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ビジュアルベーシックによる TOEIC用語彙力 養成ソフトウェア

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ビジュアルベーシックによる TOEIC用語彙力 養成ソフトウェア
論
日本大学生産工学部研究報告B
2
0
0 年 6 月 第 3
6 巻
文
ビジュアルベーシックによる TOEI
C用語彙力
養成ソフトウェアの試作
中條清美 ・山﨑淳史
・牛田貴啓
TheDevel
opme
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i
s
hCD-ROM Mat
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C
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4.
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e
ksaf
t
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heendoft
hes
e
s
s
i
on.
1.
14年度には 2
5コマ(津田沼校舎5コマ,実
はじめに
校舎 2
0コ
マ)に拡大し,そして平成 1
5年度には 3
8コマの CALL
日本大学生産工学部において,
平成 14年度より開始さ
授業が予定されている。実施科目は「コミュニケーショ
れた新カリキュラムの英語科教育目標である「TOEI
C
ン」
,「実用英語」
,
「総合英語」
,「英語講読」の 4科目に
スコアの向上」は着実に教員・学生に浸透しつつある。
わたり,CALLの教室環境や各科目の目標に応じて,
そ の 1つ の 表 わ れ と し て,20
0
2年 12月 に 実 施 し た
CALL教材とインターネットが適宜利用されている。前
0
TOEI
CI
Pテストの受験希望者が受付初日に上限の 10
者の CALL教材を使用した本学における教育実践の効
名に達するという状況に,TOEI
Cに対する学生の関心
果については,中條他(2
00
2
) および中條 (
2
0
02
) にお
の高まりをうかがうことができる。また,平成 1
3年度後
いて報告した。
期より開始した CALL(コンピュータを利用した語学教
しかしながら,CALLの教育効果の是非を左右する
育)
の実施時間数も,TOEI
Cスコアの向上と教育の効率
9
99
) や椎名他
CALL教材に関しては,依然,土肥他(1
化をめざして徐々に増加している。当初は7コマ(津田
(2
0
01
) に報告されているように効果のあがる教材が決
沼校舎2コマ,実
定的に不足している。宮崎他
(2
00
2
) が指摘するように,
校舎5コマ)から開始したが,平成
日本大学生産工学部教養・基礎科学系
日本大学生産工学部数理工学科学部生
43
「市販されている英語学習ソフトは,内容も固定的であ
らの要望は次の3点,1)操作性を改善する,2)音声
り,CALL教室で使用するには限界がある」というのが
の質を高める,3)初級学習者のレベルに適合させる,
実情である。
に要約できる。今回,変更した項目を○,変更しなかっ
幸い,本学では現在のところ,CALLのメイン教材で
た項目を×と表1に表示し,①∼ の各要望に対する具
あるコミュニケーション能力養成教材については,千葉
体的な対応方法を,次節の試作手順の中で個々に述べて
大学開発の「3ラウンド・システム:Li
!シ
s
t
e
nt
oMe
いく。
リーズ」の使用許可を得て使用させて戴いている
。し
4.
かしながら,上記教材と合わせて指導すべきコミュニ
ケーション能力向上に必須の「語彙力養成教材」につい
ては,市販ソフトからもオンラインソフトからも適切な
初級者向け語彙力養成教材「TOEI
C語彙
2」の試作
ソフトウェアの試作の流れを図1に提示した。この試
教材を発見できなかった。
作の流れに沿って,4
.
1単語・用例の収集と選定,4
.
2選
そのため,筆者らは平成 1
3年度より TOEI
Cに目標を
定語彙の指導法,4
.3メディア情報の収集と編集,4
.
4メ
しぼり,CALL用語彙力養成ソフトウェアの開発を行
ディア情報のソフトウェア化の順に略述した。使用した
なってきた
機器とソフトウェアについては注3)
に詳細を記した。
。試作した CD「TOEI
」
ROM 教材
C語彙 1
は既に中條他(2
00
2
) において発表を行なっている。本
研究では,CD-ROM 教材
「TOEI
3
C語彙1」の試用者 23
人から収集した要望に基づき,新たに開発した初級者向
け「TOEI
C語彙2」の試作過程とその教育効果につい
て,特に前作との変更点に重点を置いて報告する。
2.
本研究の目的
本研究の目的は,1)学習者の語彙力養成を目標に,
20
0
2年に試作した CDROM 教材「TOEI
C語彙 1」の試
用評価に基づいて,新たに初級者向け語彙力養成用 CD
-ROM 教材「TOEI
C語彙2」を試作すること,2)試作
した CDROM 教材「TOEI
C語彙2」を実際の授業で半
期間試用し,その教育効果を報告することである。
3.
」を試用した
CD-ROM 教材「TOEI
C語彙 1
学習者からの要望
本研究を開始す る きっか け と なった 20
0
2年 開 発 の
3
3名からの
CDROM 教材「TOEI
C語彙1」の試用者 2
図1 試作の流れ
「TOEI
C語彙2」への要望①∼ を表1に記した。これ
表1 「TOEI
C語彙2」への要望と対応
項
目
要
望
用例
① 用例が長い。
イメージによる導入 ② 写真と単語のつながりが感じられない。
③ 統一感がない。
音声
④ 声に元気があったほうがいい。
⑤ 雑音が入っている。
⑥ 用例についての絵や写真があると分かりやすい。
画像
⑦ 動画にしてほしい。
キーボード
⑧ スペルをキーボードから打つ練習があると面白い。
⑨ どこをクリックしたらいいか分からない。
⑩ 実行速度,反応が遅い。フリーズすることが多い。
操作性
St
e
p1と St
ep8で音声を聞く際,クリック が た
まってしまい,途中でキャンセルできない。
○:今回変更を加えた
44
×:変更しない
対 応
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
○
4.
