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4月号 - PVTEC 太陽光発電技術研究組合

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4月号 - PVTEC 太陽光発電技術研究組合
●大変お待たせしました。PVTEC ニュース 第 63 号が完成しました。3 月 20 日、太陽
光発電技術研究組合の本部事務所が、市ヶ谷から芝公園に移転しました。本号は新
しい事務所から気分一新してお届けします。
●本号では、( 独 ) 産業技術総合研究所の矢部彰理事に「羅針盤:太陽光発電をより
身近に感じてもらう工夫の重要性」をご寄稿いただきました。
編 集 後 記
●PVTEC ニュース第 63 号をお届けします。
●PVTEC 主催イベントとして、昨年 11 月の第 3 回太陽電池モジュール国際基準認証信
頼性フォーラム・12 月の第 25 回技術交流会の開催報告をしました。また、海外情報と
してバンコクで開催された日泰共催のワークショップ、デンバーで開催された NREL ワー
クショップについて報告しました。いずれの報告でも共通して「太陽光発電はモジュール
単体でなくシステムで考える時期に来ている」という認識が確認されました。
●固定買取制度の浸透とともに、太陽光発電産業では、発電量の低下、設置場所の模
索など新たな課題も生じています。PVTEC も組合員の皆様と共に、課題の解決や更
なる産業の発展に寄与していきたいと考えています。
2013
Vol.63
(H.S 記)
目 次
新事務所のご案内
太陽光発電技術研究組合は、下記に移転いたしました。平成 25 年 3 月 21 日(木)より、
業務開始いたします。
〒 105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 2 階
電話:03-6403-4800 / FAX:03-6403-4801
ニュース
平成25年4月15日
2013 Vol.63 4月号
発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒105-0011 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館2階
Tel 03-6403-4800
印刷所:(株)
サンワ
古紙配合率100%再生紙を使用しています
4月号
羅針盤 太陽光発電をより身近に感じてもらう工夫の重要性
(独)
産業技術総合研究所 理事 矢部 彰
2
特集1 第25回 PVTEC技術交流会報告
太陽光発電技術研究組合
4
特集2 第3回太陽電池モジュール国際基準
認証信頼性フォーラム
10
出張報告 The 4th Thailand−Japan Joint Workshop on
Photovoltaics 及びLopburiソーラーファーム視察
太陽光発電技術研究組合
14
参加報告 NREL PV Module Reliability workshop &
Thin Film workshop
太陽光発電技術研究組合
18
コラム 産官学
バックシートのあるべき姿を求めて
リンテック株式会社 産業工材事業部門 工業材営業部 副部長
歌川 哲之
20
高信頼性モジュールに向けたJETの研究活動
一財)
電気安全環境研究所 研究事業センター
グループマネージャー待遇
増田 幸治
21
委員会・分科会活動報告
編集後記
22
24
Fax 03-6403-4801
PVTEC 太陽光発電技術研究組合
Photovoltaic Power Generation Technology Research Association
事務局
事務局
羅針盤
太陽光発電をより身近に
感じてもらう工夫の重要性
(独)産業技術総合研究所
理事 矢 部 彰
太陽光発電の性能低下の原因の一つは、まわりの樹木の成長による日陰の発生にある
と言われている。地面に置かれた古い太陽光発電パネルが、大きな木の陰になっている
のを見ると、確かにそうだなと思ってしまうし、おそらくメインテナンスや発電量の把
握は行われていないのだろうなと感じられてしまう。一方で、樹木の管理と、エネルギー
管理は多くの施設で担当者が違うであろうから、よほど強くエネルギー管理者が発電量
の低下の原因が樹木の大きくなってしまったことにあると主張出来ないと、木の剪定に
よる日当たりの回復は実現できないのが現実のようである。
一般住宅でも、太陽光発電パネルの寿命の目処になっている数十年のスケールで考え
ると、家のまわりの樹木も大きくなるであろうから、街路樹や庭木の陰になって発電量
が低下する現象は、色々なところで起こりうる可能性が高いと思われる。
太陽光発電の活用という観点からは、このようなもったいない事態を予防するには、
どのようにしたら良いのであろうか。
一つの方法は、太陽光発電パネルの所有者に、発電量に対する興味を持ってもらうこ
とであると思われる。
現在、一戸建ての住宅には、太陽光発電規模で、3kW ~ 5kW 程度の発電パネルが設
置されており、日本の場合、一年間で 1kW 当たり約 1000kWh 程度の発電量になるので、
4kW の太陽光発電パネルの場合、年間で約 4000kWh の発電量になる。
一方で、 日本の平均世帯の電力使用量は、 一ヶ月約 300kWh で、 年間にすると、 約
3600kWh であり、 これは上記の太陽光発電の年間発電量とほぼ同じ量になっている。
この事実は大変興味深いものであり、自分の家の電力使用量を自分の家の太陽光発電で
まかなえる可能性があることを示している。さらに、電力エネルギー使用の観点で、発
電量が使用量を上回ることによる電力エネルギー的な自立の実現できる可能性は、多く
の人々の関心をひくことが出来ると思われる。
これにより、太陽光発電装置を設置した家の所有者が、たとえば、太陽光発電の発電
量はどのような時に大きくなるのか、発電量が低い場合の原因は何なのか、発電量の低
下の原因は何なのか、また、節約して自宅の電力使用量を太陽光発電量以下にするには
どのようにしたら良いのか、どの季節は電力使用量を発電量が上回れるのか、さらには、
2
災害の時にどのくらい太陽光発電は役立つのか、どのくらいの蓄電池を用意すれば、災
害時の夜間も乗り切れるのかなど、多くの興味ある課題を考えてくれるようになる。ま
た、各家庭が、電力エネルギーの観点から自立することは、一つの理想とすべき姿を示
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しており、大いに推進すべきことであると考えられる。さらに、余剰電力を高く買電で
きることから、経済性の議論もどんどん出てくることが期待される。
このような太陽光発電の所有者の関心に答えるような数値データを提供し、自分達が
工夫できるようなグラフの作成や指標の変遷を色々見えるようにすることが重要になる
