...

自治体における廃棄物系バイオマス利活用の現状と 地域技術実証事例

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

自治体における廃棄物系バイオマス利活用の現状と 地域技術実証事例
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 1, pp. 29 - 40, 2010
【特
29
集: 廃棄物系バイオマス利活用 ― 利活用促進の制度および技術の現状 ― 】
自治体における廃棄物系バイオマス利活用の現状と
地域技術実証事例について
中
村
一
夫*
【要 旨】 バイオマスの利活用は,バイオマスが再生可能な資源であることやカーボンニュートラル資
源であることから,低炭素社会や循環型社会の構築に向けて重要な課題である。特に,生ごみや汚れた
紙類などの廃棄物系バイオマスは,日常の生活環境を保全するために適正処理・リサイクルをすべき廃
棄物で,食料と競合しない循環資源であることなどから,その利活用は非常に重要で有益である。しか
しながら,日常生活から日々排出される一般廃棄物系のバイオマスについては,薄く広く存在し,収集
面でも困難が多いため,利活用が進んでいない状況である。一方では,バイオマスの利活用や代替エネ
ルギーの促進の観点から,
「エネルギー供給構造高度化法」や「バイオマス推進基本法」などが制定さ
れている。このような状況の中で,自治体における廃棄物系バイオマス利活用の現状と地域技術実証事
例について,各地域での先進的な取り組みや京都市でのバイオマス利活用の技術実証研究を含めた取り
組みを紹介する。
キーワード:廃棄物系バイオマス,地球温暖化防止,循環型社会,バイオ燃料,バイオガス化
1.は
じ
め
に
までの温室効果ガス排出量を 1990 年比で 25% 削減する
とした政府の中期目標達成に向け,国内排出量取引制度
廃棄物系バイオマスの利活用は,バイオマスが再生可
能な資源であることやカーボンニュートラル資源である
や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入,
地球温暖化対策税の検討などに取り組む」など,新たな
こと,さらには,廃棄物系バイオマスが日常の生活環境
新政策の推進を図ることを地球環境行動会議 (GEA)
を保全するために適正処理・リサイクルをすべき廃棄物
や国連の気候変動首脳会合などで表明した。
で食料と競合しない循環資源であることなどから,低炭
このような状況の中で,有効な再生可能エネルギーと
素社会や循環型社会の構築に向けて重要な課題である。
なりうる廃棄物系バイオマス,特に,日常生活から日々
最近,国の法制度化においても,循環型社会形成推進基
排出される生ごみや汚れた紙などの一般廃棄物系のバイ
本法,食品リサイクル法などに加えて,①廃棄物系バイオ
オマスについては,薄く広く存在し,収集面でも困難が
マスを含むバイオマス全般の利用促進を図るための「バ
多いため,利活用が進んでいない状況である。また,各
イオマス活用推進基本法」の制定,②バイオマスエネル
自治体では,ごみの焼却処理に伴うダイオキシン問題な
ギーなどを含む非化石エネルギーの利用を電気,石油,
どに対する住民感情やリサイクルの促進の観点から,容
ガスなどのエネルギー供給事業者に義務付け,地球温暖
器包装リサイクル法によるプラスチック製容器包装の分
化防止やエネルギーセキュリティの向上などを目的とし
別収集の取り組みが盛んになり,今後の焼却ごみの発熱
た「エネルギー供給構造高度化法」などが制定された。
量の低下やごみ発電効率の低下も懸念される。そこで,
さらに,民主党政権が誕生し,鳩山首相は,
「2020 年
自治体における廃棄物系バイオマス利活用の現状と地域
技術実証事例について,主なバイオマスと変換技術,さ
らには,各地域での先進的な取り組みや京都市でのバイ
原稿受付 2009. 12. 24
* (財)京都高度技術研究所
連絡先:〒 600 - 8831
オマス利活用の技術実証研究を含めた取り組みを紹介し,
今後の各自治体での廃棄物系バイオマスの利活用の促進
京都市下京区中堂寺南町 134 番地
E-mail : kazunaka@astem. or. jp
の一助となることを期待する。
― 29 ―
30
中
村
一 夫
2.主なバイオマスと代表的な変換技術,エネ
ルギー利用用途
2. 1
バイオマスと代表的な変換技術
主なバイオマスと代表的な変換技術,エネルギー利用
用途との関係を図 1 に示す。
バイオマス資源を有効なエネルギーとして利用する技
術は,直接燃焼に加えて,熱化学的変換および生物化学
的変換に大別される。その変換技術の分類概要は,①直
接燃焼:バイオマスを直接またはチップ化,ペレット化
等の加工処理を行ったものを燃料としてボイラやストー
ブ等で燃焼,②熱化学的変換:高温,高圧プロセス等に
