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公開特許公報 特開2015

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公開特許公報 特開2015
〔実 14 頁〕
公開特許公報(A)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-166340
(P2015−166340A)
(43)公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61K 31/7032
(2006.01)
A61K
31/7032
4B018
A61P 17/00
(2006.01)
A61P
17/00
4B024
A61P 43/00
(2006.01)
A61P
43/00
111 4B065
A61K
8/60
(2006.01)
A61K
8/60
4C083
A61Q 19/00
(2006.01)
A61Q
19/00
4C086
審査請求 未請求
請求項の数12 OL (全21頁) 最終頁に続く
(21)出願番号
特願2015-26290(P2015-26290)
(71)出願人 591061068
(22)出願日
平成27年2月13日(2015.2.13)
東洋精糖株式会社
(31)優先権主張番号
特願2014-26423(P2014-26423)
東京都中央区日本橋小網町18番20号
(32)優先日
平成26年2月14日(2014.2.14)
(33)優先権主張国
日本国(JP)
(74)代理人 110001070
特許業務法人SSINPAT
(72)発明者 長井
敦史
千葉県市原市岩崎西1丁目6番41号
洋精糖株式会社
(72)発明者 相澤
東
千葉工場内
恭
千葉県市原市岩崎西1丁目6番41号
洋精糖株式会社
東
千葉工場内
Fターム(参考) 4B018 MD27
ME14
4B024 AA01
AA11
AA20
BA07
DA03
GA30
HA14
HA17
BA80
最終頁に続く
(54)【発明の名称】フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤ならびに幹細胞因子の産生抑制剤
(57)【要約】
【課題】天然保湿因子の産生に関与しているフィラグリ
ン遺伝子等の発現を促進することのできる新規な発現促
進剤、および幹細胞因子(SCF)の産生を抑制するこ
とのできる新規の産生抑制剤を提供する。
【解決手段】D−グルコピラノシルグリセロールを含有
することを特徴とする、フィラグリン遺伝子および/ま
たはカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤、ならびにS
CFの産生抑制剤。これらの発現促進剤および産生抑制
剤は、経口摂取されるもの、または塗布されるものとし
て調製することができる。
【選択図】図1
( 2 )
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1
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【特許請求の範囲】
湿因子(Natural MoisturizingFactors:NMF)の産
【請求項1】
生に関与する、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−
D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特
14遺伝子の発現促進剤に関する。また本発明は、異常
徴とする、フィラグリン遺伝子および/またはカスパー
産生がかゆみなどの原因となる、幹細胞因子(SCF)
ゼ−14遺伝子の発現促進剤。
の産生抑制剤に関する。換言すれば、本発明はそのよう
【請求項2】
な発現促進剤または産生抑制剤としての、D−グルコピ
前記D−グルコピラノシルグリセロールが、1−O−α
ラノシルグリセロールの用途に関する。
−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D
【背景技術】
−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グ
【0002】
ルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グ 10
皮膚の最外層に存在する角質層は、外界からの刺激(紫
ルコピラノシルグリセロールの混合物である、請求項1
外線、乾燥等)に対する防御壁として機能している。例
に記載の発現促進剤。
えば、外環境の乾燥から身を守るため、角質層は体内か
【請求項3】
らの水分の放出を抑制する作用と、角質層自身の水分を
経口摂取されるものである、請求項1または2に記載の
保持する作用を合わせ持つことが知られている。体内か
発現促進剤。
らの水分の放出を抑制するものとしては角質層の細胞間
【請求項4】
脂質が、角質層自身の水分を保持する作用を持つものと
塗布されるものである、請求項1または2に記載の発現
しては天然保湿因子が知られている。この天然保湿因子
促進剤。
はアミノ酸及びその誘導体、ピロリドンカルボン酸、乳
【請求項5】
酸塩、無機塩、糖類等からなる角質層中に存在する水溶
請求項3に記載の発現促進剤を含有することを特徴とす 20
性成分である。これらの天然保湿因子の主要成分はアミ
る飲食品。
ノ酸やピロリドンカルボン酸等のアミノ酸代謝物であり
【請求項6】
、特にアミノ酸には、角質層における水分量と高い相関
請求項3または4に記載の発現促進剤を含有することを
性が報告され、角質層の水分保持には極めて重要である
特徴とする、化粧品、医薬部外品または医薬品。
。
【請求項7】
【0003】
D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特
しかしながら、角質層におけるアミノ酸の量は年齢、肌
徴とする、幹細胞因子(SCF)の産生抑制剤。
荒れ状態、アトピー性皮膚炎、花粉症等のアレルギー反
【請求項8】
応によって減少し、角質層の水分環境を悪化させること
前記D−グルコピラノシルグリセロールが、1−O−α
が知られている。角質層の水分量が低下することにより
−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D 30
角質層がかたくなり、亀裂を生じさせ、小皺の原因とな
−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グ
り、抗原等の外界因子の侵入を容易にし、皮膚炎症反応
ルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グ
を誘起することもある。
ルコピラノシルグリセロールの混合物である、請求項1
【0004】
に記載の産生促成剤。
これまで、油剤や、糖、アミノ酸、乳酸、ピロリドンカ
【請求項9】
ルボン酸塩等の天然保湿因子、コラーゲン等の蛋白質、
経口摂取されるものである、請求項7または8に記載の
