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午前の部 - 奈良県

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午前の部 - 奈良県
適切な労務単価の設定に向けた取組について
県土マネジメント部 技術管理課 小原加奈子
1.はじめに
公共工事を発注するにあたり、取引の実例価格、需要の状況、履行の難易、数量の多寡、
履行期間を考慮して適正な予定価格を定める必要がある。具体的には、積算基準に則り、機
械損料、労務単価、資材単価を積み上げて積算していくものである。適正な予定価格を算定
するためには、積算に用いる単価が現状の取引価格を適切に反映したものでなければならな
いことから、各発注機関では、資材
価格や労働賃金の実勢価格を調査し、
単価を定めている。
現在、アベノミクスの「3本の矢」
による公共事業投資の増加や東日本
大震災等の災害復旧工事のため発注
量が増加・集中している。しかし建
設業就業者はこの 20 年減少の一途
を辿り、労働力不足が深刻化してい
る。また資材についても東日本大震
12 職種の価格推移
災以降は被災地での需要が大きく、 図1:主要(H21
年度単価=100 とした指数、奈良県単価)
価格の変動も大きい。
奈良県においても労務単価、資材
単価の変動が激しくなってきている
(図1、2参照)。こうした状況の中、
実勢に即した適正な予定価格を算定
するためには、県内各地区において
の最新の流通価格を調査することが
一層重要である。
本研究では奈良県における労務単
価の価格設定調査における取組を中
心に紹介する。
図2:主要資材の価格推移
(H20 年 10 月単価=100 とした指数、奈良県単価)
2.労務単価調査における取組
(1)調査方法
労務単価は建設業者への直接聞き取り調査を元に設定される。国土交通省、農林水産省、
及び都道府県政令市等による公共事業労務費調査連絡協議会において、毎年 10 月、年度に
よってはその他の時期にも追加して調査を行っている。
10 月調査では、10 月中に対象工事に従事している建設業者(元請、下請問わずすべて)
に対して、その工事に従事する雇用者への 10 月分賃金価格等を面接方式で聞き取る調査を
行っている。各雇用者のデータ(標本)のうち、面接調査(一次審査)及びその後の書面チ
ェック審査(二次審査)において法定労働時間を守られていることや支払い状況が確認でき
る標本(有効標本)をもとに、年度末には各都道府県における 51 職種の労務単価が決定さ
れる。(図3参照)
図3:労務費調査の流れ
(2)調査における課題
上記のように、労務単価は面接形式で賃金支払い状況
を聞き取ることから決定されており、実態を反映した価
格といえる。しかし、奈良県においてはその調査で有効
標本とされるデータが調査全数に対して非常に少ない、
すなわち棄却される標本の割合が高いことが従前より
課題である。
標本が棄却される主な理由は以下の3つである。(図
4参照)
A:調査票への記入事項の根拠となる諸資料の提示がな
かった
図4:H20 年度労務費調査における主な
B:賃金台帳等に賃金の受領を証する押印または本人
棄却理由別標本構成比率(奈良県)
のサインがなかった、
C:就業規則等で定められている所定労働時間が法定労働時間(週 40 時間)を超えている
奈良県は全国的にみても有効標本率(全体標本数における有効標本数の割合)が低く、平
成 20 年度では 31.6%と 49 都道府県で最も低かった。
(3)課題に対する取組
平成 20 年度では棄却理由 A(調査票への記入事項の根拠となる諸資料の提示がなかった)
が全体の約3割強を占める。これは一次審査の際に賃金台帳や就業規則等の資料が確認され
ないため、調査表に記入されたものの根拠がないとして標本に採用できないということであ
る。就業規則等が整備されていない会社である可能性もあるが、本来これらの資料は会社に
あるはずのもので、審査会場にさえあれば有効標本になったかもしれないという非常にもっ
たいない棄却理由である。
また、調査に係るすべての通知や必要書類について、これまでは技術管理課から対象業者
へ直接郵送していたが、対象業者の担当者に届いていない場合もあり、周知不足から十分に
準備していただけないことが多かった。監督職員も調査に関わるタイミングがなく、徹底し
た調査協力を求められていなかった現状もあった。
そこで、事前に労務費調査についてアナウンスを行うことを徹底することで、まずは労
務費調査の対象工事に従事していることを認識してもらい、調査様式の書き方や持参すべき
ものを一次審査までに理解できることを目指し、平成 21 年度から対象業者へのアプローチ
を見直した(図5参照)。資料の配布方法を郵送から監督職員からの手渡しに変更し、加えて
指示書で対象業者に協力依頼を通知することにした。監督職員から直接案内を手渡しするこ
とで認識を高めてもらおうという狙いである。また調査表の書き方や持参資料を書いた手引
きを従前は説明会の会場において配布していたが、タイミングを早め説明会より前に渡すこ
とにより、説明会場には手引きを事前に読んだ上で来場してもらえるようにした。
技術管理課
対象業者
調査の通知
調査の通知
説明会の案内
対象業者説明会
手引き
説明会会場
で配布
一次審査
一次審査の
日程通知
郵送
郵送
変更前
技術管理課
監督職員 対象業者
調査の通知
説明会の案内
手引き
・監督職員から手渡し +指示書
・調査協力するよう指示書を発行
・手引きも説明会より前に手渡し
一次審査の
日程通知
・従前のハガキ通知に加え、
監督職員からも日程確認
図5:調査に関連する通知の変更
変更後
(4)取組結果
奈良県内における有効標本率の
推移を図6に示す。奈良県の有効
標本率は、取組を始める前の平成
20 年度の 31.6%から平成 25 年度
では 41.4%と約 10%上昇してい
る。全国平均の有効標本率の約 4%
