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東京都再生可能エネルギー戦略
東京都再生可能エネルギー戦略 ∼エネルギーで選びとる持続可能な未来∼ 東 京 都 東京都再生可能エネルギー戦略 = 目 次 = 1. 戦略策定に当たって ............................................................................................................1 1.1 東京都再生可能エネルギー戦略策定の背景と目的 .....................................................................1 1.2 本戦略の対象とする再生可能エネルギーの種類..........................................................................3 2. 国内外の再生可能エネルギーを巡る状況 ................................................................5 2.1 再生可能エネルギーの状況と目標 .......................................................................................................5 (1) 世界の状況と目標..........................................................................................................................................5 (2) 日本の状況と目標...................................................................................................................................... 10 2.2 再生可能エネルギー導入推進の制度 .............................................................................................. 12 (1) RPS 制度(固定枠制度) ..................................................................................................................... 12 (2) 固定価格買取制度...................................................................................................................................... 12 (3) 税制優遇 ......................................................................................................................................................... 13 3. 東京における再生可能エネルギーの状況と利用目標 .................................... 14 3.1 東京における再生可能エネルギーの導入・利用の状況 ....................................................... 14 3.2 東京における再生可能エネルギー利用推進の意義と必要性 ............................................. 17 (1) CO2 を大量に排出する大都市としての責務................................................................................ 17 (2) エネルギー政策と災害対策とのポリシーミックス .................................................................. 19 (3) 再生可能エネルギービジネスによる経済活性化 ....................................................................... 20 3.3 東京における目標設定の視点............................................................................................................. 21 (1) 危険な気候変動のレベルを回避......................................................................................................... 21 (2) 再生可能エネルギー拡大をめざす世界的な潮流を強化......................................................... 22 3.4 東京がめざす再生可能エネルギーの利用目標........................................................................... 23 (1) 東京の再生可能エネルギーの利用目標 .......................................................................................... 23 (2) 本格的な利用拡大に向けた各分野での導入・利用の考え方 ............................................... 25 4. 再生可能エネルギーの利用拡大に向けて ............................................................ 27 4.1 目標達成に向けた施策の基本的考え方 ......................................................................................... 27 (1) 方向性1 需要の創出(需要プル型の施策展開) .................................................................. 27 i (2) 方向性2 自然のエネルギーとしての特質を活かす.............................................................. 28 (3) 方向性3 個人と地域が選択するエネルギー利用 .................................................................. 29 4.2 利用拡大に向けたしくみづくり ........................................................................................................ 30 (1) 再生可能エネルギー選択を可能にするしくみづくり.............................................................. 30 (2) 需要拡大に向けた制度への取組......................................................................................................... 31 (3) 経済的手法による誘導策の検討......................................................................................................... 32 4.3 利用拡大に向けたプロジェクト ........................................................................................................ 33 (1) プロジェクトの考え方 ............................................................................................................................ 33 (2) プロジェクトの具体例 ............................................................................................................................ 33 4.4 戦略の推進.................................................................................................................................................... 38 ii 1.戦略策定に当たって 1.1 東京都再生可能エネルギー戦略策定の背景と目的 近年、大型ハリケーンや台風、熱波などの異常気象が世界的に多発し、それによる甚大 な被害が生じている。これらの異常気象が直ちに地球温暖化の影響であるとは断定できな いが、過去の長期的な気候変動に関する研究・分析、今後の予測に関する報告が世界各国 の研究者によって行われるようになり、地球温暖化の影響の大きさがますます明らかにな っている。 こうした地球温暖化問題の顕在化を背景に、温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素 の排出削減という観点から、化石燃料に代えて、再生可能エネルギーの利用を拡大するこ との重要性が一層明確になってきた。EUをはじめ世界の多くの国々で、地球温暖化対策 の柱の一つとして再生可能エネルギーの利用拡大が進んでいる。 だが、再生可能エネルギーが注目されるのは地球温暖化対策の観点だけからではない。 もともと、再生可能エネルギーは、1970 年代に起きた二度の石油危機を契機に、エネ ルギーセキュリティの観点から石油代替エネルギーの一つとして導入が開始されたもの だが、今日においては、有限な化石燃料資源と異なり、将来世代にも利用可能な「持続可 能な発展」を担うエネルギーとしても位置付けられるようになっている。 また、太陽エネルギー、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、化石燃料と比 較して、より普遍的に存在するエネルギーであり、分散型の施設配置が可能であることか ら、従来の大規模・集中型のエネルギー施設に比べ、災害やテロによるリスクが低いとい う点も注目されている。分散型のエネルギーとして、広域的なエネルギー供給系統が未整 備な地域においても利用可能であることから、開発途上国での導入も進められている。 こうした特徴、メリットが評価されることにより、近年、世界的に再生可能エネルギー は高い成長を記録しており、その結果、新たなビジネスチャンスとしても注目が高まって いる。世界の 2004 年の再生可能エネルギーへの投資は約 3.5 兆円に達しており1、更に 増加基調にある。 都は、2002(平成 14)年1月に策定した「東京都環境基本計画」において、再生可 能エネルギーの普及と拡大を地球温暖化対策の一つの柱として位置付けた。同年 11 月に は「都市と地球の温暖化阻止に関する基本方針」を定め、風力発電等の導入に加え、間伐 材や下水汚泥など、バイオマスエネルギー等の利用についても幅広く検討することにした。 同時に、都施設等への再生可能エネルギーの先駆的な導入を重視し、これまでに、都議 会議事堂屋上への太陽光パネルの設置(2002 年 10 月)や臨海部における風力発電の 設置(2003 年3月)を実現してきた。また、浄水場への大規模な太陽光発電設備の設 1 大規模水力発電は除く。RENEWABLES 2005 Global Status Report,REN21 1 置、下水処理場の下水熱や下水汚泥の利用など、実証実験やパイロット的な施策を展開し てきた。 都は、地球温暖化対策を促進するため、2005 年3月に、環境確保条例を改正し、地 球温暖化対策計画書制度の改正、家電製品等の省エネラベリングの制度化など、一連の施 策強化を行った。今後、地球温暖化対策を一層実効あるものとするためには、省エネルギ ー対策に加え、再生可能エネルギーの利用拡大をめざす取組を抜本的に強化していくこと が必要である。 また、地球温暖化対策に加え、震災の危険に直面する大都市として、防災対策を推進す るという観点からも、東京において分散型の再生可能エネルギーの利用を推進する必要が ある。さらに、再生可能エネルギーの利用拡大が進むことは、東京に新たな成長産業のビ ジネスチャンスが生まれるという意義もある。 これらの観点から、都は、これまでのパイロット的施策を越えて、再生可能エネルギー の本格的な利用拡大を実現するため、今回、「東京都再生可能エネルギー戦略」を策定す ることとした。 この戦略においては、東京における再生可能エネルギーの現時点における導入状況を全 体的に明らかにするとともに、利用拡大の意義を明確にし、中長期的視点に立った利用目 標を提起した。また、利用拡大に向けた施策の基本的方向を定め、今後、検討を進める利 用拡大のしくみとプロジェクトを示した。 都は、今後、この戦略を出発点として、都民、NPO、事業者などとの連携を深めつつ、 広範な議論と行動を巻き起こし、東京における本格的な再生可能エネルギーの利用拡大を 実現していく。 