と思われる。また、数多くのセンサーを付けることにより、どこの部分が悪くなってい
るかとか、1 平方メートル当たり平均約 1kW の日射量と発電量の関係を示したりする
ことも有効であろう。是非、エネルギーの発電量や使用量が、身近に感じられるような
情報量の多い計測表示機器を太陽光発電設備に付加していただき、その表示や検討でき
る指標を大いに増やして付加価値を付け、太陽光発電量を多くの人達に楽しみながらよ
り身近に感じてもらうようにしていただきたい。
今後、太陽光発電パネルの所有者が、お互いに性能比較をし合ったり、情報交換をし
て使用方法を改善したり、1 日どのくらいまでの発電量が達成できるかとか、節電と組
み合わせた自分の使い方が一番優れた使用方法ではないかなどを競い合い、コミュニ
ティーを作って技術を高度化することが期待できる。それにより、電力エネルギーの節
電が競い合われ、家庭部門でのエネルギーの節約に結びつくことが期待される。また、
日本各地での都市間の競い合いや世界での競い合いも期待される。
一方で、多くのビルに設置されている数十 kW から数百 kW レベルの太陽光発電装置
も、家庭における発電量把握と同じように、発電の状況や発電量の推移などを把握でき、
色々な工夫を出来ることが望ましい。特に、今後、続くであろう夏場のピーク時間帯の
節電要請に対して、どこまで太陽光発電装置が貢献できるかを把握することは極めて重
要である。ただし、研究所や工場などの場合は、エネルギー使用量は大きいので、太陽
光発電量は、多くの場合総使用量の 10% 以下となり、あまり大きな貢献が出来ていな
いと考えられる。さらに、雲が出てくると出力が低下したり、雨が降ると低下するなど
不安定要因が大きいので、ピークカット対策として貢献出来ていないのが現状である。
これに対して、たとえば、太陽光発電の発電した電気でヒートポンプを駆動し、冷水・
温水を製造し、ピーク時間帯に大規模実験室や工場の冷暖房用に使用して、その分、ピー
ク時間帯に冷暖房装置を停止させるなどの太陽光発電の積分値を活用するピークカット
方法が期待される。太陽光発電で足りない分は、夜間電力なども使用する必要はあるが、
太陽光発電の数時間以上にわたる積分値が期待できれば、使用者も太陽光発電に対して
ピークカット対策として期待するようになると思われる。太陽光発電が、冷暖房の一部
に相当するのだという定量的な大きさの感覚を持ってもらう、それだけ貢献できること
を感じてもらうことが重要であり、太陽光発電パネルの所有者が太陽光発電をより身近
に感じてもらうことの重要性は、ビル等においても変わらない。
産総研では、太陽光発電パネルの劣化メカニズムの解明、寿命や信頼性の加速試験方
法の研究開発と国際標準化、また、発電効率を上げる研究や、経済性を向上させる薄型
単結晶シリコンの総合的なパネル作成技術の研究開発などに全力を挙げて取り組んでい
る。平成 25 年度に、福島県郡山市で活動を開始する再生可能エネルギー研究拠点でも、
太陽光発電技術の高性能化と経済性向上は、最も重要な課題の一つとして取り組む予定
である。それと共に、太陽光発電をより身近に感じてもらうという、社会にいかに太陽
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光発電を受け入れてもらうかというソフト的な課題、社会技術的な課題も、併行して進
めていくことが重要であると考えている。
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特 集
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第 25 回 PVTEC 技術交流会報告
太陽光発電技術研究組合 平成 24 年 12 月 25 日、
第 25 回技術交流会を東京 市ヶ谷 アルカディア市ヶ谷で開催した。
今回は、3 つの PVTEC の特別事業の中間進捗報告と、最近、PV システムの長期的信頼性
試験の一つとして話題になっている PID(Potential Induced Degradation)問題を取り上げ、
組合員間で幅広く情報交換、意見交換をするセッションを設けた。また、招待講演には、日
本の勝ちパターンを考えて行こう(太田技術交流部会長)との趣旨から海外の事業戦略事例
としてヘレウス㈱土屋淳社長から講演をいただいた。なお、今回は、組合員、委員会、学会
関係者を対象として、関係者以外には非公開で開催した。年末にも関わらず、出席者も多く、
議論も活発で、
引き続いて開催された意見交換会も盛況であった。当日のプログラムの各セッ
ションの要旨は以下の通りである。
会場風景
1)PVTEC 特別事業進捗報告
① <薄膜シリコンPVコンソーシアム>
PVTEC つくば研究所 斉藤 公彦 薄膜シリコン太陽電池は、メガソーラーとして東南アジアなどサンベルト地域では、結晶
シリコン太陽電池や化合物系太陽電池に比べ、高温での特性低下が小さく、短波長での感度
が高い、又、豊富な資源量からもまだ優位性がある。BIPV への展開も期待されている。
PVTEC の薄膜シリコン PV コンソーシアムでは、モジュール効率 13%、コスト 50 円 /
Wp 以下を目標に平成 22 年度から産総研内の集中研(PVTEC つくば研究所)を中心に 6 社・
6 大学でコンソーシアム研究を進めており、これまでに薄膜シリコン太陽電池の高効率化技
術として、アモルファスシリコンセルで 9.6%、タンデムセルにおいて 11.9% の安定化効率
を得ている。また、高効率化の重要技術である光閉じ込めによる高電流化でも 30mA/cm2
と世界トップレベルの成果をあげている。又、低コスト化のための大面積高生産性技術では、
G5 サイズで超高周波製膜技術で均一性(± 10% 以下)のよい高速製膜技術を確立させた。
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② <高信頼性PVシステム調査研究>
PVTEC 技術部 伊藤 健司 総合調査委員会のもとに 3 つの分科会を設け、平成 24 年度は中間報告を纏めている。委
員には、組合員の他に、産学官の外部の有識者を加えている。
・PV モジュール分科会:PVモジュール耐久性向上のための課題と要因を調査。あるべき
モジュールの寿命の定義、劣化の実態の調査。
・PC/BOS 分科会:過去の PV システムの故障に関する統計の調査から、住宅用パワーコン
ディショナーを中心に信頼性・寿命の要因に関する主要メーからの聞き取り調査を行った。
また、災害時における PV システムの在り方等の提言をまとめた。
・社会システム構築分科会:PV の大量導入に向け、安全性、系統連系、リサイクル、ユーザー
利便性どを調査した。この分科会には、社会科学系の有識者に委員として加わっていただ
いている。
これまで PVTEC が得意とした技術側の視点からでなく、広い社会科学的な視点からの議
