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IDAにおける国別政策・制度評価(CPIA) とPerformance-Based

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IDAにおける国別政策・制度評価(CPIA) とPerformance-Based
IDAにおける国別政策・制度評価(CPIA)
とPerformance-Based Allocation制度*1
開発金融研究所
目黒 克幸
要 旨
開発援助の効果をいかに高めていくかをめぐる国際的な議論は、特に近年、一段と高まりを見せて
いる。そこでは、援助資金が有効に活用されるためには、援助の受け手である途上国側における良好
な政策・制度環境が整っていることがその前提条件となるとの考え方がコンセンサスとなってきてい
る。
国際開発協会(IDA)では、このような考え方に基づき、従来から、その援助資金の国別配分にお
いて、政策・制度環境の良好度(パフォーマンス)に応じて人口1人当たりの援助資金を手厚く配分
するというPerformance―Based Allocation制度(PBA制度)を採用してきている。本稿は、IDAの
PBA制度と、そのベースとなる国別政策・制度評価(CPIA)の仕組みを紹介するものである。
CPIAは、PBA制度を通じてIDA資金の国別配分に重要な役割を果たしているのに加え、各国の政
策・制度環境の改善を図っていく上でどのような分野に努力を傾けるべきかという点で重要な情報を
提供するものである。現在、CPIAの評価結果の一層の情報開示が検討されているが、今後の援助の
現場では、CPIAなどにより蓄積された知見を活用しつつ、被援助国とドナーとの間で当該国の政
策・制度環境についての評価を共有し、その一層の改善を図っていく作業が求められよう。
Abstract
There has been an active international debate in recent years on how to improve the effectiveness of aid. An emerging consensus is that good policy and institutional environment in recipient countries is a prerequisite for effective use of aid.
The International Development Association(IDA)has adopted a Performance―Based Allocation system, where per capita country allocation of IDA resources is linked to policy and institutional performance of each recipient country. This paper describes the mechanisms of IDA’
s Per.
formance―Based Allocation system and its Country Policy and Institutional Assessment(CPIA)
The CPIA exercise not only plays an important role in country allocation of IDA resources,
but also provides important information on specific areas that require further efforts for better
policy and institutional environment in the country concerned. Further disclosure on CPIA results
is currently under consideration. Development assistance hereafter will require continuous efforts
between each recipient country and its donors to share assessments on the country’
s policy and
institutional environment for further improvement, utilizing knowledge accumulated through the
CPIA and other relevant exercises.
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1 本稿の記述のうち意見にわたる部分は、筆者の個人的見解であり、筆者が現在帰属し、あるいは過去に帰属したいかなる組織
の意見をも代表するものではない。本稿の作成に当たっては、世界銀行で実際にPerformance―Based Allocation制度の実務
に携わっておられる田中章浩氏(世界銀行資源動員局エコノミスト)より貴重なコメントをいただいた。ここに記して感謝し
たい。
106
開発金融研究所報
第1章
こうした流れは多国間援助・二国間援助を問わ
はじめに
ず、急速に世界的な潮流となりつつある。二国間
開発援助の効果をいかに高めていくかをめぐる
援助の国別配分において、援助国と被援助国との
議論は、特に近年、2
0
0
2年3月の国連開発資金
間の政治・外交上の関係をはじめとする様々な側
国際会議(モンテレイ会議)や、2
0
0
2年7月に
面が考慮されるのは当然のことであるが、他方、
合意に至った国際開発協会(IDA)の第1
3次増資
冷戦の終結をはじめとする国際関係の変化や、援
交渉などを契機として、一段と高まりを見せてい
助資金の出し手である先進国の納税者に対する説
る。我が国においても、経済上・財政上の理由か
明責任を求める声の高まりなどを受けて、援助資
ら政府開発援助(ODA)の大きな伸びが期待で
金の有効性の向上に対する要請は、二国間の援助
きない中で、限られた援助資金をいかに有効に活
資金に対しても多国間援助と同様に高まってい
用するかが従来にも増して重要な課題となってき
る。
ている。
