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すそ野が広がる 農業分野への企業参入

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すそ野が広がる 農業分野への企業参入
化学企業のアグリビジネス
すそ野が広がる
農業分野への企業参入
株式会社旭リサーチセンター 主席研究員
中小企業診断士
1.関心や期待が高まる企業の
農業参入
は
せ がわ
まさ ふみ
長谷川 雅史
2.事例でみる企業の農業参入
アベノミクス成長戦略で「攻めの農林水産
2 - 1 食品関連産業はサプライチェーン
業」が志向されるようになったこともあり,
全体での競争力強化を狙う
今後の成長分野として農業が注目され,企業
の農業参入への関心も高まっている。
企業の参入事例として,食品製造業や流通
企業が農地をリース方式で借りて農業参入
業,外食産業など食品関連産業は,原料とな
する場合は,2009年の農地法改正で規制が
る農産物の生産を目指した参入となってい
大幅に緩和され,一定要件を満たせば全国ど
る。
こでも可能となっている。
2,000
1,898
NPO法人等
リース方式での農業参入
1,800
特例有限会社
1,712
は,農地法改正後2010年 1,600
1,576
株式会社
481
1,392
6月末の参入法人数が175 1,400
434
406
1,261
233
であったのが,2014年末 1,200
354
1,071 314
218
195
952
で は1712と な っ て お り, 1,000
180
255
170
204
800
約10倍に増えている。業
677
145
144
527 134
1,184
600
種別にみると食品製造業
975 1,060
96 108
858
364
777
400
90
671
69
や 流 通 業, 外 食 産 業 な ど
604
17529
63
435
200
341
235
食 品 関 連 産 業 が 全 体 の4
117 29
0
分 の1(24%)
,建設業が
H22.6 H22.12 H23.6 H23.12 H24.6 H24.12 H25.6 H25.12 H26.6 H26.12 H27.6
11%,製造業5%など,幅
図1 農業参入した一般法人数の推移
広い業種から農業への参入 (資料)農林水産省「企業等の農業参入について:一般法人の参入状況」
(2015年6月末)
,図2と図4も同じ
が相次いでいる。
2016・3 月号
17
その他(サービス業他)
401法人(21%)
教育・医療・福祉
食品関連産業
(学校・医療・
社会福祉法人)
74法人(4%)
447法人(24%)
参入法人数
(1,898法人)
特定非営利活動
(NPO法人)
199法人(10%)
農業・畜産業
386法人(20%)
その他卸売・小売業
93法人(5%)
製造業
90法人(5%)
建築業
208法人(11%)
図2 参入法人の業態別内訳
①食品製造業:地場の酒造,惣菜業から大手
食品メーカーも
食品製造業では,宮城の酒造・一ノ蔵が酒
米栽培に取り組む例,浜松の惣菜業・知久が
安全でヘルシーな惣菜の材料となる野菜を生
産する例,広島の三島食品が赤しそふりかけ
「ゆかり」の原料から一貫生産する例などが,
代表事例として知られている。大手食品メー
カーでは,カゴメが加工用トマトの品種開発
力,農業技術力を応用して,生食用トマトの
栽培に取り組んでいる。ベビーリーフやカッ
ト野菜,サラダ商材など高付加価値野菜も手
掛ける生鮮野菜事業の売上高は100億円規模
に達している。
②流通業:大手流通が三者三様の参入
流通業では,セブン & アイ・グループのイ
トーヨーカ堂が2007年の食品リサイクル法
改正を機に,店舗から出る食品残渣を肥料と
して農産物を生産し,その農産物をもとの店
