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平成 22年度 学位論文 国際交流活動が児童および地域

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平成 22年度 学位論文 国際交流活動が児童および地域
平成22年度 学位論文
国際交流活動が児童および地域コミュニティに及ぼす影響に関する研究
一宍粟市立野原小学校における交流活動を事例として一
教科・領域教育学専攻
言語系コース
MO9135A
山 本 敬 子
謝辞
本研究の推進および論文の執筆にあたり,多くの方々にご指導,ご協力い
ただきましたことを心より感謝申し上げます。
主任指導教員並びに指導教員であります兵庫教育大学准教授吉田達弘先生
には,2年間温かくご指導,ご助言いただきました。研究とは何か,研究者と
しての視点とはどのようなものかということから調査や研究の進め方,論文
としてのまとめ方まで丁寧にご指導いただき,研究することの楽しさも学ば
せていただきました。そして,理論との結びつきの中で実践していくことの
大切さにも気付かせていただきました。研究を通してたくさんのことを学ぶ
機会を与えていただいたことに深く感謝しています。先生の熱心なご指導が
あったからこそ,この論文を完成させることができました。本当にありがとう
ございました。
また,言語系英語コースの先生方におかれましても,2年間を通して,様々
な場面でご指導,ご助言を賜りましたことを深く感謝申し上げます。
吉田ゼミの先輩である川上典子さん,神原克典さん,中林佳奈さん,曽霊さ
んには,いつも温かい励ましの言葉とアドバイスをいただきました。心より感
謝申し上げます。同じゼミ生として励まし合い,学び合った仲間である河岡佳
子さん,濟木美沙さん,Huang, Jerry Yung Tehさん,大杉由美さん,植村
恵子さんには,研究を深める貴重なご意見を賜りました。誠にありがとうご
ざいました。
また,ともに学んだ大学院生のみなさんと,現職校種や年代・国籍を超えて
研究や教育について話し合ったことも,視野を広げ,研究を進めることにつな
がったと,深く感謝しております。みなさんのお陰で私の大学院生活は非常
に有意義なものになり得ました。
そして,研究にご協力いただきましたNJA(野原日豪親善交流会)植田茂会
長,可藤愛子副会長,野原小学校校区地域の皆様とジェニス副校長はじめアイ
アンサイド小学校訪日団の皆様,事前にアイアンサイド小学校への調査依頼
”11
をしてくださった交流アドバイザーの川島洋一先生,元野原小学校の校長で
あり,訪豪実現にも力を尽くされた庄一幸先生,調査実施においてアドバイス
とこ’協力をいただいた前野原小学校校長の新庄康史先生,現野原小学校校長
の喜多英雄先生はじめ調査にご理解とご協力をいただいた野原小学校の先生
方に深く感謝申し上げます。これまでの国際交流活動を改めて見つめ直し,
小学校における国際交流の展望を見出す機会を与えてくださったこと,多く
のことを学ばせていただいたことに,大変感謝しております。
本研究の質問紙パイロット調査においてご協力いただきました神戸市立桂
木小学校校長の長嶋淳平先生と桂木小学校の先生方,調査依頼の仲立ちを引
き受けてくださった桂木小学校国際交流部の倉田容子さんの協力がなければ,
研究が進まなかったと思います。心から感謝申し上げます。
最後になりましたが,2年間の大学院生活を支え,研究および執筆に理解
を示して励ましてくれた友人,家族,私のまわりの人々全員に感謝の気持ちで
いっぱいです。たくさんの人々の支えがあったからこそ,多くのことを乗り
越え,今に至ることができました。
みなさんのおかげで,本論文を作成することができました。2年間にわた
る大学院生活で得た多くの学びを,教育実践の現場に還元できるように,こ
れから適進していきます。ここにお礼と感謝の気持ちを述べ,謝辞にかえた
いと思います。本当にありがとうございました。
2010年12月
山本 敬子
iii
要旨
環境問題をはじめとする地球規模的諸課題が顕在する今日,国や文化の隔てを
超えて世界の人々が相互理解を深め,協力して解決に向けて歩んでいくことが必
要になっている。また,交通及び通信手段の発達や,多国籍企業の増加も顕著に
なるなど,わが国でも国際化の波が押し寄せて,異質な文化が共存する時代へと
向かっている。このようにグローバル化する時代には,異文化をもった人々と共
に生きる力を培うことが求められている。つまり,地球市民としての意識を身に
つけた人間を育てる必要があり,そのために国際理解教育の必要性が高まってい
るのである。
そこで,本研究では,筆者の勤務校である宍粟市立野原小学校区で30年もの
問続いているオーストラリアとの国際交流を事例としてとりあげ,質問紙及び聞
き取り調査を行って,国際理解教育の一環として取り組まれる国際交流の児童及
び地域コミュニティへの影響について調査した。具体的には以下のような事柄を
目指す。
(1)本研究で調査対象である国際交流活動は,国際理解教育のねらいである相
互理解や共生の理念に基づいた上で,児童や地域コミュニティの人々の国際理
解や異文小間コミュニケーションの意識・態度にどのような影響を与えている
かを明らかにすること,(2)長期間交流が継続してきた要因,あるいは,今後
の国際交流活動の課題としてとしてどのようなものがあるのかを明らかにする。
まず,先行研究から国際交流の意義についての理論的考察を行った。国際理
解教育の変遷と現在の国際理解教育において必要な理念が示され,国際交流の
意義が定義された。それらは,大きくまとめると,国際交流は国際理解教育の
具体的実践のひとつであり,人間同士として相互理解を深め,共に生きること
の重要性を認識する機会を提供する実践である,ということになる。次に事例
研究からは,国際交流活動を通じた児童たちの変容として,「諸外国への興味の
高まり」や「外国語への関心・意欲の高まり」などが挙げられており,同時に,
交流活動に関与した保護者ら関係者の意識変容も報告されている。また,この
ような理念を基盤とし,地域の活性化を目指す国際交流が成功した実例もある
iv
が,先行する事例からは,国際交流活動の抱える問題点として,「コミュニケーシ
ョンの問題」,「予算の問題」,「継続の問題」という点も示された。
そこで,本事例となった国際交流活動のうち,学校内での教育に目を向けた
「交流による児童の変容」を調査1とし,地域に目を向けた調査を調査llとして
「国際交流に対する地域の人々の意識」および「地域で国際交流が継続されてき
た要因」についてそれぞれ質問紙及び聞き取り調査を行った。
調査1の質問紙調査の結果,野原小学校,アイアンサイド小学校両児童にとっ
て,交流の体験は児童のコミュニケーションへの認識に対して肯定的な影響を及
ぼしていること,さらに交流後の外国語に対する有用性の認識も増加の傾向にあ
ることが分かった。また,聞き取り調査からは,交流を通した児童の変容や成長
がみられた。その内容は,まず,児童自身に《異文化受容に対する気付き》があ
ったことで,児童は相手を理解するためには,「相手を知ろうと努力すること」,
「相手を思う気持ち」,「一緒に過ごす時間をもつこと」,「心を開くこと」が重要
であると認識していた。また,《積極的な外国語使用への意識》についても,コ
ミュニケーションできたという体験から外国語学習に対する興味と意欲が育っ
ていた。さらに《交流による自己の成長》も感じており,交流することによって
「自信が生まれてきたこと」や「人に対して積極的に話しかけられるようになっ
た」などの気付きがあった。
調査llの地域コミュニティの住民への質問紙調査からは,人々は交流活動が
「地域の活性化」,「地域の結束」という効果をもたらし,交流の大きな価値を生
み出していると感じていることが分かった。地域全体の考えの傾向としては,「交
流を続けたいが,少子高齢化という地域社会の状況が交流継続の不安として存在
する」ということも確認できた。聞き取り調査で得られた地域の人々の語りの特
徴づけを行った結果からは,一般的な国際交流の意義とは別に,30年間の交流
の歴史の中での地域への影響として現れてきたコミュニティにとっての意味づ
けであり,地域の人々の暮らしに深くかかわった「コミュニティとしての語り」
が存在することが分かった。その語りの考察から,交流の継続の要因は,咬流
への思いが受け継がれてきたこと」,「交流の歴史から深まった互いの親近感」と
v
いった人々が新たに抱いた認識によって「地域・家庭の結束と活性化」が起こり,
これが国際交流活動を継続する力となり,やがては,コミュニティの成長へとつ
ながっていったと考えられる。さらに,コミュニティの変容をもたらす源泉を説
明する思想として,ネル・ノディングスのケアリングの思想が非常に示唆的であ
ると考えた。ノディングスはケアリングという概念に人間関係の本質をみており,
ケアし,ケアされることは根本的な人間のニーズであり,人々の幸福につながる
としたうえで,現在社会においてケアの必要性は重大であり,社会組織はケアの
関係によって構成されるべきであると考えている。そこで,国際交流活動を支え
る人々の問や,訪目団をホストとして受け入れる側と,受け入れられる側の人々
の間にケアリングの関係が成り立っているのではないかと考え,人々の語りをケ
アの観点から分析した結果,人々の関係の中にケアリングの思想が共有されてい
ることが認められた。交流活動が人間としての幸福感を得られる活動のひとつと
して存在することで,地域が「コミュニティ」として発展し,それに伴って,国
際交流活動も継続してきたことが確かめられたと言える。
本研究で明らかになった国際交流がもたらす影響から,国際交流の重要性が示
され,今後の国際交流の展望が見えてくると考える。
V
目次
謝辞..鱒..................。........................................i
要旨.__..._____...__.._....__.___.iii
目次_...__....._.............._._.._......................vi
図表グラフー覧.................鱒..................................輔
序論................................................騨.............1
第1章 研究の背景......................,..........................3
第2章 先行研究......................。............................7
2.1 国際交流の意義に関する先行研究..........,.............、.......7
2.1.1 多田(1997)____...._._____.____.7
2. 1.2 共に生きることを学ぶ:ユネスコ「21世紀教育国際委員会」(1997)
”.”””.””””””””.””””””.””......”.”..” 8
2.1.3 国際理解教育の課題の転換と共生の理念:佐藤i(2001)...........9
2.1.4 国際理解教育に通じる理念,....,...............,...........9
2.2国際交流活動の事例.....t一.....,...............................10
2.2.1地域における国際交流の事例「カラモジア運動」:加藤i(2001)...10
2.2.2 韓国と日本の国際交流の研究:石谷・田中(2005).............11
2. 2。3 中国と日本の国際交流活動の比較研究:1蓼(2005)..,.........12
2.3先行研究からの示唆.....................................,.,...13
第3章 研究の目的と方法..........................................14
3.1研究目的...尋..................t.‘.........一...畢...9......,...14
3.2研究方法...,.................,..........................響.一t.15
3.2.1野原小学校区の国際交流活動の背景.........................15
3,2.2調査1(学校内調査).....................................17
3. 2.3調査II(コミュニティ調査)...............................17
vii
第4章 分析と結果................................................19
4.L 調査1(学校内調査)..,................。........,...........19
4.1.1野原小学校児童質問紙調査結果.......,...............,.....19
4.1.2オーストラリアのアイアンサイド小学校児童質問紙結果,.,.....20
4.1.3児童への聞き取り調査.......................................22
4.2調査皿(地域コミュニティ調査)...............................24
4,3 分析...............,..,。...........,,.........,....,.........33
4.3.1調査1の分析.....................................・.・・..・.33
4.3.2調査2の分析..............................................34
4.・4 コミュニティの人々の語りの分類:菊池(2006)。..。.。..............35
4.5語りの分析.______._._.____.___.37
第5章 国際交流活動と地域コミュニティ活性化との関係...............39
5.1 コミュニティについての定義:広井(2009).......................39
5.2ケアの観点からの関係性:ネル・ノディングス(2007)____..40
5.3今後の課題...................................................45
結論.............................................................46
参考文献..........................・......・...・....・..・...・...・.・.・47
巻末資料......■......一.........................................。..48
資料1:野原小学校児童交流前質問紙..................。..............49
資料2:野原小学校児童交流後質問紙資料.............................53
資料3:アイアンサイド小学校児童交流前質問紙.............。.........56
資料4:アイアンサイド小学校児童交流後質問紙.......................60
資料5:野原小学校地域質問紙.....,...,................,...f..,....62
viii
図表グラフー覧
表の一覧
表1 国際理解教育の理念と国際交流活動との関連性..
表2 2009年度の交流日程......_._._
”10
.16
1 9臼 3 4.