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の多糖類、グリセ
産生抑制剤。
リン、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールと
【請求項10】
いった保湿剤を外用することで、水分量の減少した角質
塗布されるものである、請求項7または8に記載の産生
抑制剤。
層を改善することが試みられてきた。しかしながら、上
40
記のような保湿剤は、角質層に留まる間は有効であるが
【請求項11】
、角質層の水分保持機能を本質的に改善する作用までは
請求項9に記載の産生抑制剤を含有することを特徴とす
期待できない。また、洗浄や発汗などによって容易に流
る飲食品。
されることも問題であった。
【請求項12】
【0005】
請求項9または10に記載の産生抑制剤を含有すること
天然保湿因子の主成分であるアミノ酸は、フィラグリン
を特徴とする、化粧品、医薬部外品または医薬品。
が角質層内でカスパーゼ−14の作用を受けて分解する
【発明の詳細な説明】
ことによって供給される。フィラグリンの産生の過程で
【技術分野】
はまず、フィラグリン遺伝子が顆粒細胞(顆粒層に位置
【0001】
するケラチノサイト)において発現し、そのmRNAか
本発明は、皮膚の角質層で水分を保持するための天然保 50
らの翻訳によって、10∼12個のフィラグリンユニッ
( 3 )
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トが短いリンカーペプチドを介して数珠つなぎに配列し
されている。
たプロフィラグリン(フィラグリン前駆体)が産生され
【0009】
る。プロフィラグリンは直ちにリン酸化され、ケラトヒ
一方で、角質細胞によるSCF(Stem Cell Factor:幹
アリン顆粒に蓄積する。顆粒細胞が顆粒層上層から角質
細胞因子)の異常産生は、肥満細胞(マスト細胞)の異
層に移行し、角質細胞(角化細胞、角質層に位置するケ
常増殖や異常脱顆粒化を引き起こし、ヒスタミン、セロ
ラチノサイト)に変化する際に、プロフィラグリンは脱
トニン、LTB4等のケミカルメディエーターの遊離を
リン酸化と、タンパク質分解酵素の作用を受けてフィラ
亢進させて、かゆみの原因となることも知られている。
グリンへと分解される。このようにして産生されたフィ
SCFには、タンパク質分解酵素の作用により切断され
ラグリンは、角質細胞内でケラチンフィラメントに沈着
た膜から遊離する分泌型(SCF−1)と、膜結合型(
しており、ケラチンフィラメント同士の凝集効率を高め 10
SCF−2)がある。このうちSCF−1はその切断部
、角質細胞の内部構築に関与する。そして、角質層上層
位において細胞膜から遊離して、色素細胞や肥満細胞の
で、フィラグリンは前述のようにカスパーゼ−14の作
SCFレセプターに結合し、色素細胞の増殖活性化や、
用を受けて分解されて、アミノ酸およびその誘導体であ
肥満細胞の増殖活性化および脱顆粒化をもたらす。アト
る天然保湿因子が生成する。
ピー性皮膚炎では、皮膚炎の発症部位における肥満細胞
【0006】
の浸潤が病態に重要な働きを担っていると考えられてお
近年、このフィラグリンが皮膚の水分保持に非常に重要
り、SCF(特にSCF−1)はそのような肥満細胞の
かつ必要不可欠であること、及び乾燥などの条件により
増殖や、成熟・分化、ケモタキシスにとって必須の因子
フィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ
となっている。そのため、アトピー性皮膚炎の治療等に
酸量が低下することが明らかになった。そこで、フィラ
おいてSCFの産生を抑制することが重要視されており
グリンの合成や分解を促進することによって角質層内の 20
、そのような作用効果を奏する物質がいくつか提案され
アミノ酸量を増大させ、角質層の水分環境を本質的に改
ている。たとえば、特許文献5には、α−グルコシルヘ
善することが検討されている。
スペリジンを含有する経口投与・摂取用の、SCF産生
【0007】
抑制剤およびかゆみ抑制剤などが記載されており、特許
さらに、フィラグリン遺伝子の異常(欠損)によるフィ
文献6には、関平鉱泉水からなるSCF遊離抑制剤およ
ラグリンの発現量の低下が、老人性乾皮症、アトピー性
びそれを含む鎮痒剤および皮膚外用剤が記載されている
皮膚炎、尋常性魚鱗癬、気管支喘息等の疾患の発症に深
。また、皮膚が乾燥、紫外線等の刺激を受けることでS
く関与していることも明らかになってきている。そのた
CFが産生されることも報告されており(特許文献7)
め、フィラグリン遺伝子の発現を促進することによって
、SCFの量は細胞の乾燥状態を示す一つの指標となる
、上記のような疾患を予防または治療することも検討さ
。SCFのSCFレセプターへの結合も、皮膚が乾燥、
れている。たとえば、非特許文献1には、JTC801 30
紫外線等の刺激を受けることで促進される。
(N-(4-amino-2-methylquinolin-6-yl)-2-[(4-ethylphe
【0010】
noxy)methyl]benzamide)が、ヒトおよびマウスの培養
なお、SCF−2は角質細胞等に結合したまま色素細胞
表皮細胞(角質細胞)におけるフィラグリンの発現量を
(メラノサイト)のSCFレセプターに結合して色素細
亢進する作用を有すること、そして当該化合物を経口で
胞の増殖を活性化し、メラノジェネシス(メラニン合成
摂取することにより、アトピー性皮膚炎の動物モデルの
)の制御因子として働いている。
皮膚におけるフィラグリンの発現を亢進し、炎症が改善
【0011】
されたことが記載されている。
ところで、α−D−グルコピラノシルグリセロールは、
【0008】
清酒に0.5質量%程度含まれており、すっきりとした
上述したJTC801以外にも、フィラグリン遺伝子の
甘さを与えていることが知られている物質である。近年
発現を促進する作用を有する物質として、たとえば、ガ 40
では、α−D−グルコピラノシルグリセロールが非う蝕
イヨウ抽出物、クマザサ抽出物、ローズマリー抽出物、
性、難消化性、保湿性等の機能を有することが報告され
レイシ抽出物またはトウニン抽出物を有効成分として含
ており、その機能性材料としての有用性が注目されてい
有するプロフィラグリンmRNA発現促進剤(特許文献
る。例えば、特許文献8には、そのような機能に着目し
1)、カキの葉抽出物からなるプロフィラグリン遺伝子
て、α−D−グルコピラノシルグリセロールを甘味剤や
発現促進剤(特許文献2)、メハジキ、アンズ、スイカ
保湿剤などとして利用し、各種飲食品、化粧品、医薬品
ズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャま
などに添加することができることが記載されている。
たはシロキクラゲを含有するNMF産生促進剤(特許文
【0012】
献3)、リン脂質と糖アルコールが結合した構造を有す
また、特許文献9には、α−D−グルコピラノシルグリ
る特定の一般式で示される糖脂質を有効成分として含有
セロール(α−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノ
するフィラグリン合成促進剤(特許文献4)などが提案 50
シド)とその立体異性体であるβ−D−グルコピラノシ
( 4 )
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ルグリセロール(β−D−ジヒドロキシプロピルグルコ
サイト等によるフィラグリン遺伝子等の発現を促進する
ピラノシド)を特定の比率で含有する糖組成物を用いる
ことのできる、新規な発現促進剤を提供することを課題
ことにより、α−D−グルコピラノシルグリセロールを
とする。
単独で用いる場合と比較して保湿性を向上させることが
本発明はさらに、ケラチノサイト等によるSCFの産生
できることが記載されている。
を抑制することのできる、新規の産生抑制剤を提供する
【0013】
ことも課題とする。
しかしながら、特許文献8および9では、保湿性とフィ
【課題を解決するための手段】
ラグリン等の特定の遺伝子の発現との関係性については
【0019】
全く言及されておらず、α−および/またはβ−D−グ
本発明者らは、D−グルコピラノシルグリセロールが、
ルコピラノシルグリセロールを上記遺伝子の発現促進剤 10
天然保湿因子の原料ともいうべきフィラグリンの遺伝子
として利用することができることは記載されていない。
の発現を促進するとともに、フィラグリンを分解して天
【0014】
然保湿因子に変換するタンパク質分解酵素であるカスパ
さらに、特許文献10には、α−および/またはβ−D
ーゼ−14の遺伝子の発現を促進する作用を有し、それ
−グルコピラノシルグリセロール等を包含するグリセリ
らの遺伝子の発現促進剤として利用することができるこ
ルグリコシドが、皮膚におけるアクアポリンの発現を促
とを見出した。本発明者らはさらに、D−グルコピラノ
進する作用を有することが記載されている。アクアポリ
シルグリセロールはSCFの産生抑制剤として利用でき
ンは植物および動物の細胞膜に存在する、分子量の小さ
ることも見出した。
な極性分子、特に水を透過させる細孔を形成しており、
【0020】
たとえば皮膚の深部から表層へ水を供給して潤いを保持
すなわち、本発明は一つの側面において、D−グルコピ
するために重要な役割を担っている。
20
ラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、フ
【0015】
ィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝
しかしながら、特許文献10では、グリセリルグリコシ
子の発現促進剤(以下、「本発明の発現促進剤」と称す
ドがアクアポリン以外のタンパク質の発現を促進する作
ることがある。)を提供する。本発明はもう一つの側面
用を有することは記載されていない。
において、D−グルコピラノシルグリセロールを含有す
【先行技術文献】
ることを特徴とする、SCFの産生抑制剤(以下、「本
【特許文献】
発明の産生抑制剤」と称することがある。)を提供する
【0016】
。本発明はさらなる側面において、経口摂取または塗布
【特許文献1】特開2012−219047号公報
により利用される上記の発現促進剤または産生抑制剤や
【特許文献2】特開2013−180968号公報
、それらを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品または
【特許文献3】特開2006−124350号公報
30
医薬品を提供する。
【特許文献4】特開2006−241095号公報
【0021】
【特許文献5】特開2009−007336号公報
換言すれば、本発明は、D−グルコピラノシルグリセロ
【特許文献6】特開2010−126494号公報
ールの、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ
【特許文献7】特開2003−194809号公報
−14遺伝子の発現を促進するための有効成分としての
【特許文献8】特開平11−222496号公報
用途や、D−グルコピラノシルグリセロールを、インビ
【特許文献9】特開2011−236152号公報
トロまたはインビボで、ヒトおよびその他の動物の、フ
【特許文献10】米国特許出願公開第2009/013
ィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝
0223号明細書
子を発現しうる細胞と接触させることにより、フィラグ
【非特許文献】
リン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発
【0017】
40
現を促進させる方法を提供する。同様に、本発明は、D
【非特許文献1】Otsuka et al., Possible new therap
−グルコピラノシルグリセロールの、SCFの産生を抑
eutic strategy to regulate atopic dermatitis throu
制するための有効成分としての用途や、D−グルコピラ
gh upregulating filaggrin expression.
ノシルグリセロールを、インビトロまたはインビボで、
The Journal
of Allergy and Clinical Immunology, 19 September
ヒトおよびその他の動物の、SCFを発現しうる細胞と
2013. (http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2013.07.02
接触させることにより、SCFの産生を抑制する方法を
7)
提供する。
【発明の概要】
【発明の効果】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
【0018】
D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の
本発明は、天然保湿因子の産生に関与しているケラチノ 50
発現促進剤を用いることにより、フィラグリン遺伝子の
( 5 )
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8
みならずカスパーゼ−14遺伝子のケラチノサイト等に
2]および[3−3]に対応するものである。図中のカ
おける発現を促進することができるため、角質層におけ
ラムおよびバーはn=3の平均値および標準偏差(SD
る天然保湿因子の産生量を相乗的に増加させることが期
)を示す。横軸下段は培養液に添加したSCF誘導剤(
待できる。また、本発明の発現促進剤を用いることによ
mediumは無添加)、横軸上段は培養液へのCOSART
りSCF発現細胞が産生するSCFの量を抑制すること
E−2G(3%)の添加の有無(mediumは無添加)を表
ができるため、SCFの異常産生に起因するかゆみを低
す。縦軸は培養液中のSCFの濃度、または吸光度(4
減することなどが期待できる。このような本発明の発現
50nm−750nm)を表す。
促進剤または産生抑制剤を、食品、化粧品、医薬部外品
【発明を実施するための形態】
、医薬品等に配合して利用することにより、フィラグリ
【0025】
ン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進効果 10
