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1 福島第一原子力発電所事故後の取り組みと今後の計画について

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1 福島第一原子力発電所事故後の取り組みと今後の計画について
福島第一原子力発電所事故後の取り組みと今後の計画について
~滞留水の処理及び使用済燃料プールの冷却・浄化~
東京電力株式会社
原子力運営管理部
牧平
淳智
1.はじめに
当社福島第一原子力発電所は、平成 23 年3月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震
により被災したが、津波により1~4号機タービン建屋等には大量の海水が浸入し、建
屋内に滞留した。その後、1~3号機では全交流電源喪失等により炉心を十分に冷却で
きずに炉心溶融が発生し、更に原子炉及び原子炉格納容器の損傷により、炉心冷却水が
タービン建屋へ流れ込み、建屋内に滞留していた海水に高濃度の放射性物質が含まれる
こととなった。
1~3号機では、原子炉内の燃料デブリの崩壊熱を除去し温度を低下させるために、
淡水や海水を断続的に原子炉へ注入していたが、より安定的に原子炉へ注水できるよう、
平成 23 年6月に、建屋内の滞留水に含まれる放射性物質(セシウム等)及び塩分を除去
(淡水化)したうえで、原子炉への注水に再利用する「循環注水ライン」を確立し、現
在も注水を継続している。
一方、滞留水の水処理に伴い濃縮廃液(塩水)が発生しており、これは発電所内の屋
外に設置している鋼製タンク(中低レベル用処理水受タンク)に約 27 万 m3 程度貯蔵して
いる状況にある(平成 25 年7月 23 日現在)。濃縮廃液には放射性ストロンチウムやトリ
チウム等が含まれているが、平成 25 年3月より、多核種除去設備により水質浄化の試験
運転を順次実施し、除去性能を評価しているところである。
また、使用済燃料プールを冷却する既設の燃料プール冷却浄化系についても、地震の
影響により、1~4号機使用済燃料プールの冷却機能が失われた。
使用済燃料プール内の燃料から発生する崩壊熱を安定的に除去し、プールの水位を維
持するために、事故直後に海水及び淡水(ろ過水)を注入してきたが、平成 23 年5月よ
り、各号機において順次、仮設の冷却設備を利用して、プール水の循環冷却運転を確立
し、冷却機能を回復した。
なお、2~4号機使用済燃料プールでは、海水注入を行った影響により、プール水の
塩化物イオン濃度が大きく上昇し、腐食を加速させるリスクが急激に高まった。そのた
め、平成 23 年8月より、順次、逆浸透膜装置やイオン交換装置による塩分除去作業に着
手し、現在、塩分除去は概ね完了している。
また、使用済燃料プールの安定状態を維持するため、循環冷却システムの保守・管理、
プール水のサンプリングによる塩分濃度等を定期的に確認している。
ここでは、滞留水処理の概況及び使用済燃料プールの浄化状況について紹介する。
1
2.滞留水処理の概況
(1)概要
高濃度の放射性物質を含む滞留水の処理システムを図1に示す。
セシウム除去装置(第二セシウム吸着装置(サリー)やセシウム吸着装置(キュリオ
ン)等)において放射性物質(主にセシウム)を除去し、更に淡水化装置において滞留
水から塩分も取り除いて淡水を生成し、これを原子炉へ注水し冷却を行っている。
これまでに約 35 万 m3 程度の淡水を生成して原子炉へ注水しているが(平成 25 年7月
23 日現在)、この循環ラインを活用することによって、高レベルの滞留水が新たに発生す
るのを抑制している※。
※約 400m3/日程度の地下水が原子炉建屋内に流入して、滞留水の放射能濃度を希釈する方
向に進む。
原子炉冷却水:
約400m3/日 注入
約800m3/日
原子炉建屋
地下水:
約400m3/日流 入
タービン建 屋
プロセス主建屋
高温焼却炉建屋
(一時 貯蔵)
地下水
セシウム除去装置
注水タンク
① アレバ(仏 )
<待機中>
② キュリオン (米)