上昇に対し、これを上回る改善で
ある。棄却理由については、棄却
理由Aが、平成 20 年度の 34.3%
から平成 25 年度では 18%へと減
少しており、棄却理由 A による棄 図6:労務費調査の結果(奈良県と全国平均の推移)
却の減少が、有効標本率の向上に寄与したことが伺える。
一方、依然として棄却理由 C(就業規則等で定められている所定労働時間が法定労働時間
(週 40 時間)を超えている)による棄却が3割以上と多く、就業規則に係る問題を抱える
会社が多いことがわかる。そのため、説明会では労働局に依頼し、労働基準法の労働時間に
関する内容や変形労働時間制に関する内容の講義をして頂いているところであるが、今後も
引き続き様々な機会を通して就業規則に係る問題の改善に向けてアプローチしていきたい。
3.その他の取組
適正な予定価格の算定のため、労務単価以外にも資材単価を最新の実勢価格を反映させる
取組や、施工箇所が点在する工事の間接費を施工箇所ごとに積算する取組など実情に近い積
算となるよう努めている。
また、工事契約後にも実勢価格を反映させるためスライド条項を適切に設定する等、公共
工事の円滑な施工確保対策に取り組んでいる(図7参照)。
予定価格の適切な積算
▶労務単価・資材の実勢価格の適切な反映
▶施工箇所が点在する工事の間接費の積算の試行
▶維持修繕工事歩掛の早期導入
適正な工事採算性の確保
▶各種スライド条項の活用の徹底
人手不足への対応・平準化
▶地域企業の活用に配慮した発注ロットの
大型化
▶主任技術者の兼任要件の緩和
▶国・近畿圏内府県政令市の発注見通しを
統合して公表
図7:公共事業の円滑な施工確保対策
4.おわりに
平成 25 年度より建設工事に携わる労働者が適正に社会保険等に加入できるよう、労務単価に
法定福利費(本人負担分)相当額が反映されている。これは社会保険料が適正に支払われず、法
令上義務である最低限の福利厚生が確保されていない企業があるためで、適正な労働環境を確保
することにより建設労働者減少に歯止めをかけることを目的としている。国土交通省では、平成
26 年 8 月より社会保険等未加入建設業者に対する指導監督を強化、また一部工事にて元請け業者
及び一次下請業者を社会保険等加入業者に限定している。一方、奈良県では都道府県としては全
国初となる公契約条例の施行を来年度より予定しており、最低賃金以上の支払や社会保険への加
入を求め、賃金の支払い状況を報告する義務も課す予定である。
また、平成 26 年 6 月に品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)の改正がなされた。
改正品確法においては、下請契約を含む請負契約の適正化、公共工事に従事する者の賃金や安全
衛生等の労働環境改善を基本理念として追加し、発注者は中長期的な人材育成と確保のための適
正な利潤が確保できるよう、市場における労務、資材等の取引価格、施工の実態等を的確に反映
した適正な予定価格を設定することを責務として定められた。今後は建設業界が持続的に人材を
保っていけるかという点にも注目しなければならない。
これから 2020 年の東京オリンピックやいつ起こるかも分からない自然災害等に伴い、資材や
労務の需要が局地的に高まることが予測される。適切な予定価格の設定のため、引き続き市場の
動向把握が発注者として重要である。
※平成 26 年度公共事業労務費調査につきましても、ご協力お願いします。※
国交省HP(http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000006.html)
~平成 22 年度パーソントリップ調査より~
人の動きからみる 奈良県のいま
桜井土木事務所 工務課 橋中瞳
1. はじめに
経済、社会の営みは「人」がいて初めて成り立つものであり、その「人」は都市や農村に
住み、
「移動」し生活している。この「人(Person)の動き(Trip)
」から都市活動を分析し
ていくのが、パーソントリップ調査(以下、PT 調査)である。
このパーソントリップ調査結果によって見えてきた、奈良県の特徴について紹介する。
2. PT 調査とは
調査とは
PT 調査とは、
「どのような人が」が「いつ」
「どこ
から」「どこまで」
「どのような目的で」
「どのような
交通手段を利用して」動いたのかについて調査し、人
の1日の動きをとらえるもの。
これまで、昭和 45 年の第 1 回調査以降 10 年ごと
に、京阪神都市圏において調査を実施している。
図1
3. 平成 22 年度の調査の主な特徴
平成 22 年度に第5回調査を実施した。その主な特徴は、以下のとおり。
① 調査対象圏域を県内全域に拡大
② 休日調査を平日調査と同じ規模で実施
③ 郵便番号ゾーンを最小ゾーンに設定
④ 移動目的を細かく設定(特に、自由目的について、通院、観光などを追加)
次項からは、この第5回調査結果からわかる奈良県の人の動きを紹介する。
4. 人の移動の推移
図2は、都市圏全域および地域別の平日のトリップ数の推移を示したものである。
都市圏全域では、昭和 55
年から平成 12 年まで、トリ
ップ数は増加し続けていたが、
平成 22 年に初めて減少に転
じた。地域別にみると、滋賀
県を除いた地域でトリップ数
が減少していることがわかる。
図2
1
トリップ数は、基本的に人口の増減に比例するが、政令指定市などの都市部においては、
人口が増加しているにもかかわらず、トリップ数は減少に転じている。
5. 年齢別にみる移動
年齢別にみる移動の推移
移動の推移
図3は、年齢階層別に奈良県民の休日の外出率を表したものである。54 歳以下の人、特に
10~30 代の若者の外出率がこの 10 年で大きく減少している一方、高齢者の外出率は増加し
ている。10 代後半の人においては、2 人に 1 人が家を出ない休日を過ごしていることがわか
る。
図4は、年齢階層別に奈良県民における1日1人あたりの移動量を表したものである。若
