...

Abstract of the Dissertation and the Summary of the Examination

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

Abstract of the Dissertation and the Summary of the Examination
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
Studies on Compounds Responsible for Radicalscavenging Activity of
Shodo Island Olive : Abstract of the Dissertation and the Summary of the
Examination Results
Author(s)
蒋, 立勤; 的場, 輝佳; 小城, 勝相; 高村, 仁知; 水上, 戴子
Citation
博士学位論文 内容の要旨および審査の結果の要旨, vol.22, pp.83-88
Issue Date
2005-08
Description
博士(学術),博課第263号,平成17年3月24日授与
URL
http://hdl.handle.net/10935/1243
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-04-01T02:05:20Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
氏 名 (
本 籍)
蒋
学 位 の 種 類
博士 (
学術)
学 位 記 番 号
博課第 2
6
3
号
学位授与年月 日
平成 1
7
年 3月2
4日
学位授与 の要件
学位規則第 4条第 1項該 当
立勤
(
中華人民共和 国)
人 間文化研究科
論
文 題
目
St
ud
i
e
so
n Co
mp
o
und
s Re
s
p
o
ns
i
b
l
ef
o
r Ra
d
i
c
a
l
s
c
a
v
e
ngi
ngAc
t
i
v
i
t
yo
fSho
d
oI
s
l
a
ndOl
i
v
e(
小豆島
産 オ リーブの ラジカル捕捉成分 に関す る研究)
論文審査委員
(
委員長) 教授
助教授
的 場 輝 佳
教授
小
高 村 仁 知
教授
水
論文 内容 の要 旨
最近 の研究 によ って、 ガ ン、老化、生活習慣病発症 のメカニズムにフ リー ラジカル ・活性酸素 が深
く関わ っていることが明 らか とな らて いる。 我 々が 日常摂取 している食品 には、活性酸素 ・フ リー ラ
ジカルの生成 やその作用 を抑制す る多様 な成分が存在す ることも明 らか にな ってお り、 これ らの疾病
を予防す る上で、食品の持っ抗酸化性、特 にラジカル捕捉活性の効果 に期待が寄せ られている。オ リー
ブ油 は地 中海料理 に多 く使用 されてお り、疫学的な研究で地 中海地方 の食事 は、 その地方 の心臓病や
一部 のガ ンなどいわゆ る生活習慣病 の発症が低 い ことに関係 しているといわれている。 オ リーブ油 の
機能性成分 は、主 に一価不飽和脂肪酸、 ポ リフェノール、 トコフェロ-ルなどとされてお り、 これ ら
の機能性成分 の組成 と含量 はオ リー ブの熟成度、品種、産地、天候、加工法、保存 などによ って大 き
な変化す る。 しか し、地 中海以外 の地域 で生産 されたオ リーブ油やオ リーブ製品 に関す る研究 は少 な
い。
日本 の小豆 島にお けるオ リーブ栽培 と加工 はすで に百年 の歴史 があるが、小豆 島産 オ リーブ油 とオ
リーブ加工品 に関す る研究 は少 ない。 そ こで本研究で は、小豆 島産 オ リーブの ラジカル捕捉活性 に着
目 し、加工 および保存過程 におけるラジカル捕捉活性 および活性成分 の変化 につ いて解析 した。 さ ら
に、 オ リーブ油で調製 したエマル シ ョンの乳化安定性 につ いて も検討 を行 った。
第 1章
「
小豆 島産 オ リーブ油 の特徴 :脂肪酸組成 と抗酸化性成分」
小豆 島産 オ リーブ油 の脂肪酸組成 および抗酸化性 を測定 した。 その結果、 いずれの小豆 島産 オ リー
!
