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大水深石油開発のトレンド:概説 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

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大水深石油開発のトレンド:概説 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
作成日: 2014/6/11
調査部: 伊原 賢
公開可
大水深石油開発のトレンド:概説
(JOGMEC 調査部、世界石油工学者協会 SPE、IHS 社ほか)
大水深(300 メートルより深い水深)における石油開発の経緯と現状、技術や経済性のトレンドを概説する。
1. 世界的な大水深石油開発の経緯と現状
1960年に石油輸出国機構OPECが発足し、70年代に入ると、中東戦争やオイルショックといった資源
ナショナリズムの高まりの中で、中東や北アフリカの産油国において石油資源の国有化が進み、国際石
油資本メジャーの追い出しを図った。
追い出しの背景を説明する。50 年代初期、巨大油田を保有していた石油メジャーは、膨大になった
資源量に応じた石油需要の開拓のために、国際カルテルによって原油価格を低めの安定価格に抑えて
いた。1973 年の第四次中東戦争をきっかけに第一次オイルショックが起きた。石油メジャーから見た
OPEC による反乱は、産油国による課税基準となっていた原油の見なし輸出価格(ポステッド・プライス)
の引き上げ、油田権益の国有化として現れた。更には、産油国は税金計算のための見なし輸出価格だ
けでなく、実際の原油輸出価格もコントロール下に置いたのである。
すると、石油メジャーは 70 年代から政治リスクの少ない、海に目を向けていった。初めは浅いところか
ら、だんだん深い所に移って行った。海洋油田の開発は、油価と深いつながりがある。1986 年に原油の
公示価格が廃止され、市場価格の時代に入って以降、1990 年 8 月のイラクのクウェート侵攻時に一時 1
バレル(159 リットル)=30 ドル台という例外はあったが、ほぼ 20 ドル以下という時代が長く続いた。その
時代には、採算からいって、コストの高い深い海の油はとれなかったのである。その後、2003 年のイラク
戦争勃発以降の原油価格の高騰で、水深 300 メートル以上の海底で原油を生産する、大水深油田の開
発が一気に本格化した。
現代の油田開発はずいぶん厳しい条件の中で行われている。油田地帯と言えば中東アラブの砂漠地
帯が思い浮かぶが、最近は海洋油田、それも深海底油田の存在が重みを増している。浅海も含めると海
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
洋油田からの油の生産量は世界全体の約4割にもなると言われる。現在、世界で脚光を浴びている代表
的な大水深油田は、メキシコ湾、西アフリカ沖、ブラジル沖などである(図 1)。
出所: NHKテレビ 視点論点「海底油田の世界的現状」2010年8月23日放映、伊原賢作成
図1 大水深での石油開発エリア
1983 年からの統計では、世界全体で約 600 フィールドが発見され、内 400 フィールド程度が生産中で、
発見から生産開始までに 7 年弱かかった。生産期間の平均は 13 年弱である。大水深フィールドの総数
の 55%は北米で発見されているが、埋蔵量では 23%に過ぎない。一方、大水深フィールド数の 17%は
アフリカで発見され、埋蔵量では 31%にもなる。ブラジル沖では、大水深の開発により、97 年には 50%
程度であったブラジルの石油自給率を、2007 年までの 10 年間で 100%近くまで上昇させることに成功し
た。
大水深油田の開発には、技術の進歩という側面もある。ビットと呼ばれる掘管の先端を、地質情報に応
じて動かす技術の進歩や、ダイバーの潜水深度の限界は 300m であることから、ROV(Remotely
Operated Vehicle)や AUV(Autonomous Underwater Vehicle)と呼ぶロボットなど遠隔操作で深海での
様々な作業をこなす機器の性能が向上した。そうした機器を駆使して、海底に広範囲に広がる油井をパ
イプでつないで、複数の油井の原油やガスをまとめて海上まで吸い上げる、海底仕上げの技術の成熟
などが大水深油田の開発を支えている。開発技術の課題としては、油層評価、地質モデル(石油システ
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ム)、高温・高圧環境、坑井仕上げ技術、フローアシュアランス(管内の流体挙動制御、あるいは生産流
体の流路保全)、浮遊式・海底設備が挙げられる。
メキシコ湾にて 2010 年 4 月に発生した掘削リグ・マコンドの爆発・沈没、油流出事故は石油業界にとっ