論が行われている。なお、各分科会の調査報告は、中間報告として纏められる。
③ <アジア基準認証推進事業>
PVTEC 技術部 高川 悌二 組合員 19 団体でコンソーシアムを(PV 認証信頼性コンソーシアム)を組み、PV モジュー
ルの信頼性長寿命を短時間で加速評価する手法の構築を進めている。昨年より、本格的に市
販の製品に対する IEC 規格に準拠した加速試験のデータを蓄積し、新しい試験方法に向け
た知見が得られている。また、話題になっている PID 試験についても、劣化メカニズムを
検討する上で重要な知見を得ている。昨年 QA タスクフォース国内委員会を立ち上げ、6 つ
のタスクグループを進めている。
2)招待講演
「欧州部材メーカーの事業戦略」
ヘレウス株式会社 代表取締役社長 土屋 淳 土屋氏は、研究者として 15 年、国内化学メー
カーの海外勤務、2000 年より米国企業、2007
年よりドイツに本社があるヘレウスジャパンの
経営を担当されている。PV 関係で、同社は、
導電ペースト、スパッタリングターゲットなど
で中国をはじめ、アジアでは急速にシェアをあ
げている。同社が事業に成功した戦略の事例、
日本企業とドイツ企業の比較、さらに、FIT 導
入後のビジネスモデルはどうあるべきか、日本
の競争戦略策定の着眼点、などが話された。同
社は、経営陣はほとんど技術者出身である。素
材と一次加工に特化すること。自社の既存分野を活用し慎重な投資に徹することなどで国際
的な事業を伸ばしている。
日本版 FIT は、金融マネーに翻弄されず、お金が逃げないより洗練された仕組みが必要で、
内需を重視すべきである。日本は、米国に並んで内需立国が可能な国家である。韓国や中国・
台湾は輸出依存が過大である。日本は、国内だけで生産から設置までシステムすべてできる。
必要なら一部モジュールを輸入してもよい。当日示されたビューグラフの一部を示す。
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最後に、タイトルが『2008・北京』という寓絵(米国、中国、ロシア、台湾、日本を暗示
する女子がマージャンを囲んでいる絵)をもとに、日本の置かれた状況を説明し、会場を沸
かせた。日本がこれから国際的に勝ち残るためには、内側ばかり気をとられるのでなく、世
界全体を見据えたポリティカルな動きを十分に考慮し、最後にテクノロジーで勝負するよう
な仕組みづくりに持っていくことが重要である。
3)技術討論 PID と太陽電池モジュールの長期信頼性
産業技術総合研究所の増田淳氏をコーディネーターにお
願いし、産総研、試験機関である㈱ケミトックス、認証機
関の JET、更に、パワコンメーカーのオムロン㈱から、そ
れぞれの PID 問題や試験法について最新の報告があった。
又、モジュールメーカーを中心に組合員各社から、PID に
対する各社の取り組み状況について情報提供があり、最後
に、全体で討議された。
< PID に関する産総研の取り組み>
コーディネータ
産総研 増田 淳氏
増田 淳
PID のメカニズムの解明に向けて、テストモジュールを用い、アルミ板をモジュールの表
面に密着させる方式(- 1000V、85℃、24h)を中心としたテストを行い、劣化したサンプ
ルの I-V 特性や EL 画像などの解析結果が報告された。セルの両面にアイオノマーを導入し
た試験では大きく PID が改善されている。
< PID の評価について>
ケミトックス社で行った PID 実験結果の報告がなされた。
同社では山梨にフィールド実証試験も行っている。実証実
験では、漏れ電流(フレームと接地間)が、ガラス面の状
況で大きく変化し、湿度や、温度との相関が想定されるこ
と。同社の試験法(アルミ箔を表面に密着、85℃、85%)は、
これまでに報告されている Fraunhofer の試験より厳しいこ
と。また、印可電圧が- 300V(別実験では- 100V)でも
PID が起きる可能性が示された。
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(株)ケミトックス 坂本 清彦
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<アジア基準認証事業での PID に関する取り組みについて>
JET 増田 幸治
PVTEC の特別事業では、市販されている国内外 15 メー
カーのモジュールを購入し、チャンバー法と水張り法で行っ
た PID の試験結果が紹介された。5%以上の出力低下を判定基
準にした場合、前者では 15 モジュール中 5 モジュールが、後
者では 6 モジュール中 3 モジュールの特性劣化が認められた。
又、試験法で、劣化程度も異なり、その差は部材と構成によ
る漏れ電流の経路に差があることを示唆している。
< PID に有効なパワーコンディショナー制御の提案>
オムロン(株)
坪田 康弘
PID は、トランスレス(非絶縁)のインバータに発生し
やすいとされている。オムロン㈱のパワコンでは非絶縁で
ありながら直流入力側を接地する回路方式を構成し、PID
が起こりにくく、又、変換効率も 97.8%と高いレベルを実
現している。回路の動作原理などが紹介された。
<討議から>
・室内の実験条件から PID のメカニズムを追う議論が多いが、もっと実際の暴露データか
らの解析が必要ではないか
・漏れ電流と、封止材の体積抵抗との相関、又 Na イオンの移動、さらに回復現象の多岐な
ど複数の劣化メカニズムの混在しているのでは
・日本では 2000 年頃からトランスレスのパワコンが主流になっており、PID は起こってい
るはずである。昔のパワコンは、漏電防止で良く止まることを聞いている。今、10kW ~
50kW のシステムに大量の需要がある。問題が大きくなる前に対策が必要で、そのために
は簡単な方法でも早く皆の合意を得て試験法を決める必要があるのでは
・JPEA のアンケート調査では、日本では PID は起きていないと報告されている。しかし
各メーカーが個別に対応し、データが隠されていると思われる。実際の暴露試験のデータ
がないと、これからの規格提案ができない。又、PID によってシステムとしてどのような
影響があるか知らねばならない。ストリングの高電位部のモジュールの効率が 10%落ち
たくらいではすぐに分からない。リーク電流が増えるとパワコンの動作が止まるなどの事
例があるのでは
・PID の規格として、IEC62804 がすでに working member に配布されている。不都合なこ
とが無いか早急に議論が必要。又、モジュールだけでなく、パワコン、パワコンと DC で
つなぐところまでシステム規格として考える必要がある。
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討論会の様子
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第 25 回
