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P&G フェーダー採用 ボリュームコントロールボックス SP-02
1 季刊ステレオサウンド別冊“管球王国”Vol.74 マイハンディクラフト記事 P&G フェーダー採用 ボリュームコントロールボックス SP-02 - + これ以外につまみを止めるインチサイズの L レンチが必要です + 電解コンデンサと LED はリード線が長いほうが+です ダイオードの向きは左の図を参照 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 2 ●本体部 品名 規格 ケース サイドウッド プリント基板 フェーダー フェーダーつまみ フェーダーコネクター オペアンプ オペアンプソケット 8pin レギュレーターIC LED 電源コネクター RCAジャック(白、赤) ロータリーSW つまみ SBDダイオード 抵抗 1/4W 47Ω 1/4W 240Ω 1/4W 4.7kΩ 1/4W 100kΩ 1/4W 200kΩ 1/4W 470kΩ 1/4W 10kΩ 1/4W 47kΩ 1/4W 2kΩ 1W 47Ω コンデンサー 0.1μF マイカ 15pF フィルムコンデンサー 1μF 100V 電解コンデンサー 10μF/50V 基板取付脚 トグルSW ●電源部 品名 ケースと加工 トランス ヒューズホルダー ヒューズ 電解コンデンサー SBDダイオード ケーブル ブッシュ プリント基板 電源コネクター AC電源インレット 規格 型名 HEN110620S メーカー タカチ電機工業 SP-02専用 PGF8120/D/M/----/A P39139/5 HER-4 MUSES02 P板.com P&G P&G 日本圧着端子製造 新日本無線 NJM431L 新日本無線 R03-R3M 多治見無線 CV21G1206M DDS-75-2-7 ERA84-009 REY25 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 東京光音電波 KILO 新電元 タクマン 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 KOA WIMA MKP2 MKT1813 FG M2022 6P VISHEY ニチコン ペテット NKK 型名 TWN7-5-11W PM-18X01 メーカー タカチ電機工業 PowerMax ミゼット型 100V 1A 2200μF/35V FINE GOLD ERA84-009 2芯シールド R03-PB3F 数量 1 1 1 P&G 10k 2 2 2 U1A/B、U2A/B 2 2 U3、U4、U5、U6 4 LED 1 Connector 1 INPUT1、2、3、OUTPUT 8 SW1 1 1 D11〜D14 4 R1、R2 8 R19〜R22 4 R5、R6、R9〜R12 6 R3、R4 2 R31 1 R17、R18 2 R7、R8、R23、R24、R27、R28 6 R13, R14 6 R25、R26、R29、R30 4 R15、R16 2 C3〜C6、C9〜C12 8 C7、C8 2 C1、C2 2 C13〜C16 4 2 SW2、Power SW 2 記号 Trans Fuse Holder ニチコン 富士電機 C17、C18 サンハヤト 多治見無線 P板 Connector 数量 1 1 1 1 2 4 3P 最初に部品がそろっているかどうかお調べください。 横浜市旭区都岡町 76-4 ロジュマンⅢ-102 〒241-0805 SP-02 記号 SP-02加工済み P&G フェーダーボリュームコントロールボックス お問い合わせ先は オーロラサウンド株式会社 唐木 電話 045-953-6708 季刊ステレオサウンド別冊 1 1 1 1 管球王国 e-Mail [email protected] Vol.74 マイハンディクラフト記事 3 1.はじめに P&G フェーダーとは 今回は P&G 社のスライドフェーダーを使ったボリュームコントロールボックスを製作しました。P&G 社、Penny+Giles 社 は 1956 年設立の英国の高精度センサーやコントロールシステムの会社で、オーディオではプロフェッショナルレコーディ ング用のフェーダーが有名であり内外の一流コンソールミキサーに多く採用されておりその精度や操作性と音質は折り紙 つきです。 