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持続可能な発展と脱温暖化から見た運輸部門の課題

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持続可能な発展と脱温暖化から見た運輸部門の課題
1
IIASA-RITE国際シンポジウム
持続可能な発展と脱温暖化から見た運輸部門の課題
2008.2.18
(株)豊田中央研究所
小林 茂樹
TOYOTA CRDL, INC.
2
WBCSD持続可能なモビリティ・プロジェクト(SPM)
持続可能な発展のための世界経済人会議:
WBCSD(World Business Council for Sustainable Development)
経済成長、環境保全、社会的公平という3本の柱による持続
可能な発展に対して共有の決意を持つ170の国際的な企業の
連合体。
WBCSD持続可能なモビリティ・プロジェクト(SMP)
持続可能なモビリティ・プロジェクト(SMP)はWBCSDメンバー主
導プロジェクトの1つ。その中では、道路輸送における人、物、
サービスの持続可能なモビリティに関するグローバルなビジョ
ンを策定し、持続可能なモビリティの達成に向けて、環境・経
済面の懸念に対処する上で考えられる経路を示している。
3
持続可能なモビリティ
持続可能なモビリティ
「持続可能なモビリティは、現在や将来における他の人間や生態系の
基本的価値を犠牲にすることなく、自由に移動し、目的地へ到達し、連
絡を取り、交易をし、関係を樹立するための社会の必要性を満たす」
−Mobility 2030 で明らかになっているのは、持続可能ではないモビリティの状
況を持続可能な状況へ変えることができる単一の解決策はないということだ。
−Mobility 2030 で提示されている7つの目標が達成されれば、持続可能なモビ
リティに向けた見通しが大幅に改善されるはずである。
4
持続可能なモビリティに向けた目標
1. 輸送関連の従来型排出物を削減し、世界のいかなる場所でも公共の健康への深
刻な懸念にならないようにする。
2. 輸送関連の温室効果ガス(GHG)排出量を持続可能なレベルにまで抑制する。
3. 世界の輸送関連の死亡・重傷者数を大幅に削減する。
4. 輸送関連の騒音を削減する。
5. 交通渋滞を緩和する。
6. どの国の内部にも存在し、最貧国と富める国の間にも存在する「モビリティ格差」を
縮小する。
7. 先進国および発展途上国における一般市民のモビリティ機会を向上させる。
その他
民生部門 5.6%
7.5%
運輸部門
自動車
26.5%
17.2%
産業部門
17.3%
発電部門
43.1%
CO2排出量の伸び率(90年比 %)
化石燃料からのCO2排出の現状 (世界 2002年)
1.6
1.4
発電部門
1.2
運輸部門
産業部門
1.0
0.8
その他
0.6
0.4
0.2
0.0
90
95
00
・運輸部門は全CO2排出の約1/4を占めており、その2/3は自動車からである。
・その伸び率も最終消費部門の中では最も高く、対策の困難さが伺える。
(データ:IEA2004)
6
自動車保有台数の推移と将来見通し
900
2050
800
2030
乗用車保有台数/1000人
700
US
2000
Australia
New Zealand
600
Italy
Canada
Japan
500
France
Spain
Germany Netherlands
Sweden
400
Czech
300
Swiss
Belgium
UK
Denmark
Portugal
Greece
Poland
Hungary
200
Argentina
Malaysia
Russia
Korea Saudi Arabia
WR
Peru
Mexico South Africa
100
0
Thailand
India
0
China
Brazil
Turkey
Philippines
5000
10000
15000
20000
GDP/人 (US$)
25000
30000
35000
世界各地での乗用車保有台数の予測
20
燃費向上がなければCO2
排出量は単純に2倍になる。
→CO2排出量を同じにする
には、1台あたりの燃料消費を