舗で販売するため,全国にセブンファームを
展開している。イオングループは2009年に
イオンアグリ創造を設立,自らが農業に取り
組み,生産から店頭販売まで一貫したプライ
ベートブランドの野菜などをグループ店舗へ
供給している。また,ローソンは2010年に
ローソンファーム千葉を設立して以降,各地
の有力な農業者と組んで農業生産法人を設立
し,自社店舗で扱う有機野菜等の生産を全国
表1 主な大企業の参入事例
食品製造/流通業
カゴメ
セブン&
アイ
イオン
ローソン
外食産業
モス
ワタミ
製造業/サービス業
住友化学
王子製紙
JR 九州
概 要
加工用トマトの品種開発力,農業技術力を応用し,環境保全型のコンピュータ管理された
大規模ハイテク菜園11か所を中心に,
生鮮トマト14千トンを供給。2012年に黒字化を達成。
食品リサイクルの向上と地域農業の活性化を目的に農業生産法人セブンファームを設立,
店舗からの食品残渣を堆肥化,自社農場,契約農家で農産物生産,近隣店舗で地場野菜と
して販売。
都市近郊型農業や効率性の高い大規模農業のビジネスモデル確立をめざして,イオンアグ
リ創造を設立,イオン直営農場の運営および農産物の生産委託に取り組む。
ローソングループ店舗向けに,“安心・安全” な野菜等を安定供給することを目指し,地
域の有力農業者と組んで農業生産法人ローソンファームを展開。
モスバーガー店舗で使用する生鮮野菜の安定した調達と農業生産地との協力体制強化を目
指し,農業生産法人等と共同出資し、農業生産法人サングレイスやモスファームを設立。
安心・安全な農産物の提供、食品廃棄物の再資源化飼料化などエリア内での有機循環モデル
タウンづくりを推進すべく、ワタミファームを設立,畑作,酪農,畜産,育苗などに取り組む。
自社の農業関連資材(農薬・肥料・農業資材),農産物の栽培・販売ノウハウを活かし,
住化ファームを通じて、農業現場の問題解決,農業の活性化、農業経営の総合的支援を行う。
植物工場の開発と運営を手掛けるグランパと共同出資で農業法人を設立,自社所有地(森林
資源研究所跡地)に太陽光利用型植物工場を設置し,リーフレタスなど葉物野菜を栽培販売。
九州の基幹産業である農業を元気に,美しい田園風景を守る、仕事の本質で農業と鉄道は
通じるとして,農業生産法人 JR 九州ファームを設立。
時期
1999
2008
2009
2010
2007
2002
2009
2014
2010
(出所)各種資料,報道等より旭リサーチセンター(ARC)作成
18
化学経済
<特集>化学企業のアグリビジネス
で展開している。
③外食産業:外食大手ではモスやワタミなど
外食産業では,モスバーガーを展開するモ
スフードサービスは,地域の農業者との共同
出資で,店舗で使用する生鮮野菜の安定した
調達と産地との協力体制強化を図っている。
居酒屋チェーンを展開するワタミは,安全で
安心な食材を使った料理の提供,有機農業の
推進を掲げて農業生産法人ワタミファームを
設立,各地で農場,牧場を展開している。
このように,食品関連産業では,より安全
で安心な原料,原料の質を求めて,あるいは原
料の量を確保するため,原料から加工までの一
貫体制を構築し,それをブランド化し,他社と
の差別化を図るため,農業に参入している。
2 - 2 建設・製造・サービス業は新規事業
開拓や地域活性化・貢献を狙う
①建設業:地域密着の強みをいかして参入
食品関連産業に次いで参入の多い建設業で
は,公共事業の縮小など建設工事需要が減少
するなか,新規事業,経営多角化として農業
に参入している。建設業は地域密着産業であ
り,地域の主要産業である農業の衰退や遊休
農地,耕作放棄地の拡大に危機感を持っての
参入という面もある。建設業で過剰となった
雇用を農業で活用できること,地域の土木建
設工事を通じて農地や人間関係,ネットワー
クを持っていることも,農業参入を促す要素
といえる。
②製造業・サービス業:新規事業分野として
注目