よるガス化,エステル化,スラリー化で燃料を生成,③
生物化学的変換:発酵技術等により,メタンやエタノー
図1
ル,水素等を生成するものである。
主なバイオマスと代表的な変換技術,エネルギー
利用用途
2. 2 代表的なバイオマス燃料等の種類とエネルギー用途
化石燃料の代替が見込まれる代表的なバイオマスの燃
料等の種類とエネルギー用途の概要を表 1 に示す。バイ
3.廃棄物系バイオマスと自治体における先進
的な利活用事例
オガスや木質固形燃料等のエネルギー利用燃料に加えて,
輸送用の液体燃料として普及が見込まれているバイオエ
タノールやバイオディーゼル (BDF) 等についても,
重油や灯油等の熱利用向け石油燃料に代替または混合可
3. 1 主な廃棄物系バイオマスの種類
自治体などが対象とする主な廃棄物系バイオマスの種
類としては,①家庭の生ごみ,事業所の食品廃棄物など
能な燃料として導入が可能である。
の厨芥類,②新聞紙・雑誌,OA 紙・広告等,段ボール,
表1
名
称
代表的なバイオマスの燃料等エネルギー用途の概要
概
要
主な特徴
バイオガス
生ごみや家畜ふん尿等を発酵して得られる可燃性ガス ボイラ等での直接燃焼が可能
で,主な成分はメタン (CH 4:60〜70%),二酸化炭 メタンを主成分とする都市ガスとの混燃が可能
バイオガスの精製により,都市ガスと同等の気体燃料
素 (CO 2:30〜40%)
製造が可能
バイオ合成ガス
各種バイオマスの熱分解や水熱ガス化処理によって得 ボイラ等での直接燃焼が可能
られる可燃性ガスで,主な成分は一酸化炭素 (CO) 都市ガスとの混燃が可能
や水素 (H 2) 等
FT 処理に適しており,BTL 等の液体燃料化が可能
木質固形燃料
木質系バイオマスを破砕・粉砕・乾燥・圧縮等の処理 破砕や圧縮処理等により一定の品質とし,可搬性や貯
(チップ,ペレット等) をして得られる固形燃料
蔵安定性を向上
ボイラやストーブ等の専用燃焼機器での利用が可能
バイオ水素
バイオマスの熱分解による燃料ガスや発酵によるメタ 燃料電池での利用が可能
ンガス等のガス類の改質または水素発酵による直接生
成によって得られる水素
バイオエタノール
サトウキビやトウモロコシなど農作物や木材・古紙等 ガソリン代替または混合用としての輸送用燃料利用の
のセルロース系バイオマスといった植物由来の多糖か 他,熱利用としては灯油・重油との混燃が可能。
ら作られる液体アルコール
バイオディーゼル
(BDF)
廃食用油等の植物性油脂等をメチルエステル化して得 軽油代替・混合用としての輸送用燃料利用の他,熱利
られる液体燃料で,主な成分は脂肪酸メチルエステル 用としては灯油・重油代替または灯油・重油との混合
利用が可能
バイオマス液化燃料
(BTL)
バイオ合成ガスを FT (Fischer Tropsch) 法により 軽油代替・混合用としての輸送用燃料利用の他,熱利
合成して得られる液体燃料
用としては灯油・重油代替または灯油・重油との混合
利用が可能
軽油と比べて高セタン価・低硫黄・低アロマな燃料
出典) エコ燃料利用推進会議報告書 (平成 18 (2006) 年 5 月)
― 30 ―
31
自治体における廃棄物系バイオマス利活用
容器包装,雑紙などの紙類,③建設廃材,製材工場残材,
3. 2 バイオマス利活用方法と自治体における先進利用
家具等,粗大物などの廃木材,④剪定枝,⑤下水汚泥
(し尿・浄化槽汚泥含む),⑥廃食用油などがあげられる。
事例
自治体などが対象とする主な廃棄物系バイオマスの利
活用方法と自治体などにおける先進利用事例の概要を表
2 に示す。
表2
品目
厨芥類 堆肥化
紙類
特徴
事例
好気発酵により堆肥を製造する技術。家畜ふん尿,食 山 形 県 長 井 市・レ イ ン ボ ー プ ラ ン (生 ご み:1,500
ton/年),栃木県野木町,栃木県高根沢町,コープこ
品残渣を中心に従来から実用化
うべなど
メタン発酵
嫌気発酵によりメタンを主成分とする可燃性ガスを得 京都府園部町・カンポリサイクルプラザ (生ごみ:50
る技術。家畜ふん尿,食品残渣,下水汚泥を中心に実 ton/ 日),大 分 県 日 田 市,東 京 都・バ イ オ エ ナ ジ ー
(食 品 廃 棄 物:110 ton/ 日),富 山 市・富 山 グ リ ー ン
用化
フードリサイクル,北海道北空知・中空知・砂川地区
など
飼料化
乾燥・破砕・発酵等により家畜等の飼料にする技術。 札幌市・札幌生ごみリサイクルセンター (事業系生ご
農産系・食品系残渣を中心に実用化
み:50 ton/日),京都市・魚アラリサイクルセンター
(魚アラ:33 ton/日),横浜市有機リサイクル協同組合
(食品残渣:15 ton/日) など
炭化
廃タマネギ,コーヒー滓など特定の食品残渣を対象に 南あわじ市 (廃タマネギ:8 ton/日) など
炭化物を製造し,活性炭や土壌改良材に利用。比較的
