...

垂水市人権教育・啓発基本計画(PDF:1149KB)

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

垂水市人権教育・啓発基本計画(PDF:1149KB)
垂
水
市
人権教育・啓発基本計画
平成 26 年 6 月
垂
水
市
目
第1章
1
2
基本計画の策定
基本計画策定の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
基本計画策定の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1) 国際的な動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 国・県の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 本市の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第2章
1
2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1
1
1
2
2
基本計画の目標・性格
基本計画の目標
基本計画の性格
第3章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
3
人権問題の課題と施策
高齢者に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
子どもに関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
障がいのある人に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
女性に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
同和問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
外国人に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
HIV感染者、ハンセン病患者等に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
犯罪被害者等に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
高度情報化社会(インターネット等)に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
北朝鮮当局による拉致に関する問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
その他の人権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
第4章
1
次
人権教育・啓発の推進
あらゆる場における人権教育・啓発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
(1) 学校等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
(2) 家庭 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(3) 地域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(4) 職域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2 特定職業従事者における人権教育・啓発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(1) 市職員 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(2) 教職員 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(3) 医療関係者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(4) 福祉関係者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(5) マスメディア関係者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
3 人権教育・啓発の効果的な推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(1) 多様な学習機会の提供と学習内容の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(2) 連携の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
(3) 人材育成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
(4) マスメディアの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
(5) インターネットの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
(6) 相談体制の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
第5章
1
2
3
基本計画の推進
計画の推進体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
市民への啓発活動等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
国、県、関係機関との連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
○ 用語解説
○ 資
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
料
・日本国憲法(抄) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・世界人権宣言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・人権教育及び人権啓発の推進に関する法律 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23
27
32
第1章
1
基本計画の策定
基本計画策定の趣旨
21 世紀は「人権の世紀」といわれるように、人権尊重の意識が高まっています。
「人権」とは、人が人らしく幸せに生きていくための権利であり、誰もが生まれながら
に持っている固有の権利です。すべての人々が人権を享有しながら、平和で豊かな社会の
実現に向けて、人権が人類相互間において共に尊重されることが必要です。
そのためには、私たち一人ひとりが、人権の意義や重要性について理解を深め、また、
人権に関する教育及び啓発活動に積極的に取り組んでいかなければなりません。
国は、人権教育と人権啓発の理念の普及と国民の理解を深めることを目的として、平成
14 年(2002 年)3 月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき「人権教育・
啓発に関する基本計画」を、また、鹿児島県も、平成 16 年(2004 年)12 月に「鹿児島県
人権教育・啓発基本計画(平成 23 年(2011 年)9 月一部改正)」が策定されました。
私たちのまわりには、今なお、女性、子ども、高齢者、障がいのある人、同和問題、外
国人などをめぐる人権問題のほか、近年の国際化、情報化、高齢化等の社会情勢の変化や
価値観の多様化等による新たな人権問題、犯罪被害者等の人権問題やインターネットによ
る人権問題など様々な人権問題が存在しています。
このことは、人権尊重の理念やこれを実践する行動が、まだ十分に定着していないこと
などが考えられ、国、地方公共団体には、人権教育・啓発に関する一層の取り組みが求め
られているところです。
人権問題をめぐる状況は、今後もますます複雑化・多様化することが予想され、住民一
人ひとりの努力によって、人権が尊重される社会を作っていくことが重要であることから、
人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な取り組みを推進するため「垂水市人権
教育・啓発基本計画」(以下、「本計画」という。)を策定します。
2
基本計画策定の背景
(1) 国際的な動向
20 世紀に人類は二度にわたる悲惨な世界大戦を経験し、その反省から昭和 23 年
(1948 年)、第 3 回国際連合(国連)総会において、
「世界人権宣言」が採択されまし
た。
この宣言では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳
と権利とについて平等である。」とうたい、今日の基本的人権の考え方の基礎となり
ました。その後もさまざまな人権に関する条約等が採択され、世界的な取り組みが
行われました。しかしながら、世界各地では、未だに民族紛争や宗教対立などによ
り、人権を脅かす問題が起きています。
こうした状況は、国際社会に人権機運を高め、平成 6 年(1994 年)の国連総会にお
いて、平成 7 年(1995 年)から平成 16 年(2004 年)までの 10 年間を「人権教育のため
の国連 10 年」とすることが決議され、世界各国における人権教育の普及などの取り
組みとして「人権教育のための国連 10 年行動計画」が採択され、平成 16 年(2004
年)12 月には、その後継計画として「人権教育のための世界計画」が決議されていま
す。
-1-
(2) 国・県の動向
我が国では、「日本国憲法」のもとで、「国際人権規約」をはじめ重要な人権関係諸
条約に加入し、人権が尊重される社会の形成に向けた取り組みを進めてきました。
我が国固有の同和問題への取り組みは、戦後本格的に行われるようになり、1965 年(昭
和 40 年)の「同和対策審議会」の答申を受けて、1969 年(昭和 44 年)に「同和対策事業
特別措置法」が制定されました。その後も生活環境整備、就労対策や教育の充実を図
るための「地域改善対策特別措置法」や「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特
別措置に関する法律」が制定され、さまざまな施策が実施されました。また、人権確
立に向けた取り組みについて、平成 7 年(1995 年)には、内閣総理大臣を本部長とする