2 1.2 本戦略の対象とする再生可能エネルギーの種類 再生可能エネルギーには様々な種類があり、また、どのような範囲のエネルギーを再 生可能エネルギーとして定義するかについては、国内外で策定されている多くの計画や 白書などで異なっている(日本では、 「新エネルギー」2という名称が使われることが多 いが、世界的には、この「新エネルギー」という名称を使っている例はあまり見られず、 。 水力や地熱も含めた「再生可能エネルギー」という名称が使われている3。) 本戦略では、表 1-1 のとおり、将来の技術開発動向等をも勘案して、幅広く再生可 能エネルギーをとらえた。また、太陽エネルギーのうち、太陽の光をそのまま取り入れ て照明としたり、太陽熱を蓄熱して暖房としたりするなど、太陽エネルギーを変換せず 直接使うパッシブソーラーについても、本戦略の対象に位置付けた。 2 3 「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」において、 「石油代替エネルギーを製造、発生、利用す ることなどのうち、経済性の面での制約から普及が進展しておらず、かつ、石油代替エネルギーの促進に 特に寄与するもの」と定義されている。水力や地熱は含まない。 「需要サイドの新エネルギー」として、ク リーンエネルギー自動車、天然ガスコージェネレーション及び燃料電池がある。これらのうち再生可能エ ネルギーの利用が考えられるものについては、本戦略で検討していく。 新エネルギーガイドブック,NEDO 3 表 1-1 法令等 種 類 太陽光発電 太陽熱発電 太陽熱利用 8) パッシブソーラー9) バイオマス発電 バイオマス熱利用 バイオマス燃料 10) 風力発電 水力発電 地熱 雪氷 温度差エネルギー 海洋温度差発電 波力発電 潮汐発電 潮流発電 廃棄物発電 廃棄物熱利用 廃棄物燃料製造 再生可能エネルギーの分類と対象範囲の比較 1) 国内 本戦略の U.S. UK RO7) 新エネ法2) EU 白書3) IEA WEO5) RPS 法6) DOE/EIA4) 検討対象 ○ ○ ○ ○ ○* ○* ○* ○ ○ ○16) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○18)* ○18)* ○18)* ○ − ○ − ○ ○ ○ ○ − − ○ ○ − − − − ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○11) ○ − − ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ − ○ ○ ○ ○ ○12) ○ − − ○ ○ ○ − ○ ○ ○ ○ ○ ○ − ○ ○ ○ ○ ○13) ○ − − − ○ ○ − ○ ○ ○ ○ − N/A N/A ○ N/A N/A ○ ○14) ○17) N/A − − − − − ○18) N/A N/A ○ − N/A N/A ○ N/A N/A ○ ○15) ○ N/A − − ○ ○ ○ ○ N/A N/A (注意) 1) 二重線より右側の国内 RPS 法と UK RO は、電気のみを対象としており、左側と分けて整理した。 N/A は適用外のもの。 2) 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法 3) EU 再生可能エネルギー白書(Energy For The Future: Renewable Sources Of Energy, COM(97)599) 4) 米国エネルギー省エネルギー情報局(Department of Energy, Energy Information Administration) 5) 国際エネルギー機関(International Energy Agency)の統計資料(World Energy Outlook) 6) 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS:Renewable Portfolio Standard の略) 7) 英国の再生可能エネルギー利用の義務付け措置(RO : Renewable Obligation の略) 8) 給湯や冷暖房等に機械的な方法を用いて積極的に太陽熱のエネルギーを利用するもの。 9) 昼光を導入する庇を付けたり、効果的な蓄熱材を用いたりするなど、建築的な方法や工夫によって太 陽エネルギーを利用するシステム 10) 総合資源エネルギー調査会需給部会「2030 年のエネルギー需給展望」の新エネルギー導入見通しに おいては、バイオマス熱利用に含まれるが、ここではその重要性から熱利用と切り離して整理した。 11) 揚水発電を含む、また、10MW 以下の水力発電は小水力発電として区別している。 12) 発電部門の中に Hydro Electricity and Renewable Energy という項目があり、他の再生可能エネルギ ーと水力発電を分けて整理している。 13) 水力発電は他の再生可能エネルギーと区別している。 14) 1,000kW 以下の水路式のみを対象としている。 15) 20MW 以上の発電は 2002 年 4 月以降に受注したもののみが対象となっている。 16) 地中熱を含む。 17) 地熱資源である熱水を著しく減衰させない発電方法であること。 18) 廃棄物エネルギーのうちバイオマス由来分のみ対象。廃棄物中のプラスチックなど原油等から製造さ れる製品を熱源とするエネルギーについては対象とはならない。 * バイオマス及び廃棄物エネルギーの利用推進に当たっては、廃棄物等の発生抑制・ 再使用・再生利用の推進が前提となる。 4 2.国内外の再生可能エネルギーを巡る状況 2.1 再生可能エネルギーの状況と目標 (1)世界の状況と目標 1997 年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、京都議定書が採 択され、先進国においては CO2削減の数値目標が決められた。これを契機として、多く の国や地域で再生可能エネルギーの導入目標の策定が始まり、EU を中心に、現在 40 ヶ 国以上で数値目標が策定されている。また、地方政府レベルでも、再生可能エネルギーの 導入目標が設定されるようになってきている。 表 2-1 各国の再生可能エネルギー等に関する導入実績・目標・見通し 1) 国・地域 エネルギー に占める 割合 電力量に占 める再生可 能エネルギ ー等の割合 7) 日本 2) 目標・見通し 実績 2010 年 4.6%(’01) EU3) 6%(’01) 中国 3%(’03)5) 2020 年 2030 年 − 10% 12% 20%4) − − 15%6) − 7.0% EU 14.2%(’04) 21% − − ドイツ 9.9%(’04) 12.5% 20% − イギリス 3.7%(’04) 10% 20% − フランス 13.5%(’04) 21% − − 5%(’03) 10% − − 10%(’02) 20% 33% − 中国 カリフォルニア州 (資料等) 1) 導入目標の考え方は、国により異なる。また、各再生可能エネルギー種の定義が異なるため単純に 比較はできない。 2) 総合資源エネルギー調査会需給部会「2030 年のエネルギー需給展望」より引用。一次エネルギー 供給に占める再生可能エネルギーの割合で、2010 年の値は追加対策ケース、2030 年の値は新エネ 進展ケース。 3) EU の目標値は、エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合 4) EU における 2020 年の目標は、欧州議会で採択された報告による。 5) 鎌田、中国における再生可能エネルギーに関する立法動向 (http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/ 225/022509.pdf) 6) 中華人民共和国駐日本国大使館(http://www.china-embassy.or.jp/jpn/xwdt/t220165.htm) 7) NEDO 資料、EurObserv’ER 等より作成。 5 世界のエネルギー全体に占める再生可能エネルギーの割合はまだまだ低いものの、その 導入量は、速いテンポで増加しつつある。風力発電は 90 年代の後半から、急速に導入か 進んでおり、ドイツやスペイン、デンマークをはじめとするEU、アメリカ、インドなど で増加が著しく、2005 年末に設置量は、59,322MW に達した。太陽光発電の 2004 年末現在における世界全体の導入量は、2,596MW であり、風力発電よりは小さいもの の、近年、ドイツやアメリカでの急速な拡大が始まっている。 (MW) 70,000 59,322 60,000 風力発電 47,620 50,000 39,431 40,000 31,100 30,000 23,900 20,000 10,000 0 4,800 17,400 13,600 10,200 6,100 7,600 199 245 314 396 520 太陽光発電 2,596 729 989 1,334 1,829 (年) 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 図 2-1 世界の風力発電、太陽光発電の累積導入量 (資料)Global Wind Energy Council 資料より作成 Trends in Photovoltaic Applications/IEA/PVPS 資料より作成 IEA PVPS 参加国:オーストラリア、オーストリア、カナダ、スイス、デンマーク、ドイツ、スペイ ン、フィンランド、フランス、イギリス、イスラエル、イタリア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、 ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、アメリカ 6 ①EUの状況と目標 再生可能エネルギーの導入については、EUが世界に先駆けて取り組んでいる。 1997 年の EU の再生可能エネルギー白書4においては、再生可能エネルギー導入を、 CO2の削減とともに、EU地域内のエネルギー供給の拡大によるエネルギーセキュリ ティの向上、地域経済に重要な役割を果たしている中小ビジネスの活性化、という観点 からも意義付け、EUのエネルギー消費全体に占める再生可能エネルギーの割合を 2010 年までに 12%に増加させるという目標を設定した。 また、2005 年には、 2020 年までにエネルギー消費の 20%に増加させるという報告を欧州議会が採択している。 電力に占める再生可能エネルギーの割合については、2001 年の EU 指令5で、2010 年までに EU における電力の 21%6を再生可能エネルギーで賄うという目標が示され た。この EU 指令を受け、EU 各国がそれぞれ個別の目標を定めており、2010 年まで にオーストリアが 78%、スウェーデンが 60%というように、非常に高い目標を設定 している国もある。この両国は、先進的取組を進め、既に 2005 年末で 50%を超え る程の実績を持っている。 この他にも、 イギリスが 2010 年に 10%、2020 年に 20%、 ドイツが、2010 年に 12.5%、2020 年に 20%という目標を掲げている。導入実績 は、イギリスが 2004 年で 3.7%であるのに対し、ドイツは 2004 年で 9.9%と高い 実績を上げている。 また、2003 年には EU 指令7により輸送用バイオ燃料比を 2010 年に 5.75%に引 き上げる目標が決められている。 4 5 6 7 Energy For The Future: Renewable Sources Of Energy White Paper for a Community Strategy and Action Plan, COM(97)599 final (26/11/1997) 域内電力市場における再生可能エネルギー源より生産された電力の促進に係る EU 指令(2001/77/EC)。 なお、EU指令は、加盟国を拘束するが、適用に当たって国内での立法措置を必要とする。 EU 加盟国 15 ヶ国の目標値は 22.1%であったが、加盟国が 25 ヶ国に拡大したことに伴い、21%となった。 輸送用バイオ燃料の促進に係る EU 指令(2003/30/EC) 7 ②ドイツの動き ドイツで最も成長が著しいのは風力発電である。2005年末時点で、発電容量は約 18,428MWで、世界第1位である。2005年は前年比 10%の伸びである。風力発電 の出力も、1基 4∼5MWと大型化している。 (MW) ( MW) 20,000 20,000 18,428 18,000 導入量計 18,000 59,322MW 16,000 16,000 14,000 12,000 12,000 10,027 10,000 9,149 スペイン 10,000 8,000 8,000 6,000 6,000 4,430 3,122 4,000 1,717 1,353 1,260 1,231 1,219 2,000 アメリカ 4,000 日本 2,000 オランダ 日本 中国 イギリス イタリア デンマーク インド アメリカ スペイン ドイツ 0 ドイツ 14,000 図 2-2 風力発電の国別累積導入量(2005 年) 0 (年) 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 図 2-3 風力発電の国別累積導入量の推移 (資料)風力発電導入ガイドブック,NEDO,2005.5、Global Wind Energy Council 資料より作成 ドイツでの太陽光発電は、送配電事業者に再生可能エネルギーによる電力の購入を義 務付けた固定価格買取制度により飛躍的に増加しており、2004 年の単年の太陽光発 電設置量は、ついに日本を抜いて世界のトップになっている。太陽熱利用も 2003 年 は 2002 年の倍に拡大している。 ドイツはバイオマスの導入にも積極的である。バイオマス発電、バイオマス熱利用、 輸送用バイオ燃料のいずれも、2003 年は前年比2倍以上の伸びを示している。セン トラルヒ―ティングに木質バイオマスを用いる家庭や地域熱供給での利用が増えてい るほか、自動車におけるバイオ燃料の利用も広がっている。2003 年のバイオディー ゼル燃料の製造量は 85 万トンあり、販売するスタンドもドイツ全体で 1700 箇所以 上もある。燃料を使用する自動車サイドでも、大半の市販車でバイオディーゼル燃料仕 様車が用意されている。バイオディーゼル燃料は鉱油税が免除され、ディーゼル燃料よ り安い燃料となっている。 