少量で高付加価値な事業化
製紙原料
良質な古紙や紙製容器包装などは製紙原料として利用
RPF 化
製紙原料になりにくい特殊紙やプラスチックを原料と 容器包装リサイクル法での再商品化手法
して,破砕・加圧・成型した燃料。従来から実用化
メタン発酵
固形物濃度の高い乾式メタン発酵では汚れた新聞紙や 京都市・実証プラント (生ごみ等:3 ton/日) など
ティッシュなどの汚れた紙からガス回収が可能。実証
試験で確認済み
廃木材 製品利用
破砕・加圧・成型により,合板等の製品を得る技術。 東京都・東京ボード工業など
従来から実用化
チップ化・
ペレット化
裁断・破砕等によりチップ状,粒状等に加工。製紙原 岩手県葛巻町,大阪府森林組合,徳島県上勝町,茨城
料,発電燃料,ストーブやボイラの燃料に利用。従来 県 ひ た ち な か 市・バ イ オ パ ワ ー 勝 田 (チ ッ プ:150
から実用化
ton/日) など
炭化
乾留により炭化物を製造し,調湿材,浄化材,土壌改 富山市・アイオーティカーボンなど
良材に利用。従来から実用化
ガス化
熱分解により可燃性ガスを得る技術。発電,液体燃料 山口市・実証プラント (5 ton/日),岩手県葛巻町・実
製造等に利用可能。各地で小型・高効率な技術を開発 証プラント (3 ton/日),京都市・実証プラント (0.5
中
ton/日) など
エタノール
発酵
可溶化・糖化・発酵により燃料用エタノールを製造す 大阪府堺市・バイオエタノールジャパン関西 (82 ton/
る技術。廃木材,セルロース系バイオマス,食品残渣 日),岡山県真庭市・実証プラント (2 ton/日) など
を中心に開発中
剪定枝 堆肥化
下水
汚泥
自治体などによる主な廃棄物系バイオマス利活用の取組
利活用方法
厨芥類と同様。従来から実用化
京都市・JA 京都中央コンポステーション (19 ton/日)
など
建設資材利用 汚泥焼却灰の焼成,溶融スラグ化などにより建設資材 京都市 (京石,溶融スラグ) など,下水汚泥の主要リ
を製造。従来から実用化
サイクル法
堆肥化
郡山市 (コーヒー豆滓との混合堆肥化:24 ton/日) な
ど
厨芥類と同様
消化
厨芥類と同様。大量かつ高含水率な汚泥が対象のた 石川県珠洲市 (33 ton/日,うち生ごみ:1.4 ton/日),
(メタン発酵) め,湿式・中温消化が採用される傾向。従来から実用 神戸市 (高圧水吸収法によるガス精製,市バス燃料利
化,厨芥類との混合処理なども展開中
用),金沢市,山形市浄化センター (PAFC 利用) など
廃食
用油
ガス化
廃木材と同様。実証試験で性能確認済み
炭化
脱水汚泥を乾燥後,乾留して炭化物を製造。発電燃料 東京都 (勿来火力発電所での利用),愛知県 (碧南火
等に利用。商用レベルで試験導入中。
力発電所での利用) など
塗料製造
インクなどの原料に利用
事業系廃食用油の主要リサイクルルート
飼料化
動物性油脂と配合して家畜飼料に利用
事業系廃食用油の主要リサイクルルート
BDF 化
天ぷら油等の植物油をエステル化し,軽油相当の燃料 京都市 (5 kL/日) など
を製造する技術。従来から実用化
― 31 ―
埼玉県中川水循環センター (15 ton/日),東京都清瀬
水再生センター (15 ton/日) など
32
中
村
一 夫
①家庭の生ごみ,事業所の食品廃棄物などの厨芥類に
の中で家庭系の廃食用油のモデル回収を開始し,順次回
ついては,家庭の生ごみは主に堆肥化や一部自治体で家
収拠点を拡大してきており,現在,市内約 1,300 拠点に
畜糞尿との混合での湿式メタン発酵などが先進的に取り
おいて年間約 17 万 L を回収し,バイオディーゼル燃料
組まれている。一方,事業系の食品廃棄物などの厨芥類
の原料として再生利用している (図 2)。一方,同年 11 月
は,品質や排出ロットの面から飼料・肥料化やメタン発
からは,廃食用油から精製したバイオマス燃料で,環境
酵など,自治体などの誘致した民間リサイクル施設も活
にやさしいバイオディーゼル燃料をごみ収集車約 220 台
用されて取り組まれている。また,②新聞紙・雑誌,OA
に利用するとともに,平成 12 (2000) 年 4 月からは,市
紙・広告等,段ボール,容器包装,雑紙などの紙類につ
バス約 80 台の燃料 (20% 混合) としての使用を開始し
いては,良質なものは古紙回収などを通じて,その多く
た。最近では,市バス約 95 台,ごみ収集車約 170 台合
が主に製紙原料として利用されているが,製紙原料とな
わせて約 300 台に利用している。これらの取り組みによ
りにくい紙や汚れた紙などは一部 RPF 化や乾式メタン
り,現在,年間約 150 万 L のバイオディーゼル燃料を
発酵などの取り組みがされている。③建設廃材,製材工
使用し,年間約 4,000 千 ton の二酸化炭素の削減をして