「人権教育のための国連 10 年推進本部」が設置され、平成 9 年(1997 年)「人権教育の
ための国連 10 年に関する国内行動計画」を策定しました。また、平成 12 年(2000 年)
には、人権教育・啓発のより一層の推進を図るための「人権教育及び人権啓発の推進
に関する法律」が施行され、この法律に基づいて、平成 14 年(2002 年)に「人権教育・
啓発に関する基本計画」を策定し、国民が人権尊重の理念に対する理解を深め、これ
を体得するための取り組みが実施されています。
鹿児島県においては、平成 10 年(1998 年)に「人権宣言に関する決議」を採択、翌
11 年(1999 年)に「人権教育のための国連 10 年」を推進する鹿児島県行動計画を策定
し、人権に対する県民の意識の高揚を図りました。平成 16 年(2004 年)には、
「人権教
育及び人権啓発の推進に係る法律」に定める地方公共団体の人権教育・啓発の取組の
規定及び同和問題や高齢者、子どもに関する人権問題の存在等を踏まえ「人権教育の
ための国連 10 年」鹿児島県行動計画の内容を充実、発展させた「鹿児島県人権教育・
啓発基本計画」を策定するとともに、平成 23 年(2011 年)には、
「北朝鮮当局による拉
致問題等」を追加する一部変更が行われ、人権教育・啓発施策の一層の総合的かつ効
果的な推進が図られています。
(3)
本市の状況
本市においては、教育委員会や人権擁護委員と連携を図りながら、人権教育・啓発
を推進してきました。
人権教育・啓発の推進にあたっては、国や県の行動計画を参考にしながら、市民一
人ひとりが同和問題をはじめとして、女性、子ども、高齢者、障がいのある人、外国
人等の人権問題を正しく理解していただくための取り組みを実施し、人権尊重社会の
実現に努めています。
-2-
第2章
1
基本計画の目標・性格
基本計画の目標
人権とは、すべての人が生まれながらに持っている人間らしく生きていくための必要
な誰からも侵されることのない基本的権利です。
市民一人ひとりの人権が尊重され、安心して暮らしていける垂水市を実現するため、
人権尊重の精神が生まれ、日常生活の中に人権が共存する社会を目指した人権教育・啓
発を推進していくこととしています。
ついては、すべての人々が人権を享有する社会を実現するために、本計画では「自分
の人権のみならず他人の人権について正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚
して、人権相互に尊重し合う人権共存の社会」を築くことを目標とします。
2
基本計画の性格
「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」には、地方公共団体が行う人権教育・
啓発の基本理念(法第 3 条)や人権教育・啓発に関する責務の規定が定められています。
このことを踏まえ、施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものです。
策定にあたっては、国の「人権教育・啓発に関する基本計画」や「鹿児島県人権教育・
啓発基本計画」を参考にし、また、本市の各種計画等と整合性を図りながら、人権教育・
啓発に関する基本的方向を示していきます。
第3章
1
人権問題の課題と施策
高齢者に関する問題
【現状と課題】
我が国は、平均寿命の伸びや出生率低下により、世界に類を見ない速さで高齢化が
進んでいます。このような中、高齢者人口の増加や認知症の増加、家族形態の変化に
より、高齢者のみの世帯が増加しており、地域社会からの孤立や介護トラブルなどの
問題が起きています。特に、高齢者の人権に係る問題としては、高齢者に対する身体
的・精神的な虐待や財産権の侵害のほか、社会参加の困難性などが指摘されています。
国においては、平成 7 年(1995 年)12 月に「高齢社会対策基本法」を施行し、こ
れに基づく「高齢社会対策大綱」を基本として、高齢社会に向けた施策を推進してき
ています。介護を社会全体で支えていくため、平成 12 年(2000 年)に「介護保険制
度」が実施され、高齢者を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
本市においては、「第 5 期垂水市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 24
~26 年度)」を平成 24 年 3 月に策定いたしました。市民一人ひとりが生きがいや夢を
持ち住み慣れた地域で安心して暮らせる垂水をめざして豊かな経験と知識をもつ高齢
者が敬愛されるとともに、自らの意思に基づき尊厳をもって暮らせる社会の実現を目
指し、今後とも、高齢者の人権に関する動向を踏まえながら計画的に進めてまいりま
す。
-3-
【具体的施策の方向性】
① 社会参加と生きがいづくりの推進
高齢者が健康で豊かに過ごすためには、保健・医療・福祉サービスなどの社会サー
ビスの配慮はもちろんのこと、人間としての尊厳が重んじられ、一人ひとりの人生観
や死生観、生き方、信条が大切にされる差別のない明るい社会を作ることが必要です。
また、高齢者の就労や文化、スポーツ活動及びボランティア活動等は、介護予防や生
きがいづくりの観点からも意義があり、社会の重要な一員として、その個性や能力を
十分に発揮しながら主体的に社会活動に参画し、生きがいをもって生活し活動できる
環境づくりが必要です。
このため、老人クラブ活動やボランティア活動の推進、世代間(高齢者・保護者・
教師・児童・生徒等)交流の推進、市内外との地域間交流また、高齢者の働く場や機
会の創出としてシルバー人材センター等の活用及び支援を行います。
② 自立支援の促進
持続可能な社会保障制度をめざした県の地域保健医療連携計画や介護保険制度との
整合を図りながら、在宅サービスの拡充や地域包括ケアの拠点の設置、地域包括支援
センター、社会福祉協議会、各種福祉施設、民生委員・児童委員、振興会等との連携
を深め、高齢者の自立支援に努めます。
③ 高齢者にやさしい環境づくりの推進
安全で快適な生活環境づくりのため、高齢者の自立や快適性に配慮したバリアフリ
ー住宅への改造支援、高齢者向け住宅の整備促進など、高齢者の自立に配慮した住環
境の整備を推進します。
また、公共施設などのバリアフリー化を促進するとともに、高齢者が自由に外出や
社会参加ができ、生活圏・行動圏が広げられるよう生活関連施設のユニバーサルデザ
イン化や自動車中心社会において移動を制約されやすい立場にある高齢者等に配慮し
た交通弱者対策を積極的に推進します。
④ 高齢者への支援・サービス体制の充実
高齢者や家族の状況に配慮し、保健・福祉・医療の連携による「認知症」や「寝た
きり」についての予防・相談・治療・介護等の支援対策を総合的に推進します。
地域の人々の理解が必要とされる高齢者に対しても理解と認識を深め、地域社会の
一員として生き生きと暮らすことができるように、教育・啓発活動を進めてまいりま
す。
更に、災害発生時や災害が発生する恐れがある場合に、高齢者等の災害弱者の的確
な避難所誘導を地域一体となって取り組む体制を図っていきます。
⑤ 高齢者の権利擁護の推進
認知症に対する理解を深め、お互いが支えあうまちづくりを目指す地域包括ケアシ
ステムの構築に向け、子供の頃からの教育や文化を大切にする社会を進めてまいりま
す。認知症や介護の必要な方及びその家族の財産管理、遺産相続をめぐるトラブルな
どによって、高齢者等の虐待等の人権侵害が発生しています。
介護や財産に関するトラブルから認知症の高齢者を保護支援するため、「成年後見
制度」や福祉サービス利用援助のための「日常生活自立支援事業」の制度について市
民への啓発を行います。
-4-
また、高齢者の尊厳を保持し権利利益の擁護を目的に、平成 18 年(2006 年)4 月
に施行された「高齢者の虐待防止・高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に
基づき、関係団体等と連携し高齢者の虐待防止に努めます。
⑥
生涯学習の充実
高齢者が生きがいと健康づくり、趣味や教養などの学習活動・社会奉仕などの活動
を気軽に、しかも積極的に参加できるよう高齢者のニーズや経験に応じた講座等の提
供と支援体制の確立に関係機関と連携して努めます。
2
子どもに関する問題
【現状と課題】
近年の少子化や核家族の進展やライフスタイルの多様化、あるいは都市化の進行な
ど、生活環境は大きな変化を遂げており、子どもたちの生活・教育環境については大
きく変化していると言えます。
このような流れの中で、様々な事由に起因する子どもの社会性の衰退、保護者の過
保護等から来る自立の遅れや少年の非行問題によって、社会的な問題に発展するなど、
憂慮すべきケースが表面化しています。また、子どもに対する虐待は深刻化の傾向に
あり、身体的虐待だけでなく心理的虐待やネグレクトなどその態様は様々な形で起こ
っています。親が虐待をしているという認識がないケースも多く、問題は顕在化しに
くい状況です。
携帯電話やインターネット等の普及による情報の氾濫などに伴い、子どもを取り巻
く環境は大きく変化しています。特に、携帯電話を媒体としたネットいじめや無料ゲ
ームサイトでのプロフィールの公開などによる個人情報の流出、出会い系サイトなど
の有害サイトを通じて事件や犯罪に巻き込まれることも多くなっています。
このようなインターネット上での人権侵害による被害の回復を容易にするため、平
成 14 年 5 月には「プロバイダー責任制限法」が施行され、発信者情報の開示要求や
被害者からの削除要請が認められました。さらに、平成 21 年 4 月には「青少年イン
ターネット環境整備法」が施行され、青少年を有害情報から守るために、携帯電話会
社等にフィルタリング(閲覧制限)サービス等の提供が義務付けられています。
しかしながら、ネット社会の急激な進展が、精神的に未熟な子どもたちに及ぼす影
響について、大人が十分理解していないことも大きな問題であり、子どもに不健全な
影響を与えると思われる図書やビデオ等を容易に手に入れることができる環境もあり
ます。
このため、家庭、学校、地域の関係機関が連携を深め、有害環境の浄化活動や飲酒、
喫煙の防止運動など子どもに見える活動への取り組みが求められています。
子どもの人権にかかわる問題は、現在、社会が抱える環境の変化によって深刻さを
増してきており、保育所、幼稚園、学校、家庭、地域社会が十分に連携を図りつつ、
子どもを支えていくことが重要となっています。また、次代を担う子どもたちには、
社会性や自立性、豊かな人間性、人権を尊重する心を培っていくことが必要であり、
今後も人権教育を推進していくことが必要です。
-5-
【具体的施策の方向性】
① 放課後、児童クラブや地域子育て支援センターとの連携など、地域住民自らが行う
子育て支援事業を推進し、子どもの成長を地域全体で見守る体制や市民意識の醸成を
図ります。
② 児童福祉法及び児童虐待防止法の趣旨に基づき、学校、児童福祉施設、行政などが
十分に連携し、児童虐待の早期発見、再発防止等に努めます。