今新品で入手できるものはインピーダインスが 5k、10kΩと低いものしかありませんので真空管オーディオシステムの 中では使いにくい値です。本機は入力インピーダンスの高い INPUT バッファアンプで受けてからこのフェーダーを通して さらに出力インピーダンスを下げるために OUTPUT バッファアンプで送り出すような構成にしました。こうすることにより 真空管フォノイコライザでも SACD プレーやでもいかなる音源機器から安定した条件で信号を受け、またどのようなパワー アンプにもよい条件で信号を送り出すことができます。バッファアンプの無いパッシブ型フェーダーではフェーダーのボ リュームの位置でインピーダンスが変わるため組み合わせる機器の条件が合わないと音がやせたり弱弱しくなったりまた 高域が下がったりすることがありますが本機ではその心配はありません。 2.回路構成 オペアンプ MUSE 採用のアクティブ型 図1に本機の回路図を示します。IN と OUT のバッファ部には今話題の"MUSE”を採用しました。これは新日本無線が 2009 年に発表したオーディオ専用オペアンプで、すべてを音質のためだけに的を絞って開発されています。内部チップの回路 レイアウトを全面的に見直し、ワンパッケージ内には 2 回路あり通常はそれを同じシリコン基板の上に構成するところを、 チャンネル間セパレーションを上げるためにわざわざ別々のチップに分けて 2 チップを封入し、またリードフレームは通 常は鉄の合金ですが MUSE では高純度無酸素銅を採用しています。専用の試聴室を設けそこで音を実際に聴きながら改良を 加え完成したそうです。データシート上の電気的特性をみると最新の数字は見られませんが、私自身で新日本無線に行っ ていろいろと試聴させていただきました。価格も決して安くはありませんがなるほどと納得することが多かったので使っ てみました。いまや国産の高級オーディオメーカも次々に採用を決め、MUSE のロゴマークを機器の中に見ることが多くな っています。 今回はこのシリーズから“MUSE02”というバイポーラトラン ジスタ入力型を選んでいます。MUSE02 は FET 入力の MUSE01 に比 べて音の切れ込みが鋭く明瞭な音質です。INPUT バッファの増幅 率 1.47 倍です。増幅率は GAIN=(R5+R7)/R7 の式で求められま す。 (4.7k+10k.)/10k =1.47, ゲインが大きすぎるときは R5 の 4.7k を小さくしてフィードバック量を増やします。小さすぎる ときはその逆です。ただし電源電圧が+/-15V ですのであまりゲ インを上げますと入力の信号を大きく増幅してしまいピーク to SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 4 ピークで+/-15V の範囲に収まらなくなってひずみが増加します。パワーアンプのゲインやスピーカの能率などにより御自 分のシステムに合わせてちょうどよいところにフェーダーの位置がくるように調節できます。入力インピーダンスは R3 で 決められ本機では 100kΩにしました。C1 は前段からの DC リークがあったときフェーダーを動かすとガリガリとノイズが 発生場合があるのでそれを防止するためです。R3 と C1 でローカットフィルターを形成しますがカットオフ周波数は 1.6Hz と低いため影響はありません。OUTPUT バッファはボルテージフォロワ回路で増幅率は 1 倍です。出力インピーダンスは R15 で 47Ωです。R15 は出力を短絡したときのオペアンプの保護やまた容量性の負荷に対するは発振防止などの役目もありま す。このようにオペアンプ回路はすべてが抵抗の値だけで設計できますので大変便利でわかりやすく応用範囲が広いもの です。 電源回路は別のケースに入れました。整流ダイオードにはノイズの少ないシットキバリア型です。電源ケースでは AC100V を DC に変換するところまでで、ケーブルで本体に送って、本体内部のシャント型レギュレータでリップルの無い安定した +/-DC15V を精製しています。ここにも新日本無線の NMJ431 を採用しました。シャント型は IC が発生する基準電圧を外部 の抵抗の分圧回路,R23,R25 で希望する電圧にする構成のものです。よくある 3 端子型レギュレータに比べて電圧の変換効 率は悪いですが音質がよいことで定評があります。