<バックア ップとして使 用>
③ サリー(東 芝)
<通常時の 運転に使用>
再利用
淡水化装置
余剰 水:約400m 3/日発生
試験運転中
中 低レベルタン ク
図1
多核種除 去設備
(ALPS)
貯水タ ンク
滞留水の処理システムの全体概要
(2)放射能の除去
セシウム除去装置では、放射性物質の環境中への移行を防止する観点から、放射性物
質を吸着させて固定化している。
セシウム吸着装置(キュリオン)は、吸着塔を4塔通水するよう構成されており(計
4系列)、また、第二セシウム吸着装置(サリー)も同様に、吸着塔を4塔通水するよう
構成されている(計2系列)。
これらの装置では、吸着剤を装着した吸着塔に滞留水を通水して、放射性物質、汚染
物質を除去するものであり、吸着剤には、基本設計として、油分、セシウムを除去する
2
ためにゼオライトを利用しているが、ゼオライトのイオン交換作用を利用して、放射性
物質であるセシウムなどを吸着し、水を浄化している。
なお、セシウム 137 の除去性能については、セシウム吸着装置(キュリオン)におい
て、除染係数(DF)=104 程度、第二セシウム吸着装置(サリー)において、DF=105 程度
となっている。(表1)
表1
H25.7.9採取
セシウム 137 の除去性能について
滞留水
セシウム吸着装置
第二セシウム吸着装置
プロセス主建屋
高温焼却炉建屋
処理後水
処理後水
5.5×104
2.8×104
5.2×100
2.5×10-1
Cs-137 (Bq/cm3)
一方、放射性物質を除去し終わった吸着塔は、吸着した放射性物質を含む放射性廃棄
物の保管容器として取り扱っており、吸着塔内の水抜き・水洗い・乾燥を行った後、こ
れをコンクリート容器に入れて保管し、保管場所では更に土嚢などを設置して雰囲気線
量を低減している。
また、循環注水冷却の運転を長期間継続することによって、放射性物質や塩分の除去
が進み、吸着塔の交換間隔が延びており、廃棄物の発生率は低減している。
(3)塩分の除去
淡水化装置では、機器の腐食を抑制する観点から、海水を淡水化して塩分を除去して
いる。
塩分除去では、逆浸透膜方式を利用しており、水を通水し、イオンや塩類など水以外
の不純物は通さない逆浸透膜の性質を利用して、滞留水に含まれる塩分を除去している。
淡水と濃縮塩水の生成割合は約5:5であり、滞留水に含まれる塩化物イオン(最大
1.9%程度)を 0.025%以下まで低減することが可能である。
(4)多核種除去設備による水質浄化
多核種除去設備による滞留水処理システムを図2に示す。
既設の滞留水の処理システムは主にセシウムを除去するが、処理水の放射性物質の濃
度をより一層低く管理するため、多核種除去設備(以下、ALPS)を導入し、セシウム以
外の核種(ストロンチウム等)についても、処理水の放射性物質の濃度が告示※に定める
周辺監視区域外の水中の濃度限度を十分下回るように管理していく。
ALPS は、前処理設備(鉄共沈処理設備、炭酸塩沈殿処理設備)、吸着塔、廃棄物保管容
器取扱設備で構成され(計3系列)、吸着塔では、除去する放射性物質に応じた吸着材(活
性炭、人工鉱物、キレート樹脂等)により、放射性物質を除去する。
3
A系統(50%流量):250m3/日
① 逆浸透膜
濃縮水
② 逆浸透膜
淡水
③ 逆浸透膜
入口水
鉄共沈
処理設備
炭酸塩
沈殿処
理設備
14塔(吸着材交換式)
前処理設備
2塔
(カラム式)
吸着塔
スラッジ
吸着材
一時保管施設へ
保管容器
サンプリング
タンク
B系統(50%流量):250m3/日
C系統(50%流量):250m3/日
図2
タンクへ
多核種除去設備(概要)
ALPS の設備設計(吸着塔の塔構成等)を行うためのデータ収集を目的としたラボ試験
では、放射性物質の濃度が高い逆浸透膜(以下、RO)濃縮水及び RO 入口水を対象として
試験を実施し、除去対象として着目した核種(62 核種)全てに対して告示濃度限度以下
で検出限界値未満まで除去できていることを確認した。
また、平成 24 年8月~10 月にかけて、全3系統(A~C系統)に対して、ろ過水と薬