③ 子どものインターネットの利用に伴う問題については、学校において、児童生徒に
対し、情報社会における正しい知識や判断と、犯罪に巻き込まれないための危機回避
の方法やセキュリティの知識、健康への意識を習得させるための情報モラル教育の充
実に努めます。
さらに、周囲の大人も子どもの携帯電話やインターネット利用の実態からフィルタ
リング機能を設定するなどによる危機回避、トラブル対処に関する知識を持つ必要が
あることから、メディアの安全な使い方について指導し、正しい知識を身に付けるた
めの啓発の推進に努めるなど、家庭、学校、地域の関係機関が連携して取り組みます。
3
障がいのある人に関する問題
【現状と課題】
障がいのある人を取り巻く社会環境としては、障がいの発生原因や症状への理解不
足からくる障がいのある人への偏見や差別意識、物理的・制度的なバリアフリーの未
整備などによって、障がいのある人が不利益を被ったり、各種行事への参加が消極的
になったりすることがあり、障がいのある人の自立や社会参加を妨げる要因となって
います。
「ノーマライゼーション」の理念のもとに、障がいの有無にかかわらず、すべての
人が相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の実現を目指して、障がいのある
人の社会参加、参画に向けた施策の一層の推進が求められています。
【具体的施策の方向性】
① 障がいのある人の人権についての教育・啓発の推進
市民の障がいのある人に対する偏見や差別意識の解消及び共生社会の理念の普及を図
るため、「障害者週間」などあらゆる機会を通じて、広報、啓発活動に努めます。
また、障がいのある人の自立を目指し、特別支援学校や特別支援学級(注)におけ
る教育の充実を図るとともに、発達障がいのある児童生徒等への支援や交流教育の促
進など、教育活動全体を通じて障がいのある人に対する理解を深める教育を推進しま
す。
(注)特別支援学校及び特別支援学級
平成 18 年(2006 年)6 月に学校教育法の一部改正が行われ、平成 19 年(2007
年)度以降、盲・聾・養護学校を「特別支援学校」とし、特殊学級を「特別支援学
級」とすることとされた。
-6-
② 社会のバリアフリー化の促進
障がいのある人等が自分の意思で自由に行動し社会に参加できるバリアフリー化
の促進など、福祉のまちづくりの考え方の普及・啓発に努めます。
③ 社会参加の促進
障がいの状況に対応した情報やコミュニケーション手段の確保に努めるとともに、
障がいのある人のスポーツ・レクリエーション、文化活動等への参加を促し、地域活
動等への積極的な参加の促進に努めます。
④ 雇用、就業の促進
障がいのある人の自立や社会参加の促進に向けて、障がいのある人の雇用率制度等
の各種施策の周知に努めます。
⑤ 障がいのある人の差別の禁止と虐待防止の徹底
「障害者差別禁止法」や「障害者虐待防止法」に基づき、関係機関と連携を図り、障
がいのある人の差別や虐待を防ぐため啓発活動を強化します。
⑥ 障がいのある人の人権問題
障がいのある人の人権問題の解決を図るため、人権相談に積極的に取り組むとともに、
各関係機関と連携の上、障がいのある人が利用しやすい人権相談体制の充実に努めます。
4
女性に関する問題
【現状と課題】
男女平等の理念は、日本国憲法に明記されており、法制度においても男女平等の原
則が確立されています。近年、経済の発展や国際化、高学歴化の進展などに伴い女性
を取り巻く環境が大きく変化し、女性自身の考え方、生き方や暮らし方なども大きく
急速に変わりつつあります。
しかしながら、性別による固定的な役割分担意識や社会制度、習慣が見受けられ、
男女の自由な活動や生き方の選択を妨げる要因になっています。最近では、ドメステ
ィック・バイオレンスなど人権を無視した新たな社会問題も発生しています。
このような課題を解決するには、男女が互いに人権を尊重し、社会の対等な構成員
として、あらゆる分野においてそれぞれの個性と能力を十分に発揮することができる
ようにするとともに、男女が共に子育てなどの家庭生活における活動に積極的に参画
し、充実した家庭を築く必要があります。
【具体的施策の方向性】
① 男女共同参画に関する教育及び学習機会の充実
能力・個性を育てる家庭教育の推進、男女共同参画意識を高める学校教育・幼児教
育の推進及び学習機会の提供を図ります。
② あらゆる分野への男女共同参画社会の実現
ア 政策・方針決定の場への女性の参画促進と支援
審議会・役職等への女性の参画促進及び女性の人材育成の情報の提供を図ります。
イ 家庭生活・地域社会での男女共同参画の推進
家庭での家事、育児、介護等における男女それぞれの役割分担による協力推進及
び地域活動における役割や能力に応じた男女共同参画の推進を図ります。
-7-
ウ
就業を支える労働環境の整備
雇用における男女平等の促進、多様な就業形態に応じた労働環境の改善及び働き
続けるための支援を図ります。
エ 農林水産業及び商工業等の自営業における男女共同参画の確立
女性の労働に対する適正評価及び女性の経済的地位と能力の向上を図ります。
③ 健康で安心して暮らせる環境づくり
ア 生涯を通じた健康支援
母性保護、母子保健の充実、健康づくりの支援及び男女間におけるあらゆる精神
的・肉体的暴力の防止を図ります。
イ 豊かな人生を送るための福祉の充実
子育て支援の充実、介護のための社会的支援の充実、高齢者・障がいのある人の
生活安定と自立支援及びひとり親家庭の生活安定と自立支援を図ります。
5
同和問題
【現状と課題】
同和問題は、我が国固有の問題で歴史的な背景の中で作られた身分差別です。同和
地区や被差別部落と呼ばれる特定の地区出身者であることやそこに住んでいることを
理由に、様々な差別や偏見を受けるなどの重大な問題であり、日本国憲法に保障され
た基本的人権にかかわる問題です。
同和問題に関する差別意識の解消に向けた施策は、これまでの啓発活動の中で積み
上げられてきた成果等を踏まえ、同和問題を重要な人権問題の一つとして積極的に推
進していかなければなりません。
特定の地区出身者であることで、結婚などに際しての差別、就職など企業活動の中
での差別、インターネットを通じた差別事象なども生じています。同和問題の解決の
ためには、あらゆる機会で同和問題を正しく理解するための学習の場が必要です。
このようなことから、今後も、学校教育や生涯学習の場での教育や研修を通し、同
和問題に対する正しい理解と認識が得られるよう、人権教育・啓発の取組を一層進め
る必要があります。
【具体的施策の方向性】
① 同和問題を正しく理解するための啓発活動の推進
「人権同和問題啓発強調月間(8 月 1 日から 8 月 31 日まで)」や「人権週間(12 月
4 日から 12 月 10 日まで)」を中心に、広く市民に周知するために広報誌や講演会など
の学習会を通じた啓発活動を推進します。
また、市職員や関係団体を対象とした人権問題に対する研修会を開催し、人権・同和
問題を正しく理解できる人材の育成を図ります。
② 学校教育における人権・同和教育の推進
学校や地域の実情を踏まえ、児童生徒の発達段階などに配慮しながら、すべての教
育活動を通じて、学校教育における効果的な人権・同和教育を進めます。また、計画
的な職員の研修を実施し、児童生徒への指導力の向上に努めます。さらに、家庭、学
校、地域が連携して子どもを育むことで、人権尊重の意識を家庭や地域に浸透するよ
-8-
うに努めます。
③ 生涯学習における人権・同和教育の推進
人権・同和問題に対する正しい理解と認識を深めるために、人権教育関係団体と連
携を密にし、社会教育関係団体を対象に人権・同和問題に対する研修会を開催します。
また、人権・同和問題についての学習を各種講座や学級に計画的に位置付けるよう働
きかけるとともに、ビデオやDVDなどの人権教育のための視聴覚資料の充実を図り
ます。
6
外国人に関する問題
【現状と課題】
我が国では、在住外国人の急激な増加に伴い、言語、生活習慣、文化等の違いに起
因する、就労差別やアパート、マンションなどの住居・入居拒否などの差別的取り扱
い、歴史的経緯に由来する在日韓国、朝鮮人等をめぐる問題のほか、さまざまな人権
問題が生じています。これらの偏見や差別意識は、国際化の著しい進展や人権尊重の
精神の国民への定着、さまざまな人権教育・啓発の実施主体の努力により、外国人に
対する理解が進み、着実に改善の方向に向かっていると考えられていますが、未だ一
部に問題は存在している状況です。
本市では、平成 25 年(2013 年)3 月末において、中国人、フィリピン人を中心に
99 人の外国人が主に就労や研修の目的で在住しています。このような状況からも、さ
まざまな国の異なる文化や言葉、生活習慣などを認め合い、共に暮らしていける環境
の整備はますます重要になってきております。
【具体的施策の方向性】
外国籍市民に対して差別意識を持たず、さらに互いのアイデンティティの違いを正
しく認識、尊重しながら、共に快適に暮らすことができる「共生・協働社会」を目指
します。また、外国人に対する偏見や差別意識を解消するための人権教育・啓発を推
進するとともに外国籍市民が住みやすいまちづくりや国際交流の推進を図ります。
7
HIV感染者、ハンセン病患者等に関する問題
【現状と課題】
HIV感染症は、進行性の免疫機能障害を特徴とする疾患で、HIVによって引き
起こされる免疫不全症候群のことを特にエイズ(AIDS)と呼んでいます。エイズ
(後天性免疫不全症候群)は、昭和 56 年(1981 年)にアメリカで最初の症例が報告
され、その後、急速に世界中に広がりました。HIV(ヒト免疫不全ウィルス)とい
うウィルスが引き起こす病気で,HIVの感染が確認されているが、エイズを発症し
ていない状態の人をHIV感染者といいます。
わが国では、平成元年(1989 年)に「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」
いわゆるエイズ予防法が、平成 11 年(1999 年)には、
「感染症の予防及び感染症の患
者に対する医療に関する法律」が施行され、エイズ患者の人権の保護がうたわれてい
ます。本市においても関係機関と連携をとりながら、エイズは、感染する経路が限ら
れており、感染した人と一緒にいても日常生活の中の接触で簡単に感染することはな
-9-
いという、正しい知識を身につけるための啓発活動が求められています。
一方、ハンセン病は、らい菌によって引き起こされる病気で、
「人に感染しやすい病
気」という誤った理解が社会に広められました。しかし、らい菌の感染力は非常に弱
く、感染することは極めて稀で、治療薬の開発により現在では確実に治せる病気とな
っています。
わが国では、明治 40 年(1907 年)に制定された「らい予防法」により、発病した
人には強制的に、終生隔離されるなど非人間的扱いを受け、患者と家族はいわれなき
差別と偏見に苦しめられてきました。この法律は、平成 8 年(1996 年)に廃止され、