者の移動量が減少し、高齢者の移動量が増加していることがわかる。30 代前半の人では、こ
の 20 年間で移動量が 3.3 回から 2.3 回に減っている。これは、仕事への往復(2 回)を除く
と、1.3 回から 0.3 回に減っていることとなる。
高齢者は、活発に活動する一方、若者の移動は減り、家と仕事を往復する生活をしている
ことがうかがえる。なお、他府県においても同様の傾向が見られる。
移動量
外出率
減
減
増
図3
増
図4
では、若者と高齢者の移動にはどのような違いがあるのか。図5は各年齢の移動量を目的
別に示したものである。30 代前半の人は、特に買物、通院、観光等の自由目的での移動が減
少おり、60 代後半の人
は自由目的での移動が
増加している。
これらの原因として
は、ネットショッピン
グの利用増や、メール
や SNS の普及などが、
若者の移動の減少に寄
与している可能性が考
2
図5
えられる。一方で、高齢者については、医療の発達により、元気な高齢者が増え、移動量が
増加したことが考えられる。
6. 交通手段別にみる移動の推移
図6は地域別の代表交通手段の推移を示したものである。政令指定市などの都市部では、
この 10 年間で自動車の利用率が減少し、鉄道が増加している。一方、奈良県や和歌山県では、
自動車の利用率が増加し、徒歩が減少している。
造
都心部では鉄道網が充実しており、駅からのアクセスを考えた都市構 であり、一方、奈
造
現
良県では自動車でのアクセスを考えた都市構 となっていることが考えられる。 に、奈良
郊
に大規模店舗が次々
県においては、 外
と立地している。ま
路 整備が進
た、道 の
んだことも自動車の
分担率増につながる
と考えられる。
図6
都心部である大阪市と奈良県の自動
担率の推移を年齢別に比較したも
のを図7に示す。この図から、すべて
車分
の年齢において、奈良県は大阪市より
担率が高いことがわかる。奈
良県では、年齢が上がるに従って、自
動車分担率の増加率が大きくなってい
自動車分
る。一方、大阪市では 30 代~50 代で
自動車
離れが進むが、高齢者では自動
車利用が増加している。
図7
3
公共交通機関の利便性の発達に伴い、自動車離れが進んでいる可能
性が考えられる。一方で、高齢者については、前項で述べた活発な移動に伴って、利便性の
高い自動車を使った移動が増加していると思われる。
図8は、自動車の分担率と保有率の関係性を確認するために、自動車を保有している人の
代表交通手段の推移について示したものである。自動車保有者においても、同様に大阪市で
都心部の若者などは、
は自動車の利用率減、奈良県で増という結果となった。
減
増
図8
7. おわりに
本論文では、PT 調査結果からわかる奈良県の特徴の一部について紹介したが、PT 調査デ
ータと他のデータを組み合わせることで、下記のような様々な問題への対策を検討するのに
役立てることが出来る。
(活用事例) ・交通分野・・・駅へのアクセス交通手段の検討
・環境分野・・・自動車交通による地球環境への影響検討
・防災分野・・・大規模災害時の帰宅困難者の避難計画検討
・危機管理分野・・・新型インフルエンザの感染拡大の予想 等
々 野
用方法はもとより、PT 調査自体を知らない人も多いため、多くの方に活用してもらうための
PR が課題であると思われる。
データの活用にあたっては、莫大なデータの処理が必要となる。集計システムが京阪神都
市圏交通計画協議会の HP で一般公開されているが、不慣れだと操作方法が難しい部分も多
いため、利用者の声を反映してより使いやすいシステムに改善していく必要がある。また、
利用した人が不明点等を気軽に相談できる環境を整えることが大切だと思われる。
PT 調査は、これら様 な分 での活用が可能な便利な調査である。しかし、PT 調査の活
【用語説明】
*トリップ :人がある目的をもってある地点から地点まで移動すること。
*代表交通手段:1つのトリップの中でいくつかの交通手段を利用している場合、そのトリップで利用した主な
交通手段。
4
「鹿ゾーン対策」について
~渋滞対策と鹿の事故防止のために~
道路環境課 辰巳雅俊
1. 奈良中心市街地の概要
奈良県は、日本最大の半島である紀伊半島のほぼ中央に位置しており、大阪府・京都府・
三重県・和歌山県に囲まれた海のない内陸県である。奈良県は、北部の低地と南部の吉野山
地に大別できる。奈良県南部は豊富な自然に恵まれる一方、奈良県北部には奈良県の人口の
約 9 割が集中している。奈良県北部は、県庁所在地である奈良市が位置し、隣接する大阪府
や京都府などへの交通の便も良く、都市近郊地域であるとともに、奈良公園や平城宮跡、法
隆寺などといった史跡も数多く存在している。
奈良市の中心市街地は、古くはいにしえの都「平城京」を擁し、世界遺産「古都奈良の文
化財」をはじめとする重要な史跡・文化財が数多く点在し古都の歴史を彷彿させる地域であ
る。そのため、春や秋などの観光期には、多くの観光客が奈良中心市街地を訪れている。
2. 大宮通りプロジェクトの概要
奈良中心市街地を東西に貫く国道 369 号(大宮通り)は、沿道に奈良公園や平城宮跡が位
置している。大宮通りは、大阪方面から奈良公園へのアクセス道路としての機能も果たして
おり、平日 24 時間交通量は 25,495 台となっている。
(平成 22 年道路交通センサス交通量)
奈良県では、奈良公園や平城宮跡に代表される観光拠点の整備と共に、これらの拠点をつ
なぐ移動などのもてなし環境の向上を図り、大宮通り沿道の賑わいを創出することを目的と
し、関係部局が横断的に取り組みを行うため大宮通りプロジェクトを立ち上げた。
3. 奈良公園周辺の取り組み施策について
3.1
奈良公園について
奈良公園は 1880 年の公園開設当時、興福寺境内地の 14ha 程度の小さな公園であった。そ
の後 130 年余り、整備や拡張を繰り返した後、現在の観光地へと成長してきた公園である。
