...

Lambert 正角円錐図法及びその極限としての平射図法の

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

Lambert 正角円錐図法及びその極限としての平射図法の
Lambert 正角円錐図法及びその極限としての平射図法の
座標換算式に係る包括的導出に関する研究
実施期間
平成 25 年度
応用地理部企画課
河瀬
和重
1. はじめに
国土地理院発行の 50 万分 1 地方図及び 100 万分 1 国際図の地図投影法として採用されている
Lambert 正角円錐図法においては,その座標換算式の導出過程について,そもそも日本語で参照でき
る書物が希少である上に,地球を真球とみなした場合と回転楕円体とみなした場合とで導出の解説が
別々になっていたり,計算機が十分発達していない時代における 級数展開計算の工夫の名残か,導出
の途中段階において,存在する意味合いが判然としない中間変数(「余緯度」など)が複数登場したり
するなど,その全体像を理解するには相当な忍耐力を必要とする状況となっている.
本研究では,正則関数による等角写像を主とした初歩的な複素関数論に立ち入る代わりに, 極限値
の評価や縮尺係数の極値を求めること 等を除いては,煩雑な微積分演算を極力持ち出すことなく,若
干の幾何学的考察を必要とする程度の範囲内で俯瞰的な整理を行い,当該図法の座標換算式の理解促
進に資することを目指した.
2. 研究内容
2 標準緯線の場合の Lambert 正角円錐図法を議論の出発点として,1 標準緯線の場合及び平射図法を
その特別のケースとして認識しつつ,全ての図法について“写像を規定する正則関数として‘指数関
数’を採用した,Mercator 座標からの等角写像”として整理できることを示した上で,これら一連の
図法の座標換算式を包括的に導出することを試みた.座標換算式の導出に当たっては,極力新しい概
念を導入することなく,既知概念の組合せにより理解がなされるように進めていくことを心掛けた.
3. 得られた成果
3.1 議論展開の準備
まず準備として,回転楕円体面を通常の Mercator 投影で平面に等角投影する.その際に緯度
長緯度
に置き換わる.
は等
の具体的表式は(この段階ばかりは積分演算の登場を甘受せざるを
得ないが),
と示される.ただし, は回転楕円体の離心率を表 す.また,
及び
ける子午線曲率半径及び卯酉線曲率半径を指し,回転楕円体の赤道半径を
はそれぞれ緯度
にお
とするとき,それぞれ
,
と表される.
なお,地球を真球とみなす場合は,以後に示される各表式において
と設定することにより,
そのまま座標換算式を評価することが可能であり,特段煩雑な取扱いも必要とせず簡略化された結果
が得られる.すなわち,
,
として取り扱えばよい.
- 80 -
このとき,中央経線からの経度差
は虚数単位)と定義すると,
と等長緯度
とを組み合わせた複素座標を
から別の複素座標 :
(ただし
への写像が,ある正則関数
を用いて
と表される場合には,当該写像が等角写像となるという事実については,複素関数論の教え
るところである.
3.2 等角写像を規定する正則関数の設定
3.1 の前提の下で,特に Lambert 正角円錐図法で投影した複素座標
り,極点から赤道へ向かう方向を正方向とした中央経線を
展開した際の中心角と 4 直角との比の値を
採用した場合の等角写像:
ここで,複素座標
,
ら緯度
を絶対値
(座標原点を極点にと
軸に設定する)の場合は,円錐を扇形に
と定義したとき,正則関数
として特に“指数関数”を
に該当することとなる.
及び偏角
の極形式表示:
という対応となるが,幾何学的には,
で表したとき,
は写像された円錐上における極点か
までの母線長に, は写像された円錐を展開した扇形における,中央経線からの中心角に相
当することとなる.
以下に示す各図法は,いずれも Mercator 座標からの前記指数関数型の等角写像に帰着され,1 標準
緯線の場合は 2 標準緯線の 2 つの緯度が一致した特殊な場合として理解することができる.また,前
述の比の値
は回転楕円体に当てはめようとする円錐の“尖り具合”にも対応しており,そのとり得
る範囲としては
であるが,
の場合は 3.5 で言及するとおり,極点を地図主点とする平
射図法に相当することが示される.
3.3 Lambert 正角円錐図法(2 標準緯線の場合)
回転楕円体において,2 つの標準緯度をそれぞれ
平行圏の半径は,3.1 で導入した
及び
と設定したとき,当該標準緯度における
を用いて,それぞれ
及び
と表すことが
できる(Meusnier の定理).このとき,投影対象となる回転楕円体と投影先として当てはめようとす
る円錐との幾何学的関係から,円錐の頂点から回転楕円体の平行圏に至る母線長と当該平行圏の半径
との比は一定であり,その値は 3.2 で定義した
に他ならないことが初等幾何の範囲で示される.す
なわち,
が分かる.
ここまでの条件下で, を具体的に求めるために,3.2 で設定した
について
と仮置きし,
と変形する(
のとき確かに
を満たしている).そうすると,上式で
を満たすはずであるから,
が要求され,これから
- 81 -
としたとき
が得られる.最終的に,座標換算式は標準緯度
,
及び
が与えられれば,
,
と求められる.
なお,“指数関数”という,投影をつかさどる正則関数の形の簡単さから,縮尺係数
も非常に簡
単に(一応微分演算が入るが“微分演算”と言うに値しないほどの演算しか用いることなく) 導出で
きる.すなわち,
の定義から,
が導かれ,幾何学的考察からも当然のことながら,
は経度差
には依存せず,緯度
のみに依存す