1 単語・用例の収集と選定
のデータに使用するため,テキストデータとして保存し
本試作ソフトウェアの効率を決定する学習語彙と用例
た。
の選定方法,それらの指導効果の目安について以下に略
4
.1
.
2 選定語彙と用例の指導効果の目安
述した。詳細は,中條(2
0
03予定) を参照されたい。
選定した語彙とその用例の指導効果を 概 算 す る。
なお,
「TOEI
C語彙2」は初級学習者対象のソフト
「TOEI
C語彙1」と「TOEI
C語彙2」は1年分の語彙
ウェアであるので,学習者の語彙レベルを中学1年∼高
教材として継続使用する前提で制作しているので,概算
校2年で学習した語彙をすべて習得したレベルと仮定し
には,
「TOEI
」と「TOEI
」の2枚の CD
C語彙 1
C語彙 2
て語彙選定を行なった。
-ROM 教材の推定効果を合算した。なお,以下の概算の
4
.
1.
1 データベースの作成と単語・用例の選定
まず,TOEI
Cの公開問題7回分
の模擬問題5回分
計算方法の詳細は参 文献 7
)を参照されたい。
と TOEI
CFr
i
e
nds
中 学 校 教 科 書 の 学 習 語 彙 を 習 得 し た 学 習 者 が,
の英文データベース(異語数 5
,
10
8
「TOEI
C語彙1」と本試作教材「TOEI
C語彙2」の各
語,総語数 80
,
72
5語)を作成した。
20
0語と用例各 40
0種を完璧に学習し TOEI
C第2回公
次に,上記データベースから作成した
「TOEI
C元リス
開テスト問題を受験したと仮定する。学習後,このテス
ト」の 5
,1
0
8語から中学1年∼高校 2年の教科書で学習
トの使用語彙総数のうち,既習語の占める割合は 7
6
.
4%
した語彙を差し引くと 70
4語が残った。この 70
4語から
から 8
9.
0
%へ 12
.
6ポイント上昇する。この割合から,
既に 2
0
0
2年に制作済みの「TOEI
C語彙 1」で使用された
「未知語に遭遇する割合=1
0
0
/(
1
00
−既知語の割合)
」の
20
0語を取り除くと,最終的に 6
3
4語の「TOEI
C特徴語
式を用いて「未知語に遭遇する割合」を推定すると,学
リスト」
が作成された。この 6
3
4語の頻度上位の語から,
習以前は「4語に1語未知語に遭遇する割合」であった
図2の「ビジネス」
,
「人事と雇用」
,「会議」等の 10のユ
ものが,学習後は「9語に1語の割合」に改善される。
ニットにふさわしい各 20語×10組の語彙セットを選定
さらに,語彙力以外の英語能力が英語母語話者のよう
し,初級者向け「TOEI
0語を定義した。
C語彙2」の 20
に完璧な状況を仮定すれば,前述の 8
9.
0
%という数値か
ら TOEI
Cテストの正答率を高い精度で推定できること
が明らかにされている 。そこで,TOEI
C第2回公開テ
スト問題の換算表を使用してスコアの算定を行なうと,
「TOEI
C語彙1」と「TOEI
C語彙2」の両方の教材を
完璧に学習すれば,推定上は TOEI
Cのトータルスコア
約1
40点分の上昇が可能となる。ただし,上記の推定の
解釈には,学習者は学んだ単語の幾分かを忘却するもの
であること,また,上記のテストの解答には語彙以外に
背景的知識や文法的知識など多様な情報処理能力の駆使
が要求されることを 慮する必要がある。
4.
2 選定語彙の指導法
教育効果を高めるには効率の高い選定語彙とともに,
高い教育効果が報告されている語彙指導法を使用する必
図2 「TOEI
C語彙2」の 10組の学習トピック
要がある。
「TOEI
C語彙1」では,単語の保持率が著し
一方,
「語」
のみでは実用コミュニケーションの役に立
く高い竹蓋(1
9
9
9) の 1
2ステップの「総合型」語彙学習
たないと言われており,実際のコミュニケーションでの
システムを CALL教材として実用化した高橋(1
99
9
)
スピードやノイズに対応するためにも,単語を単独で覚
の8ステップ指導法に範を求めた。竹蓋(19
9
9
) が対象
えるのでなく,コンテキストの中で単語を提示して指導
としている学習者は主に上級レベルの学習者であり,高
する必要がある 。次の段階として,選定語彙 20
0語の各
橋(1
9
9
9) は中級レベルの学習者を対象としている。
語について,コンコーダンサー(用例検索プログラム)
従って,中級者向けの高橋(19
9
9
) をモデルとして試
を使用して英文データベースを検索し,初級レベルの学
作した「TOEI
C語彙1」には,本学の初級レベルの学習
習者に適切な用例を各語につき2例ずつ抽出した。この
者にとって難易度の高い学習ステップが含まれている可
際,表1「TOEI
C語彙 2への要望」の「① 用例が長い」
能性があらかじめ予測できた。そこで本研究の「TOEI
C
という意見を尊重し,
「用例の長さは2∼5語」とした。
語彙 2
」
の試作においては,本学の学習者による試用評価
また,用例の語が学習語よりも難しい語にならないよう
に基づいて,初級レベルの学習者に難易度の高い学習ス
に留意した。最後に日本語訳を付した。
テップの内容を変更した。表2に「TOEI
C語彙1」と,
以上のようにして選定した単語と用例はソフトウェア
試用者の要望に基づいた修正後の「TOEI
C語彙2」の語
45
表2「TOEI
C語彙 1」と「TOEI
C語彙 2」の語彙指導ステップの対照表
TOEI
C語彙1
St
e
p1イメージによる導入
TOEI
C語彙2
→
写真と日本語による導入
St
e
p2一覧表による学習
St
ep1一覧表による学習
