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第2回 リモートセンシングの基礎とデジタル画像の基礎的理解

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第2回 リモートセンシングの基礎とデジタル画像の基礎的理解
第2回
リモートセンシングの基礎とデジタル画像の基礎的理解
- MultiSpec による画像処理入門-
担当:近藤昭彦
リモートセンシング画像に関する基本的な操作を習得することを目的とします。今回
は MultiSpec を使ってマルチスペクトル画像の解析方法について学びます。MultiSpec は、
米国パデュー大学が開発した、多バンド画像(マルチスペクトル画像)の解析に特化し
たプログラムです。フリーウエアとして公開されているプログラムですので、誰でも無
償で使うことができ、パワフルなツールとして使うことができるでしょう。
ステップ1:MultiSpec 入門
1)作業用サンプルファイル
MultiSpec は多くの画像を読み込むことができます。既知のフォーマットの画像でなく
とも、画像パラメーター(ライン数、ピクセル数、バンド数、ヘッダーサイズ等)がわ
かっていればマニュアルで入力して、MultiSpec に取り込むことができます。
2001 年 11 月 27 日撮影のランドサット ETM+画像を使います。
・ファイル名:chiba011127.bil, chiba011127.r10
・ライン数、ピクセル数:5200 × 4800
・バンド数:8(熱赤外がローゲイン、ハイゲインの二バンドあるため)
・ビット数:8
注)*.bil は BIL 形式、*.r10 は remote-10/win が使う RESTEC 形式
BIL 形式、BSQ 形式については資料末の Appendix を参照のこと。
remote-10/win についてはホームページの 2009 年度の資料を参考のこと。
2)画像表示
・MultiSpec を起動します。
・Text Output ウインドウが現れま
すが、ここに処理結果の詳細が表
示されます。
・メニューバーの機能を少しずつ
覚えてください。
・画像データの読み込みは[File][Open Image]と進みます。
1-1
・ここでは chiba011127.bil を選択し
ましょう。
・このファイルはライン数 5200、ピ
クセル数 4800、バンド数 8 の BIL フ
ァイルでした。
・Size Specifications のボックスで画
像のサイズを指定します。
注)*.bil ファイルはヘッダーがあり
ません。*.r10 を選択したときは File
Header Bytes が 512 バイトを入力して
おく必要があります。
・Band Interleave Format は BIL-Band
Interleave by Line を選択しておきま
す。
・Data Value Type は TM(ETM+)です
ので 8-bit Unsigned integer になりま
す。
・以上の入力が終わったら OK を押します。
・Set Display Specifications for:ウ
ィンドウでは画像表示の方法を選
択します。
・ Display の Type ボ ッ ク ス で
3-Channel Color を選択します。
・すると、Channels ボックスが現
れますので、RGB(赤、緑、青)
に対応するバンド(チャンネル)
を指定します。
・RGB=432 はフォールスカラー
画像になります。
・Enhancement は画像のストレッ
チングの方法を指定します。
・ここでは Stretch に Linear、Min-max は Clip 2% of Tails を指定しておきます。
1-2
・画像データのヒストグラムを計算
しておきましょう。
・*.sta が生成され、以後の画像表示
が速くなります。
(Interval は 1 でよい)
・画像が表示されました。
・画像が暗いようでしたら、
[ Processor ] -[ Display Image] の
Enhancement ボックスの Min-max
で、User Specified を選択し、RGB
各プレーンの表示レンジを変更し
ます。
・ここでは各プレーンの最大値を
100 にすると見やすくなります。
注)各バンドのヒストグラムを参
照して、最も情報の多い範囲を指
定すれば見やすい画像になる。
注)拡大・縮小はメニューの[山マーク]、[x1]で 1:1 画像
1-3
ステップ2
トレーニング・サンプルの選択と教師付き分類
1)分類項目の決定
教師付分類(Supervised Classification)では分類項目を解析者が決定しなければなりま
せん。
2)画像の表示
3)トレーニング・サンプル(トレーニングエリア)の選択
トレーニング・サンプルはトレーニングエリアとも呼ばれるが、ここでは MultiSpec
マニュアルに従い、トレーニング・サンプルと呼ぶことにする。
・[Processor]-[Statisctics...]を選択