ることが式の上からも見て取れる.また,Lambert 正角円錐図法についての,2 つの標準緯線上におけ
る縮尺係数に関してよく知られた性質である ,
という事実についても容易に確認す
ることができるであろう.
さらに,縮尺係数
は 2 つの標準緯線に挟まれた緯度帯内のある緯度において極小値をとることが
知られている.当該緯度
は,
の
についての微分係数を
とする条件から求められるわけで
あるが,この微分係数は比較的容易に求めることができる.すなわち,3.1 で導入した
び
,
及
を媒介として,
,
であることを用いると,
となることから,結局
が縮尺係数
の極小値を与える緯度に相当することが分かる.
3.4 Lambert 正角円錐図法(1 標準緯線の場合)
1 標準緯線の場合は,3.3 の議論において
とすることで,
(
を取っても良いが幾何学的考察からも)
についての前述式の極限
となり,座標換算式は
,
,
と整理される.
ここで,前段の考察を勘案すれば,3.3 において微分演算にて求めた 2 標準緯線の場合における縮
尺係数の極小値を与える緯度
は,幾何学的には次のように解釈することができるであろう:すな
わち,3.2 において言及した如く,回転楕円体に当てはめた円錐の“尖り具合”に相当する
の値を一
定に保ちつつ当該円錐を徐々に拡大していった場合,最後の最後まで 当該円錐内部に取り込まれるこ
となく,最終的には当該円錐と接する (1 標準緯線タイプとなる)こととなる回転楕円体の平行圏に
相当する緯度こそが,当該円錐を元の大きさに戻し たときの縮尺係数の極小値を与える 緯度に他なら
ず,当該緯度は前段考察の類比から
を満たす緯度
- 82 -
である,ということになる.
3.5 平射図法
平射図法は,3.4 において得られた各式における
すなわち
の極限(幾何学的には円
錐の笠が限りなく平たくなった状態)として 解釈することができ,実際に当該各式の極限を取ること
により,
,
,
,
が得られる.
4. 結論
Lambert 正角円錐図法及び平射図法 の 2 種類の正角図法について,国土地理院発行の 2 万 5 千分 1
地形図や平面直角座標系の投影法として採用されている Gauss-Krüger 図法と同様に,Mercator 座標を
議論の出発点として考察することが可能であることが 確認され,当該 2 種類の正角図法に対しては,
Mercator 座標を媒介とした,比較的馴染み深い“指数関数”という同系統の正則関数による等角写像
として,包括的な理解ができるようになった.それとともに,上記の前提に立てば,比較的簡単な幾
何学的考察と若干の極限値計算でこれらの座標換算式が 系統的に導出できることが判明した.
併せて,導出された座標換算式は,今日の計算機環境においては多くのプログラミング言語処理系
で組み込まれている数学関数で簡潔に構成されており,計算機処理に対して親和性の高いものである
ことが分かった.
参考文献
吉田洋一(1965):函数論 第 2 版,岩波書店.
【参考】1 標準緯線表式での
における
の極限値について
- 83 -
地球地図第 3 版整備のための技術開発(第 2 年次)
実施期間
平成 24 年度~平成 26 年度
応用地理部環境地理課
須賀
正樹
安藤
暁史
鵜生川太郎
齋藤
俊信
山田
晃子
植田
摩耶
山崎
都子
1. はじめに
地 球 地 図 プ ロ ジ ェ ク ト は ,地 球 温 暖 化 等 地 球 規 模 の 課 題 に 適 切 に 対 処 す る た め の 基 盤 的 な 地
理 空 間 情 報 で あ る 地 球 地 図 を , 世 界 各 国 ・ 地 域 の 国 家 地 図 作 成 機 関 ( National Geospatial
Information Authority: NGIA ) が 協 働 し て 整 備 す る 国 際 プ ロ ジ ェ ク ト で あ る . 平 成 26 年 3 月 現
在 , 世 界 183 の 国 と 地 域 が 本 プ ロ ジ ェ ク ト に 参 加 し て い る .
国 土 地 理 院 は , 日 本 の NGIA と し て だ け で は な く , 地 球 地 図 国 際 運 営 委 員 会 ( International
Steering Committee for Global Mapping: ISCGM )事 務 局 と し て ,各 国 NGIA 向 け に 地 球 地 図 デ ー
タ作成ツールの整備・提供を行うなどプロジェクト推進における中心的役割を果たしている.
こ れ ま で の 取 組 に よ り 地 球 地 図 ベクトルデータ作成ツールが一通り整備された一方で ,地球地図ラ
スタデータ作成ツールは必ずしも充実しておらず,利用しやすいツールが求められている .
2. 実施内容
今回の開発(平成 24 年度~25 年度)では,各国 NGIA における地球地図ラスタデータ整備の負担
軽減を目的に,市販のリモートセンシングソフトウェアの多くに実装されている地球地図ラスタデー
タ作成に 必要な 機能を , インター ネット から無 償 で入手可 能な オ ープン ソ ースソフ トウェ ア である
GRASS GIS で利用できるように,必要なスクリプトを構築し,地球地図ラスタ開発ツール(Global Map
Raster Development tool : GMRD)として整備した.また,ラスタデータ作成に慣れていない作業者で
も使用できるように,操作説明書等の整備も行った.
3. 得られた成果
今回開発したツール・操作説明書等(サンプルデータ・動画によるチュートリアル も含む.)の特長
は下記の通りである.
① 地球地図ラスタ開発ツール(GMRD)
図-1
地球地図ラスタ開発ツールの機能模式図
- 84 -
(概要)