製造業では,海外生産シフトが進む自動車
部品や造船,ソーラーパネル部品などの製造
業が,地域での産業活性化につながる新規事
業分野として参入している。また,日進月歩
の IT 業界などで,高齢化した従業員の雇用
確保の場として農業に参入する例もある。一
方,住友化学は農薬や肥料,農業資材など自
2016・3 月号
社の農業関連資材や,農産物栽培・販売のノ
ウハウ,技術を活用して,農業に参入してい
る。サービス業では,JR 九州が農業生産法
人 JR 九州ファームを設立して農業に本格的
に取り組んでいる。九州の基幹産業である農
業を元気にし,鉄道の車窓から見える美しい
田園風景を守るこも目的である。
③植物工場:天候や季節に左右されない工場
で農業を
このほか,最近,増えているのが,工場等
の施設内で葉物野菜の生産に取り組む植物工
場である。施設内で光や温度・湿度,CO2濃度,
水分・栄養素などを調整し,露地栽培のよう
な天候や季節による影響を受けず,年間を通
じて高品質で安定して生産できるメリットが
ある。農地を取得,賃貸する必要がなく,製
造業では稼働しなくなった工場の再利用を図
れることもあり,さまざまな業種から参入が
相次いでいる。施設内で LED など人工光を
用いる人工光型植物工場の数は,最近4年間
で3倍に増えている。
2 - 3 短期的利益は期待薄,長期的視点で
の取り組みが必要
期待される企業の農業参入だが,大手では
オムロンやユニクロの撤退例がある。農林水
産省によれば,2003~2009年までに参入し
た企業436社のうち112社,4分の1は撤退し
ている。植物工場も7割は赤字経営だといわ
れている。
大きな課題は農産物の販売,販路開拓であ
る。食品関連産業の場合は,参入した企業自
身が需要者なので大きな問題とはならない。
食品流通業であれば,自社の持つ流通ネット
ワークを通じて販売拡大のチャンスが広がる
面もある。しかし,建設業や製造業から参入
した事例をみると,栽培技術面での取り組み
やすさで品目を決め,その後,農産物の販路
開拓に取り組むケースも多い。
19
最近増えている植物工場も,建物や環境を
制御する設備など初期投資や光熱費などのコ
ストがかかり,露地野菜よりも高コストとな
る。卸売市場を経由した販売では露地野菜と
同じ価格で取引されてしまったり,独自の販
路をもたないため計画通りに生産はできても
売れなかったりする例も多い。植物工場なら
ではの高付加価値化,差別化と販路開拓が課
題と指摘されている。
また,先行企業は今後,農業参入を考える
企業に対して,販路開拓や地域密着・連携と
いった課題のほか,「農業経営を採算ベース
に乗せるには時間がかかる」,「経営者自らが
農業に取り組む覚悟がないと継続は難しい」
など経営者の覚悟にも言及している。首都圏
で企業の農業参入を誘致している自治体関係
者によれば,農産物の栽培サイクルは最低半
年で,
栽培技術を習得するまでは数年かかり,
初期参入コストを含めて経営収支がトントン
になるには少なくとも10年かかると指摘し
ている。成功例とされるカゴメは,ブランド
力や流通ネットワーク,さらに先進的な技術,
設備を導入できる資本力など強みを持ってい
たが,それでも当初は生産と販売がかみ合わ
ず,事業の黒字化には参入から10年以上経
過した2012年までかかっている。
企業の農業参入は,食品関連産業でみられ
るように,農産物などを原材料とする産業が
その川上産業に当たる農業に参入すれば,サ
プライチェーン全体を通じて競争力強化を図
ることができる。また,建設業などでみられ
るように,地域産業としての農業の振興に取
り組むことは,地域や社会との共生,地方創
生という観点からも評価できるだろう。しか
し,企業が農業参入で短期的利益を求めるこ
とは難しい。企業が農業参入するには目的,
理念を明確にしたうえで,さらに長期的視点
に立った取り組みが必要とされる。
20
3.農業の生産性向上に向けた