8 ③アメリカの動き 世界最大のエネルギー消費国であるアメリカは、国内経済に悪影響をもたらすとして、 京都議定書への調印を拒否しているが、2006 年1月の大統領の年頭教書演説では、 安全保障の観点から中東への石油依存度を低める(2025 年までに中東からの石油輸 入量を 75%削減)ため、石油に代わるエネルギーの生産、開発を進める方針を打ち出 した。この目標の達成に向けた大きな施策の柱が、自動車用バイオ燃料の国内開発であ る。アメリカはブラジルと並ぶ 2 大エタノール生産国であり、エタノール 85%とガソ リン 15%を混合したE85 とエタノール 95%混合のE95 が代替燃料として開発が進 められている。この混合燃料が利用できる仕様の自動車(FFV)の開発も進められ、 2005 年時点でアメリカでは約 400 万台走行している。 地方政府のレベルにおいては、連邦政府と異なり、温室効果ガス排出削減に向けた施 策が積極的に展開されており、再生可能エネルギーの導入についても様々な取組が進ん でいる。その代表例が電気事業者に一定比率の再生可能エネルギーによる電力供給を義 務付ける RPS 制度であり、20 以上の州で導入されている。この制度は、連邦政府の プロダクション・タックス・クレジット(PTC)という減税措置の効果と相まって、 特に風力発電の導入に貢献している。 合計:9,149 MW 図 2-4 アメリカ各州における風力発電の累積導入量(2005 年末現在) (出典)The American Wind Energy Association(http://www.awea.org/projects/index.html) 9 (2)日本の状況と目標 日本における一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合は 2003 年で約 5%である。導入目標については、2010 年において一次エネルギー総供給量の約7% とされている 。2030 年の導入見通しとして、約 10%というケースも示されている。 また、電力に占める再生可能エネルギーの割合に関しては、2002 年に「電気事業 者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」 (RPS 法)が公布され、電気事業 者に 2010 年度に販売電力量の 1.35%を新エネルギーにするという義務付けがなさ れている。 再生可能エネルギーの導入促進策として、これまで日本では、技術開発支援や設備の 初期コストへの導入補助を中心とした支援策が進められてきた。1994 年度に始まっ た住宅用の太陽光発電補助制度は、住宅における太陽光発電設備の普及に成果を上げた が、2005 年度で終了となった。また、電気事業者は 1992 年から、自主的に余剰電 力購入メニューを設け、余剰電力を販売電力料金単価等で購入しており、特に太陽光発 電の普及に寄与している。このような支援により、太陽光発電に関しては、日本は、こ れまで、累積導入量で世界のトップであったが、前述したように年間設置量では、2004 年にドイツに抜かれている。 (MW) 1,200 1,200( MW) 1,132 導入量計 2,596MW 1,000 1,000 日本 794 800 800 600 600 ドイツ 365 400 400 200 52 37 31 26 23 19 200 67 アメリカ その他 オーストリア スイス フランス イタリア スペイン オランダ オーストラリア アメリカ ドイツ 日本 0 49 0 (年) 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 図 2-5 太陽光発電の国別累積導入量(2004 年) 図 2-6 太陽光発電の国別累積導入量の推移 (資料)Trends in Photovoltaic Applications/IEA/PVPS 資料より作成 10 風力発電は、近年伸びを示してきており、国内には風力発電の適地が少なからずある ことから、いくつもの計画がたてられた。しかし、風力発電は風の強さによって出力が 変動するため送電に悪影響を及ぼすとして、風力発電の受け入れ枠に上限が設けられた ことなどから、今後、風力発電の伸びが鈍る可能性がある。 太陽熱利用の設備設置件数は、1983 年は 50 万件であったが、1980 年代末まで に急激に減少した。1990 年代半ばに一旦増えたものの、その後は再び減少し、2004 年は約5万件になっている。他の再生可能エネルギーが伸びを示す中で、日本において は、太陽熱利用は停滞している。 60 (万件) 50 40 30 20 10 0 1983 1988 図 2-7 1993 1998 日本における太陽熱利用の設置件数の推移 (資料)社団法人ソーラーシステム振興協会資料より作成 11 2003 (年) 2.2 再生可能エネルギー導入推進の制度 地球温暖化対策、エネルギーセキュリティなどの観点から再生可能エネルギーの技術開 発は急速に進みつつあり、供給コストも低下しつつある。しかし、現状では、未だ従来の エネルギーに比べ相対的に市場競争力に劣る場合が多い。このため、各国では、導入を推 進するため、経済的インセンティブの導入など様々な施策が実施されている。以下で、再 生可能エネルギー支援策として効果を上げている欧米を中心とする事例を紹介する。 (1)RPS 制度(固定枠制度) RPS(Renewable Portfolio Standard)制度とは、電気事業者等に一定比率の再生 可能エネルギーの供給を義務付ける制度である。 RPS 制度又はそれに準ずる制度を導入している主要な国や地域としては、イギリス、 イタリア、スウェーデン、アメリカ(テキサス州、カリフォルニア州ほか)、日本などが あるが、国や地域により、対象とするエネルギーの種類、目標年次及び義務量等が大きく 異なっている。 表 2-2 日本 販売電力量のうち 各国の RPS 制度における割当義務量 イギリス 販売電力量のうち 割当 2010 年:1.35% 2002 年度:3%∼ 義務量 2010∼26 年度: 10.4% イタリア スウェーデン 前 年 の 発 電 / 輸 入 電力消費量のうち 電力量のうち オーストラリア 予測電力供給量の うち 2002 年:2%∼ 2003 年:7.4%∼ 2010 年:2% 2006 年:3.05% 2010 年:16.9% ( 2010 年 ま で 9,500GWh 増加) (資料)資源エネルギー庁資料(http://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/rps_move/kaigai.html)より作成 (2)固定価格買取制度 固定価格買取制度は、送配電事業者等に、再生可能エネルギーによる電力を一定価格で 購入することを義務付ける制度である。従来のエネルギーと比較してコストが高い再生可 能エネルギーによる発電コストと市場価格との差を長期契約により補助するもので、コス トは最終的にエネルギーの消費者が負担するようになっている。 この制度を導入している主要な国としては、ドイツ、デンマーク、スペインなどがある。 特にドイツでは、対象となる再生可能エネルギーの種別や設置形態ごとに細かな価格設定 を行っている。 12 欧州委員会では、2005 年 12 月に、EU 加盟国における再生可能エネルギーによる電 力の支援策とその効果を比較した報告書8を発表した。それによると、ドイツ型の固定価 格買取制度は、RPS 制度と比べて、特に風力発電のケースで、効果的であるとしている。 これは、固定価格買取制度が長期間一定の買い上げを保証することから、投資の安定性が 高くなるためであると分析されている。また、この制度を整備している国々は、RPS 制 度をとる国々と比較し、再生可能エネルギー導入に向けた促進力が 4 倍にもなるとして いる。 (3)税制優遇 ①プロダクション・タックス・クレジット(PTC) アメリカでは、連邦政府が指定した再生可能エネルギーによって発電を行った事業者に 対するプロダクション・タックス・クレジット(PTC)と呼ばれる税優遇政策がある。 再生可能エネルギー発電施設の運用開始から10 年間にわたって、発電量に対して 1.9 セント/kWh 等の税額控除がなされる(2005 年現在) 。現在 20 以上の州が RPS 制度 を導入しており、この制度で掲げられる高い目標値と PTC の効果により、風力発電を中 心とした市場競争力を持つ再生可能エネルギーが大規模に導入されている。 ②EU における税制優遇 EU 諸国では、再生可能エネルギーに対する税制優遇措置として、再生可能エネルギー による電力に対する減税やバイオ燃料に対する減税が実施されている。 また、多くの国で化石燃料に対する環境税や炭素税が実施されており、これも全般的に 再生可能エネルギーに対する供給や需要を刺激するものとして機能している。 8 The support of electricity from renewable energy sources、欧州委員会、2005.12 13 3.東京における再生可能エネルギーの状況と利用目標 3.1 東京における再生可能エネルギーの導入・利用9の状況 東京における再生可能エネルギーの導入状況は、約 5,600TJ(原油換算で約 14.4 万 kL)/年である(2005 年度調査) 。 東京の 2003 年度におけるエネルギー消費量は約 83 万 TJ であるから、東京の再 生可能エネルギー導入量は、東京のエネルギー消費量の 0.7%に相当する。 なお、東京電力から都内に供給される電力量のうち水力発電によるものを試算し、こ れを都内で導入された再生可能エネルギー量と合わせると、利用量は、都内エネルギー 消費量の約 2.7%に相当する。 表 3-1 東京における再生可能エネルギーの導入状況(消費ベース) エネルギー量 設備容量 種 別 原油換算 熱量換算 (kW) (万 kL) (TJ) 太陽光発電 1) 太陽熱利用 2) バイオマス発電 3) バイオマス熱利用 風力発電 廃棄物発電 7) 廃棄物熱利用 水力発電 地熱 9) 10) 計 8) 0.3 102 − 2.0 783 0.3 133 0.0 0 4,208 0.1 29 − 0.6 223 306,410 8.0 3,112 1.1 435 46,513 1.9 733 3,300 0.1 50 14.4 5,600 5,420 4) 5) 温度差エネルギー 26,878 6) − − − (資料等)1) NEF、NEDO による助成金実績、東京都環境局による区市町村アンケートより作成 2) 全国消費実態調査(平成 16 年度)、ソーラーシステム振興協会資料、NEF による助成金実績より作成 3)(社)日本下水道協会「下水道統計」 、東京都環境局資料 4) 各種資料より作成。都内には 0.3TJ 導入されている。 5) 東京電力資料、江東区資料、東京都環境局による区市町村アンケートより作成 6) 熱供給事業便覧(平成 17 年度版)より作成 7) エネルギー量は清掃工場でのごみ発電量のうちバイオマス由来分を推計 環境省一般廃棄物処理実態調査(平成 15 年度実績)、東京二十三区清掃一部事務組合資料より作成 8) 有償で熱供給を行っているもののみを対象とし、エネルギー量はバイオマス由来分を推計 東京二十三区清掃一部事務組合資料より作成 9) 東京電力資料、NEDO「マイクロ水力発電導入ガイドブック」 、東京都環境局による区市町村アンケー トより作成 10) 東京電力資料 9 本戦略では、「導入」とはその場所でエネルギーを生産、発生させることをいい、「利用」と区別している。 14 水力発電 13.1% 廃棄物 熱利用 7.8% 地熱 0.9% 太陽光発電 バイオマス 1.8% 太陽熱利用 発電 14.0% 2.4% バイオマス 熱利用 0.0% 風力発電 0.5% 廃棄物発電 55.6% (合計 図 3-1 温度差 エネルギー 4.0% 約 5,600TJ) 東京における再生可能エネルギーの導入状況(2005 年度調査) 東京における再生可能エネルギー導入量を、エネルギー種別ごとにみると、最も大きい ものは廃棄物発電であり、全体の 56%を占める。廃棄物熱利用と合わせると全再生可能 エネルギー導入量の 63%に達する。 太陽熱利用と太陽光発電を合わせた太陽エネルギーの導入量は、廃棄物に次ぐ大きさと なる。太陽熱利用の導入量は減少傾向にあるが、太陽光発電は、住宅への導入が伸びると ともに、都の浄水場への大規模太陽光発電の導入プロジェクトの効果もあって増加傾向に ある。 25,000 (kW ) 22,028 20,000 16,971 15,000 12,590 10,000 8,984 5,000 910 1,902 2,864 6,777 4,622 0 (年) ∼1996 1997 1998 図 3-2 1999 2000 2001 2002 2003 2004 都内の住宅用太陽光発電導入量 (資料)NEF による住宅用太陽光発電助成金実績より作成 15 太陽エネルギーは、建築物の建設と同時に導入すれば、初期設備費用が軽減されるこ と、また、消費地に近い場所に設置することで災害時にも利用できることから、今後も、 市街地を含む東京で導入が見込める。 また、パッシブソーラーは、通常は太陽エネルギーの導入量には算入されないが、今 後は、建物建築時におけるパッシブソーラーの利用推進策を確立し、これに合わせて、 パッシブソーラーによるエネルギー量の削減も太陽エネルギーの導入・利用量として把 握していく。 廃棄物、太陽エネルギーに次いで多いのは水力発電であり、東京には、多摩川第一・第 三発電所や白丸発電所などがある。しかし、新たな導入地確保の可能性を考えると、今後 の大幅な拡大は困難と考えられる。 森ヶ崎水再生センターにおける下水汚泥の消化ガス発電などのバイオマスエネルギー は、現在では 2.4%にしかならないが、自動車燃料や業務・産業部門でのボイラー燃料な どとして今後の導入・活用の可能性がある。 風力発電については、都のパイロットプロジェクトとして、臨海部に 850kWの発電 施設を2基設置し、その後、江東区でも 1,950kWの発電施設を1基設置している。し かし、東京の風況では、伊豆諸島や洋上以外では、大規模風力発電の今後の設置適地はあ まり見当たらない。一方、小型の風力発電については、東京の市街地の風況ではその性能 を生かすことが困難であり、市街地で設置する場合の騒音や安全性、メンテナンスなどの 課題もあり、総合的に設置の是非を検討する必要がある。 