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航空機が遭遇する乱気流域の予測計算に おける計算 解能と予測精度

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航空機が遭遇する乱気流域の予測計算に おける計算 解能と予測精度
〔論
44
0 (乱気流;ケルビン・ヘルムホルツ波;予測手法)
文〕
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算に
おける計算
及
川
解能と予測精度
博
・井之口 浜 木 ・泉
耕
菊 池 幸 雄 ・早 崎 宣 之
要
二
旨
航空機を安全に運航するためには,乱気流への対応は最も重要な要素のひとつであるが,現在航空機の運航者が
入手できる乱気流の予測情報の精度は十
的なスケールを
なものとはいえない.乱気流の予測精度の向上をめざし,乱気流の物理
慮しながら,乱気流が発生するリスクの高い空域(乱気流域)の予測精度に計算
解能が与える
影響を検討した.2
0
0
5
年3月1
8
日に成田空港に着陸する航空機が乱気流に遭遇した空域を対象に,
務省と文部科
学省が進めたプロジェクトで開発した SPF(St
r
at
os
pher
i
cPl
at
f
or
m)モデルを
5km,高度
い,水平
解能を2km および
解能を3
0
0m および1km に変えた乱気流域の予測計算と実際の乱気流遭遇位置とを比較した結果,
水平2km,高度3
0
0m としたときに最も良い対応関係が得られた.乱気流域のスケールは東西に160
km 以上,南
北に約60
0
0m 程度と表現され,発生原因はケルビン・ヘルムホルツ不安定と推定された.
km,厚さが6
高精度で予測計算することの可能性が示され始めた
1.はじめに
航空機を安全に運航するためには乱気流の発生を早
(Ki
0
0
3
)
kuc
hi2
.予測精度が向上すればそのデータ
めに把握してその対処方法を予め準備するとともに,
を
乗客乗員が怪我をすることの無いような適切な対応が
進展し,その結果を用いた航空機の安全な運航方式の
要求される.そのためには出来るだけ正確な乱気流の
提言も可能となる.
発生場所と時刻を事前に掌握する必要がある.しかし
ったさまざまな乱気流の発生メカニズムの解明も
本研究では,乱気流の実際の物理的なスケールに着
ながら航空路で発生する乱気流を観測する手段は未だ
目し,予測計算の計算
十
乱気流を発生するリスクの高い空域(乱気流域)の位
に整備された環境には無く,また予測計算の精度
も十
解能(メッシュサイズ)が,
では無い.このため乱気流の観測と予測につい
置の特定と空間スケールの特定に与える影響について
ての研究開発への期待は大きい.このような環境の中
0
5
年3月1
8
日
検討を行った.予測計算結果の検証は2
0
で,近年の電子計算機の性能向上はより高い
解能で
に 発 生 し た 航 空 機 か ら の 機 上 気 象 報 告(PI
REP:
の予測計算を可能とし,航空機が遭遇する気象状況を
)に含まれる乱気流遭遇情報と予測計算
Pi
l
otr
e
por
t
結果との比較検討により行った.この結果から乱気流
宇宙航空研究開発機構(J
AXA)航空プログラムグ
ループ
運航・安全技術チーム.
oi
kawa@chof
u.
j
axa.
j
p
宇宙航空研究開発機構(J
AXA)航空プロ グラム グ
ループ
運航・安全技術チーム.
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社.
2
0
09
5
日受領
年3月2
2
0
1
0
年6月1
5
日受理
2010 日本気象学会
2010年 9月
域のスケール,発生経緯についても検討,
察する.
こ こ で 行 う 予 測 計 算 は,気 象 モ デ ル と し て SPF
(St
r
at
os
phe
r
i
c Pl
at
f
or
m)モデルを用いた局地気象
予測計算であり,入力には気象庁の RSM(Re
gi
onal
:領域モデル)データを
Spe
c
t
r
alMode
l
SPFモデルは
用した.
務省と文部科学省とが連携して進
めた国家プロジェクトである「成層圏無線プラット
フォーム研究開発」の飛行試験用として2
0
0
1
年度に開
3
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
670
解能と予測精度
発され,評価・運用された局地気象予測モデルである
プ ラーレーダ を 用 い た KH 波 の 観 測 を1
7
ケース に
(情報通信研究機構 2
0
0
5).その後の機能追加により,
渡って 行 い,振 幅 が2
2
0
∼4
5
0
8
∼ 4km
m,波 長 は0.
現在このモデルでの水平
解能は5kmおよび2km,
である事を観測している.また,KH 波が観測されて
解能は1km および3
0
0m を選択することがで
いる場所に航空機が入ると乱気流に遭遇することも観
きる.本論文では,これら4種類の組み合わせと,
測され,KH 波が CAT の発生原因となりうることが
RSM データ(水平
解能は本稿
観 測 され て い る.Bouc
(1
9
7
3
)も ワ ロップ 島 の
he
r
の解析対象高度(8
5
0
5
0
0hPa)では約2km)をその
レーダにより KH 波が観測されている場所を航空機
まま
が飛ぶと,CAT に遭遇する事を観測している.
高度
解能4
0km,高度
う場合とで5種類の予測計算の比較を行い,後
に定める検出指標との対応が最も良く,
瞭になるものを最適な計算
布が最も明
解能として選定した.
KH 波の発生に関しては数値シミュレーションも行
な わ れ,発 達 の 過 程 が 解 析 さ れ て い る(Kl
aas
s
e
n
9
8
5
)
andPe
l
t
i
e
r1
.