現在の都市公園としての奈良公園は、総面積 502.38ha(周辺 寺を めると約 660ha)で、
そのうち平 部が 39.82ha、
山などの山 部が 462.56ha である。奈良公園は、古都奈良
の であり、奈良公園を
奈良市には年間約 1,300 人もの観光客が訪れる。
奈良公園へのアクセス道路は、北からは国道 369 号、南からは国道 169 号、西からは国道
369 号(大宮通り)が存在している。どの道路についても観光 ー ンを中心に、渋滞が
している。
奈良公園は、大部 が
に われ約 1100 もの鹿が
している。奈良公園の
は、
鹿が く 囲の を
るため、お そ 2
は がなく、 通しの良い となっており、
ア
ンと
れる
的な光 となっている。
奈良公園は、
で われた自然豊かな公園で、年間を通じて
開 されているため、
いつでも訪れることのできる公園として しまれている。
顔
坦
若草
含む
林
社 含
万
シ ズ
発
分 芝生 覆
頭
生息
届 範 枝 食べ
よ m 以下 枝
見
林
ディ ライ 呼ば 特徴 景
芝生 覆
無料 放
親
1
頻
樹木
3.2
奈良の鹿について
集にも まれた「奈良の鹿」は、当時は春日野周辺に野 の鹿が
しており、
の対 となっていた。しかし、後に 鹿として
される うになったため、鹿の
数は
した。
世界大 後に 9 まで
した後、
「奈良の鹿」は「奈良公園の
に
で、わが国では数 ない れた動
をうみ す」存在として、195 年に 然
に
され、
地域も奈良市 域に拡大され、現在は約 10 9 までに
している。
奈良公園に
する鹿は、国の 然
に
され、東大寺の大
と共に、奈良公園
には かせない観光
の一つである。
万葉
詠
生
生息
狩猟
象
神
保護
よ
個体
増加 第二次 戦 7 頭 減少
風景 溶
け込ん
少 優 物風景 だ
7 天 記念
物 指定 保護
全
7 頭 増加
生息
天 記念物 指定
仏等
欠
資源
3.3
鹿ゾーン対策について
大宮通りは、観光 ー ンを中心として、
的な渋滞が
しており、 に奈良公園周
辺では、観光交通に る渋滞が
している。
また、奈良公園に交通が
することに り、 然
である公園内の鹿と自動 との
事故が多 し、年間約 100 の奈良公園の鹿が交通事故に き まれ、
している。
こういった動 と自動 の
事故は、ロー
と
れており、自動 の 行上の
や道路
上の
かりではなく、動 ・自然
の
の観点からも 国的に
されている。
奈良県では、豊かな自然が
の一つである奈良観光の
を交通渋滞に り なうこと
のない う、また 心して 行できる道路交通環境を
するため、大宮通りプロジェクト
の となる 策として、渋滞対策と鹿の事故防止を 立させる く、
「鹿ゾーン対策」を
する。
衝突
性
視
柱
シ ズ
よ
頻発
流入
発
頭
物
車 衝突
管理 問題ば
魅力
よ
安 走
施
慢性
発生
特
よ 天 記念物
車
巻 込 死亡
ドキル 呼ば
車 走 安全
物 生態系 保全
全 問題
魅力
よ 損
提供
両
べ
実施
(1)
「鹿ゾーン」について
ロー
の
は、動 の
域が 断されることが最も大きな
であることが え
られる。ロー
が
している 所を
するため、奈良中心市街地内において、鹿の
交通事故
所とその 数を年間を通して
し(図 1)
、事故の
から、鹿の事故
アを
した。このうち鹿と自動 との
事故が多い
アを「鹿ゾーン」と設
した。この「鹿ゾーン」において、鹿の交通事故低 に する通 交通の
の一
の 策を
することとした。
策について、
に
・交通
・
道路
が
となっている奈良中心市街地交通
対策
において
を重 、
策の内 を
した。
に「鹿ゾーン」において
する 策を
し、
所を図 2 に す。
ドキル 発生 物 生息 分
理由
考
ドキル 発生
箇 特定
発生箇
件
調査
発生状況
頻発エリ 把握
車 衝突
エリ
定
減 資
過 流入抑制等
連 施 実施
各施
計画段階 学識経験者
管理者 各
管理者 委員
処理 検討委員会
議論 ね
施 容 決定
以下
実施 施 列挙 実施箇
示
1)広域迂回誘導の実施
2)鹿ゾーン明示の路面標示の実施及び、鹿の飛び出しを注意喚起する看板の設置
3)歩道整備
4)公園内道路にカラー舗装の実施
5)鹿の飛び出し防止柵の設置
2
発生件数
図 2 鹿ゾーン設定エリア
(2)鹿ゾーン対策で実施する施策について
「鹿ゾーン対策」は、奈良公園周辺の渋滞低減と、鹿の事故防止を両立するために実施する
施策である。公園内道路については、歩行者や鹿が主役となるのが望ましいため、渋滞解消
のために道路の拡幅等の施策を実施するのではなく、公園内道路の交通量を減少させること
により、上記の目的を達成することを目指し、広域的なものから公園内に至るまでの施策を
計画した。それぞれの施策については、以下に紹介する。
1)広域迂回誘導の実施
公園内道路の流入交通の低減に向け、まずは広域からの流入交通の低減のために、道路案
内標識の見直しを実施する。(図 3)
広域の道路案内標識の調査を実施し、同時に迂回道路の検討を行った。迂回道路が設定可
能な箇所については、公園内の道路を通過する必要のない車両について、公園内道路を通る
ことのないよう広域的に道路案内標識を見直した。迂回誘導の方針としては、主要幹線道路
を通る案内を行うこととした。
2)鹿ゾーン明示の路面標示の実施及び、鹿の飛び出しを注意喚起する看板の設置
公園の入り口となる道路には、鹿の飛び出しを注意喚起する看板や、鹿ゾーンであること
を示す目的の路面標示を実施する。
(写真 1)
注意喚起を促す看板(写真 1)については、実物大の鹿に近い大きさのものとし、鹿の注
意を呼びかける路面標示と共に、ドライバーに対して、より効果的に注意喚起を伝えられる
図 1 鹿の交通事故
ものとした。
例) 【現況】 【改変(案)】
案 標識の改変例
図 3 道路 内
写真 1
3
示 注意喚起看板
路面表 と
歩
玄
該区
散
側 十分 歩