16 3.2 (1) 東京における再生可能エネルギー利用推進の意義と必要性 CO2 を大量に排出する大都市としての責務 東京のCO2排出量は、年間約 7,130 万トンで、日本全国の約 5.7%である(2003 年度)。世界の各国と比較すると、これだけでもスウェーデンやニュージーランド一 国分の排出量に匹敵する大きさである。 その他 (廃棄物) 部門 1.2% 産業部門 9.1% 運輸部門 29.7% 家庭部門 25.0% 業務部門 35.0% (合計 7,130 万トン) 図 3-3 2003 年度における CO2 排出内訳 (出典)都における温室効果ガス排出量総合調査(2003 年度実績),東京都 アメリカ 日本 ドイツ カナダ イギリス イタリア フランス ウクライナ オーストラリア スペイン オランダ ベルギー チェコ ルーマニア ギリシア オーストリア フィンランド ハンガリー ポルトガル デンマーク ニュージーランド 東京都は ここに位置する ベラルーシ スウェーデン 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 6,800 1,800 7,000 2,000 温室効果ガス排出量 [Mt-CO2eq] 図 3-4 温室効果ガス排出量(2003 年) (注)単位の CO2eq とは、 “CO2 equivalent”の略であり、地球温暖化係数(GWP)を用いて CO2 相当量に 換算した値。Mt-CO2eq は百万 t の二酸化炭素相当量となる。 (出典)UNFCCC(国連気候変動枠組条約)Greenhouse Gas Inventory Database 17 東京都の人口は日本の約 10%であることを考えるとCO2排出量の 5.7%という シェアは、一見少なく見える。これは、東京の都市活動を支える工業製品や農水産 物などの供給を都外から大量に受けているが、これらの生産等に伴って都外で排出 されるCO2が、東京の排出量としてはカウントされていないからである。 したがって、東京の都市活動に起因するCO2の総量は更に大きく、このように膨 大なCO2を発生させている東京にはその削減に真剣に取り組む責務がある。 東京都 CO2 その他の 温室効果ガス 間接排出 CO2 その他の 温室効果ガス エネルギー消費 廃棄物 都外からの供給 (農林水産物、 工業製品、エネルギー等) 直接排出 エネルギー消費 (農林水産物、工業製品等の生産、発電等) 都外の地域 図 3-5 廃棄物 都における温室効果ガスの直接排出と間接排出を示すイメージ しかし、CO2 の大幅な排出削減を省エネルギーという方法だけによって達成しよう とすれば、エネルギーの総消費量を大量に減らす必要があり、エネルギー利用の効率 化を進めたとしても、人々の生活や企業の活動にも大きな変化をもたらさざるをえな い。これに対して、化石燃料を再生可能エネルギーに転換していけば、エネルギー自 体は使用しながらも、CO2 の削減を進めることができる。このため、エネルギー使用 の抑制、エネルギー利用効率の向上に加え、再生可能エネルギーへの転換を進めるこ とは、来るべき大幅な CO2 削減社会にソフトランディングしていくために必要不可 欠である。 18 (2)エネルギー政策と災害対策とのポリシーミックス 都内のエネルギー消費量は、2003 年度で 83 万TJとなっているが、そのほと んどが東京都の外での生産・供給に頼っている。電力の自給率は 2003 年度で 11% (推計)であり、都市ガスや燃料油もそのほとんどが都外から供給されているため、 都内でのエネルギー生産は、ごく低いレベルにとどまっている。 東京のような大都市が、使用するエネルギーのすべてを区域内で供給することはも ともと困難であるが、エネルギー供給のほとんどを他の地域に依存しているというこ とは、災害発生等に伴うエネルギー供給停止などのリスクを負っていることを意味す る。特に今日の東京は、巨大地震の発生に備える震災対策を常に念頭に置いておかね ばならない都市である。台風による水害なども含め、様々な災害等の発生にも備えて、 より安全で、万一損害を受けた場合でも早期回復が見込める一定のエネルギーを確保 することが望ましい。 太陽光発電や太陽熱利用などの再生可能エネルギーは、広域的な系統とは独立した エネルギー源としても設置が可能であり、災害時などの非常用電源としても有効であ る。例えば、非常時において地域の支援・活動拠点となる公園や学校などの公共施設 に、太陽光発電や太陽熱利用システムを設置すれば、既存の非常用発電装置等を補完 するエネルギー源となり、都市の安全性を高めることになる。 このように、ポリシーミックスの視点に立ち、防災対策を補完するためにも、再生 可能エネルギー導入を行うことが重要である。 19 (3)再生可能エネルギービジネスによる経済活性化 世界の再生可能エネルギー分野への投資額は、2004 年には約 3.5 兆円に達して おり10、再生可能エネルギー市場は、巨額の投資が動く急成長市場となっている。 日本においても、太陽光発電は 2000 年に 330MWであったものが、2004 年に は 1,132MWに達しており、政府の積極的な補助施策や余剰電力購入メニューなど の支援もあり、大きな市場が形成されてきた。 (MW) 1,400 1,200 太陽光発電 1,000 800 600 風力発電 400 200 0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 図 3-6 (年) 日本における風力発電と太陽光発電の累積導入量推移 (資料)風力発電導入ガイドブック,NEDO,2005.5、Global Wind Energy Council 資料、 Trends in Photovoltaic Applications/IEA/PVPS 資料より作成 これまでに東京都が取り組んだディーゼル車排出ガス対策や屋上緑化の推進、省エ ネ等の様々な分野で、技術革新や市場拡大が図られ、新しい環境ビジネスが生まれて きた。同様に、今後、東京での再生可能エネルギーの利用・導入を推進することによ り、東京の地域経済の活性化に寄与することができる。同時に、東京の経済力・市場 の大きさを考えれば、日本全体の再生可能エネルギー市場を牽引することにもなる。 また、グリーン電力証書ビジネスや市民出資による市民風車の建設のように、企業 の活動だけでなく、NPOや市民の参画によって、新たなビジネスモデルが誕生して おり、他の産業分野への波及も大きいと考えられる。 10 大規模水力発電は除く。RENEWABLES 2005 Global Status Report,REN21 20 3.3 東京における目標設定の視点 (1)危険な気候変動のレベルを回避 1992 年に採択された気候変動枠組条約は、 「気候系に対して危険な人為的干渉を 及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるこ と」を究極的な目的としている。 EUにおいては、深刻な温暖化の影響を回避するためには気温上昇を2度以下に抑 えることが必要であり、そのためには CO2 濃度について 550ppm を大幅に下回る ようにすることが必要だという認識に立って、EU 内の先進国においては、CO2 を 1990 年に比べて、2020 年までに 15∼30%削減、2050 年までに 60∼80%削 減という目標を設定している11。 将来の目標設定の方法としては、現状から考えられる方法の延長で将来を検討する というフォアキャスティングの手法と、目標とすべき社会を想定し、将来から現在の 対策を考えるというバックキャスティングの手法がある。この考えを地球温暖化に当 てはめてみると、EU の掲げるCO2削減目標はバックキャスティングの考え方に基 づいている。 バックキャスティングによって設定された目標は、現状からの積み上げではないの で、その水準は高く、達成は困難に見える。しかし、異常気象をはじめ、地球環境の 危機的状況の端緒が見え始めた現在、フォアキャスティングの方法による目標設定で は、結果として問題の解決に必要な対策の実施を遅延させてしまうことなりかねない。 地球温暖化の危機は必ず回避されなければならず、そのためには、達成が困難に見 える目標値であっても、バックキャスティングの考え方に基づいて設定されなければ ならない。 東京の 2020 年における再生可能エネルギーの利用目標を提起するに当たっては、 こうした考え方を踏まえることとした。 11 EU 連合理事会 プレスリリース 2005.3.10 2647th Council Meeting 6693/05(Presse 40) 21 (2)再生可能エネルギー拡大をめざす世界的な潮流を強化 この戦略で設定する目標は、地球温暖化の危険を回避するために、東京が進まなけ ればならない長期的方向性を示すものである。このため、都が提起する目標は、同じ く地球温暖化の危機の回避のために、EU 各国やカリフォルニア州など先進的な国や 地域が掲げる高い目標と足並みをそろえることになり、ともに再生可能エネルギーの 飛躍的な拡大をめざす世界的な施策の潮流を引き起こし、強化していく役割を果たす ものである。 都は、こうした高い目標の提起によって、地球温暖化問題の大きさ、問題解決まで の課題を明確にし、都民や事業者の間での議論を喚起することにより、目標達成に向 けた都民・事業者などの取組を拡大していく。 また、高い長期的目標を掲げ、都が今後とも再生可能エネルギーの普及拡大に継続 して取り組んでいくことを内外に示すことは、再生可能エネルギー関連産業における 長期的な事業展開の意欲を高め、新規参入を増加させる効果がある。さらに、再生可 能エネルギー関連産業のビジネスとしての不確実性やリスクを減少させ、この分野に 対する安定的な投資が行われやすくすることによって、再生可能エネルギーの一層の 拡大を図っていく。 22 3.4 東京がめざす再生可能エネルギーの利用目標 (1)東京の再生可能エネルギーの利用目標 先に述べた視点から、東京の利用目標を次のように提起する。 2020 年までに東京のエネルギー消費に占める 再生可能エネルギーの割合を 20%程度に高めることをめざす 本戦略での利用目標の提起を契機に、広範な議論を進め、平成 19 年度に改定を予定 している東京都環境基本計画の中で、エネルギー消費量及び二酸化炭素排出量の中長期 的な削減目標等の検討と合わせて、具体的な再生可能エネルギーの利用目標値を決定し ていく。 (エネルギー総量の削減) 2020 年に 20%程度という目標は、現在のエネルギー消費の大きさ、消費のあり 方をそのまま前提として、単にその一定割合を再生可能エネルギーに置き換えること ではない。 まず現在のエネルギー消費そのものの必要性や効率性を徹底的に見直す省エネル ギー化を進め、同時にパッシブエネルギーを活用するなどエネルギー消費の削減努力 を行わなければならない。その上で、本当にエネルギーの消費が必要な部分について、 再生可能エネルギーの利用を進めていくことが重要である。 省エネ 再生可能エネルギー 20%程度 現在 2020 年 図 3-7 目標のイメージ 23 (都外の再生可能エネルギー利用と全国への寄与) ここで提起した再生可能エネルギーの利用目標には、都内において生産される再生 可能エネルギーの利用だけでなく、グリーン電力証書などの活用によって、都外で生 産される再生可能エネルギーを利用することも含んでいる。都内での再生可能エネル ギーの利用拡大が、都内のみならず全国的な再生可能エネルギーに対する需要を生み 出し、日本全体の再生可能エネルギーの利用拡大に寄与することができる。 もちろん、再生可能エネルギーは「地産地消」が可能な地域エネルギーであり、エ ネルギーセキュリティの観点からも、事業所の敷地・建物内や地域内において可能な 限り多くの再生可能エネルギーを導入することも重要である。 24 (2)本格的な利用拡大に向けた各分野での導入・利用の考え方 2003 年度における都内のエネルギー消費量の構成は、産業部門が約 10%、家庭部 門が約 24%、業務部門が約 30%、運輸部門が約 36%となっている。 以下で、本格的な再生可能エネルギーの利用拡大に向け、各部門別にどのように導入、 利用を進めていくかについての基本的な考え方を示す。 LPG 2.2% 電力 1.9% LPG 0.1% 燃料油 3.6% 都市ガス その他 2.9% 0.0% 電力 2.9% 産業部門 9.5% 燃料油 運輸部門 31.8% 35.9% 燃料油 1.5% LPG 0.9% 都市ガス 10.6% 家庭部門 24.4% 電力 11.4% 業務部門 30.2% 電力 18.6% 都市ガス 9.8% 燃料油 1.4% LPG 0.4% 2003 年度(合計 83 万 TJ) 図 3-8 東京都における部門別・エネルギー種別消費量 (出典)都における温室効果ガス排出量総合調査(2003 年度実績),東京都 ①産業部門 産業部門は、東京におけるエネルギー消費量全体の約1割を占め、全国における比重 より小さい。その内訳は、製造業が7割強、建設業が2割強となっている。 産業部門のエネルギー利用を種別にみると、燃料油と都市ガスで7割を占め、電気が 3割となっている。産業部門では、ボイラーや加熱用など、エネルギーの多くが高温の 熱需要に利用されていることから、低温熱需要に適している太陽熱の利用は困難である。 そこで、再生可能エネルギーの利用拡大のためには、バイオマス燃料への転換について 検討を行っていく。一方、電力については、事業所の敷地・建物内での再生可能エネル ギーによる発電やグリーン電力証書の活用を進めていく。 25 ②家庭部門 家庭部門は、東京におけるエネルギー消費量の約4分の1を占めており、その内訳は 電気 47%と都市ガス 43%、灯油・LPG で 10%となっている。電気は冷蔵庫、テレ ビ、照明、電子レンジなどの他に、エアコン、電気カーペットなど室内の熱需要に用い られている。また、都市ガスや灯油などは、調理用ガスコンロや湯沸かし、暖房などに 用いられている。 このように、家庭においては、電気で賄わざるを得ない機器がある一方、暖房や給湯 など、電気や化石燃料の燃焼に依らず、太陽熱で一部を代替することができる低温の熱 需要も少なくない。このため、家庭部門での再生可能エネルギーの利用・導入の可能性 は、他の分野よりも高いと考えられる。電力については太陽光発電装置の設置を更に促 進するとともに、熱需要については太陽熱温水器、ソーラーシステムの導入を推進して いく。 ③業務部門 業務部門は、東京におけるエネルギー消費量全体の約4割を占めており、そのうち、 半数以上が事務所ビルでの需要であり、続いて飲食店・ホテル、学校、百貨店となって いる。