液による各機器の水(薬液)張り・漏えい確認、機器単体の試運転、系統試運転(コー
ルド試験)を実施し、確認された不具合の中で、設計を根本的に見直す必要がある不適
合は無く、計器取付部からの微少漏えいや不要な警報の発生等の軽微な不適合が確認さ
れる程度であった。また、漏えい拡大防止堰の増設・雨除けカバーの敷設等、追加の安
全対策を施した。
その後、平成 25 年3月より、処理対象水である RO 濃縮水を用いて、バッチ処理タン
クへ受け入れる試験、系統全体に通水させる試験等を開始した(ホット試験)。
A系統におけるホット試験では、処理済水において、Co-60、Ru-106、Sb-125、I-129
が検出されていることを確認した。そのため、福島第二原子力発電所のホットラボにお
いて、実機を模擬した試験装置を用いて除去性能向上のための試験(ラボ試験)を実施
した。
ALPS の処理済水で検出された Co-60、Ru-106、Sb-125、I-129 については、当初イオン
の状態で存在すると想定されていたが、コロイド状の形態でも存在すると想定されたこ
とから、コロイド状の核種を吸着する活性炭系吸着材に着目してカラム試験を実施した。
具体的には、A系統の吸着塔8塔目出口より採取した水を試験装置(実機と塔構成を変
更)に通水し、通水後の水の放射能濃度を測定し、除去性能を確認した。(図3)
その結果、最終段を活性炭系吸着材に変更した試験装置の処理済水は、4つの核種が
4
全て検出限界値未満であることを確認した。(表2)
今後、最終的な塔構成を決定し、ホット試験を引き続き進めていく。
なお、平成 25 年7月 23 日現在、ALPS(ホット試験中)での処理済水は約 1.9 万 m3 程
度である。
※実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規制の規定に基づく線量限度を定める告示
多核種除去設備A系
※吸着塔8塔目出口より水を採取→福島第二原子力発電所(2F)へ輸送
汚染水
吸着材6
吸着材3
吸着材5
(RO濃縮塩水)
鉄共沈
処理設備
炭酸塩
沈殿処
理設備
吸着材7
※吸着塔8塔目出
口より採取した水
吸着材2 吸着材4 吸着材3 処理カラム
吸着材1 吸着材4
前処理設備
(2塔)
吸着塔(14塔)
2F試験装置(試験管通水装置)
吸着材6
吸着材5
活性炭系
吸着材7 吸着材
ラボ試験では、吸着材7
(予備1塔)の代わりに
活性炭系の吸着材を使用
測定
図3
表2
ラボ試験の概要
ラボにおけるカラム試験結果について
単位:Bq/cm3
A系統処理済水
試験装置処理済水
告示濃度限度
告示濃度限度比
Co-60
Ru-106
Sb-125
I-129
3.0×10-3
ND
(<1.1×10-4)
2.0×10-1
1.0×100
ND
(<1.2×10-3)
1.0×10-1
5.9×100
ND
(<3.8×10-4)
8.0×10-1
4.5×10-2
ND
(<7.0×10-4)
9.0×10-3
0.00053
0.012
0.00047
0.077
測定条件(Co,Ru,Sb):Ge 半導体検出器、2リットル、4万秒測定
5
3.使用済燃料プールの浄化
(1)事故当時の燃料貯蔵状況
事故発生当時(平成 23 年3月 11 日)の1~4号機使用済燃料プールにおける燃料貯蔵
体数を表3に示す。
表3
事故発生当時の燃料貯蔵状況
原子炉の
使用済燃料
新燃料
貯蔵容量
運転状態
体数
体数
[体数]
1号機
運転中
292
100
900
400
2号機
運転中
587
28
1240
548
3号機
運転中
514
52
1220
548
4号機
原子炉開放
1331
204
1590
548
号機
(全燃料移動)
1炉心数
また、事故発生後の1~4号機使用済燃料プールにおける冷却状態は以下の通りであっ
た。
1号機:平成 23 年3月 12 日に原子炉建屋上部が爆発により損傷し、その後、3月 31
日よりコンクリートポンプ車で放水を行った。その後、5月 28 日より燃料プ
ール冷却浄化系配管を用いた注水を開始し、8月 10 日より代替冷却系による