て大きな痛手となった。石油業界がこれだけの環境汚染を引き起こしたのだから、化石燃料からの脱却
を目指す方向に米国が動くのではないか、というのが当時の大方の見方であった。メキシコ湾でのセミ
サブ型掘削リグやドリルシップといった大水深対応の掘削リグ数は 35 基から 2011 年に 25 基まで落ち込
んだが、現在事故前のレベルを大きく凌ぐ 45 基まで戻ってきている事実からも大水深油田の開発には
石油の需要サイドからの強いサポートを感じる。事故の当事者の BP 社に対しては、非常に厳しい懲罰
的な規制がかけられたが、米国社会が現実にクルマ社会で化石燃料に依存した社会である以上、海底
油田の開発制限にしても、安全面が担保できれば(暴噴防止装置 BOP の機能強化、坑口のキャップ装
置)、限定的な規制しか掛けられないと言うのが現実である。
石油の消費量は 2013 年に日量 9000 万バレルを超えた。2020 年を見据えれば日産 2700 万バレルの
供給増が見込まれる中で、そのうち日産 1000 万バレルが海洋の油田開発からもたらされると期待されて
いる。また、2010 年の時点で大水深からの生産は 6%程度であったが、2030 年までにはその割合は倍
増し、11%程度になる見通しである。その背景となる 3 点は、
イ)
1 バレル(=159 リットル)の油を深海から取るのに 30 ドル、難しくても 45 ドルで採算が取れる時
代になっている。中東の陸上油田の数ドルと比べれば非常に高いのだが、今、油価が 1 バレル
100 ドルぐらいなので、その差額が利益になるわけで、経済的な合理性がある(図 2)。
可採埋蔵量(10 億バレル)
出所:国際エネルギー機関 IEA、SPE 資料を基に JOGMEC 調査部作成
図 2 原油の可採埋蔵量と採算コスト
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ロ) 太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入は大事だが、エネルギー投入効率が石油や
天然ガスといった化石燃料に比べ非常に悪い。エネルギー投入効率は 100 のエネルギーを生み
出すのにどれだけのエネルギーが必要か、という割合である。石油や天然ガスは大体3ぐらい、再
生可能エネルギーの場合は 10 ぐらい必要である。再生可能エネルギーでまかなうとしたら、その
差額を補助金や料金上乗せで埋めなければ普及しない。
ハ) 石油は輸送用燃料や発電だけにつかわれているのではなく、服から化粧品、日用品、化学や機
械業界まであらゆる分野で使われている貴重な一次エネルギー源である。輸送用燃料や発電の
問題に留まるわけではない。
「大水深石油開発の世界的現状」を理解するには、需給のファンダメンタルズ、石油資源へのアクセス、
技術革新、インフラ、地政学、ローカルコンテンツ(機材・部品等の現地調達率)、経済条件に注視する必
要がある。以上述べてきたように、世界的な海洋石油開発の動きに障害となる事柄は現状考えにくい。
2. 大水深開発システム
大水深開発プロジェクトに採用された各種生産システムと適用水深の関係を図 3 に示す。例外はある
ものの、基本的に 300 メートル以浅では、ジャケット(Jacket)、コンプライアントタワー(CPT)、重力式構造
物(Gravity Based Structure)などの固定式生産システムが採用され、それ以深では、TLP (Tension Leg
Platform)、SPAR (Stationary Production Platform)、FPSO (Floating Production, Storage and Offloading
System)、FPS (Floating Production System)、SPS (Subsea Production System)などの浮遊式生産システム
が採用されている。水深、離岸距離、高温・高圧の貯留層、海底の低温環境といった要因からの様々な
技術課題やそれに伴う開発コストの増加などが予想される。それらに対応すべく、最も効率的な開発シ
ステムが要素技術と共に日々開発されている。
海洋石油開発方式の一つの選択肢である海底生産システム(Subsea Production Systems:SPS)は、海
底仕上げ井(Subsea Completion Well)と海底機器、海底に設置された生産・処理設備、貯油設備及び積
出設備などから成る海底で完結された生産システムを言う。「どこまで信頼性を保ち、機器を海底に設置
できるか」が課題となっている。
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出所:JOGMEC 技術調査部「海洋工学ハンドブック(第 4 版)」、2007 年 11 月
図 3 大水深開発プロジェクトに採用された各種生産システム
2-1. 海底生産システムとその課題
生産流体が流れるパイプラインやライザーは長距離・長期間低温下/4℃以下にさらされるため流体挙
