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店舗向けショーケース・冷凍機連携制御
特集/エネルギー需給最適化を実現する最新IT化技術 店舗向けショーケース・冷凍機連携制御 店舗でエネルギー使用量の多い部分としてショーケース・冷凍機がある。富士電機はこの部分に注力した連携 制御システムの普及を図っている。平成10年度の省エネ大賞「省エネルギーセンター会長賞」を受賞し,さら に進化したシステムを紹介する。 (編集部) 富士電機㈱ 技術開発本部 製品技術研究所 制御技術開発センター 需要家ソリューション開発部 2009年4月に施行された改正省エネ法に伴い,一定の 要件を満たすフランチャイズチェーンも特定事業者と して規制の対象となった。その対応として,エネルギ 2,000,000 10,000 1,800,000 9,000 1,600,000 8,000 1,400,000 7,000 1,200,000 6,000 1,000,000 5,000 800,000 4,000 600,000 3,000 400,000 2,000 200,000 1,000 0 れ,より効果的な省エネへの取り組み推進が求められ ている。本稿では,店舗の中のエネルギー使用量が最 して,現時点で横ばいないし減少傾向にある。 スーパーマーケットの動向としては,商品の低価格 化や小型店舗,ディスカウントストアなどとの業態を 超えた拡大を進めているが,総売上高は年々減少して 行場の貨物エリア内などに出店するなど潜在ニーズを 05 06 年度 07 08 09 10 11 総店舗数 出典:『FC 統計調査』日本フランチャイズチェーン協会 総売上高(百万円) 10,000,000 50,000 9,000,000 45,000 8,000,000 40,000 7,000,000 35,000 6,000,000 30,000 5,000,000 25,000 4,000,000 20,000 3,000,000 15,000 2,000,000 10,000 1,000,000 5,000 0 0 02 03 04 05 06 年度 総売上高(百万円) 07 08 09 10 11 総店舗数 図−2 コンビニエンスストア総売上額と店舗数の推移 出典:『FC 統計調査』日本フランチャイズチェーン協会 いる(図−1参照)。 コンビニエンスストアの動向としては,省庁内,飛 04 図−1 スーパーマーケット含む総合小売総売上額と店舗数の推移 制御方法を紹介し,その実績を報告する。 国内の小売店舗の売上高は,少子高齢化を主背景と 03 総売上高(百万円) も多い冷凍設備,特にショーケースシステムの省エネ 2.スーパーマーケット・コンビニエンス ストアの店舗数と売上の推移 0 02 ー使用効率を毎年1%以上改善する努力義務が定めら 総店舗数 スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは, 総売上高(百万円) 1.はじめに 総店舗数 冷熱システムグループ 坂井 一博 ども踏まえ,社会インフラとしての役割を担いつつあ り,その対応での活路を見出す動きもされている。 掘り起こし強化を行なっているが,業界全体の店舗 以上の状況の中,少ない投資で効果のある省エネ(投 数,売上高はともに鈍化傾向にある(図−2参照)。ま 資回収期間2~3年程度)を行なうことが課題となっ た,コンビニエンスストアは,昨今では震災の影響な ている。 40 月刊「省エネルギー」 特集/エネルギー需給最適化を実現する最新IT化技術 3.スーパーマーケットやコンビニエンス ストアの電力使用量の実態 −5に示す。 スーパーマーケットとコンビニエンスストアの1年 ステムと連携し複数の店舗の監視を集中的に行なう保 店舗内の監視制御システムは,店舗単独で監視制御 を行なう店舗側のローカルシステムおよびローカルシ 間の電力使用量の割合を示す(図−3,4参照)。このデ 守管理センターのリモートシステムで構成される。 ータは,ある店舗の電力量を実際に1年間計測したデ ショーケースコントローラは,16ビットマイコンを ータである。どちらの業態も冷凍設備が全体の半分以 搭載している独自開発したハードウェアで,ショーケ 上を占めていることがわかる。この傾向は,ほとんど ース1台に1個搭載される。