St
e
p3短い用例による学習
St
ep2意味の確認
St
e
p4意味の確認
St
ep3短い用例による学習
St
e
p5綴りの確認
St
ep4綴りの確認
St
e
p6短い用例による復習
→
St
e
p7一覧表による復習
→
St
e
p8イメージによる定着
→
彙学習のステップを対照して示した。
St
ep5ディクテーション
確認 Qui
zによる定着
をめざした。しかしながら,試用者からは
「③ 音声に統
前述の「TOEI
C語彙 2への要望」の「② イメージに
一感がない」という指摘があった。さらに,
「④ 音声に
よる導入は写真と単語のつながりが感じられない。」
とい
元気があったほうがいい」という改善要求もあった。そ
う指摘にあるように,
「TOEI
」の St
C語彙 1
e
p1,St
e
p
こで,
「TOEI
C語彙2」では発話者を「元気な声」の1
8の「イメージによる導入と定着」は他のステップより低
人に絞り,教材制作に経験豊富な
『NHK ラジオ英語リス
く評価された。例えば,St
「イメージによる導入」
e
p1の
ニング入門』アシスタントのサンドラ・リーシュマン氏
とは
「学習する 12語にふさわしい画像を提示し,絵をク
に協力を依頼して音声収録を行なった。
リックすると 12語の音声が流れる」というものであっ
ノイズに関して「TOEI
C語彙1」の学習者から「⑤ 雑
た。おそらく評価が低かった原因としては,高等学校の
音が入っている」
という指摘があった。
「TOEI
C語彙1」
学習語彙と相当異なる TOEI
Cの語彙を,St
e
p1から聞
は「静かな屋内」で収録したにもかかわらずノイズが混
いただけで思い浮かべるのは初級学習者には学習負荷が
入したものと思われる。「TOEI
C語彙2」では高性能の
大きいためと えられる。
防音設備を備えた千葉大学教育学部録音室を使用させて
そこで「TOEI
「St
C語彙2」では,
e
p1イメージによ
る導入」を,初級学習者により親切な「写真と日本語に
頂き,ノイズの軽減に努めた。また衣服の擦れる音や椅
子の軋みなど微細な雑音にも注意を払った。
よる導入」に変更した。写真と5行程度の日本語文で各
収録した音声は録音ソフトである Tot
al
Re
c
or
de
rを
ユニットの語彙の使用環境に関して解説し,さらに,日
使用して,音質を 4
4
.1KHz
,1
6ビット,モノラルの形式
本文の中に新語を5∼7語導入することによって新語の
に設定し,WAVEファイルとして保存した。
「TOEI
C語
使用コンテキスト(文脈)を学習者に与えることも意図
彙1」との相違点は,音質をステレオからモノラル形式
している。
「St
ep8イメージによる定着」は後述の「確認
に変更することで容量の削減を図ったことである。この
」に変更した。結果的に「TOEI
Qui
z
C語彙1」の St
e
p
変更を加えた理由として,
「TOEI
C語彙1」と平行して
1,St
e
p8を全く異なる形式のタスクに変更したことに
使用したコミュニケーション能力養成教材「Fi
r
s
t Li
s
-
より,試用者の要望
St
e
p1と St
e
p8で音声を聞く
(制作:千葉大学・NHK エデュケーショナル)
t
e
ni
ng」
際に,クリックがたまってしまい,途中でキャンセルで
の音声もモノラル形式で記録されており,形式を変更し
きない。
」は解消された。
ても音質には影響を及ぼさないものと判断したためであ
他に変更を加えた学習ステップは,St
ep5にディク
る。
テーションを採用して書き取りを一つの学習ステップと
最後に,音声編集ソフトの Gol
dWaveを使用して,取
して取り入れたこと,そして,学習の最後に定着効果を
り込んだ音声ファイルから単語単位,用例単位に必要な
確認し,学習者に達成感を与えるための確認 Qui
zを追
部分を切り出して個別の音声ファイルとして保存した。
加したことである。
4
.3
.
2 画像の収集と編集
4.
3 メディア情報の収集と編集
(1
9
80
) は「視覚情報は初級の学習者の聞き
Muel
l
e
r
4
.
3.
1 音声の収集と編集
取りを助ける」と報告している。必ずしも容易でない
「初級の学習者は音に頼って単語を記憶する」 と報告
0組の選定語
TOEI
Cの単語学習を興味深くするため,1
されているので,学習教材には自然に発話された良質の
彙が使用される環境を学習者がイメージしやすいよう,
クリアな音声が必要となる。
ニューヨークにある日系企業と現地の広告会社を訪問し
音声の発話者に関して,
「TOEI
C語彙1」では5人の
て撮影を行なった。写真は J
PG形式で保存し,サイズと
米語母語話者の音声を教材にすることによって,
「単調な
色を調整して CDROM 教材に適用可能な形式に加工し
語彙学習に変化をつける」
,
「多様な発音に親しむ」こと
た。
46
画像に関して「TOEI
「⑥ 用
C語彙1」の試用者から,
リーズを回避することが可能となった。
例に絵や写真があると分かりやすい」
「⑦ 画像を動画に
4
.4
.
2 コード(プログラム)の記述
してほしい」という要望があった。しかし,個々の用例
音声の再生,ウィンドウの切り替え,文字の表示等を
を的確に視覚化した静止画や動画を入手することは,現
制御するために個々のウィンドウに必要なコードを記述
実問題として時間的,経済的に不可能であるので,これ
した。
「TOEI
C語彙2」ではテキスト(単語,用例)と
らの要望には応えられないと判断した。
画像情報をコード内組み込みからファイル読み込み形式
4.