これらによれば,ジェット気流付近における KH
2.乱気流の予測手法
本項では乱気流に関する先行研究の概要を述べ,そ
不安定に起因する CAT のライフサイクルは1
5 程
れに基づいて乱気流の発生条件,スケール,発生高度,
度,発生条件は①「強安定層」と②強い VSが存在す
検出指標を示し,本論文の研究手法を提示する.また
ること,空間スケールは振幅2
2
0
∼6
0
0
8
∼
m,波長0.
予測計算を行った局地気象予測の計算方式を示す.
4km 程度となる.
2.
1 乱気流の発生条件と空間スケール
乱気流にはいくつかの 類があるが(日本航空機操
2.
2 航空機が遭遇した CAT の発生高度
CAT はその発見の経緯から,発生高度は対流圏中
縦士協会 2
009)
,本 論 文 で は そ の 内 の 晴 天 乱 気 流
層以上,具体的には1
6,
0
0
0
(4,
8
8
0
f
t
m)以上の も の
(CAT:Cl
earAi
rTur
bul
e
nc
e)に関して記述する.
とされており,発生しやすい場所はジェット気流近傍
(19
6
7
)は,CAT を観測するための高
ckse
tal
.
Hi
の 圏 界 面 付 近 や ジェット 気 流 前 線 帯(j
e
ts
t
r
e
am
利得レーダを米国バージニア州ワロップ島に設置し,
)付近が多いとされている(全日本空輸
f
r
ont
alz
one
CAT のレーダエコーが観測されているところを航空
1
97
1
)
.国内の論文で取り上げられた CAT に遭遇し
機が飛行すると乱気流に遭遇することを観測した.
た高度の例としては,2
5,
0
0
0
∼3
0,
0
0
0
(約7.
6
∼9.
2
f
t
(1
9
6
8
)は,大気中における層状の
Hi
cksandAngel
l
(石 崎 1
9
7
2
)
5
0
∼3
0
0
2
∼1
0.
4
km)
,2
hPa高 度(約9.
流れの境界面で発達し,CAT の原因の1つとなるケ
(中山・土屋 1
9
8
2
)があり,いずれもジェット
km)
ルビン・ヘルムホルツ波(KH 波)を,ワロップ島の
気流前線帯での CAT 遭遇事例となっている.
レーダを
い11ケースに渡って観測した.レーダによ
9
7
1
)の観測で航空機が CAT に遭遇
Br
owni
ng(1
り観測された KH 波の振幅は3
0
0
∼6
0
0m,波長は0.
9
した高度は圏界面近くの1
0.
7
km 付近であり,強い
∼2.
2
9
6
9
)により密
km であった.その後 Thor
pe(1
(1
9
7
3
)の観測で航
VSが観測されている.Bouc
he
r
度の違う2層の流体を
った室内実験が行われて KH
空機が CAT に遭遇した高度は4.
4
∼4.
5
km であり,
波の発生から破砕にいたる過程が明らかとなり,破砕
温暖前線の中で乱気流に遭遇した事例となっている.
時には CAT に相当する乱れの発生が観測された.大
これらによれば,CAT を解析する場合の高度範囲は
気中における KH 波のライフサイクルを観測するた
4∼1
1
km 程度を想定する必要がある.
めに,高利得のドップラーレーダを用いた観測が英国
ウ ス ター州 デ フォード で Br
owni
ng and Wat
ki
ns
(1970)により行なわれ,KH 波の発生から破砕にい
2.
3 CAT の検出指標
米国における CAT の予測においては,複数の乱気
流検出指標を用いた予測方式による運用と改善が進め
たる過程が観測された.その過程は非常に短時間で,
られている(Shar
0
0
0
0
0
6
)
mane
ta
l
.2
,2
.国内にお
1
5 程度であることが観測されている.同時にゾンデ
いても数値予測データを用いた,新しい指標の開発や
を
った上空の気象観測も行なわれ,この KH 波が
発生したときの二つの条件が明らかとなっている.
①温位勾配の大きい「強安定層」が存在する.
②強い
直シア(Ve
:VS)が存在する.
r
t
i
c
alShe
ar
1
)はウスター州デフォードのドッ
Br
owni
ng(197
4
0
0
3
)
(宮腰 2
,複数の乱気流検出指標を用いた確率予
測の試みが行なわれている(山田 2
0
0
8
)
.いずれの場
合においても
用している数値計算データの
解能が
CAT の空間スケールよりも大きいため,CAT のス
ケールレベルでの記述や検証を行う事は出来ないと
〝天気"57.9.
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
解能と予測精度
671
り,第1表に SPFモデルの概要を示し,数式は付録
えられる.
KH 波 の 発 生 す る 必 要 条 件 は リ チャード ソ ン 数
(Ri
:以降 Ri数と表記)で規定さ
char
ds
on numbe
r
に示す.
予測計算結果は,現 地 に お け る GPSゾ ン デ 観 測
れ,Ri数が0.
25より小さい場合である(Mi
l
e
s and
データとの照合を行い対応することを確認している
Howar
d 1964)
.これはその場に加わる特定の波数を
(情報通信研究機構 2
0
0
5
)
.なお,SPFモデル開発の
持った無限小振幅の波動が不安定となり発達する条件
に対応している(小倉 1
9
9
7).大気中でKH波が観測
された時の Ri数の値は,レーダ観測と同時に行なわ
れたゾンデ観測データから計算され,2
0
0m 高度
解
能のゾンデ観測データから計算した Ri数は,ほとん
どが0.
15∼0.
3となり,理論値の0.