MODIS 等の衛星画像を用いて地球地図仕様に準じた土地被覆データ及び植生(樹木被覆率)デ
ータが作成可能.

GRASS GIS 上で動作するシェルスクリ プト群から構成され,コマンドを入力することでツール
の各機能を実行.
(基本処理)

整備範囲(北限・南限・西限・東限)の緯度経度 を入力することで,地球地図ラスタデータ作
成 に 使 用 す る 衛 星 画 像 ( Terra/Aqua の MODIS セ ン サ に よ る 反 射 率 デ ー タ ( MCD43A4 及 び
MCD43B4))を,指定した期間の前後1年も含めて 3 年分自動的にダウンロード.
(ダウンロー
ドは無料で可能.)

MODIS データ中の雲の箇所(品質管理(Quality Control)ファイル(MCD43A2 及び MCD43B2)
で雲と判定されているピクセル)については,前後年及び前後 96 日間のデータから内挿により
反射率データを補間して雲除去を行うことが可能.この際,補間の順序及び前後 96 日間のデー
タの使用・不使用を変更可能.

MODIS データの他,Landsat-8 の OLI センサや Suomi NPP の VIIRS センサによる反射率データ
もインポート可能.
(土地被覆分類及び樹木被覆率推定)

Google Earth 等で作成した KML 形式の教師データを読み込み可能.

土地被覆分類では最尤法とディシジョンツリー (決定木)法の 2 通りの作成方法が選択可能.
(データの検証)

整備範囲内にランダムな検証点を発生させる機能のほか ,別途作成したグランドトゥルース情
報を検証点として使用し,土地被覆分類及び樹木被覆推定の結果を分析することが 可能.
② 操作説明書等
(操作説明書本体)

土地被覆分類及び樹木被覆率推定の標準的な操作手順を,実際の手順に沿って記載.

各作業ステップにおいて,入出力データや GRASS 内部に保持されているファイル等を明記.

操作上の要注意項目については,FAQ を整備.
(サンプルデータ)

操作説明書に記載されている操作手順(サンプルスクリプト)で動作するサンプルデータを整
備.GMRD の各スクリプトの仕様や動作の理解の補助とする.
(動画によるチュートリアル)