− 発現促進剤
や、SCFの産生抑制効果を期待できる、食品、化粧品
本発明のフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺
、医薬部外品、医薬品等を製造することが可能となる。
伝子の発現促進剤およびSCFの産生抑制剤は、D−グ
【0023】
ルコピラノシルグリセロールを含有する物質であればよ
なお、後記実施例により示されている結果から、D−グ
く、たとえば他の成分を含む組成物として調製してもよ
ルコピラノシルグリセロールは湿潤状態にある(培養液
いし、他の成分を極力減らした精製物として調製しても
中で培養されている)ケラチノサイト等のSCF発現細
よい。すなわち、本発明において、実際にフィラグリン
胞に直接的に作用して、SCFの発現量を抑制する効果
遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進する
を有することが推定される。ただ、ケラチノサイトは乾
作用、あるいは実際にSCFの産生を抑制する作用を有
燥刺激によってもSCFの産生を促進するので、たとえ
する化合物はD−グルコピラノシルグリセロールである
ば、本発明の発現促進剤としての作用によって生体の角 20
が、本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、そのよう
質層の湿潤状態が保たれ、ケラチノサイトが乾燥刺激を
な作用を阻害しない範囲で、D−グルコピラノシルグリ
受けないようにすることで、SCFの産生量を抑制する
セロール以外の物質(たとえば水、グリセリン)を含有
という間接的な作用機序も示唆されうる。本発明の産生
していてもよい。このような作用効果に対する貢献の意
抑制剤による作用効果は、少なくとも上記の直接的な作
味で、本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、本質的
用機序に基づいており、上記の間接的な作用機序だけに
にD−グルコピラノシルグリセロールからなるものとい
基づくものではないが、これら両方の作用機序やさらな
うこともできる。
るその他の作用機序が働くことも排除されるものではな
【0026】
い。
(D−グルコピラノシルグリセロール)
【図面の簡単な説明】
D−グルコピラノシルグリセロールは、式(1)で表さ
【0024】
30
−
れる化合物、すなわち1−O−(α−またはβ−)D−
【図1】図1は、プロフィラグリン、フィラグリン、天
(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロール(1
然保湿因子(NMF)およびカスパーゼ−14の関係と
−O−(α−またはβ−)D−ジヒドロキシプロピル(
、D−グルコピラノシルグリセロールがプロフィラグリ
モノまたはポリ)グルコピラノシドと称されることもあ
ンおよびカスパーゼ−14の発現を促進する作用を表し
る。)および式(2)で表される化合物、すなわち2−
た模式図である。
O−(α−またはβ−)D−(モノまたはポリ)グルコ
【図2】図2は、実施例1における、COSARTE−
ピラノシルグリセロール(2−O−(α−またはβ−)
2G(D−グルコピラノシルグリセロール等を含有する
D−ジヒドロキシプロピル(モノまたはポリ)グルコピ
組成物)のフィラグリン(A)およびカスパーゼ−14
ラノシドと称されることもある。)の総称である。これ
(B)それぞれの遺伝子の発現促進作用を示す結果のグ
ラフである。
らの化合物は互いに構造異性体の関係にある。本発明で
40
は、式(1)で表される化合物のみを用いても、式(2
【図3】図3は、実施例2における、COSARTE−
)で表される化合物のみを用いても、式(1)で表され
2Gから精製したD−グルコピラノシルグリセロール(
る化合物と式(2)で表される化合物との混合物を用い
GMG)を50mMまたは200mMの濃度で用いたと
てもよい。
きのフィラグリン遺伝子の発現促進作用を示す結果のグ
【0027】
ラフである。グリセリン(Glycerol)は対照物質である
【化1】
。
【図4】図4は、実施例3における、COSARTE−
2GによるSCFの産生抑制作用を示す結果のグラフで
ある。図の見出し[4−1],[4−2]および[4−
3]はそれぞれ、実施例中の見出し[3−1],[3− 50
( 6 )
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10
【0028】
式(1)中の*印を付けた2位の炭素原子は不斉炭素原
子であり、光学異性体、すなわち(2R)体および(2
S)体が存在する。式(1)で表される化合物はどちら
の光学異性体であってもよく、これらの光学異性体から
なる混合物(ラセミ体)であってもよい。
【0029】
式(1)および(2)中のnは糖縮合度を示し、1以上
の整数である。後述するような製造方法によって得られ
る糖組成物中の化合物については、nは通常1∼6の整 20
数、ほとんどは1∼4の整数である。本発明では、nが
1である化合物のみを用いても、nが1以上の化合物の
混合物を用いてもよい。
【0033】
【0030】
本発明で用いるD−グルコピラノシルグリセロールの形
式(1)および(2)中の波線は、括弧内のグルコース
態及び純度(含有率)は、本発明における作用効果が阻
残基の1位の炭素原子とグリセリンの水酸基に由来する
害されない範囲、すなわちフィラグリン遺伝子およびカ
酸素原子が、n=2以上の場合はさらにグルコース残基
スパーゼ−14遺伝子の発現を促進する作用を発揮でき
の4位の水酸基に由来する酸素原子とグルコース残基の
る範囲であれば、特に限定されるものではない。D−グ
1位の炭素原子が単結合で結合していて、その結合はα
ルコピラノシルグリセロールの形態としては、例えば、
結合であってもβ結合であってもよいことを表す。本発 30
水溶液、水溶液を濃縮した水あめ状の高粘度溶液などが
明では、波線部がα結合である化合物のみを用いても、
挙げられる。D−グルコピラノシルグリセロールの純度
波線部がβ結合である化合物のみを用いても、波線部が
は10重量%以上が好ましく、例えば、前記高粘度溶液
α結合である化合物とβ結合である化合物との混合物を
中のD−グルコピラノシルグリセロールの純度は40重
用いてもよい。
量%程度またはそれ以上とすることができる。
【0031】
【0034】
式(1)によって表される化合物の具体例としては、式
また、D−グルコピラノシルグリセロールは、それを調
(1)においてn=1で波線がα結合を表す場合に相当
製する際に残存または混入することのある未反応物また
する、下記式(1A)で表される化合物、すなわち1−
は反応副生物(不純物)と混合した状態であってもよい
O−α−D−グルコピラノシルグリセロールと、式(1
。そのような不純物としては、D−グルコピラノシルグ
)においてn=1で波線がβ結合を表す場合に相当する 40
リセロールを有機合成法により合成するための一方の原
、下記式(1B)で表される化合物、すなわち1−O−
料として配合されるグリセリンおよびそれに由来する反
β−D−グルコピラノシルグリセロールが挙げられる。
