...

都市林の生態学的研究 I.宝塚市ニュータウン内のオオバヤシャブシ

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

都市林の生態学的研究 I.宝塚市ニュータウン内のオオバヤシャブシ
人と自然 Humans and Nature, No.7,73 ―87, October 1996
原著論文
都市林の生態学的研究
I 。宝 塚 市 ニ ュー タウ ン 内 の オ オ バ ヤ シ ャブ シ ーセ イヨ ウ イボ タ群 落
服 部
保1)
・澤 田 隹 宏2)
・小 舘 誓 治1)。
浅 見 隹 世3)
・石 田 弘 明1.)
Ecological Studies on the Municipal
Comm.
in the New
Seiji Kodate"
Town,
, Kayo
Forest. I. Alnus
Takarazuka.
Asami3) and
Hiroaki
Tamotsu
sieboIdiana-Ligustrum
Hattori1', Yoshihiro
vulgare
Sawada2',
Ishida1'
Alnus sieboldiana forest plantations, distributed in the new
town
of Takarazuka,
Hyogo
Prefecture, were investigatedfrom the phytosociologicalviewpoint, in order to clarifythe actual
conditions, floristiccomposition and ecologicalproperties.The
to treat these plantations as a new
vulgare community).
vulgare, Mahonia
The
municipal forest community
community
that it is reasonable
(Alnus sieboldiana-Ligustrum
is floristicaly
characterized by the presence of Ligustrum
japonic,a,Ligustrum
domestica etc., which
resultsshow
lucidum, Euonymus
japonic us,Laurus
nobilis,Nandina
are endozoochory, and the absence of Castanopsis cusp idata,
Quercus glauca
etc. which
are acorn-making
trees (barochory) . The
community
and other communities
distinguishing contrasts between
occur in life form spectrum,
diversity, naturalized plants ratio and gardening-landscaping
remarkable that the community
dispersed by birds. The
contains many
community
disseminule
the
form, species
plants ratio. It is especially
gardening-landscaping plants whose
seeds are
is recognizably a typical municipal forest developed in an
urban environment.
Key words: Alnus sieboldiana,disseminule form, forest plantation, gardening-landscaping plant,
municipal forest,naturalized plant
は
じ
め
タウンで ある。 かつては アカマ ツーモチ ツツジ群 集 が一
に
帯を覆 っていたと 思われ るが, 現在 では, 人工 法面に オ
カ バノキ科 ハン ノキ属 に含 まれる オオバヤシ ャブ シは
オバヤシャブ シの優占す る樹 林 が都 市林とし て広がって
ヒ メヤシ ャブ シやヤ シャブシな どの他 の ハン ノキ属 の種
いる。 この オオバヤシ ャブ シ林は1970年から1975年 の種
とと もに根粒菌 との共生 によ る空 中窒素固定 能を持 ち,
子吹 き付け の法面保 護工に よる もの で, 種子吹 付から約
養分 の乏しい 火山砂礫地 や海岸断 崖の崖錐地 など にもよ
20年 から25年 が経過 し た現在 では そ の林冠 高は8m を越
く生育 する。 このよ うな特性 から, 崩壊斜 面の砂防 や人
え, また林内には 多様な植物 が定着 し, 法面 保護と植生
工法面 の土壌保 全や緑化 等を 目的 とし た植 栽に よく利 川
景観あ るいは都 市林 の形成 とい う点 では初期 の目的を十
さ れ, そのた めオ オバヤシ 申ブ シ植林は全 国的に 広がっ
分達成 したといえ る。し かしな がら, オオバヤ シャブ シ
てい る。
の花粉 によって多数 の花粉症 患者 が発生して いるこ とが
兵 庫県宝 塚 市の中 山桜 台・中山 五 月台は1970年 代 に海
抜150m から350m の丘陵地 を造成 してっ くら れたニ ュー
1)兵 庫 県 立 人 と 自 然 の 博 物 館
Hyogo,
Yayoigaoka 6, Sanda,
2)パ シ フ ィ ッ ク
生 物 資 源 研 究 部 Division of Biolo
明ら かとなり, 地域 住民 より オオバヤ シャブ シ林の林 相
改良に ついての 要望 が出 される ようになっ た。
gicalReso
urces,Museumo
f Nature and Human Activities ,
669-13 Japan
コ ソ サ ル タ ソ ツ 株 式 会 社 Pacific Consultants Co.,
Ltd.,
Nishinakajima 4-3-24, Yodogawa-ku,
Osaka,
532
Osaka,
533
Japan
3)里 と 水 辺 研 究 所 Institute of Rural
Japan
&
Urban Ecology, Higashinakajima 4-11-32-602,
Higashiyodogawa-ku,
花 粉 症 対 策 上, オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ の 伐 採, 他 種 へ の転
換 とい っ た 林 相 改良 が望 まれ る が, そ れを 進 め る に あ たっ
見ら れる. 法面造成 の当初に張 られた表層土 保護用 のビ
ニ ール製 ネットは 現在も劣化 せず 機能してい る.
て, ま ず オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ 林 の現 状 を 明 ら か に す る と と
もに 生 物 多 様 性, ビ オ ト ー プ, 住 民 に よ る植 生 管 理, 環
2. 調 査 方 法
境林など の新しい視点 からの都市林 づくりを住民 と行政
1995年 から1996年 にかけ て, オオバヤ シャブ シ林お よ
が 一 体 と な っ て 計 画 す る 必 要 が あ る. 本 論 文 で は そ の 第
び周辺 のアカマ ツーモチツ ツジ群集, コジイーカ ナメモ
一段 階 と し て オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ 林 の階 層 構造, 種 類 組 成,
チ群集 の調査 を, 植物社 会学的 調査 方法(Braun-Blan-
種 多 様 性, 土 壌 等 に つ い て 調 査 を 進 め, 周 辺 の 他群 落 や
quet, 1964)に基 づ いて 合計29地 点 で行 った. また, 出
オオ バヤシャブシの自然 林との比較を 行いな がら本樹林
現種の被度 パーセ ントに基づ く多 様度指数(Simpson's
の 特 性 に つ い て 考 察 し た. そ の 結 果 にっ い て 報 告 す る.