車 歩 明確 区
利用
状況
歩 者 安全 確保
既 水 蓋掛け 車
側
よ
仏殿 差
m
歩 空 確保
4)公園内道路のカラー舗装化
鹿ゾーンから公園内に入ってきた自動車に対しては、ドライバーに公園内道路であること
を認識してもらうため、視覚的にドライバーに速度低下を促すよう、奈良公園の景観に調和
する路面のカラー舗装化を実施する。
5)鹿の飛び出し防止柵の設置
公園内道路において、飛び出し防止柵が設置されていない箇所は、特に鹿の交通事故が多
数発生していた。この箇所については、ドライバーに対する注意喚起だけでなく、鹿の飛び
出し防止柵を設置する(写真5)
。これにより、ドライバーに対する注意喚起だけでなく、鹿
に対する積極的な事故防止策となることが期待される。この飛び出し防止柵は、鹿の生態を
考慮し、鹿が容易に飛び越えられない高さとし、周囲の景観を損なわないような柵とした。
3) 道整備
奈良公園の 関口にあたる当
間については、多くの観光客が 策しているものの、北
に
な 道がなく、 道と 道との
な 別のないまま
されている
であった。
このため、 行 の
を
することを目的として、 設 路の
や 道の南 への
移動に り、県庁東~大
交 点間 300 にわたり 道 間を
する。
写真 4 カラー舗装の施工状況
写真 5
飛び出し防止柵の設置状況
鹿の
4. おわりに
稿
実施予定 含 施 紹介
緩
両
分
利用者 主役 歩 者
解消
幅等 施 実施
よ
達
指
各施
効 検証 実施
緩
本 では、
「鹿ゾーン対策」について
を めた 策を
した。この「鹿ゾーン対
策」は、奈良公園周辺の交通渋滞の 和と鹿の交通事故防止を 立させることを目的とした
ものである。
「鹿ゾーン」の大部 が奈良公園内であることから、道路
の
は 行
や鹿となることが ましいため、渋滞
のため道路の拡
の 策を
するのではなく、
公園内道路の交通量を
させることに り目的を 成することを目 している。
が
のものもあるが、
策について目的に対する 果
を
し、渋滞の
和とロー
の防止に向 た取組を行って行きたい。
望
実施 未完了
ドキル
減少
け
4
バリアフリー基本構想策定促進における県の取組について
道路環境課 魚澤 明日香
.はじめに
現在、奈良県の高齢化率は約 26.0%(「奈良県年齢別人口調査」平成 25 年 10 月 1 日
現在)となっており、全国平均の高齢化率約 25.1%(「総務省統計局推計人口」平成 25
年 9 月 15 日現在)と同様に約 4 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者という状況である。
また、奈良県は、大阪近郊のベットタウンとして人口が急増してきたこともあり、鉄
道駅の背後にある住宅地では、今後急激な高齢化の進展が予想されている。
このような状況に対応していくため、高齢者・障がい者を含めたすべての人の移動や
施設利用の利便性の向上を目的としたバリアフリー化は必須である。
「高齢者・障害者等の移動等円滑化の促進に関する法律」第 25 条では、市町村は、旅
客施設を中心とする地区や、高齢者、障がい者等が利用する施設が集まった地区(重点
整備地区)において、移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的なバリアフリー化を
促進する「バリアフリー基本構想」を策定することができるとされている(図 1)。
1
出典:国土交通省近畿運輸局
図 1 重点整備地区における移動等の円滑化イメージ
バリアフリー基本構想策定の目的は、
(1)「個々の施設等のバリアフリー化だけでなく、「面的・一体的なバリアフリー化」
を図ること
(2)「新設・新築」の施設だけでなく、「既存」の施設等のバリアフリー化を図ること
(3)「住民等の参加の促進」を図ること
の 3 点であり、バリアフリー基本構想策定は、高齢者、障がい者等を含むあらゆる人に
とって移動や施設利用の利便性、安全性の向上を図るために有効であるといえる。
本稿では、奈良県内で、同構想策定を促進していく為には、県としてどのような取り
組みが必要であるかを述べる。
.バリアフリー基本構想策定に関する県としての目標
国の「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成 23 年 3 月)では、「1 日当たりの
平均的な利用者数が 3,000 人以上である鉄道駅及び軌道停車場については、平成 34 年
度までに、原則としてすべてについて、(中略)移動等円滑化を実施する。」となってい
る。このことから、奈良県では、1 日平均利用者数 3,000 人以上の鉄道駅を持つ地区を
バリアフリー化に重点的に取り組んで行く地区と定め、市町村にこの地区すべてにおい
てバリアフリー基本構想を策定していただくことを目標としている。
2
.奈良県の現状と取組
3-1 バリアフリー基本構想数について
県内では、25 市町村において鉄道駅を保有しており、そのうち 19 市町村に、基本構
想策定の目標である 1 日平均利用者数 3,000 人以上の鉄道駅が 64 ある。
平成 26 年 3 月末現在までに 4 地区において、基本構想が策定された。平成 26 年度中
には 2 地区において策定の予定である。(表 1、図 2)
3
表 1 奈良県内の基本構想の策定状況
策定地区
市町村 策定(予定)年度
近鉄大和八木駅・近鉄八木西口駅・JR畝傍駅周辺地区 橿原市
22年度
葛城市
22年度
策定済み 近鉄尺土駅・近鉄磐城駅周辺地区
JR・近鉄郡山駅周辺地区
大和郡山市 24年度
香芝市
25年度
JR香芝駅・近鉄下田駅・近鉄五位堂駅・市役所周辺地区
奈良市 26年度(予定)
策定作業中 JR・近鉄奈良駅周辺地区
近鉄大輪田駅・近鉄佐味田駅・近鉄池部駅周辺地区
河合町 26年度(予定)
平成 26 年 3 月末現在 道路環境課調べ
図2 奈良県の鉄道駅の状況
平成 26 年 3 月末現在
道路環境課調べ