PVTEC 技術交流会
日時
平成 24 年 12 月 25 日(火)
場所
東京
市ヶ谷
13:00∼19:30
アルカディア市ヶ谷
13:00
開会 部会長挨拶
13:10
PVTEC 事業進捗中間報告(PVTEC 技術部)
司会
1) 薄膜シリコン PV コンソーシアム
大日本印刷㈱
太田
㈱クラレ
床尾万喜雄
PVTEC つくば研究所
善記
斉藤
公彦
PVTEC 技術部
伊藤
健司
PVTEC 技術部
高川
悌二
TANAKA ホールディングス㈱
柳沢
智子
へレウス(株)
代表取締役社長
土屋
淳
(独)産業技術研究所
増田
淳
増田 淳
2) 次世代太陽光発電システムに向けた基盤技術開発の調査
3) アジア基準認証推進事業
司会
15:30
PID と太陽電池モジュールの長期信頼性
モデレータ・司会
①
PID に関する産総研の取り組み
②
PID の評価について
③
アジア基準認証事業での PID に関する取り組みについて
(株)ケミトックス
JET
④
清彦
増田
幸治
坪田
康弘
PID に有効なパワーコンディショナー制御の提案
オムロン(株)
⑤
坂本
討議 (各社コメント)
㈱カネカ、京セラ㈱、シャープ㈱、長州産業㈱、パナソニック㈱、デュポン㈱
17:30
まとめ 日本の 2012 年の PV 産業の振り返り
PVTEC 理事長
18:00
桑野
幸徳
意見交換会
<まとめ>
以下の 4 点が今回の討論でまとめられた
① PID メカニズムをはっきりさせる。
② 実爆のデータとの比較、又、それらの情報を共有する仕組みが重要である。
③ とりあえずでも早く試験法、試験条件を作ること。
④ モジュールだけでなく、システムとして見ていく。
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4)「交流会のまとめ」と「日本の 2012 年の PV 産業の振り返り」
太陽光発電技術研究組合理事長 桑野 幸徳 PV もこれまでのマイナーなエネルギーから社会の中心的なエネルギーに移行している。
問題を起こしたら一斉にたたかれる。社会に受け入れられるために、各関係機関が問題を隠
さず、十分に議論し解決しなければならない。今回、PID の問題を、モジールメーカー、部
材メーカー、システムメーカーそれに産総研、JET などと良い議論できた。
この一年を振り返ると、世界的には、一昨年と同等 30GW 以上の導入実績があったとみ
られる。日本では 7 月に FIT が導入され、本格的に PV の普及が始まった。毎月 500MW
近い導入が進められている。FIT の導入当初はメガソーラーが注目されたが、住宅用も堅
調であり、何より 10kW 以上 1MW 以下の中規模システムの需要が広がってきた。まさに
地産地消型を実現している。
日本は南北に長く、亜熱帯から寒冷地区が入っており、海岸の塩田跡地、冬の積雪地帯と
バラエティに富んでいる。又、日本の得意としている「すり合わせの技術」などを生かせれ
ば、信頼性・長寿命などで日本の特徴を生かした技術開発が可能である。
欧州の FIT は導入して 12 年かけている。日本の FIT は導入してまだ 1 年である。これ
から本格的に社会のシステムに入れていかねばならない。
PVTEC は、業界の中で、お互いに「言いにくいことを出し合える“場”
」の役割を担っ
ていくべきである。大いに輪を広げていきましょう。
桑野理事長 「この1年を振り返って」
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特 集
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第 3 回太陽電池モジュール国際基準
認証信頼性フォーラム
2012 年 11 月 27 日に開催した第 3 回太陽電池モジュール国際基準認証信頼性フォーラム
の概要を報告する。
同フォーラムは、
(独)産業技術研究所、NREL(米国)と共に、PVTEC が主催者を務め、
霞が関のイイノホールで、
参加者 226 名(講演者 18 名 / 招待者 9 名 / 一般参加者 192 名(110
社)/ 主催者 7 名)を迎えて実施した。
歓迎スピーチ
Sarah Kurz(NREL)
・近藤道雄(
(独)産業技術総合研究所)両委員長の開会あいさつ
に続き、経済産業省 土井良治課長、米国大使館 Jeffrey Miller 氏、太陽光発電技術研究
組合 高塚汎専務より歓迎スピーチを頂いた。
会場の様子
特別講演
セッション1では、Heinz Ossenbrink 氏(EU DG_JRC)・Thomas Reindl 氏(SERIS)
・
経済産業省 村上敬亮課長の 3 名から特別講演をいただいた。
ヨーロッパの Heinz Ossenbrink 氏からは、太陽光発電はモジュールコストを維持しなが
ら、発電量を上げることが重要であり、QA を確実にやっていけば、成功するという話があっ
た。
シンガポールの国立研究所 SERIS の Thomas Reindl 氏からは、屋内テストと屋外での現
象を結び付けていくことが重要であるという認識のもと、屋外データの収集のために設けた
サイトなどを中心に SERIS の活動紹介があった。
経済産業省村上敬亮課長は、本年 7 月施行の再生可能エネルギーの固定価格買取制度の概
要とその後のわが国のメガソーラープロジェクトを支える取り組みについて紹介された。
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経済産業省 村上敬亮課長
SERIS Thomas Reindl 氏
EU DG_JRC Heinz Ossenbrink 氏
JISQ8901 とバンカビリティ
セッション 2 では、太陽光発電システム大量導入に向けて、モジュールの信頼性・バンカ
ビリティに焦点を当て、2 名の講師に講演をいただいた。
PV モジュールの信頼性を審査する規格 JIS Q8901 については、芝田克明理事(一般財団
法人電気安全環境研究所)より、概要と、同規格の認証の取り組みについて紹介いただいた。
三井住友銀行プロジェクトファイナンス営業部の工藤禎子部長からは、PV プロジェクトの
バンカビリティの紹介並びに詳細な説明があった。
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三井住友銀行 工藤禎子氏
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技術動向
セッション 3 では、PID 並びに、モジュールの品質保証を取り上げた 3 件の講演があっ
た。ドイツの試験機関 PI Berlin の Juliane Berghold 氏より、同機関における PID 試験、
屋外での PID 発生と PID 試験との相関、PID 対策、PID の回復などについて、紹介があっ