本機では+/-両電源でしかも L/R 別々のシャントレギュレータをオペア ンプのすぐ近くに構成しチャンネルセパレーションと音楽信号の変動による消費電流の変化に対するよりよい安定性を追 及しました。 Volume Box with P&G Fader SP02 Right CH +15V Copy Right Shinobu Karaki Aug.2014 C7 15p R5 4.7k C3 0.1u U1A U1B MUSES02 2/2 C13 4 2 C1 1uF R25 2k C9 10uF NJM431 0.1u 3 6 1 5 + R19 240 D11 ERA84-009 - U3 8 8 R1 47 R11 4.7k R15 47 1W R27 10k R29 2k C5 0.1u 7 + R23 10k - MUSES02 1/2 U5 C11 NJM431 R3 100k C15 10uF D13 R9 4.7k R13 100k R7 10k R17 470k 0.1u 4 -15V R21 240 Vcc+ GND Vcc- IN-R GND To Vol Fm Vol GND GND MN SW OUT-R SW1A Power SW R31 200k LED P&G 10k L-CH INPUT 1 INPUT 2 INPUT 3 OUTPUT C B SW2 L/R mix A GND B VccC Vcc+ Stereo P&G 10k R-CH Mono. A SW1A Vcc+ GND Vcc- Connector Chassis Ground IN-L Left CH GND To Vol Same as Right CH, 部品番号は R-CH は奇数、L-CH は偶になっています。 Fm Vol GND MN SW GND OUT-L All parts number are Even number LED と R31 は雑誌の回路図では Vcc+と GND に接続されていますが それは誤りです。正しくは Vcc+と Vcc-に接続してください。又、雑誌では U1A の 8pin が+15V,4pin が-15V に接続されて いますが、8pin と 4pin は入れ替わっております。上図が正しい pin 番号です。 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 5 電源部回路図 3.部品 P&G に見合った部品選び フェーダーやオペアンプに高級パーツを投入していますのでロータリースイッチもそれに見合ったレベルのものを選ん でいます。東京光音電波社製の高信頼性のもので、通常の一個 500 円のものに比べて約 16 倍の価格です。抵抗は TAKMAN 社のオーディオ用金属皮膜抵抗です。精度は1%、オペアンプ回路は前述しましたようにすべて抵抗の値で設計しますの で 5%や 10%のものを使いますとそのまま全体の精度が悪くなってしまいます。ケースはタカチで本機のために特別に設計 した加工と印刷を施し、また特製の木製サイドパネルを準備しました。 4.製作 プリント基板と専用ケースで初心者でも安心 専用のプリント基板を用意しました。回路パターンは裏面だけで表面は全面べたアースになっています。パターンは太 くし間隔も広く取っていますので大変半田付けしやすいでしょう。写真のように抵抗を回路図の部品番号と照らし合わせ ながら穴に挿入します。全部装着したら基板を裏返し、裏面からハンダ付けしてください。使用する半田は共晶半田とい う比較的低い温度で溶けてまた流れやすいものを使ってください、どこでも入手できます。鉛フリーはお勧めしません、 溶ける温度が高くまた部品を間違った場合半田を溶かして取りはずすことが専用の工具が無いときれいにできないからで す。 左は基板表面のシルク印刷, 右は配線パターンを表面からみた透視図です。 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 6 次は IC ソケット、ダイオード、0.1uF のフィルムコンデンサと順に部品の高さが高いものを半田付けしていきます。 最後に電解コンデンサです。ダイオード、電解コンデンサ、NMJ431L は方向性がありますので注意してください、他の部 品はありません。 半田付けが全部終わったら半田ブリッジなどで隣のパターンとショートしていないかを目で十分確認してください。 