図図図図
図の一覧
国際交流活動の内容.._._._._
.15
コミュニティの構成とその関係性__
..40
関係性としてのケアリング__
..42
ケアの観点からみた関係性.__
..44
グラフ1野原小学校の児童のコミュニケーションへの不安_..__._.__19
グラフ2 野原小学校の児童の将来における英語学習の有用性への認識の変
イヒ______....___.___..__.,__.._.、____.__.______...____20
グラフ3 アイアンサイド校の児童のコミュニケーションに対する認識の変
イヒ____.__.t__.___._.______..._.._____._____._.,____20
グラフ4アイアンサイド校の児童の日本語によるコミュニケーションへの
認識の変化_..9_........_...__.._.._..._..._._一一_.._..._...._.....__.........21
グラフ5アイアンサイド校の児童が感じた交流における困難_____21
グラフ6 地域の人々の交流に対する価値観の存在_..._.__.___。_.._24
グラフ7 地域の人々が感じている交流の価値.______.______25
グラフ8地域の人々が感じる交流時の困難の存在___.__.,___25
グラフ9 地域の人々の交流時の困難の内容__.___.______._26
グラフ10 地域の人々の交流への継続希望__.____..______._26
グラフ11地域の人々が交流の継続を希望する理由_____一_.___27
グラフ12 地域の人々の交流継続への不安の存在._.__._____27
グラフ13 地域の人々の交流継続への不安理由______.____28
1
序論
本研究は,国際交流が児童および地域コミュニティに及ぼす影響を明らかにす
るために,宍粟市立野原小学校におけるオーストラリアの小学校との国際交流活
動を研究対象とした事例研究である。
第1章では,研究背景として,国際理解教育の必要性を概説し,小学校におけ
る国際理解教育の位置とその問題点を提示する。そして,筆者の研究対象となる
野原小学校区の交流活動について概略を示し,本研究の方向性を導きたい。
第2章では,国際理解教育における国際交流の意義に関する先行研究を概観し,
国際交流の事例を検討し,達成された目的,および実践から浮かび上がってきた
課題等について議論する。それらは,先行研究からの国際交流の意義の定義であ
り,事例研究からの,国際交流活動を通じた児童や地域の変容と国際交流活動の
抱える問題点を示すものである。
第3章では,研究目的と研究方法について記す。研究目的では,交流の影響と
交流継続の要因に関する次のような2っの問いを掲げる。(1)本研究で調査対象と
なった国際交流活動は,国際理解教育のねらいである相互理解や共生の理念に基
づいた上で,児童や地域コミュニティの人々の国際理解や異文富岳コミュニケー
ションの意識・態度にどのような影響を与えているか。(2)長期間交流が継続して
きた要因はどのようなものか。これらの問いに答えるための研究方法すなわち,
交流活動の背景,交流活動の内容,調査の具体的方法及び分析方法を順に述べる。
本研究では,分析方法質問紙調査に基礎統計を用い,聞き取り調査には内容をテ
キスト化して分類ラベルをつける方法を用いた。
第4章では,分析によって明らかになった児童及び地域コミュニティへの影響
と交流継続の要因を,質問紙調査結果および聞き取り調査結果を用いて順に示し,
聞き取り調査における語りの分析を深める。
第5章では,交流継続の要因をコミュニティの成長とコミュニティを構成する
人々の関係性に注目して,コミュニティ論からの考察を行う。さらにもう一歩踏
み込んで,個人の人間としての幸せにつながるケアの観点からも考察を行った。
2
これらの考察によって,本事例における国際交流は,人々にとってどんな意味を
もつものであるかを述べ,国際交流の影響を示したい。最後には,これらの結果
をもとに,今後の学校における国際理解教育プログラムの策定,及び,地域にお
ける国際交流活動を推進する際の枠組みづくりへの課題についても述べておきた
いD
3
第1章
研究の背景
環境問題をはじめとする地球規模的諸課題が顕在する今日,国や文化の隔てを
超えて世界の人々が相互理解を深め,協力して解決に向けて歩んでいくことが必
要になっている。また,交通及び通信手段の発達や,多国籍企業の増加も顕著に
なるなど,わが国にも国際化の波が押し寄せて,異質な文化が共存する時代へと
向かっている。多田(1997)は,未来社会の展望として「世界の各地で,異文化
をもち,異なった生活方式をもつ人々が混在する社会が到来する」(p.13)と述べ
ており,グローバル化する時代には,異文化をもった人々と共に生きる力を培う
ことが求められている。つまり,地球市民としての意識を身につけた人間を育て
る必要があり,そのために国際理解教育1の必要性が高まっているのである。
国際理解教育の基本的な指針の一つとして,ユネスコは1974年に「国際理解,
国際協力および国際平和のための教育ならびに人権および基本的自由についての
教育に関する勧告」を出し,「文化間理解」重視の方向性を打ち出した。その中で
教育政策の主要な指導原則を以下のように示している。
(a)すべての段階および形態の教育に国際的側面および世界的視点をもたせる
こと
(b)国内の民族文化および他国民の文化を含むすべての人民ならびにその文化,
文明,価値および生活様式に対する理解と尊重
(c)諸人民および諸国民の間に増大する世界的な相互依存関係についての自覚
(d)他の人々とコミュニケーションする能力
(e)権利を知るだけでなく,個人・社会的集団および国家にはそれぞれ相互に
1国際理解教育に類似する言葉としては,多文化教育(箕浦1997)多文化共生(佐
藤,2001)や異文化理解(青木,2001)があるが,本研究では包括的な用語とし
て,また本研究の国際交流の内容に沿うものとして国際理解教育という用語を用
いる。
4
負うべき義務もあることを自覚すること
(f)国際的な連帯および協力の必要についての理解
(g)個人がその属する社会,国および世界全体の諸問題の解決への参加を用意
すること。
このユネスコの提言が日本の国際理解教育の進展の機会となったことは,その
後に多くの研究の成果や意義の発表が相次いだことからも明らかである。ユネス
コによって国際理解教育の重要性が示され,そのための教育の指導原則が提唱さ
れる中,箕浦(1997)は多文化教育の目的について「自分は異質な人,なじみのな
いものにも心を開いているという自己イメージをつくることであり,多様な文化
をもつ人たちがこの地球には住んでいて,自分もその一人であることを子どもに
実感させることにある」(p.61)と述べている。さらに,幼児童期の体験に大切な
ものとして「多様なライフスタイルや言語,ものの見方があるということ
を具体的に体験させることで,差異があるのはあたり前と思えるだけのな
じみを幼児童期につくっておくことは重要である」(p.62−63)とも述べてお
り,国際交流活動が幼児童期においても大切な経験であるということを示
している。
では,国際理解教育の重要性が高まる中,学校教育における国際理解教育はど
のように位置づけられているだろうか。変化しっっある時代背景を受けて,中央
教育審議会でも新しい知識観学力観が議論されたが,この議論を受けて平成20
年に出された小学校学習指導要領解説の外国語活動編総説の改訂の経緯には,以
下のように述べられている。(p.1)
21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆ
る領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」
の時代であると言われている。このような知識基盤社会化やグm一一バル化は,ア
イディアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で,異なる
文化や文明との共存や国際協力の必要性を増大させている。
5
このような社会情勢の変化を受け,国際理解をテーマの一つとして扱う小学校
における「総合的な学習の時間」の内容には,「国際理解に関する学習を行う際に
は,問題の解決や探究活動に取り組むことを通して,諸外国の生活や文化などを
体験したり調査したりするなどの学習活動が行われるようにすること」(p. 111)
と記されている。また,新設された外国語活動についても,学習指導要領の内容
に,「異なる文化をもつ人々との交流等を体験し,文化等に対する理解を深めるこ
と」と示され,第6学年における内容の取り扱い事項としても,「第5学年の学習
を基礎として,友達とのかかわりを大切にしながら,児童の日常生活や学校生活
に加え,国際理解にかかわる交流等を含んだ体験的なコミュニケーション活動を
行うようにすること」(p.109)と記されている。
このように国際理解教育の要素は学校教育の中にも取り込まれつつあるように
見えるが,佐藤(2001)は,学校教育における国際理解教育の捉え方を批判して
いる。つまり,現行の(平成10年度版)学習指導要領に記された総合的な学習の
時間について言及しながら,学習指導要領に記された国際理解教育の本質的なね
らいは「問題解決能力の育成」や「学び方やものの考え方を身に着けること」「自
己の生き方について自覚を高めること」であるから,総合的な学習の時間におけ
る国際理解はこの目標を達成するための手段に過ぎないという見解にたっている
(p.49)。また,新しい学習指導要領の外国語活動の「内容」に記された「異なる文
化を持つ人々との交流等を体験し,文化等に対する理解を深めること」,あるいは,
指導の配慮事項に記述されている「国際理解に関わる交流活動等を含んだ体験的
なコミュニケーション活動を行うようにすること」という表現には,国際理解と
いう記述が見られるが,これらはあくまでも外国語でのコミュニケーションの機
会づくりであり,国際理解教育が本来めざしている「互いの価値を尊重し合い,
異なる文化や習慣を持つ人々と共に生きていける力をはぐくむこと」という目的
がどの程度達成されるかについては,心許ない。つまり,外国語活動は,国際理
解の一環として実施されていた総合的な学習の時間の活動の枠から抜け出すこと
によって,本来的な国際理解教育の目的よりも,外国語によるコミュニケーショ
6
ン教育の目的を重視する活動となったと考えられる2。
このことから,小学校における国際理解教育のカリキュラムは,総合的な学習
や外国語活動の枠組みの中に居場所を求めることが難しくなっている。このよう
な現状の中,教科や領域の枠組みに捕らえられることなく,すべての学習活
動において横断的に取り組んでいる国際理解教育の事例として,また,国
際理解教育における国際交流の意義やそれが人々に及ぼす影響について調
査するための対象として,本研究では,筆者の勤務校がある宍粟市立野原
小学校区の取り組みに注目する。野原小学校区では,30年前からオースト
ラリアのブリスベン市にあるアイアンサイド小学校と国際交流を続けてい
る。この間,児童たちは,アイアンサイド小学校の児童たちと交流するこ
とで,異なる文化や言語,異なる考え方を直接体験してきたが,児童たち
だけでなく,小学校を取り巻く地域コミュニティの人々の国際交流活動へ
の支援や,異なる文化に対する考え方も変容してきていることが実感でき
る。これは,国際交流が地域やPTAと連携することにより効果が高まる
(多田,1997)事例であり,このような交流活動が30年間も継続してきたこと
は非常に意義深い。本事例のように,長年にわたり国際交流活動を校区全
体で行ったり,高学年全児童が外国の学校を訪問したりするような例は国
内では少なく,同様の交流活動に関する先行研究は非常に数が少ないとい
うのが現状である。
そこで本研究では,野原小学校での実践の分析を通して,学校教育の中
で行われる国際交流活動が児童及び地域の人々の国際理解や異文化問コミ
ュニケーションの意識・態度にどのような影響を与えているかを調査する。
また,このような交流を30年間継続できた要因について,地域コミュニテ
ィレベルおよび個人のレベルにおいても明らかにしたいと考える。
2冨田(2001)は,「総合的な学習の時間」の一部で行われてきた「国際理解の一環と
しての外国語会話等」,すなわち英語活動は「過渡期の産物」あるいは,「教科と
しての英語教育の通過点」に過ぎないと見なしており,このことを「雨宿り論」
として,批判している。
7
第2章
先行研究
2.1 国際交流の意義に関する先行研究
本節では,国際理解教育における国際交流の意義を検討する。そのために,国
際理解教育の理念や意義を概観し,数は少ないが,実際に国際交流活動を行った
事例を検討し,達成された目的,および,実践から浮かび上がってきた課題等に
ついて議論する。
2.1.1 多田(1997)
学校における国際理解教育の実践研究を長年行ってきた多田は,学校教
育の発想の転換こそが時代の要請であり,21世紀に向かう学校教育の教育
課題はグローバルマインド(地球市民的意識)をもった人々の育成にあり,
そのために最も直接的かっ効果的な教育が国際理解教育なのだと主張して
いる。そのためには理論的背景をもった,どっしりと根をおろした実践が
必要であり,「どのように実践を進めていくか」とともに「どのような考え
による実践か」を追求していくべきだと語っている(p.2)。
多田は,国際理解教育の構成要素として,「相互理解」「人間理解」「文化
理解」「世界の現実理解」の4点を揚げている。また,国際理解教育の基本
目標を,「グローバルマインドの育成及び国際性の素地としての資質・能
力・態度の育成」とした見解をもっている。さらに,国際理解教育の具体
的実践の一つとして「国際交流を活用した学習」を挙げており,「相互に学
び合うことにより,互いの立場について理解を深め,異なる文化,社会,
価値観を尊重し合うようになることが肝要である。」と述べ,国際交流は,
以下の点からも有用であるとしている。(p45)
①外国の人々への抵抗感の減少と親しむ心情や態度を培う
②異文化に対する興味関心・視野の広がり
8
③同じ人間であることへの認識
④コミュニケーション能力の必要性の実感
⑤生活感覚での異文化や人間理解の深まり