た。エスペックの棚橋紀悟氏からは、各種 PID 試験について紹介があり、試験方法によって、
劣化状況が異なる事例のあることが報告がされた。
フロリダソーラーエナジー研究所の Neelkanth Dhere 教授は、屋外曝露サイトなど同研
究所の活動を紹介した。
PI Berlin Juliane Berghold 氏
FSEC Neelkanth Dhere 氏
QA タスクグループ報告
セッション 4 では、QA 国内検討委員会のタスクグループの活動報告と、報告をベースに
したオープンディスカッションを行った。
TG1、江口芳仁リーダーから JIS Q 8901 の原案作りへの貢献と、同規格の国際規格化に
向けた課題等について報告があった。
TG2 では、棚橋紀悟リーダーから PV モジュールの短時間評価法として動的荷重負荷に
温度サイクル試験を追加する試験を検討し、国際規格化を目指している、との報告があった。
クラックについては、レーザスキャニング法で評価することが検討されている。
TG3 の土井卓也リーダーから、材料分析結果や統計的なデータ、屋外暴露モジュールデー
タ等の提供を受け、PV モジュールの劣化メカニズム解明に貢献しているとの報告があった。
TG4 からは、内田泰徳リーダーより、ジャンクションボックスの連続通電試験、断続通
電試験、逆バイアス試験等の進捗報告があった。
TG5 の廣田草人リーダーから、UV 光源と材料、温度を変えた基礎データ取りのため、ミ
ニモジュールでの予備テストを実施している旨の報告があった。
TG8 徳田修二リーダーから、薄膜系について、実フィールドで起こっている不具合調査と、
今後信頼性試験方法の規格検討するとの報告がされた。
各 TG からの報告の後、会場も含め、オープンディスカッションが行われた。
気候区分に応じた信頼性試験方法を開発することにつき、会場を含め意見を集め、議論が
された。モジュールメーカ、試験機関などの立場からの意見が述べられ、最後に、気候区分
を 3 つ(温帯、熱帯多湿、熱帯乾燥)に分け、区分ごとの試験をすることにつき、参加者の
2/3 が賛成を表明した。
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パネルディスカッション座長
パネルディスカッションパネリスト
スポンサー
本フォーラムは、21 企業・機関の協賛により開催することが出来た。
協賛の周知のために、スポンサー企業ロゴを使ったロールバナー・エコバッグを作成した。
会場外にはスポンサー用のポスター展示場所も用意した。
スポンサーロールバナー
ポスター会場
協賛いただいた企業に感謝いたします。
旭硝子㈱・ウシオ電機㈱・エスペック㈱・㈱カネカ・京セラ㈱・シャープ㈱・㈱新日本科
学製作所・ソーラーフロンティア㈱・大日本印刷㈱・長州産業㈱・デュポン㈱・(一般財)
電気安全環境研究所・東京エレクトロン㈱・東洋紡㈱・東レ㈱・東レダウコーニング㈱三洋
電機㈱・VDE グローバルサービスジャパン㈱・三井化学㈱・三菱電機㈱・㈱ ULJapan
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出張報告
The 4th Thailand - Japan Joint Workshop on Photovoltaics
及び Lopburi ソーラーファーム視察
太陽光発電技術研究組合
学術振興会 175 委員会の主催で、2012 年 12 月 7 - 8 日に第 4 回 日泰太陽光発電ジョイ
ントワークショップ及び 73MW システム見学会が開催され、太陽光発電技術組合からも参
加した。
1.73MW ソーラファーム見学
12 月 7 日は、バンコクの北方約 200km の Lopburi にあるソーラーファームにバスで視察
に行った。発電所一帯は、平坦な土地にある農村地帯で、250ha のソーラーファームは、近
くに寄ると全景が掴み難い規模である。総投資額は 2 億 5000 万ドル(1kw あたり、27.4 万円
(視
察時の換算レート)
)
、
使用モジュールはシャープ製の薄膜シリコン微結晶タンデム型
(134W)
が 545,000 枚である。タイにおける電力買取価格は回避可能コスト+ 8/kwh とされており、
10 年間続く。
こ の 発 電 所 の 運 営 は、DGA(Diamond Generation Asia Limited),EGCO(Electricity
Generation Public Company Limited),CLP(CLP Holding Limited) 3 社が均等出資して
設立した NED(Natural Energy Development、CO. Ltd.)が担当している。 発電した電気
はタイ電力庁(EGAT)に売電し、その収入で投資を回収する所謂、IPP 事業である。Grid
への連系電圧は、発電所の傍で、450V から 22KV に昇圧後、変電所で 115KV にしている。
インバーターは 250KW/ 台を 8 台まとめ、1 箇所あたり 2MW として運用している。2012
年 2 月に運転開始した。
写真 -1 73MW 設備サブステーション(22KV → 115KV)
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写真 -2 73MW システム全景
写真 -3 少し小高い見学所からの接写
写真 -4 増設中の 8MW 設備の建設状況
池と建設中の空き地で架台用のコンクリート基礎の製作がなされている。
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写真 -5 本設備に採用された基礎と架台の構造 写真 -6 日射強度と発電出力
814.2Kw/m2 日 射 強 度 で 48.1MW の AC 出 力 と
2
909.9KW/m で 52.3MW の AC 出力が出ている本設
備の定格出力は DC の 73MW → AC で 55MW であ
る。
写真 -7 運転コントロール室
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2. ワークショップ
12 月 8 日(土)には、日本・タイからそれぞれ 20 名、合計 40 名程度の参加者により、
バンコクの Sukosol ホテルで、ワークショップが行われた。
NECTEC(National Electronics and Computer Technology Center)の A.Kawtrakul さ
んと東工大の小長井先生の開会挨拶からスタートし、以下のアジェンダで進行した。
1・ワークショップの歴史の紹介
2・今後のタイにおける太陽光発電の普及予測(写真 8)
予測では 2016 年に 2GW で飽和状態になる。ソーラーファームが主体とみられている。
3・タイにおける電力買取制度と FIT のレートの紹介(写真 9)
写真 8 今後のタイにおける太陽光発電の普及予測