2
5
と良く合う結果
となっている(Br
9
7
1
).Ri
数を下記に示す.
owni
ng 1
Ri数=
g
θ/ z
θ ( u/ z)+( / z)
基となった物理モデルに関しては Ki
kuc
hi e
t a
l
.
(1
9
8
1
)
(2
0
0
3
)を参照のこと.
,Ki
kuc
hi
2.
5 気象予測計算の 解能
RSM データを入力とした対象日の局地気象予測計
算を,第2表に示す計算
年3月時点では気象庁現業モデルの1つとして利用さ
(
1
)
第1表 SPFモデルの概要.
θ:温位 z:高度
u:東西風速
g:重力加速度
θ:着目する層の平
:南北風速
温位
基本方程式系
非静力学完全圧縮方程式系
水平座標系
ポーラステレオ座標系
直座標系
(1)式の
母は VSの項,
子は温位勾配の項であ
る.一方,予測計算データから算出した Ri数による
乱気流の発生予測は,実際の乱気流発生と合わないこ
とが多く現在はあまり
われていない.乱気流の予測
が合わない理由としては,予測データの計算
解能が
低いことが指摘されている(中山 2
0
0
5
).Br
owni
ng
(1971)においても,高度
解能を2
0
0m から4
0
0m に
すると,Ri数が大きくなることが示されている.一
方400
m の高度
解能があれば,Ri数が0.
1
5
∼0.
3
の
これらのことから,本論文でのCATの検出指標は,
KH 波の発生の必要条件に対応し,KH 波の観測時に
われたRi
数を採用する.一方,KH波
5
Mel
l
or
Yamadal
evel2.
短波放射,長波放射,顕熱,潜熱,多層
熱伝導による地中への熱の流れ(陸上)
強制復元法(海上)
地表面過程
接地境界層
Moni
nObukhovの相似則
雲の散乱・吸収(St
ephensの方法)
オゾンによる吸収(Laci
s& Hans
en,
短波放射過程
布は Gr
eenの関数)
(太陽放射)
空気 子による散乱(Kondr
at
yev)
水蒸気による吸収(MaCumber
)
長波放射過程
降水過程
されている.
地形準拠座標系(z系)
乱流モデル
間にあったもののうち7
5
%が同じ範囲に残ることも示
は常に評価に
解能で行った.
用した RSM データで,2
0
0
5
類①は入力として
初期条件
境界条件
が観測された場所で航空機が乱気流に遭遇した時のゾ
空間差
ンデ観測結果(Br
9
7
1
;Bouc
9
7
3
)では
owni
ng1
he
r1
時間差
水蒸気による吸収・射出(At
)
wat
er
CO による吸収・射出(Kondr
at
yev)
Li
nの Col
dRai
nモデル
雲水,雨,雲氷,雪,霰を 慮
親モデルの初期値の空間内挿
(拡散 Dampi
SpongeLayer
ng,
Rayl
ei
ghDampi
ng)
エネルギー保存スキーム(菊池・荒川)
Eul
er
Backwar
dと I
mpl
i
ci
t法の併用
t
i
mes
pl
i
tを 用(音波)
2.
1節①,②が観測されているが,Ri数を検出指標と
した場合には温位勾配が小さい場合にも Ri数が小さ
くなることがあり,①を満たさない.温位勾配の大き
第2表
さの定量化は多くに事例による検討を必要とするので,
ここでは指標としないが,その大きさも確認しておく.
類
2.
4 気象予測の計算方式
気象予測計算を行った SPFモデ ル は,RSM デー
②
タを入力として物理モデルに従った数値計算を行い,
③
に小さなメッシュの局地気象予測データを得るもの
④
である.基本方程式は非静力学完全圧縮方程式系であ
⑤
2010年 9月
①
水平
予測計算の
解能.
解能
h
40
km
高度
5km
2km
1km 以下
SPF
1km 以下
SPF
300
m 以下
SPF
300
m 以下
SPF
5km
2km
解能
v
2km 程度
備
RSM
5
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
672
解能と予測精度
れていたデータに相当している.データの時間間隔は
沖で4人のけが人を出したことが報道されている(朝
3時間毎である.
日新聞 2
0
0
5
;共同通信社 2
0
0
5
)
.報道された場所を
類②∼⑤は①を入力として SPF
モデルによる予測計算を行った場合であり,
類番号
が大きくなるほど詳細な予測計算結果が得られてい
る.データの出力時間間隔は1
5 に設定している.
各計算の高度
解能は,格子高度の設定で決まりそ
半島海岸線近くに設定した解析対象域で航
空機が乱気流に遭遇した位置を第1図に示す.範囲は
北緯3
5
∼3
5.
2
5
度,東経1
4
0
∼1
4
0.
5
度であり,乱気流
との遭遇情報は発信官署を成田国際空港・東京国際空
港(羽田空港)とするものである.Mode
(操縦
r
at
e
れぞれ次のようになっている.
RSM データは格子高度が気圧面で設定され て お
り,1000/950/925/
8
5
0
/
7
0
0
/
5
0
0
/
4
0
0
/
3
0
0
/
2
5
0
/
2
0
0
/
1
5
0
/
100/70/50/30/20/
1
0
hPa となっている.