1/2にする必要がある。
15
3倍
途上国
2倍
10
先進国
乗用車の保有台数(億台)
25
5
0
2000
2010
2020
2030
2040
アフリカ
中南米
中近東
インド
その他アジア
中国
東欧
旧ソ連
OECD太平洋
OECD欧州
OECD北米
2050
(WBCSD 2004)
運輸部門からのCO2排出の実績と将来予測
x3
15
CO2 emission (Gt-CO2)
実績(IEA)
予測(WBCSD)
x2
10
航空
船舶
5
自動車
0
1970
1980
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
IPCC第4次報告書WG3(2007)
各種レベルでの安定化排出パス
150
世界のCO2排出量(Gt−CO2eq)
120
90
GHG安定化レベル
885-1130ppm
710-855
590-710
535-590
490-535
445-490
post-SRES
CO2(ppm)
660-790
570-660
485-570
440-485
400-440
350-400
60
30
2050年に50%減
0
-30
2000
2020
2040
2060
2080
2100
IPCC第4次報告書WG3(2007)
10
燃料消費/CO2排出 削減策
高効率
トランスミッション
低空気抵抗
低燃費エンジン
新駆動系
軽量化
ハイブリッド
燃料電池
アイドルストップ
非技術的施策
-モーダルシフト:公共交通,歩行・自転車
-エコドライブ
-交通流制御: ITS, 道路プライシング
新燃料
バイオ燃料
水素
CO2削減量の評価
全サイクル分析:LCA(Life Cycle Analysis)
材料製造
原材料関連の
ステップ
原油などの回収、
精製、貯蔵、輸送
自動車・車両製造
燃料製造の
ステップ
製油所での精製、
貯蔵、配送
燃料(製造):Well-to-Tank
廃棄/リサイクル
自動車での消費の
ステップ
給油、運転時の消費
走行時
Tank-to-Wheel
全燃料サイクル:Well-to-Wheel
車両
燃料
自動車用燃料の製造パス
燃料
1次エネルギー
駆動系
ガソリン
石油
軽油
内燃機関
ハイブリッド
天然ガス
天然ガス
LPガス
石炭
DME
合成軽油
バイオマス
エタノール
原子力
水力
地熱
風力
太陽光
燃料電池
バイオ軽油
水素
電気
電気自動車
DME:ジ・メチル・エーテル
13
CO2排出量 (ガソリン車=1.0)
Well-to-Wheel CO2排出量
内燃機関
1.5
ガソリン
1.0
ディー
ゼル
30-50% 15-30%
EV
燃料電池:水素
バイオ燃料
化石燃料
10-40%
クリーン
エネルギー
走行時
80-90%
0.5
燃料
0
ン
リ HV
ソ
ガ ン−
リ
ソ
ガ
)
゙ス 定) 解
光
力
理 コシ ビ 定) 材
油 種
化
均 炭
カ
陽
子
固
処
ス
軽 菜
電
キ2固 木
軽
平 (石
然
2
ロ
リ
原 /太
O
化
成
ウCO
カ
本 本
天
廃
モ
:ガ
C
ト
(
ル
素
ス
(
合
日 日
力
ア
マ
トウ サ
水
−
オ
風
−
イ
バイオ
D
EV EV
バ
B
エタノール
軽油
油
水電解
14
道路車両からのCO2排出量の削減策 (WBCSD2004)
CO2排出量(Gt-CO2)
12
ディーゼル(LDV)
ハイブリッド(LDV + MDT)
10
バイオ燃料
8
(CO2排出量:80%削減)
燃料電池
(天然ガス→水素)
6
燃料電池
(水素製造時のCO2:80% 削減)
4
市場の車両構成変化
(10% 燃費向上)
2
0
2000
自動車使用の削減(10%)
2010
2020
2030
2040
2050
自動車へのバイオ燃料導入の現状
エタノール バイオディーゼル
燃料
世界
米国
EU
日本
ブラジル
2850万トン(2005) 335万トン(2005)
1170万トン(2005) 84万トン(2006)
88万トン(2006) 489万トン(2006)
0.4万トン(2003)
1200万トン(2002) 6万トン(2005)
全米エタノール協会、欧州BD協会などより集計
世界全体(2005)
石油系自動車燃料 15.7億トン
バイオ燃料
の比率
