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分科会=生体・医療材料開発分野 牛寺巽構造金属への生体機能性付与

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分科会=生体・医療材料開発分野 牛寺巽構造金属への生体機能性付与
分科会 :生 体・ 医療材料開発分 野
特異構造金属 へ の生体機能性付与
東京 医科歯科大学 生体材料 工学研 究所
○塙
隆夫
Addition ofBlofllnctiolls to Novel Structured NIletallic Mat∝ ials
by OTaboIIAN2嚇 らヽ
1
金 属 材 料 の 必 要 性 と課 題
金属材料 は典型 的な人 工材料 であ り生体機 能 がない にもかかわ らず 、優れ た強度 と靭性 か ら依然 として 多
くの 医療用デ バ イ ス に使用 され 、体内埋入型デ バ イ ス (イ ンプ ラ ン ト)の 約 80%を 占めてお り、そ の必要性
はます ます 増 加 してい る。 ステ ン ト、 ク リップ、塞栓 コイル 、 ガイ ドワイヤ ー な どの循環器 系デ バ イ ス 、人
工 関節 、骨 固定材 、脊椎 固定器具 な どの整形外科デ バ イ ス 、歯科修復物、義歯床 、歯科矯 正 用 ワイヤ ー 、歯
科イ ンプ ラ ン トな どの歯科デ バ イ ス 、診 断・ 治療器 具、医療器械 の躯体 として金 属材料 は必須 であ り、 これ
らの 医療用デ バ イ ス では 、力学的信頼性 の点か ら金属 を他 の材料 で代用す るこ とはできな い。 また 、再 生 医
療 の実現 には相 当な時間がかか る こ とも明 らか になってお り、 現実 的な問題 として金 属材料 の重要性 が再認
1'2。
識 され てい る
しか し、金属 は人工材料で あるが故 に、生体適合性 、生体機 能 l■ の面 での課題 が 多 い (表 1)。 この課題 を
解決す るた めに行 われてい る医療用金属材料 の研 究 開発 は、以下の項 目に分類 で きる。①新 しい合金組成 の
探索 と製造。②加 工・熱 処理 な どプ ロセス技術 の 開発。③新 しい表 面処理 ・ 表面改質技術 の 開発 (セ ラ ミッ
ク ス との複合化 。表面 のセ ラ ミック化 、機 能分子 ・生体 分子 の 固定化 、高分子 との複合 化 )。 ④形態制御 (表
面形態制御 )技 術 の 開発。⑤機械 的性質 の評価。⑥耐食性 の評価。⑦安仝性 ・ 毒性 の評価。③生体適合性 。
生 体機能 性の評価。⑨ 生体外評価技術 の開発。新材料 開発 は、① の合金 開発 とそれ に伴 う② のプ ロセス 開発 、
③ の表面処理技術 の 開発 、④ の形態制御技術 の 開発 によつて行 われ る。特 に 、界面化学的生体適合性や生体
機 能性 を付与す るた めには 、表面 処理 、表面改質 を行 わねばな らな い。金属材 料 の表面処理 ・ 改質 は、ハ イ
ドロキシアパ タイ ト (臥 )被 覆 の よ うな表面 のセ ラ ミックス化 、タ ンパ ク質 固定化 の よ うな有機物被覆 、つ
ま リセ ラ ミックスや高分子 によるハ イブ リッ ト化 に よって行 われ てい る。
表1
求 め られ る性 質
低弾′
l■ 率
超弾性 ・ 形状記憶
耐摩耗性
耐食性
生 分解性
骨形成 ・骨接合
非骨 癒 合
軟組織接着
医療用金属材料 に求 め られ る性質 と適用デバ イ ス 、そ の効果
適 用 医療 デ バ イ ス
骨 固定材 、脊柱 固定器 具
多 目的
人 工 関節
す べ ての体 内埋入デ バ イ ス
ス テ ン ト、人 工 骨 、骨 固定材
人 工股 関節 のステ ム・ カ ップ、
歯科イ ンプ ラ ン ト
骨 固定材
歯科 イ ンプ ラ ン ト、経皮 デ バ イ
効果
ス トレス シール デ ィ ングに よる骨 吸収
防止
力学的適合性 向上
摩耗粉発生防止 、耐久性 向上
安全 性 の確 保
治癒後 の材料消失
骨 内固定維持 の確保
摘 出時最骨折 防止
軟組織 内固定、細菌感染 防止