本稿は、上記のような問題意識の下、IDAの
最近の議論では、援助資金が有効に活用される
PBA制度の仕組みを我が国の援助関係者向けに
ためには、援助の受け手である途上国側における
紹介することを目的としている。第2章では、
良好な政策・制度環境が整っていることがその前
IDAのPBA制度の全体像を概観する。その上で
提条件となる、という考え方がいわば国際的なコ
第3章では、PBA制度のベースとなる各国の政
ンセンサスとなってきている*2。
策・制度パフォーマンスの評価作業につき、その
世界銀行の中でより所得水準の低い国々に対し
内容・手法を説明し、続いて第4章では、そうし
て譲許的な援助資金を提供する窓口であるIDAで
た評価結果をベースとして行われるIDA資金の国
は、上記のような考え方に基づき、従来から、そ
別配分計画の策定方法を説明する。第5章では、
の援助資金の国別配分において、政策・制度環境
現時点で公表されている情報を基に、IDAによる
の良好度(パフォーマンス)に応じて人口1人当
各国の政策・制度環境の評価結果と実際のIDA資
たりの援 助 資 金 を 手 厚 く 配 分 す る と い うPer-
金の国別配分実績とを対比する。最後に第6章で
formance―Based Allocation制度(以下、PBA制
は、被援助国の政策・制度環境の評価という点に
度)を採用してきている。
ついて、世銀を含めた世界の開発コミュニティ全
2
0
0
2年7月に合意されたIDA第1
3次増資交渉
においても、IDAの援助資金の有効性の向上とい
体としての今後の方向性と我が国へのインプリ
ケーションについて述べる。
う観点から、PBA制度の一層の改善と透明性の
向上が求められている*3。特に、透明性の向上と
いう観点からは、各国の政策・制度環境に関する
世界銀行の評価(国別政策・制度評価=Country
第2章 IDAとPerformance―Based
Allocation制度:概観
Policy and Institutional Assessment;CPIA)に
国際開発協会(IDA)は19
6
0年に設立された国
ついて一層の情報開示が求められ、2
0
0
3年秋に
際機関であり、所得水準の特に低い開発途上国に
開催されるIDA第1
3次増資中間レビュー会合にお
対して譲許的な援助資金を供与することを主たる
いてさらに議論されることとされている 。
業務としている。その姉妹機関である国際復興開
*4
他方、米国の「ミレニアム挑戦会計(Millen-
発銀行(IBRD)と総裁以下のスタッフを共有し
nium Challenge Account)*5」に見られるように、
ており、最近では両者を総称して「世界銀行」と
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*2 World Bank
(1
9
98)
は、こうした考え方が広く共有されるきっかけとなった、援助の有効性に関する包括的な報告書である。
*3 IDA第13次増資交渉での合意事項の詳細については、IDA(200
2b)を参照。
*4 IDA(2
00
3b)
、パラ2
9。
*5 2002年3月のブッシュ大統領の演説で、米国はその年間ODA供与額を2
0
06会計年度までに5
0
0億ドル増額することを発表した
が、これにより増額されるODAは「ミレニアム挑戦会計」として区分され、)ガバナンス、*人への投資、+経済的自由の
促進の3分野・計1
6項目のパフォーマンス指標により選定された一部の途上国に対して供与されることとされている。
2003年9月
第17号
107
呼ぶことが多い。
IDAが供与する援助資金は、先進国を中心とす
るIDA出資国の間で原則3年ごとに行われる増資
により賄われている。2
0
0
2年7月に合意された
図表1 IDAのPBA制度の全体像
ポートフォリオ・
パフォーマンス評価
(20%)
国別政策・制度評価
(CPIA)
(80%)
ガバナンス係数
IDAの第1
3次増資では、2
0
0
3∼0
5世銀年度(2
0
0
2
年7月∼0
5年6月)の3年間の財源を確保するた
め、増資のほか過去の融資の返済資金なども含
め、3年 間 で 総 額1
8
0億SDR(約2
2
0億 ド ル)の
IDA国別
パフォーマンス格付(CPR)
資金計画が合意された。
ポスト・コンフリク
ト国やブレンド国へ
の調整
なお、IDAの資金供与形態は、伝統的に譲許的
融資(3
5∼4
0年の無利子融資)が中心だが、第11
IDA資金の国別配分計画の策定
(3年計画)
次増資の際に極めて限定的な形で無償資金供与
(いわゆるIDAグラント)が認められるようにな
り、第1
3次増資では、2
0
0
3∼0
5世銀年度の資金
各国の貧困度
(人口1人当たりGNI)
出所)IDA(2
0
0
3b)
供与額全体に占めるグラントの割合を1
8∼2
1%
な国などでは、援助資金が十分な開発効果をあげ
と大幅に拡大することが合意されている。
ることなく費消されてしまう可能性が高いため、
直近の2
0
0
2世銀年度におけるIDAの承諾実績
過大な援助資金を配分すべきではない、というこ
をみると、融資とグラントとを合わせ年間6
4億
とになる。こうした考え方は、戦後半世紀にわた
SDR(約8
1億ドル)の資金供与が承諾されてい
る開発援助の経験を踏まえたさまざまな研究成果
る。こうしたIDA資金の国別配分を決める仕組み
から明らかにされてきており*6、前述のとおり最
が、本稿で紹介するPerformance―Based Alloca-
近では国際的な援助コミュニティでのコンセンサ
tion制度(PBA制度)である。
スとなってきている。
PBA制度の仕組みを一言で言えば、IDA資金
IDAで現在採用されているPBA制度の全体像
を有効に活用できるような政策・制度環境がIDA
は、図表1に示すとおりである。以下、その仕組
資金の受け手の側で整っているかという点につい
みを順を追って説明する。
て、世銀スタッフが各国ごとに4分野・2
0項目に
わたる評点(いわば通信簿)を付け、この評点の
高低に応じてIDA資金の国別配分額(人口1人当
たり)を決定していく、というものである。
第3章
各国の政策・制度環境の評
価
その根底にある考え方は、援助資金が有効に活
用されるためには、受け手である被援助国の側に
(1)国別政策・制度評価(CPIA)の実施
資金を有効に活用しうるだけの良好な政策・制度