冷却を開始した。
2号機:平成 23 年3月 20 日より燃料プール冷却浄化系配管を用いて注水を開始、5
月 31 日より代替冷却系による冷却を開始した。
3号機:平成 23 年3月 14 日に原子炉建屋上部が爆発により損傷し、その後、3月 17
日にヘリコプターによる放水、3月 17 日より放水車及び屈折放水塔車により
放水、3月 27 日からコンクリートポンプ車による放水を行った。その後、4
月 22 日より燃料プール冷却浄化系配管を用いた注水を開始し、6月 30 日よ
り代替冷却系による冷却を開始した。
4号機:平成 23 年3月 15 日に原子炉建屋上部が爆発により損傷し、その後、3月 20
日より放水車による放水、3月 22 日よりコンクリートポンプ車による放水を
行った。その後、6月 16 日より仮設の燃料プール注水設備による注水を開始
し、7月 31 日より代替冷却系による冷却を開始した。
(2)プールの水質(浄化前)
平成 23 年5月~8月にかけて、1~4号機使用済燃料プールの循環冷却を開始し、プー
ルの温度は約 70~90℃から常温付近まで低下し、平成 25 年7月 29 日現在、27~32℃程度
で推移している。
プール水を浄化する前の水質測定結果を表4に示す。
海水注入を行っていない1号機を除き、1,500ppm 以上の塩化物イオン濃度が確認されて
おり、海水が約 10 分の1程度に希釈された状態となっていた。
6
表4
プール水の水質測定結果(浄化前)
塩化物イオン
Cs-134
Cs-137
(ppm)
(Bq/cm3)
(Bq/cm3)
8.2
3.9
1.8×104
2.3×104
平成 23 年8月
7.5
1508
1.1×105
1.1×105
平成 23 年5月
11.2
-
-
-
号機
採取時期
pH
1号機
平成 23 年8月
2号機
3号機
4号機
4
8.7×104
6.1×101
平成 23 年8月
9.2
1769
7.4×10
平成 23 年8月
7.7
1944
4.4×101
(3)水質環境の改善
a)pH 調整
3号機の使用済燃料プール水について、平成 23 年5月に採取したところ、pH は 11.2
とやや強いアルカリ性を示した。これは原子炉建屋の水素爆発によってプール内に落下
したコンクリートからの溶出物(主に水酸化カルシウム)が起因するものと推定された。
強アルカリ性環境ではアルミニウム合金製燃料ラックの腐食が加速される可能性があ
るため、この環境を緩和すべく中和剤の投入を検討したところ、ホウ酸が合理的と判断
し、ホウ酸水を投入して pH 調整を実施し、ラックの腐食防止を図った。
その結果、平成 23 年7月には、pH は 9.0 まで低下し、水質環境を改善することができ
た。
b)ヒドラジン注入
事故直後の3月末にはろ過水の注水を開始したが、ろ過水タンクに 99.9%窒素を通気
(バブリング)することにより、腐食を進行させる溶存酸素濃度を低減してきた。しか
しながら、プールは大気開放系であるため、溶存酸素濃度は短時間で上昇すると考えら
れたことから、1~4号機使用済燃料プールについては、平成 23 年5月より順次,脱酸
素剤として水加ヒドラジンを間欠注入することにより、溶存酸素濃度の低減を図ってい
る。
c) 放射性物質及び塩分の除去
海水を一時的に注入した2~4号機使用済燃料プールについては、更なる腐食抑制対
策として海水成分除去による水質浄化を実施することとし、新たに製作したプール水の
浄化設備を仮設の冷却設備に接続して、平成 23 年8月より順次、浄化を開始した。
逆浸透膜(RO)装置を図4、放射性物質の吸着除去システムを図5、モバイル RO 装置
を図6、これらの浄化設備の外観を図7にそれぞれ示す。
水質の浄化は、廃液量の低減や浄化効率を考慮し、次のような方針とした。
まず、逆浸透膜(RO)と電気透析(ED)を組合せた RO 装置(図4)により、海水成分
の大半を除去する。塩化物イオン濃度が 100ppm 程度まで低減したら、イオン交換装置(図
7)に切り替えてさらに浄化を進め、塩化物イオン濃度が 10ppm 程度まで低減したら浄