場残材,家具等の粗大物などの廃木材については,建築
いる (図 3)。また,学識経験者等による技術検討会を
系はパーティクルボードなどの製品化,製材工場残材な
設置し,わが国にバイオディーゼル燃料の品質規格がな
どはチップ化・ペレット化などに利用されている。また,
い中で,燃料品質の暫定規格 (京都スタンダード) の策
④剪定枝は,主にチップにして堆肥化,⑤下水汚泥 (し
定に取り組んできた。現在,その暫定規格を満足する品
尿・浄化槽汚泥含む) については,主に溶融スラグ化な
質の燃料を安定供給するため,日量 5,000 L の燃料化プ
どによる建設資材化や消化 (メタン発酵) によるエネル
ラントを整備し,平成 16 (2004) 年 6 月から本格稼動さ
ギー回収,⑥廃食用油については,従来から事業系は塗
せている 1-3)(図 4)。
料原料・飼料化・石鹸などに利活用されているが,最近,
最近の新たなる取り組みとして,京都市では,①元
家庭系の廃食用油を軽油代替のバイオディーゼル燃料化
(BDF 化)し,ごみ収集車などの公用車などに利用する取
り組みが増加してきている。
4.京都市のバイオマス利活用に向けた具体的
な取り組み
バイオマスは,緑豊かな大地と太陽の光の中で,温室
効果ガスである二酸化炭素を吸収して生育した植物など
の生物資源であり,バイオマスのもつ「再生可能資源,
カーボンニュートラル」という特性を考えると,バイオ
マスの有効活用は化石資源の消費を抑制するとともに,
地球温暖化の防止と持続的発展を可能とする循環型社会
図2
市民による廃食用油回収の取り組み
の形成に向けて不可欠なものである。
京都市では,市民,事業者と連携を図って,地球温暖
化防止に貢献する具体的な資源循環型システムを構築す
る取り組みとして,全国に先駆け廃食用油や生ごみなど
のバイオマスをバイオマスエネルギーとして有効利用す
る,①バイオディーゼル燃料化事業や,②バイオガス化
実証事業等,バイオマス利活用に向けた具体的な取り組
みを農水省や環境省など国の支援を得て実施している。
その取り組みの現状と課題について紹介する。
4. 1
バイオディーゼル燃料化事業
京都市では,地球温暖化防止京都会議 (COP3) の開
催に先立ち,平成 9 (1997) 年 8 月から,市民との連携
― 32 ―
図3
市バスおよびごみ収集車への利用
自治体における廃棄物系バイオマス利活用
33
F1 ドライバー片山右京氏と連携を図り,環境にやさし
望として「バイオディーゼル燃料による地域循環システ
い京都市のバイオディーゼル燃料でパリ・ダガールラ
ムの確立に向けた制度の充実」の中で,①バイオディー
リーに挑戦し,世界に地球温暖化防止をアピールすると
ゼル燃料の品質安定化と適合車両開発の促進などのため
ともに,過酷な気象条件にも耐え得る燃料品質の改善技
の日本工業規格 (JIS) の制定や,②廃食用油燃料化事
術への検討にも着手した 4)。
業への支援制度の確立などを,国に提案してきた。
また,②バイオディーゼル燃料化事業の全国への円滑
これに対して,経済産業省,環境省および国土交通省,
な普及拡大を図るための情報発信として,京都市のバイ
さらには農林水産省などの各省庁では,バイオディーゼ
オディーゼル燃料化事業技術検討会で得られた知見を
ル燃料などバイオマス由来の自動車燃料について,①安
「バイオディーゼル・ハンドブック」(編纂:池上 詢 京
全性確認および品質評価,②自動車排ガスならびに車両
都大学名誉教授) として出版した。さらに,③このバイ
への影響等を調査する各種検討会を設置するなど,燃料
オディーゼル燃料が,国の「バイオマス・ニッポン総合
品質の規格化,バイオマス燃料対応車両開発や税制優遇
戦略」や「京都議定書目標達成計画」などに位置づけら
を含む支援制度の充実に向けた検討および取り組みがな
れ,政府の総合科学技術会議で首相に紹介されるまでの
されてきた。これらの取り組みの中で,燃料品質の規格
成果が得られている (図 5)。
化の一環として,平成 19 (2007) 年度から品質確保法上
さらに,京都市では,平成 13 (2001) 年度から国家要
のバイオディーゼル燃料混合軽油の強制規格として,一
般販売に際しては B5 (軽油への混合は 5 %) 上限との
規定がなされた。
今後の課題としては,平成 19 (2007) 年 3 月に京都市
長を会長として設立した全国バイオディーゼル燃料利用
推進協議会を中心として,バイオディーゼル燃料化事業
「燃料品
の全国への円滑な普及拡大を図って行くため,
質の協議会規格と利用指針」の策定と「税制優遇」の獲
得に取り組んでいく (図 6)。なお,今後の技術面での主
要な課題としては,①副原料として廃食用油と反応させ
るために化石資源由来のメタノールを用いており,カー
図4
京都市廃食用油燃料化施設
図5
ボンフリーとなっていないこと,②反応の副産物である