i
-
ブ池 において も脂肪酸組成や総 ポ リフェノールや トコフェロール含有量 は大 きな差が見 られず、特 に、
バ ー ジンオ リーブ油 は、 ヘキサ ンを用 いて抽 出 したオ リー ブ油 と比べ ると高 いポ リフェノールを含有
していたが、 トコフェロールの含量 には大 きな差が見 られなか った。一万、-キサ ンで抽出 したオ リー
ブ油で は、果実 の熟成が進 む につれて ポ リフェノール と トコフェロールの含量 が減少す る傾 向にあ っ
た。 また、池 を抽 出 した残虐 には大量 のポ リフェノールが残 って いた。
第 2章
「
小豆 島産バ - ジンオ リーブ油 の揚 げ加熱過程 にお ける DPPHラジカル捕捉活性 の変化」
揚 げ加熱過程 (
1
80℃) にお ける小豆 島産バ ー ジンオ リーブ油 の DPPH-ラジカル捕捉活性、総 フェ
ノール量 お よび トコフェ ロール量 を定量 し、大豆 油 と比較 した。 その結果、 バ ー ジンオ リー ブ油 の
DPPH-ラジカル捕捉活性 は大豆油 よ りも低か ったが、1
80℃ 4時間加熱後 の残存率 は高 か った。 これ
はフェノール化合物 の含量 が大豆油 よ りもバ ー ジンオ リー ブ油 の方が高 い ことによると考 え られた。
第 3章
「小豆 島産 オ リーブ果実 と葉 の ラジカル捕捉活性成分 とテーブルオ リーブの加工過程 にお
けるこれ らの成分 の変化」
小豆 島産 オ )-ブ果実 と葉 の ラジカル捕捉活性および活性成分 につ いて、 オ リー ブの品種別 および
果実 の加工法 によるこれ らの相違 を評価 した。未熟 な緑果実 は熟成 した赤果実 に比べて、 ラジカル捕
捉活性 および総 ポ リフェノール含量 が高か った。 また、 オ リーブ葉 は池や果実 に比べて、活性 および
活性成分が有意 に高 か った。 さ らに、 オ リーブ果実加工品であるテーブルオ リーブの加工過程 におい
て、水酸化 ナ トリウムを用 いた渋抜 き処理 によ り、 トコフェロールは残存 したが、 ラジカル捕捉活性
やポ リフェノール成分 はほとん ど失 われた。一方、 自然酵素 によるテーブルオ リー ブの加工法で は、
加工後 の果実 は加工前 と比べ ると3
2%のポ リフェノール、49%の トコフェロール、40%の ラジカル捕
捉活性 が残 っていた。 また、 いずれの加工法 において も、脂質成分 の脂肪酸組成 に大 きな変化 は見 ら
れなか った。
第 4章
「
小豆島産 テーブルオ リーブの保蔵過程 におけるラジカル捕捉活性および活性成分 の変化」
テーブルオ リーブの ラジカル捕捉活性 に対す る冷蔵保存 の影響 につ いて調べた。小豆 島産 テーブル
オ リー ブは 4℃で冷蔵保存 した場合、保存 3週 目まで ラジカル捕捉活性 と活性成分 の減少 は緩 やかで
あ った。 その後、捕捉活性 が著 しく減少 し、保存 7週 目で は3
5%の ラジカル捕捉活性が、20%の総 ポ
リフェノール量が残 るのみであ った。 また、 トコフェロール含量 は、冷蔵保存 中にほとん ど変化 しな
か った
。
第 5章
「
小豆 島産 オ リー ブ油 の乳化活性」
小豆 島産 オ リーブ油 の 0/W型 エマル ションの乳化性 および安定性 につ いて検討 した。比較 のため、
大豆 や菜種油 など汎用 されて いる食用油脂 につ いて も検討 した。乳化剤 と して タ ンパ ク質 (
分離大豆
タ ンパ ク質、卵 白アル ブ ミン) を用 いて、小豆 島産 オ リー ブ油 を乳化 した後、 エマル ションの粒度分
布測定す ることによ り、乳化性 とェマル シ ョンの安定性 を解析 した。 その結果、 オ リーブ油 の乳化剤
三
二
一
であるタンパ ク質 の種類 によ り、乳化性 とエマル ションの安定性 に違 いがみ られた。 また、小豆島産
オ リーブ油の乳化特性 は他の食用油脂 よ りも高 い傾向にあ った。 さ らに、配糖体 とアグ リコンの界面
張力の分析結果か ら、配糖体が アグ リコンよ りも乳化活性が高 い ことが明 らか とな り、 オ リーブ油 に
含 まれ るポ リフェノール化合物が乳化性 とエマル ションの安定性 に寄与 している可能性が示唆 された。
三
≡
一