SPFデータの1km 高度
含む,房
解能での格子高度は1
0
/
は可能であるが,歩行は困難な状態)以上の乱気流強
度の報告があった
数は1
0
機であり,発生時間帯は
0
9
:0
0
∼2
1
:0
0
J
ST の間と なって い る.第 1 図 aの A
∼Eは乱気流遭遇地点,4桁の数字は乱気流遭遇時刻
35/75/150/275/450/675/950/1275/1650/2100/2725/ (J
(操 縦
ST)
,MODは Mode
r
at
e
, SEV は Se
ve
r
e
3
550/4500
m/以降1km 毎増加
0
SPFデータの30
m 高度
となっている.
が不可能なことがあり,歩行は不可能な状態)の乱気
解能では,高度9
5
0m ま
流強度を表す.地点 Bと Dでは複数機が乱気流に遭
では上記と同じ格子高度だが,以降3
0
0m 毎の増加と
遇しており,時刻の早い順に B1
のように場所名
,B2
なっている.
に 数 字 を つ け て 区 別 し て い る.D1,D2
と E では
予測計算において,計算
解能はより高いほうが
CAT を忠実に表現する事になると
えられるが,本
SEV を含む乱気流に遭遇している.第1図 bは乱気
流に遭遇した高度を,時刻ごとに示したものである.
論文では乱気流の瞬間的な流れ場の構造を示す事が主
第1図によると,航空機が乱気流に遭遇した時間は
眼では無く,「乱気流域」を予測する事を目的として
約1
0
時間と長時間に渡っている.遭遇位置は水平面内
では C8
E間で約2
km の広い範囲におよび,また高
いる.
度範囲も1.
5
∼4.
3
km と広範囲である事が特徴であ
3.事例解析結果
3.
1 2005年3月1
8
日に航空機が乱気流に遭遇した
時の気象概況
解析を行った200
5
年3月1
8
日は多くの航空機が乱気
流に遭遇し,成田空港行きのノースウェスト機は房
第1図
6
る. に特徴的な事は遭遇位置が時間とともに南に移
動し,遭遇高度は時間ともに高くなっている.この事
実は前線の移動との関係で議論する.
3月1
8
日の気象概況を把握するために,気象庁発表
の0
6
:0
0
8
:0
0
の速報天気図を第2図に示す.地上で
,1
航空機が MOD(
以上の乱気流に遭遇した報告事例.(
Mode
r
at
e)
a)の A∼Eに乱気流遭遇地点を示す.
4桁の数字は乱気流遭遇時刻(J
ST)
,文字は乱気流強度を示す.地点 Bと Dでは複数機が乱気流に遭
遇しており,それぞれ時刻の早い順に B1
,B2のように数字をつけている.記号○と+はそれぞれ乱気
流強度が MODと SEV(
であったことを示す.(
Se
ve
r
e)
b)には乱気流に遭遇した高度(
km)を報告され
た時刻ごとに示す.●と線はそれぞれ中心と乱気流遭遇範囲を示す.
〝天気"57.9.
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
解能と予測精度
SPFモデルでは一番低い計算
673
解能であり,以降
の比較の基になるものである.第3図 aに比べて E
バーの Ri数は1ランク小さくなったが,大部
数1.
1
∼1.
5
の区
区
が Ri
にあり,残り1
0
%程度が1.
5
∼3の
にある.SEV への遭遇時間は通常短いにもかか
わらず,Ri数が相対的に小さい(乱気流が強い)と
ころに Eバーのほとんどが対応している.第3図 c∼
eとの比較になるが,どの高度で MODと SEV に遭
遇したかを判断することは難しい.
(
3
)
水平・
第2図
直
解能(2km・1km)の場合(第3
図c
)
気象庁発表の速報天気図(抜粋).2
0
0
5
年
3月18日0
6
:0
0J
8
:0
0J
ST(a)と 1
ST(b)
の地上天気図.
水平
解能が向上したことで,Ri数1.
0
の範囲が大
きく広がり,1
4
∼1
7時ではRi
数0.
8の境界線が表現さ
れている.Eバーでの Ri数は0.
9
∼1.
5
程度となり,
その中央部
で Ri数が最も小さく1以下であること
は低気圧に伴う寒冷前線が日本列島の東の海上にあ
より,この図からのみ判断するとこの高度で SEV に
り,時間とともに東に移動していた.寒冷前線の高度
遭遇した可能性が高かったことになる.第3図bより
断面は当日の高層断面図(AXJ
4
0
)を見ると把握
P1
詳しく乱気流域の構造が表現できている.
することができる(図略)
.しかし,その時空間
解
(
4
)
水平・
能では前線帯に埋め込まれている KH 波発達域を特
図 d)
定することができない.このため,さらに高い
解能
で気象状況を予測計算し検討を行う必要がある.
3.
2 計算 解能の選定
本項では予測計算 解能を変化させて求めた乱気流
高度
の
直
解能(5km・3
0
0
m)の場合(第3
解能が向上したことで,高度方向への Ri数
布が
られ,Ri数はより小さな値となり0.
7
の境
界線が表現されている.Eバーでの Ri数は0.
7
∼1.
5
となり,第3図 cの場合より高度の低い所で最小値が
域の気象状況を示す.第3図 a∼eは第2表の①∼⑤
現われている.高度
に従って出力した第1図 aの乱気流遭遇地点 Eにお
よりも効果的に乱気流域の構造を表現できることがわ
ける Ri数の時間・高度
かる.水平断面図でも同様となっている(図略)
.
布に,第1図 bの乱気流遭
遇高度(Eバー)を縦の実線で重ねたものである.
水平・
(
5)
Eで は MODと SEV の 乱 気 流 に 遭 遇 し て い る.