廃グリセリンと廃水に含まれる油分を,現在はクリーン
京都市のバイオディーゼル燃料での新たなる挑戦
― 33 ―
34
中
村
一 夫
図 6 全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会の取り組み
センターで焼却処理しているが,それら副産物の適正処
理・リサイクル方法の確立,さらには,③最新の排ガス
規制に対応した新型車両へのバイオ燃料の最適適合性の
検討などである。
4. 2
バイオガス化実証事業
京都市では,平成 10 (1998) 年 5 月に策定した「ごみ
処理基本構想」において,今後のごみ処理システムの方
向性として,ごみから資源・エネルギーを最大限回収す
るシステムズづくりを掲げ,生ごみのバイオガス化を検
討すべき新技術として位置づけた。
これを受けて,本市では,学識経験者と民間のプラン
トメーカーなどで構成される「バイオガス研究会」との
図7
バイオガス化技術実証研究プラント
連携の下,国の支援により「バイオガス化実証研究プラ
ント」を平成 11 (1999) 年 6 月に完成させて,バイオガ
ス化実証事業を開始した 5) (図 7,図 8)。なお,その際
の原料としては,事業系一般廃棄物であるホテルや市場
の厨芥類を主に使用し,これに剪定枝や古紙等を添加し
て様々な運転を約 3 年間にわたり実施してきた。
その実証事業の結果,厨芥類から発生したバイオガス
をガスエンジン発電することにより,本格プラントにお
いて,ごみ 1 ton あたりほぼ発電量約 230 Kwh,余剰電
力量約 150 Kwh が得られることが確認できた。さらに
発酵残渣は,塩分や臭気が少なく良質なコンポストに利
用できる可能性も確認された。その後,京都市では学識
経験者や食の関連業界等からなる「京の食材ゼロエミッ
ション協議会」を設置し,食品リサイクル法に対応した
― 34 ―
図8
バイオガス化技術導入の背景
自治体における廃棄物系バイオマス利活用
35
具体的なリサイクルの枠組みの検討や,京都市中央卸売
ネルギーを最大限回収するリサイクルシステムとして適
市場の魚箱の一部を植物由来の生分解性プラスチックに
した方法であることが明らかとなった 6)。このバイオガ
置き換えるとともに,その廃棄物をバイオエネルギーと
ス化実証事業の成果を受けて,京都市では次期クリーン
して有効利用するバイオガス化の実証実験にも取り組ん
センターの整備において,図 9 に示す廃棄物からのエネ
できた。
ルギー回収の最大化を目指しバイオガス化の機能を併設
これらの取組結果から,このバイオガス化技術は,ご
した新しいクリーンセンターの整備計画を策定した。
み発電機能と組み合せることにより,容器包装リサイク
なお,京都市での最近の家庭ごみ量とごみ質は図 10
ル法などによりプラスチック類などが除かれた後の発熱
に示すように,平成 18 (2006) 年度の有料指定袋の導入
量が低下した家庭ごみなどに対して,ごみから資源・エ
や平成 19 (2007) 年度のその他プラスチック製容器包装
図9
次期クリーンセンターの整備計画の概要
図 10
最近の家庭ごみ量とごみ質
― 35 ―
36
中
村
の分別収集により大幅に減少するとともに,ごみ質に
一 夫
5. 1
京都バイオサイクルプロジェクトの概要 (図 11)
ついては生ごみや紙類などの廃棄物系バイオマスが約
京 都 バ イ オ サ イ ク ル プ ロ ジ ェ ク ト は,京 都 市 域 を
80% とその大半を占める状況になっている。また,京都
フィールドとして,既存の廃食用油燃料化プラント,バ
市では平成 20 (2008) 年 10 月から市民との「共汗」の
イオガス化技術実証プラントを活用しながら,地域の廃
取り組みとして,約 2,000 世帯を対象に生ごみ等のモデ
棄物系バイオマスおよび未利用の木質系バイオマスのハ
ル収集実験を開始した。
イブリッド活用による二酸化炭素排出量の削減,ならび
また,より高度なバイオガスの利活用として,生ごみ
にガス化残渣等の有効活用による再生可能資源の地域循
からの水素生成と燃料電池への円滑な活用に関する研究
環的な利用実証を目指そうとするものである。その主要
を京都大学などと連携して進めている。
な目的は以下のとおりである。
今後の課題としては,現状ではバイオガス化により 3
① 未利用バイオマスの徹底的な利活用の推進
割程度発生する発酵残渣の削減,原料を希釈するために
地域の未利用バイオマス資源・廃棄物を,再生可能性
発生する廃水処理量の削減があげられる。またバイオガ
を念頭において徹底利用する。
ス発生の高効率化,生ごみ等の廃棄物から発生したバイ
② システムハイブリッドによる二酸化炭素の効果的削減
廃棄物系・木質系等バイオマスの各種技術,システム
オガスから効率的かつ安定的に水素を取り出す水素発生
技術の高度化も当面の課題である。