⑥多様な角度から見方を広げ,思考を深める
(多田[1997:158]を要約)
さらに多田は,国際交流の留意点として,「国際交流は,単なるイベントであって
はならない。特に人と人の交流においては,人々の生活や生き方を人間同士とし
て相互理解を深めたり,地球規模の課題解決へ関心を高める契機となったりする
ものでありたい」(p.162)とも述べている。多田の示した国際理解教育についての
理論や実践研究は今後の学校教育における国際交流の在り方の展望を示すもので
ある。
2.1.2 共に生きることを学ぶ:ユネスコ「2t世紀教育国際委員会」(1997)
ユネスコは,1993年に「21世紀教育国際委員会」を設置し,今世紀の教育およ
び生涯学習のあり方を示した。その報告書である『学習:秘められた宝』(ユネス
コ「21世紀教育国際委員会」,1997)は,国際理解教育に関する直接的な提言とは
言えないが,今日の地球規模での持続的な教育のあり方に関して示唆を与えてい
る。報告書は,その最重要課題として,「共に生きることを学ぶ」ことを挙げ,そ
のことを達成するための二つの学習方法を提言している。一つ目は,「他者を発見
すること」,つまり,人には人種があることを教え,そこには違いもあれば多くの
共通点もあり,人は相互に依存しながら生存していることを教えるのが教育に課
せられた任務のひとつであるとしている。学校教育においても,児童に対してあ
らゆる機会を作り出し,他者との共感を発達させることが必要になっている。二
つ目は,「共通目標のための共同作業」で,一緒に行動すれば違いよりも共通性に
考えが向かい,そこに新たな帰属意識が生まれてくるという考え方である。これ
により,国際理解教育の原点が「共に生きる」学習に見いだされている。
9
2.1.3 国際理解教育の課題の転換と共生の理念:佐藤(2001)
佐藤(2001)は,日本の国際理解教育は,国家同士の相互理解や相互依存関係な
どに焦点をあてて「国際的な日本人」形成を目指したナショナリズムとしての国際
理解教育から,国民国家という枠組みを超えた普遍的な「地球市民」の育成を課
題にしたポストナショナリズムの時代に転換してきているとし,上で述べた多田
と同様に,ポストナショナリズム時代の国際理解教育における中心概念として「共
生」を挙げている。共生とは,多様な人々と交流し,違いを認め合い,相互に理
解を深めていくことであり,具体的に「自己との共生」「他者との共生」「環境と
の共生」を指す。(p.33)「自己との共生」とは,多様な学びの中で自己を知ること
から始まり,あるがままの自己を認め,受け入れることで,そのことが自尊感情
や自己肯定感と結びつき,自己との共生が可能になることである。「他者との共生」
は,身近な生活のレベルで異なった文化を持つ人々と交流することではじめて可
能になる。その場合の共生とは,単に民族や国籍の違いだけでなく様々な文化的
背景や生活背景を異にする多様な人々と交流し,違いを認め合い,相互に理解を
深めていくことであり,交流の結果として新しい生活環境を作り上げていくこと
が「環境との共生」となる。
2.1.4 国際理解教育に通じる理念
以上,近年の国際理解教育の理念を概観したが,それらは概ね次のようにまと
められよう。
10
多田(1997)
・グローバルマイ
国際理解教育の目
@標および課題
塔hの育成及び国
ロ性の素地として
フ資質・能力・態
ユネスコ「21世紀教育
総ロ委員会」(1997)
・「知ることを学
ヤ」,「為すことを
g組みを超えた普
wぶ」,「(他者と)
ユ的な「地球市民」
、に生きることを
フ育成・自己との共生,
xの育成・相互理解,人間
wぶ」,「人間とし
揄
ヤ」
,文化理解,
佐藤(2001)
・国民国家という
ト生きることを学 シ者との共生,環
ォとの共生
「界の現実理解
実践方法および
総ロ交流活動との
@ 関連性
相互に学び合うこ
ニにより,互いの
ァ場について理解
深める。
他者を発見するこ
ニ,共通目標のた
゚の共同作業
身近な生活のレベ
汲ナ異なった文化
持つ人々と交流
キること。
表1国際理解教育の理念と国際交流活動との関連性
2,2国際交流活動の事例
前節では,近年提唱されている国際理解教育の意義を概観したが,以下では,
このような理念に基づいて,学校間や地域間の国際交流活動を実施した事例を検
討する。
2.2.1地域における国際交流の事例「カラモジア運動」=加藤(2001)
加藤は,1981年に鹿児島県の過疎化しつつあった故郷の村を外国人留学生との
国際交流によって活性化させたカラモジア運動の創始者である。加藤は6年間の
アメリカ留学中に国際関係論を学び,ボーダーレスの時代の中での地:方と世界と
の関係のあり方を研究した。帰国後,過疎化が進む故郷の鹿児島県肝属郡内之浦
町を拠点とし,国内の留学生を受入れ,地域の人々と生活や仕事をともにしなが
ら,町を活性化することを目標とするプログラムを立ち上げた。草の根交流のレ
ベルから始まったこのプログラムは当初,地域の人々の抵抗にあうが,留学生に
第二の故郷を提供し,居場所を作ってあげたい思いが,地域の人々を動かし,留
学生の受入れと同時に,留学生たちの故郷であるアジア諸国との国際交流へと発
展した。この交流は人々に感動を,村に活気を与え,形を変えながらも活動は続
いている。加藤の情熱とそこから生まれる行動力が原点ではあったが,それに共
11
諭し,国際交流の体験から他では得がたい感動を得た人々の協力があってこその
発展であると思われる。
加藤はその苦労と成果を記した著書『辺境からの挑戦』(加藤,2001)の中で,
外国人留学生を受け入れてくれる家庭探しに苦労したのであるが,交流後の調査
結果として,受け入れを決断した家庭の主な動機を明らかにしている。その動機
とは,大半が「子どもたちの教育のため」であった。交流を通じて世界に目覚め
る子ども達を育てるためには,まずその環境を用意することであり,それは親が
受け入れ家庭になることから始まる。すなわち,人々が交流は教育のチャンスで
あると考えたということであった。また,交流を続けたい理由として「国際的視
野をもった人間になりたい」「子どもの教育や地域へのすばらしい影響力」「お互
いの勉強になり,生活が充実する」が挙げられている。つまり,「自己成長,教育,
地域の活性化」を促す原動力として交流の意義が評価されていたと言える。また,
地域交流の中で,日常生活の中に埋もれていた郷土の伝統,文化,歴史を学習し,
地域のふるさと再発見の作業が始まったという報告もある。
この事例は,もともとの交流活動の中心が学校ではなく地域であるという点や,
加藤の活動当初の目的や動機が教育そのものではなく過疎地域の再生にあったと
いうなどの点で,筆者の研究とは別の背景をもつものの,国際交流によって人々
や地域に変容があったという部分において共通点が多い。
2.2.2 韓;国と日本の国際交流の研究:石谷・田中(2005)
鳥取大附属小学校と韓国の春川小学校の国際交流は,小学校間の数少な
い国際交流に関する研究の一つであり,相互訪問をしているという点にお
いても,本研究との共通点があるが,この研究では,主に国際交流による
児童の変容について調査されている。鳥取大附属小学校に在籍する5・6年
生のうち半数の参加希望者75名が韓国を訪問した年に,韓国春川小学校
5・6年生および韓国春川小学校保護者対象に質問紙調査を実施した。その
結果,「国際交流は両国の文化に対する理解や関心を高め,子ども自身の変
容をもたらし,子どもの学びの変容を促す」ということが分かった。変容
12
の内容としては,「諸外国への興味の高まり」や「外国語への関心・意欲の
高まり」が示されている。なかでも,韓国を訪問した児童と訪問しなかっ
た児童の比較では,前者の方が「両国の文化などに対する意識がより高い」
ということと,「気持ちの通じにくさをより感じていた」という結果が出て
おり,そのことがその後の学習意欲に結びついているとされている。この
結果から,ホームステイは得難い経験であることが分かっている。さらに,
1年忌からの交流の積み重ねによって,6年生で交流の成果が最大になるこ
とも確認された。また,日本の児童を受け入れた韓国側の保護者は,「日本
文化への興味・日本人の良さを理解し,交流の意義を感じており,全般的
に今後交流を発展させたいと願う意見が多く未来志向の考え方をもってい
る」ということも明らかになった。つまり,国際交流活動が児童のみなら
ず,保護者の異文化への意識の変化をもたらしたということが分かる。今
後の課題としては,国際交流が学習意欲につながることは明らかになった
が,そのもとになる認識や動機づけの変化を明らかにする必要があるとさ
れている。
2.2.3 中国と日本の国際交流活動の比較研究:彦(2005)
中国では2001年秋から,義務教育カリキュラムの改:革が指定された地域から始
まり,日本の総合的な学習の時間に相当する新設科目「総合実践活動」では,社
会実践の基本目標として「各国家や民族や地域と接触し,様々な文化を理解し,
文化の多様性を尊重する」ことが掲げられている。この中で,国際理解あるいは
国際交流をどのようにバランスよく総合学習時間に取り入れるかは,今日の課題
となっているが,彦(2005)は,日本と中国の両国の小学校を対象に調査を行い,
両国の国際交流の現状を比較した。国際交流活動が抱える問題点を明らかに
するために,岡山市内の小学校とその小学校が交流をしている中国・南山市内
の公立小学校を対象に質問紙調査(2004年9月目11月)と聞き取り調査(2004
年5月)を行い,その結果を比較した。
調査の結果,両国の小学校が抱える問題点として,「コミュニケーション
13
の問題」,「予算の問題」,「継続の問題」が明らかになった。これらの課題
の多くは,学校が活動の運営上抱えている問題であり,これらの問題が解
決されない限り,国際交流を簡単には継続できないというのは,いずれの
事例にもあてはまる課題のようである。
2.3 先行研究からの示唆
上記で概説した先行研究では,国際理解教育の変遷と現在の国際理解教育にお
いて必要な理念が示され,国際交流の意義が定義された。それらは,大きくまと
めると,国際交流は国際理解教育の具体的実践の一つであり,人間同士として相
互理解を深め,共に生きることの重要性を認識する機会を提供する実践である,
ということになる。次に事例研究からは,国際交流活動を通じた児童たちの変容
として,「諸外国への興味の高まり」や「外国語への関心・意欲の高まり」
などが挙げられており,同時に,交流活動に関与した保護者ら関係者の意
識変容も報告されている。また,このような理念を基盤とし,地域の活性化
を目指す国際交流が成功した実例もあるが,同時に,先行する事例からは,国
際交流活動の抱える問題点として,「コミュニケーションの問題」,「予算の
問題」,「継続の問題」という運営上の問題点も示された。
そこで,本研究では,調査対象である宍粟市立野原小学校での国際交流活
動が,(1)国際理解教育のねらいである相互理解や共生の理念といった児童
の国際理解や異文此間コミュニケーションの意識・態度にどのような影響
を与えているか,(2)現在,国際交流活動に関わっているコミュニティの人々
が,どのような国際理解や異文化間コミュニケーションに対する意識・態
度を持っているか,(3)さらに,野原小学校とオーストラリアのアイアンサ
イド小学校との交流が30年という長期間に渡って継続してきた要因,ある
いは,今後の国際交流活動の課題としてどのようなものがあるのかを明ら
かにする。
14
第3章
研究の目的と方法
3.1研究目的
本研究では,宍粟市立野原小学校を中心とした国際交流活動が児童の国際
理解や異文化間コミュニケーションの意識・態度にどのような影響を与え
ているかを調査する。本交流活動は,地域コミュニティの支援や協力のも
とに長期間継続的に実施されてきたという実績があるが,この交流活動の
歴史的経緯を調査し,現在関わっているコミュニティの人々が,どのよう
な国際理解や異文化間コミュニケーションに対する意識・態度を持ってい
るか,また,交流を長期間継続できた要因についても明らかにしたい。さ
らに,これらの成果を,今後の学校における国際理解教育プログラムの策
定,及び,地域における国際交流活動を推進する際の枠組みづくりへ生か
したいと考える
そこで,調査1として,「交流による児童の変容」を調べ,調査llとして
「国際交流に対する地域の人々の意識」および「地域で国際交流が継続さ
れてきた要因」について研究を行うことにする。したがって,以下のよう
なリサーチクェスチョンを設定する。
1 2009年度に実施された国際交流活動の前後で,野原小学校および
アイアンサイド小学校の児童たちの異文化や外国語に対する態度や
意識はどのように変容したか。
皿 本国際交流活動について地域の人々はどのような考えをもってい
るか。そして,交流は地域の人々や地域コミュニティにどのような
影響を及ぼしたか。また,30年間という長期にわたる国際交流活動
の継続の要因は何か。
15
3.2研究方法
3.2.1 野原小学校区の国際交流活動の背景
本研究者の勤務校がある宍粟市立野原小学校区では,国際交流活動を行
っており,オーストラリアのブリスベン市にあるアイアンサイド小学校と
交流を続けて今年で30周年を迎える。この交流は相互訪問を行うことと保
護者,地域住民,教育委員会,地域の国際交流団体の支援があることが特
徴であり,野原小学校の5・6年生全員と地域の支援団体の会員は,隔年で
オーストラリアを訪問してきた。オーストラリアの児童も隔年で日本を訪
問してきた(図1)。それぞれの学校では互いの言語について学ぶカリキュ
ラムがあり,野原小学校でも1年生から英語活動を行っている。交流訪問
時には互いの地域にホームステイをし,学校訪問,交流授業を通して交流
を深めている。野原小学校は全校児童36名の小規模校であり,学校が位置
する野原地区も高齢者の割合が多い小さな地域である。しかし,オースト
ラリアの児童の受け入れに際しては,高齢者だけの世帯であっても,訪日
団のホームステイを受け入れるなどの積極的な協力がある。30年間もこの
ような交流活動が継続してきたことは非常に意義深いと考えられる。
’・・一・・
?エ小学校・ 交率
digtw, enh4dtii’.一
5・6年生全員訪豪
相手校児童の受入
6・7年生来日
相手校児童の受入
灘融
(liil>
地域の国際交流’t
団体(会費を宰.