経済界と農業界の連携
3 - 1 生産性向上が急務なのは畜産や
コメなど
日本の農業は,経営規模が小さく生産性が
低いこと,食料自給率が低いこと,輸入関税
を高くして農業を保護し,消費者に負担を転
嫁していることなどが,問題点としてよく指
摘される。企業の農業参入は,これらの解消
につながっているのだろうか。
参入企業の農地面積規模の分布をみると,
1ha 未満が5割超で,5ha 未満が9割を占める。
これに対し,2015年農林業センサス結果で
農業経営体の面積規模別の割合をみると5ha
以上が6割弱を占めている。今のところ,企
業の農業参入は規模の小さな経営体が増える
結果となっており,参入した企業が大規模経
営を行い,農業の生産性を高めるまでには
至っていない。
0
20
40
60
80
100%
農業参入
一般法人
農林業
センサス
~0.5ha
0.5~1ha
1~5ha
5~20ha
20ha~
図3 農業の面積規模別構成比
(出所)農林水産省の「企業等の農業参入について」
(2015年6月末)と「2015年農林業センサス
結果の概要」(2015年2月1日現在)を基に
ARC作成
化学経済
<特集>化学企業のアグリビジネス
高い
また,農業参入し
米 自給率 100%
た企業の営農作物を
関税 341円/kg
関税は低く,
自給率は高い
(778%相当)
みると,野菜が4割
レタス 自給率 87%
自給率は高いが,
(葉茎菜類)
強を占める。植物工
高関税で守られている
関税 3%
場で栽培されるの
トマト 自給率 67%
も,レタスやトマト
(果菜類)
飼料自給率を考慮すると
関税 3%
などの野菜である。
自給率は低く,関税で守られている
牛肉 自給率 41%
ただ,自給率を見る
<11%>
とレタスなど葉茎菜
関税 39%
類 は87%, ト マ ト
自給率も関税も低い
自給率は低く,関税は高い
な ど 果 菜 類 も67%
小麦 自給率 12%
大豆 自給率 7%
関税 55円/kg
関税 0%
と比較的高く,輸入
(252%相当)
関 税 は3% と 低 い。
低い
輸入関税
高い
野菜は,生産性や競
争力の向上が急務と 図5 品目別の自給率と関税の分布
なっている分野とは (出所)農林水産省「食料自給表」と財務省「実行関税率表」を基にARC作成
いえない。
一方,コメは自給率が高いものの,それは
響が大きいと見込まれており,飼料の国産化
高関税で保護されている結果でもあり,大規
も含め競争力向上が必要とされている。
模かつ効率的な経営による稲作コスト低減,
企業の農業参入が多いのは野菜分野だが,コ
生産性向上が求められている。小麦は高関税
メや小麦など穀類の土地利用型農業,畜産分野
だが,自給率は12%しかない。牛肉や豚肉な
こそ,生産性向上が期待されている分野である。
ど畜産分野も関税率は高く,牛肉や豚肉の自
3 - 2 企業の技術やマネジメント手法で農
給率は40~50%程度だが,飼料を輸入に頼っ
業の生産性向上を
ているため,それを加味した自給率は10%前
後と低くなる。畜産分野は TPP 発効による影
こうしたなか,最近は企業が農業そのもの
自給率
低い
畜産(飼料用作物)
48法人(3%)
花き
46法人(2%)
その他
27法人(1%)
工芸作物
84法人(4%)
果樹
野菜
184法人
(10%)
米麦等
参入法人数
(1,898法人)
807法人(43%)
337法人(18%)
複合
365法人(19%)
図4 参入法人の営農作物別内訳
2016・3 月号
に参入するのではなく,企業が持つ技術や科
学的マネジメント手法を農業に導入する動き
が広がりつつある。
農家が経験や勘で蓄積,継承してきた農作業
や農業暦などを「見える化」すれば,
スケジュー
ル管理や栽培技術が「標準化」できる。また,
ITをはじめ先進的な技術を応用することで,農
業の生産性向上,競争力強化にもつながると期
