分類され,いずれも瞬断 の結果,2010年12月に「Xi」(クロッシィ)のサービス によるデータロスを伴います. ブランド名で,LTE標準規格準拠の移動通信サービスを東 別 の 観 点 と し て は , 無 線 シ ス テ ム ( RAT: Radio 名阪で開始することができました.今後は,計画どおり Access Technology)や周波数,またeNodeBやEPCの サービスエリアを充実させるとともに,利用帯域幅の拡大 切替えを伴うか否かで,次のとおり分類されます(図7). によるさらなる高速化や高機能化に取り組み,端末ライン (1) Intra-RATハンドオーバ Intra-RATハンドオーバはLTEシステム内でのハンド アップの充実や契約数の伸びとともに LTEサービス「Xi」 (クロッシィ)を社会に浸透させ,豊かな生活の基盤として 役立てることを目指します. *5 *6 *7 NAS:アクセス層(AS: Access Stratum)の上位に位置する,移動端末 とコアネットワークとの間の機能レイヤ. PPP:3Gネットワークなどのデータ通信で広く用いられているレイヤ2 プロトコル. アタッチ:移動端末の電源投ON時などにおいて,移動端末をネット ワークに登録する手続き. ◆問い合わせ先 NTTドコモ 研究開発推進部 TEL 03-5156-1749 NTT技術ジャーナル 2011.7 51