写真 9 タイにおける電力買取制度と FIT のレートの紹介
4・タイの電力開発情報
2011 年末 発電設備容量 33,068MW(予備率 16.0%)
2012-2021 年 新設 26,583MW
季節廃却 ▲ 6,739MW
2021 年末 の発電設備容量 52,912MW
5・再生可能エネルギーの普及計画
2012 年- 2021 年 6,469MW(新設に占める割合は 24.3%)
2021 年末の再生可能エネルギーの割合は 12.2% を占める見込みであるが、タイでは風
況が良くないので、当面は PV の普及が中心と思われる。
最後に
タイでは早くから SHS(ソーラーホームシステム)を 30 万個設置する計画があり PV へ
の関心が高かった。今、スーパーメガソーラーシステムというべき 100MW クラスの設置が
急激に進められている。タイには、平坦な土地が多く、政策の後押しもあり、薄膜シリコン
電池の市場として魅力的である。東南アジアには、タイのような国が次々と現れることが考
えられるので、PVTEC が推進している薄膜 Si-PV コンソーシアムにおいても、高効率太陽
電池の開発成果を早急に出すことで、同地域への太陽光発電システムの普及に寄与できるだ
ろう。
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参加報告
NREL PV Module Reliability workshop & Thin Film workshop
太陽光発電技術研究組合 太陽電池信頼性ワークショップ
今年で 4 回目になる NREL(National Renewable Energy Laboratory)主催の PV モジュー
ル信頼性ワークショップが 2 月 26 日・2 月 27 日の二日間にわたり開催された。米国、
ヨーロッ
パを中心に 100 名あまりの出席者があった。日本からは、PVTEC の依頼で出張頂いた 5 人
の委員を含め、合計 13 名が出席し、議論に参加し、また、国内タスクグループの活動報告
などを行った。
参加の条件が、プレゼンテーションかポスター発表をすること、であったため、情報を得
ることのみを目的とする参加者がなく、真剣で熱心な議論が終始行われた。
ワークショップの様子
ポスターセッション会場
今回のワークショップは、QA タスクフォース活動を取り上げる、ということで、TG2(温
度と機械的ストレス)、TG3(温湿度と電圧)
、TG4(ダイオード、シェーディング、逆バイ
アス)
、TG5(UV と温湿度)の活動について、リーダらによるプレゼンテーションが行われ、
その後、活動について議論がされた。さらに、二日目の最後に全体を通した議論が行われた。
以下の点が、ワークショップ参加者の総意として合意された。
現在の TG が、PV システムのあらゆる現象をカバーしているわけではないので、より広
い範囲の関係者と改善、解決に向け議論するべきである。取り組むべき領域として、ケーブ
ルの耐久性や信頼性、ジャンクションボックスなどが代表例として挙げられた。
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一方、モジュール試験結果のレーティングについては、熱心な議論が行われたが、カテゴ
リ、レーティングのいずれも様々な意見が出、合意には達しなかった。
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日本の TG リーダー・サブリーダーによる報告
総合討論 パネリスト(日本からは国際幹事の山道正明委員(AIST)が参加)
薄膜太陽電池モジュールワークショップ
モジュール信頼性ワークショップの終了後、薄膜太陽電池の信頼性に焦点を当てたワーク
ショップが開催された。参加者は日本からの 8 名を含め、70 名程度であった。QA タスク
グループを立ち上げた 2011 年 7 月にサンフランシスコのワークショップで結晶シリコン太
陽電池の信頼性に関わる課題を抽出した時と同様の手法で、薄膜太陽電池の課題につき議論
が行われた。
2 回にわたるグループディスカッションにより、1)腐蝕、2)半導体、3)配線、4)剥離、
5)ダイオードと日陰、6)ガラス
割れ、7)フレキシブルタイプの
7 つの課題群にまとめられた。7)
のフレキシブルを除く 6 つの課題
について、対応が必要であること
が合意された。
まとめ
4 日間のワークショップの熱心
な議論と共に、TG1、TG5 では、Face to face の議論が日本の委員も参加し、長時間にわた
り行われた。
TG1 のミーティングでは、参加の無かった中国、欧州地区の意見の多くが採用されなかっ
た例もあり、いずれの場も、出席し、議論に参加することで、日本の主張が浸透し、意見が
取り上げられることが実感された。
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バックシートの
あるべき姿を求めて
リンテック株式会社
産業工材事業部門 工業材営業部
副部長 歌川 哲之
リンテックは粘着製品分野におけるリーディングカンパニーとして、シール・ラベル
用の粘着紙・粘着フィルムをはじめ、屋外サイン・内装関連の出力・加工用素材、建築・
自動車関連の各種粘着素材、半導体関連テープ、液晶・タッチパネル用光学機能性フィ
ルムなど、
多岐にわたる事業を展開しています。太陽電池用部材に関しては、
バックシー
トを中心に、銘板ラベル、両面テープ、絶縁補強フィルムなどの各種部材を、米国の子
会社 Madico,Inc. を含めてグローバル展開しています。
当社が保有する耐候製品の知見と独自のコーティング技術を組み合わせて、高耐候
コーティングを外層に施した高耐久・高信頼性バックシート「リプレア ®」を提案させ
ていただいております。
劣化要因の一つであった接着剤層を設けないバックシート「リプレア RKT」を
2012 年 6 月に発売しました。長期暴露による劣化で接着剤層の凝集力が低下すると、
フィルム層の収縮も加わり、
バックシートが層間ではがれるデラミ現象が起こり得ます。
これを抑制するために接着剤の耐久性を向上させていますが、別のアプローチとして接
着剤層自体を除き、劣化しづらい高凝集力の特殊樹脂層を PET フィルムなどの支持体
上に直接形成する独自の製造技術を確立しました。バックシート層間の接着信頼性を格
段に向上させた次世代型バックシートです。
封止面に形成する特殊樹脂層は EVA やオレフィン系封止材と高い接着性を示し、加
速試験後もほとんど変化がなく、高い封止信頼性を有しています。また、製造工程を簡
略化できることから、コスト競争力の強化にもつながります。長寿命型バックシートと
いう側面から発電コストの低減にも寄与できればと考えております。
一方、市場では部材価格の下落もさらに進行しており、コストを主眼に部材が選定さ
れるケースが多くなっています。現在の PV 業界の世界情勢を背景に、収益面からこの
