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土壌安定剤について

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土壌安定剤について
土壌安定剤について
(1)土壌のいくつかの性質
1)土壌が風によって消失する現象
土壌を形成する粒子が微細で,乾燥状態においては,粒子同士の結合力が無いため,風によっ
て飛ばされ,消失する。
2)土壌が吸水することによって泥になる現象
泥状土壌は,通常,微細(数μm 以下)のシルトや粘土を多く含む粘性土と考えられる。
乾燥土壌の模式図を図−1に示す。一般に,乾燥した粘性土の土塊(かたまり)を水中に浸漬
すると,土壌を形成する粒子間及びその粒子を形成する微粒子間に水が浸入し,崩壊する。従っ
て,粘性土を多く含む土壌は,雨などによって消失しやすい。又,このような粘性土にはNa+や
K+などの親水性の元素が多く含まれるため,水となじみやすく,泥状になりやすい。
−
−
−
拡大
Na
拡大
−
乾燥土壌
−
K+
Na+
−
−
土壌を形成する
粒子の模式図
K+
+
粒子を形成する微粒
子の模式図
図−1 乾燥土壌の模式図
(2)土壌安定剤による改質の考え方
1)土壌の乾燥を防止すると共に,土壌を形成する粒子及び微粒子を結合することによって,風によ
る消失を防止する。
2)乾燥土壌に水が供給された場合,その水が土壌粒子に吸水されることを防止する。
3)過度の水分が供給された場合には,排水性を発揮して,土壌粒子が過度に吸水することを防止す
る。
(3)土壌安定剤の成分とその作用
1)フライアッシュやスラッジ焼却灰(主成分)
a.吸水作用を発揮して,土壌粒子が吸水することを防止する。又,臭気の吸着能力に優れる。
b.排水性もあるため,土壌安定剤を混合した改良土壌が過度に吸水した場合には,圧力をかける
ことにより,改良土壌からの排水を容易にする。
c.適度に水分を含んだ状態においては,水分は容易に蒸発することが無く,保水性を保つ。
d.ポゾラン活性(化学的な刺激のもとで,水と反応して固化する能力)を有しており,長期的に
は,強度を発現する。
2)フライアッシュやスラッジ焼却灰のポゾラン反応を促進する成分
この成分を配合することによって,ポゾラン反応による強度発現が早期に起る。
3)水和反応によってエトリンガイトを生成する成分
この成分によって生成するエトリンガイトは針状結晶であり,土壌粒子を結合して強度を発現
し,乾燥した場合でも,風による消失を防止できる。
4)イオン交換作用を有する成分
この成分によって,土壌を形成する微粒子中のNa+やK+などの親水性イオンを交換して,微粒
子を団粒化する。団粒化した土は,再度吸水しても泥状になりにくい性質を持つ。
(4)土壌安定剤で改良した土壌の性質
土壌安定剤で改良した土壌の性質は次のようである。
1)保水性があるため,乾燥しにくく,風による消失がなく,植生用土壌として利用できる。
2)排水性にも優れ,イオン交換作用によって泥状になりにくい団粒化した土壌が得られることなど
により,過度の水分が補給されても,泥状になりにくい。
3)エトリンガイトの生成やポゾラン反応によって強度を発現しているため,流失しにくい。
4)ポゾラン反応は長期にわたって生じること,イオン交換作用によって団粒化した土壌が得られる
ことなどにより,一度締固めした土壌を再攪拌しても,再度の締固めによって安定した土壌が得
られる。
不安定な土壌の多くは粘性土
粘性土:微細(数μm
以下)のシルトや粘
土を多く含む
親水性元素を含む土
微粒子で構成される
粒団
表土に覆われているときの粘性土
(土粒子が過密に詰まっている。)
粘性土の撹拌
撹拌土壌 : 粒団+間隙
吸水
風による消失
土微粒子が分散
した泥状土壌
乾燥土壌
土壌処理のための加水
含水土壌
土壌安定剤の混合・撹拌
水和反応によ
る結晶生成成
分
土壌安定材構成成分
石炭灰・焼却灰
ポゾラン反応を伴う
間隙
改良土壌の模式図
図−2 土壌の状態と土壌改良材の作用機構模式図
イオン交換作用に
よる粒団の形成
(5)土壌安定剤による土壌改良の基本的考え方
1)土壌1m3当り,その質量の3%の土壌安定剤を混合する。(通常の含水比:土壌を手で握って,
手の跡ができ,水がにじむ程度)
2)ヘドロ状の土壌に対しては,5∼7%混合する。
3)土壌の種類によっては,良質な土壌を若干混合する場合もある。
4)土壌と土壌安定剤の攪拌は,土木用掘削機械(ユンボ)を用いることができる。ミキサーなどで
の混合は必要としない。
5)締固めの強さを変えることによって,改良土壌の固さを調節する。(舗装と植栽など)
(6)土壌安定剤及びそれを用いた改良土壌の用途
1)公園などの遊歩道,植栽用地(現場の土と混合)
2)土壌を締固めた歩道(現場の土と混合)
3)土舗装した駐車場(現場の土と混合)
4)傾斜地の表面(現場の土と混合,又は,改良土壌)
5)岩石などが多く,植物が育ちにくいところの表土(改良土壌)
6)雨によって流失しやすい箇所の表土(現場の土と混合)
なお,改良土壌とは,現場近くから土を採取して,土壌安定剤と混合したものである。
(7)土壌安定剤の利用事例
土壌安定剤の利用事例を次に挙げる。
1)公園の遊歩道の土舗装
公園の遊歩道であるため,土で舗装して,自然環境を維持したい希望があった。しかし,雨が
降ると泥状になって歩きにくいことから,土壌安定剤を用いて,現場の土を改良して舗装した。
2)公園の傾斜地にある歩道
公園の傾斜地に,自然環境保護のため,土で舗装した歩道があった。しかし,雨が降ると土が
流失するため,流失しない土舗装の希望があった。現場の土を改良して舗装し,その後雨による
流失は防止されている。
3)駐車場の土舗装
土舗装した駐車場であったが,雨が降ると泥状になって車が止められないため,現場の土を改
良して舗装した。
4)川の岸辺の土壌改良
川の岸辺の土壌が,川の水で流失するため,現場の土を改良した。その後,植物が育った。
5)岩石が多い山の斜面への植栽土壌の施工
表面に岩石が多い山の斜面に植物を育てたい希望があった。そこで,現場近くから土壌を採取
して安定化し,その斜面に施工した。雨が降っても流れない表土ができ,植物も育っている。
6)表土が流失した山の斜面
山の斜面の表土が流失し,植物が育たない状態であった。そこで,現場近くから土壌を採取し
て安定化し,その斜面に施工した。雨が降っても流れない表土ができ,植物も育っている。
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