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1 平成 20 年度 社会工学類都市計画専攻 卒業研究中間発表会 2008

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1 平成 20 年度 社会工学類都市計画専攻 卒業研究中間発表会 2008
平成 20 年度
2008/12/03
社会工学類都市計画専攻 卒業研究中間発表会
ストリートダンスの現状に関する研究 ∼まちづくりにおけるストリートダンスの活用∼
200319016
綾田行
指導教員 吉田謙太郎
1.背景と目的
り」)との比較を行う。まちづくりに有効とされる踊
1-1.ストリートダンスの背景
りとの都市機能的・性質的な比較を通して、まちづ
ストリートダンスは 1970 年代にアメリカ・ニュ
くりコンテンツとしてのストリートダンスの有効性
ーヨークのヒップホップと言われる黒人文化の中で
について検証する。
生まれた。数年後には日本へと伝わり、若者を中心
とした流行となった。その後「ダンス甲子園」など
2.ストリートダンス活動の現状について
メディアの参入もあり普及が一段と進み、現在では
2-1.ストリートダンス関連団体の調査
ストリートダンス人口が 300 万人*¹と規模を拡大し、
ストリートダンスの練習やイベントなどの活動は
その文化を日本に定着させている。世界でも同様に
一般的に地域のダンス専門スタジオ、学生団体など
普及傾向が見られ、数々の世界大会が開催されてい
によって行われており、ほとんどのストリートダン
ることで世界中にストリートダンスが浸透している
サー(以下ダンサー)はいずれかの団体に所属して
ことが伺える。特に日本ではストリートダンス人口
いる。つくば市におけるストリートダンス関連団体
における低年齢層の割合が増加しており、今後のさ
の実態を把握するため、表1に示す調査を行った。
らなる規模増加が予測できる。
表1.ストリートダンス関連団体調査概要
1-2.まちづくりとストリートダンス
つくば市においてストリートダンスの
レッスンを行う全ての該当者・団体
対象
ストリートダンス文化の定着、規模の拡大に伴い
日本ではストリートダンス関係の催しが年々増加し
ている。一般的にはストリートダンスのスタジオ業
方法
代表者に対するヒヤリング
調査内容
各団体の名称、活動属性、レッスン生徒数の目安
調査より、つくば市内における主な団体の名称、
者やイベント専門業者による開催であるが、近年に
属性、レッスン生徒数を以下の表2に示す。
なり各地域の公共団体・まちづくり団体による開催
表 2.ストリートダンス関連団体ついて
名称
属性
生徒数(人)
特定非営利活動法人DanceAssociationSeeds(DAS)
ダンス専門スタジオ
まちづくりの一環として地域活性化などを意図する
ダンス関連会社GRANDSOUL(GS)
ダンス専門スタジオ
団体が多く見受けられる*²。若年層を中心として取
フィットネススタジオ ブレイズ
フェットネス事業
トータルフィットネスクラブ アックア セレーナ
フェットネス事業
1000
1100
50
30
が増えている。特に地域の祭りに伴った開催が多く、
イーアスつくばアイカルチャーセンターHIPHOP
り組まれているストリートダンスに対し、各地域の
まちづくり関係者はそれをまちづくりにおける有効
なコンテンツであると期待を寄せている。
スタジオ多目的事業
12月開始
ストリートダンススクールTopSecret
個人レッスン
筑波大学ストリートダンスサークルREALJAM(RJ)
大学サークル
筑波技術短期大学ストリートダンスグループ
短期大学サークル
茗溪学園ストリートダンス部
高校部活動
30
100
20
20
市内でストリートダンスを扱う団体数は上記の 9
1-3.研究目的
本研究ではつくば市を対象にストリートダンス活
団体であり、その生徒数は約 2350 人である。スト
動の現状を調査し、その規模と都市における機能を
リートダンスを扱う団体の属性としてはダンス専門
捉える。また、人々がストリートダンスに取り組む
のスタジオ、フィットネス事業体、個人レッスン、
要因についてストリートダンスのもつ性質をもとに
大学等のサークル、中学校・高等学校における部活
分析する。そしてそれら二点を踏まえた上で、同じ
動の 5 つの分類に分けられる。特徴として地域のス
ダンスを媒体としてまちづくりへの貢献を果たした