払って会
ホストファミリー事
業
図1 国際交流活動の内容
そもそも,この交流活動は,30年前に神戸日豪交流協会の仲介によるオース
16
トラリアの小学校との国際交流がきっかけとなって始まり,1981年に試行的取組
(パイロットツアー)としてオーストラリアからの訪日を受けている。当初は訪日
団を宿泊施設に受け入れ,学校で交流するスタイルが中心の交流であったが,地
域の人々の要望と協力により,1987年からホームステイの形をとるようになった。
さらに,当時の校長をはじめ,交流に関わる多くの人々の尽力で,1988年に野原
小学校の児童の第一回訪豪が実現し,隔年でのホームステイによる相互訪問が現
在の形となった。交流開始からこれまでの活動を支えてきたのは地域の交流団体
NJA(野原日干親善交流会)と交流開始当初から両校の調整役としてアドバイザー
を務める川島洋一氏(大阪府在住)の存在であり,その協力なしにこの国際交流
は継続し得なかったと思われる。
質問紙や聞き取り等の調査の対象となった昨年度(2009年度)の交流の日程と
内容は表2の通りである。なお,訪日団は,野原小学校訪問後,神戸大学附属住
吉小学校,堺市日登美丘東小学校を訪問し,交流をおこなう。
主な活動
9月17日(木)
訪日団関西国際空港到着
9月18日(金)
訪日団姫路城見学
?エ小学校にて歓迎会および対面式
9月19日(土)
各クラスにて交流授業
流30周年記念式典(交歓会・記念植樹・記念撮影)
流給食
mJAプログラム
i銭太鼓体験・空手道演技・田本野遊び体験)
9月20日(目)
フリーデイ(ホストファミリーと過ごす)
9月21日(,月)
訪日団日帰りバスツアー
i姫路市書写山見学・姫路張り子作り体験)
mJAお別れ会プログラム
9月22日(火)
i持ち寄り夕食会・餅つき体験・盆踊り・打ち上げ花火)
お別れ式(挨拶・傘踊り披露)
表22009年度の交流日程
17
3.2.2 調査1(学校内調査)
調査1は,交流による児童の変容についての調査で,質問紙調査と聞きとり調
査を行った。質問紙調査は平成21年9月16目(事前),9月29目(事:後)に実
施され,事前調査は交流開始の直前(アイアンサイド小学校児童は,日本到着直
後に),また,事後調査は,交流活動終了直後(アイアンサイド小学校児童は,帰
国前の空港で)実施された。人数は,野原小学校の全児童(36名)及びアイアン
サイドを小学校6・7年生児童(66名)が対象であり,「一緒に遊んだり,授業を
受けたりすることが楽しみですか」,「外国語を勉強することは将来役に立つと思
いますか」などの質問項目に5件法での回答と具体的に記述するように作成した
質問紙を用いた(詳しい調査内容は資料参照)。
また,聞き取り調査の調査時期は,平成21年9月で,野原小学校6年生児童(7
名)とアイアンサイド小学校6年生児童(1名)を対象に「国際交流で学んだこ
とはどんなことですか」「相手と解かりあうために必要なことは何だと思いますか」
「交流で自分についたカはどんなことですか」などについて,各個人に15分程度
ずつの半構造化インタビューを行った。
3.2.3調査ll(コミュニティ調査)
調査llは「国際交流による地域の人々への影響」と「本地域で国際交流が30
年間継続されてきた諸要因」を質問紙と聞き取りによって調査した。質問紙調査
は,平成21年10月に地域住民を対象に実施し,111世帯から回答を得た。住民の
集会の機会に,質問紙を配布し,後日,筆者宛に郵送および手渡しで回収した。
質問項目は,「交流は地域にとってどのような価値があると思いますか」,「交流を
続けて行きたい理由はどんなことですか」,「交流を継続することに対する不安は
どんなことですか」などで,5件法での回答と具体的に記述するように作成した
質問紙を用いた(使用した質問紙の詳細は,巻末資料を参照)。
また,聞き取り調査は,平成21年9月に,交流に長く関わってきた地域住民及
び交流関係者(12名)を対象に,「交流の目的は何ですか」咬流が長期間続いて
きたのはどうしてだと思いますか」咬流は地域にどんな影響があると思いますか」
18
などについて各個人に15分程度ずつの半構造化インタビューの形式で行った。
19
第4章
分析と結果
質問紙調査の結果は,解答の点数を集計し,項目ごとの平均値など基礎統計を
用いて分析した。なお,質問紙の統計においては,サンプル数が少ないため,統計的
検定を施していない。聞き取り調査は聞き取ったデータをテキスト化して,変容
や認識に関わる発言を抜き出し,それらをコーディング,カテゴリー化した。
4.1.調査1(学校内調査)
(1)野原小学校及びアイアンサイド小学校児童への質問紙調査結果
グラフは以下のように表示されている。
1=「はい」 2=どちらかというと「はい」 3=:どちらともいえない
4=どちらかというと「いいえ」 5=「いいえ」0ニ・無回答
4.1.1 野原小学校児童質問紙調査結果
交流前はコミュニケーションについて「かなり不安がある」と答えた児童が
多かった(22人置が,交流後,「実際に困った」と回答したのは不安だった児
童の半数に減少した(11人)。また,コミュニケーションについて「困らなか
つた」と回答した児童も増加した(グラフ1を参照)。
…四1誌4
0
口iL%
…匹』墨
22
11
11
200/o 400/o 600/o soo/o
1000/,
−O 15 一4 wh 3 2 1
グラフ1野原小学校の児童のコミュニケーションへの不安
次に将来における英語の学習の有用性について「英語は将来において必要で
20
ある」と答えた児童は,交流前の23人から,交流後の27人に変化した(グラフ
2を参照)。
噌4.
交流後
23
7
ソ∵
27
L一.m.一r7.r...T.一r..
400/o 60e/.
oo/o 200/o
LLL一一IIL一!.gL’ll/ill一:!rfL{112’i‘ee3 i”’i
800/,
1000/,
グラフ2 野原小学校の児童の将来における英語学習の有用性への認識の変化
4.1.2 オーストラリアのアイアンサイド小学校児童質問紙結果
交流前に「コミュニケーションすることについて期待している」と回答した児
童は30名であったが,交流後に「コミュニケーションを楽しむことができた」と
戟A
回答した児童は50名に増加した(グラフ3を参照)。
25
交流前
30
50
oo/.
200/o 400/o 600/o soo/,
1000/.
10 一5 一4 sa 3 2 1
グラフ3アイアンサイド校の児童のコミュニケーションに対する認識の変化
次に交流相手の言語である日本語の使用についての調査では,交流前に,日本
語を使ってコミュニケー一一・ションする意欲を示した児童は49名であったが,交流後
21
に「日本語を使ってコミュニケーション出来た」と回答した児童は55名であった
(グラフ4を参照)。
流
前
交
㌦.遷
34
49
“x 毒籔
勝
蜥後
38
55
撫
L一”一rr
oo/,
200/,
400/o 600/,
■0層5■4階3 2 800/,
1000/,
1
グラフ4アイアンサイド校の児童の日本語によるコミュニケーションへの認識
の変化
また,交流において困難であった点は何かという質問には,コミュニケーション
の難しさを挙げた児童が最も多く(13名),続いて多かったのは,「日本語を話す
ことが困難だった」という回答(10名)だった(グラフ5を参照)。
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グラフ5アイアンサイド校の児童が感じた交流における困難
1
22
4.1.3児童への聞き取り調査
野原小学校6年生7名に対し,一人15分の非構造化インタビューを行い,録音
したデータをテキスト化して,変容や認識に関わる発言をコーディングし,カテ
ゴリー化した。その結果,内容について主に3種類のカテゴリーを見つけること
ができた。以下にカテゴリー化した内容を記す。カテゴリー名は《》内に示し,
特にカテゴリーに関連する部分に下線を引いた。
第1番目のカテゴリーは,《異文化受容に対する気付き》で,相手を理解し,受
容することの重要性を示す発言に現れている。例としては,以下のような発話が
挙げられる。
一「相手を知ろうと努力すること,勇気を出して積極的になることが大事」
一「お互いが分かり合うためには,相手を思う気持ちが必要だということ
が分かった」
一「短い間でも一緒にいたら家族みたいに思えた」
第2のカテゴリーは《積極的な外国語使用への意識》で,交流前後に外国語に
対して肯定的な意識が現れた発話として現れている。例としては,以下のような
発話が挙げられる。
一註記の時,知っている単語で話したら通じたので,墓垂髄一
もっと覚えようという気持ちになった」
一「外国に行って,一」
第3のカテゴリーは《交流による自己の成長》で,交流することによって気付
いた自身の成長を語ったものである。例としては,以下のような内容が挙げられ
る。
一「うまくスピーチできたことで,自信がもてるようになった。この交流は自
分自身のチェンジにつながる大切な思い出」
一「交流を経験したおかげで,人に対して 極的に話しかけられるようになつ
丞L私みたいに変われることがあるからこれからもずっと続いて欲しい。」
23
一方,アイアンサイド小学校の児童には1名しか質問することができなかった
が,そのインタビュー内容を詳しくみていくと,野原小学校の児童へのインタビ
ューで見られた者と同様のカテゴリーがみられた。
《異文化受容に対する気付き》
(異文化受容に重要な態度として)
一“1 think it needed an open mind”(心を開くことが必要だと思う。)
(交流のどこがいいかという問いに関して)
一“Just a li廿le一”(オーストラリアと日本
は少しだけ違っている。)
rm“ltu1ptgst111g,t t Probably eating different foods, methods ofpreparing the food. “
(食べること,異なる食べ物,料理の仕方などが興味深い。)
一 “Ithink that.1tmyy111一spgqlg一!iU!111pt:一1p)L1g!g)yigdgs}11 k fUrth kno ld ofJapanese language and holiday
in Japan.” (私は日本語や日本の休日についての知識をさらに話せるように
なると思う。)
《積極的な外国語使用への意識》
(交流時流が必要かと言うと)
一“ 高垂狽盾п@E l h d od J b l I think I 11ggu!gg.1g.spga!srned to k
,J!Qpg!}gsg, to learn how to prepare and eat food differently, different from the way we
regUlarly do.“ (ある程度の英語と日本語の能力が必要。日本語が話せるよう
になることで,自分たちと異なる食べ物の準備の仕方や食べ方がどう違うか
を学べるようになると思う。)
《交流による自己の成長》
(学べたこととして)
一“ five me an insight to another cultural way ofliving.”(異文化の生活に対しての
洞察力が得られた)
24
4.2調査H(地域コミュニティ調査)
地域コミュニティの人々266世帯のうち,111世帯から回答が得られた質
問紙調査の結果は以下の通りである。グラフの数字は,以下のように対応
している。
1=「はい」 2=どちらかというと「はい」 3=どちらともいえない
4=どちらかというと「いいえ」 5=「いいえ」 6=無回答
交流には価値があると考えている人が半数を超えており(グラフ6),そ
の内容として,交流は,地域の活性化や結束力の高まり,地域が教育に関
わることが出来るなどの価値がある(グラフ7)と考えられていることが
分かった。
瓢
轟01
1
5㎝
41
瓢
//
瓢
﹂5
10
瓢
り0¶■
2
︷弘
967ワ
ー
グラフ6 地域の人々の交流に対する価値観の存在
25
「(人⊃
50
40
30
20
10
0
活性化する
仲良くなる 地域が教育に その他
関われる
グラフ7地域の人々が感じている交流の価値
次に交流時に困ったことがあったかどうかの質問に対し,何らかの問題
があったという回答は25%であった(グラフ8)。またその問題の内容は,
「言葉の問題」が最も多く,「食事の好み」「体調管理」と続いていた(グラ
フ9)。
6
1
瓢
2
2
1
弘
5
1
3
グラフ8 地域の人々が感じる交流時の困難の存在
26
一
10
.一 @ 醒
5 4
難醜
嗣ピ熱1・姦副歓1﹁fl﹁1艮鶴
23
4い
3帰幽 團⊥⊥⊥ 匡
?P
.謡
グラフ9 地域の人々の交流時の困難の内容
また,今後の国際交流継続についての問いには,「今後もこの交流を続けたい」
という回答が,55%と半数を超えていた(グラフ10)。交流活動継続希望の理
由としては,「国際感覚を身につけられる」・「交流からの学びがある」・「地域の活
性化」などが挙がっている(グラフll)。
6
5 11%
瓢
410ワ
3
生瓢
1
3%
33
㎝
%
9凸の0
1
グラフ10 地域の人々の交流への継続希望
27
15 14 13 .^
翻
V
強
5
1翻4
一図
識一
層‘
7
L二I
匿
駈
一壽
饗
=
==
野 鑑
箋
」
【
3 3 ^
勲 ‘ 1 1
顯1翻、鉱τ一偏、圏,團1園1幽
グラフ11地域の人々が交流の継続を希望する理由
今後の交流継続に不安を感じるとした回答は43%あり(グラフ12),継続
に不安を感じる理由としては,「少子化」・「受け入れ家庭の不足」・「高齢化」
などがあることが分かった(グラフ13)。
6
1
5
1
2
2繍
一%
一4■■
15%
%
2
8
%
4/3
グラフ12 地域の人々の交流継続への不安の存在
28
31
一︸、 ︳.
曜
99
璽
一b一 一レ’ 一
壌
[峡
:蕎9
上呂。43,4.4.