1/d, Shannon's H') を算出す るため, オオバヤシ ャブ
シ林と アカマ ツーモ チツ ツジ群集 では100m2, コジイ ー
調 査概 要
カ ナメモ チ群 集で は225m2 の方形 区 を合計7 区設 置 し,
出 現種の被度 を各階層 ごとに パーセントで測定 し, 記録
1. 調 査 地 の 環 境
した.
調 査 は 兵 庫 県 宝 塚 市 の ニ ュ ー タ ウ ンで あ る中 山 桜 台・
中 山五 月 台 一 帯 の人 工 法 面 上 の オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ林 を 対
結果 お よび 考 察
象 と し た. 調 査 地 の 位 置 はFig 。1に 示 し た. 標 高 は150m
か ら400m,
年 平 均 気 温 は14 °Cか ら15 °C(気 象 庁,!958),
年 降 水 量 は 約1300mm(
1. 種 類 組 成
気 象 庁,1959) で 典 型 的 な 瀬 戸 内
調査 によって 得た21の オオバヤ シャブ シ林の植生調 査
型 の気 候 区 に 含 ま れ る. 地 質 は 流 紋 岩 で, 地 形 は 造 成 さ
資料を 検討 した結果, 切土法面 と盛土法面 との差や周辺
れて い る た め 原 地 形 は ほ と んど 残 っ て お ら ず, テ ラ ス状
の残存 樹林との遠近 などの立地 条件に よる差はあ まり認
の平 坦 地 と や や 急 傾 斜 な 人 工 法 面 が 交 互 に 広 が っ て い る.
めら れなかった ので, 出現頻度 の高い順 になら べた常在
平 坦 地 の 部 分 に は 宅 地 や 公 園 等 が建 設 さ れ, 個 人 住 宅 の
度表(Appendix 1) を作成 した.
庭 園, 公 園 等 に は 各 種 の 植 物 が植 栽 さ れ て い る. 人 工 法
隹在 度の高い種 として オオバヤシ ャブ シ, ミツ バアケ
面には 今回の調査対象 である種子吹 き付け等 によって成
ビ, アオツヅ ラフ ジ, ヒイ ラギ, ベニ シダ, サルト リイ
立 し た オ オ バ ヤ シ ャブ シ の 優 占 林( 林 齢20 年 か ら25 年) が
バラ, ヘ クソカ ズラ, セイヨ ウイ ボタ, ヤッ デ, ナン テ
ン, ヤマ ウル シ, クロモ ジ, マ ンリョ ウ, ツタ, ヒイ ラ
ギ ナンテン, イタド リ, ネズミモチ, クスノキ, ミ ヤコ
イ バラなどがあげら れる.
オオバヤシャブ シ林 と周辺の山地 や丘陵地 に広 がる二
次林の アカマツ ーモチツツジ群集, 自然林 のコジイ ーカ
ナ メモチ群 集さら に オオバ ヤシ ャブ シの 自然林(先駆 性
夏 緑低 木林)と の種組成 を比 較す るた めに総 合常在度 表
を 作成 した(Appendix 2). なお, オオバ ヤシャブ シ自
然林 にっ いて はオ オバヤシャブ シーニオイ ウツギ群 集と
オオバ ヤシ 十ブ シ ーハコネウッ ギ群集 が報告さ れて いる
が(村上,1986;宮脇・奥田,1990), 村上(1986)の オオバヤ
シャブシ ーニ オイ ウツギ群集 の組成表 と比較した.
本地 域の オオバヤ シャブ シ林は セイヨウイ ボタ, ヤツ
デ, ナンテ ン, マンリョ ウ, ヒイ ラギナンテン, クスノ
キ, クロモ ジ, ミヤ コイ バラ, シ ャリンバイ, コブ シな
どの種 によって他 の3群落 と明ら かに区分さ れる. 近年,
都市近郊 の樹林 には緑化樹や庭 園樹に由来 する外国産 樹
種の生 育が認めら れるように たったが(唐沢, 1995),本群
落の ように, セ イヨウイボ タ, ヒイ ラギナンテン, トウ
ネズミモチ, ゲ ッケイジュなど の外国産樹種 を種数・個
Fig.l. The
black dot.
locationof study sitewhich is shown
体数と もに多量に含 む群 落は きわめて稀であ り, コナラ
ーアベマ キ群 集, エノキー ムクノキ群 集, マ ント群落 な
Fig. 2. Vegetation profi!e of phytocoenosis in Alnus siebold
・ana-Ligit
、s
加im
四 醂αre Comm
。
1 : A Inns石油θ肩衝 覘(オ オ バヤ シシ ャブ シ),2:Finns
劭 訂 加 湎 か凹 かα(ヒ イ ラ ギ ナ ンテ ン),4:Akebia
5: 乙igustrom lucidun 衣ト ウ ネ ズ ミモ チ),6:
7: 片 加sporum
tobiraiト ベ ラ),8:C
9: フ
スlex
rot凹 面 匸クロ ガ ネモ チ),10:F
thumbergii(クロ マッ ハ
trifoliatai
ミ ツ バ アケ ビ),
£・
りこy
α ノ茆 回 奴7(ヒ サ カ キ),
Fig.3. Vegeation profile of shrub and herb layers m A
Comm.
1 : Alnus
百劭りldiana{ オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ),2:Nandi
凹 加latifolius var. japo・汝 心( チ ヂ ミ ザ サ),4:
ぼ四/砌a 功 かulatusiア オ ツ ヅ ラ フ ジ),
6:Mahonia
αたm jap onかα(ヤツ デ), 11:Dioscorea
china{ サ ル ト リ イ バ ラ),9:
japonicai
japonicaiヤ マ ノイモ),12 : Chlora がh lis5/汝α治s(セン リ ョ ウ),13 : Nandina
11:7)
心朋心配α(ナン テ ン),14 : ノ1
㎡・辿z rm7 α衍(マ ン リ ョ ウ15 : 7?
加 加s( コ ブ シ), 14:?
かα(ヤマ ウ ル シ),16 : Oplismeus
加s 醵 溏叱E
凹 加/αtifolius var.αoniciisi
7
チ ヂ ミ ザ サ),
17 : £汾心 加四 回 な
『 ベセ イ ヨ ウ イ ボタ 』。
In us sieboldian α-Ligust 忽m
回
心 心 心 配 α(ナ ン テ ン),3:Oplh
凡itsia japonicai ヤ ツ デ),5:Ardisia
ヒ イ ラ ギ ナ ン テ ン),7:Akebia
vulgari?
