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道路橋の製図によるCADソフトウェアの比較

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道路橋の製図によるCADソフトウェアの比較
道路橋の製図によるCADソフトウェアの比較
有澤
命,清水
誠,林
指導教官
1.はじめに
表−1
数年前までは手描きの図面が主流だった建設業界
CADソフト名
でも,最近は CAD が非常に普及してきた。建設省が
JW CAD
Drafting CAD
DRA-CAD
Solid Works
HO CAD
Dyna CAD
Turbo CAD
CANDY
V-nas
UC-Draw
CADRAW
Be Draw
Vector Works
1996 年度から行っている「建設 CALS/EC 実証フィ
ールド実験」でも,1998 年度から受発注間で CAD
による図面データの受け渡しを全国的に行うことに
なり,官庁の事務所やコンサルタント会社でも CAD
を導入することが当たり前の時代になっている。石
川高専環境都市工学科では,改組によるカリキュラ
ム変更において CAD 教育を導入し,現在,1学年の
岳史
冨田充宏
CAD ソフトの一覧
種類
汎用
Mac用
汎用,建築
3D
汎用
汎用,土木
汎用
汎用
土木系汎用
土木系汎用
建築系汎用
汎用,電気
2D,3D
フリーソフト
Infinisys
構造システム
東芝ソリューション
シェアソフト
ダイナウェア
キャノン
アイフォー
川田テクノシステム
フォーラムエイト
Faith
シェアソフト
エーアンドエー
後期に「CAD」,2学年の後期と3学年の前期に「測
量実習」,4学年の後期と5学年の後期に「環境都市
工学設計製図」等において,CAD ソフトウェアを使
なソフトである。図脳 RAPID5 は,現在の 5 年生が
用する科目を開講している。
使用する図脳 Win CAD のシリーズで,最新バージ
一方,CAD ソフトには表−1に示すような汎用
CAD や土木,建築,機械などの専用 CAD が多数あ
ョンは図脳 RAPID12 であり,使い慣れた CAD ソフ
トと言える。
り,機能性や操作性はソフトごとに大きく異なって
本研究は,以下の手順で研究を行う。
おり,1つの CAD ソフトをマスターするだけでなく,
①
Auto CAD LT 2002 および It’s 超 CAD3 の機
使用する目的や用途により様々な CAD ソフトを使
能や操作をマスターするため,簡単な図面で
いこなす必要がある。
練習する2)。
そこで,本研究は合成桁と明石海峡大橋の橋梁の
②
図脳 RAPID5 により,1学年の後期「CAD」
製図により,CAD ソフトウェアの機能や操作性につ
の授業の課題である明石海峡大橋の側面図
いて比較・検討し,複数の CAD ソフトを使用する際
(マニュアルあり)と5学年の後期「環境都
のメリット,デメリット等を提示することを目的と
市工学設計製図Ⅱ」の課題である合成桁橋の
する。
主桁の製図を行う。
③
Auto CAD LT 2002 および It’s 超 CAD3 によ
り②と同様の明石海峡大橋の側面図と合成桁
2.CADソフトウェアについて
本研究では,Auto CAD LT 2002(オートデスク
橋の主桁の製図を行う。なお,Auto CAD LT
(株)),It’s 超 CAD31)(インデックス出版)および
2002 については,明石海峡大橋の側面図のマ
図脳 RAPID5((株)フォトロン)の3種類の CAD
ニュアル3)を参考に描いた。
ソフトウェアを使用した。Auto CAD LT は,官公庁
④
図脳 RAPID5 ,Auto CAD LT 2002 および
やコンサルタントで現在最も使用されている CAD
It’s 超 CAD3 について,機能や操作性につい
ソフトであり,CAD 図面の業界標準規約のフォーマ
て比較・検討する。
ットである DXF 形式のファイルを最初に規定した
CAD で,最新バージョンは AutoCAD LT 2004 であ
3.CADソフトウェアの機能の比較
る。It’s 超 CAD3 は,現在の4年生までが使用して
CAD ソフトを使って図面を描くには,そのソフト
いる CAD ソフトの最新のバージョンで,比較的安価
の機能(コマンド)を使用するが,通常はプルダウ
表−2
コマンドグループの構成
Auto CAD LT It s超CAD3 図脳RAPID5
内容
ファイル
ファイル
ファイル
ファイル管理のコマンド
作成・寸法