灘、園.三門團三∴巳巳層
グラフ13 地域の人々の交流継続への不安理由
(2)地域コミュニティへの聞き取り調査結果
地域コミュニティ,および交流関係者の人々(12名)に聞き取りを行い,デー
タをテキスト化して,同じ内容項目に関わる発言をコーディング,カテゴリー化
した結果,主な内容は,《交流に対する期待や肯定的な影響》,《地域の活性化につ
ながる交流活動の継続》という2つのカテゴリーに分けられた。以下にカテゴリ
ー化した内容を記す。カテゴリー名は《》内に示し,特にカテゴリーに関連する
部分に下線を引いた。
まず,《交流に対する期待や肯定的な影響》は,地域の人々が交流に対してどん
な成果や影響を期待しているのかを知ることができる内容である。地域の人に国
際交流の主なねらいと考えられているのは,「異文化受容能力を養う」・「コミュニ
ケーション能力を育てる」・「人間としての成長を促す」・「郷土愛を育てる」とい
ったことである。例としては,以下のような聞き取り内容が挙げられる。
一言葉も違うし,なんにも「違うということ」を知らんとあかんという話。
田舎やからその経験が少ないから。外国の人も来ることないし,そういう
29
経験を子どもたちにさしてやらなあかんなと。
一子どもたちが成長するのが目に見えるんですね。家をはなれて一週間もお
るから帰ってきてはじめて家があって良かったという大前提がありますや
ん。よそへ出るからこそ 自分とこが見えるよという話外から見えると
いう話。親もそれが分かっているから行かしてやりたいと。行かすと。
一(交流によって)外国の人と自然と接することが出来るかと思って。私達
の世代では,興味本意で観てるけど,そうではなく抵抗なくいけるんでは
ないかとは思ってました。できたら子ども2人とも外国に興味をもって留
学とかして国際的な子にこれからなったらねえ。すごくグローバルになる
と思うんですよ。英語でコミュニケーションという私が期待したことを今
経験してるからすごくいいなと。
一国際化時代やから英語を話すというええ機会ではあるなと。
一未来の子どもたちを育てるという意味から,こどもたちに国際感覚を身に
付けたこどもたち… 色んな人たちとコミュニケーションをうまくとれ
るということにもつながると思うので。
一コミュニケーション能力はもちろん自分を表現できる力。色んな人と接し
て,それでね,私ね,この地域を愛する子ども,うん,そこへむすびつけ
る…ゆくゆくはこのふるさとを愛してくれる。忘れないこどもになって欲
しい。
一面とでも付き合えて その人の良さがわかって それで自分も高まってい
くゆうんかな。海外の人とだけでなく。人間としての高まり。
次に,《地域の活性化につながる交流活動の継続》は,地域の人々が交流継続の
理由を「出会い(新しい人との出会いと交流が長く続いている人との出会い)」「地
域の活性化」「地域・家族の結束」「交流活動に対する自信」「交流に対する熱意の
引き継ぎ」であると考えていることが分かる内容である。
一ひとつは新しい知り合いができる。それが一番うれしい。うちのおばあさ
30
んなんかも,来るときはいやな顔するけども帰るときは涙流して。それが
究極かな。新しい友達ができるよという。」一_新しい出会
いが常にあるという。30年といっても新しい出会いがずっとあるからね。
一もうひとつはやっぱり地域が活性化するという話。おじいちゃんおばあち
やんまで世話にかかってくれるでしょ?おじいちゃんおばあちゃんも触
れ合いたいいんやと。僕の家でいうと,普段はおじいいさんおばあさんは
そんな話しませんやん。誰かが入って来ると一 で迎えるということにな
るから,おじいちゃんおばあちゃんも「こうなんや,ああなんや。」と話
してやし,向こうの話も聞きたいし,そんなんがありますね。そこらの知
識を得るというか,よその世界が見えるというのかな。オーストラリアだ
けですけどね。
一私はね,子どもが小学校に入る前に地域の人がどんだけ一生懸命この交流
をしてるか見てきたし,自分があの立場になった時にはずっとその気持ち
を引きついでいかなあかんなっていうのをすごく感じとったんですよ。自
分がPTAで主にやらなあかん時にはその気持ちを受け継いで一生懸命し
たし,またその後もそういう人がおらなあかんと思うから,自分が一所懸
話しとったらその気持ちを感じてくれると思ったし。そういう風にして伝
わってきたんだと思うんですよ。30年。伝わってるから出来ているんだと
思います。あとの人が感じ取って一所懸命やってくれてるんだと思います。
みんながそういう風にしてきたんだと思います。
一国際交流でもあるんですが,プラスでその時に地域(内)の交流っていう
のがすごくあるんですよ。受け入れている人に対して,「一緒に何々しよう。」
とか「地域でこれをしょうとか」いう話の中で,来る前に寄って話をした
り,来てからいろんな反省をしたり,片付けながら色んなことを話しおう
たりして,そこでやっぱり地域も伸びていくというか普段何にもなくて会
わんような人でも会ったり,私なんかみたいに小学校から出ても,また小
学校帰ってきたような気分になって… ,そういう交流もね。そういう
ことが私はすごくいいと思うんです。一番は国際交流なんですけど,そう
31
いう交流も出来るということがすごいみんなが一丸となってできることが
すごいいいことだなと思ってるんですけどね。中学生も来てくれてお母さ
んたちも来てくれるっていうね。
一受け入れたりする時にみんな「は一つ。」と生きかえる。その時の結束力。
みんなで結束できる地域学校は少ない。受け入れを通してひとつになる。
受け入れた 族がひとつになる。
一みんなでまとまってできるでしょう?事務局(学校)がきちんとあって,
まとめてくださって。そうゆうのがあって,(長い間交流が)できたんち
ゃうかな。もちろん,市とか町とかの援助もあるんやけど。
一地域学校のみなさんが大変だったと思うが,学校が協力してくれたことと,
地域の人もこれは,ぼとぼち英語も知らんけどいけるんとちがうかという
自信をもってやってくれたんでね。
一わしとこは親戚の へ行きよんやということ。(毎回同じ家にホームステイ
するなど何年も交流があることから)
これらの語りはまた,国際交流がもたらす地域への影響に関する人々の認識を
示すものである。この点に関して,交流開始初期からアドバイザーとして長年交
流に関わり,客観的に地域の様子を観察して来た川島洋一心にも,野原小学校区
での国交流活動をどのように考えているかをたずねたところ,以下のように述べ
た。これらの発言は,すでに述べた地域の人々の語りから抽出された「出会い」
「地域の活性化」「地域・家族の結束」「交流に対する自信」という概念とも一致
する。
・《出会い(新しい人との出会いと交流が長く続いている人との出会い)》
一(この交流の一番の良さは)家族の中に入り込めること。家の中に入り込ん
でしまうことは旅行では出来ないことですよね。毎回来る人は同じホストフ
ァミリーのところに行くのが多いんですけど,お互いに行ってると,親戚以
上になってる気がします。
32
・《地域の活性化》《地域・家族の結束》
一(30年もこの交流を続けることが出来たのは)野原小学校の人達と地域の品
格だと思います。地域が交流によって変わっていってるのは野原だけ。活性化し
たりまとまっていったり。家族の中も変化して地域も変わってきた。いい刺激を
受けていると思いますよ。交流によっての気づき,良い刺激。理論と実践が重な
らないといけない。ここはもう溶け合っていると思う。
・《交流活動に対する自信》
一地域の人達はこの地域や交流に誇りをもってらっしゃるんです。でも絶対に
高慢にならない。誇りをもっているけども高慢じゃないというところが品格なん
です。自然に入ってるから。高慢になったら気をつけないといけないけどね。「野
原の品格」ですね。
33
4.3 分析
4.3.1 調査1の分析
野原小学校児童にとって,国際交流の体験は子ども達のコミュニケーションへ
の認識に対して肯定的な影響を及ぼしていること,また,交流後の英語に対する
有用性の認識も増加の傾向にあると言える。。アイアンサイド小学校の児童も,交
流後には予想以上に「日本語を使ってコミュニケーション出来た」と感じていた。
しかし,興味深いことに,交流において困難であった点は何かという質問には,
コミュニケーションの難しさを挙げた児童が多く,アイアンサイドの児童の中に
は,日本語を話すことが困難だったという回答する者もあった。この結果は一見
相反するように見えるが,「交流の時,知っている単語で話したら通じたので,英
語に興味をもち,もっと覚えようという気持ちになった」という野原小学校児童
からの聞き取り調査での発言からも分かるように,予想以上にコミュニケーショ
ンできたからこそ,もっとコミュニケーションしたいという思いが生まれ,その
ためにも相手の国の言語を使えるようになりたいというさらなる高い意欲が生ま
れてきたのではないかと考えられる。このように,両校児童ともに,コミュニケ
ーションの楽しさを感じたことが,交流活動での気づきや自信につながっている
と思われる。
また,聞き取り調査から明らかになったことは,交流を通して児童に《異文化
受容に対する気付き》があったことで,相手を理解するためには,「相手を知ろう
と努力すること」,「相手を思う気持ち」,「一緒に過ごす時間をもつこと」ことが
重要であると認識していることである。また,アイアンサイドの児童の一人は,
「心を開くことが必要だと気付いた」(“1 think it needed an open mind”)とし,交
流の良さに関して「違うことを興味深く感じる」ことから,交流相手の国の生活
について自分の気付きを話すことができるだろう(“1 think that 1 will speak finther
my knowledge ofJapanese language and holiday in Japan.”)という思いをもっている。
《積極的な外国語使用への意識》については,交流による意識の変化として,
「知っている単語を使って話したら通じた」という体験が自信を生み,「英語を使
34
って友達を作りたい」という思いも加わって,英語への興味と意欲が育ったと思
われる。アイアンサイド小学校の児童も,交流時雨が必要な力量として,「互いの
言語に対するある程度の言語力」(“Moderate English and Inoderate Japanese ability”)
を挙げており,それによってもっと相手の生活を知ることができると考えている。
(“1 think 1 learned to speak Japanese, to learn how to prepare and eat food differently,
different then the way we regularly do.”)
両校児童への聞き取りからも,交流活動によって,互いのことをもっと知りた
い,理解したいという思いが生まれ,外国語学習への意欲につながっていると言
える。
《交流による自己の成長》では,交流することによって「自信が生まれてきた
こと」や「人に対して積極的に話しかけられるようになった」などの自身の成長
や変化があったことに気付いていることが分かる。同じようにアイアンサイド小
学校の児童は,学べたことがあったとし,「異文化の生活に対しての洞察力が得ら
れた」(Gave me an insight to another cUlture way ofliVing life style.)と述べている。
4.3.2調査2の分析
地域コミュニティの住民への質問紙調査から,人々は交流に対して言葉の問題
や訪日団の児童たちの食事の好みに対する気遣いなど困難だと思う点もあるが,
「交流の継続を希望する」とした回答が半数を超えており,交流活動が「地域の
活性化」,「地域の結束」という効果をもたらし,交流の大きな価値を生み出して
いると感じていることが分かる。しかし,「交流に不安を感じる」とした回答も半
数弱存在した。この二つの結果は相反するように見えるものであるが,その主な
不安理由は,「価値観の多様化」,「仕事を休むことや金銭面での負担」という個人
的負担の問題を挙げている回答もわずかながらあるものの,専ら少子化や高齢化
によってホストファミリーが不足し,交流活動の継続が危ぶまれるという不安で
ある。このように,地域全体の考えの傾向としては,「交流を続けたいが,少子高
齢化という地域社会の状況が交流継続の不安として存在する」ということが確認
できた。
35
4.4 コミュニティの人々の語りの分類:菊池(2006)
本節では,地域住民への聞き取りをテキスト化し,読み取っていくことで,交
流活動へ関わろうとする人々の意識をさらに明らかにしたい。聞き取り調査で得
られた地域の人々の語りを分析すると,概ね次の二つの特徴があることがわかっ
てきた。まず,地域の人々は,野原小学校での国際交流活動を,これからの国際
化の時代を生きる子どもたちにとって必要なカをつけるための重要な学校教育活
動の一つとして語っている。これは,第1章で概観した国際理解教育の理念や枠
組みの一部と一致している。その一方,国際交流活動が,自分たちの地域コミュ
ニティの生活に根ざした,家族や人々のつながりを生み出す実践として位置づけ
て語ることがしばしば見られた。本節では,地域の人々の異なる語りの特徴づけ
を,菊池(2006)を参考におこなってみる。
菊池は,兵庫県の豊岡市をフィールドとしてコウノトリの野生復帰させる研究
を行っている。一見,本研究とは関係のない研究のように思えるが,菊池は,コ
ウノトリと地域の人々との共生を研究する過程において,社会学研究の手法であ
るライフヒストリーの手法を取り入れて,科学的に種の保存の重要性を主張する
だけでなく,地域の人々の声に耳を傾け,それを記述しながら,コウノトリと地
域コミュニティの関係を読み解く研究をしている。そして,コウノトリと地域コ
ミュニティをめぐるさまざまな言説を,コウノトリという生物の科学的価値を前
提にした「科学言説」,つまり,絶滅の危機に瀕しているコウノトリは,科学的見
地から主として保存されなければならないという言説と,地域社会の文化や価値
の問題を包摂した共生への視点に基づき,生物の利用に焦点をあてた「利用言説」
と大きく分けている。コウノトリと人々が共生していくためには,前者の語り(「大
きな声」)だけでは不十分で,地域の人々が農業や普段の生活の中でコウノトリと