GRASS GIS の GUI を使用する部分等,操作手順を視覚的に示す必要がある箇所について操作説
明書を動画によって補足.
4. 結論
整備した地球地図ラスタ開発ツール(GMRD)は,操作説明書等とともに各国 NGIA に配布する予
定であり,開発途上国においても地球地図仕様に沿ったラスタデータの整備が 行われることが期待さ
れる.今後も国土地理院は ISCGM 事務局として,地球地図整備の着実な実施,データの品質向上及
び整合性確保のため,引き続き途上国に対する技術支援を進めていく .
- 85 -
地球観測衛星データの受信・取得,処理・解析(第 1 年次)
実施期間
平成 25 年度~平成 27 年度
応用地理部環境地理課
三谷
麻衣
鵜生川太郎
安藤
暁史
吉高神真利子
1. はじめに
国土地理院では,広域的な地球観測データを効率的に処理・解析する技術を開発し, 土地被覆の変
化を把握して電子国土基本図の植生界更新等 の実利用に資することを目的に,平成 25 年 8 月に東海大
学と「地球観測衛星データの受信・取得,処理・解析に関する共同研究」協定書を締結した .
2. 研究内容
本共同研究において,平成 25 年度は以下の事項を行った.
①地球観測衛星データを用いた地理院地図背景データ作成
②全国植生指標データ(250m)の地理院地図からの提供
③衛星が捉えた国内外の環境変化と災害
④グラウンドトゥルースデータの補完
3. 得られた成果
①地球観測衛星データを用いた地理院地図背景データ作成
平成 25 年に打ち上げられ,同年夏から利用できるようになった Landsat-8(処理レベル L1GT)のデ
ータを用いて,日本全国のモザイク画像を試作した(図-1).今回,モザイク画像の試作に使用したデ
ータは,2013 年の秋を主とした雲の少ない画像であり,画像合成はトゥルーカラーを採用した.
地理院地図の背景用衛星画像として利用することを目指していることから,画像のタイル化の方法
についても併せて検討を行った.
図-1
試作中のモザイク画像の一例
- 86 -
②全国植生指標データ(250m)の地理院地図からの提供
国土地理院ホームページから raw 形式で公開している,2004 年 4 月~2012 年 12 月の月ごとの全国
植生指標データ(250m)について画像化を行い,地理院地図からの提供を行うための地理院タイルを
作成した(図-2).成果については平成 26 年 2 月に地理院地図にて公開した.
画像化に当たって植生指標データの着色の検討を行い ,一般的にとりうる植生指標( NDVI)値で季
節変化がわかりやすく,植生指標が高い時に は植物を連想させる緑色となる色とした.
2011年1月
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
112
113
114
115
116
117
118
119
120
121
122
123
124
125
126
127
128
129
130
131
132
133
134
135
136
137
138
139
140
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
153
154
155
156
157
158
159
160
161
162
163
164
165
166
167
168
169
170
171
172
173
174
175
176
177
178
179
180
181
182
183
184
185
186
187
188
189
190
191
192
193
194
195
196
197
198
199
200
201
202
203
204
205
206
207
208
209
210
211
212
213
214
215
216
217
218
219
220
221
222
223
224
225
226
227
228
229
230
231
232
233
234
235
236
237
238
239
240
241
242
243
244
245
246
247
248
249
250
251
252
253
254
255
2011年4月
2011年10月
2011年7月
図-2
0
80
100
一般的に
とりうるNDVI値
150
200
計算式的に
ありえない値
255
着色した全国植生指標データの例
③衛星が捉えた国内外の環境変化と災害
国内外の環境変化や災害について,必要に応じて地球観測衛星データによるモニタリングを行うこ
ととし,平成 25 年 11 月に開始した西之島付近噴火活動について, 2013 年 12 月以降,Landsat-8 画像
によるモニタリングを行った.
Landsat-8 が西之島上空を通過した際(パス 105),東海大学からほぼリアルタイムで画像を入手し,
観測データに雲が少ない場合は,トゥルーカラー画像,パンシャープン画像などを作成 するとともに
それらについて分析を行った(図-3).
図-3
パンシャープン画像(左:2013 年 12 月 24 日
- 87 -
右:2014 年 2 月 26 日)
④グラウンドトゥルースデータの補完
グラウンドトゥルース(以下「GT」という.)データは,土地被覆分類を行う際の教師データとして
使用するほか,検証用データとしても使用できる重要なデータである.これまで整備を進めていた GT
データについて整理を行い,土地被覆分類の精度が低い項目と,配置密度の薄い地域を重点に,現地