エネルギー種別では6割が電気、3割強が都市ガス、残りが燃料油などとなって いる。 電力については、グリーン電力証書の活用や太陽光発電施設の設置を推進していく。 また、業務部門で使用される燃料油のバイオマス燃料への転換、給湯への太陽熱温水器 やソーラーシステムの導入などにより、再生可能エネルギーの利用を拡大していく。 ④運輸部門 運輸部門は、東京におけるエネルギー消費量全体の 36%を占めており、その9割が 燃料油である。したがって、運輸部門における再生可能エネルギーの利用拡大のために は、自動車へのバイオマス燃料の利用推進に向け、検討していくことが必要である。 26 4.再生可能エネルギーの利用拡大に向けて この戦略で提起した目標は、既存の施策や事業を積み重ねていくだけでは、達成するこ とができない。EU各国など、先進的に再生可能エネルギーの導入を進めている国々の 様々な施策に学びながら、東京の社会経済条件に適した新たな施策を生み出していくこと が必要である。ここでは、今後、具体的な制度やプロジェクトを構築するに当たっての基 本となる考え方、視点を明らかにしておく。 4.1 目標達成に向けた施策の基本的考え方 (1)方向性1 需要の創出(需要プル型の施策展開) 第一は「需要の創出」である。エネルギーの大消費地であるという東京の特性を活か して、再生可能エネルギーへの需要を拡大することによって、供給量も拡大していく。 今までの日本の再生可能エネルギー施策は、エネルギー供給設備の設置補助や技術 開発支援など、供給側を推進する施策が中心であった12。しかし、再生可能エネルギ ーの一層の利用拡大のためには、こうした取組だけでは不十分であり、需要プル型の 施策の展開が必要である。 東京は、エネルギーの大消費地であり、東京のエネルギー需要の動向によって、市 場を動かし、それが全国的にも供給拡大を導くという好循環を作り出すことが可能で ある。東京で再生可能エネルギーに対する巨大な需要を生み出すことができれば、東 京は、日本の再生可能エネルギー市場の拡大に向けて、インパクトのある推進役を担 うことができる。 この観点から都は、再生可能エネルギーの需要拡大につながる施策を積極的に推進 していく。再生可能エネルギーをより使いやすく、導入しやすくしていくため、利用 者や地域に合った再生可能エネルギーのメニュー化、ビジネスモデルの提示、利用者 が使いやすいファイナンスの確保など、様々な施策を検討し、総合的な需要プル型施 策として推進していく。 需要 関連情報の提供、 金融、社会システ ムなどを重視した 需要プル型施策 需要拡大 低コスト化 市場拡大の 投資拡大 好循環 技術開発 生産拡大 供給 図 4-1 12 需要プル型施策による需要拡大のイメージ 新エネルギー産業ビジョン,新エネルギー産業ビジョン検討会,2004.6 27 (2)方向性2 自然のエネルギーとしての特質を活かす 再生可能エネルギーの利用を飛躍的に拡大していくために必要な方向性の第2は、 自然のエネルギーとしての特質を活かした使い方を進めることであり、その利用を生 活と地域の質の向上につなげていくことである。再生可能エネルギーは、 「自然エネル ギー」と呼ばれることもあるように、太陽の光と熱、風の力、樹木の豊かさなど、広 く普遍的に存在する自然の力を活用するものである。 特に、本戦略では、太陽の光や熱を変換せずに、そのまま照明や暖房に活用するパ ッシブソーラーも再生可能エネルギーの一つとしてとらえている。パッシブソーラー は太陽エネルギーを直接、光や熱として住まいに取り入れ享受することであり、エネ ルギー利用の形態として合理的であるだけでなく、快適で心地よい生活空間をつくり、 豊かな暮らしの価値を生み出す意義がある。 パッシブエネルギーを取り入れている環境配慮型の住宅は、断熱や風通し、採光な どへの配慮を通して住まいの質を高めている。自然のエネルギーの利用が、住まいの 心地よさ、快適さにつながることを、新たな価値としてより多くの人に認識してもら えれば、再生可能エネルギーの活用が住まいの価値を高めることが理解される。 再生可能エネルギーの変換利用(アクティブ利用)の中でも、太陽熱利用は、工場 のボイラーのような高温の熱需要には向かないが、住宅の暖房や給湯のように低温の 熱需要には合っており、パッシブソーラーと合わせて活用することで、再生可能エネ ルギーのもたらす住空間の快適さを実感することができる。 こうした形で自然のエネルギーを利用するためには、太陽の光や風の流れを阻害し ないように建物の外部空間の自然環境、熱環境を考慮し、建物周辺の植栽や建物配置 を計画することが必要になる。再生可能エネルギーを通して建物の内部から外の空間 へ視野が広がり、地域の環境の価値を高めることの意義も明らかになっていく。再生 可能エネルギーの活用を進めるということは、自然の力を生活の中に活かすことであ り、自然の価値を再認識することでもある。 住宅の 快適性向上 生活と地域の 質の向上 地域の環境 価値の向上 ・再生可能エネルギーの直接利用 (パッシブソーラー)、変換利用 ・高断熱、省エネルギー ・外部環境への配慮(緑化等)など 図 4-2 住宅における再生可能エネルギー等の利用のイメージ 28 (3)方向性3 個人と地域が選択するエネルギー利用 第3の方向性は、個人と地域の力を結集し、その選択により再生可能エネルギーの利 用を拡大していく、ということである。個人単位、地域単位での選択が、地球温暖化対 策に寄与し、地域の環境や安全なまちづくりにもつながる。このような選択の機会を増 やし、選択を容易にすることにより、再生可能エネルギーの利用を拡大していく。 従来、エネルギー政策は、主に国レベルの政策としてとらえられてきた。個人や地域 は、大規模なエネルギー供給事業者が提供するものをそのまま受け入れることしかでき ず、エネルギーを選択するという視点はなかった。再生可能エネルギーによって、こう した状況は変わりつつある。小規模分散型の再生可能エネルギーによって、個人や地域 がエネルギーを選択することができるようになった。太陽光発電を住宅に設置して、個 人がエネルギーを生産することが可能になり、大規模な風力や太陽光などの発電事業に も、市民出資というスキームにより、個人や地域が参画できるようになった。またグリ ーン電力証書により、さらに広範な選択も可能になっている。 企業がグリーン電力の購入により地球温暖化対策に積極的に参加するといった例も 含め、個人や企業、コミュニティ、地域がエネルギーを主体的に選択し、同時に環境対 策にも主体的にかかわることがますます増えてきている。 再生可能エネルギーが可能にしたエネルギーの選択は、それによって、個人や地域が CO2の削減など環境問題の解決に直接参加・行動することであり、こうした個人や地域 の選択が、地球温暖化対策を牽引し、環境に配慮した社会の基礎を築くものである。こ のため、このような個人や地域の力を活かした再生可能エネルギーの利用拡大を促進す る施策を形成していく。 29 4.2 利用拡大に向けたしくみづくり (1)再生可能エネルギー選択を可能にするしくみづくり ①再生可能エネルギー関連の情報の提供や公表のしくみの構築 都の温暖化対策計画書制度、建築物環境計画書制度、エネルギー計画書制度により、 すでに大規模な事業者やエネルギー事業者が利用・供給するエネルギーに関しては、 情報が公表されるしくみが出来ている。今後、事業者等の再生可能エネルギーの利用 拡大に向けた取組を拡大するため、再生可能エネルギーに焦点をあて、利用に積極的 な事業者等の取組が社会的に評価されるしくみづくりを進める。例えば、再生可能エ ネルギー導入に対する事業者等の取組を評価し公表することにより、金融機関の投資 や融資の判断に活用され、積極的な取組を行っている事業者等が投融資において優遇 されるようなしくみを検討していく。 また、パッシブソーラーなどを活用したエネルギー消費量の少ない住宅に関する評 価・公表のしくみについても検討していく。また、ハウスメーカー等に、住宅をつく ろうとする人に対して再生可能エネルギー利用に関する説明を行うよう求めること を検討していく。 金融からも注目され始めた企業の温暖化対策 機関投資家が、「企業の地球温暖化対策の取組状況が投資の重要な判断材料 となる」と考え始めていることを企業側に伝えようとする「カーボン・ディス クロージャー・プロジェクト」は、2002 年にスタートして、2005 年 9 月まで に計3回実施されている。 第4回目となる 2006 年は、運用資産額 3,500 兆円以上、世界の 210 以上の 機関投資家が参加し、世界の株式時価総額上位 1,800 の企業に対して地球温暖 化対策に関する情報開示を求め、アンケートを実施している。その結果は web 上で(http://www.cdproject.net/)広く公開される。 ②グリーン熱証書構築への取組 再生可能エネルギーをどこでも選択できるようにするため、電力については「グリ ーン電力証書」のしくみが構築されており、グリーン電力の普及に重要な役割を果た している。再生可能エネルギーによって生産された熱についても、その環境価値を評 価し、証書として取引を行う制度の構築を NPO などと協働して検討していく。 30 (2)需要拡大に向けた制度への取組 ①RPS 制度や固定価格買取制度など望ましい制度のあり方を調査・検討 現在の日本の RPS 法では、2010 年までの電力の導入目標は 1.35%とされてい る。RPS 制度は、導入義務量の目標が低いと、再生可能エネルギーの供給を拡大す る誘因として効果的に機能しない。また、現在の制度では 2010 年以降の長期的な 目標値が設定されておらず、再生可能エネルギー供給事業の投資リスクを低減させ、 長期的に安定化させる効果が小さい。 こうしたことから、都は国に対して、2010 年までの目標値を大幅に引き上げる こと、また長期目標を設定することを提案要求しており、今後も引き続き国に求めて いく。また、電気事業者に限らず、熱・燃料供給事業者なども、RPS制度の対象に 加える可能性ついて検討していく。 一方、欧州委員会の報告13では、ドイツ等が導入している固定価格買取制度は、RPS 制度に比べ、再生可能エネルギーの導入を促進する効果が大きいと評価されている。 今後、日本においても、再生可能エネルギーの供給を飛躍的に拡大していくためには、 再生可能エネルギーの安定的な買取が行われ、事業上のリスクが軽減されるしくみが 必要であり、そのあり方について検討していく。 ②一定量の再生可能エネルギーの利用・導入を促すしくみの検討 都内の大規模エネルギー消費事業者は、都の温暖化対策計画書制度により、エネル ギー使用量を削減する計画の策定を求められている。また、大規模建築物の設計に関 しては、建築物環境計画書制度により、省エネだけでなく、再生可能エネルギーの活 用という点についても、建築物の環境性能が評価されている。 今後は、ますます、企業のエネルギー利用計画や、新たな建築物の建設計画の策定 に当たって、再生可能エネルギーの導入やグリーン電力の利用を積極的に盛り込んで いくことが求められる。こうした状況を見据えつつ、エネルギー利用計画や大規模開 発計画の策定などの時期をとらえて、一定量の再生可能エネルギーの利用・導入を促 すしくみについて検討を進める。 13 The Support of Electricity from Renewable Energy Sources、欧州委員会、2005.12 31 ロンドンの再生可能エネルギー施策 2004年2月に策定された大ロンドン市の基本計画(ロンドン・プラン)で は、「市長と区は、主要な開発に対し、可能なところでは必ず、その敷地の電 気・熱需要のどのくらいの割合を、再生可能エネルギーで導入(生産)できる かを示すことを求める 。」と定められており、基本計画に基づいて策定された 「エネルギー戦略」で、消費量の10%という要求水準が示された。 この規定は、再生可能エネルギーの導入義務というよりは、導入を検討する 義務というものだが、10%を達成できない開発事業者は、都市計画部局に対し て、達成できないという論拠を提出して、理由を説明すること、そして実際に 導入できる割合を示さなければならないというルールになっている。このよう に、ロンドンでは、再生可能エネルギーの導入の検討が都市計画のルールの一 部に取り入れられている。 . (3)経済的手法による誘導策の検討 再生可能エネルギーの促進誘導策の一つとして、アメリカではタックス・クレジッ ト(税額控除)制度が積極的に活用されており、需要拡大につながっていると言われ ている。 今後、新たに設置を予定している環境経済施策調査会14(仮称)を中心として、需 要拡大に効果のある税制措置などを検討し、国への要望などを積極的に実施していく。 また、再生可能エネルギー設備の導入、再生可能エネルギー関連事業の拡大等のた めに必要な資金が円滑に得られるよう金融機関への働きかけを進めていく。 14 都では、平成18年度に、グリーン購入の強化、税財政手法の活用など環境経済施策のあり方について検 討する環境経済施策調査会(仮称)の設置を予定している。 32 4.3 利用拡大に向けたプロジェクト (1)プロジェクトの考え方 再生可能エネルギーの活用を飛躍的に高めていくためには、前節で検討課題にあげた ような、事業者等の行動に影響を与える明確な制度、しくみの構築が必要であるが、こ うした制度、しくみの構築には、一定の期間を要する。 このため、制度の検討、構築と同時に、先行的に再生可能エネルギーの利用を進める 様々なプロジェクトを実施し、東京における利用の拡大を図るとともに、具体的なプロ ジェクトの実施によって、再生可能エネルギーの活用の可能性を多くの事業者や都民に 示していく。 特に再生可能エネルギーは、現在のところ、コスト的には従来のエネルギーと比較し 市場競争力が劣る場合も多いため、防災、地域振興、産業振興など複数の政策目的との 橋渡しを行い、ポリシーミックスによってプロジェクトの実施可能性を高めていくこと を重視する。また、再生可能エネルギーの利用に意欲や関心のある事業者、NPO、市 民の協働を大切にし、これらの様々な主体間の橋渡しを行うことによって、先行的な再 生可能エネルギー利用プロジェクトを実現していく。 (2) プロジェクトの具体例 ①事業者・行政等での再生可能エネルギーの利用拡大 1)電力のグリーン購入の普及拡大 都は、電力の小売自由化の対象となる大規模な都施設が購入する電気について、 5%以上の再生可能エネルギーの利用を進める「電気のグリーン購入」制度を、2004 年度に、全国で初めて導入した。