環境が備わっていることが不可欠な前提条件であ
PBA制度の根幹を成すのが、世銀スタッフに
り、したがって限られた援助資金でより大きな効
よる各国ごとの政策・制度環境の評価である。こ
果を上げるため、そうした前提条件が整っている
の評価作業は、
「国別政策・制度評価(Country
国々に援助資金を重点配分する、というものであ
Policy and Institutional Assessment;CPIA)
」
る。逆に言えば、政策・制度環境が芳しくない
と呼ばれている。具体的には、図表2に示され
国々、例えばマクロ経済政策運営が混迷を深めて
た、A.経済運営(4項目)
、B.構造政策(6
いるような国や独裁者が私腹を肥やしているよう
項目)
、C.社会的一体性・社会的公平のための
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*6 例えば、World Bank(1
9
9
8)は、Collierらによる先駆研究を引用して、
「援助が10
0億ドル増えて、それが今の援助配分シェ
アで供与されたとすると、7
0
0万人を貧困から救うだけだが、増加分を援助が大きな効果を持つ国に集中させれば、2,
5
00万
人を貧困から抜け出させることができる」としている(同書邦訳、p.69)
。
108
開発金融研究所報
図表2 CPIAの評価項目一覧
保するため、評定にあたるスタッフ用に統一的な
評価基準(クエスチョネア)が用意されており、
A.経済運営
どのような状態の場合にどの評点を付与するかが
1.インフレ・マクロ経済上の不均衡の管理
2.財政政策
3.公的債務(対外債務・国内債務)の管理
4.開発プログラムの運営・持続可能性
細かく規定されている*9。例えば、第1項目「イ
ンフレ・マクロ経済不均衡の管理」については、
クエスチョネアで以下のとおり規定されている。
B.構造政策
5.貿易政策・外国為替制度
6.金融の安定
7.金融部門の厚み、効率性、資源動員
8.民間部門にとっての競争的な環境
9.要素市場・製品市場
10.環境の持続可能性のための政策・制度
評点2:
「一貫性のあるマクロ経済プログラ
ムを必要とする。または、そのよう
なマクロ経済プログラムが停止状態
にあり、早期再開の見通しがない。
」
評点3:
「重大な不均衡を修正しようという
C.社会的一体性・公平のための政策
試みが散発的ないし部分的に行われ
11.ジェンダー(性的平等)
12.公的資源使用の公平度
13.人的資源の構築
14.社会的保護と労働
15.貧困面での成果・効果の監視・分析
ている。
」
評点4:
「重大な不均衡を是正するための施
策が講じられているが、プログラム
が完全に一貫性のあるものとはなっ
D.公的部門の運営・制度
16.財産権とルールに基づくガバナンス
17.予算・財務運営の質
18.歳入動員の効率性
19.行政機構の質
20.公的部門における透明性、説明責任、汚職
ていない。
」
評点5:
「一貫性のあるマクロ経済プログラ
ムが実施されており、ショックがな
ければ今後1∼2年の間に不均衡が
除去される見通し。
」
出所)IDA(2
0
0
3b)
政策(5項目)
、D.公的部門の運営・制度(5
さらに、
「評点1」については「評点2」の状
項目)の4分野・計2
0項目について1(低)∼6
態が3年以上継続している場合、
「評点6」につ
0項目の単純平
(高)までの評点が付され 、計2
いては「評点5」の状態が3年以上継続している
均点が当該国のCPIAの評点となる。すなわち、
場合に、それぞれ付与されることとされている。
各項目がCPIA全体の中でそれぞれ5%の重みを
その上で、実際の評価作業においては、世銀の
*7
持つこととなる。
6つの地域局が所管する各地域につき2か国ずつ
PBA制度の仕組みは1
9
7
7年に始まったとされ
をベンチマーク国として選び、これら1
2のベンチ
ているが、その後得られた経験や研究成果を踏ま
マーク国の評点については、各地域局の主任エコ
え、その手法は随時改善が図られてきている。
ノミスト、および各業務担当局との間の合意によ
CPIAの評価項目について言えば、当初はマクロ
り決定される。他の国々については、当該地域の
経済面に大きな比重が置かれていたが、その後、
ベンチマーク国と対比しつつ、国別担当局長によ
貧困削減やガバナンスといった側面にも重点が置
る原案を各地域局の主任エコノミストが中心と
かれるようになり、現在に至っている 。
なってチェックする形で決定される*10。こうし
*8
各国間のCPIA評点の公平性・比較可能性を確
た重層的・横断的な評定作業を行うことにより、
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*7 1∼6までの6つの整数点のほか、2.
5、3.
5および4.
5の中間点を付与することが認められており、したがって各項目とも9
段階で評価されることとなる。
*8 IDA(2
00
1)
、パラ2。
*9 クエスチョネアは毎年改定されており、その内容は世銀ウェブサイトで公開されている(http://siteresources.worldbank.org/
IDA/Resources/CPIA2
0
0
2.
pdf)
。
*1
0 IDA(20
01)
、パラ1
2。
2003年9月
第17号
109
地域内・地域間の公平性・比較可能性が確保され
図表3 ポートフォリオ・パフォーマンス評価
の算出表
る仕組みとなっている。
!Projects at Risk"が全体に占める割合
CPIAの評価作業は、毎年春から夏にかけて行
われている。現在のところ、各国の個別の評点は
公表されていないが、各国が全体でどの五分位
(Quintile)に位置しているかについては、2
0
0
0
年のCPIAから公表されるようになっている(後
述)
。
各国のCPIAの総合評点(2
0項目の評点の単純
平均点)は、8
0%のウェイトで、次に述べる「IDA
国別パフォーマンス格付Country Performance
Rating(CPR)
」に反映される。
0%が3年以上継続
0%
0∼1
0%
10∼1
5%
15∼2
5%
25∼3
5%
35∼4
0%
40∼4
5%
45∼7
0%
70∼1
00%
10
0%が3年以上継続
評点
6.
0
5.
5
5.
0
4.
5
4.
0
3.
5
3.
0
2.
5
2.
0
1.
5
1.
