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オーストリアにおけるバイオ燃料規制の現状(その3)

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オーストリアにおけるバイオ燃料規制の現状(その3)
調査報告
ウイーン
●オーストリアにおけるバイオ燃料規制の現状(その3)
オーストリアのバイオ燃料規制のセミナーを 2009 年 6 月 3 日に受講した。その内容につ
いて、先月号に引き続いて報告する。
4. サンプル採取、品質保証、原材料形式
4.1 CEN/TS の規制化作業の進捗状況
現在の欧州標準化委員会技術仕様書(CEN/TS)において、固形バイオ燃料のサンプリン
グに関する項目が 4 通り示されているが、これを欧州規制(EN)への適用に関する作業が
行われている。その流れについて示す。
①CEN/TS 14778-1:サンプリング方法
②CEN/TS 14778-2:トラック輸送される微粒子状物質のサンプリング方法
③CEN/TS 14779 :サンプリング手順やサンプリングの認証方法
④CEN/TS 14780 :サンプル調整方法
上記項目①~③を、暫定欧州規制「prEN 14778:固形バイオ燃料サンプリング」、また項
目④を暫定欧州規制「prEN 14780:固形バイオ燃料サンプル調整方法」として、それぞれ
規制化に向けた準備をしている最中である。
4.2 サンプル採取の意味
「守られる」値の分析結果の差異は、以下に述べるようなそれぞれの段階において生じ
ている。
サンプル抽出時に発生
80%
サンプル前処理時に発生 15%
分析時に発生
5%
注意)石炭の分野においては、農作物のような異物も含めた分析も行う。
4.3 サンプル採取の原則
1 回のサンプリングにおいて、それぞれの粒子が、同じ確率においてサンプルとして採取
され、手元に存在している必要がある。もしそれが保証できなければ、サンプル採取表に
必ずメモを残しておくこと。採取されたサンプルについては、検査対象物の品質や状態や
構成などについて、信頼できる表示をしておく必要がある。
― 1 ―
調査報告
ウイーン
4.4 サンプル採取の原則
サンプル採取イメージを図 4-1 に示す。
検査対象
10 トン
検査
外観検査
分析
5 グラム以下
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-1 サンプル採取の原則
検査では、すべての検査量段階に対する写真を撮っておく必要がある。
4.5 検査方法
サンプル検査手順の流れを図 4-2 に示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-2 サンプル採取の流れ
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調査報告
ウイーン
必要サンプル量 n
4.6 一回当たりの分析に必要なサンプル量の算出
一回当たりの分析に必要なサンプル量の算出方法は、均質または不均質な材料、定形ま
たは不定形な材料などによって様々である。図 4-3 にロット量とサンプル量の相関を示す。
1 トン当たりのロット量、mlot
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-3 サンプル 1 トン当たりのロット量と必要サンプル量の相関
定形材料での 1 回当たりの分析に必要なサンプル量の暫定的な計算式を以下に示す。
・均一材料(Group1)
:n=5+0.025×mlot
・不均一材料(Group2) :n=10+0.040×mlot
また表 4-1 にサンプルの分析結果を記入する表の一例を示す。
表 4-1 サンプル分析結果表(抜粋)
サンプル手順参照番号
サンプル種類認識番号
サンプルの目的
品質特性
水分
粒径
かさ比重
真比重
機械的耐久性
灰分
発熱量
硫黄
窒素
塩素
その他
日付
CEN 方法
必要量
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
kg
分析に必要なサンプル全量
kg
かさ密度
kg/リットル
分析に必要なサンプル全量
リットル
もし要求される全量(Vreq)が混合サンプル量(Vcom)を超える場合
は、採取量を増やすこと。
1 サンプルの正確な数(nact)は、
Vreq/Vinc より多くすること。
リットル
混合サンプルの正確な量
(nact×Vinc)
サンプルに用いる道具
手動
自動
スコップ □
ショベル □
フォーク □
グラブ
□
その他
□
サンプリング場所
サンプリングロットから副ロットを選択する
手順
CEN/TS 14778-1,2 による要求
サンプルの最低数(nmin)
1 サンプル、最低量(Vinc)
混合サンプル量(Vcom)
混合サンプルから分析用サンプルを準備する
方法
分析用サンプル量
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
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リットル
リットル
リットル
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ウイーン
4.7 サンプル量の計算
バイオ燃料の代表的な、かさ比重について表 4-2 に示す。
表 4-2 バイオ燃料の代表的なかさ比重
バイオ燃料
かさ比重(kg/m3)
ペレット
550~650
練炭
500~650
粉体燃料
200~250
おがくず