バックパネルに RCA ジャックや電源コネクタを取り付けます。RCA ジャックは図のようにナイロンワッシャを使いケー スから絶縁します。ロータリーSW は高さ調節用の菊ワッシャ 2 枚を使いますとつまみとケースの隙間がちょうどよくな ります。つまみの芋ネジはインチサイズの L レンチをお使いください。内部配線にはシールド線を使う必要はありませ ん、ケース内にトランスが無くまたゲインも低いので普通の線材をよって使えばまったくノイズの心配はありません。 フェーダーのコネクタはあらかじめ組み立てられています。このフェーダーは 4 本のリード線があり、3 本は普通のボ リュームと同じで、残りの 1 本は絞り切ったときに信号を完全にカットするためのショート回路になっています。 ペテットの端を切ってスペーサーを取り付け基板を取り付けてからケースに貼り付けてください。ペテットの接着力は 大変強いので十分位置を確認してから注意して取り付けてください。 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 7 本体内部を配線するときはケース表面に傷がつかないように紙などで覆って保護してください。 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 8 電源ボックスは雑誌の記事ではユニバーサル基板でしたが本 KIT ではプリント基板にしました。プリント基板上の電源 の入力端子の配列とトランスとの接続は下図をよく見て注意して半田付けしてください。また写真のようにすべての部品 をケース本体側に取り付けたほうが配線はしやすいでしょう。この場合はトランスは接着剤で取り付けます。 基板をとめる木 ネジは長いので先 が表に出ないよう にナットをスペー として使います 電源 DC ケーブルは写真のようにコネクタや熱収縮チ ューブを先に通してから半田付けします。 5. 各部の電圧を確認 すべて配線が終わりましたら各部の電圧をチェックします。電源ボックスの電圧はまだ何もつないでいませんので DC 約+22V、-22V のはずです。トランスには 18V と書いてありますがこれは負荷をかけたときの定格電圧です。次に本体と 接続して、IC ソケットのピンに電圧をチェックします。4pin が約-15V,8pin が約+15V、その他の pin は 0V であれば OK です。もし違う場合は電解コンデンサやダイオードの向きが間違っている可能性があります。いよいよオペアンプをソケ ットに挿入し、IC の各 pin の電圧をチェックします。前と同じはずであれば OK,もし違いますとオペアンプを逆にさした 可能性がありますのでよく見てください。逆挿入して電源を印加した場合はオペアンプにダメージが加わりましたので所 定の性能は出なくなります。正常であれば NJM431 が少し熱くなってきますが問題はありません。木製サイドパネルは最 後に接着剤で固定してください。さあ、音を出してみてください。今までの苦労がすべて報われることでしょう! SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事 9 6.Audio Precision 社アナライザによる測定 矩形波応答波形、周波数特性、ひずみ率など現代のハイレゾに十分応えられる優秀な電気的特製結果がでました。 7.試聴結果 フェーダー、MUSE オペアンプなどの素材を生かしたシンプルな回路ですのでまったく色付けのない素直な音です。レ スポンスの速いハイスピードサウンドで低域もまったくにごり無く十分な量感を感じます。高域は明瞭でシンバルの響き がすがすがしいです。解像度が高く、また逆に録音物のあらも見えますのでもモニター用途に向いているでしょう。フェ ーダーは L/R の微調整がやりやすいのでシステム聴く音楽に合わせて調整するのが楽しいですので、ぜひチャレンジして みてください。また他の OPAMP で MUSES8980D,MUSES8920D,OPA2604,LME49860,NE5532 などが差し替えできます。 OPA627,LME49990 も変換アダプターを使えば可能です。MUSES01 は電源 ON/OFF のノイズ大きいので注意が必要です。 以上 SP-02 P&G フェーダーボリュームコントロールボックス 季刊ステレオサウンド別冊 管球王国 Vol.74 マイハンディクラフト記事