温度・設定値表示機能, のスーパーマーケットやコンビニエンスストアで類似 設定機能,庫内温度制御機能,除霜制御機能,警報出 しており,冷凍設備を省エネすることが店舗全体の省 力機能などを持ちショーケース単体の基本的な運転制 エネに大きく寄与することがわかる。 御を行なうコントローラである。また,データ通信機 能を持ちショーケース別のデータ収集,各種設定を可 4.ショーケース・冷凍機連携制御 能としている。さらに,最新のシリーズでは,防露ヒ 富士電機のショーケース・冷凍機連携制御を紹介す ータ制御機能も搭載し,省エネ制御を行なっている。 る。まずは,富士電機の監視制御システムの構成を図 システムコントローラは,32ビットマイコンを搭載 コンセント全体 4% その他9% 照明全体 23% 照明全体 14% 冷凍設備全体 52% バックヤード 機器全体 9% 冷凍設備全体 56% バックヤード 機器全体 17% 空調機全体 8% 空調機全体8% 図−4 コンビニエンスストア年間電力割合 図−3 スーパーマーケット年間電力割合 保守管理センター DB WEB アプリ サーバ サーバ サーバ クライアント ・サービス 本部 ・営業所等 ISDN,ADSL 他 店舗ターミナル 店舗モニタ エンタルピーセンサ CO2 センサ 電力 (ガス,水道) 換気扇 システム コントローラ 温湿度センサ ショーケース コントローラ 照明 冷凍機 ショーケース 空調 図−5 システム構成 Vol.64 No.10 2012 41 している独自開発したハードウェアで,冷凍機ごとに 設置し,1台の冷凍機には複数のショーケースが接続 ≒冷凍能力」と判断する。 インバータ冷凍機は,冷媒の吸入圧力値を圧力設定 される。後述するショーケース・冷凍機連携制御機能, 値になるように周波数制御しており,圧力設定値を上 運転状態や周囲環境を総合的に判断して必要なときの げると冷凍能力と消費電力が減少し,下げると冷凍能 み除霜を行なうファジイ制御機能などを搭載している。 力と消費電力が増加する特性を持っている。そこで, 店舗ターミナルはWeb機能を有するとともにセン 複数のショーケースの負荷のうち,1台でも冷凍能力 ターサーバとのデータ通信により,ショーケースをは 不足と判断すると圧力設定値を下げて冷凍能力を増加 じめ,店舗内に設置される照明,空調機,各種センサ させ,逆にすべてのショーケースが冷凍能力過剰と判 などの状態を収集して総合的な監視・制御を行なう機 断すると圧力設定値を上げて冷凍能力を減少させ,冷 能を装備している。 凍能力に過不足がないと判断すると圧力設定値を維持 する。 4−1 ショーケース・冷凍機連携制御の概要 このアルゴリズムにより,複数のショーケースの負 ショーケース・冷凍機連携制御機能とは,システム 荷に対する冷凍能力を常に最適に保ち,省エネを実現 コントローラにてマイコン制御のインバータ冷凍機を している。また,従来は,冷凍機の圧力設定値を季節 総合的にコントロールする機能で,富士電機独自の制 ごとに手動で設定していたが,季節,昼夜,天候によ 御方式である。年間の負荷変動の大きいショーケース らず,常に最適な圧力設定値に自動でチューニングで は,夏場の最大負荷に基づき冷凍機が選定されるため, きるため,複雑なエンジニアリングも不要である。 冬場には時として冷凍能力が過分の状況になっている。 システムコントローラはショーケースコントローラか 5.実店舗での省エネ実績 ら個々のショーケースの運転状況を確認し,総合的に 富士電機のショーケース・冷凍機連携制御は,平成 必要な冷凍能力を判断(需要) ,冷凍機の容量を制御 10年度省エネ大賞「省エネルギーセンター会長賞」を すること(供給)で適正な冷凍能力を維持する(需給 受賞しており,多くの店舗への導入実績がある。 連携制御) 。 図−7は,2005年に省エネ効果を計測した実測結果で ショーケース・冷凍機連携制御アルゴリズムの概略 ブロックを図−6に示す。 ある。店舗内の4つの系統で検証を行なった。冬期, 中間期,夏期のそれぞれ約1週間程度,固定運転(イ 個々のショーケースの負荷は,ショーケースの温度 ンバータ周波数を季節に応じて固定値とする運転)を 制御を行なっている電磁弁のON/OFF情報(電磁弁 行ない,データを計測する。ショーケース・冷凍機連 運転情報)から判断する。