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【技術分類】2-3-3 素材/物性・分析/香気成分分析

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【技術分類】2-3-3 素材/物性・分析/香気成分分析
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-1
香気成分収集法(概要)
【技術内容】
機器・装置などを用い香りの分析を行う場合、対象物質から香気を示す物質を分離捕集して機器・
装置に導入することが必要となる。
一般に香気を示す物質は分子量が小さく、蒸気圧が高く、かつ反応性を示しうる部分構造を持って
いるものが多く、また多数の化合物の混成比率が対象物質の香りの特徴を作り出す重要な要因になっ
ており、さらにごく微量の成分が重要な役割を示すことも多い。このため、香りの分析を行う際はこ
のような香気成分を構造変化させることなく、また構成比率をできるだけ変化させず、かつ微量な成
分といえども確実に捕集する手段が重要となる。
このような条件を満たす目的での、香気成分分析の為のサンプル捕集方法が各種ある。
溶媒抽出法:古くから行われている香気成分の捕集法である。これは対象物質を溶解しない溶媒で
香気成分だけを溶かし取り出す方法で、花の香気成分をヘキサンなどで抽出するのがその例である。
抽出の過程では熱をかけないため物質を変質させないが、溶媒によっては濃縮または溶媒除去の工程
で加熱を必要とし香気成分を変化させる可能性があり、また使用する溶媒により抽出される成分が異
なる場合もある。一般に溶媒としては有機溶媒が使用されるが、超加熱水(100℃~374℃)が利用さ
れることもある。これは超加熱水が低極性を示し有機物質の溶解度を増す特性を利用する。
蒸留法:香気成分は一般に蒸気圧の高い化合物であるので蒸留による分離・分画も有効な捕集法で
ある。分析対象物質が液体の場合は真空蒸留を利用し、捕集容器を十分に冷却して捕集効率を確保す
る。粘性の高い液体や固体の香気を分析するには水蒸気蒸留を行う。真空蒸留法は目的物質の揮発効
率を高め、香気成分を取り出すものであるが、反面、ごく沸点の低い成分を失う危険性を含んでいる。
水蒸気蒸留法は工業的な天然香料の製造にも使用されている方法であるが、得られる油分量に比べ溜
出水が圧倒的に多いために、水に対して溶解性のある成分が失われ、得られた香気成分の組成比が異
なってしまう危険性がある。
ヘッドスペース法:香気成分を取り出す過程で熱や溶媒を用いず、対象物の上空に漂う気体状物質
をそのまま捕集し分析する手法であり、ガスクロマトグラフ(GC)法など高感度分析の発達によって
利用されるようになった。資料が置かれた閉鎖空間の上空に香気成分が平衡状態を構成した後に上空
空気をシリンジで採取し GC 装置に導入するスタティックヘッドスペース法と、資料の置かれた密閉容
器に気体を流通させ出口で香気成分を適当な吸着剤に導き一定時間経過後に有機溶媒または、熱によ
り離脱させることにより濃縮香気成分を得るダイナミックヘッドスペース法がある。
マイクロ固相抽出法:SPME(solid phase aroma concentrate extraction)法とも言う。シリンジ
の針様のものに吸着液相がコーティングされたファイバーが内装された SPME 用シリンジを用いる。こ
のファイバーを、香気成分にさらして吸着が進んだ後に、GC 注入口に中芯を押しだし、熱キャリアー
ガスで吸着成分を離脱させる。更にファイバーよりも太く長いロッドに吸着成分をコートして、これ
を香気成分にさらしより多くの香気成分を捕集する法(SBSE 法)も利用される。
超臨界ガス抽出法:超臨界状態のガスが浸透性と溶解性に非常に優れることを利用し、香気成分を
濃縮抽出できる。二酸化炭素(炭酸ガス)が利用されるのが一般的であるが、エタン、プロパン、笑
気、等も候補となる。高圧機器が必要とされるが分析対象物から常温近くで濃縮捕集できる。
パーベーパレーション:溶媒を使わず、エネルギー消費もない濃縮捕集法であり、パーベーパレー
ション膜を用い、溶解状態から減圧サイドに浸透する揮発成分を液体窒素で捕集する。
カラム濃縮法:液体試料をポーラスポリマービーズまたはシリカゲル等を充填したカラムを通し、
不要な成分を流出除去後カラム内に濃縮された香気成分を溶媒で回収する方法で、室温で分析サンプ
ルを得ることができる。
マイクロウェーブ処理法:マイクロウェーブを分析対象物に照射することにより短時間で加熱し、
- 353 -
香気成分を水分の蒸気と共に離脱させる溶媒を使用しない捕集法で、一種の水蒸気蒸留とも考えられ
る方法である。
超臨界ガス抽出法:特に二酸化炭素が最適な溶剤として使用される。臨界温度 31.1℃、臨界圧力
73.8atm で比較的常温で抽出でき、熱に不安定な香気成分、香辛料の抽出に適している。
アンフルラージュ法:香気物質が脂肪体によく吸収される性質を利用し、油脂に香気成分を吸収さ
せ適当な溶媒で抽出することにより分析用試料として捕集する方法である。
【図表 1】
出典:
「2. 食品成分の測定 2.11 香気成分」新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原
龍幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300 頁 表 2.11-1 代表的な香気捕集法
【図表 1 の説明】代表的な香気捕集法およびその特徴を図表 1 に示す。
【出典/参考資料】
「Bergamot essential oil extraction by pervaporation」、Desalination Vol. 193 No. 1-3 2006
年、FIGOLI A.、DONATO L.、CARNEVALE R.、DRIOLI E.、TUNDIS R.、STATTI G.a.、MENICHINI F.著、
Elsevier Scientific Ltd.発行、160-165 頁
「Improved solvent-free microwave extraction of essential oil from dried Cuminum cyminum L.
and Zanthoxylum bungeanum Maxim.」、Journal of Chromatography A
Vol. 1102 No. 1-2 2006 年、
WANG Ziming、DING Lan、LI Tiechun、ZHOU Xin、WANG Lu、ZHANG Hanqi、LIU Li、LI Ying、LIU Zhihong、
WANG Hongju、ZENG Hong、HE Hui 著、Elsevier B.V.発行、11-17 頁
「Superheated water extraction of fragrance compounds from Rosa canina」
、Flavour and Fragrance
Journal
Vol. 19
No. 4 2004 年、OEZEL M Z、CLIFFORD A A 著、John Wiley & Sons Inc.発行、354
-359 頁
「Investigation of Potent Odorants and Afterodor Development in Two Chardonnay Wines Using the
- 354 -
Buccal Odor Screening System (BOSS)」
、Journal of Agricultural and Food Chemistry
No. 8
Vol. 52
2004 年 4 年 21 日、BUETTNER A 著、American Chemical Society Publications 発行、2339-
2346 頁
「Stir bar sorptive extraction(SBSE)-enantio-MDGC-MS. A rapid method for the enantioselective
analysis of chiral flavour compounds in strawberries.」、European Food Research and Technology
Vol. 213 No. 4/5 2001 年 10 月、KRECK M、SCHARRER A、BILKE S、MOSANDL A 著、Springer-Verlag
発行、389-394 頁
「生薬成分への応用 (兵庫県立東洋医学研究所 S)」、兵庫県立東洋医学研究所年報 No. 9(1996)
1998 年、奥川斉、橋本庸平著、兵庫県立東洋医学研究所発行、10-29 頁
最新 香料の事典 2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社朝倉書
店発行 569-571 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「4 おいしさと香り 4.2 におい成分の分析法」、おいしさの科学事典 2003 年 6 月 10 日、山野義
正著、株式会社朝倉書店発行、156-167 頁
「香気の採取及び濃縮法」、香料 No. 194
1997 年 6 月、松浦則義著、日本香料協会発行、243-245
頁
- 355 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-2
香気成分収集法(水蒸気蒸留法)
【技術内容】
機器・装置などを用い香りの分析を行うためには香気成分を分離捕集して機器・装置に導入するこ
とが必要となるが、このための手段の1つとして蒸留法が利用される。常圧蒸留では低揮発度の物質
の捕集のために高温が必要となり物質に変化を及ぼす危険性があり、また減圧蒸留法ではこの問題が
避けられても高揮発性の成分の逃散の可能性がある。このような問題点を避けるために水蒸気蒸留が
利用される。
香気成分の多くは水に不溶であり、これを水と共に加熱した場合、香気成分の蒸気圧と水の蒸気圧
との和が大気圧とひとしくなったとき、香気成分は水蒸気と共に沸騰し流出する。このため水蒸気蒸
留では香気成分を固有の沸点よりも低い温度で取り出すことができ、香気成分の分解や変質の危険性
を避けることができる。試料に水蒸気を吹き込む方法と、試料に水を浸しこれを加熱する方法とがあ
る。水に溶けやすい成分は抽出されにくいこと、得られる油分量に比べ溜出水が圧倒的に多いために、
水に対して溶解性のある成分が失われ、得られた香気成分のバランスが崩れる場合があることを配慮
して手段が選定されなければならない。
水蒸気蒸留を連続して効率よく行うための装置として、香気成分抽出用試料は上から下へ、水蒸気
は下から上へ流れながら、回転するコーンと固定されているコーンの間隙で有効な接触を繰り返し、
効率よく連続的に水蒸気蒸留が行われる気-液向流接触装置などがある。
加熱による香気成分の変化が大きいと考えられる試料については、減圧水蒸気蒸留法が利用される。
減圧下で蒸留することにより、低い温度でも香気成分の抽出を行うことができる。なお、室温程度加
温で蒸留する場合は、生(なま)の試料の場合は酵素反応による香気成分の変化が起こりうることを
注意しておかなければならない。
水蒸気蒸留の装置内部に少量の有機溶媒を循環し、香気成分を連続的に抽出する連続蒸留抽出法
(SDE:steam distillation extraction 法)と称される方法があり、これを減圧下で行うのが減圧連
続蒸留抽出法(減圧 SDE 法)である。ほぼ閉鎖されたガラス容器内で一連の操作が行われるため、外
部からの異物混入や香気成分の揮散を最小限に抑えることができ、また香気成分の濃縮が容易である。
図表 1 に SDE 装置の例を示す。
【図表 1】
- 356 -
出典:
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」
、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅
原龍幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、310 頁 図 2.11-8 連続蒸留抽出装置(SDE 装置)
【図表 1 の説明】左フラスコから水蒸気と共に蒸発した香気成分が、中央の塔で右フラスコから蒸発
してきた水より比重の重い低沸点溶剤の蒸気により抽出され、右フラスコに濃縮される。
水蒸気蒸留法の変法としてマイクロウェーブを利用した捕集法(SFME:solvent-free microwave
extraction システム)もある。これはいわゆる電子レンジによる食品を内部から加熱する方法を応用
したもので、植物体や食品など、水分を含有した対象物質をマイクロウェーブで加熱し、保有する水
分子の温度上昇を利用し、共存する香気成分を水蒸気蒸留の原理で外部に取り出し冷却捕集するもの
である。簡便で有機溶媒、また水さえも加えずに香気成分を捕集できる。例を図表 2 に示す。
【図表 2】
出典:「Improved solvent-free microwave extraction of essential oil from dried Cuminum cyminum
L. and Zanthoxylum bungeanum Maxim.」、Journal of Chromatography A Vol. 1102 No. 1-2 2006
年、WANG Ziming、DING Lan、LI Tiechun、ZHOU Xin、WANG Lu、ZHANG Hanqi、LIU Li、LI Ying、LIU
Zhihong、WANG Hongju、ZENG Hong、HE Hui 著、Elsevier B.V.発行、12 頁 Fig.1.