ス
抗 血 栓性
バ イオ フ ィル ム非形成
血 液接触デ バ イ ス
す べ て の 体 内埋入 デ バ イ ス 、手
術器 具
血 栓形成防止
感染症 防止
MRIア ー チ フ ァ ク ト低減
す べ ての体 内埋入デバ イ ス 、手
術器械 。器具
診 断性 の確 保
2.合 金 開発
上述 の課題 を解決す るた めに、下記 の合金系 で実用化 に向 けた開発 が進 んでい る。括弧内は開発 目的
を示す。
a)V o Alフ リー Ti合 金 (低 毒性、低ヤ ング率)
研究成果報告書107
b)Niフ リー オーステナイ ト系 ステ ン レス綱 (高 耐食性 、低磁化 率、低毒性
c)Niフ リー Co一 CQミo合 金 (低 毒性 、高延性
d)Niフ リー Ti基 形状記憶 。超弾性合金 (低 毒性
e)Zr合 金 (低 磁化 率
0 金属 ガ ラス (高 強度 、高耐食性 、低 ング率
g)Mg合 金 ・純 Fe(生 体内分解
)
)
)
)
)
l■
3.表 面 処 理
)
ロ表面改質
現在 行 われ て
い る表 面 処理 ・
改 質 は、 そ の 効
果 、 目的 、 プ ロ
セ ス で 分類 で き
る。 効 果 は、表
面 の化 学組 成 の
改 良 と表 面形 態
の 制御 に 分 け ら
れ る。 多 くは、
表 面 の 化 学組 成
の 改 良 に よる生
ウエツ ト
プロセス
体適 合 性 、機 能
性 の 向 上 を 目指
してい るが、 最
近 、酸 処 理 、 ブ
ラ ス トに よ る表
面 の 粗 糧 化 、溶
射 、 マ イ ク ロア
ー
ク
酸
化
0唯AO)に よる
図
1
ウェ ッ トプ ロセ ス の 分類
表 面 多孔質化 が
行 われ てい る。表面 処理 ・ 改質 の 目的は、骨形成促進 、軟組織接着 、抗 血 栓性 、抗菌、耐食性 向上、耐摩耗
性 向上 な どで あるが、生体 医療用 を 目的 として行 われ る表面処理・改質技術 の大部分 は、硬組織適合性 改善、
す なわち材料表面で の骨形成促進 、骨組織 との結合 を 目指 してい る。 プ ロセス は、 ドライプ ロセ ス とウェ ッ
トプ ロセス に分類 で きる。 ドライプ ロセス では 、溶射 に よる Ti合 金表面 へ の HAの 被覆 が主流 とな つ てい る
パ ル ス レー ザ ー 被覆 な ど他 の技術 も研究 されてい る。現在 の ところ Tiお よび Ti合 金 に対す る Ti02、 TiN、
が、
HA薄 膜 の被覆 が実用化 され てい る。 ウェ ッ トプ ロセス は、水溶液 へ の浸漬 と水溶液 中で の通電が基本 的方
法 であ るが、
水溶液 の組成や pH、 通電 の電位や電流密度 を変 えるこ とで 多 くの方法が考案 され てい る。また、
浸漬 と水熱処理が研 究 され てい る。 ウェ ッ トプ ロセ スの分類 を図 1に 示す。
4.再 生 医療 へ の 展 開
再生 医療 にお ける足場材料 としては、生分角争陛高分子、 リン酸 カル シ ウム 、 生 体 由来高分子 あるい は これ
らの複合体 が使用 され 、 生体組 織 の再生 が完了 した後 あるい は再生過 程で消失す るか生体組織 と一体化す る
もので あ った。 しか し、生体組 織 を再建す る際 に強 度 の あ る材料 を使用 した方 が再生 の容易 な場合 があ り、
Tiは 体 内に永久 に残 つて も問題 ない とい う考 え方 か ら、Ti多 孔体 、Tiメ ッシュな どの利 用が研 究 され、歯周
組織 の再生で研究が始ま ってい る。 これ らの Ti製 足場材料 に細胞 を生着 させ 、細胞機能 を発揮 させ るた めに
は、上述 の ウェ ッ トプ ロセ ス に よる表面 改質 が有効 である。
5
■
2.
参考文献
塙 隆夫 ,米 山隆之著 :金 属 バ イオ マ テ リアル .コ ロナ社 ,東 京 ,2007.
塙 隆夫編 :医 療用金属材料概論 .日 本金属学会 ,仙 台 ,2010.
108研 究成果報告書
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