いう存在をどのようにとらえ,経験を記憶してきたかという見方(「小さな声」)
についても耳を傾けることで,コウノトリの野生復帰を果たすための知(日常知,
市民知,ローカルな知とも呼ばれる)が得られると菊池は考えている。
菊池は,人々の語りを聞き取ることの重要性を以下のように述べている。
36
少しでも聞き取り調査をした人であれば,語り手は聞き手が聞きたいこと
だけを語ってくれるわけではないことを経験しているだろう。語り手が,も
っとも語りたいことを一生懸命語ろうとしている場面にであうこともまれ
ではないだろう。農作業,田んぼでの労働遊び,戦争体験,ムラの組織や
行事,家族関係,宗教などさまざまである。理路整然としたものではなく,
基本的には雑多な話である。生きものの聞き取り調査からすれば,それらの
語りは雑談としてつねに聞き流されたであろう。(中略)じつはそうした語り
のなかに,生きものとのかかわり,暮らしのなかの生きものの位置や,生き
ものへの矛盾を含んだような思い,あるいは生きものの生息環境問題が語ら
れているかも知れないのだ。聞く耳をもたなければならない。(p.113)
さらに菊池は,インタビュー等での収集される人々の語りは,インタビューをす
るものとの社会的交互作用によって生み出されることを強調している。
語りとは,語り手の過去がそのまま出てきたものと考えることはできな
い。聞き手があらかじめ用意していた枠組みにのみ則って語られたもので
もない。語り手と聞き手との間の相互作用が生み出したものなのである。
雑多な話のなかで語られるのは,聞き取り調査という場で,聞き手と語り
手が相互作用することで,語り手がとらえ直したコウノトリである。そこ
には当然,聞き手と語り手の解釈と主観が含まれているが,当事者として
暮らしのなかの現実問題からとらえたコウノトリでもある。(p.114)
菊池のコウノトリ研究における「科学的言説」と「利用言説」の区別は,示唆
に富んでいる。本研究でも,国際交流活動に関わった人々の語りの分類をするこ
とで,課題の探求に取り組むことを試みた。本研究での語りは2種類に分類され
ると考えた。その一つが「科学的な語り」である。科学的な語りとは,「国際交
流を通して身につけさせたい力」という国際理解教育の立場に立つ普遍的な価値
37
や理念についての語りである。特にここでいう「科学的な語り」とは,地域の人々
の交流への思いに代表され,異文化受容能力やコミュニケーション能力などの国
際交流を通して子どもたちに身につけさせたい力についての語りを指すことにす
る。
筆者は,当初,国際交流活動がもたらす科学的な効果だけを調べようとしてい
たが,人々への聴き取りを進める中で,一般的な国際交流の意義とは別に,人々
がコミュニティにとっての国際交流活動を意味づけする語りに出会った。これは,
30年間の交流の歴史の中での地域への影響として現れてきたコミュニティにと
っての意味づけであり,菊池が「利用言説」と呼ぶ語りに近いものである。本研
究では,地域の人々の暮らしに深くかかわった語りを「コミュニティとしての語
り」と呼びたい。次節では,それぞれの具体的な例を示す。
4.5 語りの分析
前述した語りの分類にしたがって分けた「科学的な語り」としては,《異文化受
容能力》に言及するものと,《コミュニケーション能力》に言及するものが頻繁に
見られる。《異文化受容能力》についての例には,次のようなものがある。以下に
カテゴリー化した内容を記す。カテゴリー名は《》内に示し,特にカテゴリーに
関連する部分に下線を引いた。
一言葉も違うしなんにも「違うということ」を知らんとあかん。田舎やから
その経験が少ないから。
一図とでも付き合えて その人の良さがわかってそれで自分も高まっていく
ゆうんかな…
《コミュニケーション能力》についての例には,次のようなものがある。
一外国の人と自然と接することが出来るかと思って。英語でコミュニケーシ
ョンという私が思っている(期待した)ことを今経験してるからすごくいい
なと。
一コミュニケーション能力はもちろん,自分を表現できるカ。
38
次に「コミュニティとしての語り」としては,《受け継がれる交流への熱意》に
関するもの,《家族的な付き合い》や 《学校とコミュニティ・交流活動の関係性
への意識》の語りとして,以下のような語り見られた。
《受け継がれる交流への熱意》
一私はね,子どもが小学校に入る前に地域の人がどんだけ一生懸命この交流
をしてるか見てきたし,自分があの立場になった時にはずっとその気持ち
を引きついでいかなあかんなっていうのをすごく感じとったんですよ。」
《家族的な付き合い》
一おばあさんも,別れる時は涙流して。それが究極かな。
一わしとこは親戚の へ行きよんやということ。
《学校とコミュニティ・交流活動の関係性への意識》
一地域から学校のかしたら終わりやでね。そういう進め方はしたいなと。野
原は国際交流続けていきたい。学校は地域の拠点として残して欲しい。(国
際交流という)学校の特色は残したい。人が減ったら何もないよというこ
とになってしまう。ず2製一何らかのことは考えないといかん
なと。
一交流は地域の活力を示すバロメーター的な意味合いもあるし 交流によっ
ての気付きや良い刺激もある。
これまでの考察から,交流の継続の要因は,「科学的語り」に代表されるような
人々の意識だけでなく,「交流への思いが受け継がれてきたこと」,『わしとこは親
戚のとこへ行きよんや』というコミュニティの語りに象徴される「交流の歴史か
ら深まった互いの親近感」といった人々が新たに抱いた認識によって「地域・家
庭の結束と活性化」が起こり,これが国際交流活動を継続する力となり,やがて
は,コミュニティの成長へとつながっていったと考えられる。
39
第5章
国際交流活動と地域コミュニティ活性化との関係
5.1 コミュニティについての定義:広井(2009)
ところで,本研究では,「コミュニティ」という言葉を「地域」と同義に用い,
厳密に定義せずに使用してきた。しかし,前節の二つの語り,特に,「コミュニテ
ィの語り」を操作的な概念としたことからもわかるように,本論では,コミュニ
ティが実態としても概念としても重要な意義を帯び始めている。そこで,ここで
「コミュニティ」という用語について社会学的な研究をもとに整理しておく。
広井(2009)によると,コミュニティとは,「人間がそれに対して何らかの帰属意
識をもち,かつその構成メンバーの間に一定の連帯感ないし相互扶助(支えあい)
の意識が働いているような集団」(pll)と定義されている。さらに,コミュニティ
の中心とは,「地域における拠点的な意味をもち,人々が気軽に集まり,そこで様々
コミュニケーションや交流が生まれるような場所」(p.67)としている。ちなみに,
2007年に広井らが行った調査では,コミュニティの中心として重要な場所につい
て学校であったことが報告されている。
しかし,広井は,戦後,職場と居住地が完全に乖離したために,かつてのよう
なコミュニティは形成されにくくなったことを指摘している。つまり,現役世代
は概して「職場」への帰属意識が大きくなり,会社や家族が「閉じた集団」とな
り,それを超えた地域のつながりはきわめて希薄になったということである。
現代社会において,かつてのコミュニティが解体しつつあるという現状を踏ま
えて,野原小学校校区のコミュニティを観てみる。本地域の人々は職場と居住地
の乖離が比較的少なく,地域コミュニティに人々のつながりを促す交流活動が存
在することによって,閉じた地域にならなかったと考えられる。コミュニティの
人々は交流活動に対して,「地域の子ども達のために」という共通の目的(「科学
的な語り」)をもっていたことで結束力が強まり,地域一丸となって活動を支える
ことによってコミュニティが活性化したのである。その中で地域の人々は,当初
の教育的目標を超えたところに「コミュニティにおける交流活動の意味」(「コミ
40
ユニティとしての語り」)を見出すことになったのではないかと考えられる。国際
交流という「つながり」の存在による結束力の強まりが「コミュニティ自身の成
長」を促し,ひいては継続への力となっていった。ここで議論したコミュニティ
の構成とその関係性について関係図で表すと,次のような図になる。
コミュニティと個人・学校・交流活動の関係性
地域
人の内的な党展・質的な
個人
齢ト
鰍奪
科学的語り
コミュニティとしての語り
コミュニティとしての語り
学校
交流における共有空聞
科学的語り
共通の目的の存在=国際交流
他者との関係を維持するためには対話が塾
図2コミュニティの構成とその関係性
以上,本研究におけるコミュティの位置づけを検討したが,国際交流活動およ
び学校を取り巻くコミュニティのあり方については,今後も,重要な研究課題と
して探求を続けたい。
5,2 ケアの観点からの関係性=ネル・ノディングス(2007)
今回の調査から,国際交流活動がコミュニティの変容をもたらしたことが明ら
かになったが,上記の語りの分析からも明らかになったように,人々の語りには,
「科学的語り」とは一致しない,《受け継がれる交流への熱意》,《家族的な付き合
い》, 《学校とコミュニティ・交流活動の関係性への意識》といった「コミュニ
41
ティとしての語り」が存在することがわかった。我々は,そのような語りを生み
出し,コミュニティの変容をもたらす源泉をどこに求めればよいだろうか。本論
では,ネル・ノディングスのケアの考え方の重要性に注目する。
ケアに関する哲学的探求者であるネル・ノディングス(2007)は助け合いの論理
学であるケアリングという概念に人間関係の本質をみている。ケアとは,ある一
定の事柄にケア(かかわり)があることや,誰かをケア(気にかけている・関心
をもっている)ことや,誰かを(世話)していることであるとした。しかし,そう
した世話がしぶしぶのものであったとしたら,それはケアしているとは言えず,
ケアリングの本質的な諸要素は,ケアするひととケアされるひとの関係にあると
述べている。(P14)さらに,ノディングスは,ケアの提供者の意識状態として,
「専心」と「動機づけの転移」を挙げている。「専心」 とは,他者を受け入れる
ために自らの中身を空にすることで,完全なる受容状態を示し,そのためには,
信頼と理解をもたらすかかわりあいのための「対話」が重要であるとされている。
次に「動機づけの転移」とは,自分たちを動機づけるエネルギーが他者の課題に
向かって流れだすことであり,他者の目的や課題を助けるように対応したいと望
み,他者を助けるために何が出来るかを考えることだとしている。そして,ケア
されるひとが,ケアリングを受け入れたことを示す時,ケアする側はケアの行為
をやりがいのあるものとして,相手に何ができるか考えるという前述の「動機付
けの転移」が起こり,ケアに対する応答からエネルギーを補充する。そして,こ
のようなケアリングの関係が人々に自己の成長と喜びをもたらす。ケアするもの
とケアされるものの関係は,図3のように表すことができる。
42
関係性としてのケアリング
ケアされる者の意識状態と
の提供者との関係
ケアされる者
アの提供冷
受容と承認
ケアを受け入れ、そ
のことを表す何らか
の反応を示す。
騨i灘
双方の関係への貢献が必要
このような関係にある時、ケアリングの関係は完成する。
図3 関係性としてのケアリング
さらにノディングスは,ケアされることは根本的な人間のニーズであるとし,現
在社会においてケアの必要性は重大であり,社会組織はケアの関係によって構成
されるべきであると考えており,「人はあらゆる関係を断ち切られる場合には「人
間」であることも「存在」であることもなくなるので,受け容れ,受け容れられ
ること(ケアし,ケアされること)が人間の基本的な実相であり,人間の基本的
な目標である幸福につながる」(p.268)と述べている。そして,幸せとの関係にお
いて,共同体によって満たされるニーズに関心を向けている。共同体によって満
たされるニーズのひとつは承認であり,そのことによってアイディンティティお
よび居場所と所属感が得られるとしている(p.278−279)。
筆者は,本研究の国際交流の継続を通じてコミュニティが活性化した理由を検
討するときに,上記で述べたノディングスのケアリングの思想が非常に示唆的で
あると考える。つまり,地域コミュニティを構成する人間の存在を根本的なニー
ズとしてのケアの観点から見ていくことで,地域コミュニティの存続・発展とケ
アの間にある何らかの関係を見いだすことができるのではないかということであ
る。ケアリングの枠組みから聞き取り調査の内容を再吟味してみると,以下のよ
43
うに「受容」に関するもの,そのための「対話」に関するもの,他者のために何
かしょうとする「動機づけの転移」に関するもの,ケアに伴って生じる「喜びと
成長」に関する語りの存在が確認できる。以下にケアの提供者としての意識がみ
られる語りの部分を記す。その際の観点を《》内に示し観点に関連する部分に
下線を引いた。
《専心(他者を受け入れる受容状態)に関して》
一 Open mind(心を開くこと)が必要
一Fine hospitality(よき受け入れ家庭であること)であること
一人間はさみしがり屋やから色々な人と触れ合うことが大事なんかと思って
ます。
《信頼と理解をもたらす「対話」に関して》
一一
loderate English and moderate Japanese ability(英語と日本語という互いの言
語に関するある程度の言語能力が必要)
一積極的に話しかける
一もっと(英語で)話せるようになって,お互いをもっと知りあう
一質問とかして相手の事を知る
《動機づけの転移(他者を助けるために何が出来るかを考える)に関して》
一相手の思いを知ろうと努力するのが大事
一相手の事を思うことが必要
一壷ってそうやったら声をかけたりできる
一家族のように思ってしまう
一帰るときには涙流して それが究極かな
一わしとこは親戚の家に行きよんや
一子ども達の学びと体験のためならばと
《喜びや成長に関して》
一自分みたいに変われることもある
44
一相手を知って自分も高まっていく
一子ども達の成長が目に見えること
一地域の活力になっている
一地域が活性化したり,まとまったりしている
一気づきや良い刺激がある
一 Give me an insight to another culture way of livinglife style.