Improved SFME system
Copyright (2006) with permission from Elsevier
【図表 2 の説明】
装置はマイクロウエーブオーブン、反応槽、温度制御システム、冷却器から構成され、留出物を捕
集する。
【出典/参考資料】
「Improved solvent-free microwave extraction of essential oil from dried Cuminum cyminum L.
and Zanthoxylum bungeanum Maxim.」、Journal of Chromatography A
Vol. 1102 No. 1-2 2006 年、
WANG Ziming、DING Lan、LI Tiechun、ZHOU Xin、WANG Lu、ZHANG Hanqi、LIU Li、LI Ying、LIU Zhihong、
WANG Hongju、ZENG Hong、HE Hui 著、Elsevier B.V.発行、11-17 頁
「スピニング コーン カラム(SCC)抽出装置を応用したセイボリー香料の開発」、Foods & Food
Ingredients Journal of Japan Vol. 210
No. 11
2005 年、山本孝著、FFI ジャーナル編集委員会
発行、1086-1088 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
- 357 -
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「分析機器による香りの測定最前線」、日本化粧品技術者会誌 Vol. 32 No. 3 1998 年、堀内哲嗣
郎著、日本化粧品技術者会発行、253-262 頁
- 358 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-3
香気成分収集法(ヘッドスペース法)
【技術内容】
機器・装置などを用い香りの分析を行う場合、対象物質から香気を示す物質を分離捕集して機器・
装置に導入することが必要となる。
一般に香気を示す物質は分子量が小さく、蒸気圧が低く、かつ反応性を示しうる部分構造を持って
いるものが多く、また多数の化合物の混成比率が対象物質の香りの特徴を作り出す重要な要因になっ
ており、さらにごく微量の成分が重要な役割を示すことも多い。このため、香りの分析を行う際はこ
のような香気成分を構造変化させることなく、また構成比率をできるだけ変化させず、かつ微量な成
分といえども確実に捕集する手段が重要となる。
このような条件を満たす、香気成分分析の為のサンプル捕集方法としてヘッドスペース法がある。
気体-固体、気体-液体の平衡蒸気をヘッドスペースといい、ヘッドスペース法とは試料の周辺に
漂っている気体を捕集することによる、香気成分の捕集方法のことを言う。他の捕集手法に比べ、熱
や溶媒を用いず、抽出操作を加える手段では取り出しにくい低沸点成分の捕集に有効で、試料を破壊
することなく香気物質を得ることができる。ヘッドスペースからの香気成分の集め方により、スタ
ティック(静的)ヘッドスペース法と、ダイナミック(動的)ヘッドスペース法に分類される。
スタティックヘッドスペース法は密閉系で平衡状態になっている香気成分の一部を抜き取り、その
まま分析する手法で、操作が簡便であるが、気相中の香気成分濃度がある程度以上濃いことが必要と
される。図表 1 に示すような、捕集器を用い GC にサンプルを直接注入することもできる。
【図表 1】
出典:
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」
、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅
原龍幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、304 頁 図 2.11-2 ヘッドスペース捕集注入器
【図表 1 の説明】GC に直接試料を注入できるタイプの捕集器の構造を示す。
ダイナミックヘッドスペース法は試料と平衡関係にある気相にパージガスを吹き込むことで試料中
の香気成分の気化を促し、これを吸着剤で捕集し分析する手法である。吸着剤に吸着された成分は溶
- 359 -
媒でこれを回収するかまたは、GC 注入口で熱脱着させてカラムに導入する。吸着剤としては、活性炭、
ポラパック Q、アンバーライト XAD、クロモソーブ、TenaxTA などが用いられる。液体試料に直接パー
ジガスを吹き込むことで試料中の香気成分の気化を促す場合もありこれをストリップ-トラップ法と
呼ぶが、不揮発成分による吸着剤の汚染に留意する必要がある。
【図表 2】
出典:
「フレーバーのヘッドスペース
ガスクロマトグラフィーの新展開」、月刊フードケミカル
No.
12 1989 年、三原智、原田公博著、株式会社食品化学新聞社発行、77 頁 表 1 濃度平衡を利用して
試料を捕集する
HSGC
【図表 2 の説明】図表 2 にそれぞれの捕集方法と脱着方法および GC への導入方法をまとめて示す。
分析対象サンプルに熱を加え変化していく過程で発生する香気物質をヘッドスペース法で捕集し分
析する例を図表 3 に示す。
- 360 -
【図表 3】
出典:「Volatile Compounds Formed from Cooked Whole Egg Yolk, and Egg White」、Journal of
Agricultural and Food Chemistry Vol. 38
No.2 1990 年、Katsumi Umano、Yukio Hagi、Akihiro
Shoji、Takayuki Shibamoto 著、American Chemical Society Publications 発行、462 頁
Figure1.
Apparatus used for collection of headspace volatiles from heated egg samples.
【図表 3 の説明】加熱により変化し発生する香気成分の捕集に吸着剤を用いず、溜出する水と共に冷
却して行っている。卵、卵の黄身、卵の白身の加熱による香りの発生を、香気物質を捕らえることに
より GC-MS 分析により明らかにした。
【出典/参考資料】
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「分析機器による香りの測定最前線」、日本化粧品技術者会誌 Vol. 32 No. 3 1998 年、堀内哲嗣
郎著、日本化粧品技術者会発行、253-262 頁
「Volatile Compounds Formed from Cooked Whole Egg Yolk, and Egg White」、Journal of Agricultural
and Food Chemistry
Vol. 38 No.2 1990 年、Katsumi Umano、Yukio Hagi、Akihiro Shoji、Takayuki
Shibamoto 著、American Chemical Society Publications 発行、461-464 頁
「フレーバーのヘッドスペース
ガスクロマトグラフィーの新展開」
、月刊フードケミカル
No. 12
1989 年、三原智、原田公博著、株式会社食品化学新聞社発行、75-82 頁
「Dynamic Headspace Gas Chromatography: Concentration of Volatile Components after Thermal
- 361 -
Desorption by Intermediate Cryofocusing in a Cold Trap」、Jouarnal of Chromatography Vol. 405
1987 年、Peter Werkhoff、Wilfried Bretschneider 著、Elsevier B.V.発行、87-98 頁
- 362 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-4
香気成分収集法(カラム濃縮法)
【技術内容】
香気成分を分析装置に導入するためのサンプル捕集方法の1つとして、カラム濃縮法がある。
カラム濃縮法は通常、液状の分析対象物質(飲料、酒類、果汁など)の香気成分分析に利用され、
試料をポーラスポリマービーズまたはシリカゲルを充填したカラムを通し、不要な成分を流出除去後
カラム内に濃縮された香気成分を溶媒で回収する方法で、室温で資料を得ることができる。
ポーラスポリマービーズとしては ethyl vinyl benzene-divinyl benzene 系、N-vinyl pyrrolidone
系、N-vinyl pyridine 系などが用いられることが多い。香気成分を吸着した後のカラムからは目的物
質をエーテル、塩化メチレンなどで溶出させて分析用サンプルとする。
ビールの香気性成分の分析において、ethyl vinyl benzene-divinyl benzene 系カラムを用いて濃
縮したサンプルと、減圧蒸留抽出法(減圧 SDE 法)から得られたサンプルとの GC 分析結果の比較例を
図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:「ポーラスポリマーカラムによる食品香気成分の濃縮」、分析化学
哉、平野好司、筬島豊著、社団法人日本分析化学会発行、797 頁
Vol. 36
Table 4
1987 年、下田満
Comparison of recovery
and reproducibility by present method and SDE
【図表 1 の説明】任意のピーク成分の回収量とデータの繰り返し再現性を比較し、カラム濃縮法の方
が回収率において数十倍以上、再現性は SDE 法が 37.9%、カラム濃縮法が 14% と 平均で 2.7 倍(標
準偏差比較)優れている。
分析対象物から、本法により直接香気成分を濃縮捕集するだけでなく、第一段階として他の捕集法
を利用し、得られた液状のサンプルから、カラムを用い濃縮することも行われる。ゼラニウム油の水
蒸気蒸留による溜出物からの香気成分の濃縮に際し、各種吸着剤を用いその比較検討も行われている。
また、第一段階として GC 分析カラムにより分離された画分を、ethyl vinyl benzene-divinyl benzene
系カラムを利用して濃縮して第二段の GC へのサンプルとする事による、精密分析に利用される例を図
- 363 -
表 2 に示す。
【図表 2】
出典:「Enantiomer separation of the characteristic odorants in Japanese fresh rhizomers of
Zingiber officinale Roscoe (ginger) using multidimensional GC system and confirmation of the
odour character of each enantiomer by GC-olfactometry」、Flavour and Fragrance Journal Vol.
16 No. 1
2001 年、Osamu Nishimura 著、John Wiley & Sons Inc.発行、14 頁
Figure 1. Schematic
diagram of an off-line MDGC system.
【図表 2 の説明】図表 2 のようなシステムにより、第一段の GC 装置に於いてカラム 2 で分離された画
分を 8 の ethyl vinyl benzene-divinyl benzene 系カラムに吸着させ、その後第二段の精密分析用カ
ラムによる GC 分析装置への注入に用いることにより、精密な分析または光学分離分析を行うことがで
きている。
シリカゲルを充填したカラムを用い、分析サンプルとして望ましい画分だけを分離しここから溶剤
により抽出したものを分析サンプルとして使用することも行われ、特定の極性を有する成分の抽出な
どにしばしば用いられる。
【出典/参考資料】
「Recovery of Valuable Perfumery Compounds from a Geranium Steam Distillation Condensate Using
Polymeric Adsorbents.」
、Separation Science and Technology Vol. 36 No. 16 2001 年、AMIN L
P、PANGARKAR V G、BEENACKERS A A C M 著、M. Dekker Inc.発行、3639-3655 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「Application of a Thermal Desorption Cold Trap Injector to Multidimensional GC and GC-MS」、
Journal of High Resolution Chromatography
Vol. 18 1995 年 11 月、Osamu Nishimura 著、Wiley-VCH
Verlag 発行、699-704 頁
「Enantiomer separation of the characteristic odorants in Japanese fresh rhizomers of Zingiber
officinale Roscoe (ginger) using multidimensional GC system and confirmation of the odour
character of each enantiomer by GC-olfactometry」、Flavour and Fragrance Journal Vol. 16
- 364 -
No.