四 銘s
crenata{マ ン リ ョ ウ),
加 かliatai マ ツ バ ア ケ ビ),8:S
m ilax
£四 回5 nobilisiゲ ッ ケ イ ジ ュ), 10 : £・卯 がx
・urn vulg,αg( セ イ ヨ ウ イ ボ タ),
び ゅ ね?riserythro 初 忽( ベ ニ シ ダ), 12 : Cocxul 心 りrbicidatusi ア オ ツ ヅ ラ フ ジ), 13 : Magnolia
りyy卯 回 心cuspidatm
鹹 イ タ ド リ).
ど 北 摂 地 方 に 分 布 す る ど の群 落 と も 組 成 的 に 明 ら か に 異
ケビ, カエデド コロ, ツ タ, ミヤ コイ バラなど のツル植
な る. 本 群 落 江上 述 の 種 を 有 す る 他, ア カ マ ツ ーモ チ ツ
物 も多 い. 被度は20% 前後でそ れほど高 くはない. 下層
ツ ジ群 集 と は ソ ヨ ゴ, コ ナ ラ, モ チ ツ ツ ジ な ど, コ ジ イ
の第2低木層は約2.5m で被度は70
ーカ ナ メモ チ 群 集 と は コ ジイ, カ ナ メモ チ, ナナ メノ キ,
多 くの植物が生 育してい る. ヤツデ, ト ウネ ズミモ チ,
ヤブ ッ バ キ, ヤマ モ モ, ヤ ブ ユ ッケ イ な ど, オ オ バヤ シ ャ
コバノミツ バツツジ, ヒ サカキ, クロガ ネモチ, セイヨ
ブ シ ー ニ オ イ ウ ツ ギ群 集 と は ガ ク ア ジ サ イ, オ オシ マ カ
ウイボタ, シャリン バイ, ヒ サカキ, ネズミモチ, エノ
ソ ス ゲ, カ ジ イ チ ゴ, ハ チ ジ ョ ウ イ ボ タ, ラ セ イ タ タマ
キ, コブシ, ムクノキ, ミヤマガマ ズミなどが多い. 草
アジ サ イ, シ チ ト ウ ス ミレ など を そ れぞ れ欠 くこ と に よっ
本層 は約0.3m で 被度は20
て も区 分 で き る. 以 上 の 結 果, 当 地 域 の オ オ バ ヤ シ ャブ
る各種樹 木の実生 や幼木の他, チヂ ミザサ, ベニ シダ,
シ林 を 識 別 種 の 中 で 常 在 度 が 高 く, し か も都 市 林 と い う
イ タドリ, スイカ ズラ, ツタ, ヤブ ラン, コウヤ ボウキ,
80% とたい へん高く,
30% で あ る. 上 層に生 育 す
特 性 を よ く示 し て い る セ イ ヨ ウ イ ボ タを 用 い て, オ オ バ
ナガ バタチ ツボスミレ, ノガ リヤ スなど の草本や ツル植
ヤシ ャ ブ シ ー セ イ ヨ ウ イ ボタ群 落 と し て ま と め た. な お,
物 が生育 してい る. 本群 落 の階層 模式 について はFig. 2
セイ ヨ ウ イ ボ タぱ ヨ ウ シ ュ イ ボ タ と も呼 ば れて い る が,
および3に示 した.
上 原(1961) に 基 づ い て セ イ ヨ ウ イ ボ タ を 採 用 し た.
オ オ バヤ シ ャブ シ ーセ イ ヨ ウイ ボ タ群 落 と オオ バ ヤ シ ャ
3. 種 多 様 性
ブ シ ー ニ オ イ ウ ツ ギ群 集 の 種 組 成 を み る と, レ クバ ア ケ
オオバヤシ ャブ シーセイ ヨウイ ボタ群落, 周辺部 のア
ビ, ア オ ツ ヅ ラ フ ジ, ヘ ク ソ カ ズ ラ, ウ ツ ギ, ツ タ, ノ
カマ ツーモチ ツツジ群 集・ コジイーカ ナメモチ群集お よ
ブ ド ウ, ス イ カ ズ ラ, ツ ル ウ メ モド キ, ノ イ バ ラ な ど の
び典型 的な 雑木 林であ る北摂 地方 の クヌギ群落 の合計4
ノイ バ ラ クラ スの 種 や ア カ メガ シ ワ, ク サ ギ, カ ラ ス ザ
群落 に つい て, 出 現種 数 や種 多様 度指 数(Simpson's
ン シ ョ ウ な ど の ア カ メガ シ ワ 群 団 の 種 を 共 通 に 含 み, ま
l/d, Shannon' s H' )を 比較した(Table 1).
た 変 種 レ ベ ル の 対 応 種 で あ る ハ コ ネ ウ ツ ギ( ニ オ イ ウ ツ
種数 にっし て みるとオ オバヤシャブ シーセイヨ ウイ ボ
ギ), ム ラ サ キ シ キ ブ( オ オ ム ラ サ キ シ キ ブ), イ,タド リ
タ群落ぱ アカマ ツーモチ ツツジ群 集や コジイーカ ナメモ
( ハ チ ジ ョ ウ イ タ ド リ), ナガ バ モ ミ ジ イ チ ゴ(モ ミ ジ イ
チ群 集よりもはるかに多 く, クヌギ群落に匹敵 してい る.
チ ゴ)な ど も 有 し て い る. こ れ ら の 共 通 種 は 攪 乱 の あ る
服部ら(1995)は兵庫県 から大阪府 下にかげて の コナラー
立 地 か 遷 移 初 期 段 階 に 出 現 す る. 自然 性 裸 地 に 自 ら 侵 入
アベマ キ群集 や クヌギ群落 につい て, 100m2 あた りの出
し た か, 人 工 裸 地 に 人 に よ っ て 播 種 さ れ た か と い う 差 は
現種数を調 査し, 平均 出現種数を40から50種 としてい る
あ る に ぜ よ両 群 落 は 共 に 裸 地 に 侵 入(播 種) 後 の遷 移 初 期
が, ほぼ 同程度の種数 を有す るオオバヤ シャブ シーセイ
段 階 に あ る. こ の よ う に両 群 落 と も同 じ 遷 移 初 期 段 階 に
あ る た め に多 く の種 が共 通 に出 現 して い る と考 え ら れ る.