0
出所)IDA(2
0
0
1)
(2)国別パフォーマンス格付(CPR)の
決定
の割合に応じて、1∼6の評点が付与される(図
表3参照)
。各国のポートフォリオ・パフォーマ
CPIAは、PBA制度の根幹をなすものである
が、さらに2つの側面からの調整が行われて、
ンス評定は、2
0%のウェイトでCPRに反映され
る。
PBA制度による国別配分額の決定の基礎となる
「IDA国別パフォーマンス格付(CPR)
」が決定
* ガバナンスの重視∼「ガバナンス係数」の算
出
される。
CPRの算出では、上記のとおり、各国のCPIA
) ポートフォリオ・パフォーマンスの加味
評点を80%、ポートフォリオ・パフォーマンス
ポートフォリオ・パフォーマンスとは、既承諾
評定の評点を20%のウェイトで加重平均したも
のプロジェクト(ポートフォリオ)について、プ
のがベースになるが、両者に含まれている諸項目
ロジェクト組成時に想定された開発目的が達成さ
のうち特にガバナンスに関連する項目に着目し、
れているか、またプロジェクトの実施は順調に進
その改善へのインセンティブを与えるため、ガバ
んでいるかという観点からの達成度・進捗度(パ
ナンス関連の諸項目の優劣に応じて特別な調整が
フォーマンス)を指している。したがって、これ
行われる。
には被援助国側のプロジェクト実施能力・消化能
力が大きく関わってくる。
具体的には、各国ごとに、CPIAの2
0項目のう
ちガバナンスに関連する6項目(,開発プログラ
世界銀行では毎年、品質保証グループ(Quality
ムの運営とその持続可能性、2財産権とルールに
Assurance Group;QAG)という部局がポート
基づくガバナンス、3予算・財務運営の質、4歳
フォリオ・パフォーマンスに関する年次報告書
入動員の効率性、5行政組織の質、6公的部門に
(Annual Review on Portfolio Performance;
おける透明性、説明責任および汚職)
、並びに
ARPP)を作成している 。この作業では、所期
ポートフォリオ・パフォーマンス評定の一項目と
の開発目的の達成やプロジェクトの進捗の観点か
して含まれている「調達慣行」の計7項目につい
ら、実際にあるいは潜在的に問題のあるプロジェ
て平均値を算出する。そして当該平均値を3.
5
(1
クトが Projects at Risk として分類される。
∼6の中間値)で除した値の1.
5乗を「ガバナン
*1
1
!
"
PBA制度では、ARPPの結果を利用し、各国ご
とのポートフォリオに占める
!Projects at Risk"
ス係数(Governance Factor)
」として算出する。
最終的な当該国のCPRの評点は、CPIA(8
0%)
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1
1 World Bank(2
0
0
2a)
。
110
開発金融研究所報
とポートフォリオ・パフォーマンス評定 (2
0%)
この算出式の意味するところを、具体的な数値
の加重平均値にガバナンス係数を掛け合わせるこ
例を用いて述べると以下のとおりとなる。CPR
とにより算出される。
の数値(ガバナンス係数の影響はあるにせよ、概
念的には3.
5が中間点となる)が「4」であるA
第4章
IDA資 金 の 国 別 配 分 計 画
の策定
国と「3」であるB国とを比較した場合、A国に
対する人口1人当たりのIDA資金配分額は、B国
。さらに、
の配分額の約1.
8倍となる
(≒42÷32)
以上に述べたような各国の政策・制度環境など
「5」であるC国と「2」であるD国とを比較し
に関する評点付け作業が毎年春から夏にかけて行
た場合には、C国とD国との格差は実に約6.
3倍
われた後、それをベースとしてIDA資金の国別配
となる。これに対して、人口1人当たりGNIが
分計画の策定作業が毎年秋から開始される。この
10
0ドルであるE国と、同1,
0
0
0ドルであるF国
作業はLending Strategy Reviewと呼ばれ、翌年
を比較した場合には、両国の格差は約1.
3倍に過
7月に始まる新世銀年度から3年間の国別資金配
0
0
0−0.125)
。以 上 の 数 値 例
ぎない(≒1
0
0−0.125÷1,
分を策定することとなる(例えば、2
0
0
2年に行
が示すとおり、IDA資金の国別配分に当たっての
われたCPRの結果は、翌2
0
0
3年7月から始まる
当該国の貧困度の反映度は、CPRに具現化され
2
0
0
4∼0
6世銀年度の3年間の国別配分のベース
る当該国の政策・制度環境と比して、相当程度小
となる)
。
さなものに過ぎない。
そこでは、原則としてCPRの評点を2乗した
値に比例する形で、各国の人口1人当たりのIDA
資金配分額が決定されるが、さらに以下に示すよ
(2)ポスト・コンフリクト国やブレンド
国への調整
うな諸要素が加味されることとなる。
IDAの支援対象国のうち、長引いた紛争がよう
(1)各国の貧困度
やく終結に向かい復興が急がれるような国々(い
わゆるポスト・コンフリクト国)に対しては、そ
PBA制度の根底にある考え方は、繰り返し述
の復興の緊急性と復興需要の規模に鑑み、上述の
べているとおり、CPIAの高得点に具現化される
枠組みを超えたIDA資金の特例的な配分が行われ
ような良好な政策・制度環境を有する国に対して
ることとされている。具体的には、各ポスト・コ
より多くのIDA資金を供与することであるが、他
ンフリクト国のパフォーマンスに応じつつ、平均
方、世界の貧困削減を使命とする世界銀行、その
的には人口1人当たりで見て通常のIDA支援対象
中でも特に所得水準の低い国々を支援対象として
国の2倍程度の資金配分が3年程度にわたって行
いるIDAにとっては、支援対象国の中でもより貧
われることとされている*12。
他方、IDA資金とIBRD資金の双方にアクセス
しい国々に対する支援は重要な意義を持つ。
こうした考え方から、IDA資金の国別配分にあ
のあるブレンド国については、IBRD資金へのア
たっては、CPRとともに各国の所得水準(貧困
クセスに鑑み、IDA資金の配分についてはCPR
度)を加味している。具体的には、各国の人口1
によらず国別に上限を設定することとされてい
人当たりの配分額は以下の算式により決定され
る。例えば、代表的なブレンド国であるインドに
る。
ついては、20
0
4∼0
6世銀年度における年間のIDA
Allocation PC =f (CPR 、GNIPC
2.