直
解能の向上は水平
解能の向上
解能(2km・3
0
0
m)の場合(第3
図e
)
1
:0
0
の RSM データを
SPFモデルの入力には前日2
水平
解能と高度
解能をともに向上した場合であ
用した.図の横軸は時間,縦軸は高度(RSM データ
り,計算
(
a)では気圧)である.Ri数は,値が大きくなるに従
の幅の中に入っている.高度3∼4km 付近に1
3
:0
0
い色が薄くなるように段階を決めて濃淡を付けてい
過ぎから Ri数の低い
る.これらの段階区
にかけて0.
6
より小さい値が現われている.Eバーで
が,予測計算の
解能を変えた
解能は,2.
1
節で示した乱気流のスケール
布が予測され,1
5
:0
0
∼1
9
:0
0
ときにどのように変わるかを以下で検討していく.
の Ri数は0.
6
以下∼1.
1
と最も低い値を示し,高度が
)RSM データの場合(第3図 a)
(
1
下がるにつれて順次 Ri数が小さくなっている.小さ
RSM データは格子高度が気圧で表わされ,水平
解能は40
km である.計算
解能が乱気流域に対して
低く,Ri数が大きな値になっている.Eバーは Ri数
い値のところで SEV に遭遇したと
る.Ri数の高度方向への
えることが出来
布は第3図 dに比べて段
階がはっきりと区別できるようになり,乱気流域の状
ではどの高度
況を判断し易くなっている.高度3∼4km を見る
で MODと SEV に遭遇したかを判断することはでき
と,高度3km に近いほうに Ri数の小さい値が偏っ
ない.
て
が1.
5∼3の区
(
2)水平・
直
図 b)
2010年 9月
にあり,この段階区
布している.
このような高度方向に非一様な
解能(5km・1km)の場合(第3
算
布に対して高度計
解能が低い場合には,Ri数の変化が計算
解能
7
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
674
解能と予測精度
(
40
2km
a)h:
km v:
(b)h:
5km v:
1km
(
2km v:
1km
c)h:
(d)h:
5km v:
3
0
0
m
(e
)h:
2km v:
3
0
0m
第3図
の大きさの中で平
化され Ri数の計算値は大きくな
る.
第3図 a∼eの計算結果より,乱気流域の計算にお
いては,観測で得られている CAT の空間ス ケール
8
乱気流遭遇地点EにおけるRi
数の時間・
高度 布.(
)は第2表の①∼ ⑤
a)∼(
e
に対応し,横軸を時間(JST)
,縦軸を
(
a)では気圧(hPa),(b)∼(
e)では高度
(km)と し て Ri数 の 布 を 濃 淡 で 示
し,Ri数が0.
8/0.
9/1.
1には破線を入れ
ている.Eバーは乱気流遭遇高度を示す.
(2.
1
節)に近い高い
解能で計算することにより Ri
数がより小さい値で表現され,乱気流域の形状も判断
しやすく表現することができるようになることがわか
る.
〝天気"57.9.
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
第4図
乱 気 流 遭 遇 地 点 Eに お け る 温 位 勾 配
( θ/ z)と VSの時間・高度 布.横
軸を時間(J
ST),縦軸を高度(km)と
して,温位勾配と VSの 布を濃淡と破
線で示す.単位 は そ れ ぞ れ K/
2
0
0m,
/
1
0
0
0f
knot
tである.Eバーは乱気流遭
遇高度を示す.
解能と予測精度
675
第5図 Ri数と乱気流遭遇高度の時間・高度変
化.第3図 eと同じ 布図を,他の乱気
流遭遇地点についても作成し1枚に合成
したもの.白い線は合成の境界を示す.
に切り出して,合成したものを第5図に示す.第2図
に示されるように,寒冷前線が東に移動するに伴っ
また,乱気流の発生原因を第3図から
えると,E
て,関東地方では寒冷前線帯高度が次第に高くなり,
バーのところの Ri数が小 さ く なって い る こ と か ら
前線帯の中で航空機は乱気流に遭遇したことをこの計
KH 波による乱気流が発生していたと推定することが
算結果は示唆している.このことより第1図 bで示
できる.以降の解析は,計算
した乱気流遭遇高度が時間とともに上昇しているの
度300
m のものを
解能を水平2km,高
用する.
第4図に,第3図 eに対応する温位勾配( θ/ z)
と VSの時間・高度
布を示す.第3図 eの Ri数だ
は,通過していく寒冷前線帯の高度変化によっている
ことがわかる.また,乱気流に遭遇した場合の Ri数
は全て1.
1
以下であり,
に SEV を含む乱気流に遭
け に 着 目 す る と,Ri数 は Eバー付 近 だ け で な く
遇した E,D1
の場合には,Ri数は0.
7
以下をも
,D2
1
500
m 以下でも小さくなっている.ところが第4図
示している.
を見ると,Eバー付近の温位勾配は1.
2
5
∼2K/
2
0
0
m
以上より,乱気流域予測の計算
解能は乱気流のス
となり,標準大気の当該高度における0.
7
2
0
0m に
K/
ケール に 一 番 近 い,水 平
解 能 2km,高 度
比べて強安定になっているのに対し,1
5
0
0m 以下は
3
0
0
m が最適である.この
解能での乱気流域予測に
解能
対流混合などにより温位勾配が小さくなっている(図
おいて,航空機が MODの乱気流に遭遇する場合の
には数値を示していないが中立に近くなっているとこ
1
以 下 で あ り,SEV を 含 む 場 合 の Ri数 は
Ri数 は1.
ろが多い)
.これは,KH 波が発生する可能性が高い
0.
7
以下をも示すという結果を得た.