の状況確認を行い,補完を行った.また,沖縄地区において,主に畑・森林の GT データ(緯度・経
度・周囲の状況・現地写真等)を新たに取得した.
4. 結論
地球観測衛星データ(Landsat-8 のデータ)を用いて,地理院地図の背景用データ(衛星画像)を試
作した.今後,正式な画像の整備や提供に向けて,雲の除去,シーン間の色調の補正などの手法の改
善,海部の表現方法,作業手法のマニュアル化などについて検討していく必要がある.
全国植生指標データ(250m)については,画像化を行い,地理院地図からの提供を開始した(図-4).
他の地理空間情報と重ね合わせた表示や,拡大や縮小ができることから,今まで以上に植生の変化や
分布状況等を地理的に把握することが可能となった.
西之島付近噴火活動については,観測画像や分析結果をホームページから公開したほか,パンシャ
ープン画像の地理院地図からの提供も行った.西之島付近噴火活動等,衛星が捉えた国内外の環境変
化と災害については,今後もモニタリングを行っていく.
GT データについては,リモートセンシング技術による土地被覆分類データ作成のための教師デー
タ・検証データとして,今後もデータの維持・管理を進めていく計画である.
図-4
地理院地図で表示した 2012 年 8 月の全国植生指標データ(250m)
- 88 -
- 89 -
航空レーザ測量による活断層調査の高度化に関する研究開発(第 5 年次)
実施期間
平成 21 年度~平成 25 年度
地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室
岩橋
純子
応用地理部防災地理課
中澤
尚
1. はじめに
防災地理課では,都市圏活断層図等によって活断層の地図の整備を進めている.活断層帯情報の作
成は,国土地理院の基本測量に関する長期計画( H21.6.1 改訂)
「防災基礎情報の整備・更新」に位置
づけられている.平成 26 年 3 月現在,都市圏活断層図は 163 面が整備されている.
本研究は,国土地理院研究開発基本計画(防災に関する地盤変動・地形情報の抽出の高度化に関す
る研究開発)の1つとして,活断層の位置精度の向上を目的として行っ たものである.航空レーザ測
量を面的な微地形判読に用いて,わかりやすい活断層地形の表現手法 を検討すると共に,写真判読で
特定の難しい地域の活断層を抽出するための手法の研究 を目的としている.
本研究は当初,補正予算による岩手・宮城内陸地震被災地の詳細活断層図(国土地理院, 2009)の
取りまとめ作業からスタートした.平成 22 年度以降は,国土地理院が保有する航空レーザ測量データ
を利用して, DEM の色付け,段彩,陰影等の表現手法を検討し ,余色立体図等を都市圏活断層図の
委員会や現地説明会に提供した.平成 24 年度は,前年に起きた平成 23 年4月 11 日福島県浜通りの地
震(M7.0)を受け,国土地理院が計測した航空レーザ測量データを用い,リニアメントの判読と GIS
データ作成を行った.本年度は,今までの研究を振り返ってま とめを行った.なお研究の各年度の詳
細については,参考文献に挙げた時報の他,平成 21 年度~24 年度までの調査研究年報に掲載されて
いる.
2. 平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震 1:25,000 詳細活断層図
平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震による地形の変状や活断層について ,大学の研究者 8 名
(委員長:中田高広島工大教授(当時),活断層関係取りまとめ:鈴木康弘名古屋大教授 ,地すべり関
係取りまとめ:八木浩司山形大教授) を委員に迎え,詳細活断層図として作成・公表した(国土地理
院,2009).本図は,表図については,岩手・宮城内陸地震による地表の変形,断層・割れ目・地すべ
り・斜面崩壊等を 2 万 5 千分 1 の地図上に表示し,裏図は主に解説面として,地震や被害の概要説明
と地震による地表変形についての解説が記載されている.
調査にあたっては,検討会と現地調査が行われた.被災地域の詳細な航空レーザ計測もあわせて行
われた.また,地震前後の航空レーザデータの差分による変位の抽出が行われ,市野々原付近で2m
の隆起が確認された.これは,電子基準点(栗駒2)の変位と調和的であった.
3. 都市圏活断層図への貢献
平成 22 年度から,都市圏活断層図の事業への貢献のため,全国活断層帯情報整備検討委員会(都市
圏活断層図の作成委員会;岡田篤正委員長ほか大学等の研究者十数名で構成)に ,クロスチェックの
資料や解説書の図として,航空レーザ測量 5mDEM から作成した画像処理図を提供した.長井盆地西
縁断層帯をはじめ,能代・双葉断層帯など都市圏活断層図の作成区域 について,余色立体図・陰影段
彩図・傾斜図等を作成したものである.これらの図は,都市圏活断層図原稿図のクロスチェックにお
- 90 -
いて,先生方が地域を俯瞰的に観察するのに使われた他 ,解説書の図として使用された (図-1).
表-1 は,空中写真及び航空レーザ測量 DEM に
よる地形判読の特徴の比較である.航空レーザ測
量の DEM 画像には,表-1 のように,空中写真に
はない優れた特性・利点があり,空中写真判読を
サポートできる.シームレスに広範囲を観察でき
ることや,平野部の密集市街地について,建物の