1
2001 年、Osamu Nishimura 著、John Wiley & Sons Inc. 発行、13-18 頁
「ポーラスポリマーカラムによる食品香気成分の濃縮」、分析化学 Vol. 36
野好司、筬島豊著、社団法人日本分析化学会発行、792-798 頁
- 365 -
1987 年、下田満哉、平
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-5
香気成分収集法(マイクロ固相抽出法)
【技術内容】
香気成分を、その分子構造・組成の変化を最小にしてかつ効率よく捕集する方法として、マイクロ
固相抽出法がある。
マイクロ固相抽出法は SPME(solid phase aroma concentrate extraction)法とも呼ばれ、ヘッド
スペース法の一種と見ることができる。SPME 用器具を図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:「食品とフレーバーの固相マイクロ抽出とキラル分離」、Foods & Food Ingredients Journal of
Japan
No. 163 1995 年、MANI V、WOOLLEY C 著、FFI ジャーナル編集委員会発行、96 頁
Fig.1. SPME
抽出器
【図表 1 の説明】図表 1 に示すようなシリンジ様の形状で、シリンジ針に該当する部分(セプタム貫
通針)は 1~2cm のフューズドシリカでできた芯部に、7~100μm の厚さで吸着相が塗布されたファイ
バーを有する。このフューズドシリカファイバーをプランジャーを押し下げることで、針外へ露出さ
せることができる。
図表 2 に SPME を使用した試料抽出と GC 注入の工程を示す。
- 366 -
【図表 2】
出典:「食品とフレーバーの固相マイクロ抽出とキラル分離」、Foods & Food Ingredients Journal of
Japan
No. 163 1995 年、MANI V、WOOLLEY C 著、FFI ジャーナル編集委員会発行、96 頁
Fig.2. SPME
のサンプリング工程
【図表 2 の説明】SPME のサンプリング工程を示す。天然物の揮発性物質の抽出とその後の GC 分析は
極めて単純、容易である。セプタム貫通針は、試料容器セプタムへの貫通時にはファイバーを内蔵し
保護する。その後、SPME ファイバーを試料ヘッドスペースにあるいは液体試料中に直接あるいは露出
させることで、分配作用により揮発性化学物質はファイバー上の液相に吸着される。分配平衡に達す
るか一定の時間が経過した後、ファイバーを針内に収納し、針を試料容器から抜き取る。抽出濃縮さ
れた分析対象物質は、SPME 針を GC セプタムに貫通し、加熱された気化室内にファイバーを露出させ
る事で熱脱離し、キャリアガスによって分析カラム入り口へと移送される。
この SPME ファイバーには様々な種類があり、吸着相としては非極性のシリコン系(ポリジメチルシ
ロキサンなど)、極性のポリアクリレート、ポリエチレングリコール系、強力な吸着力を有する活性炭
系などが市販されていて、捕集する香気成分の性質や場面に応じて適切なファイバーを選択する必要
がある。
この手法は溶媒を用いることもなく、迅速な試料の抽出/濃縮/GC 導入が行え、小型で経済的な手
法である。気体または液体試料中の微量濃度の揮発性~難揮発性化合物が抽出濃縮でき、ppt レベル
までの濃度範囲まで直線性に優れた検量線の定量分析が可能である。
更にファイバーより太く長いロッドに吸着成分をコートして香気成分にさらにより多くの香気成分
を捕集する法(SBSE 法)も利用される。一例として、磁性のバーを封入した外径 1.2mm、長さ 1.2cm
のガラス製の撹拌バーの外面にポリジメチルシロキサンを 55μl 塗布したものを用い、イチゴの香気
物質の分析をした事例がある。
【応用分野】
特殊な応用例として、特別に調製した SPME ファイバーを利用し、ワイン飲用後の口中の香気物質を
分析した例などが報告されている。
- 367 -
【出典/参考資料】
「Calibration of gas chromatography inlet splitting for gas chromatography olfactometry
dilution analysis」、Flavour and Fragrance Journal Vol. 19 No. 6 2004 年、DEIBLER K D、LLESCA
F M、LAVIN E H、ACREE T E 著、John Wiley & Sons Inc.発行、518-521 頁
「Investigation of Potent Odorants and Afterodor Development in Two Chardonnay Wines Using the
Buccal Odor Screening System (BOSS)」
、Journal of Agricultural and Food Chemistry
No. 8
Vol. 52
2004 年 4 年 21 日、BUETTNER A 著、American Chemical Society Publications 発行、2339-
2346 頁
「Stir bar sorptive extraction(SBSE)-enantio-MDGC-MS. A rapid method for the enantioselective
analysis of chiral flavour compounds in strawberries.」、European Food Research and Technology
Vol. 213 No. 4/5 2001 年 10 月、KRECK M、SCHARRER A、BILKE S、MOSANDL A 著、Springer-Verlag
発行、389-394 頁
「食品とフレーバーの固相マイクロ抽出とキラル分離」、Foods & Food Ingredients Journal of Japan
No. 163
1995 年、MANI V、WOOLLEY C 著、FFI ジャーナル編集委員会発行、94-103 頁
「香りの分析技術と新たなサンプリング方法」
、Foods & Food Ingredients Journal of Japan
No. 2
Vol. 211
2006 年、大西正展著、FFI ジャーナル編集委員会発行、161-166 頁
最新 香料の事典 2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社朝倉書
店発行、569-571 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
- 368 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-6
香気成分収集法(アンフルラージュ法)
【技術内容】
アンフルラージュ法(Enfleurage 法、EC 法)とは、香気物質が脂肪体によく吸収される性質を利用し
て、油脂に香気成分を吸収させ、溶媒抽出した後、HPLC、GC、GC-MS などにより分析を行うものであ
る。実験方法を図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:
「生薬成分への応用 (兵庫県立東洋医学研究所 S)」、
兵庫県立東洋医学研究所年報
1998 年、奥川斉、橋本庸平著、兵庫県立東洋医学研究所発行、11 頁
No. 9(1996)
Fig.1
以下にアンフルラージュ法を用いた生薬芳香成分の分析の一例について述べる。
サフラン及びサンシシについて従来、存在が確認されていない成分が確認されている。図表 2、3 に
EC 法で捕集した成分の GC 分析結果を示す。
- 369 -
【図表 2】
Column, 0.24 mm i.d.× 25m fused silica capillary column coated with OV101;
Oven temp., 60-200 ℃ at 4 /min; carrier gas, nitrogen(0.72ml/min);detector,FID.
出典:
「生薬成分への応用 (兵庫県立東洋医学研究所 S)」、
兵庫県立東洋医学研究所年報
1998 年、奥川斉、橋本庸平著、兵庫県立東洋医学研究所発行、21 頁
Fig.11
Gas Chromatogram
Obtained from Dried Stigma of Crocus sativus by Enfleurage Method.
【図表 3】
Column, 0.24 mm i.d.× 25m fused silica capillary column coated with OV101;
Glass column(3 mm × 2m)packed with 5%OV17
- 370 -
No. 9(1996)
Oven temp., 60-200 ℃
Detector : FID
出典:
「生薬成分への応用 (兵庫県立東洋医学研究所 S)」、
兵庫県立東洋医学研究所年報
1998 年、奥川斉、橋本庸平著、兵庫県立東洋医学研究所、22 頁
Fig.12
No. 9(1996)
Gas Chromatogram Obtained
from Dried Fruits of Gardenia jasminoides by Enfleurage Method.
【図表 2、3 の説明】図表 2 にサフランの GC クロマトグラムを示す。サフランの芳香成分としてす
でに safranal 及び hydroxy-β-cyclocitral が知られているが、これらの成分のほか safranal 誘導体
が多く存在することが EC 法によりわかった。図表 3 にサンシンの GC クロマトグラムを示す。サンシ
シにおいても同様に safranal 及びその誘導体をはじめて確認できた。さらに共通成分 crocin の存在
から両生薬における同一合成系の存在が示唆された。したがって EC 法は生合成的な研究においても、
利用可能な興味ある分析法であると考えられる。
【出典/参考資料】
「生薬成分への応用 (兵庫県立東洋医学研究所 S)」、兵庫県立東洋医学研究所年報 No. 9(1996)
1998 年、奥川斉、橋本庸平著、兵庫県立東洋医学研究所発行、10-29 頁
- 371 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-7
インジェクション
【技術内容】
香気成分は、低分子量の有機化合物が多くこのような物質の分離・分析手段としてガスクロマト(GC)
分析が多用される。
GC 分析では分析対象物質を、高温に保持された気化部に注入(インジェクション)し、気化した分
析対象混合物を非反応性の気体であるキャリアーガスにより分離部に導入する。
精密で再現性の良い分析をするためにインジェクションの際に気を配らなければならない点は、試
料が注入口で気化してキャリアーガスの定常流中にできるだけ幅の狭い帯状に分散された状態でカラ
ムの入り口に導かれることである。
気化室の構造として求められる要件は、試料を瞬間的に気化させるために試料の熱分解が起こらな
い範囲でできる限り気化室温度を高く保つことが望ましい。試料が高温で接触分解する様な場合は気
化室をガラスライニングにすることもある。
液体の試料の採取とインジェクションにはマイクロシリンジ(0.05~20μl)を用いるが、キャピラ
リーカラムで分析する場合は、液体試料の導入量を 0.005~0.5μl 程度とし、一般に気化室と分離カ
ラムの間にスプリッター(分割器)が設置され、ごく微量の試料のカラム導入が行われる。また、近
年、一台の GC 装置に複数の(最大 3 台)カラム及び検出器を備えて分析を効率化することが行われる
が、この場合は資料注入口のすぐ後ろに配置されたセパレータにより分割された試料が、それぞれの
カラムに導かれることによって行われる。この流路図の例を図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:「2 章 ガスクロマトグラフ法 2.3 装置」、第 2 版
機器分析の手引き(2) 1996 年 3 月 30
日、芝哲夫著、株式会社化学同人発行、17 頁 図 2-6 マルチキャピラリーカラム流路系概念図
【図表 1 の説明】図表 1 に示す方式の利点はパックドカラムの場合は 3-4 台のガスクロマトグラムで
分析しないと分離不能な各成分を 1 台で、しかも同時に全成分を同定できる点にある。
スタティックヘッドスペース法によるインジェクションは一般に上に記したようなマイクロシリン
ジを用いることが多いが、ダイナミックヘッドスペース法においては、試料は各種吸着剤に一時捕集
される。このように捕集したガスを冷却した分析カラムの先端に凝集させた後挿入する冷却フォーカ
シング(Cryofocusing)を利用することも行われる。スプリット注入法では試料の大部分をスプリッ
トアウトするため1/30~1/200 の試料しか分析カラムに導入できないが、冷却フォーカシングの方
法では全ての試料をカラムに導入できる事で感度を 30~200 倍上昇させることができる。
冷却フォーカシング部の前に、サンプル捕集管を設置し、サンプル捕集後これを加熱し試料成分を
- 372 -
加熱脱着させ、脱着した成分を液体窒素を使った極低温トラップで濃縮し、その後トラップ管の急激
な加熱によって短いバンド幅で GC に供給する事も行われる。このような手段により、検出限界を低く
することができる利点があると同時に、加熱脱着時の分解の可能性に留意しなければならない。
この方法の流れを図表 2 に示す。
【図表 2】
出典:
「フレーバーのヘッドスペース
ガスクロマトグラフィーの新展開」、月刊フードケミカル
No.