トリートダンス人口はダンス専門スタジオが大半を
成功例(北海道札幌市の 「YOSAKOI ソーラン踊
占めている。
1
た。現在では年に 3 回の予選大会に加え、1 回の決
各団体の主な活動内容に関してそれぞれをグルー
プ分けしたものを下記の表 3 にて示す。
勝大会を含む年間計 4 回の開催となっている。2001
表3.各団体の活動内容によるグループ分け
発表会・イベント・コンテストの開催(注1)
DAS,GS
地域の祭りやイベントに参加
DAS,RJ
ストリートダンスのレッスン
全ての団体
ストリートダンススタジオの貸し出し
DAS,GS,ブレイズ、イーアスつくば
年からは年齢により大会を子供・大人部門にわけて
いる。またコンテストの特徴として当該地域外から
の参加者の割合が大きいことが挙げられる。表 5・
図 2.は 2008 年 9 月 21 日に開催されたコンテスト(予
選大会)の参加者の地域別人数と割合である。
表5.コンテスト参加者の出身地の割合
(注1参加者・観客合計500人以上の開催に限る。
身内開催の小規模な発表会・イベントなどはどの
出身地域
東京
神奈川
埼玉
千葉
茨城
群馬
福島
滋賀
合計
子供の部(人)
23
28
51
30.7
10
9
19
11.4
18
5
23
13.9
14
7
21
12.7
19
32
51
30.7
6
0
6
3.6
3
1
4
2.4
2
0
2
1.2
89
77
166
100
大人の部(人)
合計(人)
団体も行っているものの、市外からも参加者を集め
割合(%)
る開催は DAS と GS の 2 団体のみである。
滋賀, 1.2
2-2.ストリートダンス活動の機能 1:コンテスト
福島, 2.4
本節では現在のストリートダンス文化における最
群馬, 3.6
も活発な要素の一つとされるストリートダンスのコ
ンテストについて着眼する。日本全国、または世界
茨城, 30.7
を対象にした大規模なストリートダンスイベントも
東京, 30.7
神奈川, 11.4
そのほとんどがコンテスト形式となっている。コン
千葉, 12.7
埼玉, 13.9
テストは通常の発表会とは違い、チームを組んだそ
れぞれのダンサーが舞台発表の内容により競合する。
図2.コンテスト参加者の地域別割合(%)
つくば市においては GS によるコンテストが 11 年前
茨城県外からの参加者が約 7 割となる。中でも東
より毎年行われている。
ストリートダンスのコンテストにおける実態を把
京都、埼玉県、千葉県など周辺地域からの参加者が
握するため表 4 に示す調査を行った。
多い。また子供の部に関してはその保護者同伴の割
表4.ストリートダンスコンテスト調査
対象団体
GS
調査方法
GSホームページ・GSイベントレポート
よりデータ収集
合が高く、実際の倍の参加者がいるとも考えられる。
ストリートダンスのコンテストでは当該地域外の
出身者を含む参加者が増加傾向にあり、一時的な人
図 1 は 1997 年より GS で年間に主催されるコン
口の流入を引き起こす効果があると考えられる。
テストへの参加者数を時系列的に表したものである。
2-3.ストリートダンス活動の機能 2:地域活動参加
400
350
近年ストリートダンスは地域における一つの文
300
化活動としての役割を広げている。地域主催のイベ
250
数
者
加 200
参
150
ントや祭りにストリートダンスが起用されるケース
が増えている。つくば市の DAS ではそういったイ
100
ベントや他の地域活動への参加を積極的に行ってい
50
る。ストリートダンスの地域活動における活動内容
0
を把握するため表 6 の調査を行った。
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
年度
表6.ダンス専門スタジオの事業内容
図 1.コンテスト参加者数(時系列)
1997 年のコンテスト開催回数は一回であったが、
出場者の増加とともにその年間の開催回数を増加し
2
対象団体
DAS
調査方法
代表者に対するヒヤリング、DASホームページ参照
質問項目
主な地域活動内容とその趣旨
年間の参加地域イベント
性質に要因があり、現在のストリートダンス人口
調査より、DAS の主な地域活動への参加は以下の
の増大の理由ともなる。本章では下記三つの調査
三つに分けられる。
から人々がストリートダンスに取り組む要因につ
いて考察する。
DAS の主な地域活動