空域は Ri数により推測できるが,乱気流域の推定に
慮したほうが良いことを示唆してい
3.
3 乱気流域の空間スケール
前項では Ri数の 直 布の時間変化について議論
る.ただし,乱気流の報告がないからといって1
5
0
0m
した.本項では乱気流域の空間的構造について検討す
以下の空域で乱気流が発生していない保証は無い.ま
る.航空機が E地点で乱気流に遭遇した場合につい
た,どの程度の値の温位勾配を指標にすれば良いのか
てその時刻(1
8
:0
0
)における Ri数の水平
1
事例の解析では決められない.温位勾配の定量的指
6図に示す.
は温位勾配も
標化は今後の課題である.
布を第
第6図は高度3
3
5
0
m の水平断面における Ri数の
第1図の地点 A∼ Eにおける,Ri数で示される乱
布である.横軸・縦軸はそれぞれ東西・南北方向の
気流域の時間・高度変化を見るために,Ri数と乱気
メッシュ番号(2km/
メッシュ)を示し,関東地方南
流遭遇位置の図を,各地点の PI
REPの発生時間ごと
部の1
6
4
km 四方を示している.また乱気流遭遇位置
2010年 9月
9
676
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
解能と予測精度
南北方向には6
0
km 程度の幅の広い領域に
布してい
る.
第 1 図 aで 示 し た 乱 気 流 の 発 生 位 置 が 広 範 囲 に
渡っている事は,寒冷前線帯の水平
布の広がりとし
て理解することができる.
第7図は第6図の破線 SN で切った南北断面に乱
気流遭遇高度(Eバー)を一緒に示したものである.
乱気流に遭遇した位置 Eでは,3km の高度から
7
以下の
Ri数0.
布が6
0
0
m 程度の厚さで,南の方向
(図の左方向)に6
0
km 程度の広がりを持つ領域があ
ることがわかる.すなわち,寒冷前線上の寒気と暖気
の界面に
って薄い層状となった乱気流域が存在して
いることが示されている.
これらより,今回の現象の空間スケールは東西方向
に1
5
0
0
km 以上,南北方向には6
km 程度,高度方向に
第6図
3
5
0m).横軸を
Ri数の水平 布(高度3
東 西 メッシュ番 号(Xno:2km /メッ
シ ュ ), 縦 軸 を 南 北 メ ッ シ ュ 番 号
(Yno:2km/メッシュ)と し て,2
0
0
5
年 3 月1
8
日1
8
:0
0J
ST に お け る Ri数 の
布を濃淡で示す.記号×は,中心が地
点 Eの乱気流遭遇位置を示す.
は6
0
0
m 程度の厚さであることになる.
3.
4 乱気流域発生の経緯
SPFモデルの予測結果を用いて,今回の乱気流域
がどのような経緯で発生したのかを
察してみる.第
8図 a,bに第7図と同じ南北断面での0
6
:0
0
と1
8
:0
0
の温位と風を示す.気温は0℃を破線で表示してい
る.乱気流遭遇位置は,第1図において1
8
:0
0
前後に
発生した D1
図 a,bを比
,D2
,Eを一緒に示す.第8
較すると1
2
時間の間に下記①∼④の状態が発生してい
ることがわかる.
①上空の高度6
0
0
0
1
8
m 以上での温位(3
K 以上の部
)は時間が経ってもほとんど変わらない.
②下層に北風成
が強まり,北からの寒気が,0
6
:
0
0
には下層にあった2
9
2
8
:0
0
には約3
K の大気を1
km の上空に押し上げた.
③この結果高度3∼6km 付近に温位勾配の大きい
「強安定層」が形成された.
④上空は南風成 ,下層は北風成
となっており,
時間の経過とともに風が強くなり,その結果「強
第7図 Ri数の南北断面.第6図に SN で示す
南北断面での Ri数の 布を,横軸を南
北 メッシュ番 号( Yno:2 km /メッ
シュ)
,縦 軸 を 高 度(km)と し て 濃 淡
で示し,Eバーを重ねている.Ri数 の
0.
8/0.
9
/
1.
1
を破線で示す.
安定層」の高度において VSが強化された.
上記の経過で KH 波発生の条件が整い(Ri数の値
が小さくなり)乱気流域の発生となった.
下層に寒気が入ったことは第8図 aの0℃層が,
第8図 bでは高度1.
5
km 付近に下がったことからも
理解できる.
「強安定層」は上方での前線帯に対応し,第8図の
Eを記号で示している.
7以下として乱気流域を設定すると,房
Ri数が0.
半島の南側を東西方向に1
5
0km 以上に渡って広がり
10
表示スケールでは約2.
5
km の高度幅で,南北にほと
んど一定となっている.航空機は前線帯の中でも高度
が低い(寒気に近い)部
で乱気流に遭遇したことに
〝天気"57.9.
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
第8図
解能と予測精度
677
強安定層の発生と VS強化の経緯.第7図と同じ断面において,06
:00
:00
JST(a)と18
JST(
b)におけ
る,温位線(実線;2K 毎)・風(矢印)・0℃線(破線)を描き,第1図 bの D1
,D2
,Eの乱気流
遭遇高度を重ねて示す((a)
では遭遇時刻が違うため D1,D2,Eを灰色で表示している)
.
第10図
乱気流域の発生経緯の模式図.下層に流
入する暖気1の温位を θ1∼ θ2,上空の
暖気2の温位を θ3として,寒気の流入
により乱気流域が発生する経緯を示す.
ようになる.