12 1989 年、三原智、原田公博著、株式会社食品化学新聞社発行、80 頁 図 10 熱脱着-冷却フォー
カシングシステム
【図表 2 の説明】ヘッドスペース成分は TENAX トラップ(2) に濃縮され熱脱着後、-130℃に冷却され
たリテンションギャップ(8) に捕集される。ついで 150℃に加熱して-30℃に冷却した分析カラムの先
端にヘッドスペースを再度凝縮させた後 GC 分析を行う。このようなシステムは、TCT(Thermal
desorption cold trap)インジェクターとしてシステム化されている。
通常 GC へのインジェクションは液体または気体の形で行われるが、固体の試料から直接導入する方
法も検討されている。図表 3 にインジェクターを例示する。
- 373 -
【図表 3】
出典:「Determination of volatile flavor components in danggui cultivars by solvent free
injection and hydrodistillation followed by gas chromatographic-mass spectrometric analysis」、
Journal of Chromatography A
Vol. 1116
No. 1-2 2006 年、KIM M.r.、EL-ATY A.m. Abd、KIM I.s.、
SHIM J.h.、EL-ATY A.m. Abd 著、Elsevier B.V.発行、260 頁
Fig.1. Illustration of SFSI
Copyright (2006) with permission from Elsevier
【図表 3 の説明】図表 3 に示すインジェクターは、内部に分析対象試料を詰めて両端を溶封した内径
1.2m、長さ 30 ミリのガラスキャピラリーを担持しており、先端を GC 気化室に挿入し数分温度均一化
を図った後、プランジャーを押し込むことでキャピラリーが破壊され香気成分がキャリアーガスにて
カラムに導入される方式になっている。
【出典/参考資料】
「Determination of volatile flavor components in danggui cultivars by solvent free injection
and hydrodistillation followed by gas chromatographic-mass spectrometric analysis」、Journal
of Chromatography A Vol. 1116 No. 1-2 2006 年、KIM M.r.、EL-ATY A.m. Abd、KIM I.s.、SHIM
J.h.、EL-ATY A.m. Abd 著、Elsevier B.V.発行、259-264 頁
「2 章 ガスクロマトグラフ法 2.3 装置」、第 2 版 機器分析の手引き(2) 1996 年 3 月 30 日、芝
哲夫著、株式会社化学同人発行、14-33 頁
「フレーバーのヘッドスペース
ガスクロマトグラフィーの新展開」
、月刊フードケミカル
No. 12
1989 年、三原智、原田公博著、株式会社食品化学新聞社発行、75-82 頁
「Application of a Thermal Desorption Cold Trap Injector to Multidimensional GC and GC-MS」、
Journal of High Resolution Chromatography
Vol. 18 1995 年 11 月、Osamu Nishimura 著、Wiley-VCH
Verlag 発行、699-704 頁
- 374 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-8
GC(カラム)
【技術内容】
香気成分は、ppm 単位でもさらに ppb 以下でも製品(香粧品、食品など)の感覚評価に影響を及ぼ
すため、この分析は非常に精度が高くかつ再現性良い手法を必要とされる。その様な要請に応える一
般的な機器分析の方法としてガスクロマト(GC)分析が多用される。精度の面での特性に加え、分析
のために必要なサンプル量は1mg 以下と少量で良く、また所要時間も数 10 分程度と迅速に結果が得
られることも多用される理由となっている。
GC 分析は分析試料を、高温に保持された気化部に注入(インジェクション)し、気化した分析対象
混合物を非反応性の気体をキャリアーガスとして、カラム部に送達させ、カラムを通過する過程で各
香気成分とカラム内の吸着成分との相互作用を利用した分離を行い、カラム出口に於いて、設置され
た検出部で、キャリアーガスにより搬出されてくる各成分を検出する構成になっている。横軸に試料
が機器に注入されてから検出されるまでの時間(保持時間)を、縦軸に検出器のシグナル強度を表す
ガスクロマトグラムとして記録がされ、クロマトグラム上に現れるピークの面積により定量分析を、
保持時間により定性分析を行う。さらに、分離成分をマススペクトロメトリー(MS)に導入すること
により化合物の同定・定量をすることもしばしば行われる。
この GC で用いられるカラムは、1)分析用充填カラム、2)分取用充填カラム、3)キャピラリーカ
ラムの 3 種類に大別できる。
充填カラムがこれまで主流であったが、溶融シリカキャピラリーカラムの出現でキャピラリーカラ
ムによる分析が主流となってきた。図表 1 に GC 分離カラムの種類およびその特徴を示す。
【図表 1】
出典:
「ガスクロマトグラフィーの進歩と挑戦」
、島津科学計測ジャーナル
- 375 -
Vol. 5 No. 1 1993 年、
柘植新著、株式会社島津製作所発行、3 頁
表1
GC に用いられる分離カラムの分類と諸特徴
【図表 1 の説明】溶融シリカキャピラリーカラムは充填カラムに比べて内径は小さく、長さは長く、
液相を化学結合したものでカラムのブリードが低く、テーリングも少ないので分離能(カラム理論段
数)が格段に優れており、微量分析にすぐれている。特に内径の小さいカラムの方が分離能が大きく
なり香気成分分析などに適する。一方内径が小さいと試料導入量に制約があり、再現性が低下し、カ
ラムに到達するまでの時間が長いので熱分解性の化合物の分析には不適などの欠点がある。しかし、
これらの欠点改良を目指した内径 1mm を超えるカラムの開発も進んでいる。
光学異性体を分離する目的のためには、固定相に化学修飾されたサイクロデキストリンを使用した、
キラル分析用カラムがある。
【出典/参考資料】
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「2 章 ガスクロマトグラフ法 2.3 装置」、第 2 版 機器分析の手引き(2) 1996 年 3 月 30 日、芝
哲夫著、株式会社化学同人発行、14-33 頁
「香りの秘密を解き明かす
17
光学異性体分離
GLC カラム(CHIRAMIX)の開発」、Hasegawa Letter
No.
2004 年 1 月、田母神成行著、長谷川香料株式会社発行、28-33 頁
「ガスクロマトグラフィーの進歩と挑戦」、島津科学計測ジャーナル Vol. 5 No. 1 1993 年、柘植
新著、株式会社島津製作所発行、1-5 頁
- 376 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-9
GC(カラム:光学異性体分析)
【技術内容】
香気成分の GC 法分析に於いては、通常溶融シリカキャピラリーカラム(fused silica capillary
column)などが分離カラムとして使用され、香気成分のキャリアーガス(気相)とカラム内面に保持
された固定相液体(液相)との分配係数の差によって分離が行われる。
分離対象である香気成分は、天然自然の産物を利用する場合が多く、その中には光学異性体として
産生された化合物が含まれ、その組成の違いが香りに影響を及ばすこともある。
有機化合物の骨格を構成する炭素原子が正四面体構造を持ち、その四つの手に結合する基がそれぞ
れ異なりその空間的位置が異なる場合に、分子式としては同じで他の物性値は同じでも異なる旋光度
を示すものを光学異性体と言う。
この光学異性体は、旋光性以外の物性値は同一の特性を示すため、上記の一般的な GC カラムの機能
の原理では分離することができない。この課題を解決するために、光学異性体分析用カラムはシクロ
デキストリン誘導体を分離カラムの液相として用いている。
シクロデキストリンはグルコースが 6、7、8 個と接続してリングを形成したもので、6 個で形成さ
れたものをα-、7 個はβ-、8 個はγ-シクロデキストリンと称する。GC カラムに利用される場合はそ
れぞれのシクロデキストリンの水酸基をアルキル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、または
tert-ブチルジメチルシリル基などで置換したものが利用される。
図表 1 に各種シクロデキストリン誘導体を利用した香気化学物質の光学分割分析例を示す。
【図表 1】
- 377 -
出典:「香りの秘密を解き明かす 光学異性体分離 GLC カラム(CHIRAMIX)の開発」、Hasegawa Letter
No. 17 2004 年 1 月、田母神成行著、長谷川香料株式会社発行、31 頁 図 3
2,6-Me-3-Pe-β-CD,
2,6-Me-3-TFAc-γ-CD および CHIRAMIX でのクロマトグラフ
【図表 1 の説明】CHIRAMIX は 2,6-Me-3-Pe-β-CD(β-CD)、2,6-Me-3-TFAc-γ-CD(γ-CD)の混合系カラ
ムである。β-CD はテルペン炭化水素化合物、アルコールの分離は良好であるが、ラクトン化合物の
分離は悪い。γ-CD はラクトン類の分離は良好であるが、テルペン炭化水素化合物やアルコールの分
離は悪い。混合カラムである CHIRAMIX はα-ピネン、リモネン、リナロール、α-ダマスコン、α
-イオノン、δ-ジャスミンラクトンおよびγ-ドデカラクトンを同時に分離できている。
また、このような光学異性体分離カラムによる GC 分析と、分離成分の嗅覚分析(GC-オルファクト
メトリー)の結果から、生姜(ginger)の香りの違いを検討した例を図表 2 に示す。
【図表 2】
出典:「Enantiomer separation of the characteristic odorants in Japanese fresh rhizomers of
Zingiber officinale Roscoe (ginger) using multidimensional GC system and confirmation of the
odour character of each enantiomer by GC-olfactometry」、Flavour and Fragrance Journal Vol.
16 No. 1 2001 年、Osamu Nishimura 著、John Wiley & Sons Inc.発行、17 頁 Table 1.
Enantiometric
distribution and odour description of potent odorant in fresh ginger (Zingiber officinale
Roscoe)
2001 Copyright John Wiley & Sons Limited. Reproduced with permission.
【図表 2 の説明】図表 2 はしょうがの香気成分の分析に光学異性体の分離分析と匂い分析(GC オル
ファクトメトリー)を組み合わせた検討で、分離能は良好である。この解析に使用された TCT(Thermal
desorption cold trap)法はヘッドスペース分析のみでなく、多次元 GC 分析 にも利用できることも示
している。
【出典/参考資料】
「Stir bar sorptive extraction(SBSE)-enantio-MDGC-MS. A rapid method for the enantioselective
analysis of chiral flavour compounds in strawberries.」、European Food Research and Technology
Vol. 213 No. 4/5 2001 年 10 月、KRECK M、SCHARRER A、BILKE S、MOSANDL A 著、Springer-Verlag
発行、389-394 頁
「食品とフレーバーの固相マイクロ抽出とキラル分離」、Foods & Food Ingredients Journal of Japan
No. 163
1995 年、MANI V、WOOLLEY C 著、FFI ジャーナル編集委員会発行、94-103 頁
「香りの秘密を解き明かす
17
光学異性体分離
GLC カラム(CHIRAMIX)の開発」、Hasegawa Letter
2004 年 1 月、田母神成行著、長谷川香料株式会社発行、28-33 頁
- 378 -
No.
「Enantiomer separation of the characteristic odorants in Japanese fresh rhizomers of Zingiber
officinale Roscoe (ginger) using multidimensional GC system and confirmation of the odour
character of each enantiomer by GC-olfactometry」、Flavour and Fragrance Journal Vol. 16
1
2001 年、Osamu Nishimura 著、John Wiley & Sons Inc.発行、13-18 頁
- 379 -
No.