7
化完了とする。なお、RO 膜の放射線劣化を低減するため、セシウム 134 及びセシウム 137
の放射能濃度が高い2号機及び3号機については、海水成分除去の前に、ゼオライトを
用いた放射性物質吸着除去システム(図5)を適用した。
プール水の浄化工程(実績)を表4に示す。
4号機は、平成 23 年8月より RO 装置による塩分除去を開始し、塩化物イオン濃度が
約 150ppm 程度になった同年 11 月にイオン交換装置による処理に切り替えたが、その後
塩化物イオン濃度が低下しない状況が続いた。原因として、500ppm 程度の塩化物イオン
を含む原子炉ウェル水の流入が推定されたため、新たに製作したモバイル RO 装置(図6)
を設置し、平成 24 年4月からウェル水とプール水の双方の浄化を再開した。その後、イ
オン交換装置への切り替えを経て、同年 10 月に塩化物イオン濃度が9ppm まで低減した
ことから、浄化処理を完了とした。
2号機は、平成 23 年 11~12 月に放射性物質を除去した後、平成 24 年1月から RO 装
置による塩分除去を開始した。平成 24 年4月にイオン交換装置に切り替え、同年7月に
塩化物イオン濃度が 11ppm まで低減したことから、浄化処理を完了とした。
3号機は、平成 24 年1~3月に放射性物質を除去した後、平成 24 年4月から RO 装置
による塩分除去を開始した。平成 24 年7月にイオン交換装置に切り替えたが、プール水
の線量が依然として高かったため、同年9月にモバイル型 RO 装置に変更して浄化処理を
継続した。平成 25 年3月に塩化物イオン濃度が5ppm まで低減したことから、浄化処理
を完了とした。
淡水
濃廃輸送車 濃縮水
スキマー
サージタンク
P
電気透析
冷 却塔
使用済
燃料プール
熱交換器
使用済燃料プール
循環冷却システム
逆浸透膜
前処理
プール水(海水含む)
図4
図5
RO 装置
放射性物質の吸着除去システム
8
使用済燃料プール・原子炉ウェル
切替ヘッダー
逆止弁
サイフォンブレーク弁
スキマサージタンク
機器貯蔵プール
DSピット
原子炉ウェル
使用済燃料プール
燃料プール
塩分除去装置
(モバイルRO)
圧力容器
RPV
原子炉格納容器
冷却塔
冷却系
ポンプ
熱交換器
使用済燃料プール循環冷却装置
図6
塩分除去装置(モバイル RO)系統図(概略)
塩分除去
逆浸透膜(RO)装置
使用済燃料プール
循環冷却装置
図7
塩分除去
イオン交換装置
水質浄化システム(外観)
(4)プールの水質(浄化後)
平成 25 年3月までに、2~4号機の使用済燃料プール水について塩分除去を完了した。
現在(平成 25 年7月~8月時点)の水質測定結果を表5にそれぞれ示す。
1~3号機の塩化物イオン濃度は、原子炉施設保安規定の基準値である 100ppm に比べて
十分に低く維持されている。4号機についても保安規定基準値を下回っているが、浄化完
了時(9ppm)に比べて若干増加傾向にある。
一方、1~4号機ともに、ヒドラジンの間欠注入による脱酸素処理を継続中である。
今後も引き続き、定期的にサンプリングおよびヒドラジン注入を実施し、必要に応じて
イオン交換装置等を利用し、水質を維持していく。
表4
プール水の浄化工程(実績)
放射性物質
RO 装置による
イオン交換装置
モバイル RO による
除去
塩分除去
による塩分除去
塩分除去
2号機
H23.11.6~12.5
H24.1.19~4.2
H24.4.12~7.2
-
3号機
H24.1.14~3.1
H24.4.11~7.11
H24.7.12~8.27
H24.9.22~H25.3.18
4号機
-
H23.8.20~11.8
号機
9
H23.11.29~H24.1.9
H24.9.10~10.12
H24.4.27~8.27
表5
プール水の水質測定結果(浄化後)
号機
採取日
pH
1号機
平成 25 年7月 19 日
2号機
塩化物イオン
Cs-134
Cs-137
(ppm)
(Bq/cm )
(Bq/cm3)
8.1
7