Table 1. Number
of species and species diversityin quadrats
of four communities(1
2. 階 層 構 造
本 群 落 の階 層 は3 な い し4 層 に 分 化 し, 高 木 層 は8m か
ら14m
Comm.,
' Alnus sieboldiana-Ligustrum vulgare
2 ・ Rhododendro
macrosepali-Pinetum
3 ・ Photinio-Castanopsietum
Comm.
in the Hokusetsu
area).
(平 均11m) に達 し て い る. オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ ー ニ
オ イ ウ ツ ギ群 集 や オ オ バ ヤ シ ャブ シ ー ハ コ ネ ウ ツ ギ群 集
と 比 較 し て も 本群 落 の 高 さ や 階 層 構 造 は よ く 発 達 し て い
る. 高 木 層 の 構成 種 と し て は, 優 占 種 の オ オ バ ヤ シ ャ ブ
シ の 他 に オ オ バ ヤ シ ャブ シ と 同 時 期 に植 栽 さ れ た と 考 え
ら れ る ヒ メ ヤ シ ャ ブ シ, ク ロ マ ツや, そ れ よ り 遅 れ て 植
栽 さ れ た と 考 え ら れ る ク ス ノ キ, ソ メ イ ヨ シ ノな ど が あ
げ ら れ る. 植 栽 種以 外 で は ツ タな ど の ツ ル 植 物 を 除 い て
高 木 層 に 達 して い る 種 は ない. 伐 採 な ど の 人 為 的 攪 乱 を
受 げ て い な い 植 分 で は 高 木 層 の 被 度 は 高 く, 林 冠 は ほ ぼ
閉 鎖 し て い る. 低 木 層 の 高 さ は 約6m 前 後 と な り2層 に 分
化 す る が 明 瞭 で は な い. 上 層( 第1 低 木 層) に は 植 栽 種 で
はあ るが成育不良 のため に高木層に達してい ない オオバ
ヤ シ ャ ブ シ, ヒ メ ヤ シ ャブ シ, クロ マ ツ な ど の 他, リ ョ
ウブ, クロ ガ ネ モ チ, ヤマ ザ クラ, ソ ヨ ゴ な ど の 自 生 種
が か な り 認 め ら れ る. ヤマ 广イ モ, カ ニ ク サ, レ ソバ ア
densiflorae,
cuspidatae, 4 ・ Quercus acutissima
(1) : Phytocoenosis, (2) : Tree layer,
(3) : Shrub and herb layer
ヨ ウイボ タ群落 は雑木林 なみ の種 の豊富 さを維持 してい
るこ とにな る.
現頻度20% 以 上の種 を用いて比 較した(Table 3).
Table 3 よ り明 らか な よう に オオ バヤ シ ャブ シ ーセ
オオバ ヤシャブ シーセイ ヨウイ ボタ群落 の1/d, H' kよ
イヨ ウイボ タ群落 の散布型組 成の特 徴としては 第一に 被
共に 高木層で の種多様度指 数値 が他よ りも低くに 低木・
食散布型 がき わめて 多いこ とがあげ られる. 都 市部にお
草本層 で非常 に高くな る. 本群落 の高木層 が単純で下 層
け る植生 と鳥の関係 について, ①都市 林では鳥 によ る被
がたい へん多様 性に富 んでい ることを示 してい ると考 え
食散 布型 の植物 が多い こと(中 西,1994), ② それ らは庭
ら れる.
園・ 緑化 植物 や 林縁 生 ツ ル植物 に由来 す る こと( 唐沢,
1995;守 山ら,1984), ③鳥 に よる種 子散 布の距 離ぱ 通常
4. 生 活 形 組 成
100m 程 度, 長 くて も数T1.00m
であ ること(山 岡 ら,1977;
オオバヤシャブシーセイヨウイボタ群 落, オオバヤシャ
福井,1993;中西,1995), ④代 表的な鳥 散布型植物 はト ウ
ブ シーニオイ ウツギ群集, アカマ ツ ーモ チツツ ジ群 集,
ネズミモチ, イ ヌツゲ, エ ンジュ, ヘ クソカ ズラ, モチ
コジイ ーカ ナメモ チ群 集 の4群落 につ いて 生活形 組成 を
ノキに ベニシ.タソ, ネズミモチ, シュロ, アオキ, ナツ
比較 した. 生活形 は宮脇 ら(1994)を参考 に, 各群落 の構
ヅ:タの10種で あ ること(唐 沢,1995), ⑤ ヒョ ド リが散布
成種 を針 葉 樹(Ct), 照葉 高 木(Et), 夏緑 高 木(St), 照
者として最も重 要な役割を果た してい ること(守山,1992;
葉低 木(Es), 夏 緑低 木(Ss), ツル植 物(CI), 多年 生 草
唐沢,1995)などが報告されている. 本地域の オオバヤシャ
本(Ph), 一年 生草 本(Ap) に区分 し, 次 に生活形 組成 を
ブシ ーセイヨ ウイボ タ群落 の調査におい て も① 被食散布
求め, Table 2 に示 した. な お, 解 析に は 各群 落に お
凖 が多い こと, ②後述 す るようにそ の被食散布型 の種 の
け る出 現頻度20% 以上 の種を用い た.
多くは庭 園・緑化植物 に由来 するこ と, ③各所 に点在 す
オオバヤ シャブシ ーセイヨ ウイボ タ群落 の生活形組成
る オオバヤシ ャブ シー セイ ヨウイ ボタ群 落は 住宅 や公 園
の特 徴と してよ 一年生 草 本が出 現す るこ とと, Et, St,
から 各々100m 以内 の距 離 にあ ること, ④ 鳥散 布型 の代
Es, Ss, CI など がほぼ均 等 に見 られ ること などがあげ
表種上 記10種の うち8種 まで出 現す るこ と, ⑤ヒョ ド リ
ら れる. 人の立 ち入り, 伐採など攪 乱 が現 在 も続いて い
が多数生息 してい ることなど を認め たが, こ れらの調査
ること や後述す るよ うに被食散布型 に含 まれる様々 な生
結果は オオバ ヤシャブシ ーセ イヨ ウイボ タ群落 が典型的
活形 の植物 が雑多 に侵 入してい る状 況を示 してい ると考
な都市林で あること を示してい ると考 えら れる. なお,
えら れる.