290~380
かんなくず
140~170
ウッドチップ
280~350
ワラの塊
130~180
切りワラ
80~120
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
4.8 サンプル採取用の道具
図 4-4 にサンプル採取道具の図を、図 4-5 にその写真を示す。
d:公称寸法(材料の 95%が該当する篩を通過すること)
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-4 サンプル採取道具の例(図示)
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ウイーン
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-5 サンプル採取道具の例(写真)
4.9 サンプル採取の理論と実際
サンプル採取状況について図 4-6 に示す。理論的には上図に示す通りであるが、実際のサン
プル採取は下の写真のような感じで行われる。
理論的なサンプル採取
実際のサンプル採取状況
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-6 理論的なサンプル採取方法と実際の状況の比較
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ウイーン
4.10 サンプル採取用特殊器具
図 4-7 にサンプル採取用の特殊器具の写真を示す。左側がペレットからサンプル採取す
るランス、右側がワラの塊からサンプルを採取するボーリングマシーンである。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-7 サンプル採取用特殊器具の例
4.11 不定形物質からのサンプル採取
図 4-8 に不定形材料からのサンプル採取例の図を示し、また図 4-9 にその実際の作業状
況の写真を示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-8 不定形材料からのサンプル採取状況の例
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ウイーン
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-9 不定形材料からのサンプル採取状況の実例
4.12 品質保護のための梱包および貯蔵
燃料の物理的化学的特性の検査結果を保証するために、正しい梱包方法を以下に示す。
・気密性梱包(ビニール袋など)
・直射日光を避ける
・再検査が必要となったときのために、詰め物などで
封印する
・長期保存の場合は、(5℃で)冷却して微生物が
活性化しないようにする。
(特に水分が 20%を超える材料)
サンプルの保存例を図 4-10 に示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-10 不定形材料からのサンプル採取状況の実例
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4.13 サンプル分離方法
図 4-11 に回転式サンプル分離機と篩器を示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-7 サンプル採取用特殊器具の例
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-11 回転式サンプル分離機(左)と篩器(右)
4.14 サンプル分離方法(四分法)
サンプル分離方法の 1 つ、いわゆる四分法のイメージを図 4-12 に示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-12 四分法のイメージ
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ウイーン
4.15 サンプル細分方法
図 4-13 にサンプル細分作業および細分されたサンプルの実例を、図 4-14 にはサンプル
の粉砕機をそれぞれ示す。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-13 サンプル細分作業および細分されたサンプルの実例
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-14 サンプル粉砕機
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ウイーン
4.16 サンプル採取方法の比較
表 4-3 にサンプル採取方法による灰分分析値に差異が生じる状況について示す。
表 4-3 灰分のデータ(サンプル採取方法による比較)
四分法
ボーリングマシーン
篩器
o は、繰り返し計測による平均値より大きく外れた値のサンプルの割合
xm は、平均値
CVr は、繰り返しによる変動係数
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
4.17 サンプル採取における誤差発生の原因
図 4-15 にサンプル採取時に誤差が発生する原因のイメージを示す。左がオリジナル、右
は輸送中または輸送後に差異が生じることを示す。誤測定の原因となるような異物混入も
当然ながら避ける必要がある。
オリジナルの状態
輸送中または輸送後
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 4-15 サンプル採取における誤差発生の原因