0
〔
)
資金配分額の上限が2
0億SDR(人口1人当たり
−0.
1
2
5
Allocation PC :人口1人当たり配分額
CPR : IDA国別パフォーマンス格付
〕
GNIPC :人口1人当たりGNI(国民総所得)
ドル建てで年間2ドル弱)に設定されている。他
方、インドはCPRでは最上位の五分位(最上位
2割の国々)に位置しているが、この五分位に属
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1
2 詳しくは、IDA(2
0
0
2b)のANNEX2を参照。
2003年9月
第17号
111
図表4 各国のCPIA・CPRの推移とIDA資金承諾実績
国
名
所得水準
(人口1人
当たり
GNI)
ドル 備考
CPR(上段)
・CPIA(下段)
2000年
【サハラ以南アフリカ地域(AFR)
】
1,
290 s ★★★★★
カーボヴェルデ
☆☆☆☆☆
モーリタニア
410
★★★★★
☆☆☆☆☆
タンザニア
280
★★★★★
☆☆☆☆☆
ウガンダ
240
★★★★★
☆☆☆☆☆
ブルキナファソ
220
★★★
☆☆☆
セネガル
470
★★★★★
☆☆☆☆☆
ガーナ
270
★★★★
☆☆☆☆
ベナン
380
★★★★
☆☆☆☆
エリトリア
160 i/pc ★★
☆☆
エチオピア
100
★★
☆☆
マリ
240
★★★
☆☆☆
ルワンダ
230
★★★★★
☆☆☆☆
ザンビア
330
★★★★
☆☆☆
モザンビーク
210
★★★★
☆☆☆☆
マラウイ
160
★★★
☆☆☆☆
ギニア
410
★★★
☆☆
シエラレオネ
140 i/pc ★
☆
ニジェール
170
★★★
☆☆
コモロ
390
★
☆
コートジボワール
610
★★★
☆☆☆
マダガスカル
240
★★★★
☆☆☆☆
ケニア
360
★★★
☆☆☆
レソト
470
★★★
☆☆☆☆
コンゴ共和国
700 i/pc ★
☆
チャド
220
★★★
☆☆
コンゴ民主共和国
90 i/pc ―
―
ブルンジ
100 i/pc ★★
☆
サントメ・プリンシペ 290 s ★★
☆
ガンビア
280
★★★★
☆☆☆☆
カメルーン
560
★★★
☆☆
ギニアビサウ
150 i/pc ★
☆
中央アフリカ
260
★
☆
ナイジェリア
290 b ★★
☆☆
スーダン
350 i/pc ―
―
トーゴ
270
★
☆
b ★
ジンバブエ
NA
☆
アンゴラ
660 i/pc ★
☆
リベリア
150 i/pc ―
―
ソマリア
NA i/pc ―
―
【中東・北アフリカ地域】
イエメン
490
ジブチ
900
★★
☆☆
★
☆☆
20
01年
2002年
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆
★★★
☆☆☆
★★★
☆☆☆
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―
―
―
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☆☆☆
★★
☆☆☆
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☆
★
☆
★
☆
★
☆
★
☆
―
―
―
―
★★
☆☆
★
☆☆
★★
☆☆☆
★★
☆☆
IDA資金
承諾実績
(200
2年度)
国
人口1人 総 額
当 た り (百万
(SDR) SDR)
4
2.
9
1
9
36.
6
9
8
9.
5
32
0
6.
4
1
41
8.
6
9
7
3.
7
3
5
1
3.
7
2
63
5.
1
3
2
1
2.
7
5
2
2.
6
16
8
8.
2
8
9
2.
4
2
0
0.
5
5
12.
1
21
3
0.
0
0
15.
5
115
1
0.
2
5
2
7.
9
8
6
8.
6
5
1
0.
6
1
69
2.
2
0.
4
3
5
1
3
0.
0
0
2
4.
5
7
2
6.
6
5
1
7.
8
4
00
4.
3
2
9
0.
0
0
19.
0
2
4
0.
3
4
1
7.
4
2
1
3.
7
1
3
2.
7
3
40
0.
0
0
0.
0
0.
0
0
0
0
0.
0
0
0.
0
0
3.
5
6
2
30.