1.2%
1.5%
1.0%
0.01%
17.2%
IEA統計より計算
自動車用バイオ燃料の普及比率は
非常に低い
189EJ
∼
∼
16
バイオ燃料供給可能量の予測
130
Europe
N.America
17.7%
8.6%
Asia
10.2%
Africa
S.America
177.7%
World
32.8%
(22.6%)
204.6%
Oceania
61.8%
2050年の供給可能量
2030年の需要 (IEA WEO data)
2030年の需要 (ETP2006)
17
バイオ燃料の製造コスト比較
バイオ軽油
エタノール
軽油
ガソリン
0.8
0.6
IEAによる
将来予測
0.4
0.2
セ
ル
ロ
ー
ス
動
物
油
脂
植
物
油
FT
合
成
麦
小
80
ビ
ー
60
20
40
平均原油価格, $/bbl
キ
ビ
コ
ー
ン
0
トウ
0
ト
2005
2030
サ
価格/製造コスト, $/L
1.0
(出典:IEA WEO2006)
18
バイオ燃料の負の側面への危惧
Biomass
Biomass
持続可能性(Sustainability)
流通経路追跡 - 認証制度
• 水供給 (不足→農業との競合)
• 土地利用 (森林破壊への危惧)
食料用の耕地等との競合
• 生物多様性
• 社会面
経済発展
福祉
(健康/安全問題、労働条件)
大気環境汚染
-エバポ
-水分離
-安定性(酸化)
-堆積物
-適合性
腐食(金属)
膨潤(高分子)
19
土地利用変化によるCO2排出
0
CO2 排出量 (G-ICE=1)
1.0
4.0
6.0
ガソリン-ICE
エタノール:サトウキビ
熱帯雨林→耕地
熱帯草地→耕地
エタノール:コーン
温帯草地→耕地
Land change data from O’hare (UC Berkeley)
交通モードによる道路占有面積の比較
乗用車
自転車
20
バス
UN-SUTP module3a(2005)
21
大量輸送公共交通
地下鉄
鉄道
LRT(Light Rail Transit)
高速バスシステム(BRT)
バスレーン(or 優先レーン)
Busway
地下鉄
高架電車 都市鉄道
LRT 市電
BRT
$50-320 million/km
$50-100 million/km
$25-60 million/km
$15-40 million/km
$10-25 million/km
$1-10 million/km
途上国での各種交通モードの全燃料サイクルでのCO2排出量
乗用車(ガソリン)
乗用車(ディーゼル)
乗用車(天然ガス)
乗用車(電気)
スクーター(2ストローク)
スクーター(4ストローク)
ミニバス(ガソリン)
ミニバス(ディーゼル)
バス(ディーゼル)
バス(天然ガス)
バス(水素燃料電池)
高速鉄道
約1/5
0
500
1000 1500 0
CO2 排出量 (g-CO2/台・km)
(データ:Sperling & Salon, 2002)
22
乗車率(人/台)
50
100
150
200
CO2 排出量 (g-CO2/人・km)
23
途上国での高速バスシステム:BRT(Bus Rapid Transit)
台北
ボゴタ
クリチバ
24
ボゴタと東京の比較
人口(万人)
面積(km2)
ボゴタ
719
1587
東京都
1261
2187
乗車人数(万人/日) 90
車両数
627
営業距離(km)
55
570
2515
183
乗用車保有(万台)
GDP($/人)
313
23800
83
3,300
(BRT)
(東京メトロ)
25
ボコタの高速バスシステムの有効性・快適性
[開始の初年度:2000年]
所要時間:32%減
バスの事故:93%減
自家用車からの転換:乗客の11%
[2005年度]
・車内の混雑、事故、舗装面のはがれ
・中流の乗客の乗車離れ→自家用車へ
・全旅客のBRTシェア:
20%(2002)→12%(2004)に減少
最初の計画時に将来を見越した都市計画
も含めて考える必要がある。
26
都市計画と公共交通システム
バス乗車起点
バス乗車終点
居住地域
職場
(中心部に集中)
UN-SUTP module3b(2004)
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