4 メディア情報のソフトウェア化
に変更したため,コードの記述量を約 1
/
10に削減でき
編集したテキスト,音声,画像のメディア情報を適切
た。また,この形式に変更したことにより,教材内容の
な種類・大きさ・位置・タイミングで提示するには,
部分改訂が容易になった。
「TOEI
C語彙1」と同様に Vi
s
ualBas
i
cというプログ
試用者からの要望
⑨ どこをクリックしたらいいか
ラミング言語を使用した。以下にソフトウェア化の過程
分からなかった。」に対しては,クリックすべき場所に
を,試用者からの要望に対する対応に言及しながら略述
カーソルが置かれるとマウスポインタがスピーカーマー
した。
クに変わるように変更した。また,各ステップの最初の
4
.
4.
1 ウィンドウの設計
説明文で具体的な操作方法を指示するという2つの方法
ウィンドウの設計に際しては,本ソフトウェアで採用
で対処した。
した語彙指導法がより効果的に実践しやすいように操作
4
.4
.
3 ウィンドウの連結
ボタン,テキスト,画像の「大きさ・量・配置」を「見
作成した個々のウィンドウを統合して一つの教材とし
やすく」
,
「わかりやすく」
設計した。実際に作成したウィ
て実行するため,図3に示した構造に従いウィンドウを
ンドウ画面は以下の通りである。
連結した。そして,コンパイルによって実行ファイルを
メインメニュー,タイトル,クレジット
作成し,ソフトウェアを動作可能にした。
導入,サブメニュー
最後に,ソフトウェアのバグ,誤字脱字,レイアウト
各ステップの説明(×5ステップ)
の不具合等の点検を行ない,問題点を修正するデバッグ
各ステップの学習(×5ステップ)
作業を数回繰り返し,ソフトウェアが完成した。
パスワード,QUI
Z説明,QUI
Z学習,採点
5. 「TOEI
C語彙2」の特徴
学習者からの「TOEI
C語彙2」への改善要望「⑩ 実
行速度,反応が遅い。フリーズすることが多い。
」
に応え
5
.1 導入画面の刷新
るには,
ソフトウェアの総容量を削減する必要があった。
各ユニットの導入画面では,図4のような「写真と日
そこで,1)ソフトウェアで使用している同形式のウィ
本語」が示される。最初に写真によって学習語彙の使用
ンドウを重複使用することにより全ウィンドウ数を 32
4
される場面などのトップダウン情報が与えられ,
次いで,
枚から 1
9枚に削減し,2)音声容量の削減,3)後述の
学習語彙が使用されるコンテキスト(文脈)が日本語で
コードの記述変更,と合わせて総容量を 2
06MBから 6
5
解説される。Goodman
(1
96
5
) は「単語は単独で示され
MBに縮小した。その結果,動作を高速化し,画面のフ
る時よりも文脈の中で示された方がより多くの単語を認
図3 TOEI
C語彙学習ソフトの構造
47
のノートに書き取る。全問終了すると図6の正解と用例
の意味が提示され,自己添削を行なう。再度スピーカー
のアイコンをクリックして,自分の聞き取れなかった部
分を集中して聞く。
図4 導入画面
知することができる。
」
と報告している。この導入画面で
は,初級レベルの学習者が確実に内容を理解できる日本
語の解説文(文脈)
に7∼8語の新語を括弧つきの英語で
図5 ディクテーション画面
付加した。これらの新語は続いて学習する語彙のプレ
ビューの役割も果たしている。
5.
2 提示する単語数の削減
1ユニットの 2
0語(用例は 40種)を一度に提示する
と,初級学習者はその分量に圧倒されてやる気を喪失す
る可能性がある。一度に学習する単語数に関して,Cr
ot
h(1
9
6
7) は,難易度が大きい時は一度に
er
sandSuppe
s
提示される単語の数は 1
8語が効果的であると報告して
いる。「TOEI
C語彙2」では,初級学習者のレベルに配
慮してさらに提示語数を減らした。1ユニットを前半,
後半に2分割して 1
0語ずつ,用例は 10種を2ページず
つ提示した。前半か後半の選択ボタンは,図4に示した
導入画面に設置した。
図6 正解提示画面
5.
3 綴りの確認のランダム表示化
「TOEI
C語彙1」の「STEP5綴りの確認」の学習作
ディクテーションの後すぐに自己添削を行なうこと
業では,語の提示順序が固定されていたため,心理学で
で,オペラント学習理論でいう適切な「強化」が可能と
言う「系列位置効果」が働き,最初と最後の方の語が真
なる。また自己添削の結果,自分の弱点に焦点を絞った
ん中の語よりよく記憶に残る可能性が えられた。そこ
聞き取りを行なう学習作業も認知学習理論にかなってい
で「TOEI
C語彙2」では,単語の表示をランダムに提示
ると言えよう 。
するように変更した。
5.
5 確認 Qui
z
5.