他の都市 林と異な り, 本群落 はセ イヨウイ ボタ, ゲ ッケ
オオバヤシャブシーセイヨウイボタ群落とオオバヤシャ
イジュ, ナ ンテ ン, セ ンリョウなど の庭園樹を 多く含 む
ブ シーニ オイウツギ群集 の生活形 組成を比 較す ると, 前
ことを特 徴の一つと してい るが, 多数 の独立住宅 の庭 園
者に照葉 高木, 後者に多年 生草 本に比率 が高いとい った
に接 してい ること がその原因 となって いる.
相違 が認 めら れる. 後者 の階層構 造の未 発達 な点 など も
散布型紅 成の 第二 の特徴と して重力 散布型 が非 常 に少
考え合 わせ ると, 前者は 後者 よりも遷移段 階の進 んだ状
ないこと があげら れる. 都市 林におい ては種子 運搬者で
態と考 えら れる.
ある動物 が欠け るためにブ ナ科植物 の散布は重力 散布 に
頼らざ るを得ず, そ のため遠 方には広 がりに くいと言 わ
5. 散 布 型 組 成
れてい る(守山 ら,1984). 本調 査地 域 のオ オバ ヤシ ャブ
生 活形 組成で 解析 し た4群 落 の散布 型組成 に ついて 出
Table 2. Life form spectrum
of four communities
sieboldiana-LigusIrunivulgare Comm.,
Alnetum
sieboldianae, 3 ・ Rhododendro
densiflorae, 4 : Photinio-Castanopsietum
Ct indicates Coniferous
Summergreen
shrub;
plant.
CI, Climber;
Ph,
macrosepali-Pinetum
cuspidatae).
tree"≫Et, Evergreen
tree! Es, Evergreen
(1 " A In ids
2 : Weigelo fragrant is-
tree; St,
shrub; Ss, Summergreen
Perenial
herb;
Ap,
Annual
シ ーセイヨウ イボタ群 落 も住宅 地に 囲まれた都 市林と し
Table
3. Disseminule
form
specrum
of four communities
(1 ・ Alnus sieboldiana-Lignstrum vulgare Comm.,
fragrantis-Alnetum
sieboldianae
,3
2 : Weigelo
・ Rhododendro
macrosepa 1i-Pinetum densiflorae,4 : Photinio-Castanopsietum
cuspidatae).
En indicatesEndozoochoryI Ep, Epizochory; An, Anemochory;
My, Myrmecochory;
Au,
Autchory;
Ba, Barochory.
て同じ傾 向を示した ものと考えら れる.
リ ン ハ イ の よ う な 国 産 の 庭 園 ・ 緑 化 植 物 が少 な く な い.
各構成種 について庭園・緑 化植物 か野生の植物 のどち ら
6. 帰 化 率
に 由 来 す る か を 調 査 し,4 つ の 種 群 に 区 分 し た.
オオバヤシ ャブ シーセイヨ ウイボタ群 落の構成 種の帰
第1 は オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ, クロ マ ツ, ソ メ イ ヨ シ ノ,
化率を 算出した. 群落構成 種の帰化率 はどの程 度の出現
ヒ メ ヤ シ ャ ブ シ な ど の初 期 に 播 種 あ る い は 植 栽 さ れ た 種
頻度以上 の種を対象にす るかに よって 異な る. こ こでは
群 で あ る. 第2 は 付 近 に 全 く 自 生 せ ず, 確 実 に 庭 園 ・ 緑
比較 のため に, 全種 を対 象と した場 合, 出 現頻度5% 以
化 植 物 を 毋 樹 と し, 鳥 に よ っ て 散 布 さ れ た 種 群 で, セ イ
上の種 を対象 とし た場 合 など6つ のケ ースにつ いて帰 化
ヨ ウ イ ボ タ, ゲ ッ ケ イ ジ ュ, ヒ イ ラ ギ ナ ンテ ン, ト ウネ
率 を示 した(Table 4).
ズ ミ モ チ な ど の 外 国 産 の 他 に ト ベ ラ, セ ン リ ョ ウ, コブ
帰化植物は, 庭園・緑化 植物から逸出 した鳥散布型 の
シ, マ サ キ, シ ャ リ ン バ イ, シ ュ ロ, ニ シ キ ギ, ヤ ツ デ,
セイヨ ウイボタ, ゲ ッケイジュ, ヒ イラギ ナンテ ン, ト
サ ン ゴ ジ ュ, ハ マ ヒ サ カ キ, サ ン シ ョ ウ な ど の種 が そ れ
ウネズミモ チなどと, 都市雑草であ るオオアレチ ノギク,
に 含 ま れ る. 第3 は 周 辺 に 自 生 し て い る が, 庭 園 ・ 緑 化
ベニバ ナボロギ ク, セ イタカア ワダチソウ, ヨ ウシュヤ
植 物 と し て も よ く 利 用 さ れ て い る種 群 で あ る. 前 述 し た
マ ゴ ボウなど の異質 の2群 に区 分で きる. 前者 は前述 し
よ う に 鳥 散 布 の 距 離 が100m 程 度 と す る と 野 生 種 よ り も
たように, 住宅地 ・公園 に植栽 された毋樹 より鳥 によっ
庭 園 ・ 緑 化 植 物 に 由 来 す る 確 率 が 高 い. こ の 種 群 に 含 ま
て 散布さ れた もので, 後者は 周辺の雑 草群 落から飛来 し
れ る 種 と し て は, イ ヌ ツ ゲ, ヒ イ ラ ギ, ナ ンテ ン, マ ン
たものであ る. 帰化率はこ れらの種を まとめて算出 した
リ ョ ウ, ネ ズミ モ チ, ク ロ ガ ネモ チ, カ クレ ミ ノ, ア オ
が, 全種を対象 とした場合, 帰化率は11.2% に達す る.