応副生物、たとえばエタノール、イソプロピルアルコー
式(2)によって表される化合物の具体例としては、式
ル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
(2)においてn=1で波線がα結合を表す場合に相当
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピ
する、下記式(2A)で表される化合物、すなわち2−
レングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2
O−α−D−グルコピラノシルグリセロールが挙げられ
−ペンタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン等
る。
のアルコールが挙げられる。
【0032】
【0035】
【化2】
なお、グリセリンは食品、化粧品、医薬部外品、医薬品
50
等への配合量が制限される場合がある。そのため、有機
( 7 )
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合成法によって得られるD−グルコピラノシルグリセロ
ノシルグリセロールからなる本発明の発現促進剤または
ールおよび上記の未反応物および反応副生物を含有する
産生抑制剤として用いることが好ましい。
糖組成物を食品、化粧品、医薬品等の製造に用いる場合
【0039】
、その糖組成物中のグリセリンの割合は、糖組成物中の
図1は、プロフィラグリン、フィラグリン、天然保湿因
全固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質
子(NMF)およびカスパーゼ−14の関係と、D−グ
量%以下がより好ましい。一方、グリセリンの配合量が
ルコピラノシルグリセロールがプロフィラグリンおよび
特に問題とならない場合は、糖組成物中の全固形分に対
カスパーゼ−14の発現を促進する作用を表した模式図
して、20質量%以上であってもよい。
である。D−グルコピラノシルグリセロールが細胞に作
【0036】
用すると、後述する実施例1が示すとおり、フィラグリ
また、前記不純物としては、D−グルコピラノシルグリ 10
ンおよびカスパーゼ−14遺伝子の発現が促進される。
セロールを合成するためのもう一方の原料として配合さ
発現したフィラグリン遺伝子は、プロフィラグリンに翻
れるグルコース源およびそれに由来する反応副生物、た
訳され、脱リン酸化などの分解反応によりフィラグリン
とえば、グルコース源が二糖以上の糖である場合にその
になる。フィラグリンは、発現したカスパーゼ−14に
分解により生じた糖や、そのような糖同士が反応して副
よりさらに分解反応を受け、NMF(Natural
生した糖なども挙げられる。
Moisturizing
【0037】
【0040】
D−グルコピラノシルグリセロールは、公知の手法によ
(用途)
り予め調製しておくこともできるし、商品として購入す
D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の
ることもできる。たとえば、特開平11−022249
発現促進剤は、フィラグリン遺伝子および/またはカス
6号公報(特許文献7)に記載されているような酵素法 20
パーゼ−14遺伝子の発現を促進することによって目的
を用いれば、α−D−グルコピラノシルグリセロールを
とする効果が得られる用途において、特に限定されるこ
主成分とする生成物が得られ、特開2011−2361
となく使用することができる。本発明の発現促進剤は、
52号公報(特許文献8)に記載されているような有機
フィラグリン遺伝子またはカスパーゼ−14遺伝子のど
合成法を用いれば、α−D−グルコピラノシルグリセロ
ちらかの発現を促進することを目的として使用してもよ
ールとβ−D−グルコピラノシルグリセロールを所定の
いし、これら両方の遺伝子の発現を同時に促進すること
割合で含有する混合物が得られる。有機合成法の概略を
を目的として使用してもよい。つまり、本発明の発現促
説明すれば、この製造方法は、グルコース源とグリセリ
進剤は、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ14遺伝
ンとを酸性触媒を用いて反応させることによりD−グル
子の少なくとも一方の遺伝子の発現を促進することを目
コピラノシルグリセロールを合成する工程(グリコシル
的として使用することができる。
化工程)および酸性触媒の中和剤をグルコシル化工程の 30
【0041】
反応系内に添加して反応を停止させる工程(反応停止工
たとえば、本発明の発現促進剤は、インビトロまたはイ
程)を含み、必要に応じてさらに、残存グリセリン、残
ンビボで、ヒトおよびその他の動物の、フィラグリン遺
存グルコース源、副生物等を除去するための精製工程(
伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子を発現しう
蒸留工程、脱色工程等)や、粘度を低下させてハンドリ
る細胞、好ましくは顆粒細胞または角化細胞と接触させ
ング性を向上させるための水溶液調製工程などを含んで
ることにより、フィラグリン遺伝子および/またはカス
いてもよい。
パーゼ−14遺伝子の発現を促進させるために使用する
【0038】
ことができる。
また、たとえば東洋精糖(株)製の商品「コスアルテ2G
【0042】
」は、D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−α
また、本発明の発現促進剤は、フィラグリン遺伝子およ
−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D 40
び/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進する作
−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グ
用を有するD−グルコピラノシルグリセロール以外の物
ルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グ
質と混合して、さらにそのような作用を向上させた発現
ルコピラノシルグリセロールの混合物)、グリセリン、
促進剤を調製するために利用することもできる。
その他の糖類および水を含有する組成物であり、この組
【0043】
成物中の、水およびグリセリンを除いたD−グルコピラ
D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の
ノシルグリセロールの含有率は、約70∼78重量%、
産生抑制剤は、SCFの産生を促進することによって目
平均73.5重量%である。また、上記商品は有機合成
的とする効果が得られる用途において、特に限定される
法により効率的に製造することができる。このような、
ことなく使用することができる。
D−グルコピラノシルグリセロールとして上記4種類の
【0044】
化合物を含有する上記商品を、本質的にD−グルコピラ 50
たとえば、本発明の産生抑制剤は、インビトロまたはイ
Factor)となる。