4 ディクテーション
(19
9
2) は単語テストの予告は単語の短期記
Hul
s
t
i
j
i
n
「TOEI
C語彙1」を試用中の学習者の観察を通して,
憶に効果があったと報告している。望月(1
99
6
) も単語
「手で書いて覚える」作業を好む者が多いことは前に述
テスト直前の短時間の勉強は短期的には効果があるとし
べた。そこで,単なる書写作業より記憶に負荷をかける
ている。そこで,初級レベルの学習者が各ユニットの学
ことによってより強固な定着を期待できる「ディクテー
習の最後まで効果的に集中して学習できるように,ユ
ション(聞こえてきた英語を書き取る)」を5番目の学習
ニットの最後(すなわち授業時の最後)に5分間の空所
ステップに取り入れた。これによって,St
e
p1から St
e
p
補充形式テストを導入した。
「音声」
「綴り」
「意
4で行なってきた作業を統合化した,
味」を結びつけた学習が可能となるように工夫した。
図7の Qui
z画面のテスト問題はランダムに出題され
るため,学習者は毎回,内容や順序が異なる問題に取り
具体的な学習方法は以下の通りである。図5のスピー
組むことが可能である。解答形式は「TOEI
C語彙1」の
カーのアイコンをクリックし,聞こえてくる用例を各自
試用者からの要望「⑧ キーボードからも入力したい」に
48
対応して,キーボード入力を採用した。
TOEI
C第2回公開テスト問題をプリテスト,ポストテ
図7の採点ボタンを押すと図8のように「学習者の解
ストに使用した。プリテストは4月9日,ポストテスト
答,模範解答,得点」が表示される。誤答は赤字で表示
は7月 13日に実施した。被験者グループ1(4
1名)に対
され,学習語彙の定着度を確認することができる。また,
しては CDROM 教材「TOEI
C語彙2」のみを丁寧に指
即座に KR(Knowl
)情報が学習者に与
edgeofRe
s
ul
t
s
導した。グループ2(3
8名)は CD-ROM 教材「TOEI
C
えられるので,動機づけにも役立つ。学習者の中には
語彙2」とコミュニケーション能力養成 CDROM 教材
ゲーム感覚で隣の学生と得点を競う姿も見られる。
「Fi
r
s
tLi
s
t
eni
ng」を併用して指導した
。なお,英語
授業は週1回のみである。
結果,両グループとも TOEI
Cスコアの上昇が観察さ
れた。
「TOEI
C語彙2」のみを使用したグループ1の
トータルスコアは 2
01
.
0点から 2
2
9.
3点へ平
28
.
3点
の上昇(1%片側検定で有意 t
=2
.
7
48 )が認められた。
その内訳はリスニングセクションで 1
8.
3点,
リーディン
グセクションで 1
0
.0点の上昇であった。一方,グループ
2のスコアの伸びは 21
4
.2点から 27
1
.4点へ平
5
7.
2
点の上昇(1
%片側検定で有意 t
=5.
5
29 )が認められ
た。内訳はリスニングセクションが 3
3.
2点,リーディン
グセクションが 2
4
.1点の上昇であった。
以上の結果から「TOEI
C語彙 2」は TOEI
Cで測定さ
れるコミュニケーション能力の向上に有効であると判断
図7 Qui
z画面
した。また,語彙力養成教材をコミュニケーション能力
養成教材と組み合わせることによって,さらに高い効果
を得られることも確認できた。
6.
2 保持率確認テスト
学習した単語がどれだけ定着しているかという保持率
は,
「TOEI
で学習した語彙の中から 4
0語を選
C語彙2」
定し,1
0の選択肢から正解を選択する 4
0問のテストを
作成して,学習直後と 1
3週後の正解率の変化を観察し
た。解答にはマークカードを使用した。
第1回目の保持率確認テストは,「TOEI
C語彙2」の
全2
00語の学習終了後,前期の最終週(7月)に学習者
全員が期末テストとして受験した。第 2回目の保持率確
認テストは夏休みをはさんで 13週後の後期の第一週
(9
図8 Qui
z正解提示画面
月)に実施した。学習者は9月のテストの予告を受けて
6.
いない。第2回目の保持率確認テストには,第1回目の
教育効果
40問に,後期学習予定の 5
0語を加えた 9
0問を使用し
「TOEI
C語彙 1」の試用者から収集した要望に基づい
た。
て試作したソフトウェア「TOEI
4年
C語彙2」は平成 1
図9に「TOEI
6
7名)の
C語彙2」を使用した2クラス(
度前期の「コミュニケーションⅠ」の授業において,1
学習者の第1回目と第2回目の保持率確認テストの結果
年生6クラス 2
06名の学習者が試用した。
「TOEI
C語彙
を提示した。比較のため,他の研究者のデータも示した。
2」を使用した指導実践の教育効果は,1)英語の実用
「TOEI
C語彙2」の学習者のテスト結果は,前期の学
コミュニケーション能力を測る「TOEI
Cスコアの上昇」
習終了直後(7月)では 4
0点満点中 3
6
.7点(保持率
と,2)指導数週間後に学習した語彙の何%が定着して
91
.
8%)
,夏 休 み 明 け の 13週 後 は 33.7点(保 持 率
いるかを測定する「保持率確認テスト」の二つの側面か
84
.
2%)であった。竹蓋(1
9
9
9) の「総合型」における
ら検証された。
指導後 11週目の平 保持率(9
3%)には及ばないものの,
6.
1 TOEI
Cスコアの伸び
竹蓋他(1
9
96
) の「伝統型」や上岡(1
9
8
2) の忘却曲
「TOEI
C語彙2」の教育効果は,まず,TOEI
Cスコ
アの上昇量 に よ り 観 察 を 行 なった。効 果 の 測 定 に は
線と比較して大きな差があり,
「TOEI
C語彙2」の指導
は強固な定着率を示すと判断した。
49
価を得た。
今回のアンケートに追加した項目,8)「やる気にな
る」
,9)「 えながら学習できる」の評価「4」によっ
て,学習理論を反映したソフトウェアをめざした点が評
価されたと える。以上,主目的の一つであった,
「操作
性を改善する」
,「音声の質を高める」という点は十分に
達成されたと判断した。
7.
2 各学習ステップの評価
「各学習ステップの評価」の集計結果を質問項目とと
もに表4に示した。
「TOEI
C語彙1」で評価の低かった
1)と8)の「イメージによる導入」と「イメージによる
定着」は「TOEI
「写真と日
C語彙2」では,それぞれ,
図9 「TOEI
C語彙2」の保持率
7.