現在のしくみは、努力義務であるため、今後、一層 確実に再生可能エネルギーを導入していくため、都の大規模施設における電気のグリ ーン購入の明確なルール化を進める。 また、八都県市や区市町村など公共団体や企業においても、電気のグリーン購入の 取組が広がるよう、都でのルール化にあわせ、実施を呼びかけていく。 さらに、都内で生産される再生可能エネルギーによる電力を、グリーン購入制度の 中で特に高く評価することにより、都内への再生可能エネルギーの利用を強力に推進 する手法についても検討を行っていく。 33 2)『自然エネルギーつみあげ倶楽部(仮称) 』の設立 再生可能エネルギー利用の拡大をめざし、再生可能エネルギーを積極的に利用する ことに賛同する企業、NPO 等と自治体が協働・連携して行動する「自然エネルギー つみあげ倶楽部(仮称) 」を立ち上げる。 「倶楽部」への参加者は、電気のグリーン購入や太陽光発電設備の設置、輸送用バ イオ燃料の利用など、再生可能エネルギーを利用する取組を率先して行い、その成果 として各主体の利用量を登録する。各主体の利用量をつみあげた実績を公表すること で、参加者の目標達成に向けた取組を励まし、誘導する。 そして、この「倶楽部」を多様な媒体を通して広めていくことで、事業者の積極的 な取組に対する社会的な評価を推進し、利用量の拡大を図る。 〔参加ルール〕 ・利用目標の設定 ・自然エネルギーの利用・導入に 向けた行動の実践(利用実績) 都内における利用量をつみあげ つみあげ状況を分かりやすく伝える (例)『現在までの利用状況: 一般家庭◆◆戸分(電力消費量)』 利 登録 行政の導入事業や電気のグリーン購入 用 企業、NPO等の先駆的な行動 量 連携行動(企業と行政との協働) 登録 登録 • 各主体の取組による 利用量の程度を可視化 • 利用量の拡大と社会的 評価の推進へ 図 4-3 「自然エネルギーつみあげ倶楽部(仮称)」のイメージ 3)公共施設における再生可能エネルギーの導入 今後とも、太陽光発電設備の設置やバイオマス活用など、公共施設における再生可 能エネルギーの導入を積極的に進めていく。特に、再生可能エネルギーは災害時にお ける非常用電源としても有効であり、その視点も併せて導入を検討する。 4)バイオマス燃料への転換の推進 都内で使用されているボイラーの燃料として、木質ペレット等のバイオマス燃料の 導入を進めるため、供給の安定的な確保など、様々な課題について、関連する事業者 等との連携により調査・検討を行っていく。また、自動車等へのバイオマス燃料の使 用については、海外において大きな流れとなっていることを踏まえ、東京での利用に ついて、その課題や推進方法などを調査・検討する。 34 5)燃料電池自動車の普及 都は、国内で初めて燃料電池バスの路線運行の実証実験プロジェクトを実施するな ど、燃料電池自動車の普及に向けた取組を行ってきた。また、臨海部において、エネ ルギー供給事業者との連携により、水素供給ステーションを整備してきた。 今後、こうしたプロジェクトの経験を踏まえながら、都内の水素供給ステーション 施設を活用し燃料電池自動車の普及を図っていくとともに、再生可能エネルギーを活 用した水素供給のあり方について検討を進める。 ②住宅等における再生可能エネルギーの導入 1)低エネルギー住宅プロジェクト パッシブソーラーなどを活用した低エネルギーで快適な住宅として「低エネルギー 住宅」のコンセプトを戸建住宅や集合住宅について検討し、具体的な住宅設計の案を 広く求めるコンペを実施するなど「低エネルギー住宅」の開発・導入を進める。新築 の建物だけでなく、 「低エネルギー住宅」の観点からのリフォームについても検討し、 より広範な普及を図る。 低エネルギー住宅 ・低エネルギー+快適性 再生可能エネルギー利用 パッシブソーラー重視 高断熱、省エネルギー ・外部環境への配慮(緑化等) な ど 図 4-4 プロジェクト内容 ・コンセプトの検討 ・設計コンペ等の実施 ・リフォーム時の導入検討 「低エネルギー住宅プロジェクト」のイメージ 2)住宅等への太陽熱利用の普及に向けた取組 太陽熱の利用は、世界的に拡大しているにもかかわらず、日本においては市場が長 期的に停滞しており、地球温暖化対策としても太陽光発電や風力発電ほどには注目さ れていない。 デザイン性に優れた最新の太陽熱利用機器を紹介するキャンペーンを事業者とと もに行うなど、太陽熱利用の普及拡大を図っていく。 35 ③市民・地域参加型の再生可能エネルギーの利用拡大 1)市民参加型の再生可能エネルギー導入 NPO や民間企業等と協働して、市民や企業の協賛や出資により、公共施設に太陽 光発電などの再生可能エネルギーを導入する事業を推進する。 また、民間施設においても、地域住民や地元企業、NPO 等と連携して再生可能エ ネルギーを導入するモデルを検討する。 市民が出資し、運営する事業に、自治体が連携することで、公共施設を設置場所と して提供したり、企業とのコーディネートをしたりするなど、より安定的で自立的な プロジェクトとして普及させていく。 また、再生可能エネルギー普及活動と音楽活動との融合など、新たな連携による普 及啓発イベントを行い、幅広い層に対して、エネルギー問題への関心を高める働きか けを行う。 各主体の連携で 再生可能エネルギー導入へ 場所の提供・協力・協賛・寄付・連携のコーディネートなど NPO 行 政 企 業 図 4-5 市 民 「市民・地域参加型プロジェクト」のイメージ 長野県飯田市の商店街ESCOと太陽光市民共同発電所 環境省の環境と経済の好循環のまちモデル事業(平成のまほろばまちづくり事業) を活用し、飯田市、NPO、市民がパートナーシップを結んで自然エネルギーの活用に 向けた様々な取組を推進している。NPO の理念を受け継いだ事業会社が市民出資ファ ンドである南信州おひさまファンドを立ち上げて自然エネルギー発電所を建設・運営 し、その収益を地域や市民に還元する取組を実施しており、太陽光市民発電所の設置 や商店街における省エネルギーとして ESCO 事業を推進している。 36 2)商店街における再生可能エネルギー導入 地域の軸として人々が集まる商店街において、住民や地元の企業、NPO、地元自 治体と連携し、再生可能エネルギーの導入を進めることにより、地域全体での再生可 能エネルギーの普及を促進していく。商店街での太陽光発電街路灯や太陽光発電アー ケードの設置、商店街等から出る生ゴミのエネルギー利用など様々な可能性を検討し、 再生可能エネルギーの利用、導入を図っていく。 また、このプロジェクトは、産業振興施策などとも連携し、商店街のイメージアッ プや活性化、地域における防犯・防災対策にも資するものとなるよう複合的な観点か ら検討し、実施していく。 再生可能エネルギーと地域を結ぶ 自然エネルギーと地域社会の関係を考える手がかりとして、デンマークを筆 頭 に 欧 州 連 合 が 普 及 に 努 め て き た 「 エ ネ ル ギ ー 環 境 事 務 所 」 (Energy & Environmental office)というパートナーシップがある。デンマークでは、現在、 全土に 21 の事務所があり、デンマーク政府の助成を得て、エネルギー環境教育、 情報提供、助言活動を中心に、展示やキャンペーン、エネルギー環境問題に関 する講演会などのアレンジ、出版や自然エネルギープロジェクトの立ち上げな どの活動を行っている。 3)NPO等と連携したエネルギー教育ソフトの開発、普及 再生可能エネルギーの利用拡大は、今後、長期的に推進すべき課題であり、次代を 担う子供たちがエネルギーに関する知識を身につけることが大切である。この観点か ら、NPOや企業などの協力を得て、子供たちが楽しみながら簡単に、太陽光発電設 備や太陽熱集熱器などを家庭に設置した場合の発電量や熱供給量、CO2削減量など を計算し、その過程で地球温暖化や再生可能エネルギーについての理解が深まるよう な教育ソフトを開発していく。また、こうしたソフトが、学校における環境学習など で活用されるように普及啓発を進める。 37 4.4 戦略の推進 本戦略においては、東京における再生可能エネルギーの利用拡大の意義を明確にし、 中長期的視点にたった利用目標を提起した。今後、再生可能エネルギーの本格的な利用 拡大を実現するため、しくみづくりとプロジェクトの具体化に取り組んでいく。 特に、本戦略で挙げたプロジェクトは、都が積極的に実施するとともに、NPO、民 間企業など主体となって事業展開が進むことを期待している。このため、NPO、民間 企業、さらに区市町村等と協働・連携を重視し、共同のプロジェクトチームを立ち上げ るなど、発展性のある体制で実施していく。都は、コーディネーターとしての役割を担 い、企業や都民の主体的な取組を引き出し、再生可能エネルギーの広範な利用拡大を進 めていく。 38 資 料 ・接頭語 10 の 累乗倍 1015 1012 109 106 103 記号 読み P T G M k ペタ テラ ギガ メガ キロ 具体的な数字 1,000,000,000,000,000 1,000,000,000,000 1,000,000,000 1,000,000 1,000 千兆 一兆 十億 百万 千 ・エネルギーの単位 ・ J(ジュール): 熱量、仕事を表す単位で、1Jは0.239cal(4.186J=1cal)。 1kJ=103 J、1MJ=106J、1G=109J。 ・ cal(カロリー):熱量を表す単位で、1calは、1mlの水を1℃温めるのに必要な熱 量。 1 kcal(キロカロリー)=103cal。 ・ Wh(ワットアワー):仕事量、電力量を表す単位で、1Whは1Wの仕事率(単位 あたりの仕事)で1時間になす仕事量、あるいは1Wの電力を1時間消費した電力 量。 1kWh=1,000Wh、1MWh=106Wh、1GWh=109Wh。 ・単位換算係数 MJ kWh kcal MJ 1 0.278 0.239×103 kWh 3.600 1 860 kcal 4.186×10-3 1.163×10-3 1 東京都再生可能エネルギー戦略策定委員会 氏 名 所 属 委員名簿 等 飯田 哲也 特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所 甲斐 徹郎 NPO エコロジー住宅市民学校 倉阪 秀史 千葉大学法経学部総合政策学科 末吉 竹二郎 国連環境計画・金融イニシアチブ 啓祐 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 ◎花木 ◎:委員長 所長 主宰 助教授 特別顧問 教授 (五十音順 敬称略) 参考資料編 東京都再生可能エネルギー戦略(参考資料編) = 目 次 = 1. 主な再生可能エネルギー導入推進の制度の概要..................................................1 (1) RPS 制度.................................................................................................................................................................1 (2) 固定価格買取制度 ...............................................................................................................................................4 (3) グリーン電力プログラム.................................................................................................................................6 2. 再生可能エネルギー導入・利用事例 ...................................................................... 11 (1) 東京都における導入・利用事例 .............................................................................................................. 11 (2) 国内における取組事例.................................................................................................................................. 14 1.主な再生可能エネルギー導入推進の制度の概要 (1)RPS 制度 ①日本の RPS 制度 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」に基づいた RPS 制度 (Renewables Portfolio Standard)は、 「内外の経済的社会的環境に応じたエネルギーの 安定供給に資するため、電気事業者による新エネルギーの利用に関する措置を講じ、も って環境の保全に寄与し、及び国民経済の健全な発展に資すること」 (法第 1 条)を目的 とし、2003 年 4 月から全面施行された。この制度は、電気事業者に対し、毎年、販売電 力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発電される電気の利用を義務付け、新 利用目標 150 100 1.35 利用目標率 1.16 122 1.05 0.99 0.97 103.3 0.94 0.91 0.87 92.7 86.7 83.4 80 76.6 73.2 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 50 0.2 0 図 1-1 平成22年度 平成21年度 平成20年度 平成19年度 平成18年度 平成17年度 平成16年度 0 新エネルギー等電気利用目標量(%) 1.6 200 平成15年度 新エネルギー等電気利用目標(億kWh/年) エネルギーの普及促進を図るものである。 新エネルギー等電気の利用目標 資料:資源エネルギー庁「新エネルギー便覧」 ※「利用目標率(当該年度)」=「全国の利用目標量(当該年度)」÷「全国の電気供給量(全年度)」 参考資料編 −1− 表 1-1 RPS 制度の概要 概 要 利用目標 経済産業大臣は、総合資源エネルギー調査会及び環境大臣、農林水産大臣、国土交通 大臣の意見を聴いて、新エネルギー等電気の利用目標を定める。