動が変化する場合があり、海底機器へのアクセス(モニタリング、動力伝達とそのコントロール)や海洋環
境への配慮が大事になる。
流体挙動の変化としては、管内における化学的沈澱、腐食、エマルジョン、間欠流/スラグ流、物理的
摩耗ほかがあげられる。洋上施設からのケーブルとコネクターを介して、海底機器へ動力が伝達され、
そのコントロールが実施される。数十から数百キロメートルと長距離の動力伝達が必要になることがある。
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ケーブルとコネクターには電気的および機械的な完成度と信頼性が求められる。また、環境基準に対応
した海洋環境への配慮が必要となる。
海底生産システムにおける課題は流体系と情報系に係るものが多そうだ。この流体系と情報系に関す
る技術への知見の蓄積は、人体の血液や神経の動きを理解することにも通じている。その意味で、特に
大水深に係る要素技術の内、「海底昇圧ポンプ」、「海底セパレーター」、「フローアシュアランス」、「動力
とコントロール機器」とその設計基準や標準化の動向を注視していくことは重要である。
海底生産システムの信頼性確保には、宇宙開発と同じ位の高度な技術力が必要とも言われる。両者の
共通点は、地表環境と比べ厳しい環境にあること、修理や回収のためのアクセスが簡単にできないこと
が挙げられる。両者とも信頼性を維持し、良好に作動することが求められる。
2-2. 海底生産システムの標準化
今後、大水深における石油・ガス開発が継続される限り、これに係る標準化技術を進展させることは、
信頼性、安全性、経済性の向上の観点からも避けては通れない課題である。自動車、電気等の他産業
の例を見ても歴史的に証明されている。エネルギーの分野でも原子力産業や省エネルギー産業も着実
に標準化が進んでいる。
しかしながら、石油・天然ガス産業、とりわけ、海底生産システムにおける標準化となると、オペレータ
ー、サプライヤー双方の協力・歩み寄り(一定の妥協)が必要であると考えられるが、標準化の今後を議
論する会議では、総論賛成、各論反対という雰囲気が少なからずあり、それぞれが自社技術を標準化に
適用させたいという意向が見え隠れしており、標準化までの道のりはそう平坦ではないだろう。
大水深開発は既に北海、メキシコ湾、ブラジル沖、西アフリカ沖等と世界中に展開していることは既に
述べた(図 1)。いわばグローバル化している。しかしながら、海底生産システムにおける標準化の議論と
なると、油ガス田の操業者であるオペレーターと機器ベンダーの両サイドがお互いに協力をして双方が
メリットのある標準化環境を設定する必要は再認識しつつも、実現への足取りが重い。
その理由として、標準化の直接の利害関係にない第 3 者(ISO などの標準化機関、API(American
Petroleum Institute)などの石油ガス産業界、そして各国政府)の介入、圧力が少ないことが考えられる。
また、石油ガス産業の上流分野においては、サービスが我々消費者に直結している自動車産業や通信
機器産業とは異なり、そのエンドユーザーがオペレーターとサプライヤーという利害関係(Business To
Business)であるため、一定の安全性、信頼性を確保するための政府規制等も他産業に比べて少ないと
いう背景もあるであろう。
今後、大水深における石油ガス開発は着実に進むであろうし、大水深域に少なからず依存せざるを得
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ないのは否定できない。その意味では、大水深開発に必要な技術革新、コスト低減、安全性・信頼性の
向上等の観点からも、海底生産システムの標準化は必要不可欠である。
3. 大水深開発活動の推進
アフリカと米州(北米・中南米)が活動の中心で有り続けよう。アフリカでは、東アフリカでの天然ガス開
発が活発となろう。ただし、中南米が最大の投資の場であり、アフリカがそれに続く。
大水深開発活動の推進力は、①減退する陸上や浅海域の油ガス田の埋め合わせ、②東アフリカでの
大規模発見、③採算コストの低減、となろう。東アフリカのタンザニアやモザンビークでの Mamba や
Prosperidade といった大規模ガス田の発見は大型投資の賜物だ。現在最も深い水深に対応する海洋石
油生産システムは、2012 年 2 月から米国メキシコ湾の水深 2600 メートルで稼働する BW Pioneer という
FPSO である。
3-1. 経済性
1 バレルの油を大水深から取るのに 30 ドル、難しくても 45 ドルで採算が取れる時代になった(図 2)。
中東の陸上油田の数ドルと比べれば非常に高いのだが、採算コストと油価の間には原価率 50%という
石油開発の経験則があるので、油価 WTI がここ数年バレルあたり 90 ドル以上で推移している状況は、
大水深開発にとって追い風である。油価との差額が利益になるわけで、経済的な合理性を持つのだ。