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-10
GC(検出器)
【技術内容】
香気成分の分析にはガスクロマト(GC)分析法が多用され、分析カラムを通過する過程で各香気成
分とカラム内の吸着成分との相互作用を利用した分離が行われ、カラム出口に於いて設置された検出
部でキャリアガスにより搬出されてくる分離成分を検出する構成になっている。横軸に試料が機器に
注入されてから検出されるまでの時間(保持時間)を、縦軸に検出器のシグナル強度を表すガスクロ
マトグラムとして記録がされ、クロマトグラム上に現れるピークの面積により定量分析を、保持時間
により定性分析を行う。さらに、分離成分をマススペクトロメトリー(MS)に導入することにより化
合物の同定をすることもしばしば行われる。
一般的な検出器としては、FID(flame ionization detector)が使用される。これは、カラム分離
された成分が水素炎中に導入されイオン化することにより得られるイオン電流の強度を測定する検出
器である。
TCD(thermal conductivity detector)は FID に比べ感度は劣るが、成分の燃焼による破壊がない
ので、においの確認や成分の分取のためのモニターとして利用できる。
含硫黄化合物を選択的に検出したい場合には、FPD(flame photometric detector)が用いられ、酸
素・水素炎中で試料から生成するS2ラジカルを検出する方法である。含窒素化合物の検出にはNPD
(nitrogen phosphorus detector)、NCD(nitrogen chemiluminescence detector)などが使用される。
ECD(electron capture detector)はキャリアガスにβ線を照射して生じた電子を親電子性物質が
捕獲することによるイオン電流の減少を測定する方法で、ハロゲン化合物などの検出に利用される。
その他成分同定に有効な検出器として、FTIR(fourier transform infrared spectrometry)、AED(atomic
emission detector)なども利用される。
- 380 -
【図表 1】
出典:「2 章 ガスクロマトグラフ法 2.3 装置」、第 2 版
機器分析のてびき(2) 1996 年 3 月 30
日、芝哲夫著、株式会社化学同人発行、15 頁 表 2-1 おもな GC 用検出器
【図表 1 の説明】香気成分分析に用いられる GC の検出器および検出可能な化合物、最小検出量、およ
び直線範囲を図表 1 に示す。
検出方法の特異な例として GC カラムの出口から分離されて出てくる香気物質を直接ヒトの嗅覚を
利用して感覚的に検出する方法も、上記のような各種装置を利用した検出と併せて利用することもあ
る(GC オルファクトメトリー、GC スニッフィング)。
同時に 3 台の異なる検出器をつなぎ含硫黄化合物や含窒素化合物を同時に検出する、マルチ検出器
も利用されている。
- 381 -
図表 2 に FPD 検出器を用い、ねぎ属植物中の揮発性硫黄化合物を分析し、その特有のクロマトグラ
ムからニンニク使用食品の識別が可能であることを確認した例を示す。
【図表 2】
出典:「Dean-Stark 蒸留装置および炎光光度型ガスクロマトグラフィーを用いた揮発性硫黄化合物に
よるニンニク製品の同定」、山梨県衛生公害研究所年報 No. 41 1998 年 10 月、山本敬男、望月恵美
子著、山梨県衛生公害研究所発行、11 頁 図 5 ねぎ属植物中の揮発性硫黄化合物の FPD-GC クロマ
トグラム
【図表 2 の説明】図表 2 では FPD 検出器を用い、ねぎ属植物中の揮発性硫黄化合物を分析し、その特
有のクロマトグラムからニンニク使用食品の識別が可能であることを確認した。ピーク番号は硫黄化
合物の名称に合致するがここでは省略する。
【出典/参考資料】
「Volatile Flavor Constituents of Fruits from Southern Africa: Mobola Plum (Parinari
curatellifolia)」、Journal of Agricultural and Food Chemistry
Vol. 52
No. 8 2004 年 4 月 21
日、JOULAIN D、CASAZZA A、LAURENT R, PORTIER D、 GUILLAMON N、PANDYA R、LE M、VILJOEN A 著、
American Chemical Society Publications 発行、2322-2325 頁
「Dean-Stark 蒸留装置および炎光光度型ガスクロマトグラフィーを用いた揮発性硫黄化合物による
ニンニク製品の同定」、山梨県衛生公害研究所年報
No. 41
1998 年 10 月、山本敬男、望月恵美子著、
山梨県衛生公害研究所発行、8-13 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「2 章 ガスクロマトグラフ法 2.3 装置」、第 2 版 機器分析の手引き(2) 1996 年 3 月 30 日、芝
哲夫著、株式会社化学同人発行、14-33 頁
- 382 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-11
オルファクトメトリー
【技術内容】
スニッフィング GC 法による臭いの分析について述べる。臭気成分の分析には「臭気の検出」と「成
分の同定」が必要であるが、次のような困難がある。
1.臭気成分の種類により、検知濃度に大きな差がある。
2.臭気成分が混ざった場合、その複合臭は個々の成分の臭気とは異なることが多い。
3.分析機器による臭気成分分析の場合、検出されるガス成分の量と臭気の強度とが相関関係にある
とは限らない。
これらの問題を解決する分析法が「臭い嗅ぎ GC 法(スニッフィング GC 法)」である。この手法は
GC-MS 法と検知能力に優れた人間による官能測定を組み合わせた手法である。スニッフィング GC 装置
の概略を図表1に示す。
【図表 1】
出典:「スニッフィング GC 法による臭いの分析」、アロマティックス
Vol. 56
2004 年、香川信之、
丹羽浩、岡田貴司著、社団法人日本芳香族工業会発行、217 頁(2004) 図-1 スニッフィング GC 装
置の概略図
【図表 1 の説明】試料注入口から注入された試料がオーブン内のカラムで成分分離され、検出器で同
定される。ここで検出器の直前に分岐管を設け、スニッフィングポートに分析担当者(パネラー)が
鼻を近づけて、臭気の有無を判定する。この方法により、分離された成分の臭気の有無と成分を同時
に同定することができる。
スニッフィング GC 法による香料成分の分析として、キンモクセイ精油の分析例を示す。試料は液体
であるので、予め溶媒に希釈した後にスニッフィング GC 装置に注入した。分析結果を図表 2 及び図表
3 に示す。
- 383 -
【図表 2】
出典:「スニッフィング GC 法による臭いの分析」、アロマティックス
Vol. 56
2004 年、香川信之、
丹羽浩、岡田貴司著、社団法人日本芳香族工業会発行、220 頁(2004) 図-5 キンモクセイ精油の臭
気成分分析結果
【図表 3】
出典:「スニッフィング GC 法による臭いの分析」、アロマティックス
Vol. 56
2004 年、香川信之、
丹羽浩、岡田貴司著、社団法人日本芳香族工業会発行、220 頁(2004) 表-2 キンモクセイ精油から
検出された臭気成分
【図表 2、3 の説明】この結果から、キンモクセイ精油の臭いの主成分は、(C) のリナロールである
ことが確認された。
この方法では、臭気の有無と成分の同定を別々に行っていた従来法とは異なり、臭気成分の同定が
直接可能であるという点で非常に優れた方法である。しかし、臭気成分の判定は人間が行うため、そ
の判定に個人差が含まれる可能性を完全に除くことができない。客観的でかつ再現性の良い分析結果
- 384 -
を得るという課題の解決が必要である。
【出典/参考資料】
「スニッフィング GC 法による臭いの分析」、アロマティックス
浩、岡田貴司著、社団法人日本芳香族工業会発行、216-222 頁
- 385 -
Vol. 56
2004 年、香川信之、丹羽
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-12
多次元GC-MS
【技術内容】
GC 分析は分析試料を、高温に保持された気化部に注入(インジェクション)し、気化した分析対象
混合物を非反応性の気体をキャリアーガスとして、カラム部に送達させ、カラムを通過する過程で各
香気成分とカラム内の吸着成分との相互作用を利用した分離を行い、カラム出口に於いて、設置され
た検出部で、キャリアーガスにより搬出されてくる各成分を検出する構成になっている。横軸に試料
が機器に注入されてから検出されるまでの時間(保持時間)を、縦軸に検出器のシグナル強度を表す
ガスクロマトグラムとして記録がされ、クロマトグラム上に現れるピークの面積により定量分析を、
保持時間により定性分析を行う。
少量のサンプルで高分解能な分析を行うために、香気成分の分析に於いては、キャピラリーカラム
を用いることが通常行われるが、それでもなお、官能的に重要な成分が微量にしか存在しない為に GC
のピークとして重なり解析できない、あるいは複数の成分が GC ピークとして重なり解析できない、分
離が困難な場合がある。この問題解決のために多次元ガスクロマトグラフィー(multidimensional gas
chromatography;MDGC)が利用される。
MDGC は、複数の GC を直列に接続することで、クロマトグラム上の目的とする部分のみを更に分離
精製することで行われる。第一段の GC では高い試料負荷量のカラムを用い、分析目的とする画分を繰
り返し冷却トラップして、原試料よりも目的画分の濃度を上げたうえで、第二段の高分解能を持つキャ
ピラリーカラムでの分析に供することも行われる。また、カラムの接続に当たって異なった選択性の
カラムを選定することにより、目的を達成することも行われ、これをハイフネーションと呼ぶ。例え
ば、第一段目では極性の強いカラムで分離し、ここでは単一ピークとして分離されたものを第二段目
で非極性のカラムを使用することにより、更に細かい成分に分離する例や、第二段目に光学分割カラ
ムを利用して光学異性体の分析を行うなど多用されている。
二次元 GC により香気成分分離を行った例を図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:
「Application of a Thermal Desorption Cold Trap Injector to Multidimensional GC and GC-MS」、
Journal of High Resolution Chromatography
Vol. 18 1995 年 11 月、Osamu Nishimura 著、Wiley-VCH
- 386 -
Verlag 発行、701 頁、Figure 3. MDGC chromatograms for mixture(A) on the GCI column (A) and on
the GC2 column (B).
【図表 1 の説明】Citronellol(1), Decanol(2),Geranyl acetate(3)の混合物を多次元 GC カラムで 5
回繰り返し分析し再現性を検討した結果、各成分の保持時間の標準偏差は 0.01、相対標準偏差は 0.05% 、
クロマト面積も混合物含量値に近似していた。
(分析値は省略)
第一段目の GC から二段目の GC に試料を供給する方法として、オンライン法とオフライン法がある。
オフライン法の例を図表 2 に示す。
【図表 2】
出典:「多次元ガスクロマトフィーについて」、香料
会発行、260 頁 図 2
No. 194
1997 年 6 月、西村修著、日本香料協
Valco 社製4-ポートロータリーバルブを使ったキャリアガス流路図、
【図表 2 の説明】オフライン法は一段目の GC カラムの出口でサンプルを冷却または適当な吸着剤でト
ラップした後、手動で第二段目のカラムに導入する。この場合は濃縮度を上げることができる反面、
異物の混入に細心の注意を払う必要がある。
オンライン法は二本のカラムを流路切り替え装置で接続をして行う。オンライン法の例を図表 3 に
示す。
- 387 -
【図表 3】
出典:「多次元ガスクロマトフィーについて」、香料
No. 194
1997 年 6 月、西村修著、日本香料協
会発行、260 頁 図 3 第1カラムからの流路の分割装置。
【図表 3 の説明】切り替えの方法にはロータリーバルブを使う機械的方式と、流体を用いる方式とがあ
る。図表 3 に流体を用いる流路切り替え方式を示す。分岐された A、B への流路切り替えはそれぞれ独
立した窒素ガスの圧力バランスにより調整される。機械的な可動バルブがないので汚染、吸着、漏れ
を回避できる。
このように、MDGC により分離された成分を GC の検出装置に加え、質量スペクトル装置(MS)を利
用して検出する MDCG-MS により、GC より更に詳細な定量・定性情報を得る事ができる。試料の測定
方法として、最も一般的なものが電子衝撃イオン化(electron impact ionization)によって生ずる
正イオンの検出であり、分子量に関する情報を得るための手法として化学イオン化(chemical
ionization;CI)法もある。
【出典/参考資料】
「Stir bar sorptive extraction(SBSE)-enantio-MDGC-MS. A rapid method for the enantioselective
analysis of chiral flavour compounds in strawberries.」、European Food Research and Technology
Vol. 213 No. 4/5 2001 年 10 月、KRECK M、SCHARRER A、BILKE S、MOSANDL A 著、Springer-Verlag
発行、389-394 頁
「高度な分析情報を得るために
155
ハイフネーテッド分析機器で見る新たな世界」
、高砂香料時報
No.