( 8 )
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ンビボで、ヒトおよびその他の動物の、SCFを産生し
る疾患を治療または予防するための医薬品として製造す
うる細胞、たとえば角化細胞(サイトケラチン)と接触
ることができる可能性がある。また、本発明の産生抑制
させることにより、SCFの産生を促進させるために使
剤を有効成分とする医薬品は、乾燥性皮膚疾患が伴う掻
用することができる。なお、SCFを産生する細胞とし
痒(かゆみ)を効果的に抑制することのできる鎮痒剤と
ては、角化細胞の他、線維芽細胞、内皮細胞、マスト細
して好適である。
胞(肥満細胞)、ストローマ細胞(間質細胞)等も挙げ
【0049】
られ、本発明の産生抑制剤は、SCFの産生を抑制する
食品(特に保健機能食品)の場合、または薬用化粧品、
ことが所定の作用効果を奏する各種の細胞に対して適用
入浴剤等の医薬部外品の場合も、上述したような化粧品
することが可能である。
【0045】
および/または医薬品の場合と同様である。
10
【0050】
また、本発明の産生抑制剤は、SCFの産生を抑制する
このような食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等の形態
作用を有するD−グルコピラノシルグリセロール以外の
(剤型)は、目的とする効果が得られる限り特に限定さ
物質と混合して、さらにそのような作用を向上させた産
れるものではなく、適切な形態を選択すればよい。
生抑制剤を調製するために利用することもできる。
【0051】
【0046】
例えば、化粧品、医薬部外品および医薬品については、
本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、経口摂取され
所望の部位の皮膚に塗布することにより前述したような
るもの、または塗布されるものとして調製することがで
所定の効果を発揮することができる剤形のもの(皮膚外
きる。特に好適な実施形態として、本発明の発現促進剤
用剤)として製造することが可能である。そのような化
は、フィグラリン遺伝子等の発現促進作用により角質層
粧品の具体例としては、オイル、クリーム、口紅、化粧
中の天然保湿因子の産生量を増加させるための有効成分 20
水、ジェル、パック、口紅、リップクリーム、石鹸、ハ
として、また本発明の産生抑制剤は、角質層中のSCF
ンドソープ、ボディソープ、シャンプー、リンス、トリ
産生細胞によるSCFの産生量を抑制するための有効成
ートメント、ヘアトニック、その他のエアゾール、ロー
分として、食品(栄養機能食品、特定保健用食品といっ
ション、スティック等が挙げられる。また、経皮投与型
た保健機能食品を含む。)、化粧品、医薬部外品(薬用
の医薬品の具体例としては、エアゾール剤、液剤、経皮
化粧品、入浴剤等を含む)、医薬品、その他の製品に配
吸収型製剤、懸濁剤・乳剤、貼付剤、軟膏剤、パップ剤
合して利用することができる。このような実施形態にお
、リニメント剤、ローション剤等が挙げられる。皮膚外
いて、D−グルコピラノシルグリセロールは、発現促進
用型の医薬部外品の具体例としては、上記の化粧品また
剤としての用途と産生抑制剤としての用途のどちらか一
は医薬品と同様の剤形や、入浴剤等が挙げられる。
方のみを目的として配合してもよいし、両方の用途を目
【0052】
的として配合してもよい。
30
一方で、経口で摂取することにより前述したような所定
【0047】
の効果を発揮することができる医薬品および食品を製造
化粧品の場合、例えば、乾燥、紫外線等の外的ストレス
することも可能である。
によって引き起こされる、肌の乾燥、荒れ、シワ、老化
【0053】
等を予防(リスクの低減)または改善する効果を期待す
経口投与型の医薬品(内服薬)の具体例としては、液剤
ることのできる化粧品として製造することができる。ま
、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤・
た、本発明の産生抑制剤を有効成分とする化粧品は、S
乳剤、散剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤、リモナー
CFの異常産生によって色素細胞が異常増殖し、メラニ
デ剤等が挙げられる。経口投与型の医薬部外品の具体例
ン産生が亢進することによって引き起こされる、しみ、
としても、上記の医薬品と同様の剤形が挙げられる。
そばかす、くすみ等を予防または改善することも可能で
ある。
【0054】
40
食品の具体例としては、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野
【0048】
菜のビン詰、缶詰類、コーヒー、紅茶、ココア、緑茶、
医薬品の場合、例えば、アトピー性皮膚炎、乾皮症等に
ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼
代表される乾燥性皮膚疾患のように、角質層の天然保湿
飲料水、合成酒、洋酒などの酒類、パン、ビスケット、
因子の減少やSCFの異常産生、遊離が直接的または間
クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム
接的に症状に関与している疾患を治療または予防するた
、カスタードクリーム、シュークリーム、スポンジケー
めの医薬品として製造することができる。
キ、ドーナツ、チョコレート、グミ、ガム、キャンデー
医薬品の場合はさらに、上記の疾患に加えて尋常性魚鱗
などの各種洋菓子、せんべい、あられ、餅類、あん類、
癬、気管支喘息等を含めた、フィラグリンおよび/また
羊羮、ゼリー、飴玉などの各種和菓子、フラワーペース
はカスパーゼ−14の発現量の低下、あるいはそれらの
ト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペー
遺伝子の異常が直接的または間接的に症状に関与してい 50
スト類、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓、果
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実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、ジャム、マー
とができる。含有量が高すぎる場合は、食感が失われた
マレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食
り、成形することが困難となる。
品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬など
【実施例】
の漬物類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハ
【0058】
ム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、天ぷらなどの
[実施例1]
魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、さきするめ、酢コンブ、