(参考資料)
・バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料(2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技
術研究協会主催)、Mardalena Wojcik 氏による講演
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調査報告
ウイーン
5. バイオマス燃料の化学的分析
5.1 固形バイオマス燃料
固形バイオマス燃料を化学的に成分分類すると、可燃物と不燃物に大別され、可燃物は
コークス分と揮発性分とに、不燃物は水分と灰分に、それぞれ分類することができる。
5.2 木材の成分構成
木材の分析結果の一例を以下に示す。
化学組成
成分構成
51%
炭素
50%
セルロース
42%
酸素
25%
ヘミセルロース
6%
水素
25%
リグニン
1%未満
窒素
5%未満
抽出物
0.1%未満
塩素、硫黄
1%未満
灰分、鉱物分
5.3 化学分析に関する規制
欧州標準化委員会技術仕様書(CEN/TS)において、固形バイオマス燃料の各成分の測定
方法が記載されている。その概要について以下に示す。
①CEN/TS 15104:全炭素、水素、窒素の含有量
②CEN/TS 15289:硫黄および塩素の含有量
③CEN/TS 15105:水溶成分である塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの含有量
④CEN/TS 15290:灰分を構成する主要成分の含有量
(Al、Ca、Fe、Mg、P、K、Si、Na、Ti)
⑤CEN/TS 15297:灰分を構成する上記以外の成分の含有量
(As、Cd、Co、Cr、Cu、Hg、Mn、Mo、Ni、Pb、Sb、V、Zn)
⑥CEN/TS 15296:固形燃料の様々な関連項目の計算方法
5.4 環境汚染物質
固形バイオ燃料に含まれる硫黄、ハロゲン、窒素は環境汚染物質である。これらの特徴
および由来について示す。
①硫黄
有機系硫黄化合物が SO2 の最大の発生源であり、この SO2 は水に溶けると硫酸となる。こ
の硫酸が酸性雨や浸食の原因となる。
木材由来の硫黄は、木そのものからの発生は僅少であるが、接着剤として使用されるリ
グノスルホン酸からの発生がある。
②塩素
塩素分を燃焼させると、強力な腐食性を持つ塩化水素を発生させる。
木材由来の塩素は、木そのものからの発生は少量であるが、スプレー剤、肥料、路面凍
結防止剤などからの発生がある。
③窒素
固形燃料からの NOx 生成の最大の原因が、燃料中の窒素である。
木材由来の窒素は、木そのものの含有量は 0.3%以下である。他には膠に窒素が多く含ま
れ、接着剤からの発生も考えられる。
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調査報告
ウイーン
5.5 塩素および硫黄の分析
固形バイオ燃料の塩素および硫黄の分析の流れについて示す。
3kg の湿ったサンプル
サンプル乾燥によって 1.95kg
粉砕、圧縮成形して、
熱分析用サンプルは 1g
熱量計に水 1ml を加える
100ml に希釈
分析は 5μl
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
したがって、塩素および硫黄含有量を測るのに、数トンの燃料から分析はわずか 5μl と
なる。
5.6 様々な燃料の塩素含有量の実例
規制に基づいて分析された燃料中の塩素含有量を、表 5-2 に示す。
表 5-2 各燃料の塩素含有量分析結果
塩素含有量
樹皮を含まない木材
平均値
繰り返し範囲
比較範囲
重量%
R abs
R rel
r abs
乾きベース
%
%
%
r rel
%
0.003
0.006
174
0.003
93
樹皮を含む木材
0.005
0.010
185
0.006
103
樹皮
0.010
0.010
99
0.005
53
膠を含む木材
0.015
0.012
83
0.007
51
ワラ
0.11
0.030
26
0.016
14
オリーブの絞りかす
0.20
0.043
21
0.013
7
菜の花のワラ
0.28
0.065
23
0.027
10
アザミ
1.59
0.44
27
0.18
11
R abs :分析繰り返しによる変動範囲の絶対値(%)
R rel :分析繰り返しによる変動範囲の相対値(%)
r abs :分析値の相対変動範囲の絶対値(%)
r rel :分析値の相対変動範囲の相対値(%)
出典:バイオ規制ⅠおよびⅡプロジェクト
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ウイーン
5.7 炭素、水素、窒素含有量の測定
炭素、水素、窒素含有量分析は、酸素雰囲気中での完全燃焼およびガスクロマトグラフ
ィーによる分析を採用する。またサンプル分析の前処理や、標準物質を利用したシステム
の校正が必要となる。システム例として、LECO 社製の自動化システムなど、規制の要求に
合わせた最新のものが望ましい。
また窒素含有量分析には、ケルダール法を採用することも可能である。
表 5-3 に炭素、水素、窒素含有量の分析結果間の最大許容変動範囲を示す。
表 5-3 分析結果間の最大許容変動範囲(乾きベース)
分析結果間の最大許容変動範囲(乾きベース)
繰り返し範囲
比較範囲
炭素含有量
0.5%(絶対値)
1.5%(絶対値)
水素含有量
0.25%(絶対値)
0.5%(絶対値)
窒素含有量 N>0.5%の場合、相対値で 10%
N<0.5%の場合、絶対値で 0.05%