1
2
0
名
所得水準
(人口1人
当たり
GNI)
ドル 備考
CPR(上段)
・CPIA(下段)
2000年
【東アジア太平洋地域(EAP)】
サモア
1,
420 s
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆
モンゴル
440
★★
☆☆☆
トンガ
1,
4
1
0 s ★★
☆☆
1,
080 s ★★
バヌアツ
☆☆
インドネシア
71
0 b ★★★★
☆☆☆
カンボジア
28
0
★★
☆☆
キリバス
810 s ★★
☆☆
パプアニューギニア 53
0 b ―
―
ラオス
31
0
★
☆
ソロモン諸島
570 s ★★
☆
ミャンマー
NA i/pc ―
―
東チモール
43
0 i/pc ―
―
【アジア地域(SAR)】
スリランカ
840
★★★
☆☆☆☆
インド
48
0 b ★★★★
☆☆☆☆☆
ブータン
590
★★★★★
☆☆☆☆☆
2,
090 s ★★★★★
モルディブ
☆☆☆☆☆
パキスタン
41
0 b ★★
☆☆☆
バングラデシュ
360
★★★
☆☆☆☆
ネパール
23
0
★★
☆☆
アフガニスタン
NA i/pc ―
―
【東中欧地域(ECA)】
ボスニア・ヘルツェゴ 12
70 b ★★★★
☆☆☆☆
ビナ
1,
380
★★★★
アルバニア
☆☆☆☆
アルメニア
79
0
★★★★★
☆☆☆☆
400 b ―
セルビア・モンテネグ 1,
―
ロ
モルドバ
460
★★★
☆☆☆
キルギス
290
★★★
☆☆☆
アゼルバイジャン
71
0 b ★
☆☆
グルジア
72
0
★★★★
☆☆☆
タジキスタン
180
★
☆
ウズベキスタン
460 b ―
―
【ラ米カリブ地域(LAC)】
3,
840 s ★★★★★
セントルシア
☆☆☆☆☆
820 s ★★★★★
セントビンセント・グ 2,
☆☆☆☆☆
レナディーン諸島
3,
500 b,s ★★★★★
グレナダ
☆☆☆☆☆
ホンジュラス
92
0
★★★★★
☆☆☆☆☆
ニカラグア
NA
★★★★★
☆☆☆
3,
180 b,s ★
ドミニカ
☆☆☆
ガイアナ
84
0
★★★★
☆☆☆☆
ボリビア
900 b ★★★★★
☆☆☆☆
ハイチ
44
0
★
☆
ベトナム
43
0
注1)備考欄の記号は以下を示す。
b:ブレンド国
i/pc:過去3年のいずれかの資金配分計画策定時に支援停止中(inactive)ないしポストコンフリクトと分類されている国
s:人口が5
0万人未満の小国
注2)CPR・CPIA欄の星の数は、それぞれどの五分位に属するかを示す(星の数が多いほど上位)
。
出所)IDA(20
01)
、同(2002a)
、同(200
3a)
、同(2003b)
112
開発金融研究所報
2001年
200
2年
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆
★★
☆☆
★★★★
☆☆
★★★
☆☆☆
★★
☆☆
★★
☆☆
―
―
★★
☆
★
☆
―
―
―
―
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆
★★★
☆☆
★★★
☆☆
★★
☆☆☆☆
★★
☆☆
★★
☆☆
★
☆☆
★
☆
★
☆
―
―
―
―
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★
☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
―
―
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆
★★★
☆☆☆☆
★★★
☆☆☆☆
―
―
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆☆
―
―
★★★★
☆☆☆
★★★
☆☆☆
★★
☆☆☆
★★★
☆☆☆
★
☆
★
☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆
★★★
☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★
☆☆☆
★★
☆☆☆
★
☆
IDA資金
承諾実績
(2002年度)
人口1人 総 額
当 た り (百万
(SDR) SDR)
0.
0
0
6.
0
4
7
2
9.
6
2
3
46.
9
5
0.
0
0
0.
3
5
6
3.
2
3
8
0.
0
0
0.
0
0
6.
8
3
6
0.
0
0
0.
0
0
0.
0
0
3.
1
5
9
1.
0
1,
0
3
4
0.
0
0
0.
0
0
4.
6
6
3
5
2.
0
2
5
7
0.
7
1
8
3.
0
8
0
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆
★★★★
☆☆☆
★★★
☆☆☆
★★
☆☆☆
★
☆☆
★
☆
★
☆
20.
9
8
2
20.
5
7
0
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★★
☆☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆☆
★★★★
☆☆☆
★★★★
☆☆
★★★
☆☆☆☆
★
☆
8.
2
3
1
12.
9
1
3
7
8.
5
3
6
2.
4
1
2
6.
9
5
6
0.
4
2
5.
1
3
3
0.
6
1
6
60.
9
1
0
37.
4
4
22.
4
2
5.
0
3
3
5.
2
2
6
26.
0
2
0.
0
0
8.
0
6
7
0.
0
0
している他の国々は平均して人口1人当たり年間
図表5 CPRの評点と20
0
4∼06年度IDA資金配
分計画
1
2ドルのIDA資金が配分されている。
人口加重平均による
第5章
CPIA・CPRの評価結果と
IDA資金の国別配分実績
IDAにおけるCPIA・CPRの評価結果について
は、3年ほど前から部分的に公表されるように
なった*13。ただし、国別の評点の絶対水準は公
表されておらず、各国がIDA支援対象国全体の中
でどの五分位に位置しているかという相対水準、
および各五分位に属する国々の評点の平均値のみ
が公表されている。
図表4は、公表されているデータに基づき、各
国のCPIA・CPR五分位分類の過去3年間の推移
と、直近の20
0
2世銀年度の各国ごとのIDA資金
CPR(国別パフォー
該当国数
マンス格付)
第1五分位
(最上位)
第2五分位
第3五分位
第4五分位
第5五分位
(最下位)
全
体
IDA資金の年間
CPR
1人当たり平均
平均評点
配分額(ドル)
13
12
13
13
12
4.