の組み合わせ,さらには徹底したカスケード利用を図る
など,ハイブリッドシステムの構築により二酸化炭素排
5.京都バイオサイクルプロジェクト
出量の効果的削減を図る。
③
都市・田園の融合モデルの構築
廃食用油燃料化やバイオガス化におけるこれらの課題
都市型の廃棄物系バイオマスと,田園型の木質系バイ
を解決し,バイオマスの利活用を促進するため,環境省
オマスをリンクさせて有効活用する都市・田園の融合モ
の「地球温暖化対策技術開発事業」の委託事業として,
デルを構築する。
京都市,京都大学,(独)国立環境研究所,企業等の産官学
連携で,「京都バイオサイクルプロジェクト」に平成
5. 2 京都バイオサイクルプロジェクトでの主要な技術
19〜21 (2006〜2009) 年度の 3ヵ年で取り組んでいる。
開発
5. 2. 1
ガス化メタノール合成技術開発
ガス化メタノール合成技術では,京都市特有の木質バ
図 11
京都バイオサイクルプロジェクトの概要
― 36 ―
自治体における廃棄物系バイオマス利活用
37
イオマスである寺社仏閣から排出される剪定枝や,林地
マス起源の製品に代替し,真にカーボンフリーなバイオ
残材および間伐材,建設廃材など様々な dry 系バイオ
ディーゼル燃料を供給する実証研究を行う (図 12)。
マスを活用して,メタノールを合成する実証研究を行う。
天然ガス起源のメタノールを再生可能資源であるバイオ
図 12
図 13
現在,国内で消費されているメタノールは天然ガスを
水蒸気改質して 15〜20 MPa,250〜300℃の高圧高温下
ガス化メタノール合成実証プラント
ガス化メタノール合成の製造プロセス
― 37 ―
38
中
村
一 夫
でオフガスを再循環して合成されており,消費エネル
を達成した。合成したメタノールは無色透明で混濁物等
ギーが多いため,天然ガス産出サイトで大規模プラント
は見られず,純度は 95% 前後,残りは水分 (3% 程度)
により合成されている。
とエタノールなどのアルコール類や,ギ酸やギ酸メチル
本実証研究では,原料によって性状変動が懸念される
などの微量成分が含まれる程度であった。なお,微量成
木質バイオマスの熱分解ガスを対象に,メタノール合成
分は燃料製造プロセスで除去され BDF 品質への影響が
条件を 3〜5 MPa,200〜230℃の低温低圧条件,かつワ
ないことも確認された 7)。
ンパス型とし,さらに合成反応装置を工夫して平衡値を
5. 2. 2 高効率メタン発酵技術開発
超える高性能の新型反応器を採用する。これより従来の
超高温可溶化技術を導入した高効率メタン発酵技術は,
高温高圧条件下でのメタノール合成と比較してメタノー
従来の 55℃の乾式高温メタン発酵プラントの後段に
ル収率は 50% 程度の増加が見込める。また,ワンパス
80℃の超高温可溶化槽を追加設置し,超高温可溶化技術
での反応結果,未反応のオフガスを利用してガスエンジ
の適用による生ごみや汚れた紙類などの有機性廃棄物の
ン発電を行い,自立型システムを構築できるため,地域
分解率向上,ガス発生量増大,排水処理負荷低減が可能
分散かつ地産地消のシステム形成が可能となる。
な技術である。京都市は,国際文化観光都市として,ホ
また,今回採用する循環流動層炉は,炉内の流動媒体
テル・旅館・飲食産業から食品残渣が多く排出されると
により燃料が混合・攪拌されるため高いガス化効率が得
いう特性を有しており,また家庭ごみ中の厨芥類・紙類,
られるとともに,流動媒体が熱媒体となるため炉内の保
さらには,処理が課題となっている廃食用油燃料化施設
有熱量が多く,多種多様なバイオマスへの適応性が高い
での廃グリセリンを活用して,都市部でも立地可能な発
ほか,運転制御性も優れている。ガス化メタノール合成
酵残渣・廃液の発生が少ないバイオガス化システムを構
技術の開発により,再生可能資源からメタノールを製造
築しようとするものである。高効率メタン発酵技術につ
し,真にカーボンフリーなバイオディーゼル燃料を供給
いては,固形廃棄物の可溶化法として亜臨界処理法,ア
することができる (図 13)。
ルカリ可溶化法等があるが,いずれも多量の電力や薬剤
廃木材や間伐材などを対象としたガス化メタノール合
成実証試験の結果,安定したガス化運転が行えることを
を必要とし,また窒素含有率の高い生ごみで適用するに
は希釈水を必要とするため排水処理負荷が大きい。
確認した。また,トータルシステムについて運転条件の
今回実証研究を行う技術は,嫌気可溶化であるため曝
最適化を図ることで,ガス化設備では目標値の炭素転換
気電力や薬剤が不要であり,80℃加温に必要なエネル
率 95%,冷ガス効率 65% を達成し,メタノール合成設備
ギーはガスエンジン等の温水排熱で賄えること,可溶化
では目標値のメタノール合成量 30 L/日に対し,50 L/日
菌は高温メタン発酵槽の余剰汚泥を用いることが特徴と
図 14 高効率メタン発酵技術実証プラント