平成 13 年(2001 年)には「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関
する法律」が定められ、損失補償や名誉回復などを国が行うこととされました。この
ような経緯を得て地域社会に復帰した人もいますが、病気に対する誤解や無理解が今
なお社会の中に根強く残っており、ハンセン病に対する正しい知識と理解が必要とな
っています。
【具体的施策の方向性】
偏見や差別意識を解消し、基本的人権尊重の観点から、すべての人の生命の尊さや
ともに生きていくことの大切さを広く市民に伝えていくため、市民への正しい知識の
普及啓発に努めるとともに、家庭、学校、地域など関係機関が連携し、差別や偏見の
解消に向けた教育・啓発の推進を図ります。
8
犯罪被害者等に関する問題
【現状と課題】
近年、我が国では、犯罪被害者やその家族の人権問題に対する社会的関心が大きな
高まりを見せており、犯罪被害者等に対する配慮と保護を図るための諸方策を講じる
ことが課題となっています。
犯罪被害者等は、犯罪行為による生命や身体又は財産に対する直接的な被害を受け
るだけでなく、精神的な苦痛や日常生活の支援、医療費の負担、失職等によって経済
的に困窮することもあります。また、捜査や裁判の過程での精神的負担や近隣のうわ
さ等による不快感からのストレス、行き過ぎた取材報道など被害者に生じる様々な問
題があります。
犯罪被害者等が、地域社会で安心して生活できるようにするため犯罪被害者等の人
権について、正しい理解と認識を深めることが大切です。
【具体的施策の方向性】
犯罪被害者への総合的な支援を行うとともに、犯罪被害者の心情を理解し、社会的
な人権問題としての認識を深めるための広報、啓発活動を推進します。また、犯罪被
害者やその家族が安心して暮らすことができるよう、警察など関係機関と密接に連携
して、犯罪被害者等からの相談・支援体制の充実に努めます。
- 10 -
9
高度情報化社会(インターネット等)に関する問題
【現状と課題】
インターネットには、電子メールのような特定の利用者間の通信のほかに、ホーム
ページのような不特定多数に向けた情報発信、ソーシャルメディアなどを利用した不
特定多数の利用者間の反復的な情報の受発信等があります。インターネットの普及に
より利便性が大きく向上した反面、発信者の匿名性を悪用して、掲示板やブログなど
での特定の個人の誹謗中傷、プライバシーの侵害など人権を侵害する事例が増加して
います。また、個人情報の不適切な取り扱いによる大量の個人情報が流失する事件も
後を絶ちません。
このような中、平成 14 年(2002 年)には、
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責
任の制限及び発信者情報の掲示に関する法律」いわゆるプロバイダー責任制限法が施
行され、被害者は、プロバイダー等に対し、人権侵害情報の発信者の情報開示を請求
したり、情報の削除を依頼することができるようになりました。
【具体的施策の方向性】
インターネットは、今後も急速な普及、発展が見込まれるため、インターネットを
利用する一人ひとりが人権を侵害するような情報をインターネット上に発信しないよ
う、学校における情報教育や市民を対象にしたパソコン講習会等を通し、個人のプラ
イバシーや名誉、情報モラルについて正しい理解と認識を深めるよう人権教育・啓発
の推進の充実に努めます。
また、インターネット等を利用した人が、人権侵害にあった場合は、適切な対応が
できるよう鹿児島地方法務局など関係機関・団体と緊密な連携を図ります。
10
北朝鮮当局による拉致に関する問題
【現状と課題】
平成 14 年(2002 年)9 月の日朝首脳会議において、北朝鮮側が初めて当局による
拉致を認め、同年 10 月に 5 人の拉致被害者とその家族が帰国しましたが、他の被害
者について、北朝鮮当局は、未だ問題の解決に向けた具体的な行動をとっていません。
政府は、平成 22 年(2010 年)までに、17 人を北朝鮮当局による拉致被害者として
認定していますが、このほかにも拉致された可能性を排除できない事案があるとの認
識の下、所要の捜査・調査を進めています。
北朝鮮当局による拉致は、国民に対する人権侵害であり、我が国の主権及び国民の
生命と安全にかかわる重大な問題です。
我が国では、平成 18 年(2006 年)6 月に、国や地方公共団体の責務として、拉致
問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るため、
「拉致
問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が制定されました。
また、9 月には、総理大臣を本部長とする「拉致問題対策本部」が設置され 12 月 10
日から 16 日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とするなど、問題解決向けた体制
が整備されました。
拉致問題等の解決には、幅広い国民各層及び国際社会の理解と支持が不可欠であり
- 11 -
その関心と認識を深めることが求められています。
【具体的施作の方向性】
拉致問題については、正しい知識の普及を図り、市民の関心と認識を深めるため、
「北
朝鮮人権侵害問題啓発週間」
(12 月 10 日から 16 日)を中心に、広報媒体を活用して啓
発に努めるとともに、人権問題啓発資料の作成・配布するなど広く市民に対する教育・
啓発活動を推進します。
11
その他の人権
これらの他にも、性的少数者、プライバシーをめぐる問題、アイヌの人々への問題、
職業に関する差別、刑を終えて出所した人やその家族への偏見、ホームレスに対する嫌
がらせなど様々な人権問題があります。これらのことも踏まえながら、一人ひとりの人
権が尊重され、あらゆる差別や偏見のない社会の実現に向けて、人権教育・啓発の積極
的な推進を図ります。
- 12 -
第4章
1
人権教育・啓発の推進
あらゆる場における人権教育・啓発
(1) 学 校 等
【現状と課題】
今日の社会状況は、核家族化や少子化が進み、物質的な豊かさとは逆に人と人との
かかわりが希薄になり、家庭教育力や地域の教育力が低下してきていると言われてい
ます。そのような中で、学校が地域に果たす役割は大きなものであります。そのため、
学校教育においては、幼児・児童・生徒・学生の発達段階に応じながら、学校教育活
動全体を通じて人権尊重の意識を高め、一人ひとりを大切にした教育の充実が図られ
ています。
しかしながら、学校等では、依然としていじめ、不登校、体罰などの問題や同和問
題に関する差別事象など、子どもや教職員の間で人権にかかわる問題が発生しており、
幼児・児童・生徒・教職員が、子どもや教職員が広く人権や差別について正しい理解・
認識やそれに基づく行動力を十分身に付けるようにすることが求められています。
【具体的施策の方向性】
学校教育においては、国・県・市町村がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に連携
し合いながら、児童生徒が発達段階に応じて、社会生活を営む上での必要な知識・技
能、態度などを確実に身に付けることで、人権尊重の精神の涵養が求められています。
また、学校においては、自ら学び、自ら考える力や社会の変化に的確に対応する力、
他人を思いやる心など豊かな人間性等の「生きる力」を育んでいます。
こうした基本的認識に立ち、県等の連携のもとにあらゆる教育活動を通じて以下の
点に留意して人権教育を展開します。
ア 人権教育は、共生社会の実現や自己・他者を尊重する心を育むことなどを視点
とし、一人ひとりを大切にした教育が推進されるよう、学習内容や指導方法の一
層の改善に努めます。
イ 人権教育の指導方法の改善を図るため、学校において人権教育の研修を深める
とともに、効果的な教育実践や学習教材等の収集に努めます。
ウ 教職員が自らの職責を自覚し、豊かな人権感覚を培うなど、教職員としての資
質の向上を図るため、研修会や学習を積極的に行うなど、内容の充実や実施方法
の工夫を行うとともに、各学校の実態に応じた効果的な研修に努めます。
エ 教師による定期的な教育相談や状況に応じた相談等を実施、子どもたちが抱え
る諸問題や個別の人権に関わる内容を含め、子どもたちの悩みを発見するととも
に、早期に解決する体制づくりを行うなど、よりよい集団生活が送れるような環
境づくりに努めます。
(2) 家 庭
【現状と課題】
家庭は、すべての教育の原点であり、幼児期から親と子の愛情を基盤とした日常的
な営みの中から、思いやりや情操を養こと、それと生命の尊重など人権の重要性を学
- 13 -
ぶ場であり、基本的な生活習慣や社会性を身につける大切な場となっていることから、
子どもの人格形成に重要な役割を担っています。
本市では、日常生活における人権感覚を涵養するため、家庭教育に関する啓発資料
の提供を行うなど、学習活動の促進を図りながら家庭教育を支援しています。
しかし、近年、少子化や都市化・核家族化の進む中で、親の過保護・過干渉、他方
では、育児不安、しつけに対する自信の喪失などが見られ、家庭の教育力の低下が懸
念されています。
さらに、家庭内における暴力や虐待といった人権課題なども深刻化しています。
【具体的施策の方向性】
家庭教育は、まず保護者自身が偏見をもたず、差別しないことなどを日常生活を通
じて子どもに示していくことが重要であることから、家庭教育に関する保護者の学習
機会や情報提供に努めます。
また、子育てに不安や悩みを抱える保護者等への相談体制や家庭内における暴力・
虐待などの人権侵害の発生を未然に防ぐために、学校や他機関・地域との連携をより
一層強め、相談活動機能の充実に努めます。
これらの業務を担う関係機関職員などの資質の向上を図り、家庭教育の機能の強化
の支援に努めます。
(3) 地 域
【現状と課題】
地域社会は、さまざまな人々のふれあいを通じて、人権意識の高揚が図られ、社会
の構成員としての自立を促す大切な場となっています。
市では、公民館や市民館等の社会教育施設を拠点に人権に関する多様な学習機会の
提供を行うとともに、人権問題啓発資料の配布などを通して人権教育・啓発の推進を
図っています。
地域社会には、女性、高齢者、障がいのある人権問題など、さまざまな人権問題が
存在しています。また、都市化の進行により、市民に地域の一員としての意識が希薄
になりつつあるので、地域での人権尊重の心を培う機会として多様な学習機会を一層
充実させることが必要となっています。
【具体的施策の方向性】
市民が身近な地域において、様々な人権問題についての理解と認識を深め、人権尊
重の意識に満ちた地域社会づくりを推進するための各種施策等を通じて、人権に関す
る学習の一層の充実を図るために、以下の取組を推進します。
ア 地区公民館や市民館などの社会教育施設を活用した人権問題についての学習機
会の提供や地域住民の相互理解を深める交流活動など、多様な学習機会の充実を
図ります。
