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マレーシアのツイニング・プログラムと 国際教育市場の今後
マレーシアのツイニング・プログラムと 国際教育市場の今後 長岡技術科学大学留学生センターシンポジウム - 今後の国際連携教育等について 2004年3月19日 於:品川プリンスホテル 特定非営利活動法人 アジア科学教育経済発展機構 (Asia SEED) 浜野正啓 1 世界の国際高等教育市場 2025年までの需要予測 資料:Global Student Mobility 2025, IDP Education Australia, 2002 2 世界の国際高等教育需要:出身地別構成予測 資料:Global Student Mobility 2025, IDP Education Australia, 2002 3 国際教育市場の急拡大 世界の国際教育市場は1980年代半ば以降 飛躍的に拡大 2000年時点で約1.8百万人 2025年には現在の約4倍、7.2百万人と予測 うちアジア出身の学生が3分の2を占める アジア市場での2000年時点の日本のシェア: 約8%(世界全体では約3.6%) 2025年の日本の留学生数(シェア同じと仮定): 約40万人(うちアジア36万人) 4 大留学時代・大競争時代 大量移動する留学生が次の時代の中心勢力 次代の中心勢力となる留学生の受入シェアは その国の長期的繁栄と密接に関わる問題 (疑問・課題) 日本のシェア:世界で3.6%、アジアでさえ8% でよいのか (重要なのは人数ではなくシェア) シェア変わらずとも40万人の留学生受入シス テムが今のままでよいのか (留学生犯罪等) 5 マレーシア:大競争時代の先取り国 1980年代半ば以降の飛躍的拡大は、 シンガポール、香港、マレーシアの3カ国から 競合国間の本格的競争も1980年代から イギリス、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、フラン ス、日本、中国、カナダ、ニュージーランド 等 現在の国際教育のさまざまな戦略戦術はほ とんどこの3カ国から導入されている そういう状況の中で「マレーシア高等教育基 金事業(HELP)」は始まった 6 第1期マレーシア高等教育基金事業 (HELP1) 1990年から調査開始 – 当初からツイニング・プログラムの要請あった – しかし当時の日本側には受入の素地なし オフショアでの予備教育プログラム+留学のた めの奨学金で1993年スタート プログラムとしては成功、しかし高い日本留学 コストが問題 1996年ごろから受入実績のある大学を訪問し てツイニング・プログラム導入を提案 7 第2期マレーシア高等教育基金事業 (HELP2) 1997年7月第1回検討会議(実現まで12回) 1999年5月コンソーシアム協定締結 2000年4月にYPMとツイニング契約締結 – コンソーシアム・メンバー: 私立13大学(幹事校: 芝浦・拓殖)+Asia SEED(事務局) – アソシエイト・メンバー: 国立19大学 1999年4月ツイニング・プログラム開始 – 現地教育2年間+日本の大学3年間(2年次編入 2+3システム) 8 マレーシアのツイニング・プログラム 成果 – 日本留学にツイニング導入可能なことを立証 – 大学コンソーシアムによる運営可能を立証 – ツイニング第1期生は今春卒業、まずまずの成績 課題 – ODA(円借款)の世界での導入成功にすぎない – 大留学時代、大競争時代の日本のビジネス・モデ ルとしては未完成 – プログラムを如何に自立させるか Sustainability: HELP3の課題 9 大競争時代における主要競合国の 戦略 三本柱 1. 商社機能の充実 2. オフショア・プログラムの展開 3. 政府の産業政策としての後押し 10 商社機能の充実 オーストラリア:IDP、AEIなど イギリス:ブリティッシュ・カウンシルなど アメリカ:出遅れ→アジア市場40%割り込み 徹底した市場調査、進出コンサルティング One Stop Centreの世界展開 – 学生への情報提供、カウンセリング、英語教育、 入学手続、ビザ手続、入学金・授業料の納入 – 到着時の出迎え、宿舎の手配、モニタリング、両 親への定期報告 11 オフショア・プログラムの展開 自国で待っているのではなく出て行って高等 教育サービスを海外で提供 Transnational Education – Branch Campus – Franchise Program – Twinning Program, Credit Transfer Program – Joint Degree Program – Distance Education, Online Learning – Study Abroad 12 オフショア・プログラムの効果 アクセスの改善 コスト負担の軽減 心理的負担の軽減 現地でのプレゼンスの拡大 マーケットへの対応力の増大 優秀な学生の確保 オーストラリアの留学生の3分の1はオフショ ア・プログラムの在学生 