N>0.5%の場合、相対値で 20%
N<0.5%の場合、絶対値で 0.1%
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
排ガス中 NOx 濃度(mg/m3)
5.8 NOx 生成の状況
バイオマス燃料の燃焼温度と排ガス中 NOx 濃度の相関を、図 5-1 に示す。燃焼温度が
1,250℃以上になると、サーマル NOx 発生量が急激に増加することが分かる。次に燃料中の
窒素濃度と NOx 排出濃度の相関を図 5-2 に示す。
サーマル NOx
燃料 NOx
プロンプト NOx
温度(℃)
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 5-1 燃料中の窒素濃度と NOx 排出濃度の相関
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ウイーン
排ガス中 NOx 濃度(mg/m3)
調査報告
燃料用穀物
トウモロコシ製品
ワラ
ススキ
その他の規格化された
バイオ燃料の規制値
木材バイオ燃料の規制値
木材
燃料中の窒素含有量(%)
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
図 5-2 燃料中の窒素濃度と NOx 排出濃度の相関
5.9 水溶成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム)の分析
水溶性の塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの分析方法を示す。分析用サンプルは、50ml
の純水で、完全に密封されたパイレックスガラスの中で 120℃×1 時間加熱する。その後、
密封容器ごと室温まで自然冷却し、ろ過を行う。
塩素、ナトリウム、カリウムの各含有量は、以下に示す方法で計測する。
①塩素
イオンクロマトグラフィー(IC)もしくは
硝酸銀を用いた電位差滴定法による。ただし
後者は水溶性の臭素やヨウ素を含む値となる
可能性がある。
②ナトリウム、カリウム
炎光光度法(FES)、フレーム原子吸光法
(FAAS)、ICP 発光分光法(ICP-OES)のいず
れかを採用する。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、
Mardalena Wojcik 氏
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調査報告
ウイーン
5.10 灰分を構成する主要成分の分析
灰分を構成する主要成分として、Al、Ca、Fe、Mg、P、K、Si、Na、Ti が挙げられる。ま
たその他の成分として、As、Cd、Co、Cr、Cu、Hg、Mn、Mo、Ni、Pb、Sb、V、Zn が挙げられ
る。以下に灰分を構成する上記成分の分析方法について示す。
分析用サンプルは、密閉容器内で酸と混合し、高圧高温下に置く。次に 2 種類の試料を
作成する。
①燃料から直接の溶解液(パート A)
-試料 500mg に対して、3.0ml の過酸化水素水
(濃度 30%)
、8.0ml の硝酸(濃度 65%)、
1.0ml のフッ化水素酸(濃度 10%)を加える。
-分析装置の温度制御プログラムを設定する。
-もし、フッ化水素酸が使い切られた際は、加熱
プログラムを中断してホウ酸(濃度 4%)
を加える必要がある。
②550℃まで加熱したものが、燃料の灰分となる。
(パート B)
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演
会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
大半の元素は認定値が必要な場合、ICP-MS、ICP-OES、GF-AAS、FAAS の各方法によって計
測可能である。これらは EN ISO 11885、EN ISO 17294-2、EN ISO 7980、ISO 9964-1、ISO 9964-2
の各欧州規制に適合した方法である。
ヒ素と水銀は、HG-AAS(EN ISO 11969 に適合)よって計測可能であり、また水銀は冷蒸
気原子吸光光度法(CVAAS)でも計測可能である。
その他の分析方法も採用可能であるが、分析対象がバイオマス材料として認証されてい
ることがまずは必要である。
5.11 灰分成分の重要性
前節で示した固形バイオ燃料中の重金属類は、土壌(作物に付着したもの)、収穫用機械
や粉砕機による汚れなどが由来となる。これらの成分は、燃焼を通じて灰中に濃縮される。
固形バイオ燃料灰の処理について、以下に示すケースが考えられる。
①処分場での埋立に関しては、特に重金属含有量が高い場合は溶出防止処理が必要となり、
費用がかさむ原因となる。
②「肥料」としての処理は現状では不可で、木材由来の灰を利用した「肥料」として認定
されることは、現状では無理である。
③農村地域への還元に関しては、厳格な法律が存在しており、遵守する必要がある。
④鉱物系建設資材としての骨材としての使用は有効である。
いずれにしても重金属類は環境汚染の原因となるため、取扱には慎重を要する。
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調査報告
ウイーン
5.12 様々な関連項目の分析値計算方法
分析結果の記述に関して、関連状態やパラメータに対する様々な略語が、その都度で明
確に記述される。例えば“ad”は(air dried)、
“ar”は(as received=roh)
、
“ d”は(dry)、