キ, ヤ ブ ラ ン, モ ッ コ ク, ヒ メユ ズ リ ハ, オモ ト な ど が
出現頻度2回以上 の種を対 象とした場 合で も7.9% となり,
あ げ ら れ る. 第4は 野 生 種 に ほ ぼ 完 全 に 由 来 す る 種 群 で,
アカマ ツーモ チツツジ群集 やコジイ ーカナメモチ群集 の
匸 影ハア ケビ, ア オ ッ ヅ ラ フ ジ, ヘ ク ソ カ ズ ラ, イ タ ド
帰化 率O% と 際た った違い を見 せてい る. 都市近 郊林 で
リ, クロ モ ジ, ヤ マ ノイ モ, タニ ウ ツ ギ, エ ゴ ノ キ, ヒ
の帰化植物 の 侵入の報 告は ある が(守 山ら,1984), そ の
ナ カ 牛, ベニ シ ダ, ヤ マ ウ ル シ, コ バ ノ ミ ツ バ ツ ツ ジ,
帰化率 は示さ れて いない. そ のために オオバヤ シャブ シ
コ バ 厂ガ マ ズ ミ, ク リ, サ ル ト リ イ バ ラ な ど が あ げ ら れ
ーセイヨ ウイ ボタ群 落と他 の都 市林との帰化 率の比較 は
る. 第1と 第2 の 種群 は 確 実 に 庭 園 ・ 緑 化 植 物 に 由 来 し,
で きないが, 本群 落の帰化植物 の多さ からみて本群落 は
第3 の 種 群 も 庭 園 ・ 緑 化 植 物 に 由 来 す る 確 率 が 高い の で,
帰化率 の極めて高い 都市林と して位置づげ られよ う. な
こ れ ら の3群 に 含 ま れ る種 を 庭 園 ・ 緑 化 植 物 と し て ま と
お帰化率 の高い植生 として都市河川 の草 本群 落があげ ら
め, そ の 種 数 お よ び 比 率 を 出 現 頻 度 別 に 求 め た(Table
れる. 特に セイ タカアワ ダチソウ, オオブ タクサなど の
5). そ の 結 果, 全 種 を 対 象 に し た 場 合 庭 園・ 緑 化 植 物 率
帰化植物 優占群落で は帰化率50% に達す るもの もあり,
は 約25% と な り, ま た 出 現 頻 度 の 高 い 種 に 限 る ほ ど そ の
オギやヨシの自然 性群 落で も都市近 郊の ものは10% 前後
比 率 は 高 く な る. 一 方, 今 回 調 査 を 行 っ た ア カ マ ツ ー モ
の帰化率を示 す(服 部,1988). 都 市近 郊にお卜 ては 草 本
チ ツツジ群集や コジイーカ ナメモチ群集 には庭園・緑化
群落 から木本群落 まで広く帰化植物 の侵 入を受け てい る
植物 は 出 現 し てい ない が, 服部 ら(1994) は三 田 市 フ ラ ワ ー
こと になる.
タ ウ ン 内 に 残 存 す る ア カ マ ツ ー モ チ ツ ツ ジ群 集 や コ ナ ラ
ー ア ペマ キ 群 集 を 調 査 し, 林 内 に 少 数 の庭 園 ・ 緑 化 植 物
7. 庭園 ・ 緑 化 植物 率
オオバヤシ ャブ シーセイヨ ウイボ タ群落 の構成 種には
が 生 育 し てし るこ と を 報 告 し てし る. また 井 手 ら(1992)
も農村地 域において同 様の結果 を認めてい るので既存 の
外国産 の庭園・緑化植物 の他, ヤツデ, ナンテン, シ 卞
Table
4. Number
of naturalized plants and naturalized
plants ratio of Alnus siebokliana-Ligusfrurnvulgare Comm.
Table 5. Number
of gardening-landscaping plants and
gardening-landscaping plants ratio of Alnus sieboldianaLignstrum vulgar eCo mm.
二 次林や 自然 林に も庭園・緑化 植物 が鳥 によって 散布 さ
込 み な ど が 生 じ, 植 物 の生 育 上 好 ま し く な い. 表 層 土 が
れ, 定着可 能なこと は明ら かで ある が, 多量の庭 園・緑
安 定 し, 低 木 類 の 発 達 して い る 所 で ぱ ネ ッ ト を 除 去 す る
化植 物を 含むオ オバヤシ ャブ シーセ イヨウ イボ タ群 落は
必 要 が あ る.
特異 であ る. この ように多量 の庭園・緑 化植物 が定 着で
きたのは人工 法面で は播 種さ れた オオバヤシ ャブ シ以外
9. ま と め
競争 者が存在 ぜず, 生態 的な空 白域であ ったた めで あろ
オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ ー セ イ ヨ ウィ ボ タ群 落 ぱ ニ ュ ー タ ウ
う. これら の植 物の定 着時期は オオ バヤシ ャブ シが生育
ン の 人工 法 面 と い う 人 工 環 境 下 で, 住 宅 地, 公 園, 街 路
を始 めて高さ数m 以上に達 すると共に, 自己間引 きに よっ
の 庭 園 ・ 緑 化 植 物 を 種 子 源 と し, 都 市 鳥 で あ る ヒ ョ ド リ
て林 内に光 りが入り, 林床 部 の利川 が可 能となっ た時点
に 種 子散 布 を 依 存 す る 極 め て 新 しい タ イ プ の 都 市 林 で あ
であろ う.
る. 本群 落 は 特 殊 な 環 境 下 に 発 達 す る た め, 種 類 組 成 は
もと よ り, 生 活 型 組 成, 散 布 型 組 成, 帰 化 率, 庭 園 ・ 緑
8. オ オ バ ヤシ ャブ シ ーセ イヨ ウ イボ タ 群 落 の 遷 移
オオバ ヤシャブ シはよく生長 す ると高 さ10m, 直 径30
cm に達す ると報告 さ れてい る(奥山,1977). 本地域 の オ
オ バヤシ ャブ シ樹高10m を越 えてい る個体 が多数あ り,
化 植 物 率 の い ず れ を み て も 他 の 二 次 林, 自 然 林 と 大 き く
異 な る. 特 に 庭 園 ・ 緑 化 植 物 率 の 高 さ は ニ ュ ー タ ウ ン に
成 立 し た 本 群 落 の 特 徴 を よ く 示 し て い る.
オ オ バ ヤ シ ャブ シ の 自 然 林 で あ る オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ ー
また地 際での表 層士保護用 ネットの樹幹 への食い込 みや
ニ オ イ ウ ツ ギ群 集 や オ オ バ ヤ シ ャブ シ ー ハ コ ネ ウ ツ ギ群
樹幹部 での ゴマダ ラカミキ リの食 害などを みると, オオ
集 は 崩 壊 地 や 火 山 灰 地 等 の先 駆 群 落 で あ る が, 常 に 新 し
バヤシャブ シは 生育の限 界に近づ きっ っあ るよ うに 思わ
い 立 地 が 供 給 さ れ る た め, そ れ ら の群 集 は 地 域 全 体 と し
れ る. 今後樹勢 が衰えに 少な くとも主幹は 枯死す る可能
て み る と, い ず れ か の 地 点 で 持 続 し て い る こ と に な る.