13 政府の後押し From Aid to Trade (援助から貿易へ) 輸出産業振興策として政府が後押し – 情報提供と行政指導 – WTO等での教育サービス自由化交渉 – 国際教育サービスの品質保証体制 – Government ScholarshipやODAの戦略的活用 – オーストラリアでは国際教育が観光業と肩を並べ るサービス輸出産業となっている 14 日本留学の現状 アクセスの悪さ、One Stop Centreサービス は望むべくもない 現地での日本語学校(半年)→日本の日本語 学校(1∼1年半)→大学受験 授業料が高いわけではない しかし、総コスト、期間、チャネル、プロモー ション、 いずれの競争条件も劣る 留学生数は伸びても市場シェアが落ちていく 恐れ 15 日本留学の現状 しかし日本留学にニーズがないわけではない 近隣アジア諸国の需要は確実に増大 競争条件の悪さにもかかわらず10万人達成 日本留学フェアはいつも満員盛況 (問題) しかし、興味をもった学生が行くべき適切な現 地プログラムがない、チャネルがない →がっかり、あきらめる 16 打開策の方向 1. アジアの主要都市において、現地の教育機 関とのパートナーシップで日本留学に直結 したオフショア・プログラムを立ち上げる – – – – Foundation Program Franchise Program Twinning Program, Credit Transfer Program Joint Degree Program 2. それらを拠点としてOne Stop Centre的な サービスを提供、マーケット対応力を改善 3. 政府、産業界の後押し 17 東アジアの主要都市での オフショア・プログラム展開 18 副次的効果 こうした海外拠点ができると多角的な活用 が可能になる – 日本人学生のアジア体験の受け皿(マレーシア での予期せざる成功) – 大学のさまざまな国際交流活動の拠点 – 同窓会の維持管理 等 オフショアで一定の能力を示したものだけを 渡日させるシステムによって留学生犯罪問 題の多くを解決できる 19 オフショア・プログラム成功の条件 教育プログラムの魅力 – 日本語の壁を克服して日本プログラムの強みを生かす – オフショア・プログラムに日本の準学士号授与 事業としての採算 – マレーシアのツイニング・プログラム授業料の相場: 年間RM10,000 (約300,000円) – 現地で外国大学の学位が取れるプログラムはより高い – ブランチ・キャンパスは本国と同じ授業料 現地パートナー教育機関の選択 パートナー任せでない運営、コミットメント 20 実施上の注意点 しっかりした市場調査 マーケティングとブランド構築の戦略計画 現地パートナー教育機関との契約交渉 – 責任分担 – 収益配分、ロイヤリティ 現地の法規、税制等をふまえた財務計画 → 商社機能の必要性 21 実施方法上のヒント 総合的・長期的観点から採算をとる コンソーシアム方式によるリスク分散 専門でない業務のアウトソーシング 政府の支援、ODAや国費奨学金の戦略的活 用 進出企業、企業団体との連携 オール・ジャパン的な取り組みも検討の価値 あり 22 一つの提案 国際教育に積極的な大学(私立・国立を問わず)が 共同で出資するオープンな民間非営利事業体 その組織が、商社的機能を担い、時にはオフショア・ プログラムの事業主体ともなる 企業や国、一般市民からのファンド・レイジング機能 も果たす 競争下での国際教育ビジネスにあたる効率的な専 門家組織であること(公的機関で行うことは無理) ちなみにIDP Education Australiaはオーストラリア の39大学中38大学が出資する民間非営利事業体 23 オール・ジャパンで取り組むべき理由 東アジアにFTAを基礎にした地域経済統合 への力強い動き 1980年台半ばから東アジアの大都市に新し い中産階級(Neo Middle Class)の台頭 高等教育を受けたバイリンガル・トリリンガル のプロフェッショナル(今後多くは留学を経験) 彼らの間に東アジアに新しいアイデンティティ 似た価値観、センス、日本文化にも親近感 24 国際教育の国家戦略的意義 この新中産階級が新しい東アジアの中心勢力、アイ デンティティの主体 日本の長期的生き残りにとって、日本の国家と企業 と国民が、このアジアの新しい中産階級の人たちに 信頼され尊敬される友人になれるかどうかが、大き な戦略的意義をもつ アジア留学生市場で一定のシェアを確保し、日本の 学生をアジアに送り出すシステムを作ることは日本 の長期的繁栄のための条件 それが政府や産業界が支援すべき理由 日本の国際教育に携わる者の責務 25 Asia SEED 1984 年日本インドネシア科学技術フォーラム(JIF) として活動開始 アジアの高等教育協力を専門とする非営利団体 日本が持つ巨大な高等教育資源を増大するアジア の人材育成ニーズに生かすための触媒、水先案内 人、架け橋、世話人となることを使命とする 日本の 高等教育資源 Asia SEED アジアの人材 育成ニーズ Asia SEED 26