し、Set Project Options ボックスを
表示
・Channels to Use で Subset を選択
注)ETM+はバンド6にローゲイ
ンンとハイゲインの二種類のデー
タが入っているため、8 バンドの
データの 6,7 番目は熱赤外バンド
になる
1-4
・チャンネルの 6,7 は熱赤外バン
ドですので、クリックして選択を
解除する
・OK をクリック
・Set Project Option ボックスで
OK をクリック
・Project ボックスが表示される
・Class が New になっていることを確認
・表示画像上で矩形領域あるいはポリゴンを入力
注)画像を選択(画像上でクリック)するとカーソル形状が+になる
注)Polygon Enter のチェックボックスを On にすると任意の形状の
トレーニング・サンプルを選択できる
・領域選択後、Add to List ボタンを押すと、Define Class and/or Field Description ボック
スが表示される
① Class が New であることを確認
② Enter Class Name でクラスの名称を入力(英語システムであるため、アルファベット
名が望ましい)
③ Enter Field Identifier でトレーニング・サンプルの識別子を入力
1-5
たとえば、Water というクラスに対して Tokyo Bay, Pacific, Sagaminada のように複数の
領域を指定することができる。その際は、Class ボックスで既入力のクラスが選択できる。
4)教師付分類の例
分類したい項目として下記の5つについてトレーニング・サンプルを設定します。
・Water
東京湾
・Urban
東京都区部
・Residential
習志野周辺
・Forest
房総
・Field
富里付近の台地
注)上記は例です。分類項目は作業者自身が決めること。
分 類 に 進 む に は 、 [ Processor ] -[
Clasify ] -[
Set Classification
Specification ]と進む。
・教師付分類法として複数の手法を
選択できますが、ここでは最尤法
(Maximum Likelihood)を使います。
・Write classification results to では、
Disk file をチェックするとフォーマッ
トの指定が可能になりますが、ここ
では EARDAS.GIS を選択しておきま
しょう。
・Image Window Overlay をチェックし
て、Add new overlay を選択しておく
と、表示されている画像の上に分類
結果が重ね書きされます。
・OK をクリック
1-6
・結果が表示されました。
5)分類の改善
分類結果が思わしくない場合、原因としては下記の事項が考えられます。
・トレーニング・サンプルが適切ではない。
解決策:新しいトレーニング・サンプルを設定する
・土地利用と土地被覆の峻別がうまくいっていない
解決策:一つのクラスに対して複数のトレーニング・サンプルを設定する。
・その他
山地の森林で南斜面と北斜面で輝度が異なる場合は、それぞれ独立にトレーニング・
サンプルを設定する。
6)結果のセーブ
・*.gis データをロード
・*.tif としてセーブ
ステップ3
教師なし分類
1)画像の表示
2)メニューの選択とパラメーター設定
MultiSpec で は 二 つ の ク ラ ス タ ー ア ル ゴ リ ズ ム ( シ ン グ ル・ パ ス ・ ク ラ ス タ ー と
ISODATA タイプの繰り返しアルゴリズムが選択できます。
1-7
・ [ Processor] -[ Cluster] で Set cluster
specifications ウ イ ン ド ウ を 表 示 さ せ 、
Algorithm ボックスで Single pass あるい
は ISODATA のどちらかを選択します。
・Write Cluster Report/Map To ボックス
で 、 Cluster mask file お よ び Image
window overlay をチェックしておくと、
ディスクへの結果の書き込み、結果の
重ね書きが行われます。
・Single pass を選択すると、Set Single
Pass Cluster Specifications ボックスが表示
されます。
・ここでは、デフォールトのまま OK を
押しましょう。
注)Interval は1としておきましょう。
1-8
ステップ4
応用-世界の植生分類
1980 年代の初頭に NOAA/AVHRR センサーによる観測データから世界の植生指標デー
タ(GVI:Global Vegetation Index)が作成されたことにより、全球の植生分布や、大気 CO2
濃度と植生のダイナミックな関係が明らかにされ、Global Change に対する衛星リモート
センシングの役割の重要性が認識されるようになりました。
ここでは NOAA/AVHRR による NDVI データセットである PAL(Pathfinder AVHRR