正常ヒト表皮角化細胞(Normal human epidermal kerat
などの各種珍味類、のり、山菜、小魚、するめ、貝など
inocyte: NHEK)を培養プレートに播種し、表皮角化細
で製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、こんぶ
胞増殖培地(Keratinocyte-SFM)を用いて、サブコンフ
巻などのそう菜食品、プリンミックス、ホットケーキミ
ルエントになるまで培養した。続いて、「COSART
ックス、即席しるこ、即席スープなどの即席食品、醤油 10
E−2G」(東洋精糖株式会社)を2.5重量%含有す
、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ふりかけ、マヨ
る前記増殖培地で24時間培養した(処理群)。
ネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、中華の素、天つ
【0059】
ゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレー
リアルタイムRT−PCRによってmRNA発現量を測
ルウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、核酸系調
定するためのキットとして「ライトサイクラ―」(ロシ
味料、複合調味料、みりん、砂糖など各種調味料等が挙
ュダイアノスティック社製)を用いた。このキットのプ
げられる。
ロトコールに従って、処理群の培養細胞からRNAを精
【0055】
製し、それを逆転写してcDNAを合成した。そこに含
このような形態の食品、化粧品、医薬部外品および医薬
まれるフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝
品は、本発明の発現促進剤および/または産生促進剤(
子を、SYBR Green Iキット(ロシュダイアノスティック
すなわちD−グルコピラノシルグリセロール)と各形態 20
社製)を用いてリアルタイムRT−PCRによって増幅
に応じた各種の成分とを配合するようにして、各形態に
し、各対象遺伝子のmRNA発現量を定量した。また、
応じた一般的な方法に従って製造することができる。そ
内部標準とするGAPDH(Glyceraldehyde-3-phospha
れらの製品中のD−グルコピラノシルグリセロールの含
te dehydrogenase)についても、同様の手順でmRNA
有量は、目的とする効果が得られる限り特に限定される
発現量を定量した。
ものではなく、適切な含有量は通常行われるような試験
【0060】
を通じて、製品の形態(剤型)等を考慮しながら適切に
処理群について(対象遺伝子のmRNA発現量)/(G
調節すればよい。特に医薬品の場合は、患者の症状や年
APDHのmRNA発現量)の比率を求め、対象遺伝子
齢等の条件も考慮しながら、1日あたりの適切な投与量
に対する「発現促進率」とした。結果を図2に示す。フ
(有効成分量)を調節し、それに基づいて、1回あたり
ィラグリン遺伝子に対する発現促進率は2.6倍であり
の医薬品中のD−グルコピラノシルグリセロールの含有 30
、カスパーゼ−14遺伝子に対する発現促進率は5.0
量や、1日あたりの投与回数を設定することが適切であ
倍であった。
る。
【0061】
【0056】
以上の結果は、D−グルコピラノシルグリセロールは、
化粧品や経皮投与型の医薬部外品および医薬品のような
フィラグリン遺伝子及びカスパーゼ−14遺伝子の発現
皮膚外用剤の場合、D−グルコピラノシルグリセロール
を促進することができることを示している。このため、
の含有量は、例えば、その皮膚外用剤の全量に対して、
D−グルコピラノシルグリセロールを含有する発現促進
0.01∼50重量%、好ましくは0.1∼30重量%
剤は、角質層における天然保湿因子の産生量を相乗的に
、より好ましくは1∼20重量%の範囲で調節すること
増加させることができる。したがって、本発明の発現促
ができる。含有量が高すぎる場合は、べたつきの原因と
進剤を、食品、化粧品、医薬品等に配合して利用するこ
なり、使用感が悪くなる。そのような化粧品、医薬部外 40
とにより、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14
品または医薬品は、例えば1日あたり1∼3回程度、1
遺伝子の発現促進効果を有する食品、化粧品、医薬品等
2
回につき0.01∼100mg/cm 程度、所望の部
を製造することが可能となる。
位の皮膚に塗布されるものとすることができる。入浴剤
【0062】
も、上記の皮膚外用剤と同程度の効果が得られるような
[実施例2]DJM−1細胞を用いたGMGによるフィ
態様で使用されるものとして調製することができる。
ラグリンの転写誘導試験
【0057】
「COSARTE−2G」(東洋精糖株式会社)を擬似
また、食品の場合、D−グルコピラノシルグリセロール
移動層クロマト分離装置(オルガノ株式会社)に供し、
の含有量は、例えば、その食品の全量に対して、通常0
GMG(グリセリルモノグルコシド、分子量254。式
.01∼40重量%、好ましくは0.1∼20重量%、
(1)の糖縮合度n=1の化合物と、式(2)の糖縮合
より好ましくは0.5∼20重量%の範囲で調節するこ 50
度n=1の化合物との混合物。)が全固形分の99質量
( 10 )
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%以上になるまで精製した。本実施例では、この精製物
地を用いて、37℃、5%CO2 で24時間培養した。
を以下の実験におけるGMGとして用いた。
続いて培養液を、ペニシリンおよびストレプトマイシン
【0063】
のみを含むMEM培地に交換し、上記培養条件でさらに
DJM−1細胞(ヒトケラチノサイト、毛包癌の一種ma
18時間培養した。
lignant trichilemmal cyst由来細胞株、理研バイオリ
18時間後に、ペニシリンおよびストレプトマイシンに
6
ソースセンター)を、1.0×10 cfuになるよう
「COSARTE−2G」(東洋精糖株式会社)を3質
に6ウェルプレートに播種し、10%FBS(Cell Cul
量%加えた培養液に交換した群(I)と、「COSAR
ture Bioscience)ならびにペニシリンおよびストレプ
TE−2G」を加えない培養液に交換した群(II)に
トマイシン(Gibco)を添加したMEM培地(nacalai t
分け、さらに12時間培養した。12時間後にSCF誘
esque)を用いて、37℃、5%CO2 で24時間培養し 10
導剤を添加しないMEM培地(a)と、SCF誘導剤と
た。続いて培養液を、50mMもしくは200mMのグ
してヒトIL−4(10ng/mL)を添加したMEM
リセリンまたは50mMもしくは200mMのGMGを
培地(b)、VIP(1μM)を添加したMEM培地(
添加したMEM培地に交換し、上記培養条件でさらに2
c)、およびIL−4(10ng/mL)+VIP(1
4時間培養した。
μM)を併用して添加したMEM培地(d)に交換し、