2005 年、矢口善博著、高砂香料工業株式会社発行、15-21 頁
最新 香料の事典 2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社朝倉書
店発行、574 頁
「2. 食品成分の測定 2.11. 香気成分」、新 食品分析ハンドブック 2000 年 11 月 20 日、菅原龍
幸、前川昭男著、株式会社建帛社発行、300-320 頁
「多次元ガスクロマトフィーについて」、香料 No. 194 1997 年 6 月、西村修著、日本香料協会発行、
258-263 頁
- 388 -
「Application of a Thermal Desorption Cold Trap Injector to Multidimensional GC and GC-MS」、
Journal of High Resolution Chromatography
Vol. 18 1995 年 11 月、Osamu Nishimura 著、Wiley-VCH
発行、699-704 頁
- 389 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-13
LC(カラム)
【技術内容】
カラム中に充填された粒子の間隙に溶液とした分析目的物を通じると、溶液中の各成分は充填剤(固
定相)との相互作用の強弱により物質固有の移動速度を示す。この移動速度の差を利用して混合物を
分離し、物質の同定と定量を行う方法が液体クロマトグラフィー(LC)法である。カラム充填剤と溶
媒を選定することにより、吸着、分配、イオン交換など種々の相互作用(分離モード)を選ぶことが
でき、分析目的物にもっとも適したモードが選定される。
試料成分の分離効率は、充填剤の粒子系が小さいほどよく、粒子系 10μm 以下の微細な充填剤を固
定相に用い、試料成分溶液(移動相)を高圧ポンプで送液すると、優れた分離性能と迅速な分析が得
られ、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography : HPLC)と呼ばれる。
香気成分分析で利用される LC は、実質的に HPLC を言う。
HPLC の装置を図表 1 に示す。
【図表 1】
出典:「第 II 部 測定法各論 9 液体クロマトグラフィー」、若手研究者のための機器分析ラボガイ
ド
2006 年 3 月 1 日、澤田清著、株式会社講談社発行、201 頁
図 9.1
HPLC 装置の構成図
【図表 1 の説明】
HPLC の装置は図表1に示すように送液系(高圧ポンプ)、試料注入系(インジェクタ)、分離系(分
離カラム)、検出・記録系(検出器・データ処理装置)から構成される。
分離系に用いられる分離カラムは、内径 3~6 ㎜の汎用カラムから、高精密分離のための内径 0.3
㎜以下のキャピラリーカラムまで各種整えられており、目的とサンプル量に応じ選定される。
図表 2 に各種分離モードとその特徴を示す。
- 390 -
【図表 2】
出典:「第 II 部 測定法各論 9 液体クロマトグラフィー」、若手研究者のための機器分析ラボガイ
ド 2006 年 3 月 1 日、澤田清著、株式会社講談社発行、204 頁 表 9.1 分離モードの種類とその特
徴
【図表 2 の説明】
試料成分の固定相に対する保持力の差は主に試料成分と固定相との相互作用の強弱によって決まる
のでカラム充填物は分析対象物の分子量、極性、イオン性、溶媒に対する溶解度などの物性を考慮し
て分離モードを考慮して選定される。
カラム充填剤は一般に、適当な基材からなる保持体と、保持体表面に化学結合した固定相からなる。
保持体の基材としてはシリカゲル、合成ポリマー、チタニア、カーボンなどが用いられ、それぞれ機
械的強度や化学的安定性を異にする。機械的強度が強く大きな表面積を有する多孔性の微少シリカゲ
ルが充填剤として汎用されている。また、シリカゲルの表面のシラノール基に化学的性質の異なる種々
の結合基を導入することで性質の異なる固定相を得ることができる。直鎖飽和炭化水素のオクタデシ
ルシリル基を導入した充填剤は ODS と呼ばれよく利用される。
イオン交換カラムを用いることにより、ニンニク中のフレーバー前駆体を分析した事例を図表 3 に
示す。
- 391 -
【図表 3】
Abbreviations of compounds are followings;
(Cycloalliin); 5-methylthiomorphorine-3-carboxilic acid S-oxide, (methiin); S-methylcysteine
– S-oxide, (alloalliin); (-)-S-(2-propenyl)cysteine S-oxide, (alliin); (+)-S-(2-propenyl)
cysteine S-oxide, (isoalliin); S-(E-1-propenyl)cysteine S-oxide, (Glu-ALCSO);
N-(γ-glutamyl)-S-(2-propenyl)cysteine S-oxide, (Glu-PECSO); N-(γ-glutamyl)-S(E-1-propenyl)cysteine S-oxide, (Glu-MEC); N-(γ-glutamyl)-S-methyl cysteine, (deoxyalliin);
S-(2-propenyl)cysteine, (Glu-ALC); N-(γ-glutamyl)-S-(2-propenyl)cysteine, (Glu-PEC);
N-(γ-glutamyl)-S-(E-1-propenyl)cysteine, (Try); tyrosine, (Phe); phenyl alanine,(Glu-Phe);
N-(γ-glutamyl) phenyl alanine
出典:
「ニンニク中のフレーバ前駆体,S-アルケニルシステイン誘導体,の HPLC 分析」、日本食品科学工
学会誌 Vol. 52 No. 4 2005 年 4 月、山崎賀久、徳永隆司、奥野智旦著、社団法人日本食品科学工
学会発行、164 頁 Fig. 3 Typical HPLC chromatogram of garlic
【図表 3 の説明】
ニンニク中のフレーバー前駆体の HPLC クロマトグラムである。反復分析の相対標準偏差は標準溶
液で 0.7~2.7%, 試料溶液で 0.7~2.2% と良好な結果であった。
【出典/参考資料】
「第 II 部 測定法各論 9 液体クロマトグラフィー」、若手研究者のための機器分析ラボガイド
2006 年 3 月 1 日、澤田清著、株式会社講談社発行、200-209 頁
「ニンニク中のフレーバ前駆体,S-アルケニルシステイン誘導体,の HPLC 分析」、日本食品科学工学会
誌 Vol. 52 No. 4
2005 年 4 月、山崎賀久、徳永隆司、奥野智旦著、社団法人日本食品科学工学会
発行、160-166 頁
- 392 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3―14
LC(検出器)
【技術内容】
液体クロマトグラフィー(LC)法は微粒子(固定相)の充填されたカラムに分析目的物質の溶液(移
動相)を通過させると、溶液中の成分と固定相との相互作用の強弱差により成分ごとに異なる移動速
度を示すことを利用する分析方法である。固定相に 10μm 以下の微粒子を用い、移動相を高圧ポンプ
により送液することで高度精密分析を行うのが HPLC で、香料成分の分析で利用される LC は、実質的
に HPLC を言う。
混合物として分析計に導入され、分離カラム出口から分離溶出された成分は、検出器により検出さ
れる。HPLC 用の検出器には、(1)高感度、(2)応答が早い、(3)試料成分の濃度に対する直線性を示す、
その他の特性が要求される。代表的な検出器を図表1に示す。目的物の成分濃度、試料成分の化学構
造上の特徴、溶離液中での試料成分の物性変化などを考慮して、試料に適した検出器を使用する。
【図表 1】
出典:「7 分離分析 7.1 高速液体クロマトグラフィー」
、機器分析ガイドブック
1996 年 7 月 10
日、社団法人日本分析化学会著、丸善株式会社発行、723 頁 表 7.3 HPLC に使用される代表的な検
出器とそれらの特徴
【図表 1 の説明】HPLC 用検出器とその特徴を示す。試料中の試料成分濃度、検出器感度、試料成分の
化学構造上の特徴、溶離液中の試料成分の物性変化などを考慮して選択する。
検出器の検出感度に関して電気化学検出器(ECD)と UV 吸収検出器とを対比した研究例を図表 2 に
示す。
- 393 -
【図表 2】
出典:
「食品中ルチン関連物質の ECD 及び UV-HPLC による定量法」、日本食品化学学会誌
1
1999 年
Vol. 6 No.
Mikamo, Eriko、Okada, Yasuyo、Semma, Masanori、Ito, Yoshio.著、日本食品化学学会
発行、40 頁 Table 2. Linearity and detection limits of standard curves
【図表 2 の説明】食品中に含まれる、フラボノイド類を HPLC 分析し、検出器を電気化学検出器(ECD)
と UV 吸収検出器と対比し、ECD が 10~25 倍高感度であることが示されている。
質量分析計(MS)を検出器とする LC-MS あるいは 2 台の MS を直結して用いる LC-MS-MS では分析対
象化合物のイオンに関するデータが得られ、分子構造に関する情報が得られることにより、同定手段
として利用される。LC/MS、NMR および taste dilution analysis などを組み合わせた事例を図表 3 に
示す。
【図表 3】
出典:
「Sensory Activity, Chemical Structure, and Synthesis of Maillard Generated Bitter-Tasting
1-Oxo-2,3-dihydro-1H-indolizinium-6-olates」、Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol.
51 No. 9 2003 年、FRANK O、HOFMANN T、JEZUSSEK M 著、American Chemical Society Publications
発行、2694 頁 Figure 1. RP-HPLC chromatogram(left side) and taste dilution(TD)
chromatogram(right side)of the solvent-extractable, nonvolatile fraction of a heated aqueous
solution of xylose, rhamnose, and L-alanine.
- 394 -
【図表 3 の説明】LC-MS と組み合わせ、HPLC カラムからの分離流出物の官能検査を行うことで、食品
の加熱過程でしばしば生じるアミノ酸と糖類との反応(メイラード反応)生成物中の苦み物質を判定・
同定した研究である。左側は RP-HPLC, 右側は taste dilution chromatogram である。
【出典/参考資料】
「Sensory Activity, Chemical Structure, and Synthesis of Maillard Generated Bitter-Tasting
1-Oxo-2,3-dihydro-1H-indolizinium-6-olates」、Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol.