Land data)を使って世界の植生分布に関する解析を試みましょう。
1)データ
1982 年と 1998 年のデータを用意しました。画像パラメータは下記の通り。
・分解能 0.1 度
・10 日最大値コンポジット(MVC)
・ライン数:1799
・ピクセル数:3599
・データタイプ:Unsigned 8bit Integer
2)画像表示
・ファイル名は ndvi_82 と ndvi_98
・画像の形式は BIL
・PAL の画像サイズ、1799 ピクセル、
3599 ライン、36 チャンネルを入力し
ます。
・Band Interleaved Format は BIL、Data
Value Type は 8-bit Unsigned Integer で
す。
1-9
・ Displey の Type は 1-Channel
Greyscale で、Channel は 16 とし
ます。
注)16 チャンネルは 6 月の第一
旬に相当します。
[演習]
季節ごとの画像を表示して、NDVI の値を比較してみよう。
・ 次 に 、 Display の Type を
3-Channel Color として、RGB に
25,16,1 チャンネルを指定します。
これは、それぞれ 9 月第 1 旬、6
月第 1 旬、1 月第 1 旬に相当しま
す。
・3 時期とも NDVI が高い地域は
城、3 時期とも NDVI が低い地域
はグレーに表示されます。
・両極の黄色系、青系は冬季に日
射が無くなる地域です。
3)教師なし分類
1-10
この PAL データは 1 月第 1 旬から 12 月第 3 旬までの 36 のチャンネルを持ちます。植
生はその群系に応じて特有の NDVI の季節変化をします。
Single Path Cluster アルゴリズムで分類してみましょう。Critical distance は下記のよう
に設定します。
Critical distance(first line)
50
Critical Distance(other line) 150
Critical distance により結果が異なることを確認してください。
・解析前に矩形の解析領域をマウ
スで指定しておくと、その部分だ
け分類が行われます。
・結果を解釈して見ましょう。
[演習] アジアにおける植生帯
の分布について調べてみよう。
■
Appendix
画像データの形式
a.画像データとは何か。
ひとつの画素の明るさがデジタル値(DN:Digital Number)で表され、二次元の配列の中
に格納されたデータ。DN をコンピューターで明るさ表示すると画像になります。
DN は 8 ビット、16 ビット、32 ビット等の二進数が使われます。たとえば、8 ビット、16
ビット整数では下記の値域の整数を扱うことができます。
unsigned char
signed char
unsigned short
signed short
符号なし 8 ビット整数
符号付き 8 ビット整数
符号なし 16 ビット整数
符号付き 16 ビット整数
0-255
-128 ~+127
0 ~ 65,535
-32,768 ~ 32,767
型の宣言名はコンパイラによって異なるので注意。
ランドサットTMの場合、DN は符号なし 8 ビット整数で表される。よって、一つの
画素は 0 から 255 の 256 段階の明るさを持つ。この DN は別に与えられている変換式に
より放射輝度に変換することも可能だが、DN のまま画像処理を行うことができる。
注)10 進数の 2 は二進数では 10 と表記されます。10 進数の 4 は二進数では桁があがっ
て 100 となります。これは 3 ビットになり、3 ビットで表される最大の二進数 111 は 10
進数では 7 になります。よって、3 ビットでは 0 ~ 7 の 8 段階の整数を表すことができ
ます。同様に、8 ビットでは 10 進数の 0 ~ 255 の 256 段階の整数を表すことができます。
1-11
b.画像の格納形式- BSQ と BIL -
一つの画像は DN の二次元配列です。では、多数の波長帯で観測された多バンドのデ
ータはどのように格納されているのでしょうか。
BSQ(Band Seaquential):一つの波長帯(バンド)の画像を二次元の配列で表し、バンド分
を連結したデータ
BIL(Band Interleived by Line):ラインごとにバンド分のデータを並べたデータ。
左の図は 3 つのバンドを持つ 3 × 3 の画像の格納方法を表している。
BSQ ではバンドごとに完結した 3 つの画像
データが連結されている。
BIL では1ラインごとに全バンドのデータ
が並んでいる。かつて記憶装置として磁気
テープが使われていた時は、連続的に読み
込みながら画像化ができた。
現在はランダムアクセスのできるハードデ
ィスクにデータを格納するので、どちらを
使っても良い。
そのほか、BIP 形式もある。
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