論文 審 査 の結 果 の要 旨
近年、食材 には、従来か ら知 られている栄養成分以外 に、 ガ ン、老化、生活習慣病 などの発症 を予
防す る新 しい生理機能成分が含 まれていることが指摘 されて以来、食生活 を通 して健康増進 を図 るた
めの料理献立 に大 きな期待が集 ま っている。 これまでの研究 によると、 ヒ トの細胞 内で発生す る活性
酸素 ・フ リーラジカルは生体膜、酵素、遺伝子 などに損傷 を与 え、 ガ ン、老化、生活習慣病発症 など
を引 き起 こす要因の一つであるとされている。我 々が 日常摂取 している食材 には、活性酸素 ・フ リー
ラジカルの生成やその作用を抑制す る多様 な成分が含有す ることが示 されてお り、特 に、抗酸化性 ビ
タ ミン類やポ リフェノール類 などが これ らの機能 を担 っていると考え られている。
オ リーブ油 は地中海地方で幅広 く使用 され、 これ らの地域の料理 には必要不可欠 な食素材である。
疫学的研究 によると、地中海地域 の住民 は他 の地域 の住民 に比べて、心臓病や一部 のガ ンなどいわゆ
る生活習慣病 の発症が低 い ことが示 されている。 この要因 と して、地中海地方 の食生活が これ らの疾
病予防に寄与 していることにあるとされている。 オ リーブ油の生理機能が明 らかにされて以来、近年、
オ リーブ油が健康増進 に寄与す るとの期待か ら、 オ リーブ油の使用が世界的なブームとな っている。
オ リ-ブ池の機能成分 は、主 にオ レイ ン酸、 ポ リフェノール類、 トコフェロールなどとされている。
オ リーブは限 られた気象条件下で生育す る作物である。古 くか ら地 中海地方がオ リーブ栽培 の最適地
で、今 日、 この地方が世界 における主要栽培地域である。 これまでのオ リーブに関す る研究 は、地中
海産 の ものに集中 している。 しか し、地中海以外の地域で生産 されたオ リーブ油やオ リーブ製品に関
す る研究 は極 めて少 ない。
日本 の香川県小豆島でのオ リーブ栽培 と加工 には、すでに百年 の歴史がある。 しか しなが ら、小豆
島産 オ リーブ油 とオ リーブ加工品に関す る研究 は極 めて少 ない。 そ こで本研究では、小豆島内海町の
要請 を受 けて、小豆島産 オ リーブの品質評価 を行 うために、 オ リーブの ラジカル捕捉成分 に着 冒 し、
加工 ・保存過程 におけるラジカル捕捉活性 および活性成分 の変化 について解析 した ものである。 さ ら
に、 オ リーブ油の乳化特性 について も解析 を行 っている。 本論文 は、序論、本論 5章、結論か らなる。
序論 においては、本論文の背景 となる食生活 において、オ リーブ油が健康増進 に果たす役割 とオ リー
ブの加工 ・調理 に関す る研究 の現状 を概説 した上で、本論文 の目的である小豆島産 オ リーブの ラジカ
ル捕捉成分 を解析す ること意義 と研究の位置づ けを述べている。
第 1章で は、小豆 島産 オ リーブ油 の特徴 を明 らかにす るために、小豆島産 オ リーブ果実 4品種か ら
搾油 されたバ ー ジンオ リーブ油の脂肪酸組成 とラジカル捕捉成分 を分析 している。 その結果、 いずれ
の品種 の小豆島産 オ リーブ油 において も、脂肪酸組成、総 ポ リフェノールや トコフェロール含有量 に
A
大 きな差 がみ られ ない ことを見 出 して い る。 これ らの特徴 を、地 中海地方各地 のバ ー ジンオ リー ブ油
と比較 した場合、小豆 島産 オ リー ブ油 の ラジカル捕捉成分 は、地 中海産 オ リー ブ油 の平均 よ りやや上
位 にあ ることを明 らか に して い る。本章 の研究結果 は、地 中海地方 とは地理 的環境 が異 な る小豆 島で
収穫 され たオ リー ブか ら得 られ たバ ー ジンオ リー ブ油 の品質 は、地 中海産 の もの に比 べて遜色 が ない
ことを示 した成果 と して価値 が あ る。
第 2章 で は、小豆 島産 バ ー ジンオ リー ブ油 の揚 げ加熱過程 にお ける DPPHラ ジカル捕捉活性 お よ
び活性成分 の変化 を調べて いる。 その結果、最 も汎用 されている大豆油 と比較 した場合、加熱前 のバ ー