5.6×103
1.3×104
平成 25 年7月 16 日
8.7
13
4.7×101
1.4×102
3号機
平成 25 年7月 17 日
8.2
13
3.7×102
7.7×102
4号機
平成 25 年8月9日
7.9
30
1.3×100
5.6×100
10
3
4.今後の計画
平成 25 年2月8日、原子力災害対策本部において、
「東京電力福島第一原子力発電所
廃炉対策推進会議」が設置され、廃炉を加速していくために、政府、当社に加えて、関
係機関の長の参加を得て、現場の作業と研究開発の進捗管理を一体的に進めていくこと
とされた。その後、6月 27 日に、中長期ロードマップの改訂版がとりまとめられた。
ここでは、福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に関連し、滞留水の処理及び
使用済燃料プールの冷却に関して、中長期的に取り組むべき内容について紹介する。
(1)滞留水の処理
(a)循環ラインの縮小及び小循環ループ化(図8)
現状、循環注水ライン(大循環)により滞留水の処理及び注水を実施しており、循
環注水ラインの信頼性向上を継続するとともに、燃料デブリ取り出し及び建屋内の滞
留水処理の完了を見据え、建屋外での汚染水の漏えいリスクを低減するために、小循
環ループの実現を図っていく。(2018 年度中期、原子炉注水冷却ラインの小循環ルー
プ化(格納容器循環冷却)の構築を目指す)
R/B
セシウム
除去装置
T/B
塩分除去
装置
淡水貯蔵
タンク
サブドレン
バッファタンク
CST
※1
取水位置等については、水質動向等を踏まえて継続検討中であり、検討結果に応じた系統構成とす
る予定。
※2
建屋への地下水流入分の移送を意図しているが、汚染水対策等の状況に応じた系統構成とする予定。
図8
建屋内循環ループ
イメージ図
(b)水処理システムの強化
汚染水処理設備(ALPS 等)の処理水に含まれる放射性物質(トリチウムを除く)を、
告示濃度限度を十分下回るように除去し、浄化した浄化水と減容された廃棄物に分別
し、汚染水処理設備の処理水貯蔵量を低減する。(2013 年度中頃、多核種除去設備の
一部系統の本格稼働開始を目指す)
(c)タンク増設計画
地下水の流入抑制策を取ったとしても一定程度増加する汚染水を十分に貯蔵できる
よう、中長期で必要とされるタンク容量を見通して、増設計画を策定する。また、地
下水流入抑制のための各対応策が機能しない場合に対応できるよう、対応策の進捗を
11
見定めつつ、柔軟に増設計画を見直し、運用していく。(2015 年中頃、タンク容量を
70 万 m3 に増設、2016 年度内にタンク容量を 80 万 m3 に増設(今後、具体的に検討)
を目指す)
(d)トリチウムの取扱い
ALPS ではトリチウムを除去することが困難であるが、今後、汚染水処理対策委員会
にて、その処理対策について検討される。
(e)滞留水処理を完了させるまでの道筋
第1期※1では、タービン建屋等の滞留水の水位が地下水位を上回らないように管理
しつつ地下水位を下げていく方針で対応を実施している。特に、地下水の流入抑制策
として、地下水バイパス、サブドレンによる水位管理、陸側遮水壁の設置を進めてい
く。
第2期※2(前)では、原子炉建屋に排水ポンプを設置し、原子炉建屋から汚染水を
排出するとともに、必要に応じて、建屋周辺の地下水へのリチャージを行う等の地下
水位管理の高度化により、地下水の流入量を抑制する。
第2期(中)では、原子炉建屋とタービン建屋間の止水や原子炉格納容器の漏えい
箇所の止水の実現状況を踏まえつつ、これに応じた循環ラインを構築する。
また、第2期(後)では、原子炉格納容器の止水完了以降、原子炉建屋等の汚染水
の水位、建屋周辺の地下水位を低下させ、建屋内の除染を行いながら滞留水処理を完
了させる。
【目標工程】
※1
2015 年上半期
原子炉建屋への排水ポンプの設置
2018 年内
格納容器の止水完了
2020 年内
建屋内の滞留水処理の完了
ステップ2*完了(平成 23 年 12 月 16 日)~初号機の使用済燃料プール内の燃