除去・凹凸の強調の上,地形を観察できること,
GIS への導入が容易なことは,大きな利点である.
DEM は数値データであるため,倍率を加えること
によって,地形の立体感を,空中写真の実体視以
上に強調でき,さらに,単純な定数倍だけでなく,
標高値の対数から図を作成することによって,平
地の凹凸を大きく強調できる.解像度が問題だが,
解像度5mでも,DEM から作成した画像は,地理
調査にしばしば利用される2万分1のモノクロ写
真程度の判読性能があり,実用に耐えると考えら
れる(岩橋ほか,2011).
航空レーザ DEM から作成された余色立体図等
は,都市圏活断層図公表に伴う自治体への説明会
図 -1 関 東 地 方 北 縁 断 層 帯 周 辺 の 航 空 レ ー ザ 測 量
DEM による傾斜図(熊原,2013)
で展示し,好評を博した.長井盆地西縁断層帯に
ついては,後に県主催の市民向け展示会でも,国
土地理院が作成した余色立体図のパネルが使用さ
れた(図-2).
表-1
空中写真及び航空レーザ測量 DEM による地形判読の特徴の比較(岩橋ほか,2011)
- 91 -
図-2
展示会の様子を伝える山形新聞の記事(2012.1.11)
4. いわき市南部の航空レーザ測量データを用いた 変動地形の抽出
平成 24 年度に,
『東日本大震災からの復旧・復興及び防災対策のための高精度標高データ』として 国
土地理院が計測した航空レーザ測量 2mDEM を用いて余色立体図と傾斜図を作成し,航空レーザ測量
時に撮影された写真地図データ(デジタルオルソフォト;解像度 50cm)と併せてリニアメントの判読
を行った.調査対象地域は,平成 23 年4月 11 日福島県浜通りの地震(M7.0)で地表地震断層が現れ
たいわき市南部を中心とする,湯の岳断層・井戸沢断層を含む約 826km2 である.判読作業はパソコ
ン画面上で GIS ソフトを用いて,既存の活断層図等と重ね合わせて作業 し,画面上で直接ラインデー
タを描きこみ shape ファイルを作成した.
本研究で用いた航空レーザ測量データでは,樹林下の 地表地震断層が非常に明瞭に観察できた(図
-3).現地調査によって報告されていた部分だけでなく ,山間部に延びた地表地震断層を追跡できた.
田圃では DEM から変位を計測したが,変位量や落ちの方向は現地調査報告と調和的だった. なお,
判読の注意点として,航跡図やコー
スの継ぎ目位置に,コース間格差に
よる段差(コース間格差は規定によ
り±30cm ま で認 めら れ ている )が
見られ,画像処理により陰影が増幅
されるため,注意が必要である事が
分かった.
図 -3
いわき市塩ノ平付近の空中写真
(左)と国土地理院が撮影した航空レー
ザ測 量 2mDEM に よる 傾 斜段彩 図 (右)
(岩橋ほか,2011)
- 92 -
5. 結論
本研究の成果は,研究発表としては,国土地理院時報に2編をまとめて掲載している ほか,地球惑
星連合 2011 年大会等で3件ポスター発表を行った.
事業に反映された研究成果は次の通りである.平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震 1:25,000
詳細活断層図を作成した他,都市圏活断層図の活断層判読資料の一つとして航空レーザ測量 5mDEM
の余色立体図等を平成 22 年度以降利用した.断層帯全体を航空レーザデータがカバーする 1:25,000
都市圏活断層図「左沢」「長井」「米沢」 については,断層帯解説書の付図として,航空レーザ測量に
よる DEM の陰影を配した活断層マップをホームページに掲載し,無償でダウンロードができるよう
な形にしている.
なお,本研究の成果ではないが,全国活断層帯情報整備検討委員会の 委員を勤められている研究者
が,近年,国土地理院の基盤地図情報として公開されている数値標高モデル( 5 m メッシュおよび 10
m メッシュ)すべてを用いて余色立体図を作成し,GIS 上で変動地形学的な地形判読を行ったところ,
これまで認められていない新期変動地形を新たに多数見いだした との報告を行っている(後藤・杉戸,
2012).
以上のように,航空レーザ測量データを活断層調査に用いる事は ,現在では普遍的な手法となりつ
つあり,本研究は十分に役割を果たしたと考えられる.
参考文献
後藤秀昭・杉戸信彦(2012):数値標高モデルのステレオ画像を用いた活断層地形判読.E-journal GEO vol.
7(2),197-213.https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/7/2/7_197/_pdf
(accessed 21 Feb. 2014)
岩橋純子・佐藤忠・内川講二・小野康・下地恒明・星野実 (2011):航空レーザ測量の DEM から作成
した余色立体図等を用いた変動地形の観察.国土地理院時報, 121,143-155.http://www.gsi.go.jp/
common/000062987.pdf
(accessed 21 Feb. 2014)
国土地理院(2009):平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震 1:25,000 詳細活断層図(活断層・地形分類
及び地形の変状).国土地理院技術資料 D・1-No.541.
熊原康弘(2013):1:25,000 都市圏活断層図関東平野北西縁断層帯とその周辺「高崎 」解説書.