本語による導入」と「確認 Qui
」に変更した。結果,
z
「TOEI
C語彙2」の項目1)の評価は 4」,項目7)
アンケート調査結果
「確認 Qui
「TOEI
z」も「4」と評価された。また,
C語
TOEI
C語彙2」に対する学習者の意見や感想を収集
彙2」で新しく採用した 6)
「ディクテーション」も「4」
するため,前期の講義終了後,アンケートによるソフト
と評価されるなど,全般的に満足できる結果を得られた
ウェアの評価を実施し,全員(6クラス 2
06名)の回答
と える。
を回収した。
「TOEI
(2
00
2
)
に対する評価と比
C語彙1」
7.
3 自由筆記
較するため,回答者の人数がほぼ同数の2クラスの集計
「TOEI
C語彙2」について具体的な意見を調査するた
結果を使用して以下の 察を行なった。
め,
「従来の単語学習法と比べて「TOEI
C語彙2」の良
7.
1 全般的な評価
い点と改善点を自由に書いてください」とたずねた結果
「全般的な評価」についての集計結果を表3に示した。
から,代表的な意見を表5に記した。本教材が初級レベ
表3の左の列1)∼9)が質問項目,中央が
「TOEI
C語
ルの学習者の多岐にわたる要望をそれぞれ的確に満たし
彙1」,右の列が本研究で試用した「TOEI
C語彙2」の
ており,開発されたソフトウェアはもう一つの主目的で
評価である。回答は質問項目に対して,「強くそう思う」
ある「初級学習者のレベルに適合させる」という目的も
から「まったくそう思わない」まで「5」から「1」の
十分に達成したと結論した。
5段階評価で行なった。
8.
まず,質問1)に対する評価から「TOEI
C語彙2」の
まとめと今後の課題
「難易度レベル」は「TOEI
C語彙1」と同様,適度であ
本報告は,TOEI
Cスコアの向上に必須といわれる語
ると評価された。「TOEI
C語彙2」の重要な改善目標の
彙力向上に寄与する語彙学習用教材「TOEI
C語彙2」の
ひとつであった「操作性(質問2)
」と「音質(質問3)
」
試作過程とその教育効果について述べたものである。効
については,評価が「3」から「4」に向上し,目標が
率の高い選定語彙と定着率の高い語彙指導法に基づいて
十分に達成されたと
試作した「TOEI
」(20
0
2
)の試用者からの要望を
C語彙 1
える。質問4)
「提示のタイミン
グ」
,質問5)
「音声を聞きながらの語彙学習」,質問6)
大幅に取り入れ,生産工学部の学習者のレベルとニーズ
「用例を使用した語彙学習」,質問7) 次回も使いた
に適合させるよう工夫した。
い」は,
「TOEI
C語彙1」と同様,いずれも肯定的な評
英語教材を作成している Poel他(1
9
98
) は教材開発
表3 「TOEI
C語彙1,2」についての全般的な評価(中央値)
1)「TOEI
C語彙」はむずかしすぎた
2)「TOEI
C語彙」は使いやすい
3)音質はよかった
4)音声,文字の提示のタイミングは適切だった
5)音声を聞きながらの語彙学習は記憶しやすい
6)用例を使用した語彙学習は役にたつ
7)次回の「TOEI
C語彙」も使いたい
8)やる気になる
9) えながら学習できる
50
TOEI
C語彙1
TOEI
C語彙2
5―4―③―2―1
5―4―③―2―1
5―4―③―2―1
5―4―③―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―4―③―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―4―③―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
5―④―3―2―1
表4 各学習ステップの評価(中央値)
TOEI
C語彙1
1)St
e
p1イメージによる導入
2)St
e
p2一覧表による学習
3)St
e
p3短い用例による学習
4)St
e
p4意味の確認
5)St
e
p5綴りの確認
6)St
e
p6短い用例による復習
7)St
e
p7一覧表による復習
8)St
e
p8イメ―ジによる定着
5
5
5
5
5
5
5
5
4
④
④
④
④
④
④
4
③
3
3
3
3
3
3
③
2
2
2
2
2
2
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
TOEI
C語彙2
1)写真と日本語による導入
2)St
e
p1一覧表による学習
3)St
e
p2意味の確認
4)St
e
p3短い用例による学習
5)St
e
p4綴りの確認
6)St
e
p5ディクテ―ション
7)確認 Qui
zによる定着
5
5
5
5
5
5
5
④
④
④
④
④
④
④
3
3
3
3
3
3
3
2
2
2
2
2
2
2
1
1
1
1
1
1
1
表5 「TOEI
C語彙2」のアンケート結果:自由筆記より抜粋
・いろいろな分野で使う単語がまとめてあってよかった。
・発音も聞けるので,とても覚えやすかった。
・学習の順番が記憶に残りやすく良かった。
・短い用例があることが良かった。
・やる量が決まっているからやり易い。何度も繰り返しできていい。
・比較的頭に入りやすい。
・自分で えながらできた。
・確認のテストが最後にあるから必死で覚えられる。
・ありのままの英語で聞けるので覚えるときに正しく覚えられる。
・音声を聞きながら文字をみると覚えやすかった。
・自分のペースで学習できたのでよかった。
・キーボード入力でスペルの確認ができた。
・本番の TOEI
Cにつながると思った。
に関して,
“Mat
, and
er
i
al
s devel
opme
nt i
s an ar
t
しかしながら表6に示すように少数ではあるが改善要
t
e
ac
he
r
snee
dt
oc
ons
i
de
rbot
ht
het
he
or
e
t
i
c
aland
望が学習者より提出されている。特に1)の「似たよう
.