【0064】
さらに16時間培養した。16時間後に培養上清を回収
次に、上記培養細胞をPBSで洗い、ISOGENE(ニッポ
し、SCFの濃度をELISA法で測定した。なお、試
ン・ジーン)を用いてRNAを単離した。このRNA1
験は各群について3反復行い(n=3)、SCF濃度の
μgをテンプレートとし、Transcriptor First Strand
測定値はその平均値±標準偏差である。
cDNA Synthesis Kit(Roche)を用いて逆転写PCRに
【0067】
よりcDNAを合成した。そしてLight Cycler 480(Ro 20
結果を図4に示す。まず、COSARTE−2Gを添加
che)を用いて、リアルタイムPCRにより18srR
しない場合(I)、培養液中のSCF濃度は、SCF誘
NAとフィラグリンのmRNA量を測定した。このリア
導剤無添加群(I−a;28.5±7.3pg/mL)
ルタイムPCRで用いたプライマーの配列は下記の通り
と比べて、IL−4添加群(I−b;49.6±3.6
である。
pg/mL)では、有意に高い値を示した(2群間のt
hFLG1 Fw(フィラグリン遺伝子用フォワードプライマー
−test:P<0.05)。同じくCOSARTE−
)
2Gを添加しなかった場合、IL−4+VIP(Vasoac
ggcaaatcctgaagaatcca(配列番号1)
tive Intestinal Peptide)添加群(I−d)では、I
hFLG1 Rv(フィラグリン遺伝子用リバースプライマー)
L−4添加群(I−b)と同程度のSCF値を示したが
tgctttctgtgcttgtgtcc(配列番号2)
、SCF誘導剤無添加群(I−a)との間で有意な差は
18srRNA Fw(18srRNA用フォワードプライマー) 30
認められなかった。VIP添加群(I−c)も、SCF
actcaacacgggaaacctca(配列番号3)
誘導剤無添加群(I−a)に比べて10%程度高い値を
18srRNA Rv(18srRNA用リバースプライマー)
示したが有意な差は認められなかった。
aaccagacaaatcgctccac(配列番号4)
【0068】
【0065】
続いて、SCF誘導剤無添加群(a)同士の間で、CO
上記の測定結果から、18srRNAの量で標準化した
SARTE−2Gを添加しなかった場合(I)と添加し
、フィラグリンの相対的なmRNA量を求めた。結果を
た場合(II)を比較すると、COSARTE−2G添
図3に示す。この結果によっても示されるように、D−
加群(II−a)はCOSARTE−2G無添加群(I
グルコピラノシルグリセロール(GMG)についてフィ
−a)よりも約40%程度低い値を示したが、有意な差
ラグリン遺伝子等の発現促進効果が認められる一方、グ
は認められなかった。ところが、IL−4添加群(b)
リセリンにはそのような効果は認められない。COSA 40
同士の間で比較すると、COSARTE−2G添加群(
RTE−2Gを用いた実施例1の結果(および次に述べ
II−b)はCOSARTE−2G無添加群(I−b)
る実施例3の結果)は、当該製品に含まれるD−グルコ
に対して約37%の有意に低い値を示した。VIP添加
ピラノシルグリセロールが有効成分として作用したこと
群(c)同士の間、IL−4+VIP添加群(d)同士
に基づいていることは明らかである。
の間それぞれで比較しても、COSARTE−2G添加
【0066】
群(I−c,I−d)は無添加群(II−c,II−d
[実施例3]DJM−1細胞を用いたCOSARTE−
)よりも低い値を示したが有意な差は認められなかった
2GによるSCFの産生抑制試験
。
5
DJM−1細胞を、1.0×10 cfuになるように
【0069】
24ウェルプレートに播種し、10%FBSならびにペ
[3−2]COSARTE−2Gの添加による細胞増殖
ニシリンおよびストレプトマイシンを添加したMEM培 50
への影響を調べる目的で、WST−1試薬を用いて、生
( 11 )
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細胞に由来するWST−1試薬の吸光度値を測定した。
て有意に低い値を示した。
結果を図5に示す。IL−4添加群(b)同士の間で比
【0071】
較すると、COSARTE−2G添加群(I−b;1.
以上の結果より、COSARTE−2Gは、DJM−1
820±0.058)とCOSARTE−2G無添加群
細胞(ヒトケラチノサイト培養細胞株)おいて、IL−
(II−b;1.798±0.037)の比較でほぼ同
4刺激により誘導されるSCFの産生量の上昇を抑制す
程度であったであった。SCF誘導剤無添加群(a)同
る効果を示すことが明らかになった。また、VIP刺激
士、VIP添加群(c)同士およびIL−4+VIP添
によるSCF産生上昇やIL−4とVIPの両方の刺激
加群(d)同士においては、COSARTE−2G添加
によるSCF産生上昇に対しても、それらを抑制し得る
群(II−a,II−c,II−d)はそれぞれのCO
ことが示唆された。
SARTE−2G無添加群(I−a,I−c,I−d) 10
さらに、DJM−1細胞が無刺激のときにも、SCFの
に比べて5%から7.7%の低い値を示したが有意な差
産生は抑制されうることが示唆された。
は認められなかった。
【配列表フリーテキスト】
【0070】
【0072】
[3−3]前記[3−1]で測定したSCF濃度を前記
配列番号1:フィラグリン遺伝子用フォワードプライマ
[3−2]で測定したWST−1の吸光度値で補正した
ー
値を算出した。結果を図6に示す。補正を行っていない
配列番号2:フィラグリン遺伝子用リバースプライマー
図4と同様の傾向が見られ、IL−4添加群(a)同士
配列番号3:18srRNA用フォワードプライマー
の比較において、COSARTE−2G添加群(II−
配列番号4:18srRNA用リバースプライマー
a)はCOSARTE−2G無添加群(I−a)に比べ
【図1】
【図2】
【図3】
( 12 )
【図4】
JP
2015-166340
A
2015.9.24
( 13 )
【配列表】
2015166340000001.app
JP
2015-166340
A
2015.9.24
( 14 )
JP
2015-166340
A
2015.9.24
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61Q
19/08
(2006.01)
A61Q
19/08
A23L
1/30
(2006.01)
A23L
1/30
Z
C12N
15/09
(2006.01)
C12N
15/00
ZNAA
(2010.01)
C12N
5/00
202D
C12N
5/074
Fターム(参考) 4B065 AA93X AC12
AC20
BA16
BB14
CA27
4C083 AD201 AD202 BB51
CC02
EE12
EE13
4C086 AA01
MA01
MA04
MA52
AA02
EA04
CA41
CA44
CA46
MA63
ZA89
ZC41
CA50
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