ラ ジカル捕捉活性 は低 いが、加熱後 の残存率 は高 い ことを見 出 し、 この要
ジ ンオ リー ブ油 の DPPH因 はポ リフェノール化合物 の含量 が高 い ことによ ると示唆 して い る。 本章 の研究結果 は、 オ リー ブ油
が実 際 の調理操作 において、 ドレッシングと してで な く加熱調理 に も広 く利用 され ることを考慮 す る
と、 オ リー ブ油 の加熱安定性 に対 す る知見 を提供 す る成果 と して意義 が あ る。
第 3章 で は、小豆 島産 オ リー ブ果実 と葉 の ラジカル捕捉活性成分 な らびにテー ブルオ リー ブの加工
過程 にお ける これ らの成分 の変化 につ いて解析 を行 って い る。 その結果、 オ リー ブ果実 に対 して水酸
、
新漬 〝 は、渋抜 き処理 によ り活性成分 が ほ と
化 ナ トリウムで渋抜 き処理 を行 い、 1週 間で仕上 げ る 、
ん ど消失 す ること、 オ リー ブ果実 を塩水 中で 6ヶ月間 自然発酵 して仕上 げる "
塩蔵 〝 は、活性成分 が
有意 に残存 して い る ことを明 らか に して い る。 さ らに、廃棄 されて い る葉 には、活性成分 の含量 が極
めて高 い ことも明 らか に して い る。本章 の研究結果 は、小豆 島の特産 テー ブルオ リー ブ "
新 湊 ′′お よ
び "
塩蔵 ′′の品質評価 を行 った成果 と して価値 が あ る。
第 4章 で は、家庭 での保存 を想定 して、小豆 島特産 テー ブルオ リー ブの保蔵過程 にお けるラジカル
捕捉活性 および活性成分 の変化 を調べて い る。 その結果、 テー ブルオ リー ブは 4℃ で冷蔵保存 した場
合、保存 6週 目頃 まで ラジカル捕捉活性 お よび活性成分 はかな り保持 され る ことを明 らか に して い る。
本章 の研究結果 は、 噂好性 や衛生上 の面 か らでな く生理機能性 の視点 か ら、小豆 島産 テー ブルオ リー
ブに対 す る賞 味期 限 を設定す る際 の基礎情報 を提供 す る成果 と して意義 が あ る。
第 5章 で は、 オ リー ブ油 を ドレッシ ングと して使用す る際の調理機能 を明 らか にす るために、小豆
島産バ ー ジンオ リー ブ油 の 0/W型 エマル シ ョンの乳化活性 につ いて解析 を行 って い る。 乳化剤 と し
て タ ンパ ク質 (
分離大豆 タ ンパ ク質、卵 白アル ブ ミン) を用 いて、小豆 島産 オ リー ブ油 を乳化 した後、
エマル シ ョンの粒度分布 を測定 す ることによ り、乳化性 とェマル シ ョンの安定性 を解析 した。 その結
果、大豆油 および菜種油 な ど汎用 されて い る食用油脂 に比 べ、小豆 島産 バ ー ジ ンオ リー ブ油 の乳化特
性 は高 い傾 向 にあ ることを明 らか に して い る。 さ らに、 ポ リフェノール配糖体 はアグ リコ ンよ りも乳
化活性 が高 い ことを見 出 し、バ ー ジンオ リーブ油が他 の食用油脂 に比べて高 い乳化特性 を持っ要 因 は、
ポ リフェノール配糖体 が乳化性 とエマル シ ョンの安定性 に寄与 して い ることによ ると示唆 して い る。
本章 の研究結果 は、 イ タ リア料理 で ソース仕上 げにモ ンテす る調理操作 の際 に、バ ー ジンオ リー ブ油
三
二
の使用が最高であるとす る調理人の経験 を裏付 ける成果 として興味深い ものがある。 さらに、油脂の
視点か ら乳化性を解析 した成果 として も価値がある。
以上、本研究は、小豆島産オ リーブ油およびテーブルオ リーブのラジカル捕捉成分、ならびにオ リー
ブ油の調理機能を解析 したものである。 これまでなされていなか った小豆島産オ リーブの品質評価を
系統的かつ総合的に行 い、小豆島の 「
地産地消」運動 を展開す る際に、極 めて有益 な情報を提供す る
ものである。 本研究の内容 は、食品加工および調理過程 におけるオ リーブの品質変化の解析 に関す る
基礎研究 として、食品および調理関連学会で高 い評価を受 けている。 よって、本論文 は、奈良女子大
学博士 (
学術)の学位論文 として、十分な内容を備えていると判断される。
一
日
三
三
一
Fly UP