作図
作図
図面作成のためのコマンド
編集
編集
編集
図面編集のためのコマンド
表示
表示
表示
図面表示のためのコマンド
ウィンドウ
ウィンドウ
ウィンドウ ウィンドウのためのコマンド
ヘルプ
ヘルプ
ヘルプ
困った時のためのコマンド
挿入
計測
補助
形式
設定
ツール
ツール
修正
表−3
コマンド
線
作図の詳細コマンドの比較
Auto CAD LT
線分
放射線
構築線
2重線
it's超CAD3
線
XY線分
垂線
平行線
角度線
連続線
自由線
2本線
矢印線
接線
2円接線
半径円
2点円
3点円
2点半径円
半径円弧
2点円弧
3点円弧
1/2円弧
1/4円弧
要素接円
2要素接円
3要素接円
図脳RAPID5
連続線
線 分
角度線分
水平垂直連続線
平行線
垂 線
接 線
円/円接線
幅付き線
円弧(3点)
円(中心)
円弧(始点,中心,終点)
円(3点)
円弧(始点,中心,角度)
円(直径)
円弧(始点,中心,長さ)
同心円
円弧(始点,終点,角度)
円弧(中心)
円弧(始点,終点,方向)
円弧(3点)
円弧(始点,終点,半径)
円弧(直径)
円弧(中心,始点,終点)
同心円弧
円弧(中心,始点,角度)
接 円
円・円弧
円弧中心,始点,長さ)
接円(3線)
円弧(円弧継続)
接円弧
円(中心,半径)
接円弧(3線)
円(中心,直径)
円(2点)
円(3点)
円(接点,接点,半径)
円(接点,接点,接点)
ドーナツ
長方形
対四角形
長方形
ポリゴン
中心四角形
角長方形
内接六角形
丸長方形
多角形
内接多角形
平行四辺形
外接多角形
多角形
1辺多角形
楕円(中心)
楕円
楕円(箱枠)
楕円(軸,端点)
箱楕円
楕円(中心)
楕円
楕円(円弧)
楕円弧
楕円弧(箱枠)
箱楕円弧
楕円弧(中心)
スプライン
スプライン曲線
曲 線
ブロック(ブロック定義)
ループ
ブロック(基点設定)
放射状線
ブロック(属性定義)
点(単一点)
曲線
点(複数点)
点(ディバイダ)
点(メジャー)
ポリライン
3Dポリライン
ンメニュー,ツールボタンおよびショートカットキ
ーのいずれかにより選択する。今回使用した3つの
CAD ソフトのコマンドグループの構成を表−2に
示す。表よりファイルの管理や図面の作成,編集お
よび表示,ウィンドウやヘルプなどすべてのソフト
に共通するコマンドと,それぞれのソフトが持つ独
自のコマンドがある。
表−3には,作図コマンドの中で実際に描画する
際に使用する線,円・円弧,多角形,楕円,曲線に
ついて,3つの CAD ソフトを比較した。表より,そ
れぞれのソフトで多様な機能を有している。描画の
際は最も適したコマンドを選択する必要があり,す
べてのコマンドの機能を把握しなければならない。
編集や表示のコマンドグループについても同様にそ
れぞれのソフトで異なった機能があり,CAD ソフト
全体のコマンドを把握することはそれ程容易とは言
えない。また,ステータスバーに表示されるメッセ
ージや座標,マウスのクリックの使い分け等も描画
の際に必要になり,それぞれのソフトで異なった決
まりとなっている。
しかし,1つの CAD ソフトをマスターしていれば,
他のソフトのコマンド操作に戸惑うことは少ないと
思われる。
4.CADソフトウェアの操作性の比較
4.1 レイヤー機能と構築線
CAD ソフトを使って図面を描くには,簡単な図面
では絶対座標や相対座標を直接入力して作図するが,
通常は最初に下書きをした後に作図を行う。その下
書きには,図脳 RAPID5 では「補助線」を使用する
が,It’s 超 CAD3 では「レイヤー機能」を,Auto CAD
LT では「構築線」をそれぞれ使用する。
It’s 超 CAD3 で使用する「レイヤー機能」とは,
CAD 特有の機能であり,レイヤーをうまく使うと
作業効率を格段に向上させることができる。全て
の要素(線や円などの図面を構成する最小単位)
は,レイヤーのいずれかに書き込まれる。レイヤ
ーはちょうど透明なシートのようなもので,最初
は全てのレイヤーが重なって見え,作図する時に
どこのレイヤーに書き込むかを選択して進めると,
各要素に意味を持たせることができる。例えば「図
面枠」,「鉄筋」,「構造」のように種類で分けるこ
とや「平面図」,
「断面図」
,「縦断図」のように図面
ごとに管理することもできる。レイヤー単位に座
標系や色や線種や線幅を設定することができるた
め,異なるスケールの図面の混在も可能である。
側面 図 S =1/ 125 00
3911140
1990800
1970800
1.5%放物線勾配
10000 10000
44930