料取り出し開始まで(目標はステップ2完了から2年以内)
※2
第1期終了~初号機の燃料デブリ取り出し開始まで(目標はステップ2完了か
ら 10 年以内)
*ステップ2:福島第一原子力発電所の事故収束の道筋として定められたステップの一
つ。「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」
状況を目標としたもの。
(2)使用済燃料プールの循環冷却
使用済燃料プールの循環冷却を継続することで、使用済燃料の健全性を確保する。ま
た、使用済燃料プールの健全性に影響を与えうる、冷却水内の塩化物イオン濃度は、本
年3月までに制限値(100ppm)以下の濃度まで低減することを実現しており、今後、設
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備の信頼性向上により循環冷却の維持を図るとともに、温度等のパラメータ監視、塩化
物イオン濃度の維持を図っていく。
以
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上
<参考資料>
(全般)
・福島第一原子力発電所第1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に基づく施設
運営計画に係る報告書(その1)(改訂2)、平成 23 年 12 月、東京電力株式会社
・福島原子力事故調査報告書、平成 24 年6月 20 日、東京電力株式会社
・東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマッ
プ、平成 25 年6月 27 日、東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議
・中長期ロードマップこれまでの進捗状況及び評価、平成 25 年6月 27 日、東京電力福
島第一原子力発電所廃炉対策推進会議
(滞留水処理の概況)
・福島第一原子力発電所
放射性滞留水の回収・処理の取組み~水処理(放射能除去)の
仕組み~、平成 23 年 10 月 29 日、東京電力株式会社
・福島第一原子力発電所
放射性滞留水の回収・処理の取組み~水処理(淡水化)の仕組
み~、平成 23 年 11 月5日、東京電力株式会社
・多核種除去設備について、平成 24 年3月 28 日、東京電力株式会社
・多核種除去設備(ALPS)の進捗状況、平成 24 年9月 24 日、東京電力株式会社
・多核種除去設備(ALPS)のホット試験開始に向けた対応、平成 24 年 10 月 22 日、
東京電力株式会社
・多核種除去設備ホット試験の状況、平成 25 年6月 27 日、東京電力株式会社
・福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の
状況について(第 109 報)、平成 25 年7月 24 日、東京電力株式会社
(使用済燃料プールの浄化)
・高守ら、使用済み燃料貯蔵プールの状況と浄化、材料と環境 2012、p.17~20
・福島第一原子力発電所2号機使用済燃料プール塩分除去作業の完了、平成 24 年7月2
日、東京電力株式会社
・福島第一原子力発電所3号機使用済燃料プール水の分析結果、平成 23 年7月8日、東
京電力株式会社
・福島第一原子力発電所3号機使用済燃料プール塩分除去作業の完了、平成 25 年3月 18
日、東京電力株式会社
・福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール塩分除去作業の完了、平成 24 年 10 月
12 日、東京電力株式会社
・福島第一原子力発電所4号機塩分除去装置(モバイルRO)による原子炉ウェル側の
塩分除去の開始について、平成 24 年7月 13 日、東京電力株式会社
・使用済燃料プール水質状況について、平成 25 年8月 23 日、東京電力株式会社(原子
力規制庁面談資料)
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