性が 高く, 遷移 が急激 に進行す ること も予 想さ れる.
人工法面 の先駆群落 であ るオ オバヤシャブ シーセイ ヨウ
オオバヤ シャブシの 自然 林であ る オオバヤ シャブ シー
ィ ボ タ群 落 も常 に新 しい 人工 法面 が都 市近辺 あ るい は ニュ ー
ニ オイウツ ギ群 集は先駆 性夏緑 低木林で, 短 期的に は 才
タ ウ ン 等 に 供 給 さ れ, 植 生 保 護 工 に オ オ バ ヤ シ ャ ブ シ が
オ シマ ザ クラーオオ バエゴ ノキ群 集, 長期的 には スダジ
使 用 さ れ 続 け ると 持 続 群 落 化 し, 都 市 型 の 新 し い 森 林 群
イ ーオ オシマ カ ンスゲ群 集に遷 移 すると さ れてい る(村
集 と して, あ る い は 都 市 林 の 一 タ イプ と し て 「 オ オ バ ヤ
上,1986;宮脇・奥 田,1990). Tagawa(1964)
も鹿 児島 県
シ ャ ブ シ ー セ イ ヨ ウ ィ ボ タ群 集 」 と い う 植 物 社 会 学 上 の
桜島で の調査 から, 低 木林の ヤシャブ シ林 が クロマ ツ林
群 集 単 位 に 位 置 づ け る こ と が 可 能 と な る. し か し な が ら,
を経て照 葉樹林 に遷移す ることを報 告してい る. オオバ
オ オ バ ヤ シ・
ヤブ シ が 花 粉 症 の 原 因 で あ る こ と が 明 ら か に
ヤシ ャブ シ ーセイヨ ウイボ タ群落 も長期的 には照葉樹 林
な っ た 今 日, 少 な く と も都 市 周 辺, ニ ュ ー タ ウ ン で こ の
( コジイ ーカナ メモ チ群集)に遷移 すると考 えられ るが,
種 が 今 後 利 用 さ れ る こ と は 少 な く な り, こ の よ う な 特 殊
オ オバヤシ ャブ シの枯死 が進行す る中期的段 階では オオ
な 種 組 成 を 持 つ 群 落 が 成 立 す る の ぱ 稀 と な ろ う.
バヤ シャブ シーセイヨ ウイボ タ群落 を構成 してい る種 の
中で将来 高木と なること ので きる クスノキ, クロ ガネモ
お わり に
チ, ヤマザ クラ, エ ノキ, カ スミザ クラ, ム クノキなど
が林冠 を占め る可 能性 が高い. また低木層 はヒ サカキ,
オ オ バ ヤ シ ャブ シ ー セ イ ヨ ウ ィ ボ タ群 落 の 特 殊 性 は 明
ネ ズミモチ, マ ンリョ ウ, ト ウネ ズミモ チ, ア オキ, ヤ
ら か と な っ た が, 今 後, 二 ご1.
 ̄タウンにおいて オオ バヤ
ツデ, ナンテ ン, トベ ラ, モ ッコ ク, ヒ メユ ズリハ, サ
シャブ シ林にか わる新しい森 づくり の計画を進 める必要
ンゴジュなどの照葉樹 が繁 茂し, 林内照度の低下と共に,
が あ る. 今 ま で 述 べて き た よ う に 生 態 学 的 に み る と 本 群
クロ モジ, セ イヨ ウイボ,夕 , コバ 广ガマ ズミ, コバノ ミ
落 は 照 葉 樹 林 化 す る と 推 定 さ れ る が, ニ ュ ー タ ウ ンの 住
ツ バツツジなど落 葉樹は衰 退す ると考えら れる. 相観的
民 に よ る 積 極的 な 森 づ く り と い う 視 点 を 加 え る と そ の 将
には照 葉・ 夏緑 混交林 で, 組成 的 には タブ ノキ型林( 服
来 像 は 多様 と な り, 管 理 し だ い て は 庭 園 の よ う な 森 づ く
部, 1993)か, エ ノキ ーム クノキ群集 に比較的 近い ものと
り も 可 能 と な る. 住 民 の 居 住 空 間 で の森 づ く り や森 林 管
なろ う. さらに年 月が経過 すると アラ カシ, シラ カシ,
理 と い う課 題 は, 都 市 住 民 の ボ ラ ン ティ ア 活 動 に よ る農
コ ジイなどの常緑 のブ ナ科 植物 の侵入が始 まり, 種組 成
山 村 の 里 山 管 理 と い う問 題 よ り も 身 近 で あ っ て, さ ら に
の単純化 した照葉 樹林 がまず成立 すると考 えられ.る .
重 要 で あ る. 農 村 地 域 に お い て 鎮 守 の森 が そ の 集 落 の 住
な お表 層士 保 護用 ネット は落葉 ・ 落枝 の堆 積し たA 。
民 に よ っ て 守 り 育 て ら れ て, 地 域 の シ ン ボ ル と な っ た よ
層(有機物 層)と鉱物 土層 を分離 させて い るため,A 。層,
う に, 二 ご
廴 ̄ タ ウ ン と い う都 市 域 に お い て も法 面 の 緑 地
鉱物土層 の乾燥化, 実生 の定 着 の困 難さ, 落 葉・落枝 の
が 街 の シ ン ボ ル と して 育 ま れ る よ う 望 み た い.
分解 のしにく さ, 前述し たよ うな ネットの樹 幹への 食い
中山台 の住民と宝塚 市のこ のような新 たな森づ くりに
寛(1995) 里山 の 現 状 と里 山 管理. 人 と 自 然, 6, 1-32.
期待す ると共 に, こ の重 要な取 り組 みに我々 も積 極的 に
支援し ようと準備を進 めている. 第一段 階として, 1996
服部
年2月に伐 採 された オオ バヤシャブ シ林 のそ の後の植 生
変 化, 土壌, 萌芽発生状 況などについて 調査を行い, そ
保 ・ 上 甫 木昭 春 ・小 舘 誓 治・ 熊 懐 恵 美・ 藤 井 俊夫 ・ 武 田 義
明(1994)三 田市 フ ラ ワ ー タウ ン内 孤 立 林 の現 状 と保 全 に つ い
て. 造 園 雑誌, 57(5), 217-222.