1
7
3.
4
3
2.
9
9
2.
5
3
1.
6
0
1
2.
0
8.
8
5.
8
5.
4
2.
4
63
2.
8
2
6.
2
注)本表では、)IDA支援停止中の国(リベリア、ミャンマー、ソ
マリア、スーダン)
、*ポスト・コンフリクト国(アフガニス
タン、アンゴラ、ブルンジ、コンゴ民、コンゴ共、エリトリ
ア、シエラ・レオネ、チモール・レステ)
、+配分額が固定さ
れているブレンド国(ボリビア、インド、インドネシア、パキ
スタン、ウズベキスタン、ユーゴスラビア)
は除外されている。
出所)IDA(2
0
0
3b)
供与実績(人口1人当たり;承諾ベース)を対比
し、地域別にCPRの高い国順で整理したもので
分位に属する国々を比較した場合、人口1人当た
ある。この表では、CPRの五分位分類と人口1
りの年間配分額は平均で5倍の格差があることが
人当たり資金供与実績との間の連関がそれほど強
わかる。
い も の で は な い よ う に も 見 え る。こ れ は、)
PBA制度によるIDA資金の国別配分は3年計画
で行われる(例えば、2
0
0
2年度については、20
00
年のCPRに基づく2
0
0
2∼0
4年度の国別配分計画
第6章
今後の方向性と我が国への
インプリケーション
がベースとなっている)ため、ラグが存在すると
以上で説明したとおり、CPIAは、IDAの国別
ともに各単年度ごとの配分額にも年度により多寡
資金配分額の決定に重要な役割を果たすツールで
がありうることのほか、*人口の小さい国では、
あるが、それとともに、援助の有効性の前提とな
当該年度の承諾プロジェクトの有無により、人口
る援助受入各国の政策・制度環境の改善を図って
1人当たりの配分額が大きく変動すること、+ブ
いく上でどのような分野に努力を傾けるべきかと
レンド国やポスト・コンフリクト国に対しては配
いう重要な情報をも提供するものである。
分が特例的であること(前述)
、といった要因に
例えば、図表6は、世界銀行の対ベトナム国別
帰する面がある。こうした要因を考慮すれば、各
援助戦略(CAS)の中で示されている、ベトナ
国に対する資金供与実績は概ねCPIA・CPRによ
ムのCPIA全20項目のレーダー図である*14。上の
る評価結果に沿っていると言えよう。
図が1
99
8年と20
01年のベトナムCPIA評価結果の
また、図表5は、IDA(2
0
0
3b)で公表されて
対比、下の図がベトナムと他のIDA支援対象国
いる2
0
0
2年CPRと2
0
0
4∼0
6世銀年度の配分計画
(平均)との対比を示している。両図を一見すれ
との対比である。これによれば、国別配分計画が
ば、)ベトナムは全体としてマクロ経済面・社会
平均的にはCPR評点の高低に応じて策定されて
政策面が強い一方、構造政策面・ガバナンス面が
おり、最上位の五分位に属する国々と最下位の五
相対的に弱い、*他国と比較しても、マクロ経済
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1
3 IDA(20
0
1)
、同(2
0
0
2a)
、同(2
0
0
3b)
。
*1
4 World Bank(2
0
02b)
、p. 3。前述したとおり、各国ごとのCPIAの詳細な結果は現状では通例公表されておらず、その意味で
本図は例外的なものである。
2003年9月
第17号
113
図表6 ベトナムのCPIAのレーダー図
1.Macro Balances
2.Fiscal
20.Transparency & Accountability
3.External Debt
19.Public Administration
4.Development Program
18.Revenue Mobilization
ro
ac
M
.
Ⅰ
5.Trade & FX
17.Budget Management
6.Financial Stability
16.Property Rights & Governance
7.Banking Efficiency
ity
qu
/E
al
ci
So
.
Ⅲ
15.Poverty Analysis
Ⅱ
.
St
ra
ct
ur
al
Ⅳ
.
G
ov
er
m
en
t
A.1998年から2001年の間の変化
8.Private Sector Environment
14.Social Protection
9.Markets
13.Building HR
12.Equity of Resource Use
10.Environment
11.Gender
Vietnam 2001
Vietnam 1998
Maximum
1.Macro Balances
20.Transparency & Accountability
2.Fiscal
ro
ac
M
.
Ⅰ
3.External Debt
19.Public Administration
4.Development Program
18.Revenue Mobilization
5.Trade & FX
17.Budget Management
6.Financial Stability
16.Property Rights & Governance
7.Banking Efficiency
ity
qu
/E
al
ci
So
.
Ⅲ
15.Poverty Analysis
Ⅱ
.
St
ra
ct
ur
al
Ⅳ
.