(異文化の生活に対しての洞察力が得られた)
上記のような語りからも,本研究の対象となった地域の国際交流活動を支える
人々の関係の中にケアリングの思想が共有されていることが考えられる。もちろ
ん,人々がケアリングの思想を事前に学び,それを特に意識していたということ
はないが,交流活動から生まれる日本とオーストラリアの児童たちとの関係,あ
るいは,地域の中で活動が引き継がれていく関係の重要性を経験する中で,当初
はあったかもしれない抵抗感も,次第にケアする,ケアされる関係,あるいは,
そういった関係に関わることによってコミュニティのメンバーとして承認される
といった経験を重ねていったのではないだろうか。筆者は,ケアリングの思想が,
コミュニティの構成それぞれの「つながりの接着剤」として存在していると考え
る。これを図式化すると次の図のようになる。
人間関係としてのケアの観点からみた
コミュニティと個人・学校・交流活動の関係性
3 展・ ‘
わ り
献 臥 飯___
コミュニテ しての諮り
学校
ホわ り
(嘱の嵩器簿罷交流
(他者との闘係を維持するためには対話が必憂)
図4 ケアの観点からみた関係性
地域
45
5.3今後の課題
国際理解教育の一環としての国際交流に関して,児童及び地域の人々を対象に
個人や地域コミュニティの変容や成長に焦点を当てながら,国際交流が与えた影
響について述べてきた。
当初,国際理解教育の理念,あるいは,その実践としての国際交流活動を検討
してきたが,調査が進むにつれて,それらの見方は,優れた国際交流活動を支え
る車輪のうちの一つでしかないことに筆者は気づいた。コミュニティの人々の話
の中に立ち現れてきた「コミュニティの語り」,そして,そういった語りや関係を
うみだしたであろうケアリングの思想,これらの見方無しには,今回の国際交流
活動の実践の豊かさとその意義を,適切に捉えることはできなかっただろう。
さて,最後に本研究で残された課題について述べておく。まず,国際交流が学
校における国際理解教育のカリキュラム上にどう位置づけられるかについては,
明確に示されないまま議論してきた。本研究では,国際交流活動が,各教科・領
域において横断的に取り扱うという事例を示してはいるが,今後,学校の教育課
程における位置づけがはっきりすれば,よりいっそう国際交流を推進することが
可能であると思われる。
また,国際交流が児童を成長させ,地域コミュニティの維持・発展に繋がった
という事例研究ではあったが,これらの調査は学校の規模として児童数が少ない
ことや,交流相手校の児童にインタビューできる時間に制約があったため,サンプ
ル数が少ないという現状があった。今後の研究では,サンプル数を増やすことも考
えたい。
さらに,これが別の環境で行われる揚合,国際交流をどのように展開していけば
有意義な交流になるかという一般化も検討する必要があろう。
46
結論
本研究を通して,国際交流が児童や地域コミュニティに及ぼす影響についての
考察を重ねてきた。交流を支える地域の人々は,国際交流の意義として語られる
「科学的語り」と交流が自らのコミュニティに及ぼす影響として語られる「コミ
ュニティとしての語り」をもっていた。「科学的語り」からもみられるように,人々
は,国際交流活動によって児童に「異文化受容能力を養う」・「コミュニケーショ
ン能力を育てる」・「人間としての成長を促す」・「郷土愛を育てる」といった力が
つくことをねらいとしていることが分かった。児童を対象に行った調査の結果で
も,国際交流活動は,児童に異文化を受け入れる態度の育成を促すとともに,コ
ミュニケーションのための外国語学習への意欲を高め,さらには自らを成長させ
ることにも繋がっていることが明らかになっている。また,「コミュニティとして
の語り」にも裏付けられた通り,交流が続いてきた要因を地域の人々は「出会い
(新しい人との出会いと交流が長く続いている人との出会い)」「地域の活性化」
「地域・家族の結束」「交流活動に対する自信」「交流に対する熱意の引き継ぎ」
と考えていることが分かった。そして,交流活動は地域コミュニティの活性化や・
人々の結束を促したが,人々が活動を支える人間としての基盤とは何であったか
に目を向けた時,人々の関係の中にコミュニティを成立させるケアの関係が成立
していたことが指摘された。人々が国際交流活動に取り組む中で,ケアリングの
関係を実践することが人々の幸福へとつながり,活動を支える基盤となったと考
えられる。人間としての幸福感を得られる交流活動が存在することで,地域が「コ
ミュニティ」として発展し,それに伴って,国際交流活動も継続してきたという
ことが確かめられたと言える。
第5章の最後に論じたように,今後の研究課題はあるが,本研究で明らかにな
った国際交流がもたらす影響から,国際交流の重要性が示され,今後の国際交流
の展望が見えてくると考える。
47
参考文献
後藤典彦・冨田祐一編著(2001)『はじめてみよう!小学校英語活動』
アプリコット.
広井良典(2009)『コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来』
ちくま新書.
石谷孝二・田中精夫(2005)『子どもの学びの変容を促す新しい国際交流のあり
方についての基礎的研究』(鳥取大学附属品学校 日本教育大学協会研
究助成事業実施報告書).
加藤憲一(2001)『辺境からの挑戦』毎日新聞社.
菊池直樹(2006)『蘇るコウノトリ』東京大学出版会.
彦娼(2005)『小学校における国際交流プログラムの構想一中国における開発・展
開を求めて一』 (岡山大学大学院修士論文).
箕浦康子(1997)『地球市民を育てる教育』岩波書店.
文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 外国語活動編』東洋館出版社
ノディングス,ネル(1997)『ケアリング 倫理と道徳の教育一女性の観点から』
(立山善康・林泰成・清水重樹・宮崎宏志・新茂之,訳)晃洋書房.
ノディングス,ネル(2007)『学校におけるケアの挑戦 もう一つの教育を求めて』
(飯塚立人・吉良 直・斉藤直子,訳/佐藤 学,監訳)ゆみる出版.
ノディングス,ネル(2008)『幸せのための教育』(山崎洋子・菱刈晃夫,監訳)
知泉書館.
佐藤i郡衛(2001)『国際理解教育一多文化共生社会の学校づくり』明石書店.
多田孝志(1997)『国際理解教育一グu一バルマインドを育てる』東洋館出版社.
ユネスコ(1974)「国際理解,交際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び
基本的自由についての教育に関する勧告」
http://www. mext. go. jp/unesco/009/004/013. pdf
ユネスコ 21世紀教育国際委員会(1997)『学習=秘められた宝』ぎょうせい.
48
巻末資料
49
資料1:野原小学校児童交流前質問紙
オーストラリアの小学生との交流についてのアンケート調査
がいこく じ ど う こ う り ゅ う か つ ど う じ どう こくさいり かい
三あ多勢二‘ぽ外国の児童との交流活動を通した日本の児童の国際理解
たいど へんか
いしぴ やコミュニケーションに対する意識や態度の変化について
ちょうさ
の調査です。
がくねん ねん
野原小学校 学年 年
せいべつ だんじょ
性別 男・女
ごうりゅう さんか
オーストラリアの小学生との交流への参加
○オーストラリアでのホームステイ
きょねん い らいねん い よ てい こうがくねん い よ て い
(去年行った・来年行く予定・高学年になったら行く予定)
こ う かいすう かい
0オーストラリアの子の受けいれ回数 ( 回)
50
ことし しょうがうこう ごうりゅう しつもん しつもル
こた
今年のオーストラリアの小学校との交流について質問します。それぞれの質問の答え
として,もっともあてはまるものにOをつけて下さい。
ことし しょうがくせい つぎ あ
{今年のオーストラリアの小学生とおこなう交流で,次のことはどのくらい当てはまりますか。
一 一いど言ど rいど 一
い いうちえちはうち は
ヒ、 いとらならいとら い
2222222
λえかいと一か一
(1)一緒に遊ぶことが楽しみだ。
いえにとまってもらうことがたのしみだり
(2)家に泊まってもらうことが楽しみだ。
がっこうでいっしょにじゅぎょう蜜うけることがたのしみだり
(3)学校で一緒に授業を受けることが楽しみだ。
たの
(4)おしゃべりすることが楽しみだ。
ごうりゅうするとき.お一すとらりあのしょうがくせいとなるべくえいごではなそうとお竃
(5)交流する時、オーストラリアの小学生となるべく英語で話そうと思
しょうがくせい ことば つう しんぱい
(6)オーストラリアの小学生と言葉が通じるかどうか心配だ。
お すとらりあ しょくじオ い (7)オーストラリアの小学生が食事を気に入ってくれるかどうか心酷
しんぱい
うえ いがい たの しんぱい か
上のことがら以外で「楽しみなこと」「心配なこと」があったら書いてください。
たの
楽しみなこと
﹁05一〇﹁◎55■◎
いっしよにあそぶことがたのしみだけ
444444・4
3333弗033
一 一 と も と
しんぽい
心配なこと
しょうがくせい じゅんび つぎ
2オーストラリアの小学生との交流の準備として、次のようなことをしていますか。
r rいど言ど一いど 一
い いうちえちはうち は
し、 いとらならいとら い
λえかいと一か一
」 一 と も と
(4)英語の勉強ができるテレビ番組をみている(「英語であそぼ」なと
(5)購営暦齢ミあ葛献門門樋蒙あ四三警ザ嶽ぞ門門そ器う
ている。
20尻り﹃0﹁95
(3)家や車の中で英語のCDなどをきいている。
えいご ぺんさよう ばんぐみ えいご
4τ4・4・474
(2)学校以外で英語を習いに行っている。
いえやくるまのなかでえいごの ロなどをさいているり
3 3 3 3 3
が っ こ う い が い で え い ごを な ら い に いっ て い る り
ウ幽ウ輌ウ﹂9﹂ク臨
(1)t4’iiでのi翼藷裾鰯の縷繋をがんばっている。
51
しタリむへせい ゆし ね つ つ し しコ ぴ り む 3オーストラリアの小学生からどんなことを教えてもらいたいと思っていますか。
” rいど言どrいど 一
い いうちえちはうち は
い いとらならいとら い
ええかいと一か一
しょうがくせい かぞく
(3)オーストラリアの小学生の家族のこと
まち
(4)アイアンサイドの町のようす
555﹁9
あそ
(2)オーストうりアの遊び
4.4 △ T 4
11着冒−
がっこう
(1)オーストラリアの学校のようす
3ハ033
一 一 と も と
うえのことがらいがいで お すとらりあのしょうがくせいからおしえてもらいたいことがあればロかいてくださいむ
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生から教えてもらいたいことがあれば,書いてください。
しょうがくセい おし
4みなさんからオーストラリアの小学生に教えてあげたいことはどんなことですか。
一 一いど言ど一いど r
い いうちえちはうち は
ヒ、 いとらならいとら い
尺えかいと一か一
一 」 と も と
.のはらしょうがっこう
(1)野原小学校のようす 1 2 3 4 5
しょうがっこう あそ
(2)小学校でする遊び 1 2 3 4 5
かぞく
(3)家族のこと 1 2 3 4 5
はがちょう
(4)波賀町のようす 1 2 3 4 5
うえのことがらいがいでヒおへすとらりあのしょうがくせいにおしえてあげたいことがあれば かいてくださいり
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生に教えてあげたいことがあれば,書いてください。
52
つぎ がいこく できごと ひごろ しんぶん み だ
5次のような外国での出来事について,日頃からどのくらい新聞やテレビで見たり,聞いたりしてます
r rいど言ど一いど r
い いうちえちはうち は
贈と諦聾憶ど
L. 一 と も と
(3)外国の映画や歌手や芸能人のこと
がいこく せんそう
(4)外国でおこっている戦争のこと
冒0﹁0ヒ0買︾
(2)外国の政治や経済のこと
がいこく えいが か しゅ
4,4T44
(1)外国のスポーツのこと
がいこくのせいじやけいざいのこと
33ハφ3
ウ﹂ウ﹂9﹂ウ﹂
がいこく
つぎ じしん
6次のことは,あなた自身にどのくらいあてはまりますか。
煤@rいど言ど rいど 一
い いうちえちはうち は
一・・
ヒ、 いとらならいとら い
Kえかいと一か一
(2)英語を勉強することぼ、大切だと思う。
えいごをべんきょうすることはしようらいやくにたつとおもうり
(3)英語を勉強することは将来役に立つと思う。
えいごはとてもむずかしいことばだとおもうリ
(4)英語はとても難しい言葉だと思う。
しみうらい えいご ぺんセよう い おも
(5)将来,英語は勉強しなくても良いと思う。
このこうりゅうがこれからもつづいてほしいとおもうす
(6)この交流がこれからも続いてほしいと思う。
謄OFO薩0云︾開b欝0
えいごをべんきょうすることは
たいせつだとおもうサ
△T44444・
(1)外国に住んだり、外国で仕事をしてみたいと思う。
ウ﹂ウ69価ウ﹂ウ鮨ウ﹄
がいこくにすんだりやがいこくでしごとをしてみたいとおもうリ
3333轟φ3
一 一 と も と
53
資料2:野原小学校児童交流後質問紙
オーストラリアの小学生との交流についてのアンケート調査
このアンケートは,・
舞薗の克鉦の養縮管下藁躰の覧当の国譲麟納ミュニケー
いしき たいど へんか ちホうさ
ションに対する意織や態度の変化についての調査です。
学年 年
性別 男・女
オーストラリアの小学生との交流への参加
54
今年のオーストラリアの小学校との交流について質問します。それぞれの質問の答えとして,もっともあて
はまるものにOをつけて下さい。
とてもよくあ
てはまる
1今年のオーストラリアの小学生とおこなった交流について,次のことはどのくらい当てはまりますか。
はま らうど えど るうど
まつ なとち なち とち
らた いあら いら あら
なく てか と てか
いあ はと も はと
てまい言まい
1
(5)交流する時、オーストラリアの小学生と英語で話そうとした。
1
(6)オーストラリアの小学生と言葉が通じず,困った。
1
(7)オーストラリアの小学生が食事を気に入ってくれたかどうか心配だ。
上のことがら以外で「楽しんだこと」「困ったこと」があったら書いてください。
楽しんだこと
[ひご﹂55ごQ55
1
(4)おしゃべりすることをたのしむことができた。
4る4二45444ゐ4
(3)学校で一緒に授業を楽しく受けることができた。 1
3nj∩δn6333
(2)家に泊まってもらい,楽しく交流することができた。 1
ワα9嗣2999﹄22
(1)一緒に遊ぶことが楽しくできた。 1
困ったこと
なた てら ら てら
いく
はかとはか
あ まと も まと
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生から教えてもらいたいことがあれば,書いてください。
4﹂4−4る4乱
(4)アイアンサイドの町のようす
り03り03
(3)オーストラリアの小学生の家族のこと
9會9429臼
(2)オーストラリアの遊び
1111
姦 智 夏智
(1)オーストラリアの学校のようす
はまる
まま いとど など とど
らっ あち いち あち
とてもよくあて 5霞り︻ひ5
2オーストラリアの小学生からどんなことを教えてもらいましたか。
55
てはまる
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
とてもよくあ
る
どちらかとい
うとあてはま
えない
(4)波賀町のようす
どちらとも言
(3)家族のこと
らない
(2)小学校でする遊び
どちらかとい
うとあてはま
(1)野原小学校のようす
まったくあて
はまらない
3みなさんからオーストラリアの小学生にどんなことを教えてあげましたか。
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生に教えてあげたいことがあれば,書いてください。
4オーストラリアの小学生との交流活動を終えて,次のことがらが,あなた自身にどのくらいあてはまりますか。
PD﹃0﹁OF◎磨OrD
4晶4ム4み4ム4再4▲
まる
どちらかというと
あてはまる
000033り0∩﹂
とてもよくあては
どちらとも言えな
9自り自∩∠29Ωり白
(5>将来,英語は勉強しなくても良いと思う。
(6)この交流がこれからも続いてほしいと思う。
111111
(4)英語はとても難しい言葉だと思う。
どちらかというと
あてはまらない
らない
(3)英語を勉強することは将来役に立つと思う。
まったくあてはま
(1)外国に住んだり、外国で仕事をしてみたいと思う。
(2)英語を勉強することは、大切だと思う。
い
56
資料3:アイアンサイド小学校児童交流前質問紙
Questionnaaire on the Australia−Japan Exchange program
Name:
Date of birth:
Sex:□FemaleロMale
Background
1. Please circle your grade in school
1 2 3 4 5 6 7
57
Please eircle the best answers to the foHowing q uestions.