― 38 ―
39
自治体における廃棄物系バイオマス利活用
サイクル法などによりプラスチック類などが分別収集さ
れるとともに,コミュニティー回収などにより新聞・雑
誌・ダンボールなどが民間で再資源化されてきている。
このように資源化物の分別が図られた後の家庭ごみの中
身は,その大部分が生ごみや汚れた紙類などとなってき
ており,これらの廃棄物はカーボンニュートラルなバイ
オマス資源でもある。この廃棄物系バイオマスの利活用
の推進は,京都議定書誕生の地であるわが国においては,
低炭素社会や循環型社会の構築に向けて率先して取り組
むべき重要な施策である。
そこで,京都市では市民との共汗の取り組みとして,
図 15
高効率バイオガス化 (メタン発酵) の効果
全国に先駆けて高効率の乾式バイオガス化実証プラント
を活用した生ごみからの新エネルギーの生成に向けたモ
デル実験を実施している。また,この生ごみのモデル実
なっている。また,超高温可溶化槽において,メタン発
験と連動して,環境省の地球温暖化対策技術開発実証事
酵の阻害要因となっている生ごみ中のタンパク質から生
業として,超高温可溶化技術を導入した生ごみなどの高
成するアンモニアを効率的に回収できるというメリット
効率なバイオガス化や廃木材などのバイオマスからの液
がある。この超高温可溶化技術の導入により,発酵不適
体燃料化などの技術実証研究である「京都バイオサイク
物の混入に強い乾式メタン発酵技術の運転性・エネル
ルプロジェクト」を実施している。このような廃棄物系
ギー回収性・経済性が改善され,国による高効率原燃料
バイオマスの資源循環システムは,将来の低炭素社会や
回収施設の普及推進施策とも相まって整備が進むものと
循環型社会の構築に不可欠であり,このプロジェクトの
期待される (図 14)。
成果を全国に普及させることにより,ごみの混合焼却か
この技術実証実験の結果,超高温可溶化槽をメタン発
らの脱却を図っていくことと,同時に,3R が市民のラ
酵槽と連動させて運転することで,メタン発酵槽内のア
イフスタイルや事業スタイルの中に根づき,ごみの発生
ンモニア濃度を発酵阻害濃度 (3,000 mg/L) 以下に保
抑制も図られ,全体として環境負荷が低減された廃棄物
つことができた。また,アンモニアストリッピング風量
行政を積極的に目指してことも最前線の自治体にとって
を増加させることでメタン発酵プロセスでの排水処理
非常に重要であると考える。
が不要となる見込みが得られた。超高温可溶化プロセ
また,最近,国においても「循環型社会形成推進基本
ス組込メタン発酵システムの実証運転を行い,目標値
法」
,
「食品リサイクル法」などに加えて,
「バイオマス
であるガス発生量 20% 増,残渣発生率 50% 削減,排水
活用推進基本法」やバイオマスエネルギーなどを含む非
処理量 70% 削減を達成した。さらに発酵残渣のコンポ
化石エネルギーの利用を電気,石油,ガスなどのエネル
スト化実験により,塩分や臭気も少ない良質なコンポス
ギー供給事業者に義務づけ,地球温暖化防止やエネル
トが得られることも確認できた。また,廃食用油のバイ
ギーセキュリティの向上などを目的とした「エネルギー
オディーゼル燃料化の際に発生する廃グリセリンの生ご
供給構造高度化法」などが制定される中で,今後,最前
みとの混合発酵により,廃グリセリン 1 ton あたり約
線の廃棄物行政も廃棄物系バイオマスの利活用に向けて
1,000 m ものバイオガスが発生することも確認された
より実効性のある取り組みへと変革していくことが必要
3
8)
(図 15)。
6.お
不可欠である。
わ
り
に
参 考 文 献
廃棄物系バイオマスの利活用は,低炭素社会や循環型
社会の構築の観点から重要であり,喫緊に進めるべき課
題であるが,全国の自治体において,生ごみや廃食用油
などのバイオマスを分別収集・再資源化しているところ
はまだ僅かな状況である。
1 ) 中村一夫,若林完明,小林純一郎:廃食用油から生成
したバイオディーゼル燃料の活用について,第 17 回エ
ネルギー・資源学会研究発表会講演論文集,pp. 265 268 (1998)
2 ) 中村一夫:京都市におけるバイオディーゼル燃料化事
業の取り組み,環境技術,第 33 巻,第 7 号,pp. 501 - 506
ところで,最近多くの自治体においては,容器包装リ
― 39 ―
(2004)
40
中
3)
4)
5)
村
一 夫
巻,第 3 号,pp. 44 - 50 (2001)
中村一夫:京都市における循環型社会の構築に向けた
取組みについて,環境研究,第 130 巻,pp. 78 - 85 (2003)
7 ) 中村一夫,掘 寛明,酒井伸一,井藤宗親,鮫島良二:
中村一夫,坂 志朗,池上 詢:バイオディーゼル燃料
京都バイオサイクル PJ ガス化メタノール合成技術開
の酸化安定性とその改善,エネルギー・資源学会論文