イ すべての人が性別や年齢、障がいの有無に関係なく等しく人としての権利を持
ち、個性や違いを認め合いながら、地域社会に参加、参画できるように、地域の
中での人と人とのつながりを大切にし、支えあい、共に生きる地域社会づくりを
- 14 -
推進します。
(4) 職 域
【現状と課題】
企業においては、人権問題の解決をはじめ、地球環境の保全、男女共同参画社会の
実現、少子・高齢化社会への対応などで果たすべき社会的役割を担っています。
近年は、企業等の社会的責任の関心はますます高まり、それぞれに応じた取り組み
が行われていますが、障がいのある人の法定雇用率達成、高齢者の継続雇用、男女の
賃金や昇給等の格差是正、職場内のセクシュアル・ハラスメント防止、働く男女の仕
事と家庭生活の両立を可能とする条件整備の問題など多くの取り組むべき課題も存在
しています。
【具体的施策の方向性】
企業等の主体的な人権問題への取り組みを促進するために、あらゆる機会を通じて、
さまざまな人権問題について、広報誌、ホームページ、啓発冊子、ポスターなどによ
り情報提供を行うほか、各種人権教育・啓発研修会や講演会に企業からの参加を求め
るとともに、企業内研修を実施する場合は、講師の紹介や啓発資料の提供などその支
援を行い、人権意識の高揚に努めます。
また、国、県の関係機関と連携を図りながら、相談体制の充実を図ります。
2
特定職業従事者における人権教育・啓発
人権教育・啓発の推進にあたっては、市職員、教職員、医療関係者等の人権にかか
わりの深い職業に従事する者に対する人権教育・啓発に関する研修等の取組が必要で
す。 それぞれの職場において様々な取組が実施されているものの、研修プログラム、
研修教材の充実を図ることや様々な人権問題を正しく理解し、正しい人権感覚を高め
るための研修等を継続的に行うことが重要です。
(1) 市職員
市職員は、地域住民の福祉の向上に直接的に関わるものであり、職員全員が常に人
権尊重の視点に立って職務を遂行することが求められています。そのため、職員一人
ひとりが様々な人権問題を正しく認識し、人権に配慮した職務を実践できるよう、人
権に関する研修を更に充実するとともに、研修会への積極的な参加を促し、職員の人
権意識の高揚に努めます。
(2) 教職員
教職員は、人権教育を通じて子どもたちに豊かな人間性や人権を尊重する心を培っ
ていくことも使命になっています。今後も様々な人権問題について、正しい理解と実
践力を身に付けるため、教職員を対象にした職員研修を計画的に実施します。
(3) 医療関係者
医師、歯科医師、薬剤師、看護職員、理学療法士、作業療法士などの医療関係者は、
- 15 -
人々の健康と生命を守ることを使命とし、個人の生活に深い関わりをもっていること
から、医療関係者に対し患者等の人権を尊重することの重要性を認識し、インフォー
ムド・コンセントの理念や患者のプライバシーの配慮、個人情報の保護に努めるとと
もに、人権意識を一層向上させるための人権教育・啓発に関する研修等の充実を要請
します。
(4) 福祉関係者
社会福祉施設職員、ホームヘルパー、ケアマネージャー等の介護サービス関係者、
民生委員、児童委員、保健師、各種相談員等の保健福祉関係職員は、高齢者、子ども、
障がいのある方などに常に接しており、対象者の日常生活に密着して職務に携わって
いることから、個人情報の保護、公平な処遇の確保に努めるとともに、福祉施設等に
対し人格の尊重が確保されるよう人権教育について職員研修を充実されるよう要請し
ます。
(5) マスメディア関係者
テレビや新聞などのマスメディアは、人権教育・啓発の媒体として大きな役割を果
たしている一方、その情報は、市民の意識の形成や価値判断に大きな影響力をもって
います。人権尊重の社会を形成するために自主的な人権教育・啓発の取り組みを要請
します。
3
人権教育・啓発の効果的な推進
人権教育・啓発を効果的に推進していくためには、多様な学習機会の提供と学習内容
の充実、各種関係機関・団体との連携、人権教育・啓発に関する教職員や指導者の育成
を積極的に進めていくとともに、マスメディアやインターネットの活用等に努めるほか、
人権問題を抱える人々が気軽に相談できる窓口の整備など、相談体制の充実を図ってい
くことが求められています。
(1) 多様な学習機会の提供と学習内容の充実
市民一人ひとりが、日常生活の中で人権問題に関心が持てるよう、家庭、学校、地
域社会、企業等あらゆる場で多様な学習機会が得られるよう努めます。
また、教材、啓発資料等は、理解しやすい内容、表現となるよう工夫するとともに、
社会奉仕体験活動や高齢者・障がいのある人等との交流活動など参加体験型学習を積
極的に取り入れるなど学習内容の充実を図ります。
(2) 連携の促進
様々な人権問題に幅広く対応し、効果的な施策の展開を図るため、本市の各課局相
互緊密な連携に努めるとともに、家庭、学校、地域社会、企業など、あらゆる場を通
じて人権に関する取り組みを実施している各種関係機関・団体等との連携を促進しま
す。
- 16 -
(3) 人材育成
学校、地域社会及び企業等で人権教育・啓発に当たる教職員や指導者の資質と指導
力の向上など人材の育成を図ります。
(4) マスメディアの活用
マスメディアは、市民の意識の形成や価値判断に大きな影響力をもっていることか
ら、より多くの市民に効果的に人権尊重の理念の重要性を伝えるため、マスメディア
の活用に努めます。
(5) インターネットの活用
インターネットの特性を活用して、市ホームページに人権に関する情報を提供する
とともに、人権尊重の意識高揚につなげる啓発活動を推進します。
(6) 相談体制の充実
人権問題に関わる相談は、生活相談、教育相談、医療相談、法律相談等を含んでい
ることから、相談窓口の明確化に努めるとともに、関係機関との緊密な連携、協力を
図り、また、相談員の一層の資質向上に努め、迅速な対応ができるよう相談体制の充
実を図ります。
第5章
1
基本計画の推進
計画の推進体制
基本計画の推進にあたっては、人権教育及び人権啓発の推進の総合的かつ効果的な関
係施策の推進を図るため、関係課相互の緊密な連絡調整を図り、施策の推進に努めます。
また、関係課においては、この基本計画の趣旨を十分に踏まえ、関係施策を実施します。
2
市民への啓発活動等
市民への啓発活動については、広報誌等や市ホームページ、講演会等をとおして周知
するとともに、人権に関する情報の提供に努め、市民の人権に対する意識の向上を図り
ます。
また、市職員については、市民の人権を誠実に守る義務があるため、市が主催する研
修会等だけでなく、人権に関する関係団体等が主催する人権についての研修会や講演会
等に積極的に参加できるような環境を整えていきます。
3
国、県、関係機関との連携
人権教育・啓発を総合的・効果的に推進するためには、国、県をはじめ、関係団体及
び人権に関わる民間団体や地域社会における各種団体、企業などとの連携を促進します。
さらに、NPOなどによる住民の自発的な社会貢献活動は、これからの地域社会を構
築していくうえで大きな役割を果たすものであることから、NPOなどが活動しやすい
環境の整備に努めるとともに、行政とNPOなどがそれぞれの特性や役割に応じて協働
- 17 -
していけるように努めます。
- 18 -
【 用 語 解 説 】
あ行
※ アイヌの人々
日本における先住民族であるアイヌの人々は、現在の北海道を中心に、東北地方、サ
ハリン、千島列島などで、固有の文化・伝統を持つ民族として暮らしてきた。近世以降
の同化政策により、その文化の伝承が困難となってきていたが,伝統文化を見直し復活
させる動きやアイヌ語伝承のためのアイヌ語教室が増えており、国や地方自治体による
支援も行われている。しかし、その一方で、アイヌの人々に対する誤った理解による偏
見・差別が根強く残っている。
※ インフォームド・コンセント
「十分な説明を受けた上での(患者)の同意」。患者が医師等から自己の状態や治療に
ついて説明を受け理解した上で治療を選択すること。患者と医師等が合同で治療を行う
ことが、治療環境に最適であるとされている。納得診療ともいう。
※ HIV・エイズ
HIVはヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)の略。HIVは
感染力の弱いウイルスであり、主に血液・精液・膣分泌液・母乳が体内に侵入すること
により感染する。HIV感染による免疫力の低下に緩慢に進行し、いわゆるエイズ(後
天性免疫不全症候群,AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome)の発症までには
平均 10 年以上かかるといわれる。しかし、近年医学の進歩により、エイズの発症を遅ら
せたりする治療法が確立されてきている。
※ NPO
Non Profit Organization の略。非営利組織と直訳され、営利を目的としない団体の略
称であるが、日本においては、自発的・自立的な市民活動団体という意味で用いられる
場合が多い。
か行
※ グローバル化
政治経済文化などの分野が地球規模で拡大すること。
- 19 -
さ行
※ 人
権
すべての人間が生まれながらにしてもっている権利で、人間が人間らしく生きていく
ための、誰からも侵されない基本的な権利。日本国憲法では、基本的人権は、侵すこと
のできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられるとし、国家及びすべて
の国民に基本的人権を守ることを求めている。
※
人権教育のための国連 10 年
平成 7 年(1995 年)から平成 16 年(2004 年)までの 10 年間に、それまでの国際社
会における人権確立に向けた取り組みの上に立ち、世界をあげて人権尊重される社会の
実現を目指す取り組みを推進しようとするもので、平成 6 年(1994 年)12 月の国連総
会で決議された。
※ 性的少数者
性的少数者(性的マイノリティ)とは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性
愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害者)の総称
で、性的指向(恋愛・性愛感情が向く性)や性自認(こころの性)等の面で少数者に属
する人々。LGBTとも言われる。
※
成年後見制度
認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力の不十分な人が財産管理や身上監護
についての契約や遺産分割などの法律行為を自分で行うことが困難であったり、悪質商
法などの被害にあう恐れがある。このような判断能力の不十分な人の自己決定権を尊重
しながら、保護・支援していくために、平成 12 年(2000 年)4 月にスタートした制度
であり、本人の意思や必要性に応じて後見人等が選任される。
※
セクシュアル・ハラスメント
性的嫌がらせ。相手の意に反した性的な言動で、身体への不必要な接触、性的関係の