1
Wben l visit Nohara Elementary Scboo1, l woul曲ke to_
house.
3 4
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
︽4くノ
6︶
use English when 1 talk with
3 4
4.4.4,
with children at Nohara.
一一 塾9醒 一
り﹂う﹂つ﹂
5︶
try to speak in Japanese when 1 talk
Agree
門∠︵∠︵∠
4)課瓢a1K’ngwlmcnl’皿enaτ
4■■11
3) experience lessons at Nohara E.S.
StroRgly
く﹂︽ノ
2︶
enj oy staying at my host family’s
︵∠︵∠
1) enj oy playing with children at
11
Strongly
Don’t
Disgree
幽 di璽盤=藍璽
know
5
children at Nohara.
1 am not confident eRough to...
7︶
communicate with children at
Nohara.
8︶
enj oy meals served by my Japanese
host family.
Write down if there are any other things you would like to experience when you
visit Nohara E.S.
Wri舵down if t血ere are any ot血er things you are worri{漁bout when yo題visit
58
2
How often did you do the following activities before you visit Japan.
1) To leam the Japanese languge after
2) To listen to the Japanese language
3) To watch Japanese TV programs
114置五
some繭
O貴en
Never A霊itt璽e
times
Very
often
2 3 4 5
2 3 4 5
2 3 4 5
To ask your parents or teachers
4) about Japanese words and phrases
1
2
3
4
5
you would like to use
3
W血3t would you like to learn from the studnents at Noham Elemen伽y Scbool。
Strongiy
Don’t
Disgree
disagree
know
2) About the plays they enj oy
3) About their families
4) About their town
−■−11■←−
1) About their school life
Agree
Strongly
agree
3 4 5
3 4 5
3 4 5
3 4 5
Write down if there are any other things you would like to learn from the children.
59
When you exchage with s加dents at Nohara E.S., what would you like to show or
4
talk about?
3) Your family
1
4) Your home town
1
2
3
4
︽ノく﹂4﹂
2) Sports and plays you enj oy at schoo1
44.4.
1) Your school life
つ﹂う﹂ つ﹂
−11 2庖∠ ︵∠
一_ 一_…_一_搬盤.2・・gree訟A・・eL豊「謹
5
VVrite down if there are any other things you would like to talk about.
5
Never A匪itt藍e som{ト
6
3
.Ω鮭旦_.一Y.e.ry._
くノくノ︽4︽ノ
4) Wars happening in the world
り﹂
3) 6’6{ihliJeg
り33
Movies and entertainment in other
︵∠︵∠︵∠︵∠
1) Sports events in other countries
2) Politics and economics in other count
4444
11111
How often do you watch the following things en TV or read in the newspaper?
How much do you agree or disagree to the following statements?
辱
㎎㍑
0
2
廿a
S
Strong聖y
DOガt
Disgree
Agree
,虫蝉…r..9曾
know
’一一一一:一一ww一一一一.ag−r−e−e.一一一
1) 1 would like to live in overseas.
1
2 3
4
5
2︶
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
It is important to learn foreign
languages.
3︶
Learning foreign languages will be
use負1豆fbr my飯ure.
Laerning foreign languages is
4)
difficult.
5︶
It is not necessary for me to learn
foreign languages when 1 grow up.
6︶
This exchange program should be
continued from now on.
60
資料4:アイアンサイド小学校児童交流後質問紙
Questionnaire on the Australia−Japan Exchange program
Name:
Date of birth:
Sex: oFemale uMale
Background
1. Please circle your grade in school
1 2 3 4 5 6 7
61
sl¥ Please eircle the best answers to the following questions.
Strong亘y
Don’t
Disgree
disagree
know
Agree
Strongly
agree
In the exchange prgrom with Nohara Eleinentary School, 1
1) was able to make friends with
children at Nohara Elementary
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
School.
2) enj oyed talking with students and host
families.
3) became more interested in leaming
the Japanese language.
4) enj oy learning about Japanese culture
and language from friends or host
families.
5) became more interested in living in
the Japanese society in mu future.
6) tried to speak iR Japanese when I
talked with children at Nohara.
7) talked about my life in Australia with
friends at Nohara Elementary School
and my host families.
8︶
would like to join this exchange
program agaln .
What was the most memorable experience during the stay in Nohara? Please
write it down briefly below.
Did you have any inconvenience or diffriculties in the exchange program? Please
indicate those below if there is any.
62
資料5:野原小学校地域質問紙
ひ と び と
オーストラリアの人々との交流についてのアンケート調査
外国の児童との交流活動を通した日本の児童の国際理解や
このアンケートは
コミュニケーションに対する意識や態度の変容および交流活
動に対する地域の支援についての調査です。ご協力をよろし
くお願いいたします。
ないよう はい まえ たず こた
内容に入る前にあなたのことについてお尋ねします。答えら
はんい けっこう あ ねが
れる範囲で結構ですので、当てはまるところにOをお願いし
お願い
ます。
Oあなたの立場を教えて下さい。
【・現在野原小学校児童の保護者である。
・校区のNJA会員である ・NJA会員ではない
・校区には住んでいないがNJA会員である】
O年齢を教えて下さい。
【・10代・20代・30代・40代・50代
・60代・70代・80代・90代以上】
O性別を教えて下さい。
【 ・男性 ・女性 】
O交流に関わって何年くらいになりますか。
【・5年未満 ・6∼10年 ・11∼15年 ・16∼20
年 ・21∼30年】
ONJAのスタディツアーに参加してオーストラリアを訪問をし
たことがありますか。
【・ある( )回 ・ない】
Oホストファミリーとして、受け入れをしたことがありますか。
【・ある( 〉回 ・ない】
63
ひとびと
オーストラリアの人々との交流について質問します。それぞれの質問の答えとして,
もっともあてはまるところにOをつけて下さい。
ひとびと つぎ あ
1オーストラリアの人々とおこなう交流で,次のことはどのくらい当てはまりますか。
一 一いど言ど一いど
い いうちえちはうち
い いとらならいとら
ええかいと」か
一 一 と も と
(・)掴畝々Σ蘇ずるこ臓芋ど糀ぢ1:”Eって笈い欝のあ1
2
3
4
(2)この交流活動は地域にとって良い影響があるものだと思いますか,1
2
3
4
(3)交流を通じて外国のことに興味をもつようになりましたか。 1
2
3
4
2
3
4
る経験だと思いますか。
(4)これまで交流を経験して漢語に興味ち・自分で勉強するように1
なりましたか。
(5)これまでの交流で、互いの国の言葉や文化を教え合ったことがあ
1
りますか。
2 3 4
(6)交流を経験したことで・外国を訪問したり外国で働いたりして・外1
国の人々ともっと交流をしたいと思うようになりましたか。
2 3 4
☆この交流は地域にとってどのような価値があると思いますか。当てはまるものがあれば、番
つ
号にOをつけてください。いくつOを付けてもかまいません。また、他にもあればその他の(
)の中にあなたの考えを書いてください。
①地域が活性化する。②地域の特性となる。③地域の人が仲良くなる。
④地域の人同士が協力するようになる。
⑤その他( )
がいこく
つ
☆外国のことについてどんなことに興味があるか教えてください。Oは、いくつ付けてもかまい
ません。
①オーストラリアのことならなんでも②スポーツの試合などのこと
③政治や経済のこと④外国の芸能人のこと
⑤その他( )
カもノニ アニ リ ヘムノさよつ
☆これまで交流を経験して、英語を勉強するようになった方にお尋ねします。どのように勉強を
されていますか。
1英語を習いに行っている。 英語学習の本やCDなどを買っている。
③テレビやラジオの英語教育番組を利用している。
④英語の通信教育を受けている。⑤その他( )
64
えいご べんきょう
2あなたはどのようにして英膳の勉強をしていますか。
﹁いいえ﹂
一いど言ど一いど
いうちえちはうち
いとらならいとら
えかいと」か
(1)学校での英語活動の授業をがんばっている。
(2)輌稜ゑ冤嶺謡iξ書ご・1ご椙そ㌃ぐ㌫
いえやくるまのなかでえいこのむロなどをきいているり
(3)家や車の中で英語のCDなどをきいている。
えいご べんきょう ばんぐみ えいご
(4)英語の勉強ができるテレビ番組をみている(「英語であそぼ」など),
しりたいえいごがあると妻 せんせいやいえのひとにたずねておしえてもらっている。
(5)知りたい英語がある時、先生や家の人にたずねて教えてもらって
いる。
4T414T4マ﹂弓
ウ働ウ輪9﹄ウるウ﹂
がっこう えいこかつどう じゅぎょう
33ハ﹂33
一 と も と
しょうがくせい おし おもっていますか
3オーストラリアの小学生からどんなことを教えてもらいたいと思っていますか。
﹁いいえ﹂
(3)オーストラリアの小学生の家族のこと
まち
(4)アイアンサイドの町のようす
うえのことがらいがいで.お一すとらりあのし;うがくせいからおしえてもらいたいことがあれば,かいてください。
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生から教えてもらいたいことがあれば,書
いてください。
4.4.4,4T
しょうがくせい かぞく
ゐ030000
あそ
(2)オーストラリアの遊び
えかいと一か
一 と も と
96ウ﹂ウ﹄2
がっこう
(1)オーストラリアの学校のようす
一いど言どrいど
いうちえちはうち
いとらならいとら
65
しょうがくせい おし
4みなさんからオーストラリアの小学生に教えてあげたいことはどんなことですか。
r 一いど言ど一いど
い いうちえちはうち
ヒ、 いとらならいとら
Kえかいと」か
一 一 と も と
のはらしょうがっこう
(1)野原小学校のようす
1
2
3
4
しょうがっこう あそ
(2)小学校でする遊び
1
2
3
4
かぞく
(3)家族のこと
1
2
3
4
ぽがちょう
1
2
3
4
(4)波賀町のようす
うえのことがらいがいで,お一すとらりあのしょうがくせいにおしえてあげたいことがあれば,かいてください。
上のことがら以外で,オーストラリアの小学生に教えてあげたいことがあれば,書い
てください。
5茨のような算薗での由粟箏について,六曜からどのくらい薪簡やテレビで党たり,簡いたりし
ていますか。
一 一いど言ど一いど
い いうちえちはうち
い いとらならいとら
ええかいと一か
一 一 と も と
がいこく
(の外国のスポーーツのこと
1
2
3
4
(2)蠣雛磐灘翻縦
i
2
3
4
がいこく えいが (3)外国の映画や歌手や芸能人のこと
1
2
3
4
(4)算薗でおこっている載挙のこと
1
2
3
4
かしゅ
66
つぎ じしん
6次のことは,あなた自身にどのくらいあてはまりますか。
どちらかと
﹁はい﹂
44T4,4﹁44T
(6)この交流がこれからも続いてほしいと思う。
いうと
(5)将来,英語は勉強しなくても良いと思う。
このこうりゅうがこれからもつづいてなしいとおもうり
333333
(4)英語はとても難しい言葉だと思う。
しょうらい えいご べんさよう い おも
どちらとも
言えない
えいご まとてもむずかしいことばだとおもうり
96ウ凸ウ﹂ウ﹄ウ﹄ウ﹄
(3)英語を勉強することは将来役に立つと思う。
どちらかと
(2)英語を勉強することは、大切だと思う。
えいごをぺんさようすることはしようらいやくにたつとおもうす
﹁いいえ﹂
(1)外国に住んだり、外国で仕事をしてみたいと思う。
えいごをぺんさようすることはロたいせつだとおもうロ
いうと
﹁いいえ﹂
がいこくにすんだりやがいこくでしごとをしてみたいとおもうり
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