上空に南から入ってくる暖気2は,下層の暖気1よ
第9図
RSM データによる暖気移流の状況.横
軸を経度(de
g),縦軸を緯度(de
g)と
して,2
0
0
5
年3月1
8
日0
3
:0
0
J
STにおける
950
hPa高度の温位(K) 布を示す.
り温位が高く時間が経っても変わらない.南から下層
に流入した暖気1は,寒冷前線の移動に伴い北から流
入した寒気により上空に押し上げられ,暖気2を上面
とし寒気を下面とする空間にはさまれて「強安定層」
を形成する.
寒気と暖気2の間には時間とともに VSが強化され
なる.
第9図に RSM データを
った1
8
日0
3
:0
0
における
たことで KH 不安定の条件が揃い,CAT の発生する
布を示す.南から2
9
2K の暖気移流
可能性の高い乱気流域が形成された.実際に,航空機
を見ることができる.今回の「強安定層」の下端と
はこの中で乱気流に遭遇している.ここで発生した乱
なった292
K という暖気は事前に南から移流してきて
気流域の発生原因はケルビン・ヘルムホルツ不安定と
おり,これが寒気により上昇したことになる.
推定される.乱気流域の発生高度は3∼4km 程度で
9
50
hPaの温位
今回の乱気流域発生経緯を模式図で表すと第1
0
図の
2010年 9月
あり,CAT が発生しやすいジェット気流前線帯とは
11
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
678
違う高度で強い乱気流が発生したケースとなってい
謝
解能と予測精度
辞
本稿をまとめるにあたっては成層圏プラットフォー
る.
なお,ここでは示さなかった地点 A,B,C,D3に
ムのプロジェクト以来,機材の相談に乗っていただい
おいても同じように温位勾配と VSの増加が見られ
ている株式会社東芝の武藤隆一氏,弓削信子氏,また
る.しかし,B4のように,Ri数は十
有益な助言をいただいた日本航空機操縦士協会・気象
小さかったと
はいえ,温位勾配が0.
5K/
2
0
0m と小さかったにもか
委員会の委員の皆様に深く御礼申し上げます.
かわらず乱気流遭遇が報告された地点もある.また
D3では Ri数が3以下と大きな値のところでも,乱
気流遭遇が報告されている.これらの発生経緯に関し
ては今後の検討項目である.
参
文
献
朝日新聞,2005:2005年3月19日朝刊.
Boucher
,R.J.
,1973:Mes
os
cal
ehi
s
t
or
yofas
mal
lpat
ch
ofcl
earai
rt
ur
bul
ence.J.Appl
.Met
eor
.
,12
,814-821
.
4.まとめ
本論文では乱気流の発生するリスクの高い空域(乱
気流域)の予測計算において,計算
との効果と,予測計算結果を
Br
owni
ng,K.A.andC.D.Wat
ki
ns
,1970:Obs
er
vat
i
ons
った乱気流解析の有効
ofcl
earai
rt
ur
bul
encebyhi
ghpowerr
adar
.Nat
ur
e,
227
,260-263
.
ができた.
・乱気流域予測の検出指標には,KH 波の観測時に常
われた Ri数を選定した.
・乱気流域の予測計算
解能は,CAT の空間スケー
ルに近い水平2km,高度は3
0
0m としたときに乱
気流遭遇情報(PI
REP)と最も良い対応関係が得
られた.この
解能での乱気流域予測において,航
空機 が MODの 乱 気 流 に 遭 遇 す る 場 合 の Ri数 は
1.
1以下であり,SEV を含む場合の Ri数は0.
7
以下
をも示すという結果を得た.
・寒冷前線に伴う乱気流域のスケールは,Ri数0.
7
以
下の
布で見たときに,東西方向に1
6
0km 以上,
南北方向には約6
0
km,高度方向には寒冷前線上の
寒気と暖気の界面に
って厚さが6
0
0m 程度と計算
された.
・乱気流の発生原因は,寒冷前線による北からの寒気
が南からの暖気を押し上げ,
「強安定層」を形成す
るとともに VSが増大することにより発生するケル
ビン・ヘルムホルツ不安定と推定され,発生高度は
3.
1∼4.
3
km となり,CAT が発生しやすいジェッ
ト気流前線帯よりも下層の CAT 発生となってい
た.
・今回の計算
t
.J.Roy.Me
t
eor
.Soc.
,97
,283-299
.
bi
l
l
ows
.Quar
解能を上げるこ
性を示した.この結果,下記のような知見を得ること
に評価に
Br
owni
ng,K.A.
,1971:St
r
uct
ur
eoft
heat
mos
pher
ei
n
t
he vi
ci
ni
t
y of l
ar
ge
ampl
i
t
ude Kel
vi
nHel
mhol
t
z
解能は観測で得られている CAT のス
ケールと同程度であるため,乱気流遭遇地点での
25
ま
Ri数は KH 不安定が発生する理論値である0.
では下がらず0.
6
程度であった.
Hi
cks
,J.J.
,I
.Kat
z,C.R.Landr
y and K.R.Har
dy,
1967: Cl
:Si
ear
ai
rt
ur
bul
ence
mul
t
aneousobs
er
vat
i
onbyr
adarandai
r
cr
af
t
.Sci
ence,157
,808-809
.
Hi
cks
,J.J.andJ.K.Angel
l
,1968:Radarobs
er
vat
i
ons
ofbr
eaki
nggr
avi
t
at
i
onalwavesi
nt
hevi
s
ual
l
ycl
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mos
pher
e.J.Appl
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eor
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Ki
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i
cals
t
udyont
hemechani
s
m
ofoccur
r
enceoft
he21Oct
ober2002ai
rt
ur
bul
ence.