発 (第 2 報),第 20 回廃棄物資源循環学会研究発表会
誌,第 27 巻,第 5 号,pp. 426 - 430 (2006)
論文集,pp. 325 - 326 (2009)
中村一夫,南 秀明:京都市におけるバイオガス化技術
8 ) 中村一夫,酒井伸一,掘 寛明,宍田健一,岩崎大介,
実証研究プラントの取組について,都市清掃,第 52 巻
6)
久掘泰佑,坪田 潤:京都バイオサイクルプロジェクト
第 231 号,pp. 353 - 356 (1999)
高効率メタン醗酵技術開発 (第 2 報),第 20 回廃棄物
中村一夫:厨芥類を中心とする今後のごみ処理システ
資源循環学会研究発表会論文集,pp. 295 - 286 (2009)
ムの方向性について,エネルギー・資源学会誌,第 22
Current State of Waste Biomass Utilization and Regional Technology
Research in Local Governments
Kazuo Nakamura
Academia-Industry Cooperation Division, Advanced Scientific Technology & Management
Research Institute of KYOTO (ASTEM RI)
(134 Chudoji, Minami-machi, Shimogyo-ku, Kyoto 600 - 8831 Japan)
Abstract
Utilization of biomass is one of the important challenges faced when attempting to realize low-carbon,
sound material-cycle societies. Since biomass is a renewable, carbon-neutral resource, it is able to fix carbon
dioxide from the atmosphere through photosynthesis.
In particular, the utilization of biomass from municipal solid waste, such as organic waste materials and
post-consumer paper items, is seen to be extremely important and beneficial. It does not compete with food,
waste which requires special treatment and recycling within the resource cycle in order to be safe for the
environment.
Biomass from municipal solid waste has not, however, been utilized to its full potential due to the fact that
it is discharged little by little from many sources, and is also difficult to collect and carry.
Regarding legislation to promote alternative energies and the use of biomass, the Bill on the Promotion
of the Use of Non-fossil Energy Sources and Effective Use of Fossil Energy Source Materials by Energy
Suppliers and the Basic Law for Promoting the Utilization of Biomass were both approved in 2009.
With this as the background, this paper introduces recent progressive initiatives concerning the utilization of waste biomass by various local governments and regional technology research being conducted in
the city of Kyoto.
Key words : waste biomass, prevention of global warming, sound material-cycle society, biofuel, biogas
― 40 ―
Fly UP