(法第三条関係) 対象 エネルギー 1.風力、2.太陽光、3.地熱、4.水力(水路式の 1000kW 以下の水力発電)、5.バイオマ ス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの (原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。) をいう。)を熱源とする熱・廃棄物であるバイオマスの焼却による発電については、この カテゴリに含まれる。 義務 経済産業大臣は、利用目標を勘案し、電気事業者(一般電気事業者、特定電気事業者、 及び特定規模電気事業者)に対して、毎年度、その販売電力量に応じ一定割合以上の量 の新エネルギー等電気の利用を義務づける。この義務量のことを基準利用量という。(法 第四、五条関係) 義務の履行 電気事業者は、義務を履行するに際して以下のことができる。 ①自ら発電する ②他から新エネルギー等電気を購入する ③他から新エネルギー等電気相当量を購入する これにより、電気事業者は、経済性その他の事情を勘案して、最も有利な方法を選択す ることができる。(法第五、六条関係) なお、新エネルギー等電気相当量は、政府の保有する電子口座において管理される。 設備認定 新エネルギー電気を発電し、又は発電しようとする者は、当該発電設備が基準に適合し ていることについて、経済産業大臣の認定を受けることができる。経済産業大臣は、バイ オマスを利用する発電設備の認定に際しては、予め農林水産大臣、国土交通大臣又は 環境大臣に協議を行う。(法第九条関係) 勧告・命令 経済産業大臣は、電気事業者が、正当な理由なく義務を履行しない場合には、期限を定 めて、義務を履行すべき旨の勧告、又は命令を行うことができる。(法第八条関係) 罰則 上記命令に違反した者は百万円以下の罰金に処する等の罰則がある。 法律の 施行日 ①法律の設備認定関係の規定の施行日:平成 14 年 12 月 6 日 ※新エネルギー等発電設備を用いて発電し、又は発電しようとする者は、12 月 6 日以降 設備の認定申請が可能。 ②法律全体の施行日:平成 15 年 4 月 1 日 資料:資源エネルギー庁資料より作成 政府=資源エネルギー庁 (エネルギー政策遂行/RPS制度運用者) 義務 履行 義務量 の設定 補助金等 の施策 電力 電力 電気事業者 国民 代金(電気/相当量) 電気料金 電力 電気事業者保有の新エ ネルギー等電気発電設備 図 1-2 国内の RPS 制度の仕組み 資料:資源エネルギー庁資料より作成 参考資料編 −2− 設備認定 相当量の発行 新エネルギー等 電気発電事業者 ②海外の RPS 制度 RPS またはそれに準ずる制度を導入している主要な国(または州)としては、イギリ ス、イタリア、スウェーデン、米国(テキサス州、カリフォルニア州ほか)などがある。 表 1-2 RPS 制度導入国 イギリス、イタリア、ベルギー、スウェーデン、オーストラリア、米国 21 州(テキサス州、カリフォルニ ア州、アイオア州、メイン州、ウィスコンシン州、コネチカット州、アリゾナ州、ニュージャージー州、マ サチューセッツ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ミネソタ州、ペンシルバニア州、ハワイ州、コロラド 州、メリーランド州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、イリノイ州、ワシントン D.C.、モンタナ州) 〔検討中〕カナダ(ほぼ全州)、ノルウェー(2006 年導入予定) 他 資料:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「平成 16 年度 新エネルギー等電力市場拡大促進対 策基礎調査等(海外における新エネルギー等導入促進施策等に関する調査)報告書」(平成 17 年 3 月)、 DESIRE(Database of State Incentives for Renewable Energy、http://www.dsireusa.org/等をもとに作成) 表 1-3 イギリス 主要国における RPS 制度概要 イタリア スウェーデン オーストラリア 米国(テキサス州) 2010 年までの再生 目標年までに再生可 可能電力の増加目 能発電設備容量を増 設 標を 2003 年:7.4% ∼ 9,500GWh と設定 2007 年:2,280 MW 2002 年度:3% ∼ 2002 年:2% ∼ 2010 年:16.9% (2010 年における 2009 年:3,272 MW クォータ 2015 年度∼26 年 2006 年:3.05% 2007 年 以 降 の 義 予測電力供給量の 2011 年:4,264 MW 義務量 度:15.4% (2016 年度以降の 務比率は未定 2%を目標として設 2013 年:5,256 MW 義務比率について 2015 年:5,880 MW 定) は増加の方向で議 →2020 年まで制度 論中) 継続の方向 電力小売事業者 発電事業者、電力 電力需要家 電力小売事業者、 電力小売事業者 輸入事業者 (小売事業者が義務 発電事業者から直 (自由化対象地域の 義務 対象者 (年間 100GWh 以 履行を代行) 接購入の需要家 事業者のみ) 上) 水力(規模制限なし) 水力 水 力 ( 既 設 は 水力(揚水分除く) 水力※ 太陽(太陽熱も含む) 太陽熱温水 太陽 太陽光 20MW 以下) 風力 太陽光 風力 風力 太陽光 地熱 風力 地熱 地熱 風力 波力 地熱 潮力 潮力 地熱 潮力 波力 波力 波力 潮力 対象 バイオマス(混焼な 潮力 バイオマス(混焼も バイオマス 波力 エネルギ し) 海洋エネルギー バイオマス(混焼は 含む) ー 廃棄物(非バイオマ ※ 水 力 は 1.5MW 燃料電池 除く) 以 下 の 既 存 設 高温岩体 ス分も含む) 備、1.5MW 以上 バイオマス(混焼含 の既存設備の増 む) 設、新規設備が 対象 資料:資源エネルギー庁資料 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「平成 16 年度 新エネルギー等電力市場拡大促進対策基礎 調査等(海外における新エネルギー等導入促進施策等に関する調査)報告書」 (平成 17 年 3 月)、DESIRE (Database of State Incentives for Renewable Energy、http://www.dsireusa.org/等をもとに作成) 総販売電力量のう 前年の発電/輸入電 電力消費量のうち 力量のうち ち 参考資料編 −3− (2) 固定価格買取制度 固定価格買取制度は、従来の電源と比較してコストが高い再生可能エネルギーによる 発電コストと市場価格との差を長期契約により補助する制度。電力事業者は、再生可能 な電力を規定された価格で買い取ることが義務づけられる。 この制度を導入している主要な国としては、ドイツ、デンマーク、スペインなどがあ る。 表 1-4 固定価格買取制度導入国 ドイツ、デンマーク、スペイン、オーストリア、オランダ、ポルトガル、ギリシャ、チェコ、スロバキア、 ハンガリー、フランス(設備容量 12MW 以下) 他 資料:資源エネルギー庁資料より作成 表 1-5 主要国における固定価格買取制度概要 ドイツ 買取義務 対象者 デンマーク スペイン 送・配電事業者等 設備稼働から 20 年間 買取義務 期間 2004 年:陸上風力発電(/kWh) ・新規設備 8.70 ユーロセント(12.2 円) 買取価格 (参考) 特に制限なし ※従来制度で既設設備(2002 年ま でに運開)は 20 年間の固定価格 での買取 2004 年:陸上風力発電(/kWh) ・新規設備: スポット市場での売電価格 +インセンティブ価格 0.123DKK(2.2 円) ※売電価格とインセンティブ価格を あわせた上限 0.36DKK(6.5 円) /kWh ・既設設備(2002 年までに運開): 固定買取価格 0.6DKK(10.8 円) 風力 バイオマス(混焼なし) 特に制限なし ※エネルギー源ごとに買取価格 が減額される期間(例:15 年 後)を設定 2004 年:陸上風力発電(/kWh) ・固定買取価格 6.49 ユーロセント(9.1 円) ・売電価格+インセンティブ価 格 +3.6 ユ ーロセント(5.0 円) 水力 太陽光 風力 地熱 波力 対象 潮力 エネルギ バイオマス(混焼含む) ー 廃棄物(非バイオマス部分も含 む) ※すべて設備容量 50MW 以下が 対象 資料:資源エネルギー庁資料、東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「平成 16 年度 新エネルギ ー等電力市場拡大促進対策基礎調査等(海外における新エネルギー等導入促進施策等に関する調査)報告 書」(平成 17 年 3 月)をもとに作成 水力(5MW 以下) 太陽光 風力 地熱 バイオマス(20MW 以下) 埋立/下水ガス(5MW 以下) 鉱山ガス 参考資料編 −4− 表 1-6 システム 容量 ∼5MW 種別 水力 5MW∼ 150MW 埋立ガス、汚泥 ガス、炭鉱ガス 無制限 無制限 バイオマス 2 ∼20MW ∼20MW ∼20MW ∼20MW ∼20MW ∼20MW 地熱エネルギー 無制限 陸上風力 支払額 (セント/kWh) 9.67 6.65 7.67 6.65 6.10 4.56 3.70 7.67 6.65 6.65 9.76 8.65 8.65 11.50 9.90 8.90 8.40 3.90 容量幅 ∼500KW 500KW∼5MW ∼500KW 500KW∼10MW 10MW∼20MW 20MW∼50MW 50MW∼150MW ∼500KW 500KW∼5MW 炭鉱ガスの 5MW∼ ∼500KW 500KW∼5MW 炭鉱ガスの 5MW∼ ∼150KW 150KW∼500KW 500KW∼5MW 5MW∼20MW ∼20MW 17.50 15.90 12.90 17.50 15.90 11.40 13.50 11.90 10.90 10.40 13.50 11.90 10.90 15.00 14.00 8.95 7.16 4 8.7(初期値) 5 ∼5.5(最終値) ∼150KW 150KW∼500KW 500KW∼5MW ∼150KW 150KW∼500KW 500KW∼5MW ∼150KW 150KW∼500KW 500KW∼5MW 5MW∼20MW ∼150KW 150KW∼500KW 500KW∼5MW ∼5MW 5MW∼10MW 10MW∼20MW 20MW∼ 期間 (年) 9.10(初期値) 5 ∼6.19(最終値) ビルまたは 騒音防護壁 表面実装型 57.4 54.6 54.0 62.4 59.6 59.0 45.7 備考 2008 年からいくつかのサイト を制限 改修のみ対象となり、出力増大 分のみ支払われる 15 1 20 1.5 20 1.5 20 1.5 20 1.5 埋立ガス、汚泥ガスの 5MW を 上回るものに関しては、市場価 格に応じて支払い 上記の新技術が対象 20 1.5 3 20 1.5 3 20 1.5 3 20 1.5 3 廃木材で特定カテゴリーに含ま れるもの 原料を再生産する特定物質の場 合 特定の木を燃焼させた場合に適 用 CHP プラントからの発電のみ 適用 新技術を用いた CHP プラント からの発電に適用 2010 年より 1% 20 1 20 2 20 ∼30KW 30KW∼100KW 100KW∼ ∼30KW 30KW∼100KW 100KW∼ 低減率 1 (%) 30 4 海上風力 太陽光発電 2004 年におけるドイツの固定買取価格1 20 20 参考値に依存し、支払い最高額 は 5∼20 年 高い初期値は新設に対して 2 2011 年に先立ち実施し、12∼ (2008 年より) 20 年支払われる 5 5 6 2005 年から 5、決まったサイトの基準は満たさ 2006 年から 6.5 なければいけない 1)支払額はその年の決定による。新しい決定額に対してその割合は毎年低減率により減少していく。これは、効率的な改良と コスト低減に対するインセンティブを与えるものである。2)詳細は省く。3)低減率は、基本的な支払いのみ該当。4)初 期値。5)最終値。6)低減率は、基本的な支払いのみ該当。 その他 1 20 The main features of the Act on granting priority to renewable energy sources (Renewable Energy Source Act) of 21 July 2004(http://www.erneuerbare-energien.de/files/english/renewable_energy/downloads/application/pdf /eeg_gesetz_merkmale_en.pdf)、Amending the Renewable Energy Sources Act (EEG) Key provisions of the new EEG as amended on 21 July 2004(http://www.eurosolar.org/new/en/downloads/eeg_begruendung_en.pdf) 等をもとに作成 参考資料編 −5− (3)グリーン電力プログラム グリーン電力プログラムとは、再生可能エネルギーから得られた電力を、電力の需要 家が広く選択できるようにすることで、その普及を促進するためのプログラムであり、 ここでは、以下の 5 つ(①電気事業者によるグリーン電力基金、②電気事業者以外によ る寄付型プログラム、③市民出資型、④グリーン電力証書、⑤市民出資とグリーン電力 証書の組合せ)を例として取り上げ、概説する。 ①電気事業者によるグリーン電力基金 グリーン電力基金は、電気料金に上乗せするかたちで新エネルギーの普及に賛同する 消費者から募った寄付金と、電力会社が拠出した同額の寄付金によって成り立っており、 各地域にある基金運営主体(産業活性化センター等)が管理し、自然エネルギー発電設 備の建設・運営を行う事業者に対して助成を行うもの。 