電磁弁ON(冷却ON)時間 携制御運転のデータは,固定運転を行なった日と同じ が長い場合は, 「ショーケース負荷>冷凍能力」,電磁 ような気象状況(主に外気温度)の日を抽出し,デー 弁OFF(冷却OFF)時間が長い場合は,「ショーケー タ比較を行なった。 ス負荷<冷凍能力」 ,それ以外は「ショーケース負荷 圧力設定値増減 システムコントローラ 電磁弁運転情報 最近では,より省エネ効果が大きくなるようなアル ゴリズムを開発し,更なる効果を挙げている。 スーパーマーケットでは,1台の冷凍機に接続する + インバータ冷凍機 − ショーケース ショーケース ショーケースは,同じような温度帯で構成されるため ショーケース 比較的運転状態が安定しやすく,トータル制御運転の ショーケース 省エネ効果が大きい。しかし,コンビニエンスストア 吸入圧力値 図−6 ショーケース・冷凍機連携制御アルゴリズムの 概略ブロック 42 この店舗では,年間平均省エネ率30.7%であった。 では,弁当・惣菜,飲料,乳製品など様々な温度帯の ショーケースを1台の冷凍機に接続するため負荷のば 月刊「省エネルギー」 特集/エネルギー需給最適化を実現する最新IT化技術 3000.0 果が小さかった。2005年に 平均省エネ率6.3%であっ た。 そこで,各ショーケース の負荷のバラツキに対応し, 2系統 3系統 8系統 23.0 22.4 12.3 2219.1 冬期 0.0 夏期 −3.9 −8.2 2000.0 50.0 外気 12.4 2500.0 冷凍機消費電力量 〔kWh/日〕 効果検証した結果は,年間 1系統 省エネ効果 △27.7% 中間期 −50.0 外気温度 〔℃〕 らつきが大きく,省エネ効 1604.9 1495.9 1500.0 圧力設定値の増減条件をよ 省エネ効果 △29.4% 995.5 1000.0 −100.0 省エネ効果 △34.6% 978.3 −1500.0 702.4 500.0 り細かく設定できるように −200.0 0.0 することで,違う温度帯の 固定運転 ショーケース・冷凍機 連携制御運転 固定運転 ショーケース・冷凍機 連携制御運転 固定運転 ショーケース・冷凍機 連携制御運転 −250.0 図−7 スーパーマーケットでのショーケース・冷凍機連携制御実証結果 ショーケースを接続しても, 省エネ効果が出るようにア 図−8に2008年に実施した 4000 新しいアルゴリズムによる 結果を示す。 こちらの検証では,毎月, 約1週間程度,標準インバ ータ運転を行ない,データ 冷凍機消費電力量 〔kWh/月〕 省エネ効果を計測した実測 を計測した。 ショーケース・ 25 ショーケース冷凍機 連携制御運転 3500 コンビニエンスストアでの 30 平均気温 標準インバータ (制御無し) 20 3000 15 2500 10 2000 0 平均外気温度 〔℃〕 4500 ルゴリズムを改良した。 1500 1000 冷凍機連携制御運転のデー タは,標準インバータ運転 を行なった日と同じような 気象状況の日を抽出し,デ 500 0 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 図−8 コンビニエンスストアでのショーケース・冷凍機連携制御実証結果 ータ比較を行なった。 この店舗では,標準インバータ運転と比較して,年 今後とも,お客様と協力し,店舗全体を見据えた省 間平均省エネ率13.6%となり,従来の約2倍の省エネ エネシステムやエネルギー管理システムを提供してい 性能を実現した。 く所存である。 6.おわりに ショーケース・冷凍機連携制御の実績について紹介 した。店舗では,空調と冷凍設備の運転を最適にした 省エネ制御,デマンド制御なども行われており,最近 では,自然エネルギー利用や蓄電池を利用したピーク 参考文献 1)須藤晴彦他:店舗向け省エネルギー制御システム,『富士 時報』Vol.80 No.4, 2007, P280-283 2)須藤晴彦他:店舗総合省エネルギー制御システム,『富士 時報』Vol.78 No.3, 2005, P215-219 3) 石山修他:富士トータル制御システム 「エコマックスⅤ」, 『富 士時報』Vol.73 No.3, 2000, P173-175 シフトなども行なわれつつある。 Vol.64 No.10 2012 43