井手
の結果を提 供したい.
任・守山
弘 ・ 原 田直 國(1992) 農 村地 域 に おけ る植 生 配 置
の特 性 と 種子 供 給 に関 す る 生態 学 的 研 究. 造 園 雑誌, 56(1),
28-38.
唐 沢孝 一(1995) 果 実 食 鳥 に よる 種 子散 布. 沼 田
謝
辞
真( 編)現 代 生 態
学 と そ の 周辺. 東 海 大学 出 版 会, 東 京, 208-213.
本論文を まとめるにあ たって, 調査 の機会を与 えてい
ただくと共に各種 の資料を提 供してい ただいた宝塚市 環
気 象庁( 編)(1958) 気 象 庁観 測 技 術資 料 第10 号, 全 国 気 温資 料 月 別
累 年 平均 値. 気 象 庁, 東 京, 178p.
気 象庁( 編)(1959) 気 象 庁観 測 技 術資 料 第13 号, 全 国 降 水量 資 料 月
境 保全課の皆様, 現地の案 内をしていた だい た宝塚市 中
山台 の皆様, 現地 調査に御協力 いただい た里と水辺研 究
別 累 年 平均 値. 気 象庁, 東 京, 185p.
宮脇
所 赤 松弘 治氏, 兵 庫県立人 と自然 の博物館 藤井俊夫氏,
大阪 大学・神戸大 学・ 神戸女学 院大学 の大 学院生・学 生
の方 々に深 く感謝 いたし ます. また伊豆諸 島の オオバヤ
宮脇
服 部陽 子氏に作図い ただ きました. 図表 の作 成および 本
論文 に係 わる作業全 般について 藤井 まゆ み氏 にたい へん
お世話 になり まし た. 皆様に感謝 すると共 にお礼申し上
昭 ・ 奥 田重 俊 ・ 藤原 陸 夫(1994) 改 訂新 版 日 本 植生 便 覧. 至
文 堂, 東京, 872p.
守山
シャブ シ林の種 組成等 につい ては兵 庫県 立 星陵 高校 梶
原 洋一 先生にお教 えいただ きました. また植生断面図 ぱ
昭 ・ 奥 田 重 俊(1990) 日 本 植 物 群 落 図 説. 至 文 堂, 東 京,
800p.
弘(1992) 里 山 を つ くる 鳥 一鳥 に よ って 支 え ら れた 農 村樹 林
の種 多 様性. 生 物化 学, 44(2), 73-80.
守山
弘 ・ 原田 直 國 ・山 岡 景 行・ 榎 本 末 男・ 重 松
孟(1984) 都市
に お け る 緑 の 創 造 一 第4報 一都 市 区 域 に つ く り 出 し た 林 に み
ら れ る 植生 遷 移 の歪 み. 人間 と 環 境, 10(2), 14-24.
村上 雄 秀(1986) 先 駆 性低 木 林. 宮 脇
昭(編) 日本植 生 誌 一 関東.
至 文 堂, 東 京, 234-236.
げ ます.
中 西弘 樹(1994) 種 子 ぱ ひろ が る 一種 子 散 布の 生 態学. 平 凡社, 東
京, 256p.
文
奥 山 春 季( 編)(1977)寺 崎 日 本 植物 図 譜. 平 凡 社, 東 京, 1165p.
献
Tagawa, H. (1964) A
Braun-Blanquet, J. (1964)Pflanzensoziologie,3 Aufl.
Springer-Verlag,Berlin,865p.
福 井 昌子(1993) 被食 種 子散 布 に おけ る動 植物 の 相 互 関係. 動 物 と
服部
Univ. Ser. E(Biol.), 3,
上 原 敬 二(1961) 樹 木大 図 説 Ⅲ. 有 明 書房, 東 京, 1276p.
222-235.
山 岡 景 行・ 守 山
保(1988) 河 川 の 雑 草群 落. 矢 野 悟 道(編) 日 本 の植 生 一 侵略
保(1993) タブ ノ キ型 林 の 群落 生 態学 的 研 究II.
弘・重松
孟(1977) 都市 に おけ る緑 の 創造 一 第
2報- 歴 史的 農業 地 帯 に お け る 屋 敷 林, 二 次 林 の生 態 学 的 役
割. 東 洋 大 紀 要, 20, 17-33.
タブ ノ キ
型 林 の 地理 的 分 布 と立 地 条 件. 日 生 態会 誌, 43, 99-109.
服部
Mem. Fac. Sci. Kyushu
165-228.
植物 の利 用 しあ う関 係( シ リー ズ地 球共 生系). 平 凡 社, 東 京,
と攪 乱 の生 態 学. 東 海 大 学 出版 会, 東京, 54-61.
服部
Study of the volcanicvegetation in
Sakurajima,south-west Japan.I. Dynamics of vegetation.
保 ・ 赤松 弘 治 ・武 田 義 明・ 小 舘 誓 治・ 上 甫 木昭 春 ・ 山崎
(1996 年5 月31 日受 付)
(1996年8 月2 日受 理)
Plate 1. Summer
aspect of Alnus sieboldiana-Ligustrum
vulgareCommunity.
Plate 2. Summer
aspect of Alnus sieboldianarLigustrum
vulgareCommunity.
Plate 3. Winter
aspect of Alnus sieboldiana-Ligustrum vulgare Community.
Plate 4. Winter
aspect of Alnus sieboldiana-Ligustrum vulgare Community.
Appendix 1-1. Vegetation tableof Alnus sieboldianarLigustrum
vulgareCommunity in Takarazuka.
Appendix 1-2. Continued.
Appendix 1-3. Continued.
Appendix 2-1. Summerized
table of Alnus sieboldianarLigustrumvulgare Community
Weigelo fragrantis-Alnetum sieboldiana (2)in the Izu Islands, Rhododendro
(l)in Takarazuka.
macrosepali-Pinetum
densiflorae(3)in Takarazuka and Photinio-Castanopsietumcuspidatae(4)in Takarazuka.
Appendix 2-2. Continued.
Fly UP