しかし、大手コンサルタント IHS 社によれば、探鉱開発コストは年 10%増えているので、開発移行が滞
るプロジェクト(例えば、Chevron 社の Hadrian-Rosebank プロジェクト)もあるとしている。
3-2. 開発プロジェクトの遅れやキャンセル
2008 年のリーマンショックを端とする世界的な経済危機から油価も下落し、投資は 2009 年~2011 年に
かけて減少した。開発対象は、陸上や浅海域の油ガス田にシフトし、2014 年まで大水深プロジェクトの遅
れやキャンセルにつながった。
上昇するローカルコンテンツに従うと技術者、熟練した労働者や掘削リグ等の資機材を確保することが
難しくなるため、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは 2015 年にブラジルでの FPSO 設置遅延による
投資の落ち込みを想定している。開発プロジェクト遂行の課題となる遅延やコストオーバーランは日常的
になりつつある。アンゴラやブラジルに見られるローカルコンテンツ導入や熟練した労働者の不足はプ
ロジェクト遅延につながる日常的な課題である(ブラジルの第 12 回入札ラウンドでのローカルコンテンツ
は 73%にまで上昇)。
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また、開発業界には、探鉱開発コストの上昇(年 10%)に油価(100 ドル/バレル近辺で安定)が追いつ
いていかないのではないかという懸念が広がる。採算ベースでは大水深開発は北米のシェールガス・オ
イル開発と競合するのではとの声も聞かれる。シェール開発の場合、発見から生産開始までの時間が数
ヶ月と大水深の数年に比べ短い。そのため、開発オペレーターは大水深開発投資を減らし、それがプロ
ジェクトの遅れやキャンセルにつながっているとの見方もある。
大水深の開発は実際、大手企業に限られているが、それは大水深のプロジェクトが莫大な資本と技術
力を求めるプロジェクトであるという背景に起因している。しかし、前述したように 2020 年を見据えれば、
日産 1000 万バレルが海洋の油田開発から新たにもたらされると期待されている中では、開発業界は上
向き姿勢にあると考える。地域ごとのポイントは以下と見る。
<中南米>
ブラジル OGX の倒産やペトロブラスの生産伸び悩みにも関わらず、投資は堅調に推移する。
ペトロブラスの 2014 年~2018 年の 5 ヵ年計画では、5 年間に 2,206 億ドルを投じ、石油生産量を 2014
年は 2013 年(193 万バレル/日)比 6.5~8.5%増の 207.5 万バレル/日程度に、2018 年には 320 万バレ
ル/日に、2020 年には 420 万バレル/日に増加させるとしている。現状石油生産量の 1 割が陸上で、残り
9 割が海洋からだが、大水深域からは全体の 80%を超える。
メキシコではエネルギー改革により、メキシコ湾の大水深の入札が 2016 年以降に期待される。
<北米>
投資額の伸びは年 2%に過ぎず、他地域に比べ成熟期にある。
<東アフリカ>
2018 年に向けて大規模ガス田からの生産開始が期待される(アジア向け LNG への期待)。西豪州大
陸棚との競合となろう。
<他地域>
サウスストリーム・パイプライン(東欧-旧ソ連間)の敷設。
アジア:掘削リグ不足(印リライアンス社のブロック D3)。
4. まとめ
大水深の定義は、その時代の技術レベルや石油会社が掲げる目標と共に変化している。1990 年頃は
300 メートル以深が大水深の共通認識となっていたが、種々のシステムが技術的に完成し、かつ、ある程
度の実績のある水深を“大水深”、それ以上を“超大水深”と仮定すれば、現時点での大水深と超大水深
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の境は1,500メートルが一つの目安になる(図2)。一方、浅海域は、プラットフォームとしてジャケットや重
力式構造物が十分な競争力を持つ 300 メートル以浅と考える事が出来る。ちなみに、大水深開発をリー
ドしているブラジルのペトロブラスでは、1,700 メートルを大水深と超大水深の境と定義している。
投資に伴うファイナンスは世界的な景気回復基調により得やすくなったと言える。一方、開発プロジェ
クト遂行の課題となる遅延やコストオーバーランは日常的となった。アンゴラやブラジルに見られるロー
カルコンテンツ導入や熟練した労働者の不足は、プロジェクト遅延につながる日常的な課題だろう。東
欧・旧ソ連・中東・西欧における大水深開発は歴史的に低調だが、今後 5 年間にはトランクラインの据付
等が予定されている。世界の原油生産において、2010 年時点で大水深からの生産は 6%程度であった
が、2030 年までにはその割合は倍増し、11%程度になる見通しである。
以上
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