①ストリートダンスの既存研究調査
①地域イベントに生徒がダンサーとして参加
②ダンススタジオへのヒヤリング調査
②公民館や小学校などでサークル活動の実施
③ストリートダンサーへのアンケート調査
③ビジョンネットワークなど地域団体の結成
①、②はストリートダンスを教育やサービスと
それぞれの内容についてその概要・意図をまと
して扱う提供側の視点であり、主にストリートダ
めたものを表7に示す。
ンスの持つ性質的な特徴の把握を目的とする。③
はその受け取り側の視点であり、人々のストリー
トダンスの捉え方やそれに取り組む実際の要因を
表7.DASの参加する地域活動
①地域イベントにダンサーとして生徒を参加
概要
明らかにするため行う。
地域イベント主催者の依頼申請、もしくわDASの
参加要請により、そのイベントで生徒がストリートダンサーとして出演。
3-1.ストリートダンスの性質(①既存研究)
2006年12月 「つくば100本のクリスマスツリト」に出演
活動 2007年8月 「まつりつくば」出演
内容例 2008年10月 「京都学生祭典」に出演
また学校行事などにも多数参加
意図
本節ではストリートダンスの性質を掴むため、
学校でのダンス授業を対象に調査を行う研究に着
生徒の出演機会としての参加。
閲覧する地域・住民へのダンスの普及・振興。
目した。中でも内山 2005 では以下の 2 つの性質をス
②小・中・高校を対象にサークル活動の展開
概要
小学校や公民館で地域密着型のストリートダンスクラスの開講。
トリートダンスが若者に流行している要因として
意図
ストリートダンスを通して子供に「踊る楽しさ」「動きの感性」を教育し、
ダンスの普及・振興をする。
あげた。
③ビジョンネットワークなど地域団体の結成
概要
市内スポーツ団体(サッカー団体、キャンプ団体・アクティブつくば)など、
地域において関連性のある団体との組織編制。人材などの貸し借りや
情報共有、交付金の申請などを組織として行っている。
意図
一団体ではなく多団体において組織編制することでメリットを共有。
性質 1:比較的容易な技術体系が備わっている。
性質 2:スポーツと同様に既存の運動体系を備え
ており、目標設定や評価が容易である。
DAS の主な活動主旨は地域における文化とし
てのダンスの発展であるが、それらを目指した活
つまり他のダンス(ジャズやバレエなど)とは
動を通して結果的に地域のイベントなどに貢献し
違い、ストリートダンスは比較的容易な取り組み
ている。特に祭りへの参加は積極的であり、
「まつ
が可能であることが証明される。
りつくば」、「真壁祇園祭り」には 2002 年度より
3-2.ストリートダンスの性質(②ヒヤリング)
毎年参加している。2008 年 10 月には観客動員数
本節ではストリートダンスのレッスンだけでな
22 万人の大規模な祭り「京都学生祭典」に参加し、
くバレエなど他のダンスも取り扱うストリートダン
ストリートダンスを通して地域内外のネットワー
ススタジオにヒヤリングを行うことでストリートダ
クを広げている。
ンスと他ダンスとの比較、普及の要因を調査した。
表 8.はその調査内容であり、表 9.はその結果である。
ストリートダンスの地域活動参加はイベントや
祭りでの賑わい創出を通して地域コミュニティ活
表8.ストリートダンスレッスンに関する調査
動の活性化に貢献している。
対象団体
DAS
調査方法
代表者に対するヒヤリング
ストリートダンスレッスンを行う理由
レッスン受講者の近年の傾向
質問項目
3.ストリートダンスのもつ性質について
現在では多くのダンススタジオ、フィットネス
表9.ヒヤリングの結果
スタジオ、学校の体育(日本、アメリカ)などでダ
ンスの入門としてストリートダンスを扱うケース
が増えてきた。それにはストリートダンス特有の
3
質問項目
回答内容
ストリートダンス
レッスンを行う理由
・他ダンスと違い取り組みが容易である。
・子供は楽しみながらダンスを行える。
・大人は長年の下積みがなくても取り組める。
レッスン受講者の傾向
ストリートダンスの「カッコイイ」という認知がある。
ストリートダンスに加え、他ダンスのレッスンを行う。
DAS の理念はダンスの普及・振興であり、ストリ
のストリートダンスの有効性を検証する。
ートダンスの普及・振興には限らない。レッスン受
以上の調査・分析を行い、まちづくりコンテンツと
講者の関心はダンスの中でもストリートダンスに対
してのストリートダンスの特徴・機能を明らかにす