国土地理院技術資料 D1-No.644,19p.
星野実・鈴木義宜・岩橋純子・吉武勝宏・田中庸夫( 2010):平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震
1:25000 詳細活断層図(活断層・地形分類及び地形の変状)について,国土地理院時報, 121 集,
29-37. http://www.gsi.go.jp/common/000060428.pdf
(accessed 21 Feb. 2014)
- 93 -
小縮尺地図データ刊行のための転位・描画用データ作成手法の確立
実施期間
平成 25 年度
小縮尺データ整備プロジェクトチーム
波多江 萌
下山 泰志
関谷 洋史
吉松 直貴
島田 久嗣
野口 真弓
本田 義和
宮本 歩
平家 護
1. はじめに
現在,国土地理院における広域地図情報 200000(以下「広域地図情報」という.)は,地理院地図
の他に大規模災害等に対応するための広域災害対策図を出力するための データとしても活用されてい
る.
広域地図情報は 20 万分 1 地勢図(以下「地勢図」という.)をベクトル化することにより作成され
ており,道路や鉄道などの地物の転位が行われているため,読図性は優れているが, 2 万 5 千分 1 地
形図やその後継の電子国土基本図の位置精度が保持されていなかった.そのため,地理院地図等に代
表される地図情報のデジタル化が普及する中で,高い 位置精度で作成されたデータと重ね合わせた場
合,位置関係にずれが生じ,ユーザーにとっては使いにくい側面があった.こうした状況を踏まえ,
正確な位置情報をもったデータを提供していくことを目的として,電子国土基本図 (地図情報)を基
図とした 25000 レベルの位置精度を保った新たな 20 万レベルの小縮尺地図用の DB を作成する手法の
検討を行った.
また,小縮尺データを利用して,今後刊行が予定されている電子地形図 20 万の表現についても検討
を行った.表現における基本的な方針としては ,ユーザーに使いやすいものとするため,従来の地図
等とほぼ同様の表現とすることが望ま しい.そのため,必要最低限の範囲で転位編集を行ったデータ
も作成し,電子地形図 20 万における基本的な転位編集作業の考え方についても取りまとめを行った .
2. 小縮尺 DB の構築
小縮尺 DB は,主に電子国土基本図(地図情報)のデータを用いて,地物の取捨選択や間引きを行
うことにより電子地形図 20 万及び地理院地図用タイル画像(L12,13,14)を作成することを目的と
して整備した新たな小縮尺地図用の DB である.DB の構築にあたっては,地物の輻輳を避けるために
以下の方針で取捨選択,間引きを行った.
2.1 取得地物の取捨選択
小縮尺 DB で取得する地物については,既存の広域地図情報と同様の地物を取得することとした.
これにあたっては,電子国土基本図(地図情報)からの取得を基本とするが,広域地図情報から取得
することが適切と考えられる以下の地物については,広域地図情報から取得した. 取得した地物の一
覧を表1に示す.
(1)電子国土基本図(地図情報)での取得項目と表示上の一致を問わず,広域地図情報から取得する
ことで調整を省ける地物(ex.注記)
(2)電子国土基本図(地図情報)では取得されておらず,広域地図情報のみで取得されている地物(ex.
工場)
(3)電子国土基本図(地図情報)のデータでは表現が細かくなりすぎる地物 (ex.等高線)
- 94 -
表-1
小縮尺 DB で取得する地物一覧
2.2 地物の属性項目による間引き
2.1 で取得した地物について,地物の輻輳を避けるため,要素数が多いものについては間引きを行
った.
(1)道路中心線
地理院地図タイル画像における適切な道路密度と道路ネットワーク を保持する観点から,高速自
動車国道・国道・都道府県道・有料一般道に加えて,表示限界縮尺レベルが 25000 以上であり,
かつ幅員区分が 3m以上の一般道を取得した.
(2)水涯線
国土数値情報(河川)で 1 級河川及び 2 級河川に指定されているものを取得した.
(3)土地利用記号・建物記号
要素数の多い田や畑,神社,寺院等については,広域地図情報の近傍にある同一記号を取得し,
個数を調整した.
3. 電子地形図 20 万のデータ仕様及び描画について
電子地形図 20 万は,基本的に小縮尺 DB のデータを使用して作成する.描画については,地勢図と
電子地形図 25000 の両方の描画表現を踏襲することとした. また,小縮尺 DB をそのまま使用するこ
とで電子地形図 20 万の表現上問題が生じる地物 などについては,必要に応じてデータの調整及び編集
を行った.
3.1 電子地形図 20 万のデータ仕様について
電子地形図 20 万を作成するに当たり,下記のデータ調整を行った.
(1) 道路中心線
小縮尺 DB の道路中心線を記号道路として全て表示すると,特に都市部で著しく道路が輻輳する.
そのため,一般道については 4 車線以上(幅員区分 13m 以上)の道路のみを取得するとともに,
地勢図と同等の表現とするため,広域地図情報を参考にして道路ネットワーク及び道路密度の調
整を行った.
(2)水涯線
小縮尺 DB の水涯線をそのまま表示すると,堤防や防波堤等の 人工構造物の凹凸により水涯線の
表現が細かくなりすぎる.そのため,広域地図情報の取得基準を参考にして,取得基準に満たな
い人工構造物に該当する水涯線については,凹凸を調整した.