51 No. 9 2003 年、FRANK O、HOFMANN T、JEZUSSEK M 著、American Chemical Society Publications
発行、2693-2699 頁
「食品中ルチン関連物質の ECD 及び UV-HPLC による定量法」、日本食品化学学会誌 Vol. 6 No. 1
1999 年 Mikamo, Eriko、Okada, Yasuyo、Semma, Masanori、Ito, Yoshio.著、日本食品化学学会発
行、38-42 頁
「7 分離分析 7.1 高速液体クロマトグラフィー」、機器分析ガイドブック 1996 年 7 月 10 日、社
団法人日本分析化学会著、丸善株式会社発行、713-737 頁
- 395 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3―15
LC-MS
【技術内容】
香気成分の分析に於いて利用される液体クロマトグラフィー(LC)は、高分離能を得るための高圧
系を利用する HPLC がほとんどであり、HPLC に質量分析計(MS)を連結して分離された物質に関する
更なる情報を得る方法が LC-MS であり、さらに直列に MS を直結した LC-MS-MS も利用される。
LC-MS で主に使用されるイオン化法はエレクトロスプレーイオン化(electrospray
ionization:ESI)法と大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization:APCI)法で
代表される大気圧イオン化法である。ESI 法によるイオン化は試料溶液を移動相と共に高電場中の大
気圧下へ噴霧することにより試料をイオン化する方法であり図表1にそのイオン生成過程を示す。
【図表 1】
出典:
「82 高速液体クロマトグラフ 85 液体クロマトグラフ 質量分析計」、
機器分析の事典
年 11 月 25 日、社団法人日本分析化学会著、株式会社朝倉書店発行、259 頁 図 2
2005
ESI イオン源の構
造およびイオン化の生成過程
【図表 1 の説明】ESI 法イオン生成過程を示す。試料は高電場中に移動相と共に噴霧され液滴として
イオン化され、これが更に加熱されたガスによる溶媒蒸発を経て爆発的に微細化する過程で試料のイ
オン化が進み、MS 装置に導かれる。
APCI 法では噴霧部近くに設置した針電極のコロナ放電によりイオン化を促す。
これらイオン化法で測定される質量スペクトルはソフトなイオン化法で多くの場合、プロトン化分
子や脱プロトン化分子などの分子量関連イオンがベースピークイオンで観察されることから化合物の
分子量情報を得ることが可能である。しかし分子構造に関連したフラグメントイオンはほとんど観察
されないため MS-MS 法によりフラグメントイオンを生成させる。
このような手段を用いることにより(1)トータルイオンクロマトグラム(各時間軸で検出される全イ
オン量を表示したもの)(2)選択イオンモニタリング(分析対象化合物中の特徴有る質量イオンを指定
して、時間軸に対して選択的に表示したもの)(3)マススペクトル(任意の時間軸で検出されるイオン
の分子量関連イオン及びこのイオンが開裂して生成するフラグメントイオンを表示したものなどが得
られ、高感度な検出と同時に分子構造情報を与え、分析対象化合物の同定手段として非常に有用であ
- 396 -
る。
LC を二段階使用し、第一段の HPLC で複数段にグラジエントをかけ分離溶出した成分を順次トラッ
プカラムに保持し、これをオンライン脱塩後第二段の HPLC 分離を行った後、MS-MS 分析を行った、
LC-LC-MS-MS 分析とでも言う例があり、これを図表 2 に示す。
【図表 2】
出典:
「プロテオーム解析用 二次元ミクロ HPLC システム」、島津製作所パンフレット、株式会社島津
製作所著、株式会社島津製作所発行、3 頁 図 3 本システムによるトリプシン分解たんぱくの分析例
【図表 2 の説明】トリプシン分解たん白の分析例で、最上段は一次元 LC によるクロマトグラム、下
段は一次側の各フラクションを二次側の逆相 LC でそれぞれ分析したものでペプチドの分離能が大き
く向上している。
【出典/参考資料】
「82 高速液体クロマトグラフ 85 液体クロマトグラフ 質量分析計」、機器分析の事典 2005 年
11 月 25 日、社団法人日本分析化学会著、株式会社朝倉書店発行、250-251 頁、258-263 頁
「 プロテオーム解析用 二次元ミクロ HPLC システム」、島津製作所パンフレット、株式会社島津製
作所著、株式会社島津製作所発行、1-4 頁
「第Ⅱ部 測定法各論 9 液体クロマトグラフィー」 若手研究者のための機器分析ラボガイド、2006
年 3 月 1 日、澤田清著、株式会社講談社発行、200-209 頁
- 397 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-16
ハイフネーテッド分析装置
【技術内容】
GC、LC などで香気成分を分析する場合、ピークの分離が最も重要であるが、カラムの種類によって
分離モードが異なり、あるカラムではある成分が重なり、別のカラムでは他の成分が重なることが多
くある。これを解決するために、種類の異なる分離カラムを連結(ハイフネーテッド)させ高度な分
離を得ようというのがハイフネーテッド分析機器である。
次のような分離・検出のハイフネーテッド分析機器が開発されている。
「分離のハイフネーション」
1.GC-GC(二次元 GC)
GC と GC を接続した二次元 GC といわれる分析装置があり、単独の GC では充分な分離が得られない
ピークをさらに分離させることが主なアプリケーションである。また、二次カラムにキラルカラムを
装着すれば、キラル成分のエナンチオマー存在比を見ることができる。各種天然オイル中に含まれる
キラル成分のエナンチオマー存在比は、果実の種類や品種によって異なっており、この情報はより本
物に近い調合香料を作成する上で重要である。さらに、検出器にスニッフィングポート(嗅ぎ口)を
据えることで、単一のカラムを用いた GC 分析では他成分に埋もれて香気本体のマススペクトルが確認
しにくい低閾値の微量香気成分を分離確認することができる(図表 1)。これら微量香気寄与成分に関
する情報も素材開発や創香の上での重要な情報となる。
さらに、包括的二次元 GC も活発に行われ、二次側で検出された強度データを一次 GC の保持時間を
X 軸、二次 GC の保持時間を Y 軸としてクロマトグラムを三次元的に表現する。ローストコーヒー豆の
ヘッドスペース成分を分析する際に、通常の GC/MS 分析では 200 程度の成分が確認されたが、この手
法では 1000 にも及ぶ分離ピークが得られたという。
【図表 1】
出典:「高度な分析情報を得るために
No. 155
ハイフネーテッド分析機器で見る新たな世界」、高砂香料時報
2005 年、矢口善博著、高砂香料工業株式会社発行、17 頁
- 398 -
図4
2.LC-LC
原理的には、GC-GC と同様で、性質の異なる分離カラムを連結することで、高度な分離ができる。
LC は GC に比べてバルブを用いた流路の切り替えや溶出部をループコイルやラップカラムなどを用い
て溜めておくことができるので目的に応じた多くのシステム構築が容易である。
3.LC-GC
LC は GC と比較すると分離が十分ではないが、GC とは比較にならないほどの試料負荷量を持ち、揮
発成分のみならず、広い領域の化合物に対応できる。この両者を接続することで、高負荷量、広領域、
高分離といった両者の利点を併せ持った分析機器となる。LC 溶出部を GC に導入する際の溶離液の気
化が両者の接続の上で障害となるが、この解決のためにリテンションギャップを用いた溶離液と対象
物の分離や、PTV 法(Programmable Temperature Vaporization)などを用いた大量注入法がある。
「検出器のハイフネーション」
検出器のハイフネーションも行われている。検出器には、GC では、FID(水素炎イオン検出器)、TCD(熱
伝導度検出器)、AED(原子発光検出器)などがあり、HPLC では UV/Vis(示差屈折率検出器)が使用され
ている。検出器をハイフネーションさせるとは、クロマト機器に通常用いられる検出器と別の検出器
を接続させた機器を指し、分離された成分を複数の目でさまざまな角度から捉えることで、高度な情
報が得られる。
一例を挙げると、AED などは検出可能な元素の中からみたい元素を選択して検出することができる。
香気組成中では、含硫、含窒素成分はにおい閾値が極めて低いものが多く、微量であっても見逃せな
い成分であるが、AED を用いると含硫、含窒素成分のみを拾い出し検出することができる。注目する
成分と、それに合致した「選択的検出」の組み合わせは、非常に強力なパフォーマンスを期待できる。
1. LC-NMR
組み合わせとしては以前から想定されていたが、NMR の検出感度の低さ、LC の移動相に由来する巨
大なシグナル共存での微小シグナル観測の困難さで普及しなかった。溶媒消去技術、検出感度向上等
の技術向上により LC-NMR の実用機が発売され盛んに使用されるようになっている。さらに LC/MS と
LC/NMR を結合した LC/MS/NMR システムも報告され薬物代謝研究等に広く利用されつつある。
LC/MS/NMR システムでは、LC で分離した溶離液をスプリッターを用いて分割し、その一部(約 5%)
を MS に、残りを NMR に導入して分子量などの構造情報も同時に得ることができる。LC/MS ではハロゲ
ン、硫黄などの“NMR-silent”な官能基を含んでいると情報が得られないが、本システムでは可能と
なる。
2.MS-MS
2 台の MS を接続した装置をタンデム質量分析計と呼び、また 2 台分に相当する MS を 1 台に収めた
ハイブリッド質量分析計も登場してきている。
測定は、
1)イオン源で生成したイオンの中で特定のイオンを取り出す。
2)そこにエネルギーをかけてイオンを衝突誘起解離させる。
3)新たに生成するイオンのマススペクトルを取得して解析する。
の 3 段階からなる。
これらの分析計は、高マトリックス中の目的化合物の選択的検出や合成副生成物の構造解析などに
適用される。
- 399 -
【出典/参考資料】
「高度な分析情報を得るために
155
ハイフネーテッド分析機器で見る新たな世界」
、高砂香料時報
No.