して集中していることで、その流行をダンスの入口
る。研究の活用として今後公共団体やまちづくり関
として活用する意図である。ダンスの性質的な捉え
連団体、ストリートダンススタジオがまちづくりや
方としては前節での内山とほぼ同様であり、取り組
祭りにストリートダンスを利用する際の参考資料と
み易さ、個人の目標設定の容易さがあり、他ダンス
なることを目的とする。
より人が集まりやすく、定着しやすいということで
ある。学校教育だけではなく民営のダンス教育者に
参考資料
も共通した考えがあることがわかった。
・*¹株式会社アノマリーホームページ
3-3.ストリートダンスの性質(③アンケート)
・*²表 11.ストリートダンスをコンテンツとして利用する祭り
本節ではストリートダンスに取り組む当人たちを
祭りとストリートダンスの関り(インターネット調査)
地域
対象にアンケート行うことでストリートダンスに取
り組む際の要因についてさらに詳しく調査する。調
査内容は表 10.に示す。
表10.ダンサーのストリートダンスに取り組む要因についての調査
調査対象
祭り主催
ストリートダンスの関り
愛知県名古屋市
2008 なごや舞祭り
名古屋青年会議所
一部
十和田市
2004 きらめきダンスコンテスト
主催者不明
コンテスト開催
秋田県能代市
2007 祭り名不明
秋田県庁
フェスティバル開催
大阪府北大江地区
2008 祭り名不明
まちづくり実行委員会
ライブ開催
岡山県
2007 フェスタ
岡山県庁
フェスタの一環
福岡県北九州市
2008 灯龍まつり
八幡西区役所
コンテスト開催
上越市
2008 フェスタ
上越市役所
一部
菊川市
2008 おどらザ菊川
菊川市観光協会
一部
静岡県
2005 おとみち2005
県文化財団
群馬県
DAS生徒・RJ部員
一部
よさこい祭り
社会福祉協議会
一部
不明
祭り
阿倍野区わがまち会議
一部
千葉県千葉市
不明
千葉市民産業まつり
主催者不明
一部
アンケート配布による調査
配布枚数
1100枚
福島県福島市
周囲のストリートダンス環境
質問意図
2008 商店街夏祭り
主催者不明
一部
兵庫県神戸市
不明
2007 いきいきふくしま
はっぴひろば
主催者不明
一部
岡山県備前市
不明
青空フェスティバル
備前市役所
一部
仙台市青葉区
不明
宮祭り
主催者不明
一部
滑川商工会議所
コンテスト開催
富山県滑川市
取り組む際の動機を明らかにする
周辺のストリートダンス環境が
与える影響を探る
ストリートダンスに関与している
その程度を測る
ストリートダンスにおける
現在の活動詳細
生活における
ストリートダンスの捉え方について把握する
ストリートダンスの位置づけ
個人属性
属性による違いを測る際に利用
DAS では事前調査により大学生のダンサーが少
一部
主催者不明
不明
調査方法
アンケート内容
祭り名・イベント名
東京都豊島区
阿倍野区役所
質問項目
ストリートダンスを
始めたきっかけ
開催日
2007 ふるさと龍宮まつり
東京都
不明
西東京市民まつり
主催者不明
一部
ひたちなか市
不明
ひたちなかまつり
主催者不明
一部
宝塚市
不明
スプリングフェスタ
主催者不明
一部
・内山 2005 白鴎大学発達科学部論集 2 巻第 1 号
・新川達郎 地域活性化政策に関する市町村計画行
政の課題と展望
・四銀経営情報 2004 よさこい祭りの経済波及効果
ないことがわかっており、属性のバランスをとるた
・内田忠賢 2004 地域文化の創造-よさこい系まつり
め、筑波大学の RJ をアンケートの対象に含めた。
の全国展開-人文地理 56 巻 6 号 330
アンケート配布予定は 12 月中旬、回収予定は 1
・森雅人 1999 たった一人が仕掛けた祭り
都市問題 90 巻 8 号 8 月号
月上旬である。
今後の予定
今後の予定についてはストリートダンスに取り
組む要因についてのアンケート調査・分析に加え、
以下の 3 点について研究を行う。
①YOSAKOI ソーラン祭りの地域活性化の要因把握
調査方法:既存研究より調査
②YOSAKOI ソーラン踊りの性質的特長の把握
調査方法:既存研究より調査
③ストリートダンス文化と YOSAKOI ソーラン文
化を都市機能的・踊りの性質的に比較し、相違点
などの抽出により、まちづくりコンテンツとして
4
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