3.2 電子地形図 20 万の描画について
地勢図と電子地形図 25000 の双方の描画を用いるのは下記の理由による .
(1)見慣れた地勢図表現を大幅に変更することは,ユーザーに大きな混乱を与えるため
(2)電子地形図 25000 と描画表現の整合をとることでレベル間での描画上の差異を小さくするため
電子地形図 20 万と地勢図における主な描画仕様 の変更点及び描画表現を,それぞれ表 -2 及び
- 95 -
図-1 に示す.
表-2
地勢図と電子地形図 20 万の主な描画仕様の変更点
地勢図
図郭の表示
日本測地系・世界測地系の両方
道路
幅員区分でのみ描画を分類
国道番号
数字表記
JCT・IC・SIC
記号表記
普通鉄道(JR)の記号と同じ
新幹線
集落・家屋
総描により市街地を表現
国界(旧くにざかい)旧国の境を表示
ぼかしの利用データ 数値地図50mメッシュ(標高)
注記(郡の名称)
図中に描画
注記(駅名)
ひらがな表記
注記(振り仮名)
カタカナ表記
電子地形図20万
世界測地系図郭のみ
幅員区分に加えてさらに道路分類ごとに着色
記号表記
実形で描画
新幹線の記号を新設
電子国土基本図(地図情報)の原データのまま
旧国の境を廃止
基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ
「行政区画等の概要図」に表示
漢字表記
ひらがな表記
変更理由
利用者のニーズが低いと考えられるため
電子地形図25000と整合を取るため
電子地形図25000と整合を取るため
電子地形図25000と整合を取るため
在来線と区別をつけやすくするため
市街地の密集度や分布形状の正確な表現のため
利用者のニーズが低いと考えられるため
高精度化のため
字大が大きく注記混雑の原因となるため
電子地形図25000と整合を取るため
電子地形図25000と整合を取るため
4. 電子地形図 20 万作成のための地図編集の基本的な考え方
電子地形図 20 万のデータは, 25000 レベルの電子国土基本図(地図情報)を主な構成要素として
いるため,そのままの状態で描画すると地物間で重複し,読図が困難な箇所が発生してしまう.その
ような箇所については,地図編集を行う必要がある.
4.1 編集の基準
転位編集の基本的な考え方は,『20 万分 1 地勢図編集および要部修正作業要領(昭和 56 年 9 月)』
に準じる.また,編集作業において,基図である電子国土基本図(地図情報)の地物の位置精度や形
状をそこなわないよう,読図が困難な箇所のみ転位編集を行い,読図上問題ない箇所では編集を 行わ
ないこととした.なお,基準点,標高点,水涯線等の自然地物や,等高線,等深線,航路,行政区画
界線,特定地区界については編集対象外とした.
4.2 主な項目の編集事例
線状地物と点状地物の代表的な編集事例を示す .
4.2.1 線状地物(道路・鉄道)
(1) 総描
道路・鉄道データのみを対象とした. 形状が複雑で判別不能の場合,現況を損なわない程度に地
物の形状の省略化を行った(図-2).ただし,高速道路における IC,JCT,SIC については編集しな
いこととした.
(2) 転位
地物が近接して判別不能の場合に転位を行った .転位量は必要最低限の範囲で行なうこととし,
転位限界値は『広域地図情報 200000 取得基準及び表示基準(案)』の規定値とした.なお,転位
量を出来る限り小さくするため,地物間での重複は可とし,地物間で微量の白部は取得しないこ
ととした(図-3).
(3) 取捨選択
側道や取り付け道路について,本線と重複して描画できない場合は,原則,転位は行わず削除し
た.また,高速道路の SA や PA についても該当道路を削除した.
4.2.2 点状地物(注記・建物記号等)
(1) 転位
他の地物と重複する場合は,文字や記号の表示位置を転位した.
(2) 取捨選択
基本的に取捨選択は行わないこととした.ただし,大学とその付属高等学校の双方に学校記号が
隣接して表示されている場合のように,同種の記号同士が重複して表示された結果,読図性を著
しく低下させる場合は例外として削除した.
- 96 -
5. まとめ
・
電子国土基本図(地図情報)から 25000 レベルの位置精度をもった 20 万レベルの小縮尺 DB を構
築した.
・
小縮尺 DB から電子地形図 20 万を作成する手法を検討し,地図編集にかかる概ねの作業量を把握
した.
・
電子地形図 20 万における描画表現については,地勢図と電子地形図 25000 の両方の描画表現を踏
襲することで,ユーザーの利便性を尊重した.
・
電子地形図 20 万を作成するための編集手法については,従来の地図編集の基本的な考え方と同じ
であるが,位置精度を出来るだけ保持するため編集量は必要最小限にとどめた.
6. 今後の課題
・ 小縮尺 DB 及び電子地形図 20 万用のデータの鮮度を確保するため,データの効率的な更新手法に
ついて検討する必要がある.
・ 取得基準に合致した地物が錯綜する場合 ,転位量が基準を超えてしまう箇所があるため,転位限
界値の例外的な対処法の検討,もしくは取得基準の見直しが必要である.
・ 転位,総描等を行った編集データの管理方法について検討する必要がある.
20 万分 1 地勢図
電子地形図 20 万
図-1
電子地形図 20 万と 20 万分1地勢図の比較
編集前
編集後
図-2
編集事例(総描)
編集前
編集後
図-3
編集事例(転位)
- 97 -
Fly UP