基
本
構
想
数
各都道府県の基本構想数と奈良県の基本構想数を比べると、奈良県内における基本構
想数は、全国で 20 位、近畿圏内では最下位となっており、基本構想数は少ない状況であ
る(図 3)。
奈良県内4構想
全国 20 位
近畿県内最下位
平成 25 年 6 月末現在 道路環境課調べ
図3 全国の基本構想数
-2 バリアフリー基本構想策定に関する市町村の意見について
基本構想の策定等に関し、平成 26 年 8 月に奈良県内で鉄道駅を持つ 25 市町村に対し
てアンケート(平成 26 年 3 月 31 日現在)を行った。
(1)基本構想未策定の市町村にバリアフリー化の推進に関して、望むことについては、
「事業者への指導・働きかけを望む」という意見が多いことがわかった。また、「心
のバリアフリー(バリアフリー教室)の直接実施を望む」、「心のバリアフリーに関
する教材等の提供を望む」という意見が少ないことから、市町村担当者の心のバリ
アフリーに対する興味が少ないことがわかった(図 4)
3
図4 未策定市町村がバリアフリー化推進に関して望むこと
(2)鉄道駅を持つ 25 市町村に、基本構想を策定する部署があるかについては、既に
基本構想を策定している市町村を含めて 8 市町村で部署があり、残り 7 割では基本
構想を策定する体制が整っていないことがわかった(図 5)。
8
17
図5 基本構想を策定する部署の有無
(3)鉄道駅を持つ 25 市町村に、今後基本構想を策定する予定があるかについては、4
市町村が策定したいと考えていることがわかった。また、策定する予定がない 21 市
町村の内、12 市町村が、策定したいと考えているが、課題があって困難であると考
えていることがわかった。どのような課題があるかについては、基本構想策定のため
の予算及び基本構想における事業実施の為の予算が不足しているという課題を抱え
ている市町村が多いことがわかった。
-3 バリアフリー基本構想策定促進に係る取組について
前述の市町村の意見から基本構想策定を促進していくためには、県として、以下の 3
つの項目について取り組んで行かなければならない。
①策定ノウハウの提供
②補助金のメニュー紹介
③基本構想を策定する体制確保
県の支援として、①、②においては、現在、バリアフリーセミナー・意見交換会を開
催し、補助事業のメニュー紹介や、策定ノウハウ、基本構想によるバリアフリー化の先
進事例等を提供している。③においては、各市町村が抱える様々な問題について知事と
市町村長が定期的に意見交換を行う「奈良県・市町村長サミット」にて、直接市町村長
へ基本構想を策定する体制確保の呼びかけを行っている。なお、道路環境課が市町村に
直接出向いて基本構想策定への啓発活動を行っているところである。
3
.おわりに
今後、奈良県内でバリアフリー基本構想の策定を促進していくには、各市町村のバリ
アフリー担当者へのバリアフリー化、及び心のバリアフリーへの意識の向上を図ること
が重要であると考えている。だが、これまでバリアフリーセミナーへの市町村担当者の
参加が少ないことから、今後バリアフリー先進市町村視察、バリアフリー教室の開催等
によるセミナー内容の工夫や、より強いセミナー参加への呼びかけを行っていく予定で
ある。
また未策定の市町村に策定を呼びかけるだけでなく、策定後の市町村には、バリアフ
リー基本構想の PDCA サイクルを回していただくために、基本構想における事業の事後
評価を行っていくことや、策定作業中の市町村には、事業者間の調整ができているかの
チェックを行っていかなければならないと考えている。
4
農業用水路における SPR 工法施工事例について
中部農林事務所土地改良課 北中健吾
1.概 要
現在まで国営県営事業で造成された、ダム・頭首工・用排水機場・農業用々排水路等の
基幹的な農業用水利施設は約 49,000km(地球 1 周以上)にのぼり、約 20 兆円に及ぶ社会
資本ストックとして形成されている。(Fig.1)
これらの多くは高度経済成長期に急速に整備されており、近年一斉に老朽化しているこ
とは大きな社会問題である。もし、全てを再建設した場合にかかる費用は約 14 兆円とされ、
各農業水利施設は今後適切な保全及び更新が求められることから、施設の長寿命化等によ
り既存ストックの有効活用を図るストックマネジメントが大変重要視されている。
本論文は、平成 25 年度県営基幹水利施設ストックマネジメント事業倉橋地区での、農業
用水路における県内初の SPR 工法施工事例を報告するとともに、課題を整理し今後の展開
につなげていくものである。
Fig.1 農業水利ストックの現状
2.目 的
桜井市の中南部に位置する倉橋溜池は、戦前~戦中~戦後を通して造成された歴史ある
農業水利施設であり、受益面積 826ha の 2 市 1 町(桜井市・橿原市・田原本町)にまたが
る奈良県最大級の溜池でもある。溜池本体は、昭和 62 年~平成 11 年度にかけて防災ダム
として改修されたが、用水路は造成から 50 年以上が経過し老朽化が進んでいる。(Fig.2-1
~2)
このような状況下で、基幹水利施設である倉橋溜池を適切に保全及び更新していくには
①施設の状態評価 ②施設状態の将来予測 ③機能保全対策の検討 ④ライフサイクルコス
ト算定 ⑤機能保全計画策定といった、一連したストックマネジメントの実施が不可欠であ
る。
よって、本事業は倉橋溜池を対象に、調査~計画~対策工事を一貫したストックマネジ
メントを実施し、今後の効率的な施設管理に資することを目的とする。
Fig.2-1(左) 県内の各受益図
Fig.2-2(右) 老朽化した水路
3.内 容
平成 20~21 年度、現地調査及び強度試験等による倉橋地区全体の機能診断を行った。診
断結果を老朽度毎に分類し、対策工法の検討・コスト比較をすることで全面改修費 21 億よ
りはるかに経済的な 6 億という事業費での保全計画が立てられた。
それに基づき用水路の測量設計を実施したところ、桜井市粟殿地内の暗渠管内に、管体