待されている。かつて農業参入から撤退したオ
ムロンも,施設園芸での栽培を制御するシステ
ムの技術開発に取り組んでいる。
農業者と異業種企業が連携して,企業の持
つ技術やノウハウを農業で実用化する「先端
21
モデル農業確立実証事業」では,野菜のほか
穀類の土地利用型農業,畜産などにも取り組
み事例がみられる。ICT を利用した管理,マ
ネジメントの導入のほか,新たな設備・施設
の開発,ロボットなどの機械化,さらには化
学や工学を応用した栽培技術の開発など,多
様な分野で連携が広がっている。
コメに関しては,トヨタが農業生産法人と
連携し,トヨタ式生産管理手法やカイゼンの
ノウハウを稲作現場に応用するプロジェクト
に取り組むほか,コニカミノルタは無人ヘリ
コプターにカメラを設置,空撮で得られた情
報で水稲生育を把握するシステムを開発して
いる。畜産分野では高分子凝集剤などを利用
した糞尿処理法の確立や,分解性フィルムを
用いた寒冷地での飼料用トウモロコシの安定
品質生産などの取組みが展開されている。
2015年3月に農林水産技術会議がまとめた
農林水産研究基本計画では,異分野融合研究
の重要性が指摘されている。ICTやロボット技
術が農業人口減少,高齢化が深刻な現場にブ
レイクスルーをもたらす可能性に言及してい
るほか,分子生物学やゲノム工学技術を育種,
疫学分野に応用することに期待を寄せている。
表2 農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業(分野分類)
管 理
野 菜
機 械
技 術
セン サ で 環 境 情
報 を 監 視し 高 溶
存酸素ファインバ
ブル水を用いた養
液土耕栽培
住友化学,パナソ
ニック,日産の知
見,ICT 技術,生
産ノウハウを応用
太 陽 光と 家 庭 用
給湯器を活用した
効率的な温 室暖
房方法の開発
高 張 力パ イプ を
使ったユニットハ
ウス開発,ミドル
ワイヤー式トマト
栽培
ロボット技術を応
用したトマト収 穫
作業の効率化
土壌・作物栄養・
機能 性の統 合診
断分析システムの
構築
企業再生・経営効
率化のノウハウを
応用した農業経営
モデルの確立
自動生産出荷シス
テムなど情報シス
テムを融合した経
営モデル構築
自動灌水制御シス
テムと自動遮光カー
テンシステムを導入
した葉菜類栽培
CFRP 製 フレ ーム
のビニールハウス,
養液栽培システム,
太陽光発電を導入
野菜の収穫やコン
テナの移動などに
対応した農業用ア
シストスーツの開発
地 域 資 源を燃 料
源とした新開発の
木質バイオマス温
風発生器
低コストかつ屋外
設 置可能な完 全
人 工光 型 栽 培 装
置の開発
作物生育モニタリ
ングや環境センシ
ング等と,農作業
改善を組み合わせ
穀 類
無人ヘリの特殊カ
メラで水稲生育バ
ラツキを把握,可
変施肥判断
トヨタの生産管理
手法改善ノウハウ
を応用した農業 IT
管理ツールを開発
農薬・肥料・資材
等の入出庫に作業
計画管理支援シス
テム(PMS)活用
コンバインのレン
タル化による稲作
経営コスト低減
畜 産
大 規 模 農 場 にお
ける肉牛の肥育率
向上を実現する作
業工程管理システ
ムの開発
果樹等
気象ビッグデータ
活用による農業用
気象予報システム
の開発
設 備
ミクロ粉砕技術を
活用して農産物をパ
ウダー化,加工品
開発と副産物活用
ICT ブルドーザを
活用した農地改良
技術の開発
イオン水生成装置
に よる 直 播 栽 培
農法確立
常用管理機にアー
ム式草刈機を装
着した常用草刈機
の開発
分解性フィルムを
用 い た, 寒 冷 地
でのトウモロコシ
の安定品質生産
高 分 子 凝 集 剤と
ハイブリッド式人
工湿地ろ過システ
ムを利用した糞尿
処理法
生産オートメーショ
ンを推進し,ポット
マム(鉢花)生産工
程での生産性向上
熱線吸収フィルム
を活用したイチゴ
栽培技術確立