ような動きになるのも当然といえます。国内外を問わず日本の技術力を生かした品質面
での差別化が難しいのが現状です。しかし、どこかにコストと品質のバランス点は存在
すると思います。コストだけが先行してしまいがちですが、耐久性も含めた品質目標も
徐々に明らかになっていくと推測します。
IEC や QA フォーラムにおいても、部材を含むモジュールの信頼性についての議論
が進行しています。実暴露と加速試験の相関性も含めて、我々部材メーカーも PVTEC
様などを通じて、微力ながらモジュールの信頼性確立に協力させていただき、部材メー
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カーとしての「あるべき姿」を追究していきます。
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高信頼性モジュール
に向けた
JET の研究活動
一財)電気安全環境研究所 研究事業センター
グループマネージャー待遇
増田 幸治
一般財団法人電気安全環境研究所 (JET) は一般財団法人日本品質保証機構 (JQA) の
研究活動を引き継ぐ形で、平成 13 年度以降太陽電池モジュールに関する研究活動を続
けています。この研究の成果として、平成 15 年には二次基準セルの校正事業、平成
16 年には太陽電池モジュール性能に関する認証制度 (JET PVm)、平成 17 年には比
較測定用モジュールの測定事業を開始しました。さらに、平成 18 年には JET PVm
認証に安全性を付加し、平成 24 年末時点で有効認証数は 56 社・6322 モデル ( 認
証取消しモデルを除く ) に達しました。
現在の研究活動は(独)新エネルギー産業技術総合開発機構 (NEDO) 委託研究「太
陽エネルギー技術研究開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/信頼性及び
寿命評価技術の開発研究」と、太陽光発電技術研究組合 (PVTEC) 及び佐賀県との共同
事業として取り組んでいる経済産業省補助事業「アジア基準認証推進事業」です。
NEDO 委託研究では屋外暴露試験や実際に稼働している太陽光発電システムの調査
を通じて、現実に起こりうる不具合から劣化因子を突き止めることが目標です。
アジア基準認証推進事業の試験の一つとして、現在の認証試験のうち高温高湿試験と
温度サイクル試験の試験時間ないしサイクルを延長した試験 ( 延長試験 ) と交互に行う
試験 ( 拡張試験 ) を市販モジュールについて実施しています。これらの試験によってモ
ジュールが不具合を起こした場合に、その要因を PVTEC の組合員である独立行政法
人産業技術総合研究所 ( 産総研 ) とともに分析します。
現行の認証試験規格である JIS C 8990( 結晶シリコン用 )、C 8991( 薄膜用 )、
C8992-1, -2( 安全 ) は新品モジュールのスクリーニング試験の役割を果たしており、
これらの試験に適合したモジュールは実使用環境下で 5 年から 10 年の性能寿命に適
合していると考えられています。一方で多くのモジュールメーカーが謳っている性能保
証期間やユーザーが期待する寿命は時には 30 年と長期間にわたります。このような長
寿命を短時間で加速評価する手法はまだ確立されていません。
一部の海外メーカーでは量産モジュールが必ずしも規格適合品と同等でないケースが
知られており、市場に粗悪モジュールが流通している可能性があります。我が国の補助
金制度を利用して導入される太陽光発電システムは 20 年以上の寿命を期待されている
にも拘らず、粗悪モジュールが増えることで太陽光発電システムが立ち行かなくなる恐
れがあります。粗悪モジュールと高信頼性モジュールとをふるい分けることができるよ
うな試験方法の確立は喫緊の課題です。
JET の研究活動を通して屋外で実際に稼働しているモジュールの劣化と屋内加速試
験で生じる不具合を結びつけ、長寿命を短時間で加速評価する手法の提案ができるよう
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に努めてまいります。
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委員会・分科会
活動報告
運営幹事会
第 38 回運営幹事会
新・体制
検討委員会
戦略企画部会
平成 25 年度第 1 回戦略企
平成 24 年 11 月 9 日(金)
第 5 回新・体制検討会
画部会
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
平成 24 年 11 月 9 日(金)
平成 24 年 10 月 31 日(水)
■議題
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
1. 平成 24 年度の事業の進
1. 規定の見直し
議題
2. 組織体制と予算の考え方
1. 講演会
3. その他
講師 (株)資源総合システ
捗について
2. 上期 収支状況報告
ム 大橋孝之氏 「BO
3. 今後の予定について(事
第 6 回新・体制検討会
Sを含めたPVシステム
平成 24 年 12 月 21 日(金)
コストの低減の展望と技
第 39 回運営幹事会
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
術課題」
平成 24 年 12 月 21 日(金)
1. 規定の見直し
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
2. 必要最低限の人数、財務
務所移転等)
■議題
1. 新事務所の移転について
のケーススタディー
3. 戦略企画部会でやるべき
1)候補地の選定 及び
テーマ
2)移転費用の捻出につ
4. その他
講師 ネグロス電工㈱小西
祥司氏 / 廣瀬竜介氏 「最新の架台技術」
2. 戦略企画部会 今後の戦
略企画部会の進め方
平成 24 年度第 2 回戦略企
いて
第 7 回新・体制検討会
画部会
平成 25 年 1 月 15 日(火)
平成 24 年 12 月 25 日(火)
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
第 40 運営幹事会
1. これまでの議論の経過
議題
平成 25 年 2 月 19 日(火)
2. 最低限の人数、財務のケ
1. アンケート結果について
2. その他 今後のスケジュ
ール等
港区 機械振興会館 会議室
■議題
1. 平成 25 年度事業計画及
び予算の件
ーススタディー
3. PVTEC 新体制に関する
2. 戦略企画部会の分科会に
ついて
答申書案の検討
4. その他
平成 24 年度第 3 回戦略企
1)平成 25 年度事業計画
画部会
2)平成 25 年度予算