G
ov
er
m
en
t
B.平均的なIDA支援対象国との比較
8.Private Sector Environment
14.Social Protection
9.Markets
13.Building HR
12.Equity of Resource Use
10.Environment
11.Gender
Vietnam 2001
Average IDA
Maximum
出所)World Bank (2
0
0
2b)
面・社会政策面の強さが目立っている、+1
9
9
8
通じて、その改善への道筋がCASの中で計画さ
年当時と比較してマクロ経済面・構造政策面を中
れることとなる。
心に改善が見られている、といったことを即座に
読み取ることができる。
翻って考えてみると、CPIAが提供する各国の
政策・制度環境に関する情報は、世銀のみなら
世界銀行は、融資をはじめとする資金供与だけ
ず、他の援助国・援助機関にとっても有益なもの
ではなく、非融資業務としてAAA(トリプル・
である。なぜなら、それは当該国で援助が有効に
エー)と呼ばれる分析・助言業務(Analytic and
活用されるため、ひいては当該国が貧困状態から
Advisory Activities)をも行う総合的な開発援助
脱し持続的な経済成長を実現していく上で必要と
機関である。AAAの一部であるESW(Economic
される様々な前提条件がどの程度まで整備されて
and Sector Work〈経済・セクター分析〉
;公共
いるか示すものだからである。こうしたことから
支出レビューなど)は世銀スタッフがCPIAの各
すれば、前述したように現在CPIAの更なる情報
項目を審査する際の基礎となり、またCPIAに
開示が検討されていることは、援助の有効性の向
よって示された各国の政策・制度上の問題点は、
上を求める世界的な声の高まりに呼応する動きと
融資業務のほか技術および知的支援業務などをも
して理解できよう*15。他方、世銀にとっても、
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1
5 これに関連して、20
0
3年春のIMF・世銀合同開発委員会では、いわゆるミレニアム開発目標(MDGs)などの達成に向けて各
国がとるべき政策・行動をモニターする枠組み(グローバル・モニタリングと称される)が合意されたが、そのうち途上国側
がとるべき政策・行動のモニタリングでは、世銀のCPIAの活用が想定されている。World Bank and IMF(2
00
3)を参照。
114
開発金融研究所報
自らのスタッフが行っているCPIAの評価が、当
Disbursements, and Funding in FY0
2.”
該相手国や他の援助国・援助機関の知見も取り入
http : / / siteresources . worldbank . org / IDA /
れられることによりさらに改善が図られていくこ
Resources / LendingCommitments.pdf (August
とは、むしろ望ましいことと考えられる。
2
5,20
0
3)
我が国においても、今般見直しが行われた政府
――(2
0
0
3b)
.“Allocating IDA Funds Based on
開発援助大綱(ODA大綱)において、被援助国
Performance―Fourth Annual Report on
との間の「政策協議の強化」が謳われ、その中で
IDA’
s Country Assessment and Allocation
特に「開発途上国の案件の形成、実施の面も含め
Process.”
て政策および制度の改善のための努力を支援する
http : / / siteresources . worldbank . org / IDA /
とともに、そのような努力が十分であるかどうか
Resources /P BAAR4.pdf(August2
5,2
0
0
3)
を我が国の支援に当たって考慮する」ことが求め
International Development Association⇒IDAを
られている 。今後の援助の現場では、当該国
*1
6
見よ。
と関係する援助国・援助機関との間で当該国の政
World Bank(1
9
9
8)
. Assessing Aid ― What Works,
策・制度環境についての評価を共有し、その一層
What doesn’
t, and Why . Oxford University
の改善を図っていく――そこでは、世銀が既に有
Press. (小浜裕久・冨田陽子訳(2
0
0
0)
『有
しているCPIAというツールの蓄積を有効に活用
効な援助―ファンジビリティと援助政策』
、
しつつ、我が国からも積極的に貢献していく――
東洋経済新報社)
といった作業が求められよう。本稿がそうした作
――(2
0
0
2a)
.“Annual Review on Portfolio Per-
業に携わる我が国の援助関係者の一助となれば幸
formance―Fiscal Year2
0
0
2.”
いである。
http: // siteresources.worldbank.org / QAG /
Resources / arppfy0
2report.pdf (August 25,
2
0
03)
[参考文献]
――(20
02b)
.“Country Assistance Strategy for
IDA(2
0
0
1)
.“Linking IDA Support to Country
the Socialist Republic of Vietnam.”
and
http: // www ― wds.worldbank. org / servlet /
Emerging Issues.”
WDSContentServer / WDSP / IB /2
002/08/23/
http : / / siteresources . worldbank . org / IDA /
000094946 _ 02081504033324 / Rendered /
Resources /Seminar %20PDFs /countryper
PDF / multi0page.pdf (August 25,20
03)
Performance―Recent
Experience
formance.pdf (August2
5,2
0
0
3)
World Bank and IMF(2
0
0
3)
.“Achieving the
――(2
0
0
2a)
“
. Linking IDA Support to Country
Performance―Third Annual Report on
IDA’
s Country Assessment and Allocation
MDGs and Related Outcomes: A Framework for Monitoring Policies and Actions.”
0
0
3)
(DC2
0
0
3―0
Process.”
018 . worldbank . org / DCS /
http : / / wbln0
http : / / siteresources . worldbank . org / IDA /
devcom . nsf / ( documentsattachmentsweb )/
Resources / Seminar %2
0PDFs / linking2.pdf
April2
003EnglishDC20030003/$ FILE / DC
(August2
5,2
0
0
3)
2003―0003.pdf(August25,2003)
――(2
0
0
2b)
. “Additions to IDA Resources:
Thirteenth
Replenishment ― Supporting
Poverty Reduction Strategies.”
http : / / siteresources . worldbank . org / IDA /
Resources / FinaltextIDA1
3Report.pdf
(Au-
gust25,2
0
0
3)
――(2
0
0
3a)
. “IDA’
s Lending Commitments,
2003年9月
第17号
115
Fly UP