”と
pr
ac
t
i
c
als
i
de
sofde
ve
l
opi
nge
f
f
e
ct
i
veac
t
i
vi
t
i
e
s
な単語」とは具体的には, f
,f
,c
(料金),
e
e
ar
e
har
ge
述べ,理論と実用の両面を 慮する必要性を指摘してい
(荷物)などを指している。このよう
l
uggage,baggage
る。
「TOEI
C語彙2」の試作にあたっては,各種の学習
な語は,いずれも使用頻度が高く,
“Money”
や
“Tr
”
ave
l
理論と学習者のニーズを融合させるように努力した。
といったトピックの下に分類されたものである。Hi
ga
平成 1
4年度前期に「TOEI
C語彙2」を試用した学習
(1
96
3
) ,Ti
99
3
) は,提示される単語が
nkham(1
者のアンケート調査を分析した結果,
「TOEI
C語彙2」
意味的に近いものであると,それらを覚える際に単語の
は「TOEI
C語彙1」よりもはるかに高く評価されている
間で干渉が起こり,意味のつながりのない単語を覚える
ことが判明した。さらに,教育効果を検証したところ,
表6 「TOEI
C語彙2」の改善要望
13週後の後期開始時の学習語彙保持率は 84
.
2%であり,
本教材の強固な定着効果が証明された。また,
「TOEI
C
語彙2」の学習だけで TOEI
8
.3点の上昇,
Cスコアは 2
さらにコミュニケーション能力養成教材「Fi
r
s
tLi
s
t
en7
.
2点のスコア上
i
ng」と組み合わせて学習した場合は 5
昇を示し,TOEI
Cスコアの向上に本教材が有効である
ことが検証された。
51
1)似たような単語が多かったので意味の説明を入れ
るといいと思う
2)会話の中でどのように使われているか例文などを
入れてほしい
3)用例の長さをもう少し長くした方がいいかもしれ
ない
4)単調すぎる
よりも時間がかかるということを報告しており,試用者
5)宮崎佳典,南紀子,
「CALL用作問機能付英語学習ソ
の感想は的を射ていることがわかる。早急に調整すると
フト及び学習履歴分析ツールの開発」
『平成 14年度
ともに,今後,語彙・用例の選定時にはこの点を十分に
情報処理教育研究集会講演論文集』文部科学省・東
配慮する必要があると思われる。
京大学,2
00
2
10
26
,pp.
61
6
-6
1
9.
また,2)および3)については,中級者向け
「TOEI
C
6)中條清美,牛田貴啓,山崎淳史,福島昇,須田理恵,
語彙3」
の試作で実現したいと える。4)については,
木内徹,Mi
「ビジュ
,
c
haelGe
nung,Be
r
nar
dPer
i
s
s
e
初級学習者が意欲を持って学習を継続するには,絶えず
アルベ−シックによる TOEI
C用語彙力養成ソフト
動機づけが必要であり,これは今後も大きな課題である。
ウェアの試作」
『日本大学生産工学部研究報告』35
,
謝
2
0
0
2,pp.
11
2
3.
辞
7)中條清美,
「
「TOEI
2」
の選定とその効果」
C語彙1,
平成 14年度前期,CALLの指導実践のために行なわ
(2
00
3予定)
れた本研究は次の方々のご厚意により可能となりまし
8)Re
ad,J
ohn, As
s
e
s
s
i
ng Voc
a
b
ul
a
r
y, Cambr
i
dge
:
た。
,2
0
00
.
Cambr
i
dgeUni
ve
r
s
i
t
yPr
es
s
日本大学生産工学部教養・基礎科学系の皆様には,
9)中條清美,竹蓋順子,高橋秀夫,竹蓋幸生,
「語彙力
CALL授業の実践並びに教材の試作に対して,一貫して
と実用コミュニケーション能力の関係」Lang
ua
ge
ご理解とご協力をいただきました。
9,20
0
2
,pp.
1
05
1
15
.
Educ
a
t
i
o
n& Te
c
hno
l
o
g
y,3
音声の録音に協力してくださった 千葉大学教育学部
10
)竹蓋順子,
「コミュニケーション能力の養成に寄与す
助教授・西垣知佳子氏,文化外国語専門学校講師・NHK
る語彙指導システム」
,Lang
6
ua
geLa
b
o
r
at
o
r
y,第 3
ラジオ『英語リスニング入門』アシスタント Sandr
aLe
i
-
号,1
9
99
,pp.
97
11
6
.
s
hman氏,シェーンランゲージサービス・派遣営業部部
11
)高橋秀夫,
「Wi
ndows版英語語彙学習用ソフトウェ
長J
as
onDomi
ni
c
i氏,そして,本学非常勤講師・中井延
アの開発」,千葉大学外国語センター『言語文化論
美氏には用例の日本語訳に協力していただきました。こ
叢』
,第6号,19
9
9,pp.
1
15
12
9
.
こに記して感謝の意を表します。
12
)竹蓋順子,前掲論文
また,本論文においてグループ 2の教育効果の検証に
13
)高橋秀夫,前掲論文
使用した CDROM 教材「Fi
r
s
tLi
s
t
eni
ng」は,科学研
14
)高橋秀夫,前掲論文
究費特定領域研究 「英語 CALL教材の高度化の研究」
15
)He
nni
ng,G.H.Re
me
mber
i
ngFor
ei
gnLanguage
において平成 1
3年度に千葉大学で作成されたものであ
.
Vocabul
ar
y:ac
ous
t
i
cands
e
mant
i
cpar
ame
t
e
r
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り,使用を快諾くださった研究代表者の文京学院大学教
,2
,1
9
7
3,pp.
18
5
19
6
.
La
nguag
eLe
a
r
ni
ng,23
授・竹蓋幸生先生に感謝の意を表します。
参
文
16
)Mue
,Gunt
,“Vi
l
l
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r
he
rA.
s
ualCont
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ualCues
,
andLi
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ngCompr
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he
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献
,Vol
.6
4
,No.3
,
TheMo
de
r
n La
ng
ua
g
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o
ur
na
l
1)中 條 清 美,福 島 昇,須 田 理 恵,木 内 徹,Mi
chael
1
9
8
0,pp.