Thef
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t
hs
t
r
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os
pher
i
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f
or
ms
ys
t
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ks
hop,
166-171
.
Ki
kuchi
,Y.
,Y.Nagano,S.Ar
akawa,F.Ki
mur
aandK.
Shi
r
as
aki
,1981:Numer
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r
cur
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i
oni
n
t
heKant
odi
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t
r
i
ct
.J.Me
t
eor
.Soc.Japan,59
,723-738
.
Kl
aas
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en,G.P.and W.R.Pel
t
i
er
,1985:Evol
ut
i
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l
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wo
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pat
i
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mens
i
ons
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mos
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0
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0
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中山
DFDRの利用.天気,29
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Shar
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randB.Br
own,2
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c
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ur
bul
ence f
or
ecas
t
i
ng al
gor
i
t
hm (I
TFA).AI
AA paper
A00-16377
.
解能と予測精度
679
・状態方程式
π =C
mz
Hθ
h
(
)
A5
・気圧方程式
0
0
6
:
Shar
man,R.
,C.Te
bal
di
,G.Wi
e
ne
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An i
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t
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3
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1
3
3
1.
s
t
r
at
i
f
i
eds
hearf
l
ows
.Radi
oSc
i
.4
,1
山田雄二,2008:乱気流確率予測に向けた技術開発.航空
気象ノート,(67・6
8
),1
1
1.
1
+ βπ
(1+αq)Q+(1− )αθC +D(π)
θ (1+αq)
全 日 本 空 輸 株 式 会 社 航 務 本 部,1
9
7
1
:ANA Avi
at
i
on
日本気象協会
4
7
3
Weat
her
.
, pp.
π
−
y
π
u
−βπ m
z
x
z−z
z
+z
−
+
m u
y h z
z
h
x
z
y
(
)
A6
は計算結果をスムージングするための水平拡
D(
π)
散を表す.
付
録:SPFモデルの予測計算方程式
(変数等の定義は方程式の次に示す).
・熱力学方程式
・運動方程式
(
=A(
+Q
θ)
Hθ)
t
(
+f+~
u)=A(Hu)
fs
i
nΔλ + M
t
−
− u −θ m π+θ m z z
a
x
h
z
x
(
)
A7
Q は短波放射,長波放射,水蒸気・雲粒子・降水
粒子の相変換,乱流の熱輸送などによる大気の加熱
π+
F
z
・冷却を表す.
(A1
)
・水蒸気・雲水・雲氷・雨・雪・霰の方程式
( )=A(H )
−f
u−~
fc
osΔλ −uM
t
−
−
−θ m π+θ m z z
a
y
h
z
y
=A(
+C
(
Hq)
q)
t
π
+F
z
(A2
)
( )=A(H )
−~
fs
i
nΔλu+~
fc
osΔλ
t
+u
+
−θ z
a
h
π− +
g F
z
= :水蒸気
l
(
)
A8
:雲水
:雲氷
i
(
=A(
−F +C
q)
Hq)
t
(A3
)
L=r:雨
:雪
s
(
)
A9
h:霰
(
)
∼(
)
式において,F は降水粒子の重力落下
A8
A9
F ,F ,F は運動量の地表面をとおしての
換,乱流
の運動量輸送などによる風速の変化を表している.
による効果,C,C は水蒸気・雲粒子・降水粒子
の相変換,雲粒子・降水粒子の併合などによる生成
・消滅および乱流輸送による増減を示す.
・質量保存の方程式
・変数等の定義
(H )=−m
(
−m
(H )
−
(
Hu)
H
t
x
y
z
)
(A4
)
=
A(
Hη)
1
−m
(
−m (
Huη)
H η)
H
x
y
−
z
(
H
−η
η)
H
t
(
移流項:ηは変数)
,
2010年 9月
13
航空機が遭遇する乱気流域の予測計算における計算
680
H=
θ,p,ρ:温位,気圧,乾燥空気密度
C
h
R
ρ,β=
,C =
R,
mz
C
m,Ω:マップファクター,地球の自転角速度
R,C ,C :気体定数,定積比熱,定圧比熱
p
R
0
0
0
0
0Pa,
π=C
, =
,p=1
p
C
−
=− z z m u z +
h
x
q,q ,q,q,q,q:水蒸気,雲水,雲氷,雨,
雪,霰の混合比
z +z
z−z
,
,z =z
h
h
y
~=2Ωc
h=z−z,f=2Ωs
i
n ,f
os ,
M =u
m−
y
・乱流モデル
5
を
Me
l
l
or-Yamadaの l
e
ve
l2.
m
,Δλ=λ−λ ,
x
用した.
・地表面・地中温度の予測
(1+αq)
θ
6
0
8,θ =
θ= (1+
θ:α=1.
(
1
+q)
αq)
地中1.
8
m までを7層に
q=q+q +q+q+q+q
熱容量を
u, , :東西方向,南北方向,
解能と予測精度
直方向の風速
割して地中の熱伝導率,
慮し,熱伝導方程式を時間積
して地表
面・地中温度を予測している.このとき地表面での
z,z:計算領域の上限の高度,標高
短波放射,長波放射,顕熱,潜熱,地中への熱の流
λ, ,a:経度,緯度,地球の半径
れが境界条件となる.海の場合には強制復元法で海
λ :x軸の経度
面温度を予測する.
14
-
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(
;
-
)
〝天気"57.9.
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