(出所)先端農業連携推進機構( http://sentannogyo-kiko.jp/)を基に ARC 作成,表3も同じ
22
化学経済
<特集>化学企業のアグリビジネス
表3 産業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業(製造業の事例)
コニカミノルタ
小松製作所
トヨタ自動車
IHI
ヤンマー
帝人エンジニアリング
地球快適化
インスティテュート
東芝
無人ヘリコプターに特殊カメラを搭載・空撮,得られた情報から圃場内の水稲生育バラつきを把
握し,可変施肥判断ができるシステムの開発
ICT ブルドーザを活用し農業者が自主施工できる簡易な農地改良技術
愛知,石川の米生産法人と連携,トヨタの生産管理手法,改善ノウハウを米生産に応用した農
業 IT 管理ツール「豊作計画」を開発,視える化や現場改善で生産性向上
人工衛星等による作物生育モニタリングや気象計による環境センシング等と,農作業カイゼンを
組み合わせた農業経営モデルの構築
熱線吸収フィルム被覆によるイチゴ生産の安定と収益が向上する技術
新開発のボイラー(木質バイオマス温風発生器)に間伐材等の地域資源を燃料源とした,低コ
ストの施設園芸モデル
高分子凝集剤とハイブリット式人工湿地ろ過システムを利用した,低コストかつ低環境負荷の糞
尿処理法
食塩・水・電気から生成される電解機能水を養豚畜産事業に導入し,衛生状態の改善,疾病予
防などを低コストで実現
表4 農林水産研究基本計画(2015年3月31日)で挙げられた技術テーマ(例)
分子生物学やゲノム工学技術の知見を応用した品種育成
・超多収の飼料用米専用品種の育成や省力栽培技術
・複数の病害虫に抵抗性を有する稲・麦・大豆品種の育成
・高温耐性の高い主食用米品種の育成
物理的・化学的・生物的な防除法を組み合わせた病害虫・雑草管理技術
・標的とする害虫等以外の生物への影響を最小化する薬剤とその利用技術
・光や土着の天敵等を活用した新たな物理・生物的な防除方法の開発
簡易な土壌診断技術
・ほ場の地力程度等に応じて農業者自らが適量施肥に取り組める
家畜疾病のまん延防止のための検査、ワクチン、抗ウイルス剤
・牛ウイルス性下痢・粘膜病,ヨーネ病等に対する診断技術,新規ワクチンの開発
・豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS),豚流行性下痢(PED)等の診断技術,ワクチンの開発
・原因病原体等の正確かつ迅速な検査法,ワクチン等の省力的かつ効果的な防疫資材の開発
畜産関連
・食肉中のオレイン酸含有量を高めるなど畜産物の差別化・高付加価値化のための新たな給餌方法の開発
・家畜排せつ物や林地残材等のバイオマスを肥料・エネルギーに転換する技術
その他
・植物の物質吸収・輸送メカニズムを解明し,人の健康に有害なヒ素を吸収しにくい農作物の開発
・昆虫の嗅覚受容メカニズム等を応用した有害物質の高感度検出・識別技術
・医薬品や機能性素材等を植物やカイコ等につくらせる技術の開発
・薬用成分に優れた薬用作物品種の育成や栽培技術体系の確立
(出所)農林水産研究基本計画を基に ARC 作成
飼料用米の専用品種,病害虫への抵抗力を
もった稲・麦・大豆品種,温暖化が進むなか
高温耐性の高い主食用米品種の育成や,物理
的・化学的・生物的な防除法を組み合わせた
病害虫・雑草管理技術などが,今後の課題と
して示されている。畜産分野では,家畜疾病
まん延防止のための検査・ワクチン・抗ウイ
ルス剤の開発,家畜排せつ物の肥料やエネル
2016・3 月号
ギーへの転換に対する期待も高い。
日本経団連も2015年から JA グループと共
同で「経済界と農業界の連携強化ワーキング
グループ」を設けており,経済界と農業界の
連携は深まりつつある。TPP や気候変動問題
など課題が山積する農業分野は,経済界の技
術やマネジメント手法を生かせるビジネス
チャンスではないだろうか。
23
Fly UP