強要、性的なうわさの流布、衆目に触れる場所でのわいせつな写真の提示など、あらゆ
る場所における様々な態様のものが含まれる。特に雇用の場においては、
「相手の意に反
した性的言動を行い、それに対する対応によって仕事をする上で一定の不利益を与えた
り、または、それを繰り返すことによって、就業環境を著しく悪化させること」などを
いう。
- 20 -
※
世界人権宣言
昭和 23 年(1948 年)12 月、国連総会において採択された国際的人権宣言。市民的・
政治的自由のほか経済的・社会的な権利について、各国が達成すべき基準を定めている。
なお、採択された 12 月 10 日は、「世界人権デー」とされ、わが国では 12 月 10 日ま
での 1 週間を「人権週間」と定め、人権思想の普及高揚のための啓発稼働を全国的に展
開している。
た行
※
男女共同参画社会
男女が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における
活動に参画する機会が確保されることで、男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文
化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会をいう。
※
ドメスティック・バイオレンス(DV)
配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者からふるわれる暴力のことをいう。
暴力の種類は、殴る、蹴るなどの身体的暴力だけでなく、言葉などで精神的に追い詰め
る精神的暴力、行動の束縛など多岐にわたる。
な行
※
認知症
後天的な脳の器質的障害により、一旦正常に発達した知能が低下した状態をいう。こ
れに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現
れる状態は、知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。
※
ノーマライゼーション
障害者が障害のない者と同等に安全で快適な生活を送り、社会活動に自由に参加し、
自立して生活することができる社会を目指すという理念。
は行
※
バリアフリー
高齢者や障害者等の活動の場を広げ、自由な社会参加が可能となる社会にしていくた
め、道路、建物等の段差など生活環境面における物理的な障壁(バリア)を除去(フリ
- 21 -
ー)するという意味。高齢者や障害者等に対する差別や偏見といった心のバリアを除去
するという使い方もされる。
※
ハンセン病
らい菌による慢性の感染病であるが、らい菌に感染しただけでは発病する可能性は極
めて低い。仮に発病しても、治療方法が確立されている現在では、早期発見と早期治療
により完治する病気である。ハンセンは、らい菌を発見したノルウェーの医師の名。
※
ホームレス
失業、家庭崩壊、社会生活からの逃避等様々な要因により、特定の住所をもたずに、
道路、公園、河川敷等で生活を送っている人々。
や行
※
ユニバーサルデザイン
バリアフリーは、障害によりもたらされるバリア(障壁)に対処するとの考え方であ
るのに対し、ユニバーサルデザインは、あらかじめ障害の有無、年齢、性別、人種等に
かかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインするという考え方
である。
- 22 -
日本国憲法(抜粋)
昭和 21 年(1946 年)11 月 3 日公布
昭和 22 年(1947 年) 5 月 3 日施行
前
文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの
子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢
を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起きることのないやうにすることを決意
し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、そ
の権力は国民の代表者がこれを行使し、その福祉は国民がこれを享受する。これは人類普
遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚す
るのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持
しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に
除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、
全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有するこ
とを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないので
あつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を
維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを
誓ふ。
第3章
国民の権利及び義務
(日本国民の要件)
第 10 条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
(基本的人権の享有)
第 11 条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する
基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられ
る。
(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止)
第 12 条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを
保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公
共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉)
第 13 条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民
- 23 -
の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重
を必要とする。
(法の下の平等、貴族の禁止、栄典)
第 14 条 すべての国民は、法の下に平等であつて、人権、信条、性別、社会的身分又は門
地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこ
れを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
(公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障、秘密投票の保障)
第 15 条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべての公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に
関し公的にも私的にも責任を問はれない。
(請願権)
第 16 条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正
その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにい
かなる差別待遇も受けない。
(国及び公共団体の賠償責任)
第 17 条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところに
より、国、又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
(奴隷的拘束及び苦役からの自由)
第 18 条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いて
は、その意に反する苦役に服させられない。
(思想及び良心の自由)
第 19 条 思想及び良心の自由は、これを侵してならない。
(信教の自由)
第 20 条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特
権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
(集会・結社・表現の自由、通信の秘密)
第 21 条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
(居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由)
第 22 条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
(学問の自由)
第 23 条 学問の自由は、これを保障する。
(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)
第 24 条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本
- 24 -
として、相互の協力により、維持されなければならない。
2
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他
の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなけ
ればならない。
(生存権、国の社会的使命)
第 25 条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進
に努めなければならない。
(教育を受ける権利、教育の義務)
第 26 条 すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育
を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせ
る義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
(勤労の権利・義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止)
第 27 条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
(勤労者の団結権・団体交渉権その他団体行動権)
第 28 条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障