“daf”は(dry, ash free)などを示す。以下に各略語の意味と使用されている規制につ
いて示す。
・A:灰(CEN/TS 14775)
・C:炭素含有量(CEN/TS 15104)
・Cl:塩素含有量(CEN/TS 15289)
・qp,net:定圧下での低位発熱量(J/g)(CEN/TS 14918)
・H:水素含有量(CEN/TS 15104)
・M:水分(CEN/TS 14774)
・N:窒素含有量(CEN/TS 15104)
・O:酸素含有量(計算により算出)
・S:硫黄含有量(CEN/TS 15289)
次に、様々な関連項目の算出式を表 5-4 に示す。
表 5-4 分析値から様々な関連項目の計算方法
既知の値
計算値
分析値
(空気乾燥)
(ad)
分析値
(空気乾燥、ad)
受領値 a)
乾燥重量
(ar)
100-Mar
100-Mad
(d)
100
100-Mad
100
100-Mar
受領値
(ar)
100-Mad
100-Mar
乾燥重量
(d)
100-Mad
100
100-Mar
100
100-(Mad+Aad)
100-(Mar+Aar)
100
乾燥重量
灰分含まず
(daf)
100
乾燥重量
灰分含まず
(daf)
100
100-(Mad+Aad)
100
100-(Mar+Aar)
100
100-Ad
100-Ad
100
a)「受領値」の計算式は湿りベースとなることに注意。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
5.13 関連項目の計算結果例
水分を 8%含むペレットサンプルから、灰分および発熱量を分析した結果の例を表 5-5 示
すが、塩素や硫黄など他の多くのパラメータについても同様にこうした表記は有効である。
表 5-5 分析結果の例
分 析 結 果
灰
分
備
考
生値(ar) 乾燥値(d)
0.48%
0.52%
ÖNORM M7135 に適合しない燃料
発熱量
17.1MJ/kg
18.8MJ/kg ÖNORM M7135 に適合しない燃料
4.8kWh/kg
5.2kWh/kg ややこしい記述となり得るため、この単位は通常使用しない。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
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調査報告
ウイーン
5.14 実験にかかるコスト
固形バイオ燃料の分析にかかるコストの概略を、装置等をすべて自身の研究所等に設置
する場合のコストを表 5-6 に、分析を外注する場合のコストを表 5-7 に、それぞれ示す。
表 5-6 実験にかかるコスト(装置等を自身で調達する場合)
規制
パラメータ
作業時間
必要器具
器具費用
(前処理を除く)
(分)
CEN/TS 14780
分析前処理
(ユーロ)
15~180
粉砕機、サンプル分離器具
様々な器具があり、
コストもまちまち。
破砕機は 5000~8000、
遠心粉砕機は 4500~6500
CEN/TS 15104
C, H, N
60
CEN/TS 15105
水溶性物質
45
Cl, K, Na
CEN/TS 15289
S, Cl
元素分析装置
30,000~60,000
乾燥機、IC などの元素分析装
1,000~5,000
置
(乾燥機のみ)
30(ボンブ式熱量計) ボンブ式熱量計
ボンブ式熱量計
+30(イオンクロマ
17,500~25,000
+イオンクロマトグラフィー
トグラフィー)
イオンクロマトグラフィー
15,000~20,000
CEN/TS 15290
CEN/TS 15297
灰分の主要
45~120
AAS(原子吸光光度計)、
マイクロ波分析装置
構成成分
ICP(誘導結合プラズマ)
、
15,000~20,000
灰分のその他
マイクロ波分析装置
ICP
45~180
50,000~75,000
の構成成分
注1)作業時間および分析費用は、分析前処理や実験室の品質保証などの分析条件によって変動する可能
性があることを考慮に入れる必要がある。
注2)灰分の構成要素については 5.3 節を参照のこと。
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
表 5-7 実験にかかるコスト(分析を外注する場合の一般的なコスト)
規制
CEN/TS 14780
パラメータ
分析前準備
作業時間
標準価格
(前準備を除く)
(サンプル調整を含む)
(分)
(ユーロ)
15~180
30~300
(灰の除去は含まず)
CEN/TS 15104
C, H, N
60
70~120
CEN/TS 15105
水溶性物質
45
100~150
30(ボンブ式熱量計)
60~120
Cl, K, Na
CEN/TS 15289
S, Cl
+30(イオンクロマトグラフィー)
CEN/TS 15290
主要構成成分
45~120
100~260
CEN/TS 15297
その他の構成成分
45~180
100~260
出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料、Mardalena Wojcik 氏
(参考資料)
・バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料(2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技
術研究協会主催)、Philipp Koskarti 氏による講演
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