ケーブル理論頂▽TP +297.200
道路計画高▽TP +52.675
ケーブル着力点▽TP +52.000
道路計画高▽TP +95.980
▽TP +10.000
▽TP -60.000
▽TP +2.500
▽TP -61.000
85000
道路計画高▽TP +81.055
10000 10000
960340
936340
3%直線勾配
14000
ケーブル理論頂▽TP +297.200
44930
960000
93600
3%直線勾配
2800 196294 3986
14000
▽TP ±0.000
道路計画高▽TP +81.055
80000
▽TP +10.000
▽TP -57.000
道路計画高▽TP +52.675
ケーブル着力点▽TP +52.0
▽TP +2.500
80000
78000
57000
57000
平 面図 S=1 /12 500
84500
83000
図−1
明石海峡大橋の側面図
また,作業に応じてそれぞれのレイヤーを「表示/
非表示」も可能であり,当面の作業には不要な要
素を隠して作業を進められる等の特徴がある。
Auto CAD LT で使用する「構築線」とは,両方向
へ無限に延びる線分のことで,その他の図形を作成
するときの補助として使用する。例えば,構築線を
使用して三角形の中心を見つけることができる。ま
▽TP +10.000
▽TP -60.000
た,一時的な交点として利用でき,他の図形同様に
移動,回転および複写もできる。構築線画層上に無
限の線分を作成しておけば,印刷する前にこれらの
図−2
線分をフリーズ,非表示にすることができる等の特
ハンガーロープの作図
一方,Auto CAD LT では,
徴がある。
まず主塔基礎を基準にして基本となる線を「構
①
築線」で描く。
4.2 明石海峡大橋の側面図の製図
図−1に,明石海峡大橋の側面図を示す。図脳
道路計画高▽TP +81.055
①で描いた「構築線」を基にハンガーロープの
②
RAPID5 では必要な補助線を描き,その後線分と寸
間隔で「配列複写」で複写する。配列複写とは
法線で図面を描いたが,It’s 超 CAD3 および Auto
複写したい範囲とその範囲を何本の線分で区切
CAD LT では 4.1 で説明したレイヤー機能と構築線
るかを指定することにより,自動的に線分の幅
をそれぞれ使用している。以下に,図−2に示すハ
が決まる。
ンガーロープの作図方法について,It’s 超 CAD3 と
③
最後に配列複写で複写された線を「トリム」に
Auto CAD LT で比較する。It’s 超 CAD3 では,
より上方はメインケーブルで、下方はトラス下
① 補助線の役割をするレイヤーを自分で設定し,
面線でカットする。トリムとは端点に合わせて,
主塔基礎を基準にして「XY 線分」を使って1
線分を短くしたり,長くしたりできる機能で,
本の垂線を描く。
線分の長さを調整することができる。
② 「線上複写」で①の垂線を選択する。基準点を
端点に指定し,複写回数,ハンガーロープの間
4.3 合成桁橋の主桁の製図
隔を入力することで,①の垂線を入力した回数
図−3に,合成桁橋の主桁の面図を示す。4.2 同
分複写する。
③ 作図用のレイヤーに変えて,②の垂線を上書き
する。
様に It’s 超 CAD3 と Auto CAD LT でフランジとウ
ェブの作図方法を比較する。It’s 超 CAD3 では,
① 補助線の役割をするレイヤーを自分で設定し,
合成桁橋設計図
1-Spl.Pl.430× 11× 1160(SM490YB)
2-Spl.Pl.205× 11× 1160(SM490YB)
20-T.C.Bolt.M22× 75(S10T)
S=1:100
Spl-1・ 2
430
40 250 40
CL
8@60
=480
50 50
主桁
120 8@60
=480
1-Flg.Pl.430× 19× 12500(SM490YB)
500 125
ス タ ッ ド ジ ベ ル 間 隔 3 0 @ 1 5 0 = 4 5 0 0 213
213
165-Stud.φ 22× 150
14@300=4200
356
356
469
8@400=3200
356
5@550=2750
5@550=2750
469
469
356
469
75 85 75
7575
81-Stud.φ 22× 150
550
補 剛 材 間 隔 4@1100=4400
4@1175=4700
対 傾 構 間 隔 4400
625
4700
1-Pl.do.
4
4@1175=4700
4700
支 間
1-Pl.do.
1-Pl.do.