する。
(財産権)
第 29 条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
(納税の義務)
第 30 条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
(法定手続きの保障)
第 31 条 何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、
又はその他の刑罰を科せられない。
(裁判を受ける権利)
第 32 条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
(逮捕の要件)
第 33 条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、
且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
(抑留・拘禁の要件、不法拘禁に対する保護)
第 34 条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられ
なければ、拘留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、
要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示さな
ければならない。
(住居の不可侵)
- 25 -
第 35 条 何人も、その住居、書類及び所持品については、侵入、捜索及び押収を受けるこ
とのない権利は、第 33 条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索す
る場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
(拷問及び残虐刑の禁止)
第 36 条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
(刑事被告人の権利)
第 37 条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける
権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与へられ、又、公費で自
己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被
告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
(供述の不強要、自白の証拠能力)
第 38 条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白
は、証拠とすることができない。
3 何人も、自己の不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は
刑罰を科せられない。
(遡及処罰の禁止、一事不再理)
第 39 条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑
事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれな
い。
(刑事補償)
第 40 条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるとこ
ろにより、国にその補償を求めることができる。
第 10 章
最高法規
(基本的人権の本質)
第 97 条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年のわたる自由獲得の努
力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ。現在及び将来の国民に対
し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
- 26 -
世界人権宣言
1948年12月10日
第3回国際連合総会採択
前
文
人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認する
ことは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、
人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰
の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣
言されたので、
人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするため
には、法の支配によって人権を保護することが肝要であるので、諸国間の友好関係の発展
を促進することが肝要であるので、
国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに
男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活
水準の向上とを促進することを決意したので、
加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進を
達成することを誓約したので、これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を
完全にするために最も重要であるので、
よって、ここに、国際連合総会は、社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常
に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人
民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること並びにそ
れらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的及び国際的な漸進的措置によって確保す
ることに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、
この政界宣言を公布する。
第1条
すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等
である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しな
ければならない。
第2条
1 すべての人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若し
くは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別を
受けることもなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治
地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の
政治上、管轄上及び国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。
- 27 -
第3条
すべての人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
第4条
何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いか
なる形においても禁止する。
第5条
何人も、拷問又は残酷な、非人道的な若しくは屈辱的な取り扱い若しくは刑罰を受け
ることはない。
第6条
すべての人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利
を有する。
第7条
すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な
保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対して
も、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける
権利を有する。
第8条
すべての人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、
権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。
第9条
何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。
第 10 条
すべての人は、自己の権利及び義務並びに事故に対する刑事責任が決定されるに当た
っては、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等
の権利を有する。
第 11 条
1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた
公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有
する。
2 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為の
ために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑
罰を課せられない。
第 12 条
何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又
は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻
撃に対して法の保護を受ける権利を有する。
第 13 条
1 すべての人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。
2 すべての人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。
- 28 -
第 14 条
1 すべての人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利
を有する。
2 この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因と
する訴追の場合には、援用することはできない。
第 15 条
1 すべての人は、国籍をもつ権利を有する。
2 何人も、ほしいままにその国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認される
ことはない。
第 16 条
1 成年の男女は、人種、国籍又は宗教によるいかなる制限を受けることなく、婚姻し、