の耐力低下に伴うひび割れが発生している箇所が見受けられた。それは鉄筋の引張力のみ
で支えられていると想定され、管自体の残存強度を見込むことが難しいことから補強が必
要と判断された。(Fig.3-1)
一般的に、管を補強する管更正工法というものは各種存在するため、①適用可能口径 ②
現場条件 ③更正管の構造的機能 ④経済性の4つの視点から工法を選定した。最も重要視
したのは現場条件で、資材搬入口はマンション横の水路と歩道の間にあり、搬入口を広げ
ることは狭い歩道幅をさらに縮めることになるため了承されなかった。(Fig.3-2)
上記の条件を満たすものとして、製管工法の SPR 工法が採用となり、18 日間で 41.2m の
補強工事が実現した。
Fig.3-1 施工前現場
Fig.3-2 資材搬入口
4.考 察
本事例は、農業用水路における県内初の SPR 工法施工事例である。管内に水が流れてい
ても施工可能な SPR 工法は、もともと小口径の下水道更正で実績を重ねている工法で、農
業用水路のような中口径管でも施工可能となると、今後の農林部内におけるストックマネ
ジメント事業の展開に役立つだろう。(Fig.4-1~2)
また下水方面で活躍しているという特色から、SPR 工法は直線部での施工が多く(下水
道は直管と枡の接合を多用している)、今回行った曲管部施工は希な事例のようだ。サイ
ホンを使うことも多い農業用水路は曲がりが多く、そうした中できちんと対応できたこと
は、行政・メーカーともに良いデータがとれたと考えられる。(Fig.4-3)
課題としては、工法決定後「地上から部材を入れる挿入口を、はつり等で広げずとも施
工可能か?」という旨をメーカーに問い合わせた所、「はつる必要はない」という返事を
もらっていたが、施工着手時「口を広げたい、施工出来ない」との申し出があり、協議に
時間がかかった。今後は発注者と受注者の意思を統一し、事業執行の妨げにならないよう
にしなければならない。
Fig.4-1 SPR 工法施工中
Fig.4-2 施工後現場
Fig. 4-3 現場平面図
5.結 論
まとめとして、SPR 工法は農業用水路のような、曲がりのある中口径管でも難なく施工
ができることがわかった。また施工前には受注者に対し、発注者の意思を明確にすること
で、事業がスムーズに執行できることがわかった。
現在ストックマネジメントをした施設は、PDCA サイクルに組み込むべく、いつ・どの区
間で・どの業者が・どういった工法で施工したかという項目をデータベース管理するよう
国から求められている。本県のストックマネジメント事業は始まったばかりでデータが不
足しており、こうした特殊工法の事例は同様の条件を持つ管路補修の工法決定指針として
大いに役立つであろう。本論文が、基幹水利施設のストックマネジメントにおける今後の
展開に、微力ながら資することを期待して結びとする。
(参考文献)
農業水利施設ストックマネジメントマニュアル/保全対策センター
農業水利施設のストックマネジメントと的確な補修工事の実施/農業土木事業協会
倉橋溜池六十年史/奈良県・倉橋溜池土地改良区
セキスイ農地・水・環境ソリューションカタログ/積水化学工業株式会社
国道 168 号上庄バイパス椿井工区交差点改良工事について
郡山土木事務所 上田篤司
1. 概要
国道 168 号上庄バイパスは、生駒郡平群町椿井から生駒市小平尾町までの奈良県北西
部の地域間交流を支援する南北の幹線道路であり、幅員狭小、線形不良の隘路区間を迂
回し、安全な通行ルートを確保する 2 及び 4 車線のバイパス事業であり、事業開始年度
は昭和 48 年である。
椿井工区は上庄バイパスで唯一残っている未改良区間であり、生駒郡平群町椿井に位
置する国道 168 号、県道椿井王寺線、平群町道川原路線が交差する交差点の渋滞解消を
目的とした工事である。また道路工事とあわせて護岸工事も行う予定である。
この椿井工区について、工事前の協議事項から工事の施工に際する課題や問題点の解
決方法、反省点等を整理し今後の仕事の参考にする。
至王寺
町道
椿井王寺線
椿井王寺 線
至枚方
R168
至新宮
R168
図1,全体平面図
2. 施工
2. 1施工順序
本工区は長年用地交渉が難航していたことによりストップしていたが平成 23 年に
買収ができたため工程および設計の見直しを行った。表.1に当初の計画工程を示
す。道路 工事の順序として、新橋架設→新橋前後の取付道路工事→車線を新橋への切替
→旧橋撤去→現道区間の歩道工事の順になり、道路工事の完了後に護岸工事を行うこと
とする。
表 .1 工事計画
当初
平成 23~24 年度
平成 24~25 年度
平成 25 年度
平成 26 年度
平成 27~28 年度
実施および予定
平成 23~24 年度
平成 25 年度
平成 26 年度
平成 26 年度
平成 27~
27~ 28 年度
測量業務・道路・橋梁・護岸詳細設計
橋梁工事
道路工事
旧橋撤去工事
護岸工事
2.2施工前の協議
設計中および設計完了後に関係機関との協議を行った。協議事項として河川協議、
施工区分・費用負担の協定 (アロケ )、警察協議 (信号移設 )、地元説明会 (自治会・小学校・
周辺商店等 )などがある。地元説明時には安全対策に関する要望が多かったが、 1km 以
上の渋滞が起こる箇所であるため工事の関心が非常に高いことがわかった。
2.3橋梁工事
旧橋は幅員が 6m であり水管橋と民家に挟まれており同じ位置に拡幅して架けるこ
とができないため、新橋は水管橋をより上流側に設置した。このため旧橋を供用した
まま施工することができ仮橋を設置せずに新橋の工事ができた。
基礎地盤は大阪層群と言われる N 値 30 以上の密実な砂礫と粘土の互層になっており
砂礫層で支持する杭基礎とした。上部工の形式は河川断面を考慮して鋼床版箱桁橋を
採用した。新橋は交差点内に設置するため新たに右左折レーンを追加した 4 車線分の
幅員を確保した。
側面図
000
2.