00
00× 00
.2000×
1-Web.Pl
2-Spl.Pl.465× 1860× 8(SM490YB)
114-T.C.Bolt.M22× 65(S10T)
4@1175=4700
500
M.T.
8
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.160
× 20× 1965
6
1-Pl.do.
1-Pl.do.
0
9× 1200
.2000×(SM490YB)
1-Web.Pl
1-Pl.do.
1-Pl.150
× 20× 1085
1-Pl.do.
1-Pl.150
× 20× 1085
1-Pl.do.
(b)
1-Pl.do.
(b)
(a)
1-Pl.160
× 20× 1965
(a)
1-Pl.160
× 20× 1965
1-Pl.do.
1-Pl.do.
110 16@100=1600
90
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
4
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
8
6
M.T.
1-Pl.do.
1-Pl.do.
4
1-Pl.do.
1-Pl.150
× 20× 1085
1-Pl.do.
1-Pl.150
× 20× 1085
× 20× 1965
4
1-Pl.do.
1-Pl.do.
1-Pl.160
× 20× 2000
1-Pl.150 1-Pl.do.
× 20× 1010
1-Pl.150 1-Pl.do.
× 20× 1010
1-Pl.160
× 20× 1965
7
246
440
2000
1280
1-Pl.150
× 20× 1008
1-Pl.150
× 20× 1008
7
2-Pl.180× 25× 2000
(SM490YB)
280
110
90
(a)1-Pl.150× 20× 253
(a)1-Pl.150× 20× 328
4700
6
M.T.
4@1175=4700
4700
37000
1-LFlg.Pl.650× 30× 12500(SM490YB)
1-LFlg.Pl.650× 33× 12000(SM490YB)
8@75 85 8@75
=600
=600
650
90 90
40 210 40
90 90
2-Spl.Pl.300× 22× 1160(SM490YB)
1-Spl.Pl.650× 19× 1160(SM490YB)
84-T.C.Bolt.M22× 100(S10T)
図−3
合成桁橋の主桁
「XY 線分」
で上フランジの外側を基準として,
水平線を描く。
② 「平行線」を用いて①の水平線から,上フラン
ジ厚の間隔で下側に平行線を描く。
③ 「平行線」で②の平行線から,ウェブの高さ分
4.まとめ
本研究では,合成桁と明石海峡大橋の橋梁の製図
により,CAD ソフトウェアの機能や操作性について
比較・検討した。本研究のまとめを以下に示す。
(1)
の間隔で下側に平行線を描く。
ターするには個人差があるが,次の操作がステ
④ 「平行線」で③の平行線から,下フランジ厚の
ータスバーに表示されるため,コマンド操作に
間隔で下側に平行線を描く。
戸惑うことは少なかった。しかし,マウスのク
⑤ 作図用のレイヤーに変えて,①∼②の間隔を上
フランジ,③∼④の間隔を下フランジとして,
AutoCAD LT や It’s 超 CAD3 のコマンドをマス
リックの使い分けに戸惑いがあった。
(2)
①∼④の平行線を「線分」で上書きする。
AutoCAD LT や It’s 超 CAD3 とも図脳 RAPID5
との操作が全然違うものだと考えていたが,実
一方,Auto CAD LT では,
際には「構築線」=「補助線」,「レイヤー」=
① 直交モードを ON にし「水平線」を1本描く。
「補助線」とすれば,操作性の相違はあまりな
② ①の「水平線」を上側に上フランジ厚分オフセ
かったと思われる。
ットする。オフセットとは,線分,構築線,ポリ
ラインを平行,等距離に複写する機能である。
③ ①の「水平線」を下側にウェブの高さ分オフセ
ットする。
(3)
自分たちは,図脳 RAPID5 を先にマスターして
いたため,補助線を基に図面を描いたが,
AutoCAD LT,It’s 超 CAD3 を先に使っていた
らもっと他の描き方があったと考えられる。
④ ③のオフセットした線分を下側に下フランジ厚
分オフセットする。
⑤ 上フランジ、下フランジの端点をそれぞれ結ぶ。
以上,2つの図面の作図の結果より,AutoCAD LT
や It’s 超 CAD3 とも「レイヤー」や「構築線」のコ
マンドをマスターすれば,比較的容易に図面を描く
ことができた。
参考文献
1) 中村真二:土木技術者のための it’s Super CAD3,
山海堂
2) 三辻茂樹:やってトライ Auto CAD LT 2002,ソ
フトバンク
3) スイスイおぼえる AutoCAD LT 97
橋を一週間で描こう,日経 BP 社
明石海峡大
Fly UP