33
5
34
0
.
,
「CALLシステムによる
Ge
nung,Ber
nar
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r
i
s
s
e
17
)Goodman, K. A l
i
ngui
s
t
i
cs
t
udy ofc
ue
s and
コミュニケーション能力養成の指導効果」
『日本大学
,
mi
s
c
ue
si
nr
e
adi
ng. El
e
me
nt
a
r
y Engl
i
s
h, 42
生産工学部研究報告』35
,2
0
02
,pp1
-9
.
1
9
6
5,pp.
63
9
64
3
.
2)中條清美,
「英語初級者を対象とした CALL授業の
18
)Cr
,E.,andSuppe
,P.1
9
67
.Ex
ot
her
s
s
p
e
r
i
me
nt
s
指導実践」
『平成 1
4年度情報処理教育研究集会講演
i
n Se
c
o
nd-l
ang
uag
eLe
ar
ni
ng.Ne
w Yor
k:Ac
a-
論 文 集』文 部 科 学 省・東 京 大 学,2
0
02
1
02
6,
.Nat
98
2より引用
demi
cPr
es
s
i
on1
59
7
-6
0
0
.
pp.
19
)竹蓋幸生.
『ヒアリングの指導システム』東京:研究
3)土肥充,椎名紀久子,竹蓋幸生,
「CALLの現状分析
社出版.1
9
89
.
とコースウェア開発における今後の課題」,
千葉大学
20
)Hul
.
s
t
i
j
i
n,J
H.Re
t
ent
i
onofi
nf
e
r
r
e
dandgi
ven
外国語センター『言語文化論叢』
,第6号,19
9
9,
wor
dme
ani
ngs
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r
i
ment
si
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i
de
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14
7
-1
7
1
.
pp.
,andBe
,
l
ar
yl
e
ar
ni
ng.I
nAr
naud,P.
J.
L.
j
oi
nt
4)椎名紀久子,及川邦裕,
「コミュニケーション能力養
成 用 英 語 CDROM 教 材 の 分 析 的
CALL教材の高度化に向けて
察
.
),Voc
H.(
eds
a
b
ul
a
r
yand Ap
pl
i
e
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ngui
s
t
i
c
s.
英語
99
2
,pp.1
1
32
5.
Mac
mi
l
l
an.1
」
,La
ng
ua
geEdu-
21
)望月正道.
「基礎からの語彙指導:単語テストの予告
8
c
at
i
o
n& Te
c
hno
l
o
g
y,外国語メディア学会,第 3
号,2
0
01
,pp.
14
5
-1
7
4
.
の効果」『現代』4月号,19
9
6,pp.
5
65
7.
22
)竹蓋順子,前掲論文
52
23
)竹蓋順子,土肥充,高橋秀夫,
「語彙指導用 CAIシス
④ 録音機器:SONY Re
c
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テムのコースウェアの開発とその試用結果」,Lan-
0
manMZ-R90
99
6
,pp.
9
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1
0.
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y,第 33号,1
⑤ 撮影機器:SONY DSC-P3
0
24
)上岡光男.
「英単語は学習された後,どのように忘れ
⑥ スキャナー:EPSON GT-8
7
00
られてゆくか」
『英語教育』
1
0月号,1
98
2
,pp.
42
47
.
使用したソフトウェア
25
)Poe
,
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“Devel
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C., Yos
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① テ キ ス ト データ の 取 り 込 み:Wi
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究』
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7,1
99
8
,pp.
1
1
91
33
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② 用例の検索:Wor
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③ 音声の取り込み:Tot
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④ 音声の編集:Gol
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⑤ 画像の取り込み:Phot
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(Adobe
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27
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⑥ 画像の編集:I
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ペイント(Wi
ndows付属)
1,3,19
9
3
,pp.
3
71
3
80
.
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⑦ プログラミング:Vi
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注1)平成 1
3年度に千葉大学で開発された「3ラウン
⑧ レ コーディン グ:Wi
nCDR6.0St
andar
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ド・システム」に基づく初級者用 CDROM 教材
Edi
t
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i
x)
「Fi
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ni
ng」と初中級者用 CDROM 教材
⑨ 文書作成:Wor
0
0(Mi
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「I
」を使用している。
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注4)TOEI
Cの公開問題7回分:TOEI
C公開テスト
3ラウンド・システムの指導法とその教育効果に
問題第1回∼第3回,
『TOEI
.
C公式ガイド Vol
ついては下記のホームページに詳述されている。
1&Vol
.
2』
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.c
ht
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p:
www.
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注5)TOEI
,2
00
1年5月∼20
0
2年 1月に収
C Fr
i
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nds
録されている Pr
act
i
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eTOEI
C5回分。
ht
ml
注2)教材は CALL環境の変化に対応し易く,英語教師
注6)グループ 1は本データを得るための元のクラスサ
にも簡単に使用できることを念頭に置いてネット
イズが 4
4名と大きいため,
グループ 2のように2
ワーク対応よりも応用が効く CD-ROM 教材の形
枚の CDROM 教材を安全に使用するために十分
態をとっている。
な CALL環境が整わなかった。とりわけ,
「Fi
r
s
t
注3)使用した機器
Li
s
t
e
ni
ng」等の最新のコミュニケーション能力養
① パソコン:NECVALUESTAR NX
成用 CDROM 教材は画像や音声を多用している
0
0J
/
1
VT 5
ため,本来の教材の性能を発揮して再生するため
0
0J
/
NECLaVi
eSLS6
S
にはソフトウェアに相応した性能のコンピュータ
05R/AK
SONY VAI
O PCG-R5
が必要である。
② CD−RW :BUFFALO CRWi
2
10
FB1
(H 15
.
1.
1
0受理)
③ DUPLI
2
00
CATOR:Logi
t
e
cLCM-1
53
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