自然エネルギー 発電設備 全国運用分 (一部) 助成金 拠出金 の一部 基金運営主体 (産業活性化センター) グリーンラベ ルの発行 電力 購入代金 寄付金①+ 寄付金①と同額 電力会社 消費者 寄付金① 図 1-3 グリーン電力基金のしくみ 資料: (財)日本エネルギー経済研究所「国内外のグリーン電力制度(プログラム)に関する調査」 (平 成 16 年 3 月)等をもとに作成 参考資料編 −6− ②電気事業者以外による寄付型プログラム NPO や各種団体等の電気事業者以外の主体が、プログラムに賛同する消費者から寄付 金を募り、その資金を基に再生可能エネルギー電源の設置・運営を行うもの。 国内では「北海道グリーンファンド」や「足元から地球温暖化を考える市民ネット・ えどがわ」、 「環境まちづくり NPO エコメッセ」などがある。 電気料金分 自然エネルギーによる 市民共同発電所 北海道電力 電力 電気料金請求 予定通知 電力 グリーンファンド 会員 図 1-4 基金 電気料金 +寄付金 NPO法人 北海道グリーンファンド 寄付型プログラムの仕組み(北海道グリーンファンドの例) 資料: (財)日本エネルギー経済研究所「国内外のグリーン電力制度(プログラム) に関する調査」(平成 16 年 3 月)等をもとに作成 表 1-7 寄付型プログラムの取組事例 活動目的 具体的活動例 ・ 電気やエネルギーの安 全性、環境負荷の度合い 北海道 を検証し、将来的に望ま グリーンファンド しい電気を共同購入する 仕組みをつくる。 ・ 賛同会員が月々の電気料金に5%加え た額を支払い、5%相当分をグリーンファ ンドとして寄付。そのプールされた基金 をもとに市民共同発電所を運用。 ・ 環境問題に対して市民が 足元から取り組めること をベースに、市民の意識 や善意に頼るのではなく 社会の仕組みに押し上げ ていくこと。 ・ 太陽光発電による市民共同発電所(江 戸川第一発電所、出力5.4W)の設置 ・ グリーン電力証書「EDOGA-WAT(えど がわっと)」の発行 ・ 環境問題の解決のため の自然との強制を最優先 とした「まちづくり」の推 進。 ・ リサイクル、リユースを進める「エコショ ップ」の展開 ・ 売上を各地域の「エコメッセ」のテーマに 合わせた活動資金に充当 ・ NEDO補助金、活動資金などをもとに、 武蔵大学の屋上に市民発電所1号機 「武蔵」を設置。 足元から地球温 暖化を考える市 民ネット・えどが わ 環境まちづくり NPO エコメッセ 資料: (財)日本エネルギー経済研究所「国内外のグリーン電力制度(プログラム)に関する調査」 (平 成 16 年 3 月)等をもとに作成 参考資料編 −7− ③市民出資型 グリーン料金制度で積み立てた基金及び環境に対する意識の高い市民から募った出資 金などをもとに行う事業。 「市民風力発電所」の建設を目指す NPO 法人北海道グリーンファンドでは、事業主体 として(株)北海道市民風力発電を設立し、匿名組合出資という形で募った市民からの 資金をもとに、NPO 主導では全国でも初めてとなる市民風車を 2001 年 9 月、オホーツ ク海に面する浜頓別町に建設した。 〔グリーン電気料金制度仕組み図〕 北海道グリーン ファンド会員 電気料金の お知らせ 自然エネルギーによる 市民共同発電所 北海道電力 定額 基金 定率 電力 電気料金 +5%分(基金) 請求 定率会員の 電気料金の 支払い 請求 グリーンファンド 基金 NPO法人北海道グリーンファンド 匿名組合 分配金 (出資金返還+配当) 出資 配当 理事・個人等 出資 配当 匿名組合 出資 事業主体 (株)北海道市民風力発電 電力購入 代金 売電 北海道電力 建設請負 契約 (株)トーメン 管理運営 委託契約 融資 金融機関 用地賃貸 借契約 (株)トーメンパワージャパン 元利 償還 浜頓別町等 〔市民風力発電所・浜頓別1号機〕 図 1-5 市民による風力発電事業の仕組み(北海道グリーンファンドの例) 資料:北海道グリーンファンド資料等をもとに作成 参考資料編 −8− ④グリーン電力証書 グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーによって発電された電力のグリーン価値 部分(化石燃料削減、CO2 排出量削減)を具現化し、取引できるようにしたもの。再生 可能エネルギーによる発電設備における発電量に応じて発行され、需要家はこの証書を 購入することにより、電力契約を変更することなく、再生可能エネルギーを使用してい るものとみなされる。 現在の主な需要家は、企業や各種団体、自治体等であるが、購入動機としては、環境 への積極的な取組を示すことによるイメージアップや、環境税、排出規制といった将来 の環境リスクを意識した対策の一環などがあげられる。 「グリーン電力認証機構」による認証 ︵ 顧 客 証 書 発 行 機 関 発電実施契約 グリーン電力証書 発電実績報告 再 生 可 能 エ ネ ル ギ 環境付加価値 の販売 ー ︶ 企 業 ・ 団 体 等 再委託 電気料金 電力 顧 電 客 力 区 会 域 社 の 図 1-6 発 電電 力所 会区 社域 の 購入電力料金 電力 発 電 事 業 者 電気自体の 販売・利用 グリーン電力証書の仕組み 資料:日本自然エネルギー株式会社資料等をもとに作成 参考資料編 −9− ⑤市民出資とグリーン電力証書の組合せ 飯田市では、独自で太陽光発電設備の設置やペレットストーブの導入を進めているほ か、環境省から評価されたパートナーシップ型環境公益事業を実現するために、市民共 同発電事業及び商店街エスコ事業を実施する NPO 主体の「おひさま進歩エネルギー有限 会社」を設立した。 表 1-9 まほろば事業の概要 概要 ・ 飯田市内の38箇所の公共的な施設に太陽光発電設備を設置。 おひさま市民共同発電所 ・ 設備による発電出力は約208kW(総計)で、年間23万kWhの電力を生み出 事業 す地域の発電所。 ・ 募集期間の終了を待たずに総額2億150万円の出資金の受付が満了となった。 ・ 3年間で飯田市内の商店街を中心に100箇所の商店でエスコ事業を実施。 ・ プログラムの特徴は小規模であることで、太陽光発電と同じように地域分散型 商店街エスコ事業 でたくさんのESCOを組み合わせることにより、大きな省エネルギー効果を 生み出す。 資料:「飯田市−「まほろば事業」の概要」パンフレットをもとに作成 環境省 合 計 38箇 所 最 大 出 力 : 約 208kW 補助金 ( 5∼ 10kW/ 箇 所 ) お ひ さ ま 有 進 限 歩 会 エ 社 ネ ル ギ 出資金 出資者 分配金 設置 グリーン 電力 販売 太陽光発電機 販売収入 電力 契約 余剰電力 ー 飯田市内 保育園・市民館等 中部電力 売電収入 発電量 に 応じた 料金収入 図 2-7 グリーン電力 証書発行者 「おひさま市民共同発電所事業」の仕組み 資料:「飯田市−「まほろば事業」の概要」パンフレットをもとに作成 補助金 環境省 出資金 ど機高 を器効 実の率 施設省 置エ なネ コ ス ト 削 減 分 初期投資分 顧客のメリット ESCOの報酬 エ ネ ル ギ ー 図 2-8 ー 顧客 初期投資 0円 エ ネ ル ギ ー 出資者 お ひ さ ま 有 進 限 歩 会 エ 社 ネ ル ギ コ ス ト 「商店街エスコ事業」の仕組み 資料:「飯田市−「まほろば事業」の概要」パンフレットをもとに作成 参考資料編 −10− 2.再生可能エネルギー導入・利用事例 (1)東京都における導入・利用事例 ①浄水場における太陽光発電 施設・ 事業名称 東京都水道局朝霞浄水場 導入目的 ・ 浄水場の最終処理工程である「ろ過池」への異物投入を防ぐため、池全体に 蓋をする「覆がい化工事」に併せて、蓋の上部に太陽電池パネルを設置 ・ 水道水の安全性を高めるとともに、自然エネルギーの活用による環境負荷の 低減、省エネルギーによるコスト縮減をめざす ・ ろ過池の覆がいの上部に定格総出力1,200kWの太陽電池を設置発電量:約 96万kWh/年、CO2削減効果:約460t/年 ・ 日本において最大規模の太陽光発電導入 ・ 危機管理の視点から、ろ過池の覆がいの設置は必須であり、その上部空間に 太陽光発電を設置したことは、未利用空間の有効利用としても重要 取組概要 特徴 ②下水処理場におけるバイオマス発電 施設・ 事業名称 森ヶ崎水再生センター バイオマス発電施設 導入目的 ・ バイオマスエネルギーである汚泥処理過程で発生する消化ガスを発電設備の 燃料として活用 ・ 発電設備の冷却用に下水処理水を利用・発電排熱を汚泥処理工程へ再利用 ・ ガスエンジン出力:3,070kW ・ NaS電池による電力貯蔵電池設備:8,000kW ・ 温水供給能力:46,043MJ/h ・ 発電設備の設置及び運営については、下水道事業としては国内初となるPFI を導入、民間の資金、技術及び経営のノウハウ等の活用により低廉な電力を 確保 取組概要 特徴 参考資料編 −11− ③風力発電の導入 施設・ 事業名称 東京臨海風力発電所(東京風ぐるま) 導入目的 ・ 地球温暖化対策を防止するために、再生可能エネルギーの普及拡大を目指す都 の施策の一環として、民間事業者との協働により設置 ・ 都民・事業者への普及拡大を図る。 ・ 発電出力:1,700kW(850kW×2基) ・ 年間発生電力量:約250万kWh(平成16年度実績:約220万kWh、全量売 電) ・ CO2削減効果:約1700t-CO2/年 ・ 事業費:3億3,000万円 ・ 大都市近傍としては日本初の本格的風力発電所 ・ 都と民間企業*による官民協働の新しいビジネスモデル *(株)ジェイウィンド東京(電源開発㈱と豊田通商㈱の100%出資SPC)) ・ 都は事業実施場所の確保、固定資産税の減免(償却資産(風車本体)にかかる もの)、企業側は、風力発電施設の建設・運転・普及啓発を実施 ・ 臨海部のランドマーク、再生可能エネルギーのシンボルとして、高い普及啓発 効果 取組概要 特徴 ④次世代のクリーンエネルギー自動車 施設・ 事業名称 都バスとして走行した FC バスと有明水素ステーション 導入目的 ・ 地球温暖化対策及び大気汚染対策の一環として、交通局及び事業者の協働によ り、都営バスの営業路線において実証試験を実施。 ・ 燃料電池バスによる走行データ収集と燃料電池自動車の普及啓発 ・ 日本で初となる燃料電池バスによる路線での営業運転(2003年8月28日か ら深川営業所所管の2系統で2004年末までの実証事業) ・ 民間事業者が、燃料電池バスの製造・無償貸与(定員:60人、出力:80kW ×2基) ・ 都営バス路線による運行(交通局)、走行データの収集(環境局、交通局及び 民間事業者)、燃料電池自動車の普及啓発(環境局、交通局及び民間事業者) ・ 燃料電池バスの営業路線での運行は日本初 ・ 燃料電池車を通常の路線バスと同じ料金で体感できる 取組概要 特徴 参考資料編 −12− ⑤電力のグリーン購入 施設・ 事業名称 東京都グリーン購入推進方針 電力購入事業所の東京文化会館 導入目的 取組概要 特徴 能代森林資源利用協同組合のバイオマス発電施設 ・ 地球温暖化対策の一環として、電気におけるグリーン購入を行い、コスト の削減と環境負荷の低減を合わせて実現していく。 ・ 平成16年度、電力の小売自由化の対象となる都の大規模都有施設で購入す る電気について、5%以上の再生可能エネルギー利用等を求める「電気の グリーン購入」を導入 ・ 平成17年度、電気のグリーン購入制度に基づき、東京文化会館において、 再生可能エネルギーを5%含む電気を日本で始めて購入 ・ 年間供給予定電力量300万kWhの5%である15万kWhについて、秋田県 能代市の能代森林資源利用協同組合が再生可能エネルギーにより発電した 電気を購入 ・ 日本初の、グリーン購入制度に基づく再生可能エネルギーを含む電気の購 入事例 参考資料編 −13− (2)国内における取組事例 ①集合住宅向け太陽光発電 施設・ 事業名称 導入目的 取組概要 特徴 全世帯太陽光発電付き賃貸マンションニューガイア上石田 資料提供:芝浦特機株式会社 ・ 太陽光発電設備を有する賃貸集合住宅を提供することにより付加価値を高め、 競争力のある事業を展開する ・ 屋上部に、約65kWの太陽光発電システム(写真上段)を導入 ・ 各住戸に、1.5kWのシステムを個別に設置したものを連系させ、各世帯にお いて電力会社と個別に契約を結び、売電を実施 ・ 共用部の電源として(エレベーター、電灯)、中央棟の採光部に約1.6kWの シースルー型のモジュール(写真下段右側)を導入 ・ 賃貸集合住宅分野において、これまでは小規模の太陽光発電システムによっ て、共用部分に電力を供給する事例のみであったものを、各住戸での供給をは じめて実現 参考資料編 −14− ②バイオガス発電施設 施設・ 事業名称 バイオエナジー株式会社 燃料電池 導入目的 ・首都圏の廃棄物問題の解決と新たな環境産業の立地を促進し、循環型社会への 変革を推進することを目的に、国の都市再生プロジェクトの一環として、東京 臨海部の都有地において、民間事業者が主体となり廃棄物処理・リサイクル施 設の整備を進めるスーパーエコタウン事業で選定された事業である。 取組概要 ・厨芥類、食品製造残さ等食品廃棄物をメタン発酵し、発生したバイオガスによ り、燃料電池・ガスタービンを用いて発電を行う。 ・発電量:約24,000kWh/日、CO2 の削減(14t/ 日の CO2 削減効果) 燃料電池 250kW ガス発電装置 250kW・500kW ・処理能力: 110t/日 特徴 ・ 食品リサイクル法に対応した施設 ・ バイオガス発電の施設としては国内最大級規模 ・ 365日24時間受入可能 参考資料編 −15− ③ペレット需給の連携を目指した温泉施設 施設・ 事業名称 飯能市市営温泉「さわらびの湯」 (ペレットボイラー・ストーブの導入) 導入目的 ・ 従来から利用されていた灯油ボイラーの増設計画に対して、埼玉県の要望によ りペレットボイラーを導入 ・ ペレットボイラーは、週末、休日における熱需要のピークへの対応として利用 ・ 年間ペレット消費量は、3,500kg/年 ・ 2006年度に施設の改修計画があり、その際にメインの加温設備として切り替 える予定 ・ ペレットストーブは、温泉施設内の暖房として利用しており1時間あたりの燃 料消費量は1kg ・ 飯能市、入間市、日高市、毛呂山町、越生町の製材業、木材卸売業、素材生産 者、森林組合の40社により設立された「協同組合西川地域木質資源活用セン ター」で生産される、樹皮を主原料とするバークペレットを使用 取組概要 特徴 参考資料編 −16− 東京都再生可能エネルギー戦略 ∼エネルギーで選びとる持続可能な未来∼ ■発行・編集 2006 年(平成 18 年)3月 東京都環境局 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 TEL 03(5388)3429