かつ家庭をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中及びその解消に際し、婚姻に関
し平等な権利を有する。
2 婚姻は、項ん人の意思を有する両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
3 家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護受ける権利を
有する。
第 17 条
1 すべての人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
2 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。
第 18 条
すべての人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教
又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、
行事、礼拝及び儀式によって宗教又は信念を表明する自由を含む。
第 19 条
すべての人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受け
ることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を超えると否
とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第 20 条
1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
2 何人も、結社に属することを強制しない。
第 21 条
1 すべての人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する
権利を有する。
2 すべての人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
3 人民の意思は、統治の権力を基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ
真正な選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるも
のでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続きに
よって行わなければならない。
- 29 -
第 22 条
すべての人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的努力
及び国際的協力により、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格
の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を
有する。
第 23 条
1 すべての人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及
び失業に対する保護を受ける権利を有する。
2 すべての人は、いかなる差別を受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受
ける権利を有する。
3 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障す
る公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補
充を受けることができる。
4 すべての人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する
権利を有する。
第 24 条
すべての人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇を
もつ権利を有する。
第 25 条
1 すべての人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及
び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、
老齢その他不可抗力による生活不能な場合は、保障を受ける権利を有する。
2 母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であ
ると否とを問わず、同じ社会的保護を受ける。
第 26 条
1 すべての人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の
段階おいては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技
術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、
能力に応じ、すべての者にひとしく解放されていなければならない。
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなけれ
ばならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容
及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでな
ければならない。
3 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。
第 27 条
1 すべての人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とそ
の恩恵とにあずかる権利を有する。
2 すべての人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物
質的利益を保護される権利を有する。
- 30 -
第 28 条
すべての人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的
秩序に対する権利を有する。
第 29 条
1 すべての人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会
に対して義務を負う。
2 すべての人は、自己の権利及び自由を行使するに当たっては、他人の権利及び自由な
正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般
の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限に
のみ服する。
3 これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使
してはならない。
第 30 条
この制限のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げ
る権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を
行う権利を認めるものと解釈してはならない。
- 31 -
人権教育及び人権啓発の推進に関する法律
平成 12 年(2000 年)12 月 6 日
法律第 147 号
(目 的)
第1条 この法律は、人権尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人権、
信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内
外の情勢にかんがみ、人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公
共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、必要な措置を定め、もって人権の擁護
に資することを目的とする。
(定 義)
第2条 この法律において、人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動
をいい、人権啓発とは、国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民
の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域そ
の他の様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解
を深め、その体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国
民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行わなければならない。
(国の責務)
第4条 国は、前条に定める人権教育及び人権啓発の基本理念(以下「基本理念」という。)
にのっとり、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情
を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(国民の責務)
第6条 国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現
に寄与するよう努めなければならない。
(基本計画の策定)
第7条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、
人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画を策定しなければならない。
(年次報告)
第8条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策につい
ての報告を提出しなければならない。
(財政上の措置)
第9条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策を実施する地方公共団体に対し、当該
施策に係る事業の委託その他の方法により、財政上の措置を講ずることができる。
- 32 -
附
則
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第8条の規定は、この法律の施行
の日の属する年度の翌年度以後に講ずる人権教育及び人権啓発に関する施策について適
用する。
(見直し)
第2条 この法律は、この法律の施行の日から3年以内に、人権擁護施策推進法(平成8
年法律第120号)第3条第2項に基づく人権が侵害された場合における被害者の救済
に関する施策の充実に関する基本的事項についての人権擁護推進審議会の調査審議の結
果をも踏まえ、見直しを行うものとする。
- 33 -
Fly UP