平成 25 年 1 月 28 日(月)
2. 事務所移転の件
市ヶ谷 大島ビル 5F 会議室
3. 新・体制検討委員会から
議題
の報告書の件
1. 研究開発テーマ案の提案
者からの説明
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2. 来年度活動方針の策定
3. 第 4 回戦略企画部会(講
演会)について研究会
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NEDO 委託
関連委員会
2. 太陽光発電次世代高性能
技術の開発・信頼性及び
寿命評価技術の開発
1. 次世代多接合薄膜シリコ
経済産業省
補助事業
ン太陽電池の産学官協力
分科会
PV アジア基準認証推進事
体制による研究開発
平成 24 年度第 4 回高信頼
業費補助金補助事業
PV モジュール分科会
薄膜Si-PVコンソ運営委員会
平成 24 年 11 月 30 日(金)
第 26 回薄膜 Si-PV コンソ
13:30-16:30 スペー
第 11 回経済産業省 PV 基
運営委員会
ス TOKU 東京
準認証実施者会議
平成 24 年 11 月 16 日(金)
平成 24 年度第 5 回高信頼
実施者会議
平成 24 年 12 月 4 日(火)
12:00-15:00 市ヶ谷
PV モジュール分科会
10:00-14:30 東京
大島ビル 5 階 会議室
平成 25 年 1 月 18 日(金)
八重洲ホール)
第 27 回薄膜 Si-PV コンソ
13:00-16:00 スペー
第 12 回経済産業省 PV 基
運営委員会
ス TOKU 東京
準認証実施者会議
平成 24 年 12 月 3 日(月)
平成 24 年度第 4 回高信頼
平成 25 年 1 月 25 日(金)
15:00-18:00 貸会議
PC/BOS 分科会
13:30-18:00 市ヶ
室「スペースTOKU」
平成 24 年 11 月 16 日(金)
谷大島ビル会議室
会議室 C
14:00-17:00 名古屋
第 13 回経済産業省 PV 基
第 28 回薄膜 Si-PV コンソ
プライムセントラルタワ
準認証実施者会議
運営委員会
ー 13 階 第 20 会議室
平成 25 年 2 月 22 日(金)
平成 24 年 12 月 26 日(水)
平成 24 年度第 5 回高信頼
15:00-18:00 市ヶ谷
9:00-11:00 市ヶ谷
PC/BOS 分科会
大島ビル会議室
大島ビル 5 階 会議室
平成 24 年 12 月 14 日(金)
第 29 回薄膜 Si-PV コンソ
14:00-17:00 市ヶ谷
運営委員会
大島ビル 5 階会議室
平成 25 年 1 月 31 日(木)
コンソシアム運営委員会
平成 24 年度第 4 回社会シ
第 8 回 PV 認証・信頼性コ
17:10-19:00 市ヶ谷
ステム構築分科会
ンソシアム運営委員会
大島ビル 5 階 会議室
平成 25 年 1 月 16 日(水)
平成 25 年 1 月 30 日(水)
13:00-15:30 市ヶ谷
13:30-17:00 JET
大島ビル 5 階会議室
横浜事業センター会議
室)
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●大変お待たせしました。PVTEC ニュース 第 63 号が完成しました。3 月 20 日、太陽
光発電技術研究組合の本部事務所が、市ヶ谷から芝公園に移転しました。本号は新
しい事務所から気分一新してお届けします。
●本号では、( 独 ) 産業技術総合研究所の矢部彰理事に「羅針盤:太陽光発電をより
身近に感じてもらう工夫の重要性」をご寄稿いただきました。
編 集 後 記
●PVTEC ニュース第 63 号をお届けします。
●PVTEC 主催イベントとして、昨年 11 月の第 3 回太陽電池モジュール国際基準認証信
頼性フォーラム・12 月の第 25 回技術交流会の開催報告をしました。また、海外情報と
してバンコクで開催された日泰共催のワークショップ、デンバーで開催された NREL ワー
クショップについて報告しました。いずれの報告でも共通して「太陽光発電はモジュール
単体でなくシステムで考える時期に来ている」という認識が確認されました。
●固定買取制度の浸透とともに、太陽光発電産業では、発電量の低下、設置場所の模
索など新たな課題も生じています。PVTEC も組合員の皆様と共に、課題の解決や更
なる産業の発展に寄与していきたいと考えています。
2013
Vol.63
(H.S 記)
目 次
新事務所のご案内
太陽光発電技術研究組合は、下記に移転いたしました。平成 25 年 3 月 21 日(木)より、
業務開始いたします。
〒 105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 2 階
電話:03-6403-4800 / FAX:03-6403-4801
ニュース
平成25年4月15日
2013 Vol.63 4月号
発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒105-0011 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館2階
Tel 03-6403-4800
印刷所:(株)
サンワ
古紙配合率100%再生紙を使用しています
4月号
羅針盤 太陽光発電をより身近に感じてもらう工夫の重要性
(独)
産業技術総合研究所 理事 矢部 彰
2
特集1 第25回 PVTEC技術交流会報告
太陽光発電技術研究組合
4
特集2 第3回太陽電池モジュール国際基準
認証信頼性フォーラム
10
出張報告 The 4th Thailand−Japan Joint Workshop on
Photovoltaics 及びLopburiソーラーファーム視察
太陽光発電技術研究組合
14
参加報告 NREL PV Module Reliability workshop &
Thin Film workshop
太陽光発電技術研究組合
18
コラム 産官学
バックシートのあるべき姿を求めて
リンテック株式会社 産業工材事業部門 工業材営業部 副部長
歌川 哲之
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高信頼性モジュールに向けたJETの研究活動
一財)
電気安全環境研究所 研究事業センター
グループマネージャー待遇
増田 幸治
21
委員会・分科会活動報告
編集後記
22
24
Fax 03-6403-4801
PVTEC 太陽光発電技術研究組合
Photovoltaic Power Generation Technology Research Association
事務局
事務局
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