+1
.8
NO
橋 長 47600
桁 長 47500
支間長 45600
50
850
H23
-N
踏掛版:L=5.0m
A1
GH
dep=49.o.1
=1 81m
1.3
2m
4
13
場所打ち杭φ1000
L=8.0m,N=14本
20
50
1050
H3
.3
GH -No
No m
dep=48..4
3- .36 7m
=1 579 H2H=4811.3
0.5 m G p=
e
0m
d
踏掛版:L=5.0m
0
5
4
1
N値
0 60 50 40 30 20 10 0
0
4
460/2
13
川
竜田
.2
No m
3- 78 m
H2 =46.1.50
GH p=1
e
d
600
9.
+1
10
.
NO
M
▽47.125 10 N値
0
5196
(4500)
20 30 40 50 60
2
12
0
00
2
0
00
3
0
Ag
29
55
33
50
31
35
46
60/29
42
59
60/28
50
Os
25
60/17
60/25
49
60/17
50
28
Osc2
▽44.135
22
60/25
60/26
N値
60 50 40 30 20
1
10 20 30 40 50 60
60/17
Osc1
F
▽H.W.L.49.135
2
o. 2
-N 86 m
H3 =45.0.50
GL p=1
de
B
10
Ag
39
60
推定支持層線
設定支持層線
50
50
VCL=40000
VCR=951.00
図2,橋梁側面図
Osc1
Os
10 0
N値
10 20 30 40 50 60
▽47.280
0
6364
(4500)
6
A2
B
20
Ag
28
10
49
60/27
50
39
60/23
60/23
60/24
60/24
60/22
60/18
61
0
0
4
4
場所打ち杭φ1000
L=9.0m,N=12本
Osc1
Os
60/22
60/22
Osc2
Osc2
(左側地覆外縁)河川断面
(道路中心)河川断面
(右側地覆外縁)河川断面
※( )内寸法は直交寸法を示す。
上部工の架設は当初両岸から 500t クレーンで架設する予定であったが、右岸側が町
道と接しており片側交互通行を行うことによる交通への影響が大きいことから架設計
画を見直し 550t クレーン (写真1 )による左岸からの架設に変更した。
左岸側には高圧線が近接しているためクレーン架設の際は常に関西電力の担当者が
現地で監視していた。
写真1,
オールテレーンンクレーン
2.4 道路工事(新橋への取付道路)
橋梁工事完了後に新橋に交通を切り替えるために橋梁前後の取付工事を行った。本
橋は河川断面を確保するため道路を上げており、本橋と直交している町道を最大 1.5m
の嵩上げが必要になる。この町道は近鉄竜田川駅へのアクセス道路であり大型車が通
行できる迂回路がないため通行止めが困難な路線である。
町道についても交通量が多いため 2 車線を確保して施工が可能かどうか検討した。
新橋から奥は幅員が 14m 程度あり 2 車線を確保して車線を切り替えることは可能だ
が交差点手前は電柱・信号柱が密集しており車線の切替ができない。
このため県警本部交通規制課および西和署と協議を行い信号柱を移設し交差点の間
口を広くした。また車線の切替後も大型車が曲がれるように停止線を下げることにし
た。これにより前後の取付区間の施工時のみ片側交互通行で施工になり交通の影響を
少なくすることができた。
550t
図3,町道車線切替模式図
図4,町道嵩上工事施工状況
2.5 今後の工事
現在、取付道路の工事がほぼ完了し 10 月末に新橋に交通を切り替える予定であり、
供用開始の手続きや報道発表資料等の作成を行っている。
また、切替後に行う 旧橋撤去工事については周辺環境への負荷の低減をするためにワイ
ヤーソーイング工法での撤去を計画している。旧道の利用については平群町と協議中であ
る。
3. 考察
道路工事には施工前に行わなければならないことが多くあることがわかった。この工
区で挙げると関係機関との協議だけで①平群町との協議②地元説明会③警察・信号協議
④関電・NTT・上下水などの占用者協議⑤スーパー・薬局・工場への個別の工事説明などが
ありどれか 1 つでも疎かになると工事ができなくなります。
また工事中でも細かい工程や施工箇所の打合せ、移設工事との調整、通学路の切替に
よる小学校への説明など発注者が調整しなければならないことがたくさんあった。
当工区は施工方法について当初計画どおりに施工できなかったことが多くあった。ほ
とんど毎日受注者と協議を行い現地に合わせた方法で施工を進めていくことが、とても
難しいが達成感を感じるものであった。
工事の全体から個別の工事内容まで把握し関係機関との調整を的確に行い円滑な工
事進捗を行うことがどれだけ難しく大事なことかよくわかった。
4.今後の課題
この工区では設計段階での関係機関との協議や隣接地権者への十分な説明が不十分
で工事着手前に急いでバタバタと協議を行ったために苦情や一部工事の着手が遅れるなど
の問題が生じた。今回の貴重な経験から設計段階から年度計画を踏まえた発注計画と施工
計画を行うこと、計画的に関係機関との協議を行うことが重要だと痛感した。
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