2005 年、矢口善博著、高砂香料工業株式会社発行、15-21 頁
「LC/NMR」ぶんせき
No. 11
1997 年、岡本昌彦、木村雅晴、高橋謙一、滝本義之著、社団法人日本
分析化学会発行、897-904 頁
「High-performance Liquid Chromatography/NMR Spectrometry/Mass Spectrometry: Further Advances
in Hyphenated Technology」Journal of Mass Spectrometry
Vol. 32 1997 年、R.M.Holt, M.J.Newman,
F.S.Pullen, D.S.Richards, A.G.Swanson 著、J.Wiley & Sons Inc.発行、64-70 頁
- 400 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-17
電子鼻
【技術内容】
においの測定方法は人間による官能検査、分析機器を利用した GC-MS またはそれらの組み合わせな
どがあるが、官能検査は個人差、体調差などがあり機器分析は手間と時間を要する。これらの問題を
解決するために簡便なセンサーの活用が望まれ、近年の技術開発の成果として電子鼻(electronic
nose)として利用されている。
電子鼻の構成は、生体の嗅覚では特定のにおいに応答するという嗅細胞は少なく、緩やかな選択性
を持った多数のにおいに応答する細胞であることを考慮に入れて成り立っており、特性の異なる複数
のセンサー(センサーアレイ)の出力パターンを多変量解析、ニューラルネットワークなどを用いて
パターン認識することによりにおいの識別を行う事ができるようになっている。
センサー素子はにおい物質に反応して電流、電圧、抵抗変化などのアナログ値を出力するものと水
晶振動子ガスセンサー、弾性表面波ガスセンサーのようにデジタル出力で周波数変化に情報が含まれ
るセンサーなどがある。
水晶振動子ガスセンサーの例では、50~200μm 程度の薄い水晶板の上下に銀、金などの金属薄膜電
極を形成した水晶振動子を利用する。この振動子を増幅器の入出力に正のフィードバックをかけるよ
うに接続し発振回路を構成すると、振動子の共振周波数近傍で発振する。この水晶発振子に感応膜を
塗布すると、振動子はセンサーとして動作する。感応膜に、におい分子が吸着すれと膜質量が増加し、
これに比例して発振周波数が減少する。この周波数変化がセンサー出力となる。感応膜としては GC
の固定相材料、セルロース、脂質膜、導電性高分子などが用いられ極性などの違いによりガス応答に
違いを生じる。図表 1 に、においセンサーの原理を示す。
【図表 1】
出典:季刊
化学総説
味とにおいの分子認識
No. 40
1999 年 2 月、社団法人日本化学会著、学会
出版センター発行、216 頁 図 1 においセンサーの原理
センサーアレイからの応答パターンを認識する手法としては、多変量解析の応用、ニューラルネッ
トワークの応用などがある。図表 2 に層状構造のニューラルネットワークを用いセンサーアレイのシ
グナルを処理して特定のにおいとして認識される状況を示す。
【図表 2】
- 401 -
出典:季刊
化学総説
味とにおいの分子認識
No. 40
1999 年 2 月、社団法人日本化学会著、学会
出版センター発行、217 頁 図 4 ニューラルネットワークでセンサーアレイ応答パターンが認識され
る様子。
【図表 2 の説明】におい 3 に対応するセンサーアレイからの応答パターンがネットワークに入力され、
対応する出力層ニューロンだけが応答するよう学習が行われた結果におい 3 が識別される状況を示す。
5 種類のトルコ産ヘーゼルナッツの香気成分の分析に電子鼻を利用し出力シグナルの判別分析によ
り、種類ごとの特徴を示す分類ができた事例を図表 3 に示す。
【図表 3】
出典:「STUDY OF ESSENTIAL OIL COMPONENTS IN DIFFERENT ORIGANUM SPECIES BY GC AND SENSORY
ANALYSIS」、Acta Alimentaria
Vol. 32 No. 2 2003 年、NOVAK I、ZAMBORI-NEMETH E、HORVATH H、
SEREGEL Y Z、KAFFKA K 著、Akademiai Kiado 発行、148 頁
Fig.3
【図表 3 の説明】オレガノ(スパイスの一種)の原料となる植物種 8 種(○、●、△など)の差を識
別するため電子鼻を用い、データの主成分分析により二つの主成分の平面に投影することにより識別
することができた。
【出典/参考資料】
「Volatiles and Flavor of Five Turkish Hazelnut Varieties as Evaluated by Descriptive Sensory
Analysis, Electronic Nose, and Dynamic Headspace Analysis/Gas Chromatography-Mass
Spectrometry」、Journal of Food Science
Vol. 69
No. 3
2004 年、ALASALVAR C、ODABASI A Z、
DEMIR N、BALABAN M O、SHAHIDI F、CADWALLADER K R 著、Institute of Food Technologists 発行、
SNQ99-SNQ106 頁
「STUDY OF ESSENTIAL OIL COMPONENTS IN DIFFERENT ORIGANUM SPECIES BY GC AND SENSORY ANALYSIS」、
Acta Alimentaria Vol. 32
No. 2 2003 年、NOVAK I、ZAMBORI-NEMETH E、HORVATH H、SEREGEL Y Z、
KAFFKA K 著、Akademiai Kiado 発行、141-150 頁
季刊
化学総説
味とにおいの分子認識
No. 40
1999 年 2 月、社団法人日本化学会著、学会出版セ
ンター発行、215-223 頁
- 402 -
【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-18
水晶振動子匂いセンサー
【技術内容】
有力な匂いセンサーの一つに、水晶振動子匂いセンサーがある。それは図表 1 の構造を持つ水晶振
動子ガスセンサーである。
【図表 1】
出典:最新
香料の事典
2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社
朝倉書店発行、578 頁 図 9.2
(a)水晶振動子ガスセンサー
【図表 1 の説明】水晶振動子は水晶板の上下に銀もしくは金の電極をつけて圧電現象を利用した素子
である。振動子の電極上に匂い分子を吸着する感応膜を塗布する。匂い分子が吸着し電極表面に質量
変化がおきると発振周波数が変化しセンサー応答となる。
図表 2 にアミルアルコールに対するセンサ応答例を示す。
【図表 2】
出典:最新
香料の事典
2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社
朝倉書店発行、578 頁 図 9.2 水晶振動子ガスセンサー (b)アミルアルコールに対するセンサ応答
例
- 403 -
【図表 2 の説明】アミルアルコールを 30 秒間、流量 120ml/min で供給したときのセンサー応答例で
ある。乾燥空気から匂い雰囲気に変えると膜に匂い分子が吸着するために発振周波数が減少し、乾燥
空気に戻すと匂い分子が脱着して元にもどり、何度でも繰り返し測定することができる。
高周波スパッタ法により作製したプラズマ有機薄膜は、大気ガス分子との高い親和性を持つ特性を
利用して、この薄膜を感応膜とした水晶振動子センサーが高感度で安定したガス状物質検出素子とし
て機能することが報告され、プラズマ有機薄膜水晶振動子センサーの揮発性成分の吸脱着に基づく応
答挙動が調べられた。
森林系の香り 6 種を人嗅覚の閾値レベルで発生させたときの水晶振動子センサー応答曲線を図表3
に示した。
【図表 3】
a) Rose wood, b) Sandal wood, c)Cedar wood, d) Star anise, e) Eucalyptus, f) Pine(PE(photo)-film
and D-Phe-film coated QCRs were used)
出典:「高感度水晶振動子式センサのニオイ識別と室内大気質モニタリング適用への基礎検討」、環境
化学
Vol. 11
No. 2
2001 年、瀬山倫子、杉本岩雄、宮城朋子著、日本環境化学会発行、238 頁
Fig.2
Frequency responces to odors generated from essential oils at low concentration as a sensing
threshold of human olfactory system
【図表 3 の説明】森林系の香り 6 種を人嗅覚の閾値レベルで発生させた時の QCR センサ応答曲線を示
している。この結果が示すように、プラズマ有機薄膜水晶振動子センサーは単一化学種のみでなく、
多様な物質の混合体である香りに対して応答できる。これは、プラズマ中で作製された有機薄膜が、
原子密度が高く、不安定構造を含んで、自身に運動性を備えているため、ガス分子を自身に溶解させ
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て、溶媒和しながら平衡状態へと緩和するのにエネルギー的に有利な状況で存在していることに起因
する。
【出典/参考資料】
最新 香料の事典 2000 年 5 月 10 日、荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭著、株式会社朝倉書
店発行、576-581 頁
「高感度水晶振動子式センサのニオイ識別と室内大気質モニタリング適用への基礎検討」、環境化学
Vol. 11
No. 2
2001 年、瀬山倫子、杉本岩雄、宮城朋子著、日本環境化学会発行、233-243 頁
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【技術分類】2-3-3
素材/物性・分析/香気成分分析
【技術名称】2-3-3-19
RAS法
【技術内容】
人が感じる香りは 2 つに分けることができる。1つは直接鼻から感じる香りで、これを「Orthonasal
Aroma」という。もう1つは食べ物を口にした際に喉から鼻に抜けて香る匂いで、これを「Retronasal
Aroma」という。このような表現はワインの官能評価用語としてしばしば用いられる。ワインの風味は、
通常グラスで感じる Orthonasal Aroma と、口に含んで感じる Retronasal Aroma の両面で評価される。
これは、ワインのように揮発性の高いアルコールを多く含む食品は、口に入れた際に体温の影響によ
りフレーバーリリースが変化し、直接鼻で感じる香りと比較した場合にその差が非常に顕著であるた
め、このような評価方法が必要となる。また「Retronasal Aroma」は、ワインだけでなく、飲料市場
でも重要視されている。容器が、缶、ペットボトル、チルドカップ等と多様化し、いずれもグラス等
に移さず容器から直接飲む機会が多い。そして、香りは鼻で直接感じるより、口内で感じる場合が圧
倒的に高いと考えられる。このような食習慣の変化は、今後の香料開発においても「Retronasal Aroma」
への着目が必要であることが示唆される。「Retronasal Aroma」を機器的に再現する装置が開発され、
飲食時におけるフレーバーリリースを解析(Retronasal Aroma Simulation)することで、従来とは異な
るアプローチでの香料開発が可能になった。Retronasal Aroma Simulator (RAS)は 1995 年にコーネル
大学の Acree 教授らによって開発された。
RAS の測定は、38℃のジャケットで保温された装置の中に試料をいれ攪拌混合して香気成分を SPME
法で捕集して GC/MS、GC/O で分析して行う。RAS で処理した香気成分と実際にそれらを飲食した際に
鼻から出てくる香気成分の組成を比較確認し高い相関性を確認している。
RAS を用いた香料開発の例について述べる。
砂糖、果糖といった従来からの甘味料を用いた場合と、スクラロース等の高度甘味料を用いた場合
とでは、同じ甘味度であっても香味が異なって感じられる。この点に着目して、砂糖とスクラロース
をそれぞれ同じ甘味度になるように調整し、同じ香料を同濃度添加したグレープフルーツ果汁入り飲
料を試料として、RAS を用いて分析した。
その結果、通常の GC/MS によるそれぞれの RAS データ比較では大きな成分差は確認できなかった。
続いて GC/O による解析を行い、GC/O(Charm Analysis)で得られた香気成分を 7 つのカテゴリーに分
類した(green, floral, sweet, fatty, woody, fruity, aldehyde)。それぞれのカテゴリーにおける
各成分の匂い強度(Charm Value)を総和し、その数値を基に作成したグラフを図表 1 に示す。
- 406 -
【図表 1】
出典:
「Technical Reports RAS を応用したグレープフルーツ香料」、Foods & Food Ingredients Journal
of Japan Vol. 208
No. 7
2003 年、FFI ジャーナル編集委員会発行、588 頁 図 1 甘味料の違い
による香調の比較
【図表 1 の説明】甘味料の違いによる香調の比較を RAS 法および GC/O により分析した結果である。
図表 1 のグラフから明らかなように、砂糖を用いた飲料はスクラロース使用時に比べて、特に sweet,
fatty, green の 3 つのカテゴリーにおいて、匂いが強く感じられた。即ち、この 3 つのカテゴリーに
属する成分の差が、それぞれの飲料系での香りだちの違いに最も大きな影響を与えていると考えられ
る。
次に、この RAS を用いていちごを食べている瞬間のフレーバーリリースを再現するいちご香料の開
発の事例がある。図表 2、3 に抽出法による香気成分の分析結果を示す。
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【図表 2】
出典:「Technical Reports RAS を応用したストロベリー香料」、Foods & Food Ingredients Journal
of Japan Vol. 209
No. 2
2004 年、FFI ジャーナル編集委員会発行、172 頁 図 1 抽出方法の比
較
- 408 -
【図表 3】
出典:「Technical Reports RAS を応用したストロベリー香料」、Foods & Food Ingredients Journal
of Japan Vol. 209
No. 2
2004 年、FFI ジャーナル編集委員会発行、173 頁 図 2 チャームによ
る抽出方法の比較
【図表 2、3 の説明】図表 2 に一般的な方法である有機溶媒抽出を用いた香気成分と、RAS により捕集
した香気成分の GC/MS 分析比較を行った結果を示す。また、GC/O(Charm Analysis)による分析比較を
図表 3 に示す。
その結果、溶媒抽出では主にヘキサン酸等の脂肪酸類や、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)フラノ
ンなどの“sweet, fatty”な高沸点の香気成分が数多く得られたのに対し、RAS では主に酪酸メチル、
イソ吉草酸メチル等のエステル類や、リナロールなどの“fruity, floral”な低沸点の香気成分が数
多く見受けられた。以上の結果をもとに、一般的な溶媒抽出で得られたいちご全体の香気成分に、さ
らに RAS により捕集された低沸点の香気成分を加えることで、いちごを食べた時に感じられるフレー
バーリリースを再現した香料が開発された。
【出典/参考資料】
「香りの分析技術と新たなサンプリング方法」
、Foods & Food Ingredients Journal of Japan
No. 2
Vol. 211
2006 年、大西正展著、FFI ジャーナル編集委員会発行、161-166 頁
「Technical Reports RAS を応用したグレープフルーツ香料」
、Foods & Food Ingredients Journal of
Japan
Vol. 208 No. 7 2003 年、FFI ジャーナル編集委員会発行、587-588 頁
「Technical Reports RAS を応用したストロベリー香料」、Foods & Food Ingredients Journal of Japan
Vol. 209 No. 2 2004 年、FFI ジャーナル編集委員会発行、172-174 頁
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